説明

猫における甲状腺機能亢進症を予防する方法及び限定されたヨウ素を含む組成物

【課題】甲状腺機能亢進症を有する猫における正常な甲状腺機能を回復させる方法の提供。
【解決手段】食物組成物、及び甲状腺機能亢進症を有する猫においてより正常に近い状態に正常な甲状腺機能を回復させるために、猫におけるヨウ素摂取の量を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は一般に、甲状腺機能亢進症を有する成猫の管理に関し、より詳細には、甲状腺機能亢進症を有する猫における正常な甲状腺機能を回復させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
甲状腺機能亢進症を有する猫を治療するために現在利用可能な治療の選択肢は、抗甲状腺薬の慢性投与、甲状腺の片方または両方の外科的除去、及び腺組織を破壊するための放射性ヨウ素の使用である。しかしながら、こうした介入の各々は制限及び副作用を有する。従って、動物の生活の質と量を改良する、甲状腺機能亢進症を有する猫を管理する方法に対するまだ満たされていない必要が存在する。
【発明の概要】
【0003】
従って、本願発明者らは、本明細書において、甲状腺機能亢進症を有する猫におけるヨウ素摂取を制限することは、甲状腺機能を改良し、それによって甲状腺機能をより正常に近い状態に回復させることを発見することに成功した。
【0004】
従って、様々な具体例においては、本発明は、甲状腺機能亢進症を有する猫における甲状腺機能をより正常に近い状態に回復させる方法を含むことができる。本方法は、猫におけるヨウ素摂取の量を制限することを含むことができる。食餌におけるヨウ素制限は、乾物ベースで、最大量約1mg/kgの食餌以下、最大量約0.6mg/kgの食餌以下、最大量約0.4mg/kgの食餌以下または最大量約0.35mg/kgの食餌以下とすることができる。ヨウ素の最小量は、猫における健康を維持する量、特に、約0.005mg/kg以上の量または約0.01mg/kg以上の量とすることができる。
【0005】
様々な具体例においては、本発明はまた、低減された量のヨウ素を含む包装済みの猫用の食餌の組成物を含むことができる。食餌におけるヨウ素制限は、乾物ベースで、最大量約1mg/kgの食餌以下、最大量約0.6mg/kgの食餌以下、最大量約0.4mg/kgの食餌以下または最大量約0.35mg/kgの食餌以下とすることができる。ヨウ素の最小量は、猫における健康を維持する量、特に、約0.005mg/kg以上の量または約0.01mg/kg以上の量とすることができる。
【0006】
様々な具体例においては、本方法及び食餌組成物は、乾物ベースで、約10%〜約50%のタンパク質、約15%〜約45%のタンパク質、約20%〜約40%のタンパク質または約25%〜約35%のタンパク質を含むことができる。タンパク質は、約0.6mg/kgの粗タンパク質以下、約0.4mg/kgの粗タンパク質以下または約0.2mg/kgの粗タンパク質以下の濃度でヨウ素を含むことができる。タンパク質は、植物性タンパク質、例えば、じゃがいも濃縮物(potato concentrate)、大豆濃縮物、大豆タンパク質単離物(isolate)、大豆かす、コーングルテンミールまたはこれらの組合せを含むことができる。他にまたは加えて、タンパク質は、動物性タンパク質、例えば、肉タンパク質単離物、豚の肺、鶏肉、豚の肝臓、家禽ミール、卵またはこれらの組合せを含む。
【0007】
本方法及び組成物は、様々な具体例においては、約10〜約20%の脂肪及び約5%〜約55%の炭水化物をさらに含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、従って、制限された量のヨウ素を含む食餌、及び甲状腺機能をより正常に近い状態に回復させるために、甲状腺機能亢進症を有する猫にこのような食餌を供給する方法を含む。
【0009】
猫における甲状腺機能亢進症を、当分野において周知の方法及び疾患特性に従って重症度に関して診断し、評価することができる。(例えば、Peterson et al., in The cat: diseases and clinical management, R. G. Sherding, Ed., New York, Churchill Livingstone, 2nd Edition, pp. 1416-1452, 1994; Gerber et al. Vet Clin North Am Small Anim Pract 24 : 541-65, 1994を参照されたい。)。
【0010】
本明細書において使用する“ヨウ素”という用語は、その分子形態に関わらずヨウ素原子を指す。従って、ヨウ素という用語は、制限すること無くヨウ素原子を含み、これは、1つ以上の化学的形態、例えばヨウ化物、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、エリスロシン、及びその他同様なものの中に存在してよい。
