説明

獣害防止装置およびプログラム

【課題】被守備物に対する視認性の低下や不快感を招くことなく、獣害を防止することのできる獣害防止装置およびプログラムを得る。
【解決手段】獣害防止装置により、被守備物80が設置された監視対象領域94を撮影することにより当該監視対象領域94の画像情報を取得するカメラ30によって取得された画像情報に基づいて、監視対象領域94に存在する人および人を除く動物の位置を検知し、検知した人および動物の位置、並びに被守備物80の設置位置に基づいて、被守備物80に対する上記動物による獣害リスクの高さを示す獣害リスク値を演算し、演算した獣害リスク値を用いて、獣害を防止するものとして予め定められた処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、獣害防止装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アライグマや野鳥等の野生動物が家屋・物品等に危害を加えることが社会問題になっている。
【0003】
この問題を解決するために適用できる技術として、特許文献1には、複数本の支柱を所定間隔を介して立設し、該支柱側に付設された線止具を介して支柱間に電線を配線し、該電線に所定電圧の通電を行う電気柵において、少なくとも上記線止具の表面に電気柵に近接する獣類の接触を誘導する導電性材料よりなる的部を形成または付設し、該的部を上記電線と接続した獣害防止用電気柵が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、鳥獣から保護する所定エリアに音源を設置し、この音源から音を発して鳥獣による害を防止する鳥獣害防止方法において、鳥獣から保護する所定エリアに、太陽電池とこの太陽電池で発電した電力を充電するバッテリを有する電源部および人間の声を発生させる音声発生部とを備える音声発生装置を設置し、この音声発生装置から人間の声を発生させて鳥獣による害を防止することを特徴とする鳥獣害防止方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−79521号公報
【特許文献2】特開2005−151858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、獣害の防止対象が神社・仏閣等に設けられた仏像、建物、門等の歴史的に価値の高いものである場合、これらのものは見学や拝観されるものである場合が多いため、その周囲に物を設けることは極力避けたい。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術では、獣害の防止対象とするもの(以下、「被守備物」という。)の周囲に電気柵を設ける必要があるため、被守備物に対する視認性が著しく低下してしまうばかりでなく、人に対する感電や火災の原因を作り、設置コストもかさむ、という問題点があった。
【0008】
また、上記特許文献2に開示されている技術では、人の声を発生させる必要があるため、被守備物が上述したような見学や拝観されるものである場合には、見学者や拝観者に対して不快感を与えてしまう、という問題点があった。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、被守備物に対する視認性の低下や不快感を招くことなく、獣害を防止することのできる獣害防止装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の獣害防止装置は、被守備物が設置された監視対象領域を撮影することにより当該監視対象領域の画像情報を取得する撮影手段と、前記撮影手段によって取得された画像情報に基づいて、前記監視対象領域に存在する人および人を除く動物の位置を検知する検知手段と、前記検知手段によって検知された前記人および前記動物の位置、並びに前記被守備物の設置位置に基づいて、前記被守備物に対する前記動物による獣害リスクの高さを示す獣害リスク値を演算する演算手段と、前記演算手段によって演算された獣害リスク値を用いて、獣害を防止するものとして予め定められた処理を実行する実行手段と、を備えている。
【0011】
請求項1記載の獣害防止装置によれば、撮影手段により、被守備物が設置された監視対象領域を撮影することにより当該監視対象領域の画像情報が取得され、検知手段により、前記撮影手段によって取得された画像情報に基づいて、前記監視対象領域に存在する人および人を除く動物の位置が検知される。
【0012】
ここで、本発明では、演算手段により、前記検知手段によって検知された前記人および前記動物の位置、並びに前記被守備物の設置位置に基づいて、前記被守備物に対する前記動物による獣害リスクの高さを示す獣害リスク値が演算され、実行手段により、前記演算手段によって演算された獣害リスク値を用いて、獣害を防止するものとして予め定められた処理が実行される。
【0013】
すなわち、本発明では、人を除く動物は人や人の視線を避ける傾向があることを利用して、人,動物,被守備物の位置関係に基づいて獣害リスク値を導出して適用しており、これによって電気柵等を被守備物の周囲に設ける技術や、人の声を発生させる技術に比較して、被守備物に対する視認性の低下や不快感を招くことなく、獣害を防止することができるようにしている。
【0014】
このように、請求項1記載の獣害防止装置によれば、被守備物が設置された監視対象領域を撮影することにより当該監視対象領域の画像情報を取得する撮影手段によって取得された画像情報に基づいて、前記監視対象領域に存在する人および人を除く動物の位置を検知し、検知した前記人および前記動物の位置、並びに前記被守備物の設置位置に基づいて、前記被守備物に対する前記動物による獣害リスクの高さを示す獣害リスク値を演算し、演算した獣害リスク値を用いて、獣害を防止するものとして予め定められた処理を実行しているので、被守備物に対する視認性の低下や不快感を招くことなく、獣害を防止することができる。
【0015】
ところで、野生動物は次のような人間とは異なる行動パターンがある。
(1)野生動物は被守備物へ向かう目的が不明確である。
