説明

環状部材、帯電装置、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

【課題】画像形成装置の部材として使用した際に濃度ムラが抑制される環状部材を提供する。
【解決手段】芯体と、前記芯体上に設けられた、下記(A)に示すポリサルファイドポリマーと下記(B)に示す弾性材料とを含有するゴム組成物の加硫物で構成される弾性層と、を有する環状部材。(A)「−(COCHOC−S)−」及び「−(CHCH(OH)CH−S)−」(但し、xは1以上5以下の整数)から選択される少なくとも1つの構造単位を有し、且つ末端に「−COCHOC−SH」及び「−CHCH(OH)CH−SH」で表されるチオール基の少なくとも一方を有するポリサルファイドポリマー。(B)少なくとも化学構造中に二重結合を有する、上記ポリサルファイドポリマー以外の弾性材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状部材、帯電装置、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感光体への密着性が高く、かつその感光体への汚染を極力抑えることができると共に外的環境変化等により電気抵抗値が変化するのを極力抑えることができ、しかも長期に亙りひびや摩耗の発生が少ない導電ロールとして、特許文献1に記載の導電性ロールが提案されている。
【0003】
特許文献1には、芯部に設けた良導体のシャフトと、このシャフトの外周に設けた導電性で、かつ伸縮性を備えた中間層と、この中間層の外周に設けた中間層よりも比抵抗の高い被覆膜とを有し、感光体若しくは転写用紙に対して接触しながら所定極性の電位を付与する導電ロールにおいて、前記中間層を、固形ゴムとこの固形ゴムに軟化剤として混入する液状ゴムとを含む材料により形成し、かつストラクチャ構造の発達していないカーボンブラックを混入して導電性を付与するとともに、この中間層の外周表面を極性化した導電性ロールが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、外部より電圧を印加した帯電用部材を被帯電体に接触させて、被帯電体を帯電もしくは除電させる接触帯電装置において、少なくとも前記帯電用部材を、表面粗さが5〜25μmRzである導電性弾性層と、前記導電性弾性層を被覆する厚み12.5〜30μmである樹脂層とから構成し、前記樹脂層を被帯電体と接触させる接触帯電装置が開示されている。
【0005】
導電性弾性層の表面粗さや樹脂層の膜厚を、特許文献2に記載の上記範囲とすることによって、導電性弾性層から可塑剤、軟化剤や未反応物質のブリードを防止することが可能となり、さらに、帯電用部材と被帯電体との接触状態を良好にすることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3070556号明細書
【特許文献2】特開平7−110614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特定の構造を有するポリサルファイドポリマーによる弾性材料の加硫物を含んで構成される弾性層を有さない場合に比べて、画像形成装置の部材として使用した際に濃度ムラが抑制される環状部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、
芯体と、
前記芯体上に設けられた、下記(A)に示すポリサルファイドポリマーと下記(B)に示す弾性材料とを含有するゴム組成物の加硫物で構成される弾性層と、
を有する環状部材である。
(A)「−(COCHOC−S)−」及び「−(CHCH(OH)CH−S)−」(但し、xは1以上5以下の整数)から選択される少なくとも1つの構造単位を有し、且つ末端に「−COCHOC−SH」及び「−CHCH(OH)CH−SH」で表されるチオール基の少なくとも一方を有するポリサルファイドポリマー。
(B)少なくとも化学構造中に二重結合を有する、上記ポリサルファイドポリマー以外の弾性材料。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記ゴム組成物は、前記(B)に示す弾性材料100質量部に対して、前記(A)に示すポリサルファイドポリマーを5質量部以上40質量部以下で含有する請求項1に記載の環状部材である。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記(A)に示すポリサルファイドポリマーが、更に−(RO)−〔但し、Rは炭素数2以上4以下のアルキレン基を表し、nは6以上200以下の整数を表す〕で表されるポリエーテル部位を有する請求項1又は請求項2に記載の環状部材である。
【0011】
請求項4に係る発明は、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の環状部材を備えた帯電装置である。
【0012】
請求項5に係る発明は、
像保持体を帯電する請求項4に記載の帯電装置と、
前記像保持体、前記像保持体上の静電潜像をトナーによってトナー像に現像する現像装置、及び前記トナー像を被転写体に転写した後に前記像保持体表面に残留した残留トナーを除去する清掃装置、から選択される少なくとも1種と、を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0013】
請求項6に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体を帯電する請求項4に記載の帯電装置と、
前記帯電装置によって帯電された前記像保持体に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体上の静電潜像をトナーによってトナー像に現像する現像装置と、
前記現像装置によって前記像保持体上に形成されたトナー像を被転写体へ転写する転写装置と、
