説明

現像剤及び現像剤の製造方法

【課題】 微粒子分散液中の微粒子の凝集性を経時的に変化させることなく、所望のトナー特性を有する現像剤を安定して得る。
【解決手段】 バインダー樹脂を含有する粒状化されたトナー材料と、水系媒体とを含むトナー材料分散液を調製する工程、トナー材料分散液を機械的せん断に供し、粒状のトナー材料を微細に粒状化して、微粒子を形成する工程、及び前記微粒子の凝集を行い、凝集粒子を形成する工程を含む現像剤の製造方法において、塩基性高分子界面活性剤がトナー材料分散液に0.3重量%以上5重量%未満含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子写真法、静電印刷法、磁気記録法等における静電荷像、磁気潜像を現像するための現像剤、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法では、像担持体上に電気的な潜像を形成し、ついで潜像をトナーによって現像し、紙等の転写材にトナー画像を転写した後、加熱・加圧等の手段によって定着する。使用するトナーは、従来の単色ブラックのみならず、フルカラー画像を形成するために、複数色のトナーを用いて画像を形成している。
【0003】
トナーは、キャリア粒子と混合して使用される2成分系現像剤と、磁性トナー又は非磁性トナーとして使用される1成分系現像剤とがある。これらトナーの製法は、通常、混練粉砕法により製造される。この混練粉砕法は、バインダー樹脂、顔料、ワックスなどの離型剤、帯電制御剤等を溶融混練し、冷却後に粗粉砕、微粉砕し、これを分級して所望のトナー粒子を製造する方法である。混練粉砕法により製造されたトナー粒子表面には、目的に応じ、表面に無機及び/又は有機の微粒子が添加され、トナーが得られる。
【0004】
混練粉砕法により製造されるトナー粒子の場合、通常、その形状は不定型であり、その表面組成は不均一である。使用材料の粉砕性や粉砕工程の条件により、トナー粒子の形状や表面組成は微妙に変化するが、形状を意図的に制御することは困難である。
【0005】
また、特に粉砕性の高い材料を用いた場合、現像機内での種々のストレスにより、さらに微粉化されたり、形状が変化し、その結果、2成分系現像剤においては、微粉化されたトナーがキャリア表面へ固着して現像剤の帯電劣化が加速されたり、1成分系現像剤においては、粒度分布が拡大し、微粉化されたトナーが飛散したり、トナー形状の変化に伴い現像性が低下し、画質が劣化するという問題が生じていた。
【0006】
また、トナーがワックスなどの離型剤を含む場合、バインダー樹脂と離型剤の界面にて粉砕が起きやすいため、トナーの表面に離型剤が露出することがある。特に高弾性を有する粉砕されにくい樹脂と、ポリエチレンのような脆いワックスからなるトナーの場合、トナーの表面にポリエチレンの露出が多く見られる。このようなトナーは、定着時の離型性や感光体上からの未転写トナーのクリーニングには有利であるものの、トナーの表面のポリエチレンが、現像機内での剪断力等の機械力により、トナーから脱離し、現像ロール、像担持体、及びキャリア等に容易に移行し得る。このため、ワックスによる、現像ロール、像担持体、及びキャリア等汚染が生じ易く、現像剤としての信頼性が低下することがあった。
【0007】
このような事情の下、近年、トナー粒子の形状及び表面組成を意図的に制御したトナーの製造方法として、乳化重合凝集法が提案されている(例えば、特許文献1ないし3参照)。
【0008】
乳化重合凝集法は、乳化重合により樹脂分散液を作成し、一方、溶媒に着色剤を分散させた着色剤分散液を作成し、これらを混合してトナー粒径に相当する凝集粒子を形成した後、加熱することによって融合し、トナー粒子を得る方法である。この乳化重合凝集法によると、加熱温度条件を選択することにより、トナー形状を不定形から球形まで任意に制御することができる。
【0009】
乳化重合凝集法では、少なくとも樹脂微粒子の分散液、及び着色剤の分散液を所定の条件で凝集・融着させることにより得ることができる。しかしながら、乳化重合凝集法は合成し得る樹脂の種類に制約があり、スチレン−アクリル系共重合体の製造には好適だが、定着性が良好であることが知られているポリエステル樹脂を適用することができない。
【0010】
これに対し、ポリエステル樹脂を用いたトナーの製造方法として、有機溶剤に溶解させた溶液に顔料分散液等を添加し、これに水を加える転相乳化法があるが、有機溶剤を除去回収する必要がある。有機溶剤を使用せずに水系媒体中で機械的撹拌により微粒子を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、溶融状態の樹脂等を撹拌装置に供給する必要があり、ハンドリングが困難であった。また、形状制御に対する自由度も低く、トナー形状を不定形から球形まで任意に制御することができなかった。
【0011】
上記問題点を改善した方法として提案されている製法がある(例えば、特許文献5参照)。この製法は、トナー成分材料を溶融混練又は混合した後、加熱により溶融状態にして機械的に微粒子化し、凝集させトナーを作成する。この製法は、有機溶媒を使用することなく、小粒径化、及び形状制御が可能で、表面組成のばらつきが少なく、良好な定着性及び画質を有する現像剤の製造方法を提供することが可能である。
