生体信号処理装置、脳波計及び生体信号処理方法
【課題】簡易な構成を有し、かつ出力信号の取得中においても生体表面の測定部位と電極との電気的な接続状態を検出することが可能な生体信号処理装置、脳波計及び生体信号処理方法を提供すること
【解決手段】本技術に係る生体信号処理装置は、信号取得部と、判定部とを具備する。信号取得部は、生体表面に装着された電極の出力信号を取得する。判定部は、信号取得部と接続され、出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、電極が生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、電極が測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する。
【解決手段】本技術に係る生体信号処理装置は、信号取得部と、判定部とを具備する。信号取得部は、生体表面に装着された電極の出力信号を取得する。判定部は、信号取得部と接続され、出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、電極が生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、電極が測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、生体表面と電極との電気的な接続状態を判定する生体信号処理装置、脳波計及び生体信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電極を生体表面の測定部位に装着させることによって、脳波、筋電位等の生体信号を取得することが広く行われている。この際、電極と生体表面とが電気的に接続されている必要があるが、毛髪等の存在や、生体表面の形状の不均一性等によって、電極と生体表面とを適切な接続状態に維持することが難しいという問題があった。さらに、電気的な接続状態の判定に関しては、生体の動作等に起因して起こる電極外れのように一見して判断できる場合ばかりではなく、毛髪の介在等のように判断が難しい場合があった。
【0003】
このことから、例えば脳波信号を検出する電極と頭皮との電気的な接触状態を検知する装置が検討されている。特許文献1には、頭皮に接触された脳波電極の近傍にコイルが配置された脳波電極接触検知装置が記載されている。この装置は、コイルに電流を加え、それによって発生する誘導電流が脳波電極を通じて頭皮側に流れるか否かによって、脳波電極と頭皮との電気的な接触状態を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−212348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の脳波電極接触検知装置は、脳波測定のための電気回路とは別に、コイルに電流を加える電気回路を各電極に設ける必要があり、装置構成が複雑であった。また、接触状態を検知している間は、脳波測定を停止させる必要があり、例えば睡眠時等の長時間連続した脳波測定が必要な場合は、その間接触状態を検知することができなかった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、簡易な構成を有し、かつ出力信号の取得中においても生体表面の測定部位と電極との電気的な接続状態を検出することが可能な生体信号処理装置、脳波計及び生体信号処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る生体信号処理装置は、信号取得部と、判定部とを具備する。
上記信号取得部は、生体表面に装着された電極の出力信号を取得する。
上記判定部は、上記信号取得部と接続され、上記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、上記電極が上記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、上記電極が上記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する。
【0008】
この構成によれば、例えば毛髪や空気等の介在によって生体表面と電極との間の電気的な接続が断たれた場合に、本来の生体信号とは異なる周波数特性を有する出力信号が得られることを利用して、生体表面と電極との電気的な接続状態を判定することができる。このことから、装置構成を複雑化することなく、出力信号の取得を継続しつつ接続状態を判定することが可能となる。
【0009】
上記判定部は、上記第1の周波数特性と有色雑音または白色雑音の周波数特性である第2の周波数特性とを比較して、上記第1の周波数特性と上記第2の周波数特性とが異なる場合に上記第1の状態と判定し、上記第1の周波数特性と上記第2の周波数特性とが類似する場合に上記第2の状態と判定してもよい。
【0010】
生体表面と電極との間の電気的な接続が断たれている場合には、出力信号として、例えばピンクノイズ等の有色雑音や白色雑音が取得されることがある。したがって、この構成によれば、これらの雑音の周波数特性に基づいて生体表面と電極との間の電気的な接続状態を容易に判定することができる。
【0011】
上記判定部は、特定の周波数に対する強度を検出し、上記強度が予め設定された所定の閾値未満である場合に上記第1の状態と判定し、上記強度が上記閾値以上である場合に上記第2の状態と判定してもよい。
【0012】
生体表面と電極との間の電気的な接続が断たれている場合には、電気的な接続が得られている場合よりも、雑音等により大きな強度の出力信号が取得されることがある。したがって、この構成によれば、特定の周波数における強度と所定の閾値とを比較することによって、生体表面と電極との間の電気的な接続状態を容易に判定することができる。
【0013】
上記生体信号処理装置は、上記判定部と接続され、上記判定部の判定結果を出力することが可能な出力部をさらに具備してもよい。
上記出力部によって、判定結果を外部機器等へ送信することが可能となる。
【0014】
上記生体信号処理装置は、上記判定部と接続され、上記判定結果が上記第2の状態である場合に作動する警告部をさらに具備してもよい。
上記警告部によって、電極と生体表面との電気的接続が切断された第2の状態と判定された場合に、その旨を測定者またはユーザ等に警告することが可能となる。
【0015】
上記生体信号処理装置は、上記判定部によって上記第1の状態と判定された場合に、上記出力信号を生体信号として経時的にモニタする測定部をさらに具備してもよい。
