説明

環状オレフィン系樹脂組成物、フィルム、および位相差膜

【課題】本発明は、透明性を低下させずに脆さを改善した環状オレフィン系樹脂組成物およびフィルムの提供を目的とする。
【解決手段】(A)少なくとも1種の炭素原子数2〜30の直鎖状または分岐状のα−オレフィンに由来する構成単位と、(B)少なくとも1種の特定構造の環状オレフィンに由来する構成単位とからなるα-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体を含む環状オレフィン系樹脂組成物であって、α-オレフィン・環状オレフィン共重合体が、主鎖における環状オレフィンに由来する構成単位の含有率とグラフト鎖における環状オレフィンに由来する構成単位の含有率とが異なる環状オレフィン系樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系樹脂組成物、これを用いた環状オレフィン系樹脂フィルムおよび位相差膜に関し、特に、α-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体を含む樹脂組成物、これを用いた環状オレフィン系樹脂フィルム、および位相差膜に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンと環状オレフィン類とを共重合させて得られる環状オレフィン系ランダム共重合体は、透明性に優れ、しかも耐熱性、耐熱老化性、耐薬品性、耐溶剤性、剛性などのバランスのとれた合成樹脂であり、かつ、光学メモリディスクや光学ファイバ、プラスチックレンズなどの光学材料の分野において優れた性能を発揮することが知られている。また偏光板用保護フィルムとしても注目されている。
【0003】
偏光板は、通常、ヨウ素もしくは二色性染料をポリビニルアルコールに配向吸着させた偏光膜の両側にセルローストリアセテートを主成分とする保護フィルムを貼り合わせることにより製造されている。セルローストリアセテートは、強靭性、難燃性、光学的等方性が高い(レターデーション値が低い)などの特徴により上述の偏光板用保護フィルムとして広く使用されている。しかし、セルローストリアセテートフィルムは水分の吸収や透過が多く、そのため光学補償性能が変化したり、偏光子を劣化しやすいという問題点があった。また、TVに代表される液晶表示装置では、大画面化が急速に進んでいるため、この問題はより大きくなると予測されている。
【0004】
環状ポリオレフィンフィルムは、セルローストリアセテートフィルムの吸湿性や透湿性を改良できるフィルムとして注目され、熱溶融製膜及び溶液製膜による偏光板保護フィルムの開発が行われている。また、環状ポリオレフィンフィルムは、高い光学特性の発現性を有しており、さらには温湿度変化による光学特性の変化が少なく位相差膜(位相差フィルムとも言う。)としての開発も行われている。
【0005】
しかしながら、環状ポリオレフィンフィルムには、固くて脆い性質があり、機械的強度が低く、ハンドリング、加工性が悪いという問題点があった。
これを解決するため、ポリプロピレンや芳香族ビニル・共役ジエン共重合体をブレンドもしくはグラフト共重合体とすることが提案されているが、いずれも相分離が生成し透明性が不十分である(例えば、特許文献1および2、非特許文献1参照)。
また、組成の異なる環状オレフィン樹脂同士のブレンドやジエン成分を共重合した環状オレフィン樹脂が提案されているが、脆さの改善と透明性の両立は不十分であった(例えば、特許文献3〜5参照)。
【特許文献1】特開平5−51512号公報
【特許文献2】特開2007−154074号公報
【特許文献3】特開2007−9010号公報
【特許文献4】特開2003−321591号公報
【特許文献5】特開平6−228237号公報
【非特許文献1】J. Appl. Polym. Sci., 2004, 91(1), P.253-259
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、透明性を低下させずに脆さを改善した環状オレフィン系樹脂組成物およびこれを用いたフィルム、位相差膜の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、炭素原子数2〜30の直鎖状または分岐状のα−オレフィンに由来する構成単位と、特定構造の環状オレフィンに由来する構成単位とからなるα-オレフィン・環状オレフィン共重合体を用いた樹脂組成物であって、グラフト鎖と主鎖におけるα-オレフィン/環状オレフィンの組成比の異なるグラフト共重合体を含む樹脂組成物を用いることにより、透明性を低下させずに脆さを改善できることを見出した。すなわち下記構成により上記課題を達成した。
【0008】
1. 少なくとも1種の炭素原子数2〜30の直鎖状または分岐状のα−オレフィンに由来する構成単位と、少なくとも1種の下記一般式(I)で表される環状オレフィンに由来する構成単位とを含むα-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体を含む環状オレフィン系樹脂組成物であって、該α-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体が、主鎖における環状オレフィンに由来する構成単位の含有率とグラフト鎖における環状オレフィンに由来する構成単位の含有率とが異なる環状オレフィン系樹脂組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(I)中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、pは0または1であり、R〜R20は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、R17〜R20は、これらのうち任意の2つが互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ該単環または多環が二重結合を有していてもよい。またR17とR18とで、またはR19とR20とでアルキリデン基を形成していてもよい。)
2. 前記α-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体が下記(a)、(b)のうち少なくともいずれかである上記1に記載の環状オレフィン系樹脂組成物。
(a)全グラフト鎖の質量に対して環状オレフィンに由来する構成単位の含有率が70質量%以上95質量%以下であり、グラフト鎖を除いた主鎖の質量に対して環状オレフィンに由来する構成単位の含有率が2質量%以上70質量%未満であるα-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体。
(b)全グラフト鎖の質量に対して環状オレフィンに由来する構成単位の含有率が2質量%以上70質量%未満であり、グラフト鎖を除いた主鎖の質量に対して環状オレフィンに由来する構成単位の含有率が70質量%以上95質量%以下であるα-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体。
3. 前記α-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体(a)または(b)が、グラフト鎖および主鎖の割合がそれぞれ以下の割合である上記2に記載の環状オレフィン系樹脂組成物。
(a’)グラフト鎖を50質量%以上96質量%以下含み、主鎖を4質量%以上50質量%以下含む
(b’)主鎖を50質量%以上96質量%以下含み、グラフト鎖を4質量%以上50質量%以下含む
4. 前記炭素原子数2〜30の直鎖状または分岐状のα−オレフィンが、エチレンおよびプロピレンから選ばれる少なくとも1種であり、前記一般式(I)で表される環状オレフィンがノルボルネンである上記1〜3のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂組成物。
5. 上記1〜4のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂組成物からなる環状オレフィン系樹脂フィルム。
6. 熱変形温度が90〜250℃である上記5に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
7. 上記5または6に記載の環状オレフィン系樹脂フィルムからなる位相差膜。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、透明性を低下させずに脆さを改善した環状オレフィン系樹脂組成物、これを用いたフィルム、位相差膜を提供できる。また、本発明によれば、該フィルムの耐熱性も向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明における環状オレフィン系樹脂組成物について具体的に説明する。
【0013】
本発明の環状オレフィン系樹脂組成物は、(A)炭素原子数2〜30の直鎖状または分岐状のα−オレフィンに由来する構成単位と、(B)一般式(I)で表される環状オレフィンに由来する構成単位とを含むα-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体を含有し、該α-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体が、主鎖における環状オレフィンに由来する構成単位の含有率とグラフト鎖における環状オレフィンに由来する構成単位の含有率とが異なる樹脂組成物である。
まず、(A)炭素原子数2〜30の直鎖状または分岐状のα−オレフィンに由来する構成単位および(B)一般式(I)で表される環状オレフィンに由来する構成単位について説明する。
【0014】
(A)α−オレフィンに由来する構成単位
本発明に係るα−オレフィン・環状オレフィン共重合体を形成するα−オレフィンに由来する構成単位(A)は、下記のような炭素原子数が2〜30の直鎖状または分岐状のα−オレフィンに由来する構成単位である。
炭素原子数が2〜30の直鎖状または分岐状のα−オレフィンとして具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。この中でも炭素数8以下のα−オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。また、エチレンとプロピレン、プロピレンと1−ヘキセンなどα−オレフィンに由来する構成単位を、2種以上含むことにより透明性と脆さの改良が両立できる場合があり、特に好ましい。
【0015】
(B)環状オレフィンに由来する構成単位
本発明に係るα−オレフィン・環状オレフィン共重合体を形成する環状オレフィンに由来する構成単位(B)は、下記一般式(I)で表される環状オレフィンに由来する構成単位である。
以下、一般式(I)で表される環状オレフィンについて説明する。
【0016】
【化2】

