説明

獣害防止用電気柵

【課題】有害獣によって碍子ごと支柱が倒されることなく有害獣を容易に撃退できる獣害防止用電気柵を提供する。
【解決手段】本発明の獣害防止用電気柵は、複数本の支柱2を所定間隔を介して立設し、該支柱2側に付設された線止具12を介して支柱2間に電線3a,3bを配線し、該電線3a,3bに所定電圧の通電を行う。そして少なくとも上記線止具12の表面に電気柵1に近接する獣類の接触を誘導する導電性材料よりなる的部13を形成又は付設し、該的部13を上記電線3a,3bと接続した構成となっている。
また線止具12が電線3a,3bを支持するための絶縁体からなる碍子であって、碍子の表面に的部13を付設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面に設けられた支柱に配線される電線に衝撃電圧を送り獣類を撃退する電気柵であって、特に獣類によって碍子ごと支柱が倒されることなく獣類を容易に撃退できる獣害防止用電気柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地面に所定間隔毎に設けられた支柱に配線される電線に、電圧発生器から発生させた衝撃電圧(高電圧)を送り、電線に接触する獣類を感電によって撃退する電気柵は公知である(例えば特許文献1。)。
【特許文献1】特開2002−272355
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1で示される電気柵は、イノシシが電気柵に興味を示し、最初に触れる箇所は合成樹脂製の線材取付具3a,3bであるものの、その線材取付具3a,3bは支柱1´に電気的に絶縁して裸電線2a,2bを取付けたものであるために、イノシシが鼻や口を使って線材取付具3a,3bとともに支柱1を倒して、柵内に侵入するという問題があった。
この発明は、これらの課題を解決又は改善し、獣類によって碍子ごと支柱が倒されることなく獣類を容易に撃退できる獣害防止用電気柵を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための獣害防止用電気柵における的部は、第1に、複数本の支柱2を所定間隔を介して立設し、該支柱2側に付設された線止具12を介して支柱2間に電線3a,3bを配線し、該電線3a,3bに所定電圧の通電を行う電気柵1において、少なくとも上記線止具12の表面に電気柵1に近接する獣類の接触を誘導する導電性材料よりなる的部13を形成又は付設し、該的部13を上記電線3a,3bと接続したことを特徴としている。
【0005】
第2に、線止具12が的部13であることを特徴としている。
【0006】
第3に、線止具12が碍子であって、碍子の表面に的部13を付設したことを特徴としている。
【0007】
第4に、支柱2の獣類接近側に所定寸法突出する張出し部7を設け、該張出し部7の先端側に配線基材8を取付け、該配線基材8に線止具12を介して電線3a,3bを配線したことを特徴としている。
【0008】
第5に、配線基材8の下端部と電気柵設置地面との間に、所定高さHを有する除草作業用の空間を設けてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成される本発明によれば、線止具の表面に獣類の接触を誘導する導電性材料よりなる的部を形成又は付設したことにより、線止具に接近した獣類を容易に感電させて撃退することができる。線止具自体を的部とし又は線止具に的部を設けることにより、両者を一体的にすることができ、設置の手数やコスト低減ができる。
また支柱の獣類接近側に突設した張出し部の先端に配線基材を設け、その配線基材に電線を配線することによって支柱と電線を離して設けることができるので、支柱と獣類との接触を防止することができる。
さらに配線基材の下端部と地面との間に、所定高さの除草作業用の空間を設けることにより、支柱に邪魔されることなく電線直下に生える雑草を刈り取ることができる。また支柱の根元付近に生えた雑草による漏電を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の実施形態について図面に基づき説明する。図1は本発明の電気柵の斜視図、図2は平面図である。この電気柵1は所定間隔毎に設けられた複数本の支柱2と、その支柱2間に取付けて配線される上下の電線3a,3b等から構成される。電気柵1の近傍に設置される電圧発生器(図示しない)によって発生させるパルス状の高電圧を、獣類に対する衝撃電圧として電線3a,3bに送る構成となっている。
【0011】
