説明

環境制御装置、並びに環境制御方法

【課題】所定の空間における温度と湿度の高精度な制御が可能な環境制御装置及び環境制御方法の提供を目的とする。
【解決手段】恒温恒湿装置1に設けられた冷却装置10は、一連の冷凍サイクルを実行するもので、圧縮機12、凝縮器13、第一膨張弁14、蒸発器15、第二膨張弁16と、それらの機器を環状に接続する冷媒循環配管18を備えた冷凍機である。第二膨張弁16は、蒸発器15の下流側に位置するものである。第二膨張弁16の開度を調整することで、蒸発器15の出口を絞ることが可能である。蒸発器15に冷媒が注入され続けた状態で第二膨張弁16の開度を絞ると、蒸発器15内に滞留している冷媒ガスが圧縮されて、蒸発器15の表面の一部又は全部の温度が上昇する。また、蒸発器15の表面に付着した水分の一部又は全部が蒸発又は昇華する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境制御装置、並びに環境制御方法に関し、さらに詳細には、冷却装置を備え、所定の空間の温度と相対湿度とを目標の温度と相対湿度に制御する環境制御装置、並びに冷却能力と表面温度を変化させることができる温度変化部材を使用して所定の空間の温度と相対湿度とを目標の温度と相対湿度に制御する環境制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境試験装置と呼ばれる恒温恒湿装置は、装置内に設けられた所定の空間(以下、物品配置室という場合がある)に、所望の温度と湿度の環境を作ることが可能なものである。恒温恒湿装置は、一般に、加熱ヒータと、冷却装置と、加湿器を備えている。加熱ヒータは、電気ヒータで構成されるものであり、物品配置室を昇温することが可能である。冷却装置は、冷凍サイクルで構成されるものであり、気体状の冷媒を凝縮し、さらに蒸発器内で断熱膨張させることで、物品配置室を低温にすることが可能である。加湿器は、電気ヒータと蒸発皿の組み合わせで構成されるものであり、蒸発皿から水を蒸発させることで、物品配置室を加湿することが可能である。
【0003】
例えば、物品配置室に高温高湿環境を作る場合、加熱ヒータと加湿器を稼働させることで、高温であり高湿度の雰囲気とすることができる。この時、原則として冷却装置は停止させたままである。
一方、物品配置室に高温低湿環境を作る場合、加熱ヒータを稼働させて前記空間を高温にすると共に、冷却装置を起動させることで低湿度の雰囲気とすることができる。これは、冷却装置を除湿器として機能させるためであり、蒸発器の表面温度を露点以下として蒸発器に結露させることで、除湿を行う。しかし、冷却装置のみでは湿度の調整が難しく、実際の制御では、一旦所望の湿度を下回るまで除湿した後、加湿器を稼働させて微調整することで、所望の湿度に合わせている。
【0004】
さらに、低温低湿環境を作る場合、冷却装置を起動して低温となるまで冷却し、同時に冷却装置を除湿器として機能させることで、物品配置室を除湿する。しかし、冷却装置のみでは温度と湿度を所望の環境に調整するのが難しく、実際の制御では、一旦所望の温度と湿度を下回るまで冷却及び除湿した後、加熱ヒータと加湿器を稼働させて微調整することで、所望の温度と湿度に合わせている。
【0005】
このように、恒温恒湿装置では、低温低湿環境を作る場合において、過度に冷やしてから加熱することや、過度に除湿してから加湿すること等、無駄が多く、不経済である。
【0006】
特許文献1には、ホットガスを利用して物品配置室を昇温する技術が開示されている。特許文献1に記載された恒温恒湿器は、通常の冷凍回路を備えると共に、ホットガス経路という回路も備えている。ホットガス経路は、冷凍回路の圧縮機の下流側の配管を分岐させたものであり、蒸発器を通って、再度圧縮機に戻る閉回路となっている。ホットガス経路には電磁弁が設けられており、圧縮機で圧縮された高温高圧の冷媒ガスを蒸発器に供給することが可能である。
【0007】
通常、ホットガス経路は、蒸発器等に霜が付着した際に、除霜することを目的として利用されるものであるが、特許文献1では、ホットガス経路を除霜以外の用途にも利用することが記載されている。例えば、低温運転から新たな設定温度への昇温過程において、高温高圧のホットガスを蒸発器に供給することで、昇温時間の短縮を図ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−78230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記した様に、従来技術の恒温恒湿装置では、低温低湿環境を作る場合において、過度に冷やしてから加熱することや、過度に除湿してから加湿すること等、無駄が多く、不経済である。
【0010】
そこで、本発明は、物品配置室における温度と湿度の高精度な制御が可能であり、且つ従来よりも省エネルギーである環境制御装置の提供を目的とする。また、同様の課題を解決することができる環境制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために開発された請求項1に記載の発明は、