【0017】
一般式(I)中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、pは0または1である。なおpが1の場合には、pを用いて表される環は6員環となり、pが0の場合には、この環は5員環となる。
〜R20は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。
ここで、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
【0018】
また炭化水素基としては、通常、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または芳香族炭化水素基が挙げられる。
より具体的には、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、アミル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシルなどが挙げられる。
ハロゲン化アルキル基としては、上記炭素原子数1〜20のアルキル基に1個または複数のハロゲン原子が置換した基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロヘキシルなどが挙げられ、芳香族炭化水素基としてはフェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0019】
さらに上記一般式(I)において、R17とR18とが、R19とR20とが、R17とR19とが、R18とR20とが、R17とR20とが、またはR18とR19とがそれぞれ結合して(互いに共同して)、単環または多環の基を形成していてもよく、しかもこのようにして形成された単環または多環が二重結合を有していてもよい。ここで形成される単環または多環としては、具体的に以下のようなものが挙げられる。
【0020】
【化3】

【0021】
なお上記例示において、1または2の番号を付した炭素原子は、上記一般式(I)においてそれぞれR17(R18)またはR19(R20)が結合している炭素原子を表す。
【0022】
また、R17とR18とで、またはR19とR20とでアルキリデン基を形成していてもよい。このようなアルキリデン基は、通常は炭素原子数2〜20のアルキリデン基であり、このようなアルキリデン基の具体的な例としては、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデンなどが挙げられる。
【0023】
以下に、上記一般式(I)で表される環状オレフィンの具体的な例を示す。
【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
【化7】

