説明

環境対応型の豚用ペレットまたはクランブル飼料

【課題】豚の消化器官の発育を阻害せず、胃潰瘍が発生しないよう消化速度にも考慮した、排泄物を減量する環境対応型の豚用ペレットまたはクランブル飼料を提供する。
【解決手段】粒径が0.84mm未満である穀物の微粉を重量比で28%から42%を含有する飼料を豚に給与することで消化速度が速まり、排泄物を大幅に減量する。また、その飼料は粒径が0.84mmか4.00mmの穀物の粗粒を43%から57%含有することで、消化器官が適度に刺激され消化器官の成長を促進し、胃潰瘍の発生を予防する。また、その飼料はペレット、エクスパンダー等の造粒またはクランブル飼料にすることで、発育促進及び飼料効率の改善が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豚飼育用の環境対応型飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
豚の飼育においては、必要栄養成分を満足するように、各種原料を配合した飼料が給与される。その飼料には形状及び加工の違いによりマッシュ飼料、ペレット飼料、エクスパンダー飼料等がある。マッシュ飼料は原料を粗粒のまま配合したものであり、ペレット飼料、エクスパンダー飼料は原料を微粉状にして水蒸気、水、圧力等を加え成型したものである。また、ペレット飼料、エクスパンダー飼料を、粗挽きにしたものはクランブル飼料である。
【0003】
マッシュ飼料は粗粒の原料を使用するため食道、胃、小腸、大腸等の消化器官に対して刺激が大きく、その収縮運動により消化器官の発育を促進する効果がある。しかし、その反面、表面積が小さいことから消化率が悪く、飼料効率及び増体が悪い欠点と、排泄物量が多くなることで、処理コストがかかるだけでなく、排泄窒素が多くなり臭気が強くなることから、管理者の労働環境が悪化し、豚の健康を害し、周辺住民からの苦情となる。また、微量成分のビタミン、ミネラル等の分離が発生し、飼料中で偏り飼料効率及び増体が悪化し発育の個体差も発生する。
【0004】
ペレット、エクスパンダー飼料は微粉状の原料を成型するため食道、胃、小腸、大腸等の消化器官に対して刺激が小さく、表面積が大きく消化率が良くなることで飼育前期の飼料効率、増体の改善及び排泄物量が減少する。また、微量成分のビタミン、ミネラル等の分離が起こりにくく、飼料中で均一になるため飼料効率及び増体が改善し、体重の個体差が少なくなる。しかし、消化率が良いことで消化器官の成長が遅れ、飼育後期に満足する増体が得られないことがある。また、比重が小さいため食物内容が胃上部まで達し、胃上部に位置する噴門部が胃酸により潰瘍を起こし易い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、豚の飼育において消化器官の発育を阻害せず、飼料効率及び増体を改善し排泄物の減量を達成する環境型豚用ペレットまたはクランブル飼料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、特許請求の範囲の各請求項に記載した発明が構成される。
本発明の第1の発明は、粒径が0.84mm未満である穀物の微粉を重量比で28%から42%、好ましくは30%から40%含有しかつ粒径が0.84mmから4.00mmである穀物の粗粒を重量比で43%から57%、好ましくは45%から55%含有する豚用飼料である。ここで重量比とは飼料全体に対する重量比のことである。また、本発明にいう粒径が0.84mm未満とは日本工業規格に定める標準篩の呼び寸法0.84mmを通過した程度の粒径のことを意味する。粒径が0.84mmから4.00mmであることは日本工業規格に定める標準篩の呼び寸法4.00mmの篩は通過するけれども、0.84mmの篩は通過しない程度の粒径のことを意味する。粒径が0.84mm未満である穀物の微粉を重量比で28%から42%含有することとしたのは、微粉の含有量がこれより少ないと、消化速度が遅くなり、飼料効率及び増体が悪化するためである。また、微粉の含有量がこれより多いと、消化速度が速くなり過ぎて、消化器官の発達に遅れが生じることと、胃潰瘍の原因にもなるためである。排泄物の減量には微粉が40%含有されていることが好ましい。さらに、粒径が0.84mmから4.00mmの穀物の粗粒を43%から57%含有することとしたのは、粗粒の含有量がこれより少ないと、消化速度が速くなり過ぎて、消化器官の発達に遅れが生じることと、また、粗粒の含有量がこれより多いと、消化速度が遅くなり、飼料効率及び増体が悪化する原因になるためである。排泄物の減量には粗粒を45%含有されていることが好ましい。