【0012】
この機械的に微粒化する方法としては高圧ホモジナイザーのような高圧型湿式微粒化機が優れている。高圧ホモジナイザーはせん断力が非常に強くトナー成分粒子をサブミクロンオーダーに乳化することが簡易的に、かつ少量の界面活性剤で可能である。
【0013】
また、その微粒子を均一に凝集させトナー粒子を作製すると、均一な組成の小粒径トナーを作製できるため、高画質化及び低CPCが期待できるのに加え、さらに定着性に非常に優れるポリエステルを使用できるため省エネ化が期待できる。
【0014】
この製法において、ポリエステル樹脂の微粒化は、樹脂のTg以上に加熱し、pHをアルカリに調整し、ポリエステル樹脂末端のカルボキシル基を中和しながらせん断力を供すことによって達成されるが、ポリエステル樹脂の加水分解を防止する観点から、微粒化装置としては、瞬間的にせん断力を供すことができる高圧ホモジナイザーが好ましく用いられる。
【0015】
しかしながら、高圧ホモジナイザーを用いてポリエステル樹脂を含むトナー材料粒子を微粒化する際に、ポリエステル樹脂の自己分散性向上のため末端のカルボキシル基を中和すべく、pHをアルカリに調整しなくてはならず、結果として得られる微粒子分散液のpHは残留pH調整剤の影響でアルカリ性になってしまう。この状態で例えば凝集を行うために微粒子分散液を放置すると、その間にポリエステル樹脂のエステル結合が加水分解により分解してしまい、微粒子分散液のpHが徐々に中性に変化していく。その影響で微粒子の凝集性が経時的に変化し、所望のトナー特性を継続的に得ることができず、トナーの生産性が悪くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開昭63−282749号公報
【特許文献2】特開平6−250439号公報
【特許文献3】特開平9−311502号公報
【特許文献4】特開2007−323071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
高圧ホモジナイザーを用いて、微粒子分散液中の微粒子の凝集性を経時的に変化させることなく、所望のトナー特性を有する現像剤を安定して得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
実施形態にかかる現像剤の製造方法は、少なくともバインダー樹脂を含有する粒状化されたトナー材料と、水系媒体と、塩基性高分子界面活性剤0.3重量%以上5重量%未満を含有するトナー材料分散液を調製する工程、
該分散液を機械的せん断に供し、該粒状のトナー材料をさらに細かくして、該粒状のトナー材料の大きさよりも小さい大きさを有する微粒子を形成する工程、及び
前記微粒子の凝集を行い、凝集粒子を形成する工程を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態にかかる現像剤の製造方法の一例を表すフロー図である。
【図2】実施形態に使用可能な高圧式ホモジナイザー構成の一例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施形態にかかる現像剤の製造方法は、
バインダー樹脂を含有する粒状化されたトナー材料と、水系媒体とを含むトナー材料分散液を調製する工程、トナー材料分散液を機械的せん断に供し、粒状のトナー材料を微細に粒状化して、微粒子を形成する工程、及び
前記微粒子の凝集を行い、凝集粒子を形成する工程を含む現像剤の製造方法において、
塩基性高分子界面活性剤がトナー材料分散液に0.3重量%以上5重量%未満含まれていることを特徴とする。
【0021】
以下、図面を参照し、実施の形態をより詳細に説明する。
【0022】
図1は、実施形態にかかる現像剤の製造方法の一例を表すフローを示す。
【0023】
図示するように、少なくともポリエステル樹脂を含む粒状化されたトナー材料を用意する。
【0024】
粒状化されたトナー材料は、粉砕法例えばバインダー樹脂及び任意に着色剤等を含むトナー材料を溶融混練し、混練物を作成した後、粉砕することにより得られる。
【0025】
粒状化されたトナー材料を少なくとも1種類以上の塩基性高分子界面活性剤と水系媒体と混合してトナー材料分散液を得る(Act 1)。
【0026】
該トナー材料分散液をバインダー樹脂のガラス転移点温度(Tg)以上の温度で溶融し、機械的せん断に供して微粒化せしめ、2μmの体積平均粒径を有する微粒子を形成する(Act 2)。
【0027】
得られた微粒子を含む分散液を凝集して、凝集粒子を得る(Act 3)。
【0028】
凝集粒子を冷却(Act 4)、洗浄(Act 5)、及び乾燥する(Act 6)ことにより、トナー粒子を作製する。
【0029】
バインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂を用いることが出来る。
【0030】
ポリエステル樹脂として1以上の酸価を有するポリエステル樹脂を用いることが出来る。
【0031】
なお、凝集粒子の形成(Act3)と、冷却(Act4)との間で、別工程において作成した微粒子を添加し、前記凝集粒子を母粒子としてそこへヘテロ凝集させることにより、凝集粒子のカプセル化を行うことができる。
【0032】
機械的せん断は、高圧ホモジナイザーを用いて行うことが出来る。
