説明

現金自動取引装置

【課題】利用者の顧客情報を盗み見られる危険性を低減し、安全かつ容易に取引を行うことができる現金自動取引装置を提供する。
【解決手段】所定の取引を行うための利用者による操作を受け付ける操作部と、前記操作にしたがって前記所定の取引を行う本体部とを備えた現金自動取引装置であって、前記操作部は、前記操作部を移動させる旨を入力する指示を受け付け、前記本体部は、前記操作部を移動させる移動手段と、前記指示が受け付けられた場合に、前記操作部を前記本体部前面の前方または前記本体部前面の後方に移動させるように、前記移動手段の動作を制御する移動制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金自動取引装置に関し、特に、利用者が取引を行うための操作画面を有する現金自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、現金自動取引装置においては、現金自動取引装置の筐体の下部がへこんだ形状(いわゆる、蹴込み)がとられている。これは、車椅子の利用者等が、取引を行うために操作画面に近づいて所定の操作する場合でも、その操作が容易に行うことができるようにするためである。したがって、上述した蹴込みの幅が広い、すなわち蹴込みの奥行きがあるほど、車椅子の利用者等にとっては操作性が高い。
【0003】
ところが、上述した蹴込みの奥行きを大きくすればする程、現金自動取引装置の重心の位置が高くなるため、現金自動取引装置の安定性が悪くなる。したがって、確保できる蹴込みの奥行きの幅は、現実的には限界がある。実際、その幅は車椅子の利用者にとって使い勝手がよくなる程度にまで十分ではなく、車椅子の利用者の多くは、操作画面を操作するために車椅子を横向きに回転させなければならない等の不便を強いられている。
【0004】
ところで、近年、顧客情報の保護が重要となっているが、現金自動取引装置においても、顧客情報の保護が図られている。例えば、操作画面をプライバシーフィルム等で覆うことによって、利用者の背後から暗証番号や取引内容等の顧客情報を盗み見ることができないようにする等、種々の工夫がなされている。
【0005】
上述したプライバシーフィルム等によって操作画面を覆った場合、立位者である操作者の目線で操作画面が最も見易く、他の角度からは操作画面の内容を盗み見ることが困難になるため、利用者の背後から顧客情報を盗み見ようとする行為に対しては有効である。しかし、プライバシーフィルム等は、立位者の視点以外の視点(例えば、車椅子の利用者からの視点)で操作画面を操作しようとする場合、立位者の視点と比較すると、蹴込みの問題もあり現金自動取引装置から距離をおいてしまうため、操作画面が見づらいという問題があった。
【0006】
このような問題を解決する技術として、特許文献1には、モータの動作を制御して、操作画面を利用者側に立ち上げ、平面から一定の角度を保つことによって、車椅子の利用者であっても操作画面が見やすく、容易に操作することができる現金自動取引装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−210613
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、操作画面を利用者側に向けて立ち上げて一定の角度を保っているため、上述したプライバシーフィルム等を操作画面に施した場合であっても、利用者の背後から操作画面の内容が盗み見られ、暗証番号や取引内容等の顧客情報が盗み見られてしまう危険性があるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、利用者の顧客情報を盗み見られる危険性を低減し、安全かつ容易に取引を行うことができる現金自動取引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明にかかる現金自動取引装置は、所定の取引を行うための利用者による操作を受け付ける操作部と、前記操作にしたがって前記所定の取引を行う本体部とを備えた現金自動取引装置であって、前記操作部は、前記操作部を移動させる旨を入力する指示を受け付け、前記本体部は、前記操作部を移動させる移動手段と、前記指示が受け付けられた場合に、前記操作部を前記本体部前面の前方または前記本体部前面の後方に移動させるように、前記移動手段の動作を制御する移動制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、利用者の顧客情報を盗み見られる危険性を低減し、安全かつ容易に取引を行うことができる現金自動取引装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態にかかるATMの外観を示した図である。
【図2】図1に示した操作部が、ATMの前方に移動する様子を示す図である。
【図3】図1に示したATMの機能的な構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示した移動部の具体的な構造の例を示す図である。
【図5】図3に示した操作受付部が表示する取引開始画面の例を示す図である。
【図6】図3に示した操作受付部が表示する移動確認画面の例を示す図である。
【図7】図3に示した操作受付部が表示する取引確認画面の例を示す図である。
【図8】図3に示した操作受付部が表示する取引中止確認画面の例を示す図である。
【図9】図3に示した操作受付部が表示する移動表示画面の例を示す図である。
【図10A】第1の実施の形態において、ATMが各種の処理を行う場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図10B】第1の実施の形態において、ATMが各種の処理を行う場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】第1の実施の形態において、操作部が移動した状態においてATMが各種の処理を行う場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施の形態にかかるATMの外観を示した図である。
【図13】図12に示したATMの機能的な構成を示すブロック図である。
【図14】撮像部が、顔部分が所定の範囲にあるか否かを判定する様子を示す図である。
【図15】第2の実施の形態において、ATMが各種の処理を行う場合の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる現金自動取引装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施形態にかかる現金自動取引装置(以下、ATM:Automated-Teller Machineと呼ぶ。)1000の外観を示した図である。ATM1000は、金融機関等に設置され、利用者の操作によって、貨幣の預入や払出等の各種の取引を行うものである。
