現金処理装置
【課題】金庫が抜脱される際の抜脱動作に関連して励磁状態に保持しておくべき励磁対象部に対する励磁を適切に実行しつつ、励磁対象部で消費される電力を低減して省エネルギーな現金処理装置を提供する。
【解決手段】現金処理装置は、収納室5に着脱可能に収納される金庫A(B、C)と、収納室5から金庫A(B、C)が抜脱される際に抜脱動作に関連して励磁状態に保持しておくべき励磁対象部81と、金庫A(B、C)を抜脱する動作に先立ってオペレータにより行われる事前動作を検出する検出手段とを有し、検出手段により事前動作が行われたことが検出された場合に励磁対象部81に対する励磁を実行する。
【解決手段】現金処理装置は、収納室5に着脱可能に収納される金庫A(B、C)と、収納室5から金庫A(B、C)が抜脱される際に抜脱動作に関連して励磁状態に保持しておくべき励磁対象部81と、金庫A(B、C)を抜脱する動作に先立ってオペレータにより行われる事前動作を検出する検出手段とを有し、検出手段により事前動作が行われたことが検出された場合に励磁対象部81に対する励磁を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金庫が収納室に対して着脱可能な現金処理装置に係り、特に金庫の抜脱動作に関連して励磁状態に保持しておくべき励磁対象部の励磁を適正化した現金処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動発券機や自動販売機等の現金処理装置は、現金を収納する金庫を有し、金庫に対して現金を入金又は出金するものである。このような従来の現金処理装置として特許文献1には、複数設けた収納室に金庫を着脱可能にし、オペレータが抜脱動作を行って金庫を抜脱するように構成したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−18798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、現金の回収または補給を行う際、業務効率の向上を目的として一部の金庫が抜かれても無停止で稼働する無停止補給または無停止回収を行うように構成することが一つの有効な手段として考えられる。このように構成する場合、使用中である金庫に対しては抜脱を禁止する必要があるので、使用中である金庫は抜脱不能にし、使用中でない金庫に対しては抜脱可能にする運用が望まれる。
【0005】
この運用を実現するにあたり、例えば励磁対象部を励磁状態にすることにより金庫を抜脱不能にする構成が考えられるが、金庫が使用中であるからといって単に無条件に抜脱不能にしていると、金庫が抜脱される直前に励磁対象部を励磁状態に保持できればよいにも拘わらず励磁対象部を励磁状態に常に維持することになるので、励磁対象部で電力が常時消費され、消費電力が増大してしまう。
【0006】
本発明は、このように金庫の抜脱動作に関連して励磁状態に保持しておくべき励磁対象部を有する現金処理装置について、上記新たな知見に基づいてなされたものであって、その目的は、金庫が抜脱される際の抜脱動作に関連して励磁状態に保持しておくべき励磁対象部に対する励磁を適切に実行しつつ、励磁対象部で消費される電力を低減して省エネルギーな現金処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち、本発明に係る現金処理装置は、収納室に着脱可能に収納される金庫と、前記収納室から前記金庫が抜脱される際に当該抜脱動作に関連して励磁状態に保持しておくべき励磁対象部と、前記金庫を抜脱する動作に先立ってオペレータにより行われる事前動作を検出する検出手段と、前記検出手段により前記事前動作が行われたことが検出された場合に前記励磁対象部に対する励磁を実行する制御手段とを具備してなることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、オペレータにより事前動作が行われたことが検出手段により検出された場合に制御手段が励磁対象部に対する励磁を実行するので、抜脱動作が行われないとき、例えば通常運転時から常に励磁対象部に対して励磁を行っておく必要を無くし、励磁対象部で消費される消費電力を低減して省エネルギーな現金処理装置を提供することができる。
【0010】
使用状況に応じて金庫を抜脱不能又は抜脱可能とすることを省エネルギーで自動化するためには、使用中である金庫の抜脱を禁止するため前記金庫が使用中であるか否かを示す金庫情報を管理する金庫情報管理手段を備え、前記励磁対象部は、励磁状態または非励磁状態のいずれか一方に保持されることにより前記金庫を抜脱不能にし、励磁状態または非励磁状態のいずれか他方に保持されることにより前記金庫を抜脱可能にするように構成されており、前記制御手段は、前記検出手段により前記事前動作が行われたことが検出された場合に、前記金庫情報で金庫が使用中であるか否かに応じて前記励磁対象部に対する励磁を制御することが望ましい。
【0011】
金庫の施錠及び解錠を適切に実施することを省エネルギーで実現するためには、前記金庫を前記収納室に対して抜脱不能に施錠又は解錠する施解錠手段を備え、前記励磁対象部は、オペレータにより行われる金庫解錠動作を前記施解錠手段へ入力する入力経路を励磁により生ずる動力を利用して切断または接続するものであり、前期制御手段は、前記検出手段により前記事前動作が行われたことが検出された場合に、前記金庫情報で使用中であるとする金庫に対応する前記入力経路を切断し、前記金庫情報で使用中でないとする金庫に対応する前記入力経路を接続するように、前記励磁対象部に対する励磁を制御することが好ましい。
【0012】
金庫を抜脱する動作に先立って行われる事前動作の検出を実現するためには、前記検出手段は、オペレータによる前記金庫へのアクセスを遮蔽する遮蔽位置または当該遮蔽位置から退避する退避位置のいずれかに変位可能な遮蔽部と、前記遮蔽部の位置を検出する遮蔽部センサとを有し、前記遮蔽部センサにより前記遮蔽部が前記退避位置にあると検出される場合に、前記事前動作として前記遮蔽部を前記退避位置へ移動させる動作が行われたと検出するように構成されていることが挙げられる。
【0013】
金庫を抜脱する動作に先立って行われる事前動作の検出を実現する具体的な一構成は、前記検出手段は、オペレータにより行われる金庫解錠動作を受け付ける操作受付部と、前記操作受付部を遮蔽する遮蔽位置または当該遮蔽位置から退避して前記操作受付部を表出させる表出位置のいずれかに変位可能な遮蔽部と、前記遮蔽部の位置を検出する遮蔽部センサとを有し、前記遮蔽部センサにより前記遮蔽部が前記表出位置にあると検出される場合に、前記事前動作として前記遮蔽部を前記表出位置へ移動させる動作が行われたと検出するように構成されていることが挙げられる。
【0014】
なお、金庫を施錠する施解錠手段へオペレータにより行われる金庫解錠動作を入力することにより金庫を解錠する構成において使用中の金庫の抜脱を禁止するためには施解錠手段へ金庫解錠動作が入力されるまでに入力経路を切断しておく必要があり、金庫解錠動作が行われたときに励磁対象部に対する励磁を実行したのでは入力経路の切断が間に合わずに使用中である金庫が抜脱されてしまうことが考えられるが、本発明では、遮蔽部を表出位置に移動させ金庫解錠動作を受け付ける操作受付部が表出された時点、すなわち金庫解錠動作が操作受付部に受け付けられる事前に励磁対象部に対する励磁を実行するので、入力経路を適切に切断又は接続することができ、使用中である金庫が抜脱されてしまう事態が生じることがない。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上説明した構成であるから、金庫の抜脱動作に先立ってオペレータにより事前動作が行われたことが検出された場合に励磁対象部に対する励磁を実行するので、金庫が抜脱される際の抜脱動作に関連して励磁状態に保持しておくべき励磁対象部に対する励磁を適切に実行しつつ、励磁対象部で消費される電力を低減して省エネルギー化に資することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る現金処理装置を示す概略全体構成図。
【図2】一部の金庫を抜き取った状態を示す図1に対応した図。
【図3】同実施形態における搬送手段および制御手段の構成および機能の概略を示すブロック図。
【図4】同実施形態における現金処理装置の収納室を開口側から視た斜視図。
【図5】図4とは異なる視点から視た図4に対応する斜視図。
【図6】同実施形態における金庫毎に設けられ金庫の抜脱を禁止する施解錠手段を示す模式的な側面図
【図7】金庫を抜脱不能に施錠する施解錠手段を示す要部拡大側面図。
【図8】操作受付部を金庫解錠動作が受け付けられる前の状態で示す図。
【図9】金庫解錠動作を受け付けたときの操作受付部の動作を示す図。
【図10】入力経路を接続する設定がなされた状態で金庫解錠動作がなされたときの施解錠手段の動作を示す図。
【図11】入力経路を切断する設定がなされた状態で金庫解錠動作がなされたときの施解錠手段の動作を示す図。
