説明

球殻振動板及び電気音響変換器

【課題】定在波の発生が抑制されピークやディップが少なく、低音領域で高音圧が得られ、入力信号を高効率で電気音響変換できる球殻振動板及び電気音響変換器を提供する。
【解決手段】一の径(D2)の円に内接する正n角形(n:4以上の整数)の外形部(14)を有する複数の振動板(10,10R)の外形部同士が連結された略球殻形状を有し、各複数の振動板は、外形部を含む基準平面(P0)への投影形状が一の径の中心軸(O)回りに回転対称な形状を有し基準平面に対して外側に突出した内形部(13)と、外形部と内形部とを連結し中心軸に対して傾斜した面を有する振動面部(12)とを備え、この振動面部は中心軸に直交するいずれかの断面(SS)でこの中心軸に対し偏心した軸(O2)回りに回転対称な形状を有する球殻振動板(200)とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球殻振動板及び電気音響変換器に係る。
【背景技術】
【0002】
振動板と、この外周部を支持するフレームと、振動板を一軸方向に振動させる磁気回路を有する駆動部と、を備えて音を放出する電気音響変換器は一般にスピーカと称され、その振動板としてはコーン形状のものが多用されている。
このコーン形状は、振動方向となる中心軸に対して傾斜する傾斜部が、概ねその中心軸回りに回転対称な円錐(直円錐)の頂部を切り落とした内周及び外周を有する円錐台の表面形状とされるのが一般的である。
ところで、この略円錐台形状の振動板は、振動板の全周にわたって半径方向に定在波が発生し周波数−音圧特性上にピークやディップが生じやすいことが知られている。
【0003】
そこで、このピークやディップを発生しにくくするために、振動板の円錐台形状を、内周の中心軸が外周の中心軸から偏心した形状とすることが提案されている。
この偏心形状の振動板は、内周の中心軸を通る径線における内周端から外周端までの距離が周方向の位置により異なるものである。
従って、振動板上で発生する定在波の波長が周方向の位置により異なり、周波数−音圧特性上のピークやディップがならされて滑らかになる。
このように、この偏心形状の振動板は、周波数−音圧特性上のピークやディップを発生しにくくすることができるが、内周の中心軸に対して外形が非偏心に形成された汎用の磁気回路部品あるいはフレームを流用できないという不具合がある。
そこで、この不具合を解消する構造が特許文献1に記載されている。この構造は、上述
した偏心形状の動板を、中心軸に対して外形が非偏心に形成された磁気回路部品あるいはフレームに取り付けるための構造である。
一方、略球殻形状の振動板を有し、これを径方向に振動させて音声を振動板の中心に対してあらゆる方向に放射する電気音響変換器が知られている。
この電気音響変換器は、球体スピーカや呼吸球スピーカ等と称される場合があり、その例として特許文献2や特許文献3に開示されたものがある。
これらの文献には、この電気音響変換器の振動板の例として、概ね平面に形成された所定形状の一振動板を複数個組み合わせて略球面状の振動板にしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−284886号公報
【特許文献2】特開2000−78686号公報
【特許文献3】特開2001−95088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2,3に記載された略球殻状の振動板に対して、定在波の発生を抑制するために特許文献1に記載されたような偏心した振動板を適用すれば、周波数−音圧特性が同様に改善されることが期待される。
しかしながら、偏心した振動板を複数組み合わせる場合に、振動板の偏心軸を、球体を均等に分割した位置に配置すると、隣接する振動板との接合部には特許文献1にエッジや取り付け部材として記載されたような径方向で幅の異なる特別な接合部材が必要となり、また、組み立ての際の位置合わせが極めて難しくなる。
さらには、振動に奇与しない接合部材が占める面積がより広く必要となるので振動板の外径に対する振動板の占有面積が小さくなり、球殻のサイズの割には低音領域において高い音圧が得難く、入力信号を高効率で電気音響変換することが難しいという問題があった。
また、特許文献2,3に記載されたスピーカは、1個の駆動部で駆動する構成であるので、出力音圧を大きくすることが難しいという問題があった。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、振動板が略球殻状であっても、定在波の発生が抑制されてピークやディップが少なくなると共に、特別な接合部材が不要で、組み立ての際の位置合わせが容易で、特に低音領域において高い音圧が得られ、入力信号を高効率で電気音響変換できる球殻振動板及び電気音響変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は手段として次の〔1〕〜〔13〕の構成を有する。
〔1〕 一の径(D2)の円に内接する正n角形(n:4以上の整数)形状の外形部(14)を有する複数の振動板(10,10R)の前記外形部(14)同士が連結された略球殻形状を有し、
前記複数の振動板(10,10R)それぞれは、
前記外形部(14)を含んでなる平面(P0)への投影形状が前記一の径(D2)の中心軸(O)回りに回転対称な形状を有し前記平面(P0)に対して外側に突出した内形部(13)と、
前記外形部(14)と前記内形部(13)とを連結し、前記中心軸(O)に対して傾斜した傾斜面を有する振動面部(12)と、を備え、
前記振動面部(12)は、前記中心軸(O)に直交するいずれかの断面(SS)において、前記中心軸(O)に対して偏心した偏心軸(O2)回りに回転対称な形状を有することを特徴とする球殻振動板(200)である。
〔2〕 一の径の円(D2)に内接する正n角形(n:4以上の整数)形状の外形部(14)を有する複数の振動板(10,10R)の前記外形部(14)同士が連結された略球殻形状を有し、
前記複数の振動板(10,10R)それぞれは、
前記外形部(14)を含んでなる平面(P0)への投影形状が前記一の径(D2)の中心軸(O)回りに回転対称な形状を有し前記平面(P0)に対して外側に突出した内形部(13)と、
前記外形部(14)と前記内形部(13)とを連結し、前記中心軸(O)に対して傾斜した傾斜面を有する振動面部(12)と、を備え、
前記振動面部(12)は、前記中心軸(O)に対して偏心した偏心軸(O2)回りに回転対称な形状の周回線(15)を有し、該周回線(15)を挟む前記偏心軸(O2)側の面(12a)及び前記外形部(14)側の面(12b)の曲率(R)又は傾斜角度が前記周回線(15)において不連続であることを特徴とする球殻振動板(200)である。
〔3〕 一の径(D2)の円に内接する正n角形(n:4以上の整数)形状の外形部(14)を有する複数の振動板(100)の前記外形部(14)同士が連結された略球殻形状を有し、
前記複数の振動板(100)それぞれは、
前記正n角形の中心(G0)と各頂点(T1〜Tn)とを結ぶ線分(T1G〜TnG)により前記正n角形をn分割して得られるn個の3角形(TR1〜TRn)の内部に1つずつ設けられ、前記各頂点(T1〜Tn)及び前記中心(G0)に結ばれる線分が稜線となるn個の頂部(TP1〜TPn)を有し、
該n個の頂部(TP1〜TPn)は、前記正n角形の中心軸(G0)に対して偏心した偏心軸(O3)回りに回転対称な図形の外周線(C2)上にあることを特徴とする球殻振動板(201)である。
〔4〕 各前記振動板(100)において、前記n個の頂部(TP1〜TPn)と前記正n角形の中心(G0)とが、前記各頂点(T1〜Tn)を含む平面(P0)に対して一面側に突出した位置にあることを特徴とする〔3〕に記載の球殻振動板(201)である。
〔5〕 各前記振動板(100)において、前記外形部(14)の前記正n角形の頂点となるn個の頂点部(T1〜Tn)と前記n個の頂部(TP1〜TPn)と前記正n角形の中心部(G0)とが同一の球面(CF)上にあることを特徴とする〔4〕に記載の球殻振動板(201)である。
〔6〕 前記複数の振動板(100)のうち前記球面(CF)が互いに同一となる複数の振動板(100)を有することを特徴とする〔5〕に記載の球殻振動板(201)である。
