説明

生ゴミ処理機

【課題】内部の処理材の排出状況を確認できるとともに、排出不良の発生時にその原因を確実に解消する。
【解決手段】内部に生ゴミおよび処理材を収容させて前記生ゴミを分解させる処理槽10と、該処理槽10の下部に設けた前記処理材の排出手段(第1排水管20および第1電磁弁22)と、前記処理槽10の下部に設けられ開閉可能な蓋体38を有する点検口37とを備えた生ゴミ処理機において、前記点検口37の下端より上方で、かつ、前記排出手段による排出物の排出が停止すると予想される状況での生ゴミおよび処理材の上表面L2より上方に、開閉可能な蓋体38を有する確認口37を更に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に業務用の生ごみ処理機、詳しくは生ごみを微生物(バイオ菌)で分解する生ごみ処理機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の生ゴミ処理機に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2002−336830号公報
【0004】
この特許文献1には、処理剤と処理水を収容する有機物分解処理槽内に有機廃棄物を投入し、これらを撹拌部材で撹拌することにより水中で有機廃棄物を分解する湿式の生ごみ処理機が記載されている。
【0005】
この種の生ゴミ処理機は、定期的(1年に1回程度)に分解不可能な金属物(スプーンなど)や樹脂製品(ストローなど)などの異物を取り除く際、5〜6年に1回程度処理剤である微生物を担持させた基材を交換する際、および、装置自体が故障した際に、処理槽内の排出物である処理水を全て排水し、下部に設けた点検口から内部に人が侵入して点検したり、点検口から基材を排出する必要がある。
【0006】
しかしながら、処理槽の下部に設けた排水口には、排水濾過網が配設されており、その排水濾過網に生ゴミが付着して処理水を排水できないことがある。この場合、前記点検口を開放すると、処理槽内に残った大量の処理水、基材および生ゴミが点検口から流出するという問題がある。
【0007】
なお、この問題は、処理材として、微生物を担持させた基材と処理水とを用いた湿式の生ゴミ処理機に限られず、好気性の酵母菌からなる微生物をおがくずなどの基材に担持させた乾式の生ゴミ処理機において、排出物である処理材を自動排出可能としたものでも同様に発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、内部の排出物の排出状況を確認できるとともに、排出不良の発生時にその原因を確実に解消可能な生ゴミ処理機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の生ゴミ処理機は、内部に生ゴミおよび処理材を収容させて前記生ゴミを分解させる処理槽と、該処理槽の下部に設けた排出物の排出手段と、前記処理槽の下部に設けられ開閉可能な蓋体を有する点検口とを備えた生ゴミ処理機において、前記点検口の下端より上方で、かつ、前記排出手段による排出物の排出が停止すると予想される状況での生ゴミおよび処理材の上表面より上方に、開閉可能な蓋体を有する確認口を更に設けた構成としている。
【0010】
ここで、前記処理材とは、湿式の生ゴミ処理機の場合には微生物を担持させた発泡樹脂からなる基材と処理水であり、乾式の生ゴミ処理機の場合には微生物を担持させたおがくずなどの基材であり、生ゴミを分解するための材料を意味する。また、前記排出物とは、湿式の生ゴミ処理機の場合には処理水であり、乾式の生ゴミ処理機の場合には生ゴミを含む基材全体である。
【0011】
この生ゴミ処理機によれば、予想される排出停止状況での生ゴミおよび処理材の上表面より上方に確認口を設けているため、この確認口から内部の排出状況を確認できる。そして、排出手段が目詰まりしている場合には、前記確認口から清掃用具などを挿入することにより、その原因を解消できる。
【0012】
この生ゴミ処理機では、前記確認口は、予め設定した処理材および生ゴミの最大許容収容量の上表面より上方に位置することが好ましい。このようにすれば、排出物が全く排出されない状況でも確認および問題解消を行うことができる。
【0013】
また、前記処理材は、微生物を担持させた基材と処理水とからなることが好ましい。この場合、目詰まりによる排水不良が発生し易いため、前記のように確認口を設けることが特に好適である。
【0014】
