生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法および磁性物質のパターンをイメージ化する方法、およびこれに用いられる装置
本発明の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法は、磁場により磁力線方向に磁化される磁性物質であって、ナノ単位で粒子化され、表面が改質された磁性物質を複数個準備する段階と、前記磁性物質を生きた細胞内に提供し、かつ、1つの生きた細胞を基準に前記磁性物質を複数個提供する段階と、前記生きた細胞に収束された磁場を印加し、磁力線束(bundle)が前記生きた細胞に対して一定方向に通過するようにする段階と、前記生きた細胞内で前記磁場の磁力線方向に複数個の磁性物質が配列になるようにする段階と、前記磁性物質の配列パターンを確認する段階と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生きた細胞内で磁力線方向に磁化される磁性物質のパターンを形成する方法および磁性物質のパターンをイメージ化する方法、およびこれに用いられる装置に関するものであって、さらに詳しくは、生きた細胞内で磁性物質に磁場を印加し、磁性物質が磁力線方向にパターンを形成するようにし、標識物質を利用してこのような磁力線方向への磁性物質のパターンをイメージ化する方法およびこれに用いられる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞はヒトを含む有機体の基本構造であり、活動単位である。生きた細胞は細胞質(cytoplasm)と多様な細胞小器官(subcellular organelles)、例えば、核(nucleus)、核小体(nucleolus)、ゴルジ体(Golgi apparatus)、小胞体(endoplasmic reticulum)、ミトコンドリア(mitochondria)、エンドソーム(endosome)、ペルオキシソーム(peroxisome)、リソソーム(lysosome)、細胞骨格(cytoskeleton)などで構成された複雑な構造を有する。
【0003】
生きた細胞の生命現象は、このような細胞小器官と細胞小器官を構成する、または細胞小器官に存在する多様な細胞内物質(cellular components)、例えば、蛋白質(proteins)、核酸(nucleic acids)、糖(polysaccharide)、脂質(lipids)などの高分子化合物と、アミノ酸(amino acids)、ヌクレオチド(nucleotides)、リン酸(phosphoric acids)、ビタミン(vitamins)、アミン(amines)、その他、低分子有機化合物(organic compounds)などの低分子化合物(small molecules)により調節され、維持される。
【0004】
細胞の細胞質は、粘弾性(viscoelasticity)と揺変性(thixotropy)の特性を有するゲル様(gel−like)物質として知られており(Luby−Phelpsら、 Probing the structure of cytoplasm. J. Cell Biol.(1986)102, 2015−2022)、細胞質は、水より約4倍高い液状粘性(fluid phase viscosity)を有するものとして知られている。また、細胞質に溶けている巨大分子の大きさによって自由拡散(free diffusion)を制限する障壁を有するものとして知られている(Luby−Phelpsら、 Probing the structure of cytoplasm. J. Cell Biol.(1986)102, 2015−2022)。前記細胞内障壁は、フィラメント状の網目(filamentous meshwork)からなるものと推定され、網目の平均細孔(pore)径は30〜40nmであるものと推算される(Luby−Phelps,et al. Probing the structure of cytoplasm. J. Cell Biol.(1986)102,2015−2022)。
【0005】
このような細胞質の特性に起因し、蛋白質重合体(oligomeric proteins)、多酵素複合体(multi−enzyme complexes)、mRNAなどを含む長鎖ポリマー(long chain polymer)、リボソーム、ウイルスなどは極めてゆっくり動いているか、ほとんど動いていないものと推算され、半径が25−30nm以上である粒子はほとんど動くことができないものと報告されている(Luby−Phelps,et al. Probing the structure of cytoplasm. J. Cell Biol.(1986)102, 2015−2022; Arrio−Dupontら、 Translational diffusion of globular proteins in the cytoplasm of cultured muscle cells. Biophys. J.(2000)78, 901−907; Luby−Phelpsら、 Hindered diffusion of inert tracer particles in the cytoplasm of mouse 3T3 cells. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1987)84, 4910−4913; Weissら、 Anomalous subdiffusion is a measure for cytoplasmic crowding in living cells. Biophys. J. (2004)87, 3518−3524)。
【0006】
伝統的に細胞の構造と細胞内物質の機能を研究するため、生物学では多様な方法が用いられており、特に多様な生命現象が起きる重要な部分である細胞質の特性と構造を研究するため、光学的道具として走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)、共焦点顕微鏡(Confocal Microscope)、蛍光顕微鏡(Fluorescence Microscope)または光学顕微鏡(Light Microscope)などが用いられてきた。
【0007】
これと関連し、細胞質の物理的特性を糾明するための努力の一環として磁性物質を用いた細胞質の粘弾性測定(Crick,et. al. The physical properties of cytoplasm: a study by means of the magnetic particle method. Exp. Cell Res.(1950)1, 505−533)、細胞質のアクチンフィラメント溶液のレオロジー(rheology)測定(Ziemann, et. al. Local measurements of the viscoelastic moduli of entangled actin networks using an oscillating magnetic bead micro−rheometer. Biophys. J.(1994)66, 2210−2216)などの事例があるが、磁性物質を利用して細胞の動きを追跡したり、磁性物質の動きを利用した細胞内の構造と代謝過程を糾明し、細胞質の生物学的特性を糾明するなどの努力は低調であった。
【0008】
一方、細胞内の構造と代謝過程を理解するためのもう1つの努力の一環として、特定物質を蛍光標識した後、顕微鏡での観察を行う蛍光プローブ技術(Lippincott−Schwartzら、 Studying protein dynamics in living cells. Nat. Rev. Mol. Cell Biol.(2001)2, 444−456; Zhangら、 Creating new fluorescent probes for cell biology. Nat. Rev. Mol. Cell Biol.(2002)3, 906−918)が開発され、用いられている。蛍光プローブ技術は、細胞を破砕することなく、細胞内で特定物質の位置を把握できるという長所があるが、細胞内で起きる多様な生命現象および代謝過程の糾明と、信号伝達(Signal transduction)などに関与する物質を追跡するには限界があるという短所がある。また、最近、多様な類型のナノ粒子/ナノクリスタルを利用する蛍光プローブ技術(Chanら、 Luminescent quantum dots for multiplexed biological detection and imaging. Curr. Opin. Biotechnol.(2002)13, 40−46; Berry & Curtis. Functionalization of magnetic nanoparticles for applications in biomedicine. J. Phys. D Appl. Phys.(2003)36, R198−R206; Rudin & Weissleder. Molecular imaging in drug discovery and development. Nat. Rev. Drug Discov.(2003)2, 123−131; Alivisatos. The use of nanocrystals in biological detection. Nat. Biotechnol.(2004)22, 47−52)と、細胞標識および細胞小器官トラッキング技術(Derfusら、 Intracellular delivery of quantum dots for live cell labeling and organelle tracking. Adv. Mater.(2004)16, 961−966)も試みられているが、前記のような短所をそのまま有する。
【0009】
このような問題点に対する代案として、磁性物質が注目を受けているが、磁性物質は研究用および医学用への使用が試みられている (Alexiouら、 Locoregional cancer treatment with magnetic drug targeting. Cancer Res. (2000) 60, 6641−6648; Lewinら、 Tat peptide−derived magnetic nanoparticles allow in vivo tracking and recovery of progenitor cells. Nat. Biotechnol. (2000) 18, 410−414; Berry & Curtis. Functionalization of magnetic nanoparticles for applications in biomedicine. J. Phys. D Appl. Phys. (2003) 36, R198−R206; Beckmannら、 Magnetic resonance imaging in drug discovery: lessons from disease areas. Drug Discov. Today (2004) 9, 35−42; Kelloffら、 The progress and promise of molecular imaging probes in oncologic drug development. Clin. Cancer Res. (2005) 11, 7967−7985)。例えば、細胞の分離や細胞破砕液から特定物質を分離する用途で磁性物質の使用が試みられている(Saiyedら、 Application of magnetic techniques in the field of drug discovery and biomedicine. BioMagnetic Res. Technol. (2003) 1, 2)。しかしながら、磁性物質を効率的に細胞内に取り込んで操作することでその動きを観察し、細胞内の構造と代謝過程を糾明しようとする研究は、そのレベルがまだ未熟である。なぜならば、細胞質そのものの特性と、用いられる磁性物質に移動性の限界があるためである。
【0010】
これと関連し、細胞表面上にある磁性物質の動きを利用して細胞表面受容体(Cell Surface Receptors)の物理的特性を測定したり(米国特許第5,486,457号)(特許文献1)、細胞内で磁場による磁性物質の動きを利用して細胞質の粘性を測定したり(Gehr, et. al. Magnetic particles in the liver: a probe for intracellular movement. Nature (1983) 302, 336−338(非特許文献1); Valberg, PA. Magnetometry of ingested particles in pulmonary macrophages. Science (1984) 224, 513−516 (非特許文献2); Valberg & Feldman. Magnetic particle motions within living cells: measurement of cytoplasmic viscosity and motile activity. Biophys. J. (1987) 52, 551−561 (非特許文献3); Andreas, et. al. Measurement of Local Viscoelasticity and Forces in Living Cells by Magnetic Tweezers, Biophys. J. (1999) 76, 573−579) (非特許文献4)、細胞内の特定部分に磁性物質を移動させようとした試み(Gaoら、 Intracellular spatial control of fluorescent magnetic nanoparticles. J. Am. Chem. Soc. (2008) 130, 3710−3711)(非特許文献5)が報告されたところがあるが、磁性物質を効率的に細胞内に取り込み、その動きを適切に操作してモニターリングするという観点では、満足なものではなかった。
【0011】
具体的に、マクロファージ(Macrophage)系列を除いたHeLaなどの一般的な細胞の初期エンドソーム(Early Endosome)の直径は、普通200ないし300nmで(Lodish等前掲書、727頁; Brandhorst, et. al. Homotypic fusion of early endosomes: SNAREs do not determine fusion specificity. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006) 103, 2701−2706)、後期エンドソーム(Late Endosome)の直径は平均750nmであるため(Ganley, et. al. Rab9 GTPase regulates late endosome size and requires effector interaction for its stability. Mol. Biol. Cell (2004) 15, 5420−5430)、極めて大きい直径の磁性物質を細胞内に取り込むことは難しい。それに対し、光学顕微鏡の解像度は略200nmであるため、数nm ないし数十nmの小さな直径を有する磁性物質は、独立的に離れている場合、細胞内でその位置を判別することが極めて難しい。例えば、細胞内の小器官の中、球状のエンドソーム、リソソームなどの小胞体は、光学顕微鏡上で細胞内に散発的に散在した黒点状に見られ得るため、黒点状に観察される、小径の磁性粒子を細胞内で細胞小器官と区別してモニターリングすることは極めて難しい。
【0012】
これに本発明者は、磁性物質を生きた細胞内に取り込み、磁場の印加により磁力線方向に磁性物質が生きた細胞内でパターンを形成する方法およびこのような磁性物質のパターンをイメージ化する方法と、これに用いられる装置を発明するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許公報US5,486,457号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Gehr, et. al., Nature: 302, 336−338, 1983
【非特許文献2】Valberg, Science: 224, 513−516, 1984
【非特許文献3】Valberg & Feldman., Biophys. J. 52, 551−561, 1987
【非特許文献4】Andreas, et. al., Biophys. J. 76, 573−579, 1999
【非特許文献5】Gaoら、 J. Am. Chem. Soc. 130, 3710−3711, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、生きた細胞内に取り込まれた磁性物質が磁場による磁化方向にパターンを形成するようにする方法、およびこのような磁性物質のパターンをイメージ化する方法、およびこれに用いられる装置を提供することにその目的がある。
【0016】
また、本発明は、生きた細胞内に取り込まれた磁性物質に磁場を印加し、磁性物質が磁力線方向にパターンを形成するようにし、このような磁力線方向に磁性物質のパターンを標識物質でイメージ化する方法を提供することによって生きた細胞内の構造および物質の代謝過程を容易にモニターすることができる技術を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法は、磁場により磁力線方向に磁化される磁性物質であって、ナノ単位で粒子化され、表面が改質された磁性物質を複数個準備する段階と、前記磁性物質を生きた細胞内に提供し、かつ、1つの生きた細胞を基準に前記磁性物質を複数個提供する段階と、前記生きた細胞に収束された磁場を印加し、磁力線束(bundle)が前記生きた細胞に対して一定方向に通過するようにする段階と、前記生きた細胞内で前記磁場の磁力線方向に複数個の磁性物質が配列になるようにする段階と、前記磁性物質の配列パターンを確認する段階を含む。
【0018】
