説明

狭い粒径および空孔直径分布を有する大表面積かつ高空孔率シリカ充填物、ならびにそれを製造する方法

【課題】狭い粒子および空孔直径分布を有する大表面積、高空孔率のメソポーラスシリカビーズLC充填物の生成方法ならびに合成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、全体にはLC充填材料に関するものであり、特にはシリカ塩基類のHPLC充填材料に関するものである。また、充填材料の生成方法および使用方法が開示される。本発明によるHPLC充填材料は、大表面積、高空孔率および良好な機械的強度を特徴としている。これは、一部には、LC充填材料の調整における界面活性剤の一部含有による。これらの所望の性質は、充填材料の調整において生成された空孔直径の狭い範囲に、一部起因する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に液体クロマトグラフィー用充填材料に関し、特にシリカ系液体クロマトグラフィー用充填材料に関する。特に、本発明は、高性能液体クロマトグラフィーカラム等の液体クロマトグラフィーカラム、および他の関連する技術で使用するのに好適であり、高空孔率および狭い空孔径分布を有する、メソポーラスで、高純度、大表面積のシリカ球状ビーズ(平均直径が2μmから9μm)の製造に関する。
略語
CMC:臨界ミセル濃度
HPLC:高性能液体クロマトグラフィー
LC:液体クロマトグラフィー
PEEK:ポリ(エーテルエーテルケトン)
PEOS:ポリエトキシシラン
TEOS:テトラエチルオルトシリケート
TMOS:テトラメトキシシラン
TPOS:テトラプロポキシシラン
【背景技術】
【0002】
新規でかつ優れた分離能力を有する高純度液体クロマトグラフィー(LC)用充填材料、特に高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)用充填材料の開発は多くの研究の課題であった。様々な形式の有機および無機充填材料の中で、シリカは最も注目されてきた。最近の傾向では、大表面積を有するシリカ充填材料を製造することに注目が集まってきた。シリカ充填材料の表面積が増加するとともに、その平均空孔直径はそれに伴って減少する。通常は、空孔直径が減少すると、付随して空孔率が減少する。この空孔率の減少は、そのような材料が充填されたHPLCカラムで背圧増加の一因となる可能性がある。さらに、平均空孔直径が減少すると、充填材料(たとえば18の炭素鎖(C18)、逆相HPLCで一般に使用される化学結合相)の空孔の内部に長いリガンドを結合することができなくなる事態をもたらす場合がある。さらに、非常に高い空孔率と機械的強度との間には妥協しなくてはならない点があることに注目しなくてはならない。すなわち、非常に高い空孔率によって機械的強度が低下するようになるということであり、そのため、充填材料としてこの材料を使用するのに制限が生じる可能性がある。さらに、これらの負の特性があるために、この種の材料は、一般的にLC充填材料として、また特にHPLC充填材料として使用するのにそれほど適さなくなる。
【0003】
したがって、約90オングストロームから約300オングストロームまでの範囲の平均空孔直径と、より大きい表面積(したがって空孔直径の減少がより小さい)と、狭い空孔直径分布と、より大きい空孔率(したがって機械的強度の低下がより小さい)とを備え、かつ高圧のカラム充填に耐えることができる球状シリカ粒子(たとえば平均直径が約2μmから9μm)を含むLC充填材料の開発に多くの努力が払われてきた。この目的はなかなか達成できなかった。
【0004】
本発明は、界面活性剤類が、多孔性のシリカの空孔直径を制御しかつ配列し、モノサイズ化する際に、ある役割を果たすことができるという最近の発見に関する。本所見は、HPLC充填材料として使用するに適し、大表面積、高平均空孔直径および良好な機械的強度を有するシリカビーズの作成の助けになることができる。たとえば、Brinker等による下記特許文献1、Liu等による下記特許文献2およびMacDougall等による下記特許文献3においては、界面活性剤テンプレートシリカ薄膜の製造法が開示されており、この薄膜は良好な状態で整列した六角形と立方体の空孔構造と60オングストロームまでの空孔直径とを有する。ミセルは、構造上、空孔を整列する役割を負うと思われているが、これは溶媒中で界面活性剤の濃度が特定濃度を超えると生成される。この濃度は臨界ミセル濃度(CMC)と呼ばれる。界面活性剤の型および濃度は、ミセルのサイズを制御することによって、空孔直径、幾何学および壁構造等のシリカ空孔の特性に影響を及ぼす場合がある(Calabro等による下記特許文献4を参照)。
【0005】
ある発明者等は、界面活性剤の存在および性質が、シリカを含む材料中の空孔生成に影響を及ぼすことがあり得るという所見を利用することを試みた。たとえば、Gallis等はHPLC充填材料としてメソポーラス界面活性剤テンプレート球状シリカビーズを使用した(下記特許文献5を参照)。Gallis等のシリカは、非常な大表面積、比較的高い空孔率(および/または空孔容積)を有しているが、空孔直径は小さい。実際、Gallis等によって開示された最大の空孔直径は42オングストローム、表面積は937m2/g、空孔容積はほぼ0.62ml/gである。
【0006】
この種のシリカは次の欠点を少なくとも有している。すなわち、最初に、42オングストロームの空孔直径を有するシリカは、最も一般的な結合リガンドであるC18等のリガンド、および18を超える炭素を含むリガンドをも結合する長鎖にとっては望ましくない。とりわけ、C18のリガンドのこれらの型の鎖長はおよそ20オングストローム以上である。したがって、この長さのリガンドは、効率的に42オングストロームの空孔に浸透することができず、利用可能な表面積全体を覆うことができないことになる。次に、このシリカは、空孔直径が小さいので、背圧がより高くなる場合がある。さらに、球状のビーズの形態をとるこの種のシリカは、50%と80%との間に過ぎない。球形の性状が不足しているので、LCカラムの充填に対して問題になることがあり得る。
【0007】
単一モードの粒度分布を有する球状の無機酸化物系材料を調製する他の方法は、下記特許文献6にCosta等によって開示されている。Costa等の方法では、非常に小さな粒子状物質(直径約30nmのみ)が生成されている。この大きさの粒子状物質はHPLC充填物に適さない。またBulducci等は、多孔性の球状シリカキセロゲルを調製するプロセスについて記述している(下記特許文献7を参照)。Ferraris等による下記特許文献8に開示してあるように、Bulducci等は、ある幾何学的な特性を備えたエマルジョン管を使用している。直径が約10μmから約100μmまでの平均粒径を有している球状ビーズは、この方法を使用して調製することができる。しかしながら、このサイズのビーズは粒径が大きいためHPLC充填材料として有用ではない。
