説明

独立気泡発泡体

【課題】従来の独立気泡発泡体よりも硬度を低くし、しかもブロッキングやべたつきを生じ難くする。
【解決手段】樹脂成分に熱分解型発泡剤を配合して発泡させた独立気泡発泡体において、前記樹脂成分100重量部中に、エチレン・ブテンブロックの含有量が80%以上のスチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)を70重量部〜100重量部未満と、残りの樹脂成分として酢酸ビニル共重合体(EVA)または融点85℃以下のポリエチレンの何れか一方または両方を含み、前記樹脂成分100重量部に対して無機粉体を10〜40重量部添加した。独立気泡体の発泡倍率は3.5〜12倍、アスカーF硬度が65〜90度、圧縮永久歪は30%未満が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟な独立気泡発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡体は種々の分野で多用されているが、用途によっては柔軟でかつ液体の染み込み難い発泡体が要求されている。
【0003】
従来、柔軟でかつ液体の染み込み難い発泡体として、独立気泡発泡体が用いられている。独立気泡発泡体は、気泡同士が連通してなく、気泡が膜で包囲された独立気泡構造からなるため、液体が染み込み難い。このような独立気泡発泡体として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)や、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などのゴム材料を主原料とした発泡体がある。
【0004】
しかし、独立気泡発泡体は、各気泡にガスを内包しているため、独立気泡発泡体の圧縮時に気泡が変形し難く、柔軟性が良好とは言い難い問題がある。具体的には、従来の独立気泡発泡体はアスカーF硬度が90度より大であって硬いものであった。また、従来の柔軟な独立気泡発泡体は、シート状に成形したものを積層して保管等した場合、ブロッキング(隣接シートとの密着)を生じやすく、一枚ずつ剥がして使用するのが面倒であった。さらに柔軟な独立気泡発泡体を用いて成形した成形品の表面触感もべたつきがひどく、製品価値に劣る問題がある。特に、低硬度の独立気泡発泡体ほど、前記ブロッキングやべたつきを生じ易い。
【特許文献1】特開2003−327822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、従来の独立気泡発泡体よりも硬度が低く、しかもブロッキングやべたつきの生じ難い独立気泡体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、樹脂成分に熱分解型発泡剤を配合して発泡させた独立気泡発泡体において、前記樹脂成分100重量部中に、エチレン・ブテンブロックの含有量が80%以上のスチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)を70重量部以上100重量部未満と、残りの樹脂成分として酢酸ビニル共重合体(EVA)または融点85℃以下のポリエチレンの何れか一方または両方を含み、前記樹脂成分100重量部に対して無機粉体を10〜40重量部添加してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、樹脂成分に含まれるスチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)を、エチレン・ブテンブロックの含有量が80%以上のものとして、独立気泡発泡体のガラス転移点を低くすることにより、柔軟性を高く(硬度を低く)した。また、ガラス転移点を超える温度条件では、樹脂の結晶構造が崩壊して流動しやすい状態となり、この状態では独立気泡発泡体表面の僅かな凹凸を樹脂が埋め、触ったときにべたつき感を与え、また同素材同士が接触した際に自己接着性を発揮してブロッキングを起こすようになるが、本発明ではガラス転移点を低くしたことにより、そのままではべたつき感が大きくなってブロッキングが発生し易くなる。そこで本発明では、ガラス転移点を持たない無機粉体を樹脂成分に添加し、樹脂がガラス転移点を超えても、埋めることのできない凹凸を無機粉体で形成することでブロッキング及びべたつき感を生じ難くした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明の実施形態について説明する。本発明の独立気泡発泡体は、樹脂成分に熱分解型発泡剤と無機粉体を添加して発泡させたものからなる。
【0009】
前記樹脂成分の100重量部中には、エチレン・ブテンブロックの含有量が80%以上のスチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)が70重量部以上100重量部未満、好ましくは80重量部〜90重量部含まれる。前記エチレン・ブテンブロックの含有量が80%以上のスチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)は、スチレンブロックとエチレン・ブテンブロックからなる熱可塑性エラストマーである。70重量部未満では、柔軟性不足となり、100重量部では樹脂の伸び特性が不足しニーダーやミキシングロールなどで練りにくい。