また、本発明の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法は、磁場により磁力線方向に磁化される磁性物質であって、ナノ単位で粒子化され、表面が改質された磁性物質を複数個準備する段階と、前記磁性物質を生きた細胞内に提供するものの、ただし、1つの生きた細胞を基準に前記磁性物質を複数個提供する段階と、前記磁性物質と結合して前記磁力線方向に磁性物質のパターンをイメージ化することができる標識物質を生きた細胞内に提供する段階と、前記生きた細胞に収束された磁場を印加し、磁力線束(bundle)が前記生きた細胞に対して一定方向に通過するようにする段階と、前記生きた細胞内で前記磁場の磁力線方向に複数個の磁性物質が配列になるようにする段階と、前記磁性物質の配列パターンをイメージ化できる前記標識物質のイメージ化されたパターンを確認する段階を含む。
【0019】
本発明の一実施例の方法において、前記磁性物質は磁場により磁化できる物質で構成されなければならず、鉄、マンガン、クロム、ニッケル、コバルトおよび亜鉛などの第4周期遷移金属、該遷移金属の酸化物、硫化物、リン化物および該遷移金属の合金、そして該遷移金属の合金の酸化物、硫化物およびリン化物からなる群から選択される遷移金属化合物、或いはこれらを含む組成物とすることもできる。
【0020】
好ましくは、前記磁性物質はマグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(gamma− Fe3O4)、コバルトフェライト(CoFe2O4)、マンガンオキサイド(MnO)、マンガンフェライト(MnFe2O4)、鉄−プラチナ合金(Fe−Pt alloy)、コバルト−プラチナ合金(Co−Pt alloy)およびコバルト(Co)からなる群の中から選択されたいずれか1つまたは少なくとも2つの混合物を含む。
【0021】
本発明の一実施例の方法において、前記磁性物質は1ないし1,500nmの直径を有する。好ましくは前記磁性物質は20ないし350nmの直径を有する。
【0022】
本発明の一実施例の方法において、前記磁性物質は40emu(electromagnetic unit)/g以上の飽和磁化(Saturation Magnetization)を有することが好ましく、超常磁性(Superparamagnetism)または強磁性(Ferromagnetism)の特性を有することができる。
【0023】
本発明の一実施例の方法において、前記生きた細胞内に提供された前記磁性物質は、光学顕微鏡により黒点(Black dot)状に観察され、前記黒点は150ないし3,000nm以上の直径を有する。光学顕微鏡の理論的解像度が約200nmであることから(Lodish, et. al. Molecular Cell Biology 4th ed. W.H. Freedman and company, (2000) 140−141)、前記黒点は300ないし1,500nm以上の直径を有することが好ましい。前記黒点は単一の磁性物質で構成されることもでき、多数の磁性物質が位置的にお互い隣接した形態で構成されることができる。
【0024】
一方、前記磁性物質がRITC(Rhodamine B isothiocyanate)またはFITC(fluoresceine isothiocyanate)などのような蛍光性を含む場合、細胞内に存在する前記磁性物質は蛍光顕微鏡の下、固有の蛍光を表す蛍光点(Fluorescence Dot)の形態に観察され得、蛍光顕微鏡を利用して観察した場合、前記蛍光点は前記磁性粒子の直径よりさらに大きく見え得る。
【0025】
本発明の一実施例の方法において、前記黒点は前記生きた細胞内に複数個存在する。
【0026】
本発明の一実施例の方法において、前記生きた細胞に収束された磁場を印加する時、磁場の印加方向は前記生きた細胞が置かれている底面に対して水平方向に印加され得る。
【0027】
本発明の好ましい一実施例において、前記生きた細胞に収束された磁場を印加するのは磁場印加装置により行われ、前記磁場印加装置は生きた細胞が受容された容器を固定し、磁場の強さを強化するための非磁化性磁性体からなる円筒形コア、または前記容器を支持する複数個の延長部が設けられた磁場勾配増大手段を具備し、磁場を前記容器に対して集中させ、前記容器の特定方向に前記磁性物質を移動および維持させる力を強化させることによって、前記磁性物質の磁力線方向への磁化を容易にすることができる。また、前記永久磁石または電磁石は細胞に近接させて位置づけるのが好ましい。
【0028】
本発明の一実施例の方法において、前記磁性物質のパターンと前記標識物質のイメージ化されたパターンを確認し、前記磁性物質のパターンと前記標識物質のイメージ化されたパターンが重畳(co−localization)するか否かを確認する段階をさらに含む。
【0029】
本発明の一実施例の方法において、前記標識物質はメディエータ(mediator)を利用して前記磁性物質に標識することができる。前記メディエータは1つまたは複数個のリンカー物質を含む。例えば、該メディエータは2つのリンカー物質で構成されることができる。
【0030】
本発明の一実施例の方法において、前記メディエータを利用して前記標識物質を前記磁性物質に標識するのは、前記磁性物質と前記標識物質を生きた細胞内に提供する前に行うことができる。
【0031】
代案として、前記メディエータを利用して前記標識物質を前記磁性物質に標識するのは、前記磁性物質と前記標識物質を各々生きた細胞内に提供した後、前記メディエータにより生きた細胞内で前記磁性物質に前記標識物質が標識されて行うこともできる。前記磁性物質のパターンと前記標識物質のイメージ化されたパターンとが重畳しているのが確認された場合、前記メディエータを構成するリンカー物質は生きた細胞内で結合するものと判断することができる。
【0032】
本発明の一実施例の方法において、前記メディエータを構成するリンカー物質としては、蛋白質(proteins)、核酸(nucleic acids)、糖(polysaccharide)、脂質(lipids)などの高分子化合物と、アミノ酸(amino acids)、ヌクレオチド(nucleotides)、リン酸(phosphoric acids)、ビタミン(vitamins)、アミン(amines)、その他の低分子有機化合物(organic compounds)などの低分子化合物(small molecules)などを含む。
【0033】
一方、本発明の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法に用いられる装置は、生きた細胞を培養する容器であって、磁場により磁力線方向に磁化される磁性物質であって、ナノ単位で粒子化され、表面が改質された複数個の磁性物質と、前記磁性物質と結合して前記磁力線方向への磁性物質のパターンをイメージ化できる標識物質が提供される生きた細胞を培養する容器と、前記生きた細胞に収束された磁場を印加する磁場印加装置であって、磁力線束(bundle)が前記生きた細胞に対して一定方向に通過するようにする磁場印加装置と、前記生きた細胞内で前記磁場の磁力線方向に配列になった複数個の磁性物質のパターンおよび/または前記磁性物質の配列になったパターンをイメージ化できる前記標識物質のイメージ化されたパターンをモニターする装置を含む。
【0034】
本発明の一実施例の装置において、前記モニター装置は、前記磁性物質のパターンと前記標識物質のイメージ化されたパターンとが重畳(co−localization)するか否かを確認することができる。
【0035】
本発明の好ましい一実施例の装置において、前記磁場印加装置は、生きた細胞が受容された容器を固定し、磁場の強さを強化するための非磁化性磁性体からなる円筒形コア、または前記容器を支持する複数個の延長部が設けられた磁場勾配増大手段を具備することを特徴とする。これによって、本発明の装置は、磁場を前記容器に対して集中させ、前記容器の特定方向に前記磁性物質を移動および維持させる力を強化させることによって前記磁性物質の磁力線方向への磁化パターンの形成を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、生きた細胞内に取り込まれた磁性物質に磁場を印加し、磁性物質が磁力線方向にパターンを形成し、このような磁力線方向への磁性物質のパターンを標識物質を用いてイメージ化することができる。
【0037】
また、本発明によれば、生きた細胞内に取り込まれた磁性物質の磁力線方向へのパターンを標識物質でイメージ化する方法を提供することにより、生きた細胞内の構造および物質の代謝過程を容易にモニターすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例の方法により合成された磁性粒子の走査電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明の一実施例の方法により合成された磁性粒子の透過電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明の一実施例の方法および装置に用いられる磁場印加装置の概略的な斜視図である。
【図4】本発明の一実施例の方法および装置に用いられるもう1つの磁場印加装置(磁場勾配増大手段を具備するもの)の概略的な斜視図である。
【図5】磁性物質が取り込まれたHeLa細胞に磁場をかけずに細胞を固定した後に撮影した透過光顕微鏡写真(A)と、磁場を垂直方向にかけ、細胞を固定した後に撮影した透過光顕微鏡写真(B)と、磁場を水平方向にかけ、細胞を固定した後に撮影した透過光顕微鏡写真(C)とを比較して示す。
【図6】磁性物質が取り込まれたHeLa細胞に磁場をかけ、細胞を固定した後に撮影した光学顕微鏡写真(磁場+)と、磁場をかけずに細胞を固定した後に撮影した光学顕微鏡写真(磁場−)とを比較して示す。左方のイメージは、プルシアンブルー染色を施す前の細胞の透過光イメージの原色写真であり、右方のイメージは、細胞を固定した上、プルシアンブルー染色を施した後に撮影した細胞の透過光イメージの原色写真である。矢印は水平方向の磁力線方向を指す。
【図7】磁場の方向に沿って細胞内に取り込まれた磁性物質がパターンを形成することが表れた蛍光/透過光顕微鏡写真である。矢印は磁力線方向を指す。
【図8】蛍光が標識された磁性粒子複合体が取り込まれたHeLa細胞に磁場をかけ、細胞を固定した後に撮影した蛍光および透過光顕微鏡写真(磁場+)と、磁場をかけずに細胞を固定した後に撮影した蛍光および透過光顕微鏡写真(磁場−)とを比較して示す。
【図9】ダサチニブ−ビオチン合成の概略図である。
【図10】図10のAは、ダサチニブ−磁性粒子(Das−MNP)複合体またはビオチン−磁性粒子(Bio−MNP)複合体とCSK−EGFP発現ベクターが取り込まれたHeLa細胞に磁場をかけた場合の蛍光および透過光顕微鏡写真を比較して示す。図10のBは、ダサチニブ−磁性粒子(Das−MNP)複合体またはビオチン−磁性粒子(Bio−MNP)複合体とSNF1LK−EGFP発現ベクターが取り込まれたHeLa細胞に磁場をかけた場合の蛍光および透過光顕微鏡写真を比較して示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく記述する。本発明の下記の実施例は本発明を具体化するだけのものであって、本発明の権利範囲を制限または限定するものでないことはもちろんである。本発明の詳細な説明および実施例から本発明が属する技術分野の専門家が容易に類推できるのは、本発明の権利範囲に属するものと解釈される。本発明にて引用された参考文献は、本発明に参考として統合される。
【0040】
実施例
【実施例1】
【0041】
磁性物質の合成
(1)磁性粒子の合成
細胞内で磁場によりパターンを形成することができる磁性物質の一実施例として、モールデーなどの方法(Molday, et. al. Immunospecific ferromagnetic iron−dextran reagents for the labeling and magnetic separation of cells. J. Immunol. Meth. (1982) 52, 353−367)を変形して磁性粒子を次の通り、合成して用いた。
【0042】
温度の調節と超音波強度の調節が可能な水槽型超音波洗浄機(Kodo Technical Research Co.,Ltd 、model No.JAC2010)に50mlコニカルチューブ(SPL Lifesciences(京畿道抱川市所在)、製品番号50050)を位置させ、10mlの50%(w/w)デキストラン(Fluka, Cat. No.31389, 平均分子量40000)水溶液を入れる。
【0043】
前記チューブの中に実験室用攪拌機[POONG LIM商社(ソウル市鍾路区長沙洞所在)、モデル番号PL−S10]と連結したプロペラを装着した上、10mlの1.51g FeCl3.6H2O(Sigma, Cat. No.236489)と0.64g FeCl2.4H2O(Sigma, Cat. No.220299)水溶液を一滴ずつ入れ、約2,000r.p.m.の速度で撹はんする。この過程において超音波をかけることができる。
【0044】
撹はんしながら溶液のpHが10.5に達する時まで7.5%(v/v) NH4OHで一滴ずつ添加する。この過程において水槽の温度を40ないし65℃に調節することができる。
【0045】
溶液のpHが10.5に達すれば、あらかじめ温度を65ないし90℃に合せておいた水槽に15分間湯煎する。
【0046】
湯煎の終わった溶液は、常温でゆっくり温度が下がるよう定置させる。
【0047】
遠心分離機[韓日科学産業株式会社(仁川市桂陽区鵲田洞所在)、製品番号MF−80]を用いて600 x gで5分間ずつ全部で3回の遠心分離を進行し、沈殿物を除去した上、上層液を集め、さらに2,000 x gで10分間遠心分離し、沈殿物を除去する。結合していないデキストランを除去するため、 Amicon Ultracel−100K(Millipore, Cat. No.UFC910024) を用いて卓上用遠心分離機(韓日科学産業、モデル名Combi 514K)において3,900r.p.m.で20分間遠心分離した後、磁性粒子を精製水、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline)または2M炭酸ナトリウム(sodium carbonate)(Na2CO3)溶液(pH 11)に浮游した。この他にもSephacryl S−300を利用したゲル濾過クロマトグラフィー(Gel filtration chromatography)方法でデキストランを除去することができる。
【0048】
図1は、前記方法で合成された磁性粒子の走査電子顕微鏡写真であり、図2は前記方法を変形してデキストランを添加することなく合成された磁性粒子の透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)写真である。
【0049】
(2)磁性粒子の表面改質
前記(1)の方法により合成された磁性粒子の表面をストレプトアビジン(Streptavidin)または蛍光蛋白質などの蛋白質で改質するために当業界にてよく知られた方法(March, et. al. A Simplified method for cyanogen bromide activation of agarose for affinity chromatography. Anal. Biochem. (1974) 60, 149−152; Cuatrecasas, P. Protein purification by affinity chromatography. J. Biol. Chem. (1970) 245, 3059−3065)を変形して用いた。磁性粒子の表面改質の過程は次の通りである。
【0050】
磁性粒子の表面に露出されたヒドロキシ基(hydroxy group)を活性化させるため、ドラフトチャンバー内で前記(1)の過程において用意したような2M炭酸ナトリウム(sodium carbonate)(Na2CO3 溶液(Ph 11)に浮遊された磁性粒子に、反応体積全体の2%に該当する体積で5MのCNBr溶液[2g シアノゲンブロマイド(cyanogen bromide)を1mlのアセトニトリル(acetonitril)に溶かした溶液]を添加した。
【0051】
反応を遅らすため、4ないし20℃の比較的低い温度で8ないし12分間反応させ、未反応のCNBr(cyanogen bromide)は、当業界にてよく知られた透析、遠心分離、HGMS技術(High gradient magnetic separation、米国特許第4,247,398号; Melville, et. al. Direct magnetic separation of red cells from whole blood. Nature (1975) 255, 706)または限外濾過(Ultrafiltration)などの方法で除去した。
【0052】
未反応のCNBrが除去された活性化された磁性粒子をリン酸緩衝生理食塩水または0.1M重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)溶液に浮遊させた後、10ないし200mg/ml濃度でリン酸緩衝生理食塩水に希釈された蛋白質溶液と混ぜ、4℃で14時間の間反応させて磁性粒子の表面が蛋白質により改質されるようにする。この時、蛋白質の最終濃度は0.1ないし100mg/mlになるようにする。好ましくは反応する蛋白質の最終濃度が1ないし10mg/mlになるようにする。
【0053】
蛋白質による磁性粒子表面の改質反応を終結させるためにグリシンを添加し、かつ、グリシンの最終濃度が前記蛋白質の最終濃度の5ないし50倍になるように添加し、室温で2時間の間反応させる。好ましくは、グリシンの最終濃度が前記蛋白質の最終濃度の10ないし25倍になるように添加する。
【0054】
未反応の蛋白質とグリシンは、当業界にてよく知られた遠心分離またはHGMS等の方法で除去した。
【0055】
前記方法により磁性粒子の表面をストレプトアビジンで改質し、ストレプトアビジン−磁性粒子を製作し、磁性粒子の表面を当業界にて広く知られた蛍光蛋白質の中の1つであるEGFP(Enhanced green fluorescence protein)で改質し、EGFP−磁性粒子を製作した。
【0056】