【特許文献1】米国特許第5,858,457号明細書
【特許文献2】米国特許第6,329,017号明細書
【特許文献3】米国特許第6,365,266号明細書
【特許文献4】米国特許第5,308,602号明細書
【特許文献5】米国特許第6,334,988号明細書
【特許文献6】米国特許第5,304,364号明細書
【特許文献7】米国特許第6,103,209号明細書
【特許文献8】米国特許第4,469,648号明細書
【非特許文献1】Buchmeiser(2001), J.Chromatog, A918,233-266
【非特許文献2】Hanai(1999)“HPLC A Practical Guide”, Royal Society of Chemistry, Cambridge, UK, pp.102-108
【非特許文献3】Coltrain等、(1992)“Ultrastructure of Advanced Materials”Uhlmann & Ulrich編, Wiley, New York, pp.69-76
【非特許文献4】Brinker & Scherer, (1990), “Sol-Gel Science”, Academic Press, p.553
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、狭い粒子および空孔直径分布を有する大表面積、高空孔率シリカ充填物を生成する方法が必要となる。このような方法があれば、LC充填物として、とりわけHPLC充填物として使用するのに非常に適しているシリカ生成物を生成できるであろうし、そのようなシリカ生成物は、たとえば、約2μmから約9μmまでの平均粒径と、約70オングストロームから約300オングストロームまでの平均空孔直径と、大表面積と、狭い空孔径分布と、高空孔率と、良好な機械的強度とを備えたシリカビーズである。また、このような材料を含むLCカラム、とりわけHPLCカラムが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の方法および合成物によって、これらおよび他の問題を解決できる。
メソポーラスシリカビーズLC充填物を生成する方法を開示する。一実施形態では、本方法は、(a)酸触媒加水分解によってシリコンを含む化合物を加水分解してシリカゾルを生成することと、(b)シリカゾルを、1種以上の界面活性剤を含む分散媒と混合してゾル小滴を生成することと、(c)約3m/s以上の線速度でゲル化媒体にゾル小滴を移送してゲル化生成物を生成することと、(d)任意の非ゲル化材料からゲル化生成物を分離して分離生成物を生成することと、(e)分離された生成物を焼成してメソポーラスシリカビーズLC充填物を生成することとを含む。
【0010】
一実施形態では、シリコンを含む化合物は、アルコキシシランを含む。この加水分解は、たとえば、有機酸、無機酸、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される酸によって触媒されることができる。他の実施形態では、分散媒は、約8つ以上の炭素原子を含むアルコールを含む。1種以上の界面活性剤は、たとえば、ポリオキシエチレンソルビタン類、およびポリオキシエチレンエーテル類、トリ−ブロック共重合体類、アルキルトリメチルアンモニウム、エチレンオキシドと重合したオクチルフェノールを含む界面活性剤類、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択することができる。他の実施形態では、移送することが、エマルジョン管およびノズルからなるグループから選択された装置を使用することを含み、移送に続いて、ゲル化媒体および移送されたゾル小滴の混合を行う。
【0011】
ゲル化媒体は、分散媒と、界面活性剤と、塩基とを含むことができ、分散媒は、約8種以上の炭素原子を含むアルコールを含むことができ、この界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン類、ポリオキシエチレンエーテル類、トリブロック共重合体類、アルキルトリメチルアンモニウム、エチレンオキシドと重合しているオクチルフェノールを含む界面活性剤、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択することができ、前記塩基は1種以上の有機塩基を含むことができる。本方法の他の実施形態中では、分離は、濾過、遠心分離およびデカンテーションからなるグループから選択される技術を使用することを含むことができる。
【0012】
本シリカゾルは、たとえば約0.7から約2.0までのpHで水と混合する等によってTEOSと混合することができ、このゾル小滴は、(a)本シリカゾルを約0.5%の界面活性剤を含む分散媒と混合することと、(b)所望の速度で媒体を撹拌することとによって生成することができる。他の実施形態では、分離することは、(a)濾過、遠心分離、およびデカンテーションからなるグループから選択される技術を使用することにより任意の非ゲル化材料からゲル化生成物を分離し、分離生成物を生成することと、(b)アルコール、水、および有機溶媒類からなるグループから選択される化合物で分離生成物を洗浄することとを含む。さらに他の実施形態では、焼成することは、(a)分離生成物を外界温度で、所望の時間、真空炉中に入れることと、(b)分離生成物を所望の温度で、所望の時間、真空乾燥することと、(c)分離生成物を外界温度で炉の中に入れることと、(d)約24時間以上かけて、温度を徐々に所望の温度に上昇させることと、(e)所望の時間、所望の温度で分離されたゲルを焼成することとを含む。
【0013】
一実施形態では、本方法は、さらに、(a)焼成に次いで、メソポーラスLC充填物へ水を添加し、所望の時間、撹拌しつつそれを沸騰させて水和生成物を生成することと、(b)濾過によって水から水和生成物を分離して分離水和生成物を生成することと、(c)その分離水和生成物を所望の時間、所望の温度で乾燥することとを含む。場合によっては、本方法は、ゲル化生成物を分離する前に、所望の温度で、所望の時間、ゲル化生成物をエージングすることをさらに含むことができる。
【0014】
LCカラムについても開示する。一実施形態では、LCカラムは、(a)耐久性のある支持体と、(b)この耐久性のある支持体に接した状態のここに開示する方法によって生成したメソポーラスシリカビーズLC充填物とを含む。他の実施形態では、前記耐久性のある支持体は、約1mmおよび約50mmの間の内径を有するチューブであり、ステンレス鋼とPEEKとからなるグループから選択される材料から生成することができる。
【0015】