(2)野生動物は人(実存、気配)におびえる性質があり、人の気配のする方向には進まない。
(3)野生動物は人の気配が逆効果になり、被守備物の方向に向かうことがある。
【0016】
そこで、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記演算手段が、前記動物の位置および前記被守備物の位置を結ぶ直線までの前記人の最短距離である第1距離と、前記動物の位置から前記直線上の前記最短距離にあたる位置までの距離である第2距離との比率に基づいて前記獣害リスク値を演算してもよい。これにより、より簡易かつ高精度で獣害の発生を防止することができる。
【0017】
特に、請求項2に記載の発明は、請求項3に記載の発明のように、前記監視対象領域を複数の領域に分割した分割領域の各々毎に、他の分割領域までの距離を示す距離情報を予め記憶した記憶手段をさらに備え、前記演算手段が、前記記憶手段から対応する前記距離情報を読み出すことにより前記第1距離および前記第2距離を取得してもよい。これにより、上記第1距離および第2距離を演算により求める場合に比較して、高速処理が可能となる。
【0018】
なお、上記記憶手段には、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、フラッシュEEPROM(Flash EEPROM)等の半導体記憶素子、フレキシブル・ディスク等の可搬記録媒体やハードディスク等の固定記録媒体、或いはネットワークに接続されたサーバ・コンピュータ等に設けられた外部記憶装置が含まれる。
【0019】
また、請求項2または請求項3に記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、前記演算手段が、前記第1距離および前記第2距離として、各々予め定められた期間の移動平均値を用いてもよい。これにより、より実体に即した獣害リスク値を得ることができる。
【0020】
さらに、本発明は、請求項5に記載の発明のように、前記演算手段が、前記獣害リスク値に、前記動物の移動速度が速いほど大きな値となる重み付け、および前記人の移動速度が速いほど小さな値となる重み付けの少なくとも一方の重み付けを行ってもよい。これにより、より実体に即した獣害リスク値を得ることができる。
【0021】
なお、本発明は、前記実行手段が、前記予め定められた処理として、前記獣害リスク値を記憶する処理、前記獣害リスク値を表示する処理、前記獣害リスク値が所定閾値以上である場合に警告を発する処理、前記被守備物に最も近い前記人に対して獣害リスクが高いことを報知する処理の少なくとも1つの処理を実行してもよい。これにより、適用した処理に応じた効果を得ることができる。
【0022】
一方、上記目的を達成するために、請求項6記載のプログラムは、コンピュータを、被守備物が設置された監視対象領域を撮影することにより当該監視対象領域の画像情報を取得する撮影手段によって取得された画像情報に基づいて、前記監視対象領域に存在する人および人を除く動物の位置を検知する検知手段と、前記検知手段によって検知された前記人および前記動物の位置、並びに前記被守備物の設置位置に基づいて、前記被守備物に対する前記動物による獣害リスクの高さを示す獣害リスク値を演算する演算手段と、前記演算手段によって演算された獣害リスク値を用いて、獣害を防止するものとして予め定められた処理を実行する実行手段と、として機能させるためのものである。
【0023】
従って、請求項7に記載のプログラムによれば、コンピュータに対して請求項1記載の発明と同様に作用させることができるので、請求項1記載の発明と同様に、被守備物に対する視認性の低下や不快感を招くことなく、獣害を防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、被守備物が設置された監視対象領域を撮影することにより当該監視対象領域の画像情報を取得する撮影手段によって取得された画像情報に基づいて、前記監視対象領域に存在する人および人を除く動物の位置を検知し、検知した前記人および前記動物の位置、並びに前記被守備物の設置位置に基づいて、前記被守備物に対する前記動物による獣害リスクの高さを示す獣害リスク値を演算し、演算した獣害リスク値を用いて、獣害を防止するものとして予め定められた処理を実行しているので、被守備物に対する視認性の低下や不快感を招くことなく、獣害を防止することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態に係る獣害防止システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係る獣害防止システムが監視対象とする領域の構成を示す平面図である。
【図3】実施の形態に係る獣害防止装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態に係る獣害防止装置に備えられた二次記憶部の主な記憶内容を示す模式図である。
【図5】実施の形態に係る距離情報データベースの構成を示す模式図である。
【図6】実施の形態に係る位置情報データベースの構成を示す模式図である。
【図7】実施の形態に係る入場者初期設定処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】第1の実施の形態に係る獣害防止処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】実施の形態に係る第1距離および第2距離の説明に供する模式図である。
【図10】実施の形態に係る監視画面の表示状態の一例を示す概略図である。
【図11】実施の形態に係る退場者削除処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】第2の実施の形態に係る獣害防止処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】実施の形態に係る獣害防止システムが監視対象とする物の他の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、寺院における重要文化財に指定されている門に対する獣害の発生を防止するべく、当該門が設置されている領域を監視する獣害防止システムに適用した場合について説明する。