【0033】
図2に、実施形態に使用可能な高圧式ホモジナイザー構成の一例を表す概略図を示す。
【0034】
図示するように、高圧ホモジナイザー10は、ホッパータンク1、送液ポンプ2、高圧ポンプ3、高圧ポンプ3の上流側及び下流側にそれぞれ設けられた逆止弁12,13、加熱部4、微粒化部5、減圧部6、冷却部7、及び減圧部8を順に配置した構成と、各部を接続する配管とを含む。
【0035】
ホッパータンク1は、分散液を投入するタンクである。装置稼動時は、装置内に空気を送り込まないよう常に液を満たしておく必要が有る。処理液の粒子径が大きく、沈降性があるものの場合は、さらに攪拌機を設けることができる。
【0036】
送液ポンプ2は、高圧ポンプ3に分散液を連続的に送るために設置する。また、高圧ポンプ3の上流側及び下流側に各々設けられた逆止弁12,13での詰まりを回避するためにも有効である。この送液ポンプ2としては、例えばダイアフラムポンプ、チュービングポンプ、ギアポンプ等が使用できる。
【0037】
高圧ポンプ3は、プランジャー式ポンプであり、図示しない処理液入口及び処理液出口に逆止弁を有する。プランジャーの数は生産規模に応じ、1から10個使用される。脈流を極力減らすために、2個以上あることが望ましい。
【0038】
加熱部4は、オイルバス等の加熱器具内に熱交換面積を多くとるためにらせん状に形成された高圧配管9が設置されている。この加熱部4は、分散液の流れる方向に対し、高圧ポンプ3の上流側または下流側のどちらでも問題が無いが、少なくとも微粒化部5の上流側である必要がある。高圧ポンプ3の上流側に加熱部4を設置する場合は、ホッパー1に加熱装置を付与しても良いが、高温下での滞留時間が長いため、バインダー樹脂の加水分解が起こり易くなる。
【0039】
微粒化部5には、強力なせん断をかけるための微小な径を有するノズルが含まれている。ノズルの径及び形状は様々あるが、ノズル径は0.05mmから0.5mmが望ましく、形状は、通過型ノズル、または衝突型ノズルが望ましい。また、このノズルは多段で構成しても良く、多段にする場合は異なるノズル径を複数並べても良い。複数並べる方法は並列でも直列でも良い。ノズルの材質は高圧に耐えることが可能なダイヤモンド等が使用される。
【0040】
冷却部7には、冷水が連続的に流されるバス内に熱交換面積を多くとるためにらせん状に形成された配管11が設置されている。
【0041】
必要に応じ、上記冷却部7の前後に減圧部6,8を設けることができる。減圧部の構成としては、微粒化部5のノズル径より、大きくかつ接続配管径より小さい流路を有するセル、または2方向バルブを1つ以上配置する。
【0042】
この高圧型湿式微粒化機による処理は以下のように行う。
【0043】
まず、処理液をホッパーに投入し、微粒化処理を行う。
【0044】
処理液は、バインダー樹脂のガラス転移温度Tg以上に加熱される。加熱を行う理由は、バインダー樹脂を溶融させる目的がある。
【0045】
この加熱温度は、バインダー樹脂の溶融特性により異なる。融け易い樹脂は低い温度でも問題無いが、溶け難い樹脂は高い温度が必要となる。また、連続的に熱交換器を通過させ加熱する方法の場合、分散液の流速及び熱交換の配管の長さにも影響する。流速が速い場合や配管が短い場合は高い温度が必要で、逆に流速が遅い場合や配管が長い場合は充分に分散液が加熱されるため、低い温度で処理が可能となる。流量が300から400cc/min、熱交換配管が3/8インチ・12mの高圧配管、バインダー樹脂のTgが60℃、トナーの軟化点Tmが130℃の場合、加熱温度は、100℃から200℃で良い。加熱温度は、好ましくは、ガラス転移温度TgないしTg+150℃の範囲である。加熱温度が高すぎると、バインダー樹脂の加水分解する傾向がある。加熱温度がTgないしTg+150℃程度であれば、定着性が悪化するような問題がない。
【0046】
トナーの軟化点測定は、島津製作所製フローテスターCFT−500の昇温法により行い、フローチャートよりプランジャー降下量の2mmに相当する曲線上の点を軟化点とする。
【0047】
次に、この加熱された分散液を10MPa以上の圧力をかけながらせん断を与える。この時、せん断を与えるのはノズルである。10MPa以上の高圧をかけながら、ノズルを通過することにより、溶融したトナー成分が微粒化される。この時の圧力は10MPaから300MPaあると良い。
【0048】
最後にTg以下まで冷却する。この冷却により、溶融した微粒子が固化される。処理液が急速に冷却されるため、冷却による凝集や合一が起こり難くなる。
【0049】
必要に応じ、上記冷却部の前後に背圧を付与したり、減圧を行っても良い。背圧または減圧とは、ノズル通過後にすぐに大気圧開放するのではなく、1段階(背圧)または、多段階(減圧)で大気圧付近に戻すことを意味する。背圧部または減圧部通過後の圧力は0.1MPa〜10MPa、望ましくは0.1〜5MPaである。この減圧部は径の異なるセル又はバルブを複数個並べるとさらに良い。多段階で減圧することにより粗粒子が少なく粒度分布がシャープな微粒子を得ることができる。
【0050】
この高圧型湿式微粒化機の洗浄には例えばアルカリ性の洗浄液を使用することができる。配管内の汚れが落ち易くなり、次の処理液でのコンタミを最小限に抑えることができる。
【0051】
