球状ヒドロキシアパタイト及びその製造方法
【課題】従来の製造方法よりも容易に、大量かつ微細な球状ヒドロキシアパタイトを製造する方法を提供すること。
【解決手段】水溶性有機溶媒と水との混合溶液に、ピロリン酸カリウム(K4P2O4)を添加すると特異な相分離が起こり、これを撹拌してW/Oエマルジョン状態とし、水溶性カルシウム塩の水溶液を添加する。水相に含まれるリン酸水素イオンとカルシウムが反応し、ピロリン酸塩の前駆体粒子が形成されるので、この前駆体粒子(球状粒子)をpH13以上16以下、かつ、110℃以上300℃以下で水熱処理することにより、球状ヒドロキシアパタイトへと転位させることができる。
【解決手段】水溶性有機溶媒と水との混合溶液に、ピロリン酸カリウム(K4P2O4)を添加すると特異な相分離が起こり、これを撹拌してW/Oエマルジョン状態とし、水溶性カルシウム塩の水溶液を添加する。水相に含まれるリン酸水素イオンとカルシウムが反応し、ピロリン酸塩の前駆体粒子が形成されるので、この前駆体粒子(球状粒子)をpH13以上16以下、かつ、110℃以上300℃以下で水熱処理することにより、球状ヒドロキシアパタイトへと転位させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な粒子径の球状ヒドロキシアパタイトを、簡易に製造するための製造方法に関する。また、本発明は、その様な製造方法によって製造される塩基性タンパク質を特異的に吸着する球状ヒドロキシアパタイトに関する。
【背景技術】
【0002】
生体活性をもつヒドロキシアパタイトは、通常板状結晶の微粒子として合成される。この板状結晶ヒドロキシアパタイトは、カラム充填剤として使用すると目詰まりを起こしやすく、実用性に欠ける。一方、球状のヒドロキシアパタイトでは、このような目詰まりを起こしにくいため、タンパク質の分離精製等への応用が期待されている。
【0003】
球状ヒドロキシアパタイトの製造方法としては、板状結晶のヒドロキシアパタイトを懸濁したスラリーを噴霧熱分解して球状とする方法(例えば、非特許文献1)が一般的である。また、より省プロセスの球状ヒドロキシアパタイトの製造方法としては、W/O又はW/O/Wエマルジョンを利用した乳化液膜系合成法(例えば、非特許文献2)も知られている。
【0004】
それら以外の製造方法としては、例えば、水に難溶性の有機溶媒に酸を主成分とする液剤を分散させた後、自己硬化型リン酸カルシウム粉体を混合、分散させることを特徴とするリン酸カルシウム系球状アパタイトの製造方法が、特許文献1に開示されている。
【0005】
また、0.001〜0.1mol/LのCa2+、PO43-、及びカルボン酸アミドを含む酸性の第一水溶液に、カルボン酸アミドを加水分解する酵素と、第一水溶液中の成分との反応又は外部からのエネルギー付与に伴いゲル化しうる高分子(例えば、アルギン酸塩やアルキルセルロース誘導体の塩)を溶解した第二水溶液からなる滴を加え、有機高分子をゲル化させることを特徴とする中空の球状リン酸カルシウムの製造方法が、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−97202号公報
【特許文献2】特開2004−275118号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】荻原隆他,「超音波噴霧熱分解法による球状リン酸カルシウム粒子の合成とその焼結性」,粉体工学会誌,第32号,624-628(1995)
【非特許文献2】T.S.Pradeesh他,「Preparation of microstructured hydroxyapatitemicrospheres using oil in water emulsions」,Bulletin of Materials Science, Volume 28, 383-390 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献1や非特許文献2に開示されている球状ヒドロキシアパタイトの製造方法では、手順が複雑であったり不純物が多く含まれているという問題があった。また、特許文献1に開示されているリン酸カルシウム系球状アパタイトの製造方法では、50%平均粒径が1-2μm程度であり、特許文献2に開示されている製造方法によって得られる球状リン酸カルシウムも、直径が約20-500mmである。
【0009】
球状ヒドロキシアパタイトは、タンパク質分離の目的でカラム充填材としても利用することが期待されるが、カラム充填材として最適な粒子径は、直径5〜20μm程度とされている。このため、従来の球状ヒドロキシアパタイトムでは粒子径不適で、カラム充填材には適しない。
【0010】
本発明は、従来の製造方法よりも大量かつ容易に、微細な球状ヒドロキシアパタイトを製造するための製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、エタノール、アセトン等の水溶性有機溶媒と水との混合溶液に、K4P2O7(2リン酸カリウム、ピロリン酸カリウム又は2リン酸4カリウムと呼ばれる)という組成を持つピロリン酸塩を添加すると特異な相分離が起こり、これを撹拌するとW/Oエマルジョン状態となることを見出した。そして、このW/Oエマルジョンに塩化カルシウム等の水溶性カルシウム塩の水溶液を添加すると、水相に含まれるリン酸水素イオンとカルシウムが反応し、リン酸水素カルシウム球状粒子が形成されることを見出した。その後、混合溶液を加熱処理することにより、リン酸水素カルシウム球状粒子をヒドロキシアパタイトへと変換させることができることも見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
具体的に、本発明は、
水溶性有機溶媒と水との混合溶媒にK4P2O7を添加するリン添加工程と、
前記リン添加工程後の混合溶媒に、水溶性カルシウム塩の水溶液を撹拌しながら添加するカルシウム添加工程と、
前記カルシウム添加工程後の混合溶媒を加温しながら静置し、ピロリン酸塩(K2CaP2O7)の前駆体粒子を形成させる微粒子化工程と、
前記前駆体粒子をpH13以上16以下、かつ、110℃以上300℃以下で水熱処理する水熱工程と、
を有する球状ヒドロキシアパタイトの製造方法に関する。
【0013】
水溶性有機溶媒と水との混合溶媒にピロリン酸カリウムを添加すると、上相が有機溶媒相、下相がピロリン酸カリウムを含む水相に相分離する。この二相を撹拌するとW/Oエマルジョンとなる。そこに水溶性カルシウム塩を水溶液として添加(滴下)すると、半液滴状粒子(50%平均粒径約20μm〜50μm)が生成する。
【0014】
この半液滴状粒子は、一定時間以上静置することによって結晶化が促進され、ピロリン鉱型の結晶構造を有するピロリン酸塩(K2CaP2O7)の比較的均一な球状粒子(前駆体粒子)へと変化する。前駆体粒子の50%平均粒径は、約5μm〜15μmである。なお、静置時間は、室温では24時間以上とすることが好ましいが、加温することによって時間を短縮することが可能である。
【0015】
前駆体粒子は、pH13以上16以下、かつ、110℃以上300℃以下で水熱処理することにより、球状粒子の形態を維持したままピロリン酸塩(K2CaP2O7)がヒドロキシアパタイトへと転位し、タンパク質吸着能を示す球状ヒドロキシアパタイトとなる。球状ヒドロキシアパタイトの50%平均粒径は、5μm〜15μmである。なお、十分にヒドロキシアパタイトへと転位し、かつ、球状粒子の形態を維持させるために、水熱時間は8時間以上とすることが好ましい。
