説明

環境測定素子及びこれを用いた環境測定方法

【課題】迅速かつ安価に環境評価を行うことができる環境測定素子を提供すること。
【解決手段】基板と、前記基板表面に形成された薄膜とを具備し、前記薄膜は、ガスの種類に応じて反応性が異なる2種類以上の金属を含み、かつ前記基板表面上の位置ごとに連続的または断続的に組成が異なっており、前記組成と反応するガスの種類とに応じて反応後の色調が異なるものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境測定素子及びこれを用いた環境測定方法に関し、特に、電気・電子機器の設置環境の評価に用いられる環境測定素子及びこれを用いた環境測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属を含む機器は、設置される環境に含まれる腐食性ガスの影響を受ける。特に、電気・電子機器は、設置される環境に含まれる腐食性ガスの影響により、その特性が変化または劣化する。従って、機器が設置される環境を評価することは、機器の製造業者及び機器を設置する者のいずれにとっても重要な技術である。
【0003】
環境評価において重要な事項は、環境ガス雰囲気中の腐食性ガスの存在を短時間で検知し、その種類や濃度を特定することにより、改善対策に迅速に反映させることである。また、工業的には、安価に評価が行えることも重要である。
【0004】
従来、環境評価の方法としては、対象とする環境の雰囲気ガスを採取し、これに含まれるガス成分を化学的に分析する方法と、環境中に特定の物質を曝露し、その変化を調べる方法とに大別される。後者の方法としては、単一あるいは複数の金属板を曝露して、その重量変化を調べる方法が一般的に行われている。
【0005】
しかしながら、従来の金属板の重量変化を捉える方法では、検出可能な重量変化が生ずるまで、非常に長い時間を要する。
【0006】
また、近年では、特許文献1に示されているような、水晶振動子上に成膜された物質の重量変化を振動数の変化から求める技術が提案されている。
【0007】
さらには、特許文献2では、2種類以上の金属薄膜を一枚の絶縁基板上に形成し、その光透過率、光反射率または電気抵抗の変化から環境評価を行う技術が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、短時間で高精度な測定が可能となるものの、水晶振動子に蒸着する金属の種類を予め環境評価に必要な数だけ選定せねばならず、水晶振動子も複数個必要となるため機器として高額となるという問題があった。
【0009】
さらに、特許文献2に開示されている技術においても、蒸着する金属の種類を予め環境評価に必要な数だけ選定せねばならないだけでなく、光透過率、光反射率及び電気抵抗のいずれかから選択される単一の出力によって環境評価を行うため、環境ガス雰囲気中に含まれる腐食性ガスの種類を直接的に判定することはできなかった。
【特許文献1】特開2001−99777号公報
【特許文献2】特開2003−294606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、迅速かつ安価に環境評価を行うことができる環境測定素子及びこれを用いた環境測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の環境測定素子は、基板と、前記基板表面に形成された薄膜とを具備し、前記薄膜は、ガスの種類に応じて反応性が異なる2種類以上の金属を含み、かつ前記基板表面上の位置ごとに連続的または断続的に組成が異なっており、前記組成と反応するガスの種類とに応じて反応後の色調が異なるものであることを特徴とする。
【0012】
本発明の環境測定方法は、前記環境測定素子の前記薄膜の組成と位置との相関を計測する第一の工程と、前記環境測定素子を環境ガス雰囲気中に曝露し、色調と位置との相関の経時変化を間欠的または連続的に計測する第二の工程と、計測した組成と色調と位置との相関から前記環境ガス雰囲気中に含まれるガスの種類を判定する第三の工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、迅速かつ安価に環境評価を行うことができる環境測定素子及びこれを用いた環境測定方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、ガスの種類毎に、反応性の差異が金属薄膜の組成により異なった色調で表れることを利用して、組成と色調とを組み合わせた広がりの中の分布からガス種類の判別を正確に行うといった従来提案されていない新しい考え方によるガス種類の判別法に基くものである。また、色調は、光透過率、光反射率及び電気抵抗のような1次元的な量ではなく、3次元的な広がりを有する量であるため、ガスの種類の判別においては、色調変化を観察することによってより迅速かつ正確で明瞭な判断が可能になる。
【0015】
まず、本発明に係る環境測定素子の種々の実施形態を説明する。
【0016】
本発明に係る環境測定素子は、基板と、前記基板表面に形成された薄膜とを具備し、前記薄膜は、ガスの種類に応じて反応性が異なる2種類以上の金属を含み、かつ前記基板表面上の位置ごとに連続的または断続的に組成が異なっており、前記組成と反応するガスの種類とに応じて反応後の色調が異なるものであることを特徴とする。