【0015】
図1に示すように、ATM1000は、本体部100と、操作部200と、を含んで構成されている。
【0016】
本体部100は、通帳取扱部101と、カード取扱部102と、紙幣入出金部103と、硬貨入出金部104と、手挿入検知部105と、接続部106と、ガイド部107と、移動部108と、蓄電部110と、電源供給部111と、制御部112と、通信部113と、を含んで構成されている。なお、手挿入検知部105、接続部106、ガイド部107、移動部108、蓄電部110、電源供給部111、制御部112、通信部113の各部の説明については、図2または図3を用いて後述する。また、制御部112は、移動制御部109を含んで構成されているが、上述した各部と同様に、図2または図3を用いて後述する。
【0017】
また、操作部200は、操作受付部201と、顧客検知部202と、衝突防止検知部203と、接続部204と、ガイド部205と、ラックギア部206と、を含んで構成されている。なお、接続部204、ガイド部205、ラックギア部206の各部については、本体部100と同様に、図2または図3を用いて後述する。
【0018】
上述した本体部100のガイド部107と、操作部200のガイド部205とは、図1の点線で囲んだ範囲(A)で示すように、凹部および凸部が設けられた構成となっている。このように、ガイド部107とガイド部205とが凹部または凸部として構成されていることによって、操作部200が本体部100の一部に収納されるようになっている。そして、後述するように、操作部200は、ガイド部107に沿って、収納された位置から本体部100前面の前方に、あるいは本体部100前面の前方から後方(収納される位置)に移動することができるようになっている。
【0019】
なお、以下の説明では、ガイド部107に凸部が設けられ、ガイド部205に凹部が設けられている前提で説明しているが、これとは逆に、ガイド部107に凹部が設けられ、ガイド部205に凸部が設けられていてもよい。すなわち、操作部200が、本体部100前面の前方あるいは後方に移動する場合に、操作部200を支えるものであればよい。
【0020】
図2は、操作部200が、ATM1000の本体部100の前方(矢印で示した向き)に移動する様子を示す図である。図2に示すように、操作部200は、後述する制御部112の移動制御部109からの指示に応じて、ガイド部107に沿って本体部100前面の前方または後方に移動する。
【0021】
図3は、図1に示したATM1000の機能的な構成を示すブロック図である。まず、本体部100について説明する。
【0022】
通帳取扱部101は、制御部112から指示に応じて、利用者がATM1000との間で取引を行う場合に使用する通帳の挿入動作を受け付ける。また、通帳取扱部101は、制御部112から指示に応じて、挿入された通帳に付加された磁気ストライプ情報の読み取り等を行い、例えば、入金金額等の取引内容を所定のページに印字し、取引が終了した場合等に、印字した通帳を排出する。
【0023】
カード取扱部102は、制御部112から指示に応じて、利用者がATM1000との間で取引を行う場合に使用するキャッシュカードの挿入を受け付ける。また、カード取扱部102は、制御部112から指示に応じて、挿入されたキャッシュカードに付加された磁気ストライプ情報や、キャッシュカードのエンボス部分のイメージを読取り、取引が終了した場合等において、挿入されたキャッシュカードを排出する。
【0024】
紙幣入出金部103は、利用者が取引する紙幣の取り出しや受け入れを行うための紙幣入出金口を含んで構成され、制御部112から指示に応じて、紙幣入出金口に投入された紙幣の真偽を判定したり、あるいは金種ごとに紙幣の枚数をカウントし、収納庫(不図示)に収納する。また、紙幣入出金部103は、上述した操作部200の操作受付部201から入力された入金金額等に応じて、収納庫に収納されている紙幣を繰り出し、繰り出した紙幣を紙幣入出金口に排出する。
【0025】
硬貨入出金部104は、利用者が取引する硬貨の取り出しや受け入れを行うための硬貨入出金口を含んで構成され、制御部112から指示に応じて、硬貨入出金口に投入された硬貨の真偽を判定したり、あるいは金種ごとに硬貨の枚数をカウントし、収納庫(不図示)に収納する。また、硬貨入出金部104は、上述した操作部200の操作受付部201から入力された入金金額等に応じて、収納庫に収納されている硬貨を繰り出し、繰り出した硬貨を硬貨入出金口に排出する。
【0026】
手挿入検知部105は、赤外線センサ等のセンサから構成され、後述する移動部108が、操作部200が本体部100前面の前方から後方に移動される場合に、操作部200と、本体部100との間の空間に障害物があるか否か(例えば、利用者の手や指が挿入されているか否か)を検知する。
【0027】
具体的には、手挿入検知部105は、図2に示したように、操作部200と本体部100とが接する面に配置(図2に示す例では等間隔に5つのセンサが配置)され、本体部100の前面から操作部200の背面に向かって赤外線(赤外光)を射出することによって、障害物があるか否かを検知している。
【0028】
このように、手挿入検知部105が、操作部200と、本体部100との間の空間に障害物があるか否かを検知しているので、利用者は安全にATM1000において各種の取引を開始することができる。
【0029】
なお、以下では、手挿入検知部105は、本体部100側に配置されている前提で説明しているが、操作部200背面に配置されていてもよい。すなわち、本体部100前面と操作部200背面との間の空間に障害物があるか否かを検知できるものであればよい。続いて、図3に戻り、接続部106について説明する。
【0030】
接続部106は、カールコード等のケーブル(図2および図3に示したカールコードCC)を、本体部100に接続させるためのインタフェースである。
【0031】
ここで、カールコードCは、本体部100と操作部200とを接続し、操作部200が利用者から受け付けた指示等(例えば、操作画面上に表示された取引の指定を行うためのボタン(以下、取引開始キーと呼ぶ。)が押下された旨等)の各種情報を本体部100に伝送したり、あるいは本体部100の紙幣入出金部103が入出金口に排出した紙幣の枚数等の各種情報を操作部200に伝送するためのケーブルである。なお、操作部200が本体部100前面の前方に移動した状態ではない場合、カールコードCは、操作部200の背面に設けられた凹部(不図示)に収納されている。