【0027】
[第1の実施の形態]
まず、図1および図2を参照して、本発明が適用された獣害防止システム10の構成を説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態に係る獣害防止システム10は、当該システム10の中心的な役割を担う獣害防止装置20と、当該システム10において監視対象としている領域(ここでは上記門が設置されている領域であり、以下、「監視対象領域」という。)94を撮影するカメラ30と、監視対象領域94に警報を発する警報部(本実施の形態では、スピーカ)40と、を有しており、カメラ30および警報部40は獣害防止装置20に電気的に接続されている。
【0029】
なお、本実施の形態に係る獣害防止システム10では、獣害防止装置20が、監視対象建物(寺院)のサーバ室92に設置されているが、これに限らず、他の部屋や監視対象建物以外の建物等に設けられていてもよい。
【0030】
一方、図2に示すように、本実施の形態に係る獣害防止システム10により守備対象としている被守備物(本実施の形態では、門)80は、監視対象領域94のほぼ中央部に設置されており、被守備物80の周囲には侵入禁止領域96が設けられている。
【0031】
本実施の形態に係る侵入禁止領域96は、境内側がチェーン96Aにより内部と外部とに仕切られる一方、公道側がフェンス96Bにより内部と外部とに仕切られており、チェーン96Aおよびフェンス96Bの近傍には、当該チェーン96Aおよびフェンス96Bの内部への侵入を禁止する旨が記載された掲示板(図示省略。)が設けられている。なお、被守備物80を見学しやすくするため、チェーン96Aおよびフェンス96Bは比較的低いものとされており、人が十分に跨ぐことのできる程度の高さとされている。これに対し、侵入禁止領域96の周囲は公道および拝観路98とされているため、監視対象領域94への何れの入場者も侵入禁止領域96への侵入が可能な状態となっている。
【0032】
なお、本実施の形態に係る獣害防止システム10では、各々1台のカメラ30により境内側および公道側の各監視対象領域94のほぼ全域を撮影することができるものとされているが、これに限らず、各々複数台のカメラ30により各監視対象領域94を撮影するようにしてもよい。また、本実施の形態に係る獣害防止システム10では、警報部40としてスピーカを用いているが、これに限らず、ブザーや警告を示す画像を表示する表示装置等の他の警報を報知可能な装置を単独、または組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0033】
本実施の形態に係る獣害防止装置20には、カメラ30による撮影によって得られた画像情報に基づいて、監視対象領域94に存在する人、および人を除く動物(以下、単に「動物」という。)を自動的に追跡する自動追跡機能、および上記画像情報によって示される画像に人または動物が存在するか否かを認識し、人または動物が存在する場合に存在位置を示す存在位置情報を導出する位置検出機能が備えられている。
【0034】
なお、本実施の形態に係る獣害防止装置20では、上記人が存在するか否かの認識を、カメラ30から入力された画像情報により示される画像に、略円形形状で、かつ人の頭部の面積の範囲内として予め定められたサイズの領域であり、黒色、茶色、白色、金色等の人の頭髪の色として予め定められた色と、肌色の少なくとも一方の色が全面積の所定割合(本実施の形態では、50%)以上を占める領域が存在する場合に、当該領域が人の頭部の領域であるものと見なして人が存在すると認識することにより行っているが、これに限らず、従来既知の他の人認識技術を適用して行う形態としてもよい。また、本実施の形態に係る獣害防止装置20では、上記動物が存在するか否かの認識を、カメラ30から入力された画像情報により示される画像に、監視対象とする動物(以下、「監視対象動物」という。)の体全体の面積の範囲内として予め定められたサイズの領域であり、監視対象動物の体の表面の色として予め定められた色が全面積の所定割合(本実施の形態では、70%)以上を占める領域が存在する場合に、当該領域が動物の領域であるものと見なして動物が存在すると認識することにより行っているが、これに限らず、従来既知の他の動物認識技術を適用して行う形態としてもよい。さらに、本実施の形態に係る獣害防止装置20では、上記人および動物の存在位置を示す存在位置情報を、カメラ30により撮影対象とする全ての領域(本実施の形態では、監視対象領域94)の平面形状における予め定められた位置(本実施の形態では、図2における左上角点の位置)を原点(0,0)としたX−Y座標系の座標情報として導出するものとされている。
【0035】
そして、本実施の形態に係る獣害防止装置20では、前述した自動追跡機能を、カメラ30から入力された画像情報に基づいて、当該画像情報により上記位置検出機能によって特定される人または動物の領域から予め定められた特徴点を抽出して追跡する、いわゆる特徴点追跡アルゴリズムを用いて実現している。
【0036】
なお、特徴点追跡アルゴリズムについては、特開2009−20800号公報等の多くの文献に記載されており、従来既知であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0037】
次に、図3を参照して、本獣害防止システム10において特に重要な役割を有する獣害防止装置20の電気系の要部構成を説明する。
【0038】
