説明

現金入金装置

【課題】入金処理中断後の対処を正確に行う。
【解決手段】硬貨が入金される硬貨入金口11と、入金された硬貨を装置内部に取り込む硬貨入金搬送路12と、装置内部に取り込まれた硬貨を計数する制御部30と、計数により入金が確定した硬貨を収納する硬貨収納庫13とを備える現金入出金機1であって、硬貨の入金処理が中断されたとき、硬貨入金搬送路12上に残っている硬貨が、計数済みの入金確定硬貨であるか否かを表示する硬貨確定/未確定表示部を備え、また、紙幣の入金処理が中断されたとき、紙幣入金搬送路22上に残っている紙幣や、紙幣収納庫23に完全に収納されていない紙幣が、計数済みの入金確定紙幣であるか否かを表示する紙幣確定/未確定表示部を備える構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小売業のレジや銀行窓口等で使用される、硬貨、紙幣などの現金を自動的に入出金処理するための現金入金装置に関し、特に、貨幣の搬送エラーや停電等により入金処理が停止した場合にも、容易かつ迅速・的確に処理の復旧等を行える現金入金装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硬貨、紙幣などの現金を自動的に入金処理(取り込み、計数及び収納)する現金入金装置が知られている。
この種の現金入金装置は、現金を取り扱うATMやPOSレジ、両替機、自動販売機、券売機等に備えられる現金入出金機として、様々な現金取り扱い装置に組み込まれている。
例えば、現金入出金機は、小売業のレジや銀行窓口で使用される比較的小型の現金取り扱い装置であり、専門の操作者(スーパーであればレジ係り、銀行であれば行員)による操作に応じて、現金の入金処理や出金処理を自動的に行うようになっている。
【0003】
以下、一般的な現金入出金機の構成について、図面を参照して説明する。
図15は、従来の一般的な現金入出金機の構成を示す斜視図である。
また、図16は、従来例に係る現金入出金機の硬貨処理部を示す概略平面図であり、図17は、同じく従来例に係る現金入出金機の硬貨処理部を示す概略側面図、図18は、同じく従来例に係る現金入出金機の紙幣処理部を示す概略平面図、さらに、図19は、同じく従来例に係る現金入出金機の紙幣処理部を示す概略側面図である。
これらの図に示すように、現金入出金機100は、硬貨の入金処理及び出金処理を行う硬貨処理部110と、紙幣の入金処理及び出金処理を行う紙幣処理部120と、これらを制御する制御部130とを備えている。
【0004】
硬貨処理部110は、硬貨が入金される硬貨入金口111と、入金された硬貨を装置内部に取り込む硬貨入金搬送路112と、計数により入金が確定した硬貨を収納する硬貨収納庫113と、硬貨が出金される硬貨出金口114とを備えている。
硬貨入金口111に投入された硬貨は、硬貨入金搬送路112を通って装置内部に取り込まれるとともに、制御部130により計数され、その後、入金確定硬貨として硬貨収納庫113に収納される。
また、硬貨収納庫113内の硬貨は、操作者の硬貨の出金の指示・操作に応じて、硬貨出金口114から出金される。
【0005】
紙幣処理部120は、紙幣の入出金が行われる紙幣入出金口121と、入金された紙幣を装置内部に取り込む紙幣入金搬送路122と、計数により入金が確定した紙幣を収納する紙幣収納庫123とから構成される。
紙幣入出金口121に投入された紙幣は、紙幣入金搬送路122を通って装置内部に取り込まれるとともに、制御部130により計数され、その後、入金確定紙幣として紙幣収納庫123に収納される。
また、紙幣収納庫123内の紙幣についても、操作者が紙幣の出金を指示・操作することにより、紙幣入出金口121から出金されるようになっている。
【0006】
制御部130は、図示しない硬貨の通過を検出するためのセンサや、硬貨の種類を識別するためのセンサ、紙幣の通過を検出するためのセンサ、紙幣の種類を識別するためのセンサなどから信号を入力し、これらの信号に応じて硬貨処理部110や紙幣処理部120の動作を制御して、貨幣(硬貨・紙幣)の入出金処理を行わせる。
入出金される硬貨や紙幣は、この制御部130によって計数処理され、装置内に収納された硬貨収納個数、紙幣収納枚数などが管理されるようになっている。
そして、以上のような硬貨処理部110、紙幣処理部120、制御部130等の各部が、ケースとなる筐体140内に引き出し可能に収納されるようになっている。
この種の、従来の現金入出金装置としては、例えば、特許文献1−4に記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−312827号公報
【特許文献2】特開平03−083753号公報
【特許文献3】特開昭62−210843号公報
【特許文献4】特開2001−155220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、以上のような従来の現金入出金機では、現金の詰りや停電により入金処理が中断した場合に、以下に示すような問題点があった。
まず、第1の問題点は、現金の入金処理が中断されたとき、搬送路上に残っている現金が、計数済みであるか否かを正確に判別できないケースがあることである。
具体的に説明すると、従来の現金入金機では、硬貨の場合、図16及び図17に示すように、硬貨入金搬送路112上に硬貨確定ラインL1が引かれており、硬貨が硬貨確定ラインL1を完全に越えると、計数済みの入金確定硬貨として判定されるようになっている。
【0009】
ところが、停電やエラー等によって処理が中断した場合、状況によっては、硬貨の端などが硬貨確定ラインL1に接した状態で停止しているケースがあり、このような場合には、その硬貨が計数済みであるのか否かを正確に判別することが困難であった。
同様に、紙幣の場合は、図18及び図19に示すように、紙幣が紙幣確定ライン(紙幣収納庫端)L2を越えて、紙幣収納庫23に完全に収まっていた場合に、計数済みの入金確定紙幣と判定されるようになっており、処理中断時の状況によっては、紙幣の端が紙幣確定ラインL2に接した状態で停止しているようなケースがあり、このような場合には、その紙幣が計数済みであるか否かを正確に判別することができなかった。
