説明

環境浄化装置

【課題】湖沼内の水の滞留を防止するために、従来のポンプや水車によって水を循環させる方式では、大きな動力が必要であった。また、低電力化した従来の浮遊型浄水機では、広大な対象範囲では十分な効果を発揮できなかった。
【解決手段】水面に浮かぶための浮力を有する本体部11と、本体部11から水中に向けて鉛直方向に設けられた回転軸16に固定され、回転した際に水を上向きに吸い上げるまたは下向きに推進させるスクリュー形状の羽根17と、本体部11に設けられ、回転軸16を回転させるモータ12とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湖沼などの水を浄化する環境浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、湖沼では、水質劣化およびそれに付随する悪臭の発生が問題になっている。
【0003】
この問題の主な原因は、湖沼内での水の滞留であり、その結果嫌気性バクテリアの増殖や水華(アオコ等)の異常発生が起こり、悪臭や水質劣化を引き起こして水生動植物へ深刻な被害を与えている。
【0004】
このような問題を防止するために、従来は、ポンプによって水を強制循環させたり、水車によって水を循環させたり、空気を水中に噴出させる(以下、エアレーションと呼ぶ)ことによって溶存酸素を強制的に増加させたりしていた。
【0005】
ポンプにより水を強制循環させる方法では、動力が大きく、また、湖底の水を吸い上げることに付随した汚泥のつまり等が懸念されるため、煩雑なメンテナンスを使用者側に負担してもらわなければならない。
【0006】
水車により水を循環させる方法も、ポンプ使用と同様に動力が大きい。また、沿岸付近での攪拌しかできないため、十分な効果を得るためには対象湖沼の周囲の複数箇所に取り付けなければならない。その結果、より多くの動力源が必要となり使用コストが増大する。
【0007】
エアレーション方式の場合も、空気を噴出するための動力が大きい。また、この方式の場合は、水中に酸素を送り込むのみなので湖沼全体の攪拌効果は小さい。また、噴出力が推進力に変わってしまうので、装置を陸上で固定しなければならず、局地的な効果しか得られない。
【0008】
上述した方式は、いずれも大きな動力が必要となるため、消費電力が問題となる。これらの方式における消費電力の問題に対して、小さな電力で水の滞留を防止する浮遊型省エネ浄水機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
図19に、特許文献1で提案されている浮遊型省エネ浄水機を池に浮かべた状態を側面から見た断面図を示す。
【0010】
この浮遊型省エネ浄水機は、フロート103によって池の水面101に浮かべられ、モータ102によってフロート付き起流羽根104をゆっくり回転させる。
【0011】
図20に、フロート付き起流羽根104を下から見た図を示す。
【0012】
なお、図19および図20において、浮遊型省エネ浄水機によって生じる水中の水の流れを白抜き矢印で示している。
【0013】
図20に示すように、フロート付き起流羽根104には、モータ102の回転軸108から外周に向かう半径方向に沿った4枚の羽根107が、水面101に対して垂直な面となるよう設けられている。
【0014】
フロート付き起流羽根104がゆっくり回転することにより、その回転の中心から放射状に流れる水の流れが水面に作られる。その流れは、図19の白抜き矢印で示すように、空気と接触して酸素を取り込み、太陽の光を受けながら方向を下向きに変え、水底106を這うように流れて元の回転の中心に戻り、再び上昇して循環を繰り返す、というものである。
【0015】
水の透明化を図るために、その水の流れの場の中に微生物濾過マット105が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許3360075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記した従来の浮遊型省エネ浄水機では、ダムや大型湖等の水深が深く対象面積の広大な場所で用いた場合には、水の滞留防止の効果を十分に得ることができない。
【0018】
図19および図20に示した従来の浮遊型省エネ浄水機は、水深が浅く対象面積が狭い場合には、水の流れが消滅せずに水の循環によって水の滞留防止の効果が発揮される。しかし、この浮遊型省エネ浄水機は、水面の水を横へ押し出すことによって生じる汲み上げ効果を利用するものであるため、水を汲み上げる力が小さく、水深が深く対象面積が広い場合には、水の流れが弱く、十分な水の滞留防止の効果を発揮できない。
【0019】
また、湖沼の浄化方法として、水底の有害物質や汚泥を分解除去するバクテリアを水底に送り込む方法もあるが、従来の浮遊型省エネ浄水機では、そのようなバクテリアを水底に送り込むことができない。
【0020】
本発明は、上記従来の浮遊型省エネ浄水機の課題を考慮して、広大な対象範囲においても低電力で水の滞留防止効果を発揮でき、有害物質を分解除去するバクテリアを水底に送り込める環境浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した課題を解決するために、第1の本発明は、
水面に浮かぶための浮力を有する本体部と、
前記本体部から水中に向けて鉛直方向に設けられた回転軸に固定され、回転した際に水を上向きに吸い上げるまたは下向きに推進させるスクリュー形状の羽根と、
前記本体部に設けられ、前記回転軸を回転させるモータとを備えた環境浄化装置である。
【0022】
また、第2の本発明は、
前記本体部の側面、下面および前記本体部に連結された周辺付属部材の少なくともいずれかの少なくとも水に接する部分は、前記羽根の回転方向の逆方向への前記本体部の回転を抑制する形状をしている、第1の本発明の環境浄化装置である。
【0023】
また、第3の本発明は、
前記少なくとも水に接する部分は、前記羽根が回転することで生じる水流が当たることによって、前記本体部が前記羽根の回転方向と同方向に回転する力を生じさせる形状をしている、第2の本発明の環境浄化装置である。
