説明

環式ケトンの製造方法

本発明は、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンを含む混合物G1と、少なくとも一酸化二窒素を含む混合物G2とを反応させることによって、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを製造する方法であって、当該反応が断熱的に実施される方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンを含む混合物G1と、少なくとも一酸化二窒素(N2O)を含む混合物G2とを反応させることによって、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを製造する方法であって、当該反応が断熱的に実施される方法に関する。
【0002】
シクロペンタノンの製造方法は、先行技術により、原則として公知である。同様に、シクロペンテンを一酸化二窒素と反応させることによってシクロペンタノンを得ることができるということも公知である。シクロペンテンを一酸化二窒素で酸化することによるシクロペンタノンの製造は、強い発熱性の、非常に選択的な反応である。
【0003】
例えば、英国特許第649,680号では、アルケン、例えばシクロヘキセンなど、と、一酸化二窒素とから、対応する環式ケトン、例えばシクロヘキサノンなど、を得る反応について開示されている。当該反応は、200〜300℃の温度で、かつ100〜500barの圧力において、液相中で実施される。しかし、引用された文献では、環式オレフィンを、断熱条件下において一酸化二窒素と反応させることについては開示されていない。
【0004】
F.S.Bridson−Jonesらは、J.Chem.Soc.,p.2999−3008(1951)において、例えば、シクロヘキセンをシクロヘキサノンに転化させるなどの、オレフィンと一酸化二窒素との反応について説明している。この文献による方法は、例えば、300℃の温度で、かつ500barの圧力において、オートクレーブ内で実施されている。しかし、F.S.Bridson−Jonesらは、環式オレフィンが、断熱条件下において、一酸化二窒素と反応し得ることについては開示していない。
【0005】
アルケンと一酸化二窒素とからカルボニル化合物を得る合成についても、様々な国際特許出願に記載されている。例えば、国際公開第03/078370号では、脂肪族アルケンと一酸化二窒素とからカルボニル化合物を製造する方法について開示されている。当該反応は、20〜350℃の範囲の温度で、かつ0.01〜100barの圧力において実施される。国際公開第03/078374号では、シクロヘキサノンについての、対応する製造方法が開示されている。国際公開第03/078372号によれば、4〜5個の炭素原子を有する環式ケトンが製造される。国際公開第03/078375号によれば、これらの処理条件下において、7〜20個の炭素原子を有する環式アルケンから環式ケトンが製造される。国際公開第03/078371号では、置換アルケンから置換ケトンを製造する方法が開示されている。国際公開第04/000777号では、ジアルケンおよびポリアルケンと一酸化二窒素とを反応させて、対応するカルボニル化合物を得る方法について開示されている。対応する環式オレフィンから環式ケトンを製造する断熱的な方法については、引用した国際出願では開示されていない。
【0006】
米国特許第4,806,692号では、オレフィンから酸素含有有機化合物を製造する方法が開示されており、具体的には、穏和な条件下において環式オレフィンを酸化することによって、対応する環式ケトンを得る方法が開示されている。米国特許第4,806,692号によれば、そのような酸化は、パラジウム触媒の存在下、80℃の温度で、大気圧以下の圧力において作用する。しかし、米国特許第4,806,692号では、断熱条件下における一酸化二窒素との反応によって、対応する環式オレフィンから環式ケトンを製造する方法については開示されていない。
【0007】
米国特許第7,282,612(B2)号では、4個または5個の炭素原子を有する対応する環式アルケンと一酸化二窒素とを、適切であれば、不活性ガスとの混合物において、20〜300℃の温度で、0.01〜10barの一酸化二窒素圧力において反応させることによって、4個または5個の炭素原子を有する単環式ケトンを製造する方法について開示されている。しかし、米国特許第7,282,612(B2)号では、断熱的に実施される方法については開示されていない。
【0008】
ロシア特許第2002106986号では、同様に、0.01〜100barの一酸化二窒素の圧力において、20〜300℃の温度で、一酸化二窒素によってシクロブテンもしくはシクロペンテンを酸化することにより、4個または5個の炭素原子を有する単環式ケトンを製造する方法について開示されている。
【0009】
単環式オレフィンと一酸化二窒素とから、対応するケトンを得るための反応は、強い発熱性である。さらに、高い一酸化二窒素濃度を有するような一酸化二窒素と有機化合物との混合物は、爆発の危険性をもたらす。したがって、対応する先行技術における方法では、発熱反応から熱を除去するために、複雑でコストのかかる装置を用いることが必要である。その上、当該反応は、高圧高温に対して設計されなければならない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、4〜20個の炭素原子を有する単環式ケトンの製造方法を提供することであり、当該方法は、複雑でそれ故にコストのかかる装置を、用いる必要のない点において注目に値する。
【0011】
本発明のさらなる目的は、単環式ケトン、特にシクロペンタノンおよび/またはシクロヘキサノン、を高収率および最大純度において得ることができるような、対応する方法を提供することである。
【0012】
本発明によれば、これらの目的は、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンを含む混合物G1を、少なくとも一酸化二窒素を含む混合物G2と反応させることによって、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを製造する方法であって、当該反応が断熱的に実施される方法によって達成される。
【0013】
本明細書において、断熱反応は、反応の際に、反応器の内容物と環境との間において実質的に熱交換が行われない反応を意味するものとして理解される。好ましくは、本明細書において、断熱反応は、発生する熱のうちの環境に放出される熱が、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満である反応を意味するものとして理解される。
【0014】
今日までに公知である、対応するオレフィンと一酸化二窒素とから環式ケトンを製造するための方法では、オレフィンと一酸化二窒素との強い発熱反応の結果として大量の熱が発生するために、当該大量の熱を反応混合物から、すなわち、当該反応が実施される反応器から除去しなければならないという欠点を有する。このことは、高い材料コストの原因となり、したがって、反応器の資本コストの原因となる。対応するオレフィンと一酸化二窒素とから、単環式ケトンを製造するための反応器における、構成に関してシンプルな設計は、これまでのところ可能ではない。
【0015】
説明した問題は、強い発熱性の反応を断熱的に実施すること、すなわち、反応の際に発生する熱が、実質的に系内に残留し、外部へ除去されないようにすることによって解決できることが見出された。反応の際に発生した反応熱を系内に残留させることにより、構成手段によって反応器に冷却および熱消失要素を実装する必要がないので、反応器の構成および当該方法手順が著しく簡素化される。
【0016】
好ましい実施形態において、本発明による方法は、環境から熱的に絶縁された反応器において、混合物G1とG2とを反応させることによって実施され、発熱反応において発生した熱エネルギーは、実質的に反応器内に残留し、外部へ除去されない。
【0017】
本発明によれば、発生した反応熱は、好ましくは、個々の反応剤が転化されることによって確立され得る。それに対し、個々の反応剤の転化は、滞留時間、反応混合物の入口温度(T)、反応圧力、および反応混合物における個々の反応剤の濃度によって影響され得る。その結果、本発明に従って、例えば、好適な反応器に関連して言及されたパラメータを選択することよって、当該方法を、断熱的に、すなわち、実質的に、反応器内の反応混合物に熱エネルギーを供給したり、および/または反応混合物から熱エネルギーを除去したりすることなく、実施することが可能である。
【0018】
断熱的な方法手順において、生成物の温度(T)と反応剤の温度(T)との間の差は、断熱温度増加(T断熱)として定義される。本発明による方法の好ましい実施形態において、T断熱は、10〜140℃の間、より好ましくは20〜125℃の間、最も好ましくは25〜100℃の間である。
【0019】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンを含む混合物G1と、少なくとも一酸化二窒素を含む混合物G2とを反応させることによって、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを製造するための、上記の方法であって、反応器における断熱温度増加が、10〜140℃の間、より好ましくは20〜125℃の間、最も好ましくは25〜100℃の間である方法にも関する。
【0020】
