説明

現金自動取引装置

【課題】硬貨出金機の受皿の底面開閉扉を開放した際に、底面開閉扉に貼り付いた回収硬貨を落下させて回収する手段を提供する。
【解決手段】硬貨出金口15を開閉する出金口シャッタ17と、出金する硬貨を集積する受皿16と、受皿16の底面を開閉する底面開閉扉23と、回収すべき回収硬貨を収納する硬貨リジェクト庫20とを有し、装置本体1aに装着された硬貨出金機14と、入出金する紙幣を搬送する紙幣搬送路38を有し、装置本体1aに硬貨出金機14に隣接して装着された紙幣入出金機12とを備えた現金自動取引装置1において、硬貨出金機14の受皿16に存在する回収硬貨を、底面開閉扉23を開放して硬貨リジェクト庫20へ落下させるときに、回収硬貨が底面開閉扉23上に残留している場合は、紙幣入出金機12の紙幣搬送路38を動作させ、装置本体1aを介して伝達される振動で底面開閉扉23上に残留している回収硬貨を落下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡素な構成の硬貨出金機を備えた現金自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンビニエンスストア等の狭い空間に設置される現金自動取引装置は、省スペース化のために硬貨の取扱を出金のみに限定し、硬貨の入金に必要な取込、分離、鑑別、搬送、集積等の機構を省略して装置の小型化、低コスト化を図っている。
【0003】
このような、従来の簡素な構成の硬貨出金機は、硬貨出金口を開閉する出金口シャッタと、出金する硬貨を集積する受皿と、受皿に存在する硬貨を検出する残留検出センサと、受皿の底面を開閉する底面開閉扉と、出金リジェクト硬貨を回収するリジェクト庫と、出金用の硬貨を金種別に充填した繰出機構のみを有する複数の硬貨収納庫と、出金用の硬貨を搬送する硬貨搬送路とを有し、顧客が取忘れた硬貨や、硬貨収納庫から繰出された出金用の硬貨に繰出ミス等があった出金間違いの硬貨は、底面開閉扉を開放して、受皿に残留する硬貨を自重によりリジェクト庫へ落下させて回収している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−3995号公報(段落0012−0018、0030−0031、0035−0037、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術においては、受皿に残留する、顧客が取忘れた硬貨や、硬貨収納庫から繰出された出金間違い硬貨等の回収硬貨は、底面開閉扉を開放して自重によりリジェクト庫へ落下させて回収しているため、硬貨を搬送、集積する際に硬貨が削れて発生する硬貨粉や、皮脂が受皿に残留する硬貨に付着している場合は、リジェクト庫へ落下の際に回収硬貨が硬貨粉や皮脂により底面開閉扉に貼り付いて底面開閉扉の開放時に落下しない場合があり、これが発生すると、硬貨残留エラーとなって保守員がエラーを解除するまで装置の稼動を停止しなければならず、顧客の利便性が低下すると共に現金自動取引装置の稼動効率を低下させるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、受皿の底面開閉扉を開放した際に、底面開閉扉に貼り付いた回収硬貨を落下させて回収する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、硬貨出金口を開閉する出金口シャッタと、出金する硬貨を集積する受皿と、前記受皿の底面を開閉する底面開閉扉と、回収すべき回収硬貨を収納する回収庫とを有し、装置本体に装着された硬貨出金機と、入出金する紙幣を搬送する紙幣搬送路を有し、前記装置本体に前記硬貨出金機に隣接して装着された紙幣入出金機とを備えた現金自動取引装置において、前記硬貨出金機の受皿に存在する回収硬貨を、前記底面開閉扉を開放して前記回収庫へ落下させるときに、前記回収硬貨が前記底面開閉扉上に残留している場合は、前記紙幣入出金機の紙幣搬送路を動作させ、前記装置本体を介して伝達される振動で前記底面開閉扉上に残留している回収硬貨を落下させることを特徴とする。
