説明

環境適合性電子デバイス筺体

本発明は、天然繊維強化ポリアミド組成物の分野に関し、特に、良好な機械的特性を示す環境適合性電子デバイス筺体を製造するための天然繊維強化ポリアミド組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然繊維強化ポリアミド組成物の分野に関し、特に、環境適合性(environmentally friendly)電子デバイス筺体を製造するための天然繊維強化ポリアミド組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリアミド組成物は、その良好な機械的特性、耐熱性、耐衝撃性および耐化学性のため、そして、異なる程度の複雑さおよび入り組み方で、様々な物品へと便利かつ柔軟に成形できるため、自動車に用いられる部品、電気/電子部品、家庭用品および家具をはじめとする幅広い用途に用いるのに望ましい。
【0003】
例えば、熱可塑性ポリアミド組成物は、ハンドヘルド電子デバイス(携帯電子デバイスとも呼ばれる)、例えば、携帯電話、個人用携帯情報端末、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、グローバルポジショニングシステムレシーバ、携帯ゲーム機、ラジオ、カメラおよびカメラ付属品の筺体を作製するのに特に好適である。かかる用途においては、例えば電磁波の吸収によってハンドヘルド電子デバイスの意図する操作性を妨げることなく、機械的特性と美観的側面の良いバランスを示すポリアミド組成物が必要とされるため、特に要求が厳しい用途である。
【0004】
機械的特性を改善しようとして、例えば、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、マイカ、珪灰石、タルク、炭酸カルシウムのような様々な無機強化剤を樹脂に添加して、強化ポリアミド組成物を得ることが従来から行われてきた。さらに、ポリアミド組成物で作製されたかかるデバイスの筺体は、頻回な使用の厳しさに耐えられることが重要である。かかる組成物は、良好な剛性および耐衝撃性を有し、優れた表面外観を示し、容易に塗布できるのが多くの場合望ましい。
【0005】
携帯電子デバイス業界およびそのサプライヤにおいては、環境フットプリント、温室効果ガス排出および天然資源の枯渇についての関心が増している。従って、再生可能源から得られ、環境に与える悪影響が全体に低い材料を用いるのが、ますます望ましい、または必要とされている。
【0006】
上述したとおり、現在、ガラス繊維が熱可塑性ポリマーに用いられている。それらは、熱可塑性ポリマーに良好に分散し、標準的な条件下で良好な機械的特性をもたらすからである。しかし、ガラス繊維は、大量の電力を必要とするエネルギー集約型のプロセスにより形成されるため、環境に与える影響および関連の製造費が増大する。さらに、ガラス繊維は摩耗するかもしれず、そのため、扱うのが危険である恐れがあるという欠点に加えて、ガラス繊維は、その寿命の後には廃棄が難しい。ガラス繊維強化組成物は、残渣が炉を損傷する傾向があるため、焼却することができない。廃棄方法は、埋立地に廃棄物を廃棄するものであり、環境の観点から問題があるばかりでなく、非常に費用がかかる。環境適合性熱可塑性組成物を得るという現在一般的に求められているものとして、再生可能源から重合され、堆肥化条件下で分解可能な材料としてポリ(乳酸)(PLA)を含む組成物が開発されている。
【0007】
米国特許第7,445,835号明細書には、例えば、ポリ(乳酸)(PLA)およびケナフ繊維等の生物分解性樹脂を含む組成物が開示されている。かかる組成物は、電気および電子機器を製造するのに有用であるとされている。携帯電子デバイスカバーは、特に要求が厳しい材料用途であり、高い機械的性能を必要とするため、かかる組成物を、携帯電子デバイスカバーを製造するのに用いることは、PLAの脆性のために制限される。
【0008】
国際公開第2008/107615号パンフレットには、10〜60重量%のポリ(乳酸)を含むポリアミド組成物が開示されている。かかる組成物は、携帯電子デバイスカバーを製造するのに有用であるとされている。しかし、ポリ(乳酸)(PLA)を含む樹脂組成物は、使用時そして特に電子機器を高湿高温の場所で用いる場合、樹脂の生物分解性のために、その機械的特性が劣化する恐れがあり得る。
【0009】
良好な機械的特性を有する環境適合性ポリアミド組成物を含む電子筺体が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
a)少なくとも1つのポリアミドと、b)天然繊維材料とを含む樹脂組成物が、良好な機械的特性を示すことを見出した。