冷却装置を備え、所定の空間の温度と相対湿度とを目標の温度と相対湿度に制御する環境制御装置であって、
前記冷却装置は、圧縮機と、凝縮器と、開度を変更可能な第一膨張手段と、蒸発器とが環状に接続され、冷却装置の内部に相変化する冷媒が充填されていて一連の冷凍サイクルを実現して所定の空間を冷却可能な環境制御装置において、
蒸発器の下流側に開度を変更可能な第二膨張手段を備え、前記空間の温度及び絶対湿度を低下させて所望の温度及び相対湿度の環境に変化させる際に、次の工程を自動的に順次実行することを特徴とする環境制御装置である。
(1)圧縮機を駆動して冷却装置を運転し、主として前記空間の温度を低下させる温度降下工程。
(2)第一膨張手段の開度を絞った状態で冷却装置を運転し、蒸発器の表面で前記空間に含まれる水蒸気を凝縮させ、主として前記空間の相対湿度を低下させる湿度降下工程。
(3)第二膨張手段の開度を調節した状態で冷却装置を運転し、蒸発器の表面の温度を上昇させて蒸発器の表面に付着した水分の一部又は全部を蒸発又は昇華させる湿度調節工程。
【0012】
本発明で採用する環境制御装置は、圧縮機と、凝縮器と、開度を変更可能な第一膨張手段と、蒸発器とから成る冷凍サイクルを備えた冷却装置において、蒸発器の下流側に開度を変更可能な第二膨張手段を備えていることを特徴とする。そして、(1)〜(3)の各工程を実行して、前記空間を目標の温度と湿度に制御するものである。
【0013】
第一工程は、温度降下工程であって、圧縮機を駆動して冷却装置を運転する。本工程は、いわゆる「冷房運転」の概念に近い運転である。第一工程たる温度降下工程は、比較的大きな冷却能力を発揮させて冷却装置を運転する。その結果、所定の空間内の温度を急激に低下させることができる。第一工程たる温度降下工程では、多くの場合、絶対湿度及び相対湿度も低下するが温度降下工程は、湿度の低下よりも温度の低下を主目的としている。
【0014】
第二工程は、湿度降下工程であって、第一膨張手段の開度を絞った状態で冷却装置を運転する。本工程は、いわゆる「除湿運転」の概念に近い運転である。
湿度降下工程では、第一膨張手段の開度を絞ることで冷媒の蒸発圧が低下し、冷媒の温度が低下して蒸発器の表面温度が低下する。そのため蒸発器と接触する空気は、内包する水蒸気を凝縮させる。その結果、蒸発器と接触する空気は水蒸気を奪われて絶対湿度が低下し、相対湿度も低下する。
即ち第一膨張手段の開度を絞ったことで冷媒の温度が低下し、蒸発器の表面温度が露点以下まで低くなって、蒸発器の表面に結露し、所定の空間の相対湿度が低下する。
一方、第二工程たる湿度降下工程においても、所定の空間の温度が低下するが、温度低下勾配は、第一工程たる「温度降下工程」よりも小さい。
即ち「湿度降下工程」においては、第一膨張手段の開度が絞られている。そして第一膨張手段は、蒸発器の上流側にあるから、蒸発器に流れる冷媒の量は少なくなる。その結果、蒸発器の冷却能力自体が小さくなり、所定の空間の温度低下は少ない。
【0015】
第三工程は、湿度調節工程であって、第二膨張手段の開度を調節した状態で冷却装置を運転し、蒸発器の表面の温度を上昇させて蒸発器の表面に付着した水分の一部又は全部を蒸発又は昇華させるものである。詳述すると、第二膨張手段は、蒸発器の下流側に位置するものであり、第二膨張手段の開度を調節することで蒸発器の出口を絞ることが可能である。一方、冷却装置を運転することで蒸発器内には冷媒が注入され続ける。つまり、冷却装置を運転した状態で第二膨張手段の開度を絞ると、蒸発器内における冷媒の蒸発圧力が上昇し、蒸発器の表面の温度が第二工程の段階に比べて上昇する。
また蒸発器の出口側が絞られて、蒸発器内における冷媒の滞留時間が延びることよっても、蒸発器の表面の温度が第二工程の段階に比べて上昇する。
【0016】
また、第三工程たる湿度調節工程は、第二工程たる湿度降下工程の後に行われる工程であり、湿度調節工程を実施する際の蒸発器の表面には、水分が付着している。この蒸発器の表面に付着した水分の一部又は全部が、蒸発器の表面の温度が上昇することで蒸発又は昇華し、所定の空間内が加湿(相対湿度が上昇)される。換言すれば、蒸発器が「略加湿器」の役割を果たすものである。
すなわち、第二膨張手段の開度の調節具合と、冷却装置の運転によって、所定の空間内の温度と相対湿度を高精度に制御することが可能である。
【0017】
請求項2に記載の発明は、温度降下工程では、蒸発器の表面温度を目標環境の露点近傍となる様に制御し、湿度降下工程では、蒸発器の表面温度を目標環境の露点以下となる様に制御し、湿度調節工程では、蒸発器の表面温度を目標環境の露点以上に制御することを特徴とする請求項1に記載の環境制御装置である。
【0018】
本発明で採用する環境制御装置では、各工程において制御対象を、蒸発器の表面温度としている。詳述すると、温度降下工程では「目標環境の露点近傍」、湿度降下工程では「目標環境の露点以下」、湿度調節工程では「目標環境の露点以上」である。つまり、「目標環境の露点」を中心として制御することにより、容易に目標環境へと至らせることができる。