【0017】
本明細書中において、「ガス」とは特に限定されるものではないが、特には、環境中に存在する主要な腐食性ガスを対象とする。かかる腐食性ガスとしては、亜硫酸ガス、硫化水素ガス、塩素ガス、アンモニアガス、窒素酸化物ガス等を挙げることができる。ここでいう窒素酸化物ガス(NOx)には、一酸化二窒素(N2O)、酸化窒素(NO)、三酸化二窒素(N23)、二酸化窒素(NO2)、四酸化二窒素(N24)、五酸化二窒素(N25)等が含まれる。また、「反応後」とは、反応を開始してから完了するまでの間及び完了後を含むものとする。
【0018】
基板は、その材質が特に限定されるものではないが、石英板、ガラス板、ガラス繊維入りエポキシ樹脂板等を挙げることができる。
【0019】
基板表面に形成される薄膜の厚さは、0.02〜1μmの範囲とすることが好ましい。膜厚が1μmを超えると、環境評価中に剥離する恐れがある。一方、膜厚が0.02μm未満であると、使用中に透明化したり、あるいは消失するといった問題を生じる恐れがある。
【0020】
薄膜の大きさは特に限定されるものではないが、金属組成が断続的または連続的に変化する領域の大きさを、1〜100cm2の範囲とすることが好ましい。この領域の大きさが1cm2未満であると、組成と位置との相関(組成分布)を把握するのが困難になるだけでなく、色調と位置との相関の経時変化を測定し難くなる恐れがある。一方、この領域の大きさが100cm2を超えると、組成分布を高い精度で計測するのが難しくなる恐れがある。かかる領域において薄膜は、ほぼ均一な膜厚を有することが好ましいが、0.02〜1μmの範囲内で変化している程度の均一性を有していれば、特に支障は無い。
【0021】
薄膜は、2種類以上の金属を含むものであるものの、その組成変化に応じて単一金属のみからなる領域を含んでもよい。2種類以上の金属が存在する領域では、各金属は合金化しているものとする。
【0022】
薄膜の形成方法としては、蒸着、めっき、塗装等を挙げることができる。中でも、蒸着、特には、真空蒸着を用いることが望ましい。蒸発源としては、抵抗加熱方式、電子ビーム加熱方式等を挙げることができる。抵抗加熱方式の抵抗体には、例えば、フィラメント状、ボート状のものを用いることができる。膜厚制御には、水晶発振式、電離式、抵抗式、光学式等の方法を用いることができる。組成を連続的に変化させ、かつ膜厚をある程度均一に形成する蒸着方法として、それぞれの金属を別々の蒸発源から一定の比率を持たせて同時に蒸着させる方法がある。例えば、A・Bの二元合金の膜を作りたい場合、AをマスターにしBをAに対し一定のレート比率で蒸発させるいわゆるスレーブコントロールを行う技術がある。これは水晶発振式のレートコントロールを2台使用して行われる。これらの蒸発源、その間に設けられる障壁板及び基板の位置を調整することにより、形成される薄膜の組成を連続的に変化させることができる。薄膜形成時には、基板表面に洗浄処理を施しておくことが好ましい。形成された薄膜表面に、例えば、研摩、表面清浄のような表面処理を施してもよい。
【0023】
かかる環境測定素子は、例えば、以下に説明するように使用することができる。
【0024】
同じ組成分布を有する環境測定素子を複数枚用意し、これらを環境ガス雰囲気中と既知の種類のガス雰囲気中とにそれぞれ曝露する。所定時間経過した後、各環境測定素子の色調を観察し、比較する。環境ガスに曝露した素子において色調変化が生じた位置及びその色調と、同じ組成を有する位置が同じ色調に変化した素子が曝露されていたガスの種類から、環境中に含まれているガスの種類を判定することができる。このようにして判定することができるガスの種類は、1種類のみに限定されるものではなく、単一の素子を用いて複数の色調変化が生じた場合には、同様にして環境中に含まれる2種類以上のガスを判定することもできる。また、単一の素子を既知の複数種類のガス雰囲気中に順次曝露して、この素子と環境ガスに曝露した素子とを比較することもできる。
【0025】
前記薄膜は、3種類の異なる金属を含み、前記3種類の金属がそれぞれ、亜硫酸ガスとの反応性が高い金属群、硫化水素ガスとの反応性が高い金属群、塩素ガスとの反応性が高い金属群、アンモニアガスとの反応性が高い金属群、及び、窒素酸化物ガスとの反応性が高い金属群よりなる群のうちの異なる金属群から選択されることが望ましい。
【0026】
以下、薄膜金属成分が3種類である場合について説明するが、金属成分は2種類であってもよいし、4種類以上としてもよい。種々のガスに対する反応性と製造コストとを両立させる観点から、3種類の金属成分を用いて薄膜を形成することが好ましい。
【0027】
各金属群から選択される金属は、2種類以上のガスに対して反応性を有するものであってもよい。また、選択される金属は、その金属単独の場合には対象のガスに曝された際に色調変化が起こらなくても、その金属と選択される他の金属との合金が特定のガスに対して色調変化を生じるものであればよい。
【0028】
前記亜硫酸ガスとの反応性が高い金属群より選択される金属が、CuまたはNiであることが好ましい。