【0011】
本明細書において使用する“T4”という略号は、ヨウ素含有アミノ酸であるチロキシン、3,5,3’,5’−テトラヨードチロニンを指す。“遊離T4”という用語は、甲状腺結合グロブリン、アルブミン、プレアルブミン、及びその他同様なもののようなキャリアタンパク質に結合していないT4を指す。
【0012】
本明細書において使用する“T3”という略号は、ヨウ素含有アミノ酸である3,5,3’−トリヨードチロニンを指す。“遊離T3”という用語は、甲状腺結合グロブリン、アルブミン、プレアルブミン、及びその他同様なもののようなキャリアタンパク質に結合していないT3を指す。
【0013】
本明細書において使用する“GSH”という略号は、トリペプチドであるグルタチオンを指す。
本明細書において使用する“GPX”という略号は、セレン依存性酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼを指す。
【0014】
フード及び飼料中のヨウ素または他の無機元素の濃度を他にモルベース(マイクロモル/キログラム)でまたは重量ベース(ミリグラム/キログラム、百万分率、“PPM”と同一)で表すことができる。ヨウ素は分子量126.9を有する。従ってモル濃度で2.76マイクロモルのヨウ素/キログラムは、重量濃度で0.35PPMに等しい。セレンは分子量78.96を有する。従ってモル濃度で1.25マイクロモルのセレン/キログラムは重量濃度で0.1mg/kgに等しい。
【0015】
本発明の様々な具体例においては、ヨウ素は、乾物ベースで、食餌組成物中に最大濃度約1mg/kgの食餌以下、最大濃度約0.8mg/kgの食餌以下、最大濃度約0.6mg/kgの食餌以下、最大濃度約0.4mg/kgの食餌以下、最大濃度約0.35mg/kgの食餌以下、最大濃度約0.3mg/kgの食餌以下、最大濃度約0.25mg/kgの食餌以下、または乾物ベースで最大濃度約0.2mg/kgの食餌以下で存在することができる。ヨウ素の最小濃度は、猫における健康を維持するのに十分な量、特に、乾物ベースで、約0.005mg/kg以上の量または約0.01mg/kg以上の量とすることができる。
【0016】
フード、飼料、飲料、または栄養補助剤からの栄養素の動物における摂取量を、フード、飼料、飲料、または栄養補助剤中の栄養元素の濃度と前記動物によって摂取された前記フード、飼料、飲料、または栄養補助剤の量の積として表すことができる。
【0017】
栄養素をキャットフードの形態で猫に提供できる。様々な一般に周知のキャットフード製品が猫の所有者にとって入手可能である。キャット及びドッグフードの選択としては、例として、ウエットキャットフード、セミモイストキャットフード、ドライキャットフード及び猫用トリートが挙げられる。ウエットキャットフードは一般に、約65%を超える含水率を有する。セミモイストキャットフードは典型的に、約20%〜約65%の含水率を有し、湿潤剤、ソルビン酸カリウム、及び微生物増殖(細菌及びかび)を予防するための他の成分を含んでよい。ドライキャットフード(キブル)は一般に、約10%未満の含水率を有し、その加工は典型的に、押出し、乾燥及び/または熱中でのベーキングを含む。猫用トリートは典型的に、セミモイスト、咀嚼可能なトリート;任意の数の形態のドライトリート;咀嚼可能な骨、またはベークし、押出し若しくは打抜きしたトリート;糖菓トリート;或いは当業者には周知の他の種類のトリートとしてよい。
【0018】
栄養素をまた加工済みキャットフード以外の形態で猫に提供してよい。従って、例えば、Kyle et al.は、ビタミン−ミネラル混合物を缶入りキャットフードに加えた(Kyle et al., New Zealand Veterinary Journal 42:101-103, 1994)。飲料水または他の流体を同様に使用して、栄養素を猫に提供してよい。
【0019】
市販の缶入りキャットフード製品は、表1及び2に示すように様々な量のヨウ素及びセレンを含む。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
【表4】

【0024】
【表5】

【0025】
市販のキャットフードは一般に、以下のクラスからの成分を含む:動物及び/または植物源から得られるタンパク質;個々のアミノ酸;脂肪;炭水化物源、ビタミン;ミネラル;及び追加の機能性成分の例えば保存剤、乳化剤、及びその他同様なもの。
【0026】