【0007】
本発明のうち第2の発明は、上記した第1の発明において穀物の微粉及び粗粒は、とうもろこし、マイロ、米、大麦、小麦、ライ麦、エン麦、タピオカ、サツマイモからなる群より選択される少なくとも1種の穀物の微粉及び粗粒である豚用飼料である。これらの穀物を配合することで、必要栄養成分を十分に満足し、穀物の微粉及び粗粒を確実に配合することが可能となる。
【0008】
本発明のうち第3の発明は、上記した第1の発明である豚用飼料をペレット、エクスパンダー等の加工により造粒またはクランブル加工した豚用飼料である。本発明の第1の発明である豚用飼料をペレット、エクスパンダー等の造粒加工をすることにより、消化器官の発育を妨げず、消化率、嗜好性を改善し、排泄物の減量となる。
【0009】
本発明のうち第4の発明は、上記した第1の発明である豚用飼料の、0.84mmから4.00mmである穀物の粗粒以外をペレット、エクスパンダー等で造粒またはクランブル加工したものと他原料と混合することで、造粒加工に係る経費も割合分となるため、第4の発明である安価な環境対応型豚用ペレットまたはクランブル飼料となる。
【発明の効果】
【0010】
豚の消化器官の発育を阻害せず、胃潰瘍が発生しないよう消化速度にも考慮した、環境対応型豚用ペレットまたはクランブル飼料を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。本発明に係わる豚用飼料は、粒径が0.84mm未満である穀物の微粉を重量比で28%から42%、好ましくは30%から40%含有しかつ粒径が0.84mmから4.00mmである穀物の粗粒を重量比で43%から57%、好ましくは45%から55%含有する豚用飼料である。ここで、本発明による豚とは、例えば家畜として飼育される豚のことを示しており、主として食用豚肉を生産する目的で飼育される豚のことを示している。また、食用豚肉を生産する目的で飼育される豚の親としての目的で飼育される豚のことも示している。
【0012】
本発明の豚用ペレットまたはクランブル飼料は、以下の2つの方法により製造することが出来る。
第1の方法は、粒径が0.84mm未満である穀物の微粉を重量比で28%から42%含有しかつ粒径が0.84mmから4.00mmである穀物の粗粒を重量比で43%から57%含有する豚用飼料を全てペレット、エクスパンダー等で造粒またはクランブル加工する方法である。
第2の方法は、粒径が0.84mm未満である穀物の微粉を含む、粒径が0.84mmから4.00mmである穀物の粗粒以外の部分をペレット、エクスパンダー等で造粒またはクランブル加工したものと粒径が0.84mmから4.00mmである穀物の粗粒を混合する方法である。以下、2つの方法についてそれぞれ詳細に説明する。
【0013】
第1の方法では、予め使用する穀物をロール粉砕器により粉砕し、呼寸法0.84mmと4.00mm篩により、粒径が0.84mm未満である穀物の微粉と粒径が0.84mmから4.00mmである穀物の粗粒を分別しておく。穀物の粗粒の形状は円柱状、球状、ブロック状等どのような形状であってもよい。その他の原料は一般的な形状でよい。予めロール粉砕器、篩により分別してある穀物の粒径が0.84mm未満である微粉を重量比で28%から42%と、粒径が0.84mmから4.00mmである粗粒を重量比で43%から57%及びその他の原料を必要栄養成分になるようにビタミン、ミネラル、アミノ酸とともに予め混合しておく。その混合した原料を加圧蒸気及び水による前処理後、ペレットマシンにより円柱状に加圧成型する。エクスパンダー等による前処理を施してからペレット造粒することもできる。ペレット造粒後、食べやすいようにロール粉砕器により、挽き割にすることでクランブル飼料を製造することができる。排泄物の減量を最大にする場合は粒径が0.84mm未満である微粉を重量比で40%と、粒径が0.84mmから4.00mmである粗粒を重量比で45%にすることが好ましい。
【0014】
