説明

球体供給具

【課題】 簡単に複数色のビーズなどの球体を使い分けることのできる球体供給具を提供する。
【解決手段】 本発明の球体供給具1は、筒状の把持部20の後端にケース収容部27を備えた本体部2と、円周方向に複数の球体収納空間71を備えてケース収容部27に回転可能に保持される球体収納ケース7とで構成され、本体部2は、把持部20の先端に開口部21を有し、該把持部20の後端に球体取り出し口29を有するとともに開口部21と球体取り出し口29とを連通する案内路22を把持部20内に有し、球体収納ケース7を所定の角度だけ回転させる回動機構と、球体収納空間71内の球体9を1個だけ球体取り出し口29から案内路22に移送させる球体移送機構を本体部2に内蔵し、回動機構を作動させる回動操作ボタン4と球体移送機構を作動させる移送操作ボタン5とを把持部20に備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の球体を1個ずつ取り出すことのできる球体供給具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、球体であるビーズを用いて絵模様を作成するビーズ玩具がある。このようなビーズ玩具としては、例えば、ビーズを熱融解して互いを融着することにより模様を作るビーズ玩具や、接着面にビーズを接着させて模様を作るビーズ玩具、並べたビーズに液体を塗布することで表面を融着させて模様を作るビーズ玩具等がある。ビーズ玩具に用いられるビーズは小径の粒状球体が一般的であり、この球体を手で摘んで作業するには手先の器用さが必要である。また、小児にとって小さな球体は扱いにくいものである。
【0003】
そこで、球体を供給する球体供給具として、例えば、実用新案登録第2551709号公報(特許文献1)では、複数個の球体を保持可能である球体保持用通孔と、この球体保持用通孔と相互に偏心するように設けられていて球体を1個だけ通過させるような幅を有する球体排出用通孔と、球体を1個だけ受容可能な球体受容孔が形成され、且つ、押圧部を押圧操作することによって動作する球体取出し部と、を備える球体供給具が提案されている。
【0004】
この考案においては、球体保持用通孔に複数個保持された球体が、押圧部を操作することによって球体取出し部の球体受容孔を介して球体排出用通孔へ1個ずつ受渡されるので、1個ずつ連続して球体を基板に置くことができることから、球体の取扱いが容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2551709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の考案は、押圧部を操作することによって1個ずつ球体を基板に置くことができるが、球体を保持する収納空間(球体保持用通孔)が1つしかないため、様々な色の着色球体を基板などに配置させるためには、その度に収納空間から球体を全て取り出して別の色の着色球体を収納空間に入れる、或いは、複数の球体供給具を用意して持ち替えて使用する、などといった作業が必要であり、手間がかかるといった問題点があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、主にビーズ玩具に使用する球体供給具として、複数個の着色球体を色分けして収納し、収納される各色の着色球体を1個ずつ選択的に取り出すことのできる取扱い易い球体供給具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の球体供給具は、筒状の把持部の後端にケース収容部を備えた本体部と、円周方向に複数の球体収納空間を備えてケース収容部に回転可能に保持される球体収納ケースと、から構成され、前記本体部は、前記把持部の先端に開口部を有し、該把持部の後端に球体取り出し口を有するとともに前記開口部と前記球体取り出し口とを連通する案内路を前記把持部内に有し、前記球体収納ケースを所定の角度だけ回転させる回動機構と、前記球体収納空間内の球体を1個だけ前記球体取り出し口から前記案内路に移送させる球体移送機構と、を前記本体部に内蔵し、前記回動機構を作動させる回動操作ボタンと前記球体移送機構を作動させる移送操作ボタンとを前記把持部に備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の球体供給具において、前記球体移送機構は、動作させたときに前記球体取り出し口から取り出される球体を1個だけ収容保持する球体受容空間を形成し、前記球体移送機構は、復帰させたときに前記球体受容空間に収容保持されていた球体を前記案内路に移送させるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の球体供給具は、前記球体移送機構を動作させる度に前記球体収納ケースを揺動させる揺動機構を備えていることもある。