【0010】
第2の問題点は、処理中断時に、硬貨収納庫内に誤落下(誤選別)した硬貨の有無を容易に確認できないことである。
具体的に説明すると、図16及び図17に示すように、硬貨入金搬送路112には、各硬貨サイズに合わせた複数の硬貨落下穴115が設けられており、硬貨収納庫113には、硬貨を種類別に収納する複数の硬貨収納室116が設けられている。そして、装置内部に取り込まれた硬貨は、金種に応じていずれかの硬貨落下穴115に落下し、各金種別の硬貨収納室116へ振り分けられるようになっている。
より具体的には、複数の硬貨落下穴115は、手前側(図面左側)ほど小さく、奥側(図面右側)ほど大きくなるように並べられており、径の小さい硬貨から順番に手前の硬貨落下穴115に落ちていくようになっている。
【0011】
ところが、処理が突然中断・停止した場合、硬貨入金搬送路112を移動していた硬貨は、慣性力等により直ちに停止せずに挙動が不安定となり、例えば、5円硬貨用の硬貨落下穴115に百円硬貨が落ちる等、所定以外の硬貨落下穴115に落ちるケースがある。これを誤落下という。
従って、硬貨の入金処理が停止・中断した場合には、各硬貨収納室16内に収納された硬貨を目視して、誤落下の有無を確認する必要がある。
しかし、現金入出金機では、通常、操作者等による不正(現金抜き取り)や盗難等を防止するために、硬貨収納庫113が錠付きの硬貨収納庫蓋117で覆蓋されている。
このため、硬貨収納庫蓋の鍵を持っている管理者でなければ、硬貨収納室116内を目視確認することができず、操作者による簡易・迅速な誤落下の目視・確認が行えないという問題があった。
【0012】
さらに、第3の問題点は、従来の現金入出金機では、停電により処理が中断した場合、操作者による復旧作業がきわめて困難であることである。
具体的に説明すると、入金処理中に停電が発生した場合は、搬送路上には搬送途中の貨幣(硬貨・紙幣)が残ることになる。
従って、操作者は、装置を開け、搬送路上に残っている現金が計数済みであるか否かを判別し、かつ、その搬送途中の現金について、計数済みであるならば収納庫に収納し、未計数であるならば再度入金操作を行うという復旧作業を行わなければならない。
しかしながら、上述したように、搬送途中の現金が計数済みであるか否かの判別はきわめて困難であり、また、収納庫の開閉も自由に行うことができず、復旧作業はきわめて煩瑣な作業になるという問題があった。
【0013】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題を解決するために提案されたものであり、貨幣の搬送エラーや停電等により入金処理が停止した場合にも、容易かつ迅速・的確に処理の復旧等が行え、入金処理中断後の対処を正確に行うことができる現金入金装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため本発明の現金入金装置は、請求項1に記載するように、所定の貨幣が投入される貨幣投入口と、投入された貨幣を装置内部に搬送する貨幣搬送路と、装置内部に搬送された貨幣を計数処理する制御部と、計数処理により入金が確定した貨幣を収納する貨幣収納庫と、を備えるとともに、前記貨幣搬送路上の貨幣が、計数処理済みの確定貨幣であるか否かを示す貨幣確定/未確定表示を表示する貨幣確定/未確定表示部を備える構成としてある。
より具体的には、請求項2に記載するように、前記貨幣搬送路上に配設される、計数処理済みの確定貨幣であるか否かの基準となる貨幣確定ラインと、前記貨幣搬送路の貨幣が前記貨幣確定ラインに到達したことを検知するセンサと、を備え、前記貨幣確定/未確定表示部が、前記センサからの当該貨幣の検知信号により、前記貨幣未確定表示を表示するとともに、前記制御部による当該貨幣の計数処理が完了することにより、前記貨幣確定表示を表示する構成としてある。
【0015】
このような構成からなる本発明の現金入金装置によれば、貨幣(硬貨又は紙幣)の入金処理が中断されたとき、装置内の搬送路上に残っている貨幣の端部などが貨幣確定ラインに接しているようなケースであっても、貨幣確定/未確定表示部の表示に基づいて、計数済みの入金確定貨幣であるか否かを正確に判別し、入金処理中断後の対処を正確に行うことができる。
【0016】
例えば、貨幣が硬貨の場合であれば、硬貨確定ラインに到達した硬貨を対象として確定/未確定表示が行われ、硬貨の入金処理が中断されたとき、硬貨入金搬送路上に複数の硬貨が残っているようなケースであっても、どの硬貨に関する確定/未確定表示であるかを容易に認識し、その硬貨が計数済みの入金確定硬貨であるか否かを正確に判別することができる。
また、貨幣が紙幣の場合にも、紙幣確定ライン(紙幣収納庫端)に到達した紙幣を対象として確定/未確定表示が行われるので、紙幣の入金処理が中断されたとき、紙幣入金搬送路上に複数の紙幣が残っているようなケースであっても、どの紙幣に関する確定/未確定表示であるかを容易に認識し、その紙幣が計数済みの入金確定紙幣であるか否かを正確に判別することができる。
【0017】
また、本発明の現金入金装置は、請求項3に記載するように、所定の貨幣が投入される貨幣投入口と、投入された貨幣を装置内部に搬送する貨幣搬送路と、装置内部に搬送された貨幣を収納する貨幣収納庫と、を備えるとともに、前記貨幣収納庫が、収納した貨幣を外部から視認可能な収納貨幣確認手段を備える構成としてある。
より具体的には、請求項4に記載するように、前記収納貨幣確認手段が、前記貨幣収納庫の一部又は全部を形成する透明部材からなる構成としてある。
【0018】
このような構成からなる本発明の現金入金装置によれば、例えば硬貨の入金処理が中断した場合に、硬貨収納庫蓋の鍵を持っていない操作者でも、各硬貨収納室内に収納された硬貨を外部から目視することができる。
これにより、エラー等により搬送が停止して硬貨の誤落下が発生した場合にも、その誤落下の有無を容易かつ迅速に確認することができるようになり、硬貨収納庫蓋の鍵を持っている管理者を呼んで誤落下を確認する従来の場合と比較して、停止・中断した処理を迅速に再開・復旧させることができる。
【0019】