キャットフードにおいて使用するためのタンパク質源は、乾物ベースで、45%〜100%の粗タンパク質を含むことができる。キャットフードの工業的生産において一般に使用される21のタンパク質成分を、セレン及びヨウ素の含量に関して分析した。結果を、下記の表3に示すように、mg/kgの乾物(DM)として及びmg/kgの粗タンパク質(CP)としても表す。
【0027】
【表6】

【0028】
【表7】

【0029】
表に示すように、じゃがいも濃縮物及び大豆単離物は、低いセレン及び低いヨウ素濃度を含む。
本発明のキャットフード組成物中のタンパク質含量は、乾物ベースで、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%〜最高約40%まで、最高約45%まで、最高約50%まで、最高約55%まで、最高約60%まで、最高約70%まで、最高約80%まで、最高約90%までまたはこれを超える量とすることができる。
【0030】
ヨウ素は、タンパク質成分中に、濃度約1.0mg/kgの粗タンパク質以下、濃度約0.8mg/kgの粗タンパク質以下、濃度約0.6mg/kgの粗タンパク質以下、濃度約0.4mg/kgの粗タンパク質以下、濃度約0.2mg/kgの粗タンパク質以下、濃度約0.1mg/kgの粗タンパク質以下、濃度約0.05mg/kgの粗タンパク質以下または濃度約0.02mg/kg以下で存在することができる。
【0031】
タンパク質を、動物源の例えば肉若しくは肉副産物から、または植物源の例えば植物性タンパク質源から提供することができる。動物性タンパク質源は、肉タンパク質単離物、豚の肺、鶏肉、豚の肝臓、家禽ミール、卵及びこれらの組合せを含むことができる。植物性タンパク質源は、じゃがいも濃縮物、大豆濃縮物、大豆タンパク質単離物、大豆かす、コーングルテンミール及びこれらの組合せを含むことができる。
【0032】
炭水化物を穀物成分から供給することができる。このような穀物成分は、植物材料、典型的にデンプン質材料を含むことができ、これは主に、食物可消化炭水化物及び非可消化炭水化物(繊維)及び乾物ベースで約15%未満のタンパク質を供給することができる。例としては、限定するものではなく、酒米、イエローコーン、コーンフラワー、大豆ミルラン(soybean mill run)、米ぬか、セルロース、ガム、及びその他同様なものが挙げられる。典型的に、炭水化物は、乾物ベースで、本発明の組成物中に、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%〜最高約35%まで、最高約40%まで、最高約45%まで、最高約50%まで、最高約55%まで、最高約60%まで、最高約70%まで、最高約80%まで、最高約90%までまたはこれを超える量で存在することができる。
【0033】
キャットフードにおいて使用される脂肪としては、限定するものではなく、動物油脂の例えば選択で白色グリース(white grease)、鶏脂、及びその他同様なもの;植物油脂;並びに魚油が挙げられる。脂肪は、乾物ベースで、本発明のキャットフード組成物中に、約5%、約10%、約15%〜最高約20%まで、最高約25%まで、最高約30%まで、最高約35%まで、最高約40までまたはこれを超える濃度で存在することができる。
【0034】
特定のパーセントのタンパク質、炭水化物及び脂肪を実現するためにキャットフード組成物中に使用するための成分のパーセントを、当分野において周知の方法によって決定できる。例えば、線形計画法を使用する周知のコンピュータプログラムを用いて、特定の特性を有するペットフード食を設計することができる。このようなプログラムの例は、アグリ−データ・システムズ、Inc.、フェニックス、AZ(Agri-Data Systems, Inc., Phoenix, AZ)によって提供されるVLCFX(“ビジュアルリーストコストフォーミュレーション−拡張版”)プロダクトフォーミュレーションアンドマネージメントシステム(VLCFX ("Visual Least Cost Formulation-eXtended") Product Formulation and Management System)である。
【0035】
タンパク質成分を補うことが必要な場合、個々のアミノ酸をキャットフード中に成分として含めることもできる。キャットフードに加えることができるこのようなアミノ酸は、当分野において周知である。
【0036】
ビタミン及びミネラルを本発明のキャットフード組成物中に含めることができる。ビタミンの源は、複雑な天然源の例えば醸造酵母、エンジビタ酵母(engivita yeast)、及びその他同様なもの、並びに合成及び精製源の例えば塩化コリン及びその他同様なものを含むことができる。本発明のキャットフード組成物中のミネラルは、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、必要に応じて所望のヨウ素含量を実現するためのヨウ素添加及び非ヨウ素添加塩、並びに当分野において周知の他の従来の形態の無機栄養素(例えば、National Research Council, Nutrient Requirement of Cats, Washington, DC, National Academy of Sciences, page 27, Table 5 footnotes, 1978を参照されたい。)を含むことができる。