【0024】
また、第4の本発明は、
前記周辺付属部材は、前記本体部から周辺に突き出た棒と、前記棒に取り付けられた椀部または板部とを有している、第2の本発明の環境浄化装置である。
【0025】
また、第5の本発明は、
前記本体部の底部は、すり鉢形状をしており、前記羽根側に出っ張っている、第1の本発明の環境浄化装置である。
【0026】
また、第6の本発明は、
前記本体部または前記本体部に連結された周辺付属部材は、ロープ状の係止部材によって水底に固定された固定具と連結されている、第1の本発明の環境浄化装置である。
【0027】
また、第7の本発明は、
前記本体部または前記周辺付属部材に滑車が取り付けられており、
前記係止部材は、前記滑車に架けられ、前記固定具に接続されていない側の端部に錘が取り付けられており、
水面が下降した際には、前記錘の重さによって前記錘が取り付けられている側の前記端部が引き下げられ、前記固定具と前記滑車間における前記係止部材の弛みが抑制される、第6の本発明の環境浄化装置である。
【0028】
また、第8の本発明は、
前記係止部材の上端が、前記回転軸の下端に回動自在に連結されている、第6の本発明の環境浄化装置である。
【0029】
また、第9の本発明は、
前記本体部は、複数の前記固定具と、それぞれ前記係止部材によって連結されており、
前記複数の係止部材は、前記本体部から所定距離の位置で、リング状部材のリング部分の互いに離れた位置に固定されており、
複数の前記リング状部材が、隣接する前記係止部材を交差させない間隔で設けられている、第6の本発明の環境浄化装置である。
【0030】
また、第10の本発明は、
前記周辺付属部材は、
水中において鉛直方向の向きとなる浮力を有し、下端が前記係止部材に接続されている棒状部材と、
前記本体部に前記棒状部材を回動可能または上下動可能に連結する連結具とを有している、第6の本発明の環境浄化装置である。
【0031】
また、第11の本発明は、
前記羽根とは逆方向に回転し、前記羽根の回転方向の逆方向への前記本体部の回転を抑制する第2の羽根を備えた、第1の本発明の環境浄化装置である。
【0032】
また、第12の本発明は、
前記羽根が回転することにより上向きに吸い上げられるまたは下向きに推進される水が内部を通過するように、前記羽根の少なくとも下方に配置されたダクトを備えた、第1の本発明の環境浄化装置である。
【0033】
また、第13の本発明は、
水底の有害物質を分解除去するバクテリアを収納し、前記ダクトの前記羽根よりも下方の側面に連通しているバクテリア収納庫と、
前記本体部の上面から前記バクテリアを流し込むためのバクテリア投入口と、
前記バクテリア投入口に流し込まれた前記バクテリアが、前記バクテリア収納庫に流れ込むように、前記本体部を前記バクテリア収納庫に連結するパイプ部とを備え、
前記ダクト内の水は、前記羽根が回転することにより下向きに推進される、第12の本発明の環境浄化装置である。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、広大な対象範囲においても低電力で水の滞留防止効果を発揮でき、有害物質を分解除去するバクテリアを水底に送り込める環境浄化装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)本発明の実施の形態1の環境浄化装置をダムに浮かべたときの模式側面図、(b)本発明の実施の形態1の環境浄化装置の、蓋部を取り外した状態の上面図
【図2】本発明の実施の形態1の環境浄化装置の、他の形状の本体部の斜視図
【図3】本発明の実施の形態1の環境浄化装置の、水底から上方へ向けての水の流れを発生させる場合の、他の形状の本体部の側面図
【図4】本発明の実施の形態1の環境浄化装置の、水底へ向けての水の流れを発生させる場合の、他の形状の本体部の側面図
【図5】本発明の実施の形態1の環境浄化装置の、羽根の回転の反作用によるトルクによって生じる回転力を水流を利用して抑制する、本体部の底部の形状を示す斜視図
【図6】本発明の実施の形態1の、本体部の空気中に接している部分の体積を小さくした構成の環境浄化装置の側面図
【図7】(a)本発明の実施の形態1の、羽根の回転の反作用トルクによって本体部に生じる回転力を抑制する構造を備えた環境浄化装置の側面図、(b)本発明の実施の形態1の、羽根の回転の反作用トルクによって本体部に生じる回転力を抑制する構造を備えた環境浄化装置の側面図
【図8】(a)本発明の実施の形態1の、本体部が羽根とは反対方向に回転する回転抑制板を備えた環境浄化装置の側面図、(b)本発明の実施の形態1の、本体部が羽根とは反対方向に回転する回転抑制椀部を備えた環境浄化装置の側面図
【図9】本発明の実施の形態1の、太陽光発電を利用した環境浄化装置の断面模式図
【図10】本発明の実施の形態2の環境浄化装置の係留方法を説明する図
【図11】本発明の実施の形態2の、本体部が回転しても水中でロープが絡まない構造とした環境浄化装置の係留方法を説明する図
【図12】(a)本発明の実施の形態2の環境浄化装置の回動自在締結部の具体的な構造例を示す図、(b)本発明の実施の形態2の環境浄化装置の回動自在締結部の具体的な他の構造例を示す図、(c)本発明の実施の形態2の環境浄化装置の回動自在締結部の具体的な他の構造例を示す図
【図13】本発明の実施の形態2の、本体部が回転しても水中でロープが絡まない構造とした環境浄化装置の他の係留方法を説明する図
【図14】本発明の実施の形態2の、本体部が回転しても水中でロープが絡まない構造とした環境浄化装置の他の係留方法を説明する図
【図15】本発明の実施の形態2の、本体部が回転しても水中でロープが絡まない構造とした環境浄化装置の他の係留方法を説明する図
【図16】本発明の実施の形態2の、本体部が回転しても水中でロープが絡まない構造とした環境浄化装置の他の係留方法を説明する図
【図17】本発明の実施の形態3の環境浄化装置の側面図
【図18】本発明の実施の形態3の、バクテリアを効率的に水底に送り込む構成とした環境浄化装置の側面図
【図19】従来の浮遊型省エネ浄水機を池に浮かべた状態を側面から見た断面図