【0016】
前記水溶性有機溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール(1-プロパノール及び2-プロパノール)、アセトン又はテトラヒドロフラン(THF)から選択される1種又は2種以上が好ましく、前記水溶性カルシウム塩としては塩化カルシウムが好ましい。
【0017】
前記リン添加工程における混合溶媒中の水溶性有機溶媒濃度は、30重量%以上90重量%以下であることが好ましいく、40重量%以上80重量%以下であることがより好ましい。
【0018】
半液滴状粒子が結晶化及び微細化(分裂)して生成するピロリン酸塩(K2CaP2O7)の前駆体粒子は、混合溶媒における水溶性有機溶媒の濃度によって粒子径が変化する。混合溶媒中の水溶性有機溶媒濃度が30重量%未満では半液滴状粒子が前駆体粒子へと自己組織的に分裂しないか、分裂に非常に長時間要するために好ましくない。混合溶媒中の水溶性有機溶媒濃度が高いほど、球状微粒子の粒子径が小さくなるが、90重量%を超えると混合溶媒にK4P2O7を添加しても相分離が起こらなくなるために好ましくない。
【0019】
前記リン添加工程におけるK4P2O7の添加量は、前記混合溶媒に対して5重量%以上30重量%以下であることが好ましく、10重量%以上25重量%以下であることがより好ましい。
【0020】
K4P2O7の添加量が前記混合溶媒に対して5重量%未満では、水相と有機溶媒相との相分離が起こりにくく、一方、30重量%を超えると球形化しにくいという問題が生じる。
【0021】
前記カルシウム添加工程における水溶性カルシウム塩の添加量は、前記リン添加工程後の混合溶媒に対して3重量%以上30重量%以下であることが好ましい。
【0022】
塩化カルシウム等の水溶性カルシウム塩は、水溶液として前記リン添加工程後の混合溶媒に添加するが、混合溶媒に対する添加量が、カルシウム塩として5重量%未満ではイオン交換反応が不十分であり、一方、30重量%を超えると球形化しにくいという問題がある。
【0023】
本発明の製造方法によって製造される球状ヒドロキシアパタイトは、酸性タンパク質は吸着せず、塩基性タンパク質を特異的に吸着するという特徴を有している。
【発明の効果】
【0024】
本発明の製造方法によれば、実験室レベルの簡易な設備によっても、均質で粒子径の小さな球状ヒドロキシアパタイトを容易に製造することができる。また、製造設備を拡大させれば球状ヒドロキシアパタイトの大量製造も容易に実現しうる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の球状ヒドロキシアパタイトの製造方法の概略フローチャートである。
【図2】実施例1のリン添加工程におけるエタノール水溶液の相分離を表す写真である。
【図3】実施例1のカルシウム添加工程において形成された、液滴状粒子を表す顕微鏡写真である。
【図4】実施例1の微粒子化工程における半液滴状粒子の変化を表す写真であり、(a)は静置直後、(b)は静置1時間後、(c)は静置2時間後の写真である。
【図5】実施例1の水熱処理前後の球状粒子の顕微鏡写真であり、(a)は水熱処理前、(b)は水熱処理後である。
【図6】実施例1の水熱工程前における球状粒子のX線回析結果を示すグラフである。
【図7】実施例1の水熱工程後における球状粒子のX線回析結果を示すグラフである。
【図8】前駆体粒子の拡大顕微鏡写真である。
【図9】実施例1の球状ヒドロキシアパタイト粒子の拡大顕微鏡写真である。
【図10】実施例6の球状ヒドロキシアパタイト粒子の拡大顕微鏡写真である。
【図11】実施例7の球状ヒドロキシアパタイト粒子の拡大顕微鏡写真である。
【図12】比較例2の針状結晶の拡大顕微鏡写真である。
【図13】実施例1の球状ヒドロキシアパタイト粒子のアルブミン吸着試験の結果を示すグラフである。
【図14】実施例1の球状ヒドロキシアパタイト粒子リゾチーム吸着試験の結果を示すグラフである。
【図15】アパタイトの結晶構造の概念図である。
【図16】比較例6で得られたピロリン酸塩と推察される粒子の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に限定されない。
【0027】
本発明の球状ヒドロキシアパタイトの製造方法の概略フローチャートを、図1に示す。
本発明では、まず、ステップS1として、水溶性有機溶媒と水との混合溶媒にK4P2O7を添加する(リン添加工程)。水溶性有機溶媒としては、水に対する溶解度が大きい溶媒であれば足りるが、メタノール、エタノール、プロパノール(1-プロパノール及び2-プロパノール)、アセトン又はテトラヒドロフランから選択される1種又は2種以上であることが好ましい。水溶性有機溶媒としては、エタノールが最も好ましい。
【0028】
混合溶媒中の水溶性有機溶媒濃度は、30重量%以上90重量%以下とすることが好ましく、40重量%以上80重量%以下とすることがより好ましい。エタノールの場合には、40重量%以上60重量%以下とすることが好ましい。
【0029】
K4P2O7は、混合溶媒に対して、固形分として5重量%以上30重量%以下の割合で添加することが好ましいが、固形の場合には微粉末、水溶液の場合には50重量%以上とすることが好ましい。
【0030】
混合溶媒にK4P2O7を添加して混合すると、上相が水溶性有機溶媒、下相がK4P2O7を含む水溶液の二相に相分離する。この現象は、リン酸二水素カリウムやリン酸水素ナトリウム等の他のリン酸塩では見られない、K4P2O7に特異的なものである。
【0031】
相分離した混合溶液は、スターラー等を用いて撹拌すると、W/O型エマルジョンとなる。そこで、ステップS2として、混合溶液を撹拌してW/O型エマルジョンとしながら、水溶性カルシウム塩の水溶液を添加する(カルシウム添加工程)。水溶性カルシウム塩としては、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム等を使用することが好ましく、リン添加工程後の混合溶媒に対して、水溶性カルシウム塩として3重量%以上30重量%以下、より好ましくは5重量%以上20重量%以下の割合となるように添加することが好ましい。
【0032】
水溶性カルシウム塩の水溶液を添加すると、W/O型エマルジョン内の水粒子において、ピロリン酸イオンとカルシウムイオンが反応し、半液滴状粒子(50%平均粒径約20μm〜50μm)が生成する。この半液滴状粒子は室温においても生成される。
【0033】
次に、ステップS3として、カルシウム添加工程後の混合溶媒を加温しながら静置し、ピロリン酸塩の前駆体粒子を形成させる(微粒子化工程)。カルシウム添加工程で生じた半液滴状粒子の化学的組成は不明であるが、この半液滴状粒子をそのまま水熱処理しても、球状ヒドロキシアパタイトを製造することは不可能である。
【0034】
しかし、一定時間以上静置することによって結晶化が促進され、ピロリン酸塩(K2CaP2O7)の比較的均一な球状の前駆体粒子(50%平均粒径約5μm〜15μm)へと変化する。半液滴状粒子から前駆体粒子への変化は室温でも起こりうるが、50℃〜70℃程度に反応溶液を加温することによって、反応時間を短縮することも可能である。静置時間は、室温では24時間以上、60℃では2時間以上とすることが好ましい。