【0032】
なお、以下では、カールコードCを介して、操作部200と本体部100との種々の情報を伝送している前提で説明しているが、カールコードCとは異なるコード等によって、種々の情報を伝送する等、従来から知られた様々な手法によって伝送することも可能である。
【0033】
ガイド部107は、操作部200の側面に設けられたガイド部205に接するように凸型の形状をした部位から構成され、操作部200が移動する際に、上下(操作部200が移動する方向と垂直方向)に動かないようになっている。すなわち、ガイド部107は、操作部200が移動する方向が、本体部100前面の前方または後方となるように、操作部200を誘導するものである。
【0034】
また、ガイド部107は、操作部200が本体部100前面の前方に移動する場合に、その移動を停止させるストッパとしての役割を果たしているが、具体的な内容については、操作部200のガイド部205を説明する際にあわせて説明する。なお、図2では図示していないが、図2に示した位置とは反対側の位置にも、同様の構成のガイド部107が配置されている。
【0035】
移動部108は、固定部1081と、駆動部1082と、ギア部1083と、を含んで構成されている。
【0036】
固定部1081は、台座等から構成され、駆動部1082を本体部100に固定させる。
【0037】
駆動部1082は、モータ等から構成され、操作部200が本体部100前面の前方に移動させる旨の指示を受け付けた場合に、後述する移動制御部109からの指示によって、操作部200が移動する方向とは垂直な方向を軸として反時計回りまたは時計回りに回転する。また、駆動部1082は、操作部200の衝突防止検知部203(後述)が、操作部200前面の前方に障害物を検知した場合に、後述する移動制御部109からの指示によって、上述した回転を停止する。
【0038】
さらに、駆動部1082は、操作部200が本体部100前面の後方に移動させる旨の指示を受け付けた場合に、後述する移動制御部109からの指示によって、操作部200が移動する方向とは垂直な方向を軸として時計回りまたは反時計回りに回転する。また、駆動部1082は、上述した手挿入検知部105が障害物を検知した場合に、後述する移動制御部109からの指示によって、上述した回転を停止する。
【0039】
ギア部1083は、複数の凸部が設けられたギア等から構成され、上述した駆動部1082が回転する軸と同軸となるように、駆動部1082に固定されている。ギア部1083は、駆動部1082が回転することによって、駆動部1082と同様に反時計回りまたは時計回りに回転する。
【0040】
また、ギア部1083に設けられた凸部は、操作部200の側面に設けられた凹部(後述)と符合するように接しているので、駆動部1082が半時計回りまたは時計回りに回転することによって、操作部200が本体部100前面の前方または後方に移動するようになっている。
【0041】
図4は、上述した移動部108の具体的な構造の例を示す図である。図4に示すように、移動部108のギア部1083の凸部は、操作部200のガイド部205と符合するように設けられている。図4に示す例では、ギア部1083が駆動部1082によって反時計回り(矢印の向き)に回転し、操作部200がATM1000前面の前方から後方に移動している様子を示している。
【0042】
なお、移動部108は、ガイド部107の場合と同様に、図4に示した位置とは反対側の位置にも、同様の構成のガイド部107が配置されている。また、移動部108は、制御部112の移動制御部109によってその動作が制御されているが、具体的には後述する。続いて、図3に戻り、蓄電部110について説明する。
【0043】
蓄電部110は、バッテリ等から構成され、障害等によって、後述する商用電源部400から電力が供給されなくなった場合に、ATM1000の各部に対して電力を供給する。
【0044】
電源供給部111は、AC/DC(Alternating Current/Direct Current)アダプタ等から構成され、後述する商用電源部400から交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を、上述したATM1000の各部に対して供給する。
【0045】
制御部112は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ等から構成され、移動制御部109を含んで構成されている。制御部112は、移動制御部109のほか、ATM1000の各部の動作を制御する。
【0046】
移動制御部109は、操作部200の操作受付部201が、利用者から操作部200を本体部100前面の前方に移動させる旨の指示を受け付けた場合には、移動部108の駆動部1082を、上述した時計回りまたは反時計回りに回転させる。
【0047】
また、移動制御部109は、操作部200の顧客検知部202(後述)が、操作部200前面の前方に障害物を検知した場合、駆動部1082の回転を停止させる。さらに、移動制御部109は、駆動部1082の回転を停止させた場合において、その後、所定の時間(例えば、30秒間)が経過したか否かを判定する。そして、駆動部1082の回転を停止させてから所定の時間が経過していないと判定した場合には、そのまま駆動部1082の回転を停止させた状態にする。
【0048】
一方、移動制御部109は、駆動部1082の回転を停止させてから所定の時間が経過したと判定した場合には、回転を停止させる前とは逆向きに駆動部1082を回転させる。
【0049】
なお、移動制御部109は、操作部200の顧客検知部202(後述)が、操作部200前面の前方に障害物を検知しない場合には、操作部200をそのまま前方に移動させ、所定の位置(例えば、ガイド部107がある位置)まで移動したか否かを判定する。そして、移動制御部109は、操作部200が所定の位置(例えば、ガイド部107がある位置)まで移動したと判定した場合には、駆動部1082の回転を停止させる。
【0050】
そして、移動制御部109は、操作部200を本体部100前面の後方に移動させた場合に、上述した手挿入検知部105が障害物を検知したか否かを判定し、手挿入検知部105が障害物を検知したと判定した場合には、回転している駆動部1082を停止させる。
【0051】
さらに、移動制御部109は、回転している駆動部1082を停止させた場合において、操作部200の顧客検知部202(後述)が操作部200前面の前方に障害物を検知した場合と同様に、その後、所定の時間(例えば、30秒間)が経過するまでそのまま駆動部1082を停止させる。