また、本発明の現金入金装置は、請求項5に記載するように、所定の貨幣が投入される貨幣投入口と、投入された貨幣を装置内部に搬送する貨幣搬送路と、装置内部に搬送された貨幣を収納する貨幣収納庫と、装置の駆動電力を供給する電源装置と、装置の各部を制御する制御手段と、を備えるとともに、前記電源装置からの電力供給が停止した場合に、当該装置に電力を供給する無停電電源装置を備える構成としてある。
より具体的には、請求項6に記載するように、前記無停電電源装置が、停電状態であるか否かを示す停電中/非停電中信号を出力するとともに、前記制御手段が、当該停電中/非停電中信号により停電状態を検知すると、処理途中の貨幣の前記貨幣収納庫への収納処理を完了させるとともに、前記貨幣投入口からの新たな貨幣の投入を受け付けさせない構成としてある。
【0020】
このような構成からなる本発明の現金入金装置によれば、停電が発生して装置の電源装置からの電源供給が停止した場合でも、無停電電源装置からの電源供給によって、処理途中の入金処理も停止させることなく完了させることができる。
従って、停電が発生した場合にも、停電解消後の復旧作業が不要となり、操作者等の作業負担等が大幅に軽減される。
また、停電中は、新規な入金を受け付けないようにすることができ、無停電電源装置の有限な電源バックアップを無駄なく使用でき、バックアップ電源の不必要な消費等を確実に防止することができる。
【0021】
さらに、本発明の現金入金装置は、請求項7に記載するように、所定の貨幣が投入される貨幣投入口と、投入された貨幣を装置内部に搬送する貨幣搬送路と、装置内部に搬送された貨幣の搬送位置を検出するセンサと、装置内部に搬送された貨幣を収納する貨幣収納庫と、装置の駆動電力を供給する電源装置と、装置の各部を制御する制御手段と、を備えるとともに、前記センサで検出された貨幣の搬送位置情報を記憶するバックアップメモリを備える構成としてある。
より具体的には、請求項8に記載するように、前記制御手段が、前記電源装置からの電力供給が停止した場合に、当該停電状態の解消後、前記バックアップメモリに記憶された搬送位置情報に基づいて、停電により中断した貨幣の搬送・収納処理を続行させる構成としてある。
【0022】
このような構成からなる本発明の現金入金装置によれば、停電により装置が停止して入金処理等が中断しても、バックアップメモリに記憶された搬送位置情報に基づいて、停電時に搬送が停止された貨幣の位置・処理状態を確認することができる。
これにより、中断・停止した入金処理を、停電の復旧後に容易かつ迅速に続行することができ、操作者等による停電解消後の復旧作業が大幅に軽減・解消されることになる。
【0023】
そして、以上のような本発明の現金入金装置では、請求項9に記載するように、前記所定の貨幣が硬貨からなる構成とすることができ、また、請求項10に記載するように、前記所定の貨幣が紙幣からなる構成とすることができる。
このように、本発明の現金入金装置では、処理対象となる貨幣は、硬貨であっても紙幣であってもよく、硬貨と紙幣が混在・併用して処理されるPOSレジや銀行の入出金機、自動販売機等に好適な、汎用性・拡張性に優れた現金入金装置として実現することができる。
勿論、本発明の現金入金装置としては、硬貨・紙幣の併用ができるとともに、硬貨のみに、あるいは紙幣のみに対応した現金入金装置としても実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、貨幣の搬送エラーや停電等により入金処理が停止した場合にも、容易かつ迅速・的確に処理の復旧等が行え、入金処理中断後の対処を正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の現金入金装置の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
[第一実施形態]
まず、本発明の第一の実施形態に係る現金入金装置について、図1〜図11を参照して説明する。
図1は、本発明の現金入金装置の第一実施形態に係る現金入出金機の構成を示す斜視図である。
図2は、図1に示す本実施形態に係る現金入出金機の硬貨処理部を示す概略平面図であり、図3は、同じく本実施形態に係る現金入出金機の硬貨処理部を示す概略側面図、図4は、同じく本実施形態に係る現金入出金機の紙幣処理部を示す概略平面図、また、図5は、同じく本実施形態に係る現金入出金機の紙幣処理部を示す概略側面図である。
【0026】
これらの図に示す本実施形態の現金入出金機1は、小売業のレジや銀行窓口で使用される比較的小型の現金取り扱い装置であり、専門の操作者(スーパーであればレジ係り、銀行であれば行員)による操作に応じて、現金の入金処理や出金処理を自動的に行う。
そして、本実施形態の現金入出金機1は、硬貨の入金処理及び出金処理を行う硬貨処理部10と、紙幣の入金処理及び出金処理を行う紙幣処理部20と、これらを制御する制御部30とを備えている。
【0027】
硬貨処理部10は、硬貨が入金される硬貨入金口11と、入金された硬貨を装置内部に取り込む硬貨入金搬送路12と、計数により入金が確定した硬貨を収納する硬貨収納庫13と、硬貨が出金される硬貨出金口14を備えている。
硬貨入金口11に投入された硬貨は、硬貨入金搬送路12を通って装置内部に取り込まれるとともに、制御部30により計数され、その後、入金確定硬貨として硬貨収納庫13に収納される。
また、硬貨収納庫13内の硬貨は、操作者の硬貨の出金の指示・操作に応じて、硬貨出金口14から出金される。
【0028】
紙幣処理部20は、紙幣の入出金が行われる紙幣入出金口21と、入金された紙幣を装置内部に取り込む紙幣入金搬送路22と、計数により入金が確定した紙幣を収納する紙幣収納庫23を備えている。
紙幣入出金口21に投入された紙幣は、紙幣入金搬送路22を通って装置内部に取り込まれるとともに、制御部30により計数され、その後、入金確定紙幣として紙幣収納庫23に収納される。
また、紙幣収納庫23内の紙幣についても、操作者が紙幣の出金を指示・操作することにより、紙幣入出金口21から出金されるようになっている。
【0029】