【0011】
第1の態様において、本発明は、少なくとも1つのポリアミドと天然繊維材料とを含む樹脂組成物で形成された電子デバイス筺体を提供する。
【0012】
第2の態様において、本発明は、少なくとも1つのポリアミドと天然繊維材料とを含む樹脂組成物を成形する工程を含む電子デバイス筺体を製造する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で用いる「約」という用語は、許容範囲、換算係数、丸め、測定誤差等および当業者に知られたその他因子を反映して、量、サイズ、処方、パラメータおよびその他数量および特徴が、正確でない、かつ正確である必要はないが、凡そである、かつ/または、必要に応じて、それより大きい、または小さくてよいということを意味する。概して、量、サイズ、処方、パラメータ、その他数量または特徴は、そのように明示されていてもいなくても「約」または「凡そ」である。
【0014】
本明細書に記載した樹脂組成物は、電子デバイス筺体を製造するのに特に好適である。「電子デバイス筺体」とは、デバイスの筺体、カバー、骨格、枠組み等を意味する。筺体は、単一の物品であってもよく、または2つ以上の構成要素を含んでいてもよい。「骨格」とは、エレクトロニクス、マイクロプロセッサ、スクリーン、キーボード、キーパッド、アンテナ、バッテリーソケット等のデバイスの他の構成要素が搭載される構造用構成要素を意味する。骨格は、電話の外側からは見えない、または部分的にのみ見える内部構成要素であってもよい。筺体は、デバイスの内側構成要素を、環境要因(例えば、液体、ダスト等)からの衝撃、汚染および/または損傷から保護することができる。カバー等の筺体構成要素はまた、実質的または主要な構造上の支持、そして、特定の構成要素が、スクリーンおよび/またはアンテナ等のデバイスの外側へ露出される衝撃に対する保護を与えてもよい。好ましくは、本明細書に記載された電子デバイスは、ハンドヘルドであるように、すなわち、ハンドヘルド電子デバイスまたは携帯電子デバイスであるように設計されている。
【0015】
「ハンドヘルド電子デバイス」とは、持ち運びに便利で、様々な場所で用いられるよう設計された電子デバイスを意味する。ハンドヘルド電子デバイスの代表例としては、携帯電話、個人用携帯情報端末、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ラジオ、カメラおよびカメラ付属品、時計、計算機、音楽プレイヤー、グローバルポジショニングシステムレシーバ、携帯ゲーム機、ハードドライブおよびその他電子記憶デバイス等が挙げられる。好ましくは、本発明によるハンドヘルド電子デバイス筺体は、携帯電話筺体の形態にある。すなわち、本発明によるハンドヘルド電子デバイス筺体は、好ましくは、携帯電話筺体である。
本発明による電子デバイス筺体は、少なくとも1つのポリアミドを含む樹脂組成物から作製される。少なくとも1つのポリアミドは、樹脂組成物の総重量を基準とした重量パーセンテージで、好ましくは、40〜95重量%または約40〜約95重量%、より好ましくは、60〜95重量%または約60〜約95重量%、さらに好ましくは、70〜95重量%または約70〜約95重量%で存在する。
【0016】
ポリアミドは、1つ以上のジカルボン酸および1つ以上のジアミンおよび/または1つ以上のアミノカルボン酸の縮合生成物および/または1つ以上の環状ラクタムの開環重合生成物である。本発明において、「ポリアミド」という用語はまた、2つ以上のかかるモノマーから得られるコポリマーおよび2つ以上の完全脂肪族ポリアミドのブレンドのことも指す。直鎖状、分枝状および環状モノマーを用いてよい。
【0017】
好適なジカルボン酸としては、これらに限られるものではないが、アジピン酸(C6)、ピメリン酸(C7)、スベリン酸(C8)、アゼライン酸(C9)、セバシン酸(C10)、ドデカン二酸(C12)、テトラデカン二酸(C14)、テレフタル酸(ポリアミドの指定では「T」と略記)およびイソフタル酸(ポリアミドの指定では「I」と略記)が挙げられる。好ましいジカルボン酸は、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、テレフタル酸およびこれらの混合物である。
【0018】