【0052】
一方、移動制御部109は、手挿入検知部105が障害物を検知したと判定していない場合には、操作部200をそのまま後方に移動させ、所定の位置(例えば、操作部200が最初に収納されていた位置)まで移動したか否かを判定する。そして、移動制御部109は、操作部200が所定の位置(例えば、操作部200が最初に収納されていた位置)まで移動したと判定した場合には、駆動部1082の回転を停止させる。
【0053】
なお、移動制御部109は、手挿入検知部105が障害物を検知したと判定した場合において、障害物を検知した状態が所定の時間(例えば、30秒間)が経過した場合には、操作部200等の異常であると判定し、駆動部1082の回転を停止させる。続いて、通信部113について説明する。
【0054】
通信部113は、NIC(Network Interface Card)等の通信インタフェースから構成され、後述する通信ネットワーク500から、利用者が操作部200を操作して、取引を行う際のパスワード等の認証情報等の各種情報の通信を媒介する。続いて、操作部200について説明する。
【0055】
操作部200は、操作受付部201と、顧客検知部202と、衝突防止検知部203と、接続部204と、ガイド部205と、ラックギア部206と、を含んで構成されている。
【0056】
操作受付部201は、タッチパネル等から構成され、後述する顧客検知部202が、ATM1000前面の前方に障害物がある旨を検知すると、利用者がATM1000を操作して所定の取引を行うための画面(以下、取引開始画面と呼ぶ。)を表示する。
【0057】
図5は、上述した取引開始画面の例を示す図である。図5に示すように、操作受付部201は、利用者の預金口座から現金を引き出す取引を行うための「お引き出し」、利用者の預金口座の残高を確認するための「残高照会」等の各取引を行うための取引キーを含む取引開始画面を表示する。
【0058】
なお、図5に示した取引開始画面には、上述した取引キーの他、車椅子の利用者がATM1000との取引を行う場合に、操作部200をATM1000前面の前方に移動させるためのキー(以下、車椅子利用者キーと呼ぶ。図5に示す例では、右下の図形で示したもの。)が表示されている。
【0059】
また、操作受付部201は、上述した車椅子利用者キーが押下されたか否かを判定し、車椅子利用者キーが押下されたと判定すると、利用者に対して操作部200を操作部100前面の前方に移動させるか否かを確認するための画面(以下、移動確認画面と呼ぶ。)を表示する。
【0060】
図6は、上述した移動確認画面の例を示す図である。図6に示すように、移動確認画面には、利用者に操作部200を移動してもよいか否かの確認を促すメッセージと、その応答を行うための応答キー(「はい」、「いいえ」)が表示されている。応答キーのうち「はい」が利用者によって押下されると、移動制御部109は移動部108の駆動部1082を駆動させて、操作部200を本体部100前面の前方へ移動させる。
【0061】
このように、操作部200を本体部100前面の前方に移動させるか否かを利用者に確認した上で、移動制御部109が操作部200を移動させることとしているので、ATM1000の利用者が、例えば、車椅子の利用者以外の身長が低い利用者である場合であっても、不必要に操作部200を本体部100前面の前方に移動させることがない。
【0062】
さらに、操作受付部201は、操作部200が、本体部100前面の前方に移動された状態で利用者が上述した各種の取引を行い、各種の取引の画面上において取引を終了する旨のキー(不図示)が押下されたか否かを判定し、取引を終了する旨のキー(不図示)が押下されたと判定した場合に、利用者に対して引き続き他の取引を行うか否かの確認するための画面(以下、取引確認画面と呼ぶ。)を表示する。
【0063】
図7は、上述した取引確認画面の例を示す図である。図7に示すように、取引確認画面には、利用者に取引を引き続き行うか否かの確認を促すメッセージと、その応答を行うための応答キー(「はい」、「いいえ」)が表示されている。応答キーのうち「いいえ」が利用者によって押下されると、移動制御部109は移動部108の駆動部1082を駆動させて、操作部200を本体部100前面の後方へ移動させる。
【0064】
また、操作受付部201は、手挿入検知部105が障害物を検知したことによって、移動制御部109が操作部200のATM1000前面の後方への移動を停止させ、手挿入検知部105が障害物を所定の時間(例えば、30秒間)以上検知して操作部200が異常であると判定した場合には、利用者が行っている取引を中止させる旨を示す画面(以下、取引中止確認画面と呼ぶ。)を表示する。
【0065】
図8は、上述した取引中止確認画面の例を示す図である。図8に示すように、取引中止確認画面には、利用者が行っている取引を中止する旨のメッセージが表示されている。
【0066】
なお、操作受付部201は、移動制御部109が、操作部200を移動させている場合には、利用者の手や指がATM1000の本体部100と操作部200との間に挟まれないように注意を促す画面(以下、移動表示画面と呼ぶ。)を表示することとしてもよい。
【0067】
図9は、上述した移動表示画面の例を示す図である。図9に示すように、移動表示画面には、操作部200が移動中である旨のメッセージが表示されている。このように、利用者に注意を促すことによって、利用者は安全にATM1000において各種の取引を開始することができる。続いて、図3に戻り、顧客検知部202について説明する。
【0068】
顧客検知部202は、例えば、赤外線センサ等のセンサから構成され、利用者がATM1000の前方に近づいたか否かを検知する。顧客検知部202は、上述した手挿入検知部105や、後述する衝突防止検知部203よりも、物体を検知する赤外光の射程距離が長くなるように設定されている。
【0069】
衝突防止検知部203は、上述した顧客検知部202と同様に、赤外線センサ等のセンサから構成され、移動制御部108によって操作部200が本体部100前面の前方に移動された場合に、利用者に衝突するか否かを検知する。
【0070】
このように、衝突防止検知部203が、操作部200が利用者に衝突するか否かを検知しているので、利用者は安全にATM1000において各種の取引を開始することができる。
【0071】
接続部204は、本体部100の接続部106と同様に、カールコード等のケーブルを、本体部100に接続させるためのインタフェースである。接続部204は、操作部200の背面(図2に示した例では、本体部100側の面)に設けられ、カールコードCを操作部200に接続させる。