【0011】
また、本発明の球体供給具において、前記球体収納ケースは、着脱自在に本体部に取付けられている。
【0012】
そして、本発明の球体供給具において、前記球体収納ケースは、透明材質により形成されていることもある。
【0013】
また、本発明の球体供給具は、前記案内路上に球体の落下速度を減少させる速度調整部が設けられていることもある。
【0014】
そして、前記速度調整部は、前記開口部近傍における前記把持部の内面から内方に突出するように設けられた速度調整片であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、主にビーズ玩具に使用する球体供給具として、複数個の着色球体を色分けして収納し、収納される各色の着色球体を1個ずつ選択的に取り出すことのできる取扱い易い球体供給具を提供することができる。
【0016】
また、球体移送機構を動作させたときに球体受容空間を形成する構成とすることで、球体取り出し口から球体を1個ずつ確実に取り出すことができる。さらに、球体移送機構を動作させる度に球体収納ケースを揺動させる揺動機構を設けることで、球体収納ケースを揺動させて球体収納空間に収納される複数個の球体を攪拌させることで、玉詰まりを起こすことなく容易に球体を取り出すことができる。
【0017】
そして、球体収納ケースを着脱自在とすることで、簡単に球体の補充を行うことができる。また、球体収納ケースを透明材質により形成することで、取り出したい着色球体の色を目視で確認して容易に選択することができる。
【0018】
さらに、案内路上に速度調整部を設けることで、開口部から落下する球体が、当該球体を配置しようとする基板などに衝突して跳ね返ってしまうことを防止できる。また、この速度調整部は、開口部近傍における把持部の内面から内方に突出する速度調整片とすることで落下する球体を開口部直近で受け止めることができるため、球体の落下距離を短くして球体の跳ね返りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例に係る球体供給具を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係る球体供給具の球体収納ケース及びケース収容部を示す外観斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係る球体供給具の回動機構を示す側面模式図である。
【図4】本発明の実施例に係る球体供給具の回動機構を示す側面模式図である。
【図5】本発明の実施例に係る球体供給具の球体移送機構を示す側面模式図である。
【図6】本発明の実施例に係る球体供給具の球体移送機構を示す側面模式図である。
【図7】本発明の実施例に係る球体供給具の球体収納ケースに収納される球体が開口部から落下するまでの経路を示す側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について述べる。球体供給具1は、本体部2と、球体収納ケース7と、から構成される。本体部2は、手指で把持可能とされる中空筒状の把持部20を有する。また、本体部2は、把持部20の後端にケース収容部27を備える。
【0021】
球体収納ケース7は、円形凹部を有する円形箱状であって、透明材質により形成されている。この球体収納ケース7は、本体部2のケース収容部27に回転可能に保持される。なお、この球体収納ケース7は、着脱自在に本体部2に取付けられている。また、この球体収納ケース7は、円周方向に8つの球体収納空間71を備えている。この8つの球体収納空間71は、各々が複数個の球体9を収納する空間とされるものである。
【0022】
そして、本体部2は、把持部20の先端に円形状の開口部21を有し、該把持部20の後端に球体取り出し口29を有する。また、本体部2は、開口部21と球体取り出し口29とを連通する案内路22を把持部20内に有して、球体収納空間71から取り出される球体9を開口部21に導くことができるようになっている。
【0023】
この案内路22上には、球体9の落下速度を減少させる速度調整部としての速度調整片23が設けられている。この速度調整片23は、開口部21近傍における把持部20の内面から内方に突出するように設けられる。
【0024】
そして、本体部2には、回動機構40及び球体移送機構50が内蔵されている。また、この球体供給具1は、回動機構40を作動させる回動操作ボタン4と、球体移送機構50を作動させる移送操作ボタン5と、を把持部20に備える。
【0025】
