説明

玄武岩繊維をベースとする織物を有する殺生物剤不含付着防止被覆物

本発明は海水または工業用水中での水中に生息する有害な微生物の付着および増殖による損傷から水中の構造物を保護するための殺生物剤不含の付着防止剤としての織物の形の50質量%より多いSiO部分を有する無機繊維またはフィラメントおよびEガラス繊維の使用に関する。付着防止剤の表面は大部分が微細な玄武岩繊維からなり、前記繊維が堆積物、織物、メリヤス、編み物、多軸技術により形成される繊維またはフリースとして存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水または工業用水中での水中に生息する有害な微生物の付着および増殖による損傷から水中の構造物を保護するための殺生物剤不含の付着防止剤としての織物の形の無機繊維またはフィラメントおよびEガラス繊維の使用に関し、その際繊維またはフィラメントが50質量%より多いSiO割合を有する。特に船、船の網、ブイ、海中ケーブル、航海案内、防波堤または橋のような水中の構造物の表面は有害な微生物がこれらの表面に付着しないようにするために、水中に生息する有害な微生物に対して保護されるべきである。水中に浮遊するまたは水中に生息するこれらの有害な微生物は主にバクテリア、単細胞生物、藻類、菌類、フジツボ、およびイガイである。更にいわゆるフナクイムシ(Teredo navalis)に関しても保護が問題である。これはイガイであり、すべての種類の木製構造物を攻撃し、木製の船に大きな損害を生じる。
【0002】
本発明により玄武岩繊維および/または玄武岩フィラメントが有利に使用される。
【0003】
水性環境中の硬い表面、いわゆるハードフロアは一般にきわめて短い時間内に付着した植物および動物が移植する。これは天然のハードフロア、例えば岩、貝類、流木にも、人工の物質、例えば木製、金属製および合成の水力工学装置にも関係する。生きた基物、例えば貝殻またはカニの殻上の微生物の集団は付着生物、すなわちエピビオスと呼ばれ、生きていない基物上で外被と呼ばれる。
【0004】
従って、水性環境中で生物付着工程を開始する粘着性生体高分子から表面を保護することが求められる。
【0005】
生物付着は一般に水性環境中で生きた微生物が材料表面に沈積し、引き続き物理的表面特性に不利に作用することを意味すると理解される。海の分野で3種類の付着、すなわち動物、例えばイガイ、フジツボ、藻類、例えば緑藻、褐藻、微生物を認識することができ、微生物は有利な環境で成長する。
【0006】
付着集団の移植の典型的な順序は以下のように記載できる。まず船体にバクテリア細胞の付着に有利に作用する巨大分子の一次皮膜を形成する。これらのバクテリアに原生動物が続く。微生物から分離した物質により泥状バイオフィルムが形成され、バイオフィルムは微生物の幼虫および胞子のような増殖段階に圧倒的に引きつける作用を行う(Holstroem und Kjelleberg1994)。
【0007】
基本的にミクロ付着とマクロ付着に区別される。微視的に小さい微生物、例えばバクテリア、単細胞藻類(例えば珪藻)、原生動物および水生菌類からのミクロ付着はしばしば前記バイオフィルムを形成する。
【0008】
マクロ付着は多細胞植物および動物の種類からなる。海水中の豊富な種類および強力さは淡水より何倍もすぐれており、付着を海の船の搬送の面倒な問題に変換する。
【0009】
淡水での植物の大きな付着の例は緑藻であり、海水では緑藻と同様に褐藻、赤藻および管状珪藻類である。基物船体は単独の基幹細胞として、単細胞段階としてのコロニー形成管状珪藻類により移植される(鞭毛のある遊走子、鞭毛のない胞子、接合子または受精した原生動物)。
【0010】
これらのマクロ付着の生物の種類は早期プランクトン段階を通過し、ここで水中に幼虫として繁殖する。成虫の形への変態を伴うしっかりした形式の生物に推移するために、前記生物は硬い基物を探し、これに強固に付着し、その上で成長し、付着社会の実質的成分、例えばフジツボ(Balanidae)、ムラサキガイ(Mytilus edulis)、コケムシ綱(Bryozoa)、尾索類(Tunicata)、花虫綱(Anthozoa)またはポリプ(Hydrozoa)を形成することができる。
【0011】
水中の船体の付着は第1に航行速度の損失を生じ、第2に過剰の燃料消費、停泊費用、洗浄費用および付着防止手段の形の巨大な費用を生じる。他方で商業的に使用され、自由に生きる海の生物に対する定量化できるおよび定量化できない損害が毒性化合物の使用により生じている。
【0012】
