説明

環状α−ヒドロキシ−α,β−不飽和ケトン化合物及びシクロペンテノン化合物の製造方法

【課題】ナザロフ反応を改良して、水中で環状α−ヒドロキシ−α,β−不飽和ケトン化合物及びシクロペンテノン化合物を合成する方法の提供。
【解決手段】水溶媒中で、ルイス酸触媒を用いて、2−オキソ−1,4−ペンタジエニル−3−オン化合物に対してナザロフ反応を行うと、有機溶媒中で反応を行った場合とは異なる反応経路を通り、環状α−ヒドロキシ−α,β−不飽和ケトン化合物を選択的に与える。また、同じ反応系中に2級アミンを加えると、有機溶媒中で反応を行った時と同様にシクロペンテノン化合物を生成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水中で、ルイス酸触媒を用いて、2−オキソ−1,4−ペンタジエニル−3−オン化合物から、環状α−ヒドロキシ−α,β−不飽和ケトン化合物及びシクロペンテノン化合物を合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,4−ペンタジエニル−3−オン化合物からシクロペンテノン誘導体を得る有用な方法としてナザロフ反応が知られている(非特許文献1など)。
【0003】
【非特許文献1】Org. Lett. 2003, 5, 4931-4934
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のナザロフ反応(非特許文献1など)においては有機溶媒を用い、アルゴンや窒素のような不活性ガス存在下、モレキュラーシーブスのような脱水剤を用いることで極限まで酸素、水を取り除いて反応を行う必要があった。
従って、本発明は、ナザロフ反応を改良して、水中で環状α−ヒドロキシ−α,β−不飽和ケトン化合物及びシクロペンテノン化合物を合成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
水溶媒中で、ルイス酸触媒を用いて、2−オキソ−1,4−ペンタジエニル−3−オン化合物に対してナザロフ反応を行うと、有機溶媒中で反応を行った場合とは異なる反応経路を通り、環状α−ヒドロキシ−α,β−不飽和ケトン化合物を選択的に与えることを見出した。すなわち、反応中間体であるペンタジエニルカチオンに対して溶媒として用いた水が反応することによって対応する環状α−ヒドロキシ−α,β−不飽和ケトン化合物が生成した。
また、同じ反応系中に2級アミンを加えると、有機溶媒中で反応を行った時と同様に(非特許文献1など)、シクロペンテノン化合物を生成できることを見出した。
【0006】
即ち、本発明は、水中で、触媒として下記一般式
M(RX)
(式中、MはSc、Y又はランタノイド元素を表し、Rは、炭素数が6以上の炭化水素基を表し、Xは−OSO−、−OSO−、−COO−、−OPO−又は−O−を表す。)で表されるルイス酸と、下式(式1)
【化1】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい非芳香族炭化水素基を表し、RとRは共同でヘテロ原子を含んでもよい4〜10員環を形成してよく、またRとRは共同でヘテロ原子を含んでもよい4〜10員環を形成してよい。)で表される2−オキソ−1,4−ペンタジエニル−3−オン化合物を共存させることから成る、下式(化2)
【化2】

(式中、R〜Rは、上記と同様に定義される。)で表される環状α−ヒドロキシ−α,β−不飽和ケトン化合物の製造方法である。
【0007】
更に、本発明は、水中で、触媒として下記一般式
M(RX)
(式中、MはSc、Y又はランタノイド元素を表し、Rは、炭素数が6以上の炭化水素基を表し、Xは−OSO−、−OSO−、−COO−、−OPO−又は−O−を表す。)で表されるルイス酸、下式(式1)
【化1】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい非芳香族炭化水素基を表し、RとRは共同でヘテロ原子を含んでもよい4〜10員環を形成してよく、またRとRは共同でヘテロ原子を含んでもよい4〜10員環を形成してよい。)で表される2−オキソ−1,4−ペンタジエニル−3−オン化合物、及び下式
−NH
(式中、Rは、同じであっても異なってもよく、アルキル基、シクロアルキル基又はアルケニル基を表す。)で表される2級アミンを共存させることから成る、下式(化3)
【化3】