このような構成によって、判定部により適切な生体信号が取得できていると判定された場合は、測定部によってモニタを継続することができる。このことから、取得されたデータの信頼性を高めることが可能となる。
【0016】
具体的には、上記判定部は、上記出力信号についてフーリエ変換を行うことによって、上記第1の周波数特性を取得してもよい。
このことによって、判定部は、出力信号から容易に第1の周波数特性を取得することができる。
【0017】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る生体信号処理装置は、電極と、信号取得部と、判定部とを具備する。
上記電極は、生体表面に装着される。
上記信号取得部は、上記電極の出力信号を取得する。
上記判定部は、上記信号取得部と接続され、上記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、上記電極が上記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、上記電極が上記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する。
【0018】
このような構成によって、上記生体信号処理装置は、装置構成を複雑化させることなく、生体信号を取得するための電極を具備する構成とすることができる。
【0019】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る脳波計は、頭部装具と、信号取得部と、判定部とを具備する。
上記頭部装具は、電極をユーザの頭部表面に装着させる。
上記信号取得部は、上記電極の出力信号を取得する。
上記判定部は、上記信号取得部と接続され、上記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、上記電極が上記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、上記電極が上記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する。
【0020】
頭部は、毛髪の存在や、表面の曲面形状等により、適切に電気的な接続を得ることが特に難しい部位である。さらに、睡眠時等の比較的長時間の測定も求められる。このような事情の下でも、上記脳波計は、電気的な接続が切断された時点を容易に把握することができるため、測定されたデータの信頼性を高めることができる。
【0021】
上記目的を達成するため、上記生体信号処理方法は、生体表面の生体信号を取得するための電極を通じて出力信号を取得する工程を含む。
上記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、上記電極が上記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、上記電極が上記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かが判定される。
【0022】
上記判定工程は、取得された上記出力信号をモニタしつつ、上記第1の状態か、上記第2の状態かを判定する工程を含む。
このような構成によって、生体表面と電極とのリアルタイムでの接続状態の判定が可能となり、接続の再確保等の適切な措置を講じることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本技術によれば、簡易な構成を有し、かつ出力信号の取得中においても生体表面と電極との電気的な接続状態を検出することが可能な生体信号処理装置、脳波計及び生体信号処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)がユーザに装着された状態を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)の機能的構成を示す模式図である。
【図3】第1の実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)の動作の例を示すフローチャートである。
【図4】電極とユーザの頭部表面の測定部位とが電気的に接続されている状態(第1の状態)における出力信号の周波数特性の例を示すグラフであり、横軸が周波数、縦軸が強度を示す。
【図5】電極とユーザの頭部表面の測定部位とが電気的に接続されていない状態(第2の状態)における出力信号の周波数特性の例を示すグラフであり、横軸が周波数、縦軸が強度を示す。
【図6】ピンクノイズの周波数特性を示す模式的なグラフであり、横軸が周波数、縦軸が強度を示す。
【図7】第2の実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)の機能的構成を示す模式図である。
【図8】第2の実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)の動作の例を示すフローチャートである。
【図9】第3の実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)の機能的構成を示す模式図である。
【図10】第3の実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)の動作の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本技術に係る実施形態について説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
[生体信号処理装置の構成]
図1は、本実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)がユーザに装着された状態を示す斜視図である。脳波計1は、ヘッドギア(頭部装具)11と、筐体12とから構成される。ヘッドギア11には、ユーザと対向する側に電極13a〜13eが設けられている。筐体12は、ヘッドギア11と着脱可能に接続され、後述する電装部品を収容する。
【0027】
ヘッドギア11は、電極13a〜13eをユーザの頭部表面に装着させることが可能に構成される。ヘッドギア11は、ユーザの額から頭頂部を経て後頭部に到る部材で構成され、ユーザの頭部形状及び電極の配置にあわせて形成することができる。例えば、後述する電極13c,13d等を所定位置に配置するためのアーム111、112等を有していてもよい。また、ヘッドギア11は、弾性を有する材料、例えば合成樹脂等によって形成され、この弾力性によってユーザの頭部に支持される。
