説明

環境対応型固化材

【課題】 廃セッコウボードを地盤改良や建設残土の固化処理等の土地改良に用いる環境対応型固化材を提供する。
【解決手段】 この発明に係る環境対応型固化材は、二水セッコウに生石灰或は消石灰を加えて構成した。そして、二水セッコウ粉末100重量%に対し、生石灰或は消石灰を50〜300重量%加えて構成した。また、二水セッコウとして廃石膏ボードを粉砕したものを用いた。セッコウに石灰を加えることによりpH10以上とすることができ、硫酸還元菌の活動を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、セッコウ、特に廃セッコウボードを地盤改良や建設残土の固化処理等の土地改良に用いる環境対応型固化材に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、セッコウボードの生産量は年間500万トンに迫っており、今後、さらに増加すると予想されている。これに伴い、セッコウボード廃材も今後増大すると予想されている。
【0003】
しかし、セッコウボードの廃棄物は、pHが中性であるため、硫酸還元菌が繁殖し、有害な硫化水素を発生する、という問題を有していた。このため、セッコウボード廃棄物は、管理型廃棄処分場への処分が義務付けられ、処理費用が嵩む、という問題も有していた。
【0004】
このため、セッコウが中性であることに着目し、セメントや石灰処理によりアルカリ性にすることができない土質、地盤において二水セッコウを焼成して得られる半水セッコウが地盤改良、建設残土固化処理等の土質改良に用いられているのが現状である(特許文献1参照)。
【0005】
因みに、硫化水素は、次の7つの条件が全て満たされたときに発生の可能性がある。
(1)液体状態の水の存在。
(2)利用可能な有機物の存在。
(3)利用可能な硫酸イオン(セッコウ等の硫酸化合物を含む)の存在。
(4)空気の欠如(嫌気的状態)。
(5)硫酸還元菌の存在。
(6)pH 4〜9。
(7)最適な温度範囲(30〜38℃)。
【0006】
この内、(7)以外はセッコウ系改良土中では通常備えられており、何がしかの条件で温度が上昇すれば硫化水素発生による被害が懸念される。
【0007】
また、pHについては、第19回廃棄物学会研究発表講演論文集705−707(2008)において、正本氏らは浸出水のpHを9以上に保つことにより硫化水素の発生が抑制される、と述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−001667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明者らは、廃セッコウボードの発生量が増加し、管理型廃棄物処理場が不足することを想定し、また、廃セッコウボードを焼成して地盤改良などに用いる場合の硫化水素の発生を防止することができる環境対応型固化材を創出した。具体的には、セッコウに石灰を加える。セッコウとしては、二水塩、半水塩或は無水塩のいずれかを用いることができるが、本発明では、焼成の必要がなく経済的な二水塩が好適である。石灰としては、消石灰或は生石灰のいずれも用いることができる。
【0010】
そして、セッコウに石灰を加えることによりpH10以上とすることができ、硫酸還元菌の活動を抑えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る環境対応型固化材は、二水セッコウに生石灰或は消石灰を加えたことを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の環境対応型固化材を技術的前提とし、二水セッコウ粉末100重量%に対し、生石灰或は消石灰を50〜300重量%加えたことを特徴とするものである。
【0013】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の環境対応型固化材を技術的前提とし、二水セッコウとして廃石膏ボードを粉砕したものを用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る環境対応型固化材によれば、廃セッコウボード粉砕品を地盤等の土質改良に用いる場合、pHを高くすることにより硫化水素の発生リスクを無くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施例を、以下に説明をする。
【0016】
〔実施例〕
セッコウは、大阪府内で製造されている廃セッコウボード粉砕品を、消石灰は菱光石灰社製特号を用い、半水セッコウは、上記廃セッコウボード粉砕品を155℃で4.5時間エアバス中で加熱し他者を用いた。表1において、上段が比較用半水セッコウ、下段が本発明品である。
【0017】
【表1】

【0018】
表1からも明らかなように、半水セッコウは強度が低いものの中性であり、中性固化材としての機能は発揮しているのが判る。
【0019】
これに対し、本発明品の固化処理土のpHは、10以上であり、硫化水素の発生の心配がない。固化強度もセッコウの10倍程度を確保できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二水セッコウに生石灰或は消石灰を加えてなる環境対応型固化材。
【請求項2】
二水セッコウ粉末100重量%に対し、生石灰或は消石灰を50〜300重量%加えてなる請求項1に記載の環境対応型固化材。
【請求項3】
二水セッコウとして廃石膏ボードを粉砕したものを用いることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の環境対応型固化材。

【公開番号】特開2011−195410(P2011−195410A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65949(P2010−65949)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【出願人】(390006758)株式会社立花マテリアル (17)
【Fターム(参考)】