従って海の環境においてすべての表面が生物の付着を体験することがあり、海洋技術の大きな問題の1つである。
【0013】
従って特定の表面被覆、いわゆる付着防止被覆が船体、海水構造物、例えば油田掘削装置、港湾構造物、パイプ、航行案内、防波堤、橋および他の人工水中構造物の付着を妨げるべきである。公知の付着防止被覆または付着防止塗料は機械的洗浄の形にもとづき、例えば合成物質からまたは他の被覆から製造できる、被覆および塗料から毒性殺生物剤を排出することにもとづく。
【0014】
付着防止作用が物理的メカニズムにもとづく1つの生成物群は繊維被覆の群である。数種の系が開発されている。数種の合成繊維が存在し、例えばポリアクリル、ポリエステル、ナイロン繊維であり、これらを個々の短繊維(0.5〜2mm)として新たに適用したエポキシ接着剤に吹き付ける。良好に適用して被覆はフジツボに対する十分な効果を達成するが、藻類に対しては達成しない。適用は外部条件に強く依存する。風、雨および低温は他の種類の被覆より適用の結果により強く影響する(Daehne等、2000、Watermann等、2003)。天然繊維の分野で麻から製造した繊維が現在試験されている(Bioregion2003)。1つの利点は製品の生分解性である。しかし同時にこの性質は長い耐用期間を達成しない。現在までこの繊維被覆の有効性は全く知られていない。
【0015】
しかし例えばテフロンまたはシリコンからなる付着防止被覆は大部分、付着物の付着を防ぐ。例えばハンブルグ港でのシリコンからなる付着防止被覆においては、付着の低いまたは弱い付着が生じることを示す。この付着物は問題なく再び浄化除去することができる。しかしシリコンの適用および基物の前処理において決められた基準を守るべきであり、これにより系の分解が生じない。しかしシリコンは分解しないので、シリコン粒子がドック排水に沈殿し、固形物として除去しなければならない。これはテフロン被覆にも該当する。テフロン粒子は同様に除去することがきわめて困難である。
【0016】
更に溶解する被覆と溶解しない被覆に区別される。溶解しない付着防止被覆はコンタクトタイプと呼ばれ、高い耐磨耗性を有する。
【0017】
溶解する付着防止被覆は自己腐食性であり、流水により徐々に剥がされ、層厚が減少する。プラスチック基剤に応じて殺生物剤を洗い流し、腐食する表面に提供し、または水中で分解する。公知の付着防止被覆は有害生物駆除剤のように作用する殺生物剤により付着工程の移植段階を阻止する。殺生物剤は例えば広帯域毒性砒素、銅およびトリブチルスズ(TBT)のような有機金属殺生物剤と、天然の殺生物剤に区別され、天然の殺生物剤は多くの海の生物をその表面で生物の付着から保護する。しかしすでに低い濃度の広帯域スペクトル毒が長い期間の環境損傷を生じる。トリブチルスズ(TBT)が最も毒性の化学物質の1つであることは知られており、殺生物剤として水中船塗料の製造に2002年12月31日までなお使用されていた。IMOの付着防止会議の決議後、2003年1月1日から有機スズ含有付着防止系は更にシーラントを塗って使用しなければならない。シーラント上に明白な有機スズ不含付着防止被覆が存在しなければならない。すでにTBT不含付着防止剤が存在し、2年前から市販され、長期的視野で提供される。60月の耐用期間を有するTBT不含自己研磨性付着防止剤は特に銅および亜鉛化合物をベースとする。銅付着防止剤は36月の最大付着物保護時間を保証する。
【0018】
前記のいわゆる殺生物剤の基準の枠内の厳しい法律にもとづき毒性のない付着防止法の需要が増加する。
【0019】
ドイツ特許(DE−OS)第19836076号から環境を損なわない自己浄化特性を有し、摩擦抵抗の少ない流体動力学的表面を配慮する2つの成分にもとづく殺生物剤不含付着防止被覆が公知である。その際付着防止作用は表面ゲルの形成にもとづく。浄化成分としてゲル形成剤は環境を損なう殺生物剤の代わりに異なる種類の担体物質を使用せずに使用する。その際ゲル形成剤の製造は固定成分として分解可能なゲルマトリックスにより行われ、前記マトリックスは懸濁液中でゲル形成剤と均一に混合している。2つの成分は共通の作業工程で保護すべき水中平面に被覆され、その際平面付着物は乱流の循環流にさらされる。固定成分の分解能力により常に水中平面上で使用される浄化成分の作用は特に水または付着物の泥状物と接触する場合に発揮される。その場合に水および付着生物の付着物は付着防止被覆上にゲルを形成するが、このゲルは乱流の循環流の場合に安定していない。洗い落としにより2つの成分の物質損失が生じ、これにより被覆が徐々に被覆され、周期的な修復が必要である。その際物質損失が大きいほど、生じる水流が激しくなる。