回動機構40は、動作する度に球体収納ケース7を45度ずつ回転させる機構である。また、球体移送機構50は、動作する度に球体収納空間71内の球体9を1個ずつ球体取り出し口29から案内路22に移送させる機構である。具体的には、この球体移送機構50は、動作させたときに球体取り出し口29から取り出される球体9を1個だけ収容保持する球体受容空間3を形成する。また、この球体移送機構50は、復帰させたときに球体受容空間3に収容保持されていた球体9を案内路22に移送させるように構成されている。
【0026】
さらに、この球体供給具1は、球体移送機構50を動作させる度に球体収納ケース7を揺動させる揺動機構も備えている。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例を図に基づいて詳説する。図1は、球体供給具1の外観斜視図である。本発明に係る球体供給具1は、球体収納ケース7に複数色の球体9を色分けして収納しており、これら複数色の球体9のうちの何れかを選定して、選んだ色の球体9の複数個の中から1個を取り出して基板などにおける所定の位置に配置させることができるものである。
【0028】
この球体供給具1は、図1に示すように、ペンのように持つことのできる中空筒状の把持部20を有する本体部2と、複数の球体収納空間71を備える球体収納ケース7と、から構成される。そして、本体部2は、後端にケース収容部27を備えており、このケース収容部27に球体収納ケース7が回転可能に保持される。なお、この球体収納ケース7は、着脱自在に本体部2に取付けられている。
【0029】
また、この球体収納ケース7は、円周方向に8つの球体収納空間71を有しており、赤色の球体9の複数個、緑色の球体9の複数個、といったように複数色の球体9を色分けして収納可能とされている。
【0030】
そして、本体部2は、把持部20の先端に円形開口である開口部21を有し、該把持部20の後端に矩形開口である球体取り出し口29を有している。また、本体部2は、開口部21と球体取り出し口29とを連通する案内路22を把持部20内に有して、球体収納空間71から取り出される球体9を開口部21に導き、開口部21から外部へ球体9を落下させることができるようになっている。
【0031】
そして、本体部2には、回動機構及び球体移送機構が内蔵されている。回動機構は、動作する度に球体収納ケース7を45度ずつ回転させる機構である。また、球体移送機構は、動作する度に球体収納空間71内の球体9を1個ずつ球体取り出し口29から案内路22に移送させる機構である。
【0032】
さらに、この球体供給具1は、本体部2における把持部20をペンのように把持したときに人差し指によって操作できるように配置される回動操作ボタン4及び移送操作ボタン5を把持部20に備えている。回動操作ボタン4は、本体部2に内蔵される回動機構を作動させるものであり、移送操作ボタン5は、本体部2に内蔵される球体移送機構を作動させるものである。また、この回動操作ボタン4及び移送操作ボタン5は、外方から把持部20の内側に向って押し込み操作ができるように配設されている。
【0033】
つまり、この球体供給具1は、回動機構を動作させる度に球体収納ケース7を45度ずつ回動させて、8つの球体収納空間71のうちの一つを球体取り出し口29に配置させ、球体移送機構を動作させる度に、球体取り出し口29に配置される球体収納空間71から球体9を1個ずつ取り出すように構成されているものである。
【0034】
以下、各部位及び機構の詳細について説明する。先ず、球体収納ケース7と、この球体収納ケース7を回転可能に保持するケース収容部27について説明する。図2(a)は、球体収納ケース7の外観斜視図であり、図2(b)は、ケース収容部27の外観斜視図である。
【0035】
本体部2の後部であるケース収容部27に回転可能に保持される球体収納ケース7は、図2(a)に示すように、円形凹部を有する円形箱状であって、透明材質により形成されている。つまり、この球体収納ケース7は、周方向に回動可能であり、更に外部から収納されている球体9を目視することができるものである。また、この球体収納ケース7は、図示するように、円形状の側板7aである円形凹部における底面部分を載置面に載置することで、各球体収納空間71に上方から球体9を補充することができるようになっている。
【0036】
そして、図2(b)に示すように、球体収納ケース7を回転可能に保持する部分であるケース収容部27は、球体収納ケース7の外径よりも僅かに長い内径とされる円形凹部を有する円形箱状とされ、円形状の平板である円形板27aとこの円形板27aの周縁に垂設される円周壁27bとで構成されるものである。つまり、ケース収容部27に球体収納ケース7を装着すると、球体収納ケース7の開放部分がケース収容部27の円形板27aと円周壁27bにより覆われることになる。
【0037】