【0072】
ガイド部205は、ガイド部107の凸型の形状に符合するように凹型の形状をした溝状の部位から構成され、操作部200が、本体部100前面の後方から前方に移動する際に、操作部200が上下(操作部200が移動する面と垂直方向)に動かないように構成されている。
【0073】
なお、ガイド部205は、図4に示したように、操作部200前面から背面に向かって全体の半分程度の長さ(奥行き)になっている。このように構成されていることによって、操作部200が本体部100前面の後方から前方に移動した場合に、ガイド部205の操作部200背面側の終端が、本体部100のガイド部107の凸部に掛かるため、操作部200が本体部100から離れて落下する危険性を防止している。すなわ、本体部100のガイド部107が操作部200の移動に対するストッパの役割を果たしているので、上述した危険性を防止できるようになっている。続いて、図3に戻り、ラックギア部206について説明する。
【0074】
ラックギア部206は、複数の凹部が設けられたラックギア等から構成され、本体部100のギア部1083が回転することによって、ギア部1083の凸部が、ラックギア部206の凹部に掛かり、操作部200は、ATM1000前面の前方または後方に移動する。なお、ラックギア部206は、図4に示したように、操作部200側面の中心から操作部側面の背面までの位置に配置されている。なお、ラックギア部206は、移動部108と同様に、図4に示した位置とは反対側の位置にも、同様の構成のガイド部107が配置されている。
【0075】
なお、図3に示す商用電源部400は、AC電源を供給する所定の電力会社に設置された電源装置等であり、ATM1000に対してAC電力を供給するものである。また、通信ネットワーク500は、WAN(Wide Area Network)等の通信回線網である。
【0076】
続いて、図10A、図10Bおよび図11を用いて、上述したATM1000で行われる取引開始処理について説明する。
【0077】
図10Aおよび図10Bは、ATM1000が上述した各種の処理を行う場合の処理手順を示すフローチャートである。また、図11は、操作部200が、ATM1000前面の前方に移動した場合における各種の処理を行う場合の処理手順を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、操作部200の顧客検知部202は、ATM1000前面の前方に利用者が存在していることを検知したものとする。
【0078】
操作部200の操作受付部201は、顧客検知部202が、ATM1000前面の前方に利用者が存在していることを検知すると、取引開始画面を表示する(ステップS1001)。そして、操作受付部201は、取引開始画面に表示された車椅子利用者キーが押下されたか否かを判定し(ステップS1002)、取引開始画面に表示された車椅子利用者キーが押下されていないと判定した場合(ステップS1002;No)、さらに取引開始画面に表示された取引キーが押下されたか否かを判定する(ステップS1003)。
【0079】
そして、操作受付部201は、取引開始画面に表示された取引キーが押下されたと判定した場合(ステップS1003;Yes)、取引開始処理を終了し、押下された取引キーの取引内容に応じた取引画面を表示し、利用者は所望の取引を開始する。
【0080】
一方、操作受付部201は、取引開始画面に表示された取引キーが押下されたと判定していない場合(ステップS1003;No)、ステップS1001に戻り、そのまま待機する。
【0081】
そして、操作受付部201は、取引開始画面に表示された車椅子利用者キーが押下されたと判定した場合(ステップS1002;Yes)、移動開始確認画面を表示する(ステップS1004)。
【0082】
その後、操作受付部201は、移動開始確認画面に表示された確認キー(はい)が押下されたか否かを判定し(ステップS1005)、移動開始確認画面に表示された確認キー(はい)が押下されていない(すなわち、確認キー(いいえ)が押下された)と判定した場合(ステップS1005;No)、ステップS1003でYesと判定した場合と同様に、取引開始処理を終了し、押下された取引キーの取引内容に応じた取引画面を表示し、利用者は所望の取引を開始する。
【0083】
一方、操作受付部201が移動開始確認画面に表示された確認キー(はい)が押下されたと判定した場合(ステップS1005;Yes)、移動制御部109は、操作部200を本体部100前面の前方に移動させる(ステップS1006)。
【0084】
その後、移動制御部109は、操作部200の衝突防止検知部203が、操作部200前面の前方に障害物がある旨を検知したか否かを判定し(ステップS1007)、操作部200前面の前方に障害物がある旨を検知していないと判定した場合(ステップS1007;No)、後述するステップS1010に進む。
【0085】
一方、移動制御部109は、衝突防止検知部203が、操作部200前面の前方に障害物がある旨を検知したと判定した場合(ステップS1007;Yes)、操作部200のATM1000前面の前方への移動を停止させる(ステップS1008)。
【0086】
その後、移動制御部109は、ステップS1007と同様に、衝突防止検知部203が、操作部200前面の前方に障害物がある旨を検知したか否かを判定し(ステップS1009)、操作部200前面の前方に障害物がある旨を検知していないと判定した場合(ステップS1009;No)、操作部200が本体部100前面の前方の所定の位置(ガイド部107の位置)まで移動したか否かを判定する(ステップS1010)。
【0087】
そして、移動制御部109は、操作部200がATM1000前面の前方に所定の位置まで移動したと判定した場合(ステップS1010;Yes)、ステップS1003でYesと判定した場合と同様に、取引開始処理を終了し、押下された取引キーの取引内容に応じた取引画面を表示し、利用者は所望の取引を開始する。
【0088】
一方、移動制御部109は、操作部200がATM1000前面の前方に所定の位置まで移動していないと判定した場合(ステップS1010;No)、操作受付部201は、ステップS1004に戻り、移動開始確認画面を表示し、ステップS1005以降の処理を繰り返し行い、操作部200をATM1000前面の前方に移動させるための各処理を行う。
【0089】
そして、移動制御部109は、衝突防止検知部203が操作部200前面の前方に障害物がある旨を検知していると判定した場合(ステップS1009;No)、さらに、障害物がある旨を検知してから所定の時間(例えば、30秒)が経過したか否かを判定する(ステップS1010)。