【0020】
欧州特許(EP−A1)第0903389号から水中に流れた水中表面のための環境を損なわない自己浄化性および流体動力学的表面特性を有する殺生物剤不含付着防止被覆が公知であり、その際この付着防止被覆は二元複合材料系として形成され、この場合に固定成分が水中表面に対する良好な結合能力を有し、細孔形成成分として、パラメーター、細孔径、細孔高さおよび細孔密度が重なる細孔のナノスケールの不規則なレリーフの形で形成され、浄化成分が細孔充填成分として平面状浄化フィルムの形で形成され、その際このフィルムは不規則に個々の細孔通路が点状に貫通する。
【0021】
しかし欧州特許(EP−A1)第0903389号に記載される付着防止被覆は例えば船が移動する場合にのみその自己浄化作用を発揮する。しかし停止時間には有機付着物の堆積がわずかしか回避されず、欧州特許(EP−A1)第0903389号の発想は海の環境に存在する固体の物体の場合にきわめて作用しにくい。更に前記付着防止被覆はきわめて費用がかかる。
【0022】
中華人民共和国特許(CN−A)第1421351号はフェノールまたはエポキシ樹脂で変性、すなわち含浸された、玄武岩繊維からなる織物および外部に積層された銅フィルムからなる船の物体を記載する。有機付着物の堆積は場合により外部銅層により達成される。
【0023】
従って工業的に、これらに代わる毒性のない付着物保護法に対する大きな要求が存在する。
【0024】
従って本発明の課題は、船腹、沖の装置、海中ケーブルおよび他の水中に存在する物体の付着を明らかに減少し、更に阻止する、新しい種類の殺生物剤不含付着防止被覆を提供することである。
【0025】
前記課題は、本発明により、海水または工業用水中での水中に生息する有害な微生物の付着および増殖による損傷から水中の構造物を保護するための殺生物剤不含の付着防止剤としての織物の形の50質量%より多いSiO部分を有する無機繊維またはフィラメントおよびEガラス繊維の使用により解決され、その際付着防止剤の表面は大部分微細な玄武岩繊維により形成される。
【0026】
本発明による織物はよりあわせた織物、織物、メリヤス、編み物、多軸技術により形成される繊維またはフリースとして形成することができる。本発明による繊維がメリヤスの形で存在する場合は、玄武岩繊維から養殖用の経糸編みネットも製造できる。このかなり細かい目のつんだネットは接合によりまず高いほころびのなさを示す。これらのネットの基本構造はいわゆるライト/ライト経編みネットである。これに関してドイツ特許(DE−C2)第19857993号を参照。
【0027】
本発明の織物が被覆である場合に、前記被覆を接着剤または他の化学的に付着する製品を使用して保護すべき基物、すなわち保護すべき水中平面に被覆することができる。他の可能性は織物を被覆によりおよび幅の狭い織物または帯状物を使用してまたは編み物により基物、例えば船構造物の表面に被覆することである。
【0028】
本発明の1つの有利な構成により玄武岩繊維および/または玄武岩フィラメントを使用する。
【0029】
本発明により使用される無機繊維は50質量%より多い、有利に55質量%より多いSiOを含有する。特別な構成に使用される玄武岩繊維は有利に高いAl含量、例えば16質量%より高いAl含量および少ないCaO、MgO含量、例えば8質量%未満、例えば5〜8質量%のCaO、MgO含量を有する。
【0030】
従って本発明により使用されるEガラス繊維は55質量%のSiO質量%割合および15質量%のAl割合を有する。CaO、MgO割合はきわめて高く、例えば18〜24質量%である。
【0031】
本発明により使用される玄武岩繊維はエンドレス延伸玄武岩繊維であり、典型的に玄武岩溶融物から大量生産の規模で得られ、600℃までの熱安定性を有する。玄武岩繊維の製造方法は例えばドイツ特許(DE−A)第2909148号およびドイツ特許(DE−A1)第3509424号に記載される。本発明により使用される玄武岩繊維は最低−260℃から+600℃までの範囲の熱安定性を有し、1050℃の焼結温度を有し、0.031〜0.038Kの熱伝導率を有する。物理的特性においては前記繊維は7〜17μmの繊維直径を有し、28〜120のテックスを有する。比重は2.6〜2.8kg/dmである。煮沸水中の処理での3時間の質量損失後の化学的特性は1.6%であり、2nNaOH中の処理の場合は2.75%であり、2nHCl中の処理の場合は2.2%である。
【0032】