制御部30は、現金入金機1の各部を制御する制御手段であり、本実施形態では、図示しない硬貨の通過を検出するためのセンサや、硬貨の種類を識別するためのセンサ、紙幣の通過を検出するためのセンサ、紙幣の種類を識別するためのセンサなどから信号を入力し、これらの信号に応じて硬貨処理部10や紙幣処理部20の動作を制御して、貨幣(硬貨・紙幣)の入出金処理を行わせる。
入出金される硬貨や紙幣は、制御部30によって計数処理され、装置内における硬貨収納個数、紙幣収納枚数などが管理されるようになっている。
そして、以上のような硬貨処理部10、紙幣処理部20、制御部30等の各部が、ケースとなる筐体40内に引き出し可能に収納されるようになっており、現金入金装置1単体として、あるいは、POSレジやATM機、自動販売機等の一部に組み込まれて、現金の入出金機として使用されることになる。
【0030】
ここで、一般に流通している現金(貨幣)は、様々な状態となっており、例えば紙幣であれば、折れ曲がっていたり一部に汚れや欠損等があったり、硬貨の場合にも汚れや変形等があることが少なくない。このような様々な状態の現金を現金入出金機1で入金処理する場合、装置内部で現金が詰まる等のエラーが生じることがある。
例えば、装置内部で現金が詰まった場合、入金された現金の処理が中断され、搬送路上に現金が残る。この場合、操作者は、筐体40から装置を引き出して装置内部を開き、搬送路上に残っている現金が計数済みであるか否かを判別した上で、この現金を取り上げ、この現金が計数済みであるならば収納庫に収納し、未計数であるならば再度入金操作を行うことになる。
【0031】
上述したように、現金の入金処理が中断されたとき、搬送路上に残っている現金が計数済みであるか否かは、通常、確定ラインL1、L2を越えているか否かに基づいて判別される。
例えば、硬貨の場合は、図2及び図3に示すように、硬貨入金搬送路12上に硬貨確定ラインL1が引かれており、硬貨が硬貨確定ラインL1を完全に越えていれば、計数済みの入金確定硬貨と判断されるが、処理中断時の状況によっては、硬貨の端などが硬貨確定ラインL1に接した状態で停止しているケースがある。
また、紙幣の場合は、図4及び図5に示すように、紙幣が紙幣確定ライン(紙幣収納庫端)L2を越えて、紙幣収納庫23に完全に収まっていた場合に、計数済みの入金確定紙幣と判断されるが、処理中断時の状況によっては、紙幣の端が紙幣確定ラインL2に接した状態で停止しているケースがある。
【0032】
本実施形態に係る現金入出金機1では、現金の入金処理が中断されたとき、搬送路上に残っている現金の端が確定ラインL1、L2に接しているようなケースであっても、計数済みであるか否かを正確に判別できるようにするために、確定/未確定表示部H1、H2を備えている。
具体的には、硬貨処理部10では、硬貨入金搬送路12上に残っている硬貨が、計数済みの入金確定硬貨であるか否かを表示する硬貨確定/未確定表示部H1を硬貨確定ラインL1の近傍に設けてある。
このようにすると、硬貨の入金処理が中断されたとき、硬貨入金搬送路12上に残っている硬貨の端が硬貨確定ラインL1に接しているようなケースであっても、硬貨確定/未確定表示部H1の表示に基づいて、計数済みの入金確定硬貨であるか否かを正確に判別し、入金処理中断後の対処を正確に行うことができる。
【0033】
また、紙幣処理部20では、紙幣入金搬送路22上に残っている紙幣や、紙幣収納庫23に完全に収納されていない紙幣が、計数済みの入金確定紙幣であるか否かを表示する紙幣確定/未確定表示部H2を、紙幣確定ラインL2の近傍に設けてある。例えば、紙幣入金搬送路22に形成される紙幣収納搬送路口24の一端部に紙幣確定/未確定表示部H2を設けるようにする。
このようにすると、紙幣の入金処理が中断されたとき、紙幣入金搬送路22上に残っている紙幣や、紙幣収納庫23に完全に収納されていない紙幣の端が紙幣確定ライン(紙幣収納庫端)L2に接しているようなケースであっても、紙幣確定/未確定表示部H2の表示に基づいて、計数済みの入金確定紙幣であるか否かを正確に判別し、入金処理中断後の対処を正確に行うことができる。
【0034】
確定/未確定表示部H1、H2は、入金された現金が確定/未確定の境界である確定ラインL1、L2に到達したら未確定表示状態となり、その現金の計数が終わったら確定表示状態となるように表示制御することが好ましい。
例えば、硬貨の場合は、入金された硬貨が、確定/未確定の境界である硬貨確定ラインL1に到達したら、硬貨確定/未確定表示部H1を未確定表示状態とし、その硬貨の計数が終わったら、硬貨確定/未確定表示部H1を確定表示状態とする。
このようにすると、硬貨確定ラインL1に到達した硬貨を対象として確定/未確定表示が行われるので、硬貨の入金処理が中断されたとき、硬貨入金搬送路12上に複数の硬貨が残っているようなケースであっても、どの硬貨に関する確定/未確定表示であるかを容易に認識し、その硬貨が計数済みの入金確定硬貨であるか否かを正確に判別することができる。
【0035】
また、紙幣の場合は、入金された紙幣が、確定/未確定の境界である紙幣確定ラインL2に到達したら、紙幣確定/未確定表示部H2を未確定表示状態とし、その紙幣の計数が終わったら、紙幣確定/未確定表示部H2を確定表示状態とする。
このようにすると、紙幣確定ラインL2に到達した紙幣を対象として確定/未確定表示が行われるので、紙幣の入金処理が中断されたとき、紙幣入金搬送路22上に複数の紙幣が残っているようなケースであっても、どの紙幣に関する確定/未確定表示であるかを容易に認識し、その紙幣が計数済みの入金確定紙幣であるか否かを正確に判別することができる。
【0036】
以下、上記のような確定/未確定表示機能を実現するための具体的な構成及び処理手順について、図6〜図9を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係る現金入出金機1における硬貨確定/未確定表示処理を示すフローチャートであり、図7は、本実施形態に係る現金入出金機1の硬貨確定/未確定表示処理の作用を示す説明図である。
図8は、本実施形態に係る現金入出金機1における紙幣確定/未確定表示処理を示すフローチャートであり、図9は、本実施形態に係る現金入出金機の紙幣確定/未確定表示処理の作用を示す説明図である。
【0037】