前記方法により磁性粒子の表面が蛋白質で改質されたか否かはSDS−不連続電気泳動法(SDS−discontinuous polyacrylamide gel electrophoresis;SDS−PAGE)により確認することができる。
【0057】
この他にも本発明にて使用可能な蛋白質で表面が改質された磁性粒子は、当業界にてよく知られた方法(米国特許第5,665,582号;米国特許公開第2003/0092029A1号)で直接製作する、または磁性粒子を製作販売している会社から購入して用いることができる。
【実施例2】
【0058】
細胞内に取り込まれた磁性物質の磁力線方向へのパターン形成
HeLa細胞(ATCCから購入、Cat. No.CCL−2)を96−ウェルプレートに5,000個細胞/ウェル(cells/well)単位で継代培養(subculture)し、37℃、5% CO2 培養器において10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum、Invitrogenから購入)を含有したDMEM培地を用いて培養した。
【0059】
翌日、実施例1にて合成した磁性物質に最終濃度0.1mMになるよう蛋白質伝達ドメイン(Protein Transduction Domain)を有するペプチド(アミノ酸の序列:PKKKRKVGLFGAIAGFIENGWEGMIDG)を添加した上、室温で30分間反応させた後、HGMS方法を用いて結合しない蛋白質伝達ドメインを除去した。本発明の実施例において蛋白質伝達ドメインとしては、前記序列以外にも当業界にてよく知られた蛋白質伝達ドメインを用いることができ、またペネトラチン(Penetratin)とも呼ばれるペプチドを用いることができることは、本発明が属する技術分野の当業者ならば容易に理解できるはずである。
【0060】
次に、培養されたHeLa細胞を1xD−PBSで洗浄した後、前記磁性物質と蛋白質伝達ドメインが含まれたOPTI MEM I(Invitrogenから購入)培地を添加し、37℃、5% CO2の培養器で培養した。
【0061】
翌日、磁性物質が処理された細胞をOPTI−MEM I(Invitrogenから購入、Cat. No.31985−070)培地を利用して2回洗浄した後、OPTI−MEM I培地が入っている状態で当業界にてよく知られた方法により、永久磁石または電磁石を利用して磁場をかけた(大韓民国特許第10−0792594号;大韓民国特許第10−0862368号;米国特許第4,247,398号)。
【0062】
磁性物質が細胞内で磁場によって動くようにするためには、細胞質の粘度と細胞内の構造により、水溶液中に存在していた時より大きい磁気力を受けなければならない。
【0063】
細胞内で磁性物質が受ける磁気力(Magnetic force)は、磁性物質の磁化率(Magnetization)と磁場の磁束密度(magnetic flux density)に比例する。磁場の磁束密度は磁石を構成する金属物質の磁気飽和度により影響を受けるため、高磁束密度を作るためには磁気飽和度の大きい金属を用いて磁石を作らなければならない。
【0064】
また、磁束密度は磁石から細胞間の距離の二乗に反比例するため、できるだけ高磁束密度を細胞内に存在する磁性物質に印加するためには、なるべく細胞と磁石との距離を近くしなければならない。
【0065】
これと関連し、図3には本発明の一実施例にて用いられる磁場印加装置(大韓民国特許第10−0792594号参照)が示されている。前記磁場印加装置には多数のウェル(152)が形成されたウェルプレート(150)を受け入れるための筒体(100)と、ウェルプレート(150)を固定し、非磁化性磁性体でなされた磁場の強さを強化するためのコア(140)が設けられている。図示しなかったが、前記筒体(100)の周囲に数回ないし数十万回巻線され、電源の供給時、ウェルプレート(150)を含む領域に磁場を形成するためのコイルと、コイルに電源を供給するための電源供給装置も提供される。前記コア(140)は電流が流れる間だけ、磁化される非磁化性磁性体で構成され、このようなコア(140)の設置により磁場がコア(140)側に集中する現象が発生し、コア(140)近辺の磁場の強さを高めるようになる。したがって、コア(140)を設置することによって磁場がコア(140)側に集中し、このように磁場の強さが急激に強くなると、ウェルプレート(150)内に存在する磁性物質の移動および維持させる力を強化させることによって、前記磁性物質の磁力線方向に磁化パターンの形成を容易にすることができる。
【0066】
また、図4には本発明の一実施例にて用いられるもう1つの形態の磁場印加装置(大韓民国特許第10−0862368号参照)が示されている。前記磁場印加装置(1000a)には多数のウェル(152)が形成されたウェルプレート(150)を収容するための筒体(100)と、前記筒体(100)の底面に対して上方方向に突出され、ウェルプレート(150)を支持する複数個の延長部で構成された磁場勾配増大手段(144)が設けられている。図示しないが、前記筒体(100)の周囲に数回または数十万回巻線され、電源の供給時、ウェルプレート(150)を含む領域に磁場を形成するためのコイルと、コイルに電源を供給するための電源供給装置も提供される。前記磁場勾配増大手段(144)は複数個の延長部により磁場勾配を増大させ、ウェルプレート(150)のウェル(152)内の磁性物質の移動および維持させる力を強化させることにより、前記磁性物質の磁力線方向への磁化パターンの形成を容易にすることができる。
【0067】
磁場をかけた状態で1X D−PBS(Welgene, Cat. No.LB001−02)で1回洗浄し、37%ホルムアルデヒド(Sigmaから購入)を1XD−PBSで10倍希釈し、3.7%ホルムアルデヒド溶液を作った。前記ホルムアルデヒド溶液で5分間細胞に処理し、細胞を固定した。前記細胞固定後、細胞を1X D−PBSで3回洗浄した上、顕微鏡の観察を行った。
【0068】
本実施例においては、対物レンズUplan Apo 40X/0.85が装着されたオリンパス社の蛍光顕微鏡FV1000を利用して細胞の透過光イメージを得、その結果を図5に例示した。磁場をかけない細胞からは、細胞の核周辺から磁性粒子は確認されるものの、磁力線方向へのパターンは観察されないことが確認された(図5の(A))。一方、磁場を細胞に対して垂直方向にかけた細胞からも細胞の核周辺から磁性粒子は確認されたが、磁力線方向へのパターンは観察されないことが確認された(図5の(B))。それに対し、磁場を細胞に対して水平方向にかけた細胞からは磁力線方向に磁性粒子がパターンを形成することがはっきりと観察することができた(図5の(C))。このような結果は、細胞内で誘導磁化(induced magnetization)によって磁性物質が磁力線方向にパターンを形成することを意味する。
【0069】
細胞内の小器官の中、球状を帯びたエンドソーム、リソソームなどの小胞体は、光学顕微鏡上から細胞内に散発的に散在した黒点状に見られ得る。したがって、磁性物質が磁力線方向にパターンを形成するのかを確認するためには、複数の磁性物質が1つの細胞に効率的に取り込まれなければならず、収束された磁場の磁力線束(bundle)が細胞に対して一定方向に通過できなければならない。本発明の実施例においては、黒点が磁力線方向に配列になってパターンを形成することを確認することができ、球状の細胞内の小器官と明確に区別することができた。
【実施例3】
【0070】
プルシアンブルー染色を利用した細胞内に取り込まれた磁性物質の磁力線方向パターンの確認
図5に示すように透過光顕微鏡で観察される黒色の点が磁性物質であることを確認するため、プルシアンブルー染色(Prussian Blue Staining)を施した。プルシアンブルー染色は、細胞内に取り込まれた酸化鉄成分の磁性粒子(iron oxide magnetic nanoparticle)を特異的に染色して観察することに用いられる(Frank, J. A., Miller, B. R., Arbab, A. S., Zywicke, H. A., Jordan, E. K., Lewis, B. K., Bryant, L. H., & Bulte, J. W. M. (2003) Clinically applicable labeling of mammalian and stem cells by combining superparamagnetic iron oxides and transfection agents. Radiology 228: 480−487)。磁性物質が取り込まれた細胞は、実施例2の通り準備した。磁場をかけて3時間後、細胞をホルムアルデヒドで固定した。そして、プルシアンブルー染色前に細胞を光学顕微鏡で観察し、プルシアンブルー染色後、同じ視野(field)で細胞を光学顕微鏡で観察した。プルシアンブルー染色は、プルシアンブルー鉄ステインキット[Prussian Blue Iron Stain Kit(Polysciencesから購入、Cat.No.24199)]を用いて行った。
【0071】
本実施例においては対物レンズLUCPlan F1 60Xが装着されたオリンパス社のIX51倒立顕微鏡(Olympus IX51 inverted system microscope equipped with DP70 CCD camera, Japan)を利用して細胞の透過光イメージを得た。図6で確認されるように、磁場をかけた細胞からは磁性物質のパターンが磁化方向(矢印方向)に形成され、光学顕微鏡で観察され、このようなパターンはプルシアンブルー染色により特異的に染色されることが確認された。したがって、磁場をかけることにより形成されるパターンは細胞内に取り込まれた磁性物質によるものであることが確認された。磁場をかけない細胞からは細胞内に取り込まれた磁性物質がプルシアンブルー染色により染色されることが観察されたが、磁力線方向に形成されたパターンは見られないことが確認された。
【実施例4】
【0072】
細胞内に取り込まれた磁性物質の磁力線方向の変化に伴うパターン変化の観察
磁力線方向の変化に伴う磁性物質のパターンの変化が次の通り確認された。磁性物質が取り込まれた細胞は、実施例2の通り準備した。実施例2の通り細胞が生きた状態で磁場を印加した後、細胞を固定した。
【0073】
本実施例においては対物レンズPlan−Neofluar 20Xが装着されたZeiss社のLSM510 META NLO顕微鏡を利用して細胞の蛍光および透過光イメージを得た。図7で確認されるように、磁場をかけると細胞内で磁性粒子のパターンが磁力線方向(矢印方向)に形成されることが観察され、このようなパターンは磁場の方向に沿って再形成されることが確認された。
【実施例5】
【0074】
蛍光標識された磁性物質の磁力線方向への蛍光パターンの観察
蛍光標識された磁性物質の磁化方向パターンが蛍光物質によりイメージ化されることを観察するため、次のような実験を行った。96−ウェルプレート(Greinerから購入、Cat.No.655090)にHeLa細胞(ATCCから購入、Cat.No.CCL−2)を4,000個細胞/ウェル(cells/well)単位で継代培養(subculture)した。翌日、培養されたHeLa細胞に磁性物質を次のような過程に従って処理した。
【0075】
1)ストレプトアビジン−磁性粒子をビオチン−SS−FITC(ビオチン−SS−FITC)と混合して反応させ、磁性粒子を蛍光標識させた。
【0076】
2)前記反応30分経過後、混合液を当業界にて知られた磁性物質分離方法、例えばHGMS技術(High gradient magnetic separation)を利用して精製した。
【0077】
3)精製された蛍光標識された磁性粒子を実施例2の通り細胞に処理し、磁場をかけた後、ホルムアルデヒド溶液で細胞を固定した。
【0078】
本実施例では対物レンズUplan Apo 40X/0.85が装着されたオリンパス社の蛍光顕微鏡FV1000を利用して細胞の蛍光イメージと透過光イメージを得た。図8に示すように、FITCで蛍光標識された磁性粒子は磁場をかけることにより蛍光パターンが磁力線方向(矢印方向)に形成されることが確認された。しかし、磁場をかけない細胞からはFITC蛍光は観察されたものの、特異的な蛍光パターンは観察されなかった。したがって、本実施例においては細胞内で収束された磁場印加により形成された複数の磁性粒子の磁化パターンが標識物質である蛍光物質によりイメージ化されることを確認することができた。
【実施例6】
【0079】
メディエータを利用して蛍光標識された磁性物質の磁力線方向への蛍光パターンの観察
本実施例においては表面が改質された磁性物質に蛍光物質が直接標識された場合のみならず、表面が改質された磁性物質にメディエータ(mediator)を利用して蛍光物質を標識した場合にも磁場印加により形成された複数の磁性粒子の磁化パターンが標識物質である蛍光物質によりイメージ化されるか否かを観察した。また、磁性物質が形成する磁力線方向のパターンと重畳する蛍光パターンが形成されるか否かも確認した。
【0080】
メディエータは本発明が属する技術分野において使用可能なものと認識されるリンカー物質を1つまたは複数個用いて構成することができる。以下、その一例としてメディエータを2つのリンカー物質で構成したものを用いて実験を行った。メディエータを利用して蛍光物質を、表面が改質された磁性粒子に標識することは、磁性粒子と蛍光物質を細胞内に提供する前に行われることもでき、磁性粒子と蛍光物質を各々細胞内に提供した後、メディエータにより細胞内で表面が改質された磁性粒子に蛍光物質が標識されて行われることもできる。
【0081】
メディエータを構成するリンカー物質の1つとしては、慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia)の治療剤として使われているダサチニブ(dasatinib)[Lombardo, L. J., Lee, F. Y., Chen, P.ら、 Discovery of N−(2−chloro−6−methyl−phenyl)−2−(6−(4−(2−hydroxyethyl)−piperazin−1−yl)−2−methylpyrimidin−4−4−ylamino)thiazole−5−carboxamide (BMS−354825), a dual Src/Abl kinase inhibitor with potent antitumor activity in preclinical assays. J. Med. Chem. 47, 6658−6661 (2004); Shah, N. P., Tran, C., Lee, F. Y. Chen, P., Norris, D., Sawyers, C. L. Oerriding imatinib resistance with a novel ABL kinase inhibitor. Science 305, 399−401 (2004)]を選択した。また、メディエータを構成するもう1つのリンカー物質としては、前述したリンカー物質であるダサチニブと結合するSRC(GenBank Acc. No.NM_198291)またはSNF1LK(GenBank Acc. No.BC038504)を用いた。また、磁性粒子の表面をダサチニブで改質するため、ダサチニブ−ビオチンを合成した。
ダサチニブ−ビオチン(Dasatinib−biotin)は図9の概略図の通り合成した。
【0082】
図9に示されたダサチニブ−ビオチン合成の過程を説明すれば、次の通りである。
【0083】
まず、ダサチニブ−ビオチンを合成するため、まず、2,3,5,6−テトラフルオロフェニルトリフルオロアセテート(2,3,5,6−tetrafluorophenyl trifluoroacetate)形態のビオチンリンカーを合成した。
【0084】
(1)窒素大気状態でトリフルオロ酢酸無水物(trifluoroacetic anhydride)に溶けられた2,3,5,6−テトラフルオロフェノール(2,3,5,6−tetrafluorophenol)に BF3エチルエーテル(BF3 ethylether)を添加した。
【0085】
(2)溶媒を除去した後、ビオチンリンカー化合物をTEA/DMF混合液に溶かされた化合物1とカップリングして化合物2を生産した。
【0086】
それから、ダサチニブ−ビオチン(dasatinib− biotin)は、次の通り合成した。
【0087】
(1)ダサチニブはTHFとDMFの混合液に溶かした上、トリエチルアミンを添加した後、冷却させた。
【0088】
(2)ダサチニブ溶液にメタンスルホニルクロリド(methanesulfonyl chloride)をゆっくり滴加した後、常温で一晩、撹はんした。
【0089】
(3)反応液にNaN3を入れて摂氏50℃で一晩、撹はんした。
【0090】
(4)反応液を減圧濃縮した後、残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0091】
(5)精製された産物をTHFに溶解し、過量のトリフェニルホスフィン(triphenylphosphine)を添加し、常温で5時間撹はんした。
【0092】
(6)反応液に水を添加し、摂氏70℃で一晩撹はんした後、減圧濃縮した。
【0093】
(7)残渣を窒素大気状態でDMFに溶解させた後、トリエチルアミン(triethylamine)を添加した。
【0094】
(8)化合物2をDMFに溶解して添加した後、常温で3日間撹はんした。
【0095】
(9)反応液を減圧濃縮した後、MeOH/MCカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0096】
それから、合成された化合物はNMRおよびLC−MSを利用して確認した。
【0097】
CSK cDNA(GenBank Acc. No.NM_004383.1)はOpen Biosystems社から購入した。停止コドンが除去されたCSK ORFクローンを製作するため、次のような実験を行った。CSK ORF増幅に必要なプライマーは次の通りであり、コスモジンテック(株)から購入して用いた:CSK−Fプライマー, 5’−GCA GGC TCC ACC ATG TCA GCA ATA CAG GCC GCC T−3’; CSK−Rプライマー, 5’−CAA GAA AGC TGG GTG CAG GTG CAG CTC GTG GGT TTT G−3’. CSK cDNAを鋳型として用い、前記プライマーを利用して次の通りPCR増幅を行った:95℃、5分、1サイクル;95℃、0.5分、50℃、0.5分、72℃、2分、10〜30サイクル;72℃、7分1サイクル。 PCR増幅に用いられたDNA重合酵素はStratagene、Enzynomics、Cosmo Genetech、ELPIS Biotechなどから購入して製造社の用法に基づいて使用した。