【0029】
前記硫化水素ガスとの反応性が高い金属群より選択される金属が、CuまたはAgであることが好ましい。
【0030】
前記塩素ガスとの反応性が高い金属群より選択される金属が、Sn、Zn及びCuのうちのいずれかであることが好ましい。
【0031】
前記アンモニアガスとの反応性が高い金属群より選択される金属が、AlまたはCuであることが好ましい。
【0032】
前記窒素酸化物ガスとの反応性が高い金属群より選択される金属が、AgまたはCuであることが好ましい。
【0033】
かかる金属群から前述したように特定の金属成分を選択することにより、腐食性ガスの種類の差異による薄膜の色調変化の差異をより明瞭にすることができる。
【0034】
次に、本発明に係る環境測定方法の種々の実施形態を説明する。
【0035】
本発明に係る環境測定方法は、前述した環境測定素子の前記薄膜の組成と位置との相関を計測する第一の工程と、前記環境測定素子を環境ガス雰囲気中に曝露し、色調と位置との相関の経時変化を間欠的または連続的に計測する第二の工程と、計測した組成と色調と位置との相関から前記環境ガス雰囲気中に含まれるガスの種類を判定する第三の工程とを含むことを特徴とする。
【0036】
薄膜の組成と位置との相関(組成分布)は、薄膜上の任意の位置において薄膜を構成する各金属(薄膜金属成分)の成分量を表面分析機器等で測定することにより求めることができる。測定点を多くすれば多くするほどより正確な組成分布を得ることができる。また、測定を行わない位置については、その近傍の測定して得られた成分量と所定の数式を用いて推定値を求めて補間することができる。
【0037】
また、特定の位置の表面分析機器等による薄膜を構成する各金属の成分量の測定と、広範囲なX線マイクロアナライザ等のX線強度測定器を用いたX線強度の測定を組み合わせて行うことができる。
【0038】
まず、前記薄膜の少なくとも異なる3箇所について薄膜金属成分の成分量を表面分析機器を用いて測定する。
【0039】
次に、薄膜上の領域内の薄膜を構成する各金属の成分のX線強度をX線強度測定器を用いて測定する。この時、表面分析機器を用いて成分量を測定した少なくとも異なる3箇所が、X線強度測定器を用いたX線強度を測定する領域内に含まれるようにする。
【0040】
そして、表面分析機器を用いて測定された薄膜金属成分の成分量と、この成分量を測定したのと同じ位置のX線強度測定器を用いて測定したX線強度の測定値とを対応させることにより、薄膜金属成分ごとのX線強度に対する成分量の検量線を求める。
【0041】
薄膜金属成分ごとに、求められた検量線と、薄膜上の領域内のX線強度測定器を用いたX線強度の測定値から薄膜金属成分の成分量の分布を求めて、薄膜上の領域内の前記組成分布を求める。この時、薄膜の厚さが均一でないことによるX線強度の測定値に誤差が含まれる場合には、成分量の分布の各位置において薄膜金属成分の成分量の合計値が100原子%となるように規格化して薄膜金属成分の成分量を求めても良い。
【0042】
薄膜金属成分の成分量の測定点が多ければ多いほど正確な組成分布を得ることができる。しかし、X線強度に対する検量線から組成分布を調べる場合には、X線強度測定器を用いたX線強度の測定点を多くして精度を上げることができるので、例えば、10箇所程度の成分量を測定すれば十分である。薄膜金属成分の成分量を測定する点は、金属が合金化している位置を2箇所以上含むことが望ましい。
【0043】
成分量の測定には、イオンマイクロアナライザ、X線マイクロアナライザ等の表面分析機器を用いることができる。
【0044】
X線強度は、薄膜の金属が合金化している領域のほぼ全面にわたって測定することがさらに好ましく、最も好ましくは、薄膜の全面にわたって測定する。X線強度の測定には、X線マイクロアナライザ等のX線強度測定器を用いることができる。X線強度の測定には、2次元的に所定間隔でX線強度を測定する、X線強度マッピング分析法を用いることができる。
【0045】
前記組成と位置との相関に基いて得られる等成分量線を、前記薄膜金属成分ごとに等間隔で表した三元組成図を作成し、かつ前記薄膜上の座標を前記三元組成図上の座標に換算し、前記薄膜の反応後の色調を前記薄膜の組成ごとに前記三元組成図上の換算座標に表示し、該三元組成図上の色調と位置との相関を予め種類が既知のガスについて得られた三元組成図上の色調と位置との相関と目視で比較することによってガスの種類を判定することが好ましい。
【0046】
ここで、「三元組成図」とは、正三角形内の任意の位置から各辺までの距離が三元合金を構成する各薄膜金属成分の成分量を表す図である。かかる三元組成図の組成と同じ組成を有する位置の薄膜の色調を三元組成図上に対応させて色調と位置との相関(色調分布)を表示させることにより、色調と組成と位置との相関を把握することができる。
【0047】