同図に示すように、本実施の形態に係る獣害防止装置20は、獣害防止装置20全体の動作を司るCPU(中央処理装置)20Aと、CPU20Aによる各種処理プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM20Bと、各種制御プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM20Cと、各種情報を記憶するために用いられる記憶手段としての二次記憶部(ここでは、ハードディスク装置)20Dと、各種情報を入力するために用いられるキーボード20Eと、各種情報を表示するために用いられるディスプレイ20Fと、外部装置等との間の各種信号の授受を司る入出力I/F(インタフェース)20Gと、が備えられており、これら各部はシステムバスBUSにより電気的に相互に接続されている。
【0039】
従って、CPU20Aは、RAM20B、ROM20C、および二次記憶部20Dに対するアクセス、キーボード20Eを介した各種入力情報の取得、ディスプレイ20Fに対する各種情報の表示、及び入出力I/F20Gを介した外部装置等との間の各種信号の授受を各々行うことができる。なお、カメラ30および警報部40は、入出力I/F20Gを介して獣害防止装置20に電気的に接続されている。
【0040】
一方、図4には、獣害防止装置20に備えられた二次記憶部20Dの主な記憶内容が模式的に示されている。
【0041】
同図に示すように、二次記憶部20Dには、各種データベースを記憶するためのデータベース領域DBと、各種アプリケーション・プログラム等を記憶するためのプログラム領域PGと、が設けられている。
【0042】
また、データベース領域DBには、距離情報データベースDB1および位置情報データベースDB2が含まれる。以下、各データベースの構成について詳細に説明する。
【0043】
本実施の形態に係る獣害防止システム10では、監視対象領域94の平面形状を各々同一サイズとして構成された矩形でマトリクス状に区分し、各区分領域の各々毎に他の区分領域までの距離を示す情報(以下、「距離情報」という。)を用いて、後述する獣害防止処理プログラム(図8も参照。)により獣害を防止するものとされている。
【0044】
上記距離情報データベースDB1は、この距離情報を示すものであり、一例として図5に示すように、上記区分領域の各々毎に、上記距離情報が予め記憶されて構成されている。図5に示される例では、例えば、同図左上角部に位置する区分領域から右に隣接する区分領域までの距離が10cmであることが示されている。
【0045】
一方、上記位置情報データベースDB2は、一例として図6に示されるように、画素位置および位置座標の各情報が記憶されるように構成されている。
【0046】
本実施の形態に係る獣害防止システム10では、カメラ30を、設置位置、撮影方向および拡大率を固定とすることにより、撮影範囲(画角)を、監視対象領域94を含む範囲で固定としておき、その状態でカメラ30に内蔵された固体撮像素子による画素位置と、これに対応する上記X−Y座標系における位置座標とを関連付けて記憶しておき、この情報に基づいて、カメラ30から得られた画像情報により示される撮影対象領域の画像に存在する人および動物の位置を特定するようにしている。
【0047】
位置情報データベースDB2における画素位置および位置座標は、上記固体撮像素子による画素位置および上記X−Y座標系における位置座標に相当するものであり、これらの情報を参照することによって、カメラ30により撮影された画像内に存在する人および動物の位置を上記X−Y座標系における位置として特定することができる。
【0048】
なお、本実施の形態に係る位置情報データベースDB2では、図6に示されるように、上記画素位置として、上記固体撮像素子における矩形状とされた画素領域(撮像領域)の一対の対角の座標値を適用し、撮影画像内に存在する人および動物の予め定められた部位(本実施の形態では、人および動物の足)の予め定められた位置(本実施の形態では中心位置)が含まれる上記画素領域に対応する位置座標を参照することによって当該人および動物の上記X−Y座標系における位置を特定している。
【0049】
また、本実施の形態に係る獣害防止システム10では、被守備物80の上記X−Y座標系における設置位置(本実施の形態では、被守備物80の中心位置)を示す情報(以下、「被守備物位置情報」という。)がROM20Cの予め定められた領域に記憶されている。
【0050】
次に、本実施の形態に係る獣害防止システム10の作用を説明する。なお、本実施の形態に係る獣害防止システム10では、被守備物80の境内側(図2の塀より上側)と公道側(図2の塀より下側)とで並行して獣害に対する監視を行っているが、錯綜を回避するために、以下では、被守備物80の境内側を監視対象とする場合のみについて説明する。
【0051】
まず、図7を参照して、監視対象領域94に人または動物が新たに入場した際の獣害防止システム10の作用を説明する。なお、図7は、位置検出機能により監視対象領域94への新たな人または動物(以下、「入場者」という。)が検出された際に獣害防止装置20のCPU20Aにより実行される入場者初期設定処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムは二次記憶部20Dのプログラム領域PGに予め記憶されている。また、ここでは、錯綜を回避するために、位置情報データベースDB2が予め構築されている場合について説明する。
【0052】
同図のステップ100では、検出された入場者に新たな識別情報を付与し、次のステップ102にて、当該入場者が人であるか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ104に移行して、当該入場者の種別として「守備者」を付与した後にステップ108に移行する一方、否定判定となった場合にはステップ106に移行して、当該入場者の種別として「動物」を付与した後にステップ108に移行する。
【0053】
すなわち、本実施の形態に係る獣害防止システム10では、監視対象領域94への入場者を、被守備物80に対して獣害を及ぼす可能性のある「動物」と、上記獣害の発生を抑制することのできる「守備者」とに区分しており、上記ステップ102〜ステップ106では、監視対象領域94への新たな入場者に対する種別の初期設定として「守備者」および「動物」を付与している。
【0054】