【0098】
上記の通りに増幅されたCSK ORFを次のようなプライマーで再増幅した:attB1−F2プライマー、5’−GGGGACAAGT TTGTACAAAA AAGCAGGCTC CACCATG−3’; attB2−R2 プライマー、5’−GGGGACCACT TTGTACAAGA AAGCTGGGTG−3’。前記増幅されたCSK ORFのPCR産物を鋳型とし、attB1−F2およびattB2−R2プライマーを利用して次の通り、PCR増幅を行った:95℃、2分、1サイクル;95℃、0.5分、45℃、0.5分、72℃、2分、5〜10サイクル;95℃、0.5分、50℃、0.5分、72℃、2分、5〜10サイクル;72℃、7分、1サイクル。上記の通りに増幅されたCSK ORFのPCR産物を電気泳動して分離した後、pDONR201あるいはpDONR221ベクター(Invitrogenから購入)に公知の方法(Hartleyら、 (2000) DNA cloning using in vitro site−specific recombination. Genome Res. 10, 1788−1795)でクローニングして停止コドンが除去されたCSK ORFクローンを製作した。完成されたCSK ORFクローンは塩基序列分析により確認した。
【0099】
停止コドンが除去されたSNF1LK(GenBank Acc. No.BC038504) ORF(open reading frame)クローンはOpen Biosystems社から購入した。
【0100】
SNF1LK ORFクローンとCSK ORFクローンは再び公知の方法(Hartleyら、 (2000) DNA cloning using in vitro site−specific recombination. Genome Res. 10, 1788−1795)によりpCMV−DEST−EGFPベクターを利用してCMV−SNF1LK−EGFPおよびCMV−CSK−EGFP発現ベクターにクローニングした。pCMV−DEST−EGFPベクターはpcDNA3.1/Zeo(+)ベクター(Invitrogenから購入、Cat. No.V860−20)にattR1−ccdB−attR2序列を挿入し、attR2序列後にEGFP遺伝子を挿入して製作した。
【0101】
HeLa細胞を96−ウェルプレートに5,000〜10,000細胞/ウェル濃度に継代培養した後、前記用意された発現ベクターDNAを形質導入した。DNA形質導入は公知の方法、その一例として、リポフェクタミン(lipofectamine)(Invitrogenから購入)あるいはFuGene6(Rocheから購入)を利用して行うことができる。DNAが形質導入された細胞にダサチニブ−ビオチンがコーティングされた磁性物質を実施例2に記述された方法で取り込み、NDGA(Nordihydroguaiaretic acid、Sigmaから購入)を最終25〜50μMになるように処理した。また、実施例2に記述された方法のように磁場を印加した後、顕微鏡観察を行った。
【0102】
本実施例においては対物レンズUplan Apo 40X0.85が装着されたオリンパス社の蛍光顕微鏡FV1000を利用して細胞の蛍光イメージを得た。図10のAに示すように、表面が改質された磁性物質にメディエータ(ダサチニブ−CSK)を用いて蛍光物質であるEGFP蛋白質を標識した場合、磁化方向(磁力線方向)にEGFPの蛍光パターンが形成されることが確認された。しかし、メディエータのないネガティブコントロール(Negative control)としてビオチン−磁性粒子複合体(bio−MNP)を用いた場合、このようなEGFPの蛍光パターンが確認されなかった。
【0103】
また、図10のBに示すように、表面が改質された磁性物質にメディエータ(ダサチニブ−SNF1LK)を利用して蛍光物質であるEGFP蛋白質を標識した場合、磁化方向(磁力線方向)にEGFPの蛍光パターンが形成されることが確認された。しかしながら、メディエータのないネガティブコントロールとしてビオチン−磁性粒子複合体(bio−MNP)を用いた場合、このようなEGFPの蛍光パターンが確認されなかった。
【0104】
一方、このような蛍光パターンは透過光イメージから観察される磁性物質のパターンと重畳して現れ、これは表面が改質された磁性物質に蛍光物質がメディエータのダサチニブ−CSKまたはダサチニブ−SNF1LKにより正確に標識され、磁化パターンをイメージ化した結果であることが分かる。したがって、本発明によれば、生きた細胞内に取り込まれた磁性物質の磁力線方向へのパターンを標識物質でイメージ化する方法を提供することにより、生きた細胞内の構造および物質の代謝過程をモニターすることに応用することができる。例えば、本実施例においてはリンカー物質であるダサチニブとCSKまたはダサチニブとSNF1LKとが結合してメディエータを構成する点を利用して蛍光物質を磁性物質に標識し、蛍光パターンを観察したが、結合するか否かが不明なリンカー物質をメディエータで構成した場合、蛍光物質が磁性物質に標識されるか否かを蛍光パターンの形成可否と磁性物質の磁化パターンおよび蛍光パターンの重畳可否で確認することができ、さらにはこれを利用してリンカー物質の細胞内の代謝における反応および役割と信号伝達過程などをモニターすることができるものである。
【0105】
以上、本発明を前記実施例を挙げて説明したが、本発明はこれに制限されるものでない。当業者であれば本発明の趣旨および範囲を外れることなく修正、変更することができ、このような修正と変更もまた本発明に属するものであることを知ることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生きた細胞内で磁力線方向に磁化される磁性物質のパターンを形成する方法および磁性物質のパターンをイメージ化する方法、およびこれに用いられる装置に関するものであって、さらに詳しくは、生きた細胞内で磁性物質に磁場を印加し、磁性物質が磁力線方向にパターンを形成するようにし、標識物質を利用してこのような磁力線方向への磁性物質のパターンをイメージ化する方法およびこれに用いられる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞はヒトを含む有機体の基本構造であり、活動単位である。生きた細胞は細胞質(cytoplasm)と多様な細胞小器官(subcellular organelles)、例えば、核(nucleus)、核小体(nucleolus)、ゴルジ体(Golgi apparatus)、小胞体(endoplasmic reticulum)、ミトコンドリア(mitochondria)、エンドソーム(endosome)、ペルオキシソーム(peroxisome)、リソソーム(lysosome)、細胞骨格(cytoskeleton)などで構成された複雑な構造を有する。
【0003】
生きた細胞の生命現象は、このような細胞小器官と細胞小器官を構成する、または細胞小器官に存在する多様な細胞内物質(cellular components)、例えば、蛋白質(proteins)、核酸(nucleic acids)、糖(polysaccharide)、脂質(lipids)などの高分子化合物と、アミノ酸(amino acids)、ヌクレオチド(nucleotides)、リン酸(phosphoric acids)、ビタミン(vitamins)、アミン(amines)、その他、低分子有機化合物(organic compounds)などの低分子化合物(small molecules)により調節され、維持される。
【0004】
細胞の細胞質は、粘弾性(viscoelasticity)と揺変性(thixotropy)の特性を有するゲル様(gel−like)物質として知られており(Luby−Phelpsら、 Probing the structure of cytoplasm. J. Cell Biol.(1986)102, 2015−2022)、細胞質は、水より約4倍高い液状粘性(fluid phase viscosity)を有するものとして知られている。また、細胞質に溶けている巨大分子の大きさによって自由拡散(free diffusion)を制限する障壁を有するものとして知られている(Luby−Phelpsら、 Probing the structure of cytoplasm. J. Cell Biol.(1986)102, 2015−2022)。前記細胞内障壁は、フィラメント状の網目(filamentous meshwork)からなるものと推定され、網目の平均細孔(pore)径は30〜40nmであるものと推算される(Luby−Phelps,et al. Probing the structure of cytoplasm. J. Cell Biol.(1986)102,2015−2022)。
【0005】
このような細胞質の特性に起因し、蛋白質重合体(oligomeric proteins)、多酵素複合体(multi−enzyme complexes)、mRNAなどを含む長鎖ポリマー(long chain polymer)、リボソーム、ウイルスなどは極めてゆっくり動いているか、ほとんど動いていないものと推算され、半径が25−30nm以上である粒子はほとんど動くことができないものと報告されている(Luby−Phelps,et al. Probing the structure of cytoplasm. J. Cell Biol.(1986)102, 2015−2022; Arrio−Dupontら、 Translational diffusion of globular proteins in the cytoplasm of cultured muscle cells. Biophys. J.(2000)78, 901−907; Luby−Phelpsら、 Hindered diffusion of inert tracer particles in the cytoplasm of mouse 3T3 cells. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1987)84, 4910−4913; Weissら、 Anomalous subdiffusion is a measure for cytoplasmic crowding in living cells. Biophys. J. (2004)87, 3518−3524)。
【0006】
伝統的に細胞の構造と細胞内物質の機能を研究するため、生物学では多様な方法が用いられており、特に多様な生命現象が起きる重要な部分である細胞質の特性と構造を研究するため、光学的道具として走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)、共焦点顕微鏡(Confocal Microscope)、蛍光顕微鏡(Fluorescence Microscope)または光学顕微鏡(Light Microscope)などが用いられてきた。
【0007】
これと関連し、細胞質の物理的特性を糾明するための努力の一環として磁性物質を用いた細胞質の粘弾性測定(Crick,et. al. The physical properties of cytoplasm: a study by means of the magnetic particle method. Exp. Cell Res.(1950)1, 505−533)、細胞質のアクチンフィラメント溶液のレオロジー(rheology)測定(Ziemann, et. al. Local measurements of the viscoelastic moduli of entangled actin networks using an oscillating magnetic bead micro−rheometer. Biophys. J.(1994)66, 2210−2216)などの事例があるが、磁性物質を利用して細胞の動きを追跡したり、磁性物質の動きを利用した細胞内の構造と代謝過程を糾明し、細胞質の生物学的特性を糾明するなどの努力は低調であった。
【0008】
一方、細胞内の構造と代謝過程を理解するためのもう1つの努力の一環として、特定物質を蛍光標識した後、顕微鏡での観察を行う蛍光プローブ技術(Lippincott−Schwartzら、 Studying protein dynamics in living cells. Nat. Rev. Mol. Cell Biol.(2001)2, 444−456; Zhangら、 Creating new fluorescent probes for cell biology. Nat. Rev. Mol. Cell Biol.(2002)3, 906−918)が開発され、用いられている。蛍光プローブ技術は、細胞を破砕することなく、細胞内で特定物質の位置を把握できるという長所があるが、細胞内で起きる多様な生命現象および代謝過程の糾明と、信号伝達(Signal transduction)などに関与する物質を追跡するには限界があるという短所がある。また、最近、多様な類型のナノ粒子/ナノクリスタルを利用する蛍光プローブ技術(Chanら、 Luminescent quantum dots for multiplexed biological detection and imaging. Curr. Opin. Biotechnol.(2002)13, 40−46; Berry & Curtis. Functionalization of magnetic nanoparticles for applications in biomedicine. J. Phys. D Appl. Phys.(2003)36, R198−R206; Rudin & Weissleder. Molecular imaging in drug discovery and development. Nat. Rev. Drug Discov.(2003)2, 123−131; Alivisatos. The use of nanocrystals in biological detection. Nat. Biotechnol.(2004)22, 47−52)と、細胞標識および細胞小器官トラッキング技術(Derfusら、 Intracellular delivery of quantum dots for live cell labeling and organelle tracking. Adv. Mater.(2004)16, 961−966)も試みられているが、前記のような短所をそのまま有する。
【0009】
このような問題点に対する代案として、磁性物質が注目を受けているが、磁性物質は研究用および医学用への使用が試みられている (Alexiouら、 Locoregional cancer treatment with magnetic drug targeting. Cancer Res. (2000) 60, 6641−6648; Lewinら、 Tat peptide−derived magnetic nanoparticles allow in vivo tracking and recovery of progenitor cells. Nat. Biotechnol. (2000) 18, 410−414; Berry & Curtis. Functionalization of magnetic nanoparticles for applications in biomedicine. J. Phys. D Appl. Phys. (2003) 36, R198−R206; Beckmannら、 Magnetic resonance imaging in drug discovery: lessons from disease areas. Drug Discov. Today (2004) 9, 35−42; Kelloffら、 The progress and promise of molecular imaging probes in oncologic drug development. Clin. Cancer Res. (2005) 11, 7967−7985)。例えば、細胞の分離や細胞破砕液から特定物質を分離する用途で磁性物質の使用が試みられている(Saiyedら、 Application of magnetic techniques in the field of drug discovery and biomedicine. BioMagnetic Res. Technol. (2003) 1, 2)。しかしながら、磁性物質を効率的に細胞内に取り込んで操作することでその動きを観察し、細胞内の構造と代謝過程を糾明しようとする研究は、そのレベルがまだ未熟である。なぜならば、細胞質そのものの特性と、用いられる磁性物質に移動性の限界があるためである。
【0010】
これと関連し、細胞表面上にある磁性物質の動きを利用して細胞表面受容体(Cell Surface Receptors)の物理的特性を測定したり(米国特許第5,486,457号)(特許文献1)、細胞内で磁場による磁性物質の動きを利用して細胞質の粘性を測定したり(Gehr, et. al. Magnetic particles in the liver: a probe for intracellular movement. Nature (1983) 302, 336−338(非特許文献1); Valberg, PA. Magnetometry of ingested particles in pulmonary macrophages. Science (1984) 224, 513−516 (非特許文献2); Valberg & Feldman. Magnetic particle motions within living cells: measurement of cytoplasmic viscosity and motile activity. Biophys. J. (1987) 52, 551−561 (非特許文献3); Andreas, et. al. Measurement of Local Viscoelasticity and Forces in Living Cells by Magnetic Tweezers, Biophys. J. (1999) 76, 573−579) (非特許文献4)、細胞内の特定部分に磁性物質を移動させようとした試み(Gaoら、 Intracellular spatial control of fluorescent magnetic nanoparticles. J. Am. Chem. Soc. (2008) 130, 3710−3711)(非特許文献5)が報告されたところがあるが、磁性物質を効率的に細胞内に取り込み、その動きを適切に操作してモニターリングするという観点では、満足なものではなかった。