【図20】従来の浮遊型省エネ浄水機のフロート付き起流羽根を下から見た図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0037】
(実施の形態1)
図1(a)に、浄化対象のダムに本発明の実施の形態1の環境浄化装置を浮かべた状態を模式的に表した側面図を示す。
【0038】
本実施の形態1の環境浄化装置10は、ダムや湖沼などに浮遊させて使用するものであり、設置した場所から沿岸などへ流されてしまわないように、水底に設置したアンカーなどによって係留されて使用されるが、図1(a)では係留するための部材の図示を省略している。
【0039】
環境浄化装置10の本体部11は、モータ12、電池13、ギヤボックス14、回転軸16、および複数のフロート玉18を備えており、モータ12、電池13、およびギヤボックス14は、蓋部15によって密閉され防水されている。
【0040】
図1(b)は、蓋部15を取り外した状態の本体部11の上面図を示している。
【0041】
フロート玉18は、水に対して浮力を有する球状の部材であり、図1(a)および(b)に示すように、本体部11の下部にリング状に配置されている。複数のフロート玉18をこのようにリング状に配置することで、本体部11は、風や波によって裏返されることなく安定して水面を浮遊することができる。
【0042】
フロート玉18として、例えば、発砲スチロールや、密閉された中空のボールなどを使用することができる。
【0043】
モータ12は、電池13の電力によって駆動され、ギヤボックス14によってモータ12の回転速度および回転方向が適切に変換されて、本体部11の下面の中央から鉛直方向に突き出た回転軸16をゆっくりと回転させる。なお、実機によるテストを行ったところ、7〜30rpm程度のゆっくりした速度で回転軸16を回転させたときでも、水の滞留を防止する効果が十分に発揮されることを確認できた。
【0044】
本体部11から下方に突き出た回転軸16の先端部分には、船舶等に用いられる推進力を持ったスクリュー形状の羽根17が取り付けられており、回転軸16とともに回転する。
【0045】
回転軸16は、正逆両方向に回転可能であり、羽根17の回転方向に応じて、羽根17の下部の水を上に吸い上げる、または下に推進させる。
【0046】
図1(a)の白抜き矢印は、羽根17の回転によって生じる水の流れを示している。図1(a)に示すように、羽根17の回転方向に応じて、羽根17と水底の間に、上向きまたは下向きの水の流れが生じる。
【0047】
本実施の形態1の環境浄化装置10は、鉛直方向に推進力が生じる向きにスクリュー形状の羽根17を設けているので、羽根17が回転することで水の深い場所より竜巻回転による水の汲み上げ作用が発生し、水底から水面へ向けての水の流れが生じる。
【0048】
水底付近より汲み上げられた水は、水面で、環境浄化装置10から放射状に拡散しながら空気と接触し溶存酸素量を増加させる。溶存酸素量が増加することにより湖沼に生息する好気性バクテリアの増殖が促進され、また嫌気性バクテリアの増殖を抑制できる。そして、嫌気性バクテリアの増殖が抑制されることにより、悪臭の主因であるメタン等の発生も抑制させることができる。
【0049】
羽根17の回転に応じた汲み上げ、拡散効果により濁りの元となる浮遊物を均一に分散させると、浮遊物、汚泥等が核となり小さなかたまり(フロック)が形成される。このフロックは微生物のすみかとなり、やがて魚などの餌となり消滅する。この効果により水の浄化が促進され、より水中へ日光が届くことで好気性バクテリアの活動をさらに活性化することができる。
【0050】
このように、本実施の形態1の環境浄化装置10は、より深くの水を竜巻回転により汲み上げる方式としたことにより、広範囲の水を攪拌することを実現した。環境浄化装置10の中心から竜巻回転を起こすため、水底の攪拌効果は高く、同条件の水深において、図19に示したような従来の浮遊型省エネ浄水機よりも、より多くの水質改善効果をもたらすことができる。
【0051】
したがって、本実施の形態1の環境浄化装置10は、対象範囲の大きいダムや大型湖などでも、水を循環させることができ、水の滞留を防止することができる。
【0052】
また、本実施の形態1の環境浄化装置10は、水上に浮かぶフロート式を用いており、羽根17は上下推進機能のみなので、ほぼ定位置にて攪拌を行うことができる。
【0053】
また、浮遊式なので移動設置が簡単にできるという効果もある。
【0054】
また、駆動力は減速した動力(7〜30rpm程度)を用いるため、高トルク、低電力でもある。
【0055】
また、水底に向けての水の流れを生じさせることもできるので、その水の流れを利用して有害物質を分解除去するバクテリアを水底に送り込むこともできる。
【0056】
また、本実施の形態1の環境浄化装置の本体部は、図1のような形状に限らず、安定して水面に浮かぶ形状であればどのような形状であってもよい。
【0057】
図2は、本実施の形態1の環境浄化装置の本体部の、他の形状の一例を示している。なお、図2では、羽根の部分の図示を省略している。
【0058】
図2に示した環境浄化装置は、回転動力部19と、回転動力部19に接続されるフロートパイプ20の2つの部分で本体部を構成している。
【0059】
フロートパイプ20は、回転動力部19を取り囲むように中空の密閉されたパイプがリング状に接続されており、このような構造にすることにより水面に安定して浮かぶことができる。
【0060】
図3に、水面で拡散する水の流れを効果的に発生させる形状とした構成の、本実施の形態1の他の環境浄化装置の側面図を示す。
【0061】
図3に示した環境浄化装置25の本体部26は、底部29が、回転軸27の部分を頂点とする、羽根28側に出っ張ったすり鉢形状をしている。
【0062】
スクリュー形状の羽根28を、下から見て左回りに回転させると、水底から羽根28に向けての水の流れが発生する。羽根28から上方に向かう水の流れは、すり鉢形状の底部29に沿って回転軸27の部分から放射状に滑らかに向きを変えて進んでいく。
【0063】