【図12】金庫が収納室から抜脱された状態の施解錠手段を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る現金処理装置を、図面を参照して説明する。本実施形態では紙幣を取り扱う紙幣ブロックとしての現金処理装置を例に挙げて説明する。
【0018】
図1に示す本実施形態の現金処理装置は、例えば乗車券やカード、精算切符等の券売を行う自動発券機として用いられるもので、紙幣ブロック1と、この紙幣ブロック1にセットされて紙幣の収納場所となる4つの金庫A〜Dと、外部から投入される紙幣の金種を識別部22で識別して金庫A〜Dのうち対応する金庫に搬送経路21を介して搬送する搬送手段2とを備えている。
【0019】
紙幣ブロック1は、この現金処理装置を利用する利用者に近い側に挿入口11、出金口13、返却口14(以下、出金口13及び返却口14を合わせて払出口12ともいう)を設けたもので、同じく利用者に近い側に固定式の金庫Dを内設し、オペレータが操作を行う側に3つのカセット式の金庫A〜Cを設けている。また、紙幣ブロック1には、金庫A〜Cに対応して設けられこれら金庫A〜Cへ識別部22により真性であると識別された紙幣を収納する前に一次的に保留する一次保留部a1〜c1、搬送経路21上の紙幣(不良券を含む)を一時的に保留する一時保留部Eや出金保留部Fが設けられている。一時保留部Eとは別に、読み取り不能、金種相違、重送発生、異常検知時の不良券を回収する不良券回収部Gが設けられている。不良券回収部Gは、図1に示すように、オペレータが操作を行う側に扉部g1が設けられており、オペレータがこの扉部g1を通じて不良券回収部Gに貯留された不良券を回収することが可能にされている。
【0020】
紙幣ブロック1には、図4及び図5に示すように、側方でありオペレータが操作を行う側へ開口する収納室5が3つ形成されている。この収納室5は、カセット式の金庫A〜Cを収納するものであり、具体的には、カセット式の金庫Aを収納する収納室5a(5)、金庫Bを収納する収納室5b(5)、金庫Cを収納する収納室5c(5)である。なお、図4は、金庫Aが収納室5aに収納され、金庫B及び金庫Cは抜脱された状態を示す。
【0021】
収納室5には、図4及び図5に示すように、板状の仕切部Drが設けられている。仕切部Drが鉛直方向の軸を中心に回転可能となるように、仕切部Drの基端が図示しないヒンジ部を介して収納室5の側壁52に支持されて、開閉する扉を成している。仕切部Drは、ヒンジ部に設けられた図示しないねじりコイルバネにより開口端側へ付勢されている。この仕切部Drは、金庫A〜Cの着脱動作に伴って開閉するものである。
【0022】
カセット式の金庫A〜Cは、図2に例示するように把手hを把持して収納室5から引き出すことが可能にされている。また、金庫A〜Cの外壁の一部には、図5に示すように、上方へ開口する被係合部62が設けられており、紙幣ブロック1には、図6に示すように、この被係合部62と係合して金庫A〜Cを抜脱不能に施錠する施解錠手段6が金庫毎に設けてある。各収納室5(5a、5b、5c)の近傍には、図4及び図5に示すように、LEDにより構成された報知手段9(9a、9b、9c)が各金庫に対応して設けられている。報知手段9は、オペレータが操作を行う側から視認可能に配置され、対応する金庫が使用中である場合には赤色に点灯し、使用中でない場合には緑色に点灯して、金庫が使用中であるか否かを表示する。
【0023】
紙幣ブロック1のオペレータが操作を行う側には、図4及び図5に示すように、オペレータにより行われる金庫解錠動作Mvを受け付ける操作受付部72が設けられている。操作受付部72は、図8及び図9に示すように、オペレータが所有する鍵が差し込まれる鍵穴部73と、連動部71、71’とにより構成されている。鍵穴部73は、ユーザを認証する認証手段であり、適合する鍵が差し込まれたときに金庫解錠動作Mvの受付を許容するものである。連動部71、71’は、水平方向の軸71’bを中心に回動変位する回動連動部71’と、上下方向に直線変位する直線連動部71とを含んで構成されている。回動連動部71’は、図9に示すように、鍵穴部73に鍵を差し込んだ状態で鍵を回動させる金庫解錠動作Mvに連動して矢印方向へ回動する。直線連動部71は、その一端部71bが回動連動部71’の一端71aに挟持されており、金庫解錠動作Mvが行われると回動連動部71’の回動を通じて矢印で表す下方へ移動する。直線連動部71には、図6に示すように、下方へ移動した際に施解錠手段6に金庫解錠動作Mvを入力するためのピン71aが施解錠手段6毎に設けられており、一括で複数の施解錠手段6に対する金庫解錠動作Mvの入力を可能とし、複数の施解錠手段6を動作させるために共用している。このように操作受付部72と連動部71、71’とにより、金庫解錠動作Mvを受け付け、受け付けた金庫解錠動作Mvを施解錠手段6へ入力する入力経路の一部をなす操作部7が構成されており、本実施形態では、機械的動作である金庫解錠動作Mvを利用して施解錠手段6に解錠させている。
【0024】
また、図4、図5、図8及び図9に示すように、操作受付部72の鍵穴部73を遮蔽する板状カバーを用いた遮蔽部74が設けられている。遮蔽部74は、水平方向の軸74aを中心に回動自在に支持され、鍵穴部73を遮蔽する遮蔽位置sとこの遮蔽位置sから退避して鍵穴部73を表出させる表出位置pとの間を変位可能にされている。遮蔽部74が遮蔽位置sにあるときは鍵穴部73が遮蔽されて操作受付部72に対する金庫解錠動作Mvを行うことが不可能になり、遮蔽部74が表出位置pにあるときは鍵穴部73が表出して操作受付部72に対する金庫解錠動作Mvを行うことが可能になるので、金庫解錠動作Mvに先立って遮蔽部74を表出位置pへ移動させる動作Atが必然的に行われるようになる。また、操作受付部72の内部には、図8及び図9に示すように、遮蔽部74の回動に伴って共に軸74aを中心に回動するセンサプレート74bが設けられており、さらに、遮蔽部74の位置を検出する遮蔽部センサ75が設けられている。遮蔽部センサ75は、このセンサプレート74bの一部に設けられた検出ターゲット74b’が検知部75aから離れたことをもって、遮蔽部74が表出位置pに移動したと検出し、遮蔽部74を表出位置pへ移動させる動作Atが行われたことが検出される。
【0025】
金庫解錠動作Mvが入力されるべき施解錠手段6は、図7に示すように、水平方向の軸63cを中心に回動可能に支持される天秤部63を有し、この天秤部63の一端部63bに金庫の抜脱方向に対して傾斜しつつ金庫へ向かって突出する係合部61が形成されている。天秤部63は、係合部61が前述した金庫A〜Cの外壁に上方に開口させて設けた被係合部62と係合して金庫A〜Cの抜脱を禁止する禁止位置nにあるように係合部61を金庫へ近づける方(図7における矢印方向)へ図示しないねじりコイルバネにより回動付勢されている。一方、天秤部63の他端部63aには、金庫解錠動作Mvの入力経路の一部である伝達部64が水平方向の軸64cを中心に回動可能に設けられている。伝達部64は、図7及び図11に示すように、上記の連動部71のピン71aと係合可能な係合位置enおよび係合位置enから退避して連動部71のピン71aと係合不能な退避位置evのいずれかに変位可能にされている。すなわち、伝達部64が係合位置enにある状態でピン71aが降下したときは金庫解錠動作Mvが施解錠手段6に入力され、伝達部64が退避位置evにある状態でピン71aが降下したときは金庫解錠動作Mvが施解錠手段6に入力されない。
【0026】
伝達部64の近傍には、ソレノイド等の励磁により動力を発生する励磁対象部81が設けられており、この励磁対象部81の動力出力端81aと伝達部64の一部とが連結されている。励磁対象部81への通電をオンにして励磁対象部81を励磁状態に保持すると、図11に示すように、伝達部64が退避位置evに移動する。励磁対象部81への通電をオフにして励磁対象部81を非励磁状態に保持すると、図7に示すように、伝達部64が図示しないねじりコイルバネにより一方へ回動付勢され伝達部64が係合位置enへ移動する。このように励磁対象部81は、励磁により生ずる動力を利用して施解錠手段6への金庫解錠動作Mvの入力経路を切断し又は接続する。勿論、ねじりコイルバネに代えて励磁対象部81の内部にオフセットバネを備えていてもよい。
【0027】
また、図12に示すように、係合部61が形成されている天秤部63の一端部63bには、L字形板状の変位部65が水平方向の軸65cを中心とする回動により姿勢変更自在に設けられている。変位部65は、その一端部65aが図示しないねじりコイルバネにより矢印に示す金庫へ向かう方向に付勢されている。金庫A〜Cが収納室5に収納されて係合部61が禁止位置nにある場合には、図7に示すように、変位部65の一端部65aが金庫A〜Cに当接して変位部65の姿勢が当接姿勢tになり、金庫A〜Cに当接しなくなると、図12に示すように、ねじりコイルバネの付勢力で矢印方向へ回動して変位部65の姿勢が非当接姿勢uになる。すなわち、変位部65は、金庫A〜Cとの当接の有無に応じてその姿勢が当接姿勢t又は非当接姿勢uの間を変位する。また、この変位部65は、係合部61が形成されている天秤部63の一端部63bに設けられているので、係合部61の移動に伴って例えば図7と図10の間で共に位置変位するように係合部61との位置関係が規定されている。