【0037】
以下の実施例は本発明のさらなる例示であるが、本発明はこれに限定されないことは理解されよう。
【実施例】
【0038】
実施例1
この実施例は、甲状腺機能亢進症の猫に低ヨウ素及び低セレン食を供給した影響を示す。
【0039】
食餌30643と呼ぶ低ヨウ素、低セレンのドライキャットフードを、以下の組成及び特性を有するように製造した:粗タンパク質、30〜34%;脂肪、10〜20%;炭水化物、35〜55%;セレン、乾物ベースで0.2mg/kg;ヨウ素、乾物ベースで0.2mg/kgであり、穀物成分は50〜55%を占め;植物性タンパク質(大豆濃縮物)は30〜35%を占め;動物脂肪は8〜10%を占め;他の成分は5〜6%を占める。
【0040】
平均13.5才で甲状腺機能亢進症を有する10匹の老齢期の猫を、年齢及び血清全T4レベルに基づいて2群に割り振った。1群に、1kgの乾物当り2.5mgのヨウ素及び0.6mgのセレンを含む対照ドライキャットフードを供給した。他の群に、1kgの乾物当り0.2mgのヨウ素及び0.2mgのセレンを含む食餌30643を供給した。食餌を8週間供給した。フード摂取量を毎日測定し、体重を毎週測定した。
【0041】
2週間毎に、一晩フードを取り除いた後に血液を無菌的に引き抜いた。全血球計算のための血液及び甲状腺ホルモン分析のための血清を直ちに分析した。他の測定のための血液は5000gで遠心分離し、血清を集め、凍結し、血清の化学並びにヨウ素及びセレン濃度に関して分析するまで−70℃で貯蔵した。
【0042】
血清全T3及びT4濃度を、猫において使用するためのラジオイムノアッセイによって測定した。血清遊離T4濃度を、結合形態を遊離形態から分離するための平衡透析の使用によって決定した。ラジオイムノアッセイを使用して、透析液中の遊離形態の濃度を測定した。
【0043】
猫血清中の遊離T3を推定するためのアッセイは、血清中の天然の結合タンパク質に有意に結合しない125I−トリヨードチロニン(T3)誘導体を使用した。加えて、誘導体及びT3の両方に結合する高親和性抗体を使用した。こうした2つのT3化合物は、結合タンパク質及び結合したT3から妨害されること無く古典的平衡ラジオイムノアッセイが実行されることを可能にする。アッセイ抗体は、結合したアッセイフラクションを遊離フラクションから簡易に固相分離するための12×75mmポリプロピレン管の壁に結合した。アッセイの残りは、標準的なラジオイムノアッセイ技術だった。
【0044】
エピサーマル機器中性子放射化分析(Spate et al., J Radioanalytical Nuclear Chem
195: 21-30, 1995)によって血清及び食物ヨウ素を測定した。
この供給の試みの結果は、表4に示す通りだった。
【0045】
【表8】

【0046】
【表9】

【0047】
食餌30643を供給された猫は、正常なレベルへの血清全T3及びT4の有意な低減を示したが、対照食を供給された猫においてこうした甲状腺ホルモンの濃度は変化しなかった。遊離T3及びT4は、食餌30643を供給された猫において同様の統計的に有意な低減を示した。血清セレン及びヨウ素レベルは、低食餌30643を供給された猫において減少したが、対照食を供給された猫において変化しなかった。セレン栄養状態の指標である血清グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)は、食餌30643を供給された猫において変化しなかったが、対照食を供給された猫において増大した。セレン含有酵素であるGPXは、重要な抗酸化剤機能を有し、従って、GPXの活性の減少は望ましくない。猫の成長のための食事のセレン要件は、0.15mg/kgの乾物であることが示されている(Wedekind et al., J Anim Physiol Anim Nutr (Berl) 87: 315-23, 2003)。従って、食餌30643は明らかに、GPX活性を維持するのに十分なセレンを提供する。尿ヨウ素濃度は、猫が両方の食餌を消費した場合、有意に減少した。
【0048】
他の観察は、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(39%)、血清アルカリ性ホスファターゼ(33%)、及び血清リン(13%)の有意な減少であり、この全てが、食餌30643を受けた猫における甲状腺機能の正常化と一致する。