本発明により付着防止被覆として使用される構造物は、特に織物、メリヤスとして、または編み物として、または多軸技術もしくは埋め込み技術で形成される。露出した範囲の繊維材料からの付加的な繊維またはフィラメントの縫製も同様に可能である。前記繊維は玄武岩繊維から製造した繊維および繊維材料のフリースであってもよい。
【0033】
前記のように、本発明により経糸および緯糸用の適当な材料として玄武岩繊維が該当する。特別な構成において、本発明の織物は多層の形の経糸および緯糸の互いに織り込まれたストランドからなる。経糸ストランドは多数の個々の平行なフィラメントからなる。緯糸ストランドは同様に多数の平行なフィラメントからなる。個々の経糸および緯糸は互いに厳密に平行であり、少ない厚さの緻密な織物を形成する。織物構造物に強度を付与するために、経糸および緯糸を種々の結合点および接合点で織物技術により結合する。更にかご織りまたは胴織りおよび交叉織りも可能である。
【0034】
本発明により使用される付着防止被覆は、緻密な作業可能な織物またはストリップまたはよりあわせたまたは特定の編み物で覆うことにより、コンクリート/スチールまたはケーブル、鎖または帆のような他の構造物に適用できる。
【0035】
選択的に、前記織物は、例えばエポキシ接着剤、二成分接着剤、ホットメルト接着剤のような接着剤を使用してまたは他の被覆により流れる水中表面に適用できる。
【0036】
本発明は、玄武岩繊維の網にイガイ、フジツボおよび藻類がほとんど付着しないという意想外な発見にもとづく。
【0037】
本発明により使用される玄武岩繊維は合成繊維と麻繊維の2つの利点を結合する。玄武岩繊維は急速に熱分解しない天然の製品である。原料は大量に存在し、一成分製造であるので、製品の製造がかなり安くなる。化学的および機械的作用に対して安定性が高い。
【0038】
本発明の適用は特に織物マットの形で、合成繊維の場合のように個々の繊維を使用せずに実施される。
【0039】
同時に多くの織物技術および織物厚さが可能である。本発明の試験で80テックス織物(プレート1)および600テックス織物(プレート2)を最初に試験した。これらのプレートを最初に検査した後に、付加的に100テックス織物をPVC管に設置した。
【0040】
本発明を実施例により詳細に説明するが、実施例に限定されない。
【0041】
例1
80テックス織物を有する試験プレート1
プレート1に80テックス織物を用意し、エポキシ接着剤で貼り付けた。繊維が水および他の流体のかなり低い吸収能力を示すので、ゲル化したエポキシ接着剤を織物の表面にしみこませ、硬化した。これにより繊維の試験表面をほとんど完全にエポキシ樹脂で貼り付けた。自由に動く繊維はきわめてわずかであった。
【0042】
それにもかかわらずこのプレートを、Norderney港で、4月24日に設置した(表1)。
【0043】
例2
600テックス織物を有する試験プレート2
試験プレート2を同時に適用し、設置した(表1)。ここで重い600テックスヤーンを適用して織物強度が有効性に影響するか調べた。この厚い織物によりエポキシ接着剤は表面にあまり到達しなかった。個々の繊維が部分的にのみ貼り付いた。
【0044】
例3
100テックス織物を有する試験管
船体への織物マットの適用の困難さが予測されたので、PVC管を他の試験試料(100テックス)で包囲した。この発想の背景は例えば沖合風力装置に接続する水中ケーブルおよびパイプの付着防止として生じる適用の可能性であった。試験マットを両面接着剤ストリップおよびパイプ上のケーブルリンクと接合したが、繊維は一緒に接合できなかった。7月28日にこの試験試料を設置した(表1)。
【0045】
例4および5
試験プレート3および4
プレート1および2上の織物の適用が困難であるので、2つの他の試験プレートを製造した。同時に織物をプレートの周りにゆるめて伸ばし、220℃でエポキシ接着剤ストリップを押しつけた。プレート3(100テックス、一重)はその前面に、織物の下の中心にエポキシ接着剤ストリップを受け入れた。背面でストリップが織物上で隠れた。プレート4(100テックス、ヤーンとして)は背面の全表面にエポキシ接着剤ストリップを取り入れた。織物試料の両方の端部はプレート中心で付加的な接着剤ストリップなしに重なる。
【0046】
両方のプレートを10月1日に設置した(表1)。第1の目的はエポキシ接着剤ストリップおよびこの適用法を使用する織物の耐久性の検査であった。
【0047】
【表1】

【0048】
試験結果
試験プレート