ジアミンは、4つ以上の炭素原子を有するジアミンの中から選択することができ、これらに限られるものではないが、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンが挙げられる。好ましいジアミンは、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンおよびこれらの混合物である。好ましくは、少なくとも1つのポリアミドは、PA6,10(ポリ(ヘキサメチレンセバカミド))、PA6,14(ポリ(ヘキサメチレンテトラデカノアミド))、PA10,10(ポリ(デカメチレンセバカミド))、PA10,12(ポリ(デカメチレンデカノアミド))、PA1014(ポリ(デカメチレンテトラデカノアミド))、PA12,10(ポリ(ドデカメチレンセバカミド))、PA12,12(ポリ(ドデカメチレンドデカノアミド))、PA610/6T(ヘキサメチレンセバカミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド)、PA612/6T(ヘキサメチレンドデカノアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド)、PA1010/10T(デカメチレンセバカミド/デカメチレンテレフタルアミドコポリアミド)ならびにこれらのコポリマーおよび混合物から選択される。より好ましくは、少なくとも1つのポリアミドはPA10,10である。
【0019】
本発明による電子デバイス筺体は、天然繊維材料を含む樹脂組成物から形成されているため、かつ、この材料は、高温露出による分解または劣化に対して感受性を有していることがあるため、少なくとも1つのポリアミドは、ISO3146Cで測定されたとき、230℃以下の融点を有するのが好ましい。
【0020】
本発明の他の実施形態によれば、本発明による電子デバイス筺体は、再生可能源から部分的または全面的に得られる少なくとも1つのポリアミドを含む樹脂組成物から作製される。すなわち、樹脂組成物は、少なくとも1つの再生可能なポリアミドを含む。近年、バイオ系樹脂は、環境保護の観点から着目されており、燃料および石油系製品の原材料として用いるのに、化石燃料源が再生可能源に置き換わる傾向が一般的になってきている。こういうわけで、電子デバイス業界およびそのサプライヤにおいては、環境フットプリント、温室効果ガス排出および天然資源の枯渇についての関心が増している。従って、ますます、再生可能源から得られ、環境に与える悪影響が全体に低い材料を用いるのが望ましい、または必要とされている。
【0021】
上述したとおり、ポリアミドは、1つ以上のジカルボン酸および1つ以上のジアミンおよび/または1つ以上のアミノカルボン酸の縮合生成物および/または1つ以上の環状ラクタムの開環重合生成物である。再生可能源から部分的または全面的に得られるポリアミドは、脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジアミンから調製され、そのうちの少なくとも1つはバイオ源または「再生可能」である。「バイオ源」または「再生可能」とは、材料が、例えば、発酵および、例えば、穀物、植物油、セルロース、リグニン、脂肪酸をはじめとする植物性物質および脂肪、獣脂、鯨油、魚油等の油をはじめとする動物性物質を、フィードストックまたは最終の再生可能ポリマーに変換するその他プロセスにより、(数千年または数万年要する石油とは異なり)数年以内で補充される、または補充できることを意味する。
【0022】
バイオ源または再生可能な脂肪族ジカルボン酸としては、Cn鎖長の直鎖状ジカルボン酸(n=10(デカンジ酸、セバシン酸とも呼ばれる)、12(ドデカン二酸)および14(テトラデカン二酸))が例示される。脂肪族ジカルボン酸のバイオ源は、従来の分離精製プロセスと組み合わせた周知の発酵プロセスにより得られる。例えば、1,14−テトラデカン二酸は、本明細書に参考文献として援用される米国特許第6,004,784号明細書および第6,066,480号明細書に開示された手順に従って、カンジダ−トロピカリス(Canadida tropicalis)を用いたミリスチン酸メチルの生物発光により得られる。他のα,ω−アルカンジカルボン酸もまた、他の脂肪酸または脂肪エステルと同様の発酵方法を用いて得られる。脂肪族ジカルボン酸は、当該技術分野において周知の手順を用いて発酵ブロスから単離することができる。例えば、英国特許第1,096,326号明細書には、発酵ブロスの酢酸エチル抽出に続いて、メタノールおよび硫酸触媒による抽出物のエステル化により、ジカルボン酸の対応するジメチルエステルを得ることが開示されている。市販のバイオ源脂肪族ジカルボン酸の具体例を挙げると、ヒマシ油から得られるセバシン酸である。上記に開示したバイオ源から得られる脂肪族ジカルボン酸は、2007年12月19日の中国特許第101088983号明細書「Preparation of dodecanedioic acid decanediamine salt for use synthesizing polyamides(ポリアミドの合成に用いるドデカン二酸デカンジアミン塩の調製)」に開示されたような従来の化学的方法により脂肪族ジアミンに変換することができる。