【0008】
また、硬貨出金口を開閉する出金口シャッタと、出金する硬貨を集積する受皿と、前記受皿の底面を開閉する底面開閉扉と、回収すべき回収硬貨を収納する回収庫とを有する硬貨出金機を備えた現金自動取引装置において、前記受皿に存在する回収硬貨を、前記底面開閉扉を開放して前記回収庫へ落下させるときに、前記回収硬貨が前記底面開閉扉上に残留している場合は、前記出金口シャッタを開閉駆動するパルスモータを共振周波数で駆動し、その振動で前記底面開閉扉上に残留している回収硬貨を落下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
これにより、本発明は、回収硬貨の回収庫への回収時に、底面開閉扉に回収硬貨が貼り付いたとしても、その硬貨を底面開閉扉に伝達された振動により剥して回収庫へ落下させて容易に回収することができ、現金自動取引装置の稼動停止を防止して現金自動取引装置の稼動効率を向上させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の現金自動取引装置を示すブロック図
【図2】実施例1の現金自動取引装置の正面から見た内部構成を示す説明図
【図3】実施例1の現金自動取引装置の外観を示す説明図
【図4】実施例1の硬貨出金機の構成を示す説明図
【図5】実施例1の硬貨出金機の硬貨出金口を示す説明図
【図6】実施例1の紙幣入出金機の構成を示す説明図
【図7】実施例2の現金自動取引装置の正面から見た内部構成を示す説明図
【図8】実施例3のパルスモータの振動特性を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して本発明による現金自動取引装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1において、1は現金自動取引装置であり、主としてコンビニエンスストア等の店舗に設置され、顧客との間で、主に紙幣による取引処理を自動で行う機能を有している。
【0013】
2は金融機関のセンタに設置された上位装置としてのホストコンピュータであり、店舗に設置されている現金自動取引装置1と専用回線や電話回線等の通信回線3を介して接続しており、口座開設者である顧客を個別に識別するための顧客識別子に対応させて顧客の口座の金融機関名、店番号、口座番号等の口座情報やその暗証番号、口座残高等の顧客情報を保有して顧客の口座を管理する。
【0014】
5は現金自動取引装置1の制御部であり、装置本体1aの上部に設けられた処理部6(図2参照)に内蔵され、通信回線3を介してホストコンピュータ2と接続しており、現金自動取引装置1内の各部を制御して取引処理等を実行する機能を有している。
【0015】
7は記憶部であり、装置本体1aの上部に設けられた処理部6に内蔵され、制御部5が実行するプログラムやそれに用いる各種のデータおよび制御部5による処理結果等が格納される。
【0016】
8は操作表示部であり、現金自動取引装置1の正面に設けられ、LCD等の表示画面とタッチパネルとの組合せで構成されており、表示画面に取引選択画面や各種の入力画面、顧客の処置を促す画面等を表示する(図3参照)。
【0017】
9はキー入力部であり、テンキーや、金額の単位を入力するための「万」キー、「千」キー、「円」キー、入力の間違いを訂正するための「訂正」キー、出金金額等の入力終了を指示するための「確認」キー等の各種の入力キー備えており(図3参照)、顧客の暗証番号や金額等の入力を受付ける機能を有している。
【0018】
本実施例の入力手段は、操作表示部8のタッチパネルおよびキー入力部9により構成される。
【0019】
10はカード取扱部であり、カード挿入口10aから挿入された顧客のキャッシュカードやクレジットカード等の取引カードの磁気ストライプやICチップ等に記録されている顧客識別子や、金融機関名、支店名、口座番号等の口座情報等のカード情報を読み書きする機能を有すると共に、取引内容等を印刷した明細票を明細書発行口10bから発行する機能等を有しており(図3参照)、ジャム等の障害発生時の保守性を確保するために装置本体1aに設けられたスライドレール11(図2参照)により挿抜可能に装着されている。