本実施形態では、2色発光(緑発光/赤発光)のLEDランプを用いて確定/未確定表示部H1、H2を構成するとともに、確定ラインL1、L2に現金の通過を検出する確定ラインセンサS1、S2を配置してある。
そして、これらを制御部30に電気的に接続した上で、図6及び図8に示す確定/未確定表示処理を実行することにより、本発明に係る確定/未確定表示機能を実現するようにしてある。
【0038】
具体的には、硬貨の場合は、図6に示すように、硬貨確定/未確定表示処理において、制御部30は、まず、硬貨確定ラインセンサS1の状態を判断し(S11)、ここで、硬貨確定ラインセンサS1がOFFからONへの切り替わった場合は、入金された硬貨が硬貨確定ラインL1に到達したと判断し、硬貨確定表示フラグをリセットするとともに(S12)、硬貨確定/未確定表示部H1を赤点灯状態(未確定表示状態)にする(S13)。
また、硬貨確定ラインセンサS1がその他の状態である場合は、制御部30は、硬貨確定表示フラグを参照し(S14)、これがリセット状態である場合は、現在硬貨確定ラインL1を通過している硬貨の計数が終了したか否か、つまり、その硬貨の入金が確定したか否かを判断する(S15)。この判断は、別ルーチンで実行される入金硬貨計数処理の処理結果を参照することにより行われる。
【0039】
そして、入金確定の判断がNOである場合は、制御部30は、硬貨確定/未確定表示部H1を赤点灯状態(未確定表示状態)に維持するが(S13)、入金確定の判断がYESになったら、硬貨確定表示フラグをセットするとともに(S16)、硬貨確定/未確定表示部H1を緑点灯状態(確定表示状態)とし(S17)、次の硬貨が硬貨確定ラインL1に到達するまでこの表示状態を維持する。
このようにすると、操作者は、硬貨確定/未確定表示部H1の表示色に基づいて、硬貨確定ラインL1に触れている硬貨の確定/未確定を正確かつ容易に判断できる。
【0040】
また、紙幣の場合は、図8に示すように、紙幣確定/未確定表示処理において、制御部30は、まず、紙幣確定ラインセンサS2の状態を判断し(S21)、ここで、紙幣確定ラインセンサS2がOFFからONへの切り替わった場合は、入金された紙幣が紙幣確定ラインL2に到達したと判断し、紙幣確定表示フラグをリセットするとともに(S22)、紙幣確定/未確定表示部H2を赤点灯状態(未確定表示状態)にする(S23)。
また、紙幣確定ラインセンサS2がその他の状態である場合は、制御部30は、紙幣確定表示フラグを参照し(S24)、これがリセット状態である場合は、現在紙幣確定ラインL2を通過している紙幣の計数が終了したか否か、つまり、その紙幣の入金が確定したか否かを判断する(S25)。この判断は、別ルーチンで実行される入金紙幣計数処理の処理結果を参照することにより行われる。
【0041】
そして、入金確定の判断がNOである場合は、制御部30は、紙幣確定/未確定表示部H2を赤点灯状態(未確定表示状態)に維持するが(S23)、入金確定の判断がYESになったら、紙幣確定表示フラグをセットするとともに(S26)、紙幣確定/未確定表示部H2を緑点灯状態(確定表示状態)とし(S27)、次の紙幣が紙幣確定ラインL2に到達するまでこの表示状態を維持する。
このようにすると、操作者は、紙幣確定/未確定表示部H2の表示色に基づいて、紙幣確定ラインL2に触れている紙幣の確定/未確定を正確かつ容易に判断できる。
【0042】
なお、本実施形態では、確定/未確定表示部H1、H2をLEDランプで構成し、確定ラインL1、L2の近傍に配置しているが、確定/未確定表示部H1、H2を構成する表示デバイスの種類や、その配置が本実施形態のものに限定されないことは勿論である。
例えば、本実施形態のLEDランプの代わりに、現金入出金機1の前面に液晶表示パネルからなる確定/未確定表示部を設け、ここで硬貨及び紙幣の確定/未確定を表示するようにしてもよい。
【0043】
次に、硬貨処理部10の硬貨入金搬送路12及び硬貨収納庫13について詳細に説明する。
図2及び図3に示すように、硬貨入金搬送路12には、各硬貨サイズに合わせた複数の硬貨落下穴15が設けられており、硬貨収納庫13には、硬貨を種類別に収納する複数の硬貨収納室16が設けられている。
そして、装置内部に取り込まれた硬貨は、金種に応じていずれかの硬貨落下穴15に落下し、各金種別の硬貨収納室16へ振り分けられるようになっている。
より具体的には、複数の硬貨落下穴15は、手前側ほど小さく、奥側ほど大きくなるように並べられており、小さい硬貨から順番に手前の硬貨落下穴15に落ちていくようになっている。
ところが、処理が突然中断・停止したような場合、硬貨入金搬送路12を移動していた硬貨は、慣性力等の影響によりすぐに停止せずに挙動が不安定となり、例えば、5円硬貨用の硬貨落下穴115に百円硬貨が落ちる等、所定以外の硬貨落下穴15に落ちるケースがある。これを誤落下という。
従って、硬貨の入金処理が停止・中断した場合には、各硬貨収納室16内に収納された硬貨を目視して、誤落下の有無を確認する必要がある。
【0044】
本実施形態の現金入出金機1では、操作者等による不正(現金抜き取り)や盗難等を防止するために、硬貨収納庫13は、錠付きの硬貨収納庫蓋17で覆蓋されている。すなわち、硬貨収納庫蓋17の錠を施錠/解錠する鍵は、現金入出金機1の操作者ではなく、操作者を管理する管理者が所持している。
このため、硬貨の入金処理が中断した場合でも、鍵を持っている管理者を呼び、管理者が硬貨収納庫蓋17を開けなければ、硬貨収納室16内における誤落下の有無を確認することができないことになる。
【0045】
そこで、本発明の実施形態に係る現金入出金機1は、硬貨の入金処理が中断した場合、硬貨収納庫蓋17の鍵を持っていない操作者でも、各硬貨収納室16内に収納された硬貨を目視し、誤落下の有無を確認することができる収納硬貨確認手段を備えている。
収納硬貨確認手段は、硬貨収納庫蓋17が閉められた状態でも、硬貨収納室16内に収納された硬貨の目視確認を許す手段であり、本実施形態では、硬貨収納庫13の一部又は全部を形成する透明部材により構成してある。
より具体的には、本実施形態では、硬貨収納庫13の各硬貨収納室16の上蓋となる硬貨収納庫蓋17を透明板により構成することで収納硬貨確認手段としてある。