【0010】
前記スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)は、スチレンブロックのガラス転移点が100℃以上、エチレン・ブテンブロックのガラス転移点が−20℃以下である。一般に、樹脂はガラス転移点を超える温度に置かれることにより柔軟性が高く、すなわち硬度が低くなる。したがって、ガラス転移点の低いエチレン・ブテンブロックの比率を高くするのが好ましい。この点から、本発明では、前記スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)におけるエチレン・ブテンブロックの含有量を80%以上とした。さらには、前記エチレン・ブテンブロックは、ブテンの方が側鎖が長く、柔軟性を付与する効果が高いため、ブテン成分が50%以上であるのが望ましい。
【0011】
また、前記樹脂成分には、酢酸ビニル共重合体(EVA)または融点85℃以下のポリエチレンの何れか一方または両方が含まれる。酢酸ビニル共重合体(EVA)または融点85℃以下のポリエチレンの何れか一方または両方の添加量は、前記樹脂成分におけるSEBBSの量を除いた残りの分、すなわち樹脂成分100重量部中の30重量部以下、好ましくは5〜20重量部である。前記酢酸ビニル共重合体(EVA)または融点85℃以下のポリエチレンの何れか一方または両方を含むことにより、ブロッキングを低減し、また練りにくさを改良することができる。
【0012】
本発明において使用される熱分解型発泡剤は、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等を挙げることができる。前記樹脂成分100重量部に対する熱分解型発泡剤の添加量は、独立気泡発泡体の発泡倍率に応じて適宜決定され、通常、2〜20重量部とされる。なお、前記樹脂成分に、前記熱分解型発泡剤と共に架橋剤として有機過酸化物が適宜添加される。架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。樹脂成分100重量部に対する架橋剤の添加量は、通常0.5〜6.0重量部である。さらに、発泡助剤、顔料等の添加剤が適宜添加される。
【0013】
本発明において使用される無機粉体は、例えば、重炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化スズ水和物、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ハードクレイ、タルク、マイカ等、及びこれらの混合物を挙げることができる。前記樹脂成分100重量部に対する無機粉体の添加量は、10〜40重量部とされる。10重量部よりもよりも少ない場合には、ブロッキングの発生低下及びべたつき感の低下効果が得難くなり、一方40重量部よりも多くなると柔軟性が損なわれるようになる。
【0014】
前記独立気泡発泡体の発泡倍率は、3.5〜12倍が好ましい。3.5倍未満の場合、硬度が高くなりすぎ、一方12倍より高い場合、耐久性が不足し、長期使用に耐えられなくなる。また、前記独立気泡発泡体のアスカーF硬度は65度〜90度が好ましい。65度より低い場合、ブロッキングの発生やべとつき感を一層生じ易くなり、一方90度より高い場合には所望の柔軟性が得難くなる。また前記独立気泡発泡体の圧縮永久歪(JIS K 6767準拠、圧縮率75%)は、30%未満が好ましい。30%より大の場合には、歪み易くなって長期使用に耐えられなくなる。
【0015】
前記独立気泡発泡体の発泡方法としては、公知の一段発泡、例えば、樹脂成分、熱分解型発泡剤、無機粉体及び架橋剤、発泡剤等を所定配合で混練した後、混練物をプレス金型に充填し、加熱及び加圧することにより発泡させる加熱加圧プレス法が挙げられる。
【実施例】
【0016】
実施例及び比較例について具体的に説明する。以下の原料を表1及び表2の配合にしたがい混練し、深さ33mm×165mm×165mmの成形空間を有するプレス金型に850g充填し、145℃×40分、0.6MPaで加熱加圧して発泡させ、実施例1〜9及び比較例1〜3の独立気泡発泡体を製造した。なお、実施例1,2は樹脂成分がSEBS−1(エチレン・ブテンブロックの含量88%)とEVA(酢酸ビニル共重合体の共重合率25%)からなり、実施例3,4は樹脂成分がSEBS−1(エチレン・ブテンブロックの含量88%)と融点76℃のPEからなり、実施例5は樹脂成分がSEBS−1(エチレン・ブテンブロックの含量88%)とEVA(酢酸ビニル共重合体の共重合率25%)と融点76℃のPEとからなる。また、実施例6〜9は、実施例1の配合を元に発泡剤の量を調整して発泡倍率を変化させた例である。