【0028】
【化8】

【0029】
【化9】

【0030】
【化10】

【0031】
【化11】

【0032】
【化12】

【0033】
【化13】

【0034】
【化14】

【0035】
【化15】

【0036】
【化16】

【0037】
【化17】

【0038】
【化18】

【0039】
環状オレフィンは、一般式(I)で表される上記具体例に示した環状オレフィンのうち、ノルボルネン(ビシクロ[2,2,1]へプト-2-エン)であることがより好ましい。
【0040】
上記のような一般式(I)で表される環状オレフィンは、シクロペンタジエンと対応する構造を有するオレフィン類とをディールス・アルダー反応させる公知の方法によって製造することができる。
【0041】
本発明では、α-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体は下記(a)、(b)のうち少なくともいずれかであることが好ましい。
(a)全グラフト鎖の質量に対して環状オレフィンに由来する構成単位の含有率が70質量%以上95質量%以下であり、グラフト鎖を除いた主鎖の質量に対して環状オレフィンに由来する構成単位の含有率が2質量%以上70質量%未満であるα-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体。
(b)全グラフト鎖の質量に対して環状オレフィンに由来する構成単位の含有率が2質量%以上70質量%未満であり、グラフト鎖を除いた主鎖の質量に対して環状オレフィンに由来する構成単位の含有率が70質量%以上95質量%以下であるα-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体。
【0042】
前記グラフト共重合体(a)のグラフト鎖中、およびグラフト共重合体(b)のグラフト鎖を除いた主鎖中に含まれる環状オレフィンに由来する構成単位の含有率のより好ましい範囲は、それぞれ、70質量%以上90質量%以下であり、特に好ましくは70質量%以上80質量%以下である。
【0043】
前記グラフト共重合体(a)のグラフト鎖を除いた主鎖中、およびグラフト共重合体(b)のグラフト鎖中に含まれる環状オレフィンに由来する構成単位の含有率のより好ましい範囲は5質量%以上60質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以上50質量%以下である。
【0044】
また、グラフト共重合体(a)は、共重合体中に、グラフト鎖を50質量%以上96質量%以下含み、主鎖を4質量%以上50質量%以下含むことが好ましく、グラフト共重合体(b)は、共重合体中に、主鎖を50質量%以上96質量%以下含み、グラフト鎖を4質量%以上50質量%以下含むことが好ましい。
【0045】
本発明のグラフト共重合体は、グラフト鎖とグラフト鎖を除いた主鎖に含まれる環状オレフィンに由来する構成単位の割合が異なり、これによって透明性と脆さの改良を両立することができる。更にグラフト鎖と主鎖を含む割合を上記の範囲にすることによって、光学材料として求められる耐熱性も両立することができる。
本発明の樹脂組成物には、本発明のグラフト共重合体以外の環状オレフィン樹脂を含むことができる。
以下に、本発明のグラフト共重合体の合成方法と好ましい態様について述べる。
【0046】
〔グラフト共重合体の合成方法〕
本発明のグラフト共重合体は、公知のポリオレフィンのグラフト共重合体を得る方法を応用して合成すること事ができる。例えば、主鎖形成後にグラフト鎖を伸長させる方法や微量のポリエンを用いる方法(例えば、特開2004−143437号公報参照)など本発明のグラフト共重合体が得られれば、特に制限はないが、本発明のグラフト共重合体(a)、(b)は、末端にビニル基を導入したマクロモノマーを合成した後、主鎖の共重合を行う方法が、環状オレフィンに由来する構成単位の含率を制御しやすく好ましい。
末端にビニル基を導入したマクロモノマーを合成する方法としては、(1)連鎖移動しやすい重合触媒を用いる方法(例えば、Macromolecules 2000, 33, 5770-5776、Macromolecules 1999, 32, 5723-5727など参照)や(2)ビニル基を有する連鎖移動剤を用いる方法(例えば、Macromolecules 1995,28, 437-443など)が挙げられ、この中でも特に(2)の方法がより好ましく適用できる。
また、マクロモノマーは、合成後、一旦マクロモノマーを取り出して、その後、主鎖を形成する共重合を行ってもよく、取り出さずに段階的に行う事もできる。
主鎖を形成する共重合反応は、公知のα−オレフィンと環状オレフィン共重合反応を適用することが可能であり(例えば、寺野稔編、新世代高機能ポリマーの創製と最新触媒技術、2001、技術教育出版)、重合触媒として遷移金属化合物と有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物あるいは遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物とからなるものが利用できる。特に好ましい遷移金属化合物として、Polyhedron 24 (2005) 1269-1273、Macromolecules 2003, 36, 882-890、Macromolecules 2005, 38, 1071-1074、などに記載の架橋型メタロセン触媒、幾何拘束型触媒などを挙げる事ができる。
【0047】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた本発明のグラフト共重合体の重量平均分子量(Mw)は、材料強度や成形性の観点から合成方法の選択により任意に調整することができるが、通常10,000≦Mw≦1,000,000であり、好ましくは、30,000≦Mw≦500,000、より好ましくは50,000≦Mw≦300,000である。重量平均分子量(Mw)が上記範囲内にあると、成形体とした場合に強度に優れ、成形加工性に優れる傾向がある。
本発明ではα−オレフィン・環状オレフィン共重合体の分子量、分子量分布については、以下のような条件でGPC測定を行うことにより求めた。
装置:HLC-8221GPC/HT (東ソー)
カラム:TSKgel GMHHR−H(20)HT (7.8mmI.D.×300mm)2本
検出器:HLC-8221GPC/HT 内蔵RI検出器
測定溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定流量:1mL/min
測定温度:145℃
試料注入量:200μL
分子量マーカー:東ソー社製標準ポリスチレン(0.2g/L)
【0048】
本発明のグラフト共重合体のガラス転移温度(Tg)は、90℃以上、250℃以下が好ましい。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、本発明のグラフト共重合体以外の環状オレフィン共重合体を含んでいてもよく、また必要に応じ、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃化剤など、種々公知の添加剤を含んでもよい。
本発明の樹脂組成物中、本発明のグラフト共重合体以外の環状オレフィン共重合体を含む場合の含有量は特に制限はないが、本発明のグラフト共重合体に対する質量比で1/50倍から50倍の範囲が好ましい。
【0050】
〔環状オレフィン系樹脂フィルムの熱変形温度〕
本発明の樹脂組成物を用いて作製した環状オレフィン系樹脂フィルムは、強度、成形加工性の面から、熱変形温度(HDT)が60〜300℃であることが好ましく、90〜250℃であることがより好ましい。
【0051】
〔環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法〕
本発明の環状オレフィン系樹脂フィルム(シートも含む)は、例えば溶融押し出し法にて製造(製膜)することが出来る。溶融押し出し法は生産性、経済性の面、また溶媒を使用しないことから環境面からも好ましい。溶融押し出し法では、Tダイを用いて樹脂を押し出し冷却ロールに送る方法が好ましく用いられる。押し出し時の樹脂温度としては、該樹脂の流動性、熱安定性等を勘案して決められるが、本発明の環状オレフィン系樹脂では熱変形温度+10℃から350℃の範囲で行うことが好ましい。熱変形温度+10℃より低い温度では樹脂の溶融粘度が高くなりすぎ、また350℃を超えると樹脂の分解劣化、ゲル化によりフィルムの透明性、均質性が損なわれる懸念が生じる。より好ましくは熱変形温度+20℃から300℃の範囲である。溶融押し出し時の樹脂の酸化劣化を抑制するため、酸化防止剤を添加しておくことが好ましい。
【0052】
本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムは、湿度変化による寸法変化が少なく、優れた機械的強度を有するため、液晶表示素子などの保護膜として好適に使用できる。
また、本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムは、延伸配向などにより、光学的異方性を付与することができる。例えば、位相差フィルムとして用いる場合には、上記の方法で得られた未延伸のフィルムを延伸配向させて所望のフィルムとすることが出来る。延伸方法は特に限定されずロール間で延伸する縦一軸延伸、テンターを用いる横一軸延伸、あるいはそれらを組み合わせた同時ニ軸延伸、逐次ニ軸延伸など公知の方法を用いることが出来る。また連続で行うことが生産性の点で好ましいが、バッチ式で行ってもよく特に制限はない。延伸温度は環状オレフィン系樹脂の熱変形温度(HDT)に対して、(HDT−20℃)〜(HDT+30℃)の範囲内であり、好ましくは(HDT−10℃)〜(HDT+20℃)の範囲内である。延伸倍率は目的とする位相差値により決められるが、縦、横それぞれ、1.05〜4倍、より好ましくは1.1〜3倍である。
【0053】
〔環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの光学特性〕
本発明の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの好ましい光学特性は、フィルムの用途により異なる。偏光板保護膜用途の場合は、光学的に等方性であることが好ましく。面内レターデーション(Re)は5nm以下が好ましく、3nm以下が更に好ましい。厚さ方向レターデーション(Rth)も50nm以下が好ましく、35nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましい。
環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを光学補償フィルム(位相差フィルム)として使用する場合は、位相差フィルムの種類によってReやRthの範囲は異なり、多様なニーズがあるが、0nm≦Re≦100nm、40nm≦Rth≦400nmであることが好ましい。TNモードなら0nm≦Re≦20nm、40nm≦Rth≦80nm、VAモードなら20nm≦Re≦80nm、80nm≦Rth≦400nmがより好ましく、特にVAモードで好ましい範囲は、30nm≦Re≦75nm、120nm≦Rth≦250nmであり、一枚の位相差膜で補償する場合は、50nm≦Re≦75nm、180nm≦Rth≦250nm、2枚の位相差膜で補償する場合は、30nm≦Re≦50nm、80nm≦Rth≦140nmであることがVAモードの補償膜の場合、黒表示時のカラーシフト、コントラストの視野角依存性の点でより好ましい態様である。
本発明の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは使用するポリマー構造、添加剤の種類及び添加量、延伸倍率などの工程条件を適宜調節することで所望の光学特性を実現することができる。
【0054】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)は、KOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と、平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値とを基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値は、その符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)及び式(B)よりRthを算出することもできる。
【0055】
【数1】