【0035】
最後に、ステップS4として、前駆体粒子をpH13以上16以下、かつ、110℃以上300℃以下で加熱処理する(水熱工程)。微粒子化工程が終了した後、球状の固体である前駆体粒子をろ過などによって回収し、精製水などを用いて洗浄する。洗浄後、前駆体粒子をpH13以上16以下の強アルカリ性水溶液中に懸濁させ、静置した状態で110℃以上300℃以下に加熱処理する。
【0036】
pH13以上16以下の強アルカリ性水溶液中で加熱処理することによって、球状の形態を維持したまま、前駆体粒子を構成するピロリン酸塩がヒドロキシアパタイトへ転位する。その結果、50%平均粒径約2μm〜15μmの球状ヒドロキシアパタイトが得られる。
【0037】
ここで、pHが13未満では、水熱処理中に前駆体粒子が崩壊し、その後不定形のヒドロキシアパタイトへと転位することが確認されている。一方、pH13以上16以下であれば、前駆体粒子が崩壊せず、ほぼ球状の形態のヒドロキシアパタイトが得られることが確認さている。
【0038】
水熱処理は110℃以上300℃以下とすることが好ましい。110℃未満ではヒドロキシアパタイトへ転位せず、300℃超ではヒドロキシアパタイト粒子が結合して、微細な球状粒子という形態を維持できなくなるためである。また、加熱処理時間は、8時間以上24時間以下とすることが好ましい。
【0039】
なお、水熱工程において反応溶液を撹拌又は振盪すると、均質で微細な球状粒子は得られないことが確認されている。このため、水熱工程では、反応溶液を必ず静置することが重要である。
【0040】
また、後述するように、水熱工程後に得られるヒドロキシアパタイトの球状粒子の粒径は、リン添加工程における混合溶液中の水溶性有機溶媒濃度が高いほど、小さくなる傾向が認められた。
【0041】
[実施例1]
(リン添加工程)
60重量%のエタノール水溶液20mLをビーカーに採取し、ピロリン酸カリウム(JIS特級)5gを添加し、マグネティックスターラーを用いてゆっくりと撹拌した。撹拌を停止したときのエタノール水溶液は、図2に示すように、上相がエタノール相、下相がピロリン酸カリウムを含む水相に相分離した。
【0042】
(カルシウム添加工程)
次に、相分離したビーカー内の混合溶液を、マグネティックスターラーを用いて撹拌し、W/O型エマルジョンとなった状態で、20重量%の塩化カルシウム水溶液5mLを滴下した。滴下終了後、5分間撹拌を続けた。撹拌終了後、ビーカー底部には、半液滴状粒子(50%平均粒径約40μm)が沈殿した。半液滴状粒子の顕微鏡写真を、図3に示す。
【0043】
(微粒子化工程)
次に、ビーカーを60℃の水浴に移し、混合溶液を2時間加温した。その結果、半液滴状粒子は、50%平均粒径約5μmの微粒子(前駆体粒子)へと変化した。実施例1の微細化工程における半液滴状粒子の変化を、図4(a)〜図4(c)に示す。
【0044】
(水熱工程)
ビーカー内の前駆体粒子をろ過によって回収し、精製水を用いて数回洗浄した。その後、テフロン(登録商標)容器内に約1gを採取し、水酸化ナトリウム水溶液(pH15)25mLを加えた。そして、オートクレーブ内に容器を移し、静置した状態で、150℃で24時間加熱することにより、水熱処理した。水熱処理前後の球状粒子の顕微鏡写真を、図5(a)及び図5(b)に示す。
【0045】
<X線回析による同定>
水熱工程前の球状粒子(前駆体粒子)についてX線回析を行った結果を、図6に示す。水熱処理前の前駆体粒子は、市販アパタイト(HAP)の回析パターンとは一致せず、ピロリン酸塩(K2CaP2O7)の回析パターンと一致した。このX線解析の結果から、前駆体粒子は、K2CaP2O7であることが確認された。
【0046】
一方、水熱工程後の球状粒子についてX線回析を行った結果を、図7に示す。水熱処理後の球状粒子は、市販アパタイト(HAP)の回析パターンとは一致したため、ヒドロキシアパタイトであることが確認された。
【0047】
<顕微鏡観察による形態の確認>
前駆体粒子及び実施例1の球状ヒドロキシアパタイト粒子の拡大顕微鏡写真を、それぞれ図8及び図9に示す。実施例1の球状ヒドロキシアパタイトは、前駆体粒子と同様に、50%平均粒径約5μmの均質な球状であることが確認された。
【0048】
[実施例2]
リン添加工程において30重量%のエタノール水溶液を使用したこと以外、すべて実施例1と同様にして球状ヒドロキシアパタイトを製造した。実施例2の球状ヒドロキシアパタイトの50%平均粒径は、14.3μmであった。
【0049】
[実施例3]
リン添加工程において40重量%のエタノール水溶液を使用したこと以外、すべて実施例1と同様にして球状ヒドロキシアパタイトを製造した。実施例3の球状ヒドロキシアパタイトの50%平均粒径は、9.4μmであった。
【0050】
[実施例4]
リン添加工程において80重量%のエタノール水溶液を使用したこと以外、すべて実施例1と同様にして球状ヒドロキシアパタイトを製造した。実施例4の球状ヒドロキシアパタイトの50%平均粒径は、2.2μmであった。
【0051】
[実施例5]
リン添加工程において90重量%のエタノール水溶液を使用したこと以外、すべて実施例1と同様にして球状ヒドロキシアパタイトを製造した。実施例5の球状ヒドロキシアパタイトの50%平均粒径は、1.9μmであった。
【0052】
このように、実施例1〜実施例5において、リン添加工程におけるエタノール水溶液の濃度が高くなるほど、形成されるヒドロキシアパタイト粒子の平均粒子径が小さくなる傾向が認められた。
【0053】
[実施例6]
水熱工程において、強アルカリ性水溶液として0.1N 水酸化ナトリウム水溶液(pH13)25mLを使用すること以外、すべて実施例1と同様にして球状ヒドロキシアパタイトを製造した。実施例6の球状ヒドロキシアパタイトの50%平均粒径は5μmであった。
【0054】
[実施例7]
水熱工程において、強アルカリ性水溶液として水酸化カリウム水溶液(pH15)25mLを使用すること以外、すべて実施例1と同様にして球状ヒドロキシアパタイトを製造した。実施例6の球状ヒドロキシアパタイトの50%平均粒径は5μmであった。
【0055】
なお、実施例6及び実施例7の球状ヒドロキシアパタイト粒子の拡大顕微鏡写真を、それぞれ図10及び図11に示す。
【0056】
[比較例1]
本発明の比較例1として、水熱工程を105℃で24時間とした以外、すべて実施例1と同様の操作を行った。その結果、実施例1と同様の球状粒子が得られたが、X線回析の結果、市販アパタイトとは回析パターンが一致せず、ピロリン鉱型リン酸カルシウム塩(K2CaP2O7)からヒドロキシアパタイトへの転位が起こっていないことが確認された。
【0057】
[比較例2]
本発明の比較例2として、水熱工程において、アルカリ性水溶液として0.01N 水酸化ナトリウム水溶液(pH12)25mLを使用すること以外、すべて実施例1と同様の操作を行った。しかし、水熱工程後の沈殿物を回収したところ、球状ヒドロキシアパタイトは確認されず、針状の結晶が得られた。この針状結晶の拡大顕微鏡写真を、図12に示す。
【0058】
また、この針状結晶についてX線回析を行ったところ、市販ヒドロキシアパタイトと回析パターンが一致したことから、ヒドロキシアパタイトであることは確認できた。