【0028】
電極13a〜13eは、ヘッドギア11に設けられる各種の電極であり、所定の測定部位に対応して配置されている。例えば、頭頂部電極13a、後頭部電極13b、右眼電電極13c、左眼電電極13d、基準電極13e等を設けることが可能である。
【0029】
より具体的には、頭頂部電極13aと、後頭部電極13bとによって、ユーザの脳波(EEG:electroencephalogram)が測定される。また、右眼電電極13cはユーザの右こめかみに、左眼電電極13dはユーザの左こめかみにそれぞれ接触する電極であり、これらによってユーザの眼球運動(EOG:electrooculogram)が測定される。基準電極13eは、電極13a〜13dからの測定電位の基準となる電位(基準電位)を取得するための電極であり、例えばユーザの耳朶の裏側に接触させる。なお、電極の名称、配置等は例示であり、必要に応じて適宜選択することが可能である。
【0030】
電極13a〜13eの形状は、特に限られないが、例えば導電性材料からなるブラシ状の電極とすることができる。このような構成により、毛髪を掻き分けて頭部表面に接触させることが可能となる。また、電極13a〜13eの生体表面と当接する部分を、フェルト等の保液性を有する材料で構成することによって、電極13a〜13eと頭部表面との間に電解液等を介在させることができる。これにより、ペースト等によって頭部表面と電極とを固定させずとも、頭部表面の測定部位と電極13a〜13eとの間の電気的な接続を確保することができ、電極13a〜13eの装脱着も容易になる。
【0031】
筐体12は、上述のように、ヘッドギア11に着脱可能に接続される。筐体12が配置される位置は、ヘッドギア11の装着及びユーザの動作の妨げとならないような位置であればよく、例えばヘッドギア11の頭頂部付近とすることができる。
【0032】
筐体12には、後述する信号取得部、判定部等を構成するプロセッサやメモリ、通信インターフェイス等の電装部品が収容されている。ヘッドギア11には図示しない配線が設けられ、各電極とこれらの電装部品とを接続している。
【0033】
[生体信号処理装置の機能的構成]
図2は、脳波計1の機能的構成を示す模式図である。同図に示すように、脳波計1は、ヘッドギア11と、筐体12と、電極13a〜13eと、信号取得部14と、判定部15と、測定部16と、記憶部17と、出力部18とを有する。このうち、信号取得部14と、判定部15と、測定部16と、記憶部17と、出力部18とは、いずれも筐体12内部に収容されている。
【0034】
ヘッドギア11の各電極13a〜13eによって取得された出力信号は、配線等を介して筐体12内の信号取得部14に到達する。信号取得部14は、例えば、アンプ141と、フィルタ142と、AD(Analog/Digital)変換部143とで構成される。電極13a〜13eは、アンプ141に接続されている。アンプ141はフィルタ142に接続され、フィルタ142はAD変換部143に接続されている。AD変換部143は判定部15及び測定部16にそれぞれ接続される。判定部15及び測定部16は、それぞれ記憶部17に接続され、記憶部17は出力部18に接続される。なお、図2では、便宜的に電極13a〜13eを1つのブロックで示しているが、実際にはそれぞれの電極13a〜13eが配線等を介してアンプ141と接続されている。
【0035】
アンプ141は、出力信号を増幅する。フィルタ142には、測定対象とすべき所定の周波数帯域が設定されており、その周波数帯域以外の信号成分を除去する。AD変換部143は、出力信号をデジタル信号に変換する。
【0036】
判定部15は、各電極13a〜13eからの各出力信号に対してフーリエ変換を行うことで、出力信号の周波数特性を取得する。さらに各出力信号の周波数特性(第1の周波数特性)に基づいて、各電極13a〜13eとユーザの頭部表面の測定部位との電気的な接続状態をそれぞれ判定する。本実施形態に係る判定方法としては、後述するように、ピンクノイズの有する周波数特性(第2の周波数特性)と第1の周波数特性とを比較することで、当該接続状態を判定する。
【0037】
測定部16は、出力信号に対してモンタージュ処理(測定電極と基準電極との差分出力)等のデータ処理を行う。これにより、例えば、電極13a〜13dからの各出力信号が、電極13eを基準電極とする電位差の時系列データとして処理される。なお、「モニタ」とは、電極13a〜13dからの各出力信号と、電極13eの出力信号との電位差の時系列データを取得することを指すものとする。測定部16は、判定部15と接続されており、判定部15での判定結果を取得することが可能である。
【0038】
記憶部17は、例えばフラッシュメモリ等からなる。判定部15及び測定部16によって得られたデータは、記憶部17に一時的に格納される。
【0039】
出力部18は、例えば、通信インターフェイス(通信IF)からなる。記憶部17に格納されたデータは、必要に応じて出力部18を介して外部機器等へ送信される。出力方法については、無線または有線でも、特に制限されない。
【0040】
以上のように、脳波計1は、ユーザからの生体信号を取得し、電極13a〜13eと測定部位との接続状態を判定することが可能に構成される。なお、このような筐体12の機能的構成は例示であり、これと異なる構成とすることも可能である。
【0041】
[脳波計の動作]
図3は、本実施形態に係る脳波計1の動作の例を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに示す各ステップ(St)について説明する。
【0042】
まず、電極13a〜13eをユーザの頭部表面に装着させる(St11)。この状態で、脳波計1を起動させる。
【0043】
そして、ユーザの頭部表面に装着された電極13a〜13eからの出力信号が、信号取得部14によってそれぞれ取得される(St12)。各出力信号は、まずアンプ141によって増幅され、フィルタ142によって所定の周波数帯域以外の信号成分が除去される。さらに、残った信号成分は、AD変換部143によってデジタル信号に変換される。このように処理された各出力信号は、判定部15及び測定部16へ供給される。
【0044】
測定部16では、取得された出力信号を経時的にモニタする(図示せず)。また、モニタ結果は、記憶部17へ格納され、さらに出力部18から外部機器等へ送信されることが可能である。
