説明

環境試験装置

【課題】低温試験から試験を始める場合に試験槽を構成する閉空間構成部の内部の閉空間に湿気を含んだ外気が供給されるのを確実に抑制することが可能な環境試験装置を提供する。
【解決手段】この環境試験装置10は、試験槽12と、試験槽12内の試験空間STとの間で空気が流通可能なバッファ空間SBの周囲の少なくとも一部を覆うエアバッグ54を有し、試験槽12内の試験空間STの圧力変化に応じてエアバッグ54の伸縮を伴いながら試験空間STとバッファ空間SBとの間で空気を流動させる圧力調整部50と、バッファ空間SBに乾燥した空気を充填するための空気充填機構60とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、試料が収納される試験室内に熱風又は冷風を供給することによって試料に熱負荷をかけることができる環境試験装置が知られている。この種の環境試験装置として、下記特許文献1に開示されているように、試験室内に連通するように圧力調整室を設けて試験室内の圧力変動を抑制することで、試験室内に外気が流入することを防止するようにしたものが知られている。具体的には、ポリエチレン薄膜等で袋状に形成された圧力調整室が試験室に連通するように設けられており、低温試験時に低温室から冷風が供給されることにより試験室内の空気が冷却されて収縮すると、圧力調整室内の空気が試験室に導入される。これにより、試験室内での圧力変動が緩和され、湿気を含んだ外気が試験室に流入して着霜の原因になることを抑制するようにしている。
【特許文献1】特許第3973224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示された環境試験装置では、前記圧力調整室が試験室の圧力変化に応じて伸縮するだけであり、その伸縮状態を任意に制御することができない。このため、環境試験装置において試験を低温試験から開始する場合に湿気を含んだ外気が試験室に流入する虞がある。
【0004】
すなわち、環境試験装置において試験を低温試験から開始する場合に前記圧力調整室が収縮している場合には、試験室内の空気が冷却されて収縮するときに圧力調整室から試験室に空気を導入することができず、湿気を含んだ外気が試験室に流入することになる。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、低温試験から試験を始める場合に試験槽を構成する閉空間構成部の内部の閉空間に湿気を含んだ外気が供給されるのを確実に抑制することが可能な環境試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による環境試験装置は、試験槽の少なくとも一部を構成し、閉空間を内部に有する閉空間構成部と、前記閉空間との間で空気が流通可能なバッファ空間の周囲の少なくとも一部を覆うエアバッグを有し、前記閉空間の圧力変化に応じて前記エアバッグの伸縮を伴いながら前記閉空間と前記バッファ空間との間で空気を流動させる圧力調整部と、前記バッファ空間に乾燥した空気を充填するための空気充填機構とを備えている。
【0007】
この環境試験装置では、低温試験から試験を始める場合に前もって空気充填機構により乾燥した空気をバッファ空間に充填し、エアバッグを膨らませておくことができる。このため、低温試験が開始されて前記閉空間が冷却されることによりその閉空間で空気が収縮したときには、エアバッグが収縮しながらバッファ空間内の乾燥した空気が閉空間へ供給され、閉空間試験槽における圧力変動が緩和される。その結果、環境試験装置において低温試験から試験を始める場合に試験槽を構成する閉空間構成部の内部の閉空間に湿気を含んだ外気が供給されるのを確実に抑制することができる。
【0008】
上記環境試験装置において、前記空気充填機構は、前記バッファ空間へ空気を供給する空気供給手段と、その空気供給手段から前記バッファ空間へ供給される空気中の水分を除去する除湿部とを含むのが好ましい。
【0009】
この構成によれば、空気充填機構によりバッファ空間に乾燥した空気を充填するための具体的な構造を構成することができる。
【0010】
この場合において、前記空気供給手段は、前記バッファ空間と前記閉空間との間の空気の流通路に接続されており、その接続箇所には、前記空気供給手段から前記バッファ空間へ空気を流すか、又は、前記閉空間と前記バッファ空間との間で空気を流通させるかを切り換え可能な切換弁が設けられているのが好ましい。
【0011】
このように構成すれば、低温試験の開始前に空気供給手段からバッファ空間へ空気を流してバッファ空間に乾燥した空気を充填することができる一方、試験の開始後は閉空間とバッファ空間との間で空気を流通させるように切換弁を切り換えて、空気供給手段から供給される空気により閉空間側に不要な空気流が生じないようにすることができる。