そして、把持部20の後端に位置する円周壁27bには矩形開口とされる球体取り出し口29が設けられている。また、この球体取り出し口29は、円形板27aの近傍における円周壁27bに形成され、後述する球体移送機構の閉止板30により閉じられ、球体移送機構が動作したときに球体収納ケース7の内部空間と把持部20の内部とを一時的に連通する開口部分である。
【0038】
そして、球体収納ケース7は、図2(a)に示したように、複数色の球体9を色分けして収納する8つの球体収納空間71を有している。この8つの球体収納空間71は、八角形形状の内筒部70の角部から径方向(放射状方向)に延在する仕切板7cが円形凹部の底面である側板7aにおいて周方向に等間隔で配設されることで、外周壁7bの内面と内筒部70の外面と仕切板7cとで区画されるものである。なお、球体収納空間71は、8つ形成する場合に限定されるものではない。
【0039】
そして、この8つの球体収納空間71は、夫々が複数個の球体9を収納する空間とされ、側板7aを底面としてテーブルなどの載置面に載置させたときに、上方から球体9を補充できるように側面開放部7d(載置したときにおける上側の開放部分)を有し、側板7aの周縁に垂設される外周壁7bに対して球体9の直径よりも僅かに長くなるように仕切板7cを突出させることで周縁における開放部分とされる周縁開放部7eが形成されているものである。なお、図面中の二点鎖線は、側面開放部7dと周縁開放部7eとを明確にするための仮想線である。
【0040】
即ち、球体収納ケース7をケース収容部27に装着したときに、このケース収容部27の円形板27aにより側面開放部7dを塞ぎ、ケース収容部27の円周壁27bにより周縁開放部7eを覆うことで、球体収納空間71を閉じた空間とすることができるようになっている。なお、球体収納ケース7をケース収容部27に装着したときに、外周壁7bより仕切板7cがケース収容部27における円形板27a側に突出して仕切板7c端部が円形板27aの近傍まで延在しているため、円形板27aの近傍に周縁開放部7eが位置することになる。
【0041】
即ち、球体収納ケース7をケース収容部27に装着している状態においては、球体取り出し口29の位置に、周縁開放部7eが位置することになるため、球体取り出し口29が開くと、該球体取り出し口29に配置される球体収納空間71内の球体9が周縁開放部7e及び球体取り出し口29を介して把持部20内へ移送されることになる。
【0042】
そして、ケース収容部27に回動可能に保持される球体収納ケース7は、後述する回動機構が動作する度に45度ずつ回動して、その都度後述する係止部材により複数の球体収納空間71のうちの一つが球体取り出し口29に配置されるように固定されて、その回転が防止される。
【0043】
そして、球体収納空間71に収納されている球体9は、後述する球体移送機構が動作する度に閉止板30が移動して球体取り出し口29が開くため、球体移送機構の動作に伴って球体収納空間71から取り出されることになる。
【0044】
次に、ケース収容部27と球体収納ケース7との連結部分について説明する。ケース収容部27は、図2(b)に示したように、円形板27aの中心部に回転可能に配設される回転凸部82を有している。この回転凸部82は、後述する回動部の円状基板に設けられる部分であり、この回動部は回動機構及び揺動機構を構成する部材の一つである。つまり、後述する回動機構が動作すると、この回転凸部82も回動することになる。この回転凸部82は、八角形形状とされ、各側壁には窪みである嵌着凹部82aが形成されている。また、回転凸部82の中心部には、装着される球体収納ケース7側に突出するように移動可能とされる取外しスイッチの押出部87aが配設されている。
【0045】
そして、球体収納ケース7は、図2(a)に示したように、中心部に本体部2と着脱自在に接続される内筒部70を有している。この内筒部70は、8枚の平板により八角形を呈する筒状に形成されて、その内側が、図2(b)に示した本体部2のケース収容部27に配設される回転凸部82と嵌合するようにして形成されているものである。
【0046】
さらに、図2(a)に示したように、内筒部70を構成する8枚の平板のうち対向する2枚の平板には、各々平行に2本の切込みが設けられることで、一端を内筒部70に連設する板ばね72が形成される。そして、板ばね72の自由端近傍には、中心側に突出する半球形状の嵌着凸部72aが形成されている。この嵌着凸部72aは、図2(b)に示した本体部2のケース収容部27に配設される回転凸部82の周囲に形成される嵌着凹部82aと嵌着する部分である。
【0047】
また、図2(a)に示したように、この内筒部70の内側には、8枚の平板のうち対向する2枚の平板同士を接続するように、1枚の平板が更に配設されている。そして、この平板の中央には、図2(b)に示した回転凸部82の中央の貫通孔より突出可能に配設される取外しスイッチの押出部87aと当接する当接部78が形成されている。