好ましい実施形態において、本発明による方法は、反応によって生じる反応熱が、生成混合物がそれらの分解のために開始温度よりかなり低い温度(T)で反応器から放出されるために必要な熱であるのように、上記において言及されたパラメータが確立されるような方式において実施することができる。本明細書において、開始温度は、少なくとも0.1K/分の昇温速度による、生成混合物の示差走査型熱量計試験(DSC試験)において、著しい発熱反応が記録され始める温度として定義される。
【0021】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンを含む混合物G1を、少なくとも一酸化二窒素を含む混合物G2と反応させることによって、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを製造するための、上記の方法であって、当該反応器の出口温度が、生成混合物の分解のために開始温度より低い方法にも関する。
【0022】
特に好ましい実施形態において、本発明による方法は、反応によって生じる反応熱が、断熱誘発時間が正確に24時間であるような温度より少なくとも10K低い温度(T)において反応混合物が反応器から放出されるために必要な熱であるのように、上記において言及されたパラメータが確立されるような方式において実施することができる。温度関数としての当該断熱誘発時間は、異なる加熱速度によるDSC実験のデータから、それ自体公知の方法において得ることができる。
【0023】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンを含む混合物G1を、少なくとも一酸化二窒素を含む混合物G2と反応させることによって、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを製造するための、上記の方法であって、当該反応器の出口温度が、生成混合物の断熱誘発時間が24時間であるような温度より少なくとも10K低い方法にも関する。
【0024】
本発明に従って、両方の反応剤、すなわち、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンおよび一酸化二窒素は、同じ入口温度を有することも、または異なる入口温度を有することも可能である。本発明と関連しているのは、反応混合物の反応器の入口温度、すなわち、すべての反応剤流が一緒に混合される時に確立される温度である。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、反応混合物の反応器での入口温度(T)は、170〜270℃、より好ましくは200〜260℃、例えば、220〜250℃である。
【0026】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンを含む混合物G1を、少なくとも一酸化二窒素を含む混合物G2と反応させることによって、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを製造する方法であって、当該反応が断熱的に実施され、並びに反応混合物の反応器での入口温度(T)が170〜270℃である方法にも関する。
【0027】
反応剤が反応器の入口において有する温度は、好ましくは、本発明による方法により、所望される転化を工業的に実施可能な反応器の規模においても達成することができる最低温度にも対応している。したがって、本発明による方法により、所望される転化を工業的に実施可能な反応器の規模においても達成することができる当該最低温度は、概して、少なくとも170℃、好ましくは少なくとも200℃である。
【0028】
本発明による方法を実施することができる反応器での、生成混合物の最大出口温度(T)は、概して、最高でも340℃まで、好ましくは最高でも320℃まで、より好ましくは最高でも300℃までである。本発明によれば、反応器の最大出口温度(T)は、好ましくは、形成された生成物または未転化の反応剤の熱的分解が生じないように選択される。
【0029】
したがって、本発明による方法は、概して、170〜340℃、好ましくは200〜320℃の温度において実施され、前者の温度は、反応混合物の反応器での入口温度(T)であり、後者の温度は、生成混合物の反応器での出口温度(T)である。
【0030】
好ましい実施形態において、本発明による方法は、60〜500bar、より好ましくは80〜325bar、より好ましくは90〜180bar、例えば、100〜150bar、の反応圧力において実施される。
【0031】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンを含む混合物G1を、少なくとも一酸化二窒素を含む混合物G2と反応させることによって、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを製造するための方法であって、当該反応が断熱的に実施され、並びに反応圧力が60〜500barである方法にも関する。
【0032】
さらなる実施形態において、本発明による方法は、基質間のモル比、すなわち、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンと一酸化二窒素との間のモル比が、反応によって発生した反応熱が、ちょうど、反応混合物の反応器での適切な入口温度(T)と好ましくは一酸化二窒素の欠如において示される反応剤の完全な転化とにおいて前述の最高温度である340℃、好ましくは320℃、より好ましくは300℃である生成混合物の反応器での出口温度(T)を生じるような熱であるような、好適な値を有するような方法において実施することができる。
【0033】
好ましい実施形態において、一酸化二窒素と少なくとも1種の単環式オレフィンとの間のモル比は、0.02〜0.3の間、より好ましくは0.05〜0.25の間、最も好ましくは0.08〜0.2の間である。本発明によれば、「反応剤のモル比」は、反応剤の量の商を意味する。反応剤の量のそれぞれが「モル」単位を有するので、これらの量の商は単位を持たない。
【0034】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンを含む混合物G1を、少なくとも一酸化二窒素を含む混合物G2と反応させることによって、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを製造するための方法であって、当該反応が断熱的に実施され、並びに一酸化二窒素と少なくとも1種の単環式オレフィンとの間のモル比が、0.02〜0.3の間、好ましくは0.05〜0.25の間である方法にも関する。
【0035】
さらなる好ましい実施形態において、本発明による方法の、一酸化二窒素に基づく転化率は、80〜100%、より好ましくは90〜99%、最も好ましくは90〜96%である。
【0036】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、上記の4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを製造するための方法であって、一酸化二窒素に基づく転化率が80〜100%である方法にも関する。
【0037】
非常に特に好ましい実施形態において、本発明は、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンを含む混合物G1を、少なくとも一酸化二窒素を含む混合物G2と反応させることによって、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを製造する方法であって、当該反応が断熱的に実施され、当該方法が170〜340℃の温度で実施され、反応圧力が60〜500barであり、一酸化二窒素と少なくとも1種の単環式オレフィンとの間のモル比が、0.05〜0.25の間であり、並びに一酸化二窒素に基づく転化率が80〜100%である方法にも関する。
【0038】
本発明による方法は、当業者に既知のすべての反応器において実施することができ、並びに、例えば管状反応器などにおける断熱反応手順に対して好適である。断熱反応手順を確実に実施するために、例えば、反応熱が環境に放出されて実際の反応に利用できないようなことが実質的に無いように、当該反応器が環境から十分に絶縁されていることが必要である。特に好ましい実施形態では、反応によって発生した熱は、生成物流によって反応器から放出される。
【0039】
本発明に従って、複数の反応器を使用することも可能であり、それらは、並列または直列に接続されていてもよい。
【0040】
好ましい実施形態において、本発明による方法は、連続的に実施することができる。しかしながら、本明細書において、本発明による方法は、半連続的に又は断続的に、すなわちバッチ式において実施することも可能である。
【0041】
本発明に従って有用な反応器の反応器チャンバーは、中が空であってもよく、または、適切であれば、好適な内部構造物によってセグメント化されていてもよい。一般的に、反応器は、断熱反応に対して好適な流れプロフィールを有する。本発明による方法のために使用される反応器では、好ましくは、実質的に逆混合を生じない。当該反応器は、好ましくは、少なくとも8個の撹拌タンクによる撹拌タングカスケードに対応する滞留時間分布を有する。当該反応器は、より好ましくは、少なくとも12個の撹拌タンクによる撹拌タンクカスケードに対応する滞留時間分布を有する。本発明による方法において好ましい、反応混合物に対する流れプロフィールは、使用される反応器に応じて変わり、したがって、適切であれば、当業者に公知の好適な内部構造物、例えば、穿孔されたプレートなど、によって、または好適な充填床によって反応器を満たすことによって、適合させることができる。