さらに、本発明の方法によって生成するメソポーラスシリカビーズLC充填物について開示する。ある実施形態では、この充填物は、約450m2/gを超える比表面積および約100Åの平均空孔直径を有する。この充填物は、約60Åと約300Åとの間の孔径を有することができ、その空孔は均一孔径を有することができる。この充填物は、約1.2ml/gを超える空孔容積、および約65Å以下の空孔半値幅分布を有することができる。この充填物は、また、約2μmから約9μmの特性寸法を有することができる。他の実施形態では、充填物のÅで表した平均空孔直径値と、ml/gで表した空孔容積値と、m2/gで表した表面積値との積は約55000より大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
I.定義
長年の特許法上の慣行に従い、用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、特許請求の範囲を含む本出願で使用する場合は「1つ以上」を意味するものとする。
ここに使用する用語「約(about)」は、量、重さ、時間、容量、濃度、または百分率の、ある値またはある量に関する場合においては、そのばらつきが適切であれば、その所定量から、±20%または±10%、より好ましくは+5%、さらに好ましくは±1%、よりさらに好ましくは±0.1%のばらつきを包含するものとする。
【0017】
ここに使用する、用語「被検体(アナライト)」は任意の関心の対象となる分子を意味するものとする。本発明の文脈中ではあるが、被検体は任意の極性を含み、無極性、適度な極性、さらに高度な極性の分子が特に関心の対象となる。被検体はサンプルの中に存在していることができ、かつその構成成分を生成することもできる。たとえば候補となる治療用化合物、その代謝副産物が被検体となり得るし、またその被検体はたとえば、血漿サンプル、唾液、尿、飲料水、および汚染が懸念される水の中に存在していることができる。簡潔にいえば、被検体は任意の関心の対象となる分子を含むことができる。
【0018】
ここに使用する用語「会合している(associated)」は、化学成分等の2つ以上の実体間にある会合を意味するものとする。この会合とは、共有結合または非共有結合を介するものであり、たとえば、疎水的相互作用、水素結合、イオン相互作用、ファンデルワールス力、および双極子相互作用であることができる。この会合は、2つ以上の分子間、または液体と、固体との間、液体とゲルとの間等の物質の2種以上の異なる形態間に存在することができる。
【0019】
ここに使用する用語「耐久性のある」は、支持体について記述する場合、支持体が約10,000psiの圧力に定常的に曝されることに耐えることができることを意味するものとする。耐久性のある材料の例としては、ステンレス鋼およびポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)が挙げられる。
ここに使用する「液体クロマトグラフィー」および「LC」という用語は、区別なく使用し、すべての移動相と固定相とを使用するクロマトグラフィーの形態を意味するものとする。この用語は明確にHPLCを包含するが、これに限定されないものとする。
【0020】
ここに使用する用語「メソポーラス」は、約70Åと約500Åとの間の空孔直径を有することを意味するものとする。
ここに使用する用語「ゾル」はコロイド溶液を意味し、粒子状物質の懸濁液を含むが、これは溶液の分子の同じ特性寸法と懸濁液中の粒子の同じ特性寸法との間の中間的な特性寸法(たとえば、直径、幅、濃度、またはその他同種のもの)を有している。一実施形態では、ゾルはシリカゾルを含む。
【0021】
ここに使用する用語「界面活性剤」は任意の分子または合成物を意味し、界面活性剤が存在する液体の表面張力を低下させる効果がある。「非イオン性界面活性剤」は、正にも負にも帯電していない官能基を含む界面活性剤である。
ここに使用する用語「支持体」は、非多孔性であり、水不溶性の材料を意味するものとする。この支持体は、円柱(カラム)、細片、板、円板、棒およびその他同種のもの等の多くの構造または形状のうちの任意の1つを有することができる。支持体または支持の型式は、疎水性、親水性であることができ、または疎水性、親水性状態にされたものであることができる。またこの支持体または支持の型式は、合成または変成された天然高分子を含むことができ、例としては、以下のものが挙げられる。すなわち、PEEK、ニトロセルロース、セルロースアセテート、ポリ(塩化ビニル)、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ナイロン、ポリ(ビニルブチレート)、ポリテトラフルオロエチレン等であり、いずれも単独で、または、金属(たとえばステンレス鋼)および同種のもの等の他の材料と組み合わせて使用する(たとえば上記非特許文献1を参照のこと。)
II.本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物
本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物は多くの特性を示し、それによって一般にはLC充填物として、および特にHPLC充填物として使用するのに適するようになる。これらの特性のうちのいくつかについて議論するが、これは、例示的であり限定を意図しないものとする。
【0022】
一局面においては、本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物は大表面積を有すること特徴とする。大表面積を有するLC充填物はLC分離に影響を及ぼすことがあり、しばしばLC分離を増強することがある。したがって、LC充填物が大表面積を有していることは望ましいことである。一実施形態では、本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物は、約500m2/gを超える表面積を有する。この表面積は、他の市販の充填物(たとえば以下に示す表1および表2参照)より大きく、本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物の優れた分離特性に寄与する。
【0023】
他の局面では、本発明のメソポーラスで、高純度、かつ大表面積のLC充填物は、表面積とビーズへの長鎖部分を結合する能力とをつりわせることができる孔径を有している。上述のように、機能化に利用可能な表面積と孔径との間には兼ね合い(トレードオフ)がある。これらの特性は、全体として互いに相補的である。すなわち、孔径が増加するにつれて、機能化に利用可能な表面積は減少する。一方では、C18に基づく部分のような比較的大きな機能化リガンドは、小さな空孔に浸透することができないので、孔径が小さすぎる場合、機能化に利用可能な表面積は減少し、利用可能な表面積の減少に結びつく場合がある。他方では、空孔が大きすぎると、材料の機械的安定度が犠牲になる場合があり、また表面積が縮小する場合もある。本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物は、これらの2つの両極端間の釣り合いをとることができる。たとえば、一実施形態では、本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物は、約70オングストロームと約300オングストロームとの間の空孔直径を含み、これによってこのビーズはメソポーラスとなる。この用語は、IUPACによって定義され使用されている。この空孔直径は十分に大きく、かつビーズの機能化を促進することができ、一方で高度の機械的安定度を維持している。