第2の方法では、第1の方法と同じく予め使用する穀物をロール粉砕器により粉砕し、呼寸法0.84mmと4.00mm篩により、粒径が0.84mm未満である穀物の微粉と粒径が0.84mmから4.00mmである穀物の粗粒を分別しておく。穀物の粗粒の形状は円柱状、球状、ブロック状等、どのような形状であってもよい。その他の原料は一般的な形状でよい。
粒径が0.84mm未満である穀物の微粉が最終飼料中に重量比で28%から42%含むように、その他の原料を混合し、穀物の粗粒以外の原料部分を加圧蒸気及び水による前処理後、ペレットマシンにより円柱状に加圧成型する。エクスパンダー等による前処理を施してからペレット造粒することもできる。ペレット造粒後、食べやすいようにロール粉砕器により、挽き割にすることでクランブル飼料を製造することができる。ペレットまたはクランブル飼料と粒径が0.84mmから4.00mmである粗粒を重量比で45%から55%混合し、最終のペレットまたはクランブル飼料となる。排泄物の減量を最大にする場合は粒径が0.84mm未満である微粉を重量比で40%と、粒径が0.84mmから4.00mmである粗粒を重量比で45%にすることが好ましい。
【0015】
本発明の豚用ペレットまたはクランブル飼料を給与すると、消化吸収が良好になることで、飼料効率及び増体が改善され、飼料中に含有される穀物の粗粒により、特に子豚段階での消化器官の成長が促進され肥育後期の増体が改善される。
【0016】
本発明の豚用クランブル飼料は、豚の肥育前期、後期のいずれの時期でも給与することができる。肥育前期(30kgから70kg)に給与した場合は、消化器官の成長が促進され健康な子豚になり飼料効率及び増体が改善され、さらに排泄物の減量となる。肥育後期(70kgから110kg)に給与した場合は、栄養価に偏りがないため、ビタミン、ミネラル、アミノ酸等の微量成分が均一に摂取でき、個体差が小さくなり出荷時選別の労力も減少する。また、肥育後期飼料は一般的に給餌器内のブリッジによる詰まりが発生しやすいが、本発明のペレットまたはクランブル飼料には粗粒の穀物が混合されているため流動性が良く、ブリッジは起こらない。さらに、排泄物の減量となる。また、胃潰瘍を予防する。
【0017】
また、本発明の豚用ペレットまたはクランブル飼料には、粒径が0.84mmから4.00mmである粗粒を重量比で43%から57%混合してあるため、後期飼料をさらに安価なマッシュ飼料に切り替えたとしても、消化器官が十分に発達しているため、消化に問題なくスムーズに移行できる。
【0018】
さらに、本発明の豚用ペレットまたはクランブル飼料は、粗粒の穀物以外は微粉であり、その中にビタミン、ミネラル、アミノ酸等の微量成分が含まれ、ペレットまたはクランブル加工してあるため、豚が常に均一の栄養を摂取でき、環境対応型の低たんぱく質飼料の精密な設計に最も適応している。
【実施例】
【0019】
本発明をさらに具体化した実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
実施例1
本発明の第1の方法による豚用クランブル飼料を製造して試験区とし、対照区1には従来型マッシュ飼料、対照区2には従来型の豚用クランブル飼料を用い、体重約40kgの雄10頭、雌10頭の子豚に給与し、体重約80kgまで飼育試験を実施した。全て原料は同じ割合であるが、穀物のとうもろこし、マイロの粒径は調整した。各原料の配合割合は表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
本発明の第1の方法による豚用クランブル飼料と従来型のクランブル飼料は、予め表1の通り混合した原料を加圧蒸気及び水による前処理後、エクスパンダー加工を施し、ペレットマシンにより円柱状に加圧成型した。さらに、クランブルマシンにより、豚が食べやすい大きさに挽き割し、豚用クランブル飼料とした。従来型のマッシュ飼料は表1の通り原料を混合した。
【0023】
環境が同じ飼育場に体重を測定した子豚を20頭ずつ入れ、飼育試験を実施した。飼料及び飲み水は自由摂取とし豚の体重を30日、58日後に測定し1日当たり増体を算出した。また、30日後、58日後に飼料摂取量を測定し飼料要求率を算出した。これらの測定結果と算出結果は以下の表2に示す。
【0024】
【表2】