【0048】
つまり、操作部分が本体部2の外方に突出するように配設される取外しスイッチを本体部2側に押し込むと、押出部87aが当接部78に当接して当接部78を押圧するため、板ばね72が外方に撓んで嵌着凸部72aが嵌着凹部82aから外れる。また、球体収納ケース7をケース収容部27に装入することで、当接部78によって押出部87aを押圧して取外しスイッチを外方に移動させるとともに、板ばね72を回転凸部82の外縁で外方に撓ませることで嵌着凸部72aと嵌着凹部82aとを嵌着させることができる。即ち、球体収納ケース7は、本体部2に着脱自在とされるとともに、装着されているときに回動部が回転すると球体収納ケース7も連動して回転することになる。
【0049】
次に、球体供給具1の内部構造について図3〜図6を参照して詳説する。この球体供給具1の本体部2は、中空形状とされて、回動機構40と、球体移送機構50と、を内蔵している。図3及び図4は、球体供給具1の回動機構40を示す側面模式図である。図5及び図6は、球体供給具1の球体移送機構50を示す側面模式図である。
【0050】
先ず、回動機構40について説明する。回動機構40は、図3(a)に示すように、回動用リンク41と、係合部材42と、回動部8と、係止部材6と、から構成される。回動用リンク41は、前後方向を長手方向とするリンク部材であって、中央近傍において本体部2に枢支されている。そして、この回動用リンク41は、前端近傍が回動操作ボタン4と係合するように配置され、後端近傍に当該回動用リンク41を復帰させる方向に回動させる弾性部材であるコイルばね44が配設されている。
【0051】
そして、回動用リンク41の後端近傍には、係合部材42が装着されている。この係合部材42は、先端にテーパー部42aと平面部42bとを有し、基部側に弾性部材であるコイルばね43が配設されて、該コイルばね43により後方に付勢されるとともに回動用リンク41に対して長手方向に摺動可能に配設されている。
【0052】
回動部8は、回動機構40によって回転させられる部分であり、本体部2のケース収容部27の円形板27aに枢設されている。そして、この回動部8は、円板状の円状基板80と、円状基板80において周方向に等間隔で配置される係合ピン84と、から構成されている。また、この係合ピン84は、球体収納空間71の数と対応して8つ形成され、各係合ピン84にはピンに対して回転可能とされる筒状のローラーが軸着されている。
【0053】
円状基板80は、上述した回転凸部82と一体とされるものである(図2(b)参照)。また、各係合ピン84は、円状基板80に垂設されている。なお、回動部8の中心には、上述した球体収納ケース7における当接部78(図2(a)参照)を押圧する押出部87a(図2(b)参照)を有する取外しスイッチ87が配設される。そして、この取外しスイッチ87の操作部分は、本体部2に設けられる開口から外方に突出して配置されることになる。
【0054】
係止部材6は、基部60と、係止角部61と、コイルばね64と、から構成される。コイルばね64は、ケース収容部27の円形板27aより垂設される平板65と基部60とを離隔させるように(係止角部61を回動部8側に移動させる方向に)付勢する弾性部材である。即ち、係止部材6は、コイルばね64により係止角部61を前方に付勢することで当該係止角部61の先端を係合ピン84間に挿入して、回動部8の回転を防止する。
【0055】
以下、回動機構40の動作について説明する。使用者が回動操作ボタン4を内方に押し込むと、図3(b)に示すように、コイルばね44の弾性力に抗して回動用リンク41が回動し、更に係合部材42の平面部42bが係合ピン84に軸着されるローラーと係合することで回動部8を回動させる。このとき、回動部8の回転軸に対して対称の位置にある係合ピン84に軸着されるローラーが係止部材6の係止角部61の斜面を押圧するため、回動部8は、係止部材6のコイルばね64に抗して回動されることとなる。
【0056】
そして、使用者が回動操作ボタン4を完全に押し込むと、図4(a)に示すように、係止部材6の係止角部61がコイルばね64により付勢されて再び係合ピン84間に挿入されるため、回動部8は、45度回転した位置において係止部材6によりその回転が防止される。
【0057】
さらに、使用者が回動操作ボタン4を解放すると、図4(b)に示すように、回動用リンク41が当該回動用リンク41の後端近傍に装着されるコイルばね44により復帰される方向に回動する。このとき、係合部材42のテーパー部42aが係合ピン84に軸着されるローラーと係合するため、係合部材42を後方へ付勢するコイルばね43の弾性力に抗して係合部材42が前方へ摺動し、回動用リンク41が復帰方向に回動することになる。よって、使用者が回動操作ボタン4を解放すると、図3(a)に示したように、回動機構40が復帰して、使用者は何度でも回動操作ボタン4を操作して球体収納ケース7を45度ずつ回動させて、容易に取り出したい色の球体9を収納した球体収納空間71を球体取り出し口29に配置させることができる。