【0056】
ただし、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは厚みを表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・式(B)
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と、平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出される。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。
また、平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRは、nx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0057】
〔偏光板〕
偏光板は、通常、偏光子およびその両側に配置された二枚の透明保護膜を有する。両方または一方の透明保護膜として、本発明の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを用いることができる。他方の透明保護膜は、通常のセルロースアセテートフィルム等を用いてもよい。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを偏光板透明保護膜として用いる場合、フィルムは後述の如き表面処理を行い、しかる後にフィルム処理面と偏光子を接着剤を用いて貼り合わせることが好ましい。使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス、ゼラチン等が挙げられる。偏光板は偏光子及びその両面を保護する透明保護膜で構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
【0058】
本発明の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの偏光子への貼り合せ方は、偏光子の透過軸と本発明の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの遅相軸を一致させるように貼り合せることが好ましい。なお、偏光板クロスニコル下で作製した偏光板の評価を行ったところ、本発明の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸(透過軸と直交する軸)との直交精度が1°より大きいと、偏光板クロスニコル下での偏光度性能が低下して光抜けが生じることがわかった。この場合、液晶セルと組み合わせた場合に、十分な黒レベルやコントラストが得られないことになる。したがって、本発明の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの主屈折率nxの方向と偏光板の透過軸の方向とは、そのずれが1°以内、好ましくは0.5°以内であることが好ましい。
【0059】
〔環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの表面処理〕
本発明では、偏光子と透明保護膜との接着性を改良するため、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの表面を表面処理することが好ましい。表面処理については、接着性を改善できる限りいかなる方法を利用してもよいが、好ましい表面処理としては、例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理及び火炎処理が挙げられる。ここでいうグロー放電処理とは、低圧ガス下でおこる、いわゆる低温プラズマのことである。本発明では大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。その他、グロー放電処理の詳細については、米国特許第3462335号、米国特許第3761299号、米国特許第4072769号及び英国特許第891469号明細書に記載されている。放電雰囲気ガス組成を放電開始後にポリエステル支持体自身が放電処理を受けることにより容器内に発生する気体種のみにした特表昭59−556430号公報に記載された方法も用いられる。また真空グロー放電処理する際に、フィルムの表面温度を80℃以上180℃以下にして放電処理を行う特公昭60−16614号公報に記載された方法も適用できる。
【0060】
グロー放電処理時の真空度は0.5Pa〜3000Paが好ましく、より好ましくは2Pa〜300Paである。また、電圧は500V〜5000Vの間が好ましく、より好ましくは500V〜3000Vである。使用する放電周波数は、直流から数千MHz、より好ましくは50Hz〜20MHz、さらに好ましくは1kHz〜1MHzである。放電処理強度は、0.01kV・A・分/m2〜5kV・A・分/m2が好ましく、より好ましくは0.15kV・A・分/m2〜1kV・A・分/m2である。
【0061】
本発明では、表面処理として紫外線照射法を行うことも好ましい。例えば、特公昭43−2603号、特公昭43−2604号、特公昭45−3828号の各公報に記載の処理方法によって行うことができる。水銀灯は石英管からなる高圧水銀灯で、紫外線の波長が180〜380nmの間であるものが好ましい。紫外線照射の方法については、光源は保護フィルムの表面温度が150℃前後にまで上昇することが支持体の性能上問題なければ、主波長が365nmの高圧水銀灯ランプを使用することができる。低温処理が必要とされる場合には主波長が254nmの低圧水銀灯が好ましい。またオゾンレスタイプの高圧水銀ランプ、及び低圧水銀ランプを使用する事も可能である。処理光量に関しては処理光量が多いほど熱可塑性飽和脂環式構造含有重合体樹脂フィルムと偏光子との接着力は向上するが、光量の増加に伴い該フィルムが着色し、また脆くなるという問題が発生する。従って、365nmを主波長とする高圧水銀ランプで、照射光量20mJ/cm2〜10000mJ/cm2がよく、より好ましくは50mJ/cm2〜2000mJ/cm2である。254nmを主波長とする低圧水銀ランプの場合には、照射光量100mJ/cm2〜10000mJ/cm2がよく、より好ましくは300mJ/cm2〜1500mJ/cm2である。
【0062】
さらに、本発明では表面処理としてコロナ放電処理を行うことも好ましい。例えば、特公昭39−12838号、特開昭47−19824号、特開昭48−28067号、特開昭52−42114号の各公報に記載等の処理方法によって行うことができる。コロナ放電処理装置は、Pillar社製ソリッドステートコロナ処理機、LEPEL型表面処理機、VETAPHON型処理機等を用いることができる。処理は空気中での常圧にて行うことができる。処理時の放電周波数は、5kV〜40kV、より好ましくは10kV〜30kVであり、波形は交流正弦波が好ましい。電極と誘電体ロールのギャップ透明ランスは0.1mm〜10mm、より好ましくは1.0mm〜2.0mmである。放電は、放電帯域に設けられた誘電サポートローラーの上方で処理し、処理量は、0.34kV・A・分/m2〜0.4kV・A・分/m2、より好ましくは0.344kV・A・分/m2〜0.38kV・A・分/m2である。
【0063】
本発明では、表面処理として火炎処理を行うことも好ましい。用いるガスは天然ガス、液化プロパンガス、都市ガスのいずれでもかまわないが、空気との混合比が重要である。なぜなら、火炎処理による表面処理の効果は活性な酸素を含むプラズマによってもたらされると考えられるからであり、火炎の重要な性質であるプラズマの活性(温度)と酸素がどれだけ多くあるかがポイントである。このポイントの支配因子はガス/酸素比であり、過不足なく反応する場合にエネルギー密度が最も高くなりプラズマの活性が高くなる。具体的には、天然ガス/空気の好ましい混合比は容積比で1/6〜1/10、好ましくは1/7〜1/9である。また、液化プロパンガス/空気の場合は1/14〜1/22、好ましくは1/16〜1/19、都市ガス/空気の場合は1/2〜1/8、好ましくは1/3〜1/7である。また、火炎処理量は1kcal/m2〜50kcal/m2、より好ましくは3kcal/m2〜20kcal/m2の範囲で行うとよい。またバーナーの内炎の先端とフィルムの距離は3cm〜7cm、より好ましくは4cm〜6cmにするとよい。バーナーのノズル形状は、フリンバーナー社(米国)のリボン式、ワイズ社(米国)の多穴式、エアロジェン(英国)のリボン式、春日電機(日本)の千鳥型多穴式、小池酸素(日本)の千鳥型多穴式が好ましい。火炎処理にフィルムを支えるバックアップロールは中空型ロールであり、冷却水を通して水冷し、常に20℃〜50℃の一定温度で処理するのがよい。
【0064】
表面処理の程度については、表面処理の種類、環状ポリオレフィン系樹脂の種類によって好ましい範囲も異なるが、表面処理の結果、表面処理を施された透明保護膜の表面の純水との接触角が、50°未満となるのが好ましい。前記接触角は、25°以上45°未満であるのがより好ましい。透明保護膜表面の純水との接触角が上記範囲にあると、透明保護膜と偏光子との接着強度が良好となる。
【0065】
〔接着剤〕
ポリビニルアルコールからなる偏光子と、表面処理された環状ポリオレフィン系樹脂フィルムからなる透明保護膜とを貼合する際には、水溶性ポリマーを含有する接着剤を用いることが好ましい。前記接着剤に好ましく使用される水溶性ポリマーとしては、N−ビニルピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、ビニルアルコール、メチルビニルエーテル、酢酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ビニルイミダゾールなどエチレン性不飽和モノマーを構成要素として有する単独重合体もしくは共重合体、またポリオキシエチレン、ボリオキシプロピレン、ポリ−2−メチルオキサゾリン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースゼラチン、などが挙げられる。本発明では、この中でもポリビニルアルコール(PVA)及びゼラチンが好ましい。
【0066】