【0020】
12は紙幣入出金機であり、入金取引時等に顧客が投入した紙幣を受入れ、これを鑑別および計数して収納し、出金取引時等に顧客に出金する紙幣を繰出し、これを計数して顧客に引渡す機能を有しており、ジャム等の障害発生時の保守性を確保するために装置本体1aに設けられたスライドレール11により挿抜可能に装着されている。
【0021】
14は硬貨出金機であり、出金取引時等に硬貨収納庫から顧客に出金する硬貨を繰出して、顧客に引渡す機能を有しており、ジャム等の障害発生時の保守性を確保するために装置本体1aに設けられたスライドレール11により挿抜可能に装着されている。
【0022】
図4において、15は硬貨出金機14の硬貨出金口であり、硬貨出金機14のフレームに取付けられた、顧客に出金する硬貨を集積する受皿16、硬貨出金口15を開閉するためのスライド式の出金口シャッタ17等が設けられている。
【0023】
18は硬貨収納庫であり、顧客に出金する硬貨を金種別に収納する収納庫であって、それぞれ開店時等において、所定の金種の硬貨を所定の枚数充填された状態で複数設けられており、それぞれ出金する硬貨を1枚毎に繰出す繰出機構を備えている。
【0024】
本実施例の硬貨収納庫18は4つ設けられており、それぞれ1円硬貨、10円硬貨、100円硬貨、500円硬貨を金種別に収納する。
【0025】
19は硬貨搬送路であり、各硬貨収納庫18と硬貨出金口15の受皿16との間を接続する搬送路であって、搬送ベルトやシュータ、リフタ等によって構成されており、各硬貨収納庫18から繰出された出金用の硬貨を受皿16へ搬送して、受皿16の正面と反対側の背面側の接続部に設けられた放出口16a(図5参照)から放出する機能を有している。
【0026】
20は硬貨の回収庫としての硬貨リジェクト庫であり、出金時に顧客が取忘れた硬貨や、硬貨収納庫18から繰出された出金用の硬貨に繰出ミス等があった出金間違いの硬貨等の受皿16に存在する回収すべき硬貨(回収硬貨という。)を収納するための収納庫であって、受皿16との間は、受皿16から落下させた硬貨を導くための回収シュータとしてのリジェクトシュータ21で接続されている。
【0027】
このため、本実施例の硬貨出金口15の受皿16の底部には、図5に示すように、図示しないリンク機構によって、受皿16の背面側に設けられた回動支点23aを中心に回動して受皿16の底面を開閉するための底面開閉扉23が設けられており、受皿16は、正面側を低くした傾斜状態で装置本体1aに取付けられている。
【0028】
図5において、24は出金口シャッタ17の駆動モータであり、出金口シャッタ17の近傍の硬貨出金機14のフレームに取付けられており、その回転軸に直接またはギヤ列を介して取付けられたピニオンギヤ25aにより出金口シャッタ17に取付けられたラック25bを駆動して、出金口シャッタ17をスライドさせて開閉作動させる機能を有している。
【0029】
26は残留検出センサであり、受皿16の底面に近接し、かつ底面に沿って光軸を形成した発光部と受光部とを対向配置した一対の光学式センサであって、発光部からの光を、硬貨が遮断したことを受光部で検出して受皿16の底部に存在する硬貨を検出する機能を有している。
【0030】
本実施例の残留検出センサ26は3対設けられており、残留検出センサ26a、26bは受皿16の正面側から背面側に光軸を形成し、残留検出センサ26cはその直交方向に光軸を形成するように配置されている。
【0031】
27は硬貨検出センサであり、硬貨の所定の特性値を取得して硬貨搬送路19上を搬送される硬貨を検出するための磁気センサ等であって、受皿16の背面側の放出口16aの硬貨の搬送方向の上流側でその放出口16aに近接する位置に配置されている。
【0032】