図1に示した環境浄化装置10の本体部11の場合、その下面が平面であるため、水の流れは羽根17から上方に進んで本体部11の下面に垂直に当たって拡散していくのに対し、図3に示した本体部26の場合には、その底部29の形状により、水の流れが上向きから水平な放射状の向きに滑らかに変化するので、図1の場合よりも、水面を拡散する水の流れが強くなる。
【0064】
底部29をこのような形状としたことにより、水面を拡散していく水の流れを強くできるので、より効果的に水を循環させることができる。
【0065】
図3は、環境浄化装置25で水底から水を吸い上げる場合について説明したが、図4は、図3に示した環境浄化装置25で、水底に向けて水を推進させる場合の説明図を示している。
【0066】
図4に示すように、スクリュー形状の羽根28を、下から見て右回りに回転させると、羽根28から水底へ向けての水の流れが発生する。羽根28は、上方の水を吸い込んで水底に向けて推進させるが、すり鉢形状の底部29に沿って水面の水が滑らかに羽根28の上部へと流れていくので、より効果的に水底に向けて水を推進させることができる。
【0067】
効果的に水を循環させるための本体部の底部の形状として、図3および図4に示すような円錐形状の場合を例に説明したが、その他の形状でもよく、例えば、回転軸部分から周囲に向けて円錐の側面が湾曲しているような形状であってもよい。
【0068】
本実施の形態1のように浮遊させて用いる環境浄化装置は、羽根が回転する際、羽根の回転による反作用のトルクが生じて、羽根の回転方向とは逆向きの回転力が本体部に作用する。例えば環境浄化装置を複数のロープで係留していた場合、水量が減って水深が浅くなった場合に本体部が回転すると、弛んだ複数のロープ同士が絡まる恐れがある。
【0069】
したがって、羽根の回転によって生じる本体部に対する回転力を抑制するのが望ましい。
【0070】
図2に示した環境浄化装置では、回転動力部19下部の、水に接する部分の側面21を、箱型の凹部が並んだ形状としている。回転動力部下部の側面21の、これらの隣接する箱型の凹部の仕切り板が抵抗となって、羽根の回転によって本体部に生じる回転力は抑制される。
【0071】
また、本体部の底部を、羽根の回転によって生じる水の流れを利用して、羽根の回転の反作用トルクによって生じる回転力とは反対向きの回転力が本体部に作用するような形状としてもよい。
【0072】
図5に、水の流れを利用してそのような回転力を生じさせる本体部の底部の形状の斜視図を示している。
【0073】
図5に示した底部の形状は、底部の正面に向かっての水流を受けた場合に、底部に設けられた段差の角度によって、底部を正面から見て回転軸を中心として左回りに本体部を回転させる力を生じさせるような形状としている。すなわち、羽根28の回転方向と同方向(この場合は、下から見て左回り)に本体部を回転させる力を生じさせるような形状としている。
【0074】
例えば、図3に示すような環境浄化装置25において、その底部の形状を図5に示すような形状とすればよい。
【0075】
図3に示す環境浄化装置25において、羽根28を下から見て左回りに回転させると、水底から羽根28に向けての水の流れが発生する。このとき、羽根28の回転による反作用のトルクにより、本体部26には、下から見て右回りに回転させる力が作用する。一方、羽根28によって水底から吸い上げられた水は、羽根28から本体部26の底部に向けて上方に流れる。底部が図5に示すような形状をしているので、羽根28から上方に向けての水流が底部に当たることにより、本体部26に、下から見て左回りに回転する力が生じる。
【0076】
羽根28の回転による反作用のトルクによって本体部26に作用する回転力と、水流が底部に当たることによって本体部26に生じる回転力の向きが逆なので、これらの回転力が相殺されて、羽根の回転による反作用のトルクによって本体部に生じる回転力を抑制することができる。
【0077】
図5に示す段差の角度を変えることにより、羽根28から底部に向けての水流によって本体部26に生じる回転力の大きさを調整することができる。
【0078】
図5に示す底部の形状は、水平な面に段差を設ける構成を例に説明したが、図3のような底部29の円錐形状の側面に、図5に示すような段差を設ける構成としてもよい。
【0079】
また、水よりも空気の方が抵抗が小さいため、羽根の回転による反作用のトルクによって本体部に作用する回転力が同じ場合であっても、本体部の空気中に接している部分の体積が大きいほど本体部が回転しやすくなる。
【0080】
したがって、本体部の空気中に接している部分の体積を小さくすることにより、羽根の回転による反作用のトルクによる本体部の回転を抑制することができる。
【0081】
図6に、本体部の空気中に接している部分の体積を小さくした環境浄化装置の側面図を示す。
【0082】
図6に示した環境浄化装置の本体部30は、本体部30のほぼ全体が水に接して浮遊するような浮力に調整されている。したがって、本体部30は、羽根の回転による反作用のトルクによる回転が生じ難くなる。
【0083】
但しこの場合、水面上から環境浄化装置の位置を視認しづらくなるため、図6に示すように、本体部30の上部に環境浄化装置の位置を明示するための旗31を立てている。
【0084】
環境浄化装置の位置が水上の離れた位置から確認できればよいので、旗31に限らず、例えば、本体部30の上部に棒を立てて、その先端に取り付けたLEDを点滅または点灯させるようにしてもよい。
【0085】
また、羽根の回転による反作用のトルクによって本体部に作用する回転力を抑制する構造を本体部に設けるようにしてもよい。
【0086】
図7(a)に、羽根の回転による反作用のトルクによって本体部に作用する回転力を抑制する構造を本体部に付加した環境浄化装置の側面図を示す。
【0087】
本体部32の四方にそれらの先端が水中に位置するような周辺に突き出た棒を設け、それらの棒腕の先端に回転抑制板33を取り付けている。回転抑制板33は、本体部32の回転を効果的に抑制できるように、その面が水面に対して垂直となる方向に取り付けられている。
【0088】