Norderney港で22週間水にさらした後にプレート1および2およびパイプ試料を調べた。同時に写真資料と別に付着物群の被覆の程度をSTG2221(Shipbuilding Society1992)のガイドラインにより決定し、付着物の分類評価を行った。
【0049】
80テックス織物を有する試験プレート1
プレート1は22週間さらした後に顕著に付着した。9月29日にムラサキガイが試験表面のほとんど半分を覆い、フジツボが更に20%を覆った。残りの表面はかなり厚いバイオフィルムにより被覆された。表面がほとんどの部分で玄武岩織物でなく、浸透したエポキシ接着剤により形成されたことを考慮しなければならない。
【0050】
プレート1の後部に対照群として作用する腐食防止剤のみを用意した。予想されたように、この場合に付着はより悪かった。表面の70%がフジツボにより移植された。これらは二次的にムラサキガイにより覆われ、表面の80%までになった。
【0051】
結果として他の付着生物が残留する空間は少なく、尾索類は表面の5%のみを覆っていた。
【0052】
600テックス織物を有する試験プレート2
このプレート上で表面が大部分遊離玄武岩繊維により形成された。プレート1と比較して付着の発達が明らかに遅れた。7月16日の写真検査でプレート1はすでに顕著にイガイが付着したが、プレート2は特に中心部分で巨視的な付着(イガイ、フジツボ、マクロ藻類)がなく、ミクロ藻類バイオフィルム1種のみを有した。8月4日の付加的な写真検査でマクロ付着が増加したが、プレートの中心部分は甲殻類の付着(イガイ、フジツボ)がなかった。
【0053】
9月29日の最終検査の際に尾索類、Styela clavaが大量に入植し、表面の50%を覆った。
【0054】
同時に表面生物的にフジツボに顕著に入植し、織物表面に基質生物的に入植した。しかし尾索類、イガイおよびフジツボの間にミクロ藻類のみに覆われた部分がなお存在した。
【0055】
100テックス織物を有する試験管
試験管を7月28日に取り出し、1〜2週間の間隔で一致して撮影した。写真は付着の成長をきわめて具体的に示す。1週間後、個々のイソギンキャク(Metridium senile)が玄武岩織物に定着した。1週間後、薄いバイオフィルムが認められ、若いフジツボがあちこちに入植した。4週間さらした後に、包囲するフジツボは増加しなかったが、若いヒドロ虫が定着した。5週間後、初めて尾索類、Botryllus schlosseriが認められた。2週間後、尾索類、Moigula citrinaが散発的に入植した。8週間以上さらした後に、9月26日の最後から2回目の検査の際にフジツボの付着はきわめて少なかった(2%)。フジツボがパイプのケーブルコネクタより明らかに小さいことが認められた。
【0056】
フジツボは明らかに、無傷の動く繊維基物に入植し、成長することが困難である。
【0057】
イガイは見出されなかったが、後で貯蔵から出す時期に存在した。イガイは年の初めに繁殖が低下するが、この年はきわめて激しく低下した。夏の終わりに弱い繁殖の低下が生じることがあるが、この年は外見上起こらなかった。従ってヒドロ虫、Laomedea flexuosa(10%)および尾索類、Botryllus schlosseri(10%)がマクロ付着物の大部分を形成する。表面の50%は目に見える付着物を含まず、25%はミクロ藻類のみに覆われていた。
【0058】
議論
80テックス織物を有する試験プレート1
試験プレート1(80テックス)上でエポキシ接着剤で繊維を接着した。これは付着防止作用を阻止した。
【0059】
600テックス織物を有する試験プレート2
プレート2上の600テックス織物は表面にあまり強く接着しなかった。結果はプレート中心部分の遅れた、減少した付着の成長であった。
【0060】
100テックス織物を有する試験管
最初の前試験として、PVC試験管を100テックス織物で被覆し、設置した。この試験試料はきわめて満足な結果を達成したが、季節により設置がかなり遅れ、さらした時間が8週間の、短い時間であった。
【0061】
それにもかかわらず、ケーブルコネクタ上の付着物および垂直重りによりフジツボの付着が減少したことが確認できた。ヒドロ虫が多数移植したが、大きいバイオマスが達成されなかった。
【0062】
試験プレート2の結果は、玄武岩繊維が付着物の成長の遅れおよび減少を生じることを示す。イガイは繊維表面を避け、フジツボは低い密度で移植し、成長が阻止された。
【0063】