素子を環境ガス雰囲気中に曝露することにより得られた組成と色調と位置との相関からガスの種類を判定することができる。すなわち、予め、環境測定素子を、種類が既知のガス(対照標準ガス)中に所定時間曝露し、色調の経時変化を計測する。これにより得られた薄膜上の色調と位置との相関を三元組成図上に表示し、これを時間色見本とする。この時間色見本と、別の環境測定素子を同じ時間だけ環境ガス雰囲気中に曝露したときの薄膜上の色調と位置との相関を三元組成図上に表示した色調分布とを対比する。時間色見本における色調分布と三元組成図上の色調分布とで同等の傾向が得られた場合、その時間色見本に対応するガスが環境ガス雰囲気中にも含まれていることが分かる。このようにして判定することができるガスの種類は、1種類のみに限定されるものではなく、単一の素子を用いて複数の色調変化が生じた場合には、同時に環境中に含まれる2種以上のガスを判定することができる。
【0048】
対照標準ガス中に曝露する素子と環境ガス雰囲気中に曝露する素子とは、薄膜を構成する金属の種類が同一であれば、組成分布が必ずしも同一である必要はなく、一部が異なっていてもよい。三元組成図上に表示された色調分布を比較することにより、目視で環境ガス雰囲気中に含まれるガスの種類を直接的かつ正確に判別することができる。
【0049】
曝露時間は、12〜240時間の範囲とすることが好ましい。曝露時間をこの範囲内とすれば、十分な色調変化が得られるためより迅速な環境評価が可能となる。しかしながら、金属薄膜の反応速度(変色速度)は、環境ガス雰囲気中に含まれる腐食性ガスの種類やその濃度に強く依存していることから、適正な曝露時間は種々変動するものであり、曝露時間は前述の範囲のみに限定されるものではない。
【0050】
薄膜の色調の経時変化は、曝露時間中、間欠的または連続的に計測することができる。間欠計測によれば、前述した色調変化が生じている期間内にガスの種類を判定して評価時間を短縮したり、色調変化の速度からガス濃度を推定することができる。一方、連続計測によれば更にガスの種類及び濃度の測定精度が向上する。
【0051】
腐食性ガスの濃度が高いほど、薄膜の色調変化の速度は加速されるという傾向が得られる。予測したよりも腐食性ガス濃度の高い厳しい環境では、急激な反応が生じ、所定時間を経過するとガスと合金との反応により変化した色調が退色することがある。前述の薄膜では、各薄膜金属成分の成分量に勾配を有するため、腐食性ガスの種類及び濃度が予測不能などのような環境下におかれても、曝露時間によらず色調の変化が生じ、これを計測することができる。なお、退色が生じる恐れがある場合には、連続的に色調の経時変化を計測することが望ましい。
【0052】
ガスの種類と共に濃度を判定する際には、以下のように行うことができる。
【0053】
すなわち、予め、種々の対照標準ガスについて、濃度を種々に変更して時間色見本を作製する。この時間色見本を基準として、素子を同じ時間だけ環境ガス雰囲気中に曝露したときの薄膜上の色調と位置との相関を三元組成上に表示した色調分布を対比する。これにより、前述したようにガスの種類を判定することができる。さらに、作製した時間色見本からガスの種類毎にガス濃度と変色速度との相関を求め、これと前述した色調分布における変色速度とを対比することにより、ガス濃度も同時に判定することができる。
【0054】
前記薄膜の組成ごとに曝露前後のRGB値の変化量及び変化速度をそれぞれ計測し、これらの変化量及び変化速度と、前記組成と同じ組成における予め種類及び濃度が既知のガスに対する曝露前後のRGB値の変化量及び変化速度とを比較することによりガスの種類及び濃度をそれぞれ判定することが望ましい。
【0055】
この方法に従えば、前述した時間色見本と色調分布との対比をRGB値(色調成分値)の変化量を色調成分(R,G,B)ごとに用いて行うことができるだけでなく、変色速度の対比においてもRGB値の変化速度を色調成分ごとに用いることができるため、さらに高精度にガスの種類及び濃度を判定することが可能になる。
【0056】
前記RGB値を、電荷結合素子を搭載した機器により一括計測することが好ましい。
【0057】
電荷結合素子(CCD)を搭載した機器としては、ディジタルカメラ、ディジタルビデオカメラ等を挙げることができる。ディジタルカメラを用いれば薄膜の色調変化を間欠的に、また、ディジタルビデオカメラを用いれば薄膜の色調変化を連続的に計測することができると共に、薄膜のRGB値の経時変化を一括計測することができる。
【0058】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0059】
[実施例]
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0060】
(実施例1,比較例1)
(実施例1)
<環境測定素子の作製>
蒸着装置には、蒸着槽の中心線に対して対称に120°間隔に3基の蒸発源が配置され、これらの蒸発源からそれぞれ異なる蒸着物質を基板に蒸着させることができるもの(特開2004−68101号公報に記載の装置と同種の蒸着装置)を用いた。これらの蒸発源は、抵抗加熱方式で、蒸着槽の中心線の垂直方向に一定の長さを有するボートから蒸着物質を蒸発させることができるものである。それぞれの蒸発源と基板の間には障壁板を設け、蒸着物質の基板上での堆積量に勾配を生じさせることができるようにした。このとき、障壁板は、長手方向端部が、蒸発源のボートと垂直になるように設置した。基板としては石英板を用意し、各蒸発源の蒸着物質は、それぞれAg、Cu、Snとした。