デカン二酸を、アンモニアと、134〜200℃で反応させた後、200〜400℃でのジアミンの脱水により、ジニトリルセバシン酸が得られ、これを、エタノール−水酸化カリウム溶液中、ラネーニッケル触媒を存在させて、50〜125℃で水素化すると、1,10−デカンジアミンが得られる。他のα,ω−アルカンジカルボン酸を、同様の方法を用いて、α,ω−アルカンジアミンに変換することができる。このように、上記に開示した発酵と従来の化学合成の組み合わせにより、ポリアミド合成に好適なα,ω−アルカンジアミンのバイオ源系列が得られる。
【0023】
これらのバイオ源は全て、ジカルボン酸および脂肪族ジアミンの化石または石油源に比べて、高レベルの炭素同位体14Cを有しているという点で独特の特徴を有する。この独特な同位体の特徴は、非核の従来の化学的改良には影響されずに残る。このように、バイオ源材料における14C同位体レベルは、普遍の特徴を与え、ポリアミド等のあらゆる後段生成物、川下は電気筺体等のポリアミドを含む製品を、バイオ源材料を含むものと明白に定義することができる。
【0024】
再生可能源から部分的または全面的に得られる少なくとも1つのポリアミドを用いて、樹脂組成物を製造するときは、好ましくは、少なくとも1つのポリアミドは、ASTM−D6866バイオ系判定方法Bで測定されたとき、少なくとも50パーセント現代炭素(pMC)、より好ましくは、少なくとも70pMC、さらに好ましくは、少なくとも90pMCの炭素含有量を有する。ASTM−D6866方法を実施する規模を有する商業的な分析実験室がいくつかある。本明細書の分析は、Beta Analytics Inc.(Miami FI,USA)により行われた。
【0025】
「バイオ系含有量」を得るためのASTM−D6866方法は、未知の試料における放射性炭素(14C)の量対現代参照基準(modern reference standard)の量の比を測定することに依拠している。この比は、単位「pMC」(パーセント現代炭素(percent modern carbon))によりパーセンテージで報告される。分析している材料が、現代の放射性炭素と化石炭素(石油、石炭または天然ガス源から得られる化石炭素)の混合物である場合には、得られるpMC値は、試料中に存在するバイオマス材料の量に直接関連している。
【0026】
放射性炭素年代測定法に用いる現代参照基準は、西暦1950年に略等しい既知の放射性炭素含有量を有する、米国標準技術研究所−USA(NIST−USA)基準である。大量の過剰な放射性炭素が、爆発の度に大気中へ取り込まれる(「爆弾炭素」と呼ばれる)熱核兵器実験以前の時を表わすため、西暦1950年が選択された。これは、考古学者および地質学者が基準として用いる時間の論理点であった。放射性炭素年代測定法を用いる者にとっては、西暦1950年は「ゼロ歳」に等しい。これはまた、100pMCを表す。
【0027】
大気中の「爆弾炭素」は、実験のピークであり、かつ、実験停止の条約前の1963年に、通常レベルのほぼ2倍に達した。その出現以来、西暦1950年以来生存している植物および動物についての100pMCより大きい値を示す、大気中におけるその分布が近似されてきた。それは、時間と共に徐々に減少し、現代の値は107.5pMC付近である。これは、新鮮なバイオマス材料、例えば、トウモロコシ、植物油等、およびそれから得られる材料が、107.5pMC付近の放射性炭素の痕跡を与えるであろうことを意味する。その核半減期が5730年である放射性炭素年代測定法同位体(14C)によって、試料炭素を、化石炭素(「死」)と生物(「生」)フィードストック間で、明瞭に分配できる。化石炭素は、その源に応じて、ゼロに非常に近い14C含有量を有する。化石炭素を現代の炭素と組み合わせて材料とする結果、現代のpMC含有量は希釈されるであろう。107.5pMCが、現代のバイオマス材料を表わし、0pMCが、石油(化石炭素)誘導体を表わすと推定すると、その材料についての測定したpMC値は、2つの成分のタイプの比率を反映するであろう。このように、現代の植物油から100%得られる材料は、107.5pMC付近の放射性炭素の痕跡を与えるであろう。その材料を、50%石油誘導体で希釈した場合、54pMC付近の放射性炭素の痕跡を与えるであろう。
【0028】