ステップ108では、以上の処理によって入場者に付与した識別情報および種別を関連付けて二次記憶部20Dの所定領域に記憶し、その後にステップ110に移行して、前述した自動追跡機能により予め定められた特徴点追跡アルゴリズムに従って実行される、上記入場者に対する特徴点追跡処理を開始した後、本入場者初期設定処理プログラムを終了する。
【0055】
なお、上記ステップ110により実行される特徴点追跡処理は予め定められた期間(本実施の形態では、0.1秒間)毎に割り込み処理として実行され、カメラ30から入力されている画像情報を用いて、全ての入場者の監視対象領域94の内部における存在位置が個別に求められ、当該存在位置を示す存在位置情報(本実施の形態では、位置情報データベースDB2により規定されるX−Y座標系上の位置を示す情報)が対応する入場者に付与された識別情報に関連付けられて二次記憶部20Dの所定領域にリアルタイムで逐次記憶される。
【0056】
次に、図8を参照して、獣害防止処理を実行する際の獣害防止システム10の作用を説明する。なお、図8は、獣害防止装置20のキーボード20E等を介して実行指示が受け付けられた際に、CPU20Aにより実行される獣害防止処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムも二次記憶部20Dのプログラム領域PGに予め記憶されている。また、ここでは、錯綜を回避するために、距離情報データベースDB1が予め構築されている場合について説明する。
【0057】
同図のステップ200では、監視対象領域94への全ての入場者(以下、「処理対象入場者」という。)に関する識別情報、種別、および最新の存在位置情報を二次記憶部20Dから読み出す。
【0058】
次のステップ202では、種別として「動物」が付与された処理対象入場者が存在するか否かを判定することにより、処理対象入場者に動物が存在するか否かを判定し、否定判定となった場合は後述するステップ216に移行する一方、肯定判定となった場合にはステップ204に移行する。
【0059】
ステップ204では、被守備物位置情報をROM20Cから読み出した後、種別として「守備者」が付与され、かつ読み出した被守備物位置情報により示される被守備物80の位置までの距離が上記ステップ202の処理において存在すると判定された動物より近い処理対象入場者が存在するか否かを判定することにより、処理対象入場者に実質的な守備者が存在するか否かを判定し、肯定判定となった場合にはステップ206に移行する。
【0060】
ステップ206では、一例として図9に模式的に示すように、以上の処理によって得られた種別により特定される動物の位置および被守備物位置情報により示される被守備物80の位置を結ぶ直線までの守備者の最短距離である第1距離D1を、当該直線に対する守備者の位置からの垂線と当該直線との交点が被守備物と動物との間に位置される全ての守備者および動物の組み合わせについて導出し、二次記憶部20Dの所定領域に記憶する。なお、本実施の形態では、第1距離D1を、守備者の位置が含まれる区分領域における、上記交点の位置が含まれる区分領域に対応する距離情報を距離情報データベースDB1から読み出すことにより導出する。
【0061】
次のステップ208では、上記動物の位置から上記交点の位置までの距離である第2距離D2を、上記交点が被守備物と動物との間に位置される全ての守備者および動物の組み合わせについて導出し、二次記憶部20Dの所定領域に記憶する。なお、本実施の形態では、第2距離D2を、上記動物の位置が含まれる区分領域における、上記交点の位置が含まれる区分領域に対応する距離情報を距離情報データベースDB1から読み出すことにより導出する。
【0062】
なお、このときの時刻をtとして、上記ステップ206の処理によって導出されたk番目の守備者とj番目の動物との組み合わせによる第1距離D1を距離D1kj(t)と表し、上記ステップ208の処理によって導出されたk番目の守備者とj番目の動物との組み合わせによる第2距離D2を距離D2kj(t)と表す。
【0063】
次のステップ210では、以上の処理によって得られた距離D1kj(t)および距離D2kj(t)に基づいて、j番目の動物による被守備物80に対する獣害リスクの高さを示す獣害リスク値R(t)を算出し、二次記憶部20Dの所定領域に記憶した後、ステップ214に移行する。
【0064】
なお、本実施の形態に係る獣害防止処理プログラムでは、獣害リスク値R(t)を次のように算出する。
【0065】
まず、距離D1kj(t)および距離D2kj(t)を次の(1)式に代入することにより仮獣害リスク値R’(t)を算出する。ここで、(1)式におけるmin()は、括弧内の演算結果の全てのkについての最小値を適用することを示す関数である。
【0066】
【数1】

【0067】
また、次の(2)式によって係数Cを算出する。ここで、(2)式におけるCは、獣害リスク値を調整する係数であり、重み付け値W=1.0のときの仮獣害リスク値R’(t)=1の場合の獣害リスク値R(t)の値である。
【0068】
【数2】

【0069】
そして、以上によって得られた仮獣害リスク値R’(t)、係数C、および重み付け値Wを次の(3)式に代入することにより、獣害リスク値R(t)を算出する。なお、重み付け値Wは、予め定められた値(本実施の形態では、1.0)を上限値として、j番目の動物の移動速度やサイズ、気質に応じた値を設定するものとする。例えば、本実施の形態に係る獣害防止システム10では、当該動物のサイズが大きいほど大きな値としている。
【0070】
【数3】

【0071】
なお、通常は係数Cとして0.5を適用することにより、係数Cを−1とする。これにより、(3)式は次の(4)式に変形される。
【0072】
【数4】

【0073】
一方、上記ステップ204において否定判定となった場合はステップ212に移行し、全ての動物に関する獣害リスク値R(t)として最大値(本実施の形態では、‘1.0’)を設定した後、ステップ214に移行する。
【0074】
ステップ214では、上記ステップ210またはステップ212の処理によって得られた獣害リスク値R(t)を用いて、獣害を防止するものとして予め定められた処理を実行し、その後にステップ216に移行する。