を有する画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、上記特定の構造を有するポリサルファイドポリマーによる弾性材料の加硫物を含んで構成される弾性層を有さない場合に比べて、画像形成装置の部材として使用した際に濃度ムラが抑制される環状部材が提供される、という効果を奏する。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、前記(B)に示す弾性材料と、前記(A)に示すポリサルファイドポリマーとの質量比率が上記特定の範囲外の場合に比べて、画像形成装置の部材として使用した際に濃度ムラがより抑制される環状部材が提供される、という効果を奏する。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、前記(A)に示すポリサルファイドポリマーが、更に上記特定のポリエーテル部位を有さない場合に比べて、表面硬度が低減された環状部材が提供される、という効果を奏する。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、本発明における環状部材を備えない構成に比べて、濃度ムラの発生を抑制する帯電装置が提供される、という効果を奏する。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、本発明における帯電装置を備えない構成に比べて、濃度ムラの発生が抑制されたプロセスカートリッジが提供される、という効果を奏する。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、本発明における帯電装置を備えない構成に比べて、濃度ムラの発生が抑制された画像形成装置が提供される、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態の画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図2】本実施の形態のプロセスカートリッジの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<環状部材>
本実施の形態の環状部材は、芯体と、芯体上に設けられた弾性層と、を備えている。弾性層は、下記(A)に示すポリサルファイドポリマーと、下記(B)に示す弾性材料とを含有するゴム組成物の加硫物で構成される。
【0022】
(A)「−(COCHOC−S)−」及び「−(CHCH(OH)CH−S)−」(但し、xは1以上5以下の整数)から選択される少なくとも1つの構造単位を有し、且つ末端に「−COCHOC−SH」及び「−CHCH(OH)CH−SH」で表されるチオール基の少なくとも一方を有するポリサルファイドポリマー。
【0023】
(B)少なくとも化学構造中に二重結合を有する、上記ポリサルファイドポリマー以外の弾性材料。
【0024】
なお、上記(A)に示すポリサルファイドポリマーは、自身が有する硫黄原子が、前記(B)に示す弾性材料における二重結合を構成する炭素原子と結合し、加硫物を形成する。
【0025】
本実施形態に係る環状部材は、上記構成に限られず、例えば、弾性層と芯体との間に配設される中間層、弾性層上に設けられる表面層、弾性層と表面層との間に配設される抵抗調整層、表面層の外側(最表面)に配設されるコーティング層(保護層)を設けた構成であってもよい。また、本実施形態に係る環状部材は、芯体と弾性層のみで構成される形態であってもよい。
【0026】
以下、各層構成について詳細に説明する。
【0027】
(芯体)
芯体は、環状部材の電極及び支持部材として機能する円柱状の部材であり、例えば、その材質としては鉄(快削鋼等),銅,真鍮,ステンレス,アルミニウム,ニッケル等の金属が挙げられる。また、芯体としては、外側の面にメッキ処理を施した部材(例えば樹脂や、セラミック部材)、導電剤の分散された部材(例えば樹脂や、セラミック部材)等も挙げられる。芯体は、中空状の部材(筒状部材)であってもよいし、非中空状の部材であってもよい。
【0028】
(弾性層)
弾性層は、下記(A)に示すポリサルファイドポリマーと、下記(B)に示す弾性材料とを含有するゴム組成物の加硫物で構成される。
【0029】
(A)「−(COCHOC−S)−」及び「−(CHCH(OH)CH−S)−」(但し、xは1以上5以下の整数)から選択される少なくとも1つの構造単位を有し、且つ末端に「−COCHOC−SH」及び「−CHCH(OH)CH−SH」で表されるチオール基の少なくとも一方を有するポリサルファイドポリマー。
【0030】
(B)少なくとも化学構造中に二重結合を有する、上記ポリサルファイドポリマー以外の弾性材料。
【0031】
−ポリサルファイドポリマー−
本実施形態におけるポリサルファイドポリマーは、「−(COCHOC−S)−」及び「−(CHCH(OH)CH−S)−」(但し、xは1以上5以下の整数)から選択される少なくとも1つの構造単位を有し、且つ末端に「−COCHOC−SH」及び「−CHCH(OH)CH−SH」で表されるチオール基の少なくとも一方を有する。
【0032】
上記xは、好適には1以上4以下の整数であり、より好適には1以上3以下の整数であり、更に好適には1又は2であり、更に好適には2である。
【0033】
更に、ポリサルファイドポリマーは、(RO)−〔但し、Rは炭素数2以上4以下のアルキレン基を表し、nは6以上200以下の整数を表す〕で表されるポリエーテル部位を有することが望ましい。このポリエーテル部位を有することで、表面硬度が低下し、該環状部材が押し当てられる部材の表面に沿って接触される。よって、環状部材を帯電部材として用いる場合には、被帯電部材の帯電性能が向上する。
【0034】
前記ポリエーテル部位におけるRは、炭素数2以上4以下のアルキレン基を表し、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、直鎖状であることが望ましい。
前記ポリエーテル部位におけるnは、6以上200以下の整数を表し、50以上150以下の整数であることが望ましく、80以上120以下の整数であることがより望ましい。
【0035】
ポリサルファイドポリマーの数平均分子量は、500以上10000以下であることが望ましく、1000以上8000以下であることがより望ましく、2500以上5000以下であることが更に望ましい。