接着剤にPVAを用いる場合の好ましいPVA特性は、前述の偏光子に用いるPVAの好ましい特性と同様である。本発明では、さらに架橋剤を併用することが好ましい。PVAを接着剤に使用する場合に好ましく併用される架橋剤は、ホウ酸、多価アルデヒド、多官能イソシナネート化合物、多官能エポキシ化合物等が挙げられるが、本発明ではホウ酸が特に好ましい。接着剤にゼラチンを用いる場合、いわゆる石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、酵素処理ゼラチン、ゼラチン誘導体及び変性ゼラチン等を用いることができる。これらのゼラチンのうち、好ましく用いられるのは石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチンである。接着剤にゼラチンを用いる場合に、好ましく併用される架橋剤としては、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン及びそのナトリウム塩など)及び活性ビニル化合物(1,3−ビスビニルスルホニル−2−プロパノール、1,2−ビスビニルスルホニルアセトアミド)エタン、ビス(ビニルスルホニルメチル)エーテルあるいはビニルスルホニル基を側鎖に有するビニル系ポリマーなど)、N−カルバモイルピリジニウム塩類((1−モルホリノカルボニル−3−ピリジニオ)メタンスルホナートなど)やハロアミジニウム塩類(1−(1−クロロ−1−ピリジノメチレン)ピロリジニウム2−ナフタレンスルホナートなど)等が挙げられる。本発明では、活性ハロゲン化合物及び活性ビニル化合物が特に好ましく使用される。
【0067】
上述の架橋剤を併用する場合の架橋剤の好ましい添加量は、接着剤中の水溶性ポリマーに対し、0.1質量%以上、40質量%未満であり、さらに好ましくは、0.5質量%以上、30質量%未満である。透明保護膜もしくは偏光子の少なくとも一方の表面に接着剤を塗布して、接着剤層を形成して、貼合するのが好ましく、透明保護膜の表面処理面に接着剤を塗布して、接着剤層を形成し、偏光子の表面に貼合するのが好ましい。接着剤層厚みは、乾燥後に0.01μm〜5μmが好ましく、0.05μm〜3μmが特に好ましい。
【0068】
〔反射防止層〕
偏光板の、液晶セルと反対側に配置される透明保護膜には反射防止層などの機能性膜を設けることが好ましい。本発明では、本発明の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムに、該機能性膜を形成し、光学フィルムとし、これを偏光板に用いることもできる。
特に、本発明では透明保護膜上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層した反射防止層または透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に用いられる。以下にそれらの好ましい例を記載する。反射防止層は、本発明の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムに設けてもよいし、本発明の環状ポリオレフィン系樹脂フィルム以外の透明保護膜に設けてもよい。
【0069】
透明保護膜上に光散乱層と低屈折率層を設けた反射防止層の好ましい例について述べる。光散乱層にはマット粒子が分散しているのが好ましく、光散乱層のマット粒子以外の部分の素材の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層の屈折率は1.35〜1.49の範囲にあることが好ましい。光散乱層は、防眩性とハードコート性を兼ね備えていてもよく、1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。
【0070】
反射防止層は、その表面凹凸形状として、中心線平均粗さRaが0.08〜0.40μm、10点平均粗さRzがRaの10倍以下、平均山谷距離Smが1〜100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差が0.5μm以下、中心線を基準とした平均山谷距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0〜5度の面が10%以上となるように設計することで、十分な防眩性と目視での均一なマット感が達成され、好ましい。
また、C光源下での反射光の色味がa*値−2〜2、b*値−3〜3、380nm〜780nmの範囲内での反射率の最小値と最大値の比が0.5〜0.99であることで、反射光の色味がニュートラルとなり、好ましい。またC光源下での透過光のb*値を0〜3とすることで、表示装置に適用した際の白表示の黄色味が低減され、好ましい。
また、面光源上と本発明の反射防止フィルムの間に120μm×40μmの格子を挿入してフィルム上で輝度分布を測定した際の輝度分布の標準偏差が20以下であると、高精細パネルに本発明のフィルムを適用したときのギラツキが低減され、好ましい。
【0071】
反射防止層は、その光学特性として、鏡面反射率2.5%以下、透過率90%以上、60度光沢度70%以下とすることで、外光の反射を抑制でき、視認性が向上するため好ましい。特に鏡面反射率は1%以下がより好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。ヘイズが20%〜50%、内部ヘイズ/全ヘイズ値(比)が0.3〜1、光散乱層までのヘイズ値から低屈折率層を形成後のヘイズ値の低下が15%以内、くし幅0.5mmにおける透過像鮮明度が20%〜50%、垂直透過光/垂直から2度傾斜方向の透過率比が1.5〜5.0とすることで、高精細LCDパネル上でのギラツキ防止、文字等のボケの低減が達成され、好ましい。
【0072】
〔低屈折率層〕
反射防止フィルムの低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.49が好ましく、より好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。さらに、低屈折率層は下記数式を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
(mλ/4)×0.7<n1d1<(mλ/4)×1.3
式中、mは正の奇数であり、n1は低屈折率層の屈折率であり、そして、d1は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500nm〜550nmの範囲の値である。
【0073】
低屈折率層を形成する素材について以下に説明する。
低屈折率層には、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマーを含むことが好ましい。フッ素ポリマーとしては動摩擦係数0.03〜0.20、水に対する接触角90°〜120°、純水の滑落角が70°以下の熱または電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーが好ましい。本発明の光学フィルムを画像表示装置に装着した時、市販の接着テープとの剥離力が低いほどシールやメモを貼り付けた後に剥がれ易くなり好ましく、500gf以下が好ましく、300gf以下がより好ましく、100gf以下が最も好ましい。また、微小硬度計で測定した表面硬度が高いほど、傷がつき難く、0.3GPa以上が好ましく、0.5GPa以上がより好ましい。
【0074】
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーとしてはパーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)の加水分解、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
【0075】
含フッ素モノマーの具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0076】
架橋反応性付与のための構成単位としてはグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
【0077】
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。上記のポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用しても良い。
【0078】
〔光散乱層〕
光散乱層は、一般に表面散乱および/または内部散乱による光拡散性と、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。従って、一般にハードコート性を付与するためのバインダー、光拡散性を付与するためのマット粒子、および必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含んで形成される。光散乱層の膜厚は、ハードコート性を付与する観点並びにカールの発生及び脆性の悪化の抑制の観点から、1μm〜10μmが好ましく、1.2μm〜6μmがより好ましい。
【0079】
光散乱層のバインダーとしては、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。バインダーポリマーを高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むものを選択することもできる。
【0080】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、上記のエチレンオキサイド変性体、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0081】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0082】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。これらの光ラジカル開始剤等は公知のものを使用することができる。
【0083】
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。
【0084】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0085】
光散乱層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きく、平均粒径が1μm〜10μm、好ましくは1.5μm〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子が含有されることが好ましい。
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、架橋アクリルスチレン粒子、シリカ粒子が好ましい。マット粒子の形状は、球状あるいは不定形のいずれも使用できる。
【0086】
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。
【0087】
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほど良い。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布の微粒子を得ることができる。