【0012】
上記空気充填機構が空気供給手段を含む構成において、前記空気供給手段は、前記バッファ空間へ空気を供給する機能のみならず、前記バッファ空間から空気を吸引する機能を有するのが好ましい。
【0013】
このように構成すれば、例えば高温試験から試験を始める場合に前もってバッファ空間から空気を吸引しておくことができる。これにより、高温試験時に閉空間の昇温によって膨張した空気をバッファ空間に受け入れやすくすることができる。
【0014】
上記環境試験装置において、前記エアバッグを収縮させるようにそのエアバッグを加圧するための加圧機構を備えていることが好ましい。
【0015】
このように構成すれば、加圧機構によりエアバッグを収縮させてバッファ空間内の乾燥した空気を閉空間側へ押し流すことができる。このため、閉空間における圧力変化が急速である場合でも、その圧力変化に対応して乾燥した空気を閉空間へ供給することができる。
【0016】
上記環境試験装置において、前記閉空間構成部は、試験槽であるとともに、前記閉空間は、その試験槽内の試料を収納する空間であり、前記バッファ空間は、前記試験槽内の試料を収納する空間と連通していてもよい。
【0017】
このように構成すれば、低温試験から試験を始める場合に試験槽内の試料を収納する空間に湿気を含んだ外気が流入するのを抑制することができ、着霜が生じるのを抑制することができる。
【0018】
上記環境試験装置において、前記閉空間構成部は、試験槽の壁体を構成する断熱パネルの中空状の本体部であるとともに、前記閉空間は、前記本体部内の空間であり、前記バッファ空間は、前記本体部内の空間と連通していてもよい。
【0019】
この構成では、低温試験から試験を始める場合に試験槽内の温度低下に伴って断熱パネルの本体部内の空気が低温になり収縮したとき、バッファ空間から乾燥した空気を断熱パネルの本体部内に供給することができる。このため、本体部内が降温してもその本体部内の圧力変化を緩和することができ、本体部を構成するパネル材の接合部やシール部を通じて本体部内の空間に湿気を含んだ外気が流入するのを抑制することができる。その結果、本体部内での結露を抑制することができるとともに、その本体部内の断熱材の濡れを抑制することができ、試験槽の断熱性能が低下することを抑制することができる。しかも、断熱パネル内での結露が抑制されるので、断熱パネルからの水漏れが生じることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の環境試験装置によれば、低温試験から試験を始める場合に試験槽を構成する閉空間構成部の内部の閉空間に湿気を含んだ外気が供給されるのを確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る環境試験装置10の全体構成を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示した環境試験装置10の壁体18の一部を概略的に示す断面図である。図3は、図1に示した環境試験装置10の圧力調整部50、空気充填機構60及び加圧機構70を概略的に示す断面図である。図4は、図3に示した加圧機構70の構成を説明するための回路図である。まず、図1〜図4を参照して、本発明の一実施形態による環境試験装置10の構成について説明する。
【0023】
本実施形態による環境試験装置10は、図1に示すように、試料Wを内部に収納可能な試験槽12を備えており、この試験槽12内の空間ST(以下、試験空間STという)に収納された試料Wに熱負荷を与えることができるものである。すなわち、この環境試験装置10は、試料Wを低温と高温に交互に曝して試料Wに熱ストレスを与える熱衝撃試験装置、あるいは試料Wを所定条件の雰囲気に曝し続けて試料Wに熱負荷を与える恒温槽又は恒温恒湿槽として構成されている。試料Wとしては、例えば半導体チップが実装されたプリント基板等を挙げることができる。なお、試験槽12は、本発明の閉空間構成部の概念に含まれるものであり、試験空間STは、本発明の閉空間の概念に含まれるものである。
【0024】
環境試験装置10は、加熱室14、冷却室16、及び前記試験空間STを画定する壁体18と、この壁体18に取り付けられた開閉扉22とを有している。
【0025】
加熱室14は、試験空間STとの間で循環する空気を加熱するための部屋であり、試験空間STを昇温させるために使用される。加熱室14には、ヒータ24と送風機26とが配設されている。
【0026】