上記のように、本実施例の硬貨出金機14には、入金のための機構は設けられておらず、投入された硬貨を1枚毎に分離して繰出す分離部や、硬貨の真偽、正損、金種等を鑑別する硬貨鑑別部、入金硬貨を一時保留する一時保留部、前記各部の間を接続する搬送路、硬貨収納庫18の集積機構等が省略された簡素な構成となっている。
【0033】
本実施例の紙幣入出金機12は、図6に示すように、顧客が投入した紙幣を受入れ、顧客に出金する紙幣を集積する紙幣入出金口31およびその開閉を行う入出金口シャッタと、紙幣の真偽、正損、金種等を鑑別、計数する紙幣鑑別部32、紙幣を金種別に収納する複数の紙幣収納庫33、投入された紙幣を一時保留する一時保留部34、搬送異常等の出金リジェクト紙幣を回収する出金リジェクト庫35、取忘れた紙幣を回収するための取忘れ回収庫36、紙幣収納庫33に補充する紙幣を収納する補充回収カセット37、これらの間で紙幣を搬送するローラ対またはベルト対等からなる紙幣搬送路38a〜38fおよびその切替機構と駆動機構等により通常と同様に構成されている。
【0034】
上記の現金自動取引装置1の記憶部7には、顧客が選択した取引の入力を受付け、これを基にホストコンピュータ2と交信して顧客との主に紙幣を用いた取引処理を自動で行う機能等を有する取引処理プログラムと、釣銭等の硬貨の出金時に受皿16に存在する回収硬貨を底面開閉扉23を開作動させて硬貨リジェクト庫20へ落下させるときに、硬貨粉や皮脂等により底面開閉扉23に貼り付いて落下させることができなかった硬貨を振動によって落下させる貼付硬貨回収処理を行う機能を有するアプリケーションプログラム等からなる業務実行プログラムが予め格納されており、制御部5が実行する業務実行プログラムのステップにより本実施例の現金自動取引装置1の各機能手段が形成される。
【0035】
本実施例の現金自動取引装置1を用いて顧客が取引を選択し、これを受付けた制御部5が取引の実行中に、硬貨出金機14によって硬貨を出金する必要が生じた場合、制御部5は、硬貨の出金動作を実行するために、出金する硬貨の金種とその内訳枚数からなる出金内訳を算出し、算出した出金内訳に該当する金種を収納した各硬貨収納庫18から、内訳枚数の硬貨を順に硬貨搬送路19へ繰出し、繰出した硬貨を硬貨搬送路19によって硬貨出金口15の方向へ搬送し、受皿16の放出口16aの直前に設けられた硬貨検出センサ27で搬送されてきた硬貨の枚数を計数した後に放出口16aから硬貨を放出して受皿16上に集積し、出金内訳の硬貨を全て受皿16に集積したときに、硬貨検出センサ27で計数した硬貨の枚数と各硬貨収納庫18から硬貨を繰出した回数とが一致している場合は、駆動モータ24により出金口シャッタ17を開作動させ、硬貨出金口15を開放した状態で所定の時間待機する。
【0036】
そして、制御部5は、顧客が開放された硬貨出金口15の受皿16から集積された硬貨を取出したことを残留検出センサ26で検出した後の一定の待ち時間の経過後に駆動モータ24により出金口シャッタ17を閉作動させて硬貨出金口15を閉鎖する。
【0037】
このとき、所定の時間を経過しても、残留検出センサ26が受皿16の底部に存在する硬貨を検出している場合は、制御部5は、顧客が硬貨を取忘れたと判定し、その取忘れ硬貨を硬貨リジェクト庫20へ回収するために、受皿16の底面開閉扉23を回動支点23aを中心に、図5に2点鎖線で示す閉鎖位置から、実線で示す開放位置へ回動させて、受皿16の取忘れ硬貨を硬貨リジェクト庫20へ落下させて回収し、所定の時間の経過後に底面開閉扉23を閉鎖位置へ回動させ、次の顧客による取引の選択を待って待機する。
【0038】
また、硬貨検出センサ27で計数した硬貨の枚数と各硬貨収納庫18から硬貨を繰出した回数とが不一致の場合は、制御部5は、硬貨の出金間違いがあったと判定し、その出金間違いの硬貨を硬貨リジェクト庫20へ回収するために、出金口シャッタ17を閉鎖した状態で、前記と同様にして底面開閉扉23を開放位置へ回動させて受皿16の出金間違いの硬貨を硬貨リジェクト庫20へ落下させて回収し、所定の時間の経過後に底面開閉扉23を閉鎖位置へ回動させ、再び出金用の硬貨を各硬貨収納庫18から繰出して上記した出金動作を実行する。