また、本体部の回転を抑制する棒の先端部分として、回転抑制板33板の代わりに、平面ではなく椀形状を有する部材を取り付けてもよい。
【0089】
図7(b)は、羽根の回転による反作用のトルクによって本体部に作用する回転力を椀形状の部材(回転抑制椀部37)で抑制するようにした構造の環境浄化装置の側面図を示す。
【0090】
なお、本体部32から周辺に突き出した棒と、その棒の先端に取り付けられた回転抑制板33板または回転抑制椀部37とを組み合わせた構成が、本発明の、本体部の周辺付属部材の一例にあたる。
【0091】
また、羽根の回転による反作用のトルクによって本体部に作用する回転力をより効果的に抑制する構造としてもよい。
【0092】
図8(a)に、羽根とは反対方向に回転する回転抑制板を本体部に設けた環境浄化装置の側面図を示す。
【0093】
本体部34は、羽根28を回転させる回転軸27と同軸で反対向きに回転する第2回転軸35を備えており、第2回転軸35から水平に取り付けられた複数の棒の先端に回転抑制板36が取り付けられている。
【0094】
羽根28の回転による反作用のトルクによって本体部に作用する回転力を効果的に相殺するために、回転抑制板36は、その面が水面に対して垂直となる方向に取り付けられている。
【0095】
図8(b)に、羽根とは反対方向に回転し、その回転する向きに凹部を向けた椀形状の部材を設けた構成の環境浄化装置の側面図を示す。
【0096】
図8(b)の本体部34には、第2回転軸35から周辺に突き出た棒の先に、その回転する向きに凹部が向くように、椀形状をした回転抑制椀部38を設けている。
【0097】
図8(a)で用いた平面状の回転抑制板36よりも効率よく本体部34の回転を抑制できるので、図8(a)の場合よりも小さな動力で、本体部34の回転を抑制できる。
【0098】
なお、第2回転軸35に取り付けられた回転抑制板36または回転抑制椀部38が、本発明の第2の羽根の一例にあたる。
【0099】
第2回転軸35は、回転軸27を回転させるモータとは別のモータを設けて回転させるようにしてもよいし、回転軸27を回転させるモータを共通に使用して、ギヤ構造により回転方向および回転数を変化させて第2回転軸35を回転させるようにしてもよい。
【0100】
なお、羽根28の回転による反作用のトルクによって本体部に作用する回転力を抑制する構造として、図5〜図8に示した各構造を2種類以上組み合わせた構造としてもよい。
【0101】
また、本実施の形態1の環境浄化装置は、低電力により駆動できるので、太陽光発電を利用することもできる。
【0102】
図9に、太陽光発電を利用した本実施の形態1の環境浄化装置の断面模式図を示す。
【0103】
図9に示すように、本体部40内に、モータ41、ギヤボックス42、および充電池43を備えており、上面にソーラーパネル44が配置されている。モータ41が、充電池43またはソーラーパネル44からの電力によって駆動され、ギヤボックス42によって回転方向および回転速度が変換されて、回転軸27が回転する。
【0104】
昼間は、太陽光を受けて、ソーラーパネル44で発電された電力によってモータ41が駆動されるとともに、充電池43が充電される。そして、太陽光を受けない夜間には、モータ41は、充電池43からの電力によって駆動される。
【0105】
このような構成とすることにより、電池の交換をすることなく、環境浄化装置を長期間、動作させることができる。
【0106】
(実施の形態2)
実施の形態1における説明では、環境浄化装置を係留する構造については、図および説明を省略したが、浮遊させて使用する環境浄化装置は、風や波によって沿岸などに流されていかないように係留する必要がある。本発明の実施の形態2では、環境浄化装置の係留方法について説明する。
【0107】
対象範囲の狭い池などで使用する場合には、岸からロープなどによって係留することができるが、対象範囲が広大なダムや大型湖などで使用する場合には、岸からの距離が遠すぎるため、水底に設置した固定具によって係留することになる。
【0108】
図10に、本実施の形態2の環境浄化装置の係留方法を説明する図を示す。ここでは、係留方法を説明する例として、図3および図4に示した環境浄化装置25を用いて説明する。
【0109】
環境浄化装置25の側面の互いに離れた複数箇所にロープ締結具45が設けられている。そして、水底の互いに離れた箇所にアンカー46を固定し、各アンカー46と各ロープ締結具45を、ロープ47によって繋いでいる。ここでは、アンカー46を離れた3箇所に配置しているが、アンカー46は、水底の離れた2箇所以上の離れた位置に配置すればよい。
【0110】
なお、アンカー46が、本発明の固定具の一例にあたり、環境浄化装置25とアンカー46を連結しているロープ47が、本発明の係止部材の一例にあたる。この場合、本発明の係止部材として、ロープ47に代えて鎖などを使用してもよい。
【0111】
各ロープ47の長さは、降雨などによって水面が上昇した場合でも、環境浄化装置25が水没しないような長さに調整されている。
【0112】
環境浄化装置25は、風や波の影響や、羽根の回転によって生じる反作用のトルクの影響によって、その本体部が回転する場合がある。水面が下降しロープ47が弛んでいるときに本体部が回転すると、水中で各ロープ47が絡んでしまう。
【0113】
図11に、本体部が回転しても水中でロープ47が絡まない構造とした係留方法を説明する図を示す。
【0114】
図11に示すように、この環境浄化装置25は、回転軸27の先端部分の回動自在締結部48に繋がれる1本のロープ47によって、水底に固定設置したアンカー46に繋がれている。
【0115】
回動自在締結部48は、環境浄化装置25の本体部および回転軸27に対して、ロープ47が自由に動けるような締結構造をしている。
【0116】
もし、ロープ47を、環境浄化装置25の本体部に対して自由に動けない締結構造とした場合には、本体部の回転力によってロープ47が捩れて、ロープ47の実質的な長さが短くなり、また環境浄化装置25が水面上を自由に動けなくなってしまうからである。
【0117】
図12(a)〜(c)は、図11の環境浄化装置25の回転軸27の先端部分を示しており、それぞれ回動自在締結部48の具体的な構造例である。