実施例2
この実施例は、上記に説明した市販のドライキャットフードの場合の平均分析値に近い量のヨウ素及びセレンを有する対照食(高Se&I)と比較して、低セレン(低Se)の食餌または低ヨウ素(低I)の食餌を甲状腺機能亢進症の猫に供給した影響の要因研究(factorial study)を示す。
【0049】
甲状腺機能亢進症を有する15匹の老齢期の猫を3群に割り振り、表5に示すように、ヨウ素及びセレンの含量以外は同一の組成のドライキャットフードを含む3つの食餌のうちの1つを9週間供給した。
【0050】
【表10】

【0051】
食餌は大豆タンパク質単離物濃縮物の混合物を含み、158mg/kgの乾物ベースのイソフラボンを含んだ。フード摂取量を毎日測定し、体重を毎週測定した。
一晩フードを取り除いた後に血液を無菌的に引き抜いた。全血球計算のための血液及び甲状腺ホルモン分析のための血清を直ちに分析した。他の測定のための血液は5000gで遠心分離し、血清を集め、凍結し、血清の化学並びにヨウ素及びセレン濃度に関して分析するまで−70℃で貯蔵した。
【0052】
University of Missouriの反応器施設で、窒化ホウ素照射カプセルを使用し、Spate et al. Spate VL, Morris JS, Chickos S, Baskett CK, Mason MM, Cheng TP, Reams CL, West C, Furnee C, Willett W, Horn-Ross P. Determination of iodine in human nails via epithermal neutron activation analysis. J Radioanalytical Nuclear Chem 1995; 195: 21-30によって説明されているように、エピサーマル機器中性子放射化分析(EINAA)によって血清及び食物ヨウ素を測定した。
【0053】
この供給の試みの結果は、表6に示す通りだった。
【0054】
【表11】

【0055】
甲状腺機能亢進症を有する猫に低ヨウ素食を9週間供給することは、循環する甲状腺ホルモンレベルを正常化した。代表的なヨウ素含量を有する低セレン食を供給し、代表的なヨウ素含量を有する高セレン食を供給することは、甲状腺機能亢進症の猫における循環する甲状腺ホルモンレベルに有益な影響を及ぼさなかった。こうした結果は、食餌のセレン含量は、実施例3及び4において観察される甲状腺機能亢進症において甲状腺機能の正常化にほとんどまたは全く影響を及ぼさなかったが、ヨウ素摂取を制限することは、甲状腺ホルモン状態にかなりの正常化の影響を及ぼしたことを示す。
実施例3
この実施例は、甲状腺機能亢進症を有する猫においてヨウ素制限フードを供給した影響の実地試験を示す。
【0056】
2つの猫用試験食を配合して、0.35mg/kgの乾物の濃度でヨウ素を提供した。1つの試験食、食餌46836、を、ドライキャットフードの形態で製造した。他の試験食、食餌50742、を、缶入りキャットフードの形態で製造した。ドライキャットフード及び缶入りキャットフードの両方は大豆かすを含んだ。各製造されたキャットフードの10の複製を、ヨウ素に関して分析した。ドライキャットフードのヨウ素含量は、0.27〜0.60mg/kgの乾物ベース(平均=0.38mg/kg)の範囲にわたった。缶入りキャットフードのヨウ素含量は、0.14〜0.27mg/kgの乾物ベース(平均=0.21mg/kg)の範囲にわたった。
【0057】
多中心予想研究(multi-center prospective study)を行って、甲状腺機能亢進症を有する猫におけるこうした猫用試験食の影響を評価した。尺度は、0、2、4、及び6週目に測定した甲状腺ホルモンプロフィル及び血清の化学を含んだ。登録基準は、上昇した全T4及び/または遊離T4に基づいた。大部分の場合、猫はまた、甲状腺機能亢進症に関連した次の1つ以上の臨床的徴候を示した:体重減少、心雑音/頻脈、もつれた毛皮、甲状腺拡大、増大した食欲、嘔吐、増大した活動、下痢、多尿/煩渇多飲症、攻撃性、及び浅速呼吸。
【0058】
甲状腺機能亢進症の猫に缶入りキャットフード及びドライキャットフードの50:50混合物を供給した。6週間で、この試験食は、血清全T4レベルをほぼ正常な範囲へと有意に低減した。結果を表7に示す。
【0059】
【表12】

【0060】