冷却室16は、試験空間STとの間で循環する空気を冷却するための部屋であり、試験空間STを降温させるために使用される。冷却室16には、冷却器28と送風機30と補助加熱器32とが配設されている。補助加熱器32は、冷却室16から試験空間STに供給される空気が目標温度よりも低温になった場合に駆動される。
【0027】
試験空間STと加熱室14との間の高温側仕切り壁35には、吸入口35aと吹出し口35bが設けられており、これら吸入口35a及び吹出し口35bにはそれぞれ開閉ダンパー35cが配設されている。この開閉ダンパー35cは、図略のコンプレッサから供給される空圧によって作動する。吸入口35aは、試験空間STの空気を加熱室14に導入するための開口部である。吹出し口35bは、加熱室14で加熱された高温の空気を試験空間STに流入させるための開口部である。開閉ダンパー35cは、試験空間ST内を昇温させるときに吸入口35a及び吹出し口35bを開放する一方、試験空間ST内を降温させるときに吸入口35a及び吹出し口35bを閉じる。
【0028】
試験空間STと冷却室16との間の低温側仕切り壁36には、吸入口36aと吹出し口36bが設けられており、これら吸入口36a及び吹出し口36bにはそれぞれ開閉ダンパー36cが配設されている。この開閉ダンパー36cは、前記図略のコンプレッサから供給される空圧によって作動する。吸入口36aは、試験空間STの空気を冷却室16に導入するための開口部である。吹出し口36bは、冷却室16で冷却された低温の空気を試験空間STに流入させるための開口部である。開閉ダンパー36cは、試験空間ST内を降温させるときに吸入口36a及び吹出し口36bを開放する一方、試験空間ST内を昇温させるときに吸入口36a及び吹出し口36bを閉じる。
【0029】
壁体18は、試験槽12を構成する複数の壁体20と、加熱室14を囲む複数の壁体19と、冷却室16を囲む複数の壁体21とからなる。これら壁体19,20,21は何れも、図2に示すように、断熱パネル40によって構成されている。断熱パネル40は、複数のパネル材42が組み付けられた構成の中空状の本体部40aと、この本体部40aの内部に設けられた断熱材40bとを備えている。パネル材42は例えばステンレス板からなり、断熱パネル40の本体部40aは、例えば折り曲げ加工したパネル材42や平板状のままのパネル材42の縁部同士を接合することによって中空状に形成されている。そして、パネル材42同士の接合部42aにシール材(図示省略)を施すことにより、外部の空気が接合部42aを通して本体部40a内になるべく侵入しないようにしている。断熱材40bは、グラスウールやロックウール等の綿状積層体を有する断熱材40bである。
【0030】
前記開閉扉22は、試験槽12を構成する壁体20に設けられた試料Wの出し入れ口を開閉可能に設けられている。この開閉扉22も壁体20と同様に断熱性を有している。すなわち、開閉扉22は、複数のパネル材44を中空状に組み付けるとともにその内部に断熱材22aが配設された構成となっている。この断熱材22aは、グラスウールやロックウール等の綿状積層体を有する断熱材22aである。
【0031】
そして、本実施形態の環境試験装置10では、図3に示すように、圧力調整部50と、空気充填機構60と、加圧機構70とが設けられている。
【0032】
圧力調整部50は、前記試験空間STとの間で空気を流動させて試験空間ST内の圧力変化を緩和するものである。
【0033】
具体的には、圧力調整部50は、筐体52と、エアバッグ54と、流通ダクト56とを有する。
【0034】
前記筐体52は、中空の箱状に形成されており、前記流通ダクト56と接続されるダクト側部分52aと、前記加圧機構70と接続される加圧機構側部分52bとからなる。これらダクト側部分52aのフランジ部52cと加圧機構側部分52bのフランジ部52dとがボルト52eとナット52fで締結されることによって筐体52が構成されている。
【0035】
そして、この筐体52内に前記エアバッグ54が設けられている。エアバッグ54は、ポリエチレン、ビニル樹脂等の軟質材を用いて形成された伸縮自在な膜体からなる。このエアバッグ54は、その縁部が前記ダクト側部分52aのフランジ部52cと前記加圧機構側部分52bのフランジ部52dとの間に挟み込まれ、それら両フランジ部52c,52d同士の締結に伴って固定されている。このエアバッグ54の縁部は、両フランジ部52c,52d間の隙間を閉塞するパッキンとしても利用されている。
【0036】