【0017】
・SEBS−1;スチレン/エチレン・ブテンブロック=12/88(エチレン・ブテン ブロックの含量88%)、品名:タフテック H1221、旭化成(株)
・SEBS−2;スチレン/エチレン・ブテンブロック=30/70(エチレン・ブテン ブロックの含量70%)、品名:タフテック、旭化成(株)
・EVA ;酢酸ビニル共重合体の共重合率25%、
品名:ウルトラセン634、東ソー(株)
品名:エバフレックスH2020、三井・デュポンポリケミカル(株)
・PE ;LLDPE、融点76℃、
品名:エンゲージ8401、デュポンダウエラストマー社
・発泡剤 ;アゾジカルボンアミド、品名:ビニホール#3、永和化成工業(株)
・発泡助剤−1;尿素系、品名:セルペーストK5、永和化成工業(株)
・発泡助剤−2;酸化亜鉛2種
・発泡助剤−3;ステアリン酸亜鉛
・架橋材 ;ジクミルパーオキサイド40%希釈品、
品名:カヤクミルDCP−40C、化薬アクゾ(株)
・無機粉体 ;重炭酸カルシウム
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
このようにして得られた実施例1〜9及び比較例1〜3の独立気泡発泡体に対して、べたつき感、ブロッキング、硬度、比重、圧縮永久歪を測定した。べたつき感については、試験者がサンプルの表面に触れた際に感じたべたつき程度によって判断した。ブロッキングは、厚み5mm、A4版に裁断した実施例1〜9及び比較例1〜3のサンプルをそれぞれ5枚重ね、23℃、湿度無制御の環境下に30分、1時間、3時間、5時間放置し、各放置時間後に上から順番に剥がしていった際に、複数枚密着した状態(ブロッキング状態)で剥がれた場合をブロッキング発生とし、ブロッキングの発生した放置時間をブロッキング発生時間とした。硬度は、アスカーF硬度計で測定した。比重は、見掛け比重(重さ/体積)とした。また圧縮永久歪は、JIS K 6767に準拠し圧縮率75%にて行った。
【0021】
測定結果は表1及び表2の下部に示すとおりである。実施例1〜5については、べたつき感が小さい又はべたつき感がなく、ブロッキングの発生時間が3時間、アスカーF硬度が70〜90度、圧縮永久歪が23.2%〜27.3%であった。この結果から実施例1〜5は、硬度が低く柔軟であり、べたつき感が無い又は小さく、さらにブロッキングが発生し難く、かつ歪みが小さいものであることがわかる。また、発泡倍率を異ならせた実施例6〜9についての結果は、発泡倍率3.3倍の実施例6において、アスカーF硬度の結果が95度であり、好ましいアスカーF硬度の上限90度を超えており、一方、発泡倍率14倍の実施例9において、アスカーF硬度の測定結果が63度であり、好ましいアスカーF硬度の下限65度より低くなっており、さらに圧縮永久歪みの測定結果が31.0%であり、好ましい圧縮永久歪の上限30.0%を超えていた。なお、発泡倍率10倍の実施例7と発泡倍率12倍の実施例8については、何れもべたつき感が小さく、ブロッキングの発生時間が3時間であり、またアスカーF硬度が68度と65度、圧縮永久歪が24.5%と27.3%であった。この実施例6〜9及び前記実施例1〜5の結果から、発泡倍率は3.5倍〜12倍が特に好ましい範囲であることがわかる。
【0022】
それに対し、無機粉体の添加が無い又は添加量が少ない比較例1及び比較例2は、べたつき感が大きく、ブロッキングの発生時間が30分であり、このことから、べたつきやすく、ブロッキングの発生し易いものであることがわかる。また、樹脂成分がSEBS−2(エチレン・ブテンブロックの含量70%)とEVA(酢酸ビニル共重合体の共重合率25%)からなり無機粉体を50重量部添加した比較例3では、べたつき感が無く、ブロッキングの発生時間が5時間、アスカーF硬度が92度であり、このことから、無機粉体の作用によってべたつき感が無く、ブロッキングの発生し難いものであるものの、SEBSにおけるエチレン・ブテンブロックの含量が低いために樹脂硬度が高く柔軟性に劣っていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分に熱分解型発泡剤を配合して発泡させた独立気泡発泡体において、
前記樹脂成分100重量部中に、エチレン・ブテンブロック含有量が80%以上のスチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)を70重量部以上100重量部未満と、残りの樹脂成分として酢酸ビニル共重合体(EVA)または融点85℃以下のポリエチレンの何れか一方または両方を含み、
前記樹脂成分100重量部に対して無機粉体を10〜40重量部添加してなることを特徴とする独立気泡発泡体。

【公開番号】特開2006−143942(P2006−143942A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338368(P2004−338368)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】