こうした猫に供給された食餌のヨウ素含量は、実施例1及び2(表4及び6)において説明したより初期の試みにおいて供給された食餌のものよりも高く、より可変であるという事実にもかかわらず、平均血清全T4レベルは、この試みにおいて実質的に減少した。ドライキャットフードのヨウ素含量は、0.27〜0.60mg/kgの乾物ベース(平均=0.38mg/kg)の範囲にわたった。缶入りキャットフードのヨウ素含量は、0.14〜0.27mg/kgの乾物ベース(平均=0.21mg/kg)の範囲にわたった。こうした猫の食餌を構成した2つのキャットフードの50:50混合物は、直接に分析しなかった。しかしながら、個々の構成要素であるキャットフードのヨウ素含量の範囲に基づいて、供給された時の食餌のヨウ素含量は、恐らく約0.25mg/kgの乾物ベース〜約0.4mg/kgの乾物ベースの範囲にわたった。
実施例4
この実施例は、本発明の方法において有用なドライキャットフードの組成を示す。
【0061】
特に犬及び猫用のペットフードの通常の製造方法は、一般に周知である。ドライの食餌の場合、食餌成分をプレコンディショナ中で合わせ、次に押出機に供給することができ、ここでこれを混合し、加熱し(加熱調理し)、膨張させる。押出物を押出機から出し、標準的なナイフブレードを使用して適切なサイズの粒子に切断する。キブルは次に乾燥機を通って移動して、所望の水分を実現する。キブルを次に冷却でき、香味料及び他の栄養素を加えることができる。典型的な食餌成分は、タンパク質成分、穀物成分、様々なアジュバントの例えばビタミン、ミネラル、アミノ酸及びその他同様なもの、並びに水分及びその他同様なものを含む。他の食餌成分を、押出し粒子に施用してよい。
【0062】
ウエット食を様々な仕方で製造できる。肉、穀物及び他の成分をクッカ中で混合し、次に缶中に堆積できる。缶を次に密封し、無菌にするために滅菌装置を通して送ることができる。
【0063】
本発明の様々な具体例においては、ドライキャットフードは、セレン及びヨウ素含量に基づいて選択した植物または動物起源の1つ以上のタンパク質成分を含む。有用な植物性タンパク質成分は、じゃがいも濃縮物、大豆濃縮物、大豆タンパク質単離物、大豆かす、及びコーングルテンミールを含む。動物起源の有用なタンパク質成分は、肉タンパク質単離物、豚の肺、鶏肉、豚の肝臓、家禽ミール、及び卵を含む。タンパク質成分は、好ましくは全混合物の20%〜50%の量で存在し、最終製品中の所望のタンパク質含量の大部分を提供しよう。
【0064】
穀物成分は、主要なデンプン質成分を含み、これはより一般的な穀物のいずれとしてもよく、例えばコーン及び米、並びにそれらの誘導体であり、例えば、コーンミール及びコーンフラワー、並びに食物繊維の源、例えば大豆ミルラン、セルロース、及びその他同様なものを含む。一般に、穀物成分は、全質量の30〜65%の量で存在しよう。
【0065】
タンパク質成分、穀物成分、ビタミン、ミネラル及びアミノ酸を合わせ、一緒に混合する。この混合物を、約212°Fを超えて加熱し、押出機中で超大気圧にさらし、押出ダイを通して雰囲気中に押出すことによって加工する。材料がダイから出ると、ダイにわたる圧力低下及び蒸気としての水のフラッシングが理由となって、これは膨張して、多孔質の膨張した製品になる。押出物を次に切断して一口サイズのキブルにし、乾燥して、約10重量%未満の含水率にし、所望により脂肪でコーティングし、所望により1つ以上のおいしさ増強剤及び当業者には周知の他の機能性成分を散布し、包装する。
【0066】
得られたドライキャットフードは、分析によって以下の組成を有してよい:水分、6.5〜7.0%;粗タンパク質、乾物ベースで33.6〜35.4%;ヨウ素、乾物ベースで0.15〜0.34mg/kg。
【0067】
本明細書において引用する全ての参考文献を、本明細書において参考のために引用する。本明細書において引用する参考文献に関するいかなる検討も、単にその著者によってなされた主張を要約することを意図しており、いかなる参考文献またはこれらの一部分も、関連する従来技術を構成すると認めるものではない。出願人は、引用された文献の正確さ及び適切さに意義を申し立てる権利を有する。
【0068】
本発明の説明は、性質上単に模範例であり、従って、本発明の要旨から逸脱しない変形例は本発明の範囲内にあるものと意図されている。このような変形例は、本発明の精神及び範囲からの逸脱とみなすべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲状腺機能亢進症を有する猫における甲状腺機能をより正常に近い状態に回復させる方法であって、前記猫におけるヨウ素摂取の量を、乾物ベースで約1mg/(kgの食餌)未満に制限することを含む方法。
【請求項2】