そして、エアバッグ54は、加圧機構側部分52b内に膨らむように構成されており、その加圧機構側部分52b内でバッファ空間SBを覆っている。筐体52のダクト側部分52aには通気口52gが設けられており、この通気口52gに前記流通ダクト56の一端部が接続されている。流通ダクト56の他端部は、試験空間STを構成する壁体20に設けられた貫通孔20a内に挿嵌されている。この流通ダクト56の他端部は、試験空間STにまで進入している。これにより、バッファ空間SBは、通気口52g及び流通ダクト56内の流通路を通じて試験空間STとの間で空気が流通可能となっている。このため、圧力調整部50では、試験空間STの圧力変化に応じてエアバッグ54の伸縮を伴いながら試験空間STとバッファ空間SBとの間で空気が流動することによって試験空間STの圧力変化を緩和するようになっている。すなわち、試験空間STの圧力がバッファ空間SBの圧力よりも高ければ、試験空間STからバッファ空間SBに向かって空気が移動してエアバッグ54を膨張させる。一方、試験空間STの圧力がバッファ空間SBの圧力よりも低ければ、バッファ空間SBから試験空間STに向かって空気が移動してエアバッグ54を収縮させる。
【0037】
なお、筐体52内の容量、詳細には加圧機構側部分52b内の空間の容量は、エアバッグ54の最大容量よりも少なくなっているのが好ましい。この場合には、筐体52内でエアバッグ54が限界を超えて膨らむことがなくなるので、エアバッグ54の破裂が確実に防止される。
【0038】
筐体52のダクト側部分52aの内部には、通気口52gを通って空気が流通する方向に対して垂直に配置されたスリット板53が通気口52gと離間して設けられている。スリット板53は、その縁部がダクト側部分52aの内面に固定されることによってダクト側部分52aの内部に設置されている。このスリット板53は、複数のスリットを有しており、エアバッグ54内と通気口52g側の空間との間で空気を流通可能としながら、バッファ空間SBから通気口52gを通じて空気が流出するときに収縮したエアバッグ54が通気口52gを塞ぐのを阻止する。
【0039】
そして、筐体52内においてエアバッグ54に対してバッファ空間SBと反対側の空間が加圧空間SPとなっている。筐体52の加圧機構側部分52bには、前記加圧機構70が接続される加圧用通気口52hが設けられており、後述するように加圧機構70から供給される空気が加圧用通気口52hを通じて加圧空間SPに導入されることによって、エアバッグ54が収縮するように加圧される。
【0040】
また、筐体52の加圧機構側部分52bには、排気口52iが設けられている。加圧機構側部分52bの外面には、この排気口52iを通じて排気可能な状態と排気不可能な状態とを切り換えるための開閉機構55が設けられている。
【0041】
具体的には、開閉機構55は、排気口カバー55aと、開閉スリット板55bと、エアシリンダ55cとを有している。
【0042】
排気口カバー55aは、排気口52iを覆うように加圧機構側部分52bの外面に設けられている。この排気口カバー55aには、複数のスリットが形成されている。
【0043】
開閉スリット板55bは、複数のスリットを有しており、排気口カバー55aの外面に摺接するように設けられている。
【0044】
エアシリンダ55cは、そのロッド部55dが開閉スリット板55bに接続されており、開閉スリット板55bを排気口カバー55aに対してスライドするように動作させる。このエアシリンダ55cによる開閉スリット板55bのスライド動作によって、当該開閉スリット板55bのスリットが排気口カバー55aのスリットに合うことにより排気口カバー55aのスリットが開放され、筐体52の加圧空間SP内から排気可能な状態となる。一方、開閉スリット板55bのスリット間の部分が排気口カバー55aのスリットに合うことにより排気口カバー55aのスリットが遮蔽され、筐体52内の加圧空間SPから排気不可能な状態となる。
【0045】
前記空気充填機構60は、バッファ空間SBに乾燥した空気を充填するためのものである。
【0046】
具体的には、この空気充填機構60は、空気供給手段62と、除湿部64とを有する。
【0047】
前記空気供給手段62は、送風機又はポンプからなり、バッファ空間SBへ空気を供給するためのものである。この空気供給手段62は、供給ダクト63を介して前記流通ダクト56に接続されている。
【0048】
前記除湿部64は、供給ダクト63内に設けられており、空気供給手段62から供給される空気中の水分を除去するものである。この除湿部64は、例えば乾燥剤やその他の除湿機能を有するものからなる。このような構成により、空気供給手段62から供給された空気が除湿部64で除湿された後、供給ダクト63及び流通ダクト56内の空間を通ってバッファ空間SBに導入されるようになっている。
【0049】
なお、空気供給手段62を構成する送風機又はポンプを逆回転させることにより、バッファ空間SBから空気を吸引することも可能となっている。
【0050】