【0075】
なお、本実施の形態に係る獣害防止処理プログラムでは、上記ステップ214における予め定められた処理として、一例として図10に示す監視画面をディスプレイ20Fにより表示する処理を適用している。
【0076】
同図に示す監視画面では、監視対象領域94の平面図が表示されると共に、動物の位置に動物を示すマーク(本実施の形態では、「☆」)が獣害リスク値R(t)と共に表示され、かつ守備者の位置に守備者を示すマーク(本実施の形態では、「○」)が表示される。従って、当該監視画面を参照することにより、ユーザは、動物および守備者の位置を確認することができると共に、動物の獣害リスク値を把握することができる。
【0077】
なお、上記ステップ214における予め定められた処理は、このような監視画面の表示のみに限らず、獣害リスク値R(t)が所定閾値以上である場合に警報部40により人の声や足音等の音声を発する処理、獣害リスク値R(t)が所定閾値以上である場合に動物の拡大画像をディスプレイ20Fにより表示する処理、監視対象領域94の監視者や警備員に対し、PDA(Personal Digital Assistant,携帯情報端末)等の端末装置を介して警告を発する処理、監視対象とする動物に対応する忌避剤(一例として、オオカミの糞,尿の臭い成分)を噴射する処理等、様々な処理を単独、または組み合わせて適用することができる。
【0078】
また、上記所定閾値は、要求される獣害防止効果の高さ、用途等に応じて自動的に設定する形態の他、獣害防止システム10のユーザによってキーボード20E等を介して入力させる形態とすることもできる。
【0079】
ステップ216では、予め定められた終了条件を満足したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ218に移行して所定時間(本実施の形態では、0.1秒)の経過待ちを行い、その後に上記ステップ200に戻る一方、上記ステップ216において肯定判定となった場合には、ステップ220に移行して、上記入場者初期設定処理プログラムによって開始された、全ての入場者に対する特徴点追跡処理を停止するように制御した後に、本獣害防止処理プログラムを終了する。
【0080】
なお、本実施の形態に係る獣害防止処理プログラムでは、上記ステップ216の処理において適用する終了条件として、監視対象領域94の監視を終了する時刻として予め定められた時刻に達した、との条件を適用しているが、これに限らず、例えば、キーボード20E等を介して本獣害防止処理プログラムの終了を指示する指示入力が行われた、との条件、二次記憶部20Dの残記憶容量が所定量以下となった、との条件等、他の条件を適用することもできることは言うまでもない。
【0081】
次に、図11を参照して、監視対象領域94から入場者が退場した際の獣害防止システム10の作用を説明する。なお、図11は、自動追跡機能により入場者の自動追跡ができなくなった際に獣害防止装置20のCPU20Aにより実行される退場者削除処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムも二次記憶部20Dのプログラム領域PGに予め記憶されている。
【0082】
同図のステップ300では、二次記憶部20Dから自動追跡機能による自動追跡ができなくなった入場者に関する識別情報および種別を削除し、次のステップ302にて、当該入場者に対する特徴点追跡処理を停止するように制御した後に、本退場者削除処理プログラムを終了する。
【0083】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、被守備物が設置された監視対象領域を撮影することにより当該監視対象領域の画像情報を取得する撮影手段(本実施の形態では、カメラ30)によって取得された画像情報に基づいて、前記監視対象領域に存在する人および人を除く動物の位置を検知し、検知した前記人および前記動物の位置、並びに前記被守備物の設置位置に基づいて、前記被守備物に対する前記動物による獣害リスクの高さを示す獣害リスク値を演算し、演算した獣害リスク値を用いて、獣害を防止するものとして予め定められた処理を実行しているので、被守備物に対する視認性の低下や不快感を招くことなく、獣害を防止することができる。
【0084】
また、本実施の形態では、前記動物の位置および前記被守備物の位置を結ぶ直線までの前記人の最短距離である第1距離(本実施の形態では、第1距離D1)と、前記動物の位置から前記直線上の前記最短距離にあたる位置までの距離である第2距離(本実施の形態では、第2距離D2)との比率に基づいて前記獣害リスク値を演算しているので、より簡易かつ高精度で獣害の発生を防止することができる。
【0085】
特に、本実施の形態では、前記監視対象領域を複数の領域に分割した分割領域の各々毎に、他の分割領域までの距離を示す距離情報を予め記憶しておき、対応する前記距離情報を読み出すことにより前記第1距離および前記第2距離を取得しているので、上記第1距離および第2距離を演算により求める場合に比較して、高速処理が可能となる。
【0086】
さらに、本実施の形態では、前記獣害リスク値に、前記動物の移動速度等を考慮の上、重み付けを行っているので、より実体に即した獣害リスク値を得ることができる。
【0087】
[第2の実施の形態]
上記第1の実施の形態では、第1距離D1および第2距離D2に基づいて獣害リスク値を求める場合の形態例について説明したが、本第2の実施の形態では、守備者が第1距離D1を移動する時間、および動物が第2距離D2を移動する時間に基づいて獣害リスク値を求める場合の形態例について説明する。
【0088】
なお、本第2の実施の形態に係る獣害防止システム10の構成は、上記第1の実施の形態に係る獣害防止システム10(図1〜図4参照。)と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0089】