【0042】
本発明による方法では、直径に対する長さの比が1より大きい管状反応器を使用することが好ましい。より好ましくは、反応器は、逆混合を減らすために、少なくとも穿孔されたプレートを備える。
【0043】
本発明に従って、当該反応器は、横向きに位置してまたは縦向きに位置して、好ましくは縦向きに位置して操作することが可能である。縦向きに位置した反応器の中を通る反応混合物の流れは、底部から上方、または頂部から下方であり得る。本発明による方法は、反応混合物が底部から上方に流れるような縦向きに位置した反応器において実施することが好ましい。
【0044】
連続的な方法手順に対して特に好適な反応器は、例えば、好ましくは十分に絶縁されている管状反応器である。適切な管状反応器は、当業者において既知である。
【0045】
本発明に従って、反応剤流、好ましくは混合物G1および混合物G2は、別々に反応器に供給することが可能である。本発明に従って、反応剤流を、既に予備混合された状態において反応器に供給することも可能であり、かつ好ましい。
【0046】
特に好ましい実施形態において、反応剤流、好ましくは混合物G1および混合物G2は、本発明による方法において、例えば、反応器の入口の上流で、好適な混合装置、例えばスタティックミキサーなど、を用いて混合される。
【0047】
混合物G1およびG2の温度は、当該混合反応剤流が所望の温度Tを有するように選択される。特に好ましくは、混合物G1のみを予備加熱し、それを、反応器の上流で、好適な混合装置において、予備加熱されていない混合物G2と混合することであり、混合物G1が加熱される温度は、混合された反応剤流の温度が所望の温度Tに一致するように選択される。
【0048】
当該反応剤流、好ましくは混合物G1および/またはG2、より好ましくは混合物G1のみは、当該反応によって4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを得る前に、当業者に既知のすべての方法、例えば外部熱源、例えば蒸気により、本発明に従って予備加熱装置として機能する当業者に既知の熱交換器において、好ましくは170〜270℃、より好ましくは200〜260℃、例えば、220〜250℃の温度まで予備加熱することができる。本発明によれば、当該反応剤流は、好適な熱交換器において、反応器の外部で予備加熱される。
【0049】
したがって、本発明はまた上記の方法であって、当該混合物G1および/またはG2が、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを得るための反応の前に、170〜270℃の温度に予備加熱される方法に関する。
【0050】
本発明による方法の特に好ましい実施形態において、混合物G1の少なくとも一部は、混合物G2と接触させられる前に、好ましくは反応器のすぐ上流または反応器内において、適切な温度に予備加熱される。したがって、例えば、かなりの程度にまで、実際の反応器の外側において本発明による反応が生じることを防ぐことが可能である。
【0051】
本発明による方法の特に好ましい実施形態において、反応剤流を予備加熱するために必要な熱エネルギーは、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、反応器の出力から、すなわち、本発明による方法の温生成物流から回収される。本発明による方法の好ましい実施形態において、この目的のために、生成物流の少なくとも一部を、混合物G1の少なくとも一部、例えば70〜95%と、熱交換器、例えば向流式熱交換器、において接触させる。
【0052】
本発明によれば、反応器へ供給される流れの温度は、そのような熱交換器において予備加熱される混合物G1の割合を介して、調整することができる。
【0053】
したがって、本発明はまた上記の方法であって、混合物G1および/またはG2を予備加熱するために必要な熱エネルギーが、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、本発明による方法の生成物流から回収される方法に関する。
【0054】
本発明による方法の好ましい実施形態において、生成物流の少なくとも一部は、さらなる後処理の前に、混合物G1の少なくとも一部、例えば70〜95%、と接触される。
【0055】
本発明によれば、当該方法から得られる生成物流は、概して、最高でも340℃まで、好ましくは最高でも320℃まで、より好ましくは最高でも300℃までの反応器出口温度(T)を有する。反応剤流、好ましくは混合物G1、と接触されられた後、生成物流は、概して、150〜220℃、好ましくは170〜200℃、例えば180〜190℃の温度を有する。本発明によれば、反応剤流、好ましくは混合物G1は、概して、180〜280℃、好ましくは240〜275℃、例えば250〜260℃に加熱される。本発明による方法の特に好ましい実施形態において、概して、180〜280℃、好ましくは240〜275℃、例えば250〜260℃の温度に予備加熱されている混合物G1は、組み合わせられた反応剤流、好ましくは混合物G1およびG2を含む反応剤流の、結果として得られる温度が、好ましくは170〜270℃、より好ましくは200〜260℃、例えば、220〜250℃であるのように、混合物G2と混合される。
【0056】
原則として、本発明に従って、4〜20個の炭素原子、好ましくは4〜8個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンを含む任意の混合物G1を使用することが可能である。
【0057】
本発明によれば、4〜20個の炭素原子を有しかつ混合物G1中に存在する少なくとも1種の単環式オレフィンは、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有し得る。好ましい実施形態において、4〜20個の炭素原子を有しかつ混合物G1中に存在する少なくとも1種の単環式オレフィンは、1つの炭素−炭素二重結合を有する。本発明に従って、4〜20個の炭素原子を有しかつ1つの炭素−炭素二重結合を有する少なくとも1種の単環式オレフィンと同様に、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有しかつ4〜20個の炭素原子を有する1つ以上の単環式オレフィンを含む混合物G1を使用することも可能である。
【0058】
本発明による方法において使用される混合物G1は、より好ましくは、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロテトラデセン、シクロペンタデセン、シクロヘキサデセン、シクロエイコセン、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の単環式オレフィンを含む。最も好ましくは、本発明による方法において使用される混合物G1は、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、およびそれらの混合物からなる群から選択される単環式オレフィンを含む。シクロペンテン(I)、シクロヘキセン(II)、シクロヘプテン(III)、およびシクロオクテン(IV)を以下に表す。
【0059】
【化1】

【0060】
原則として、混合物G1は、シクロペンテンに加えて、任意の他の化合物を含んでいてもよい。好適な化合物として、同様に一酸化二窒素(N2O)と反応し得るものも挙げられる。好ましくは、本明細書では原則として、N2Oと反応することができるが、本発明に従って選択される反応条件下においてN2Oに対して不活性であるような化合物である。本明細書で使用される「不活性」という用語は、本発明に従って選択される反応条件下において、N2Oと反応しないか、あるいは4〜20個の炭素原子を有する単環式オレフィンの反応と比較して、N2Oとの反応による反応生成物が、結果として得られる混合物中に、それぞれ、結果として得られる混合物の総重量に対して、最高でも5質量%の程度まで、好ましくは最高でも3質量%の程度まで、より好ましくは最高でも2質量%の程度までしか存在しないような、限られた程度までしかN2Oと反応しない化合物を意味する。
【0061】
本発明による方法において、好ましい実施形態では、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種のオレフィンと同様に少なくとも1種のさらなる炭化水素を含む混合物G1を使用することが可能である。
【0062】
本明細書で使用される「炭化水素」という用語は、それぞれが非置換炭化水素である化合物、したがって、C原子およびH原子のみから成る化合物、例えば、オレフィンまたは飽和炭化水素などを意味する。
【0063】