【0024】
さらに、ここに開示するように、本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物を調製する方法によって、一定の孔径の空孔を有するビーズができるようになる。調製にあたり、この特徴はバッチ間再現性にはとりわけ有益であり、これによって本方法で確実に一定のビーズを繰り返し生成することができるようになる。
本発明の他の局面では、メソポーラスシリカビーズLC充填物は、約1.1ml/g超以上の空孔容積および約70オングストローム以上の平均空孔直径を有している。また、このような空孔容積および孔径によって適切な機械的安定度が保証されるのみならず、このメソポーラスシリカビーズLC充填物は、C18に基づいた部分等の任意の望ましい部分を使用して確実に機能化できる。この能力によって、本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物が使用できる用途の範囲に適応性が備わるようになる。
【0025】
また、本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物は、約65オングストローム以下の空孔半値幅分布を有している。この比較的小さな空孔半値幅分布によって、本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物のバッチ間調製において均一性および不変性が得られるようになる。ばらつきがこのように小さいため、たとえば、このあとの機能化工程が効率的で、かつ予測可能となり、空孔半値幅分布が小さいため高収率が得られる。
【0026】
粒径は、カラム内の材料の充填物および粒子の表面積に影響を及ぼす場合がある。この範囲(たとえばミクロン以下の範囲の直径を有している粒子)より小さい粒子は、充填された粒子が互いに会合しているその細密性(粒子間のチャネルが小さい)に一部起因して、LC充填物としての使用に適さなくなる。粒径が減少するほど、粒子間のチャネルは細密になる。これらの粒子間のチャネルが細密になれば、背圧が高くなり得る。さらに、高い背圧によって、サンプルの分離速度が制限され、したがって、高処理能力の分離操作には不適当になる。
【0027】
他方、直径が約9μmより大きい粒子は、粒子間のチャネルが大きく、高い背圧を起こさないが、このような粒子では高解像度分離が容易に行えない。この理由の一部は、これらの大きな粒子が充填されたカラムの中に、大きな間隙のチャネルがあるからである。間隙のチャネル寸法が増加するにつれて、カラムを介する流れは増加し、被検体分子が固定相との間で会合する機会がより低下し、そのためにピークが広がる現象を招く(たとえば、上記非特許文献2を参照のこと。)
このようなわけで、一局面においては、本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物は、約2μmから約9μmの特性寸法(たとえば直径)を有している。この寸法の範囲にある粒子によって、高い背圧を回避しつつ所望する充填物特性、および高解像度の分離が容易に実現できるので、この寸法の範囲は、LC充填物にとってとりわけ望ましい。約2μmから約9μmの間の特性寸法(たとえば直径)を有する粒子は、本発明の方法によって再現性よく生成することができる。図3を参照すると、この図は、本発明の方法を使用することにより達成可能な典型的なバッチ粒度分布を示す。ここに示すバッチの粒子のメジアン径は、約3.23μmである。
III.本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物を生成する方法
以下に、本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物を調製する局面について記述する。あるセクションでは、充填物の化学合成について記述する。他のセクションにおいては、充填物を調製するのに適切な装置について記述する。
III.A.合成方法
本発明の一局面においては、メソポーラスシリカビーズLC充填物を製造する方法を開示する。一実施形態では、本方法は、シリコンを含む化合物を酸触媒の加水分解によって加水分解してシリカゾルを生成することとを含む。テトラアルキロキシシラン類、トリアルキロキシシラン類、およびこれらの組み合わせ等のシリコンを含む様々な化合物を使用することができる。たとえば、TEOS(Si(OCH2CH34)、TMOS、TPOS、PEOS、およびこれらの組み合わせ等の化合物が使用できる。この種の化合物は、たとえばタリータウン、ペンシルバニア(アメリカ)のGelest社から市販で入手可能である。
【0028】
シリコン系化合物の酸触媒の加水分解用技術は、当該技術で知られており、本発明で使用することができる。たとえば、シリコンを含む化合物としてTEOSを使用する場合、TEOSを、酸と共に酸性pH(たとえばpH0.7から2.0)に調節した水と混合することにより、この酸触媒の加水分解を実行することができる、この酸は、p−トルエンスルホン酸(p−TSA)等である(たとえば、上記非特許文献3を参照のこと)。透明な相が現われるまで、その混合物を撹拌すると、その相はゾルを含むものになる。場合によっては、加水分解に次いで、このシリカゾルを所望の温度で、所望の時間のエージングすることができる。
【0029】
本実施形態の説明を継続するが、このシリカゾルを1種以上の界面活性剤を含む分散媒と混合して、ゾル小滴を生成することができる。たとえば、約0.5%の界面活性剤を含む分散媒とこのシリカゾルとを混合して、この混合物を所望の速度で撹拌することができる。この混合は、任意の混合装置を使用して行うことができる。電気ミキサーを使用する場合(たとえばホモミキサー)、約400RPMでミキサーを運転することができ、これによって、ゾル−分散媒組成物の構成成分を適切に混合することができ、かつ容易にゾル小滴を生成できる。
【0030】