【0045】
判定部15は、各電極13a〜13dからの出力信号に対してそれぞれフーリエ変換を行う(St13)。フーリエ変換は、例えば高速フーリエ変換によって行うことができる。これによって、出力信号に対する、各周波数成分のスペクトル密度(強度)、すなわち第1の周波数特性のデータを容易に得ることができる。また、得られたデータは、必要に応じてスムージングされる。
【0046】
図4及び図5は、いずれもSt13においてフーリエ変換され、スムージングされた第1の周波数特性の例を示すグラフであり、横軸は周波数を示し、縦軸は強度を示す。図4に示す例からは、8〜13Hz付近の周波数帯域において出力信号の強度が増加していることが示される。上記周波数帯域は、脳波に特徴的なアルファ波の周波数帯域に一致する。
【0047】
一方、図5に示す例では、特定の周波数帯域における強度の増加等が見られず、右肩下がりの形状を示す。このように、第1の周波数特性において脳波に特徴的な形状が観察されない場合は、測定部位と電極とが電気的に接続されていないことにより、出力信号に雑音が混入している可能性がある。
【0048】
判定部15は、電極と測定部位との電気的な接続状態を判定するために、第1の周波数特性と、ピンクノイズの周波数特性(第2の周波数特性)とが類似するか否かを判定する(St14)。ピンクノイズは、脳波測定時において、電極と測定部位との電気的接続が断たれた場合にみられる雑音である。
【0049】
ここで、ピンクノイズとは、強度が周波数に反比例する周波数特性を有する雑音であり、一般に「1/fゆらぎ」としても知られている。また、上記第2の周波数特性は、一般に、以下の式で表される。
S(f)∝1/fα (Sは強度、fは周波数、0<α<2)
本実施形態においては、α=1/2の例、すなわち、
S(f)∝1/√f・・・(1)
とする。
【0050】
図6は、上記(1)の式で表される第2の周波数特性を示すグラフであり、横軸が周波数、縦軸が強度を示す。図6で示される第2の周波数特性の形状は、図4に示される第1の周波数特性の形状とは異なるが、図5に示される第1の周波数特性の形状とは類似している。このことから、図4に示す例は、電極とユーザの頭部表面の測定部位とが電気的に接続されている状態(第1の状態)であり、図5に示す例は、電極とユーザの頭部表面の測定部位とが電気的に接続されていない状態(第2の状態)であると考えられる。
【0051】
より具体的な判定は、公知の手法を用いて第1の周波数特性と第2の周波数特性との類似度を算出することにより行う。
【0052】
算出された類似度が所定の閾値未満の場合、すなわち第1の周波数特性と第2の周波数特性とが異なる場合には、第1の状態と判定することができる(St14:No)。この際、測定部16に対しては、出力信号を適切な生体信号(脳波)としてモニタを継続させる(St15)。
【0053】
一方、算出された類似度が所定の閾値以上の場合、すなわち第1の周波数特性と第2の周波数特性とが類似する場合には、第2の状態と判定することができる(St14:Yes)。本実施形態において、この場合は、第2の状態とする判定結果を記憶部17に記録させる(St16)。
【0054】
記憶部17に格納されたデータは、例えば出力部18から外部機器等へ出力されることが可能である。これにより、外部機器の画面等に表示されたモニタ結果内に、第2の状態が判定された時点を表示することが可能となる。このことによって、測定部位での電気的な接続状態が断たれた時点を明確に示すことが可能となり、データの信頼性を容易に確認することができる。
【0055】
以上、本実施形態によれば、出力信号のみに基づいて測定部位と電極との電気的な接続状態を判定することができる。このことから、出力信号のモニタを継続しつつ、当該接続状態を判定することが可能となる。また、外見からは判断が不可能な場合であっても、当該接続状態を判定することが可能となる。さらに、接続状態の判定のための新たな電気回路等を必要とせず、単純な装置構成とすることができる。
【0056】
(第2の実施形態)
本技術の第2の実施形態について説明する。
なお、本実施形態において第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0057】
[脳波計の機能的構成]
図7は、本実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)2の機能的構成を示す模式図である。同図に示すように、脳波計2は、第1の実施形態と同一の構成に加え、警告部19を有する。警告部19は、判定部15と接続されている。
【0058】
警告部19は、例えば、スピーカを有する電子ブザー等とすることができ、筐体12内に配置される。警告部19は、判定部15によって第2の状態と判定された場合に作動し、例えばアラームを鳴らすこと等によって測定者またはユーザにその旨を警告する。これにより、測定者等は第2の状態であることを認識できるとともに、再接続等の適切な措置を講じることが可能となる。
【0059】
[脳波計の動作]
図8は、本実施形態に係る脳波計2の動作の例を示すフローチャートである。
本実施形態と第1の実施形態との相違点としては、第1の周波数特性と第2の周波数特性とが類似し、電極13a〜13eの少なくとも1つが第2の状態と判定された場合に(St24:Yes)、警告部19が作動する(St26)点である。なお、同図に示すSt21〜St25は、図3に示すSt11〜St15にそれぞれ対応するため、説明を省略する。
【0060】
警告部19が作動すると、測定者等は電極13a〜13eをユーザの頭部表面の測定部位に再接続し、脳波の測定が再開される(St21)。接続状態が改善されなければ再度警告部19が作動するため(St26)、測定部位と電極との電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0061】
警告部19が有するスピーカの配置は特に限られず、ヘッドギア11に配置されることも可能である。また、第2の状態である電極がどの電極か、音声等によって知らせる構成とすることも可能である。さらに、警告部19が、判定部15と直接接続されず、出力部18と有線または無線で接続される構成とすることで、警告部19自体を外部機器に配置することも可能である。
【0062】
(第3の実施形態)
本技術の第3の実施形態について説明する。
なお、本実施形態において第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0063】