【0028】
また、変位部65の姿勢が当接姿勢tであり、且つ、変位部65の位置が禁止位置nである場合(図11参照)に変位部65を検出する変位部検出センサ66が設けられている。具体的には、接触により検出信号を出力する接触型センサを用い、変位部65の姿勢が当接姿勢tであり且つ係合部61が禁止位置nにある場合のみ変位部65の他端部65bと接触する部位に配置している。勿論、かかる変位部検出センサ65は非接触型センサであっても構わない。
【0029】
この実施形態では、図3に示すように、固定式の金庫Dを二千円札と五千円札を格納する混合金庫とし、金庫Aに千円札、金庫Bに一万円札を格納する循環金庫とし、金庫Cを多用途に利用可能な自在金庫に設定して、現金の補給及び回収を目的として現金処理装置を停止させることなく運用する、いわゆる無停止補給、無停止回収を実現した金庫設定にしている。
【0030】
図3に示すように、現金処理装置は、搬送手段2とこれを制御する制御手段3とを含んで構成されている。搬送手段2は、周知の現金処理装置と同様に、図示しない挾持ローラ、搬送ベルト、ウィング等の方向変換部などから構成される搬送経路21と、搬送される現金たる紙幣の金種および真性(偽造か否か)を識別する識別部22と、紙幣の金種識別のみを行い紙幣の真性までは識別しない簡易型の識別部20とを有している。
【0031】
制御手段3は、識別部22或いは簡易型の識別部20の識別結果等に基づいて搬送手段2を制御するものであり、挿入口11から投入された紙幣を識別部22に通過させた後、搬送経路21に沿って流通させ、随所に設けた分岐部26a〜26gで必要に応じて紙幣を方向変換して、金庫A、金庫B、金庫C、固定金庫D、一時保留部E、出金保留部F、払出口12、不良券回収部G等へ搬送する動作を行うとともに、金庫A〜D等から搬送経路21上への紙幣の繰り出し動作、簡易型の識別部20における金種識別、更には次なる搬送先である出金口13や金庫A〜Dへの搬送動作などを含む統括的な搬送制御を行うように構成されている。
【0032】
この搬送制御に対して、制御手段3では、さらに金庫が使用中であるか否かを金庫毎に示す金庫情報を管理する金庫情報管理制御を行っている。金庫情報管理制御は、金庫が使用中であるか否かを示す金庫情報を常に最新の状態に維持する管理を行うことである。金庫情報を最新の状態に維持する手段としては、例えば上位制御装置Ma等の他の装置から金庫情報を取得することや、各種情報に基づいて金庫が使用中であるか否かを判定することが挙げられる。各種情報には、種々センサの検出結果や金庫への現金のアクセス情報、搬送制御の制御情報等が挙げられる。
【0033】
上記で述べた搬送制御などを行う具体的な制御手段3は、図3に示すように、入出金制御部31と、搬送制御部32と、金庫情報管理部33と、励磁制御部34とを含んで構成されている。
【0034】
入出金制御部31は、利用者が操作する図示しない他の操作部、搬送手段2や各種センサからの信号に基づいて入出金に関する総括的な制御を行うものであり、取引に応じた紙幣の搬送指令を搬送制御部32に対して行う。
【0035】
搬送制御部32は、入出金制御部31からの紙幣の搬送指令に基づいて搬送手段2を駆動制御し、紙幣の搬送を行う。
【0036】
金庫情報管理部33は、搬送制御部32の制御情報等に基づいて各金庫が使用中であるか否かを判定し又は上位制御装置Maから金庫情報を取得し、金庫情報を常に最新の状態に維持する管理を行っている。
【0037】
励磁制御部34は、金庫情報管理部33が管理する金庫情報と遮蔽部センサ75の検出結果とに基づいて励磁対象部81を駆動させる。具体的には、遮蔽部センサ75により遮蔽部74が遮蔽位置sから退避して操作受付部72を表出させる表出位置pにあることが検出されており且つ金庫情報で使用中である金庫に対応した励磁対象部81のみを作動させる。
【0038】
このような制御手段3を実現する具体的な構成は、CPU、メモリ及びインターフェイスを有する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成され、メモリには図示しない搬送制御処理ルーチンや入出金制御処理ルーチン等が格納してあり、CPUが適宜必要なプログラムを呼び出して実行することにより、上記の入出金制御部31および搬送制御部32が実現される。これらの詳細な制御、例えば制御手段3は、紙幣を各金庫A〜Cに収納する前に一時的に一旦これらの一次保留部a1、b1、c1に保留し、その後、搬送経路21上に一旦繰り出した後に金庫A〜Cに収納する制御を行うが、本実施形態においてこれらの具体的な構成や制御については省略している。また、各金庫A〜Dに紙幣を装填し、或いは各金庫A〜Dから紙幣を繰り出す際には、各金庫A〜Dの一部または搬送経路21の一部に設けた図示しない計数部によって紙幣の枚数が計数されるようにしている。
【0039】
上記の構成の現金処理装置において、オペレータが金庫解錠動作Mvを行うにあたり、図9(a)に示すように、操作受付部72の鍵穴部73を遮蔽する遮蔽位置sにある遮蔽部74を表出位置pに移動させる動作Atを行うと、これを遮蔽部センサ75が検出し、図3に示す金庫情報管理部33から金庫情報を取得した励磁制御部34が使用中であるとされる金庫A(B、C)に対応する励磁対象部81に通電する。励磁対象部81が励磁状態に保持されると、図11に示すように、伝達部64が退避位置evへ移動する。一方、金庫情報において使用中でないとされる金庫に対応する励磁対象部81には通電がなされず、図7に示すように伝達部64が係合位置enにある状態が維持される。
【0040】
そして、オペレータが所有する鍵が操作受付部72の鍵穴部73に挿入され、鍵を回動する金庫解錠動作Mvがなされると、これに連動部71、71’が連動する。伝達部64が係合位置enにある場合は、図10に示すように、連動部71のピン71aと伝達部64とが係合して施解錠手段6に金庫解錠動作Mvが入力され、係合部61が金庫から遠ざける方向へ天秤部63が軸63cを中心に回動し、係合部61が禁止位置nから非禁止位置yへ移動し、金庫A(B、C)が解錠されて抜脱可能になる。一方、伝達部64が退避位置evにある場合には、図11に示すように、連動部71のピン71aと伝達部64とが係合せず施解錠手段6に金庫解錠動作Mvが入力されずに、係合部61と金庫A(B、C)の被係合部62との係合が維持され、金庫A(B、C)の施錠が維持されて抜脱不能になる。
【0041】
最後に、オペレータが鍵穴部73から鍵を抜き取り、図8(a)に示すように、遮蔽部74を遮蔽位置sに移動させると、これを遮蔽部センサ75が検出し、図3に示す励磁制御部34が励磁対象部81への通電をオフにして、伝達部64が係合位置enに移動する。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る現金処理装置は、収納室5に着脱可能に収納される金庫A(B、C)と、収納室5から金庫A(B、C)が抜脱される際に抜脱動作に関連して励磁状態に保持しておくべき励磁対象部81と、金庫A(B、C)を抜脱する動作に先立ってオペレータにより行われる事前動作を検出する検出手段を構成する遮蔽部センサ75と、検出手段を構成する遮蔽部センサ75により事前動作が行われたことが検出された場合に励磁対象部81に対する励磁を実行する制御手段3とを具備してなることを特徴とする。
【0043】
この本実施形態によれば、オペレータにより事前動作が行われたことが検出手段を構成する遮蔽部センサ75により検出された場合に制御手段3が励磁対象部81に対する励磁を実行するので、抜脱動作が行われないとき、例えば通常運転時から常に励磁対象部81に対して励磁を行っておく必要を無くし、励磁対象部81で消費される消費電力を低減して省エネルギーな現金処理装置を提供することが可能となる。
【0044】
特に、本実施形態では、使用中である金庫の抜脱を禁止するため金庫A(B、C)が使用中であるか否かを示す金庫情報を管理する金庫情報管理手段を構成する金庫情報管理部33を備え、励磁対象部81は、励磁状態または非励磁状態のいずれか一方に保持されることにより金庫A(B、C)を抜脱不能にし、励磁状態または非励磁状態のいずれか他方に保持されることにより金庫A(B、C)を抜脱可能にするように構成されており、制御手段3は、検出手段を構成する遮蔽部センサ75により事前動作が行われたことが検出された場合に、金庫情報で金庫が使用中であるか否かに応じて励磁対象部81に対する励磁を制御するので、金庫A(B、C)が使用中であるか否かに応じて無条件で金庫A(B、C)を抜脱不能又は抜脱可能にせず、抜脱動作が行われないときに励磁対象部81で電力が消費される事態を避け、使用状況に応じて金庫A(B、C)を抜脱不能又は抜脱可能とすることを省エネルギーで自動化することが可能となる。