【0036】
数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用し、THF溶媒を用いて測定し、単分散ポリスチレン標準試料により作製した分子量校正曲線を使用して算出したものである。
【0037】
本実施形態におけるポリサルファイドポリマーとしては、市販のものを用いてもよく、例えば、チオコールLP−2、LP−23、LP−3、LP−282(以上、東レ・ファインケミカル株式会社製)などが挙げられる。
【0038】
ポリサルファイドポリマーの配合比率は、後述の弾性材料100質量部に対して、5質量部以上40質量部以下であることが望ましく、10質量部以上30質量部以下が望ましい。ポリサルファイドポリマーの配合比率が上記範囲内にあると、画像形成装置の部材として使用した際に濃度ムラがより効果的に抑制される観点で優れる。
【0039】
−弾性材料−
本実施形態における弾性材料は、前記少なくとも化学構造中に二重結合を有し、上記ポリサルファイドポリマー以外の弾性材料をいう。
この弾性材料としては、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム等、及びこれらを混合したゴムが挙げられる。
なかでも、ポリウレタン、EPDM、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、NBR、及びこれらを混合したゴムが望ましく用いられる。
これらの弾性材料は、発泡したものであっても無発泡のものであってもよい
【0040】
−加硫物−
前記(A)に示すポリサルファイドポリマーと前記(B)に示す弾性材料を少なくとも含み、更に必要に応じて後述の添加剤を添加したゴム組成物を調製し、このゴム組成物を加熱することで加硫物が得られる。
加熱温度や加熱時間はポリサルファイドポリマーや弾性材料の種類などに応じて調節することが望ましく、一般には、120℃以上190℃以下で、2分以上90分以下で行う。
【0041】
−その他の添加剤−
前記ゴム組成物は、前記ポリサルファイドポリマー及び前記弾性材料以外に、必要に応じて、例えば下記添加剤を含有してもよい。特に、環状部材を電子写真方式の画像形成装置における帯電装置や転写装置等の電界を形成するための部材として用いる場合には、弾性層には、導電剤が添加される。
【0042】
この導電剤としては、公知の導電性物質や、有機イオン導電性物質が挙げられる。なお、本実施の形態では、導電性及び導電とは、体積抵抗率が10Ωcm以下であることを示している。
【0043】
導電性物質としては、四級アンモニウム塩(例えばラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等)等)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩、各種ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、等が挙げられる。
【0044】
有機イオン導電性物質としては、多価アルコール(1,4ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)およびその誘導体と金属塩との錯体、モノオール(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等)と金属塩の錯体も挙げられる。金属塩としては、例えばLiClO、LiCFSO、LiAsF、LiBF、NaClO、NaSCN、KSCN、NaCl等の周期律表第1族の金属塩;NHの塩等の電解質;Ca(ClO、Ba(ClO等の周期律表第2族の金属塩;これらに、少なくとも1個以上の水酸基、カルボキシル基、一級ないし二級アミン基等イソシアネートと反応する活性水素を有する基を持ったもの;等が挙げられる。このような錯体として具体的には、PEL(LiClO)とポリエチレングリコールとの錯体)等が挙げられる。これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
導電剤の添加量は特に制限はないが、上記導電性物質の場合は、弾性材料100質量部に対して、1質量部以上80質量部以下の範囲や、好ましくは15質量部以上25質量部以下の範囲が挙げられる。一方、上記有機イオン導電性物質の場合には、弾性材料100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下で添加することが望ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下の範囲で添加することがより望ましい。
【0046】
また、添加剤としては、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤、充填剤(シリカ、炭酸カルシウムなど)、受酸剤等の通常弾性層に添加される材料が挙げられる。
なお、本実施形態では、ポリサルファイドポリマーを用いるために加工性、成形性に優れるため、軟化剤や可塑剤を添加せずに弾性層を形成することが可能であり、ブリードの抑制の観点からは、軟化剤及び可塑剤を添加しないことが望ましい。
【0047】
加硫剤としては、硫黄または2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカルバメート等のハロゲン基を引き抜いて加硫する加硫剤が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
上記弾性材料に対する加硫剤の添加量は、特に制限はないが、弾性材料100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが望ましく、0.3質量部以上5質量部以下であることがより望ましい。
【0048】