水熱工程を105℃で24時間とした以外、すべて実施例1と同様の操作を行った。その結果、実施例1と同様の球状粒子が得られたが、X線回析の結果、市販アパタイトとは回析パターンが一致せず、ピロリン鉱型リン酸カルシウム塩(K2CaP2O7)からヒドロキシアパタイトへの転位が起こっていないことが確認された。
【0059】
[比較例3]
本発明の比較例3として、水熱工程において、アルカリ性水溶液として水酸化ナトリウム水溶液(pH8)25mLを使用すること以外、すべて実施例1と同様の操作を行った。しかし、水熱工程後の沈殿物を回収したところ、球状ヒドロキシアパタイトは確認されず、不定形の結晶が得られた。
【0060】
<タンパク質吸着試験>
次に、本発明の製造方法によって得られた球状ヒドロキシアパタイトについて、タンパク質吸着能の有無について確認した。まず、実施例1の球状ヒドロキシアパタイトは、ろ過によって回収した後、精製水を用いて洗浄し、120℃で乾燥させた。
【0061】
酸性タンパク質であるアルブミンを精製水に溶解させ、100ppm水溶液を調製した。この100ppm水溶液10gを容量15mLの遠心管に採り、実施例1の球状ヒドロキシアパタイト0.1gを添加し、よく撹拌した後、室温で2時間静置した。
【0062】
その後、遠心管を4000rpmで10分間遠心分離し、上清を採取した。この上清について、分光光度計を用いて280nmの吸光度を測定し、アルブミン吸着量を計算した。塩基性タンパク質であるリゾチームについても、アルブミンと同様にして吸光度を測定した。一方、比較対照物質として、市販アパタイト(板状結晶)についても同様の操作を行った。また、比較例3で得られた針状の結晶と、市販アパタイトについても実施例1と同様の操作を行ない、リゾチーム吸着量を計算した。
【0063】
実施例1及び比較例3とアルブミン吸着試験の結果を、図13に示す。グラフは左から市販アパタイト、比較例3、実施例1の順である。市販アパタイトは酸性タンパク質であるアルブミンを吸着したが、実施例1の球状ヒドロキシアパタイト及び比較例の針状の結晶は、アルブミンをほとんど吸着しないことが確認された。
【0064】
すなわち、市販アパタイトは酸性タンパク質であるアルブミン吸着能を有するが、実施例1の球状ヒドロキシアパタイトはアルブミン吸着能を有しないことが確認された。
【0065】
実施例1及び比較例3とリゾチーム吸着試験の結果を、図14に示す。グラフは左から市販アパタイト、比較例3、実施例1の順である。市販アパタイトは塩基性タンパク質であるリゾチームをほとんど吸着しなかったが、実施例1の球状ヒドロキシアパタイト及び比較例の針状の結晶は、リゾチームを吸着することが確認された。
【0066】
すなわち、市販アパタイトは塩基性タンパク質であるリゾチーム吸着能を有しないが、実施例1の球状ヒドロキシアパタイトはリゾチームアルブミン吸着能を有していることが確認された。
【0067】
アルブミン及びリゾチーム吸着試験については、実施例2〜7の球状ヒドロキシアパタイトにおいても同様の結果が得られた。これらのことから、本発明の製造方法によって得られる球状ヒドロキシアパタイトは、酸性タンパク質及び塩基性タンパク質に対して、通常のアパタイトとは全く逆の吸着特性を有していることが確認された。
【0068】
図15に示すように、アパタイト結晶には、塩基性タンパク質が吸着される(0001)面と、酸性タンパク質が吸着される(10-10)面が存在することが知られている。本発明の製造方法によって得られた球状ヒドロキシアパタイトは、塩基性タンパク質であるアルブミンを特異的に吸着したことから、粒子表面に(0001)面が選択的に露出した、極めて特異的な構造であることが推察された。
【0069】
なお、エタノールに替えて、メタノール、プロパノール(1-プロパノール及び2-プロパノール)、アセトン、テトラヒドロフラン又はN,N-ジメチルホルムアミドを使用した場合にも、実施例1〜7と同様の球状ヒドロキシアパタイトが得られた。
【0070】
一方、比較例1について、実施例と同様のタンパク質吸着実験を行ったところ、アルブミン及びリゾチームのどちらに対する吸着能も認められなかった。また、比較例2については、実施例1と同様、リゾチームに対する特異的吸着能が認められた。
【0071】
[比較例4]
本発明の比較例4として、リン添加工程において20重量%のエタノール水溶液を使用したこと以外、すべて実施例1と同様にして球状ヒドロキシアパタイトを製造した。比較例3の球状ヒドロキシアパタイトは、不均質な球状粒子(50%平均粒径約20μm)であった。
【0072】
[比較例5]
また、リン添加工程において95重量%のエタノール水溶液を使用したところ、ピロリン酸カリウムを添加しても相分離が起こらず、半液滴状粒子又は前駆体粒子を形成させることができなかった。
【0073】
[比較例6]
重量比で水:トルエン=40:60である水/トルエン混合溶液25mLをビーカーに採取し、リン酸二ナトリウム(JIS特級)5gを添加した。そして、マグネティックスターラーを用いて撹拌し、W/O型エマルジョンとした状態で、20重量%の塩化カルシウム水溶液5mLを滴下した。滴下終了後、5分間撹拌を続けた。
【0074】
撹拌終了後、ピロリン酸塩と予想される白色粒子がビーカー底部に沈殿した。この沈殿の顕微鏡写真を、図16に示す。非水溶性有機溶媒であるトルエンと水との混合溶液に、ピロリン酸カリウム及び塩化カルシウムを添加した場合には、形成される結晶は、球状にはならず破片状となった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の球状ヒドロキシアパタイトの製造方法、及びその製造方法によって製造される塩基性タンパク質を特異的に吸着する球状ヒドロキシアパタイトは、タンパク質分離精製用カラムの充填剤、医療用材料等の分野において、非常に有用である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な粒子径の球状ヒドロキシアパタイトを、簡易に製造するための製造方法に関する。また、本発明は、その様な製造方法によって製造される塩基性タンパク質を特異的に吸着する球状ヒドロキシアパタイトに関する。
【背景技術】
【0002】
生体活性をもつヒドロキシアパタイトは、通常板状結晶の微粒子として合成される。この板状結晶ヒドロキシアパタイトは、カラム充填剤として使用すると目詰まりを起こしやすく、実用性に欠ける。一方、球状のヒドロキシアパタイトでは、このような目詰まりを起こしにくいため、タンパク質の分離精製等への応用が期待されている。
【0003】
球状ヒドロキシアパタイトの製造方法としては、板状結晶のヒドロキシアパタイトを懸濁したスラリーを噴霧熱分解して球状とする方法(例えば、非特許文献1)が一般的である。また、より省プロセスの球状ヒドロキシアパタイトの製造方法としては、W/O又はW/O/Wエマルジョンを利用した乳化液膜系合成法(例えば、非特許文献2)も知られている。
【0004】
それら以外の製造方法としては、例えば、水に難溶性の有機溶媒に酸を主成分とする液剤を分散させた後、自己硬化型リン酸カルシウム粉体を混合、分散させることを特徴とするリン酸カルシウム系球状アパタイトの製造方法が、特許文献1に開示されている。
【0005】