【0039】
この出金間違いの硬貨の回収は、本実施例の硬貨出金機14は、硬貨の鑑別部や、硬貨収納庫18の集積機構、これらの間の搬送路等を備えていないので、硬貨の繰出時における繰出不良によって1回の繰出動作のときに硬貨が繰出されなかったり、1回の繰出動作で2枚以上の硬貨を繰出したりしてしまうことがあり、その場合のリカバリ措置として設けられている。
【0040】
上記した取忘れ硬貨や出金間違いの硬貨等の回収硬貨の、硬貨リジェクト庫20への回収時に、所定の時間の経過後に底面開閉扉23を閉鎖位置へ回動させたときに、残留検出センサ26が受皿16の底部に存在する回収硬貨を検出している場合は、制御部5は、硬貨粉や皮脂等による底面開閉扉23への硬貨の貼り付きが発生したと判定し、再び底面開閉扉23を開放位置へ回動させ、所定の時間の経過後に閉鎖位置へ回動させるリトライを所定の回数(例えば、3回)実行する回収動作を行う。
【0041】
そして、回収動作の実行後においても残留検出センサ26が受皿16の底部に存在する回収硬貨を検出している場合は、制御部5は、貼り付きにより底面開閉扉23上に残留する回収硬貨を振動によって強制的に硬貨リジェクト庫20へ落下させるために、貼付硬貨回収処理を実行する。
【0042】
すなわち、貼付硬貨の残留を判定した制御部は、底面開閉扉23を開放位置へ回動させ、隣接する紙幣入出金機12の稼動状態を確認し、紙幣入出金機12が顧客との取引を実行中の場合はその紙幣搬送路38の駆動停止または取引の終了を待って待機し、紙幣入出金機12の紙幣搬送路38が停止中または紙幣入出金機12による取引が終了した場合は、紙幣入出金機12の紙幣搬送路38の駆動モータを回転させて紙幣搬送路38に空搬送の動作をさせる。
【0043】
このとき、紙幣入出金機12の紙幣搬送路38の動作により、紙幣搬送路38の駆動モータやローラ対やベルト対等から発生する振動が、紙幣入出金機12および硬貨出金機14の双方が装着されている装置本体1aおよびスライドレール11を介して硬貨出金機14へ伝達され、その振動は硬貨出金機14のフレームを介して開放された底面開閉扉23へ伝達され、底面開閉扉23が振動してそこに貼り付いた回収硬貨が剥がれ落ちて硬貨リジェクト庫20へ回収される。
【0044】
この場合の紙幣入出金機12の紙幣搬送路38の動作は、正常な回転動作によるものであるので、顧客に不信感や不快感を与えることはなく、顧客が現金自動取引装置1の異常を感じて保守員等に通報する事態等を防止することができる。
【0045】
その後に、制御部5は、底面開閉扉23を閉鎖位置へ回動させ、残留検出センサ26によって受皿16の底部の回収硬貨の不存在を確認し、上記した回収硬貨の回収後の各動作を実行する。
【0046】
以上説明したように、本実施例では、硬貨出金機の受皿の底面開閉扉を開放して回収硬貨を硬貨リジェクト庫へ落下させるときに、回収硬貨が底面開閉扉上に残留している場合は、隣接する紙幣入出金機の紙幣搬送路を動作させ、装置本体を介して伝達される振動で底面開閉扉上に残留している回収硬貨を落下させるようにしたことによって、回収硬貨の硬貨リジェクト庫への回収時に、底面開閉扉に回収硬貨が貼り付いたとしても、その硬貨を底面開閉扉に伝達された振動により剥して硬貨リジェクト庫へ落下させて容易に回収することができ、現金自動取引装置の稼動停止を防止して現金自動取引装置の稼動効率を向上させることができる。
【実施例2】
【0047】
以下に、図7を用いて本実施例の現金自動取引装置について説明する。なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0048】
図7において、41は接続機構であり、硬貨出金機14と紙幣入出金機12のそれぞれのフレームの間に配置され、これらの間の接続および離間を可能にする電磁石等の離接手段を備えており、その離接手段のON、OFF動作によって、硬貨出金機14と紙幣入出金機12との間を離接可能に接続する機能を有している。