(式中、R〜Rは、上記と同様に定義される。)で表されるシクロペンテノン化合物の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製法は、有害な有機溶媒を用いることなく効率的に5員環α−ヒドロキシ−α,β−不飽和ケトン誘導体やシクロペンテノン誘導体を合成することができるため、これらの化合物の環境調和型プロセスとして有用である。
本発明の製法は、ルイス酸触媒を用いることにより、溶媒として水のみを用いてナザロフ反応を行うことで有機溶媒中とは異なる生成物(即ち、α−ヒドロキシ−α,β−不飽和ケトン化合物)を与える。
また、反応系中に2級アミンが存在すると有機溶媒中で反応を行った時と同じ化合物(即ち、シクロペンテノン化合物)を合成することもできる。
本発明の製法を用いることにより、5員環α−ヒドロキシ−α,β−不飽和ケトン化合物を1工程で合成することができる。これらの化合物の中には下式に示すような有用な天然物も含まれているため、これらの天然物の環境調和型プロセスを提供することが可能となる。これらの化合物は、従来のナザロフ反応(非特許文献1など)では合成することができなかったものである。
【化4】

【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いる触媒であるルイス酸は、下記一般式で表される。
M(RX)
MはSc、Y又はランタノイド元素(57La〜71Lu)、好ましくはScを表す。
は、炭化水素基であって、その炭素数は6以上、好ましくは8〜30である。この炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、及び芳香族炭化水素基から成る群から選択される少なくとも1種であってもよい。またこれらは、任意の置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基等の炭化水素基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
Xは、−OSO−、−OSO−、−COO−、−OPO−又は−O−であるが、好ましくは−OSO−又は−OSO−である。
このルイス酸は、有機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩と上記金属のハロゲン化物とを水中で混合するか、あるいは有機酸と上記金属の酸化物又は水酸化物とを水中で混合することにより製造することができる。
【0010】
本発明の反応の基質である2−オキソ−1,4−ペンタジエニル−3−オン化合物は下式(式1)で表される。
【化1】

本願発明の反応においては、この2−オキソ−1,4−ペンタジエニル−3−オン構造が重要なのであり、当該反応において置換基R〜Rは重要な要素ではなく、特に制限はない。
【0011】
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい非芳香族炭化水素基を表す。
芳香族炭化水素基としては、アリール基が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、α又はβ−ナフチル基が挙げられる。芳香族複素環基としては、ピリジル、ピリミジニル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、フリル、イミダゾリル等の単環の芳香族複素環基、ベンズイソチアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズフリル、キノリル、イソキノリル、インドリル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ナフチリジニル、プテリジニル、チエノフラニル、イミダゾチオフェン−イル、イミダゾフラニル等の二環性の芳香族複素環基 が挙げられる。
また、これらは置換基を有していてもよく、特に制限はないが、直鎖又は分岐のアルキル基、アルコキシル基、アリール基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0012】
非芳香族炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、好ましくはアルキル基が挙げられる。アルキル基は、直鎖又は分岐でもよく、特に制限はないが、通常炭素数が1〜20である。シクロアルキル基として、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基等を挙げることができる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、1−メチルビニル基、アリル基等をあげることができる。
これらはまた、上記と同様の置換基を有していてもよい。
また、RとRは共同でヘテロ原子を含んでもよい4〜10員環を形成してよく、またRとRは共同でヘテロ原子を含んでもよい4〜10員環を形成してよい。ヘテロ原子としては、−O−、−S−、−NH−が挙げられる。
【0013】
本発明の反応で用いる二級アミンは下式で表される。
−NH
は、同じであっても異なってもよく、直鎖又は分岐の、好ましくは分岐のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、好ましくは炭素数が3〜20の分岐のアルキル基又は炭素数が5〜20のシクロアルキル基を表す。
このような二級アミンとして、例えば、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン等をあげることができる。
【0014】
本発明の第一の実施態様として、水中で、触媒として上記ルイス酸を用いて、2−オキソ−1,4−ペンタジエニル−3−オン化合物を共存させると、下式に従って、環状α−ヒドロキシ−α,β−不飽和ケトン化合物が生成する(式中、R〜Rは、上記で定義したとおりである。)。
【化5】