【0061】
水晶振動子式の膜厚センサにより計測される膜厚が所定の値となるように蒸発電源の電力を調整することにより各蒸発源からの蒸発量を調節した後、基板直下に設けられたシャッタを解放して成膜を開始した。このとき、3基の蒸発源からの蒸着物質の付着領域が、基板中心付近において互いに重なり合うように、上述した基板、障壁板及び蒸発源の配置を調整した。膜厚センサによる膜厚が一定量に到達した時点で前記シャッタを閉めて蒸着を完了することにより、組成(前述した3種類の金属の各成分量)が連続的に変化した薄膜が基板上に形成された環境測定素子を得た。
【0062】
<環境測定素子の組成分析>
作製した環境測定素子の薄膜の組成分布を、以下の方法により求めた。
【0063】
まず、図1に示すように、蒸着した3成分(Ag,Cu,Sn)について、薄膜1の異なる12箇所(図1中、参照符号2で示す箇所)の成分量をX線マイクロアナライザ(日本電子(株)製X線マイクロアナライザ)により測定した。
【0064】
さらに、上記の3成分について、基板上の66mm×58mmの領域(図1中、点線3で囲まれる領域)内において、成分量を測定したのと同じX線マイクロアナライザを用いて0.2mm×0.1mmの領域ごとに1点ずつ、計191400点に対してX線強度マッピング分析を行った。
【0065】
前述の12箇所におけるX線強度と成分量との関係から、各成分ごとにX線強度に対する成分量の検量線を作成した。このときのCu成分の検量線を図2に示す。図2において、縦軸はCu成分量(原子%)を示し、横軸はX線強度を示す。
【0066】
これにより得られた結果の任意の点におけるAg、Cu、Snの3成分の合計量が100原子%となるように規格化し直すことにより、Ag、Cu、Snの3成分の各成分量を決定した。この方法によって得られた薄膜上の191400点の組成分析データに基づき等成分量線4を示すことにより領域3内の組成分布を得た。この結果を図1に示す。図1における等成分量線4は、10質量%ごとに表示したものである。なお、検量線において原子%で表したものを等成分量線では質量%(wt%)に換算して表した。
【0067】
(比較例1)
実施例1で用いた蒸着装置の障壁板を除去し、基板表面上の一部分のみに薄膜が形成されるようなマスクをセットし、蒸発源から実施例1と同じ蒸着物質を1成分ずつ蒸着した。このとき、1成分の蒸着が完了したらマスクを移動し、次の成分を基板上の別の部分に蒸着させ、これを繰り返すことによって、基板上の互いに重なり合わない3箇所の領域に、それぞれ単一金属の薄膜を形成した。基板には実施例1と同様なものを用い、実施例1とほぼ同じ膜厚になるようにした。これを比較例1の環境測定素子として用いた。
【0068】
<環境測定の評価>
作製した実施例1及び比較例1の環境測定素子をそれぞれ5枚ずつ用意した。これらの環境測定素子を、亜硫酸ガス、硫化水素ガス、塩素ガス、アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの各ガス中に一枚ずつ1時間曝露した。それぞれのガス雰囲気中に曝露した結果得られた実施例1の環境測定素子の色調変化の結果を、まとめて図3に示す。
【0069】
図3に示すように、実施例1の環境測定素子は、亜硫酸ガスの場合、参照符号5で示した部分を中心に暗色に変化し、硫化水素ガスの場合には、参照符号6で示した部分の周辺が赤色に変化し、塩素ガスの場合には、参照符号7で示した部分とその周辺が濃い色に変化し、アンモニアガスの場合には、参照符号8で示した部分が薄茶色に変化し、窒素酸化物ガスの場合には、参照符号9で示した部分がくすんだ銅色に、それぞれ変色する様子を観察することができた。
【0070】
次に、ガス種類の判定を以下に説明するように行った。
【0071】
フィルム式カメラで曝露前後の素子の写真をそれぞれ撮影し、得られた写真における色調変化を目視で確認した。その後、曝露後の写真のイメージデータを計算機(PC)に入力し、等成分量線4を正三角形上に等間隔に表示した三元組成図を作成し、得られた三元組成図上に色調分布を表示した。この色調分布と時間色見本とを目視で比較することによりガスの種類を判定した。判定者には、曝露したガスの種類に対する情報を持たない者を選出した。その結果を表1に示す。
【0072】
ここで、時間色見本とは、実施例1の素子と同様に作製した素子を、対照標準ガスとしての前述の5種類のガス中にそれぞれ曝露させることにより得られた組成と色調と位置との相関を三元組成図上にマッピングしたものであって、三者間の経時的な変化を表したものをいう。実施例1では、素子を対照標準ガス中に1時間曝露したときに得られた時間色見本を用いた。素子を硫化水素ガス中に1時間曝露したときに得られた時間色見本の一例を図4に示す。
【表1】

【0073】
実施例1の変色傾向は、予め作製した時間色見本において把握されたものと一致しており、計測した色調分布と時間色見本とを比較することにより、判定者は、5種類のガス全てを迅速かつ容易に判定できた。また、実施例1の素子では、合金薄膜上に比較例1の素子に比較して色調変化がより明瞭に現れていた。これに対して、Ag、Cu、Snの薄膜を基板上にそれぞれ独立に形成した比較例1の環境測定素子では、ガスの種類ごとに薄膜の変色が観察されたが、変色を金属組成と対応する領域として捉えることができなかったため、3種類以上のガスを明確に判定することができなかった。なお、比較例1の時間色見本には比較例1の素子と同様に作製した素子を用い、三元組成図は作成しなかった。