加硫促進剤としては、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジカルバミン酸塩系、キサントゲン酸塩等が挙げられる。これらは、単独もしくは、2種以上が併用されても良い。その他、酸化亜鉛、ステアリン酸などの公知のゴム配合材料を加えてもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記弾性材料に対する加硫促進剤の添加量は、特に制限はないが、弾性材料100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが望ましく、0.3質量部以上5質量部以下であることがより望ましい。
【0049】
受酸剤は、金属化合物および/またはハイドロタルサイト類であってよい。本発明の実施形態において、導電性ローラ用ゴム組成物で用いられる受酸剤となる金属化合物を例示すると、それらの化合物には周期律表第2族元素(アルカリ土類金属)の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期律表第4族元素の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、三塩基性硫酸塩等がある。具体的には、酸化マグネシム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、亜鉛華、酸化錫、ステアリン酸錫、塩基性亜りん酸錫等を挙げることができる。
上記弾性材料に対する受酸剤の添加量は、特に制限はないが、弾性材料100質量部に対して、0.5質量部以上20.0質量部以下であることが望ましく、3.0質量部以上10.0質量部以下であることがより望ましい。
【0050】
充填剤としては、具体的には、炭酸カルシウム、カーボンブラック、シリカ、等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記弾性材料に対する充填剤の添加量は、特に制限はないが、弾性材料100質量部に対して、1質量部以上80質量部以下であることが望ましく、10質量部以上50質量部以下であることがより望ましい。
【0051】
−弾性層の作製方法−
前記ポリサルファイドポリマー及び前記弾性材料を含み、更に必要に応じて上記添加剤を含有するゴム組成物は、ニーダー等の混練機により混練する。混練したゴム組成物を、押し出し成型などにより芯体の外周面に付与する。混練したゴム組成物の付与方法としては、押し出し成型に限られず、公知の各種方法を用いてもよい。そしてこの状態で加熱し加硫させて弾性層を形成する。加熱の際に、加熱可能な円筒状の金型を用いてもよい。
【0052】
−弾性層の物性−
弾性層の厚みは、環状部材を適用する装置によって異なるが、例えば、1mm以上10mm以下とすることが望ましく、2mm以上5mm以下とすることがより望ましい。
また、この弾性層の体積抵抗率は、環状部材を適用する装置によって異なるが、環状部材を後述する電子写真方式の画像形成装置の帯電装置に用いる場合には、例えば、10Ωcm以上1010Ωcm以下であることが望ましく、10Ωcm以上10Ωcm以下であることがより望ましい。
【0053】
なお、体積抵抗率の測定は、シート状の測定サンプルに対し、測定治具(R12702A/Bレジスティビティ・チェンバ:アドバンテスト社製)と高抵抗測定器(R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計:アドバンテスト社製)とを用い、電場(印加電圧/組成物シート厚)が1000V/cmになるよう調節した電圧を30秒印加後の電流値より、下記式(2)を用いて算出する。
【0054】
体積抵抗率(Ω・cm)=(19.63×印加電圧(V))/(電流値(A)×測定サンプルシート厚(cm)) ・・・ 式(2)
【0055】
また、この弾性層の硬度は、環状部材を適用する装置によっても異なるが、環状部材を後述する電子写真方式の画像形成装置の帯電装置に用いる場合には、アスカーC硬度で15°以上90°以下、または15°以上70°以下の範囲が挙げられる。
なお、アスカーC硬度の測定は、3mm厚の測定シート表面にアスカーC型硬度計(高分子計器社製)の測定針を押圧し、1000g荷重の条件で行ったものである。
【0056】
(表面層)
本実施形態の環状部材では、弾性層上に表面層を形成してもよい。
表面層は、樹脂と、必要に応じて、導電剤と、表面層の表面に凹凸(特定の表面粗さ)を付与するための粒子と、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0057】
樹脂としては、アクリル樹脂,セルロース樹脂,ポリアミド樹脂,共重合ナイロン,ポリウレタン樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリエステル樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリビニル樹脂,ポリアリレート樹脂,スチレンブタジエン樹脂,メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(例えばテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等)、尿素樹脂等が挙げられる。ここで、共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種又は複数種を重合単位として含むものであって、この共重合体に含まれる他の重合単位としては、6ナイロン、66ナイロン等が挙げられる。また、樹脂としては、上記弾性層に配合される弾性材料を適用してもよい。
【0058】
表面層に配合される導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が挙げられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属又は合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの粉末が挙げられる。また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;が挙げられる。これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
