説明

環境に優しい炭素結合した耐火性生成物の低温混合方法による製造

本発明は、耐火性粒子及び有機結合剤からなる炭素結合した耐火性生成物を製造する方法に関する。前記方法によれば、グラファイト化することができDIN51905によるベンゾ(a)ピレン含有量が500mg/kg未満及びコークス化残渣が少なくとも約80重量%を有する粉末状コールタールピッチ、並びに室温で液体でありグラファイト化することができDIN51905によるコークス化残渣が少なくとも約15重量%及びベンゾ[a]ピレン含有量が500ppm未満を有する結合剤を混合して有機結合剤を形成する。前記有機結合剤は、残りの成分と混合し、成形体に変えた後、150と約400℃の間の温度で熱処理をする。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、炭素結合した耐火性生成物を、耐火性粒状物、炭素担体及び有機結合剤から製造する方法に関する。
【0002】
耐火性生成物は、冶金容器の内層、及び、耐火性の機能性生成物(例えばいわゆるスライド式プレート)として使用される。ユニットにおける摩耗は前記生成物の継続的な交換を必要とする。この摩耗は主として、スラグの侵入による腐食、脱炭素(コークス結合と炭素担体の酸化)、アブレージョン、及び、生成物断片のスポーリング(熱応力によってもたらされる)により生じる。
【0003】
これらの生成物の製造に使用される結合剤は、多機能のものである。これら結合剤は、ユニット中に設置される場合のその後の第一加熱時の間に、耐火性物質の成形を可能にし、そして、生成物の寸法安定性を保証する。焼成条件において、結合剤はコークス結合を形成し、そして、スラグの侵入を低減するのに必要な炭素を供給する。結合相として使用する炭素は、出発有機化合物の熱分解により生成される。この目的のために、耐火性粒状物は、炭化結合剤、例えば、コールタールピッチ及び芳香族石油ピッチ(以下、バインダーピッチと呼ぶ)の熱可塑性ビチューメン質結合剤とともに高温混合するか、又は一般に、150〜250℃での硬化後にジュロプラスチック構造を形成する硬化性の合成樹脂とともに低温混合する。
【0004】
合成樹脂の熱分解又は炭化で生じるコークス結合は、三次元架橋結合のために、等方性で、グラファイト化可能でなく、硬質の、脆いものであり、そして、内部表面が大きいために、酸化を受けやすいものである。
【0005】
これに対して、バインダーピッチの熱分解は液相で起こり、規則正しい六方晶系の炭素層形成に帰着する。異方性の、グラファイト化可能な、軟質の、たわみやすいコークス結合が形成される。前記コークス結合は内部表面が小さいために、はるかに酸化を受けにくい。バインダーピッチからの結合は、異方性コークス構造のために、はるかに良好な熱衝撃及び酸化抵抗性を有するので、合成樹脂の場合と異なり、バインダーピッチを使用すると、結果として一般にユニットにおける前記生成物の摩耗がより少なくなる。
【0006】
結合剤及び耐火性粒状物を加工する場合、高温成形と低温成形(高温混合方法と低温混合方法)とを区別する。低温成形においては、耐火性粒状物を予熱することなく室温で非加熱の混合機に供給する。結合剤は、一般に、低温(即ち、室温)で添加する。高粘性の結合剤の場合には、よく混ぜるために結合剤を予熱して混合機に供給してもよい。混合中の造粒化 (granulation) の内部摩擦のために、混合生成物は60℃まで加熱される可能性がある。湿った塊のその後の圧縮及び成形もまた、室温で行なわれる。低温作業の利点、すなわち、合成樹脂結合の利点は、高価な加熱システムを必要としないので、投資コストがはるかに低いことに在る。すべての成分が低温で加工されるため、継続的な操作のための省エネルギーは相当なものになる。
【0007】