バイオマス含有量結果は、100%を107.5pMCに等しく、かつ0%を0pMCに等しく割り当てることにより得られる。これについて、99pMCの試料は、93%の等価のバイオ系含有量結果を与えるであろう。この値は、「平均バイオ系結果」と呼ばれ、分析材料内の全ての成分が、現在生存か、化石起源のいずれかであったかを想定するものである。
【0029】
ASTM D6866方法により得られる結果は、平均バイオ系結果であり、最終成分放射性炭素痕跡における変動を補うために、6%の絶対範囲(平均バイオ系結果のいずれかの側でプラスマイナス3%)を含む。材料は全て、現代または化石起源と推定される。結果は、材料に「存在する」バイオ系成分の量であって、製造プロセスで「用いた」バイオ系材料の量ではない。
【0030】
本発明による電子デバイス筺体は、天然繊維材料を含む樹脂組成物から作製される。天然繊維材料とは、植物起源または動物起源の材料のいずれかを意味する。天然繊維材料は、樹脂組成物の総重量を基準として、5〜60重量%または約5〜約60重量%、より好ましくは、5〜40重量%または約5〜約40重量%、さらに好ましくは、5〜30重量%または約5〜約30重量%で存在する。
【0031】
好ましくは、天然繊維材料は、植物源、例えば、種子毛(例えば、綿)、茎植物(例えば、麻、亜麻、竹、靱皮繊維とコア繊維の両方)、葉植物(例えば、サイザル(sisal)およびアバカ(abaca))、農業繊維(例えば、穀類わら、トウモロコシ穂軸、もみ殻およびココナッツ毛)またはリグノセルロース繊維(例えば、木、木繊維、木粉、紙および木関連材料)から得られる。これらの天然繊維材料は、個々に単体で用いられるか、または、複数のこれらの繊維は、必要に応じて、組み合わせて用いられる。より好ましくは、天然繊維材料は、ケナフ、亜麻、木、綿、ウール、竹、麻、ラミー、サイザル、リネン、ジュート、絹、グラス、もみ殻、バガス(bagasse)およびこれらの混合物からなる群の少なくとも1つを含む。さらに好ましくは、天然繊維材料は、ケナフ、亜麻、木、綿、ウールおよびこれらの混合物からなる群の少なくとも1つを含む。
【0032】
最適な機械的特性のために、天然繊維材料は、5〜60ミクロンまたは約5〜約60ミクロン、より好ましくは、10〜40ミクロンまたは約10〜約40ミクロンの平均直径を有する。この平均直径は、電子顕微鏡により測定される。本発明による樹脂組成物の化合を最適化するために、天然繊維材料は、1〜70ミクロンまたは約1〜約70ミクロン、より好ましくは、2〜30ミクロンまたは約2〜約30ミクロン、さらに好ましくは、2〜6mmまたは約2〜約6mmの平均直径を有する。この平均直径は、電子顕微鏡法により測定される。
【0033】
好ましくは、天然繊維材料は、10〜100GPaまたは約10〜約100GPa、より好ましくは、20〜80GPaまたは約20〜約80GPaのモジュラスを有する。モジュラスは、方法ASTM−D885に従って測定される。
【0034】
天然繊維材料は、少なくとも1つのポリアミドと混合およびブレンドする前に、任意選択により処理を施してもよい。かかる処理としては、限定されるものではないが、物理的および/または化学的方法(例えば、酸素プラズマ、漂白、脱リグニン、脱ろう)による繊維表面の改良、モノマーのグラフト化、天然繊維材料の乾燥または天然繊維材料の好ましいサイズへの切断により、天然繊維材料のポリアミドとの接着力を改善するための表面処理が例示される。
【0035】
環境上の利点のために天然繊維材料を用いるのとは別に、これを用いることによってまた、例えば再生可能源からの原材料の十分な利用可能性および低コスト性等のその他の利点も得られる。
【0036】
最終用途に応じて、本発明による電子デバイス筺体の機械的特性は、部分量の天然繊維材料を、1つ以上の強化剤で置き換えることにより、微調整してもよい。強化剤としては、ガラス強化剤およびフィラー、例えば、炭酸カルシウム、炭素繊維、タルク、マイカ、珪灰石、か焼クレイ、カオリン、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、アルミニウム炭酸ナトリウム、バリウムフェライトおよびチタン酸カリウムが例示される。ガラス強化剤としては、欧州特許第0190011号明細書および欧州特許第196194号明細書に記載されているような、a)非円形(例えば、卵形、楕円、まゆまたは矩形の形状を有する)断面の繊維状ガラスフィラー、円形断面を有するガラス繊維またはガラスフレークが例示される。存在する場合、1つ以上、本明細書に記載した樹脂組成物に含まれる1つ以上の補強剤は、ガラス補強剤およびフィラー、例えば、炭酸カルシウム、炭素繊維、タルク、マイカ、珪灰石、か焼クレイ、カオリン、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、アルミニウム炭酸ナトリウム、バリウムフェライト、チタン酸カリウムおよびこれらの混合物から選択される。部分量の天然繊維材料を、1つ以上の強化剤で置き換えるとき、樹脂組成物は、15重量%まで、または約15重量%まで、より好ましくは、5重量%まで、または約5重量%までの1つ以上の補強材を含み、重量パーセンテージは、樹脂組成物の総重量を基準としている。