【0118】
図12(a)に示す構造では、回転軸27の内側に、回転軸27と同軸の自由回転軸50が設けられており、その先端に回動用金具51が接続され、回動用金具51にロープ47の先端部分が繋がれている。
【0119】
自由回転軸50は、環境浄化装置25の本体部および回転軸27に対して自由に回転できるようになっている。回動用金具51は、回動部52によって自由回転軸50と接続されており、回動部52において、自由回転軸50の回転中心と垂直な方向を回転中心として、自由回転軸50に対して回動自在となっている。
【0120】
図12(b)に示す構造では、回転軸27の内側に、回転軸27と同軸の固定軸53が設けられており、その先端に回動用金具54が接続され、回動用金具54にロープ47の先端部分が繋がれている。
【0121】
固定軸53は、本体部に固定されており、回転軸27が回転しても回転しないようになっている。回動用金具54は、回動部55によって固定軸53と接続されており、回動部55において球形状の先端を有しており、その球形状の部分が固定軸53の先端部分に嵌合され、固定軸53の下方の範囲において、固定軸53に対して回動自在となっている。
【0122】
また、ロープ47の回動用金具54に繋がれている部分に回動自在金具56が設けられており、ロープ47の先端部分が、ロープ47の長手方向を中心に自在に回転するようになっている。
【0123】
図12(c)に示す構造では、固定軸53の先端に回動自在金具57が接続され、回動自在金具57にロープ47の先端部分が繋がれている。
【0124】
回動自在金具57は、回動部58によって固定軸53と接続されており、回動部58において球形状の先端を有しており、その球形状の部分が固定軸53の先端部分に嵌合され、固定軸53の下方の範囲において、固定軸53に対して回動自在となっている。
【0125】
また、回動自在金具57は、回動部58の球形状の部分に対して、ロープ47に繋がれる部分が自在に回動できる構造を有している。
【0126】
なお、図12(b)および(c)において、固定軸53を、本体部に固定される構造として説明したが、図12(a)の自由回転軸50のように、本体部に対しても自由に回動できる構造の軸としてもよい。
【0127】
図12(a)〜(c)に示したいずれの構造においても、環境浄化装置25の本体部が回転しても、ロープ47はその回転力の影響を受けないので、ロープ47は捩れない。また、環境浄化装置25に対してロープ47によって斜めに引っ張られる力が加わる場合でも、環境浄化装置25は、横方向の力の影響を受けず姿勢を崩さずに浮遊することができる。
【0128】
図13に、本体部が回転しても水中でロープ47が絡まない構造とした他の係留方法を説明する図を示す。
【0129】
図13に示す環境浄化装置25は、図11に示した環境浄化装置25の回動自在締結部48の代わりに、回転軸27の先端部分にロープ47が架けられる滑車80を設けた構成としている。
【0130】
滑車80は、図12(a)に示した自由回転軸50のように、環境浄化装置25の本体部および回転軸27に対して自由に回転できるような軸の先端に取り付けられている。したがって、ロープ47に対して環境浄化装置25の本体部が回転しても滑車80の向きは変わらないので、滑車の前後に垂れ下がるロープ47同士の絡みつきは生じない。
【0131】
また、ロープ47の、アンカー46側とは反対側の先端部には錘81が取り付けられており、その錘81の重さによってロープ47のその先端部を鉛直方向に引き下げている。
【0132】
天候などによって水面の位置は上昇または下降するが、水面が上昇した場合には、環境浄化装置25の位置が上昇するとともに、錘81が取り付けられたロープ47の先端部も上に上がる。
【0133】
水面が下降した場合には、錘81の重さによってロープ47の先端部が引き下げられるために、滑車80とアンカー46間のロープ47の長さは短くなり、滑車80とアンカー46間のロープ47は弛まないので、ロープ47が絡まることを防止できる。
【0134】
図14に、本体部が回転しても水中でロープ47が絡まない構造とした他の係留方法を説明する図を示す。
【0135】
図14に示す係留方法は、図11の場合と同様に、環境浄化装置25は、水底の離れた位置に固定設置した複数のアンカー46に繋がれたロープ47によって固定される。
【0136】
図14に示すように、環境浄化装置25から、複数の所定の距離の位置で、ロープ隔離リング59が各ロープ47と接続されている。各ロープ47は、ロープ隔離リング59のリング状部分の互いに離れた位置に固定接続されている。
【0137】
上下に隣接して配置されるロープ隔離リング59は、相対的に回転した場合でも、隣接するロープ47と交差しない間隔に配置されている。
【0138】
なお、ロープ隔離リング59が、本発明のリング状部材の一例にあたる。
【0139】
図14では、例として3つのロープ隔離リング59を設ける構成としたが、各アンカー46の設置位置や水深に応じて、適切な数のロープ隔離リング59を適切な間隔をおいて配置する。
【0140】
このような係留構造とすることにより、複数のアンカー46によってロープ47で係留する場合でも、複数のロープ47が絡まることを防止できる。
【0141】
図15に、本体部が回転しても水中でロープ47が絡まない構造とした他の係留方法を説明する図を示す。
【0142】
一端が1つのアンカー46に繋がれたロープ47の他方の一端が、水に浮くフロート棒60の水中の一端に接続されている。
【0143】
フロート棒60は、長手方向が鉛直方向となるように水に浮く浮力を有する棒である。例えば、一端に錘を配置した中空の棒である。
【0144】
環境浄化装置25の上面には、水平方向に延びる回動支持部61が設けられており、その先端の回動連結部63によって、フロート棒60の長手方向を中心にして自由に回動できるように、フロート棒60に接続されている。
【0145】
なお、フロート棒60が、本発明の棒状部材の一例にあたり、回動支持部61と回動連結部63を合わせた構成が、本発明の連結具の一例にあたる。