【0011】
具体的に、マクロファージ(Macrophage)系列を除いたHeLaなどの一般的な細胞の初期エンドソーム(Early Endosome)の直径は、普通200ないし300nmで(Lodish等前掲書、727頁; Brandhorst, et. al. Homotypic fusion of early endosomes: SNAREs do not determine fusion specificity. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006) 103, 2701−2706)、後期エンドソーム(Late Endosome)の直径は平均750nmであるため(Ganley, et. al. Rab9 GTPase regulates late endosome size and requires effector interaction for its stability. Mol. Biol. Cell (2004) 15, 5420−5430)、極めて大きい直径の磁性物質を細胞内に取り込むことは難しい。それに対し、光学顕微鏡の解像度は略200nmであるため、数nm ないし数十nmの小さな直径を有する磁性物質は、独立的に離れている場合、細胞内でその位置を判別することが極めて難しい。例えば、細胞内の小器官の中、球状のエンドソーム、リソソームなどの小胞体は、光学顕微鏡上で細胞内に散発的に散在した黒点状に見られ得るため、黒点状に観察される、小径の磁性粒子を細胞内で細胞小器官と区別してモニターリングすることは極めて難しい。
【0012】
これに本発明者は、磁性物質を生きた細胞内に取り込み、磁場の印加により磁力線方向に磁性物質が生きた細胞内でパターンを形成する方法およびこのような磁性物質のパターンをイメージ化する方法と、これに用いられる装置を発明するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許公報US5,486,457号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Gehr, et. al., Nature: 302, 336−338, 1983
【非特許文献2】Valberg, Science: 224, 513−516, 1984
【非特許文献3】Valberg & Feldman., Biophys. J. 52, 551−561, 1987
【非特許文献4】Andreas, et. al., Biophys. J. 76, 573−579, 1999
【非特許文献5】Gaoら、 J. Am. Chem. Soc. 130, 3710−3711, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、生きた細胞内に取り込まれた磁性物質が磁場による磁化方向にパターンを形成するようにする方法、およびこのような磁性物質のパターンをイメージ化する方法、およびこれに用いられる装置を提供することにその目的がある。
【0016】
また、本発明は、生きた細胞内に取り込まれた磁性物質に磁場を印加し、磁性物質が磁力線方向にパターンを形成するようにし、このような磁力線方向に磁性物質のパターンを標識物質でイメージ化する方法を提供することによって生きた細胞内の構造および物質の代謝過程を容易にモニターすることができる技術を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法は、磁場により磁力線方向に磁化される磁性物質であって、ナノ単位で粒子化され、表面が改質された磁性物質を複数個準備する段階と、前記磁性物質を生きた細胞内に提供し、かつ、1つの生きた細胞を基準に前記磁性物質を複数個提供する段階と、前記生きた細胞に収束された磁場を印加し、磁力線束(bundle)が前記生きた細胞に対して一定方向に通過するようにする段階と、前記生きた細胞内で前記磁場の磁力線方向に複数個の磁性物質が配列になるようにする段階と、前記磁性物質の配列パターンを確認する段階を含む。
【0018】
また、本発明の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法は、磁場により磁力線方向に磁化される磁性物質であって、ナノ単位で粒子化され、表面が改質された磁性物質を複数個準備する段階と、前記磁性物質を生きた細胞内に提供するものの、ただし、1つの生きた細胞を基準に前記磁性物質を複数個提供する段階と、前記磁性物質と結合して前記磁力線方向に磁性物質のパターンをイメージ化することができる標識物質を生きた細胞内に提供する段階と、前記生きた細胞に収束された磁場を印加し、磁力線束(bundle)が前記生きた細胞に対して一定方向に通過するようにする段階と、前記生きた細胞内で前記磁場の磁力線方向に複数個の磁性物質が配列になるようにする段階と、前記磁性物質の配列パターンをイメージ化できる前記標識物質のイメージ化されたパターンを確認する段階を含む。
【0019】
本発明の一実施例の方法において、前記磁性物質は磁場により磁化できる物質で構成されなければならず、鉄、マンガン、クロム、ニッケル、コバルトおよび亜鉛などの第4周期遷移金属、該遷移金属の酸化物、硫化物、リン化物および該遷移金属の合金、そして該遷移金属の合金の酸化物、硫化物およびリン化物からなる群から選択される遷移金属化合物、或いはこれらを含む組成物とすることもできる。
【0020】
好ましくは、前記磁性物質はマグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(gamma− Fe3O4)、コバルトフェライト(CoFe2O4)、マンガンオキサイド(MnO)、マンガンフェライト(MnFe2O4)、鉄−プラチナ合金(Fe−Pt alloy)、コバルト−プラチナ合金(Co−Pt alloy)およびコバルト(Co)からなる群の中から選択されたいずれか1つまたは少なくとも2つの混合物を含む。
【0021】
本発明の一実施例の方法において、前記磁性物質は1ないし1,500nmの直径を有する。好ましくは前記磁性物質は20ないし350nmの直径を有する。
【0022】
本発明の一実施例の方法において、前記磁性物質は40emu(electromagnetic unit)/g以上の飽和磁化(Saturation Magnetization)を有することが好ましく、超常磁性(Superparamagnetism)または強磁性(Ferromagnetism)の特性を有することができる。
【0023】
本発明の一実施例の方法において、前記生きた細胞内に提供された前記磁性物質は、光学顕微鏡により黒点(Black dot)状に観察され、前記黒点は150ないし3,000nm以上の直径を有する。光学顕微鏡の理論的解像度が約200nmであることから(Lodish, et. al. Molecular Cell Biology 4th ed. W.H. Freedman and company, (2000) 140−141)、前記黒点は300ないし1,500nm以上の直径を有することが好ましい。前記黒点は単一の磁性物質で構成されることもでき、多数の磁性物質が位置的にお互い隣接した形態で構成されることができる。
【0024】
一方、前記磁性物質がRITC(Rhodamine B isothiocyanate)またはFITC(fluoresceine isothiocyanate)などのような蛍光性を含む場合、細胞内に存在する前記磁性物質は蛍光顕微鏡の下、固有の蛍光を表す蛍光点(Fluorescence Dot)の形態に観察され得、蛍光顕微鏡を利用して観察した場合、前記蛍光点は前記磁性粒子の直径よりさらに大きく見え得る。
【0025】
本発明の一実施例の方法において、前記黒点は前記生きた細胞内に複数個存在する。
【0026】
本発明の一実施例の方法において、前記生きた細胞に収束された磁場を印加する時、磁場の印加方向は前記生きた細胞が置かれている底面に対して水平方向に印加され得る。
【0027】
本発明の好ましい一実施例において、前記生きた細胞に収束された磁場を印加するのは磁場印加装置により行われ、前記磁場印加装置は生きた細胞が受容された容器を固定し、磁場の強さを強化するための非磁化性磁性体からなる円筒形コア、または前記容器を支持する複数個の延長部が設けられた磁場勾配増大手段を具備し、磁場を前記容器に対して集中させ、前記容器の特定方向に前記磁性物質を移動および維持させる力を強化させることによって、前記磁性物質の磁力線方向への磁化を容易にすることができる。また、前記永久磁石または電磁石は細胞に近接させて位置づけるのが好ましい。
【0028】
本発明の一実施例の方法において、前記磁性物質のパターンと前記標識物質のイメージ化されたパターンを確認し、前記磁性物質のパターンと前記標識物質のイメージ化されたパターンが重畳(co−localization)するか否かを確認する段階をさらに含む。
【0029】
本発明の一実施例の方法において、前記標識物質はメディエータ(mediator)を利用して前記磁性物質に標識することができる。前記メディエータは1つまたは複数個のリンカー物質を含む。例えば、該メディエータは2つのリンカー物質で構成されることができる。
【0030】
本発明の一実施例の方法において、前記メディエータを利用して前記標識物質を前記磁性物質に標識するのは、前記磁性物質と前記標識物質を生きた細胞内に提供する前に行うことができる。
【0031】
代案として、前記メディエータを利用して前記標識物質を前記磁性物質に標識するのは、前記磁性物質と前記標識物質を各々生きた細胞内に提供した後、前記メディエータにより生きた細胞内で前記磁性物質に前記標識物質が標識されて行うこともできる。前記磁性物質のパターンと前記標識物質のイメージ化されたパターンとが重畳しているのが確認された場合、前記メディエータを構成するリンカー物質は生きた細胞内で結合するものと判断することができる。
【0032】
本発明の一実施例の方法において、前記メディエータを構成するリンカー物質としては、蛋白質(proteins)、核酸(nucleic acids)、糖(polysaccharide)、脂質(lipids)などの高分子化合物と、アミノ酸(amino acids)、ヌクレオチド(nucleotides)、リン酸(phosphoric acids)、ビタミン(vitamins)、アミン(amines)、その他の低分子有機化合物(organic compounds)などの低分子化合物(small molecules)などを含む。
【0033】
一方、本発明の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法に用いられる装置は、生きた細胞を培養する容器であって、磁場により磁力線方向に磁化される磁性物質であって、ナノ単位で粒子化され、表面が改質された複数個の磁性物質と、前記磁性物質と結合して前記磁力線方向への磁性物質のパターンをイメージ化できる標識物質が提供される生きた細胞を培養する容器と、前記生きた細胞に収束された磁場を印加する磁場印加装置であって、磁力線束(bundle)が前記生きた細胞に対して一定方向に通過するようにする磁場印加装置と、前記生きた細胞内で前記磁場の磁力線方向に配列になった複数個の磁性物質のパターンおよび/または前記磁性物質の配列になったパターンをイメージ化できる前記標識物質のイメージ化されたパターンをモニターする装置を含む。
【0034】
本発明の一実施例の装置において、前記モニター装置は、前記磁性物質のパターンと前記標識物質のイメージ化されたパターンとが重畳(co−localization)するか否かを確認することができる。
【0035】
本発明の好ましい一実施例の装置において、前記磁場印加装置は、生きた細胞が受容された容器を固定し、磁場の強さを強化するための非磁化性磁性体からなる円筒形コア、または前記容器を支持する複数個の延長部が設けられた磁場勾配増大手段を具備することを特徴とする。これによって、本発明の装置は、磁場を前記容器に対して集中させ、前記容器の特定方向に前記磁性物質を移動および維持させる力を強化させることによって前記磁性物質の磁力線方向への磁化パターンの形成を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、生きた細胞内に取り込まれた磁性物質に磁場を印加し、磁性物質が磁力線方向にパターンを形成し、このような磁力線方向への磁性物質のパターンを標識物質を用いてイメージ化することができる。
【0037】
また、本発明によれば、生きた細胞内に取り込まれた磁性物質の磁力線方向へのパターンを標識物質でイメージ化する方法を提供することにより、生きた細胞内の構造および物質の代謝過程を容易にモニターすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例の方法により合成された磁性粒子の走査電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明の一実施例の方法により合成された磁性粒子の透過電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明の一実施例の方法および装置に用いられる磁場印加装置の概略的な斜視図である。
【図4】本発明の一実施例の方法および装置に用いられるもう1つの磁場印加装置(磁場勾配増大手段を具備するもの)の概略的な斜視図である。
【図5】磁性物質が取り込まれたHeLa細胞に磁場をかけずに細胞を固定した後に撮影した透過光顕微鏡写真(A)と、磁場を垂直方向にかけ、細胞を固定した後に撮影した透過光顕微鏡写真(B)と、磁場を水平方向にかけ、細胞を固定した後に撮影した透過光顕微鏡写真(C)とを比較して示す。
【図6】磁性物質が取り込まれたHeLa細胞に磁場をかけ、細胞を固定した後に撮影した光学顕微鏡写真(磁場+)と、磁場をかけずに細胞を固定した後に撮影した光学顕微鏡写真(磁場−)とを比較して示す。左方のイメージは、プルシアンブルー染色を施す前の細胞の透過光イメージの原色写真であり、右方のイメージは、細胞を固定した上、プルシアンブルー染色を施した後に撮影した細胞の透過光イメージの原色写真である。矢印は水平方向の磁力線方向を指す。
【図7】磁場の方向に沿って細胞内に取り込まれた磁性物質がパターンを形成することが表れた蛍光/透過光顕微鏡写真である。矢印は磁力線方向を指す。
【図8】蛍光が標識された磁性粒子複合体が取り込まれたHeLa細胞に磁場をかけ、細胞を固定した後に撮影した蛍光および透過光顕微鏡写真(磁場+)と、磁場をかけずに細胞を固定した後に撮影した蛍光および透過光顕微鏡写真(磁場−)とを比較して示す。
【図9】ダサチニブ−ビオチン合成の概略図である。
【図10】図10のAは、ダサチニブ−磁性粒子(Das−MNP)複合体またはビオチン−磁性粒子(Bio−MNP)複合体とCSK−EGFP発現ベクターが取り込まれたHeLa細胞に磁場をかけた場合の蛍光および透過光顕微鏡写真を比較して示す。図10のBは、ダサチニブ−磁性粒子(Das−MNP)複合体またはビオチン−磁性粒子(Bio−MNP)複合体とSNF1LK−EGFP発現ベクターが取り込まれたHeLa細胞に磁場をかけた場合の蛍光および透過光顕微鏡写真を比較して示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく記述する。本発明の下記の実施例は本発明を具体化するだけのものであって、本発明の権利範囲を制限または限定するものでないことはもちろんである。本発明の詳細な説明および実施例から本発明が属する技術分野の専門家が容易に類推できるのは、本発明の権利範囲に属するものと解釈される。本発明にて引用された参考文献は、本発明に参考として統合される。
【0040】
実施例
【実施例1】
【0041】
磁性物質の合成
(1)磁性粒子の合成
細胞内で磁場によりパターンを形成することができる磁性物質の一実施例として、モールデーなどの方法(Molday, et. al. Immunospecific ferromagnetic iron−dextran reagents for the labeling and magnetic separation of cells. J. Immunol. Meth. (1982) 52, 353−367)を変形して磁性粒子を次の通り、合成して用いた。
【0042】
温度の調節と超音波強度の調節が可能な水槽型超音波洗浄機(Kodo Technical Research Co.,Ltd 、model No.JAC2010)に50mlコニカルチューブ(SPL Lifesciences(京畿道抱川市所在)、製品番号50050)を位置させ、10mlの50%(w/w)デキストラン(Fluka, Cat. No.31389, 平均分子量40000)水溶液を入れる。
【0043】
前記チューブの中に実験室用攪拌機[POONG LIM商社(ソウル市鍾路区長沙洞所在)、モデル番号PL−S10]と連結したプロペラを装着した上、10mlの1.51g FeCl3.6H2O(Sigma, Cat. No.236489)と0.64g FeCl2.4H2O(Sigma, Cat. No.220299)水溶液を一滴ずつ入れ、約2,000r.p.m.の速度で撹はんする。この過程において超音波をかけることができる。
【0044】
撹はんしながら溶液のpHが10.5に達する時まで7.5%(v/v) NH4OHで一滴ずつ添加する。この過程において水槽の温度を40ないし65℃に調節することができる。
【0045】