【0045】
さらに、本実施形態では、金庫A(B、C)を収納室5に対して抜脱不能に施錠又は解錠する施解錠手段6を備え、励磁対象部81は、オペレータにより行われる金庫解錠動作Mvを施解錠手段6へ入力する入力経路を励磁により生ずる動力を利用して切断または接続するものであり、制御手段3は、検出手段を構成する遮蔽部センサ75により事前動作が行われたことが検出された場合に、金庫情報で使用中であるとする金庫A(B、C)に対応する入力経路を切断し、金庫情報で使用中でないとする金庫A(B、C)に対応する入力経路を接続するように、励磁対象部81に対する励磁を制御するので、金庫解錠動作Mvが行われるまで金庫A(B、C)を施錠状態に保持しつつ、金庫解錠動作Mvを行ったときに金庫A(B、C)の使用状況に応じて解錠がなされ、金庫A(B、C)の施錠及び解錠を適切に実施することを省エネルギーで実現可能になる。
【0046】
さらにまた、本実施形態では、検出手段は、オペレータによる金庫A(B、C)へのアクセスである金庫解錠動作Mvを遮蔽する遮蔽位置sまたは遮蔽位置sから退避する退避位置(表出位置p)のいずれかに変位可能な遮蔽部74と、遮蔽部74の位置を検出する遮蔽部センサ75とを有し、遮蔽部センサ75により遮蔽部74が退避位置(表出位置p)にあると検出される場合に、事前動作として遮蔽部74を退避位置(表出位置p)へ移動させる動作Atが行われたと検出するように構成されているので、金庫A(B、C)を抜脱する動作を行うにあたり、金庫A(B、C)へのアクセスである金庫解錠動作Mvに先立って遮蔽部74を退避位置(表出位置p)へ移動させる動作が必然的に行われるようになり、遮蔽部74を退避位置(表出位置p)へ移動させる動作Atを検出することで金庫A(B、C)を抜脱する動作に先立って行われる事前動作の検出を実現できる。
【0047】
さらにまた、本実施形態では、検出手段は、オペレータにより行われる金庫解錠動作Mvを受け付ける操作受付部72と、操作受付部72を遮蔽する遮蔽位置sまたは遮蔽位置sから退避して操作受付部72を表出させる表出位置pのいずれかに変位可能な遮蔽部74と、遮蔽部74の位置を検出する遮蔽部センサ75とを有し、遮蔽部センサ75により遮蔽部74が表出位置pにあると検出される場合に、事前動作として遮蔽部74を表出位置pへ移動させる動作Atが行われたと検出するように構成されているので、金庫A(B、C)を抜脱する動作を行うにあたり、金庫A(B、C)の解錠に先立って遮蔽部74を表出位置pへ移動させる動作Atが必然的に行われるようになり、遮蔽部74を表出位置pへ移動させる動作Atを検出することで金庫A(B、C)を抜脱する動作に先立って行われる事前動作の検出を実現できる。
【0048】
その他、金庫A(B、C)を施錠する施解錠手段6へオペレータにより行われる金庫解錠動作Mvを入力することにより金庫A(B、C)を解錠する構成において使用中の金庫の抜脱を禁止するためには施解錠手段6へ金庫解錠動作Mvが入力されるまでに入力経路を切断しておく必要があり、金庫解錠動作Mvが行われたときに励磁対象部81に対する励磁を実行したのでは入力経路の切断が間に合わずに使用中である金庫A(B、C)が抜脱されてしまうことが考えられるが、本実施形態では、遮蔽部74を表出位置pに移動させ金庫解錠動作Mvを受け付ける操作受付部72が表出された時点、すなわち金庫解錠動作Mvが操作受付部72に受け付けられる事前に励磁対象部81に対する励磁を実行するので、入力経路を適切に切断又は接続することができ、使用中である金庫A(B、C)が抜脱されてしまう事態が生じることがない。
【0049】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0050】
例えば、本実施形態では、励磁対象部81が、オペレータにより行われる金庫解錠動作Mvを施解錠手段6へ入力する入力経路を、励磁により生ずる動力を利用して切断または接続するものであるが、励磁対象部を、励磁により生ずる動力を利用して係合部を移動させるようにし、励磁対象部を励磁状態または非励磁状態のいずれか一方に保持することにより係合部と金庫とを係合して金庫を抜脱不能とし、励磁対象部を励磁状態または非励磁状態のいずれか他方に保持することにより係合部の移動を通じて係合部と金庫とを非係合にして金庫を抜脱可能にするようにしてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、オペレータによる金庫へのアクセスを金庫解錠動作Mvとし、この金庫解錠動作Mvに先立って行われる遮蔽部74を表出位置pに移動させる動作Atを遮蔽部センサ75で検出するようにしているが、オペレータによる金庫へのアクセスを遮蔽する遮蔽部として、オペレータと金庫との間に開閉扉部を設け、この開閉扉部の開閉を検出するようにしてもよい。その他、金庫の把手を把持されたか否かを検出するセンサを設け、把手が把持されたことを事前動作として検出してもよい。このようにオペレータによる金庫へのアクセスは、金庫解錠動作Mvに限らず、金庫の把手を把持する行為や、その他の行為も含まれる。
【0052】
さらに、本実施形態では、金庫A〜Cに対して入金および出金の双方を行う現金処理装置であるが、金庫への入金および金庫からの出金のいずれかのみを行う装置であっても本発明を適用することが可能である。
【0053】
さらにまた、金庫A〜Dに格納する金種は本実施形態に限定されるものではなく、金庫A〜Dはどの金種を格納することも可能であり、例えば金庫A〜Dに対して各金種を割り当てて金庫A〜Dを四金種循環金庫としてもよい。このような様々な金庫の設定に対しても本発明を適用することが可能である。
【0054】
加えて、本実施形態では、紙幣と硬貨とを含む現金のうち、紙幣を取り扱う紙幣ブロックとしての現金処理装置を例に挙げて説明したが、硬貨を取り扱う硬貨ブロックに対しても本発明を適用することが可能である。
【0055】
その他、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1………紙幣ブロック
A〜C…金庫
3………制御手段
33……金庫情報管理手段(金庫情報管理部)
5………収納室
5a、5b、5c…収納室
6………施解錠手段
72……操作受付部
74……遮蔽部
75……検出手段(遮蔽部センサ)
81……励磁対象部
s………遮蔽位置
p………表出位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、金庫が収納室に対して着脱可能な現金処理装置に係り、特に金庫の抜脱動作に関連して励磁状態に保持しておくべき励磁対象部の励磁を適正化した現金処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動発券機や自動販売機等の現金処理装置は、現金を収納する金庫を有し、金庫に対して現金を入金又は出金するものである。このような従来の現金処理装置として特許文献1には、複数設けた収納室に金庫を着脱可能にし、オペレータが抜脱動作を行って金庫を抜脱するように構成したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−18798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、現金の回収または補給を行う際、業務効率の向上を目的として一部の金庫が抜かれても無停止で稼働する無停止補給または無停止回収を行うように構成することが一つの有効な手段として考えられる。このように構成する場合、使用中である金庫に対しては抜脱を禁止する必要があるので、使用中である金庫は抜脱不能にし、使用中でない金庫に対しては抜脱可能にする運用が望まれる。
【0005】
この運用を実現するにあたり、例えば励磁対象部を励磁状態にすることにより金庫を抜脱不能にする構成が考えられるが、金庫が使用中であるからといって単に無条件に抜脱不能にしていると、金庫が抜脱される直前に励磁対象部を励磁状態に保持できればよいにも拘わらず励磁対象部を励磁状態に常に維持することになるので、励磁対象部で電力が常時消費され、消費電力が増大してしまう。
【0006】
本発明は、このように金庫の抜脱動作に関連して励磁状態に保持しておくべき励磁対象部を有する現金処理装置について、上記新たな知見に基づいてなされたものであって、その目的は、金庫が抜脱される際の抜脱動作に関連して励磁状態に保持しておくべき励磁対象部に対する励磁を適切に実行しつつ、励磁対象部で消費される電力を低減して省エネルギーな現金処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち、本発明に係る現金処理装置は、収納室に着脱可能に収納される金庫と、前記収納室から前記金庫が抜脱される際に当該抜脱動作に関連して励磁状態に保持しておくべき励磁対象部と、前記金庫を抜脱する動作に先立ってオペレータにより行われる事前動作を検出する検出手段と、前記検出手段により前記事前動作が行われたことが検出された場合に前記励磁対象部に対する励磁を実行する制御手段とを具備してなることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、オペレータにより事前動作が行われたことが検出手段により検出された場合に制御手段が励磁対象部に対する励磁を実行するので、抜脱動作が行われないとき、例えば通常運転時から常に励磁対象部に対して励磁を行っておく必要を無くし、励磁対象部で消費される消費電力を低減して省エネルギーな現金処理装置を提供することができる。