ここで、カーボンブラックの市販品として具体的には、デグサ社製の「スペシャルブラック350」、同「スペシャルブラック100」、同「スペシャルブラック250」、同「スペシャルブラック5」、同「スペシャルブラック4」、同「スペシャルブラック4A」、同「スペシャルブラック550」、同「スペシャルブラック6」、同「カラーブラックFW200」、同「カラーブラックFW2」、同「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、キャボット社製「MONARCH1300」、キャボット社製「MONARCH1400」、同「MOGUL−L」、同「REGAL400R」等が挙げられる。
【0060】
また、表面層の表面に凹凸(特定の表面粗さ)を付与するための粒子としては、導電性粒子、非導電性粒子のいずれでもよいが、非導電性粒子が望ましい。導電性粒子としては、弾性層に配合する上記導電剤として挙げられた材料の粒子が挙げられる。非導電性粒子としては、樹脂粒子(ポリイミド樹脂粒子、メタクリル樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、フッ素樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子等)、無機粒子(クレー粒子,カオリン粒子,タルク粒子,シリカ粒子,アルミナ粒子等)、又はセラミック粒子等が挙げられる。粒子は、樹脂と同種の樹脂で構成した粒子であってもよく、これにより粒子と樹脂との相溶性が向上し、粒子と樹脂との密着性が高くなる。ここで、導電性とは、体積抵抗率が1013Ωcm未満を意味し、非導電性とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上を意味する。なお、他も同様である。
【0061】
また、表面層におけるその他添加剤としては、例えば、導電剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤等の通常表面層に添加され得る材料が挙げられる。
表面層の厚みは、7μm以上25μm以下が望ましい。そして、表面層の体積抵抗率は10Ωcm以上1014Ωcm以下が望ましい。
【0062】
表面層は、上記樹脂や導電剤等を溶剤に分散させて塗布液を調製し、先立って作製した弾性層上に、この塗布液を付与する。塗布液の付与方法としては、例えば、ブレード塗布法,マイヤーバー塗布法,スプレー塗布法,浸漬塗布法,ビード塗布法,エアーナイフ塗布法,カーテン塗布法等が挙げられる。塗布液に用いる溶剤としては、特に限定されず一般的なものが使用され、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン;ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類などの溶媒を使用してもよい。また、これらの他、種々の溶媒を使用してもよいが、電子写真感光体の生産に一般的に使用される浸漬塗布法を適用するためには、アルコール系またはケトン系溶剤、あるいはそれらの混合系溶剤が挙げられる。
【0063】
(用途)
上記構成の環状部材は、例えば、電子写真方式の画像形成装置における帯電装置や、転写装置等における環状の部材として用いられる。
【0064】
<画像形成装置、プロセスカートリッジ>
以下、本実施の形態の環状部材を画像形成装置及びプロセスカートリッジの帯電装置に搭載した場合を説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
【0065】
本実施形態に係る画像形成装置100は、図1に示すように、像保持体13を備え、その周囲に、像保持体13を帯電する帯電装置19と、帯電装置19により帯電された像保持体13を露光して潜像を形成する潜像形成装置17と、潜像形成装置17により形成した静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置16と、現像装置16により形成したトナー像を記録媒体Pに転写する転写装置18と、転写後の像保持体13の表面の残留トナーを除去する清掃装置20と、を備えている。また、転写装置18により記録媒体Pに転写されたトナー像を定着する定着装置22を備えている。
【0066】
そして、本実施の形態における画像形成装置100では、帯電装置19が、本実施の形態の環状部材10を備えた構成とされている。この環状部材10は、像保持体13の表面に接触配置され、図示を省略する電力供給装置から電力を供給されることで、像保持体13を帯電させる。
【0067】
なお、本実施形態の画像形成装置100は、帯電装置19に設けられた環状部材10以外の構成については、従来から電子写真方式の画像形成装置の各構成として公知の構成が適用される。以下、各構成の一例につき説明する。
【0068】
像保持体13は、特に制限なく、公知の感光体が適用されるが、電荷発生層と電荷輸送層を分離した、いわゆる機能分離型と呼ばれる構造の有機感光体が好適に適用される。また、像保持体13は、その表面層が電荷輸送性を有し架橋構造を有する保護層で被覆されているものも好適に適用される。この保護層の架橋成分としてシロキサン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、アクリル樹脂を含む感光体も好適に適用される。
【0069】
潜像形成装置17としては、例えば、レーザー光学系やLEDアレイ等が適用される。
【0070】
現像装置16は、例えば、現像剤層を表面に形成させた現像剤保持体を像保持体13に接触若しくは近接させて、像保持体13の表面の静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する。現像装置16の現像方式は、既知の方式として二成分現像剤による現像方式が好適に適用される。この二成分現像剤による現像方式には、例えば、カスケード方式、磁気ブラシ方式などがある。
【0071】
転写装置18としては、例えば、コロトロン等の非接触転写方式、記録媒体Pを介して導電性の転写ロールを像保持体13に接触させ記録媒体Pにトナー像を転写する接触転写方式のいずれを適応してもよい。