【0049】
本実施例の現金自動取引装置1の硬貨出金機14による硬貨の出金動作および回収硬貨の回収動作は、上記実施例1の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0050】
本実施例の貼付硬貨回収処理は、以下のように実行される。
【0051】
すなわち、貼付硬貨の残留を判定した制御部は、底面開閉扉23を開放位置へ回動させ、隣接する紙幣入出金機12の稼動状態を確認し、紙幣入出金機12が顧客との取引を実行中の場合はその紙幣搬送路38の駆動停止または取引の終了を待って待機し、紙幣入出金機12の紙幣搬送路38が停止中または紙幣入出金機12による取引が終了した場合は、接続機構41を接続状態にして、紙幣入出金機12の紙幣搬送路38の駆動モータを回転させて紙幣搬送路38に空搬送の動作をさせる。
【0052】
このとき、上記実施例1と同様に、紙幣入出金機12の紙幣搬送路38の動作により発生する振動が、紙幣入出金機12および硬貨出金機14の双方が装着されている装置本体1aおよびスライドレール11を介して間接的に、接続機構41を介して直接的に硬貨出金機14へ伝達され、その振動は硬貨出金機14のフレームを介して開放された底面開閉扉23へ伝達され、底面開閉扉23が振動してそこに貼り付いた回収硬貨が剥がれ落ちて硬貨リジェクト庫20へ回収される。
【0053】
この場合の紙幣入出金機12の紙幣搬送路38の動作は、正常な回転動作によるものであるので、顧客に不信感や不快感を与えることはなく、顧客が現金自動取引装置1の異常を感じて保守員等に通報する事態等を防止することができる。
【0054】
また、本実施例の紙幣入出金機12と硬貨出金機14との間は、接続機構によって直接接続されているので、駆動モータや紙幣搬送路38等から発生する振動をより多く硬貨出金機14へ伝達することができ、貼付硬貨をより容易に剥し落すことができる。
【0055】
その後に、制御部5は、底面開閉扉23を閉鎖位置へ回動させ、残留検出センサ26によって受皿16の底部の回収硬貨の不存在を確認し、上記した回収硬貨の回収後の各動作を実行する。
【0056】
以上説明したように、本実施例では、上記実施例1と同様の効果に加えて、紙幣入出金機の紙幣搬送路38の動作時に、接続機構によって硬貨出金機と紙幣入出金機との間を接続し、その接続機構を介して振動を更に伝達するようにしたことによって、紙幣入出金機の振動を接続機構を介して直接伝達することができ、回収硬貨の硬貨リジェクト庫への回収時に、貼付硬貨をより容易に剥し落すことができる。
【0057】
なお、上記実施例1および実施例2においては、底面開閉扉23上に残留した貼付硬貨を硬貨リジェクト庫20へ落下させるときに、隣接する紙幣入出金機12の紙幣搬送路38に空搬送の動作をさせるとして説明したが、紙幣入出金機12の紙幣搬送路38に、実際に紙幣を搬送しながら紙幣搬送路38を動作させる模擬搬送動作を行わせるようにしてもよい。
【0058】
この場合に、搬送する紙幣は繰出元を紙幣収納庫33とし、その搬送先を繰出した紙幣の紙幣収納庫33として再収納するようにしても、繰出元を補充回収カセット37または紙幣収納庫33等とし、その搬送先を紙幣入出金口31、一時保留部34、補充回収カセット37等として任意の組合せとしてもよく、搬送する紙幣の枚数は1枚であっても複数枚であってもよい。
【0059】
このようにすれば、紙幣搬送路38の空搬送の動作による駆動モータの駆動トルクに較べて、実際に紙幣を搬送するための駆動トルクがより多く必要になり、そのための電流をより多く駆動モータへ供給するので、駆動モータや紙幣搬送路38等から発生する振動も大きなものとなり、貼付硬貨を更に容易に剥し落すことができる。
【0060】
または、紙幣入出金機12の紙幣搬送路38に、一部または全ての紙幣搬送路38の動作確認を一斉に行うメカイニシャル動作を行わせるようにしてもよい。このようにすれば、紙幣入出金機12によって発生する振動を更に大きなものとすることができ、貼付硬貨の剥し落しを更に容易に行うことができる。
