説明

甘味料及びその製造方法並びにそれを含むコーヒー飲料

【課題】 従来コーヒーに用いられなかった甘味料とその製造方法を提供し、コーヒーの楽しみ方の選択肢を拡げる。
【解決手段】 日本酒を加熱して、アルコール分を蒸発させ、蔗糖及び甘酒の上澄み液を加え、容量が半分程度になるまで、弱火で煮詰め、シロップ状の甘味料を得る。この甘味料をコーヒーに加える際に、茶筅のような撹拌手段で泡立てることにより、香りの拡がりと風味を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー飲料に関し、特に日本酒及び甘酒由来の甘味料を加えたコーヒー飲料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コーヒーはエチオピア原産で、日本には江戸時代にヨーロッパを経由して伝来した。コーヒーの果実は、果肉を食用に供することもあるが、種子の部分はコーヒー豆と称され、独特の香りを発現させるために焙煎し、粉末にして、その成分を熱湯で抽出し、飲用に供するのが、一般的な利用方法である。
【0003】
飲料としての香りや味には、コーヒーの品種、産地、焙煎方法、抽出方法などによって、差が現れるため、様々なコーヒーミルや抽出装置が開発実用化されている。
【0004】
それらの一例として、特許文献1には、焙煎後のコーヒー豆の冷却を迅速に行なうことによって、コーヒー本来の風味を損なわないようにする技術が開示されている。また、特許文献2には、コーヒーの雑味成分が減少できるように、濾過性能を向上したコーヒーフィルター及びその製造方法が開示されている。さらに、特許文献3には、喫茶店などで、コーヒーの抽出過程を可視化して、見た目で客を楽しませるための、コーヒー抽出機が開示されている。
【0005】
一方で、コーヒーの飲用方法に目を向けると、甘味料などを加えず、コーヒー本来の香りや風味を楽しむ他に、ウインナコーヒーに代表されるように、甘味料、ミルク、クリームなどを加えて、楽しむことも行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開2006−204737号公報
【特許文献2】 特開2005−065961号公報
【特許文献3】 特開2008−264349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のような飲用方法では、加える甘味料やその他の成分の違いにより、様々な楽しみ方がある。そこで、本発明の課題は、従来コーヒーに用いられなかった甘味料とその製造方法を提供し、コーヒーの楽しみ方の選択肢を拡げることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記の観点から、日本古来の甘味料をコーヒーに応用することを検討した結果、なされたものである。
【0009】
即ち、本発明は、日本酒、蔗糖の、甘酒の上澄み液の少なくとも1種以上を含む溶液を煮詰めて得られることを特徴とする甘味料であり、前記甘酒として、味噌製造用の麹を用いて製造されたものを用いることも可能である。
【0010】
また、本発明は、日本酒を加熱して、アルコールを蒸発させる工程と、蔗糖及び甘酒の上澄み液を加え、煮詰める工程を有することを特徴とする、前記の甘味料の製造方法である。
【0011】
また、本発明は、前記甘味料を加えてなることを特徴とするコーヒー飲料であり、コーヒーと前記甘味料を混合する際に、茶筅などの攪拌手段により、泡立てて喫することも可能である。
【発明の効果】
【0012】
甘酒の製法には、酒粕を湯で溶いて砂糖を加えるという簡便なものもあるが、古来の製法は、水分が多めの米飯に麹を作用させて、米に含まれるデンプンを糖化するというものである。このため、甘酒には多量のブドウ糖や糖類が含まれ、上澄みが甘味料として用いられている。
【0013】
一方で、米は主成分であるデンプンを約70%含有する他、約15%の水分と、約7%のタンパク質を含有する。このため、甘酒にはタンパク質に由来する各種アミノ酸やビタミン類も含まれ、夏季には冷やして強壮剤として飲用されることもある。
【0014】
従って、これをコーヒーの甘味料に加えることで、従来にない香りや風味をコーヒーに付与することができる。また、甘酒と同じく原料として米飯と麹を用いる日本酒も、その香りや風味を、コーヒーに付与することで、同様の効果を発現できる。
【0015】
また、甘酒に含まれる前記の糖類とアミノ酸の含有量は、製造に用いる麹に依存するところが大きい。つまり、味噌製造用の麹は、豆に含まれるタンパク質を、旨味成分であるアミノ酸に転化する作用が大きいため、これを用いることで、甘酒のアミノ酸含有量を増加することが可能で、甘味料としての風味の幅を拡げることができる他、甘味料の粘性などの物性を変えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】 泡立て実験の結果を表したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明においては、前記のように従来にない香りや風味を有する、コーヒー用の甘味料を得るため、蔗糖に日本酒と甘酒を加えるが、日本酒と甘酒の香りと風味のみを活用するため、日本酒は加熱してアルコールを除き、甘酒は上澄み液のみを用いる。
【0018】
具体的な調製方法としては、容器で加熱してアルコールを蒸発させた日本酒に、蔗糖と甘酒の上澄み液を加え、さらに加熱して容量が半分程度になるまで煮詰め、シロップ状とするものである。ここで用いる日本酒は、なるべく雑味の少ない吟醸酒を用いるのが望ましく、甘酒は乳酸発酵による酸味などの雑味が生じない状態、つまり出来上がりの状態で用いることが望ましい。また、蔗糖としては特に限定されないが、通常の砂糖の他、和三盆、黒糖、メープルシロップ、蜂蜜などを、喫する側の好みに応じて使用することができる。
【0019】
また、日本酒、蔗糖、甘酒の上澄み液の混合比率は、重量比で、日本酒/蔗糖/甘酒の上澄み液=10/5/1程度とするのが望ましい。日本酒及び甘酒の上澄み液の比率をこれ以上とすると、独特の麹臭が強くなるからである。
【実施例1】
【0020】
次に、具体的な例を挙げ、本発明について説明する。まず300ccの吟醸酒を鍋で沸騰させ、アルコール分を蒸発させる。アルコール臭が感じられなくなったら、130gの黒砂糖と、30ccの甘酒の上澄み液を加え、容量が約半分になるまで弱火で、20〜30分間煮詰めると、全体が粘稠になり、シロップ状の甘味料が得られた。ここでは、この甘味料を、高濃度麹飴と称する。これを保存する際は適当な容器で密栓して冷蔵する。この高濃度麹飴をコーヒーに用いる場合は、使用直前に50〜80℃に加熱する。加熱により迅速にコーヒーと均一の混ざり合い、後述する泡立ちが良くなるからである。
【0021】
この高濃度麹飴をコーヒーに用いる際の添加比率は、100ccのコーヒーに対し、10cc程度が望ましい。また、コーヒーと高濃度麹飴を混ぜる際には、茶筅のような撹拌手段を用いると迅速に混ざる他に、泡立ちが良くなるという効果を奏し、泡立てることで、コーヒーの香りの拡がりと風味のまろやかさが向上する。
【0022】
しかも、通常の砂糖を用いた場合に比較すると、この高濃度麹飴を用いた場合では、撹拌で生じた泡が極めて消失し難く、半日放置しても残っているという効果が得られる。つまり、コーヒーを飲み終えるまで、泡の状態が実質的に変わらない。これは、前記のように甘酒には各種アミノ酸が含まれるが、これらが界面活性剤のように作用し、コーヒーの表面張力を低下させたためと解される。
【実施例2】
【0023】
次に、前記の甘酒に含まれるアミノ酸の量が、コーヒーの泡立ち状態に及ぼす影響を検証するため、味噌製造用の麹を用いて得られる、アミノ酸含有量が多い甘酒を加えた場合の、コーヒーの泡立ち状態の観察を試みた。ここでは、米飯200gに対して、味噌製造用に用いられる市販の板麹200gと60℃の湯1Lを加え、十分に混合してから電子ジャーにて、8〜10時間、60℃に保持して甘酒を得た。
【0024】
この甘酒をコーヒーフィルターで濾過した後、ブドウ糖の濃度を測定したところ、23〜24%であった。この甘酒の濾過液の約300ccを加熱して、約100gになるまで煮詰め、ブドウ糖濃度が約75%で、アミノ酸を高濃度で含む甘味料を得た。ここでは、この甘味料を、高アミノ酸麹飴と称する。また、比較試料として、実施例1に記載した高濃度麹飴と、ブドウ糖の溶液を煮詰めた高濃度ブドウ糖飴を調製して用いた。
【0025】
高濃度ブドウ糖飴の調製方法は次のとおりである。まず225ccの湯に75gの固形ブドウ糖を溶解し、濃度25%の300gの溶液とする。この溶液を加熱して100gになるまで濃縮し、ブドウ糖の濃度が約75%の高濃度ブドウ糖飴を得た。
【0026】
これら、高アミノ酸麹飴、高濃度麹飴、高濃度ブドウ糖飴を表1に示した比率となるように秤量し、泡立て実験用試料とした。なお、ここで用いたコーヒーは、薪焙煎したコーヒー豆を極細挽きしたもの50gを、90℃の熱湯400ccで抽出して調整した。
【0027】
【表1】