以上により2μm以下の微粒子を得ることが可能となる。
【0052】
これらの微粒化機には微粒化部の上流部に200℃程度まで加熱可能な熱交換装置が設けられる。また、微粒化部の下流部には樹脂のTg以下までの冷却可能な熱交換装置が設けられる。これによりミクロン〜サブミクロンオーダーの粒子を得ることができる。
【0053】
微粒化により3〜8μm粒子が得られた場合は、そのまま洗浄乾燥しトナー化しても良いが、3μm以下の粒子を得たあと、それらの粒子を凝集することにより3〜8μm粒子の粒子を得ることが望ましい。凝集工程を行うことにより、粒度分布がシャープで、かつトナー成分を均一に内包したトナー粒子が得られる。
【0054】
粉砕法において、溶融混練を行うことにより、着色剤をトナー中に均一分散することができる。二軸押出機やロールミルはずりの力が強く着色剤分散に向いており、また、着色剤は水中で分散させるよりも、粘度の高い樹脂中で分散させたほうが分散し易い。なお、着色剤等を用いずポリエステル樹脂単体を微粒化する場合はこの工程は必要ない。
【0055】
塩基性高分子界面活性剤を用いたトナー材料分散液の形成は、水と親和性の低いトナー成分を水中で分散するために行う。この時に使用する塩基性高分子界面活性剤は1重量%濃度でのpHが10.0以上12未満となるものを選ぶことができる。pH10未満だと十分な中和が行われずポリエステル樹脂を微粒化することができない。また12以上であると、その強い塩基性によりポリエステル樹脂のエステル結合が加水分解し、所望のトナー特性(定着性)が得られない傾向がある。
【0056】
この塩基性高分子界面活性剤は数種を併用しても良いし、必要に応じて通常の界面活性剤と併用することも可能である。
【0057】
機械的せん断は、バインダー樹脂例えばポリエステル樹脂を機械的せん断力により微粒化するために行われる。加熱温度はポリエステル樹脂のTg以上の温度が好ましく、更に好ましくはTg+50℃以上の温度にすることができる。溶融した状態で機械的せん断力によりポリエステル樹脂を微粒化する。このとき、添加した塩基性高分子界面活性剤の影響で微粒化したポリエステル樹脂末端のカルボキシル基が中和されることにより、ポリエステル樹脂の親水性が高まり、更に加えてその界面活性効果により微粒子として安定化され微粒化が達成される。アミン化合物や水酸化ナトリウム等、通常の塩基性化合物を用いてもポリエステル樹脂の微粒化は達成されるが、通常の塩基性化合物は分子量が小さいため分散媒中に残存してしまいその影響で微粒子分散液のpHがアルカリになってしまう傾向がある。このような状態にてポリエステル微粒子分散液を攪拌或いは静置し放置しておくと、ポリエステル樹脂のエステル結合が徐々に加水分解してしまい、pHが中性に向かい、その凝集性が経時変化してしまう。この加水分解は、ポリエステル微粒子分散液作製直後から微視的に発生していることがわかっている。しかしながら、塩基性高分子界面活性剤を用いると、微粒化前後における分散液pHはアルカリにならず中性となる。これは、塩基性高分子界面活性剤ではその分子量が大きいためほとんど系中に残存せずほぼ全ての分子が微粒子の安定化に寄与するためと考えられる。
【0058】
これにより、経時変化のない微粒子分散液が作製可能となる。
【0059】
凝集工程では、得られた微粒子を凝集することによりトナーに必要な粒子径まで成長させることができる。凝集は、微粒子分散液を金属塩等の凝集剤の添加、pH調整、加熱等を行うことにより可能である。凝集後は樹脂のTg以上に加熱し、粒子同士を融着させることができる。この凝集と融着は同時に起きることもある。この後、微粒子をヘテロ凝集させ、カプセル化することができる。このような構成をとることにより、凝集性の経時変化のない微粒子分散液を作製することが可能となり、均一な特性を有するトナー粒子を継続的に作製することができる。
【0060】
着色剤
実施形態に使用可能な着色剤としては、カーボンブラックや有機もしくは無機の顔料や染料などがあげられる。例えばカーボンブラックでは、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。また、イエロー顔料の例としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、81、83、93、95、97、98、109、117、120、137、138、139、147、151、154、167、173、180、181、183、185、C.I.バットイエロー1、3、20などが挙げられる。これらを単独で、あるいは混合して使用することができる。また、マゼンタ顔料の例としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、150、163、184、185、202、206、207、209、238、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35がなど挙げられる。これらを単独で、あるいは混合して使用することができる。また、シアン顔料の例としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、16、17、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45などが挙げられる。これらを単独で、あるいは混合して使用することもできる。