【実施例3】
【0061】
以下に、図8を用いて本実施例の現金自動取引装置について説明する。なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
本実施例の現金自動取引装置1および硬貨出金機14の構成は、上記実施例1と同様である。
【0063】
本実施例の出金口シャッタ17の駆動モータ24としては、パルスモータが用いられる(本実施例において、パルスモータ24と記す。)。
【0064】
パルスモータ24は、供給したパルス数に応じてそのパルス数に相当する回転角度回転するモータのことであるが、図8に示すモータ本体の振動特性のように、特定の駆動周波数で出金口シャッタ17を開作動させる方向(正方向という。)に駆動すると、脱調に似た状態で、正方向に正常に回転できなくなる共振現象を起すことが知られている。
【0065】
以下の説明においては、この共振現象を起す駆動周波数を共振周波数という。また共振周波数は、図8に示す各駆動電流による振動特性において、ピークを示す駆動周波数である。
【0066】
この共振現象が発生すると、パルスモータ24は、回転トルクを発生しようとして正方向に1パルス分以下の範囲で回転した後に、元の位置に戻ってしまう動作が繰返し行われることになり、そのときにパルスモータ24の回転軸に振動が発生する。
【0067】
本実施例では、パルスモータ24を意図的に共振周波数(本実施例では、図8に示す駆動電流600mAのピークとなる共振周波数337pps)で駆動し、その共振現象に伴う回転軸の振動を利用して、受皿16の底面開閉扉23に貼り付いた回収硬貨を落下させるものである。
【0068】
なお、共振周波数は、モータの仕様によって異なるが、製造メーカが公表しているので、その共振周波数を知ることは可能である。
【0069】
本実施例の現金自動取引装置1の硬貨出金機14による硬貨の出金動作および回収硬貨の回収動作は、上記実施例1の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0070】
本実施例の貼付硬貨回収処理は、以下のように実行される。
【0071】
すなわち、貼付硬貨の残留を判定した制御部は、底面開閉扉23を開放位置へ回動させ、閉鎖状態の出金口シャッタ17の駆動モータであるパルスモータ24へ、正回転方向の駆動パルスを共振周波数で供給してパルスモータ24を駆動する。
【0072】
このとき、パルスモータ24から共振現象による振動が発生し、その振動は硬貨出金機14のフレームを介して開放された底面開閉扉23へ伝達され、底面開閉扉23が振動してそこに貼り付いた回収硬貨が剥がれ落ちて硬貨リジェクト庫20へ回収される。
【0073】
この場合の正回転方向の駆動パルスを供給した共振周波数でのパルスモータ24の駆動による振動は、例えば、閉鎖状態の出金口シャッタ17を閉作動方向に回転させる逆回転方向の駆動パルスを共振周波数以外の駆動周波数で故意に供給してパルスモータ24を脱調させることにより発生する脱調振動に較べて、小さい振動であるので、出金口シャッタ17のびびり音によって顧客に不信感や不快感を与えることはなく、顧客が現金自動取引装置1の異常を感じて保守員等に通報する事態等を防止することができる。
【0074】
その後に、制御部5は、底面開閉扉23を閉鎖位置へ回動させ、残留検出センサ26によって受皿16の底部の回収硬貨の不存在を確認し、上記した回収硬貨の回収後の各動作を実行する。
【0075】
以上説明したように、本実施例では、硬貨出金機の受皿の底面開閉扉を開放して回収硬貨を硬貨リジェクト庫へ落下させるときに、回収硬貨が底面開閉扉上に残留している場合は、出金口シャッタを開閉駆動するパルスモータを共振周波数で駆動し、その振動で底面開閉扉上に残留している回収硬貨を落下させるようにしたことによって、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0076】