【0090】
そして、移動制御部109は、衝突防止検知部203が障害物がある旨を検知してから所定の時間(例えば、30秒)が経過していないと判定した場合(ステップS1010;No)、ステップS1009に戻り、引き続き、衝突防止検知部203が障害物がある旨を検知しているか否かを判定する。
【0091】
一方、移動制御部109は、衝突防止検知部203が障害物がある旨を検知してから所定の時間(例えば、30秒)が経過したと判定した場合(ステップS1010;Yes)、移動制御部109は、操作部200を本体部100前面の前方から後方に移動させる(ステップS1012)。
【0092】
その後、移動制御部109は、手挿入検知部105が、障害物がある旨を検知しているか否かを判定し(ステップS1013)、手挿入検知部105が、障害物がある旨を検知していると判定した場合(ステップS1013;Yes)、操作部200の後方への移動を停止させる(ステップS1014)。
【0093】
一方、移動制御部109は、手挿入検知部105が、障害物がある旨を検知していないと判定した場合(ステップS1013;No)、ステップS1018に進む。
【0094】
その後、移動制御部109は、手挿入検知部105が、本体部100前面の前方に障害物がある旨を検知したか否かを判定し(ステップS1015)、本体部100前面の前方に障害物がある旨を検知していないと判定した場合(ステップS1015;No)、操作部200がATM1000の所定の位置(操作部200が収納されていた位置)まで移動したか否かを判定する(ステップS1018)。
【0095】
そして、移動制御部109は、操作部200がATM1000の所定の位置まで移動したと判定した場合(ステップS1018;Yes)、取引開始処理を終了し、操作受付部201は、取引開始画面を表示する。
【0096】
一方、移動制御部109は、操作部200がATM1000の所定の位置まで移動していないと判定した場合(ステップS1018;No)、ステップS1012に戻り、移動制御部109は、ステップS1013以降の処理を繰り返し行い、操作部200をATM1000の所定の位置に移動させるための各処理を行う。
【0097】
なお、移動制御部109は、手挿入検知部105が、本体部100前面の前方に障害物がある旨を検知していると判定した場合(ステップS1015;Yes)、さらに、障害物がある旨を検知してから所定の時間(例えば、30秒)が経過したか否かを判定する(ステップS1016)。
【0098】
そして、移動制御部109は、手挿入検知部105が障害物がある旨を検知してから所定の時間(例えば、30秒)が経過していないと判定した場合(ステップS1016;No)、ステップS1015に戻り、引き続き、手挿入検知部105が障害物がある旨を検知しているか否かを判定する。
【0099】
一方、移動制御部109は、手挿入検知部105が障害物がある旨を検知してから所定の時間(例えば、30秒)が経過したと判定した場合(ステップS1010;Yes)、操作受付部201は、取引中止確認画面を表示し、取引開始処理が終了する。
【0100】
続いて、図11を用いて、操作部200が本体部100前面の前方に移動した場合における各種の処理を行う場合の処理手順について説明する。
【0101】
操作部200が移動制御部109によって、ATM1000前面の前方に移動した状態において、操作受付部201は、各種の取引を終了させるための取引キー(不図示)が押下されたか否かを判定し(ステップS1101)、各種の取引を終了させるための取引キー(不図示)が押下されていないと判定した場合(ステップS1101;No)、そのまま待機する。
【0102】
一方、操作受付部201は、各種の取引を終了させるための取引キー(不図示)が押下されたと判定した場合(ステップS1101;Yes)、取引確認画面を表示する(ステップS1102)。
【0103】
その後、操作受付部201は、取引確認画面状に表示された確認キー(はい)が押下されたか否かを判定し(ステップS1103)、取引確認画面状に表示された確認キー(はい)が押下されたと判定した場合(ステップS1103;Yes)、取引開始処理を終了する。
【0104】
一方、操作受付部201は、取引確認画面状に表示された確認キー(はい)が押下されていない(すなわち、確認キー(いいえ)が押下された)と判定した場合(ステップS1103;No)、図10Bに示したステップS1012に進み、移動制御部109は、操作部200の後方への移動を開始させる。このように、図10Bに示したステップS1017またはS1018の各処理、あるいは図11に示したステップS1103における処理が終了すると、本実施の形態におけるすべての取引開始処理が終了する。
【0105】
このように、操作部200の操作受付部201が、取引を行うための利用者による操作を受け付け、本体部100の各部が、受け付けた操作にしたがって所定の取引を行うATM1000において、操作部200の操作受付部201は、操作部200を移動させるための車椅子利用者キーの押下を受け付け、本体部100は、移動部108が操作部200を移動させ、移動制御手部109が、操作部200が車椅子利用者キーの押下を受け付けた場合に、操作部200を本体部100前面の前方または本体部100前面の後方に移動させるように、移動部108の動作を制御するので、利用者の顧客情報を盗み見られる危険性を低減し、安全かつ容易に取引を行うことができる。
【0106】
(第2の実施の形態)
上述した第1の実施の形態においては、ATMの利用者が車椅子の利用者であるか否かにかかわらず、車椅子利用者キーを取引開始画面に表示させることとした。しかし、ATMの利用者には、車椅子の利用者でなはない利用者も存在し、そのような利用者が、誤って取引開始画面に表示された車椅子利用者キーを押下してしまい、所望の取引を速やかに行えない場合も存在する。そこで、そのような場合に、ATMの利用者が車椅子の利用者であるか否かをあらかじめ判定し、車椅子の利用者であると判定した場合にのみ、取引開始画面に車椅子利用者キーを表示させる場合について説明する。
【0107】
図12は、第2の実施の形態にかかるATM2000の外観を示した図である。図12に示すように、第2の実施の形態にかかるATM2000は、第1の実施の形態にかかるATM1000の本体部100とは異なる本体部800を備え、第1の実施の形態にかかるATM1000の操作部200とは異なる操作部900を備えている点で、第1の実施の形態にかかるATM1000とは異なっている。まず、本体部800について説明する。
【0108】