【0028】
泡立て実験は、表1に示した試料を黒抹茶茶碗にて、茶筅を用いて10秒間攪拌して、直ちに内径が50mmの円筒形のガラス容器に注入し、注入直後から12時間、つまり720分経過するまで、泡の層の厚みを測定した。この測定結果を表1と図1に示した。
【0029】
【表2】

【0030】
この結果によると、単糖類であるブドウ糖のみを加えた場合より、アミノ酸類を豊富に含む高アミノ酸麹飴や高濃度麹飴を加えた方が、泡立ちが長時間維持されることが明らかである。殊に、高アミノ酸麹飴を加えた実験試料においては、実験終了後2日間放置しておいても、泡が消失ことなく、表面に漂っていることが確認できた。
【0031】
以上に説明したように、本発明によれば、コーヒーに、従来にない香りと風味を付与することができるばかりでなく、泡立ちという視覚的な付加価値を付与することができる。そして、本発明者らの試飲結果によれば、このコーヒーは、ケーキ、カステラのような洋菓子の他に、大福、心太などの和菓子との相性も良好であった。
【0032】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、黒砂糖の代替として通常の白砂糖を用いるような、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日本酒、蔗糖の、甘酒の上澄み液の少なくとも1種以上を含む溶液を煮詰めて得られることを特徴とする甘味料。
【請求項2】
前記甘酒は味噌製造用の麹を用いて製造されたものを含むことを特徴とする、請求項1に記載の甘味料。
【請求項3】
日本酒を加熱して、アルコールを蒸発させる工程と、蔗糖及び甘酒の上澄み液を加え、煮詰める工程を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の甘味料の製造方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の甘味料を加えてなることを特徴とするコーヒー飲料。
【請求項5】
泡立ててなることを特徴とする、請求項4に記載のコーヒー飲料。

【図1】
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【公開番号】特開2011−254814(P2011−254814A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122713(P2011−122713)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(508126099)
【Fターム(参考)】