〔7〕 前記複数の振動板(10,10R,100)の外形同士は、可撓性を有する連結部材(102)を介して接続されていることを特徴とする〔1〕乃至〔6〕のいずれかに記載の球殻振動板(200,201)である。
〔8〕 前記略球殻形状は、正12面体であることを特徴とする〔1〕乃至〔7〕のいずれかに記載の球殻振動板(200,201)である。
〔9〕 当該球殻振動板を、前記外形部(14)に沿って2つの部分に分離する分割線であって、前記分割線に沿う外形部(14)を有する前記振動板(10,10R,100)の数を前記2つの部分で等しくする分割線(EQ)を設定した際に、該分割線(EQ)に沿う外形部(14)を有する前記振動板(10,10R,100)の前記偏心軸(O3)が、前記分割線(EQ)に沿う前記外形部(14)の頂点に向かう方向に偏心して成ることを特徴とする〔1〕乃至〔8〕のいずれかに記載の球殻振動板(200,201)である。
〔10〕 前記複数の振動板(10,10R,100)のうちのいずれかが開口部を有することを特徴とする〔1〕乃至〔9〕のいずれかに記載の球殻振動板(200,201)である。
〔11〕 〔1〕乃至〔10〕のいずれかに記載の球殻振動板(200,201)を用いた電気音響変換器(150)である。
〔12〕 前記複数の振動板(10,10R,100)が前記正12面体の内の11面に対応するよう連結された〔8〕に記載の球殻振動板(200,201)を用いた電気音響変換器(150)である。
〔13〕 〔11〕又は〔12〕に記載の電気音響変換器(150)であって、
前記複数の振動板(10,10R,100)それぞれの内側面に接続された複数のボイスコイルボビン(221)と、
前記複数のボイスコイルボビン(221)それぞれを有して各前記複数の振動板(10,10R,100)を振動させる複数の駆動部(232)と、を備えた電気音響変換器(150)である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、定在波の発生を抑制し、特別な接合部材が不要で、組み立ての際の位置合わせが容易で、低音域でも高い音圧が得られ、入力信号を高効率で電気音響変換することが可能になる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に適用される振動板の要素を示す概略斜視図である。
【図2】本発明に適用される振動板の要素を示す平面図及び断面図である。
【図3】本発明に適用される振動板の要素を用いた電気音響変換器を示す断面図である。
【図4】本発明に適用される振動晩の要素を用いた電気音響変換器の他の例を示す断面図である。
【図5】従来の振動板における定在波分布を説明するための模式図である。
【図6】本発明に適用される振動板の要素における定在波分布を説明するための模式図である。
【図7】振動板の偏心量に応じた周波数−音圧特性を示すグラフである。
【図8】本発明に適用される振動板の要素の形状を説明するための模式的断面図である。
【図9】本発明に適用される振動板の要素の他の形状を説明するための模式的断面図である。
【図10】本発明に適用される振動板の要素の他の形状を示す平面図及び断面図である。
【図11】従来の振動板の形状と本発明に適用される振動板要素の他の形状とを比較説明するための正面図である。
【図12】本発明に適用される振動板の要素の他の形状のものを用いた電気音響変換器を説明するための模式的断面図である。
【図13】本発明の実施例の振動板を説明するための展開図である。
【図14】本発明の実施例の電気音響変換器を示す外観図である。
【図15】本発明の実施例の電気音響変換器の構造を説明するための斜視図である。
【図16】本発明の実施例の電気音響変換器を説明するための部分断面図である。
【図17】図17は、本発明に係る実施例の電気音響変換器の構造を説明するための他の斜視図である。
【図18】本発明の実施例の振動板の変形例を説明するための正面図と斜視図である。
【図19】本発明の実施例の電気音響変換器を説明するための正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図19を用いて説明する。
図1は、本発明に適用される振動板の要素を示す概略斜視図である。
図2は、本発明に適用される振動板の要素を示す平面図及び断面図である。
図3は、本発明に適用される振動板の要素を用いた電気音響変換器を示す断面図である。
図4は、本発明に適用される振動板の要素を用いた電気音響変換器の他の例を示す断面図である。
図5は、従来の振動板における定在波分布を説明するための模式図である。
図6は、本発明に適用される振動板の要素における定在波分布を説明するための模式図である。
図7は、振動板の偏心量に応じた周波数−音圧特性を示すグラフである。
図8は、本発明に適用される振動板の要素の形状を説明するための模式的断面図である。
図9は、本発明に適用される振動板の要素の他の形状を説明するための模式的断面図である。
図10は、本発明に適用される振動板の要素の他の形状を示す平面図及び断面図である。
図11は、従来の振動板の形状と本発明に適用される振動板要素の他の形状とを比較説明するための正面図である。
図12は、本発明に適用される振動板の要素の他の形状のものを用いた電気音響変換器を説明するための模式的断面図である。
図13は、本発明の実施例の振動板を説明するための展開図である。
図14は、本発明の実施例の電気音響変換器を示す外観図である。
図15は、本発明の実施例の電気音響変換器の構造を説明するための斜視図である。
図16は、本発明の実施例の電気音響変換器の構造を説明するための部分断面図である。
図17は、本発明に係る実施例の電気音響変換器の構造を説明するための他の斜視図である。
図18は、本発明の実施例の振動板の変形例を説明するための正面図と斜視図である。
図19は、本発明の実施例の電気音響変換器を説明するための正面図である。
また、以下の説明において回転対称とは、少なくとも2回以上の回転対称性のことを意味する。
【0011】
<振動板要素について>
<第1の形態例>
実施例の球殻振動板の構成要素となる振動板の第1の形態例について、その形状を図1及び図2を用いて説明する。図1は、振動板の曲面形状が理解し易いように、曲率を模式的に示す径方向の実線16を複数本記載してある。
図1は、振動板10の外観を示す斜視図であり、図2(a)は、この振動板10を示す平面図であり、図2(b)は、図2(a)におけるS1−S1断面図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、この振動板10は、中心軸Oから直径D1〔図2(a)参照〕なる内径部13までの範囲である中心部11と、内径部13から直径D2〔図2(a)参照〕なる外径部14までの範囲である傾斜部12と、によりなる略円盤状に形成されている。
この振動板の材質は特に限定されるものではなく、紙や、PP(ポリプロピレン)などの樹脂製,アルミニウムなどの金属製,セラミックス製あるいは木製の各シートなどを用いることができる。
【0013】
内径部13は、外径部14を含む基準面P0に対して最大高さh1〔図2(b)参照〕だけ突出して形成されており、その内側である中心部11は、最突出部である内径部13に対して深さh2〔図2(b)参照〕だけ凹んだ曲面となっている。
従って、内径部13は、直径D1なる円形の稜線を成している。
傾斜部12は、この内径部13と外径部14とを繋ぐ面として形成されている。
また、内径部13と外径部14との間には、直径D3なる中間径部15(二点鎖線で指示)が形成されている。この中間径部15は、傾斜部12の面の曲率が顕著に変化する部位(変曲部)である。
【0014】
この振動板10についてさらに具体的に説明すると、傾斜部12における中間径部15より内側(中心軸Oの側)の領域の面(以下、傾斜部内側面12aと称する)は、凹む方向の曲率を有する曲面として、また、中間径部15より外側(中心軸Oとは反対側)の領域の面(以下、傾斜部外側面12bと称する)は、曲率を有していない平面として形成されている。