【0025】
表2に示すとおり、試験区における30日後の1日当たりの増体は0.966kgであったのに対し、対照区1は0.850kgと有意に劣っていた。対照区2は0.953kgとやや劣っていたが、大きな差ではなかった。また、試験区の30日から58日後の1日当たりの増体は0.607kgであったのに対し、対照区1は0.496kg、対照区2は0.504kgと有意に劣っていた。つまり、本発明の第1の方法による豚用クランブル飼料は従来型のマッシュ飼料と比較して、体重約40kgから約80kgでは全期間の増体が改善することが確認できた。従来型のクランブル飼料は体重約40kgから約80kgにおいて、前半は微粉が多いため増体に大きな差はなかったが、後半は消化器官の成長が遅れることと、胃潰瘍の前兆により増体が伸び悩んだことが確認できた。
【0026】
排泄物重量を各区測定するために、体重約70kgの豚を雄2頭、雌2頭ずつ、7日間飼育しその排泄物重量を測定した。飼料は1日3kgの制限給餌とした。測定結果と算出結果を以下の表3に示す。
【0027】
【表3】

【0028】
表3に示すとおり、試験区における7日間の1頭1日当たりの平均排泄物量が0.65kgであったのに対し、対照区1では1.70kg、対照区2では0.82と有意に多くなった。つまり、本発明の第1の方法による豚用クランブル飼料を給与することにより、肥育前期の約70kgの豚において排泄物を減量することが確認できた。
【0029】
実施例2
本発明の第1の方法による豚用クランブル飼料を製造し試験区とし、対照区1は従来型マッシュ飼料、対照区2は従来型の豚用クランブル飼料を用い、体重約80kgの雄10頭、雌10頭の子豚に給与し、体重約105kgまで飼育試験を実施した。全て原料は同じ割合であるが、穀物のとうもろこし、マイロの粒径は調整した。各原料の配合割合は表4に示す。
【0030】
【表4】

【0031】
本発明の第1の方法による豚用クランブル飼料と従来型のクランブル飼料は、予め表4の通り混合した原料を加圧蒸気及び水による前処理後、エクスパンダー加工を施し、ペレットマシンにより円柱状に加圧成型した。さらに、クランブルマシンにより、豚が食べやすい大きさに挽き割し、豚用クランブル飼料とした。従来型のマッシュ飼料は表4の通り原料を混合した。
【0032】
環境が同じ飼育場に体重を測定した子豚を20頭ずつ入れ、飼育試験を実施した。飼料及び飲み水は自由摂取とし豚の体重を30日後に測定し1日当たり増体を算出した。また、30日後、飼料摂取量を測定し飼料要求率を算出した。これらの測定結果と算出結果は以下の表5に示す。
【0033】
【表5】

【0034】
表5に示すとおり、試験区における30日後の1日当たり増体は0.816kgであったのに対し、対照区1は0.783kgと有意に劣った。対照区2は0.803kgとやや劣ったが、大きな差はなかった。つまり、本発明の第1の方法による豚用クランブル飼料は従来型のマッシュ飼料と比較して、体重約80kgから約105kgでは1日当たり増体が改善することが確認できた。
【0035】
上記の各区約105kgの豚を屠殺し、その肉質、歩留まり、胃潰瘍状況を確認した。その結果を以下の表6に示す。
【0036】
【表6】

【0037】
表6に示すとおり、試験区において平均枝肉重量が74.8kgであったのに対し、対照区1では68.9kg、対照区2では70.2kgであった。つまり、同日数での飼育期間において、本発明の第1の方法による豚用クランブル飼料は、従来型マッシュ飼料及び従来型クランブル飼料に較べ、枝肉重量が大きくなり、飼育日数が短くできることが確認できた。
【0038】
また、試験区において平均枝肉歩留まりが68.0%であったのに対し、対照区1では62.9%、対照区2では66.5%となり有意に低い。つまり、同日数での飼育区間において、本発明の第1の方法による豚用クランブル飼料は消化器官の発達に伴い、消化吸収が良くなり飼料要求率が改善、歩留まりも向上することが確認できた。
【0039】
枝肉の格付けにおいて、試験区は上物率45%であったのに対し、対照区1は25%、対照区2は35%である。つまり、同日数での飼育期間において、本発明の第1の方法による豚用クランブル飼料は適正な体重、肉色、脂肪色、きめ、背脂肪厚、ロース芯等の規格に適合した枝肉に仕上がる確認ができた。
【0040】
胃潰瘍の状態は、試験区において胃潰瘍軽度以上の数が6頭であったのに対し、対照区1では5頭、対照区2では15頭である。つまり、同日数での飼育区間において、本発明の第1の方法による豚用クランブル飼料は従来型マッシュ飼料と同程度の胃潰瘍の影響であり、従来型のクランブル飼料では、消化率等の悪影響のみならず、最悪の場合は死亡する危険性を持つことが確認できた。
【0041】
排泄物重量を各区測定するために、体重約100kgの豚を雄2頭、雌2頭ずつ、5日間飼育しその排泄物重量を測定した。飼料は1日2.5kgの制限給餌とした。測定結果と算出結果を以下の表7に示す。
【0042】
【表7】