【0072】
清掃装置20は、例えば、板状部材を像保持体13の表面に直接接触させて表面に付着しているトナー、紙粉、ゴミなどを除去する部材である。清掃装置20としては、板状部材以外にブラシ状の部材や、ロール状の部材等を適用してもよい。
【0073】
定着装置22としては、加熱定着装置が挙げられる。加熱定着装置は、例えば、円筒状芯金の内部に加熱用のヒータランプを備え、その外周面に耐熱性樹脂被膜層あるいは耐熱性ゴム被膜層により、いわゆる離型層を形成した定着ローラと、この定着ローラに対し特定の接触圧で接触して配置され、円筒状芯金の外周面あるいはベルト状基材表面に耐熱弾性体層を形成した加圧ローラ又は加圧ベルトと、で構成される。未定着のトナー像の定着プロセスは、例えば、定着ローラと加圧ローラ又は加圧ベルトとの間に未定着のトナー像が転写された記録媒体Pを挿通させて、トナー中の結着樹脂、添加剤等の熱溶融による定着を行う。
【0074】
なお、本実施形態の画像形成装置100は、上記構成に限られず、例えば、中間転写体を利用した中間転写方式の画像形成装置、各色のトナー像を形成する画像形成ユニットを並列配置させた所謂タンデム方式の画像形成装置であってもよい。
【0075】
一方、本実施形態のプロセスカートリッジは、図2に示すように、上記図1に示す画像形成装置100において、露光のための開口部24A、除電露光のための開口部24B及び取り付けレール24Cが備えられた筐体24により、像保持体13と、像保持体13を帯電し上記環状部材を有する帯電装置19と、潜像形成装置17により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置16と、転写後の像保持体13表面の残留トナーを除去する清掃装置20と、を一体的に組み合わせて保持して構成したプロセスカートリッジ102である。そして、プロセスカートリッジ102は、上記図1に示す画像形成装置100に脱着自在に装着されている。
【0076】
なお、本実施形態のプロセスカートリッジは、帯電装置19として、本実施形態の環状部材を備えたものであれば特に限定されず、例えば、帯電装置19のほかに、像保持体13、現像装置16、及び清掃装置20から選択される少なくとも1種を備え、画像形成装置100に脱着自在に装着される態様等が挙げられる。また、図2に示すように、その他、現像装置16、清掃装置20を一体に組み合わせた態様であってもよい。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「部」は、「質量部」を意味する。
【0078】
〔実施例1〕
<環状部材の作製>
(ゴム組成物の調製)
環状部材を作製するにあたり下記組成の混合物を、接線式加圧ニーダー((株)モリヤマ製:実容量75L)を用いて混練してゴム組成物を調製した。
詳細には、加圧ニーダーのジャケット、加圧蓋、ローターを循環水により20℃にし、加圧蓋の圧力を0.6MPaで下記弾性材料を素練りし、酸化亜鉛を混練後、ステアリン酸及びカーボンブラックを投入混練し、イオン導電剤、炭酸カルシウムを投入して混練した。さらに、22インチオープンロールでシート状に切り出し冷却後、再び加圧ニーダーで、ポリサルファイドポリマー、加硫剤及び加硫促進剤を加えて混練し、22インチオープンロールでシート状に切り出し、ゴム組成物を得た。
【0079】
−組成−
・弾性材料 ・・・・・・・100質量部
(エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、商品名「Gechron3106」、日本ゼオン社製)
・ポリサルファイドポリマー ・・・・・・・15質量部
(商品名「チオコールLP−282」:東レ・ファインケミカル社製)
・酸化亜鉛 ・・・・・・・5質量部
(商品名「酸化亜鉛2種」:正同化学工業社製)
・ステアリン酸 ・・・・・・・1質量部
(商品名「ステアリン酸S」:花王社製)
・カーボンブラック ・・・・・・・15質量部
(商品名「ケッチェンブラックEC」、ライオン社製)
・炭酸カルシウム ・・・・・・・20質量部
(商品名「白艶華CCR、白石工業社製」)
・イオン導電剤 ・・・・・・・1質量部
(アルキルトリメチルアンモニウムパークロレート、商品名「LXN-30」ダイソー社製)
・加硫剤 ・・・・・・・1質量部
(商品名「硫黄200メッシュ」、鶴見化学工業社製)
・加硫促進剤 ・・・・・・・2質量部
(商品名「ノクセラーDM」、大内新興化学工業社製)
・加硫促進剤 ・・・・・・・0.5質量部
(商品名「ノクセラーTT」、大内新興化学工業社製)
【0080】
(弾性層の形成)
芯体として、SUS303製の直径8mm、長さ330mmの円柱状芯体を用意した。この円柱状芯体上に、厚さ3mmとなるように円筒状金型を用いて、前記ゴム組成物を注型し、未加硫のゴム組成物層を形成した。そして、円筒状金型の温度を170℃とし、30分間加熱し、未加硫のゴム組成物層を加硫して、弾性層を形成した。
【0081】
(表面層の形成)
下記組成の混合物をビーズミルにて分散し、分散液を調製した。得られた分散液をメタノールで希釈して、表面層塗布液を得た。この塗布液について粘度が45mPa・sとなるように メタノール及びブタノールで調整した後、浸漬塗布槽へ注入した。
その後、前記作製した弾性層付きの芯体を浸漬塗布槽の塗布液に浸漬し、芯体を引き上げた。これを150℃で10分間乾燥して、溶剤を除去し、表面層を形成した。これにより、芯体上に弾性層及び表面層をこの順に有する環状部材を得た。
【0082】
−分散液の組成−
・高分子材料 ・・・・・・100質量部
(アミド樹脂、商品名「アラミンCM8000」、東レ社製)
・導電剤 ・・・・・・・14質量部
(カーボンブラック、商品名「Monarch1000」、キャボット社製)
・溶剤 ・・・・・・・500質量部
(メタノール、関東化学社製)
・溶剤 ・・・・・・・240質量部
(ブタノール、関東化学社製)
【0083】
(電気抵抗の測定及びブリード性評価用試料の作製)