また、0.001〜0.1mol/LのCa2+、PO43-、及びカルボン酸アミドを含む酸性の第一水溶液に、カルボン酸アミドを加水分解する酵素と、第一水溶液中の成分との反応又は外部からのエネルギー付与に伴いゲル化しうる高分子(例えば、アルギン酸塩やアルキルセルロース誘導体の塩)を溶解した第二水溶液からなる滴を加え、有機高分子をゲル化させることを特徴とする中空の球状リン酸カルシウムの製造方法が、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−97202号公報
【特許文献2】特開2004−275118号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】荻原隆他,「超音波噴霧熱分解法による球状リン酸カルシウム粒子の合成とその焼結性」,粉体工学会誌,第32号,624-628(1995)
【非特許文献2】T.S.Pradeesh他,「Preparation of microstructured hydroxyapatitemicrospheres using oil in water emulsions」,Bulletin of Materials Science, Volume 28, 383-390 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献1や非特許文献2に開示されている球状ヒドロキシアパタイトの製造方法では、手順が複雑であったり不純物が多く含まれているという問題があった。また、特許文献1に開示されているリン酸カルシウム系球状アパタイトの製造方法では、50%平均粒径が1-2μm程度であり、特許文献2に開示されている製造方法によって得られる球状リン酸カルシウムも、直径が約20-500mmである。
【0009】
球状ヒドロキシアパタイトは、タンパク質分離の目的でカラム充填材としても利用することが期待されるが、カラム充填材として最適な粒子径は、直径5〜20μm程度とされている。このため、従来の球状ヒドロキシアパタイトムでは粒子径不適で、カラム充填材には適しない。
【0010】
本発明は、従来の製造方法よりも大量かつ容易に、微細な球状ヒドロキシアパタイトを製造するための製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、エタノール、アセトン等の水溶性有機溶媒と水との混合溶液に、K4P2O7(2リン酸カリウム、ピロリン酸カリウム又は2リン酸4カリウムと呼ばれる)という組成を持つピロリン酸塩を添加すると特異な相分離が起こり、これを撹拌するとW/Oエマルジョン状態となることを見出した。そして、このW/Oエマルジョンに塩化カルシウム等の水溶性カルシウム塩の水溶液を添加すると、水相に含まれるリン酸水素イオンとカルシウムが反応し、リン酸水素カルシウム球状粒子が形成されることを見出した。その後、混合溶液を加熱処理することにより、リン酸水素カルシウム球状粒子をヒドロキシアパタイトへと変換させることができることも見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
具体的に、本発明は、
水溶性有機溶媒と水との混合溶媒にK4P2O7を添加するリン添加工程と、
前記リン添加工程後の混合溶媒に、水溶性カルシウム塩の水溶液を撹拌しながら添加するカルシウム添加工程と、
前記カルシウム添加工程後の混合溶媒を加温しながら静置し、ピロリン酸塩(K2CaP2O7)の前駆体粒子を形成させる微粒子化工程と、
前記前駆体粒子をpH13以上16以下、かつ、110℃以上300℃以下で水熱処理する水熱工程と、
を有する球状ヒドロキシアパタイトの製造方法に関する。
【0013】
水溶性有機溶媒と水との混合溶媒にピロリン酸カリウムを添加すると、上相が有機溶媒相、下相がピロリン酸カリウムを含む水相に相分離する。この二相を撹拌するとW/Oエマルジョンとなる。そこに水溶性カルシウム塩を水溶液として添加(滴下)すると、半液滴状粒子(50%平均粒径約20μm〜50μm)が生成する。
【0014】
この半液滴状粒子は、一定時間以上静置することによって結晶化が促進され、ピロリン鉱型の結晶構造を有するピロリン酸塩(K2CaP2O7)の比較的均一な球状粒子(前駆体粒子)へと変化する。前駆体粒子の50%平均粒径は、約5μm〜15μmである。なお、静置時間は、室温では24時間以上とすることが好ましいが、加温することによって時間を短縮することが可能である。
【0015】
前駆体粒子は、pH13以上16以下、かつ、110℃以上300℃以下で水熱処理することにより、球状粒子の形態を維持したままピロリン酸塩(K2CaP2O7)がヒドロキシアパタイトへと転位し、タンパク質吸着能を示す球状ヒドロキシアパタイトとなる。球状ヒドロキシアパタイトの50%平均粒径は、5μm〜15μmである。なお、十分にヒドロキシアパタイトへと転位し、かつ、球状粒子の形態を維持させるために、水熱時間は8時間以上とすることが好ましい。
【0016】
前記水溶性有機溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール(1-プロパノール及び2-プロパノール)、アセトン又はテトラヒドロフラン(THF)から選択される1種又は2種以上が好ましく、前記水溶性カルシウム塩としては塩化カルシウムが好ましい。
【0017】
前記リン添加工程における混合溶媒中の水溶性有機溶媒濃度は、30重量%以上90重量%以下であることが好ましいく、40重量%以上80重量%以下であることがより好ましい。
【0018】
半液滴状粒子が結晶化及び微細化(分裂)して生成するピロリン酸塩(K2CaP2O7)の前駆体粒子は、混合溶媒における水溶性有機溶媒の濃度によって粒子径が変化する。混合溶媒中の水溶性有機溶媒濃度が30重量%未満では半液滴状粒子が前駆体粒子へと自己組織的に分裂しないか、分裂に非常に長時間要するために好ましくない。混合溶媒中の水溶性有機溶媒濃度が高いほど、球状微粒子の粒子径が小さくなるが、90重量%を超えると混合溶媒にK4P2O7を添加しても相分離が起こらなくなるために好ましくない。
【0019】
前記リン添加工程におけるK4P2O7の添加量は、前記混合溶媒に対して5重量%以上30重量%以下であることが好ましく、10重量%以上25重量%以下であることがより好ましい。
【0020】
K4P2O7の添加量が前記混合溶媒に対して5重量%未満では、水相と有機溶媒相との相分離が起こりにくく、一方、30重量%を超えると球形化しにくいという問題が生じる。
【0021】
前記カルシウム添加工程における水溶性カルシウム塩の添加量は、前記リン添加工程後の混合溶媒に対して3重量%以上30重量%以下であることが好ましい。
【0022】
塩化カルシウム等の水溶性カルシウム塩は、水溶液として前記リン添加工程後の混合溶媒に添加するが、混合溶媒に対する添加量が、カルシウム塩として5重量%未満ではイオン交換反応が不十分であり、一方、30重量%を超えると球形化しにくいという問題がある。
【0023】
本発明の製造方法によって製造される球状ヒドロキシアパタイトは、酸性タンパク質は吸着せず、塩基性タンパク質を特異的に吸着するという特徴を有している。
【発明の効果】
【0024】
本発明の製造方法によれば、実験室レベルの簡易な設備によっても、均質で粒子径の小さな球状ヒドロキシアパタイトを容易に製造することができる。また、製造設備を拡大させれば球状ヒドロキシアパタイトの大量製造も容易に実現しうる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の球状ヒドロキシアパタイトの製造方法の概略フローチャートである。