【0074】
以上のように、本発明に従えば、環境中に存在する主要な腐食性ガスに対してその判別が可能となる。また、ガスの種類ごとの薄膜の変色を金属組成と対応する領域として捉えることができるため、単一の金属からなる薄膜を用いるよりも少ない種類の金属で、多くのガス種類を判定することが可能になり、安価に環境評価を行うことができる。
【0075】
(実施例2)
蒸着物質をNi、Cu、Snの3成分に変更した以外には、実施例1と同様にして環境測定素子を作製し、組成分布を調べた。得られた環境測定素子を用い、ガスの種類を亜硫酸ガス、硫化水素ガス及び塩素ガスの3種類に変更した以外には、実施例1と同様にして色調変化を観察した。この結果を図5に示す。また、ガス種類の判定を実施例1と同様にして行った。この結果を表1に示す。
【0076】
図5に示すように、亜硫酸ガスの場合、参照符号10で示した部分を中心として緑白色に変色し、硫化水素ガスの場合には、参照符号11で示した部分を中心として暗色に変色し、塩素ガスの場合には、参照符号12で示した部分及びその周辺が濃い色に変色した。この変色傾向は、同種類のガスを用いて予め作成した時間色見本において把握されたものと一致しており、得られた色調分布と時間色見本とを比較することにより、判定者は、3種類のガス全てを迅速かつ容易に判定できた。
【0077】
(実施例3)
蒸着物質をNi、Cu、Alの3成分に変更した以外には、実施例1と同様にして環境測定素子を作製し、組成分布を調べた。得られた環境測定素子を用い、ガスの種類を亜硫酸ガス、硫化水素ガス及びアンモニアガスの3種類に変更した以外には、実施例1と同様にして色調変化を観察した。この結果を図6に示す。また、ガス種類の判定を実施例1と同様にして行った。この結果を表1に示す。
【0078】
図6に示すように、亜硫酸ガスの場合、参照符号13で示した部分を中心として緑白色に変色し、硫化水素ガスの場合には、参照符号14で示した部分を中心として暗色に変色し、アンモニアガスの場合には、参照符号15で示した部分を中心として乳白色に変色した。この変色傾向は、同種類のガスを用いて予め作成した時間色見本において把握されたものと一致しており、得られた色調分布と時間色見本とを比較することにより、判定者は、3種類のガス全てを迅速かつ容易に判定できた。
【0079】
(実施例4)
蒸着物質をNi、Ag、Cuの3成分に変更した以外には、実施例1と同様にして環境測定素子を作製し、組成分布を調べた。得られた環境測定素子を用い、ガスの種類を亜硫酸ガス、硫化水素ガス及び窒素酸化物ガスの3種類に変更した以外には、実施例1と同様にして色調変化を観察した。この結果を図7に示す。また、ガス種類の判定を実施例1と同様にして行った。この結果を表1に示す。
【0080】
図7に示すように、亜硫酸ガスの場合、参照符号16で示した部分を中心として緑白色に変色し、硫化水素ガスの場合には、参照符号17で示した部分を中心として赤く変色し、窒素酸化物ガスの場合には、参照符号18で示した部分を中心として薄茶色に変色した。この変色傾向は、同種類のガスを用いて予め作成した時間色見本において把握されたものと一致しており、得られた色調分布と時間色見本とを比較することにより、判定者は、3種類のガス全てを迅速かつ容易に判定できた。
【0081】
実施例1〜4に示したように、薄膜の金属成分を種々に変更しても腐食性ガスの種類を迅速かつ正確に判定することができた。特に、予め環境中に存在する腐食性ガスの種類が3種類以内に予測されている場合には、実施例2〜4に示したように、ガスの種類に応じた金属成分を選定して環境測定素子を作製することにより、正確で迅速な判定が実現可能となる。
【0082】
さらに、三元組成図上に色調分布を表示させることにより、対照標準ガスに曝露する素子と異なる組成分布を有する素子を用いて環境評価を行っても、正確にガス種類の判定を行うことができることが確認された。
【0083】
(実施例5−1,5−2)
実施例1と同様にして作製した環境測定素子を6枚用意した。このうちの3枚については、実施例1と同様にして組成分布を調べた(実施例5−1)。
【0084】
一方、残りの3枚については、分析領域(図1中、点線3で囲まれる領域)内の任意の100箇所に対してX線マイクロアナライザにより薄膜金属成分(Ag,Cu,Sn)について定量分析を実施して組成分布を調べた(実施例5−2)。
【0085】
実施例5−1及び実施例5−2の環境測定素子を、亜硫酸ガス、硫化水素ガス及び塩素ガスの各ガス中に一枚ずつ1時間曝露した。それぞれのガス雰囲気中に曝露した結果得られた環境測定素子の色調変化から、実施例5−1については、実施例1と同様にしてガス種類の判定を行った。この結果を表1に示す。
【0086】
実施例5−2については、以下に説明するようにガス種類の判定を行った。
【0087】