【0058】
次に、球体移送機構50について説明する。球体移送機構50は、図5に示すように、前後方向を長手方向とする部材である移送用部材51と、移送用部材51を復帰させるコイルばね54と、から成る。この移送用部材51は、中央近傍において本体部2に枢支されている。また、この移送用部材51は、前端近傍が移送操作ボタン5と係合するように配置される。コイルばね54は、回転軸近傍に配設され、移送用部材51を復帰させる方向に回動させる弾性部材である。
【0059】
この移送用部材51の後端近傍には、球体取り出し口29を塞ぐように閉じる閉止板30が形成される。この閉止板30は、球体9が球体取り出し口29から落下しない程度の大きさとされる。また、閉止板30の端部には、押出板31が垂設されている。この押出板31は、本体部2に形成される受け板26近傍まで延在する。
【0060】
ここで、受け板26は、球体取り出し口29から落下する球体9を受け止める平板であり、球体取り出し口29と対向する位置に球体取り出し口29と略平行となるように形成されている。そして、この受け板26は、球体9の外径より僅かに長い距離だけ閉止板30と離隔して配置される。
【0061】
そして、移送用部材51は、押出板31と略平行となるように形成される規制板32を有している。この規制板32は、移送用部材51の長手方向に延在する側板とされる。また、この規制板32は、球体9の外径より僅かに長い距離だけ押出板31と離隔して配置される。
【0062】
さらに、移送用部材51は、受け板26より前方に、押出板31を延長するようにして規制板32と平行となるように平板55が垂設されて、この平板55及び規制板32と把持部20の側板及び移送用部材51の側板とによって球体9を本体部2の案内路22まで導く経路である通路14を形成している。
【0063】
また、移送用部材51の後端には、係合片52が形成されている。そして、この係合片52には、移送用部材51が回動したときに回動部8の係合半円部85と係合する係合斜面52aが形成されている。
【0064】
この係合半円部85は、回動部8における円状基板80の外周面より外方に突出する半円形状体であって、周方向に等間隔で8つ形成されている。また、この係合半円部85は、各々が側面視で係合ピン84間に配置されるように設けられている。
【0065】
よって、球体移送機構50が動作すると、その動作の後半で係合斜面52aと係合半円部85とが係合して、回動部8を係止部材6のコイルばね64の弾性力に抗して僅かに回動させる。さらに、球体移送機構50が復帰すると、係止部材6のコイルばね64の弾性力により、回動部8も復帰することになる。即ち、この球体供給具1は、球体移送機構50と回動部8と係止部材6とから成る揺動機構であって、球体移送機構50を動作させる度に回動部8を僅かに回動させることで球体収納ケース7を揺動させる機構を有している。
【0066】
したがって、使用者が移送操作ボタン5を内方に押し込むと、図6(a)に示すように、移送用部材51が回動して、この回動動作の後半において係合片52の係合斜面52aが係合半円部85と係合する。そして、使用者が移送操作ボタン5を更に内方に押し込むと、係合ピン84に軸着されるローラーが係止部材6の係止角部61の斜面を押圧するため、回動部8が係止部材6のコイルばね64に抗して僅かに回動することとなる。
【0067】
そして、移送操作ボタン5が使用者により完全に内方に押し込まれると、図6(b)に示すように、回動部8が僅かに回動するとともに、閉止板30によって閉じられていた球体取り出し口29が開かれ、受け板26が押出板31と平板55との間から規制板32の直近まで挿入されて案内路22に通じる通路14を閉じるため、球体取り出し口29に配置される球体収納空間71から球体9が1個だけ取り出されることになる。
【0068】
さらに、使用者が移送操作ボタン5を解放すると、移送用部材51が当該移送用部材51の回転軸近傍に装着されるコイルばね54により復帰される方向に回動して、図5に示したように、球体移送機構50が復帰する。そのため、使用者は何度でも移送操作ボタン5を操作して球体収納ケース7から本体部2側に球体9を取り出すことができる。なお、使用者が移送操作ボタン5を操作する度に、揺動機構が動作して球体収納ケース7が揺動する。
【0069】
次に、この球体供給具1の移送操作ボタン5を操作することにより、1個ずつ取り出される球体9の経路について図7を参照して説明する。この球体供給具1は、図7(a)に示すように、移送操作ボタン5が操作されていない状態においては、球体取り出し口29が閉止板30によって閉じられているため、球体収納空間71から球体9が把持部20内へ送出されることはない。