供給ダクト63と流通ダクト56との接続箇所には、切換弁66が設けられている。この切換弁66は、空気供給手段62からバッファ空間SBへ空気を流すか、又は、試験空間STとバッファ空間SBとの間で空気を流通させるかを切り換えるためのものである。
【0051】
具体的には、切換弁66を閉位置Aに配置し、供給ダクト63の端部の開口を閉じた場合には、空気供給手段62からの空気が流通ダクト56内に供給されず、流通ダクト56内の流通路を通じて試験空間STとバッファ空間SBとの間での空気の流通が阻害されることなくスムーズに行われる。一方、切換弁66を開位置Bに配置し、供給ダクト63の端部の開口を開放するとともに流通ダクト56内の流通路を遮断した場合には、試験空間STとバッファ空間SBとの間の空気の流通が遮断され、空気供給手段62からバッファ空間SBへ空気が供給される。
【0052】
なお、試験空間STの圧力低下時に試験空間STに必要とされる空気量がエアバッグ54内の容量で不足する場合には、切換弁66を前記閉位置Aと前記開位置Bの間の位置で止めて空気供給手段62から空気を補充することも可能となっている。
【0053】
前記加圧機構70は、エアバッグ54を収縮させるように加圧空間SP側からエアバッグ54を加圧するためのものであり、前記筐体52の加圧機構側部分52bの加圧用通気口52hに接続されている。
【0054】
具体的には、この加圧機構70は、図4に示すようにエア源72と、加圧調整ユニット74とを有している。
【0055】
前記エア源72としては、工場等に設けられた空圧生成設備又は各種コンプレッサが用いられる。なお、このエア源72として、前記開閉ダンパー35c,36cを作動させるために空圧を供給する前記図略のコンプレッサを共用してもよい。
【0056】
前記加圧調整ユニット74は、その上流側がエア供給ダクト73を介してエア源72に接続されているとともに、その下流側が加圧用ダクト75を介して前記加圧用通気口52hに接続されている。この加圧調整ユニット74は、エア源72から供給される空気の圧力を所定圧力に調整するものである。加圧調整ユニット74は、油除去用のフィルタ74aと、供給される空気の圧力を所定圧力に減圧する減圧弁74bと、減圧後の空気の圧力を測定する圧力ゲージ74cと、フィルタ74dと、圧力調整部50へ空圧を供給するか否かを制御する開閉弁74eとが上流側から下流側へこの順番で接続されることによって構成されている。
【0057】
このような構成により、エア源72から供給される空気が加圧調整ユニット74で所定圧力に減圧されるとともに油等の異物が除去された後、加圧用ダクト75を通じて圧力調整部50の筐体52内の加圧空間SPに供給される。この加圧空間SPに供給される空気の圧力によってエアバッグ54が収縮するように加圧されるとともに、バッファ空間SB内の空気が強制的に押し出され、流通ダクト56内の流通路を通じて試験空間STへ流されるようになっている。
【0058】
次に、以上のように構成された環境試験装置10の運転動作について説明する。以下に説明する運転動作は、試験空間ST内の試料Wを高温雰囲気に曝す高温試験と低温雰囲気に曝す低温試験とを交互に繰り返し行う熱衝撃試験においてまず低温試験から始める場合の運転動作である。
【0059】
この運転動作では、低温試験を始める前の低温室の準備運転時に予め切換弁66を前記開位置Bに切り換え、空気充填機構60によりバッファ空間SBに乾燥した空気を充填しておく。これにより、エアバッグ54が筐体52内で膨らむ。この際、開閉機構55において排気口カバー55aのスリットを開けておき、エアバッグ54の膨張に伴って加圧空間SP内の空気が排気口52i及び前記スリットを通じて排気されるようにする。
【0060】
そして、低温試験時には、試験空間ST内に試料Wをセットした状態で、低温側仕切り壁36の吸入口36a及び吹出し口36bを開放する一方、高温側仕切り壁35の吸入口35a及び吹出し口35bを閉じる。そして、冷却器28及び送風機30を駆動して、冷却器28で空気を冷却するとともにこの低温に冷却された空気を冷却室16と試験空間STとの間で循環させる。これにより、試験空間STが所定の温度まで降温し、この所定の温度に一定時間維持され、試料Wの低温曝しが行われる。
【0061】
低温曝しの際には、試験空間STの降温に伴ってその空間ST内の空気が収縮するが、エアバッグ54が収縮することでバッファ空間SB内の空気が流通ダクト56内の流通路を通って試験空間STに流れるので、試験空間STの圧力低下が緩和される。このため、試験槽12を構成する断熱パネル40同士の接合部や、扉パッキン、ケーブル孔等のシール部を通じて試験空間STに湿気を含んだ外気が流入することが抑制される。この低温曝しの際、開閉機構55において排気口カバー55aのスリットを開けた状態に維持する。
【0062】