【0146】
環境浄化装置25は、風や波の影響を受けて水面上を動く場合でも、フロート棒60から所定の距離を保ちながら移動するので、フロート棒60やロープ47に接触することがない。
【0147】
また、フロート棒60は、環境浄化装置25が回転する力の影響を受けないので、ロープ47が捩れることは無い。
【0148】
なお、図15に示した例では、回動連結部63を、フロート棒60の長手方向を中心に回動自在である構成としたが、回動連結部63が上下方向、すなわちフロート棒60の長手方向にも自在に可動する構成としてもよい。このような構成とすることにより、波が生じて水面が上下動するような場合でも、環境浄化装置25は、フロート棒60の上下動の影響を受けることなく、安定して水面を浮遊できる。
【0149】
図16に、本体部が回転しても水中でロープ47が絡まない構造とした他の係留方法を説明する図を示す。
【0150】
図16に示すフロート棒82は、図15に示したフロート棒60と同様に、長手方向が鉛直方向となるように水に浮く構造をしている。フロート棒82は、上部に取り付けられたフロート部83によって、長手方向が鉛直方向となるような浮力を有する構造となっている。
【0151】
そして、図15に示した構成と同様に、環境浄化装置25の上面に設けられた回動支持部61およびその先端の回動連結部63によって、環境浄化装置25の本体部は、フロート棒82の長手方向を中心にして自由に回動できるように、フロート棒82に接続されている。
【0152】
なお、回動支持部61、回動連結部63およびフロート棒82を合わせた構成が、本発明の周辺付属部材の一例にあたる。
【0153】
また、フロート棒82の上方の先端部には、ロープ47を架けられる滑車84が設けられている。フロート棒82は、下方端部が開口した筒状をしており、図16に示すように、ロープ47は滑車84に架けられて折り返され、ロープ47の両端がフロート棒82の下方端部の開口部から出る構造となっている。
【0154】
そして、ロープ47の一端は、アンカー46に締結され、もう一端には錘86が取り付けられており、ロープ47のその先端部分を鉛直方向に引き下げるようになっている。
【0155】
また、フロート棒82の筒状内部には、滑車84によって折り返されたロープ47同士が絡まないように、仕切り板85が設けられている。
【0156】
水面が上昇した場合には、フロート棒82の位置が上昇するとともに、錘86が取り付けられたロープ47の先端部も上に上がる。
【0157】
水面が下降した場合には、錘86の重さによってロープ47の先端部が引き下げられるために、滑車84とアンカー46間のロープ47は短くなり、フロート棒82の下部の開口部とアンカー46間のロープ47は弛まないので、この間でロープ47が絡まることを防止できる。
【0158】
なお、図16に示した例では、回動連結部63を、フロート棒82の長手方向を中心に回動自在である構成としたが、図15の構成の場合と同様に、回動連結部63が上下方向、すなわちフロート棒82の長手方向にも自在に可動する構成としてもよい。
【0159】
また、図16では、筒状のフロート棒82の内部にロープ47を通す構成としたが、フロート棒82の無い構成としてもよい。例えば、フロート棒82を用いずに、回動支持部61の先端部分に直接滑車を取り付ける構成としてもよい。その滑車に、一端がアンカー46に締結され、もう一端に錘86が取り付けられたロープ47を架けるようにしても、上記と同様の効果が得られる。ただし、この場合には、滑車の向きが、回動支持軸61に対して回動自在となるように取り付けるのが望ましい。
【0160】
(実施の形態3)
図17に、本発明の実施の形態3の環境浄化装置の側面図を示す。
【0161】
本実施の形態3の環境浄化装置は、少なくとも羽根28の下方を覆うようなダクト62を、本体部26に取り付けている。
【0162】
ダクト62を設けたことにより、水底からの水を効率的に吸い上げ、また、水底に向けて効率的に水を推進させることができる。
【0163】
図17に示すように、羽根28の横側も覆うようにダクト62を取り付けると、羽根28の横からの水の浸入を規制できるので、より深い水深の際にも、汲み上げ効果を維持することができる。同様に、より深い水位より水を引き上げることもできる。
【0164】
本発明の環境浄化装置は、水底に向けて水を推進させることができるので、水底の有害物質や汚泥を分解除去するバクテリアを水底に送り込むこともできる。
【0165】
図18に、バクテリアを効率的に水底に送り込む構成とした本実施の形態3の環境浄化装置の側面図を示す。
【0166】
図18に示すように、本実施の形態3の環境浄化装置65の本体部66の上面には、バクテリアを流し込むためのバクテリア投入口67が設けられている。
【0167】
また、連通部70によってダクト62の側面に連通するバクテリア収納庫68が設けられており、バクテリア収納庫68は、環境浄化装置65の本体部66の底部に接続される連結パイプ69によって、バクテリア投入口67につながっている。
【0168】
なお、連通部70が、本発明のパイプ部の一例にあたる。
【0169】
バクテリア投入口67から、バクテリアを入れた水を流し込むと、連結パイプ69を通って水中のバクテリア収納庫68までバクテリアが流し込まれる。
【0170】
羽根の回転によってダクト62内の水が下方に流れているので、バクテリア収納庫68内のバクテリアが連通部70を通じてダクト62内に引き込まれ、ダクト62内を水底に向かって移動する。
【0171】
なお、太陽光による熱によって水面近くの温度が上昇するので、バクテリア収納庫68を水面近くに設置すると流し込んだバクテリアが死滅し易くなる。したがって、バクテリア収納庫68は、水面近くの温度上昇の影響によってバクテリアが死滅しない程度の深さの位置に設置するのが望ましい。
【0172】
このような構造にすることにより、水底の有害物質や汚泥を分解除去するバクテリアを効率的に水底に送り込むことができる。
【0173】