【0037】
本明細書に記載された樹脂組成物は、天然繊維材料のポリアミドへの界面接着力を改善するために、1つ以上の相溶化剤および/またはサイズ剤をさらに含んでいてもよい。相溶化剤としては、変性オレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーが例示される。変性オレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーとは、ポリマーが、例えば、酸、無水物および/またはエポキシド官能基等の有機官能基でグラフト化および/または共重合されていることを意味する。存在するとき、1つ以上の相溶化剤および/またはサイズ剤は、0.1〜15重量%または約0.1〜約15重量%、好ましくは、0.2〜10重量%または約0.2〜約10重量%含まれ、重量パーセンテージは、樹脂組成物の総重量を基準としている。
【0038】
本明細書に記載された樹脂組成物は、1つ以上の酸化防止剤をさらに含んでいてもよい。酸化防止剤としては、限定されるものではないが、ホスフェートまたはホスホナイト安定剤、ヒンダードフェノール安定剤、ヒンダードアミン安定剤、芳香族アミン安定剤、チオエステルおよびフェノール系酸化防止剤が例示される。存在するとき、1つ以上の酸化防止剤は、0.1〜3重量%または約0.1〜約3重量%、好ましくは、0.1〜1重量%または約0.1〜約1重量%、より好ましくは、0.1〜0.7重量%または約0.1〜約0.7重量%含まれる。重量パーセンテージは、樹脂組成物の総重量を基準としている。
【0039】
本明細書に記載した樹脂組成物は、1つ以上の衝撃改良剤をさらに含んでいてもよい。好ましい衝撃改良剤としては、イオノマー、カルボキシル官能化ポリオレフィンおよび/またはこれらの混合物をはじめとするポリアミド組成物に典型的に用いられるものが挙げられる。存在するとき、1つ以上の衝撃改良剤は、10重量%まで、または約10重量%まで、より好ましくは、0.5〜5重量%または約0.5〜約5重量%含まれ、重量パーセンテージは、樹脂組成物の総重量を基準としている。
【0040】
本明細書に記載した樹脂組成物は、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、カーボンブラック、置換レゾルシノール、サリチル酸塩、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノン等の紫外線安定剤をさらに含んでいてもよい。
【0041】
本明細書に記載した樹脂組成物は、改良剤およびその他の成分、例えば、流動促進添加剤、潤滑剤、帯電防止剤、着色剤、難燃剤、核形成剤、結晶化促進剤およびポリマー化合業界において公知のその他の処理助剤をさらに含んでいてもよい。
【0042】
上述したフィラー、改良剤およびその他成分は、粒子の寸法の少なくとも1つが1〜1000nmの範囲にあるいわゆるナノ材料の形態をはじめとする、当該技術分野において周知の量および形態で、樹脂組成物中に存在していてもよい。
【0043】
本明細書に記載した樹脂組成物は、溶融混合ブレンドであり、ポリマー成分の全ては、互いに良好に分散しており、非ポリマー成分の全ては、ポリマーマトリックスに良好に分散し、結合していて、ブレンドによって一体化されたものが形成される。任意の溶融混合方法を用いて、本発明のポリマー成分と非ポリマー成分を組み合わせてもよい。例えば、ポリマー成分および非ポリマー成分を、溶融ミキサー、例えば、単軸または二軸押出し機、ブレンダー、単軸または二軸ニーダー、あるいはバンブリーミキサーに、全て一度に単一工程で添加するか、または段階的に添加してから溶融混合してもよい。ポリマー成分および非ポリマー成分を段階的に添加するときは、ポリマー成分および/または非ポリマー成分の一部をまず添加し、溶融混合し、残りのポリマー成分および非ポリマー成分を続いて添加し、よく混合された組成物が得られるまで、さらに溶融混合する。上述した少なくとも1つのポリアミドと天然繊維材料を含む樹脂組成物の処理を改善するためには、天然繊維材料の水分含有量は、5重量%未満または約5重量%未満、より好ましくは、2重量%未満または約2重量%未満であるのが好ましい。水分含有量は、質量パーセンテージで表わされ、ISO15512/B(カール・フィッシャー法)により測定される。天然繊維材料の水分含有量が、5重量%を超える、好ましくは、2重量%を超える場合、天然繊維材料は、例えば、天然繊維材料を、オーブンで、数時間、窒素下で加熱する等、従来の手段により所望の値まで乾燥してもよい。