本発明による玄武岩繊維織物の付着防止作用はおそらく表面の柔軟性により生じる。付着生物の移植の用意のできた幼虫が織物を安定な表面として認識せず、従ってこれを避ける。幼虫は移植に適当な位置を見い出すために限られた時間のみを有するので、よりよい選択案が用意されない場合も好ましくないと思われる表面に移植する。
【0064】
結論として、本発明の結果が付着の遅れおよび減少を伴うことを記載できる。
【0065】
付着防止作用のほかに、海水中の織物の機械的安定性は市場の開発の不可欠な前提条件である。現在まで織物の安定性が海水中の長時間の使用に適していることを示唆する証拠は存在しない。
【0066】
文献
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】対照群(22週間さらした)および試験管(8週間さらした)での試験プレート1および2の生物被覆(%)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付着防止剤の表面が大部分微細な玄武岩繊維により形成され、織物が絡み合った織物、織物、メリヤス、編み物、多軸技術により形成される繊維またはフリースとして形成されている、海水または工業用水中での水中に生息する有害な微生物の付着および増殖による損傷から水中の構造物を保護するための、殺生物剤不含の付着防止剤としての、織物の形の50質量%より多いSiO部分を有する無機繊維またはフィラメントおよびEガラス繊維の使用。
【請求項2】
織物が漁網、特に養殖用の結び目のない経糸編み漁網、または保護される基物または保護される水中表面に配置される付着防止被覆物である請求項1記載の使用。
【請求項3】
織物を接着剤または他の化学的接着製品を使用して基物または保護される水中表面に適用するかまたは織物を保護される基物または水中表面に緻密な織物またはストリップで被覆するかまたはよりあわせることにより適用する請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
無機繊維またはフィラメントとして玄武岩繊維または玄武岩フィラメントを使用する請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
織物が織物の縁に沿って縁保護物を有する請求項1から4までのいずれか一項記載の使用。
【請求項6】
織物が経糸および緯糸からなり、それぞれ玄武岩繊維である請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
繊度50〜3000テックス、特に50〜500テックスを有するロービングおよびヤーンを織物に使用し、ヤーンから製造した織物が表面質量70〜1500g/m、特に90〜200g/mを有する請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
織物が数種の被覆または層からなり、織物技術に関して縫い合わせの縫い目により機械的に固定され、縫い合わせの縫い目が縫い合わせ綿を使用して作成される請求項1から7までのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
織物の層を、接着技術を使用して、特に溶接接着テープおよび/または接着力を使用して互いに結合する請求項1から8までのいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
糸材料がヤーン/マルチヤーンからなる請求項1から9までのいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
糸材料を織物工程で処理する請求項1から10までのいずれか1項記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2007−510786(P2007−510786A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538766(P2006−538766)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012656
【国際公開番号】WO2005/047403
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(506163375)
【氏名又は名称原語表記】Unternehmen fuer Spezialfasern Sakrowski e.K.
【住所又は居所原語表記】Gartenstrasse 9, D−79828 Neuenhaus, Germany
【Fターム(参考)】