図18に示すような構造の環境浄化装置65であれば、対象範囲の広大なダムや大型湖などに設置した場合でも、例えばモータボートなどによって定期的にバケツに入れたバクテリアを運び、バクテリア投入口67から流し込むことができる。
【0174】
本発明の環境浄化装置は、水の攪拌および対流を促す効果を有するため、ビル・マンション等の貯水槽での使用も考えられる。貯水槽は性格上水の滞留が起こりやすく、それによる貯水槽内の水アカ等が発生しやすい状況にある。本発明の環境浄化装置を貯水槽内に設置し稼働させることにより水の滞留を防止することが可能となり、水アカ等の発生を抑制し使用水の水質劣化を抑制する効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明に係る環境浄化装置は、広大な対象範囲においても低電力で水の滞留防止効果を発揮でき、ダムや大型湖だけではなく、対象範囲の小さいビルやマンションの貯水槽等を浄化する浄化装置としても有用である。
【符号の説明】
【0176】
10 環境浄化装置
11 本体部
12 モータ
13 電池
14 ギヤボックス
15 蓋部
16 回転軸
17 羽根
18 フロート玉
19 回転動力部
20 フロートパイプ
21 回転動力部下部の側面
25 環境浄化装置
26 本体部
27 回転軸
28 羽根
29 底部
30 本体部
31 旗
32 本体部
33 回転抑制板
34 本体部
35 第2回転軸
36 回転抑制板
37 回転抑制椀部
38 回転抑制椀部
40 本体部
41 モータ
42 ギヤボックス
43 充電池
44 ソーラーパネル
45 ロープ締結具
46 アンカー
47 ロープ
48 回動自在締結部
50 自由回転軸
51 回動用金具
52 回動部
53 固定軸
54 回動用金具
55 回動部
56 回動自在金具
57 回動自在金具
58 回動部
59 ロープ隔離リング
60 フロート棒
61 回動支持部
62 ダクト
63 回動連結部
65 環境浄化装置
66 本体部
67 バクテリア投入口
68 バクテリア収納庫
69 連結パイプ
70 連通部
80 滑車
81 錘
82 フロート棒
83 フロート部
84 滑車
85 仕切り板
86 錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面に浮かぶための浮力を有する本体部と、
前記本体部から水中に向けて鉛直方向に設けられた回転軸に固定され、回転した際に水を上向きに吸い上げるまたは下向きに推進させるスクリュー形状の羽根と、
前記本体部に設けられ、前記回転軸を回転させるモータとを備えた環境浄化装置。
【請求項2】
前記本体部の側面、下面および前記本体部に連結された周辺付属部材の少なくともいずれかの少なくとも水に接する部分は、前記羽根の回転方向の逆方向への前記本体部の回転を抑制する形状をしている、請求項1に記載の環境浄化装置。
【請求項3】
前記少なくとも水に接する部分は、前記羽根が回転することで生じる水流が当たることによって、前記本体部が前記羽根の回転方向と同方向に回転する力を生じさせる形状をしている、請求項2に記載の環境浄化装置。
【請求項4】
前記周辺付属部材は、前記本体部から周辺に突き出た棒と、前記棒に取り付けられた椀部または板部とを有している、請求項2に記載の環境浄化装置。
【請求項5】
前記本体部の底部は、すり鉢形状をしており、前記羽根側に出っ張っている、請求項1に記載の環境浄化装置。
【請求項6】
前記本体部または前記本体部に連結された周辺付属部材は、ロープ状の係止部材によって水底に固定された固定具と連結されている、請求項1に記載の環境浄化装置。
【請求項7】
前記本体部または前記周辺付属部材に滑車が取り付けられており、
前記係止部材は、前記滑車に架けられ、前記固定具に接続されていない側の端部に錘が取り付けられており、
水面が下降した際には、前記錘の重さによって前記錘が取り付けられている側の前記端部が引き下げられ、前記固定具と前記滑車間における前記係止部材の弛みが抑制される、請求項6に記載の環境浄化装置。
【請求項8】
前記係止部材の上端が、前記回転軸の下端に回動自在に連結されている、請求項6に記載の環境浄化装置。
【請求項9】
前記本体部は、複数の前記固定具と、それぞれ前記係止部材によって連結されており、
前記複数の係止部材は、前記本体部から所定距離の位置で、リング状部材のリング部分の互いに離れた位置に固定されており、
複数の前記リング状部材が、隣接する前記係止部材を交差させない間隔で設けられている、請求項6に記載の環境浄化装置。
【請求項10】
前記周辺付属部材は、
水中において鉛直方向の向きとなる浮力を有し、下端が前記係止部材に接続されている棒状部材と、
前記本体部に前記棒状部材を回動可能または上下動可能に連結する連結具とを有している、請求項6に記載の環境浄化装置。
【請求項11】
前記羽根とは逆方向に回転し、前記羽根の回転方向の逆方向への前記本体部の回転を抑制する第2の羽根を備えた、請求項1に記載の環境浄化装置。
【請求項12】
前記羽根が回転することにより上向きに吸い上げられるまたは下向きに推進される水が内部を通過するように、前記羽根の少なくとも下方に配置されたダクトを備えた、請求項1に記載の環境浄化装置。
【請求項13】
水底の有害物質を分解除去するバクテリアを収納し、前記ダクトの前記羽根よりも下方の側面に連通しているバクテリア収納庫と、
前記本体部の上面から前記バクテリアを流し込むためのバクテリア投入口と、
前記バクテリア投入口に流し込まれた前記バクテリアが、前記バクテリア収納庫に流れ込むように、前記本体部を前記バクテリア収納庫に連結するパイプ部とを備え、
前記ダクト内の水は、前記羽根が回転することにより下向きに推進される、請求項12に記載の環境浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−83667(P2011−83667A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236585(P2009−236585)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(509284222)
【Fターム(参考)】