【0088】
上記マット粒子は、形成された光散乱層のマット粒子量が好ましくは10mg/m2〜1000mg/m2、より好ましくは100mg/m2〜700mg/m2となるように光散乱層に含有される。マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0089】
光散乱層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
また逆に、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた光散乱層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
光散乱層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2およびZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理またはチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。これらの無機フィラーの添加量は、光散乱層の全質量の10%〜90%であることが好ましく、より好ましくは20%〜80%であり、特に好ましくは30%〜75%である。なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0090】
光散乱層のバインダーおよび無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
【0091】
光散乱層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者を光散乱層形成用の塗布組成物中に含有することが好ましい。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明の反射防止フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である。
【0092】
次に透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層について述べる。
基体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計されることが好ましい。高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率。また、透明支持体と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなってもよい(例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等参照)。また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止層のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。また膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0093】
〔高屈折率層および中屈折率層〕
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子及びマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成ることが好ましい。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物等が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とする手法としては、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(特開2001−166104、同2001−310432号公報等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、米国特許第6210858号明細書、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
【0094】
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に、ラジカル重合性及び/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個有する多官能性化合物含有組成物と、加水分解性基を有する有機金属化合物及びその部分縮合体を含有する組成物とから選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の組成物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
【0095】
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。また、厚さは5nm〜10mμであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
【0096】
〔低屈折率層〕
前記構成においては、低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55であることが好ましく、より好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
【0097】
架橋または重合性基を有する含フッ素及び/またはシロキサンのポリマーの架橋または重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
【0098】
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1nm〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されても良い。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。低屈折率層の膜厚は、30nm〜200nmであることが好ましく、50nm〜150nmであることがさらに好ましく、60nm〜120nmであることが最も好ましい。
【0099】
〔その他の層〕
さらに、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
【0100】
〔ハードコート層〕
ハードコート層は、透明保護膜に物理強度を付与するために、通常透明支持体の表面に設ける。特に、前述の反射防止層を設ける場合、ハードコート層は、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。ハードコート層は、光及び/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒径0.2μm〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2μm〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5μm〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0101】
〔帯電防止層〕
帯電防止層を設ける場合には体積抵抗率が10−8Ωcm−3以下の導電性を付与することが好ましい。吸湿性物質や水溶性無機塩、ある種の界面活性剤、カチオンポリマー、アニオンポリマー、コロイダルシリカ等の使用により10−8Ωcm−3の体積抵抗率の付与は可能であるが、温湿度依存性が大きく、低湿では十分な導電性を確保できない問題がある。そのため、導電性層素材としては金属酸化物が好ましい。金属酸化物のうち着色していないものを導電性層素材として用いるとフィルム全体の着色が抑えられ好ましい。着色のない金属酸化物を形成する金属としてZn、Ti、Al、In、Si、Mg、Ba、Mo、W、またはVをあげることができ、これを主成分とした金属酸化物を用いることが好ましい。具体的な例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO3、V25等、あるいはこれらの複合酸化物がよく、特にZnO、TiO2、及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加物、SnO2に対してはSb、Nb、ハロゲン元素等の添加、またTiO2に対してはNb、Ta等の添加が効果的である。更にまた、特公昭59−6235号公報に記載の如く、他の結晶性金属粒子あるいは繊維状物(例えば酸化チタン)に上記の金属酸化物を付着させた素材を使用しても良い。尚、体積抵抗値と表面抵抗値は別の物性値であり単純に比較することはできないが、体積抵抗値で10−8Ωcm−3以下の導電性を確保するためには、該導電層が概ね10−10Ω/□以下の表面抵抗値を有していればよく更に好ましくは10−8Ω/□以下である。導電層の表面抵抗値は帯電防止層を最表層としたときの値として測定されることが必要であり、上記公報に記載の積層フィルムを形成する途中の段階で測定することができる。
【0102】
〔液晶表示装置〕
本発明の環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、該フィルムからなる光学フィルム、該フィルムを用いた偏光板は、様々な表示モードの液晶セル、液晶表示装置に用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。このうち、OCBモードまたはVAモードに好ましく用いることができる。
【0103】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置である。OCBモードの液晶セルは、米国特許第4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0104】
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
VAモードの液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなる。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。好ましい液晶表示装置の一つの態様では、本発明の位相差フィルムは、液晶セルと一方の偏光板との間に、一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置する。