好ましい実施形態において、使用される混合物G1は、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種のオレフィンと同様に、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種のさらなる炭化水素、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、2−ブテン、イソペンタン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、トランス−2−ペンテン、n−ペンタン、シス−2−ペンテン、2−メチル−2−ブテン、2,2−ジメチルブタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘキサン、およびベンゼンからなる群から選択される炭化水素を含む。特に好ましい実施形態において、本発明による方法において使用される混合物G1は、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、およびそれらの混合物からなる群から選択されるオレフィンを同様に、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の飽和炭化水素を含む。
【0064】
4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィン、特に、シクロペンテンは、概して、それぞれ、混合物G1に対して、20〜98質量%、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは40〜60質量%の量において、混合物G1中に存在する。
【0065】
好ましい実施形態において、少なくとも1種のさらなる炭化水素、例えばシクロペンタンが、それぞれ、混合物G1に対して、2〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%の量において、混合物G1中に存在する。
【0066】
非常に特に好ましい実施形態において、混合物G1は、それぞれ、混合物G1に対して、20〜98質量%、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは40〜60質量%の、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィン、特に、シクロペンテンと、それぞれ、混合物G1に対して、2〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%の、少なくとも1種のさらなる炭化水素、特にシクロペンタンとを含む。
【0067】
したがって、本発明は、上記の方法であって、それぞれ、混合物G1に対して、20〜98質量%、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは40〜60質量%の、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの単環式オレフィンと、それぞれ、混合物G1に対して、2〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%の少なくとも1種のさらなる炭化水素とを含む混合物G1が使用される方法にも関する。
【0068】
混合物G1中の他の成分の含有量は、例えば、15質量%未満、好ましくは12質量%未満、優先的には10質量%未満、特に8質量%未満、より好ましくは5質量%未満である。
【0069】
本発明による方法のさらなる特に好ましい実施形態において、混合物G1は、混合物G1の総質量に対して少なくとも98質量%程度までの炭化水素から成る。当該炭化水素に加えて、混合物G1は、最高でも5質量%まで、好ましくは最高でも2質量%までの少なくとも1種のさらなる化合物、例えば、アルデヒド、ケトン、エポキシド、およびそれらの混合物、例えば、シクロペンタノン、3−メチル−2−ブタノン、エポキシシクロペンタン、4−ペンテナール、アセトン、またはそれらの混合物からなる群から選択される化合物も含み得る。これらの化合物は、反応混合物中に存在し得るが、ただし、これらは、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンと混合物G2との反応を妨害しない。
【0070】
好ましい実施形態において、本発明に従って選択される反応条件下の混合物G1は、ガス状、液状、または臨界超過であり、好ましくは臨界超過である。
【0071】
本発明による方法の同様に好ましい実施形態において、少なくとも90質量%程度まで、好ましくは少なくとも95質量%程度まで、特に少なくとも98重量%程度までのC5炭化水素および6個以上の炭素原子を有する炭化水素から成る混合物G1が使用される。したがって、シクロペンテンに加えて、少なくとも1種のさらなるC5炭化水素、例えば、n−ペンタンおよび/またはシクロペンタンなど、または6個以上の炭素原子を有する少なくとも1種の炭化水素、例えば、シクロヘキサンなど、あるいは少なくとも1種のさらなるC5炭化水素と6個以上の炭素原子を有する少なくとも1種の炭化水素との混合物が、G1中に存在し得る。
【0072】
したがって、本発明は、上記の方法であって、混合物G1が少なくとも98質量%のC5炭化水素および6個以上の炭素原子を有する炭化水素を含む方法を説明するものである。
【0073】
6個以上の炭素原子を有する特に好ましい炭化水素としては、さらなる炭化水素との関連において上記において既に言及した、対応する炭化水素が挙げられる。
【0074】
本発明によれば、使用される混合物G1は、好ましくは、工業規模での処理において得られるような混合物である。本明細書において、好ましくは、少なくとも95質量%程度まで、より好ましくは少なくとも96質量%程度まで、特に好ましくは少なくとも97質量%程度までのC5およびC6炭化水素、あるいはC5およびC7炭化水素、あるいはC5およびC6およびC7炭化水素から成る混合物である。
【0075】
したがって、本発明は、上記の方法であって、混合物G1が、少なくとも95質量%程度までのC5およびC6炭化水素、あるいはC5およびC7炭化水素、あるいはC5およびC6およびC7炭化水素から成る方法にも関する。
【0076】
本明細書において、混合物G1は、シクロペンテンと同様に、少なくとも1種のさらなるC5炭化水素、あるいは少なくとも1種のC6炭化水素、あるいは少なくとも1種のC7炭化水素、あるいは少なくとも1種のさらなるC5炭化水素および少なくとも1種のC6炭化水素の混合物、あるいは少なくとも1種のさらなるC5炭化水素および少なくとも1種のC7炭化水素の混合物、あるいは少なくとも1種のさらなるC5炭化水素および少なくとも1種のC6炭化水素および少なくとも1種のC7炭化水素の混合物、を含み得る。
【0077】
本発明によれば、使用される混合物G1は、任意の所望の供給源に由来していてもよい。好ましくは、本明細書において、混合物G1は少なくとも部分的に、本方法の未転化の再循環された反応剤に由来する。
【0078】
本発明によれば、混合物G1は、少なくとも部分的に他の供給源に由来する。本発明による方法の好ましい実施形態において、使用される混合物G1は、少なくとも部分的に炭化水素混合物であり、当該炭化水素混合物は、蒸気分解装置または精製装置から得られ、シクロペンテンを含む。これに関連して、好ましくは、例えば、実質的にC5およびC6炭化水素のみを含む、蒸気分解プラントからのC5留分である。7個以上の炭素原子を有する炭化水素は、通常、工業規模において得られるC5留分中には存在しない。工業規模において得られるこれらC5留分は、シクロペンテンと同様に、例えば、2−ブテン、イソペンタン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、トランス−2−ペンテン、n−ペンタン、シス−2−ペンテン、2−メチル−2−ブテン、シクロペンタン、2,2−ジメチルブタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘキサン、およびベンゼンを含む。一般的に、蒸気分解プラントに由来するC5留分は、5〜60質量%の範囲の、好ましくは15〜50質量%の範囲のシクロペンテンを含む。そのような混合物は、有利には、それらが本発明による方法において混合物G1として使用される前に、さらに精製される。
【0079】
したがって、本発明はまた上記の方法であって、混合物G1が、少なくとも95質量%程度までのC5およびC6炭化水素の混合物を含む方法について記載する。
【0080】
本発明によれば、実質的にC5およびC6炭化水素によるこの混合物は、好ましくは、蒸気分解プラントまたはシクロペンタジエンの部分的水素化に由来するC5留分として得られ、そのまま使用され得る。実質的にC5およびC6炭化水素の混合物は、好ましくは、本発明の反応の前にシクロペンテンより低い沸点の化合物が優先的に除去される精製に供される。この場合、考えられるすべての方法を使用することができるが、好ましくは、混合物の蒸留分離である。
【0081】
したがって、具体的に本発明は、上記の方法であって、シクロペンテン含有炭化水素混合物が、シクロペンタノンを製造するために反応剤として使用され、当該シクロペンテン含有炭化水素混合物が、蒸気分解プラントのC5留分またはシクロペンタジエンの部分的水素化に由来するものとして得られる方法にも関する。
【0082】
本発明による方法は、4〜20個の炭素原子を有する単環式オレフィンと一酸化二窒素との反応によって、4〜20個の炭素原子を有する、対応する単環式ケトンを提供する。炭素−炭素二重結合を含むオレフィンが使用される場合、本発明による方法は、モノケトンを提供する。2つ以上の炭素−炭素二重結合を含むオレフィンが使用される場合、本明細書において、炭素−炭素二重結合の1つだけを反応させることが可能である。しかしながら、2つ以上の炭素−炭素二重結合を反応させることも同様に可能である。この場合、本発明による方法は、1つのケトン官能基または2つ以上のケトン官能基を含む、対応するケトンを提供する。