【0070】
そして、この球体供給具1は、上述したように、球体移送機構50を動作させることで球体収納ケース7と把持部20とを一時的に連通させて球体9を把持部20内に移送することができるものである。つまり、図7(b)に示すように、球体取り出し口29の下方に配置される閉止板30を移動させることで、球体9を把持部20内へと落下させることができる。
【0071】
ここで、この球体供給具1は、球体移送機構50の1動作において1個の球体9のみが取り出されるように構成されている。具体的には、図6(b)及び図7(b)に示したように、この球体供給具1は、球体移送機構50を動作させたときに球体取り出し口29から取り出される球体9を1個だけ収容保持する球体受容空間3を形成する構成とされる。さらに、球体移送機構50は、復帰させたときに球体受容空間3に収容保持されていた球体9を案内路22に移送させるように構成されている。
【0072】
球体受容空間3は、球体移送機構50を動作させて球体取り出し口29を開いたときにのみ形成されるものであり、本体部2の球体取り出し口29及び受け板26並びに両側板と、球体移送機構50の押出板31及び規制板32と、から区画されてなる。なお、この球体受容空間3は、球体9を1個だけ収容可能な容積となるように形成される。
【0073】
したがって、球体移送機構50が動作すると、図7(b)に示したように、球体取り出し口29に配置される球体収納空間71から球体9が落下する。その後、当該1個の球体9は、受け板26によって受け止められて球体受容空間3内に収容保持される。即ち、このときの球体9は、本体部2の受け板26及び両側板並びに移送用部材51の押出板31及び規制板32によって移動が制限される。
【0074】
また、球体移送機構50が復帰すると、図7(c)に示すように、閉止板30により球体取り出し口29が閉じられるとともに、受け板26から案内路22への球体9の落下を規制していた規制板32が移動して球体9に対する落下規制が解放される。さらに、球体取り出し口29から取り出されて受け板26上に配置されていた球体9が押出板31によって押出される。
【0075】
したがって、球体移送機構50を復帰させて球体取り出し口29を閉じると、球体受容空間3に収容保持されていた球体9は受け板26から落下して、通路14を通ってから案内路22へと移送される。そして、案内路22に移送された球体9は、開口部21へと導かれて、開口部21から外部へ落下して、基板などにおける所定の位置に配置されることになる。
【0076】
また、この球体供給具1は、案内路22上に球体9の落下速度を減少させる速度調整部が設けられている。この速度調整部は、開口部21近傍において把持部20の内面から内方に突出するように設けられる速度調整片23とされる。この速度調整片23は、球体供給具1の長手方向と直交する方向に配設される平板であって、2枚の平板が開口部21近傍における把持部20の内面から内方へ突出するように交互に設けられるものである。
【0077】
これにより、受け板26から落下する球体9は、速度調整片23によって開口部21直近で受け止められた後に開口部21へと導かれるため、落下距離を短くして開口部21から落下する球体9の速度を速度調整片23が無い場合に比べて減少させることができる。つまり、この球体供給具1は、開口部21から落下する球体9が、当該球体9を配置しようとする基板などに衝突して跳ね返ってしまうことを防止できる。なお、速度調整片23は、2枚に限定されることなく1枚或いは3枚以上であってもよい。また、速度調整部は、速度調整片23とする場合に限定されることなく、摩擦抵抗の高い通路を設けるなど種々の構造を採用することができる。
【0078】
このように、本発明によれば、主にビーズ玩具に使用する球体供給具1として、複数個の着色球体9を色分けして収納し、収納される各色の着色球体9を1個ずつ選択的に取り出すことのできる取扱い易い球体供給具1を提供することができる。また、球体移送機構50を動作させたときに球体受容空間3を形成する構成とすることで、球体取り出し口29から球体9を1個ずつ確実に取り出すことができる球体供給具1を提供することができる。
【0079】
さらに、球体移送機構50を動作させる度に球体収納ケース7を揺動させる揺動機構を設けているため、球体収納ケース7を揺動させて球体収納空間71に収納される複数個の球体9を攪拌させて、玉詰まりを起こすことなく容易に球体9を取り出すことができる球体供給具1を提供することができる。
【0080】
そして、この球体供給具1は、球体収納ケース7を着脱自在とすることで、簡単に球体9の補充を行うことができるものである。なお、着脱自在とする場合に限定されることなく、球体収納ケース7を本体部2に枢結し、球体収納ケース7の一方の面である側板7aを開閉可能な蓋として構成する、或いは、各球体収納空間71ごとに開閉可能な窓を設ける構成として、球体9を補充できるようにしてもよい。