【0046】
ここで、硬貨収納庫蓋17を形成する透明部材としては、外部から収納庫内部を確実に視認できる透明度を有し、かつ、蓋としての役割を果たすために形状が容易に変化しない板厚(例えば5mm以上)を有する板材であることが好ましく、例えば、透明アクリル板などを使用することができる。
このような収納硬貨確認手段を備えることにより、硬貨の入金処理が中断した場合、硬貨収納庫蓋17の鍵を持っていない操作者でも、各硬貨収納室16内に収納された硬貨を目視し、誤落下の有無を確認することができるので、硬貨収納庫蓋17の鍵を持っている管理者を呼んで誤落下を確認する場合に比べ、中断した処理を迅速に再開することができる。
なお、上記の収納硬貨確認手段は、透明な硬貨収納庫蓋17に限らず、確認用の窓や孔を有する硬貨収納庫蓋17でも構成することができる。例えば、格子又はメッシュ状の部材で硬貨収納庫蓋17を形成し、多数の孔を介して硬貨収納室16内を目視可能にする。
【0047】
次に、以上のような構成からなる現金入出金機1の電源構成及び停電中処理について、図10及び図11を参照して説明する。
図10は、本実施形態に係る現金入出金機1の電源構成を示すブロック図であり、図11は、本実施形態に係る現金入出金機1の停電中処理を示すフローチャートである。
現金入出金機1においては、入金処理中に停電が発生した場合、搬送路上に搬送途中の現金(硬貨・紙幣)が残ることになる。
従って、操作者は、筐体40から装置を引き出して装置内部を開けて、搬送路上に残っている現金が計数済みであるか否かを判別した上で、この現金を取り上げ、この現金が計数済みであるならば収納庫に収納し、未計数であるならば再度入金操作を行うという復旧作業を行わなければならない。
【0048】
本実施形態では、現金入出金機1は、図10に示すように、無電源電源装置2が接続されており、電源装置からの電力供給が停止した場合にも、無電源電源装置2から電力が供給されるようになっている。
具体的には、現金入出金機1は、停電時に無停電電源装置(UPS)2から電源供給を受けるとともに、無停電電源装置2から停電状態であるか否かを示す停電中/非停電中信号を入力する。
【0049】
そして、制御部30の制御により、停電中である場合には、図11に示すように、処理途中の入金処理を完了させた後、新規な入金を受け付けないように制御される。
このようにすると、停電が発生しても、処理途中の入金処理を完了させることができるので、操作者による停電解消後の復旧作業が不要になる。しかも、停電中は、新規な入金を受け付けないので、無停電電源装置2の有限な電源バックアップ期間を超える処理動作を禁止することができる。
【0050】
より具体的に説明すると、図10に示すように、現金入出金機1の電源供給ライン(ACライン)3を無停電電源装置2でバックアップするとともに、現金入出金機1にはUPSインタフェース40が設けられ、このUPSインタフェース40を介して無停電電源装置2から停電中/非停電中信号が入力される。
UPSインタフェース40としては、例えば、1ビットのデジタルI/Fが使用され、入力される2値信号が、停電中であるのか、又は通電中(非停電中)であるのかが示されるようになっている。
【0051】
また、無停電電源装置2が現金入出金機1の電源供給ライン3をバックアップできる期間は有限であるため、本実施形態では、図11に示すように、停電中は所定の停電中処理を行うようにしてある。
この停電中処理では、制御部30は、まず、UPSインタフェース40の入力信号に基づいて、停電中であるか否かを判断し(S31)、停電中である場合(S31:YES)の場合には、入金処理中であるか否かを判断する(S32)。
入金処理中(S32:YES)の場合には、制御部30は、処理途中の入金処理を続行する(S33)一方、入金処理中でない(S32:NO)場合には、新たな入金の受け付けを禁止する(S34)。
【0052】
すなわち、現金入出金機1は、停電中の状態を検出した場合には、硬貨の場合は、硬貨入金搬送路12上にある硬貨を硬貨収納庫13へ収納する処理迄を実行し、硬貨入金口11に置かれた硬貨はそのままとする。
また、紙幣の場合は、紙幣入金搬送路22上にある紙幣を紙幣収納庫23へ収納する処理迄を実行し、紙幣入出金口21に置かれた紙幣はそのままとする。
このようにして、停電中は新規な入金を受け付けないようにすることで、無停電電源装置2の有限な電源バックアップを無駄なく使用でき、バックアップ電源の不必要な消費等を確実に防止することができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る現金入出金機1によれば、硬貨の入金処理が中断されたとき、硬貨入金搬送路12上に残っている硬貨が、計数済みの入金確定硬貨であるか否かを表示する硬貨確定/未確定表示部H1を備えることにより、硬貨の入金処理が中断されたとき、硬貨入金搬送路12上に残っている硬貨の端が硬貨確定ラインL1に接しているようなケースであっても、硬貨確定/未確定表示部H1の表示に基づいて、計数済みの入金確定硬貨であるか否かを正確に判別し、入金処理中断後の対処を正確に行うことができる。
【0054】
同様に、紙幣の入金処理が中断されたときにも、紙幣入金搬送路22上に残っている紙幣や、紙幣収納庫23に完全に収納されていない紙幣が、計数済みの入金確定紙幣であるか否かを表示する紙幣確定/未確定表示部H2を備えているので、紙幣の入金処理が中断されたとき、紙幣入金搬送路22上に残っている紙幣や、紙幣収納庫23に完全に収納されていない紙幣の端が紙幣確定ライン(紙幣収納庫端)L2に接しているようなケースであっても、紙幣確定/未確定表示部H2の表示に基づいて、計数済みの入金確定紙幣であるか否かを正確に判別し、入金処理中断後の対処を正確に行うことができる。
【0055】
また、本実施形態の現金入出金機1では、硬貨収納庫蓋17が閉められた状態でも、硬貨収納室16内に収納された硬貨の目視確認を許す収納硬貨確認手段(透明な硬貨収納庫蓋17)を備えることにより、硬貨の入金処理が中断した場合、硬貨収納庫蓋17の鍵を持っていない操作者でも、各硬貨収納室16内に収納された硬貨を目視し、誤落下の有無を確認することができる。これにより、硬貨収納庫蓋17の鍵を持っている管理者を呼んで誤落下を確認する場合に比べ、中断した処理を迅速に再開することができる。