[脳波計の機能的構成]
図9は、本実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)3の機能的構成を示す模式図である。同図に示すように、脳波計3は、第1の実施形態と同一の構成に加え、駆動機構130a〜130eと駆動機構制御部131とを有する。
【0064】
駆動機構130a〜130eは、電極13a〜13eをヘッドギア11に対してそれぞれ駆動させることが可能なモータ等からなる。駆動機構制御部131は、判定部15と駆動機構130a〜130eとに接続され、判定部15の判定結果に応じて駆動機構130a〜130eの駆動を制御することが可能である。
【0065】
[脳波計の動作]
図10は、本実施形態に係る脳波計3の動作の例を示すフローチャートである。
同図に示すSt31〜St35は、図3に示すSt11〜St15と、図8に示すSt21〜St25とにそれぞれ対応する。本実施形態においては、第2の実施形態と異なり、判定部15によって電極13a〜13eのいずれかが第2の状態と判定された場合に(St34:Yes)、駆動機構制御部131がその電極と対応する駆動機構を駆動させる。これにより、自動的に電気的な接続状態が改善される。第2の状態と判定された場合のSt31〜St34の動作は、判定部15によって第1の状態が検出される(St34:No)まで繰り返される。なお、接触状態を改善するための電極13a〜13eの動作としては、ヘッドギア11に対する回動、傾斜等が採用される。
【0066】
以上のような構成の脳波計3により、測定部位と電極との電気的な接続状態の判定から、接続状態の確保まで、自動的に行うことが可能である。このことから、測定者等による接続状態の監視を必要とせずに、長時間にわたって適切に脳波を測定することが可能となる。すなわち、睡眠時等における脳波の測定に対しても非常に有利な構成とすることができる。
【0067】
(第4の実施形態)
本技術の第4の実施形態について説明する。
なお、本実施形態において第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)は、第1の実施形態と異なる構成の判定部を有する。
【0068】
一般的に、測定部位と電極との電気的な接続が断たれている場合、出力信号にピンクノイズ等が入ることにより、本来の脳波信号よりも大きな強度の出力信号が得られることが知られている。例えば、上述した図4と図5とを比較すると、図4に示された第1の状態における強度よりも、図5に示された第2の状態における強度の方が全体的に大きいことが見て取れる。このことを利用して、本実施形態に係る判定部は、出力信号の特定の周波数に対する強度と、所定の閾値とを比較することにより、第1の状態と第2の状態とを判定する。
【0069】
まず、判定部は、第1の実施形態と同様に、各電極からの出力信号に対してそれぞれフーリエ変換を行い、第1の周波数特性を取得する。次に、第1の周波数特性の特定の周波数に対する強度を検出し、当該強度と予め設定された所定の閾値とを比較する。ここで、当該強度が閾値未満である場合に、測定部位と電極との電気的な接続が得られた第1の状態と判定し、当該強度が閾値以上である場合に測定部位と電極との電気的な接続が断たれた第2の状態と判定する。
【0070】
以上のように、本実施形態によっても、頭部表面の測定部位と電極との間の電気的な接続状態を容易に判定することができる。なお、特定の周波数は1つに限られず、複数の周波数に対する出力信号の強度と、それぞれに対して設定された閾値とを比較することも可能である。これにより、より広い周波数帯域について検討することができ、判定部における判定結果の信頼性を高めることができる。
【0071】
本技術は上記各実施形態にのみ限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において変更することが可能である。
【0072】
以上の実施形態において、生体信号処理装置は脳波計であるとして説明したが、これに限られない。例えば、生体信号処理装置は、ヘッドギアを有さない構成とし、生体信号として筋電位を測定する筋電図検査装置とすることも可能である。また、同様に心電図検査装置等とすることも可能である。これらの場合、生体信号処理装置が電極を有さない構成としてもよい。すなわち、生体信号処理装置と電極とが別部材で構成され、電極から取得された出力信号が、信号取得部へ無線で送信される構成とすることが可能である。
【0073】
また、第2の周波数特性はピンクノイズの周波数特性に限られず、電極と測定部位との電気的接続が断たれた場合に検出される雑音の周波数特性を第2の周波数特性として用いることが可能である。このような雑音の例として、白色雑音(ホワイトノイズ)や有色雑音(ピンクノイズの他、ブラウニアンノイズ等)が挙げられる。例えば、ホワイトノイズは、全ての周波数に対して強度が同一となる雑音であり、
SW(f)∝1/f0 (SWは強度、fは周波数)
と表される。これらの場合においても、以上の実施形態と同様に電極と測定部位との電気的接続を判定することが可能である。
【0074】
また、以上の実施形態においては、出力信号をモニタしつつ接続状態の判定を行う構成として説明したが、これに限られず、モニタ終了後に接続状態の判定を行う構成とすることができる。この場合に、記憶部は、信号取得部によって得られた出力信号のデータを格納し、モニタ終了後に、判定部が、記憶部からデータを取り出し、接続状態の判定を行う。この構成によって、モニタ終了後のまとまったデータ解析が可能となる。
【0075】
第2の実施形態において、警告部19は電子ブザー等で構成されると説明したが、これに限られない。例えば、発光ダイオード(LED)等を用いた点灯または点滅回路で構成することも可能である。これにより、測定者等に視覚的に第2の状態を警告することが可能となる。なお、LED等の配置は特に限られず、筐体12やヘッドギア11、あるいは外部機器に配置することが可能である。
【0076】
また、警告部19が振動モータ等を有し、振動によってユーザに第2の状態を警告することも可能である。この場合においても、警告部19の配置は特に限られない。
【0077】
また、本技術は、人体における生体信号についてのみならず、動物についても適用することができる。動物からの生体信号を取得する際は、測定される個体が人体よりも小さく、特に電極と測定部位との電気的な接続状態を判断することは難しい。本技術に係る生体信号処理装置によれば、容易に接続状態を判定することができるため、より信頼性の高いデータを得ることが可能となる。