【0010】
使用状況に応じて金庫を抜脱不能又は抜脱可能とすることを省エネルギーで自動化するためには、使用中である金庫の抜脱を禁止するため前記金庫が使用中であるか否かを示す金庫情報を管理する金庫情報管理手段を備え、前記励磁対象部は、励磁状態または非励磁状態のいずれか一方に保持されることにより前記金庫を抜脱不能にし、励磁状態または非励磁状態のいずれか他方に保持されることにより前記金庫を抜脱可能にするように構成されており、前記制御手段は、前記検出手段により前記事前動作が行われたことが検出された場合に、前記金庫情報で金庫が使用中であるか否かに応じて前記励磁対象部に対する励磁を制御することが望ましい。
【0011】
金庫の施錠及び解錠を適切に実施することを省エネルギーで実現するためには、前記金庫を前記収納室に対して抜脱不能に施錠又は解錠する施解錠手段を備え、前記励磁対象部は、オペレータにより行われる金庫解錠動作を前記施解錠手段へ入力する入力経路を励磁により生ずる動力を利用して切断または接続するものであり、前期制御手段は、前記検出手段により前記事前動作が行われたことが検出された場合に、前記金庫情報で使用中であるとする金庫に対応する前記入力経路を切断し、前記金庫情報で使用中でないとする金庫に対応する前記入力経路を接続するように、前記励磁対象部に対する励磁を制御することが好ましい。
【0012】
金庫を抜脱する動作に先立って行われる事前動作の検出を実現するためには、前記検出手段は、オペレータによる前記金庫へのアクセスを遮蔽する遮蔽位置または当該遮蔽位置から退避する退避位置のいずれかに変位可能な遮蔽部と、前記遮蔽部の位置を検出する遮蔽部センサとを有し、前記遮蔽部センサにより前記遮蔽部が前記退避位置にあると検出される場合に、前記事前動作として前記遮蔽部を前記退避位置へ移動させる動作が行われたと検出するように構成されていることが挙げられる。
【0013】
金庫を抜脱する動作に先立って行われる事前動作の検出を実現する具体的な一構成は、前記検出手段は、オペレータにより行われる金庫解錠動作を受け付ける操作受付部と、前記操作受付部を遮蔽する遮蔽位置または当該遮蔽位置から退避して前記操作受付部を表出させる表出位置のいずれかに変位可能な遮蔽部と、前記遮蔽部の位置を検出する遮蔽部センサとを有し、前記遮蔽部センサにより前記遮蔽部が前記表出位置にあると検出される場合に、前記事前動作として前記遮蔽部を前記表出位置へ移動させる動作が行われたと検出するように構成されていることが挙げられる。
【0014】
なお、金庫を施錠する施解錠手段へオペレータにより行われる金庫解錠動作を入力することにより金庫を解錠する構成において使用中の金庫の抜脱を禁止するためには施解錠手段へ金庫解錠動作が入力されるまでに入力経路を切断しておく必要があり、金庫解錠動作が行われたときに励磁対象部に対する励磁を実行したのでは入力経路の切断が間に合わずに使用中である金庫が抜脱されてしまうことが考えられるが、本発明では、遮蔽部を表出位置に移動させ金庫解錠動作を受け付ける操作受付部が表出された時点、すなわち金庫解錠動作が操作受付部に受け付けられる事前に励磁対象部に対する励磁を実行するので、入力経路を適切に切断又は接続することができ、使用中である金庫が抜脱されてしまう事態が生じることがない。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上説明した構成であるから、金庫の抜脱動作に先立ってオペレータにより事前動作が行われたことが検出された場合に励磁対象部に対する励磁を実行するので、金庫が抜脱される際の抜脱動作に関連して励磁状態に保持しておくべき励磁対象部に対する励磁を適切に実行しつつ、励磁対象部で消費される電力を低減して省エネルギー化に資することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る現金処理装置を示す概略全体構成図。
【図2】一部の金庫を抜き取った状態を示す図1に対応した図。
【図3】同実施形態における搬送手段および制御手段の構成および機能の概略を示すブロック図。
【図4】同実施形態における現金処理装置の収納室を開口側から視た斜視図。
【図5】図4とは異なる視点から視た図4に対応する斜視図。
【図6】同実施形態における金庫毎に設けられ金庫の抜脱を禁止する施解錠手段を示す模式的な側面図
【図7】金庫を抜脱不能に施錠する施解錠手段を示す要部拡大側面図。
【図8】操作受付部を金庫解錠動作が受け付けられる前の状態で示す図。
【図9】金庫解錠動作を受け付けたときの操作受付部の動作を示す図。
【図10】入力経路を接続する設定がなされた状態で金庫解錠動作がなされたときの施解錠手段の動作を示す図。
【図11】入力経路を切断する設定がなされた状態で金庫解錠動作がなされたときの施解錠手段の動作を示す図。
【図12】金庫が収納室から抜脱された状態の施解錠手段を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る現金処理装置を、図面を参照して説明する。本実施形態では紙幣を取り扱う紙幣ブロックとしての現金処理装置を例に挙げて説明する。
【0018】
図1に示す本実施形態の現金処理装置は、例えば乗車券やカード、精算切符等の券売を行う自動発券機として用いられるもので、紙幣ブロック1と、この紙幣ブロック1にセットされて紙幣の収納場所となる4つの金庫A〜Dと、外部から投入される紙幣の金種を識別部22で識別して金庫A〜Dのうち対応する金庫に搬送経路21を介して搬送する搬送手段2とを備えている。
【0019】
紙幣ブロック1は、この現金処理装置を利用する利用者に近い側に挿入口11、出金口13、返却口14(以下、出金口13及び返却口14を合わせて払出口12ともいう)を設けたもので、同じく利用者に近い側に固定式の金庫Dを内設し、オペレータが操作を行う側に3つのカセット式の金庫A〜Cを設けている。また、紙幣ブロック1には、金庫A〜Cに対応して設けられこれら金庫A〜Cへ識別部22により真性であると識別された紙幣を収納する前に一次的に保留する一次保留部a1〜c1、搬送経路21上の紙幣(不良券を含む)を一時的に保留する一時保留部Eや出金保留部Fが設けられている。一時保留部Eとは別に、読み取り不能、金種相違、重送発生、異常検知時の不良券を回収する不良券回収部Gが設けられている。不良券回収部Gは、図1に示すように、オペレータが操作を行う側に扉部g1が設けられており、オペレータがこの扉部g1を通じて不良券回収部Gに貯留された不良券を回収することが可能にされている。
【0020】
紙幣ブロック1には、図4及び図5に示すように、側方でありオペレータが操作を行う側へ開口する収納室5が3つ形成されている。この収納室5は、カセット式の金庫A〜Cを収納するものであり、具体的には、カセット式の金庫Aを収納する収納室5a(5)、金庫Bを収納する収納室5b(5)、金庫Cを収納する収納室5c(5)である。なお、図4は、金庫Aが収納室5aに収納され、金庫B及び金庫Cは抜脱された状態を示す。
【0021】
収納室5には、図4及び図5に示すように、板状の仕切部Drが設けられている。仕切部Drが鉛直方向の軸を中心に回転可能となるように、仕切部Drの基端が図示しないヒンジ部を介して収納室5の側壁52に支持されて、開閉する扉を成している。仕切部Drは、ヒンジ部に設けられた図示しないねじりコイルバネにより開口端側へ付勢されている。この仕切部Drは、金庫A〜Cの着脱動作に伴って開閉するものである。
【0022】
カセット式の金庫A〜Cは、図2に例示するように把手hを把持して収納室5から引き出すことが可能にされている。また、金庫A〜Cの外壁の一部には、図5に示すように、上方へ開口する被係合部62が設けられており、紙幣ブロック1には、図6に示すように、この被係合部62と係合して金庫A〜Cを抜脱不能に施錠する施解錠手段6が金庫毎に設けてある。各収納室5(5a、5b、5c)の近傍には、図4及び図5に示すように、LEDにより構成された報知手段9(9a、9b、9c)が各金庫に対応して設けられている。報知手段9は、オペレータが操作を行う側から視認可能に配置され、対応する金庫が使用中である場合には赤色に点灯し、使用中でない場合には緑色に点灯して、金庫が使用中であるか否かを表示する。
【0023】