また、この中間径部15は、内径部13及び外径部14の中心軸Oに対して距離α(偏心量α)だけ偏心した中心軸O2を有している。
従って、中間径部15は、これを境界として、その偏心した中心軸O2側の面(傾斜部内側面12a)とその反対側の面(傾斜部外側面12b)とで曲率が不連続となる部位であり、偏心した中心軸O2回りに周回する線として示される。
【0015】
また、傾斜部内側面12aの曲率Rは一定ではなく、周方向で最大Rmaxから最小Rmin〔図2(b)参照〕まで連続的に変化し、この変化する曲率Rと偏心した距離αとに基づいて傾斜部内側面12aが形成されている。
【0016】
次に、上述した振動板10を用いた電気音響変換器50について説明する。
この電気音響変換器50はスピーカユニットとも称され、例えば、図3に示すように、振動板10と、この振動板10の外径部14側に接続される可撓性を有するエッジ30と、エッジ30が固着されたハウジング31と、このハウジング31に固定され振動板10を駆動するための磁気回路34とを含んで構成されている。
【0017】
磁気回路34は、底部23と環状壁部23bとを有するカップ状のヨーク23と、この底部23aの内面に固定されたマグネット24と、このマグネット24に固定された円筒状のポールピース25とで構成される。振動板10とハウジング31とを連結する連結部材であるエッジ30は、例としてゴム材や樹脂材を使用することができる。この連結部材と振動板10及びハウジング31とは接着剤で接続することができるが、連結部材は、接着性と可撓性とを有するシートなどであってもよい。
振動板10及びハウジング31とは接着剤で接続することができるが、連結部材は、接着性と可撓性とを有するシートなどであってもよい。
また、ヨーク23の環状壁部23bとポールピース25との間隙には、ボイスコイルボビン21及びその一端部側の外周面に巻回されたボイスコイル22が挿入されている。このボイスコイル22には外部からリード線22aを通じて入電され、このリード線22aは、ハウジング31に設けられた孔31aから外部へ引き出されている。
また、ボイスコイルボビン21は、その外周面が弾性を有するダンパー33によりハウジング31と接続され、このハウジング31によりダンパー33を介して振動板10の中心軸Oと平行な方向(振動方向)に振動自在に支持されている。
磁気回路34とボイスコイルボビン21とボイスコイル22とを含んで駆動部32が構成されている。
【0018】
一部重複するが、さらに詳細に具体的に説明すると、振動板10は、外径部14付近に可撓性を有する環状のエッジ30が固着され、このエッジ30の外周部はハウジング31の環状枠31bに固定されている。この固定の際、振動板10は、内径部13が駆動部32とは反対側に突出する向きに取り付けられている。
【0019】
円形の稜線状に突出した内径部13の突出方向と反対側の面には、円管状のボイスコイルボビン21の一端部が固定されている。
このボイスコイルボビン21の他端部側の外周面にはボイスコイル22が巻回されている。
また、カップ状のヨーク23は、その内壁面23aがボイスコイル22と所定の磁気空隙を有して対向するように配置されている。
【0020】
一方、ボイスコイルボビン21のボイスコイル22が巻回された部位の内部には、円筒状のマグネット24に連結された円盤状のポールピース25の外周面がボイスコイルボビン21の内面と所定の間隙を有して対向するように配置されている。
ボイスコイルボビン21は、ダンパー33を介してフレーム31により振動方向に移動可能なように支持されている。
【0021】
上述した電気音響変換器50で用いるエッジ30,フレーム31及び駆動部32は、中心軸Oに対して外形が非偏心に形成された汎用部品をそのまま使用でき、この振動板10のための専用部品を用いる必要がないのでコストアップを抑制することができる。
【0022】
駆動部32に対する振動板10の内径部13が突出する向きは、上述した図3の向きと逆に駆動部32側に向いていてもよい。すなわち、内径部13が陥没する向きにした形態であり、この例を図4に示す。
この図4の電気音響変換器50Aは、図3の電気音響変換器50に対して振動板10の突出する向きを逆向きにし、ボイスコイルボビン21の一端部側を振動板10の内径部13の突出した側の面に固着したものである。これ以外は電気音響変換器50と同じである。
従って、ボイスコイルボビン21は、中心軸O方向の長さが、電気音響変換器50に用いるものより短いものを用いることができる。
【0023】
図3に示すような内径部13が外側に突出した電気音響変換器50は、図4に示すような内径部13が内側に陥没した電気音響変換器50Aよりも指向性が広くなるので、一般的に広い指向性が得にくい高音域の音を出力する電気音響変換器(いわゆるツイータ)に好適である。
また、内径部13が内側に陥没した電気音響変換器50Aは、外側に振動板10が突出しないことから、低音域用の大口径の電気音響変換器(いわゆるウーハ)に好適である。
【0024】
次に、上述したような、中間径部15が、外径部14の中心軸Oに対して偏心した中心軸O2を有する振動板10を用いた場合と、中間径部15の中心軸O2が偏心していない振動板を用いた場合と、における特性等の比較について以下に説明する。
【0025】
図5及び図6は、それぞれ中心軸Oに対して中間径部15の中心軸O2が偏心していない場合の振動板10a(比較例)と、中間径部15が偏心した中心軸O2を有する第1の形態の振動板10とについての振動板の振動の様子を示している。
この図5及び図6は、振動の解析条件として、実際の磁気回路34の磁界強度の下でボイスコイル22の実効コイル長と巻き数とから得られる力を正弦振動としてボイスコイル22に加え、振動を12kHzとしたときの各振動板の中心軸O方向のA−A断面における定在波の分布を示している。
【0026】
これらの図において、上側の図は振動板の平面図であり、これに対応させて下側に振動の変位量を示している。
詳しくは、下側の変位量の図において、破線が振動板の断面形状であり、実線が定在波分布を示している。尚、この変位量は誇張して描いてある。
各図の比較から、第1の形態例の振動板10を用いた場合、定在波は明らかに中心軸Oに対して非対称になっていることがわかる。また、中心軸Oに対して顕著に発生する山の数も異なっている。
【0027】
図7は、中間径部15の中心軸O2と中心軸Oとが一致(即ち偏心量が0.0mm)する図5に示した比較例としての振動板10aと、中間径部15の中心軸O2が中心軸Oから偏心量αとして1.5mm及び3.0mm偏心した振動板10の2種の例と、をそれぞれ用いた電気音響変換器における周波数−音圧特性を示す。
図6は、中間径部15の中心O2が中心軸Oから0.0mm(偏心なし)とされた比較例としての振動板10aと、中間径部15の中心O2が中心軸Oから1.5mm及び3.0mmだけ偏心した振動板10の2種と、をそれぞれ用いた電気音響変換器における周波数−音圧特性を示す。
【0028】
比較例である振動板10aを用いた場合は、8kHz付近(矢印参照)に深いディップが見られるが、2種の例のように偏心が有ると、またその量が大きくなるほど、このディップが埋まりより平坦化することがわかる。
また、その他のピーク,ディップも、偏心させることによりなだらかになり、偏心量αが大きくなるほどよりなだらかに平坦化することがわかる。
【0029】
ところで、内径部13と中間径部15の間の部分の傾斜部内側面12aは、例えば、中心軸Oを通る平面における断面形状が図8(a)〜(c)に示すような曲面などであってもよい。〔図8(a)〜(c)は模式図であり、中間径部15が、外径部14の中心軸Oに対してこの図の左方向に偏心した中心軸O2を有する場合を示している。〕
具体的には、図8(a),(c)は、傾斜部内側面12aが、この断面形状において内側に凹むような曲率を有する傾斜曲面とされた例である。
また、図8(b)は、傾斜部内側面12aが、内径部13側をこの断面形状において内側に凹むような曲率を有する傾斜曲面とされる一方、外径部14側を断面形状において曲率を有していない傾斜平面とされた例である。
【0030】
一方、傾斜部12の中間径部15と外径部14の間の部分の傾斜部外側面12bは、図8(a)〜(c)に示すような曲面などであってもよい。