なお、試験空間STの降温が急速に行われ、その空間STにおける圧力低下が急激である場合には、加圧機構70によって筐体52内の加圧空間SPに所定圧力の空気を導入し、その空気の圧力によってエアバッグ54を収縮させる。これにより、エアバッグ54内の空気、すなわちバッファ空間SB内の空気が流通ダクト56を通じて試験空間STへ押し流される。その結果、試験空間STにおける急激な圧力低下に対応することができ、その試験空間STの圧力低下が緩和される。この加圧機構70によって加圧空間SPに空気を導入する際には、開閉機構55において排気口カバー55aのスリットを閉じておく。
【0063】
一定の時間が経過すると、今度は高温側仕切り壁35の吸入口35a及び吹出し口35bを開放する一方、低温側仕切り壁36の吸入口36a及び吹出し口36bを閉じる。そして、ヒータ24及び送風機26を駆動して、加熱室14で空気を加熱するとともにこの高温に加熱された空気を加熱室14と試験空間STとの間で循環させる。これにより試験空間STが所定の温度まで昇温し、この所定の温度に一定時間維持され、試料Wの高温曝しが行われる。以降、低温曝しと高温曝しを交互に繰り返すことにより、試料Wに熱的ストレスを負荷することができる。
【0064】
高温曝しの際には、試験空間STの昇温に伴ってその空間ST内の空気が膨張するが、その膨張した空気の一部が流通ダクト56内の流通路を通ってバッファ空間SBに流れ、エアバッグ54を膨らませるので、試験空間STの圧力上昇が緩和される。このため、試験空間ST内の空気が試験槽12を構成する断熱パネル40同士の接合部や、扉パッキン、ケーブル孔などのシール部を通じて外部に漏れるのが抑制される。この高温曝しの際、開閉機構55において排気口カバー55aのスリットを開けた状態に維持する。
【0065】
以上説明したように、本実施形態では、低温試験から試験を始める場合に前もって空気充填機構60により試験空間STと連通するバッファ空間SBに乾燥した空気を充填し、エアバッグ54を膨らませておくことができる。このため、低温試験が開始されて試験空間STが冷却されることにより試験空間STで空気が収縮したときには、エアバッグ54が収縮しながらバッファ空間SB内の乾燥した空気が試験空間STへ供給され、試験空間STにおける圧力変動が緩和される。その結果、環境試験装置10において低温試験から試験を始める場合に試験空間STに湿気を含んだ外気が供給されるのを確実に抑制することができる。これにより、試験空間ST及び冷却室16を構成する隔壁面や冷却器28等に着霜が生じるのを抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、空気供給手段62と流通ダクト56との接続箇所に空気供給手段62からバッファ空間SBへ空気を流すか、又は、試験空間STとバッファ空間SBとの間で空気を流通させるかを切り換えることが可能な切換弁66が設けられている。このため、低温試験の開始前に切換弁66を開位置Bに配置して空気供給手段62からバッファ空間SBへ空気を流し、バッファ空間SBに乾燥した空気を充填することができる一方、試験の開始後は試験空間STとバッファ空間SBとの間で空気を流通させるための閉位置Aに切換弁66の位置を切り換えて、空気供給手段62から供給される空気により試験空間STに不要な空気流が生じないようにすることができる。
【0067】
また、本実施形態では、空気供給手段62がバッファ空間SBへ空気を供給する機能のみならず、バッファ空間SBから空気を吸引する機能を有するので、例えば高温試験から試験を始める場合に前もってバッファ空間SBから空気を吸引しておくことができる。これにより、高温試験時に試験空間STの昇温によって膨張した空気をバッファ空間SBに受け入れやすくすることができる。
【0068】
また、本実施形態では、エアバッグ54を収縮させるようにそのエアバッグ54に加圧するための加圧機構70が設けられているので、この加圧機構70によりエアバッグ54を収縮させてバッファ空間SB内の乾燥した空気を試験空間STへ強制的に押し流すことができる。このため、試験空間STにおける圧力変化が急速である場合でも、その圧力変化に対応して乾燥した空気を試験空間STへ供給することができる。
【0069】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0070】
例えば、図5に示す上記実施形態の第1変形例のように、バッファ空間SBは流通ダクト56内の流通路を通じて試験槽12の壁体20を構成する断熱パネル40の本体部40a内の空間SWと連通していてもよい。なお、この第1変形例においては、断熱パネル40の本体部40aが本発明の閉空間構成部の概念に含まれるものであり、本体部40a内の空間SWが本発明の閉空間の概念に含まれるものである。