別途、弾性層の電気抵抗を測定するための試料として、シート状の弾性層を作製した。詳細には、上記組成の混練したゴム組成物を2mm×150mm×230mmの金型に注入し、この金型を170℃で30分間加熱してゴム組成物を加硫し、シート状の弾性層を作製した。
【0084】
〔実施例2〕
実施例1のゴム組成物において、ポリサルファイドポリマー(チオコールLP−282、東レ・ファインケミカル社製)を5質量部配合するように変更した以外は、実施例1と同様にして導電性弾性層を形成し、環状部材を得た。
【0085】
〔実施例3〕
実施例1のゴム組成物において、ポリサルファイドポリマー(チオコールLP−282、東レ・ファインケミカル社製)を40質量部配合し、イオン導電剤(LXN−30、ダイソー社製)を1.5質量部配合するように変更した以外は、実施例1と同様にして導電性弾性層を形成し、環状部材を得た。
【0086】
〔実施例4〕
実施例1のゴム組成物において、ポリサルファイドポリマー(チオコールLP−282、東レ・ファインケミカル社製)をポリサルファイドポリマー(商品名「チオコールLP−2」、東レ・ファインケミカル社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして導電性弾性層を形成し、環状部材を得た。
【0087】
〔実施例5〕
実施例1のゴム組成物において、ポリサルファイドポリマー(商品名「チオコールLP−2」、東レ・ファインケミカル社製)を5質量部配合するように変更した以外は、実施例4と同様にして導電性弾性層を形成し、環状部材を得た。
【0088】
〔実施例6〕
実施例1のゴム組成物において、ポリサルファイドポリマー(商品名「チオコールLP−2」、東レ・ファインケミカル社製)を40質量部配合し、イオン導電剤(LXN−30、ダイソー社製)を1.5質量部配合するように変更した以外は、実施例4と同様にして導電性弾性層を形成し、環状部材を得た。
【0089】
〔実施例7〕
実施例1のゴム組成物において、加硫剤(硫黄200メッシュ、鶴見化学工業社製)を加硫剤(2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、商品名「ジスネットF」三協化成社製)に変更し、加硫促進剤(ノクセラーDM、ノクセラーTT、大内新興化学工業社製)を除き、受酸剤(ハイドロタルサイト、商品名「DHT−4A」、協和化学工業社製)2質量部を追加したこと以外は、実施例1と同様にして導電性弾性層を形成し、環状部材を得た。
【0090】
〔実施例8〕
実施例1のゴム組成物において、加硫剤(硫黄200メッシュ、鶴見化学工業社製)を加硫剤(6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカルバメート、商品名「ダイソネットXL−21S」ダイソー社製)1.5質量部に変更し、加硫促進剤(ノクセラーDM、ノクセラーTT、大内新興化学工業社製)を加硫促進剤(DBU塩、商品名「P152」ダイソー社製)1質量部に変更し、受酸剤(ハイドロタルサイト、商品名「DHT−4A」、協和化学工業社製)を2質量部追加したこと以外は、実施例1と同様にして導電性弾性層を形成し、環状部材を得た。
【0091】
〔実施例9〕
実施例1のゴム組成物において、弾性材料をNBR(アクリロニトリルブタジエンゴム、商品名「DN3355」日本ゼオン社製)に変えた以外は、実施例1と同様にして導電性弾性層を形成し、環状部材を得た。
【0092】
〔実施例10〕
実施例1のゴム組成物において、弾性材料をEPDM(エチレンプロピレンターポリマー、商品名「EPT4021」三井化学社製)に変え、イオン導電剤(LXN−30、ダイソー社製)を2.0質量部にした以外は、実施例1と同様にして導電性弾性層を形成し、環状部材を得た。
【0093】
〔比較例1〕
実施例1のゴム組成物において、ポリサルファイドポリマーを可塑剤(アジピン酸エーテルエステル系可塑剤、商品名「RS107」、旭電化工業社製)に置き換えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性弾性層を形成し、環状部材を得た。
【0094】
〔比較例2〕
実施例1のゴム組成物において、ポリサルファイドポリマーを軟化剤(パラフィン系プロセスオイル、商品名「ダイアナプロセスオイルPW−90」、出光興産社製)に置き換えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性弾性層を形成し、環状部材を得た。
【0095】
〔比較例3〕
実施例1のゴム組成物において、ポリサルファイドポリマー(LP282、東レ・ファインケミカル社製)を配合しないこと以外は、実施例1と同様にして導電性弾性層を形成し、環状部材を得た。
【0096】
<評価>
〔画像濃度ムラの評価〕
上記実施例及び比較例で作製した環状部材について、カラー複写機DocuCentre Color400CP:富士ゼロックス社製用の感光体に接触させた状態で28℃、85%RH環境下に14日間保管した。
【0097】
そして、カラー複写機DocuCentre Color400CP:富士ゼロックス社製に前記感光体とともに環状部材を帯電装置として装着した。カラー複写機DocuCentre Color400CP用のカラートナー(シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー、黒トナー)を用い、A4用紙50,000枚印字テスト(10℃、15%RH環境下で25,000枚印刷後、28℃、85%RH環境下で25,000枚印字)を行った。なお、途中で大きな問題が発生した場合には、その時点で印字を中止した。
【0098】
画質評価は、初期(3枚目)及び50,000枚走行後の画像について、目視によってハーフトーン画像中での濃度ムラの有無により以下の基準で判定した。
◎:濃度ムラ等の欠陥無し。
○:極軽微な濃度ムラ発生。
△:軽微な濃度ムラ発生。
×:実使用不可の濃度ムラ発生。
【0099】
〔表面硬度〕
上記実施例及び比較例で作製した環状部材の表面硬度を評価した。この表面硬度の評価は、JISK―6253(2006年度版)に準じて、アスカーC型硬度計(高分子計器社製)の押針を被測定物表面に接触させ、1000g加重の条件で10点について測定し、平均値を求めることによって得た。結果を表1に示した。