本体部800は、第1の実施の形態にかかる移動制御部109とは異なる移動制御部809を備えるほか、撮像部801と、記憶部802と、を備えている点で、第1の実施の形態におけるATM1000の本体部100とは異なっている。図13は、本体部800の機能的な構成を示すブロック図である。以下の説明では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略している。
【0109】
撮像部801は、小型のデジタルカメラ等の撮像装置から構成され、ATM2000前面の前方の被写体を撮像する。具体的には、撮像部801は、操作受付部201が取引開始画面に表示された取引キーが押下された、またはカード取扱部102が、制御部112からの指示に応じてキャッシュカードの挿入を受け付けた場合に、ATM2000前面の前方の被写体を撮像し、撮像した被写体についての画像を生成し、生成した画像を記憶部802に記憶させる。
【0110】
また、撮像部801は、記憶部802に記憶した画像の中から顔の部分(顔部分)を特定し、特定した顔部分が、撮像した画像上の所定の範囲にあるか否かを判定する。そして、撮像部801は、特定した顔部分が所定の範囲にあると判定した場合には、利用者が車椅子の利用者であると判断する。なお、上述した所定の範囲は、あらかじめ後述する記憶部802に記憶されているものとする。
【0111】
図14は、撮像部801が、顔部分が所定の範囲にあるか否かを判定する様子を示す図である。図14に示すように、撮像部801は、ATM2000前面の前方を撮像し、記憶部802に記憶した画像の中に含まれる利用者Uの顔部分が、画像上の基準となる位置(R)よりも下の位置にあるか否かを判定することによって、利用者が車椅子の利用者であるかを判定している。なお、顔部分の認識については、従来から知られている種々の手法を用いて行うことが可能である。続いて、図13に戻り、記憶部について説明する。
【0112】
記憶部802は、メモリ等の記憶媒体から構成され、上述した撮像部801が撮像した画像、および撮像部801が撮像した画像に含まれる顔部分を特定するための基準となる範囲(位置)を記憶する。
【0113】
なお、記憶部802に記憶されている基準となる範囲(位置)は、操作受付部901が様々な値の入力を受け付け、受け付けられたそれらの値を、記憶部802に記憶させることとしてもよい。このように、基準となる範囲(位置)として様々な値の入力を受け付けることによって、例えば、車椅子のサイズ(高さ)に合わせて、より適切に車椅子の利用者であるか否かを判定することができる。
【0114】
移動制御部809は、第1の実施の形態における移動部109と同様の処理を行うほか、撮像部801が顔部分が所定の範囲にあると判定した場合に、操作部900を本体部800前面の前方または本体部800前面の後方に移動させる。続いて、操作部900について説明する。
【0115】
操作部900は、第1の実施の形態にかかる操作受付部201とは異なる操作受付部901を備えている点で、第1の実施の形態にかかる操作部200とは異なっている。以下、図13を用いて操作部900について説明するが、上述した本体部800の場合と同様に、第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略している。
【0116】
操作受付部901は、第1の実施の形態における操作受付部201と同様の処理を行うほか、上述した撮像部801が撮像し、記憶部802に記憶した画像に含まれる顔部分が所定の範囲にあると判定した場合に、移動開始確認画面を表示する。
【0117】
また、操作受付部901は、上述した記憶部802に記憶した画像に含まれる顔部分が、所定の範囲にないと判定した場合には、取引開始処理を終了し、押下された取引キーの取引内容に応じた取引画面を表示し、利用者は所望の取引を開始する。
【0118】
続いて、第2の実施の形態におけるATM2000で実行される取引開始処理について説明する。図15は、ATM2000が上述した各種の処理を行う場合の処理手順を示すフローチャートである。第2の実施の形態にかかるATM2000は、第1の実施の形態にかかるATM1000と比べて、利用者を撮像し、撮像した画像に含まれる顔部分の範囲(位置)を判定した上で、車椅子利用者キーを取引開始画面に表示させる部分の処理のみが異なっている。そこで、そのように車椅子利用者キーを取引開始画面に表示させる部分の処理以外の処理については、その説明を省略している。また、以下の説明では、第1の実施の形態における処理と同様に、操作部900の顧客検知部202は、ATM2000前面の前方に利用者が存在していることを検知したものとする。
【0119】
図15に示すように、操作受付部901は、操作部200の操作受付部201は、顧客検知部202が、ATM2000前面の前方に利用者が存在していることを検知すると、取引開始画面を表示する(ステップS1501)。
【0120】
その後、操作受付部901は、取引開始画面に表示された取引キーが押下されたか、またはカード取扱部102が、制御部111から指示に応じてキャッシュカードの挿入を受け付けたか否かを判定し(ステップS1502)、取引開始画面に表示された取引キーが押下されていない、またはカード取扱部102が、制御部111から指示に応じてキャッシュカードの挿入を受け付けていないと判定した場合(ステップS1502;No)ステップS1501に戻り、そのまま待機する。
【0121】
一方、操作受付部901は、取引開始画面に表示された取引キーが押下されていない、またはカード取扱部102が、制御部111から指示に応じてキャッシュカードの挿入を受け付けていないと判定した場合(ステップS1502;Yes)、撮像部801は、ATM2000前面の前方を撮像し(ステップS1503)、撮像した画像を記憶部802に記憶する(ステップS1504)。
【0122】
そして、撮像部801は、記憶部802に記憶した画像の中から顔の部分(顔部分)を特定し(ステップS1505)、特定した顔部分が、記憶部802にあらかじめ定められた範囲にあるか否かを判定する(ステップS1506)。そして、撮像部801は、特定した顔部分が所定の範囲にあると判定した場合(ステップS1506;Yes)、利用者が車椅子の利用者であると判断し、図10Aに示したステップS1004(E)の処理に進む。
【0123】
一方、撮像部801は、特定した顔部分が所定の範囲にないと判定した場合(ステップS1506;No)、利用者が車椅子の利用者でないと判断し、図10Aに示したステップS1010の後(A)の処理に進む。以降、第1の実施の形態における各処理と同様の処理を行う。
【0124】