溶液のpHが10.5に達すれば、あらかじめ温度を65ないし90℃に合せておいた水槽に15分間湯煎する。
【0046】
湯煎の終わった溶液は、常温でゆっくり温度が下がるよう定置させる。
【0047】
遠心分離機[韓日科学産業株式会社(仁川市桂陽区鵲田洞所在)、製品番号MF−80]を用いて600 x gで5分間ずつ全部で3回の遠心分離を進行し、沈殿物を除去した上、上層液を集め、さらに2,000 x gで10分間遠心分離し、沈殿物を除去する。結合していないデキストランを除去するため、 Amicon Ultracel−100K(Millipore, Cat. No.UFC910024) を用いて卓上用遠心分離機(韓日科学産業、モデル名Combi 514K)において3,900r.p.m.で20分間遠心分離した後、磁性粒子を精製水、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline)または2M炭酸ナトリウム(sodium carbonate)(Na2CO3)溶液(pH 11)に浮游した。この他にもSephacryl S−300を利用したゲル濾過クロマトグラフィー(Gel filtration chromatography)方法でデキストランを除去することができる。
【0048】
図1は、前記方法で合成された磁性粒子の走査電子顕微鏡写真であり、図2は前記方法を変形してデキストランを添加することなく合成された磁性粒子の透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)写真である。
【0049】
(2)磁性粒子の表面改質
前記(1)の方法により合成された磁性粒子の表面をストレプトアビジン(Streptavidin)または蛍光蛋白質などの蛋白質で改質するために当業界にてよく知られた方法(March, et. al. A Simplified method for cyanogen bromide activation of agarose for affinity chromatography. Anal. Biochem. (1974) 60, 149−152; Cuatrecasas, P. Protein purification by affinity chromatography. J. Biol. Chem. (1970) 245, 3059−3065)を変形して用いた。磁性粒子の表面改質の過程は次の通りである。
【0050】
磁性粒子の表面に露出されたヒドロキシ基(hydroxy group)を活性化させるため、ドラフトチャンバー内で前記(1)の過程において用意したような2M炭酸ナトリウム(sodium carbonate)(Na2CO3 溶液(Ph 11)に浮遊された磁性粒子に、反応体積全体の2%に該当する体積で5MのCNBr溶液[2g シアノゲンブロマイド(cyanogen bromide)を1mlのアセトニトリル(acetonitril)に溶かした溶液]を添加した。
【0051】
反応を遅らすため、4ないし20℃の比較的低い温度で8ないし12分間反応させ、未反応のCNBr(cyanogen bromide)は、当業界にてよく知られた透析、遠心分離、HGMS技術(High gradient magnetic separation、米国特許第4,247,398号; Melville, et. al. Direct magnetic separation of red cells from whole blood. Nature (1975) 255, 706)または限外濾過(Ultrafiltration)などの方法で除去した。
【0052】
未反応のCNBrが除去された活性化された磁性粒子をリン酸緩衝生理食塩水または0.1M重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)溶液に浮遊させた後、10ないし200mg/ml濃度でリン酸緩衝生理食塩水に希釈された蛋白質溶液と混ぜ、4℃で14時間の間反応させて磁性粒子の表面が蛋白質により改質されるようにする。この時、蛋白質の最終濃度は0.1ないし100mg/mlになるようにする。好ましくは反応する蛋白質の最終濃度が1ないし10mg/mlになるようにする。
【0053】
蛋白質による磁性粒子表面の改質反応を終結させるためにグリシンを添加し、かつ、グリシンの最終濃度が前記蛋白質の最終濃度の5ないし50倍になるように添加し、室温で2時間の間反応させる。好ましくは、グリシンの最終濃度が前記蛋白質の最終濃度の10ないし25倍になるように添加する。
【0054】
未反応の蛋白質とグリシンは、当業界にてよく知られた遠心分離またはHGMS等の方法で除去した。
【0055】
前記方法により磁性粒子の表面をストレプトアビジンで改質し、ストレプトアビジン−磁性粒子を製作し、磁性粒子の表面を当業界にて広く知られた蛍光蛋白質の中の1つであるEGFP(Enhanced green fluorescence protein)で改質し、EGFP−磁性粒子を製作した。
【0056】
前記方法により磁性粒子の表面が蛋白質で改質されたか否かはSDS−不連続電気泳動法(SDS−discontinuous polyacrylamide gel electrophoresis;SDS−PAGE)により確認することができる。
【0057】
この他にも本発明にて使用可能な蛋白質で表面が改質された磁性粒子は、当業界にてよく知られた方法(米国特許第5,665,582号;米国特許公開第2003/0092029A1号)で直接製作する、または磁性粒子を製作販売している会社から購入して用いることができる。
【実施例2】
【0058】
細胞内に取り込まれた磁性物質の磁力線方向へのパターン形成
HeLa細胞(ATCCから購入、Cat. No.CCL−2)を96−ウェルプレートに5,000個細胞/ウェル(cells/well)単位で継代培養(subculture)し、37℃、5% CO2 培養器において10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum、Invitrogenから購入)を含有したDMEM培地を用いて培養した。
【0059】
翌日、実施例1にて合成した磁性物質に最終濃度0.1mMになるよう蛋白質伝達ドメイン(Protein Transduction Domain)を有するペプチド(アミノ酸の序列:PKKKRKVGLFGAIAGFIENGWEGMIDG)を添加した上、室温で30分間反応させた後、HGMS方法を用いて結合しない蛋白質伝達ドメインを除去した。本発明の実施例において蛋白質伝達ドメインとしては、前記序列以外にも当業界にてよく知られた蛋白質伝達ドメインを用いることができ、またペネトラチン(Penetratin)とも呼ばれるペプチドを用いることができることは、本発明が属する技術分野の当業者ならば容易に理解できるはずである。
【0060】
次に、培養されたHeLa細胞を1xD−PBSで洗浄した後、前記磁性物質と蛋白質伝達ドメインが含まれたOPTI MEM I(Invitrogenから購入)培地を添加し、37℃、5% CO2の培養器で培養した。
【0061】
翌日、磁性物質が処理された細胞をOPTI−MEM I(Invitrogenから購入、Cat. No.31985−070)培地を利用して2回洗浄した後、OPTI−MEM I培地が入っている状態で当業界にてよく知られた方法により、永久磁石または電磁石を利用して磁場をかけた(大韓民国特許第10−0792594号;大韓民国特許第10−0862368号;米国特許第4,247,398号)。
【0062】
磁性物質が細胞内で磁場によって動くようにするためには、細胞質の粘度と細胞内の構造により、水溶液中に存在していた時より大きい磁気力を受けなければならない。
【0063】
細胞内で磁性物質が受ける磁気力(Magnetic force)は、磁性物質の磁化率(Magnetization)と磁場の磁束密度(magnetic flux density)に比例する。磁場の磁束密度は磁石を構成する金属物質の磁気飽和度により影響を受けるため、高磁束密度を作るためには磁気飽和度の大きい金属を用いて磁石を作らなければならない。
【0064】
また、磁束密度は磁石から細胞間の距離の二乗に反比例するため、できるだけ高磁束密度を細胞内に存在する磁性物質に印加するためには、なるべく細胞と磁石との距離を近くしなければならない。
【0065】
これと関連し、図3には本発明の一実施例にて用いられる磁場印加装置(大韓民国特許第10−0792594号参照)が示されている。前記磁場印加装置には多数のウェル(152)が形成されたウェルプレート(150)を受け入れるための筒体(100)と、ウェルプレート(150)を固定し、非磁化性磁性体でなされた磁場の強さを強化するためのコア(140)が設けられている。図示しなかったが、前記筒体(100)の周囲に数回ないし数十万回巻線され、電源の供給時、ウェルプレート(150)を含む領域に磁場を形成するためのコイルと、コイルに電源を供給するための電源供給装置も提供される。前記コア(140)は電流が流れる間だけ、磁化される非磁化性磁性体で構成され、このようなコア(140)の設置により磁場がコア(140)側に集中する現象が発生し、コア(140)近辺の磁場の強さを高めるようになる。したがって、コア(140)を設置することによって磁場がコア(140)側に集中し、このように磁場の強さが急激に強くなると、ウェルプレート(150)内に存在する磁性物質の移動および維持させる力を強化させることによって、前記磁性物質の磁力線方向に磁化パターンの形成を容易にすることができる。
【0066】
また、図4には本発明の一実施例にて用いられるもう1つの形態の磁場印加装置(大韓民国特許第10−0862368号参照)が示されている。前記磁場印加装置(1000a)には多数のウェル(152)が形成されたウェルプレート(150)を収容するための筒体(100)と、前記筒体(100)の底面に対して上方方向に突出され、ウェルプレート(150)を支持する複数個の延長部で構成された磁場勾配増大手段(144)が設けられている。図示しないが、前記筒体(100)の周囲に数回または数十万回巻線され、電源の供給時、ウェルプレート(150)を含む領域に磁場を形成するためのコイルと、コイルに電源を供給するための電源供給装置も提供される。前記磁場勾配増大手段(144)は複数個の延長部により磁場勾配を増大させ、ウェルプレート(150)のウェル(152)内の磁性物質の移動および維持させる力を強化させることにより、前記磁性物質の磁力線方向への磁化パターンの形成を容易にすることができる。
【0067】
磁場をかけた状態で1X D−PBS(Welgene, Cat. No.LB001−02)で1回洗浄し、37%ホルムアルデヒド(Sigmaから購入)を1XD−PBSで10倍希釈し、3.7%ホルムアルデヒド溶液を作った。前記ホルムアルデヒド溶液で5分間細胞に処理し、細胞を固定した。前記細胞固定後、細胞を1X D−PBSで3回洗浄した上、顕微鏡の観察を行った。
【0068】
本実施例においては、対物レンズUplan Apo 40X/0.85が装着されたオリンパス社の蛍光顕微鏡FV1000を利用して細胞の透過光イメージを得、その結果を図5に例示した。磁場をかけない細胞からは、細胞の核周辺から磁性粒子は確認されるものの、磁力線方向へのパターンは観察されないことが確認された(図5の(A))。一方、磁場を細胞に対して垂直方向にかけた細胞からも細胞の核周辺から磁性粒子は確認されたが、磁力線方向へのパターンは観察されないことが確認された(図5の(B))。それに対し、磁場を細胞に対して水平方向にかけた細胞からは磁力線方向に磁性粒子がパターンを形成することがはっきりと観察することができた(図5の(C))。このような結果は、細胞内で誘導磁化(induced magnetization)によって磁性物質が磁力線方向にパターンを形成することを意味する。
【0069】
細胞内の小器官の中、球状を帯びたエンドソーム、リソソームなどの小胞体は、光学顕微鏡上から細胞内に散発的に散在した黒点状に見られ得る。したがって、磁性物質が磁力線方向にパターンを形成するのかを確認するためには、複数の磁性物質が1つの細胞に効率的に取り込まれなければならず、収束された磁場の磁力線束(bundle)が細胞に対して一定方向に通過できなければならない。本発明の実施例においては、黒点が磁力線方向に配列になってパターンを形成することを確認することができ、球状の細胞内の小器官と明確に区別することができた。
【実施例3】
【0070】
プルシアンブルー染色を利用した細胞内に取り込まれた磁性物質の磁力線方向パターンの確認
図5に示すように透過光顕微鏡で観察される黒色の点が磁性物質であることを確認するため、プルシアンブルー染色(Prussian Blue Staining)を施した。プルシアンブルー染色は、細胞内に取り込まれた酸化鉄成分の磁性粒子(iron oxide magnetic nanoparticle)を特異的に染色して観察することに用いられる(Frank, J. A., Miller, B. R., Arbab, A. S., Zywicke, H. A., Jordan, E. K., Lewis, B. K., Bryant, L. H., & Bulte, J. W. M. (2003) Clinically applicable labeling of mammalian and stem cells by combining superparamagnetic iron oxides and transfection agents. Radiology 228: 480−487)。磁性物質が取り込まれた細胞は、実施例2の通り準備した。磁場をかけて3時間後、細胞をホルムアルデヒドで固定した。そして、プルシアンブルー染色前に細胞を光学顕微鏡で観察し、プルシアンブルー染色後、同じ視野(field)で細胞を光学顕微鏡で観察した。プルシアンブルー染色は、プルシアンブルー鉄ステインキット[Prussian Blue Iron Stain Kit(Polysciencesから購入、Cat.No.24199)]を用いて行った。
【0071】
本実施例においては対物レンズLUCPlan F1 60Xが装着されたオリンパス社のIX51倒立顕微鏡(Olympus IX51 inverted system microscope equipped with DP70 CCD camera, Japan)を利用して細胞の透過光イメージを得た。図6で確認されるように、磁場をかけた細胞からは磁性物質のパターンが磁化方向(矢印方向)に形成され、光学顕微鏡で観察され、このようなパターンはプルシアンブルー染色により特異的に染色されることが確認された。したがって、磁場をかけることにより形成されるパターンは細胞内に取り込まれた磁性物質によるものであることが確認された。磁場をかけない細胞からは細胞内に取り込まれた磁性物質がプルシアンブルー染色により染色されることが観察されたが、磁力線方向に形成されたパターンは見られないことが確認された。
【実施例4】
【0072】
細胞内に取り込まれた磁性物質の磁力線方向の変化に伴うパターン変化の観察
磁力線方向の変化に伴う磁性物質のパターンの変化が次の通り確認された。磁性物質が取り込まれた細胞は、実施例2の通り準備した。実施例2の通り細胞が生きた状態で磁場を印加した後、細胞を固定した。
【0073】
本実施例においては対物レンズPlan−Neofluar 20Xが装着されたZeiss社のLSM510 META NLO顕微鏡を利用して細胞の蛍光および透過光イメージを得た。図7で確認されるように、磁場をかけると細胞内で磁性粒子のパターンが磁力線方向(矢印方向)に形成されることが観察され、このようなパターンは磁場の方向に沿って再形成されることが確認された。
【実施例5】
【0074】
蛍光標識された磁性物質の磁力線方向への蛍光パターンの観察
蛍光標識された磁性物質の磁化方向パターンが蛍光物質によりイメージ化されることを観察するため、次のような実験を行った。96−ウェルプレート(Greinerから購入、Cat.No.655090)にHeLa細胞(ATCCから購入、Cat.No.CCL−2)を4,000個細胞/ウェル(cells/well)単位で継代培養(subculture)した。翌日、培養されたHeLa細胞に磁性物質を次のような過程に従って処理した。
【0075】
1)ストレプトアビジン−磁性粒子をビオチン−SS−FITC(ビオチン−SS−FITC)と混合して反応させ、磁性粒子を蛍光標識させた。
【0076】
2)前記反応30分経過後、混合液を当業界にて知られた磁性物質分離方法、例えばHGMS技術(High gradient magnetic separation)を利用して精製した。
【0077】
3)精製された蛍光標識された磁性粒子を実施例2の通り細胞に処理し、磁場をかけた後、ホルムアルデヒド溶液で細胞を固定した。
【0078】
本実施例では対物レンズUplan Apo 40X/0.85が装着されたオリンパス社の蛍光顕微鏡FV1000を利用して細胞の蛍光イメージと透過光イメージを得た。図8に示すように、FITCで蛍光標識された磁性粒子は磁場をかけることにより蛍光パターンが磁力線方向(矢印方向)に形成されることが確認された。しかし、磁場をかけない細胞からはFITC蛍光は観察されたものの、特異的な蛍光パターンは観察されなかった。したがって、本実施例においては細胞内で収束された磁場印加により形成された複数の磁性粒子の磁化パターンが標識物質である蛍光物質によりイメージ化されることを確認することができた。
【実施例6】
【0079】
メディエータを利用して蛍光標識された磁性物質の磁力線方向への蛍光パターンの観察
本実施例においては表面が改質された磁性物質に蛍光物質が直接標識された場合のみならず、表面が改質された磁性物質にメディエータ(mediator)を利用して蛍光物質を標識した場合にも磁場印加により形成された複数の磁性粒子の磁化パターンが標識物質である蛍光物質によりイメージ化されるか否かを観察した。また、磁性物質が形成する磁力線方向のパターンと重畳する蛍光パターンが形成されるか否かも確認した。
【0080】
メディエータは本発明が属する技術分野において使用可能なものと認識されるリンカー物質を1つまたは複数個用いて構成することができる。以下、その一例としてメディエータを2つのリンカー物質で構成したものを用いて実験を行った。メディエータを利用して蛍光物質を、表面が改質された磁性粒子に標識することは、磁性粒子と蛍光物質を細胞内に提供する前に行われることもでき、磁性粒子と蛍光物質を各々細胞内に提供した後、メディエータにより細胞内で表面が改質された磁性粒子に蛍光物質が標識されて行われることもできる。