高温成形においては、耐火性粒状物及び結合剤を、混合機に供給する前に、結合剤の軟化点を越える温度にしなければならない。混合機もまた加熱されなければならない。その後の圧縮又はプレスもまた、結合剤の軟化点以上の温度で行なわれる。適用のために十分に高いコークス収率を有するバインダーピッチは、室温で固体又は高度に糊状のものであり、そして、高温成形によってのみ加工することができる。バインダーピッチ特にコールタールピッチの重大な不利点は、環境を汚染し、そして、健康に有害な15,000mg/kgまでのベンゾ[a]ピレン(B[a]P)含有量である。バインダーピッチは高温で加工されるので、加熱時の高い蒸気圧により、潜在的危険性を伴うB[a]Pの放射が起こる。耐火性生成物を最初の使用時に加熱する時に、B[a]Pを含む炭化水素留出物もまた放出される。立法機関はこのような潜在的危険性を考慮して、50mg/kgを超えるB[a]P含有量を有する耐火性生成物を危険物質と特定し、適切な予防措置を講じて取り扱わなければならないことを規定してきた。従ってドイツにおいては、技術的に実行可能な場合はいつでも、50mg/kg未満のB[a]Pを有する耐火性生成物の使用が、いわゆるTRGS551において勧告される。このことは、バインダーピッチのあらゆる技術的利点もかかわらず、バインダーピッチの使用が多年にわたり減少していることを説明する。
【0008】
バインダーピッチを用いて低温成形した耐火性生成物の製造は、原則として先行技術のものである。例えば、GB690859は、耐火性粒状物及び粉末状バインダーピッチからラミング耐火物(ramming mix)又はレンガ(bricks)の製造を開示している。ここでは、得られた生成物の密度を増加することを意図する可塑剤、例えば、灯油、ベンゾール又はクレオソートを、耐火性粒状物と粉末状バインダーピッチとの混合物に添加する。
【0009】
米国特許第3285760号明細書は、耐火性粒状物と粉末状バインダーピッチとのラミング耐火物(ramming mix)を開示する。ここでは、粉末状バインダーピッチ用の溶媒又は潤滑油として、アントラセン又は重油の使用が提案されている。
【0010】
米国特許第3415667号明細書は、バインダーピッチを液化するために液体有機溶媒を使用する、ピッチ結合した耐火性混合物の製造技術を開示している。液化したバインダーピッチは、最初に粗い粒状物と混合し、次に細い粒状物と混合し、そして、プレスする。好ましくはトリクロロ化した炭化水素を溶媒として使用する。GB978185では、類似の方法を採用している。本明細書に開示された前記方法においては、バインダーピッチと有機溶媒を一緒に混合し、その結果80ポイズ以下の粘度を有する結合剤を形成する。追加の加工工程において最初にバインダーピッチ及び有機溶媒を、使用可能な結合剤に加工する必要があるので、高い加工努力及び消費額は、両方の方法に共通の特徴である。
【0011】
米国特許第4071593号明細書に記載の方法は、バインダーピッチとリグニンスルホネート水溶液及び/又は高温で硬化するアルキド樹脂の有機溶媒溶液との組み合わせで操作する。この方法の不利な点は、ドロマイトのような水和を受けやすい原料を加工することができないこと、及び異方性のコークス構造に加えて、酸化を受けやすい脆い等方性のコークス構造が得られることである。
【0012】
DE3149485A1に記載の方法においては、バインダーピッチ含有量に関して、0.5〜15%のバインダーピッチと5%までの有機液体を耐火性混合物に添加する。しかしながら、そのような塊はプレス操作にはあまりに乾燥し過ぎている。可塑剤として更に亜硫酸廃液、水及び粘土が必要であることが実施例から結論される。従ってコークス結合に加えて、セラミック結合が得られる。この方法の一つの不利な点は、ドロマイトのような水和を受けやすい原料を加工することができないことである。
【0013】
記載した方法すべてに共通の特徴は、バインダーピッチの高いB[a]P含有量である。従って得られた生成物は、欧州法によれば危険物質と特定しなければならず、TRGS551の勧告を満たさない。合成樹脂システムと比較して、上に記載した結合剤の組み合わせは、生成物特性、低温圧縮強度、高温曲げ強度及び多孔度に関してはるかに劣ることが判明したので、これまでほとんど使用されていない。
【0014】