なお、上記各実施例においては、現金自動取引装置に本発明を適用した場合を例に説明したが、硬貨をメダルに置換えれば、遊技場等に設置される、入金された紙幣に相当するメダルを発行するメダル発行機に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 現金自動取引装置
1a 装置本体
2 ホストコンピュータ
3 通信回線
5 制御部
6 処理部
7 記憶部
8 操作表示部
9 キー入力部
10 カード取扱部
10a カード挿入口
10b 明細書発行口
11 スライドレール
12 紙幣入出金機
14 硬貨出金機
15 硬貨出金口
16 受皿
16a 放出口
17 出金口シャッタ
18 硬貨収納庫
19 硬貨搬送路
20 硬貨リジェクト庫
21 リジェクトシュータ
23 底面開閉扉
23a 回動支点
24 駆動モータ、パルスモータ
25a ピニオンギヤ
25b ラック
26、26a〜26c 残留検出センサ
27 硬貨検出センサ
31 紙幣入出金口
32 紙幣鑑別部
33 紙幣収納庫
34 一時保留部
35 出金リジェクト庫
36 取忘れ回収庫
37 補充回収カセット
38、38a〜38f 紙幣搬送路
41 接続機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨出金口を開閉する出金口シャッタと、出金する硬貨を集積する受皿と、前記受皿の底面を開閉する底面開閉扉と、回収すべき回収硬貨を収納する回収庫とを有し、装置本体に装着された硬貨出金機と、
入出金する紙幣を搬送する紙幣搬送路を有し、前記装置本体に前記硬貨出金機に隣接して装着された紙幣入出金機とを備えた現金自動取引装置において、
前記硬貨出金機の受皿に存在する回収硬貨を、前記底面開閉扉を開放して前記回収庫へ落下させるときに、前記回収硬貨が前記底面開閉扉上に残留している場合は、前記紙幣入出金機の紙幣搬送路を動作させ、前記装置本体を介して伝達される振動で前記底面開閉扉上に残留している回収硬貨を落下させることを特徴とする現金自動取引装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記硬貨出金機と前記紙幣入出金機との間に、それらの間を離接可能に接続する接続機構を設け、
前記紙幣入出金機の紙幣搬送路の動作時に、前記接続機構によって前記硬貨出金機と前記紙幣入出金機との間を接続し、前記接続機構を介して振動を伝達することを特徴とする現金自動取引装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記紙幣搬送路の動作は、紙幣を搬送しながら行う模擬搬送動作であることを特徴とする現金自動取引装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記紙幣搬送路の動作は、紙幣搬送路の動作確認を行うメカイニシャル動作であることを特徴とする現金自動取引装置。
【請求項5】
硬貨出金口を開閉する出金口シャッタと、出金する硬貨を集積する受皿と、前記受皿の底面を開閉する底面開閉扉と、回収すべき回収硬貨を収納する回収庫とを有する硬貨出金機を備えた現金自動取引装置において、
前記受皿に存在する回収硬貨を、前記底面開閉扉を開放して前記回収庫へ落下させるときに、前記回収硬貨が前記底面開閉扉上に残留している場合は、前記出金口シャッタを開閉駆動するパルスモータを共振周波数で駆動し、その振動で前記底面開閉扉上に残留している回収硬貨を落下させることを特徴とする現金自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−113534(P2011−113534A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272468(P2009−272468)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】