【0081】
また、球体収納ケース7を透明材質により形成することで、取り出したい着色球体9の色を目視で確認して容易に選択することができる。なお、球体収納ケース7は、不透明材質により形成してもよい。この場合、各球体収納空間71を構成する側板7aには、球体収納空間71の夫々に対応する位置に収納する球体9の色を示すシールなどを貼ることで、使用者は着色球体9を容易に選択することができるため好適である。
【0082】
そして、本発明は、以上の実施例に限定されるものでなく、例えば、球体収納ケース7の回転軸方向を把持部20の長手方向に合わせるなど、発明の要旨を逸脱しない範囲で自由に変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 球体供給具 2 本体部
3 球体受容空間 4 回動操作ボタン
5 移送操作ボタン 6 係止部材
7 球体収納ケース 7a 側板
7b 外周壁 7c 仕切板
7d 側面開放部 7e 周縁開放部
8 回動部 9 球体
14 通路 20 把持部
21 開口部 22 案内路
23 速度調整片 26 受け板
27 ケース収容部 27a 円形板
27b 円周壁 29 球体取り出し口
30 閉止板 31 押出板
32 規制板 40 回動機構
41 回動用リンク 42 係合部材
42a テーパー部 42b 平面部
43 コイルばね 44 コイルばね
50 球体移送機構 51 移送用部材
52 係合片 52a 係合斜面
54 コイルばね 55 平板
60 基部 61 係止角部
64 コイルばね 65 平板
70 内筒部 71 球体収納空間
72 板ばね 72a 嵌着凸部
78 当接部 80 円状基板
82 回転凸部 82a 嵌着凹部
84 係合ピン 85 係合半円部
87 取外しスイッチ 87a 押出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の把持部の後端にケース収容部を備えた本体部と、
円周方向に複数の球体収納空間を備えてケース収容部に回転可能に保持される球体収納ケースと、から構成され、
前記本体部は、前記把持部の先端に開口部を有し、該把持部の後端に球体取り出し口を有するとともに前記開口部と前記球体取り出し口とを連通する案内路を前記把持部内に有し、
前記球体収納ケースを所定の角度だけ回転させる回動機構と、前記球体収納空間内の球体を1個だけ前記球体取り出し口から前記案内路に移送させる球体移送機構と、を前記本体部に内蔵し、前記回動機構を作動させる回動操作ボタンと前記球体移送機構を作動させる移送操作ボタンとを前記把持部に備えることを特徴とする球体供給具。
【請求項2】
前記球体移送機構は、動作させたときに前記球体取り出し口から取り出される球体を1個だけ収容保持する球体受容空間を形成し、
前記球体移送機構は、復帰させたときに前記球体受容空間に収容保持されていた球体を前記案内路に移送させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の球体供給具。
【請求項3】
前記球体移送機構を動作させる度に前記球体収納ケースを揺動させる揺動機構を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の球体供給具。
【請求項4】
前記球体収納ケースは、着脱自在に本体部に取付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の球体供給具。
【請求項5】
前記球体収納ケースは、透明材質により形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の球体供給具。
【請求項6】
前記案内路上に球体の落下速度を減少させる速度調整部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の球体供給具。
【請求項7】
前記速度調整部は、前記開口部近傍における前記把持部の内面から内方に突出するように設けられた速度調整片であることを特徴とする請求項6に記載の球体供給具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−136037(P2011−136037A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298038(P2009−298038)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000128234)株式会社エポック社 (21)
【Fターム(参考)】