【0083】
本発明に従って特に好ましくは、本発明による方法において使用される混合物G1が、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、およびそれらの混合物からなる群から選択される単環式オレフィンを含み、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、およびそれらの混合物からなる群から選択される単環式ケトンが得られる場合である。シクロペンタノン(V)、シクロヘキサノン(VI)、シクロヘプタノン(VII)、およびシクロオクタノン(VIII)を以下に示す。
【0084】
【化2】

【0085】
非常に特に好ましい実施形態において、本発明による方法は、シクロペンテンおよび一酸化二窒素から、シクロペンタノンを製造するために役立つ。
【0086】
本発明による方法において、少なくとも一酸化二窒素を含む混合物G2が、概して使用される。
【0087】
本発明によれば、当該混合物G2は、少なくとも70体積%の一酸化二窒素、例えば70〜100体積%の一酸化二窒素を含む。混合物G2は、好ましくは、少なくとも75体積%の一酸化二窒素、特に少なくとも80体積%、好ましくは少なくとも85体積%の一酸化二窒素を含む。混合物G2は、好ましくは75〜99%体積%の一酸化二窒素、より好ましくは80〜95体積%、特に好ましくは82〜90体積%、例えば、83体積%、84体積%、85体積%、86体積%、87体積%、88体積%、または89体積%の一酸化二窒素を含む。
【0088】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを製造するための、上記の方法であって、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの単環式オレフィンを含む混合物G1と、少なくとも一酸化二窒素を含む混合物G2とを反応させる工程を含み、当該反応が断熱的に実施され、混合物G2が少なくとも70体積%の一酸化二窒素を含む方法にも関する。
【0089】
さらなる実施形態において、本発明は、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを製造するための、上記の方法であって、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの単環式オレフィンを含む混合物G1と、少なくとも一酸化二窒素を含む混合物G2とを反応させる工程を含み、当該反応が断熱的に実施され、混合物G2が75〜99体積%の一酸化二窒素を含む方法にも関する。
【0090】
原則として、一酸化二窒素を含む混合物G2は、任意の所望の供給源に由来していてもよい。
【0091】
本発明によれば、この混合物G2は、好ましくは液化されており、したがって、液状において使用される。一酸化二窒素または一酸化二窒素を含むガス混合物は、当業者に既知のすべての方法、特に好適な圧力および温度を選択することによって液化することができる。
【0092】
本発明によれば、混合物G2は、一酸化二窒素と同様に、少なくとも1種のさらなるガスも含み得る。本明細書において、実質的にすべてのガスが考えられるが、ただし、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンと一酸化二窒素との本発明の反応が可能であることが確実である場合に限る。したがって、特に好ましくは、一酸化二窒素と同様に少なくとも1種の不活性ガスを含む混合物G2である。本明細書で使用される「不活性ガス」という用語は、一酸化二窒素と4〜20個の炭素原子を有する単環式オレフィンとの反応に関して、並びに当該反応条件下における一酸化二窒素に関して、不活性に振る舞うガスを意味する。不活性ガスとしては、例えば、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、アルゴン、メタン、エタン、およびプロパンが挙げられる。
【0093】
同等に、混合物G2は、一酸化二窒素と4〜20個の炭素原子を有する単環式オレフィンとの反応において不活性ガスとして振る舞わないガスも含んでいてもよい。そのようなガスとしては、NOx、または、例えば酸素など、が挙げられる。本明細書で使用される「NOx」という用語は、一酸化二窒素(N2O)以外のすべての化合物Nabを意味し、この場合、aは1または2であり、bは1〜6の数である。「NOx」という用語の代わりに、「窒素酸化物」という用語も、本明細書で使用される。このような場合、好ましくは、これらのガスの含有量が混合物G2の総質量に対して最高でも0.5体積%である混合物G2を使用することである。
【0094】
したがって、本発明は、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトン製造するための、上記の方法であって、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの単環式オレフィンを含む混合物G1と、少なくとも一酸化二窒素を含む混合物G2とを反応させる工程を含み、混合物G2が、それぞれ、混合物G2の総質量に対して、最高でも0.5体積%の酸素、あるいは最高でも0.5体積%の窒素酸化物、あるいは最高でも0.5体積%の酸素および最高でも0.5体積%の窒素酸化物を含む、方法にも関する。この場合、例えば、0.5体積%なる値は、一酸化二窒素以外のすべての可能な窒素酸化物の総含有量が0.5体積%であることを意味する。
【0095】
原則として、本明細書において混合物の組成は、当業者に既知の任意の方式において特定することができる。混合物G2の組成は、好ましくは、本明細書において、ガスクロマトグラフィによって特定される。しかしながら、UV分光分析法、IR分光分析法、または湿式化学法によっても特定することができる。
【0096】
本発明によれば、混合物G2は、特に、液状または臨界超過形態において使用される。本発明に従って、混合物G2は、液化する前に、混合物G2中の不活性化合物および悪影響を及ぼす化合物の濃度を減少させるために処理することも可能である。
【0097】
具体的には、本明細書において、工業規模の処理から得られる混合物G2を使用することは可能である。したがって、これらの混合物G2は、0.5体積%を超える酸素および/または窒素酸化物を含んでいるはずであるが、それらも、概して、本発明による方法において使用することができる。好ましくは、これらの混合物G2並びに工業規模の処理から得られる同様の組成物の混合物G2は、本発明による方法において使用する前に、酸素および/または窒素酸化物の含有量を最高でも0.5体積%までに調整ための少なくとも1つの精製工程に供される。
【0098】
本明細書において好適なガス混合物G2は、好ましくは、50〜99.0体積%の一酸化二窒素、1〜20体積%のニ酸化炭素、および0〜25体積%のさらなるガスを含む。言及された体積%は、それぞれ、ガス混合物G2全体に基づいている。ガス混合物G2の個々の成分を合計すると、100体積%になる。
【0099】
ガス混合物G2は、好ましくは、60〜95体積%の一酸化二窒素、特に70〜90体積%、より好ましくは75〜89%体積%の一酸化二窒素を含む。
【0100】
ガス混合物G2は、さらに、1〜20体積%のニ酸化炭素を含んでいてもよい。ガス混合物G2は、好ましくは、5〜15体積%のニ酸化炭素、特に6〜14体積%のニ酸化炭素を含む。
【0101】
ガス混合物G2は、好ましくは、0〜25体積%のさらなるガスを含む。当該ガス混合物G2は、1種以上のさらなるガスを含んでいてもよく、その場合、言及される量は、存在するガスの合計に基づいている。
【0102】
そのようなガス混合物を製造するための好適な方法は、それ自体、当業者に既知である。
【0103】
本発明による方法において、得られた生成物流は、好ましくは、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトン、好ましくはシクロペンタノン、と、窒素とを含む反応混合物G3である。これらの所望の生成物に加えて、例えば、未転化反応剤および/または副生成物が、混合物G3中に存在する。
【0104】
本発明による方法によって得られる、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトン、好ましくはシクロペンタノン、または4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトン、好ましくはシクロペンタノン、を含み、かつ本発明による方法によって得られる反応混合物G3は、原則として、得られた形態においてさらに処理することができる。ただし、本発明によれば、結果として得られる混合物G3は、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトン、好ましくはシクロペンタノン、を得るために、すべての好適な方法によって後処理することができる。特に好ましくは、本発明に従い、蒸留後処理法である。本明細書において、好ましくは、分離段階(B)においてさらなる後処理を実施することである。
【0105】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、上記の方法であって、少なくとも以下の工程:
(A)反応混合物G3を得るために、断熱条件下において、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの単環式オレフィンを含む混合物G1と、少なくとも一酸化二窒素を含む混合物G2とを反応させる工程、および