【図2】実施例1のリン添加工程におけるエタノール水溶液の相分離を表す写真である。
【図3】実施例1のカルシウム添加工程において形成された、液滴状粒子を表す顕微鏡写真である。
【図4】実施例1の微粒子化工程における半液滴状粒子の変化を表す写真であり、(a)は静置直後、(b)は静置1時間後、(c)は静置2時間後の写真である。
【図5】実施例1の水熱処理前後の球状粒子の顕微鏡写真であり、(a)は水熱処理前、(b)は水熱処理後である。
【図6】実施例1の水熱工程前における球状粒子のX線回析結果を示すグラフである。
【図7】実施例1の水熱工程後における球状粒子のX線回析結果を示すグラフである。
【図8】前駆体粒子の拡大顕微鏡写真である。
【図9】実施例1の球状ヒドロキシアパタイト粒子の拡大顕微鏡写真である。
【図10】実施例6の球状ヒドロキシアパタイト粒子の拡大顕微鏡写真である。
【図11】実施例7の球状ヒドロキシアパタイト粒子の拡大顕微鏡写真である。
【図12】比較例2の針状結晶の拡大顕微鏡写真である。
【図13】実施例1の球状ヒドロキシアパタイト粒子のアルブミン吸着試験の結果を示すグラフである。
【図14】実施例1の球状ヒドロキシアパタイト粒子リゾチーム吸着試験の結果を示すグラフである。
【図15】アパタイトの結晶構造の概念図である。
【図16】比較例6で得られたピロリン酸塩と推察される粒子の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に限定されない。
【0027】
本発明の球状ヒドロキシアパタイトの製造方法の概略フローチャートを、図1に示す。
本発明では、まず、ステップS1として、水溶性有機溶媒と水との混合溶媒にK4P2O7を添加する(リン添加工程)。水溶性有機溶媒としては、水に対する溶解度が大きい溶媒であれば足りるが、メタノール、エタノール、プロパノール(1-プロパノール及び2-プロパノール)、アセトン又はテトラヒドロフランから選択される1種又は2種以上であることが好ましい。水溶性有機溶媒としては、エタノールが最も好ましい。
【0028】
混合溶媒中の水溶性有機溶媒濃度は、30重量%以上90重量%以下とすることが好ましく、40重量%以上80重量%以下とすることがより好ましい。エタノールの場合には、40重量%以上60重量%以下とすることが好ましい。
【0029】
K4P2O7は、混合溶媒に対して、固形分として5重量%以上30重量%以下の割合で添加することが好ましいが、固形の場合には微粉末、水溶液の場合には50重量%以上とすることが好ましい。
【0030】
混合溶媒にK4P2O7を添加して混合すると、上相が水溶性有機溶媒、下相がK4P2O7を含む水溶液の二相に相分離する。この現象は、リン酸二水素カリウムやリン酸水素ナトリウム等の他のリン酸塩では見られない、K4P2O7に特異的なものである。
【0031】
相分離した混合溶液は、スターラー等を用いて撹拌すると、W/O型エマルジョンとなる。そこで、ステップS2として、混合溶液を撹拌してW/O型エマルジョンとしながら、水溶性カルシウム塩の水溶液を添加する(カルシウム添加工程)。水溶性カルシウム塩としては、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム等を使用することが好ましく、リン添加工程後の混合溶媒に対して、水溶性カルシウム塩として3重量%以上30重量%以下、より好ましくは5重量%以上20重量%以下の割合となるように添加することが好ましい。
【0032】
水溶性カルシウム塩の水溶液を添加すると、W/O型エマルジョン内の水粒子において、ピロリン酸イオンとカルシウムイオンが反応し、半液滴状粒子(50%平均粒径約20μm〜50μm)が生成する。この半液滴状粒子は室温においても生成される。
【0033】
次に、ステップS3として、カルシウム添加工程後の混合溶媒を加温しながら静置し、ピロリン酸塩の前駆体粒子を形成させる(微粒子化工程)。カルシウム添加工程で生じた半液滴状粒子の化学的組成は不明であるが、この半液滴状粒子をそのまま水熱処理しても、球状ヒドロキシアパタイトを製造することは不可能である。
【0034】
しかし、一定時間以上静置することによって結晶化が促進され、ピロリン酸塩(K2CaP2O7)の比較的均一な球状の前駆体粒子(50%平均粒径約5μm〜15μm)へと変化する。半液滴状粒子から前駆体粒子への変化は室温でも起こりうるが、50℃〜70℃程度に反応溶液を加温することによって、反応時間を短縮することも可能である。静置時間は、室温では24時間以上、60℃では2時間以上とすることが好ましい。
【0035】
最後に、ステップS4として、前駆体粒子をpH13以上16以下、かつ、110℃以上300℃以下で加熱処理する(水熱工程)。微粒子化工程が終了した後、球状の固体である前駆体粒子をろ過などによって回収し、精製水などを用いて洗浄する。洗浄後、前駆体粒子をpH13以上16以下の強アルカリ性水溶液中に懸濁させ、静置した状態で110℃以上300℃以下に加熱処理する。
【0036】
pH13以上16以下の強アルカリ性水溶液中で加熱処理することによって、球状の形態を維持したまま、前駆体粒子を構成するピロリン酸塩がヒドロキシアパタイトへ転位する。その結果、50%平均粒径約2μm〜15μmの球状ヒドロキシアパタイトが得られる。
【0037】
ここで、pHが13未満では、水熱処理中に前駆体粒子が崩壊し、その後不定形のヒドロキシアパタイトへと転位することが確認されている。一方、pH13以上16以下であれば、前駆体粒子が崩壊せず、ほぼ球状の形態のヒドロキシアパタイトが得られることが確認さている。
【0038】
水熱処理は110℃以上300℃以下とすることが好ましい。110℃未満ではヒドロキシアパタイトへ転位せず、300℃超ではヒドロキシアパタイト粒子が結合して、微細な球状粒子という形態を維持できなくなるためである。また、加熱処理時間は、8時間以上24時間以下とすることが好ましい。
【0039】
なお、水熱工程において反応溶液を撹拌又は振盪すると、均質で微細な球状粒子は得られないことが確認されている。このため、水熱工程では、反応溶液を必ず静置することが重要である。
【0040】
また、後述するように、水熱工程後に得られるヒドロキシアパタイトの球状粒子の粒径は、リン添加工程における混合溶液中の水溶性有機溶媒濃度が高いほど、小さくなる傾向が認められた。
【0041】
[実施例1]
(リン添加工程)
60重量%のエタノール水溶液20mLをビーカーに採取し、ピロリン酸カリウム(JIS特級)5gを添加し、マグネティックスターラーを用いてゆっくりと撹拌した。撹拌を停止したときのエタノール水溶液は、図2に示すように、上相がエタノール相、下相がピロリン酸カリウムを含む水相に相分離した。
【0042】
(カルシウム添加工程)
次に、相分離したビーカー内の混合溶液を、マグネティックスターラーを用いて撹拌し、W/O型エマルジョンとなった状態で、20重量%の塩化カルシウム水溶液5mLを滴下した。滴下終了後、5分間撹拌を続けた。撹拌終了後、ビーカー底部には、半液滴状粒子(50%平均粒径約40μm)が沈殿した。半液滴状粒子の顕微鏡写真を、図3に示す。
【0043】
(微粒子化工程)
次に、ビーカーを60℃の水浴に移し、混合溶液を2時間加温した。その結果、半液滴状粒子は、50%平均粒径約5μmの微粒子(前駆体粒子)へと変化した。実施例1の微細化工程における半液滴状粒子の変化を、図4(a)〜図4(c)に示す。