それぞれのガス雰囲気中に曝露した結果得られた環境測定素子から、三元組成図を作成することなく、色調変化の生じた位置の組成及び色調を時間色見本と比較することによりガス種類の判定を行った。このとき、色見本には、実施例5−1と同じものを用いた。この結果を表1に示す。
【0088】
この結果、実施例5−1及び実施例5−2の環境測定方法ともに、判定者は、3種類のガス全てを迅速かつ容易に判定できた。特に、実施例5−1の環境測定方法は、実施例5−2の環境測定方法に比較して色見本との照合がより明確であり、より容易に判定を行うことができただけでなく、データの再現性が高かった。
【0089】
(実施例6,比較例2)
実施例1と同様にして作製した環境測定素子を2枚用意した。これらの環境測定素子について実施例1と同様にして組成分布を調べた後、亜硫酸ガス、硫化水素ガス及び塩素ガスからなる雰囲気中に1時間曝露した。
【0090】
これらの環境測定素子の一方については、実施例1と同様にしてガス種類の判定を行った(実施例6)。この結果を表1に示す。
【0091】
残りの環境測定素子については、以下に説明するようにガス種類の判定を行った(比較例2)。
【0092】
環境測定素子の組成分布については、実施例1と同様に調べた。ガス雰囲気に対する曝露前後で特徴的な変色が生じた位置における任意の点について光ファイバセンサを用いて曝露前後の反射率を測定した。得られた反射率の結果と、既知の種類のガスに対する曝露前後の金属組成と反射率の関係を予め測定したデータとを照合することによりガス種類の判定を行った。この結果を表1に示す。
【0093】
この結果、実施例6の環境測定方法では、3種類のガスのいずれに対しても迅速かつ容易に判定が可能であった。一方、比較例2の環境測定方法は、判定できたガスが2種類以下であった。
【0094】
特に、実施例6の環境測定方法は、目視により時間色見本との照合が可能であったため、別途機器を用いた比較例2の環境測定方法に比較してより迅速かつ容易に判定ができた。
【0095】
(実施例7)
実施例1と同様にして作製した環境測定素子を9枚用意した。これらの環境測定素子について実施例1と同様にして組成分布を調べた後、亜硫酸ガスを所定の濃度で含む雰囲気、硫化水素ガスを所定の濃度で含む雰囲気、塩素ガスを所定の濃度で含む雰囲気中に前述の素子をそれぞれ3枚ずつ1時間曝露した。これらの環境測定素子について以下に説明するようにガス種類及びガス濃度の判定を行った。
【0096】
環境測定素子の組成分布については、実施例1と同様に調べた。ガス雰囲気に対する曝露前後の環境測定素子をディジタルカメラにより撮影し、色調分布を三元組成図上に表示し、この画像データからガス雰囲気に対する曝露前後で特徴的な変色が生じた位置のRGB値(色調成分値)をそれぞれ計測した。なお、撮影は暗室内で行い、かつディジタルカメラをホワイトバランス等の自動修正を行うことが無いように設定して同一条件となるように撮影した。
【0097】
計測したRGB値から色調成分(R,G,B)ごとの成分値の変化量及び変化速度を算出した。この変化量を、対照標準ガスとして亜硫酸ガス、硫化水素ガス及び塩素ガス中にそれぞれ素子を曝露したときに得られた時間色見本における前述の三元組成図と同じ位置のRGB値の変化量と比較することによりガスの種類を判定した。また、前述の3種類の対照標準ガスについてそれぞれ濃度を種々に変更して時間色見本を作製し、ガス濃度と前述のRGB値の変化速度との相関を調べ、これと算出した変化速度とを対比することにより、同時にガスの濃度も判定した。
【0098】
この結果、3種類のガスのいずれに対しても迅速かつ容易に判定が可能であった。さらに、3種類のガスのいずれについても、測定誤差20%以内で濃度を判定することができた。なお、三元組成図上に座標換算した色調分布を表示させることなく、ディジタルカメラで撮影した画像データから直接的にRGB値の変化量を計測することも可能である。このとき対照標準としては、三元組成図上に色調分布が表示された時間色見本を用いることもできるし、組成分布と色調分布が把握されている素子そのものの画像データを用いることもできる。
【0099】
実施例1〜7では、薄膜の金属組成が基板上で連続的に変化する場合について説明したが、例えば、各薄膜金属成分の成分量が5%ごとに段階的に変化する薄膜を形成した場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0100】
また、実施例1,2,5〜7では、塩素ガスとの反応性が高い金属として、Snを選択した例を示したが、Znを選択しても同様の効果を得ることができる。
【0101】
以上のように、本発明に従えば、環境中の腐食性ガスによる色調変化の検知に好適な組成変化を有する薄膜を基板上に有する環境測定素子と、この環境測定素子を用いて正確にガス種類を判別することができ、さらにはガス濃度も判定可能な環境測定方法を提供することができる。さらに、本発明では、薄膜の色調変化という極めて感度の高い物質的変化を捉えることから、高感度の検出が可能となり、迅速な環境評価が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】実施例1の環境測定素子の基板上の薄膜の組成分布を示す図。