次に、本第2の実施の形態に係る獣害防止システム10の作用を説明する。なお、本第2の実施の形態に係る獣害防止システム10における入場者初期設定処理プログラムおよび退場者削除処理プログラムを実行する際の作用は上記第1の実施の形態と同様であるので、ここでの説明を省略し、図12を参照して、獣害防止処理プログラムを実行する際の本第2の実施の形態に係る獣害防止システム10の作用を説明する。なお、図12は、獣害防止装置20のキーボード20E等を介して実行指示が受け付けられた際に、CPU20Aにより実行される、本第2の実施の形態に係る獣害防止処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムは二次記憶部20Dのプログラム領域PGに予め記憶されている。また、図12における図8と同一の処理を実行するステップについては図8と同一のステップ番号を付し、ここでの説明を省略する。
【0090】
同図のステップ207では、上記ステップ206の処理によって得られた距離D1kj(t)を次の(5)式に代入することにより、各守備者が上記交点に到達する時間P1kj(t)を算出し、二次記憶部20Dの所定領域に記憶する。ここで、(5)式におけるF1は、平均的な大人の歩行速度(一例として、1.3m/s)である。
【0091】
【数5】

【0092】
一方、ステップ209では、上記ステップ208の処理によって得られた距離D2kj(t)を次の(6)式に代入することにより、各動物が上記交点に到達する時間P2kj(t)を算出し、二次記憶部20Dの所定領域に記憶する。ここで、(6)式におけるF2は、監視対象とする動物の平均的な移動速度として予め定められた速度である。
【0093】
【数6】

【0094】
その後、ステップ210’では、上記ステップ207およびステップ209の処理によって得られた到達時間P1kj(t)および到達時間P2kj(t)に基づいて、j番目の動物による被守備物80に対する獣害リスクの高さを示す獣害リスク値R(t)’を算出する。
【0095】
なお、本実施の形態に係る獣害防止処理プログラムでは、獣害リスク値R(t)’を次のように算出する。
【0096】
まず、到達時間P1kj(t)および到達時間P2kj(t)を次の(7)式に代入することにより仮獣害リスク値R’(t)’を算出する。ここで、(7)式におけるmin()は、括弧内の演算結果の全てのkについての最小値を適用することを示す関数である。
【0097】
【数7】

【0098】
また、上記(2)式と同様に係数C’を算出した後、以上によって得られた仮獣害リスク値R’(t)’および係数C’を次の(8)式に代入することにより、獣害リスク値R(t)’を算出する。
【0099】
【数8】

【0100】
なお、通常は係数Cとして0.5を適用することにより、係数C’を−1とする。これにより、(8)式は次の(9)式に変形される。
【0101】
【数9】

【0102】
以上詳細に説明したように、本第2の実施の形態では、上記第1の実施の形態と略同様の効果を奏することができると共に、守備者が上記交点に到達する時間である第1の到達時間(ここでは、到達時間P1kj(t))を導出すると共に、動物が上記交点に到達する時間である第2の到達時間(ここでは、到達時間P2kj(t))を導出し、導出した第1の到達時間と第2の到達時間の比率に基づいて前記獣害リスク値を演算しているので、より高精度に獣害を防止することができる。
【0103】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0104】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0105】
例えば、上記各実施の形態では、第1距離D1および第2距離D2として、演算時点における距離そのものを導出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの距離として、各々予め定められた期間(例えば、5秒間)の移動平均値を用いる形態としてもよい。この形態により、より実体に即した獣害リスク値を得ることができる。
【0106】
また、時間的に直近の第1距離の変化量および第2距離の変化量を用いて、これらの距離の所定期間後の予測値を算出して適用する形態としてもよい。この場合、即時的に獣害の発生を防止することができる。
【0107】
また、上記各実施の形態では、各々1つのカメラ30によって境内側および公道側の各監視対象領域94の全域をカバーする場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数のカメラにより、これらの監視対象領域94の全域をカバーする形態としてもよい。この場合、各カメラによる隣接する撮影領域の境界線を一致させるか、または一部重複するように各カメラの撮影画角を予め調整すると共に、距離情報データベースDB1として、各カメラによる撮影領域に対応するものを用意することになる。この場合、より複雑な形状の監視対象領域にも対応することができる。
【0108】
また、上記各実施の形態では、本発明を、寺院における門に対する獣害の発生を防止するべく、当該門の周囲を監視する獣害防止システムに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、一例として図13に示すように、寺院における仏像に対する獣害の発生を防止するべく、当該仏像が安置されている部屋を監視する獣害防止システムに適用する形態としてもよい。
【0109】
また、上記各実施の形態では、第1距離D1と第2距離D2との比率を用いて獣害リスク値を導出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、守備者と被守備物との間の距離と、動物と被守備物との間の距離との比率を用いる形態等、他の守備者、動物、被守備物の位置に基づく物理量に基づいて獣害リスク値を導出する形態としてもよい。
【0110】
また、上記各実施の形態では、カメラ30および警報部40と獣害防止装置20とを有線にて電気的に接続する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの各機器間の少なくとも1つを無線にて電気的に接続する形態とすることもできる。