また温度降下工程では、蒸発器の表面温度を目標環境の露点近傍となる様に制御しているので、所定空間内の絶対湿度を過度に低下させることがない。即ち所定の空間の温度と絶対湿度とを低下させて所望の温度及び相対湿度の環境に変化させる場合、目標の環境は初期の環境よりも温度が低いので、目標環境の露点は、当然に初期の環境における温度よりも低い。そのため、蒸発器の表面温度を目標環境の露点近傍となる様に制御することによって、所定の空間の温度(気温)を低下させることができる。
ただし、蒸発器の表面温度は、目標環境の露点近傍であるため、前記した所定の空間内の絶対湿度を過度に低下させることはない。即ち蒸発器の表面温度が、目標環境の露点であるならば、仮に所定の空間内の温度が、蒸発器の表面温度に一致しても、所定の空間内の絶対湿度は、目標環境の絶対湿度に一致する。そのため所定の空間内の温度が目標温度に低下すれば、相対湿度が低下し、所定の空間内の相対湿度は目標の相対湿度と一致する。
また湿度降下工程では蒸発器の表面温度を「目標環境の露点以下」に調整している。そのため所定の空間内の相対湿度が低下する。ただし前記した様に、湿度降下工程では冷却能力自体が小さいので、所定の空間内の温度(気温)はあまり下がらない。
また湿度調節工程では蒸発器の表面温度を「目標環境の露点以上」に上昇させる。その結果、蒸発器の表面の結露水(又は結氷)が蒸発(又は昇華)し、所定の空間内の絶対湿度及び相対湿度を僅かに上昇させる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、湿度調節工程では、第一膨張手段の開度を温度降下工程の際に比べて絞った状態で冷却装置を運転することを特徴とする請求項1又は2に記載の環境制御装置である。
【0020】
本発明で採用する環境制御装置は、湿度調節工程では、第一膨張手段の開度を絞った状態で冷却装置を運転するものである。つまり、蒸発器の上流側(入口側)から流れ込む冷媒の量を少量とすることで、きめ細かな温度及び湿度の調節が可能となる。即ち本発明では、第一膨張手段の開度を温度降下工程の際に比べて絞った状態で冷却装置を運転するから、蒸発器の冷却能力が小さい。そのため所定の空間の温度(気温)の変化が少ない。
その結果、より高精度の湿度制御が可能となる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、所定の空間の温度を上昇可能な加熱手段を有し、加熱手段を使用する温度調整工程を実行することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境制御装置である。
【0022】
本発明で採用する環境制御装置は、所定の空間の温度を上昇可能な加熱手段を有するものである。前記の通り、「冷房運転」と「除湿運転」を行うと、前記空間が所望する温度以下にまで冷却されてしまう場合がある。その際に、加熱手段を用いることで、迅速且つ正確に目標の温度近傍まで昇温することが可能であり、前記空間を容易に目標の温度と湿度に制御できる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、冷却能力と表面温度を変化させることができる温度変化部材を使用して、所定の空間の温度と相対湿度とを、目標の温度と相対湿度に制御する環境制御方法において、
前記空間の温度と相対湿度とを所望の環境に変化させる際に、次の工程を順次実行することを特徴とする環境制御方法である。
(1)温度変化部材の表面温度を目標環境の露点近傍となる様に制御し、主として前記空間の温度を低下させる温度降下工程。
(2)温度変化部材の冷却能力を低下した状態で温度変化部材の表面温度を目標環境の露点以下となる様に制御し、温度変化部材の表面で前記空間に含まれる水蒸気を凝縮させ、主として前記空間の湿度を低下させる湿度降下工程。
(3)温度変化部材の冷却能力を低下した状態で温度変化部材の表面温度を目標環境の露点以上に制御し、温度変化部材の表面に付着した水分の一部又は全部を蒸発又は昇華させる湿度調節工程。
【0024】
本発明で採用する環境制御方法は、冷却能力と表面温度を変化させることができる温度変化部材を使用することを特徴とする。そして、(1)〜(3)の各工程を実行して、前記空間を目標の温度と湿度に制御するものである。
【0025】
第一工程たる温度降下工程は、温度変化部材の表面温度を「目標環境の露点近傍」となる様に制御するものであり、「冷房運転」の概念に近い運転である。
【0026】
第二工程たる湿度降下工程は、温度変化部材の表面で前記空間に含まれる水蒸気を凝縮させる工程であり、「除湿運転」の概念に近い運転である。
【0027】
第三工程たる湿度調節工程は、温度変化部材の冷却能力を低下した状態で温度変化部材の表面温度を「目標環境の露点以上」に制御し、温度変化部材の表面に付着した水分の一部又は全部を蒸発又は昇華させるものである。
本発明では、温度変化部材の温度を「目標環境の露点」を中心として変化させ、各工程を実行する。本発明では、温度変化部材の表面に確実に水分を付着させた後、水分の一部又は全部を蒸発又は昇華させることで、所定の空間内の温度と湿度を高精度に制御して目標環境へと至らせることができる。