【0056】
さらに、本実施形態の現金入出金機1では、停電時に無停電電源装置2から電源供給を受けるとともに、無停電電源装置2から停電状態であるか否かを示す停電中/非停電中信号を入力し、停電中である場合は、処理途中の入金処理を完了させた後、新規な入金を受け付けないように制御することにより、停電が発生しても、処理途中の入金処理を完了させ、操作者による停電解消後の復旧作業を不要にする。しかも、停電中は、新規な入金を受け付けないようにすることで、無停電電源装置2の有限な電源バックアップ期間を超える処理動作を禁止することができる。
【0057】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、図12〜図14を参照して説明する。
図12は、本発明の第二実施形態に係る現金入出金機の制御部を示すブロック図である。
図13は、本実施形態に係る現金入出金機のバックアップ処理を示すフローチャートで、図14は、本実施形態に係る現金入出金機の自動復旧処理を示すフローチャートである。
【0058】
これらの図に示すように、本発明の第二実施形態に係る現金入出金機1Bは、停電時に無停電電源装置2で電源をバックアップするのではなく、停電時の状態をメモリ手段によって記憶するとともに、停電解消後、記憶情報に基づいて、停電により中断した入金処理を続行する点が第一実施形態に係る現金入出金機1と異なる。
このようにしても、操作者等による停電解消後の復旧作業の負担を軽減・解消して、中断・停止した入金処理を、停電の復旧後に容易かつ迅速に続行することができ。
【0059】
具体的に説明すると、本実施形態に係る現金入出金機1Bの制御部30は、図12に示すように、電源31、駆動回路32、制御回路33、センサ群34、電源保持部35、バックアップメモリ36、電池37などを備えて構成される。
電源31は、駆動回路32へDC24V、電源保持部35へ制御回路33用のDC5Vを供給する。
駆動回路32は、パワートランジスタなどで構成され、制御回路33の指示に従い、電源31から供給される電力を駆動部(DCモーターなどのアクチュエータ)へ供給し、硬貨処理部10及び紙幣処理部20を動作させる。
【0060】
制御回路33は、1チップマイコン、メモリ、電源保持部35、バックアップメモリ36、電池37を含み、センサ群34により硬貨、紙幣の搬送状況を確認し、駆動回路32の制御を行う。
センサ群34は、フォトトランジスタ、発光ダイオードなどで構成されており、フォトトランジスタにおける受光の有無に基づいて、硬貨、紙幣の位置を検出する。つまり、硬貨入金搬送路12や紙幣入金搬送路22に、硬貨や紙幣の搬送方向に沿ってセンサ群34を配置することで、硬貨や紙幣の搬送状況を確認できる。
電源保持部35は、コンデンサで構成される。コンデンサの蓄電機能により、バックアップ処理用の電力を蓄える。
バックアップメモリ36は、例えば、S−RAMで構成される。
電池37は、例えば、リチウム電池で構成される。
【0061】
制御部30では、停電発生前に、電源31から供給される電力を電源保持部35へ蓄えておく。停電によりACライン3からの電源供給が途絶えると、電源31から駆動回路32への給電が途絶えて駆動部が停止する。このとき、硬貨処理部10や紙幣処理部20が硬貨や紙幣を搬送中だった場合、この硬貨や紙幣が搬送路上に停止する(残る)。このとき、制御回路33は電源保持部35が蓄えた電力にて動作し、図13に示すバックアップ処理を行う。
【0062】
バックアップ処理では、まず、停電中であるか否かを判断するとともに(S41)、入金処理中であるか否かを判断し(S42)、いずれの判断結果もYESの場合は、停電中断フラグをセットした後(S43)、復旧に必要な情報を収集し(S44)、この情報をバックアップメモリ36に書き込む(S45)。具体的には、停電発生から搬送路上の硬貨や紙幣が停止する迄のあいだ、硬貨や紙幣の位置をセンサ群34で確認し、この確認結果をバックアップメモリ36へ格納する。バックアップメモリ36は、電池37でバックアップされており、停電期間中メモリ状態を保持し続ける。
【0063】
停電が解消し、ACライン3から給電が再開されたら、制御回路33は、図14に示す自動復旧処理を行う。自動復旧処理では、まず、起動直後(停電解消直後)であるか否かを判断するとともに(S51)、停電中断フラグがセットされているか否かを判断し(S52)、いずれの判断結果もYESの場合は、バックアップメモリ36から復旧に必要な情報を読み出す(S53)。そして、読み出した情報に基づいて、中断していた処理を続行し(S54)、停電中断フラグをリセットする(S55)。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の現金入出金機1によれば、停電により装置が停止して入金処理等が中断しても、バックアップメモリに記憶された搬送位置情報に基づいて、停電時に搬送が停止された貨幣の位置・処理状態を確認することができる。
これにより、中断・停止した入金処理を、停電の復旧後に容易かつ迅速に続行することができ、操作者等による停電解消後の復旧作業の負担を大幅に軽減・解消することができるようになる。
【0065】
以上、本発明に係る現金入金装置について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明にかかる現金入金装置は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、硬貨、紙幣などの現金を自動的に入金処理する現金入金装置として、現金を取り扱うATM、両替機、自動販売機、券売機、現金入出金機などの様々な現金取り扱い装置に利用可能であり、小売業のレジや銀行窓口で使用される現金入出金機に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第一実施形態に係る現金入出金機の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る現金入出金機の硬貨処理部を示す概略平面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る現金入出金機の硬貨処理部を示す概略側面図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係る現金入出金機の紙幣処理部を示す概略平面図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係る現金入出金機の紙幣処理部を示す概略側面図である。