反応条件は以下のとおりである
溶媒は、水である。
基質の濃度は、0.001〜10M、好ましくは0.005〜1Mである。
触媒の使用量は、基質に対して、0.0001〜1当量、好ましくは0.005〜0.2当量である。
反応温度は、0〜100℃、好ましくは0〜40℃である。
反応時間は、通常1〜120時間である。
このように、本願発明の製法により、環状α−ヒドロキシ−α,β−不飽和ケトン化合物を得ることができるが、この生成物は従来の有機溶媒を用いたナザロフ反応(非特許文献1など)では得ることのできなかったものである。
【0015】
本発明の第二の実施態様として、水中で、触媒として上記ルイス酸を用いて、2−オキソ−1,4−ペンタジエニル−3−オン化合物を共存させ、更に二級アミンを加えると、下式に従って、シクロペンテノン化合物が生成する(式中、R〜R、Rは、上記で定義したとおりである。)。
【化6】

反応条件は以下のとおりである
溶媒は、水である。
基質の濃度は、0.001〜10M、好ましくは0.005〜1Mである。
触媒の使用量は、基質に対して、0.0001〜1当量、好ましくは0.005〜0.2当量である。
二級アミンの使用量は、基質に対して、0.1〜10当量、好ましくは0.1〜3当量である。
反応温度は、0〜100℃、好ましくは0〜40℃である。
反応時間は、通常1〜120時間である。
このように、溶媒として水を用いるにもかかわらず、二級アミンを加えることにより、従来の有機溶媒を用いたナザロフ反応(非特許文献1など)と同様にシクロペンテノン化合物を得ることができる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
以下の実施例において、1H NMR及び13C NMRは、溶媒としてCDCl3を内部標準としてテトラメチルシランを用い、日本電子株式会社製JNM-LA400又はJNM-ECA-500を用いて測定した。IRスペクトルは、日本分光社製FT/IR-610を用いて測定した。
また、実施例に用いた基質は公知文献(Org. Lett. 2003, 5 (26), 4931-4934.)に記載の製法に従って合成した。
【0017】
製造例1
スカンジウムトリスドデシルサルフェート(Sc(DS)3)を公知の方法(J. Am. Chem. Soc. 2000, 122 (30), 7202-7207)によって合成した。
ドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製、1.49 g)を水(25 mL)に溶解した。この溶液に塩化スカンジウム六水和物(添川化学製、500 mg)の水(5 mL)溶液を室温で滴下した。反応液を室温で1時間攪拌した。現れた結晶をろ取し水(100 mL x 3)で洗浄した。結晶を減圧下乾燥して、Sc(DS)3(1.32 g, 91%)を白色結晶として得た。
元素分析 計算値:C33H69O9S3Sc・2.5H2O C:49.79, H:9.37
観測値: C:49.81, H:9.14
【0018】
実施例1
10mLのフラスコに製造例1で得たSc(DS)3(25.2 mg)を水(1.8 mL)中で懸濁した。この溶液に1−(3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−6−イル)−2−メチルプロプ−2−エン−1−オン(45.7 mg)を加えた。反応液を室温で16時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水(5 mL)、飽和食塩水(5 mL)を加えた。水層をジクロロメタン(20 mL x 3)で抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水(10 mL x 2)で洗浄し、無水硫酸水素ナトリウムで乾燥した。無水硫酸水素ナトリウムをろ別し、減圧下濃縮した。残渣を分取用TLC(溶出液:n−ヘキサン/酢酸エチル=1/2)で精製し、2−ヒドロキシ−5−(3−ヒドロキシプロピル)−3−メチルシクロペント−2−エノン(45.5 mg、89%)を無色液体として得た。
反応式を下式に示す。
【化7】