【0044】
他の態様において、本発明は、電子デバイス筺体を射出成形により製造する方法に関する。以下の例は、本発明をさらに詳細に説明するためのものである。これらの例は、本発明を実施するのに現在考えられる好ましいモードを規定しており、例示のためであり、本発明を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0045】
本発明および比較例による樹脂組成物を調製するのに、以下の材料を用いた。
【0046】
ポリアミド:ASTM−D6866方法Bに従って測定されたとき、99%のpMCを有するセバシン酸およびデカメチレンジアミン(PA10,10)で形成されたポリアミド。ASTM−D6866バイオ系判定方法は、Beta Analytics Inc.(Miami Fl,USA)により行われ、%バイオ系炭素を決定した。
【0047】
天然繊維材料1:電子顕微鏡法により測定される約50ミクロンの平均直径および約3mmの最低長さを有するケナフ繊維。これらの繊維は、Holstein−Flachs GmbH,(Germany)より、ケナフタイプKEという名称で供給される。
【0048】
天然繊維材料2:電子顕微鏡法により測定される約25ミクロンの平均直径および3mmを超える長さを有する亜麻。これらの繊維は、Holstein−Flachs GmbH,(Germany)より、亜麻タイプKAEという名称で供給される。
【0049】
化合
天然繊維材料とポリアミドを化合する前に、天然繊維材料を、20時間、80℃で、オーブン中、窒素下で乾燥して、水分含有量を2重量%未満とした。重量パーセンテージ(水分含有量)は、天然繊維材料の総重量を基準とし、ISO15512/Bによるカール・フィッシャー法により測定される。20時間、80℃で、窒素下、天然繊維材料1の水分含有量は、1.71重量%であり、天然繊維材料2の水分含有量は、1.99重量%であった。
【0050】
実施例の組成物は、表1に示した成分を、40mmの二軸押出し機(Berstorff ZE40)で、スクリュー速度約200rpmおよび手動で測定した溶融温度約245℃を用いて、溶融ブレンドすることにより調製した。表1に示す成分量は、樹脂組成物の総重量を基準として、重量%で示してある。
【0051】
化合した混合物を、レースまたはストランドの形態で押出し、水浴中で冷却し、乾燥し、顆粒へと細断し、水分の取り込みを防ぐため、密閉したアルミニウムで裏打ちした袋に入れた。冷却および切断条件を調節して、材料の水分レベルを確実に0.2%未満に保った。
【0052】
機械的特性
引張係数は、ISO527−2/1B/1に従って測定した。測定は、射出成形ISOバー試料(融点:約226℃、型温:約90℃および保持圧力90MPa)で、厚さ4mmおよび幅10mmの試験試料で、ISO527に従って行なわれた。試験試料は、成形時23℃乾燥で測定した(DAM)。
【0053】
本発明による樹脂組成物(E1−E2)で形成された6つの試験試料および比較組成物(C1)で形成された試験試料の機械的特性を測定した。結果はそれらの平均である。結果を表1の「引張係数」および「破断時応力」という見出しで示してある。
【0054】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つのポリアミドと、
b)天然繊維材料と
を含む樹脂組成物で形成された電子デバイス筺体。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポリアミドが、標準ISO3146Cで測定されたとき、230℃以下の融点を有する、請求項1に記載の電子デバイス筺体。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポリアミドが、ポリアミド11、PA6,10、PA6,14、PA10,10、PA10,12、PA1014、PA12,10、PA12,12、PA610/6T、PA612/6T、PA1010/10T、これらのコポリマーおよび混合物から選択される、請求項1または2に記載の電子デバイス筺体。
【請求項4】