さらに、前記点検口の蓋体の少なくとも一部を透明材料により形成することが好ましい。このようにすれば、処理材の排出状況を容易に確認でできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の生ゴミ処理機では、予想される排出停止状況での生ゴミおよび処理材の上表面より上方に確認口を設けているため、この確認口から排出状況を確認できる。そして、排出手段が目詰まりなどの原因で、処理槽内の排出物を排出できない状況である場合には、前記確認口から清掃用具などを挿入することにより、その原因を解消できる。その結果、定期的な異物除去作業時、処理材の交換時、および、装置が故障した時に、処理槽内の処理材および生ゴミが点検口から流出することを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る実施形態の生ごみ処理機を示す。この生ゴミ処理機は湿式であり、周壁10a、底壁10bおよび上壁10cを有する円筒形状の処理槽10を備えている。この処理槽10は、図示しないが適宜の断熱構造を有し、その内部には、図2および図3に示すように、微生物(バイオ菌)が着床する多孔質の発泡樹脂製の多数の基材11と処理水12とが収容されている。
【0018】
前記処理槽10の内部中央には、スクリュ形の撹拌翼13を有する撹拌軸14が垂直に収容されている。撹拌軸14の上端は処理槽10の上壁10cの内面に回転自在に支持され、下端は処理槽10の底壁10bに設けた軸受15により回転自在に支持されている。撹拌軸14の上端は更に、処理槽10の上壁10cを貫通し、外側のカバー16内に設けられた撹拌モータ17にカップリング18を介して連結されている。この撹拌モータ17の駆動により、撹拌軸14は正逆転可能になっている。
【0019】
また、処理槽10の周壁10aには、上部に処理水12の給水管19が配設されるとともに、下部に排出物である全ての処理水12を排水するための第1排水管20が配設されている。なお、給水管19は、処理水12のオーバーフロー水位より50mm程度上方が好ましい。排出手段を構成する第1排水管20には、処理槽10内の開口部(排水口)に第1排水濾過網21が配設され、処理中の生ごみが排出されるのを防止している。また、第1排水管20には第1電磁弁22が介設され、図示しない浄化槽又は下水道に接続されている。
【0020】
また、処理槽10の周壁10aにはオーバーフロー開口23が形成されている。オーバーフロー開口23には第2排水濾過網24が取り付けられ、処理中の生ごみがオーバーフローによって排出されるのを防止している。また、処理槽10内には、第2排水濾過網24が詰まってオーバーフロー水位より上昇すると、これを検知して給水を停止するためのオーバーフロースイッチ25が設けられている。
【0021】
また、処理槽10の周壁10aの上部には、前記オーバーフロー開口23を介して処理槽10内と連通するオーバーフロー槽26が設けられている。このオーバーフロー槽26は第2排水管27とトラップ28を介して第1排水管20と同様の浄化槽又は下水道に接続されている。さらに、オーバーフロー槽26内にはシャワー給水管29が配設され、第2排水濾過網24に向かってシャワー水を噴射し、第2排水濾過網24に付着した生ごみを除去して排水が円滑に行われるようにしている。
【0022】
また、処理槽10の周壁10aの上部には、図1に示すようにバイオタンク30が収容されたケーシング31が設けられている。前記バイオタンク30には微生物を含む液体からなる処理剤(液体バイオ)32が収容され、該処理剤32は前記カバー16内に設けられたバイオポンプ33によって処理槽10内に注入されるようになっている。
【0023】
また、前記処理槽10の上壁10cの外周寄りには、生ごみを投入する投入口34が設けられている。この投入口34は不透明な蓋体35によって開閉可能であり、この蓋体35には周知の取付構造で透明な覗き窓36が設けられている。さらに、処理槽10の周壁10aにおいて、前記投入口34と対応する下部である底壁10bには、内部の清掃および修理のために人が侵入可能な大きさの点検口37が設けられている。この点検口37は、前記投入口34と同様に、不透明な蓋体38によって開閉可能であり、この蓋体38には周知の取付構造で透明な覗き窓39が設けられている。
【0024】
そして、本実施形態では、処理槽10の周壁10aにおいて、前記投入口34と点検口37の間には、前記点検口37より小さく、人は侵入不可能な大きさの確認口40が設けられている。この確認口40は、前記点検口37と同様に、不透明な蓋体41によって開閉可能であり、この蓋体41には周知の取付構造で透明な覗き窓42が設けられている。ここで、処理槽10は、50kg/日または100kg/日の生ごみ処理機で大きさが異なり、一度に供給する処理水12の量も30L(リッター)および60L(リッター)と異なる。勿論、生ゴミを投入可能な量も異なり、その生ゴミおよび処理材(基材11と処理水12)の最大許容収容量が予め設定されている。そして、前記確認口40は、この最大許容収容量で生ゴミおよび処理材を収容した状態での上表面、即ち、前記オーバーフロー開口23の下端より、その下端縁が上方に位置するように形成されている。