これにより、獣類近接ゾーン4側(獣類近接側)から電気柵1を越えようとして、電線3a,3bに接触する獣類に対し衝撃電圧(電気的ショック)を与え、獣類を撃退させ侵入禁止ゾーン6側への侵入を防止する。なお電線は従来のものと同様に絶縁被覆を施さない裸電線とし、侵入防止を図る獣類の背丈や大きさに対応した電線数,配線間隔が選択される。
【0012】
次に電気柵1の各部の構成について説明する。支柱2は、柱部の中途部又は上部(図示しない)の所定位置に、絶縁部材からなる張出しアーム(張出し部)7が、獣類近接ゾーン4側に向けて張出し巾Lを介して突設される。
【0013】
張出しアーム7の先端部には、上下方向の配線間隔を有して電線3a,3bを支持する導電性材料からなる円柱状の配線基材8が、支柱2と略平行となるように上下方向に設けられる。配線基材8は導電性材料を用いることにより配線基材8自体を獣類の接触を誘導する的部として利用することができる。
【0014】
配線基材8は、張出しアーム7の先端部に設けた上下方向の取付筒9にスライド自在に挿入され固定ビス11で固定される。配線基材8を取付筒9にスライド自在に取付けることにより、電線3a,3bの地面からの配線高さ調節を簡単にすることができ、また長い配線基材8の交換を容易に行うことができる。
【0015】
電線3a,3bは陶器又は合成樹脂製等の絶縁素材からなる線止具12を介して配線基材8に取付けられている。その線止具12の獣類近接ゾーン4側の表面には、電線3a,3bと電気的に接続される導電性材料からなる的部13が露出形成されるか又は導電性のシートやプレート等を貼着又はビス止め等により取付けて付設されている。なお線止具12は中央に設けられた孔12aにボルト等の係止具を挿通するなどして配線基材8に取付けられる。
【0016】
上記線止具12表面は獣類の接触を誘導するように素材の色や表面の光沢,光の反射構造,夜光性又は蓄光性材料等によって工夫された的部13を兼ねており、そのサイズは従来の碍子に比して大きく設定されている。本発明者等の研究により獣類(特に猪)は電気柵1に接近した時、支柱2,配線基材8等の目立ち易いものを標的として進んで押し倒す性質を持っていることが明らかになっている。
【0017】
従って上記線止具12を介して配線基材8に電線3a,3bを配線することにより、獣類(猪)が口や鼻等の肌が露出した部分で線止具12を最初に触ることにより、獣類(猪)を感電させて、撃退する構成となっている。
【0018】
支柱2は下部に鍔状の差込規制部2aが設けられ、打ち込み等の手段によって地面に差し込む深さを規制することができ、該差込規制部2aの底面に突起や凹凸を設けて支柱2の回転を防止する機構にすることもできる。
【0019】
上記張出しアーム7で支持される各配線基材8は、図1で示されるように張出し巾L及び地面上に空間高さHを隔てて設けられるので、支柱2から獣類近接ゾーン4側で配線基材8の下方に広い空間を形成することができる。
【0020】
この空間は地面に生える雑草を刈り取る刈取りスペース4aになり、配線基材8の下方及び支柱2の回りに繁茂する雑草等を刈り払い機で刈り取るとき、刈刃を支柱2に接触させることなく電線3a,3bの直下に生える雑草を綺麗に刈り取ることができる。
【0021】
また空間部を介して獣類近接ゾーン4側に電線3a,3bが配線されているので、支柱2の根元周りに刈り残された雑草が伸びたとしても、電線3a,3bとの接触が防止され雑草による漏電の心配も解消することができる。また支柱2は電線3a,3bより張出しアーム7を隔てて侵入禁止ゾーン6側に位置しているので、猪等の獣類が支柱2を直接的に押し倒すこともない。
【0022】
また的部を兼ねた線止具12の他に、導電性材料によって所定のサイズに形成された的部13を上下に配線した電線3aと電線3bの間に設けることもできる。そして的部13も電線3a,3bとを上下方向に通電可能に接続され、電気柵1に接近する獣類の接触を誘導する的となっている。
【0023】
的部13は形状やサイズを棒状,板状,シート状,メッシュ状,格子状等で任意に形成される。そして、支柱2と支柱2の間における電線3a,3bの中途部や、支柱2或いは配線基材8の電線3a,3bに取付けることができる。
【0024】
電気柵1は従来のものと同様に、地面に立設する支柱間隔を約200〜300cmとし、配線される電線3aと電線3bの上下間隔は45cm〜50cm程度で、且つ下段の電線3bの高さは約25cmにしている。電線3a,3bを配線する配線基材8は支柱2から張出し巾Lと空間高さHを有して支持される。
【0025】