【0081】
メディエータを構成するリンカー物質の1つとしては、慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia)の治療剤として使われているダサチニブ(dasatinib)[Lombardo, L. J., Lee, F. Y., Chen, P.ら、 Discovery of N−(2−chloro−6−methyl−phenyl)−2−(6−(4−(2−hydroxyethyl)−piperazin−1−yl)−2−methylpyrimidin−4−4−ylamino)thiazole−5−carboxamide (BMS−354825), a dual Src/Abl kinase inhibitor with potent antitumor activity in preclinical assays. J. Med. Chem. 47, 6658−6661 (2004); Shah, N. P., Tran, C., Lee, F. Y. Chen, P., Norris, D., Sawyers, C. L. Oerriding imatinib resistance with a novel ABL kinase inhibitor. Science 305, 399−401 (2004)]を選択した。また、メディエータを構成するもう1つのリンカー物質としては、前述したリンカー物質であるダサチニブと結合するSRC(GenBank Acc. No.NM_198291)またはSNF1LK(GenBank Acc. No.BC038504)を用いた。また、磁性粒子の表面をダサチニブで改質するため、ダサチニブ−ビオチンを合成した。
ダサチニブ−ビオチン(Dasatinib−biotin)は図9の概略図の通り合成した。
【0082】
図9に示されたダサチニブ−ビオチン合成の過程を説明すれば、次の通りである。
【0083】
まず、ダサチニブ−ビオチンを合成するため、まず、2,3,5,6−テトラフルオロフェニルトリフルオロアセテート(2,3,5,6−tetrafluorophenyl trifluoroacetate)形態のビオチンリンカーを合成した。
【0084】
(1)窒素大気状態でトリフルオロ酢酸無水物(trifluoroacetic anhydride)に溶けられた2,3,5,6−テトラフルオロフェノール(2,3,5,6−tetrafluorophenol)に BF3エチルエーテル(BF3 ethylether)を添加した。
【0085】
(2)溶媒を除去した後、ビオチンリンカー化合物をTEA/DMF混合液に溶かされた化合物1とカップリングして化合物2を生産した。
【0086】
それから、ダサチニブ−ビオチン(dasatinib− biotin)は、次の通り合成した。
【0087】
(1)ダサチニブはTHFとDMFの混合液に溶かした上、トリエチルアミンを添加した後、冷却させた。
【0088】
(2)ダサチニブ溶液にメタンスルホニルクロリド(methanesulfonyl chloride)をゆっくり滴加した後、常温で一晩、撹はんした。
【0089】
(3)反応液にNaN3を入れて摂氏50℃で一晩、撹はんした。
【0090】
(4)反応液を減圧濃縮した後、残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0091】
(5)精製された産物をTHFに溶解し、過量のトリフェニルホスフィン(triphenylphosphine)を添加し、常温で5時間撹はんした。
【0092】
(6)反応液に水を添加し、摂氏70℃で一晩撹はんした後、減圧濃縮した。
【0093】
(7)残渣を窒素大気状態でDMFに溶解させた後、トリエチルアミン(triethylamine)を添加した。
【0094】
(8)化合物2をDMFに溶解して添加した後、常温で3日間撹はんした。
【0095】
(9)反応液を減圧濃縮した後、MeOH/MCカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0096】
それから、合成された化合物はNMRおよびLC−MSを利用して確認した。
【0097】
CSK cDNA(GenBank Acc. No.NM_004383.1)はOpen Biosystems社から購入した。停止コドンが除去されたCSK ORFクローンを製作するため、次のような実験を行った。CSK ORF増幅に必要なプライマーは次の通りであり、コスモジンテック(株)から購入して用いた:CSK−Fプライマー, 5’−GCA GGC TCC ACC ATG TCA GCA ATA CAG GCC GCC T−3’; CSK−Rプライマー, 5’−CAA GAA AGC TGG GTG CAG GTG CAG CTC GTG GGT TTT G−3’. CSK cDNAを鋳型として用い、前記プライマーを利用して次の通りPCR増幅を行った:95℃、5分、1サイクル;95℃、0.5分、50℃、0.5分、72℃、2分、10〜30サイクル;72℃、7分1サイクル。 PCR増幅に用いられたDNA重合酵素はStratagene、Enzynomics、Cosmo Genetech、ELPIS Biotechなどから購入して製造社の用法に基づいて使用した。
【0098】
上記の通りに増幅されたCSK ORFを次のようなプライマーで再増幅した:attB1−F2プライマー、5’−GGGGACAAGT TTGTACAAAA AAGCAGGCTC CACCATG−3’; attB2−R2 プライマー、5’−GGGGACCACT TTGTACAAGA AAGCTGGGTG−3’。前記増幅されたCSK ORFのPCR産物を鋳型とし、attB1−F2およびattB2−R2プライマーを利用して次の通り、PCR増幅を行った:95℃、2分、1サイクル;95℃、0.5分、45℃、0.5分、72℃、2分、5〜10サイクル;95℃、0.5分、50℃、0.5分、72℃、2分、5〜10サイクル;72℃、7分、1サイクル。上記の通りに増幅されたCSK ORFのPCR産物を電気泳動して分離した後、pDONR201あるいはpDONR221ベクター(Invitrogenから購入)に公知の方法(Hartleyら、 (2000) DNA cloning using in vitro site−specific recombination. Genome Res. 10, 1788−1795)でクローニングして停止コドンが除去されたCSK ORFクローンを製作した。完成されたCSK ORFクローンは塩基序列分析により確認した。
【0099】
停止コドンが除去されたSNF1LK(GenBank Acc. No.BC038504) ORF(open reading frame)クローンはOpen Biosystems社から購入した。
【0100】
SNF1LK ORFクローンとCSK ORFクローンは再び公知の方法(Hartleyら、 (2000) DNA cloning using in vitro site−specific recombination. Genome Res. 10, 1788−1795)によりpCMV−DEST−EGFPベクターを利用してCMV−SNF1LK−EGFPおよびCMV−CSK−EGFP発現ベクターにクローニングした。pCMV−DEST−EGFPベクターはpcDNA3.1/Zeo(+)ベクター(Invitrogenから購入、Cat. No.V860−20)にattR1−ccdB−attR2序列を挿入し、attR2序列後にEGFP遺伝子を挿入して製作した。
【0101】
HeLa細胞を96−ウェルプレートに5,000〜10,000細胞/ウェル濃度に継代培養した後、前記用意された発現ベクターDNAを形質導入した。DNA形質導入は公知の方法、その一例として、リポフェクタミン(lipofectamine)(Invitrogenから購入)あるいはFuGene6(Rocheから購入)を利用して行うことができる。DNAが形質導入された細胞にダサチニブ−ビオチンがコーティングされた磁性物質を実施例2に記述された方法で取り込み、NDGA(Nordihydroguaiaretic acid、Sigmaから購入)を最終25〜50μMになるように処理した。また、実施例2に記述された方法のように磁場を印加した後、顕微鏡観察を行った。
【0102】
本実施例においては対物レンズUplan Apo 40X0.85が装着されたオリンパス社の蛍光顕微鏡FV1000を利用して細胞の蛍光イメージを得た。図10のAに示すように、表面が改質された磁性物質にメディエータ(ダサチニブ−CSK)を用いて蛍光物質であるEGFP蛋白質を標識した場合、磁化方向(磁力線方向)にEGFPの蛍光パターンが形成されることが確認された。しかし、メディエータのないネガティブコントロール(Negative control)としてビオチン−磁性粒子複合体(bio−MNP)を用いた場合、このようなEGFPの蛍光パターンが確認されなかった。
【0103】
また、図10のBに示すように、表面が改質された磁性物質にメディエータ(ダサチニブ−SNF1LK)を利用して蛍光物質であるEGFP蛋白質を標識した場合、磁化方向(磁力線方向)にEGFPの蛍光パターンが形成されることが確認された。しかしながら、メディエータのないネガティブコントロールとしてビオチン−磁性粒子複合体(bio−MNP)を用いた場合、このようなEGFPの蛍光パターンが確認されなかった。
【0104】
一方、このような蛍光パターンは透過光イメージから観察される磁性物質のパターンと重畳して現れ、これは表面が改質された磁性物質に蛍光物質がメディエータのダサチニブ−CSKまたはダサチニブ−SNF1LKにより正確に標識され、磁化パターンをイメージ化した結果であることが分かる。したがって、本発明によれば、生きた細胞内に取り込まれた磁性物質の磁力線方向へのパターンを標識物質でイメージ化する方法を提供することにより、生きた細胞内の構造および物質の代謝過程をモニターすることに応用することができる。例えば、本実施例においてはリンカー物質であるダサチニブとCSKまたはダサチニブとSNF1LKとが結合してメディエータを構成する点を利用して蛍光物質を磁性物質に標識し、蛍光パターンを観察したが、結合するか否かが不明なリンカー物質をメディエータで構成した場合、蛍光物質が磁性物質に標識されるか否かを蛍光パターンの形成可否と磁性物質の磁化パターンおよび蛍光パターンの重畳可否で確認することができ、さらにはこれを利用してリンカー物質の細胞内の代謝における反応および役割と信号伝達過程などをモニターすることができるものである。
【0105】
以上、本発明を前記実施例を挙げて説明したが、本発明はこれに制限されるものでない。当業者であれば本発明の趣旨および範囲を外れることなく修正、変更することができ、このような修正と変更もまた本発明に属するものであることを知ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場により磁力線方向に磁化される磁性物質であって、ナノ単位で粒子化され、表面が改質された磁性物質を複数個準備する段階と、
前記磁性物質を生きた細胞内に提供し、かつ、1つの生きた細胞を基準に前記磁性物質を複数個提供する段階と、
前記生きた細胞に収束された磁場を印加し、磁力線束(bundle)が前記生きた細胞に対して一定方向に通過するようにする段階と、
前記生きた細胞内で前記磁場の磁力線方向に複数個の磁性物質が配列になるようにする段階と、
前記磁性物質の配列パターンを確認する段階とを含む、生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項2】
前記磁性物質は、鉄、マンガン、クロム、ニッケル、コバルトおよび亜鉛の第4周期遷移金属、該遷移金属の酸化物、硫化物、リン化物および該遷移金属の合金、そして該遷移金属の合金の酸化物、硫化物およびリン化物からなる群から選択される遷移金属化合物である、またはこれらを含む組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項3】
前記磁性物質は、マグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(gamma−Fe3O4)、コバルトフェライト(CoFe2O4)、マンガンオキサイド(MnO)、マンガンフェライト(MnFe2O4)、鉄−プラチナ合金(Fe−Pt alloy)、コバルト−プラチナ合金(Co−Pt alloy)およびコバルト(Co)からなる群の中から選択されたいずれか1つまたは少なくとも2つの混合物を含む、請求項2に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項4】
前記磁性物質は、1ないし1,500nmの直径を有することを特徴とする、請求項1または請求項3のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項5】
前記磁性物質は、20ないし350nmの直径を有することを特徴とする、請求項4に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項6】
前記磁性物質は、40emu(electromagnetic unit)/g以上の飽和磁化を有することを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項7】
前記生きた細胞内に提供された前記磁性物質は、黒点状に観察されることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項8】
前記黒点は、300ないし1,500nm以上の直径を有することを特徴とする、請求項7に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項9】
前記黒点は、単一の磁性物質で構成される、または多数の磁性物質が位置的にお互い隣接した形態で構成されることを特徴とする、請求項7に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項10】
前記黒点は、前記生きた細胞内に複数個として存在することを特徴とする、請求項9に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項11】
前記生きた細胞に収束された磁場を印加するとき、磁場の印加方向は、前記生きた細胞が置かれている底面に対して水平方向に印加されることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項12】
前記生きた細胞に収束された磁場の印加は、磁場印加装置により行われ、該磁場印加装置は、生きた細胞が受容された容器を固定し、磁場の強さを強化するための非磁化性磁性体からなる円筒形コア、または前記容器を支持する複数個の延長部が設けられた磁場勾配増大手段を具備することを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項13】
磁場により磁力線方向に磁化される磁性物質であって、ナノ単位で粒子化され、表面が改質された磁性物質を複数個準備する段階と、
前記磁性物質を生きた細胞内に提供し、かつ1つの生きた細胞を基準に前記磁性物質を複数個提供する段階と、
前記磁性物質と結合し、前記磁力線方向への磁性物質のパターンをイメージ化できる標識物質を生きた細胞内に提供する段階と、
前記生きた細胞に収束された磁場を印加し、磁力線束(bundle)が前記生きた細胞に対して一定方向に通過するようにする段階と、
前記生きた細胞内で前記磁場の磁力線方向に複数個の磁性物質が配列になるようにする段階と、
前記磁性物質の配列パターンをイメージ化できる前記標識物質のイメージ化されたパターンを確認する段階とを含む、生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項14】
前記磁性物質のパターンと、前記標識物質のイメージ化されたパターンを確認し、前記磁性物質のパターンと、前記標識物質のイメージ化されたパターンが重畳(co−localization)するか否かを確認する段階とをさらに含む、請求項13に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項15】
前記磁性物質は、鉄、マンガン、クロム、ニッケル、コバルトおよび亜鉛の第4周期遷移金属、該遷移金属の酸化物、硫化物、リン化物および該遷移金属の合金、そして該遷移金属の合金の酸化物、硫化物およびリン化物からなる群から選択される遷移金属化合物である、またはこれらを含む組成物であることを特徴とする、請求項13に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項16】
前記磁性物質は、マグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(gamma−Fe3O4)、コバルトフェライト(CoFe2O4)、マンガンオキサイド(MnO)、マンガンフェライト(MnFe2O4)、鉄−プラチナ合金(Fe−Pt alloy)、コバルト−プラチナ合金(Co−Pt alloy)およびコバルト(Co)からなる群の中から選択されたいずれか1つまたは少なくとも2つの混合物を含む、請求項15に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項17】
前記磁性物質は、1ないし1,500nmの直径を有することを特徴とする、請求項13ないし請求項16のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項18】
前記磁性物質は、20ないし350nmの直径を有することを特徴とする、請求項17に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項19】
前記磁性物質は、40emu(electromagnetic unit)/g以上の飽和磁化を有することを特徴とする、請求項13ないし請求項16のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項20】