【0025】
一方、前記処理槽10の上方には、処理水12を貯留するタンクであるシスターン43が設けられている。シスターン43は、入口44、出口45、オーバーフロー管46を有し、入口44の内側には浮玉47aの上下動によって給水の開始と停止を行うボールタップ47が設けられている。シスターン43の入口44の外側は図示しない止水弁を介して上水道または受水槽に接続されている。シスターン43の出口45には、前記処理槽10に配管した給水管19が接続されている。この給水管19には、ストレーナ48および第2電磁弁49が介設され、これらストレーナ48と第2電磁弁49の間には、前記オーバーフロー槽26に配管したシャワー給水管29が分岐接続されている。このシャワー給水管29には、第3電磁弁50およびシャワー用ポンプ51が介設されている。
【0026】
前記撹拌モータ17、バイオポンプ33、シャワー用ポンプ51および第1,第2,第3電磁弁22,49,50は、処理槽10の横に設置された電気制御盤52によって制御される。
【0027】
次に、前記構成からなる生ごみ処理機の動作を説明する。
【0028】
運転開始に先立って電気制御盤52の時間設定器により、1サイクルの運転時間と休止時間をそれぞれ0から15分の間で設定し、例えば運転時間15分、休止時間5分とする。また、撹拌モータ17の正転時間(例えば30秒)、逆転時間(例えば30秒)、停止時間(例えば10秒)をそれぞれ設定するとともに、バイオ添加時間(例えば6時間)を設定する。
【0029】
そして、ユーザは、前記処理槽10内に微生物(バイオ菌)を着床させた所定量の基材11と処理水12が収容されている状態で、投入口34から生ごみを投入し、運転を開始する。1サイクルの間、撹拌モータ17により撹拌軸14を正転−逆転−停止させるパターンを繰り返す。撹拌軸14の回転数は、予め一定の数値で設定されるもので、正逆転とも約140rpm〜240rpmの間で設定される。処理槽10の断熱構造により、処理水12の温度は約33〜38℃、好ましくは35℃に維持される。生ごみは、基材11と処理水12とともに撹拌翼13によって撹拌され、基材3中に着床した微生物(バイオ菌)によって水と二酸化炭素に分解される。
【0030】
微生物による生ごみの分解作用により、処理水12の溶存酸素が消費される。そこで、撹拌モータ17の正転時には所定時間(0〜30秒の間で予め設定)、第2電磁弁49を開き、シスターン43から処理水12を処理槽10内に供給して酸素を与え、微生物による分解作用を促進する。また、撹拌モータ17の逆転時には所定時間(0〜30秒の間で予め設定)、第3電磁弁50を開き、シャワー用ポンプ51を駆動して、シスターン43から処理水12をオーバーフロー槽26内に供給して第2排水濾過網24を洗浄し、第2排水濾過網24の目詰まりを防止し、分解水のオーバーフローによる排水を円滑に行わせる。オーバーフローした分解水は第2排水管27およびトラップ28を通って下水として排水される。また、運転中に設定時間毎にバイオポンプ33を駆動し、所定量(例えば20cc)の処理剤32を処理槽10内に添加し、微生物による分解作用を継続させる。
【0031】
一方、定期的な異物除去作業時、基材11の交換時、および、装置が故障した時には、第1電磁弁22を開き、処理槽10内の全ての処理水12を排水する。この際、本実施形態では、点検口37の蓋体35に透明な覗き窓36を設けているため、前記処理水12の排水状況を容易に確認できる。なお、この点検口37の覗き窓36は、処理水12の汚れ具合や生ゴミの撹拌状況により、処理水12の排水状況を確認できない場合がある。しかし、本実施形態では、前記オーバーフロー開口23より上方に確認口40を設けているため、この確認口40の蓋体41を開放させることにより、処理水12の排水状況を簡単かつ確実に確認することができる。
【0032】
そして、処理槽10内の処理水12が全て排水されると、内部の修理を施したり、処理中(分解途中)の生ゴミと一緒に基材11を取り出す。
【0033】