【0100】
−評価基準−
◎:アスカーCゴム硬度が40度以上50度未満
○:アスカーCゴム硬度が50度以上60度未満
△:アスカーCゴム硬度が60度以上70度未満
×:アスカーCゴム硬度が70度以上
【0101】
〔電気抵抗の測定〕
上記実施例及び比較例について、電気抵抗の測定用に作製したシート状の弾性層の試料において、体積抵抗率を測定した。
この体積抵抗率の測定は、前記シート状の測定試料に対し、測定治具(R12702A/Bレジスティビティ・チェンバ:アドバンテスト社製)、及び高抵抗測定器(R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計:アドバンテスト社製)を用いた。10℃、15%RHの環境下において、電場(印加電圧/組成物シート厚)が1000V/cmになるよう調節した電圧を30秒印加し、そのときの電流値を測定した。この電流値と、測定試料のシート厚を下記式(2)に代入して算出した。結果を表1に示した。
【0102】
体積抵抗率(Ω・cm)=(19.63×印加電圧(V))/(電流値(A)×測定試料のシート厚(cm))・・・(2)
【0103】
〔弾性層の成形性の評価〕
ブラベンダー社製押出機でガーベダイ(ASTM D2230準拠)押出試験を行い、(1)スウェルと気泡の発生状態、(2)30°のエッジの連続性と鋭さ、(3)表面肌の連続性、(4)30°エッジ以外の角の鋭さと連続性について4点法で評価した。結果を表1に示す。なお、押出機の条件は、以下の通りである。
【0104】
スクリュー:圧縮比1、L/D=10、D=19.1mm、
温度条件:シリンダー=70℃、ダイ=90℃、
ブラベンダー回転数:60rpm
【0105】
−評価基準−
◎:14〜16点
○:11〜13点
△:8〜10点
×:4〜7点
【0106】
〔ブリードの評価〕
室温45℃湿度90%の環境試験室にて、上記加硫シートを宙吊りにし、7日間放置したのち、室温23℃湿度50%の環境試験室にて、加硫シート表面にけい砂(6号)をふりかけ、刷毛で軽く払いのけた後、加硫シート表面に付着したけい砂の面積で、表面へのブリード性を評価した。結果を表1に示した。
【0107】
−評価基準−
けい砂の付着面積率
◎:0以上15%未満
○:15以上30%未満
△:30以上45%未満
×:45%以上
【0108】
【表1】

【0109】
表1に示すように実施例においては、ポリサルファイドポリマーを用いた環状部材で画像評価を行った結果、画像の濃度ムラの発生が抑えられた。
他方、比較例1及び2において、ポリサルファイドポリマーに代えて可塑剤または軟化剤を配合して成形した環状部材では、画像ムラを引き起こした。この画像ムラは、ブリードの発生によって感光体が汚染されたことに起因するものと思われる。また、比較例3においてポリサルファイドポリマーを配合しない環状部材は、ゴム硬度が著しく高くなり、帯電不良を起こし、画像ムラを引き起こした。
以上の結果より、ポリサルファイドポリマーを用いて弾性層を形成した環状部材では、画像濃度のムラが抑えられることが分かる。
【符号の説明】
【0110】
10 環状部材
13 像保持体
16 現像装置
17 潜像形成装置
18 転写装置
19 帯電装置
20 清掃装置
22 定着装置
24C 取り付けレール
24A 開口部
24B 開口部
24 筐体
100 画像形成装置
102 プロセスカートリッジ
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯体と、
前記芯体上に設けられた、下記(A)に示すポリサルファイドポリマーと下記(B)に示す弾性材料とを含有するゴム組成物の加硫物で構成される弾性層と、
を有する環状部材。
(A)「−(COCHOC−S)−」及び「−(CHCH(OH)CH−S)−」(但し、xは1以上5以下の整数)から選択される少なくとも1つの構造単位を有し、且つ末端に「−COCHOC−SH」及び「−CHCH(OH)CH−SH」で表されるチオール基の少なくとも一方を有するポリサルファイドポリマー。
(B)少なくとも化学構造中に二重結合を有する、上記ポリサルファイドポリマー以外の弾性材料。
【請求項2】
前記ゴム組成物は、前記(B)に示す弾性材料100質量部に対して、前記(A)に示すポリサルファイドポリマーを5質量部以上40質量部以下で含有する請求項1に記載の環状部材。
【請求項3】
前記(A)に示すポリサルファイドポリマーが、更に−(RO)−〔但し、Rは炭素数2以上4以下のアルキレン基を表し、nは6以上200以下の整数を表す〕で表されるポリエーテル部位を有する請求項1又は請求項2に記載の環状部材。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の環状部材を備えた帯電装置。
【請求項5】
像保持体を帯電する請求項4に記載の帯電装置と、
前記像保持体、前記像保持体上の静電潜像をトナーによってトナー像に現像する現像装置、及び前記トナー像を被転写体に転写した後に前記像保持体表面に残留した残留トナーを除去する清掃装置、から選択される少なくとも1種と、を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項6】
像保持体と、
前記像保持体を帯電する請求項4に記載の帯電装置と、
前記帯電装置によって帯電された前記像保持体に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体上の静電潜像をトナーによってトナー像に現像する現像装置と、
前記現像装置によって前記像保持体上に形成された前記トナー像を被転写体へ転写する転写装置と、
を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−8341(P2012−8341A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144172(P2010−144172)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】