分散媒の中で1種以上の界面活性剤を使用することができる。代表的な界面活性剤としては、ポリエチレン−ブロック−ポリ(エチレングリコール)、ポリオキシエチレンソルビタン類、ポリオキシエチレンエーテル類、トリブロック共重合体、アルキルトリメチルアンモニウム、エチレンオキシドとの重合で得られるオクチルフェノールを含む界面活性剤(たとえば、トリトン(登録商標)X-100 (JT Baker of Phillipsburg, New Jersey から入手用可能))、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定するものではない。1種以上の非イオン界面活性剤を分散媒中で使用することができ、時としてイオン性界面活性剤と会合する可能性があるアルカリ金属およびハロゲン化物による汚染の可能性を減じることができる。
【0031】
分散媒は、全体としてシリカゾル混合物と混合しないあらゆる液体を含むことができる。さらに、分散した小滴の表面上のシラノールに対して水素結合する分散媒を使用することができる。このような分散媒は立体障害を生成することができる。この立体障害は、小滴を分散して包みこむことによって生成され、本方法中に生成された粒子の凝集を防止することができる。したがって、ある例では、分散媒は、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノールおよび12を超える炭素を含むアルコール等の炭素数の大きいアルコールを含むことができる。このようなアルコールの組み合わせ、またはこのようなアルコールと有機溶媒とを含む混合物を使用することができる。
【0032】
次いで、約3m/s以上の線速度でゲル化媒体にゾル小滴を移送し、ゲル化生成物を生成する。エマルジョン管(ブリード管)またはノズルを介する等の任意の好都合な装置を使用して、ゾル小滴を移送することができる。ある例では、移送は、たとえば5mmの内径および250cmの長さの管材のエマルジョン管を使用して行うことができる。図1を参照すると、移送は、加圧したガス槽からの気体で第1の反応装置(すなわち、分散)の圧力を調節することより行うことができる。または、第1の反応装置から第2の反応装置までのゾル小滴の移送は、液体を高速で移送できるポンプを使用して行うことができる。移送はいかなる速度で行うこともできるが、約3m/秒(たとえば約4m/秒から8m/秒)を超える線速度により、好適な結果が得られる。移送に続いて、約200RPMで所望の時間、ゲル化生成物を撹拌する。このようにさらなる撹拌を加えることにより、さらにゲル化プロセスを促進することができる。したがって、移送してからゾル小滴およびゲル化媒体の混合をすることができる。
【0033】
ゲル化媒体は、通常、分散媒、界面活性剤およびゲル化媒体に混合可能な塩基を含む。代表的な分散媒についてここに記述する。ゾル小滴は、小滴が塩基に接触することによりゲル化するので、ゲル化媒体は塩基、炭素数の多いアルコール等の化学種を含む分散媒、界面活性剤または界面活性剤の混合物(たとえばポリオキシエチレンソルビタン類、ポリオキシエチレンエーテル類、トリブロック共重合体類、アルキルトリメチルアンモニウム類、エチレンオキシドと重合したオクチルフェノールを含む界面活性剤類(たとえば、トリトン(登録商標)X-100)、およびこれらの組み合わせ)を含むことが好ましい。分散媒および/またはゲル化媒体中に界面活性剤を含むことは、本発明の方法によって生成された合成メソポーラスシリカビーズLC充填物の寸法および均一性を制御する要因となりうる。通常、ゲル化媒体の中で任意の塩基の化学種を使用することができるが、適切な塩基類は通常分散媒に混合可能である。たとえば、ゲル化媒体中で、任意の有機塩基(たとえばイミダゾール)も使用することができる。
【0034】
次いで、ゲル化生成物が存在している、またはゲル化生成物が会合している(たとえば任意の揮発しないゲル化媒体)任意の非ゲル化材料からゲル化生成物を分離することができる。会合液体からゲル化生成物を分離するには、濾過、遠心分離またはデカンテーション等の様々な方法のうちのいかなる方法でも行うことができる。濾過法を使用する場合、このような濾過は重力に制御される濾過を含むことができるか、または、真空を応用して濾過を補助することもできる。濾過では、任意の適切なカートリッジ、円板または濾紙を使用することができる。
【0035】
ゲル化生成物の分離後に、水、有機溶媒、またはアルコール等の適切な洗浄溶媒で分離生成物を洗浄することができる。この洗浄ステップを行うことによって、本発明の方法によって製造された充填物の純度を維持または上昇させることができる。分離生成物の上に洗浄溶媒の所望量を通過させることにより、洗浄を行うことができる。
次いで、分離したゲルを焼成して、メソポーラスシリカビーズLC充填物を生成することができる。焼成は、乾燥と焼成との2つの基本的な段階を含むことができる。最初に乾燥段階を行い、分離したゲルを乾燥することができる。一実施形態では、真空炉の中に洗浄したゲルを入れて乾燥を行うが、所望の時間、外界温度で乾燥することができる。この分離したゲルは、場合によっては、さらに、外界温度を超える所望の温度(たとえば約170℃)で、所望の時間、乾燥することができる。高い温度から冷却したら、炉から乾燥したゲルを取り出すことができる。
【0036】
真空炉から分離したゲルを取り出した後、第2段階の焼成、すなわち分離生成物を焼成すること(すなわちベーキング)を行い、メソポーラスシリカビーズLC充填物を生成することができる。焼成のこの段階は、乾燥したゲルを炉に移送することにより行い、所望の時間(たとえば約48時間)で、約420℃から約550℃で焼成する。本方法の一実施形態では、炉に乾燥したゲルを入れた後、所望の温度に達するまで、一定の速度で温度を徐々に上げる。たとえば、この温度は、毎分約2℃上げることができ、約550℃まで上げることができる。(たとえば、上記非特許文献4参照のこと)。
【0037】
本発明の範囲内で、変更および追加を上記方法に対して行うことができ、そのような変更および追加は、本開示を考察すれば、当業者にとって明白であろう。たとえば、本焼成ステップの最終生成物(すなわちメソポーラスシリカビーズLC充填物)に、さらに処理を加えることができる。さらなる処理の一実施形態では、焼成に次いで、焼成したシリカに水を加えて、所望の時間(たとえば約24時間)、撹拌しつつ沸騰させることができる。続いて、濾過によって水からシリカを取り出し、所望の時間、所望の温度(たとえば約75℃)で乾燥することができる。
【0038】
最終生成物のサンプルは、空孔容積、平均空孔直径、表面積、粒度分布、機械的強度、元素組成および他の性質を決定して特性を明らかにすることができる。このような特性評価は、本発明の方法を大規模に行い、バッチ間品質管理が必要となる場合に行うことができる。
この方法の他の変形例では、ゲル化生成物を生成した後ではあるが、ゲル化生成物の分離に先立って、このゲル化生成物を、所望の温度で、所望の時間、任意にエージングすることができる。一エージング工程では、ゲル化生成物のエージングは、所与の時間(たとえば約24時間)、外界温度で静置してゲル化生成物を保温することにより行うことができる。
【0039】
続いて、ゲル化生成物を炉に入れて、所望の時間、外界温度を超える温度(たとえば約50℃から約90℃)で保温することができる。