(B)工程(A)において得られた反応混合物G3から、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを分離する工程
を含む方法に関する。
【0106】
既に、本発明に従って好ましい方法の段階(A)および好ましい実施形態は、上記で詳細に説明されている。
【0107】
4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを製造するための、本発明に従って好ましい方法における段階(B)は、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを、工程(A)において得られた反応混合物G3から分離する工程を含む。
【0108】
本発明によれば、当該分離段階(B)は、1つ以上の精製工程を含んでいてもよい。
【0109】
分離段階(B)は、好ましくは少なくとも1つの蒸留工程を含むが、好ましくは、例えば、N2および未転化の一酸化二窒素を分離するための、少なくとも1つの一段階蒸発工程、および少なくとも1つの蒸留工程、より好ましくは、少なくとも1つの一段階蒸発工程および少なくとも2つの蒸留工程を含む。
【0110】
本発明による方法の好ましい実施形態において、混合物G3は、分離段階(B)において、最初に、少なくとも1つの好適な容器B1において、概して反応圧力未満の圧力まで、例えば、1〜20barの圧力まで、好ましくは14〜18barの圧力まで減圧される。好ましい実施形態において、混合物G3は、この減圧処理の前に、好適な熱交換器において冷却される。
【0111】
本発明による方法の非常に特に好ましい実施形態において、本発明の反応から直接得られた混合物G3を使用して、最初に、少なくとも1つの反応剤流が、上記のように予備加熱され、次いで、混合物G3が、指定された圧力まで減圧される。
【0112】
本発明の好ましい実施形態において、分離段階(B)は、容器B1における一段階蒸発工程、および好適な蒸留塔、好ましくは再循環塔K1における少なくとも1つの蒸留工程を含む。そのような実施形態において、容器B1における混合物G3の減圧の後に、液状混合物(G3f)およびガス状混合物(G3g)が得られる。
【0113】
本発明によれば、混合物G3gは、好ましくは、1つ以上の、好ましくは2つの熱交換器によって、50℃以下の温度に、好ましくは5℃未満の温度に、より好ましくは−10℃未満の温度に冷却することができる。当該熱交換器は、当業者に既知のすべての冷却媒体、例えば、水、塩水など、により操作することができる。本発明の好ましい実施形態において、混合物G3gは、第一の熱交換器において、冷却水により50℃以下の温度に冷却され、第二の熱交換器において、塩水により5℃以下の温度に、好ましくは−10℃以下の温度に冷却される。当該冷却工程では、それぞれ、ガス状混合物の留分を凝縮する。この凝縮された留分は、好ましくは、容器B1に再循環され、G3fと組み合わされて、混合物G3f’を形成する。この方法は、混合物G3g中に存在する有機化合物をさらに転化することができるという利点を有する。結果として得られるガス状混合物G3gまたは熱交換器を通した後に得られるガス状混合物は、当業者に既知の方法によって除去することができる。
【0114】
好ましい実施形態において、結果として得られた液状混合物G3fまたは混合物G3f’は、1〜5barの圧力まで、例えば、3barに減圧され、混合物G3fまたはG3f’中に存在する成分をお互いに分離するために、少なくとも1つの蒸留工程に供される。
【0115】
分離段階(B)において好ましく実施される蒸留は、当業者に既知のすべての方法によって実施することができる。温度、圧力、蒸留塔の構成などは、分離されるべき物質に応じて決まる。
【0116】
本発明による方法の分離段階(B)において、所望の生成物である4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種のケトンは、好ましくは、未転化反応剤、当該反応混合物中に存在する任意のさらなる成分、および形成された任意の副生成物から分離される。分離段階(B)の特に好ましい実施形態において、シクロペンタノン生成物は、未転化のシクロペンテンおよび当該反応混合物中に存在する任意のシクロペンタンから分離される。
【0117】
本発明による方法の特に好ましい実施形態において、混合物G3fまたはG3f’は、分離段階(B)において、概して30〜50、好ましくは35〜45の理論段を有する再循環塔K1を使用することによって蒸留される。供給は、概して、塔の中間部分において行われる。さらに好ましい実施形態では、例えば、分離段階(B)において使用される再循環塔K1の上部において、4〜20個の炭素原子を有する未転化の単環式オレフィンが得られる。特に好ましくは、塔K1の側部引き出しにおいてシクロペンテンを得ることである。
【0118】
未転化の4〜20個の炭素原子を有する単環式オレフィン、より好ましくは蒸留されたシクロペンテン、を含む好適な流れは、本発明による方法において、単独において、または4〜20個の炭素原子を有する単環式オレフィン、より好ましくはシクロペンテン、を含む好適な混合物の添加の後で、例えば、再循環させて、混合物G1として使用することができる。
【0119】
特に好ましい実施形態において、分離段階(B)において、例えば、塔K1の側部引き出しによって分離された未転化の4〜20個の炭素原子を有する単環式オレフィンは、本発明による方法の段階(A)へ、すなわち混合物G1へ再循環される。
【0120】
したがって、本発明は、好ましい実施形態において、上記の方法であって、未転化の4〜20個の炭素原子を有する単環式オレフィンを、分離段階(B)において分離する方法に関する。
【0121】
したがって、さらなる好ましい実施形態において、本発明は、上記の方法であって、分離段階(B)において分離された未転化の4〜20個の炭素原子を有する単環式オレフィンを、当該方法の段階(A)へ再循環させる方法に関する。
【0122】
再循環塔K1の分離段階(B)における蒸留は、例えば、1.0〜7.0bar、好ましくは2.0〜6.0bar、例えば、3.5〜5.0barの圧力において実施される。
【0123】
再循環塔K1の分離段階(B)における蒸留は、例えば、80〜200℃、好ましくは90〜190℃の温度において実施される。再循環塔の底部における温度は、例えば、150〜200℃、好ましくは160〜185℃であり、再循環塔の底部の上方の温度は、例えば、80〜110℃、好ましくは90〜105℃である。
【0124】
本発明によれば、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の未転化の単環式オレフィンを、様々な純度において得ることができる。本発明によれば、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の未転化の単環式オレフィンを、例えば、90質量%を超える含有量の純度において、好ましくは95質量%を超える含有量の純度において得ることができる。
【0125】
分離段階(B)のさらなる実施形態において、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の未転化の単環式オレフィンが、さらなる炭化水素、例えば飽和炭化水素、例えばシクロペンタン、との混合物において、例えば、それぞれ、混合物に対して、20〜98質量%、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは40〜60質量%の、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィン、特にシクロペンテンと、それぞれ、混合物に対して、2〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%の少なくとも1種のさらなる炭化水素、例えば、飽和炭化水素、特にシクロペンタンと含む混合物として、得られる。これらの混合物は、さらなる成分、例えば炭化水素、段階(A)からの生成物もしくは副生成物、および/またはそれぞれ、混合物に対して、全含有量の最高1.5質量%まで、好ましくは最高1.0質量%までの直鎖状オレフィンを含み得る。
【0126】
分離段階(B)のさらなる好ましい実施形態において、再循環塔K1の頂部において、低沸点成分、例えば、n−ペンタン、2−メチル−2−ブテン、シス−2−ペンテン、およびトランス−2−ペンテンなどのC5炭化水素が得られる。
【0127】
分離段階(B)のさらなる好ましい実施形態において、所望の生産物、すなわち、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトン、特にシクロペンタノンは、それぞれ、底部の留分に対して、最高95質量%まで、好ましくは最高92質量%までの純度の好ましい実施形態において、再循環カラムK1の底部において得られる。
【0128】
本発明によれば、分離段階(B)は、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトン、特にシクロペンタノンが、低い純度においてが得られるようにも構成することができる。
【0129】