【0061】
離型剤(ワックス)
ワックスとして、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、または、それらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、ライスワックスの如き植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス、オゾケライト、セレシン、ぺトロラタムの如き鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部または全部を脱酸化したものなどがあげられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸、ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸の如き不飽和脂肪酸、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコールの如き飽和アルコール、ソルビトールの如き多価アルコール、リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N′−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N′−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N′−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪酸金属塩(−般に金属石けんといわれているもの)、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス、ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物、植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0062】
帯電制御剤
また、摩擦帯電電荷量を制御するための帯電制御剤としては、例えば含金属アゾ化合物が用いられ、金属元素が鉄、コバルト、クロムの錯体、錯塩、あるいはその混合物が望ましい。その他、含金属サリチル酸誘導体化合物も使用可能であり、金属元素がジルコニウム、亜鉛、クロム、ボロンの錯体、錯塩、あるいはその混合物が望ましい。
【0063】
粗く粒状化された混合物中には、ワックス、及び帯電制御剤のうち少なくとも1つをさらに添加することができる。
【0064】
界面活性剤
実施形態に使用可能な界面活性剤としては、一般的に市販されているものを用いることができる。例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン性界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、及び多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。これら界面活性剤は、1種単独で用いてもいいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
塩基性高分子界面活性剤
ポリエステル樹脂末端の酸価を中和することを目的として、実施形態では塩基性高分子界面活性剤が用いられる。使用可能な塩基性高分子界面活性剤としては、1重量%水溶液のpHが10以上のもの用いる必要がある。このような特性を持つものは、例えばカルボキシル基等の弱酸の官能基を持つポリマーを水酸化ナトリウム等の強塩基にて中和した塩が挙げられる。塩基性高分子界面活性剤の添加量は、微粒化するポリエステル樹脂の酸価等によるが、0.3%ないし5%の範囲内で用いることが好適である。0.1重量%未満では、十分に酸価を中和することができず、ポリエステル樹脂に自己分散性を供与することができないために、所望の微粒子を作製することができない。更に、5重量%以上の添加量では、塩基性高分子界面活性剤同士の立体的な絡み合いにより、所望の微粒子を作製することが非常に困難になる。塩基性高分子界面活性剤は、1種単独で用いても良いし、もちろん2種以上を併用しても良い。
【0066】
高圧ホモジナイザー
実施形態に使用される高圧ホモジナイザーとは、NANO3000(美粒)、ナノマイザー(吉田機械興業)、スターバースト(スギノマシン)、マイクロフルイタイザー(みずほ工業)、ホモゲナイザー(三和機械)等があるが、中でも多段減圧モジュールが搭載されたものが望ましい。高圧状態から一気に大気圧に開放するのではなく、徐々に減圧していくため、バブリングが発生しにくいためである。
【0067】
混練機
実施形態においては、粗く粒状化された混合物を調製するために、少なくともバインダー樹脂と着色剤を含む混合物を混練することができる。
【0068】