もっと最近の開発は、TRGS551に対応して、合成樹脂で結合し低温成形した生成物中に、ピッチ特有の、グラファイト化可能な、異方性のコークス構造を組み込むことを許容する。この場合、合成樹脂の一部は、粉砕した低B[a]Pで高融点のバインダーピッチ粉末に置き換えられている。しかしながら、純粋なピッチ結合に比較して不利な点は、生成物中に部分的に等方性の、従って酸化を受けやすいコークス構造が存在することである(Boenigk,W.et al.CARBORES(登録商標)― a carbon speciality to improve the performance of refractories bonded with phenolic resins,Proceedings Eurocarbon 2000,1st World Conference on Carbon,9 to 13 July 2000,Berlin,pp.367−368/// Anezins,C.G.et al.Studies of special binder agents for refractory MgO−C products,Proceedings,14th Conference on Refractory Building Materials,20/21 May 2003,Prague,pp.118−126)。
【0015】
DE4112955A1は、発癌物質含有量の低いコールタールピッチの製造、並びに結合剤及び含浸剤としてのその使用を記載する。
【0016】
本発明の本質的な目的は、使用成分のいわゆる低温混合を許容し、そして、高強度を有する異方性コークス構造と、50mg/kg以下のベンゾ[a]ピレン含有量を有する耐火性生成物とを得ることを可能にする、炭素結合した耐火性生成物を製造する方法を提供することである。
【0017】
本発明の更なる目的は、上記の方法において使用する結合剤システムを提供することである。
【0018】
この目的は、炭素結合した耐火性生成物を、耐火性粒状物及び有機結合剤から製造する方法であって、DIN51905によるベンゾ[a]ピレン含有量500mg/kg未満、及び、コークス化値少なくとも約80重量%を有するグラファイト化可能な粉末状のコールタールピッチと、DIN51905によるコークス化値少なくとも約15重量%及びベンゾ[a]ピレン含有量500mg/kg未満を有する室温で液体のグラファイト化可能な結合剤とを、有機結合剤として使用し、残りの成分と混合し、成形体に変えて、そして、次に、150〜約400℃の温度で熱処理する前記方法によって達成することができる。
【0019】
粉末状のグラファイト化可能なコールタールピッチは、約150℃以上の温度で液体の結合剤に可溶性である。コールタールピッチは、好ましくは、180℃を超える軟化点を有し、特に好ましくは、220℃を超える軟化点を有する。
【0020】
驚くべきことに、本発明による方法を実施する場合に、一方で合成樹脂を、そして、他方でコールタールピッチを使用することの利点を兼ね備えることができるということが確立された。特に、利点は、省エネルギーの低温混合方法を使用して実施することができ、それでもなおピッチ特有の異方性でありグラファイト化可能なコークス構造を得ることができ、そして、結果として、高強度の耐火性生成物が得ることができ、酸化抵抗性が著しく改良されるという事実に帰着する。
【0021】
本発明によると、選択されたコールタールピッチを使用することによって、耐火性生成物における50mg/kg以下という低いベンゾ[a]ピラン含有量が可能となる。本発明によると、前記コールタールピッチが、高温度結合剤として使用される。前記高温度結合剤は、好ましくは粉末形態で存在する。平均粒子サイズは、10〜約500μm、好ましくは50〜約200μmであることができる。
【0022】
更に好ましい実施態様によれば、高温度結合剤は粉塵結合剤(dust binder agent)で濡らされる。これは粉塵の形成を予防し、耐火性の塊における結合を改良することができる。粉塵結合剤(dust binder agent)は好ましくは、粉末を溶解しない高沸点の石油由来の油である。300℃を超える沸点と1未満の密度を有するナフテン油は、特にこの目的によく適している。粉塵結合剤(dust binder agent)は、高温度結合剤の全重量について約5重量%までの量で、特には0.5〜3重量%の量で使用してもよい。