本発明に従って、分離段階(B)は、一段階蒸発および第一の蒸留、好ましくは再循環塔K1における蒸留、と同様に、さらなる蒸留を含むことも可能である。したがって、本発明に従って、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトン、特にシクロペンタノンを、例えば1つ以上の塔において、好ましくは2つの塔において、またはより好ましくは隔離壁塔K2において蒸留することによって、生成物がさらに精製され得ることも可能である。
【0130】
本発明によれば、分離段階(B)は、好ましい実施形態において、容器B1における一段階蒸発、再循環塔K1における蒸留、および蒸留塔K2、例えば隔離壁塔、におけるさらなる蒸留を含む。
【0131】
再循環塔K1における蒸留から、本発明に従って得られる生成物は、例えば、0.5〜3bar、好ましくは0.8〜2bar、例えば、1.0〜1.2barの圧力において精製される。
【0132】
再循環塔K1における蒸留から本発明に従って得られる生成物は、例えば、100〜200℃、好ましくは110〜180℃、例えば、120〜170°Cの温度において精製される。
【0133】
例えば、再循環塔K1における蒸留から、本発明に従って得られる生成物は、例えば、0.5〜3bar、好ましくは0.8〜2bar、例えば、1.0〜1.2barの圧力、および100〜200℃、好ましくは110〜180℃、例えば、120〜170℃の温度で、分割壁塔K2において精製される。
【0134】
本発明は、上で説明したように、少なくとも工程(A)および(B)を含む方法であって、当該混合物G1および/またはG2が、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを得るための反応の前に、工程(A)において170〜270℃の温度に予備加熱される方法にも関する。さらなる詳細および好ましい実施形態は、既に上記において指定されている。
【0135】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、上記の方法であって、少なくとも以下の工程:
(A)反応混合物G3を得るために、断熱条件下において、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンを含む混合物G1と、少なくとも一酸化二窒素を含む混合物G2とを反応させる工程、
(B)4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを、工程(A)において得られる反応混合物G3から分離する工程
を含み、混合物G1および/またはG2が、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを得る反応の前に、工程(A)において170〜270℃まで予備加熱される方法に関する。
【0136】
この方法の好ましい実施例において、予備加熱に必要な熱エネルギーは、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、本発明による方法の生成物流から回収される。
【0137】
本発明による方法は、一酸化二窒素による環式オレフィンの酸化に対して特に有利である。しかしながら、当該方法は、原則として、一酸化二窒素による他の化合物の酸化、特に、CC二重結合を含む化合物、例えば、非環式オレフィンまたは置換オレフィン、例えばエノールエタノールなど、の酸化、に対しても同等に好適である。
【0138】
図および実施例により、以下において本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明による方法を実施することができるパイロットプラントの概略を示す。
【図2】実施例5によるDSC試験で得られた、温度(単位は℃で、右向き値軸=x軸上にプロットされる)にわたってプロットされた熱の放出(単位はmWで、高さ向き値軸=y軸上にプロットされる)を示す。高さ向き値軸にまたがる範囲は、20mWである。右向き値軸の目盛は、10℃段階で行う。その際、右向き値軸は、30℃で始まり、600℃で終わる。試験の実施に関しては、実施例5における相応の実施形態が指摘される。記号は以下の意味を有する: 1 使用される分解反応のための反応排出物についての最も低い開始温度(345℃)、 2 第二の反応のための開始温度(515℃)
【図3】実施例6により評価された温度に対する断熱誘導時間を示す。右向き値軸(=x軸)上には温度が℃でプロットされる)にわたってプロットされた熱の放出(単位はmWで、高さ向き値軸=y軸上にプロットされ、高さ向き値軸(=y軸)上には断熱誘導時間がプロットされる。評価された誘導時間の測定のために、実施例6における実施形態が指摘される。
【0140】
実施例
実施例1
図1によるパイロットプラントを使用する。
【0141】
流れ2により、新鮮なシクロペンテン供給を、116.4g/hにおいて計量供給する。これは、蒸気分解装置のC5留分の蒸留に由来し、以下の組成(質量%):シクロペンテン(約95.1質量%)、シクロペンタン(約3.4質量%)、2−メチル−2−ブテン(約1.2質量%)、を有する。
【0142】
この流れ2は、最初に、以下の組成:シクロペンテン(約46.3質量%)、シクロペンタン(約51.9質量%)、2−メチル−2−ブテン(約0.9質量%)、2,2−ジメチルブタン(約0.81質量%)、を有する流れを得るために、流れ3(戻されたシクロペンテン)と混合される。
【0143】
次いで、この流れは、計量ポンプにより反応器へと計量供給される(流量:約2076g/h)。流れ1により、液状一酸化二窒素(一酸化二窒素の含有量は99.8体積%超、Messer Griesheim社製)が、約74g/hにおいて、反応器へと計量供給される。反応器供給におけるシクロペンテン:一酸化二窒素のモル比は、0.1:1モル/モルである。反応器は、薄壁ステレンス鋼のラシヒリング(6×6×0.3mm)の充填された管(外径=60.3mm、壁厚=2.4mm、長さ=3500mm)から成る。縦方向の温度プロフィールを測定するために、15点の熱電対を備える外径16mmのサーモウェルを反応器の軸に沿って設置した。反応容積は、(不規則充填物およびサーモウェルを差し引いて)接続部品を含めて、全体で約7Lである。反応器内の圧力は、好適な圧力維持装置により、反応器出口において100barに調整される。
【0144】
当該管は、ナノ多孔性無機フォームで構成された絶縁ジャケットを備え、Microtherm社製である(それぞれ、厚さ50mmの2層)。熱損失をさらに減少させるために、3部構成のトレース加熱システムを、絶縁ジャケットの外側に設置し、(v.u.)256、275、および317℃に調整する(一酸化二窒素を添加しない予備試験により、熱損失が非常に少ないことを確認した。反応器の入口温度が約260℃の場合、残留する熱損失は、反応器の出口までにわずか3℃の温度降下を生じるのみである)。反応器の滞留時間分布は、放射性マーカーを用いて、予備試験において特定した。特定されたボーデンシュタイン数は117の値を有しており、これは、58個の撹拌タンクによる同等の撹拌タンクカスケードに相当する。
【0145】
供給流は、加熱された入口ノズルによって反応器の底部から反応器へと供給され、並びに当該入口ノズル中において加熱される。239.5℃の反応器の入口温度(サーモウェルの最下の熱電対で測定)において、直線通過法におけるシクロペンテンの転化は11%であり、一酸化二窒素の転化は約96%である。シクロペンテンに対するシクロペンタノンの選択性は、96.8%である。反応器出力は、295℃の温度を有する。したがって、断熱温度増加は、55.5℃である。反応器出力は、二段階減圧において1barまで減圧され、冷却される。ガス状成分は除去され、後部冷却器(+5℃で操作される)において、その中に存在する炭化水素は、非常に十分に凝縮される。
【0146】
液体反応器出力の液相および凝縮物の液相は、蒸留塔(液体側部引き出しを備える20段の泡鐘段塔)において分離される。得られた底部生成物は、以下の組成(質量%):シクロペンタノン(約95.3質量%)、シクロペンタン(約0.8質量%)、4−ペンテナール(約1.3質量%)、シクロペンテンオキシド(約0.37質量%)、シクロペンテン二量体(約0.53質量%)、シクロペンテン(約0.08質量%)、を有する138.7g/hの流れである。45.6%のシクロペンテンを含む当該側部引き出し生産物は、流れ3として反応器へ再循環される。
【0147】
混合ガス相(減圧および再循環塔の頂部から、約47.7L/hにおいて)は、以下の組成:N2(81.1体積%)、一酸化二窒素(2.46体積%)、シクロペンテン(0.96体積%)、シクロペンタン(0.48体積%)を有する。
【0148】
実施例2
反応器の入口温度として255.4℃が選択されていることが異なること以外、実施例1を繰り返した。この場合、直線通過法におけるシクロペンテンの転化は約12%であり、一酸化二窒素の転化は99%であった。反応器出力は、313℃の出口温度を有する。したがって、断熱温度増加は、57.6℃である。シクロペンテンに対するシクロペンタノンの選択性は、94.8%である。
【0149】
実施例3
反応器の入口温度として225.9℃が選択されていることが異なること以外、実施例1を繰り返した。この場合、直線通過法におけるシクロペンテンの転化は9.7%であり、一酸化二窒素の転化は83%であった。反応器出力は、277℃の出口温度を有する。したがって、断熱温度増加は、51.1℃である。シクロペンテンに対するシクロペンタノンの選択性は、95.2%であった。
【0150】
実施例4