紙幣ブロック1のオペレータが操作を行う側には、図4及び図5に示すように、オペレータにより行われる金庫解錠動作Mvを受け付ける操作受付部72が設けられている。操作受付部72は、図8及び図9に示すように、オペレータが所有する鍵が差し込まれる鍵穴部73と、連動部71、71’とにより構成されている。鍵穴部73は、ユーザを認証する認証手段であり、適合する鍵が差し込まれたときに金庫解錠動作Mvの受付を許容するものである。連動部71、71’は、水平方向の軸71’bを中心に回動変位する回動連動部71’と、上下方向に直線変位する直線連動部71とを含んで構成されている。回動連動部71’は、図9に示すように、鍵穴部73に鍵を差し込んだ状態で鍵を回動させる金庫解錠動作Mvに連動して矢印方向へ回動する。直線連動部71は、その一端部71bが回動連動部71’の一端71aに挟持されており、金庫解錠動作Mvが行われると回動連動部71’の回動を通じて矢印で表す下方へ移動する。直線連動部71には、図6に示すように、下方へ移動した際に施解錠手段6に金庫解錠動作Mvを入力するためのピン71aが施解錠手段6毎に設けられており、一括で複数の施解錠手段6に対する金庫解錠動作Mvの入力を可能とし、複数の施解錠手段6を動作させるために共用している。このように操作受付部72と連動部71、71’とにより、金庫解錠動作Mvを受け付け、受け付けた金庫解錠動作Mvを施解錠手段6へ入力する入力経路の一部をなす操作部7が構成されており、本実施形態では、機械的動作である金庫解錠動作Mvを利用して施解錠手段6に解錠させている。
【0024】
また、図4、図5、図8及び図9に示すように、操作受付部72の鍵穴部73を遮蔽する板状カバーを用いた遮蔽部74が設けられている。遮蔽部74は、水平方向の軸74aを中心に回動自在に支持され、鍵穴部73を遮蔽する遮蔽位置sとこの遮蔽位置sから退避して鍵穴部73を表出させる表出位置pとの間を変位可能にされている。遮蔽部74が遮蔽位置sにあるときは鍵穴部73が遮蔽されて操作受付部72に対する金庫解錠動作Mvを行うことが不可能になり、遮蔽部74が表出位置pにあるときは鍵穴部73が表出して操作受付部72に対する金庫解錠動作Mvを行うことが可能になるので、金庫解錠動作Mvに先立って遮蔽部74を表出位置pへ移動させる動作Atが必然的に行われるようになる。また、操作受付部72の内部には、図8及び図9に示すように、遮蔽部74の回動に伴って共に軸74aを中心に回動するセンサプレート74bが設けられており、さらに、遮蔽部74の位置を検出する遮蔽部センサ75が設けられている。遮蔽部センサ75は、このセンサプレート74bの一部に設けられた検出ターゲット74b’が検知部75aから離れたことをもって、遮蔽部74が表出位置pに移動したと検出し、遮蔽部74を表出位置pへ移動させる動作Atが行われたことが検出される。
【0025】
金庫解錠動作Mvが入力されるべき施解錠手段6は、図7に示すように、水平方向の軸63cを中心に回動可能に支持される天秤部63を有し、この天秤部63の一端部63bに金庫の抜脱方向に対して傾斜しつつ金庫へ向かって突出する係合部61が形成されている。天秤部63は、係合部61が前述した金庫A〜Cの外壁に上方に開口させて設けた被係合部62と係合して金庫A〜Cの抜脱を禁止する禁止位置nにあるように係合部61を金庫へ近づける方(図7における矢印方向)へ図示しないねじりコイルバネにより回動付勢されている。一方、天秤部63の他端部63aには、金庫解錠動作Mvの入力経路の一部である伝達部64が水平方向の軸64cを中心に回動可能に設けられている。伝達部64は、図7及び図11に示すように、上記の連動部71のピン71aと係合可能な係合位置enおよび係合位置enから退避して連動部71のピン71aと係合不能な退避位置evのいずれかに変位可能にされている。すなわち、伝達部64が係合位置enにある状態でピン71aが降下したときは金庫解錠動作Mvが施解錠手段6に入力され、伝達部64が退避位置evにある状態でピン71aが降下したときは金庫解錠動作Mvが施解錠手段6に入力されない。
【0026】
伝達部64の近傍には、ソレノイド等の励磁により動力を発生する励磁対象部81が設けられており、この励磁対象部81の動力出力端81aと伝達部64の一部とが連結されている。励磁対象部81への通電をオンにして励磁対象部81を励磁状態に保持すると、図11に示すように、伝達部64が退避位置evに移動する。励磁対象部81への通電をオフにして励磁対象部81を非励磁状態に保持すると、図7に示すように、伝達部64が図示しないねじりコイルバネにより一方へ回動付勢され伝達部64が係合位置enへ移動する。このように励磁対象部81は、励磁により生ずる動力を利用して施解錠手段6への金庫解錠動作Mvの入力経路を切断し又は接続する。勿論、ねじりコイルバネに代えて励磁対象部81の内部にオフセットバネを備えていてもよい。
【0027】
また、図12に示すように、係合部61が形成されている天秤部63の一端部63bには、L字形板状の変位部65が水平方向の軸65cを中心とする回動により姿勢変更自在に設けられている。変位部65は、その一端部65aが図示しないねじりコイルバネにより矢印に示す金庫へ向かう方向に付勢されている。金庫A〜Cが収納室5に収納されて係合部61が禁止位置nにある場合には、図7に示すように、変位部65の一端部65aが金庫A〜Cに当接して変位部65の姿勢が当接姿勢tになり、金庫A〜Cに当接しなくなると、図12に示すように、ねじりコイルバネの付勢力で矢印方向へ回動して変位部65の姿勢が非当接姿勢uになる。すなわち、変位部65は、金庫A〜Cとの当接の有無に応じてその姿勢が当接姿勢t又は非当接姿勢uの間を変位する。また、この変位部65は、係合部61が形成されている天秤部63の一端部63bに設けられているので、係合部61の移動に伴って例えば図7と図10の間で共に位置変位するように係合部61との位置関係が規定されている。
【0028】
また、変位部65の姿勢が当接姿勢tであり、且つ、変位部65の位置が禁止位置nである場合(図11参照)に変位部65を検出する変位部検出センサ66が設けられている。具体的には、接触により検出信号を出力する接触型センサを用い、変位部65の姿勢が当接姿勢tであり且つ係合部61が禁止位置nにある場合のみ変位部65の他端部65bと接触する部位に配置している。勿論、かかる変位部検出センサ65は非接触型センサであっても構わない。
【0029】
この実施形態では、図3に示すように、固定式の金庫Dを二千円札と五千円札を格納する混合金庫とし、金庫Aに千円札、金庫Bに一万円札を格納する循環金庫とし、金庫Cを多用途に利用可能な自在金庫に設定して、現金の補給及び回収を目的として現金処理装置を停止させることなく運用する、いわゆる無停止補給、無停止回収を実現した金庫設定にしている。
【0030】
図3に示すように、現金処理装置は、搬送手段2とこれを制御する制御手段3とを含んで構成されている。搬送手段2は、周知の現金処理装置と同様に、図示しない挾持ローラ、搬送ベルト、ウィング等の方向変換部などから構成される搬送経路21と、搬送される現金たる紙幣の金種および真性(偽造か否か)を識別する識別部22と、紙幣の金種識別のみを行い紙幣の真性までは識別しない簡易型の識別部20とを有している。
【0031】
制御手段3は、識別部22或いは簡易型の識別部20の識別結果等に基づいて搬送手段2を制御するものであり、挿入口11から投入された紙幣を識別部22に通過させた後、搬送経路21に沿って流通させ、随所に設けた分岐部26a〜26gで必要に応じて紙幣を方向変換して、金庫A、金庫B、金庫C、固定金庫D、一時保留部E、出金保留部F、払出口12、不良券回収部G等へ搬送する動作を行うとともに、金庫A〜D等から搬送経路21上への紙幣の繰り出し動作、簡易型の識別部20における金種識別、更には次なる搬送先である出金口13や金庫A〜Dへの搬送動作などを含む統括的な搬送制御を行うように構成されている。
【0032】
この搬送制御に対して、制御手段3では、さらに金庫が使用中であるか否かを金庫毎に示す金庫情報を管理する金庫情報管理制御を行っている。金庫情報管理制御は、金庫が使用中であるか否かを示す金庫情報を常に最新の状態に維持する管理を行うことである。金庫情報を最新の状態に維持する手段としては、例えば上位制御装置Ma等の他の装置から金庫情報を取得することや、各種情報に基づいて金庫が使用中であるか否かを判定することが挙げられる。各種情報には、種々センサの検出結果や金庫への現金のアクセス情報、搬送制御の制御情報等が挙げられる。
【0033】
上記で述べた搬送制御などを行う具体的な制御手段3は、図3に示すように、入出金制御部31と、搬送制御部32と、金庫情報管理部33と、励磁制御部34とを含んで構成されている。
【0034】
入出金制御部31は、利用者が操作する図示しない他の操作部、搬送手段2や各種センサからの信号に基づいて入出金に関する総括的な制御を行うものであり、取引に応じた紙幣の搬送指令を搬送制御部32に対して行う。
【0035】
搬送制御部32は、入出金制御部31からの紙幣の搬送指令に基づいて搬送手段2を駆動制御し、紙幣の搬送を行う。
【0036】