【0078】
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)生体表面に装着された電極の出力信号を取得する信号取得部と、
前記信号取得部と接続され、前記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、前記電極が前記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、前記電極が前記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する判定部と
を具備する生体信号処理装置。
(2)前記(1)に記載の生体信号処理装置であって、
前記判定部は、前記第1の周波数特性と有色雑音または白色雑音の周波数特性である第2の周波数特性とを比較して、前記第1の周波数特性と前記第2の周波数特性とが異なる場合に前記第1の状態と判定し、前記第1の周波数特性と前記第2の周波数特性とが類似する場合に前記第2の状態と判定する
生体信号処理装置。
(3)前記(1)に記載の生体信号処理装置であって、
前記判定部は、特定の周波数に対する強度を検出し、前記強度が予め設定された所定の閾値未満である場合に前記第1の状態と判定し、前記強度が前記閾値以上である場合に前記第2の状態と判定する
生体信号処理装置。
(4)前記(1)から(3)のうちいずれか1つに記載の生体信号処理装置であって、
前記生体信号処理装置は、前記判定部と接続され、前記判定部の判定結果を出力することが可能な出力部をさらに具備する
生体信号処理装置。
(5)前記(1)から(4)のうちいずれか1つに記載の生体信号処理装置であって、
前記生体信号処理装置は、前記判定部と接続され、前記判定結果が前記第2の状態である場合に作動する警告部をさらに具備する
生体信号処理装置。
(6)前記(1)から(5)のうちいずれか1つに記載の生体信号処理装置であって、
前記判定部によって前記第1の状態と判定された場合に、前記出力信号を生体信号として経時的にモニタする測定部をさらに具備する
生体信号処理装置。
(7)前記(1)から(6)のうちいずれか1つに記載の生体信号処理装置であって、
前記判定部は、前記出力信号についてフーリエ変換を行うことによって、前記第1の周波数特性を取得する
生体信号処理装置。
(8)生体表面に装着される電極と、
前記電極の出力信号を取得する信号取得部と、
前記信号取得部と接続され、前記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、前記電極が前記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、前記電極が前記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する判定部と
を具備する生体信号処理装置。
(9)電極をユーザの頭部表面に装着させる頭部装具と、
前記電極の出力信号を取得する信号取得部と、
前記信号取得部と接続され、前記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、前記電極が前記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、前記電極が前記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する判定部と
を具備する脳波計。
(10)生体表面の生体信号を取得するための電極を通じて出力信号を取得し、
前記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、前記電極が前記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、前記電極が前記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する
生体信号処理方法。
(11)前記(10)に記載の生体信号処理方法であって、
前記判定工程は、取得された前記出力信号をモニタしつつ、前記第1の状態か、前記第2の状態かを判定する工程を含む
生体信号処理方法。
【符号の説明】
【0079】
1,2,3・・・生体信号処理装置(脳波計)
11・・・ヘッドギア
12・・・筐体
13a〜13e・・・電極
14・・・信号取得部
15・・・判定部
16・・・測定部
18・・・出力部
19・・・警告部
【技術分野】
【0001】
本技術は、生体表面と電極との電気的な接続状態を判定する生体信号処理装置、脳波計及び生体信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電極を生体表面の測定部位に装着させることによって、脳波、筋電位等の生体信号を取得することが広く行われている。この際、電極と生体表面とが電気的に接続されている必要があるが、毛髪等の存在や、生体表面の形状の不均一性等によって、電極と生体表面とを適切な接続状態に維持することが難しいという問題があった。さらに、電気的な接続状態の判定に関しては、生体の動作等に起因して起こる電極外れのように一見して判断できる場合ばかりではなく、毛髪の介在等のように判断が難しい場合があった。
【0003】
このことから、例えば脳波信号を検出する電極と頭皮との電気的な接触状態を検知する装置が検討されている。特許文献1には、頭皮に接触された脳波電極の近傍にコイルが配置された脳波電極接触検知装置が記載されている。この装置は、コイルに電流を加え、それによって発生する誘導電流が脳波電極を通じて頭皮側に流れるか否かによって、脳波電極と頭皮との電気的な接触状態を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−212348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の脳波電極接触検知装置は、脳波測定のための電気回路とは別に、コイルに電流を加える電気回路を各電極に設ける必要があり、装置構成が複雑であった。また、接触状態を検知している間は、脳波測定を停止させる必要があり、例えば睡眠時等の長時間連続した脳波測定が必要な場合は、その間接触状態を検知することができなかった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、簡易な構成を有し、かつ出力信号の取得中においても生体表面の測定部位と電極との電気的な接続状態を検出することが可能な生体信号処理装置、脳波計及び生体信号処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る生体信号処理装置は、信号取得部と、判定部とを具備する。