使用する混練機は、溶融混練が可能であれば特に限定されないが、例えば1軸押出機、2軸押出機、加圧型ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー等が挙げられる。具体的には、FCM(神戸製鋼所社製)、NCM(神戸製鋼所社製)、LCM(神戸製鋼所社製)、ACM(神戸製鋼所社製)、KTX(神戸製鋼所社製)、GT(池貝社製)、PCM(池貝社製)、TEX(日本製鋼所社製)、TEM(東芝機械社製)、ZSK(ワーナー社製)、及びニーデックス(三井鉱山社製)などが挙げられる。
【0069】
外添剤
実施形態にかかる現像剤には、流動性や帯電性を調整するために、トナー粒子表面に、トナー全重量に対し0.01〜20重量%の無機微粒子を添加混合することができる。このような無機微粒子としてはシリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム、酸化錫、酸化セリウム等を単独であるいは2種以上混合して使用することができる。
【0070】
無機微粒子は疎水化剤で表面処理されたものを使用することが環境安定性向上の観点から好ましい。また、このような無機酸化物以外に1μm以下の樹脂微粒子をクリーニング性向上のために外添してもよい。
【0071】
無機微粒子等の混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)、スーパーミキサー(カワタ社製)、リボコーン(大川原製作所社製)、ナウターミキサー(ホソカワミクロン社製)、タービュライザー(ホソカワミクロン社製)、サイクロミキサー(ホソカワミクロン社製)、スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製)、レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられる。
【0072】
実施形態によれば、更に粗粒などをふるい分けすることができる。篩に用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製)、ジャイロシフター(徳寿工作所社)、バイブラソニックシステム(ダルトン社製)、ソニクリーン(新東工業社製)、ターボスクリーナー(ターボ工業社製)、ミクロシフター(槙野産業社製)、及び円形振動篩い等が挙げられる。
【0073】
以下、実施例を示し、実施形態をより具体的に説明する。
【0074】
トナー組成混練物の作製
銅フタロシアニン顔料(大日精化製)5重量部、ライスワックス(5重量部)、ポリエステル樹脂(酸価10mgKOH/g,Mw15000,Tg58℃)90重量部を、120℃に設定した2軸混練機にて溶融混練し、トナー組成混練物を得た。得られた混練物をホソカワミクロン製パルベライザにて体積平均50μmに粗粉砕し、トナー組成粗粒子を得た。
【0075】
実施例1
ポリカルボン酸塩(花王社製ポイズ521)1.0重量部、イオン交換水69重量部を混合した水溶液を攪拌しながら、トナー組成粗粒子30重量部を徐々に投入して行き分散液を得た。得られた分散液を真空攪拌により脱泡処理し、ノズル前後に加熱ユニットと冷却ユニットを設置した高圧ホモジナイザーに投入し、連続的に、180℃、150MPaにて加熱、微粒化、減圧、冷却を行い、微粒化処理を行い、微粒子分散液を得た。
【0076】
島津製作所製SALD7000にて得られた微粒子の粒子径の測定を行ったところ、体積平均粒径0.8μm、標準偏差0.15のシャープな粒度分布であった。更に得られた分散液のpHは7.0であり中性であった。
【0077】
この微粒子分散液を作製直後に攪拌槽にて攪拌しながら、塩酸を用いてpHを5に調整し、85℃まで加熱し30分間攪拌し続けたところ、体積平均粒径5.3μm、CVv19%のシャープな粒度分布を有するトナー粒子を作成することができた。
【0078】
微粒子分散液を作製から1週間後にpH測定を行ったところ、pHは7.0のままであった。更に、同様に攪拌しながら塩酸を用いてpHを5に調整し、85℃まで過熱し30分間攪拌し続けたところ、体積平均粒径5.3μ、体積換算の粒度分布の変動係数CVv 19%のシャープな粒度分布を有するトナー粒子を作成することができ、微粒子作製直後に作製したトナー粒子と同等のものを作製することができた。
【0079】
微粒子作製直後と1週間後に作製したトナー粒子を洗浄乾燥し、トナー粒子100重量部に対し、疎水性シリカ2重量部、酸価チタン0.5重量部をトナー粒子表面に付着させ、定着温度を制御できるように改造した東芝テック社製複合機e−STUDIO 281cに投入し評価を行ったところ、両者とも120℃〜170℃の範囲のオフセット領域を有しており、定着性に関して優位差のないトナーであることが確認された。
【0080】
実施例2
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王社製ネオペレックスG−15)0.3重量部、ポリカルボン酸塩(花王社製ポイズ521)0.7重量部、イオン交換水69重量部を混合した水溶液を攪拌しながらトナー組成粗粒子30重量部を徐々に投入していき分散液を得た以外実施例1と同様にして微粒子分散液を得た。
【0081】
得られた微粒子は、体積平均粒径0.5μm、標準偏差0.18のシャープな粒度分布であった。更に得られた分散液のpHは6.8であり中性であった。また、1週間後の分散液のpHは6.8のままであった。
【0082】