【0028】
また所定の空間の温度を上昇可能な加熱手段を使用して、湿度降下工程と湿度調節工程との間に、前記空間を目標の温度まで上昇させる温度上昇工程を実行する工程を加えてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の環境制御装置によれば、所定の空間における温度と相対湿度の高精度な制御が可能である。また、本発明の環境制御方法によれば、同様の課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る恒温恒湿装置を示す概念図である。
【図2】恒温恒湿装置に備えられた制御装置のブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る恒温恒湿装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】恒温恒湿装置の動作状態を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態の環境制御装置の構成、及び環境制御方法について、図面を参照しながら説明する。なお、説明は、実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって、本願発明が制限して理解されるべきではない。
【0032】
図1に示す高温高湿装置1(環境制御装置)は、断熱材3で周囲を囲まれた筺体2を有している。筺体2は恒温恒湿槽5を成すものであり、内部は間仕切板4で物品配置室6と空調用通路7とに区切られている。なお、恒温恒湿槽5内の上部側と下部側には、物品配置室6と空調用通路7とが連通する開口が設けられている。
【0033】
物品配置室6は、環境試験の際に、試料となる機器や部品等を配置する空間で、当該室内の温度を検知する室内温度検知手段23と、当該室内の相対湿度を検知する室内湿度検知手段24が設けられている。室内温度検知手段23は、例えば、従来公知の熱電対やサーミスタ等の温度センサである。一方、室内湿度検知手段24は、例えば、湿球温度計である。
【0034】
空調用通路7には、下部側から順番に、蒸発器15、加熱ヒータ27、ファン26が配されている。
加熱ヒータ27は、従来公知の電気ヒータであり、空調用通路7を通過する空気を加熱するものである。
蒸発器15(温度変化部材)は、後述する冷却装置10の一部であり、内部に相変化する冷媒が流通するものであり、冷却能力と表面温度を変化させることができるものである。
ファン26は、従来公知の送風機であり、空気を送り出すものである。
【0035】
本実施形態の恒温恒湿装置1では、ファン26によって恒温恒湿槽5内の空気が循環して、物品配置室6内に所望の環境が作られる。すなわち、恒温恒湿槽5内の空気は、ファン26によって間仕切板4の下部側の開口から空調用通路7側に吸入され、空調用通路7を鉛直上方に向けて通過して、間仕切板4の上部側の開口から物品配置室6側に吐出される。
【0036】
より詳細に説明すると、ファン26が起動されると、空調用通路7内の空気がファン26に吸い込まれて、間仕切板4の上部側の開口から送り出される。これにより、物品配置室6内の壁面に沿うように空気の流れが形成される。そして、間仕切板4の下部側の開口に到達した空気が、再び空調用通路7内に導入される。空調用通路7には、前記したように、空気の流れ方向に沿って順番に蒸発器15、加熱ヒータ27が配置されているため、空調用通路7に導入された空気は、蒸発器15を通過してから、加熱ヒータ27側に流れる。
なお、恒温恒湿装置1は、室内温度検知手段23と室内湿度検知手段24によって、物品配置室6内の温度と湿度が監視され、後述する制御装置50で制御される。
【0037】
次に、本実施形態で採用する冷却装置10について説明する。
【0038】
冷却装置10は、気・液間で相変化する冷媒が流れる冷媒循環回路11を備えている。冷媒循環回路11は、相変化する冷媒を圧縮して凝縮し、これを蒸発させて冷却する一連のサイクル(冷凍サイクル)を実行するもので、圧縮機12、凝縮器13、第一膨張弁14、蒸発器15、第二膨張弁16と、それらの機器を環状に接続する冷媒循環配管18を備えた冷凍機である。第一膨張弁14並びに第二膨張弁16は、それぞれ開度を調整可能なものである。
なお、凝縮器13と第一膨張弁14の間には、電磁弁17が設けられている。
【0039】
また、蒸発器15の上流側には、第一冷媒温度検知手段20が設けられている。第一冷媒温度検知手段20は、例えば、従来公知の熱電対や温度センサである。第一冷媒温度検知手段20は、蒸発器15に流れ込む冷媒の温度を検知できる。
一方、蒸発器15の下流側には、第二冷媒温度検知手段21と、冷媒圧力検知手段22が設けられている。第二冷媒温度検知手段21は、第一冷媒温度検知手段20と同じく、従来公知の熱電対や温度センサである。第二冷媒温度検知手段21は、蒸発器15を通過した後の冷媒ガスの温度を検知できる。つまり、蒸発器15の蒸発温度を検知できる。冷媒圧力検知手段22は、例えば、従来公知の圧力センサである。