具体的には、図8(a)に示すように非傾斜平面でもよく、図8(b)に示すように連接する傾斜部内側面12aから連続する傾斜平面とされていてもよい。
また、図8(c)に示すように、傾斜部内側面12aと逆方向に傾斜する傾斜曲面、あるいは波線で示すような傾斜平面12b1であってもよい。
【0031】
また、傾斜部内側面12aは、図9(a)〜(c)に示すような断面形状において曲率を有していない傾斜平面でもよい。(この図9(a)〜(c)も模式図であり、中間径部15が、外径部14の中心軸Oに対してこの図の左方向に偏心した中心軸O2を有する場合を示している。)
また、傾斜部外側面12bは、図9(a)に示すような非傾斜平面でもよく、図9(b)に示すように傾斜部内側面12aと同方向に傾斜した傾斜平面でもよく、図9(c)に示すように傾斜部内側面12aとは逆方向に傾斜した傾斜平面でもよい。
【0032】
もちろん、傾斜部12の形状は図8及び図9に示すものを組み合わせてもよく、また、これらに限るものではない。
図8及び図9に示したように、この振動板10は、中心軸Oに対して直交するS−S断面における断面形状が、中心軸Oに対してα2だけ偏心した中心軸O5を有しその偏心した中心軸O5回りの回転対称形状となるものである。
【0033】
また、傾斜部12において、中心軸Oの方向における、外径部14を含む基準平面P0の位置d1(中心軸Oにおいて基準平面P0が交わる位置)から内径部13の位置d2(中心軸Oにおいて内径部13を含む面P13が交わる位置)までのすべての位置において偏心した中心軸O5回りの回転対称形状を有するものに限らず、このような偏心した中心軸O5回りの回転対称形状になる断面位置dが部分的に偏心面部として存在する形状の振動板としてもよい。
【0034】
また、中間径部15は、図8(b)のような例を除いて、傾斜部12の表面の傾斜角度あるいは曲率が急変する部位、換言するならば、その部位を境界として接続する2つの面の曲率あるいは傾斜角度が不連続となる部位として設定される。
また、この中間径部15は、目視的には一方向から投光された光の反射具合が異なる境界線として視認される部位である。
この中間径部15は真円に限るものではなく、中心軸Oに対して偏心した中心軸O2を有しその偏心した中心軸O2回りの回転対称図形であればよい。
また、内径部13も真円に限るものではなく例えば楕円のような回転対称図形でもよい。
【0035】
上述した例では、中心部11が凹んだ面を有する振動板について説明したが、中心部11は平面であってもよく、突出する面を有するものでもよい。
また、中心部11の大きさ、換言するならば、内径部13の径方向の大きさは任意に設定してよい。
従って、例えば内径部13を真円とした場合は、その直径D1の大きさは任意である。
【0036】
上述した振動板10は、その外形が円形である例について説明したが、外形を円に内接する多角形(例えば正5角形)としてもよい。その場合には、多角形の外形と中間径部とが干渉しないように互いの寸法を設定すればよい。
また、傾斜部外側面12bを、図9に示すように、中心部11の突出側とは逆側に曲率中心O4を有する曲面としてもよい。
図9は、その一例として、傾斜部外側面12bを、半径R1を有する球面CFに沿うような曲面で形成した振動板10Rの断面形状を示している。
この振動板10Rは、傾斜部外側面12b以外は図2の振動板10と同様の形状を有する。
【0037】
上述したように、内径部13,外径部14及び中間径部15は、円に限るものではないので、円の場合も含めて、それぞれ、内形部13,外形部14及び中間形部15と表記され得るものである。
【0038】
以上詳述した振動板10は、外径部14の中心軸Oに対して偏心した中心軸O2を有する中間径部15があっても、外径部14と内径部13とが同軸の中心軸Oを有するので、汎用の、エッジ30,ハウジング31,あるいは磁気回路34を有する駆動部32を用いて電気音響変換器(スピーカユニット)50を構成することができる。
また、繰り返しになるが、外径部14と内径部13とを同軸の中心軸Oを有するように形成すると共に、外径部14及び内径部13の中心軸Oから所定距離αだけ偏心した中心軸O2を有する中間径部15を設けた場合には、中心軸に対する対称的な定在波の発生が抑制され、周波数−音圧特性におけるピークやディップをならしてこれを平坦化することができる。
また、傾斜部12において、中心軸Oに対して直交するいずれかのS−S断面における断面形状が、中心軸Oに対して偏心した中心軸O5を有しその偏心した中心軸O5回りの回転対称形状となる場合にも、同様に、中心軸Oに対する対称的な定在波の発生が抑制され、周波数−音圧特性におけるピークやディップをならしてこれを平坦化することができる。
【0039】
<第2の形態例>
次に、実施例の球殻振動板の構成要素となる振動板の第2の形態例100について図11を用いて説明する。
図11は、この振動板100の形状の把握を容易にするため、その基本形状である振動板100aを図11(a)として示し、第2の形態例の振動板100を図11(b)として示した模式的平面図である。また、図11(a),(b)には、理解容易のため各線分の交わる点に黒丸を付してある。
【0040】
図11(b)に示す振動板100は、第1の形態例の内径部13において任意に設定できるとした直径D1をほぼゼロにして外形の中心軸O上に位置させると共に、外径部14を含むことで設定される基準平面P0に対して一面側に突出した位置にある頂部TP0とする一方、この頂部TP0と外形との間に、中心軸Oに対して偏心した軸まわりに回転対称な仮想図形を設定してこの仮想図形上に頂部TP0と同じ側に突出する複数の頂部を設けた振動板である。
【0041】
この振動板100は、音の放射方向(中心軸Oの方向)に略直交する平面をほとんど無くした形状となっている。
振動板100の外形形状は、正n角形(n:4以上の整数)であればよく、ここでは図11(b)に示すようにn=5とした正5角形の例について説明する。
【0042】
まず、図11(a)に示す基本形状の振動板100aについて説明する。
この振動板100aは、外形が頂点T1〜T5を有する正5角形である。各頂点は外接円C1上に位置する。
その正5角形の中心G0(以下、主中心G0とも称する)と各頂点T1〜T5とを結ぶ線分T1G〜T5Gと、隣接する頂点間を結ぶ線分である辺T1T2〜T5T1とで囲まれる5つの三角形TR1〜TR5、及び、これらの三角形TR1〜TR5それぞれの重心G1〜G5を設定する。(この振動板100aの例においては、各重心G1〜G5は三角形TR1〜TR5の各中心と一致する)
【0043】
ここで、振動板100aは、主中心G0及び各重心G1〜G5の位置が、それぞれ各頂点T1〜T5を含むことで決定される基準平面P0に対して一面側に突出した位置にある頂部TP0及び頂部TP1〜TP5となるように各線分で折った凹凸面を有する形状とされる。
具体的には、各頂点T1〜T5と主中心G0とを結ぶ線分T1G〜T5Gをそれが谷線となる谷折りとし、各頂点T1〜T5と各重心G1〜G5と結ぶ10本の線分を稜線(山線)となる山折りとする。また、5つの頂部TP1〜TP5は主中心G0を中心とする円C2上に位置する。
【0044】
このような凹凸面を有する基本形状の振動板100aに対して、第2の形態例の振動板100は、図11(b)に示すように、各頂部TP1〜TP5の位置を、その隣接する頂部TP1〜TP5を繋ぐ線が円C2上にあるように、かつ、その円C2の中心O3を外形である正5角形の主中心O(この例では重心G0と一致する)から所定量αだけ偏心するように移動させた形状となっている。
この図11(b)においては、偏心方向を頂点T1に近づく方向(矢印方向)にした例を示している。
【0045】
また、この振動板100は、基準平面P0に対して、主中心G0(頂部TP0)及び頂部TP1〜TP5が一面側に突出するように形成されている。基準平面P0に対する各突出量は任意でよい。
従って、主中心G0(頂部TP0)は基準平面P0に対して最も突出していてもよく、頂部TP1〜TP5のいずれかより少なく(低く)突出していてもよい。もちろん、突出量がそれぞれ同じであってもよい。