【0044】
(水熱工程)
ビーカー内の前駆体粒子をろ過によって回収し、精製水を用いて数回洗浄した。その後、テフロン(登録商標)容器内に約1gを採取し、水酸化ナトリウム水溶液(pH15)25mLを加えた。そして、オートクレーブ内に容器を移し、静置した状態で、150℃で24時間加熱することにより、水熱処理した。水熱処理前後の球状粒子の顕微鏡写真を、図5(a)及び図5(b)に示す。
【0045】
<X線回析による同定>
水熱工程前の球状粒子(前駆体粒子)についてX線回析を行った結果を、図6に示す。水熱処理前の前駆体粒子は、市販アパタイト(HAP)の回析パターンとは一致せず、ピロリン酸塩(K2CaP2O7)の回析パターンと一致した。このX線解析の結果から、前駆体粒子は、K2CaP2O7であることが確認された。
【0046】
一方、水熱工程後の球状粒子についてX線回析を行った結果を、図7に示す。水熱処理後の球状粒子は、市販アパタイト(HAP)の回析パターンとは一致したため、ヒドロキシアパタイトであることが確認された。
【0047】
<顕微鏡観察による形態の確認>
前駆体粒子及び実施例1の球状ヒドロキシアパタイト粒子の拡大顕微鏡写真を、それぞれ図8及び図9に示す。実施例1の球状ヒドロキシアパタイトは、前駆体粒子と同様に、50%平均粒径約5μmの均質な球状であることが確認された。
【0048】
[実施例2]
リン添加工程において30重量%のエタノール水溶液を使用したこと以外、すべて実施例1と同様にして球状ヒドロキシアパタイトを製造した。実施例2の球状ヒドロキシアパタイトの50%平均粒径は、14.3μmであった。
【0049】
[実施例3]
リン添加工程において40重量%のエタノール水溶液を使用したこと以外、すべて実施例1と同様にして球状ヒドロキシアパタイトを製造した。実施例3の球状ヒドロキシアパタイトの50%平均粒径は、9.4μmであった。
【0050】
[実施例4]
リン添加工程において80重量%のエタノール水溶液を使用したこと以外、すべて実施例1と同様にして球状ヒドロキシアパタイトを製造した。実施例4の球状ヒドロキシアパタイトの50%平均粒径は、2.2μmであった。
【0051】
[実施例5]
リン添加工程において90重量%のエタノール水溶液を使用したこと以外、すべて実施例1と同様にして球状ヒドロキシアパタイトを製造した。実施例5の球状ヒドロキシアパタイトの50%平均粒径は、1.9μmであった。
【0052】
このように、実施例1〜実施例5において、リン添加工程におけるエタノール水溶液の濃度が高くなるほど、形成されるヒドロキシアパタイト粒子の平均粒子径が小さくなる傾向が認められた。
【0053】
[実施例6]
水熱工程において、強アルカリ性水溶液として0.1N 水酸化ナトリウム水溶液(pH13)25mLを使用すること以外、すべて実施例1と同様にして球状ヒドロキシアパタイトを製造した。実施例6の球状ヒドロキシアパタイトの50%平均粒径は5μmであった。
【0054】
[実施例7]
水熱工程において、強アルカリ性水溶液として水酸化カリウム水溶液(pH15)25mLを使用すること以外、すべて実施例1と同様にして球状ヒドロキシアパタイトを製造した。実施例6の球状ヒドロキシアパタイトの50%平均粒径は5μmであった。
【0055】
なお、実施例6及び実施例7の球状ヒドロキシアパタイト粒子の拡大顕微鏡写真を、それぞれ図10及び図11に示す。
【0056】
[比較例1]
本発明の比較例1として、水熱工程を105℃で24時間とした以外、すべて実施例1と同様の操作を行った。その結果、実施例1と同様の球状粒子が得られたが、X線回析の結果、市販アパタイトとは回析パターンが一致せず、ピロリン鉱型リン酸カルシウム塩(K2CaP2O7)からヒドロキシアパタイトへの転位が起こっていないことが確認された。
【0057】
[比較例2]
本発明の比較例2として、水熱工程において、アルカリ性水溶液として0.01N 水酸化ナトリウム水溶液(pH12)25mLを使用すること以外、すべて実施例1と同様の操作を行った。しかし、水熱工程後の沈殿物を回収したところ、球状ヒドロキシアパタイトは確認されず、針状の結晶が得られた。この針状結晶の拡大顕微鏡写真を、図12に示す。
【0058】
また、この針状結晶についてX線回析を行ったところ、市販ヒドロキシアパタイトと回析パターンが一致したことから、ヒドロキシアパタイトであることは確認できた。
水熱工程を105℃で24時間とした以外、すべて実施例1と同様の操作を行った。その結果、実施例1と同様の球状粒子が得られたが、X線回析の結果、市販アパタイトとは回析パターンが一致せず、ピロリン鉱型リン酸カルシウム塩(K2CaP2O7)からヒドロキシアパタイトへの転位が起こっていないことが確認された。
【0059】
[比較例3]
本発明の比較例3として、水熱工程において、アルカリ性水溶液として水酸化ナトリウム水溶液(pH8)25mLを使用すること以外、すべて実施例1と同様の操作を行った。しかし、水熱工程後の沈殿物を回収したところ、球状ヒドロキシアパタイトは確認されず、不定形の結晶が得られた。
【0060】
<タンパク質吸着試験>
次に、本発明の製造方法によって得られた球状ヒドロキシアパタイトについて、タンパク質吸着能の有無について確認した。まず、実施例1の球状ヒドロキシアパタイトは、ろ過によって回収した後、精製水を用いて洗浄し、120℃で乾燥させた。
【0061】
酸性タンパク質であるアルブミンを精製水に溶解させ、100ppm水溶液を調製した。この100ppm水溶液10gを容量15mLの遠心管に採り、実施例1の球状ヒドロキシアパタイト0.1gを添加し、よく撹拌した後、室温で2時間静置した。
【0062】
その後、遠心管を4000rpmで10分間遠心分離し、上清を採取した。この上清について、分光光度計を用いて280nmの吸光度を測定し、アルブミン吸着量を計算した。塩基性タンパク質であるリゾチームについても、アルブミンと同様にして吸光度を測定した。一方、比較対照物質として、市販アパタイト(板状結晶)についても同様の操作を行った。また、比較例3で得られた針状の結晶と、市販アパタイトについても実施例1と同様の操作を行ない、リゾチーム吸着量を計算した。
【0063】
実施例1及び比較例3とアルブミン吸着試験の結果を、図13に示す。グラフは左から市販アパタイト、比較例3、実施例1の順である。市販アパタイトは酸性タンパク質であるアルブミンを吸着したが、実施例1の球状ヒドロキシアパタイト及び比較例の針状の結晶は、アルブミンをほとんど吸着しないことが確認された。
【0064】
すなわち、市販アパタイトは酸性タンパク質であるアルブミン吸着能を有するが、実施例1の球状ヒドロキシアパタイトはアルブミン吸着能を有しないことが確認された。
【0065】
実施例1及び比較例3とリゾチーム吸着試験の結果を、図14に示す。グラフは左から市販アパタイト、比較例3、実施例1の順である。市販アパタイトは塩基性タンパク質であるリゾチームをほとんど吸着しなかったが、実施例1の球状ヒドロキシアパタイト及び比較例の針状の結晶は、リゾチームを吸着することが確認された。
【0066】
すなわち、市販アパタイトは塩基性タンパク質であるリゾチーム吸着能を有しないが、実施例1の球状ヒドロキシアパタイトはリゾチームアルブミン吸着能を有していることが確認された。
【0067】