【0040】
ここで、本実施形態で採用する冷却装置10の作動原理について説明する。
冷媒循環回路11の圧縮機12を起動すると、気相状態の冷媒が圧縮され、凝縮器13で冷却されて、液化される。そして、その液状の冷媒は、第一膨張弁14を経て蒸発器15に入り、気化される。そして、蒸発器15が冷媒により温度降下され、空調用通路7を通過する空気を冷却することができる。蒸発器15に流れこむ冷媒の温度は、蒸発器15の上流側に設けられた第一冷媒温度検知手段20で検知される。
【0041】
公知の通り、第一膨張弁14の開度が大きい状態で、冷却装置10を運転すると、大量の冷媒が冷媒循環回路11を循環し、大きな冷凍能力を発揮する。本明細書では、この状態を「冷房運転」と称する場合がある。「冷房運転」においては、第一膨張弁14の開度が大きく開かれているので、蒸発器15に流れる冷媒の量は多くなり、蒸発器15の冷却能力が大きくなっている。
【0042】
また公知の通り、第一膨張弁14の開度を絞った状態で、冷却装置10を運転すると、冷媒の蒸発圧力が低下し、蒸発器15の表面温度が低下する。その一方で、冷媒循環回路11を循環する冷媒の量が減少し、冷凍能力は低下する。本明細書では、この状態を「除湿運転」と称する場合がある。即ち前記した「冷房運転」が実行されている状態で、第一膨張弁14を絞ると、第一膨張弁14を経て放出される冷媒は、極めて低温となる。その結果、蒸発器15の表面温度が露点以下まで低くなって、蒸発器15の表面に結露する。この時、第一膨張弁14の開度が絞られているので、蒸発器15に流れる冷媒の量は少なくなっており、蒸発器15の冷却能力が小さくなっている。
【0043】
ここで、本実施形態の恒温恒湿装置1の特有の構成である第二膨張弁16の働きについて、説明する。第二膨張弁16は、前記の通り、蒸発器15の下流側に位置するものである。第二膨張弁16の開度を調整することで、蒸発器15の出口を絞ることが可能である。前記の「冷房運転」又は「除湿運転」において、蒸発器15に冷媒が注入され続けた状態で第二膨張弁16の開度を絞ると、蒸発器15内における冷媒の蒸発圧力が上昇し、蒸発器15の表面の温度が第二工程の段階に比べて上昇する。
【0044】
また、「冷房運転」又は「除湿運転」を実行中の蒸発器15の表面には、空気中の水蒸気が凝結又は凝固して、水分が付着している。この蒸発器15の表面に付着した水分の一部又は全部が、蒸発器15の表面の温度が上昇することで蒸発又は昇華する。その結果、空調用通路7を通過する空気が加湿される。換言すれば、蒸発器15が「略加湿器」の役割を果たすものである。そのため、本実施形態の恒温恒湿装置1では、従来設けられていた加湿器を備えていない。
【0045】
次に、本実施形態の恒温恒湿装置1に備えられた制御装置と、他の機器との関係について説明する。
【0046】
本実施形態で採用する制御装置50は、図2に示すように、マイクロコンピュータやマイクロコントローラ、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)等によって構成されるCPU(中央処理装置)である。制御装置50は、入力されるプログラムに基づいて、他の機器を制御可能な装置である。制御装置50には、入力機器として、室内温度検知手段23、室内湿度検知手段24、冷媒温度検知手段20,21、冷媒圧力検知手段22が接続されている。そのため、入力機器の各々が検知する信号は、制御装置50に入力される。
一方、制御装置50には、出力機器として、圧縮機12、第一膨張弁14、第二膨張弁16、電磁弁17、ファン26、加熱ヒータ27が接続されている。そのため、制御装置50は、前記機器を制御することで、物品配置室6内を目標の温度と湿度に制御可能である。
【0047】
また本実施形態で採用する制御装置50は、冷媒温度検知手段20,21及び冷媒圧力検知手段22からの検知信号によって、蒸発器15の表面温度を演算する機能を備えている。即ち蒸発器15に導入される冷媒の温度を冷媒温度検知手段20で検知し、同時に蒸発器15内における冷媒の蒸発圧力を冷媒圧力検知手段22で検知し、両者から蒸発器15の表面温度を演算する。また蒸発器15の出口側における冷媒の温度(冷媒温度検知手段21の検知温度)によって演算を補正する。
あるいは蒸発器15に導入される冷媒の温度と、蒸発器15内における冷媒の蒸発圧力と、蒸発器15の表面温度の関係を予め実験によって求め、この実験データに照らして蒸発器15の表面温度を演算してもよい。
また単に、蒸発器15の入口側における冷媒の温度や出口側の冷媒の温度から蒸発器15の表面温度を求めてもよい。
【0048】
他の方策として、第一膨張弁14及び第二膨張弁16の開度と、蒸発器15の表面温度との関係を予め実験で求め、第一膨張弁14及び第二膨張弁16の開度から蒸発器15の表面温度を演算等で求めてもよい。
またこの際に、圧縮機12の回転数、冷媒圧力検知手段22の検知圧や雰囲気温度を参酌することが推奨される。