このように、すべての頂部TP0〜TP5が基準平面P0に対して一面側に突出した位置にあるのが好ましいが、頂部TP1〜TP5のみが一面側に突出した位置にあるものでもよい。
また、このような頂部TP1〜TP5と前記各頂点T1〜T5及び前記主中心G0とを結ぶ線分は、山折りの線である稜線となっている。
【0046】
ここで、主中心G0が頂部TP1〜TP5より低い場合には、各頂部TP1〜TP5から主中心G0に向かう稜線は下りとなるが、各頂点T1〜T5から主中心G0に向かう稜線は登りとなるので、主中心G0を便宜的に頂部TP0と称している。
同様に、主中心G0が各頂部TP1〜TP5より高い場合には、主中心G0から各頂部TP1〜TP5に向かう稜線は下りとなるが、各頂点T1〜T5から各頂部TP1〜TP5に向かう稜線は登りとなるので、便宜的に頂部TP1〜TP5と称している。
【0047】
各頂部TP1〜TP5の基準平面P0に対する突出量が異なる場合において、振動板100は、各頂部TP1〜TP5がすべて同一平面に含まれるものでなくてもよい。また、各頂部TP1〜TP5がすべて同一平面に含まれその平面が基準平面P0と非平行になるものでもよい。
【0048】
この振動板100は、外形が上述した正5角形を有するものに限らず、正n角形を有するものであってもよい。
すなわち、この振動板は、外形形状が正n角形(n:4以上の整数)であり、その正n角形を、その中心(重心)G0と各頂点T1〜Tnとを繋ぐ線分によりn分割して得られるn個の3角形TR1〜TRnにおける各範囲内の任意の点TP1〜TPnの位置を、それらの点TP1〜TPnを繋いだ線C2が描く図形の中心O3が、正n角形の中心G0から距離αだけ偏心するように設定すると共に、中心G0及び点TP1〜TPnが、各頂点T1〜Tnを含むことで設定される基準平面P0に対して一面側に突出する頂部として位置する形状を有する振動板である。
【0049】
ここで、点TP1〜TPnを繋いだ線C2は円でなくてもよく、回転対称図形であればよい。
また、各頂点T1〜Tnを含む基準平面P0に対して、主中心G0と頂部TP1〜TPnが一面側に突出していればよく、その基準平面P0に対する各突出量は任意である。
このように、すべての頂部TP0〜TPnが基準平面P0に対して一面側に突出した位置にあるのが好ましいが、頂部TP1〜TPnのみが一面側に突出した位置にあるものでもよい。
また、このような頂部TP1〜TPnと前記各頂点T1〜Tn及び前記主中心G0とを結ぶ線分は、山折りの線である稜線となっている。
【0050】
従って、主中心G0は基準平面P0に対して最も突出していてもよく、頂部TP1〜TPnのいずれかより少なく(低く)突出していてもよい。もちろん、突出量がそれぞれ同じであってもよい。
振動板100は、各頂部TP1〜TPnの基準平面P0に対する突出量が異なる場合において、各頂部TP1〜TPnがすべて同一平面に含まれるものでなくてもよい。この場合、各頂部TP1〜TPnが同一平面に含まれその平面が基準平面P0と非平行であってもよい。
【0051】
上述した振動板100と、この振動板100の外形形状に対応する内周形状を有し外形形状が円形なるエッジ30とを用い、このエッジ30の内周部を振動板100の外周部に連接するように固着すると共にエッジ30の外周部を円形形状の枠を有する汎用のフレームに固着すれば、振動板100がこのエッジ30を介してフレームで振動自在に支持される構成の電気音響変換器(スピーカユニット)を、汎用のフレームや磁気回路を有する駆動部を用いて、容易に、また、コストアップを抑えて製造することができる。
【0052】
また、この振動板100において、ボイスコイルボビン21を、少なくとも各頂部TP1〜TPnに対応する位置に接合するとボイスコイルボビン21の振動をより効率よく振動板100に伝達できるので好ましい。
また、ボイスコイルボビン21を、振動板100の各頂部TP1〜TPnが突出する側と反対側の面に固着するとより広い指向性が得られる。
振動板100とボイスコイルボビン21とをこのように接続した例を、図12に模式的に示す。この図12において、音は、図の矢印のように、広い指向特性を有するように放出される。
この図12は、図11(b)に示す振動板100のB−B断面に対応しており、振動板100における線分T1Gと回転対称図形としての円C2との交点をBC1とし、辺T3T4の中点をBC2としている。
【0053】
ボイスコイルボビン21は、円筒部21aとその一端側に連接して開口側に拡大する接合部21bとを有して形成されている。円筒部21aの他端側の外周面にはボイスコイル22が巻回されている。
接合部21bの先端は、振動板100の各頂部TP1〜TP5を繋ぐ円C2(図11(b)参照)に対応した位置に接着固定されている。
また、ボイスコイルボビン21は、その管軸Obと、振動板100の頂部TP0を通り基準平面P0に直交する軸(すなわち、振動板100の外形形状の中心軸O)とが一致するように固定される。
このボイスコイルボビン21の管軸Obは、駆動部32の中心軸と一致している。
【0054】
この振動板100を用いた電気音響変換器は、その定在波の分布が、中心軸を含む任意の断面においてその軸に対して非対称になり、図6を用いて上述したように周波数−音圧特性におけるディップやピークが平坦化されるという効果が得られる。
【0055】
また、この振動板100を用いた電気音響変換器において、その振動板100は、中心軸Oに対して直交する面がなくいずれの面も傾斜しているので、振動板100の正面である中心軸Oに近い受聴領域が高い音圧で指向性が鋭くなりがちとなる高音域においても、中心軸Oに対してなす角度によって生じる音圧減少分(正面に対する音圧差)が小さくなり、無指向性に近い特性が得られる。
指向特性が無指向性に近い特性を有すると、受聴位置が狭い範囲に限定されない使用環境、例えば、ホール,広い部屋,街頭等での使用において有用であり、また、この電気音響変換器に近い位置で受聴する場合において、受聴位置がずれても音の定位が大きくずれることがなく、自然な定位の移動で受聴できるので大変好ましい。
【0056】
さらに、発明者らの鋭意検討により、この振動板100において、受聴位置による音圧差がより少なく無指向性に近い特性が得られる振動板形状は、基準平面P0に対して主中心G0が最も突出し、突出した主中心G0及び各頂部TP1〜TPnと外形の頂点T1〜Tnが一定曲率の球面に含まれる形状であることを見いだした。
これは、表面形状に細かい凹凸はあるものの、振動板100全体として球面の一部に近い形状となることによる。
そのため、振動板100全体に、音の放出方向となる放射軸が、その球面に直交する方向でより均一に分布する。
【0057】
従って、この形状の振動板100を用いた電気音響変換器は、周波数―音圧特性におけるディップやピークが平坦化されるばかりでなく、振動板の振動方向に対してなす角度の違いによる音圧差が小さくなり、無指向性により近い特性が得られる。
【0058】
ここで、上述した振動板100における外形形状を示す正n角形のnを無限大にすると、振動板100の外形形状は円になると共に、複数の頂部TP1〜TPnは無限大数の頂部となる。
無限大数の頂部は、これが、中心軸Oの周りを連続して周回する線であって、この線を境界として連接する2つの面の曲率または傾斜角度が不連続となる周回線(振動板10の中間径部15に相当)になることを意味する。
すなわち、第1の形態例の振動板10は、第2の形態例の振動板100においてnを無限大にしたものとみることができ、第1及び第2の形態例の振動板10,100は、本発明の技術思想から適用され得る2つの形態であることがこれにより容易に理解される。
【0059】
<実施例>
次に、上述した第1の形態例の振動板10の外形を正5角形とし、これを図13のように展開配置してを複数個接合することにより図14のような略正12面体とした振動板200と、この振動板200を用いた電気音響変換器150と、を実施例として詳述する。
また、この実施例において、振動板として第1の形態例の振動板10の替わりに第2の形態例の振動板100を用いて略正12面体とした振動板201と電気音響変換器とを実施例の変形例として詳述する。