前記生きた細胞内に提供された前記磁性物質は、黒点状に観察されることを特徴とする、請求項13ないし請求項16のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項21】
前記黒点は、300ないし1,500nm以上の直径を有することを特徴とする、請求項20に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項22】
前記黒点は、単一の磁性物質で構成される、または多数の磁性物質が位置的にお互い隣接した形態で構成されることを特徴とする、請求項20に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項23】
前記黒点は、前記生きた細胞内に複数個として存在することを特徴とする、請求項22に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項24】
前記生きた細胞に収束された磁場を印加するとき、磁場の印加方向は前記生きた細胞が置かれている底面に対して水平方向に印加されることを特徴とする、請求項13ないし請求項16のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項25】
前記生きた細胞に収束された磁場の印加は、磁場印加装置により行われ、前記磁場印加装置は生きた細胞が受容された容器を固定し、磁場の強さを強化するための非磁化性磁性体からなる円筒形コア、または前記容器を支持する複数個の延長部が設けられた磁場勾配増大手段を具備することを特徴とする、請求項13ないし請求項16に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項26】
前記標識物質は、メディエータを利用して前記磁性物質に標識されることを特徴とする、請求項13ないし請求項16のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項27】
前記メディエータは、1つまたは複数個のリンカー物質を含むことを特徴とする、請求項26 に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項28】
前記メディエータは、2つのリンカー物質で構成されたことを特徴とする、請求項27に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項29】
前記メディエータを利用して前記標識物質を前記磁性物質に標識するのは、前記磁性物質と前記標識物質を生きた細胞内に提供する前に行われることを特徴とする、請求項26に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項30】
前記メディエータを利用して前記標識物質を前記磁性物質に標識するのは、前記磁性物質と前記標識物質を各々生きた細胞内に提供した後、前記メディエータにより生きた細胞内で前記磁性物質に前記標識物質が標識されて行われることを特徴とする、請求項27に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項31】
生きた細胞を培養する容器であって、磁場により磁力線方向に磁化される磁性物質であって、ナノ単位で粒子化され、表面が改質された複数個の磁性物質と、該磁性物質と結合して前記磁力線方向への磁性物質のパターンをイメージ化できる標識物質が提供されている生きた細胞を培養する容器と、
前記生きた細胞に収束された磁場を印加する磁場印加装置であって、磁力線束(bundle)が前記生きた細胞に対して一定方向に通過するようにする磁場印加装置と、
前記生きた細胞内で前記磁場の磁力線方向に配列になった複数個の磁性物質のパターンおよび/または前記磁性物質の配列になったパターンをイメージ化できる前記標識物質のイメージ化されたパターンをモニターする装置を含む、生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法に用いられる装置。
【請求項32】
前記モニター装置は、前記磁性物質のパターンと前記標識物質のイメージ化されたパターンが重畳するか否かを確認することを特徴とする、請求項31に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法に用いられる装置。
【請求項33】
前記磁場印加装置は、生きた細胞が受容された容器を固定し、磁場の強さを強化するための非磁化性磁性体からなる円筒形コア、または前記容器を支持する複数個の延長部が設けられた磁場勾配増大手段を具備することを特徴とする、請求項31または請求項32に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法に用いられる装置。
【請求項1】
磁場により磁力線方向に磁化される磁性物質であって、ナノ単位で粒子化され、表面が改質された磁性物質を複数個準備する段階と、
前記磁性物質を生きた細胞内に提供し、かつ、1つの生きた細胞を基準に前記磁性物質を複数個提供する段階と、
前記生きた細胞に収束された磁場を印加し、磁力線束(bundle)が前記生きた細胞に対して一定方向に通過するようにする段階と、
前記生きた細胞内で前記磁場の磁力線方向に複数個の磁性物質が配列になるようにする段階と、
前記磁性物質の配列パターンを確認する段階とを含む、生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項2】
前記磁性物質は、鉄、マンガン、クロム、ニッケル、コバルトおよび亜鉛の第4周期遷移金属、該遷移金属の酸化物、硫化物、リン化物および該遷移金属の合金、そして該遷移金属の合金の酸化物、硫化物およびリン化物からなる群から選択される遷移金属化合物である、またはこれらを含む組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項3】
前記磁性物質は、マグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(gamma−Fe3O4)、コバルトフェライト(CoFe2O4)、マンガンオキサイド(MnO)、マンガンフェライト(MnFe2O4)、鉄−プラチナ合金(Fe−Pt alloy)、コバルト−プラチナ合金(Co−Pt alloy)およびコバルト(Co)からなる群の中から選択されたいずれか1つまたは少なくとも2つの混合物を含む、請求項2に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項4】
前記磁性物質は、1ないし1,500nmの直径を有することを特徴とする、請求項1または請求項3のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項5】
前記磁性物質は、20ないし350nmの直径を有することを特徴とする、請求項4に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項6】
前記磁性物質は、40emu(electromagnetic unit)/g以上の飽和磁化を有することを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項7】
前記生きた細胞内に提供された前記磁性物質は、黒点状に観察されることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項8】
前記黒点は、300ないし1,500nm以上の直径を有することを特徴とする、請求項7に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項9】
前記黒点は、単一の磁性物質で構成される、または多数の磁性物質が位置的にお互い隣接した形態で構成されることを特徴とする、請求項7に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項10】
前記黒点は、前記生きた細胞内に複数個として存在することを特徴とする、請求項9に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項11】
前記生きた細胞に収束された磁場を印加するとき、磁場の印加方向は、前記生きた細胞が置かれている底面に対して水平方向に印加されることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項12】
前記生きた細胞に収束された磁場の印加は、磁場印加装置により行われ、該磁場印加装置は、生きた細胞が受容された容器を固定し、磁場の強さを強化するための非磁化性磁性体からなる円筒形コア、または前記容器を支持する複数個の延長部が設けられた磁場勾配増大手段を具備することを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンを形成する方法。
【請求項13】
磁場により磁力線方向に磁化される磁性物質であって、ナノ単位で粒子化され、表面が改質された磁性物質を複数個準備する段階と、
前記磁性物質を生きた細胞内に提供し、かつ1つの生きた細胞を基準に前記磁性物質を複数個提供する段階と、
前記磁性物質と結合し、前記磁力線方向への磁性物質のパターンをイメージ化できる標識物質を生きた細胞内に提供する段階と、
前記生きた細胞に収束された磁場を印加し、磁力線束(bundle)が前記生きた細胞に対して一定方向に通過するようにする段階と、
前記生きた細胞内で前記磁場の磁力線方向に複数個の磁性物質が配列になるようにする段階と、
前記磁性物質の配列パターンをイメージ化できる前記標識物質のイメージ化されたパターンを確認する段階とを含む、生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項14】
前記磁性物質のパターンと、前記標識物質のイメージ化されたパターンを確認し、前記磁性物質のパターンと、前記標識物質のイメージ化されたパターンが重畳(co−localization)するか否かを確認する段階とをさらに含む、請求項13に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項15】
前記磁性物質は、鉄、マンガン、クロム、ニッケル、コバルトおよび亜鉛の第4周期遷移金属、該遷移金属の酸化物、硫化物、リン化物および該遷移金属の合金、そして該遷移金属の合金の酸化物、硫化物およびリン化物からなる群から選択される遷移金属化合物である、またはこれらを含む組成物であることを特徴とする、請求項13に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項16】
前記磁性物質は、マグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(gamma−Fe3O4)、コバルトフェライト(CoFe2O4)、マンガンオキサイド(MnO)、マンガンフェライト(MnFe2O4)、鉄−プラチナ合金(Fe−Pt alloy)、コバルト−プラチナ合金(Co−Pt alloy)およびコバルト(Co)からなる群の中から選択されたいずれか1つまたは少なくとも2つの混合物を含む、請求項15に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項17】
前記磁性物質は、1ないし1,500nmの直径を有することを特徴とする、請求項13ないし請求項16のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項18】
前記磁性物質は、20ないし350nmの直径を有することを特徴とする、請求項17に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項19】
前記磁性物質は、40emu(electromagnetic unit)/g以上の飽和磁化を有することを特徴とする、請求項13ないし請求項16のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項20】
前記生きた細胞内に提供された前記磁性物質は、黒点状に観察されることを特徴とする、請求項13ないし請求項16のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項21】
前記黒点は、300ないし1,500nm以上の直径を有することを特徴とする、請求項20に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項22】
前記黒点は、単一の磁性物質で構成される、または多数の磁性物質が位置的にお互い隣接した形態で構成されることを特徴とする、請求項20に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項23】
前記黒点は、前記生きた細胞内に複数個として存在することを特徴とする、請求項22に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項24】
前記生きた細胞に収束された磁場を印加するとき、磁場の印加方向は前記生きた細胞が置かれている底面に対して水平方向に印加されることを特徴とする、請求項13ないし請求項16のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項25】
前記生きた細胞に収束された磁場の印加は、磁場印加装置により行われ、前記磁場印加装置は生きた細胞が受容された容器を固定し、磁場の強さを強化するための非磁化性磁性体からなる円筒形コア、または前記容器を支持する複数個の延長部が設けられた磁場勾配増大手段を具備することを特徴とする、請求項13ないし請求項16に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項26】
前記標識物質は、メディエータを利用して前記磁性物質に標識されることを特徴とする、請求項13ないし請求項16のいずれか一項に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項27】
前記メディエータは、1つまたは複数個のリンカー物質を含むことを特徴とする、請求項26 に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項28】
前記メディエータは、2つのリンカー物質で構成されたことを特徴とする、請求項27に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項29】
前記メディエータを利用して前記標識物質を前記磁性物質に標識するのは、前記磁性物質と前記標識物質を生きた細胞内に提供する前に行われることを特徴とする、請求項26に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項30】
前記メディエータを利用して前記標識物質を前記磁性物質に標識するのは、前記磁性物質と前記標識物質を各々生きた細胞内に提供した後、前記メディエータにより生きた細胞内で前記磁性物質に前記標識物質が標識されて行われることを特徴とする、請求項27に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法。
【請求項31】
生きた細胞を培養する容器であって、磁場により磁力線方向に磁化される磁性物質であって、ナノ単位で粒子化され、表面が改質された複数個の磁性物質と、該磁性物質と結合して前記磁力線方向への磁性物質のパターンをイメージ化できる標識物質が提供されている生きた細胞を培養する容器と、
前記生きた細胞に収束された磁場を印加する磁場印加装置であって、磁力線束(bundle)が前記生きた細胞に対して一定方向に通過するようにする磁場印加装置と、
前記生きた細胞内で前記磁場の磁力線方向に配列になった複数個の磁性物質のパターンおよび/または前記磁性物質の配列になったパターンをイメージ化できる前記標識物質のイメージ化されたパターンをモニターする装置を含む、生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法に用いられる装置。
【請求項32】
前記モニター装置は、前記磁性物質のパターンと前記標識物質のイメージ化されたパターンが重畳するか否かを確認することを特徴とする、請求項31に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法に用いられる装置。
【請求項33】
前記磁場印加装置は、生きた細胞が受容された容器を固定し、磁場の強さを強化するための非磁化性磁性体からなる円筒形コア、または前記容器を支持する複数個の延長部が設けられた磁場勾配増大手段を具備することを特徴とする、請求項31または請求項32に記載の生きた細胞内で磁性物質のパターンをイメージ化する方法に用いられる装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図9】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図9】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【公表番号】特表2012−508008(P2012−508008A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535515(P2011−535515)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006541
【国際公開番号】WO2010/053324
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(511113556)メディスコブ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006541
【国際公開番号】WO2010/053324
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(511113556)メディスコブ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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