アルブミン及びリゾチーム吸着試験については、実施例2〜7の球状ヒドロキシアパタイトにおいても同様の結果が得られた。これらのことから、本発明の製造方法によって得られる球状ヒドロキシアパタイトは、酸性タンパク質及び塩基性タンパク質に対して、通常のアパタイトとは全く逆の吸着特性を有していることが確認された。
【0068】
図15に示すように、アパタイト結晶には、塩基性タンパク質が吸着される(0001)面と、酸性タンパク質が吸着される(10-10)面が存在することが知られている。本発明の製造方法によって得られた球状ヒドロキシアパタイトは、塩基性タンパク質であるアルブミンを特異的に吸着したことから、粒子表面に(0001)面が選択的に露出した、極めて特異的な構造であることが推察された。
【0069】
なお、エタノールに替えて、メタノール、プロパノール(1-プロパノール及び2-プロパノール)、アセトン、テトラヒドロフラン又はN,N-ジメチルホルムアミドを使用した場合にも、実施例1〜7と同様の球状ヒドロキシアパタイトが得られた。
【0070】
一方、比較例1について、実施例と同様のタンパク質吸着実験を行ったところ、アルブミン及びリゾチームのどちらに対する吸着能も認められなかった。また、比較例2については、実施例1と同様、リゾチームに対する特異的吸着能が認められた。
【0071】
[比較例4]
本発明の比較例4として、リン添加工程において20重量%のエタノール水溶液を使用したこと以外、すべて実施例1と同様にして球状ヒドロキシアパタイトを製造した。比較例3の球状ヒドロキシアパタイトは、不均質な球状粒子(50%平均粒径約20μm)であった。
【0072】
[比較例5]
また、リン添加工程において95重量%のエタノール水溶液を使用したところ、ピロリン酸カリウムを添加しても相分離が起こらず、半液滴状粒子又は前駆体粒子を形成させることができなかった。
【0073】
[比較例6]
重量比で水:トルエン=40:60である水/トルエン混合溶液25mLをビーカーに採取し、リン酸二ナトリウム(JIS特級)5gを添加した。そして、マグネティックスターラーを用いて撹拌し、W/O型エマルジョンとした状態で、20重量%の塩化カルシウム水溶液5mLを滴下した。滴下終了後、5分間撹拌を続けた。
【0074】
撹拌終了後、ピロリン酸塩と予想される白色粒子がビーカー底部に沈殿した。この沈殿の顕微鏡写真を、図16に示す。非水溶性有機溶媒であるトルエンと水との混合溶液に、ピロリン酸カリウム及び塩化カルシウムを添加した場合には、形成される結晶は、球状にはならず破片状となった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の球状ヒドロキシアパタイトの製造方法、及びその製造方法によって製造される塩基性タンパク質を特異的に吸着する球状ヒドロキシアパタイトは、タンパク質分離精製用カラムの充填剤、医療用材料等の分野において、非常に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性有機溶媒と水との混合溶媒にK4P2O7を添加するリン添加工程と、
前記リン添加工程後の混合溶媒に、水溶性カルシウム塩の水溶液を撹拌しながら添加するカルシウム添加工程と、
前記カルシウム添加工程後の混合溶媒を静置し、ピロリン酸塩の前駆体粒子を形成させる微粒子化工程と、
前記前駆体粒子をpH13以上16以下、かつ、110℃以上300℃以下で水熱処理する水熱工程と、
を有する球状ヒドロキシアパタイトの製造方法。
【請求項2】
前記水溶性有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、アセトン又はテトラヒドロフランから選択される1種又は2種以上であり、前記水溶性カルシウム塩が塩化カルシウムである請求項1に記載の球状ヒドロキシアパタイトの製造方法。
【請求項3】
前記リン添加工程における混合溶媒中の水溶性有機溶媒濃度が、30重量%以上90重量%以下である請求項1又は2に記載の球状ヒドロキシアパタイトの製造方法。
【請求項4】
前記リン添加工程におけるK4P2O7の添加量が、前記混合溶媒に対して5重量%以上30重量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の球状ヒドロキシアパタイトの製造方法。
【請求項5】
前記カルシウム添加工程における水溶性カルシウム塩の添加量が、前記リン酸添加工程後の混合溶媒に対して5重量%以上30重量%以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の球状ヒドロキシアパタイトの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の製造方法によって製造される、塩基性タンパク質を特異的に吸着する球状ヒドロキシアパタイト。
【請求項1】
水溶性有機溶媒と水との混合溶媒にK4P2O7を添加するリン添加工程と、
前記リン添加工程後の混合溶媒に、水溶性カルシウム塩の水溶液を撹拌しながら添加するカルシウム添加工程と、
前記カルシウム添加工程後の混合溶媒を静置し、ピロリン酸塩の前駆体粒子を形成させる微粒子化工程と、
前記前駆体粒子をpH13以上16以下、かつ、110℃以上300℃以下で水熱処理する水熱工程と、
を有する球状ヒドロキシアパタイトの製造方法。
【請求項2】
前記水溶性有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、アセトン又はテトラヒドロフランから選択される1種又は2種以上であり、前記水溶性カルシウム塩が塩化カルシウムである請求項1に記載の球状ヒドロキシアパタイトの製造方法。
【請求項3】
前記リン添加工程における混合溶媒中の水溶性有機溶媒濃度が、30重量%以上90重量%以下である請求項1又は2に記載の球状ヒドロキシアパタイトの製造方法。
【請求項4】
前記リン添加工程におけるK4P2O7の添加量が、前記混合溶媒に対して5重量%以上30重量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の球状ヒドロキシアパタイトの製造方法。
【請求項5】
前記カルシウム添加工程における水溶性カルシウム塩の添加量が、前記リン酸添加工程後の混合溶媒に対して5重量%以上30重量%以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の球状ヒドロキシアパタイトの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の製造方法によって製造される、塩基性タンパク質を特異的に吸着する球状ヒドロキシアパタイト。
【図1】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図16】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図16】
【公開番号】特開2011−79697(P2011−79697A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232624(P2009−232624)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
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