【0043】
表7に示すとおり、試験区における5日間の1頭1日当たりの平均排泄物量が0.61kgであったのに対し、対照区1では2.06kg、対照区2では0.85と有意に多くなった。つまり、本発明の第1の方法による豚用クランブル飼料を給与することにより、肥育後期の約100kgの豚において排泄物を減量することが確認できた。
【0044】
実施例3
次に本発明の第2の方法による豚用クランブル飼料について説明する。
【0045】
本発明の第2の方法による豚用クランブル飼料を製造して試験区とし、対照区1には従来型マッシュ飼料、対照区2には従来型の豚用クランブル飼料を用い、体重約30kgの雄5頭、雌5頭の子豚に給与し、体重約70kgまで飼育試験を実施した。全て原料は同じ割合であるが、穀物のとうもろこし、マイロの粒径は調整した。各原料の配合割合は表8に示す。
【0046】
【表8】

【0047】
本発明の第2の方法による豚用クランブル飼料は、表8のとうもろこしの粗粒0.84mmから4.00mm及びマイロの粗粒0.84mmから4.00mm以外の原料を予め混合しておき、その混合した原料を加圧蒸気及び水による前処理後、エクスパンダー加工を施し、ペレットマシンにより円柱状に加圧成型する。さらに、クランブルマシンにより、豚が食べやすい大きさに挽き割にする。その挽き割された原料を50%と、とうもろこしの粗粒0.84mmから4.00mmを35%及びマイロの粗粒0.84mmから4.00mmを15%混合し、本発明の第2の方法による豚用クランブル飼料を製造した。
【0048】
従来型のクランブル飼料は、予め表8の通り混合した原料を加圧蒸気及び水による前処理後、エクスパンダー加工を施し、ペレットマシンにより円柱状に加圧成型した。さらに、クランブルマシンにより、豚が食べやすい大きさに挽き割し、豚用クランブル飼料とした。従来型のマッシュ飼料は表8の通り原料を混合した。
【0049】
環境が同じ飼育場に体重を測定した子豚を10頭ずつ入れ、飼育試験を実施した。飼料及び飲み水は自由摂取とし豚の体重を60日後に測定し1日当たり増体を算出した。また、60日後に飼料摂取量を測定し飼料要求率を算出した。これらの測定結果と算出結果は以下の表9に示す。
【0050】
【表9】

【0051】
表9に示すとおり、試験区における60日後の1日当たりの増体は0.805kgであったのに対し、対照区1は0.743kg、対照区2は0.773kgである。つまり、本発明の第2の方法の豚用クランブル飼料は従来型マッシュ、従来型クランブル飼料と比較して、増体が改善することが確認できた。
【0052】
排泄物重量を各区測定するために、体重約60kgの豚を雄2頭、雌2頭ずつ、5日間飼育しその排泄物重量を測定した。飼料は1日3kgの制限給餌とした。測定結果と算出結果を以下の表10に示す。
【0053】
【表10】

【0054】
表10に示すとおり、試験区における5日間の1頭1日当たりの平均排泄物量が0.72kgであったのに対し、対照区1では1.60kg、対照区2では0.80と有意に多くなった。つまり、本発明の第2の方法による豚用クランブル飼料を給与することにより、肥育前期の約60kgの豚において排泄物を減量することが確認できた。
【0055】
実施例4
本発明の第2の方法による豚用クランブル飼料を製造して試験区とし、対照区1は従来型マッシュ飼料、対照区2は従来型の豚用クランブル飼料を用い、体重約70kgの雄5頭、雌5頭の子豚に給与し、体重約110kgまで飼育した。全て原料は同じ割合であるが、穀物のとうもろこし、マイロの粒径は調整した。各原料の配合割合は表11に示す。
【0056】
【表11】