【0111】
また、上記各実施の形態では、上記距離としてユークリッド距離を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、マンハッタン距離等の他の距離を適用する形態とすることもできる。
【0112】
また、上記各実施の形態では、本発明を獣害の発生を防止するシステムに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、牛,豚,犬,猫等の家畜やペット等の動物を被守備物に近づかせないことにより、これらの動物の飼育を効果的に行うシステムとして本発明を適用する形態としてもよい。
【0113】
また、上記各実施の形態では、カメラ30の撮影領域として被守備物も含めた領域を適用しているが、上記各実施の形態では必ずしも被守備物が撮影領域に含まれていなくても、その位置が分かっており、動物との位置関係が何らかの方法で規定できれば、獣害リスク値は算出可能である。
【0114】
その他、上記各実施の形態で説明した獣害防止システム10の構成(図1〜図4参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な構成要素を削除したり、新たな構成要素を追加したりすることができることは言うまでもない。
【0115】
また、上記各実施の形態で示した各種処理プログラムの処理の流れ(図7,図8,図11,図12参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な処理ステップを削除したり、新たな処理ステップを追加したり、処理ステップの順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。
【0116】
また、上記各実施の形態で示した各種データベースの構成(図5,図6参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、一部の情報を削除したり、新たな情報を追加したり、記憶位置を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。
【0117】
さらに、上記各実施の形態で示した各種演算式((1)式〜(9)式参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要なパラメータを削除したり、新たなパラメータを追加したり、演算の順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0118】
10 獣害防止システム
20 獣害防止装置
20A CPU
20D 二次記憶部
20E キーボード
20F ディスプレイ
30 カメラ
40 警報部
80 被守備物
94 監視対象領域
96 侵入禁止領域
96A チェーン
96B フェンス
96C 柵
DB1 距離情報データベース
DB2 位置情報データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被守備物が設置された監視対象領域を撮影することにより当該監視対象領域の画像情報を取得する撮影手段と、
前記撮影手段によって取得された画像情報に基づいて、前記監視対象領域に存在する人および人を除く動物の位置を検知する検知手段と、
前記検知手段によって検知された前記人および前記動物の位置、並びに前記被守備物の設置位置に基づいて、前記被守備物に対する前記動物による獣害リスクの高さを示す獣害リスク値を演算する演算手段と、
前記演算手段によって演算された獣害リスク値を用いて、獣害を防止するものとして予め定められた処理を実行する実行手段と、
を備えた獣害防止装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記動物の位置および前記被守備物の位置を結ぶ直線までの前記人の最短距離である第1距離と、前記動物の位置から前記直線上の前記最短距離にあたる位置までの距離である第2距離との比率に基づいて前記獣害リスク値を演算する
請求項1記載の獣害防止装置。
【請求項3】
前記監視対象領域を複数の領域に分割した分割領域の各々毎に、他の分割領域までの距離を示す距離情報を予め記憶した記憶手段をさらに備え、
前記演算手段は、前記記憶手段から対応する前記距離情報を読み出すことにより前記第1距離および前記第2距離を取得する
請求項2記載の獣害防止装置。
【請求項4】
前記演算手段は、前記第1距離および前記第2距離として、各々予め定められた期間の移動平均値を用いる
請求項2または請求項3記載の獣害防止装置。
【請求項5】
前記演算手段は、前記獣害リスク値に、前記動物の移動速度が速いほど大きな値となる重み付け、および前記人の移動速度が速いほど小さな値となる重み付けの少なくとも一方の重み付けを行う
請求項1から請求項4の何れか1項記載の獣害防止装置。
【請求項6】
コンピュータを、
被守備物が設置された監視対象領域を撮影することにより当該監視対象領域の画像情報を取得する撮影手段によって取得された画像情報に基づいて、前記監視対象領域に存在する人および人を除く動物の位置を検知する検知手段と、
前記検知手段によって検知された前記人および前記動物の位置、並びに前記被守備物の設置位置に基づいて、前記被守備物に対する前記動物による獣害リスクの高さを示す獣害リスク値を演算する演算手段と、
前記演算手段によって演算された獣害リスク値を用いて、獣害を防止するものとして予め定められた処理を実行する実行手段と、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−135281(P2012−135281A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290818(P2010−290818)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(507022802)Takumi Vision株式会社 (14)
【Fターム(参考)】