【図6】本発明の第一実施形態に係る現金入出金機の硬貨確定/未確定表示処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第一実施形態に係る現金入出金機の硬貨確定/未確定表示処理の作用を示す説明図である。
【図8】本発明の第一実施形態に係る現金入出金機の紙幣確定/未確定表示処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第一実施形態に係る現金入出金機の紙幣確定/未確定表示処理の作用を示す説明図である。
【図10】本発明の第一実施形態に係る現金入出金機の電源構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第一実施形態に係る現金入出金機の停電中処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第二実施形態に係る現金入出金機の制御部を示すブロック図である。
【図13】本発明の第二実施形態に係る現金入出金機のバックアップ処理を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第二実施形態に係る現金入出金機の自動復旧処理を示すフローチャートである。
【図15】従来例に係る現金入出金機の構成を示す斜視図である。
【図16】従来例に係る現金入出金機の硬貨処理部を示す概略平面図である。
【図17】従来例に係る現金入出金機の硬貨処理部を示す概略側面図である。
【図18】従来例に係る現金入出金機の紙幣処理部を示す概略平面図である。
【図19】従来例に係る現金入出金機の紙幣処理部を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 現金入出金機
2 無停電電源装置
10 硬貨処理部
11 硬貨入金口
12 硬貨入金搬送路
13 硬貨収納庫
15 硬貨落下穴
16 硬貨収納室
17 硬貨収納庫蓋
20 紙幣処理部
21 紙幣入出金口
22 紙幣入金搬送路
23 紙幣収納庫
30 制御部
35 電源保持部
36 バックアップメモリ
H1 未確定表示部
H2 未確定表示部
L1 硬貨確定ライン
L2 紙幣確定ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の貨幣が投入される貨幣投入口と、
投入された貨幣を装置内部に搬送する貨幣搬送路と、
装置内部に搬送された貨幣を計数処理する制御部と、
計数処理により入金が確定した貨幣を収納する貨幣収納庫と、を備えるとともに、
前記貨幣搬送路上の貨幣が、計数処理済みの確定貨幣であるか否かを示す貨幣確定/未確定表示を表示する貨幣確定/未確定表示部を備えることを特徴とする現金入金装置。
【請求項2】
前記貨幣搬送路上に配設される、計数処理済みの確定貨幣であるか否かの基準となる貨幣確定ラインと、
前記貨幣搬送路の貨幣が前記貨幣確定ラインに到達したことを検知するセンサと、を備え、
前記貨幣確定/未確定表示部が、
前記センサからの当該貨幣の検知信号により、前記貨幣未確定表示を表示するとともに、
前記制御部による当該貨幣の計数処理が完了することにより、前記貨幣確定表示を表示する請求項1記載の現金入金装置。
【請求項3】
所定の貨幣が投入される貨幣投入口と、
投入された貨幣を装置内部に搬送する貨幣搬送路と、
装置内部に搬送された貨幣を収納する貨幣収納庫と、を備えるとともに、
前記貨幣収納庫が、収納した貨幣を外部から視認可能な収納貨幣確認手段を備えることを特徴とする現金入金装置。
【請求項4】
前記収納貨幣確認手段が、前記貨幣収納庫の一部又は全部を形成する透明部材からなる請求項3記載の現金入金装置。
【請求項5】
所定の貨幣が投入される貨幣投入口と、
投入された貨幣を装置内部に搬送する貨幣搬送路と、
装置内部に搬送された貨幣を収納する貨幣収納庫と、
装置の駆動電力を供給する電源装置と、
装置の各部を制御する制御手段と、を備えるとともに、
前記電源装置からの電力供給が停止した場合に、当該装置に電力を供給する無停電電源装置を備えることを特徴とする現金入金装置。
【請求項6】
前記無停電電源装置が、停電状態であるか否かを示す停電中/非停電中信号を出力するとともに、
前記制御手段が、当該停電中/非停電中信号により停電状態を検知すると、処理途中の貨幣の前記貨幣収納庫への収納処理を完了させるとともに、前記貨幣投入口からの新たな貨幣の投入を受け付けさせない請求項5記載の現金入金装置。
【請求項7】
所定の貨幣が投入される貨幣投入口と、
投入された貨幣を装置内部に搬送する貨幣搬送路と、
装置内部に搬送された貨幣の搬送位置を検出するセンサと、
装置内部に搬送された貨幣を収納する貨幣収納庫と、
装置の駆動電力を供給する電源装置と、
装置の各部を制御する制御手段と、を備えるとともに、
前記センサで検出された貨幣の搬送位置情報を記憶するバックアップメモリを備えることを特徴とする現金入金装置。
【請求項8】
前記制御手段が、前記電源装置からの電力供給が停止した場合に、当該停電状態の解消後、前記バックアップメモリに記憶された搬送位置情報に基づいて、停電により中断した貨幣の搬送・収納処理を続行させる請求項7記載の現金入金装置。
【請求項9】
前記所定の貨幣が硬貨からなる請求項1乃至8記載の現金入力装置。
【請求項10】
前記所定の貨幣が紙幣からなる請求項1乃至9記載の現金入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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