前記少なくとも1つのポリアミドが、ポリアミド10,10である、請求項3に記載の電子デバイス筺体。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポリアミドが、ASTM−D6866方法Bで測定されたとき、少なくとも50パーセント現代炭素の炭素含有量を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子デバイス筺体。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポリアミドが、ASTM−D6866方法Bで測定されたとき、少なくとも90パーセント現代炭素の炭素含有量を有する、請求項5に記載の電子デバイス筺体。
【請求項7】
前記天然繊維材料が、ケナフ、亜麻、木、綿、ウール、竹、麻、ラミー、サイザル、リネン、ジュート、絹、グラス、もみ殻、バガスおよびこれらの混合物からなる群の少なくとも1つを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子デバイス筺体。
【請求項8】
前記天然繊維材料が、ケナフ、亜麻、木、綿、ウールおよび/またはこれらの混合物からなる群の少なくとも1つを含む、請求項7に記載の電子デバイス筺体。
【請求項9】
前記天然繊維材料が、5〜60ミクロンまたは約5〜約60ミクロンの平均直径を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子デバイス筺体。
【請求項10】
前記天然繊維材料が、1〜70ミクロンまたは約1〜約70ミクロンの平均直径を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子デバイス筺体。
【請求項11】
前記少なくとも1つのポリアミドが、40〜95重量%または約40〜約95重量%で存在し、前記重量パーセンテージが前記樹脂組成物の総重量を基準としている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子デバイス筺体。
【請求項12】
前記天然繊維材料が、5〜60重量%または約5〜約60重量%で存在し、前記重量パーセンテージが前記樹脂組成物の総重量を基準としている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の電子デバイス筺体。
【請求項13】
前記天然繊維材料が、5〜40重量%または約5〜約40重量%で存在し、前記重量パーセンテージが前記樹脂組成物の総重量を基準としている、請求項12に記載の電子デバイス筺体。
【請求項14】
前記天然繊維材料が、5〜30重量%または約5〜約30重量%で存在し、前記重量パーセンテージが前記樹脂組成物の総重量を基準としている、請求項12または13に記載の電子デバイス筺体。
【請求項15】
前記樹脂組成物が、ガラス強化剤およびフィラーから選択される1つ以上の強化剤をさらに含み、前記フィラーが、炭酸カルシウム、炭素繊維、タルク、マイカ、珪灰石、か焼クレイ、カオリン、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、アルミニウム炭酸ナトリウム、バリウムフェライト、チタン酸カリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の電子デバイス筺体。
【請求項16】
前記樹脂組成物が、1つ以上の相溶化剤および/またはサイズ剤をさらに含み、前記重量パーセンテージが前記樹脂組成物の総重量を基準としている、請求項1〜15のいずれか一項に記載の電子デバイス筺体。
【請求項17】
前記樹脂組成物が、1つ以上の酸化防止剤をさらに含み、前記重量パーセンテージが前記樹脂組成物の総重量を基準としている、請求項1〜16のいずれか一項に記載の電子デバイス筺体。
【請求項18】
前記樹脂組成物が、1つ以上の衝撃改良剤をさらに含み、前記重量パーセンテージが前記樹脂組成物の総重量を基準としている、請求項1〜17のいずれか一項に記載の電子デバイス筺体。
【請求項19】
前記電子デバイスが、ハンドヘルド電子デバイスである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の電子デバイス筺体。
【請求項20】
携帯電話筺体の形態にある、請求項19に記載の電子デバイス筺体。

【公表番号】特表2012−522115(P2012−522115A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503546(P2012−503546)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/029006
【国際公開番号】WO2010/117706
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】