【0019】
反応基質の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 1.86-1.90 (m, 2H), 1.96 (s, 3H), 4.13 (t, J = 5.2 Hz, 2H), 5.64 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 5.68 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 5.86 (t, J = 4.8 Hz, .1H); 13C NMR δ 19.0, 20.9, 21.4, 66.3, 114.0, 123.9, 142.8, 150.9; IR (neat, cm-1): 2930, 2877, 1658, 1624, 1448, 1320, 1289, 1234, 1172, 1064, 1020, 991, 925, 768; HRMS(ESI-TOF, Pos.) calced for C9H12O2Na ([M+Na]+): 175.0735, found: 175.0723.
生成物の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 1.47-1.53 (m, 1H), 1.62-1.68 (m, 2H), 1.76-1.87 (m, 2H), 2.00 (s, 3H), 2.10 (dd, J = 1.7, 14.3 Hz, 1H), 2.13-2.42 (m, 1H), 2.61-2.66 (m, 1H), 3.66 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 5.79 (s, 1H); 13C NMR δ 14.2, 27.6, 29.9, 34.6, 42.4, 62.5, 142.9, 148.1, 204.9; IR (neat) 3419, 2939, 1700, 1644, 1517, 1446, 1373, 1294, 1217, 1167, 1120, 1043, 987, 814 cm-1; HRMS(EI, Pos.) calced for C9H12O2 ([M-H2O]+): 152.0840, found: 152.0837.
【0020】
実施例2
基質を等モルの1−(3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−6−イル)−3,3−ジメチル−2−メチレンブタン−1−オンに代えて、実施例1と同様の反応を行ない、3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−(3−ヒドロキシプロピル)シクロペント−2−エノンを得た(収率88%)。
反応式を下式に示す。
【化8】

反応基質の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 1.17 (s, 9H), 1.84-1.89 (m, 2H), 2.22-2.26 (m, 2H), 4.11-4.13 (m, 2H), 5.16 (s, 1H), 5.44 (s, 1H), 5.91-5.95 (m, 1H); 13C NMR δ 21.1, 21.4, 29.6, 35.4, 66.4, 115.6, 116.6, 152.0, 155.8, 194.7; IR (neat) 2959, 2871, 1666, 1623, 1462, 1361, 1287, 1214, 1143, 1085, 1062, 997, 918, 771 cm-1; HRMS(ESI-TOF, Pos.) calced for C12H19O2 ([M+H]+): 195.1385, found: 195.1364.
生成物の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 1.25 (s, 9H), 1.45-1.50 (m, 1H), 1.62-1.68 (m, 2H), 1.79-1.92 (m,1H), 1.97 (brs, 1H), 2.13 (dd, J = 6.6, 17.8 Hz, 1H), 2.35-2.40 (m, 1H), 2.69 (dd, J = 6.3, 17.8 Hz, 2H), 3.67 (t, J = 6.3 Hz, 1H), 5.76 (brs, 1H); 13C NMR δ 27.7, 28.1, 29.8, 30.9, 34.0, 41.5, 62.5, 146.6, 152.5, 206.0; IR (neat) 3480, 2959, 2250, 1699, 1650, 1472, 1398, 1366, 1292, 1169, 1114, 1075, 956, 911, 733 cm-1; HRMS(EI, Pos.) calced for C12H18O2 ([M-H2O]+): 194.1307, found: 194.1307.
【0021】
実施例3
基質を等モルの(E)−(3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−6−イル)−2−メチルブト−2−エン−1−オンに代えて、実施例1と同様の反応を行ない、2−ヒドロキシ−5−(3−ヒドロキシプロピル)−3,4−ジメチルシクロペント−2−エノンを得た(収率79%)。
反応式を下式に示す。
【化9】

反応基質の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 1.82-1.90 (m, 8H), 2.19-2.23 (m, 2H), 4.10-4.12 (m, 2H), 5.65 (t, J = 4.6 Hz, 1H), 6.48-6.52 (m, 1H); 13C NMR δ 12.4, 14.4, 20.7, 21.6, 66.3, 111.7, 136.2, 137.7, 151.4; IR (neat, cm-1): 2930, 1648, 1445, 1391, 1346, 1281, 1226, 1158, 1065, 920, 893, 742, 661; HRMS(ESI-TOF, Pos.) calced for C10H15O2 ([M+H]+): 167.1072, found: 167.1034.
生成物の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 1.18 (d, J = 7.5 Hz, 3H), 1.47-1.54 (m, 1H), 1.65-1.70 (m, 2H), 1.76-1.83 (m, 1H), 1.95 (s, 3H), 2.31-2.36 (m, 1H), 2.63 (brs, 1H), 3.65 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 6.86 (brs, 1H); 13C NMR δ 11.9, 18.5, 27.0, 40.5, 51.2, 62.4, 147.8, 148.2, 204.7; IR (neat) 3433, 2965, 2876, 1703, 1646, 1455, 1402, 1290, 1146, 1041, 964 cm-1; HRMS(EI, Pos.) calced for C10H14O2 ([M-H2O]+): 184.1100, found: 184.1099.
【0022】
実施例4
基質を等モルのシクロヘキセニル(3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−6−イル)メタノンに代えて、実施例1と同様の反応を行ない、3−ヒドロキシ−1−(3−ヒドロキシプロピル)−5,6,7,7a−テトラヒドロ−1H−インデン−2(4H)−オンを得た(収率93%)。
反応式を下式に示す。
【化10】