【0023】
本発明により使用される液体結合剤は、高温度結合剤の高度芳香族油(例えばコールタール蒸留からの高度芳香族油)溶液であってもよい。特に好ましいのは、温度250から370℃までの沸点範囲のものである。液体結合剤は可塑剤として働き、従って、耐火性混合物が成形可能であること及び取り扱いに十分な強度を有することを保証する。高度芳香族油中の高温度結合剤濃度は目的の液体結合剤の粘度によって決まる。例えば、それは、液体結合剤の質量について、10〜85重量%又は25〜65重量%であってもよい。
【0024】
本発明の有機結合剤として使用される粉末状のグラファイト化可能なコールタールピッチは、常圧又は減圧下の最初の蒸留段階においてコールタールを蒸留し、最初の蒸留段階の釜残を蒸発器において好ましくは1ミリバール以下の圧力下に蒸留することにより得ることができる。ここで蒸発器の温度は、好ましくは300〜380℃の温度範囲以内である。釜残の蒸発器中平均滞留時間は好ましくは2〜10分間である。
【0025】
本発明により得ることができる耐火性の塊は、結合剤として、耐火性混合物の全重量について、0.5〜約4重量%、好ましくは1〜約2.5重量%の高温度結合剤を含んでもよい。液体結合剤の割合は、耐火性混合物の全重量についてそれぞれ、約1.3〜約4重量%、好ましくは2〜3重量%であってもよい。
【0026】
本発明により適した粒状物は無機酸化物を含んでもよい。無機酸化物の使用は耐火物の製造用に知られている。これらは好ましくは、酸化マグネシウム、ドロマイト、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム又はそれらの混合物を含む。特に好ましいのは、酸化マグネシウム、例えば融解マグネシア及び/又は焼結マグネシアの使用である。
【0027】
耐火性生成物の炭素含有量を増加するために、耐火性粒状物の混合物に、成形の前に高温度結合剤及び有機結合剤を、更には炭素を含む物質、特にグラファイト及び/又はカーボンブラックを添加することが可能である。なおその上に、湿潤剤及び脱水剤、例えば硫黄、有機ニトロ化合物又は無機硝酸塩もまた、混和性を改良し、コークス収率と強度を増すために添加してもよい。抗酸化剤は、最終生成物を使用するときに炭素酸化を減らすために添加してもよい。
【0028】
成形は、この技術分野において使用される従来の加圧成形装置を用いて既知の方法により実施してもよい。例えば、100〜300MPaの圧力が成形に適している。
【0029】
得られたいわゆる「生の(green)」生成物を次に熱処理にかける。この処理は、150〜約400℃の温度で実施してもよい。処理時間は、形成する生成物の大きさによって決まるが、約20時間以上までであってもよい。これは、結果として高温破砕強度の増加となる。
【0030】
結合剤の望ましい最終コークス構造は、焼戻した材料がユニット中で最初に加熱されるときに形成される。
【0031】
本発明の結合剤システムで製造した耐火レンガもまた、問題なく加工されるかもしれない。加圧成形後、6〜12MPaの低温破砕強度、従って低温成形した合成樹脂結合した石と同様のレベルが得られる。焼戻し後の低温破砕強度は20から30MPaまでの範囲にあり、ユニットへの問題ない設置及び最初の加熱時に及ぼされる機械的負荷に適した高い強度である。1,000℃で炭化後に、20〜30MPaの低温圧縮強度及び約11%の多孔度が得られる。低温破砕強度と多孔度は、樹脂結合した生成物の値に匹敵する。新規な結合剤システムは純粋に異方性のグラファイト化可能な軟質のコークスマトリックス(軟質結合)を形成する。これは結果として、生成物の改良された熱衝撃及び酸化抵抗性となる。高温度結合剤として本発明により使用されるコールタールピッチで製造される生成物は、ベンゾ[a]ピレン含有量<50ppmを有し、ドイツのTRGS551の勧告を満たしているので、欧州法による危険物質として標示する必要がない。
【0032】
次の実施例は本発明の更なる説明として役に立つ。分析にはできるだけDIN基準を適用した。
【実施例】
【0033】
本発明により使用される物質を特徴付けるために適用した技術的な基準を表1に示す。
【表1】