また前述のように、偏光板の透明保護膜として、本発明の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムからなる光学フィルムが用いられ得る。一方の偏光板の(好ましくは液晶セルと偏光子との間の)透明保護膜のみに上記の光学フィルムを用いてもよいし、あるいは双方の偏光板の(好ましくは液晶セルと偏光子との間の)二枚の透明保護膜に、上記の光学フィルムを用いてもよい。一方の偏光板のみに上記光学フィルムを使用する場合は、液晶セルのバックライト側偏光板の液晶セル側透明保護膜として使用するのが特に好ましい。液晶セルへの張り合わせは、本発明の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは液晶セル側にすることが好ましい。透明保護膜の他方は通常のセルロースアシレートフィルムでもよい。たとえば、厚さは40μm〜80μmが好ましく、市販のKC4UX2M(コニカオプト(株)製40μm)、KC5UX(コニカオプト(株)製60μm)、TD80(富士フィルム製80μm)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
〔光学補償フィルム〕
OCBモードの液晶表示装置やTN液晶表示装置では、視野角拡大のために光学補償フィルムが使用される。OCBセル用光学補償フィルムは光学一軸あるいは二軸性フィルムの上にディスコティック液晶をハイブリッド配向させて固定した光学異方性層を設けたものが用いられる。TNセル用光学補償フィルムは光学等方性、光学一軸あるいは二軸性フィルムの上にディスコティック液晶をハイブリッド配向させて固定した光学異方性層を設けたものが用いられる。本発明の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは上記OCBセル用光学補償フィルムやTNセル用光学補償フィルムのベースフィルムとしても有用である。
光学補償フィルムの好適なレターデーション値については、前述の通りである。
【実施例】
【0106】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0107】
実施例、比較例で用いた原料は以下の通りである。
トルエン(溶媒)、ノルボルネンはすべて蒸留精製を行い充分に乾燥したものを用いた。メタロセン触媒について、[η:η−tert−ブチル(ジメチルフルオレニルシリル)アミド]ジメチルチタンは文献[J.Organomet.Chem.193,691(2006)]に従い合成した。モディファイドメチルアルモキサン(MMAO−3A)は東ソー・ファインケム(株)よりn−ヘキサン溶液を購入し、そのまま使用した。
【0108】
[合成例1:エチレン/ノルボルネン共重合体(EN−1)の合成]
重合装置として、撹拌翼を備え、真空ライン、エチレンライン、アルゴンラインがつながった容量1Lのフラスコを使用し、メタロセンに、[η:η−tert−ブチル(ジメチルフルオレニルシリル)アミド]ジメチルチタンを用い、以下のようにしてエチレンとノルボルネンとの共重合反応を行った。
【0109】
フラスコ内をアルゴンガスで置換した後、容器内にトルエン410mL、ノルボルネン29gを仕込んだ後、MMAO−3A、33mLを添加して、水冷下30秒間脱気し、エチレン1気圧でフローし、5分間攪拌した。これとは別に、シュレンク中にて162mgの[η:η−tert−ブチル(ジメチルフルオレニルシリル)アミド]ジメチルチタンをアルゴン雰囲気下トルエン20mLに溶解させた。この触媒溶液9.1mLをフラスコに加え、水浴下反応させた。反応開始後、7分間重合した後、微量のメタノールを添加して反応を終了させた。該反応混合物を塩酸で酸性にした大量のメタノール中に放出して沈殿物を析出させ、濾別、洗浄後、乾燥して樹脂粉末35gを得た。かくして得られたエチレン/ノルボルネン共重合体は、その分子量がMwで105000であった。13C−NMR測定ではエチレン成分とノルボルネン成分のモル比は48/52であり、質量比に換算すると22/78であった。
【0110】
[合成例2および3:エチレン/ノルボルネン共重合体(EN−2、EN−3)の合成]
ノルボルネン仕込み量を19.5g、4.5gとすること以外は合成例1と同様にして重合を行い、エチレン/ノルボルネン共重合体EN−2(エチレン/ノルボルネンのモル比65/35、質量比36/64)およびEN−3(エチレン/ノルボルネンのモル比92/8、質量比77/23)を得た。
【0111】
[合成例4:マクロモノマーMEN−1の合成]
重合装置として、撹拌翼を備え、真空ライン、エチレンライン、アルゴンラインがつながった容量1Lのフラスコを使用し、メタロセンに、[η:η−tert−ブチル(ジメチルフルオレニルシリル)アミド]ジメチルチタンを用い、Macromolecules 1995,28, 437記載の方法により合成したビス(7−オクテニル)亜鉛を連鎖移動剤として用いることにより、以下のように末端ビニル基を導入したエチレンとノルボルネンの共重合マクロモノマーを合成した。
【0112】
フラスコ内をアルゴンガスで置換した後、容器内にトルエン410mL、ノルボルネン29gを仕込んだ後、MMAO−3A、10mLとビス(7−オクテニル)亜鉛200mmolを添加して、水冷下30秒間脱気し、エチレン1気圧でフローし、5分間攪拌した。これとは別に、シュレンク中にて162mgの[η:η−tert−ブチル(ジメチルフルオレニルシリル)アミド]ジメチルチタンをアルゴン雰囲気下トルエン20mLに溶解させた。この触媒溶液9.1mLをフラスコに加え、水浴下反応させた。反応開始後、7分間重合した後、微量のメタノールを添加して反応を終了させた。該反応混合物を塩酸で酸性にした大量のメタノール中に放出して沈殿物を析出させ、濾別、洗浄後、乾燥して樹脂粉末32gを得た。かくして得られたエチレン/ノルボルネン共重合マクロモノマーは、その分子量がMwで35000であった。13C−NMR測定ではエチレン成分とノルボルネン成分のモル比は48/52であり、質量比に換算すると22/78であった。また末端ビニル基含有量は0.12mmol/gであった。
【0113】
[合成例5:マクロモノマーMEN−2の合成]
ノルボルネン仕込み量を19.5gとすること以外は合成例4と同様にして重合を行い、エチレン/ノルボルネン共重合マクロモノマーMEN−2(エチレン/ノルボルネンのモル比65/35、質量比36/64、Mw28000、末端ビニル基含有量0.13mmol/g)を得た。
【0114】
[合成例6:マクロモノマーMPN−3の合成]
ノルボルネン仕込み量を4.5gとし、フローするエチレンガスをプロピレンガスとすること以外は合成例4と同様にして重合を行い、プロピレン/ノルボルネン共重合マクロモノマーMPN−3(プロピレン/ノルボルネンのモル比90/10、質量比80/20、Mw22000、末端ビニル基含有量0.17mmol/g)を得た。
【0115】
[合成例7:グラフトポリマーGEN−12の合成]
ノルボルネン仕込み時にマクロモノマーMEN−2を4g加えること以外は合成例1と同様にして重合を行い、グラフトポリマーGEN−12を28g得た。得られたグラフトポリマーはMw112000、グラフトポリマー中のエチレン成分とノルボルネン成分のモル比は55/45であり、質量比に換算すると27/73であった。末端ビニル基は0.01mmol/g未満で検出されなかったことから定量的にマクロモノマーが反応したものと判断した。これらのことよりグラフトポリマーGEN−12は、グラフト鎖含有量が14.3質量%、グラフト鎖の環状オレフィン含有量が64質量%、グラフト鎖を除く主鎖の環状オレフィン含有量が74.5質量%であることが分かった。
【0116】
[合成例8:グラフトポリマーGPN−13の合成]
ノルボルネン仕込み時にマクロモノマーMPN−3を4g加え、エチレンガスをプロピレンガスとすること以外は合成例1と同様にして重合を行い、グラフトポリマーGPN−13を18g得た。得られたグラフトポリマーはMw162000、グラフトポリマー中のプロピレン成分とノルボルネン成分のモル比は50/50であり、質量比に換算すると31/69であった。末端ビニル基は0.01mmol/g未満で検出されなかったことから定量的にマクロモノマーが反応したものと判断した。これらのことよりグラフトポリマーGPN−13は、グラフト鎖含有量が22.2質量%、グラフト鎖の環状オレフィン含有量が20質量%、グラフト鎖を除く主鎖の環状オレフィン含有量が83質量%であることが分かった。
【0117】
[合成例9:グラフトポリマーGEN−31の合成]
ノルボルネン仕込み量を7gとし、同時にマクロモノマーMEN−1を18g加えること以外は合成例1と同様にして重合を行い、グラフトポリマーGEN−31を22g得た。得られたグラフトポリマーはMw182000、グラフトポリマー中のエチレン成分とノルボルネン成分のモル比は55/45であり、質量比に換算すると27/73であった。末端ビニル基は0.01mmol/g未満で検出されなかったことから定量的にマクロモノマーが反応したものと判断した。これらのことよりグラフトポリマーGEN−31は、グラフト鎖含有量が81.8質量%、グラフト鎖の環状オレフィン含有量が78質量%、グラフト鎖を除く主鎖の環状オレフィン含有量が50.5質量%であることが分かった。
【0118】
[合成例10:ジエン共重合ポリマーDEN−1の合成]
特開平6−228237号公報の実施例1に従い、テトラシクロドデセン/エチレン/1,5−ヘキサジエン共重合体を合成した。
【0119】
[樹脂組成物の調製]
合成例で合成した共重合体を表1に示す質量比で計量し、250℃に設定した少量混練機(Haake社製、商品名MiniLab)を用いて10分間混練し、ヌードル状で取り出したあとニッパでカットし、ペレット状の樹脂組成物を得た。
【0120】
[フィルムの作製]
上記で作成したペレット状の樹脂組成物を180℃(入口温度)から230℃(出口温度)に調整した2軸溶融押し出し機を用いて、ハンガーダイから溶融押し出しし、これを120℃に設定したキャストロール上に押し出し剥ぎ取ることでフィルムを作製した。なお、熱変形温度を以下の方法で測定したところ、いずれのフィルムも100℃以上の熱変形温度を有していた。
<熱変形温度の測定方法>
フィルムサンプル(0.5cm×2.0cm片)を作製し、引張荷重100mNの条件下、TMA(リガク(株)製、TMA8310)の引張荷重法にて測定した。
[透明性の評価]
上記で得られたフィルムをスガ試験機製ヘイズメーターでヘイズの測定を行った。結果を表1に示す。
[脆さの評価]
上記で得られたフィルムをトムソン打抜き機で打抜き、裁断部を50倍ルーペで観察し、以下の判定を行い、脆さの評価とした。結果を表1に示す。
○:裁断部は良好である
△:裁断部に微小なクラックが認められる。
×:裁断部に微小なクラックが多数認められ、切りくずも観察される。
【0121】
【表1】