この微粒子を用いて実施例1と同様に直後と1週間後にトナー粒子を作製したところ、どちらとも体積平均粒径5.0μm、CVv18%のシャープな粒度分布を有するトナー粒子を作成することができた。
【0083】
更に同様にトナー粒子を洗浄乾燥し、外添剤をトナー粒子表面に付着させ評価を行ったところ、両者とも120℃〜170℃の範囲のオフセット領域を有しており、定着性は優位差のないトナーであることが確認された。
【0084】
比較例1
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3重量部、イオン交換水69重量部を混合した水溶液を攪拌しながらトナー組成粗粒子30重量部を投入していき、得られた分散液を真空攪拌により脱泡処理した後にジメチルアミノエタノール0.7重量部を添加してpHを11に調製した分散液を微粒化処理した以外は実施例と同様にして微粒子分散液を得た。
【0085】
得られた微粒子は、体積平均粒径0.5μm、標準偏差0.17のシャープな粒度分布であり、分散液のpHは9.5であった。また、1週間後のpHは8.2であり直後に比べて中性よりにpHが変化していた。
【0086】
この微粒子を用いて実施例1と同様に直後と1週間後にトナー粒子を作製したところ、直後は体積平均粒径5.2μm、CVv18.3%のシャープな粒度分布を有するトナー粒子を作成することができたが、1週間後は体積平均粒径5.6μm、CVv23.5%と若干ブロードな粒度分布のトナーとなり、凝集しない微粒子や過度に凝集する粗大粒子を含むトナーとなった。
【0087】
更に同様にトナー粒子を洗浄乾燥し、外添剤をトナー粒子表面に付着させ評価を行ったところ、直後に作製したトナーが120℃〜170℃の範囲のオフセット領域を有しているのに対して、1週間後に作製したトナーは、高温側のオフセット領域が15℃程度削れる結果となった。これはポリエステル樹脂が加水分解してしまった結果であると予測される。
【0088】
比較例2
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3重量部、イオン交換水69.4重量部を混合した水溶液を攪拌しながらトナー組成粗粒子30重量部を投入していき、得られた分散液を真空攪拌により脱泡処理した後に水酸化ナトリウム0.3重量部を添加してpHを12に調整した分散液を微粒化処理した以外は実施例と同様にして微粒子分散液を得た。
【0089】
得られた微粒子は、体積平均粒径0.4μm、標準偏差0.17のシャープな粒度分布であり、分散液のpHは8.4であった。また、1週間後のpHは7.4であり直後に比べて中性よりにpHが変化していた。
【0090】
この微粒子を用いて実施例1と同様に直後と1週間後にトナー粒子を作製したところ、直後は体積平均粒径5.0μm、CVv19.2のシャープな粒度分布を有するトナー粒子を作成することができたが、1週間後は体積平均粒径6.2μm、CVv25.4%と、若干粒径が大きくなり、更に凝集しない微粒子や過度に凝集する粗大粒子を含むトナーとなった。
【0091】
更に同様にトナー粒子を洗浄乾燥し、外添剤をトナー粒子表面に付着させ評価を行ったところ、直後に作製したトナーが120℃〜170℃の範囲のオフセット領域を有しているのに対して、1週間後に作製したトナーは、直後に作製したトナーと比べて定着性に関して、高温側のオフセット領域が20℃程度削れる結果となった。これはポリエステル樹脂が加水分解してしまった結果であると予測される。
【0092】
実施例3
ポリカルボン酸塩(花王社製ポイズ521)を0.3重量部にした以外、実施例1と同様に微粒化処理を行ったところ、体積平均粒径1.2μm、標準偏差0.18のシャープな粒度分布であった。更に得られた分散液のpHは6.9であり中性であった。
【0093】
この微粒子分散液を作製直後に攪拌槽にて攪拌しながら、塩酸を用いてpHを5に調整し、85℃まで加熱し30分間攪拌し続けたところ、体積平均粒径5.8μ、CVv21%のシャープな粒度分布を有するトナー粒子を作成することができた。
【0094】
微粒子分散液を作製から1週間後にpH測定を行ったところ、pHは7.0のままであった。更に、同様に攪拌しながら塩酸を用いてpHを5に調整し、85℃まで過熱し30分間攪拌し続けたところ、体積平均粒径5.8μ、CVv21%のシャープな粒度分布を有するトナー粒子を作成することができ、微粒子作製直後に作製したトナー粒子と同等のものを作製することができた。
【0095】
微粒子作製直後と1週間後に作製したトナー粒子を洗浄乾燥し、トナー粒子100重量部に対し、疎水性シリカ2重量部、酸価チタン0.5重量部をトナー粒子表面に付着させ、定着温度を制御できるように改造した東芝テック社製複合機e−STUDIO 281cに投入し評価を行ったところ、両者とも120℃〜170℃の範囲のオフセット領域を有しており、定着性に関して優位差のないトナーであることが確認された。
【0096】
実施例4
ポリカルボン酸塩(花王社製ポイズ521)を4.9重量部にした以外、実施例1と同様に微粒化処理を行ったところ、体積平均粒径1.5μm、標準偏差0.25のシャープな粒度分布であった。更に得られた分散液のpHは7.1であり中性であった。
【0097】
この微粒子分散液を作製直後に攪拌槽にて攪拌しながら、塩酸を用いてpHを5に調整し、85℃まで加熱し30分間攪拌し続けたところ、体積平均粒径6.3μ、CVv17%のシャープな粒度分布を有するトナー粒子を作成することができた。