また、振動板200,201は、上述したように平板状の振動板10,100をそれぞれ組み合わせた形態であり、以下の説明においては、この形態を内側が空洞の球の表面に相当する形態とみなし、正12面体の態様も含めて便宜的に球殻状の振動板(球殻振動板)と称することとする。
【0060】
この実施例の電気音響変換器150の外観形態を図14に示す。この電気音響変換器150は、その形態から球体スピーカなどと、また、振動板200の振動態様から呼吸球スピーカなどと称される場合がある。
【0061】
この電気音響変換器150は、略球殻状の振動板200(上述したように、単体の振動板と区別するために、以下、球殻振動板200とも称する)と、この球殻振動板200の内部に配置され球殻振動板200を径方向に駆動する磁気回路234(図示せず)を有する駆動部232(図示せず)と、この駆動部232を支持し球殻振動板200の外側に延出する支持脚103とを有して構成される。
【0062】
詳細は後述するが、磁気回路234は、カップ状のヨーク223と、このヨーク223の底部223aの内面に固定されたマグネット224と、このマグネット224に固定されたポールピース225とにより構成される。
また、駆動部232は、この磁気回路234と、ボイスコイルボビン221とボイスコイル222とにより構成される。
【0063】
ここで、球殻振動板200について図13を用いて説明すると、この球殻振動板200は、上述したように、外形形状を正5角形とした振動板10を11個用意し、各振動板10の辺同士を突き合わせて可撓性のエッジ102により接合して組み合わせ、正12面体の内の11面を形成したものである。
これを言い換えるならば、所定の径を有する球の表面を近似的に正5角形で12分割し、分割した12個の正5角形のうち、11個のそれぞれに振動板10を適用したものである。
従って、振動板200としては、正12面体のうちの1面が無く、そこを開口部としたものである。
以下、この個々の振動板10をセグメント101とも称することとする。
【0064】
図14に戻り、この開口部である12面の内の一面(図14に矢印で示す面)は、振動板10が無い替わりに、支持脚103が挿通する孔が形成されたプレート(図示せず)で塞がれている。
このプレートは、球殻振動板200と可撓性を有するエッジ102を介して接合されている。
また、孔に挿通された支持脚103にもその孔において固定されている。
支持脚103の一端部103aには、図示しない設置用台座が取り付けられ、この電気音響変換器150自体を床面に設置したり、天井から吊り下げて設置することができる。
【0065】
この電気音響変換器150は、球殻振動板200を取り除いた状態を示す図15で明らかなように、個々の振動板10に1つずつ対応した合計11の駆動部232を備えている。
【0066】
次に、個々の振動板10である1個分のセグメント101に対応する駆動部232などの構成について図16を用いて説明する。
この図16は、図3に対して、ハウジング31を削除し、セグメント101である振動板10の端部と隣接する振動板10の端部とをエッジ102を介して接続した状態を示している。また、隣接する振動板10は、その一部を記載している。
【0067】
振動板10には、内径部13の突出する面とは反対側の面に円管状のボイスコイルボビン221の一端部が連結固定されている。
この状態において、動板10の外形の中心軸Oとボイスコイルボビン221の管軸Obとは一致している。
このボイスコイルボビン221の他端部側の外周面には、ボイスコイル222が巻回されている。
このボイスコイル222の外側には、カップ状のヨーク223が、その環状壁部223bの内周面がボイスコイル222の外周面と間隙を有して対向するように配置されている。
また、ボイスコイルボビン221の内側には、その内周面と間隙を有するように、マグネット224に結合された円筒状のポールピース225が配置されている。
また、ヨーク223には、リング状のフレーム235が固定されている。
ボイスコイルボビン221とフレーム235とは、弾性を有する2つのダンパー233により接続され、ボイスコイルボビン221は、このダンパー233により、フレーム235に対して中心軸Oに平行な方向に移動可能なように弾性支持されている。
また、マグネット224はヨーク223の底部223aに固定され、このヨーク223は支持台132の取り付け面部132aに固定されている。
この駆動部232としては、ボイスコイルボビン221の管軸Obを中心軸とする外形を有する振動板を駆動するために用いられるものを、そのまま流用することができる。
【0068】
図17に示すように、支持台132は、基体用フレーム131により略正12面体に組み上げられた基体130の12面の内の11の面にそれぞれに1つずつ合計11個が取り付けられている。
基体130の残りの1面には、図示していないが、上述した支持脚103が固定されている。
また、図16に示すように、支持台132の取り付け面部132aには、上述したようにヨーク223の底面が、正12面体の各面の中心軸O12と駆動部232の中心軸である管軸Obとが一致するように固定されている。
【0069】
従って、この電気音響変換器150は、外形が略正12面体とされた基体130と、その正12面体の内の11面に対応して取り付け面部132aが位置するように基体130に固定された11個の支持台132と、これらの支持台132の取り付け面部132aにそれぞれ固定された11個の駆動部232とを備え、各駆動部232のボイスコイルボビン221を、正5角形の外形形状を有する振動板10を正12面体の11面に対応してその11枚を組み付けて概ね球殻とした球殻振動板200の各振動板10に連結して成るものである。
よって、この電気音響変換器150は、その球殻振動板200が、各振動板10の中心軸Oが複数の駆動部232それぞれのボイスコイルボビン221にその管軸Obと一致するように支持され、正12面体に外接する球の法線方向に振動するように駆動され音声を放出する。
【0070】
これにより、ほぼ全方位に向け、放出する角度の違いで生じる音圧差を極めて少なくして音声を放出することができる。
従って、この電気音響変換器150を、例えばホール等に配置して音声を放出すると、受聴位置によらず臨場感に優れた音場が形成される。
また、この電気音響変換器150に近接した位置で放出された音声を受聴する場合、受聴位置が移動しても、音の定位が極端に移動することなく自然に移動するので良好な臨場感が得られる。
【0071】
個々の振動板として上述した振動板10を用いた場合、振動板10の形状が、外径部14と内径部13とが同軸の中心軸Oを有すると共に中心軸Oから偏心した中心軸O2を有する中間径部15を有すると、中心軸Oに対する対称的な定在波の発生が抑制され、周波数−音圧特性におけるピークやディップを平坦化することができるものである。
また、振動板10の形状が、外径部14と内径部13とが同軸の中心軸Oを有すると共に傾斜部12において中心軸Oに直交する断面形状が中心軸Oから偏心した中心軸O2周りの回転対称形状となる偏心面部を有すると、中心軸Oに対する対称的な定在波の発生が抑制され、周波数−音圧特性におけるピークやディップを平坦化することができるものである。
【0072】
また、個々の振動板として、図10に示したような、振動板10の変形例である振動板10Rを用いれば、その傾斜部外側面12bが球面CFの一部に沿うような曲面を有しているので、球殻振動板200は、外観形状が球により近くなり球体スピーカとしての外観品位が向上する。
【0073】
次に、この実施例の変形例として、振動板10の替わりに振動板100〔図11(b),図18(a)参照〕を用い、11個の振動板100を、エッジ102を介して各辺をつき合わるように接合して略球殻に形成した球殻振動板201の外観を図15(b)に示す。尚この図では支持脚103は省略してある。
【0074】
この図18(a),(b)に示されるように、個々の振動板100の外形は頂点T1〜T5を有する正5角形としてある。
また、図18(a)において、頂部TP1〜TP5を繋ぐ図形C2は円であり、その中心O3は、正5角形の主中心G0に対して頂点T1に向かう方向に距離αだけ偏移している。