【図2】実施例1の環境測定素子のCu成分のX線強度に対する成分量の検量線を示す特性線図。
【図3】実施例1の環境測定素子の基板上の薄膜の色調変化の中心となる位置を示す模式図。
【図4】硫化水素ガスに対して得られた実施例1の環境測定素子の時間色見本を示す図。
【図5】実施例2の環境測定素子の基板上の薄膜の色調変化の中心となる位置を示す模式図。
【図6】実施例3の環境測定素子の基板上の薄膜の色調変化の中心となる位置を示す模式図。
【図7】実施例4の環境測定素子の基板上の薄膜の色調変化の中心となる位置を示す模式図。
【符号の説明】
【0103】
1…薄膜、2…成分量の測定箇所、3…X線強度の測定領域、4…等成分量線、5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18…色調変化の中心領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板表面に形成された薄膜とを具備し、
前記薄膜は、ガスの種類に応じて反応性が異なる2種類以上の金属を含み、かつ前記基板表面上の位置ごとに連続的または断続的に組成が異なっており、前記組成と反応するガスの種類とに応じて反応後の色調が異なるものであることを特徴とする環境測定素子。
【請求項2】
前記薄膜が、3種類の異なる金属を含み、
前記3種類の金属がそれぞれ、亜硫酸ガスとの反応性が高い金属群、硫化水素ガスとの反応性が高い金属群、塩素ガスとの反応性が高い金属群、アンモニアガスとの反応性が高い金属群、及び、窒素酸化物ガスとの反応性が高い金属群よりなる群のうちの異なる金属群から選択されることを特徴とする請求項1記載の環境測定素子。
【請求項3】
前記亜硫酸ガスとの反応性が高い金属群より選択される金属が、CuまたはNiであることを特徴とする請求項2記載の環境測定素子。
【請求項4】
前記硫化水素ガスとの反応性が高い金属群より選択される金属が、CuまたはAgであることを特徴とする請求項2または3記載の環境測定素子。
【請求項5】
前記塩素ガスとの反応性が高い金属群より選択される金属が、Sn、Zn及びCuのうちのいずれかであることを特徴とする請求項2ないし4のうちのいずれか1項記載の環境測定素子。
【請求項6】
前記アンモニアガスとの反応性が高い金属群より選択される金属が、AlまたはCuであることを特徴とする請求項2ないし5のうちのいずれか1項記載の環境測定素子。
【請求項7】
前記窒素酸化物ガスとの反応性が高い金属群より選択される金属が、AgまたはCuであることを特徴とする請求項2ないし6のうちのいずれか1項記載の環境測定素子。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちのいずれか1項記載の環境測定素子の前記薄膜の組成と位置との相関を計測する第一の工程と、
前記環境測定素子を環境ガス雰囲気中に曝露し、色調と位置との相関の経時変化を間欠的または連続的に計測する第二の工程と、
計測した組成と色調と位置との相関から前記環境ガス雰囲気中に含まれるガスの種類を判定する第三の工程と
を含むことを特徴とする環境測定方法。
【請求項9】
前記第一の工程では、前記薄膜の少なくとも異なる3箇所の薄膜金属成分の成分量を表面分析機器を用いて測定し、かつ前記薄膜上の前記3箇所を含む領域内の薄膜金属成分のX線強度を測定し、測定した前記金属成分量及び前記X線強度から前記薄膜金属成分ごとに検量線を算出し、得られた各検量線と前記領域内の薄膜金属成分のX線強度から前記領域内の各薄膜金属成分の成分量を求めることにより前記薄膜の組成と位置との相関を求めることを特徴とする請求項8記載の環境測定方法。
【請求項10】
前記組成と位置との相関に基いて得られる等成分量線を前記薄膜金属成分ごとに等間隔で表した三元組成図を作成し、かつ前記薄膜上の座標を前記三元組成図上の座標に換算し、前記薄膜の反応後の色調を前記薄膜の組成ごとに前記三元組成図上の換算座標に表示し、該三元組成図上の色調と位置との相関を予め種類が既知のガスについて得られた三元組成図上の色調と位置との相関と目視で比較することによってガスの種類を判定することを特徴とする請求項9記載の環境測定方法。
【請求項11】
前記薄膜の組成ごとに曝露前後のRGB値の変化量及び変化速度をそれぞれ計測し、これらの変化量及び変化速度と、前記組成と同じ組成における予め種類及び濃度が既知のガスに対する曝露前後のRGB値の変化量及び変化速度とを比較することによりガスの種類及び濃度をそれぞれ判定することを特徴とする請求項8または9記載の環境測定方法。
【請求項12】
前記RGB値を、電荷結合素子を搭載した機器により一括計測することを特徴とする請求項11記載の環境測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−145390(P2006−145390A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336100(P2004−336100)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(595019599)芝府エンジニアリング株式会社 (40)
【Fターム(参考)】