【0049】
また、制御装置50には、物品配置室6内(所定の空間内)の温度と相対湿度を、目標の温度と相対湿度(以下、目標環境と称する)に制御するため、以下のプログラムが格納されている。
一つ目は、蒸発器15の表面温度を「目標環境の露点近傍」となる様に第一膨張弁14を制御する温度降下プログラム50aである。温度降下プログラム50aは、前記した「冷房運転」を実行するものである。ここで、「露点近傍」とは、目標環境の露点温度のプラスマイナス5度、より望ましくは目標環境の露点温度のプラスマイナス3度の範囲の温度である。蒸発器15の表面温度は、前記した様に冷媒温度検知手段20,21及び冷媒圧力検知手段22からの検知信号に基づいて求められる。
【0050】
二つ目は、蒸発器15の表面温度を「目標環境の露点以下」となる様に第一膨張弁14を制御する湿度降下プログラム50bである。湿度降下プログラム50bは、前記した「除湿運転」を実行するプログラムである。ここで、「露点以下」とは、目標環境の露点からマイナス20度程度までの範囲の温度である。なお「目標環境の露点以下」の温度は、少なくとも前記した「目標環境の露点近傍」の温度よりも低い。
【0051】
三つ目は、加熱ヒータ27を動作させ、物品配置室6内を目標の温度に制御する温度調節プログラム50cである。
【0052】
四つ目は、蒸発器15の表面温度を「目標環境の露点以上」となる様に、第一膨張弁14と第二膨張弁16を制御する湿度調節プログラム50dである。湿度調節プログラム50dは、「温度と湿度の微調整」をするプログラムである。ここで、「露点以上」とは、目標の環境の露点に対して摂氏2度から5度程度高い温度である。「目標環境の露点以上」の温度は、目標環境の温度に対して過度に高い温度となることは好ましくない。
「目標環境の露点以上」は、次式で表される温度範囲であることが望ましい。
【0053】
【数1】

【0054】
【数2】

【0055】
続いて、本発明の実施形態の恒温恒湿装置1を用いた環境制御方法について図3を用いて説明する。
恒温恒湿装置1では、制御装置50によって、物品配置室6内を目標の温度と相対湿度に自動で制御する。
まず、自動プログラムの実行に先立ち、「目標環境」となる物品配置室6内の温度と湿度を制御装置50に入力して設定を行う。そして、制御装置50において、前述の温度降下プログラム50aから湿度調節プログラム50dまでを自動的に順次実行する。
【0056】
詳述すると、ステップ1で温度降下プログラム50aを実行し、物品配置室6内の温度が「目標環境の温度近傍」となるまで、「冷房運転」を行う。
即ち「冷房運転」が実行されると、第一膨張弁14の開度が比較的開かれた状態で冷却装置10が運転される(ステップ2)。即ち蒸発器15の冷却能力が大きい状態で運転される。また蒸発器15の表面温度が「目標環境の露点近傍」となる様に第一膨張弁14が制御される。
ここで、「目標環境の露点」は、当然に「目標環境の温度」以下であるから、物品配置室6内の温度は、図4のグラフの様に、「目標環境の温度」以下の温度たる「目標環境の露点」に向かって降下する。
【0057】
物品配置室6内の絶対湿度は図4のグラフの様に低下する。物品配置室6内の相対湿度は、理論上、図4のグラフの実線の様に上昇するが、実際には、破線の様に徐々に低下する。
【0058】
そしてステップ3で、物品配置室6内の温度が「目標環境の温度近傍」となるのを待つ。
ステップ3で物品配置室6内の温度が「目標環境の温度近傍」となったことが確認されると、ステップ4に移行し、湿度降下プログラム50bを実行し、物品配置室6内が「目標環境の相対湿度以下」となるまで、「除湿運転」を行う。
即ち第一膨張弁14を絞って蒸発器15の表面温度を「目標環境の露点以下」となる様に制御する(ステップ5)。
その結果、蒸発器15に結露し、物品配置室6内の相対湿度が低下する。ただし、「除湿運転」においては、冷却能力が小さいので、物品配置室6内の温度は大きくは変化しない。即ち「除湿運転」が実行されている間は、物品配置室6内の温度は「目標環境の温度近傍」を維持している。
【0059】
そしてステップ6で、物品配置室6内の相対湿度が「目標環境の相対湿度以下」となるのを待つ。
ステップ6で物品配置室6内の相対湿度が「目標環境の相対湿度以下」となったことが確認されると、ステップ7に移行し、湿度調節プログラム50dを実行し、物品配置室6内が目標環境の相対湿度となるまで、湿度の微調整を行う。
【0060】
湿度調節プログラム50dが実行されると、第二膨張弁16が絞られて蒸発器15の表面温度が上昇する。具体的には、蒸発器15の表面温度が「目標環境の露点以上」であって「目標環境の温度以下」となる様に、第二膨張弁16が制御される。
その結果、蒸発器15に付着していた結露水が気化し、物品配置室6内の相対湿度が僅かに上昇する。その結果、物品配置室6内の相対湿度が微調整される。
【0061】
また必要に応じて温度調整プログラム50cが実行され、物品配置室6内を目標の温度に制御する。
そして、温度調整プログラム50cと、湿度調節プログラム50dとを平行して実施し、物品配置室6内が「目標環境」となるまで、「温度と湿度の微調整」を行う。