【0057】
本発明の第2の方法による豚用クランブル飼料は、表11のとうもろこしの粗粒0.84mmから4.00mm及びマイロの粗粒0.84mmから4.00mm以外の原料を予め混合しておき、その混合された原料を加圧蒸気及び水による前処理後、エクスパンダー加工を施し、ペレットマシンにより円柱状に加圧成型する。さらに、クランブルマシンにより、豚が食べやすい大きさに挽き割にする。その挽き割された原料を45%と、とうもろこしの粗粒0.84mmから4.00mmを30%及びマイロの粗粒0.84mmから4.00mmを25%混合し、本発明の第2の方法による豚用クランブル飼料を製造した。
【0058】
従来型のクランブル飼料は、予め表11の通り混合した原料を加圧蒸気及び水による前処理後、エクスパンダー加工を施し、ペレットマシンにより円柱状に加圧成型した。さらに、クランブルマシンにより、豚が食べやすい大きさに挽き割し、豚用クランブル飼料とした。従来型のマッシュ飼料は表11の通り原料を混合した。
【0059】
環境が同じ飼育場に体重を測定した子豚を10頭ずつ入れ、飼育試験を実施した。飼料及び飲み水は自由摂取とし豚の体重を60日後に測定し1日当たり増体を算出した。また、60日後に飼料摂取量を測定し飼料要求率を算出した。これらの測定結果と算出結果は以下の表12に示す。
【0060】
【表12】

【0061】
表12に示すとおり、試験区における60日後の1日当たりの増体は0.860kgであったのに対し、対照区1は0.790kgと有意に劣っていた。対照区2は0.838kgとやや劣っていたが、大きな差はなかった。つまり、本発明の第2の方法による豚用クランブル飼料は従来型のマッシュ飼料と比較して、体重約70kgから約110kgでは増体が改善することが確認された。
【0062】
上記の各区約110kgの豚を屠殺し、その肉質、歩留まり、胃潰瘍状況を確認した。その結果を以下の表13に示す。
【0063】
【表13】

【0064】
表13に示すとおり、試験区において平均枝肉重量が73.4kgであったのに対し、対照区1では69.4kg、対照区2では72.2kgである。つまり、同日数での飼育区間において、本発明の第2の方法による豚用クランブル飼料は、従来型マッシュ飼料及び従来型クランブル飼料に較べ、枝肉重量が大きくなり、飼育日数が短くできることが確認された。
【0065】
また、試験区において平均枝肉歩留まりが68.3%であったのに対し、対照区1は63.6%、対照区2は67.0%となり有意に低い。つまり、同日数での飼育期間において、本発明の第2の方法による豚用クランブル飼料は消化器官の発達に伴い、消化吸収が良くなり飼料要求率が改善することで、歩留まりも向上することが確認できた。
【0066】
枝肉の格付けにおいて、試験区は上物率40%であったのに対し、対照区1では30%、対照区2は30%である。つまり、同日数での飼育期間において、本発明の第2の方法による豚用クランブル飼料は適正な体重、肉色、脂肪色、きめ、背脂肪厚、ロース芯等の規格に適合した枝肉に仕上がることが確認できた。
【0067】
胃潰瘍の状態は、試験区において胃潰瘍軽度以上の数が3頭であったのに対し、対照区2では2頭、対照区2では8頭である。つまり、同日数での飼育期間において、本発明の第2の方法による豚用クランブル飼料は従来型マッシュ飼料と同程度の胃潰瘍の影響であり、従来型のクランブル飼料は消化率等の悪影響のみならず、最悪の場合は死亡する危険性を持つことが確認できた。
【0068】
排泄物重量を各区測定するために、体重約100kgの豚を雄2頭、雌2頭ずつ、5日間飼育試験を実施しその排泄物重量を測定した。飼料は1日3.0kgの制限給餌とした。測定結果と算出結果を以下の表14に示す。
【0069】
【表14】

【0070】
表14に示すとおり、試験区における5日間の1頭1日当たりの平均排泄物量が0.78kgであったのに対し、対照区1では2.16kg、対照区2では0.92と有意に多くなった。つまり、本発明の第2の方法による豚用クランブル飼料を給与することにより、肥育後期の約100kgの豚において排泄物を減量することが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径が0.84mm未満である穀物の微粉を重量比で28%から42%含有しかつ粒径が0.84mmから4.00mmである穀物の粗粒を重量比で43%から57%含有する豚用飼料。
【請求項2】
穀物はとうもろこし、マイロ、米、大麦、小麦、ライ麦、エン麦、タピオカ、サツマイモからなる群より選択される少なくとも1種の穀物の粉粒である請求項1に記載の豚用飼料。
【請求項3】
請求項1に記載の豚用飼料をペレット、エクスパンダー等の造粒機により造粒またはクランブル加工した豚用飼料。
【請求項4】
請求項1に記載の豚用飼料の微粉部分のみをペレット、エクスパンダー等の造粒機により造粒またはクランブル加工し、粗粒部分と混合した豚用飼料。