反応基質の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 1.60-1.67 (m, 4H), 1.85-1.90 (m, 2H), 2.19-2.40 (m, 6H), 4.10-4.12 (m, 2H), 5.67 (t, J = 4.6 Hz, 1H), 6.71 (m, 1H); 13C NMR δ 20.7, 21.6, 21.9, 24.2, 66.3, 111.5, 137.6, 140.3, 151.5, 192.3; IR (neat) 2932, 1648, 1446, 1388, 1345, 1277, 1252, 1218, 1055, 983, 923, 892, 745, 703 cm-1; HRMS(ESI-TOF, Pos.) calced for C12H16O2Na ([M+H]+): 215.1048, found: 215.1035.
生成物の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 1.01-1.09 (m, 1H), 1.29-1.36 (m, 1H), 1.40-1.53 (m, 2H), 1.62-1.69 (m, 2H), 1.70-1.86 (m, 2H), 1.93-2.04 (m, 3H), 2.14-2.19 (m, 2H), 2.50 (brs, 1H), 2.95-3.00 (m, 1H), 3.66 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 6.24 (brs, 1H); 13C NMR δ 25.4, 25.5, 26.7, 30.1, 34.3, 43.4, 49.9, 62.5, 145.1, 149.5, 204.5; IR (neat) 3392, 2933, 2860, 1693, 1647, 1447, 1395, 1291, 1166, 1139, 1117, 1062, 954, 910, 882, 732 cm-1; HRMS(EI, Pos.) calced for C12H16O2 ([M-H2O]+): 192.1151, found: 192.1150.
【0023】
実施例5
基質を等モルの(E)−2−メチル−1−フェニル−4−プロポキシペンタ−1,4−ジエン−3−オンに代えて、実施例1と同様の反応を行ない、2−ヒドロキシ−3−メチル−4−フェニルシクロペント−2−エノンを得た(収率87%)。
反応式を下式に示す。
【化11】

反応基質の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 1.02 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 1.76-1.84 (m, 2H), 2.14 (s, 3H), 3.78 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 4.58 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 4.84 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 7.26-7.45 (m, 6H); 13C NMR δ 10.7, 14.0, 22.1, 69.7, 91.9, 128.4, 128.5, 129.7, 135.7, 135.9, 141.3, 194.3.; IR (neat, cm-1): 3056, 2965, 2878, 1656, 1606, 1491, 1448, 1374, 1295, 1192, 1050, 928, 838, 781, 696, 615, 515; HRMS(ESI-TOF, Pos.) calced for C15H18O2Na ([M+Na]+): 253.1204, found: 253.1180.
生成物の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 1.81 (s, 3H), 2.35 (d, J = 19.5, 1H), 2.93 (dd, J = 5.7, 19.5 Hz, 1H), 3.78-3.80 (m, 1H), 6.41 (s, 1H), 7.11-7.13 (m, 2H), 7.23-7.27 (m, 1H), 7.30-7.34 (m, 2H); 13C NMR δ 12.6, 42.3, 44.9, 127.1, 128.9, 141.7, 146.4, 149.6, 202.4; IR (neat) 3247, 1699, 1651, 1405, 1356, 1293, 1154, 1115, 929, 770, 702 cm-1; HRMS(EI, Pos.) calced for C12H12O2 ([M]+): 188.0838, found: 188.0837.
【0024】
実施例6
10mLのフラスコに製造例1で得たSc(DS)3(25.2 mg)を水(0.3 mL)中で懸濁した。この溶液にN,N−ジイソプロピルアミン(東京化成製)(0.084 mL)と1−(3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−6−イル)−2−メチルプロプ−2−エン−1−オン(45.7 mg)を加えた。反応液を室温で24時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水(5 mL)、飽和食塩水(5 mL)を加えた。水層をジクロロメタン(20 mL x 3)で抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水(10 mL x 2)で洗浄し、無水硫酸水素ナトリウムで乾燥した。無水硫酸水素ナトリウムをろ別し、減圧下濃縮した。残渣を分取用TLC(溶出液:n−ヘキサン/酢酸エチル=1/2)で精製し、6−メチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[b]ピラン−7−オン(44.4 mg、82%)を無色液体として得た。
【0025】
反応式を下式に示す。
【化12】