シクロペンタノンの精密精製を実証するために、実施例1、実施例2、および他の類似の実験からの出力を収集し、実験室の隔離壁塔において蒸留した。当該塔は、43mmの内径および2.5mの高さを有し、構造化充填物(Montz A3 1000)を備えていた。理論段数は、予備試験における試験混合物により決定され、使用されるF因子において53の理論段であった。隔離壁は、構造化充填物の下端の上、820〜2100mmの間の範囲に挿入されており、当該塔をちょうど中央で分割していた。供給口および側部引き出しは、両方とも、構造化充填物の下端の上、1300mmに位置されていたが、分離壁の異なる側に位置されていた。
【0151】
当該塔への供給(合計で17.5kg)は、以下の組成(質量%):シクロペンタノン(95.6)、シクロペンタン(0.8)、シクロペンテン(0.08)、4−ペンテナール(1.3)、酸化シクロペンテン(0.4)、イソプロピルメチルケトン(0.2)、ジエチルケトン(0.03)、2,2−ジメチルブタン(0.005)、並びに他の成分、例えば、シクロペンテン二量体、シクロペンチルシクロペンタノン、シクロペンテニルシクロペンタノン、シクロブタンカルバルデヒド、シクロプロピルアセトアルデヒド、および他の同定されていない二次成分を有していた。
【0152】
蒸留は、0.33kg/hの供給速度および90の還流比により、標準圧力で実施した。側部引き出しにおいて、99.89%の純度においてシクロペンタノンを得た。蒸留収率は、99.5%であった(シクロペンタノンに対して)。
【0153】
実施例5
実施例1からの、既に減圧され脱ガス処理された反応器出力の試料(18.3mg)を、窒素雰囲気下において、耐圧性V4Aるつぼにおいて密封し、好適な装置(Mettler TA 8000)において、1K/分の昇温速度により、示差走査型熱量計(DSC)試験を実施した。結果は、図2に示す。
【0154】
当該ダイアグラムでは、熱の放出(mW)(y軸)が、温度(℃)(x軸)に対してプロットされている。
【0155】
したがって、そこから特定される反応器出力の、最も低い開始温度は、第一の分解反応開始に対する345℃である(図2中:1)。第一の分解反応において放出された熱の測定では、263.7J/gの値を示している。第二の反応では、515℃の開始温度が見出せる(図中:2)。第二の反応では、当該分解反応において放出された熱の測定では、208.7J/gの値を示している。
【0156】
実施例6
0.3K/分および2.5K/分の異なる昇温速度において、実施例5を繰り返した。得られたデータは、実施例5からのデータと共に、正式な分解動態の誘導のために使用した。評価では、360〜520℃の範囲のデータだけを使用し、NETZSCH THERMOKINETICSプログラムによって分析した。測定されたデータに対する最適近似は、ProutTompkiris反応速度式により行い、これは、DSC試験のデータに対して多変量非線回帰により近似した。正式な動態モデルに基づいて、2J・g-1・K-1の一定の熱容量を想定して、当該分解反応の断熱誘導時間は、336〜380℃の範囲において計算した(このために、NETZSCH THERMSIMプログラムを使用した)。したがって、評価した断熱誘導時間を温度関数として図3に示す。温度(℃)をx軸にプロットし、断熱誘導時間(時)をy軸上にプロットする。
【0157】
したがって、断熱誘導時間は、実験した混合物の約350℃の開始温度において、24時間である。
【符号の説明】
【0158】
1 一酸化二窒素の供給、 2 シクロペンテンの供給、 3 再循環された未転化のシクロペンテン、 4 廃ガス流、 5 低沸点物パージ、 6 低沸点物、 7 高沸点物、 8 シクロペンタノン生産物、 9 凝縮物、 M ミキサー、 R 反応器、 WT 熱交換器/分縮器、 B1 相分離容器、 K1 再循環塔、 K2 精密精製塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンを含む混合物G1を、少なくとも一酸化二窒素を含む混合物G2と反応させることによって、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを製造する方法であって、該反応を断熱的に実施することを特徴とする前記方法。
【請求項2】
それぞれ混合物G1に対して、20〜98質量%、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは40〜60質量%の4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの単環式オレフィンと、それぞれ混合物G1に対して、2〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%の少なくとも1種のさらなる炭化水素とを含む混合物G1が使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物G1が、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の単環式オレフィンを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応に際して、一酸化二窒素と少なくとも1種の単環式オレフィンとの間のモル比が、0.02〜0.3の間であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
170〜340℃の温度において実施されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
反応器における断熱温度増加が、10〜140℃の間であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応器における前記断熱温度増加が、25〜100℃の間であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
反応器出口温度が、生成混合物の分解のために、開始温度より低いことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応器出口温度が、前記生成混合物の前記断熱的誘発時間が24時間である温度より少なくとも10K低いことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
60〜500barの反応圧力において実施されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物G2が、少なくとも75体積%の一酸化二窒素を含むことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
一酸化二窒素に基づく転化率が80〜100%であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記混合物G1および/またはG2が、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを得るための前記反応の前に、170〜270℃の温度に予備加熱されることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
混合物G1および/またはG2を予備加熱するために必要な熱エネルギーが、少なくとも部分的に、本発明による方法の生成物流から回収されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも、以下の工程:
(A)断熱条件下において、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式オレフィンを含む混合物G1を、少なくとも一酸化二窒素を含む混合物G2と反応させ、反応混合物G3を得る工程、
(B)工程(A)において得られた該反応混合物G3から、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを分離する工程
を含む、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
未転化の4〜20個の炭素原子を有する単環式オレフィンを、前記分離段階(B)において分離することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記分離段階(B)において分離された前記未転化の4〜20個の炭素原子を有する単環式オレフィンが、前記工程の段階(A)に再循環されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記混合物G1および/またはG2が、4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の単環式ケトンを得るための前記反応の前に、工程(A)において170〜270℃の温度に予備加熱されることを特徴とする、請求項15から17までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−500826(P2012−500826A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524361(P2011−524361)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060956
【国際公開番号】WO2010/023211
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】