また、図18(b)からわかるように、主中心G0及び各頂部TP1〜TP5は各頂点T1〜T5を含んで設定される基準平面P0に対して外側方向に突出し、その突出量は主中心G0が最も大きくなるように形成されている。
また、この振動板100に接合するボイスコイルボビン221は、図12を用いて説明したボイスコイルボビン221であり、振動板100の少なくとも各頂部TP1〜TP5に対応する位置を含んで駆動部232側の面に接着固定されている。
【0075】
この変形例の球殻振動板201を用いると、各振動板100を、外形の中心GOを各頂点T1〜T5を含む基準平面P0に対して一方向側に突出する頂部TP0にすると共に、その中心G0と外形(外径部14)との間に、突出する複数の頂部TP1〜TP5を設けてその頂部TP1〜TP5を繋いで得られる図形C2の中心O3を外径部14の中心G0から偏心させる一方、振動板面を、音の放出方向である基準平面P0に直交する方向に対していずれの面も傾斜するように形成したので、周波数―音圧特性におけるディップやピークが平坦化されるばかりでなく、中心G0を通り基準平面P0に直交する軸(振動板100の中心軸)に対してなす角度の違いによる音圧差が小さくなり、更に無指向性に近い特性が得られる。
【0076】
さらに振動板100の形状を、その振動板100の説明で詳しく述べたように、基準平面P0に対して中心G0を最も突出させ、突出する中心G0と複数の頂部TP1〜TP5と外形の各頂点T1〜T5とが一定曲率の球面に含まれるように形成すると、振動板100の中心軸Oに対してなす角度の違いによる音圧差が小さくなり無指向性を得たい場合に好ましい。
【0077】
加えて、この一定曲率をこの球殻振動板201の表面の曲率と一致させれば、球殻振動板201の全体形状がより真球に近くなるので、各振動板100の中心軸Oに対してなす角度の違いによる音圧差がさらに小さく、指向特性がより滑らかになるので、球殻振動板201としての指向特性が更に無指向性に近づくという効果が得られてより好ましい。
【0078】
上述した振動板10,10Rあるいは振動板100を用いてそれぞれ球殻振動板200,201を形成する場合、各振動板10,100の偏心方向を所定の方向に設定すると、この電気音響変換器150を例えば床面に設置した場合、それに対する聴取位置が特に緯度方向(天地方向)に変化した場合の音圧変動がより少なくなるので好ましい。この偏心方向について、図19を用いて説明する。
【0079】
図19は、この電気音響変換器150を、支持脚103を取り付けた底面10Bのプレートに対向する天面にある振動板を振動板10Tとし、これを床面FLに平行になるように設置した状態を示す正面図である。これは設置の一例である。この図19における振動板は、第1実施例の振動板10を用いた球殻振動板200である。
この状態で、天面の振動板10Tに連接する5つの振動板10−1〜10−5と底面10Bのプレートに連接する5つ振動板10−6〜10−10とが接合された辺は、球殻振動板200を図19の上下で2分する境界の接合部であり、ジグザグ状の線EQとなる。この線EQを図19では太い破線で示している。
【0080】
この球殻振動板200を地球と見なして、以下、この線EQを赤道EQと、また、赤道EQより天面側を北半球、底面側を南半球とも称することとする。
振動板10,100の好ましい偏心方向は、北半球の振動板10−1〜10−5及び南半球の振動板10−6〜10−10共、赤道EQ上の頂点に向かう方向である。
このように偏心方向を設定すると、聴取位置が緯度方向(図19においては上下方向)に変化した場合の音圧変動が少なくなって好ましい。
【0081】
さらに、北半球の振動板10−1〜10−5の偏心方向と南半球の振動板106〜10−10偏心方向とを、図19のように周方向で逆向きにするとより好ましい。
具体的には、当図19に矢印で示すように、天面からみたときに、北半球の振動板10−1〜10−5は右回り方向に赤道EQ上の頂点に向かって偏心し、南半球の振動板10−6〜10−10は左回り方向に線EQ上の頂点に向かって偏心させるとよい。この右回り、左回りはそれぞれ逆にしてもよい。
このように、球殻振動板200を2分する接合部である線EQで接続される両側の振動板を、互いに異なる周方向に偏心させた場合には、聴取位置が緯度方向に変化した場合の音圧変動が平均化され、その変動が更に小さくなる。
【0082】
この線EQは、床面FLに平行に設定されるものに限らない。受聴位置に応じ、適宜その線EQの方向を、受聴位置において最適な指向特性となるような向きに設定することができる。
また、支持脚103も、任意の方向に延出させてよいので、この支持脚103の延出方向は線EQの設定方向を拘束するものではない。
【0083】
一方、受聴位置が想定される場合には、天面の振動板10Tの偏心方向は、その受聴位置に近づく方向として設定されるのが好ましい。このようにすると、受聴位置がその位置で上下に移動した際の音圧変動がより少なくなる。
【0084】
ところで、エッジ102が特に柔らかい材料で形成されている場合や、球殻振動板200,201が比較的大きい場合には、球殻振動板200,201自体の重量によりその形状が歪まないように、図16に二点鎖線で示すように、エッジ102と基体130との間を支持体236で連結してもよい。
この支持体236は、球殻振動板200,201をボイスコイルボビン221に加えて補助的に支持し、その振動板の形状が変形しないような、かつ、その振動に影響を及ぼさないような弾性を有する材料で形成される。
【0085】
<製造工程>
次に実施例の電気音響変換器150を製造する工程について図13を主に用いて説明する。
この例では、複数の振動板10を組み合わせて形成した略正12面体の球殻振動板200を有する例について説明するが、振動板10の替わりに振動板10R,100を用いても同様に製造することができる。
【0086】
(工程1)まず、平板状あるいはシート状の振動板材料に対してプレス加工や絞り加工等を施し個々のセグメント101に対応する振動板10を作成する。この振動板材料としては、上述したように紙や,金属製,樹脂製,セラミックス製あるいは木製のシートなどを使用することができる。各シートは1種または複数種のシートが積層されたものでもよい。
【0087】
(工程2)次いで、11枚のセグメント101を図13に示すように平面上に展開配置し、この状態で接合可能な個々のセグメント101の各辺を突き合わせ、それぞれ可撓性のエッジ102を介して接合する。エッジには例えばゴム材や樹脂材を、また、接合には周知の接着剤を用いることができる。
【0088】
この例では、中心となる1つのセグメント101−Cを中心に、その各辺に対して連続して2個のセグメント101を接合するところまで行う。
具体的に説明すると、図13において、中心となる1つのセグメント101−Cに隣接する5つのセグメント101−1〜101−5を接合し、さらにセグメント101−1〜101−5それぞれにセグメント101−6〜101−10を接合する。
この接合形態においては、セグメント101−Cから離れた2つの辺(図13において縞模様で示す)が線EQとなる。
【0089】
また、平面上に展開する際に、各セグメント101の中間径部15の偏心方向が、上述したように、組み合わせ後の線EQ上の頂点に向かうよう(図13の矢印方向)各セグメント101を配置する。
この図13の配置を図19に対応させると、例えば、セグメント101−Cが天面の振動板10Tとなり、セグメント101−1〜101−5が北半球側の振動板10−1〜10−5、セグメント101−6〜101−10が南半球側の振動板10―6〜10−10となる。
【0090】
(工程3)一方、図17に示すように、基体用フレーム131を組み合わせて予め略正12面体形状に形成した基体130の11面のそれぞれに支持台132を固定する。
そして、この支持台132の取り付け面部132aに、ヨーク223の底面223aを接着剤等により固定する。ヨーク223には予めポールピース225が固着されたマグネット224等を取り付けて駆動部232を形成しておく。
【0091】
(工程4)ボイスコイル222が巻回されたボイスコイルボビン221などの可動部を、ヨーク223及びマグネット224などの固定部に、両者が図16に示すような所定の対向位置となるよう位置合わせし、ダンパー233を介して取り付ける。この取り付けにおける接合も接着剤を用いて行うことができる。