このように、本体部800は、撮像部801が、ATM2000前面の前方にある被写体を撮像し、撮像した被写体についての画像を生成し、生成した画像の所定の範囲に、被写体として利用者の顔部分が含まれているか否かを判定し、移動制御部809が、撮像部801が画像の所定の範囲に被写体として利用者の顔部分が含まれていると判定した場合に、操作部900を本体部800前面の前方または本体部800前面の後方に移動させるように、移動部108の動作を制御するので、利用者の誤操作を軽減しつつ、利用者の顧客情報を盗み見られる危険性を低減し、安全かつ容易に取引を行うことができる。
【0125】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、第1の実施の形態においては、操作部200の操作受付部201は、本体部100の顧客検知部202が利用者を検知した場合に、車椅子利用者キーを含む取引開始画面を表示することとした。
【0126】
しかし、利用者が、暗証番号等とともに、利用者が車椅子の利用者である旨が記憶されたキャッシュカード等をカード取扱部102に挿入し、カード取扱部102が、通信ネットワーク500を介して認証用の外部装置との間で認証処理を行い、利用者が正当な車椅子の利用者であることが認証された場合にのみ、操作受付部201が、取扱開始画面に車椅子利用者キーを表示させることとしてもよい。このような構成とした場合、車椅子の利用者以外の利用者が、誤って車椅子利用者キーを押下してしまう等の誤操作をさらに軽減することができる。
【0127】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0128】
1000、2000…ATM、100、800…本体部、101…通帳取扱部、102…カード取扱部、103…紙幣入出金部、104…硬貨入出金部、105…手挿入検知部、106…接続部(本体部側)、107…ガイド部(本体部側)、108…移動部、109…移動制御部、110…蓄電部、111…電源供給部、112…制御部、113…通信部、200、900…操作部、201、901…操作受付部、202…顧客検知部、203…衝突防止検知部、204…接続部(操作部側)、205…ガイド部(操作部側)、206…ラックギア部、400…商用電源部、500…通信ネットワーク、801…撮像部、802…記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の取引を行うための利用者による操作を受け付ける操作部と、前記操作にしたがって前記所定の取引を行う本体部とを備えた現金自動取引装置であって、
前記操作部は、前記操作部を移動させる旨を入力する指示を受け付け、
前記本体部は、前記操作部を移動させる移動手段と、
前記指示が受け付けられた場合に、前記操作部を前記本体部前面の前方または前記本体部前面の後方に移動させるように、前記移動手段の動作を制御する移動制御手段と、
を備えることを特徴とする現金自動取引装置。
【請求項2】
前記移動手段は、ピニオンと、前記ピニオンを駆動する駆動手段とを備え、
前記操作部は、ラックギアを備え、
前記移動制御手段は、前記駆動手段を駆動させて前記ピニオンを回転させて前記ラックギアを移動させることにより、前記操作部を前記本体部前面の前方または前記本体部前面の後方に移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の現金自動取引装置。
【請求項3】
前記操作部は、前記操作部の移動を指示するための移動指示キーを含む取引開始画面を表示する表示手段を備え、
前記移動制御手段は、前記操作受付手段が、前記移動指示キーが押下されたことを受け付けた場合に、前記操作部を前記本体部前面の前方に移動させるように、前記移動手段の動作を制御する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の現金自動取引装置。
【請求項4】
前記本体部は、さらに、前記操作部と前記本体部との間に物があるか否かを検知する第1の検知手段を備え、
前記操作部は、さらに、前記操作部前面の前方に物があるか否かを検知する第2の検知手段を備え、
前記移動制御手段は、前記第1の検知手段が前記操作部と前記本体部との間に物がある旨を検知した場合に、前記操作部を前記本体部前面の後方に移動させる動作を停止させ、または前記第2の検知手段が前記操作部前面の前方に物がある旨を検知した場合に、前記操作部を前記本体部前面の前方に移動させる動作を停止させるように、前記移動手段の動作を制御する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の現金自動取引装置。
【請求項5】
前記本体部は、前記現金自動取引装置前面の前方にある被写体を撮像し、撮像した前記被写体についての画像を生成し、前記画像の所定の範囲に、前記被写体として利用者の顔部分が含まれているか否かを判定する撮像手段をさらに備え、
前記移動制御手段は、前記撮像手段が前記画像の所定の範囲に前記被写体として利用者の顔部分が含まれていると判定した場合に、前記操作部を前記本体部前面の前方または前記本体部前面の後方に移動させるように、前記移動手段の動作を制御する、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の現金自動取引装置。
【請求項6】
前記撮像手段は、前記利用者の顔部分が、前記所定の範囲として前記画像の下部の範囲に含まれているか否かを判定し、
前記移動制御手段は、前記撮像手段が前記所定の範囲として前記画像の下部の範囲に含まれていると判定した場合に、前記操作部を前記本体部前面の前方または前記本体部前面の後方に移動させるように、前記移動手段の動作を制御する、
ことを特徴とする請求項5に記載の現金自動取引装置。
【請求項7】
前記本体部は、さらに、前記利用者を特定するための媒体の挿入を受け付け、受け付けられた前記媒体が正当な利用者のものであるか否かを判定する媒体受付手段を備え、
前記操作受付手段は、前記前記媒体受付手段が受け付けた前記媒体が正当な利用者のものであると判定した場合に、前記移動指示キーを前記取引開始画面に表示させる、
ことを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の現金自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−204827(P2010−204827A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48042(P2009−48042)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】