【0071】
この第1変形例では、低温試験から試験を始める場合に試験空間STの温度低下に伴って本体部40a内の空気が低温になり収縮したとき、バッファ空間SBから乾燥した空気を流通ダクト56内の流通路を通じて本体部40a内の空間SWに供給することができる。このため、本体部40a内の空間SWが降温してもその空間SWの圧力低下を緩和することができ、本体部40aを構成するパネル材42(図2参照)同士の接合部42aやシール部を通じて本体部40a内の空間SWに湿気を含んだ外気が流入するのを抑制することができる。その結果、本体部40a内での結露を抑制することができるとともに、その本体部40a内の断熱材40bの濡れを抑制することができ、試験槽12の断熱性能が低下することを抑制することができる。しかも、断熱パネル40内での結露が抑制されるので、断熱パネル40からの水漏れが生じることを抑制することができる。
【0072】
また、この第1変形例において、高温試験の際には、試験空間STの昇温に伴って本体部40a内の空間SWの空気が高温になり膨張する。この際、その膨張した空気の一部が流通ダクト56内の流通路を通じてバッファ空間SBに流れてエアバッグ54を膨らませるので、本体部40a内の空間SWの圧力上昇が緩和される。このため、本体部40aを構成するパネル材42(図2参照)同士の接合部42aやシール部を通じて本体部40a内の空気が外部に漏れるのが抑制される。
【0073】
また、圧力調整部50におけるエアバッグ54の構成とそのエアバッグ54の取付構造は、上記実施形態で示したものに限られるものではない。
【0074】
例えば、図6に示す上記実施形態の第2変形例のように、エアバッグ54が伸縮自在な袋体で構成されており、このエアバッグ54が通気口52gを通って筐体52内に突出した流通ダクト56の端部に被せられるとともに、そのエアバッグ54の開口が流通ダクト56の端部の外面に空気漏れがないように密着させられていてもよい。
【0075】
なお、この第2変形例の構成において、筐体52、加圧機構70及び開閉機構55は必ずしも設ける必要はなく、省略してもよい。
【0076】
また、エアバッグ54として膜体や袋体以外の形状のものを用いてもよく、例えば蛇腹状のものを用いてもよい。
【0077】
また、流通ダクト56を省略し、エアバッグ54を壁体20の貫通孔20aの外側を覆うように壁体20の外面に直接取り付けるとともに、そのエアバッグ54内に空気充填機構60の供給ダクトを挿し込み、そのエアバッグ54内のバッファ空間SBに空気充填機構60から乾燥した空気を供給できるように構成してもよい。
【0078】
また、上記実施形態の構成において、加圧機構70を省略してもよい。
【0079】
また、空気充填機構60の空気供給手段として送風機やポンプ以外のものを用いてもよい。例えば、工場等に設置された空圧生成設備やその他の送風設備を空気供給手段として用いてもよい。
【0080】
また、空気充填機構60の除湿部は、供給ダクト63以外の箇所に配設してもよい。例えば、筐体52内のバッファ空間SBの所定箇所や流通ダクト56内において空気供給手段62からバッファ空間SBへの空気の供給経路上の所定箇所等に除湿部を設けてもよい。
【0081】
また、筐体52内の加圧空間SPに導入してエアバッグ54が収縮するように加圧するための媒体として空気以外の気体や種々の液体等の流体を用いてもよい。
【0082】
また、エアバッグ54を収縮させるようにそのエアバッグ54を加圧するための加圧機構として、ピストンでエアバッグ54を加圧するような機構を用いてもよい。
【0083】
また、前記スリット板53の代わりに複数の貫通孔が形成された板材を用いてもよい。
【0084】
また、スリット板53の代わりに径方向に貫通する複数のスリットや複数の貫通孔が設けられた筒体を用いてもよい。
【0085】
具体的には、筐体52の通気口52gに前記筒体を筐体52内に突出するように取り付け、膜体からなるエアバッグ54を筐体52内に突出した筒体の周囲を覆うように筐体52に取り付けるか、又は、袋体からなるエアバッグ54を筐体52内に突出した筒体に被せてエアバッグ54の開口を筒体の外面に密着するように取り付けてもよい。この場合、エアバッグ54内のバッファ空間SBから筒体内及び流通ダクト56を通じて空気が流出するときに収縮したエアバッグ54の一部が筒体の端部の開口を塞いだとしても、筒体の外周のスリットもしくは貫通孔を通じてエアバッグ54内のバッファ空間SBから流通ダクト56の流通路へ空気を流すことが可能となる。
【0086】