金庫情報管理部33は、搬送制御部32の制御情報等に基づいて各金庫が使用中であるか否かを判定し又は上位制御装置Maから金庫情報を取得し、金庫情報を常に最新の状態に維持する管理を行っている。
【0037】
励磁制御部34は、金庫情報管理部33が管理する金庫情報と遮蔽部センサ75の検出結果とに基づいて励磁対象部81を駆動させる。具体的には、遮蔽部センサ75により遮蔽部74が遮蔽位置sから退避して操作受付部72を表出させる表出位置pにあることが検出されており且つ金庫情報で使用中である金庫に対応した励磁対象部81のみを作動させる。
【0038】
このような制御手段3を実現する具体的な構成は、CPU、メモリ及びインターフェイスを有する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成され、メモリには図示しない搬送制御処理ルーチンや入出金制御処理ルーチン等が格納してあり、CPUが適宜必要なプログラムを呼び出して実行することにより、上記の入出金制御部31および搬送制御部32が実現される。これらの詳細な制御、例えば制御手段3は、紙幣を各金庫A〜Cに収納する前に一時的に一旦これらの一次保留部a1、b1、c1に保留し、その後、搬送経路21上に一旦繰り出した後に金庫A〜Cに収納する制御を行うが、本実施形態においてこれらの具体的な構成や制御については省略している。また、各金庫A〜Dに紙幣を装填し、或いは各金庫A〜Dから紙幣を繰り出す際には、各金庫A〜Dの一部または搬送経路21の一部に設けた図示しない計数部によって紙幣の枚数が計数されるようにしている。
【0039】
上記の構成の現金処理装置において、オペレータが金庫解錠動作Mvを行うにあたり、図9(a)に示すように、操作受付部72の鍵穴部73を遮蔽する遮蔽位置sにある遮蔽部74を表出位置pに移動させる動作Atを行うと、これを遮蔽部センサ75が検出し、図3に示す金庫情報管理部33から金庫情報を取得した励磁制御部34が使用中であるとされる金庫A(B、C)に対応する励磁対象部81に通電する。励磁対象部81が励磁状態に保持されると、図11に示すように、伝達部64が退避位置evへ移動する。一方、金庫情報において使用中でないとされる金庫に対応する励磁対象部81には通電がなされず、図7に示すように伝達部64が係合位置enにある状態が維持される。
【0040】
そして、オペレータが所有する鍵が操作受付部72の鍵穴部73に挿入され、鍵を回動する金庫解錠動作Mvがなされると、これに連動部71、71’が連動する。伝達部64が係合位置enにある場合は、図10に示すように、連動部71のピン71aと伝達部64とが係合して施解錠手段6に金庫解錠動作Mvが入力され、係合部61が金庫から遠ざける方向へ天秤部63が軸63cを中心に回動し、係合部61が禁止位置nから非禁止位置yへ移動し、金庫A(B、C)が解錠されて抜脱可能になる。一方、伝達部64が退避位置evにある場合には、図11に示すように、連動部71のピン71aと伝達部64とが係合せず施解錠手段6に金庫解錠動作Mvが入力されずに、係合部61と金庫A(B、C)の被係合部62との係合が維持され、金庫A(B、C)の施錠が維持されて抜脱不能になる。
【0041】
最後に、オペレータが鍵穴部73から鍵を抜き取り、図8(a)に示すように、遮蔽部74を遮蔽位置sに移動させると、これを遮蔽部センサ75が検出し、図3に示す励磁制御部34が励磁対象部81への通電をオフにして、伝達部64が係合位置enに移動する。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る現金処理装置は、収納室5に着脱可能に収納される金庫A(B、C)と、収納室5から金庫A(B、C)が抜脱される際に抜脱動作に関連して励磁状態に保持しておくべき励磁対象部81と、金庫A(B、C)を抜脱する動作に先立ってオペレータにより行われる事前動作を検出する検出手段を構成する遮蔽部センサ75と、検出手段を構成する遮蔽部センサ75により事前動作が行われたことが検出された場合に励磁対象部81に対する励磁を実行する制御手段3とを具備してなることを特徴とする。
【0043】
この本実施形態によれば、オペレータにより事前動作が行われたことが検出手段を構成する遮蔽部センサ75により検出された場合に制御手段3が励磁対象部81に対する励磁を実行するので、抜脱動作が行われないとき、例えば通常運転時から常に励磁対象部81に対して励磁を行っておく必要を無くし、励磁対象部81で消費される消費電力を低減して省エネルギーな現金処理装置を提供することが可能となる。
【0044】
特に、本実施形態では、使用中である金庫の抜脱を禁止するため金庫A(B、C)が使用中であるか否かを示す金庫情報を管理する金庫情報管理手段を構成する金庫情報管理部33を備え、励磁対象部81は、励磁状態または非励磁状態のいずれか一方に保持されることにより金庫A(B、C)を抜脱不能にし、励磁状態または非励磁状態のいずれか他方に保持されることにより金庫A(B、C)を抜脱可能にするように構成されており、制御手段3は、検出手段を構成する遮蔽部センサ75により事前動作が行われたことが検出された場合に、金庫情報で金庫が使用中であるか否かに応じて励磁対象部81に対する励磁を制御するので、金庫A(B、C)が使用中であるか否かに応じて無条件で金庫A(B、C)を抜脱不能又は抜脱可能にせず、抜脱動作が行われないときに励磁対象部81で電力が消費される事態を避け、使用状況に応じて金庫A(B、C)を抜脱不能又は抜脱可能とすることを省エネルギーで自動化することが可能となる。
【0045】
さらに、本実施形態では、金庫A(B、C)を収納室5に対して抜脱不能に施錠又は解錠する施解錠手段6を備え、励磁対象部81は、オペレータにより行われる金庫解錠動作Mvを施解錠手段6へ入力する入力経路を励磁により生ずる動力を利用して切断または接続するものであり、制御手段3は、検出手段を構成する遮蔽部センサ75により事前動作が行われたことが検出された場合に、金庫情報で使用中であるとする金庫A(B、C)に対応する入力経路を切断し、金庫情報で使用中でないとする金庫A(B、C)に対応する入力経路を接続するように、励磁対象部81に対する励磁を制御するので、金庫解錠動作Mvが行われるまで金庫A(B、C)を施錠状態に保持しつつ、金庫解錠動作Mvを行ったときに金庫A(B、C)の使用状況に応じて解錠がなされ、金庫A(B、C)の施錠及び解錠を適切に実施することを省エネルギーで実現可能になる。
【0046】
さらにまた、本実施形態では、検出手段は、オペレータによる金庫A(B、C)へのアクセスである金庫解錠動作Mvを遮蔽する遮蔽位置sまたは遮蔽位置sから退避する退避位置(表出位置p)のいずれかに変位可能な遮蔽部74と、遮蔽部74の位置を検出する遮蔽部センサ75とを有し、遮蔽部センサ75により遮蔽部74が退避位置(表出位置p)にあると検出される場合に、事前動作として遮蔽部74を退避位置(表出位置p)へ移動させる動作Atが行われたと検出するように構成されているので、金庫A(B、C)を抜脱する動作を行うにあたり、金庫A(B、C)へのアクセスである金庫解錠動作Mvに先立って遮蔽部74を退避位置(表出位置p)へ移動させる動作が必然的に行われるようになり、遮蔽部74を退避位置(表出位置p)へ移動させる動作Atを検出することで金庫A(B、C)を抜脱する動作に先立って行われる事前動作の検出を実現できる。
【0047】
さらにまた、本実施形態では、検出手段は、オペレータにより行われる金庫解錠動作Mvを受け付ける操作受付部72と、操作受付部72を遮蔽する遮蔽位置sまたは遮蔽位置sから退避して操作受付部72を表出させる表出位置pのいずれかに変位可能な遮蔽部74と、遮蔽部74の位置を検出する遮蔽部センサ75とを有し、遮蔽部センサ75により遮蔽部74が表出位置pにあると検出される場合に、事前動作として遮蔽部74を表出位置pへ移動させる動作Atが行われたと検出するように構成されているので、金庫A(B、C)を抜脱する動作を行うにあたり、金庫A(B、C)の解錠に先立って遮蔽部74を表出位置pへ移動させる動作Atが必然的に行われるようになり、遮蔽部74を表出位置pへ移動させる動作Atを検出することで金庫A(B、C)を抜脱する動作に先立って行われる事前動作の検出を実現できる。
【0048】
その他、金庫A(B、C)を施錠する施解錠手段6へオペレータにより行われる金庫解錠動作Mvを入力することにより金庫A(B、C)を解錠する構成において使用中の金庫の抜脱を禁止するためには施解錠手段6へ金庫解錠動作Mvが入力されるまでに入力経路を切断しておく必要があり、金庫解錠動作Mvが行われたときに励磁対象部81に対する励磁を実行したのでは入力経路の切断が間に合わずに使用中である金庫A(B、C)が抜脱されてしまうことが考えられるが、本実施形態では、遮蔽部74を表出位置pに移動させ金庫解錠動作Mvを受け付ける操作受付部72が表出された時点、すなわち金庫解錠動作Mvが操作受付部72に受け付けられる事前に励磁対象部81に対する励磁を実行するので、入力経路を適切に切断又は接続することができ、使用中である金庫A(B、C)が抜脱されてしまう事態が生じることがない。