前記猫におけるヨウ素摂取の量を、乾物ベースで約0.35mg/(kgの食餌)未満に制限することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記猫におけるヨウ素摂取の量を、乾物ベースで約1mg/(kgの食餌)未満及び約0.005mg/kgの食餌を超える量に制限することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記食餌は、乾物ベースで約10%〜約50%の濃度でタンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記食餌は、乾物ベースで約20%〜約40%の濃度でタンパク質を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質は、約0.6mg/(kgの粗タンパク質)以下の濃度でヨウ素を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記タンパク質は、約0.2mg/(kgの粗タンパク質)以下の濃度でヨウ素を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記食餌は、約10〜約20%の濃度で脂肪を及び約10%〜約55%の濃度で炭水化物をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記タンパク質は植物性タンパク質を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記植物性タンパク質は、じゃがいも濃縮物、大豆濃縮物、大豆タンパク質単離物、大豆かす、コーングルテンミール及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記タンパク質は動物性タンパク質を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記動物性タンパク質は、肉タンパク質単離物、豚の肺、鶏肉、豚の肝臓、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
乾物ベースで約0.6mg/(kgの食餌)以下の量でヨウ素を含む、ヨウ素が低減された包装済みの猫用の食餌の組成物。
【請求項14】
乾物ベースで約0.35mg/(kgの食餌)以下の量でヨウ素を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
乾物ベースで約0.6mg/(kgの食餌)以下及び約0.005mg/kgの食餌を超える量でヨウ素を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
約10%〜約50%のタンパク質の濃度でタンパク質を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
乾物ベースで約20%〜約40%の濃度でタンパク質を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記タンパク質は、約0.6mg/(kgの粗タンパク質)以下の濃度でヨウ素を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記タンパク質は、約0.2mg/(kgの粗タンパク質)以下の濃度でヨウ素を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物は、約10〜約20%の濃度で脂肪を及び約10%〜約55%の濃度で炭水化物をさらに含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
前記タンパク質は植物性タンパク質を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項22】
前記植物性タンパク質は、じゃがいも濃縮物、大豆濃縮物、大豆タンパク質単離物、大豆かす、コーングルテンミール及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記タンパク質は動物性タンパク質を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記動物性タンパク質は、肉タンパク質単離物、豚の肺、鶏肉、豚の肝臓、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項23に記載の組成物。

【公開番号】特開2011−6423(P2011−6423A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158917(P2010−158917)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【分割の表示】特願2006−517500(P2006−517500)の分割
【原出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(502329223)ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド (138)
【Fターム(参考)】