上記信号取得部は、生体表面に装着された電極の出力信号を取得する。
上記判定部は、上記信号取得部と接続され、上記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、上記電極が上記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、上記電極が上記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する。
【0008】
この構成によれば、例えば毛髪や空気等の介在によって生体表面と電極との間の電気的な接続が断たれた場合に、本来の生体信号とは異なる周波数特性を有する出力信号が得られることを利用して、生体表面と電極との電気的な接続状態を判定することができる。このことから、装置構成を複雑化することなく、出力信号の取得を継続しつつ接続状態を判定することが可能となる。
【0009】
上記判定部は、上記第1の周波数特性と有色雑音または白色雑音の周波数特性である第2の周波数特性とを比較して、上記第1の周波数特性と上記第2の周波数特性とが異なる場合に上記第1の状態と判定し、上記第1の周波数特性と上記第2の周波数特性とが類似する場合に上記第2の状態と判定してもよい。
【0010】
生体表面と電極との間の電気的な接続が断たれている場合には、出力信号として、例えばピンクノイズ等の有色雑音や白色雑音が取得されることがある。したがって、この構成によれば、これらの雑音の周波数特性に基づいて生体表面と電極との間の電気的な接続状態を容易に判定することができる。
【0011】
上記判定部は、特定の周波数に対する強度を検出し、上記強度が予め設定された所定の閾値未満である場合に上記第1の状態と判定し、上記強度が上記閾値以上である場合に上記第2の状態と判定してもよい。
【0012】
生体表面と電極との間の電気的な接続が断たれている場合には、電気的な接続が得られている場合よりも、雑音等により大きな強度の出力信号が取得されることがある。したがって、この構成によれば、特定の周波数における強度と所定の閾値とを比較することによって、生体表面と電極との間の電気的な接続状態を容易に判定することができる。
【0013】
上記生体信号処理装置は、上記判定部と接続され、上記判定部の判定結果を出力することが可能な出力部をさらに具備してもよい。
上記出力部によって、判定結果を外部機器等へ送信することが可能となる。
【0014】
上記生体信号処理装置は、上記判定部と接続され、上記判定結果が上記第2の状態である場合に作動する警告部をさらに具備してもよい。
上記警告部によって、電極と生体表面との電気的接続が切断された第2の状態と判定された場合に、その旨を測定者またはユーザ等に警告することが可能となる。
【0015】
上記生体信号処理装置は、上記判定部によって上記第1の状態と判定された場合に、上記出力信号を生体信号として経時的にモニタする測定部をさらに具備してもよい。
このような構成によって、判定部により適切な生体信号が取得できていると判定された場合は、測定部によってモニタを継続することができる。このことから、取得されたデータの信頼性を高めることが可能となる。
【0016】
具体的には、上記判定部は、上記出力信号についてフーリエ変換を行うことによって、上記第1の周波数特性を取得してもよい。
このことによって、判定部は、出力信号から容易に第1の周波数特性を取得することができる。
【0017】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る生体信号処理装置は、電極と、信号取得部と、判定部とを具備する。
上記電極は、生体表面に装着される。
上記信号取得部は、上記電極の出力信号を取得する。
上記判定部は、上記信号取得部と接続され、上記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、上記電極が上記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、上記電極が上記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する。
【0018】
このような構成によって、上記生体信号処理装置は、装置構成を複雑化させることなく、生体信号を取得するための電極を具備する構成とすることができる。
【0019】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る脳波計は、頭部装具と、信号取得部と、判定部とを具備する。
上記頭部装具は、電極をユーザの頭部表面に装着させる。
上記信号取得部は、上記電極の出力信号を取得する。
上記判定部は、上記信号取得部と接続され、上記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、上記電極が上記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、上記電極が上記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する。
【0020】
頭部は、毛髪の存在や、表面の曲面形状等により、適切に電気的な接続を得ることが特に難しい部位である。さらに、睡眠時等の比較的長時間の測定も求められる。このような事情の下でも、上記脳波計は、電気的な接続が切断された時点を容易に把握することができるため、測定されたデータの信頼性を高めることができる。
【0021】
上記目的を達成するため、上記生体信号処理方法は、生体表面の生体信号を取得するための電極を通じて出力信号を取得する工程を含む。
上記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、上記電極が上記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、上記電極が上記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かが判定される。
【0022】
上記判定工程は、取得された上記出力信号をモニタしつつ、上記第1の状態か、上記第2の状態かを判定する工程を含む。