反応基質の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 1.86-1.90 (m, 2H), 1.96 (s, 3H), 4.13 (t, J = 5.2 Hz, 2H), 5.64 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 5.68 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 5.86 (t, J = 4.8 Hz, .1H); 13C NMR δ 19.0, 20.9, 21.4, 66.3, 114.0, 123.9, 142.8, 150.9; IR (neat, cm-1): 2930, 2877, 1658, 1624, 1448, 1320, 1289, 1234, 1172, 1064, 1020, 991, 925, 768; HRMS(ESI-TOF, Pos.) calced for C9H12O2Na ([M+Na]+): 175.0735, found: 175.0723.
生成物の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 1.20 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.93-1.99 (m, 2H), 2.02-2.07 (m, 1H), 2.32-2.07 (m, 3H), 2.67-2.74 (m, 1H), 4.11 (t, J = 4.0 Hz, 2H); 13C NMR δ 16.5, 21.6, 24.0, 34.8, 38.0, 66.7, 143.9, 150.2, 203.5; IR (neat) 2956, 2880, 1760, 1648, 1465, 1401, 1291, 1168, 1113, 1073, 953, 858, 721cm-1.
【0026】
実施例7
基質を等モルの(E)−(3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−6−イル)−2−メチルブト−2−エン−1−オンに代えて、実施例6と同様の反応を行ない、5,6−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[b]ピラン−7−オンを得た(収率80%)。
反応式を下式に示す。
【化13】

反応基質の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 1.82-1.90 (m, 8H), 2.19-2.23 (m, 2H), 4.10-4.12 (m, 2H), 5.65 (t, J = 4.6 Hz, 1H), 6.48-6.52 (m, 1H); 13C NMR δ 12.4, 14.4, 20.7, 21.6, 66.3, 111.7, 136.2, 137.7, 151.4; IR (neat, cm-1): 2930, 1648, 1445, 1391, 1346, 1281, 1226, 1158, 1065, 920, 893, 742, 661; HRMS(ESI-TOF, Pos.) calced for C10H15O2 ([M+H]+): 167.1072, found: 167.1034.
生成物の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 1.05-1.09 (m, 3H), 1.17-1.20 (m, 3H), 1.86-2.00 (m, 3H), 2.18-2.28 (m, 1H), 2.24-2.85 (m, 2H), 4.00-4.19 (m, 2H); 13C NMR δ 11.1, 14.6, 14.7, 21.4, 21.5, 21.5, 21.8, 35.9, 41.2, 42.0, 47.2, 66.5, 66.7, 147.6, 148.8, 149.4, 202.6, 203.3; IR (neat) 2965, 2874, 1707, 1648, 1456, 1289, 1145, 1082, 1043, 962, 943 cm-1.
【0027】
実施例8
基質を等モルのシクロヘキセニル(3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−6−イル)メタノンに代えて、実施例6と同様の反応を行ない、3,4,3b,5,6,7,8,8a−オクタヒドロ−2H−オキサ−フルオレン−9−オンを得た(収率80%)。
反応式を下式に示す。
【化14】