【0049】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0050】
例えば、本実施形態では、励磁対象部81が、オペレータにより行われる金庫解錠動作Mvを施解錠手段6へ入力する入力経路を、励磁により生ずる動力を利用して切断または接続するものであるが、励磁対象部を、励磁により生ずる動力を利用して係合部を移動させるようにし、励磁対象部を励磁状態または非励磁状態のいずれか一方に保持することにより係合部と金庫とを係合して金庫を抜脱不能とし、励磁対象部を励磁状態または非励磁状態のいずれか他方に保持することにより係合部の移動を通じて係合部と金庫とを非係合にして金庫を抜脱可能にするようにしてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、オペレータによる金庫へのアクセスを金庫解錠動作Mvとし、この金庫解錠動作Mvに先立って行われる遮蔽部74を表出位置pに移動させる動作Atを遮蔽部センサ75で検出するようにしているが、オペレータによる金庫へのアクセスを遮蔽する遮蔽部として、オペレータと金庫との間に開閉扉部を設け、この開閉扉部の開閉を検出するようにしてもよい。その他、金庫の把手を把持されたか否かを検出するセンサを設け、把手が把持されたことを事前動作として検出してもよい。このようにオペレータによる金庫へのアクセスは、金庫解錠動作Mvに限らず、金庫の把手を把持する行為や、その他の行為も含まれる。
【0052】
さらに、本実施形態では、金庫A〜Cに対して入金および出金の双方を行う現金処理装置であるが、金庫への入金および金庫からの出金のいずれかのみを行う装置であっても本発明を適用することが可能である。
【0053】
さらにまた、金庫A〜Dに格納する金種は本実施形態に限定されるものではなく、金庫A〜Dはどの金種を格納することも可能であり、例えば金庫A〜Dに対して各金種を割り当てて金庫A〜Dを四金種循環金庫としてもよい。このような様々な金庫の設定に対しても本発明を適用することが可能である。
【0054】
加えて、本実施形態では、紙幣と硬貨とを含む現金のうち、紙幣を取り扱う紙幣ブロックとしての現金処理装置を例に挙げて説明したが、硬貨を取り扱う硬貨ブロックに対しても本発明を適用することが可能である。
【0055】
その他、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1………紙幣ブロック
A〜C…金庫
3………制御手段
33……金庫情報管理手段(金庫情報管理部)
5………収納室
5a、5b、5c…収納室
6………施解錠手段
72……操作受付部
74……遮蔽部
75……検出手段(遮蔽部センサ)
81……励磁対象部
s………遮蔽位置
p………表出位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納室に着脱可能に収納される金庫と、
前記収納室から前記金庫が抜脱される際に当該抜脱動作に関連して励磁状態に保持しておくべき励磁対象部と、
前記金庫を抜脱する動作に先立ってオペレータにより行われる事前動作を検出する検出手段と、
前記検出手段により前記事前動作が行われたことが検出された場合に前記励磁対象部に対する励磁を実行する制御手段とを具備してなることを特徴とする現金処理装置。
【請求項2】
使用中である金庫の抜脱を禁止するため前記金庫が使用中であるか否かを示す金庫情報を管理する金庫情報管理手段を備え、
前記励磁対象部は、励磁状態または非励磁状態のいずれか一方に保持されることにより前記金庫を抜脱不能にし、励磁状態または非励磁状態のいずれか他方に保持されることにより前記金庫を抜脱可能にするように構成されており、
前記制御手段は、前記検出手段により前記事前動作が行われたことが検出された場合に、前記金庫情報で金庫が使用中であるか否かに応じて前記励磁対象部に対する励磁を制御する請求項1に記載の現金処理装置。
【請求項3】
前記金庫を前記収納室に対して抜脱不能に施錠又は解錠する施解錠手段を備え、
前記励磁対象部は、オペレータにより行われる金庫解錠動作を前記施解錠手段へ入力する入力経路を励磁により生ずる動力を利用して切断または接続するものであり、
前期制御手段は、前記検出手段により前記事前動作が行われたことが検出された場合に、前記金庫情報で使用中であるとする金庫に対応する前記入力経路を切断し、前記金庫情報で使用中でないとする金庫に対応する前記入力経路を接続するように、前記励磁対象部に対する励磁を制御する請求項2に記載の現金処理装置。
【請求項4】
前記検出手段は、オペレータによる前記金庫へのアクセスを遮蔽する遮蔽位置または当該遮蔽位置から退避する退避位置のいずれかに変位可能な遮蔽部と、前記遮蔽部の位置を検出する遮蔽部センサとを有し、前記遮蔽部センサにより前記遮蔽部が前記退避位置にあると検出される場合に、前記事前動作として前記遮蔽部を前記退避位置へ移動させる動作が行われたと検出するように構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の現金処理装置。
【請求項5】
前記検出手段は、オペレータにより行われる金庫解錠動作を受け付ける操作受付部と、前記操作受付部を遮蔽する遮蔽位置または当該遮蔽位置から退避して前記操作受付部を表出させる表出位置のいずれかに変位可能な遮蔽部と、前記遮蔽部の位置を検出する遮蔽部センサとを有し、前記遮蔽部センサにより前記遮蔽部が前記表出位置にあると検出される場合に、前記事前動作として前記遮蔽部を前記表出位置へ移動させる動作が行われたと検出するように構成されている請求項3に記載の現金処理装置。
【請求項1】
収納室に着脱可能に収納される金庫と、
前記収納室から前記金庫が抜脱される際に当該抜脱動作に関連して励磁状態に保持しておくべき励磁対象部と、
前記金庫を抜脱する動作に先立ってオペレータにより行われる事前動作を検出する検出手段と、
前記検出手段により前記事前動作が行われたことが検出された場合に前記励磁対象部に対する励磁を実行する制御手段とを具備してなることを特徴とする現金処理装置。
【請求項2】
使用中である金庫の抜脱を禁止するため前記金庫が使用中であるか否かを示す金庫情報を管理する金庫情報管理手段を備え、
前記励磁対象部は、励磁状態または非励磁状態のいずれか一方に保持されることにより前記金庫を抜脱不能にし、励磁状態または非励磁状態のいずれか他方に保持されることにより前記金庫を抜脱可能にするように構成されており、
前記制御手段は、前記検出手段により前記事前動作が行われたことが検出された場合に、前記金庫情報で金庫が使用中であるか否かに応じて前記励磁対象部に対する励磁を制御する請求項1に記載の現金処理装置。
【請求項3】
前記金庫を前記収納室に対して抜脱不能に施錠又は解錠する施解錠手段を備え、
前記励磁対象部は、オペレータにより行われる金庫解錠動作を前記施解錠手段へ入力する入力経路を励磁により生ずる動力を利用して切断または接続するものであり、
前期制御手段は、前記検出手段により前記事前動作が行われたことが検出された場合に、前記金庫情報で使用中であるとする金庫に対応する前記入力経路を切断し、前記金庫情報で使用中でないとする金庫に対応する前記入力経路を接続するように、前記励磁対象部に対する励磁を制御する請求項2に記載の現金処理装置。
【請求項4】
前記検出手段は、オペレータによる前記金庫へのアクセスを遮蔽する遮蔽位置または当該遮蔽位置から退避する退避位置のいずれかに変位可能な遮蔽部と、前記遮蔽部の位置を検出する遮蔽部センサとを有し、前記遮蔽部センサにより前記遮蔽部が前記退避位置にあると検出される場合に、前記事前動作として前記遮蔽部を前記退避位置へ移動させる動作が行われたと検出するように構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の現金処理装置。
【請求項5】
前記検出手段は、オペレータにより行われる金庫解錠動作を受け付ける操作受付部と、前記操作受付部を遮蔽する遮蔽位置または当該遮蔽位置から退避して前記操作受付部を表出させる表出位置のいずれかに変位可能な遮蔽部と、前記遮蔽部の位置を検出する遮蔽部センサとを有し、前記遮蔽部センサにより前記遮蔽部が前記表出位置にあると検出される場合に、前記事前動作として前記遮蔽部を前記表出位置へ移動させる動作が行われたと検出するように構成されている請求項3に記載の現金処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−128848(P2011−128848A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286240(P2009−286240)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】
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