また、全ての処理水12を排出できない場合、一番の原因として排出手段を構成する第1排水管20の第1排水濾過網21が生ゴミなどによって目詰まりしたと判断できる。そのため、生ゴミおよび基材11を含んだ処理水12の水面より上方に位置する確認口40の蓋体41を開き、その排水不良の原因を確認し、第1排水濾過網21の目詰まりである場合には、開放させた確認口40から清掃用具などを挿入することにより、第1排水濾過網21の近傍および付着した生ゴミを清浄し、その原因を解消できる。その結果、排水不良が発生している状況で蓋体35を開放することにより、処理槽10内の汚い生ゴミおよび基材11を含んだ処理水12が点検口37から流出することを確実に防止できる。
【0034】
なお、本発明の生ゴミ処理機は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0035】
例えば、前記実施形態では、確認口40の形状、大きさ、および、位置は希望に応じて変更が可能である。特に、確認口40を設ける位置は、図4に示すように、予め設定した生ゴミおよび基材11を含む処理水12の最大許容収容量の上表面(オーバーフロー開口23の下端位置)L1より上方に限られない、即ち、処理槽10に貯留した処理水12はその重力により全く排水されないことは少ない。そのため、絶対的に排水される量を考慮して、点検口37の下端より上方で、かつ、処理水の排水が停止すると予想される状況での生ゴミおよび処理材の上表面(最大許容収容量に対して約5〜10%)L2より上方に、その高さを設定してもよい。勿論、確認口40は、投入口34および点検口37を有する正面側に限られず、第1排水管20の開口部の上方に位置させてもよく、第1排水濾過網21に付着した生ゴミを除去し易い位置に設けることが好ましい。
【0036】
また、蓋体35,38,41は、一部を透明な覗き窓36,39,42としたが、蓋体35,38,41全体を透明な樹脂材料により形成してもよい。さらに、蓋体35,41は、必ずしも透明部分を形成する必要はない。
【0037】
さらに、確認口40を設ける本発明の構成は、処理材が微生物を担持させた基材11と処理水12とからなる湿式の生ゴミ処理機に限られず、処理材が好気性の酵母菌からなる微生物を担持させたおがくずなどの基材からなる乾式の生ゴミ処理機でも、点検口37および処理材を自動排出可能な排出手段を備えたものであれば適用可能であり、前記と同様の作用および効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る生ごみ処理機の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の生ごみ処理機の正面断面図である。
【図3】図1の生ごみ処理機の側面断面図である。
【図4】本発明に係る生ゴミ処理機の変形例を示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0039】
10…処理槽
11…基材
12…処理水
19…給水管
20…第1排水管(排出手段)
21…第1排水濾過網
22…第1電磁弁(排出手段)
32…処理剤(微生物)
34…投入口
35…蓋体
36…覗き窓
37…点検口
38…蓋体
39…覗き窓
40…確認口
41…蓋体
42…覗き窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に生ゴミおよび処理材を収容させて前記生ゴミを分解させる処理槽と、該処理槽の下部に設けた排出物の排出手段と、前記処理槽の下部に設けられ開閉可能な蓋体を有する点検口とを備えた生ゴミ処理機において、
前記点検口の下端より上方で、かつ、前記排出手段による排出物の排出が停止すると予想される状況での生ゴミおよび処理材の上表面より上方に、開閉可能な蓋体を有する確認口を更に設けたことを特徴とする生ゴミ処理機。
【請求項2】
前記確認口は、予め設定した生ゴミおよび処理材の最大許容収容量の上表面より上方に位置することを特徴とする請求項1に記載の生ゴミ処理機。
【請求項3】
前記処理材は、微生物を担持させた基材と処理水とからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生ゴミ処理機。
【請求項4】
前記点検口の蓋体の少なくとも一部を透明材料により形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の生ゴミ処理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−205039(P2006−205039A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19685(P2005−19685)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】