【0122】
表1より本発明のフィルムは透明性と脆さがともに改善されていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の炭素原子数2〜30の直鎖状または分岐状のα−オレフィンに由来する構成単位と、少なくとも1種の下記一般式(I)で表される環状オレフィンに由来する構成単位とを含むα-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体を含む環状オレフィン系樹脂組成物であって、該α-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体が、主鎖における環状オレフィンに由来する構成単位の含有率とグラフト鎖における環状オレフィンに由来する構成単位の含有率とが異なる環状オレフィン系樹脂組成物。
【化1】

(一般式(I)中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、pは0または1であり、R〜R20は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、R17〜R20は、これらのうち任意の2つが互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ該単環または多環が二重結合を有していてもよい。またR17とR18とで、またはR19とR20とでアルキリデン基を形成していてもよい。)
【請求項2】
前記α-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体が下記(a)、(b)のうち少なくともいずれかである請求項1に記載の環状オレフィン系樹脂組成物。
(a)全グラフト鎖の質量に対して環状オレフィンに由来する構成単位の含有率が70質量%以上95質量%以下であり、グラフト鎖を除いた主鎖の質量に対して環状オレフィンに由来する構成単位の含有率が2質量%以上70質量%未満であるα-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体。
(b)全グラフト鎖の質量に対して環状オレフィンに由来する構成単位の含有率が2質量%以上70質量%未満であり、グラフト鎖を除いた主鎖の質量に対して環状オレフィンに由来する構成単位の含有率が70質量%以上95質量%以下であるα-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体。
【請求項3】
前記α-オレフィン・環状オレフィングラフト共重合体(a)または(b)が、グラフト鎖および主鎖の割合がそれぞれ以下の割合である請求項2に記載の環状オレフィン系樹脂組成物。
(a’)グラフト鎖を50質量%以上96質量%以下含み、主鎖を4質量%以上50質量%以下含む
(b’)主鎖を50質量%以上96質量%以下含み、グラフト鎖を4質量%以上50質量%以下含む
【請求項4】
前記炭素原子数2〜30の直鎖状または分岐状のα−オレフィンが、エチレンおよびプロピレンから選ばれる少なくとも1種であり、前記一般式(I)で表される環状オレフィンがノルボルネンである請求項1〜3のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂組成物からなる環状オレフィン系樹脂フィルム。
【請求項6】
熱変形温度が90〜250℃である請求項5に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
【請求項7】
請求項5または6に記載の環状オレフィン系樹脂フィルムからなる位相差膜。

【公開番号】特開2009−235285(P2009−235285A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84977(P2008−84977)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】