【0062】
図4は、制御装置50の動作状態の具体例を示すタイムチャートである。図4のタイムチャートは、縦軸として上から順番に、室内温度(物品配置室6内の温度)、室内絶対湿度(物品配置室6内の絶対湿度)、室内相対湿度(物品配置室6内の相対湿度)、蒸発器温度(蒸発器15の表面温度)、冷却能力(蒸発器15の冷凍能力)、加熱ヒータ(加熱ヒータ27のON/OFF)、第一膨張弁の開度(第一膨張弁14の開度)、第二膨張弁の開度(第二膨張弁16の開度)を示している。横軸は、時間軸を示している。
【0063】
次に図4のタイムチャートについて、前記したステップ及びプログラム毎に解説する。
図4に示すタイムチャートは、開始時の環境が、摂氏10度、相対湿度が80パーセント(絶対湿度7.52グラム/立法メートル)であり、目標環境は、摂氏マイナス5度、相対湿度が60パーセント(絶対湿度2.05グラム/立法メートル)である場合を想定したものである。
なお開始環境における露点は、摂氏7度である。また目標環境の露点は、摂氏マイナス12度である。
【0064】
ステップ1以下で実行される温度降下プログラム50a(冷房運転)では、第一膨張弁14の開度が調節され、蒸発器温度(蒸発器15の表面温度)が図4の様に目標環境の露点の近傍たる摂氏マイナス15度〜摂氏マイナス9度程度となるように制御されている。この時の冷却能力は、図4の様に高い。即ちこの状態は、第一膨張弁14の開度が比較的大きく、冷却能力が高い。
その結果、室内温度が開始環境の温度たる摂氏10度から、蒸発器15の表面温度たる摂氏マイナス15度〜摂氏マイナス9度に向かって降下する。
なお蒸発器温度(蒸発器15の表面温度 摂氏マイナス15度〜摂氏マイナス9度)は、試験開始時における露点温度(摂氏7度)よりも低いので、蒸発器15の表面で水蒸気が凝縮し、物品配置室6内の絶対湿度が低下する。物品配置室6内の相対湿度は理論上、上昇するが、実際には低下してゆく。
【0065】
そしてステップ3で物品配置室6内の温度が「目標環境の温度近傍」となったことが確認されると、プログラムが湿度降下プログラム50bに切り替わり、「除湿運転」が行われる。
「除湿運転(湿度降下プログラム50b)」では、第一膨張弁14の開度が絞られ、蒸発器温度が低下される。例えば、蒸発器15の表面温度が、図4の様に、摂氏マイナス20度となる様に第一膨張弁14の開度が絞られる。この状態においては、図4に示すように先の「冷房運転」に比べて冷却能力が低くなっている。
その結果、図4の様に、室内の相対湿度が100%近傍から次第に低下して行く。なお室内温度の低下はわずかである。
この時、蒸発器15の表面には、物品配置室6内の空気中に含まれる水蒸気が凝結又は凝固して、水分が付着すると共に、過剰な水分はドレンとして排水される。
【0066】
ステップ6で物品配置室6内の相対湿度が「目標環境の相対湿度以下」となったことが確認されると、制御プログラムが、湿度調節プログラム50dに切り替わり、第二膨張弁16が絞られて蒸発器15の表面温度が上昇し、蒸発器15に付着していた結露水(結氷)が気化(昇華)し、図4の様に物品配置室6内の相対湿度が僅かに上昇する。その結果、物品配置室6内の相対湿度が微調整される。
即ち湿度調節プログラム50dでは、蒸発器温度が摂氏マイナス20から目標温度の近傍へと昇温するように、第二膨張弁16の開度が絞られている。この時、第一膨張弁14は絞られたままである。蒸発器15の温度上昇に伴い、蒸発器15の表面に付着した水分の一部又は全部が蒸発又は昇華する。その結果、室内の相対湿度は、例えば50パーセントから目標の相対湿度である60パーセントとなる。つまり、蒸発器15によって10パセントの加湿が行われる。なお、この時、蒸発器15の温度上昇は、僅かであるため、物品配置室6内の昇温にはほぼ寄与せず、室内温度は目標温度たる摂氏マイナス5度のまま維持されている。
【0067】
なお温度調節プログラム50cでは、加熱ヒータ27がオンオフ制御または比例制御され、その結果、室内温度が目標温度となる様に微調整される。
【0068】
上記の通り、摂氏0度以下の低温領域において、第一膨張弁14の開度と、第二膨張弁16の開度の制御によって、蒸発器15の表面温度を制御し、加湿を行うことができる。なお、前記具体例において、加熱ヒータ27を用いて物品配置室6内を昇温する例を示したが、加熱ヒータ27を用いず、蒸発器15だけで行っても構わない。
以上の通り、本発明の実施形態に係る恒温恒湿装置1(環境制御装置)、並びに恒温恒湿装置1を用いた環境制御方法によれば、物品配置室(所定の空間)6における温度と湿度の高精度な制御が可能である。
【0069】