この組み立て後の組立体202を図15に示す。
【0092】
(工程5)次に、(工程2)で部分的に接合した11個のセグメント101を、11個の駆動部232が取り付けられた組立体202に被せる。
その際、各セグメント101が(工程4)で取り付けた各ボイスコイルボビン221と対応するように被せる。
そして、各セグメント101の内側の面にボイスコイルボビン221の端部を、各セグメント101の中心軸Oがボイスコイルボビン221の管軸Obと一致するように接着剤により固着する。
【0093】
(工程6)この状態で、各セグメント101における工程(2)において接合しなかった辺は、自ずとほぼ互いに突き合わされるように位置するので、これらを可撓性のエッジ部102を介して接着剤を用いて接合し、略球殻状の球殻振動板200とする。
【0094】
(工程7)基体130に支持脚103を固定し、球殻振動板200の開口部を塞ぐプレートをその開口部に配置し、球殻振動板200及び支持脚103と接合する。支持脚103と基体130との取り付けは最後に限らず、他の任意の工程間に予め実行しておいてよい。
以上の工程により電気音響変換器150が製造される。
【0095】
この製造工程によれば、(工程2)において、個々のセグメント101を平面上に展開した状態で接合可能なセグメント101の各辺をあらかじめ接合しておき、その後の(工程5)において未接合とした各辺同士を接合するので、セグメント101を球殻状に組み立てる際の相対向する各部の位置合わせが簡略化され、容易に球殻振動板200を組み立てることができる。
【0096】
また、各セグメント101は、その外形形状である多角形の中心軸Oと、駆動部232の駆動の中心軸(ボイスコイルボビン221の管軸)Obとが一致しているので、中心軸O回りに回転対称な形状を有する汎用の駆動部232を利用することができる。また、組み立て作業における可動部側と固定部側の位置合わせも簡単に精度良く行うことができる。
【0097】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形してもよいものである。
例えば、外形形状を正n角形とした振動板100を用いて球殻振動板201を形成する場合、nが4,5の場合には各辺同士の長さや向きが適合してほぼ隙間なく正多面体に連結できる。
また、nが6以上の場合には、正多面体が構成できないので球殻状に形成する場合には互いに隙間を生じるが、この隙間を、可撓性を有する連結部材で塞いで互いを連結し略球殻状の球殻振動板とすることができる。
各振動板10,10R,100同士を連結する連結部材であるエッジ102は、各振動板100,10R,100に対して接着剤を用いて接合されるが、エッジ102を用いるものに限らず、接着剤を介して振動板100,10R,100同士を接合してもよい。この場合、この接着剤が連結部材となることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0098】
10,10R,100 振動板
11 中心部
12 傾斜部
12a 傾斜部内側面
12b 傾斜部外側面
13 内径部
14 外径部
15 中間径部
21,221 ボイスコイルボビン
21a 円筒部
21b 接合部
22,222 ボイスコイル
22a リード線
23,223 ヨーク
23a 底部
23b 環状壁部
24,224 マグネット
25,225 ポールピース
30 エッジ
31 ハウジング
31a 孔
31b 環状枠
32,232 駆動部
33 ダンパー
34,234 磁気回路
50,150 電気音響変換器
200,201 球殻振動板
10a,100a 振動板
101 セグメント
102 エッジ
103 支持脚
130 基体
131 基体用フレーム
132 支持台
132a 取り付け面部
202 組立体
235 フレーム
236 支持体
D1〜D3 直径
FL 床面
G0 主中心(中心)
G1〜Gn 重心
α (偏心の)距離
O3 中心
O4 曲率中心
O,O2,O5,O12 中心軸
Ob (ボイスコイルボビンの)管軸
P0 基準平面蛆
P13 内径部を含む平面
T1〜Tn 頂点
TP1〜TPn 頂部
R,R1 曲率
α 距離(偏心量)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の径の円に内接する正n角形(n:4以上の整数)形状の外形部を有する複数の振動板の前記外形部同士が連結された略球殻形状を有する球殻振動板であって、
前記複数の振動板それぞれは、
前記外形部を含んでなる平面への投影形状が前記一の径の中心軸回りに回転対称な形状を有し前記平面に対して外側に突出した内形部と、
前記外形部と前記内形部とを連結し、前記中心軸に対して傾斜した傾斜面を有する振動面部と、を備え、
前記振動面部は、前記中心軸に直交するいずれかの断面において、前記中心軸に対して偏心した偏心軸回りに回転対称な形状を有しており、
当該球殻振動板を、前記外形部に沿って2つの部分に分離する分割線であって、前記分割線に沿う外形部を有する前記振動板の数を前記2つの部分で等しくする分割線を設定した際に、該分割線に沿う外形部を有する前記振動板の前記偏心軸が、前記分割線に沿う前記外形部の前記分割線上の頂点に向かう方向に偏心して成ることを特徴とする球殻振動板。
【請求項2】
一の径の円に内接する正n角形(n:4以上の整数)形状の外形部を有する複数の振動板の前記外形部同士が連結された略球殻形状を有する球殻振動板であって、
前記複数の振動板それぞれは、
前記外形部を含んでなる平面への投影形状が前記一の径の中心軸回りに回転対称な形状を有し前記平面に対して外側に突出した内形部と、
前記外形部と前記内形部とを連結し、前記中心軸に対して傾斜した傾斜面を有する振動面部と、を備え、
前記振動面部は、前記中心軸に対して偏心した偏心軸回りに回転対称な形状の周回線を有し、該周回線を挟む前記偏心軸側の面及び前記外形部側の面の曲率又は傾斜角度が前記周回線において不連続とされており、
当該球殻振動板を、前記外形部に沿って2つの部分に分離する分割線であって、前記分割線に沿う外形部を有する前記振動板の数を前記2つの部分で等しくする分割線を設定した際に、該分割線に沿う外形部を有する前記振動板の前記偏心軸が、前記分割線に沿う前記外形部の前記分割線上の頂点に向かう方向に偏心して成ることを特徴とする球殻振動板。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記平面に対して他面側に向けて凹む方向の曲率を有して形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の球殻振動板。
【請求項4】
前記複数の振動板のうちのいずれかが開口部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の球殻振動板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の球殻振動板を用いた電気音響変換器。
【請求項6】
前記複数の振動板が前記正12面体の内の11面に対応するよう連結された請求項5記載の球殻振動板を用いた電気音響変換器。
【請求項7】
請求項5又は請求項6記載の電気音響変換器であって、
前記複数の振動板それぞれの内側面に接続された複数のボイスコイルボビンと、
前記複数のボイスコイルボビンそれぞれを有して各前記複数の振動板を振動させる複数の駆動部と、を備えた電気音響変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−41331(P2011−41331A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261722(P2010−261722)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【分割の表示】特願2005−378002(P2005−378002)の分割
【原出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】