【0098】
微粒子分散液を作製から1週間後にpH測定を行ったところ、pHは7.0のままであった。更に、同様に攪拌しながら塩酸を用いてpHを5に調整し、85℃まで過熱し30分間攪拌し続けたところ、体積平均粒径6.3μ、CVv17%のシャープな粒度分布を有するトナー粒子を作成することができ、微粒子作製直後に作製したトナー粒子と同等のものを作製することができた。
【0099】
微粒子作製直後と1週間後に作製したトナー粒子を洗浄乾燥し、トナー粒子100重量部に対し、疎水性シリカ2重量部、酸価チタン0.5重量部をトナー粒子表面に付着させ、定着温度を制御できるように改造した東芝テック社製複合機e−STUDIO 281cに投入し評価を行ったところ、両者とも120℃〜170℃の範囲のオフセット領域を有しており、定着性に関して優位差のないトナーであることが確認された。
【0100】
比較例3
ポリカルボン酸塩(花王社製ポイズ521)を0.2重量部にした以外、実施例1と同様に微粒化処理を行ったところ、体積平均粒径2.4μm、標準偏差0.54のブロードな粒度分布であった。更に得られた分散液のpHは6.9であり中性であった。
【0101】
この微粒子分散液を作製直後に攪拌槽にて攪拌しながら、塩酸を用いてpHを5に調整し、85℃まで加熱し30分間攪拌し続けたところ、体積平均粒径8.4μ、CVv43%のブロードな粒度分布を有する粒子を作成することができたが、粗大粒子を多く含んでおり、以降の評価は行わなかった。
【0102】
比較例4
ポリカルボン酸塩(花王社製ポイズ521)を5重量部にした以外、実施例1と同様に微粒化処理を行ったところ、体積平均粒径2.3μm、標準偏差0.61のブロードな粒度分布であった。更に得られた分散液のpHは6.9であり中性であった。
【0103】
この微粒子分散液を作製直後に攪拌槽にて攪拌しながら、塩酸を用いてpHを5に調整し、85℃まで加熱し30分間攪拌し続けたところ、体積平均粒径7.8μ、CVv44%のブロードな粒度分布を有する粒子を作成することができたが、粗大粒子を多く含んでおり、以降の評価は行わなかった。
【符号の説明】
【0104】
3…高圧ポンプ、5…微粒化部、10…高圧ホモジナイザー、12,13…逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともバインダー樹脂を含有する粒状化されたトナー材料と、水系媒体と、塩基性高分子界面活性剤0.3重量%以上5重量%未満を含有するトナー材料分散液を調製する工程、
該分散液を機械的せん断に供し、該粒状のトナー材料をさらに細かくして、該粒状のトナー材料の大きさよりも小さい大きさを有する微粒子を形成する工程、及び
前記微粒子の凝集を行い、凝集粒子を形成する工程を具備する現像剤の製造方法。
【請求項2】
前記トナー材料分散液は、前記塩基性高分子界面活性剤によりpH10以上12未満に調整されている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微粒子は、0.01μm以上2μm未満の体積平均粒子径を有する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記バインダー樹脂はポリエステル樹脂である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂は1mgKOH/g以上の酸価を有する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粒状化された混合物は、前記バインダー樹脂及び前記着色剤を含有する混合物を溶融混練して粗粉砕する工程により得られる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記機械的せん断は、高圧ホモジナイザーを用いて行われる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記微粒子の凝集は、pH調整と加熱をさらに含む請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記粒状化されたトナー材料は、さらに着色剤を含有する請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくともバインダー樹脂を含有する粒状化されたトナー材料と、水系媒体と、塩基性高分子界面活性剤0.3重量%以上5重量%未満を含有するトナー材料分散液を調製する工程、及び
該分散液を機械的せん断に供し、該粒状のトナー材料を微細に粒状化して、微粒子を形成する工程、
前記微粒子の凝集を行い、凝集粒子を形成する工程により得られたトナー粒子を含有することを特徴とする現像剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−282205(P2010−282205A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127099(P2010−127099)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】