反応基質の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 1.60-1.67 (m, 4H), 1.85-1.90 (m, 2H), 2.19-2.40 (m, 6H), 4.10-4.12 (m, 2H), 5.67 (t, J = 4.6 Hz, 1H), 6.71 (m, 1H); 13C NMR δ 20.7, 21.6, 21.9, 24.2, 66.3, 111.5, 137.6, 140.3, 151.5, 192.3; IR (neat) 2932, 1648, 1446, 1388, 1345, 1277, 1252, 1218, 1055, 983, 923, 892, 745, 703 cm-1; HRMS(ESI-TOF, Pos.) calced for C12H16O2Na ([M+H]+): 215.1048, found: 215.1035.
生成物の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 1.15-1.55 (m, 5H), 1.68-1.98 (m, 5H), 2.18-2.46 (m, 3H), 2.72-2.77 (m, 1H), 4.03-4.17 (m, 2H); 13C NMR δ 20.3, 20.4, 21.5, 21.9, 22.4, 26.6, 37.4, 43.6, 66.7, 148.3, 150.2, 202.8; IR (neat) 2932, 2862, 1705, 1644, 1446, 1400, 1290, 1165, 1081, 955, 910 cm-1
【0028】
実施例9
基質を等モルの1−(5,6−ジヒドロ−1,4−ジオキサン−2−イル)−3−メチル−2−メチレンブタン−1−オンに代えて、実施例6と同様の反応を行ない、6−イソプロピル−2,3,6,7−テトラヒドロ−シクロペンテナル[1,4]ジオキサン−5−オンを得た(収率72%)。
反応式を下式に示す。
【化15】

反応基質の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 1.06 (d, J = 6.8 Hz, 6H), 2.86 sept, J = 6.8 Hz, 1H), 4.20 (s, 4H), 5.36-5.38 (m, 2H), 7.17 (s, 1H); 13C NMR δ 21.1, 30.5, 63.5, 65.2, 116.8, 142.4, 153.3, 191.8; IR (neat) 3478, 3100, 2963, 1728, 1610, 1460, 1370, 1299, 1240, 1174, 1091, 1023, 980, 922, 872, 802, 747, 703, 577 cm-1; HRMS(ESI-TOF, Pos.) calced for C10H14O3Na ([M+Na]+): 205.0841, found: 205.0816.
生成物の分析データを以下に示す:
1H NMR δ 0.80 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 0.98 (d, J = 7.5 Hz, 3H), 2.27-2.33 (m, 2H), 2.41-2.44 (m, 1H), 2.51 (dd, J = 6.9, 18.1 Hz, 1H), 4.14 (t, J = 4.1 Hz, 2H), 4.32-4.35 (m, 2H); 13C NMR δ 16.5, 20.4, 24.8, 28.0, 47.6, 63.8, 66.8, 134.3, 165.0, 196.9; IR (neat) 2957, 1705, 1647, 1459, 1402, 1323, 1241, 1132, 1074, 1025, 995, 867 cm-1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中で、触媒として下記一般式
M(RX)
(式中、MはSc、Y又はランタノイド元素を表し、Rは、炭素数が6以上の炭化水素基を表し、Xは−OSO−、−OSO−、−COO−、−OPO−又は−O−を表す。)で表されるルイス酸と、下式(式1)
【化1】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい非芳香族炭化水素基を表し、RとRは共同でヘテロ原子を含んでもよい4〜10員環を形成してよく、またRとRは共同でヘテロ原子を含んでもよい4〜10員環を形成してよい。)で表される2−オキソ−1,4−ペンタジエニル−3−オン化合物を共存させることから成る、下式(化2)
【化2】

(式中、R〜Rは、上記と同様に定義される。)で表される環状α−ヒドロキシ−α,β−不飽和ケトン化合物の製造方法。
【請求項2】
水中で、触媒として下記一般式
M(RX)
(式中、MはSc、Y又はランタノイド元素を表し、Rは、炭素数が6以上の炭化水素基を表し、Xは−OSO−、−OSO−、−COO−、−OPO−又は−O−を表す。)で表されるルイス酸、下式(式1)
【化1】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基、又は置換基を有していてもよい非芳香族炭化水素基を表し、RとRは共同でヘテロ原子を含んでもよい4〜10員環を形成してよく、またRとRは共同でヘテロ原子を含んでもよい4〜10員環を形成してよい。)で表される2−オキソ−1,4−ペンタジエニル−3−オン化合物、及び下式
−NH
(式中、Rは、同じであっても異なってもよく、アルキル基、シクロアルキル基又はアルケニル基を表す。)で表される2級アミンを共存させることから成る、下式(化3)
【化3】

(式中、R〜Rは、上記と同様に定義される。)で表されるシクロペンテノン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2009−215204(P2009−215204A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59203(P2008−59203)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】