エージングステップを行うことが望ましいとされる場合には、外界温度を超える温度でゲル化生成物を保温(すなわち、エージング)する温度および時間は、最終生成物の特性に影響を及ぼす場合がある。たとえば、時間および/または温度を増すことによって、最終生成物の平均空孔直径および/または空孔容積が変動および/または制御できる。
III.B.本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物の調製に適切な装置
図1に、本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物の調製で使用することができる代表的な装置を示すが、これは本発明のシリカ生成用反応装置を表している。この実施形態において、第1の反応装置が加圧されたガス源と連通している。この加圧されたガスは、第1の反応装置から第2の反応装置までのゾル小滴の移送に使用することができ、その反応装置中でゲル化およびそれに続く操作を実行することができる。この移送は、約3m/秒以上、たとえば約4m/秒から約8m/秒の線速度で行うことができる。加圧された気体をこの移送に使用することができる。任意の加圧されたガスを使用することができるが、化学的に不活性なガスを選択した場合、このガスがゾル小滴の化学組成に影響を与えないだろうという確信が持てるので、第1の反応装置を加圧するためにこのガスを使用することができる。
【0040】
第1の反応装置は、ゾル小滴の生成のために使用でき、また、ゾル小滴の生成に先立って諸ステップを行うための領域としての機能も果たすことができる。第1の反応装置の中に、撹拌モータによって駆動する撹拌機を配置することができる。この撹拌機はホモミキサー等の電気ミキサー、またはプロペラブレードを駆動するミキサーであることができる。この第1の反応装置にミキサーを設置することによって、必要であれば、この反応装置の中でゾル小滴生成以下のステップをすべて行うことができる。これによって、いかなる汚染の危険をも最小限にすることができ、最終生成物の歩止まりを高めることができる。
【0041】
図1に示す実施形態をさらに説明する。第2の反応装置が、エマルジョン管を介して第1の反応装置と連通している。この第2の反応装置は、ゲル化生成物の生成を実行することができる領域としての役目を果たすことができる。第2の反応装置はゲル化媒体を含むことができる。操作中に、エマルジョン管を介して第2の反応装置にゾル小滴を移送する。第1の反応装置を加圧する際、第1の反応装置から第2の反応装置を分離することができる。第2の反応装置を第1の反応装置へ再度連通させたら(たとえばバルブを開くことによって)、エマルジョン管を介して第2の反応装置にゾル小滴を移送することができ、その第2の反応槽はゲル化媒体を含むことができる。ゾル小滴がゲル化媒体と接触するにつれて、ゲル化プロセスが開始される。
【0042】
第2の反応装置の中に、撹拌モータによって駆動する撹拌機を配置する。同様に、この撹拌機は、プロペラブレードを備えているホモミキサーまたは電気ミキサーを含むことができ、この撹拌機は、所望の速度で作動するように適合されているものとする。このようにして、本発明の方法では、本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物を調製する場合には、第1の反応装置の中でゾルおよびゾル小滴の生成を行うことができる。第2の反応装置の中で、および第2の反応装置へのエマルジョン管を通しての移送によって、ゲル生成を開始することができる。
【0043】
図1に示す配置の反応装置以外で、実施形態の残りのステップを行うことができる。このようなステップはゲル化生成物をエージングすることを含み、これは炉の中で行うことができる。濾過はここに示すような方法で行うことができ、適切なカートリッジ、円板または濾紙を使用することができる。ある場合には、濾過された生成物が濾過カートリッジ、円板または濾紙の上にあるうちに、この濾過された生成物を任意の所望の方法で洗浄してもよい。乾燥したゲルを炉の中で焼成する(たとえば、ベーキング)ことができる。ある例では、一定の速度で炉の温度を上昇させることができる。
IV.本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物を含むLCカラム
本発明のメソポーラスシリカビーズの良好な機械的強度、良好な状態で整列しておりかつ所望の寸法を有する均一な空孔、界面活性剤テンプレートシリカの高い空孔率、および所望の粒径等の所望の特性によって、この材料がLC充填剤としてを使用に適するようになる。本発明のメソポーラスシリカビーズの粒径(2μmから9μm)によって、LCカラム(たとえばHPLCカラム)中で充填物としてこの材料を使用するのにとりわけ望ましいものとなる。
【0044】
ここに、本発明の一局面において、LCカラムを開示する。一実施形態では、ここに示す方法によって形成され、かつ耐久性のある支持体に接しているメソポーラスシリカビーズLC充填物を、LCカラムが、含んでいる。適切な支持物としては、ステンレス鋼またはPEEK等の耐久性のある材料で形成された中空管が挙げられる。この支持体は、約1mmと約50mmとの間の内径を有することができる。形成されたカラムが供される使用形態、およびカラムを使用する規模(たとえば分析的か、調製か、またはバッチサイズの規模か)に依存して適切な内径を選択することができる。LCカラムの充填方法は通常当該技術で知られている。このような理由で、本発明の方法によって生成されたメソポーラスシリカビーズでカラムを充填する方法は、本開示を考察すれば、当業者にとって明らかなものであろう。
実験例
本発明の好ましい方法を例証するために次の実験例を挙げる。以下の実験例のある局面については、本発明が良好に実施できるように、本発明者が見いだしたか、または目論んだ技術および手順の面から記述する。
【0045】
本実験例は、本発明者が標準的に実験室で実行するにあたって使用する方法で例証するものとする。本開示および一般的な当業界技術に照らして、当業者であれば、以下の実験例が例示を意図するのみであり、本発明の趣旨および範囲から外れることなく種々の改変、変形、および変更を適用することができることをよく理解するであろう。
実験例1
本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物の調製および特性評価
メソポーラスシリカビーズLC充填物を調製しかつ特性評価をした。この調製は、順次進行で行い、かつ上文に広く記述した実施手順に従った。特性評価の一局面では、調製したLC充填物の特性をいくつかの市販のシリカ充填物と比較した。特性評価の結果および議論は、LC充填物調製の記述の後にする。
1.1.メソポーラスシリカビーズLC充填物の調製
1. 720mlのTEOSを、p−トルエンスルホン酸(10g/l)によりpH1.8に調節した1000mlの高純度水(脱イオン水)と混合した。