【0034】
《実施例1》
コールタールピッチから高温度結合剤の製造
コールタールピッチ[軟化点(Mettler)EPM=113℃、TI=29%、QI=8.5%、β樹脂=20.6%、コークス化値=59.2%、B[a]P含有量=1.1%、融解開始(TMA)=36℃、融解完了(TMA)=86℃]を、1ミリバールの真空下に、蒸発器中355℃の蒸留温度で、約5分間の平均滞留時間で蒸留する。得られたピッチは、本発明により高温度結合剤(結合剤A)として使用してもよく、表2の分析データにより特徴付けられる。
【表2】

【0035】
《実施例2》
高温度結合剤から液体結合剤の製造
40重量部の実施例1からのコールタールピッチを、60重量部のアントラセン油(B[a]p含有量40ppm、沸点範囲250〜370℃)に溶解する。得られた結合剤Bは表3に示す特性を有する。
【表3】

【0036】
《実施例3》
これらから得ることができる3バッチの成形体の製造
本発明の方法により3バッチ(3a〜c)を製造し、3比較バッチ(V1〜3)と比較する。液体レゾールと粉末状ノボラックからなる今日一般に使用されるフェノール樹脂システムをV1において使用し、米国特許第3285760号明細書によるアントラセン油をV3において使用し、従来のコールタールピッチをV2において使用する。
【0037】
本発明による熱分解した成形体を製造するために、実施例2からの液体結合剤Bを2重量%の量で各粒状物に添加し、実施例1からの高温度結合剤Aを、耐火性混合物の全重量についてそれぞれ、1.3重量%(オフセット1)、2.3重量%(オフセット2)及び3.3重量%(オフセット3)の量で添加する。使用した粒状物の特性を表4に示す。生成物が残留炭素含有量13〜14%に達するのに十分なグラファイトを添加する(9〜12%)。使用したグラファイトの特性を表5に示す。混合は、耐火物工業で一般に使用される強制混合機で、加熱することなく行なわれる。混合物の組成を表8に示す。
【0038】
調製した湿った塊を、150MPaの圧力下に圧縮して成形体を形成する。成形体を次に300℃で焼戻しをし、その後1000℃で熱分解/コークス化する。耐火物生成物の特性を表7に要約する。
【表4】


【表5】

【表6】

【表7】

【0039】
バッチ1〜3において、液体バインダーピッチの濃度は一定に保たれるが、一方、粉末状高温度結合剤の濃度は異なる。粉末状高温度結合剤含有量が増加するにつれて、成形体の多孔度は増加し、機械的強度は低下することが示される。フェノール樹脂結合した成形体と同等の強度を有する成形体は、本発明の方法によりうまく製造することができる。しかしながら、本発明により製造される成形体の主要な利点は、その異方性のコークス構造である。異方性のコークス構造の利点は、一般により高いたわみ性、より高い酸化抵抗性及びより高い熱衝撃抵抗性に在る。
【0040】
実施例3と比較例から、本発明により製造される炭素結合した耐火性生成物が、従来のコールタール又は合成樹脂結合剤システムで得られた生成物を超えるかなりの利点を有することを理解することができる。本発明の生成物は、前記の両システムの利点を兼ね備えている。成形体は、低温混合方法により、省エネルギーの環境に優しいやり方で製造することができ、ベンゾ[a]ピレン含有量が少なく、しかもよく知られた有利な特性を有する異方性のコークス構造を形成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素結合した耐火性生成物を、耐火性粒状物及び有機結合剤から製造する方法であって、DIN51905によるベンゾ[a]ピレン含有量500mg/kg未満、及び、コークス化値少なくとも約80重量%を有するグラファイト化可能な粉末状のコールタールピッチと、DIN51905によるコークス化値少なくとも約15重量%及びベンゾ[a]ピレン含有量500ppm未満を有する室温で液体のグラファイト化可能な結合剤とを、有機結合剤として使用し、残りの成分と混合し、成形体に変えて、そして、次に、150〜約400℃の温度で熱処理することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
耐火性混合物の全重量に対して、それぞれの場合において、0.5〜約4重量%、特には1〜2.5重量%の高温度結合剤と、1.3〜約4重量%、特には2〜3重量%の液体結合剤とを、有機結合剤として使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
常圧又は減圧下の第1蒸留段階においてコールタールを蒸留することによって、そして、1ミリバール以下の圧力下の第1蒸留段階において蒸発器によって釜残を蒸留することによって、コールタールピッチを得ることができ、ここで、前記蒸発器の温度は、300〜ら380℃までの範囲にあり、そして、釜残の平均滞留時間は、2〜10分間であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項3に記載のコールタールピッチのアントラセン油溶液を使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
粉末状のコールタールピッチを、10〜約500μmの平均粒子サイズを有する粉末形態で使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
粉末状コールタールピッチが、約180℃を超える軟化点を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ピッチを溶解しないナフテン油を、液体結合剤と混合する前に、粉塵結合剤として粉末状コールタールピッチに添加することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
炭素担体、特にグラファイト及び/又はカーボンブラックを、作業前に、耐火性粒状物及び有機結合剤に添加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
50mg/kg未満のベンゾ[a]ピレン含有量を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、グラファイト様の炭素構造を有する耐火性生成物。

【公表番号】特表2007−517757(P2007−517757A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548241(P2006−548241)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000147
【国際公開番号】WO2005/068391
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(598065883)リュツゲルス ケミカルズ アクチエンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】