この電気柵1によれば獣類近接ゾーン4側から接近する獣類(猪)が、支柱2に設けられた線止具12(的部13)に関心を示して誘導され、鼻或いは口を確実に接触させる。これにより露出した肌を線止具12(的部13)に直接的に接触させた猪には、パルス状の衝撃電圧が電線3a,3bから線止具12(的部13)を介して体内を通って足から地面に流れ、且つ地面からアース部を介して電圧発生器のマイナス側に流れる。
【0026】
よって獣類(猪)は体毛を介しないで肌から直接的に衝撃電圧を受けるので、体内に強い電撃を受けて電気柵1から即座に退散することになる。また獣類(猪)が最初に目に付いた支柱2を標的として押し倒そうとしても獣類(猪)は的部を兼ねた線止具12によって撃退することができる。
【0027】
また支柱2から獣類近接ゾーン4側に張出して設けられている張出しアーム7又は配線基材8は、支柱2より弱い剛性にすることが望ましく、獣類(猪)が電線3a,3b或いは配線基材8に強く接当した場合に、支柱2の変形や傾倒を防止することができる。また変形した張出しアーム7や配線基材8は、曲げ伸ばし等の修復が簡単でメンテナンス作業も容易に行うことができる。
【0028】
電気柵1は配線基材8の下端部と電気柵設置地面との間に、所定高さHを有する除草作業用の空間を形成するので、刈り払い機等を用いた雑草の刈り取りを支柱2に邪魔されることなく能率よく簡単に行うことができる。また支柱2周りに刈り残した雑草と電線3a,3bの接触をなくし、接触による漏電を防止することができる。
【0029】
上記実施形態では配線基材8に線止具12を介して電線3a,3bを配線した例を示したが、支柱2に直接線止具12を取付けて、その線止具12を介して電線3a,3bを配線することもできる。この場合でも獣類(猪)は的部13が露出形成された線止具12に誘導されるので、線止具12に接触した獣類を感電させて追い払うことができる。ただし支柱2は絶縁性材料により形成されることが望ましい。
また絶縁性材料からなる線止具12の表面に導電性材料からなる的部13を形成又は付設した例を示したが、線止具12自体を導電性材料で形成して、その表面を的部13とすることもできる。そして線止具12が絶縁体よりなる碍子である場合は、表面の的部13は電線3a,3bと電気的に接続する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の電気柵を示す部分斜視図である。
【図2】本発明の電気柵の平面図である。
【図3】本発明の碍子の正面図である。
【図4】本発明の碍子の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 電気柵
2 支柱
3a 電線
3b 電線
7 張出しアーム(張出し部)
8 配線基材
12 線止具
13 的部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の支柱(2)を所定間隔を介して立設し、該支柱(2)側に付設された線止具(12)を介して支柱(2)間に電線(3a),(3b)を配線し、該電線(3a),(3b)に所定電圧の通電を行う電気柵(1)において、少なくとも上記線止具(12)の表面に電気柵(1)に近接する獣類の接触を誘導する導電性材料よりなる的部(13)を形成又は付設し、該的部(13)を上記電線(3a),(3b)と接続した獣害防止用電気柵。
【請求項2】
線止具(12)が的部(13)である請求項1の獣害防止用電気柵。
【請求項3】
線止具(12)が碍子であって、碍子の表面に的部(13)を付設した請求項1の獣害防止用電気柵。
【請求項4】
支柱(2)の獣類接近側に所定寸法突出する張出し部(7)を設け、該張出し部(7)の先端側に配線基材(8)を取付け、該配線基材(8)に線止具(12)を介して電線(3a),(3b)を配線した請求項1又は2又は3の獣害防止用電気柵。
【請求項5】
配線基材(8)の下端部と電気柵設置地面との間に、所定高さ(H)を有する除草作業用の空間を設けてなる請求項4の獣害防止用電気柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−79521(P2008−79521A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261223(P2006−261223)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、農林水産省、農林水産研究高度化事業委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(591282205)島根県 (122)
【Fターム(参考)】