【0046】
2. 100psiまで加圧することができる反応装置の中で、20℃の温度で30分間、ステップ1の混合物を穏やかに撹拌した(図1を参照)。
3. 次いで、4000mlのデシルアルコールおよび5mlの界面活性剤(容量で、3部のソルビタンモノオレアートおよび1部のTWEEN 80(登録商標))をともに混合した。
【0047】
4. 次いで、2250mlのデシルアルコール、90gのイミダゾールおよび25mlの界面活性剤(3部のソルビタンモノオレアート、1部のTWEEN 80(登録商標))をともに混合した。
5. 次いで、ステップ2の混合物に、ステップ3の混合物を加え、結果として得られる混合物を撹拌した。
【0048】
6. ステップ2の完了から50分経過後、ステップ2の混合物にステップ3の混合物を加え、結果として得られる混合物を10分間撹拌した。
7. 撹拌を継続しつつ、ステップ6の混合物を、5mmの内径と250cmの長さとを有する管を介してステップ4で生成した混合物へ移送し、80psi(移送の線速度は4.7m/秒)まで反応装置を加圧した。25分間撹拌を継続した。
【0049】
8. 24時間経過後、65℃の炉の中でステップ7の内容物を5時間放置した。
9. 次いで、濾過によって反応装置の液体の内容物から、生成されたゲルを分離し、結果として得られる濾液をエタノールで洗浄した。
10. 濾過したゲルを室温にて真空乾燥器の中で一晩乾燥した。
11. 165℃まで真空乾燥器の温度を上げて、その後自然徐冷した。この段階でシリカの重量は216gであった。
【0050】
12. シリカを炉に移送し、24時間かけて、徐々に550℃まで温度を上げた。この温度で70時間シリカを焼成した。
13. 焼成したシリカに、1リットルのHPLC水を加えて、24時間撹拌しつつ沸騰させた。
14. 濾過によって水からシリカを分離した。
【0051】
15. 次いで、75℃でシリカを乾燥した。
1.2メソポーラスシリカビーズLC充填物の特性評価
このバッチの表面積(比表面積)、孔径直径および細孔容積はそれぞれ、540m2/g、98オングストロームおよび1.34ml/gであった。このバッチのビーズを分級したところ、およそ以下の比率でこのビーズが生成されていたことが判った。すなわち、69%のビーズの平均直径は7μmであり、11%のビーズの直径は10μmであり、20%のビーズの平均直径は14μmであった。
1.3LC充填剤および操作
調製および特性評価の後、上述の充填物をLCカラムに充填した。充填物またはカラムに、いかなる損傷もなく、8000psiの充填圧力で高性能LCカラムに充填できることが判った。この充填物を充填したLCカラムの運転上の特性についても調査した。上述の充填物を充填したLCカラムが、低い背圧で操作できることが判った。表面積、孔径、空孔容積および空孔直径半値幅分布についても比較した。この比較には、上述の本発明のLC充填物と、大阪(日本)のダイソー株式会社から市販され入手可能なシリカ充填物、および瀬戸(日本)の野村化学株式会社から市販され入手可能なシリカ充填物の2種の市販のシリカ充填物とを使用した。表1にこの比較を示す。
【0052】
【表1】

【0053】
この比較によって、本発明の方法によって生成したLC充填物は、他の市販の充填物より大きな表面積(比表面積)を有していることを特徴とすることが判る。
さらに、本発明の方法によって生成されたLC充填物は、他の市販の充填物より大きな空孔容積を有している。
図2A、図2B、および図2Cに、それぞれダイソーのシリカ、野村化学のシリカ、および本発明の方法によって生成されたメソポーラスシリカビーズの空孔直径を示す。図によれば、ダイソーのシリカの平均空孔直径は約87オングストロームであり、野村化学のシリカでは約97オングストロームであり、本発明のシリカでは約98オングストロームであることが判る。少なくとも1種の市販の充填物(野村化学の充填物)が、同様の孔径を有するが、この充填物は、表面積(比表面積)がより小さいという他の欠点を有している。
【0054】
本発明および他の2種の市販され入手可能な充填物が、ほとんど同じ寸法の平均空孔直径を有していても、本発明の充填物の空孔容積および表面積(比表面積)は、より高い値を有しており、この点が非常な有用性を示すことができる。実際、これらの各充填物の表面積(比表面積)、平均空孔直径、および空孔容積の値を乗算すれば、その結果、本発明の充填物が最も高い数を示す。
【0055】
【表2】

【0056】
表2のd.v.s.値(孔径、空孔容積および材料の表面積(比表面積)を乗算して計算)では、調査した充填物のすべての中で本発明が最も高いd.v.s.値(70913および86271)を示している。調査した本発明の実施形態以外の充填物は、55000未満のd.v.s.値を有している。さらに、これらの市販の充填物の空孔容積は1.2ml/g未満である。
【0057】
本発明の範囲を外れることなしに、本発明の様々な詳細を変更してもよいことは理解できよう。さらに、先の記述は、限定を意図するものではなく、例示のみのためにあるものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物の調製で使用することができる反応装置システムを表わす概略図である。
【図2A】大阪(日本)のダイソー株式会社によって製造されたシリカマトリックスの空孔直径粒度分布を表すプロットである。
【図2B】瀬戸(日本)の野村化学株式会社によって製造されたシリカマトリックスの空孔直径粒度分布を表すプロットである。
【図2C】本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物の空孔直径粒度分布を表すプロットである。
【図3】本発明のメソポーラスシリカビーズLC充填物の典型的なバッチ粒度分布である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソポーラスシリカビーズLC充填物を製造する方法であって、
(a)シリコンを含む化合物を酸触媒による加水分解によって加水分解してシリカゾルを生成することと、
(b)前記シリカゾルを、1種以上の界面活性剤を含む分散媒と混合してゾル小滴を生成することと、
(c)約3m/s以上の線速度でゲル化媒体に前記ゾル小滴を移送してゲル化生成物を生成することと、
(d)非ゲル化材料から前記ゲル化生成物を分離して分離生成物を生成することと、
(e)前記分離生成物を焼成してメソポーラスシリカビーズLC充填物を生成することとを含む方法。
【請求項2】