本実施形態では、蒸発器15の上流側に第一冷媒温度検知手段20が設けられ、蒸発器15の下流側に第二冷媒温度検知手段21が設けられている。制御装置50は、両者によって、蒸発器15における出入口の冷媒の温度を監視して、第一膨張弁14の開度と、第二膨張弁16の開度を制御している。例えば、蒸発器15の上流側に流れ込む液相の冷媒の温度をT1とし、下流側から出てくる気相の冷媒の温度をT2とした場合において、下流側のT2が上流側のT1よりも低温となってしまうと、下流側から出てくる冷媒は液相となってしまう。液相の冷媒が冷媒循環回路11を流れて圧縮機12に到達すると、圧縮機12が壊れてしまう。いわゆる液バック現象である。そのため、制御装置50では、冷媒温度検知手段20,21で冷媒の温度を監視し、液バック現象が生じないような安全プログラムが格納されている。
【0070】
本実施形態では、高温高湿装置1に加湿器を備えない構成の例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図1に示した空調用通路7内に従来公知の加湿器を設けても構わない。
【0071】
なお本発明では、第二膨張弁16を絞って蒸発器15の温度を上昇させた。本発明を完成するに至るために行った実験では、蒸発器15にホットガスを導入して蒸発器15の温度を上昇させる方策も試みたが、この方策は、蒸発器15の温度が過度に昇温し、物品配置室(所定の空間)6の温度を乱してしまう問題があった。
【0072】
また上記した実施形態では、蒸発器15の表面温度を知る手段として、冷媒温度検知手段20,21及び冷媒圧力検知手段22の検出値から蒸発器15の表面温度を間接的に検知する方策を採用したが、蒸発器15の表面に温度センサー25(図1)を設け、温度センサー25によって蒸発器15の表面温度を直接検知してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 恒温恒湿装置(環境制御装置)
6 物品配置室(所定の空間)
10 冷却装置
12 圧縮機
13 凝縮器
14 第一膨張弁
15 蒸発器(温度変化部材)
16 第二膨張弁
25 温度センサー
27 加熱ヒータ(加熱手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却装置を備え、所定の空間の温度と相対湿度とを目標の温度と相対湿度に制御する環境制御装置であって、
前記冷却装置は、圧縮機と、凝縮器と、開度を変更可能な第一膨張手段と、蒸発器とが環状に接続され、冷却装置の内部に相変化する冷媒が充填されていて一連の冷凍サイクルを実現して所定の空間を冷却可能な環境制御装置において、
蒸発器の下流側に開度を変更可能な第二膨張手段を備え、前記空間の温度及び絶対湿度を低下させて所望の温度及び相対湿度の環境に変化させる際に、次の工程を自動的に順次実行することを特徴とする環境制御装置。
(1)圧縮機を駆動して冷却装置を運転し、主として前記空間の温度を低下させる温度降下工程。
(2)第一膨張手段の開度を絞った状態で冷却装置を運転し、蒸発器の表面で前記空間に含まれる水蒸気を凝縮させ、主として前記空間の相対湿度を低下させる湿度降下工程。
(3)第二膨張手段の開度を調節した状態で冷却装置を運転し、蒸発器の表面の温度を上昇させて蒸発器の表面に付着した水分の一部又は全部を蒸発又は昇華させる湿度調節工程。
【請求項2】
温度降下工程では、蒸発器の表面温度を目標環境の露点近傍となる様に制御し、
湿度降下工程では、蒸発器の表面温度を目標環境の露点以下となる様に制御し、
湿度調節工程では、蒸発器の表面温度を目標環境の露点以上に制御することを特徴とする請求項1に記載の環境制御装置。
【請求項3】
湿度調節工程では、第一膨張手段の開度を温度降下工程の際に比べて絞った状態で冷却装置を運転することを特徴とする請求項1又は2に記載の環境制御装置。
【請求項4】
所定の空間の温度を上昇可能な加熱手段を有し、加熱手段を使用する温度調整工程を実行することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境制御装置。
【請求項5】
冷却能力と表面温度を変化させることができる温度変化部材を使用して、所定の空間の温度と相対湿度とを、目標の温度と相対湿度に制御する環境制御方法において、
前記空間の温度と相対湿度とを所望の環境に変化させる際に、次の工程を順次実行することを特徴とする環境制御方法。
(1)温度変化部材の表面温度を目標環境の露点近傍となる様に制御し、主として前記空間の温度を低下させる温度降下工程。
(2)温度変化部材の冷却能力を低下した状態で温度変化部材の表面温度を目標環境の露点以下となる様に制御し、温度変化部材の表面で前記空間に含まれる水蒸気を凝縮させ、主として前記空間の湿度を低下させる湿度降下工程。
(3)温度変化部材の冷却能力を低下した状態で温度変化部材の表面温度を目標環境の露点以上に制御し、温度変化部材の表面に付着した水分の一部又は全部を蒸発又は昇華させる湿度調節工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−251716(P2012−251716A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124473(P2011−124473)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】