また、上記実施形態では、壁体18によって区画される室内空間が断熱壁35,36によって3つの空間(試験空間ST、加熱室14、冷却室16)に仕切られた3ゾーン構成としたが、これに限られるものではない。例えば、試験槽の壁体によって区画される室内空間が断熱壁によって仕切られていない一槽構造の環境試験装置としてもよい。この環境試験装置では、室内空間が試験空間として構成されるが、この試験空間は、仕切り板により、試料がセットされる試料室と、空気を加熱又は冷却する空調室とに仕切られている。空調室には、送風機、ヒータ、冷却器等が配設されており、空調室において加熱又は冷却された空気が仕切り板に設けられた連通孔を通じて試験空間に送風されるようになっている。このため、試験空間内の空気の加熱又は冷却に伴って、壁体が加熱又は冷却され、それに伴って試験空間及び壁体を構成する断熱パネル内の空間の空気が膨張又は収縮する。従って、このような環境試験装置においても、閉空間としての試験空間又は断熱パネル内の空間とバッファ空間との間で空気を流動させる本発明の構成を適用して、上記実施形態による3ゾーン構成の環境試験装置10と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態に係る環境試験装置の全体構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示した環境試験装置の壁体の一部を概略的に示す断面図である。
【図3】図1に示した環境試験装置の圧力調整部、空気充填機構及び加圧機構を概略的に示す断面図である。
【図4】図3に示した加圧機構の構成を説明するための回路図である。
【図5】本発明の一実施形態の第1変形例に係る環境試験装置の圧力調整部、空気充填機構及び加圧機構を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態の第2変形例に係る環境試験装置の圧力調整部、空気充填機構及び加圧機構を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0088】
SB バッファ空間
ST 試験空間
W 試料
10 環境試験装置
12 試験槽
20 壁体
40 断熱パネル
40a 本体部
40b 断熱材
42 パネル材
50 圧力調整部
54 エアバッグ
60 空気充填機構
62 空気供給手段
64 除湿部
66 切換弁
70 加圧機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験槽の少なくとも一部を構成し、閉空間を内部に有する閉空間構成部と、
前記閉空間との間で空気が流通可能なバッファ空間の周囲の少なくとも一部を覆うエアバッグを有し、前記閉空間の圧力変化に応じて前記エアバッグの伸縮を伴いながら前記閉空間と前記バッファ空間との間で空気を流動させる圧力調整部と、
前記バッファ空間に乾燥した空気を充填するための空気充填機構とを備えた、環境試験装置。
【請求項2】
前記空気充填機構は、前記バッファ空間へ空気を供給する空気供給手段と、その空気供給手段から前記バッファ空間へ供給される空気中の水分を除去する除湿部とを含む、請求項1に記載の環境試験装置。
【請求項3】
前記空気供給手段は、前記バッファ空間と前記閉空間との間の空気の流通路に接続されており、その接続箇所には、前記空気供給手段から前記バッファ空間へ空気を流すか、又は、前記閉空間と前記バッファ空間との間で空気を流通させるかを切り換え可能な切換弁が設けられている、請求項2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
前記空気供給手段は、前記バッファ空間へ空気を供給する機能のみならず、前記バッファ空間から空気を吸引する機能を有する、請求項2または3に記載の環境試験装置。
【請求項5】
前記エアバッグを収縮させるようにそのエアバッグを加圧するための加圧機構を備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の環境試験装置。
【請求項6】
前記閉空間構成部は、試験槽であるとともに、前記閉空間は、その試験槽内の試料を収納する空間であり、
前記バッファ空間は、前記試験槽内の試料を収納する空間と連通している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の環境試験装置。
【請求項7】
前記閉空間構成部は、試験槽の壁体を構成する断熱パネルの中空状の本体部であるとともに、前記閉空間は、前記本体部内の空間であり、
前記バッファ空間は、前記本体部内の空間と連通している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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