前記シリコンを含む化合物が、アルコキシシランを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加水分解が、有機酸、無機酸およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される酸によって触媒作用を及ぼされる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記分散媒が、約8つ以上の炭素原子を含むアルコールを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1種以上の界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン類、ポリオキシエチレンエーテル類、トリブロック共重合体類、アルキルトリメチルアンモニウム類、エチレンオキシドと重合したオクチルフェノールを含む界面活性剤類、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記移送することが、エマルジョン管およびノズルからなるグループから選択される装置を使用することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記移送することの次に、前記ゲル化媒体および前記移送されたゾル小滴を混合することが続く請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ゲル化媒体が、分散媒、界面活性剤、および塩基を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記分散媒が、約8つ以上の炭素原子を含むアルコールを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン類、ポリオキシエチレンエーテル類、トリブロック共重合体類、アルキルトリメチルアンモニウム類、エチレンオキシドと重合しているオクチルフェノールを含む界面活性剤、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記塩基が、1種以上の有機塩基類を含む請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記分離することが、濾過、遠心分離およびデカンテーションからなるグループから選択される技術を使用することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記シリカゾルが、水をTEOSと、約0.7から約2.0までのpHで混合することにより生成される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ゾル小滴を、
(a)前記シリカゾルを、約0.5%の前記界面活性剤を含む前記分散媒と混合することと、
(b)所望の速度で前記分散媒を撹拌することと
により生成する請求項1の方法。
【請求項15】
前記分離することが、
(a)濾過、遠心分離、およびデカンテーションからなるグループから選択される技術を使用することよって前記非ゲル化材料から前記ゲル化生成物を分離して前記分離生成物を生成することと、
(b)アルコール、水、および有機溶媒からなるグループから選択される化合物で前記分離生成物を洗浄することと含む請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記焼成することが、
(a)外界温度で、所望の時間、真空乾燥器中に前記分離生成物を入れることと、
(b)第1の所望の温度で、所望の時間、前記分離生成物を真空乾燥することと、
(c)外界温度で炉の中に前記分離生成物を入れることと、
(d)約24時間をかけて温度を徐々に第2の所望の温度に上昇させることと、
(e)所望の時間、前記第2の所望の温度で分離されたゲルを焼成することとを含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
(a)前記焼成に続いて、前記メソポーラスLC充填物に水を加えること、およびそれを、所望の時間、撹拌しつつ沸騰させて水和生成物を生成することと、
(b)濾過によって水から前記水和生成物を分離して、分離された前記水和生成物を生成することと、
(c)所望の時間、所望の温度で、前記分離された水和生成物を乾燥することとをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ゲル化生成物を分離する前に、所望の温度で、所望の時間、前記ゲル化生成物をエージングすることをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項19】
LCカラムであって、
(a)耐久性のある支持体と、
(a)前記耐久性のある支持体に接した状態の請求項1に記載の方法で生成されたメソポーラスシリカビーズLC充填物とを含むLCカラム。
【請求項20】
前記支持体が、約1mmと約50mmとの間の内径を有するチューブを含む請求項19に記載のLCカラム。
【請求項21】
前記耐久性のある支持体が、ステンレス鋼およびPEEKからなるグループから選択された材料から生成されている請求項19に記載のLCカラム。
【請求項22】
請求項1に記載の方法によって製造されたメソポーラスシリカビーズLC充填物。
【請求項23】
前記充填物が、約450m2/gより大きい比表面積および約100Åの平均空孔直径を有する請求項22に記載のメソポーラスシリカビーズLC充填物。
【請求項24】
前記メソポーラスシリカビーズLC充填物が、約60Åと約300Åとの間の平均孔径を有している請求項22に記載のメソポーラスシリカビーズLC充填物。
【請求項25】
前記空孔が、均一な孔径を有している請求項22に記載のメソポーラスシリカビーズLC充填物。
【請求項26】
前記メソポーラスシリカビーズLC充填物が、約1.2ml/g以上の空孔容積を有している請求項22に記載のメソポーラスシリカビーズLC充填物。
【請求項27】
前記メソポーラスシリカビーズLC充填物が、約2μmから約9μmの特性寸法を有している請求項22に記載のメソポーラスシリカビーズLC充填物。
【請求項28】
前記充填物のÅで表された平均空孔直径の値と、ml/gで表された空孔容積の値と、m2/gで表された表面積の値との積が約55000より大きい請求項22に記載のメソポーラスシリカビーズLC充填物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−505402(P2006−505402A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551681(P2004−551681)
【出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/034972
【国際公開番号】WO2004/043861
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(599060928)バリアン・インコーポレイテッド (81)
【Fターム(参考)】