このような構成によって、生体表面と電極とのリアルタイムでの接続状態の判定が可能となり、接続の再確保等の適切な措置を講じることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本技術によれば、簡易な構成を有し、かつ出力信号の取得中においても生体表面と電極との電気的な接続状態を検出することが可能な生体信号処理装置、脳波計及び生体信号処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)がユーザに装着された状態を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)の機能的構成を示す模式図である。
【図3】第1の実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)の動作の例を示すフローチャートである。
【図4】電極とユーザの頭部表面の測定部位とが電気的に接続されている状態(第1の状態)における出力信号の周波数特性の例を示すグラフであり、横軸が周波数、縦軸が強度を示す。
【図5】電極とユーザの頭部表面の測定部位とが電気的に接続されていない状態(第2の状態)における出力信号の周波数特性の例を示すグラフであり、横軸が周波数、縦軸が強度を示す。
【図6】ピンクノイズの周波数特性を示す模式的なグラフであり、横軸が周波数、縦軸が強度を示す。
【図7】第2の実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)の機能的構成を示す模式図である。
【図8】第2の実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)の動作の例を示すフローチャートである。
【図9】第3の実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)の機能的構成を示す模式図である。
【図10】第3の実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)の動作の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本技術に係る実施形態について説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
[生体信号処理装置の構成]
図1は、本実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)がユーザに装着された状態を示す斜視図である。脳波計1は、ヘッドギア(頭部装具)11と、筐体12とから構成される。ヘッドギア11には、ユーザと対向する側に電極13a〜13eが設けられている。筐体12は、ヘッドギア11と着脱可能に接続され、後述する電装部品を収容する。
【0027】
ヘッドギア11は、電極13a〜13eをユーザの頭部表面に装着させることが可能に構成される。ヘッドギア11は、ユーザの額から頭頂部を経て後頭部に到る部材で構成され、ユーザの頭部形状及び電極の配置にあわせて形成することができる。例えば、後述する電極13c,13d等を所定位置に配置するためのアーム111、112等を有していてもよい。また、ヘッドギア11は、弾性を有する材料、例えば合成樹脂等によって形成され、この弾力性によってユーザの頭部に支持される。
【0028】
電極13a〜13eは、ヘッドギア11に設けられる各種の電極であり、所定の測定部位に対応して配置されている。例えば、頭頂部電極13a、後頭部電極13b、右眼電電極13c、左眼電電極13d、基準電極13e等を設けることが可能である。
【0029】
より具体的には、頭頂部電極13aと、後頭部電極13bとによって、ユーザの脳波(EEG:electroencephalogram)が測定される。また、右眼電電極13cはユーザの右こめかみに、左眼電電極13dはユーザの左こめかみにそれぞれ接触する電極であり、これらによってユーザの眼球運動(EOG:electrooculogram)が測定される。基準電極13eは、電極13a〜13dからの測定電位の基準となる電位(基準電位)を取得するための電極であり、例えばユーザの耳朶の裏側に接触させる。なお、電極の名称、配置等は例示であり、必要に応じて適宜選択することが可能である。
【0030】
電極13a〜13eの形状は、特に限られないが、例えば導電性材料からなるブラシ状の電極とすることができる。このような構成により、毛髪を掻き分けて頭部表面に接触させることが可能となる。また、電極13a〜13eの生体表面と当接する部分を、フェルト等の保液性を有する材料で構成することによって、電極13a〜13eと頭部表面との間に電解液等を介在させることができる。これにより、ペースト等によって頭部表面と電極とを固定させずとも、頭部表面の測定部位と電極13a〜13eとの間の電気的な接続を確保することができ、電極13a〜13eの装脱着も容易になる。
【0031】
筐体12は、上述のように、ヘッドギア11に着脱可能に接続される。筐体12が配置される位置は、ヘッドギア11の装着及びユーザの動作の妨げとならないような位置であればよく、例えばヘッドギア11の頭頂部付近とすることができる。
【0032】
筐体12には、後述する信号取得部、判定部等を構成するプロセッサやメモリ、通信インターフェイス等の電装部品が収容されている。ヘッドギア11には図示しない配線が設けられ、各電極とこれらの電装部品とを接続している。
【0033】
[生体信号処理装置の機能的構成]
図2は、脳波計1の機能的構成を示す模式図である。同図に示すように、脳波計1は、ヘッドギア11と、筐体12と、電極13a〜13eと、信号取得部14と、判定部15と、測定部16と、記憶部17と、出力部18とを有する。このうち、信号取得部14と、判定部15と、測定部16と、記憶部17と、出力部18とは、いずれも筐体12内部に収容されている。
【0034】
ヘッドギア11の各電極13a〜13eによって取得された出力信号は、配線等を介して筐体12内の信号取得部14に到達する。信号取得部14は、例えば、アンプ141と、フィルタ142と、AD(Analog/Digital)変換部143とで構成される。電極13a〜13eは、アンプ141に接続されている。アンプ141はフィルタ142に接続され、フィルタ142はAD変換部143に接続されている。AD変換部143は判定部15及び測定部16にそれぞれ接続される。判定部15及び測定部16は、それぞれ記憶部17に接続され、記憶部17は出力部18に接続される。なお、図2では、便宜的に電極13a〜13eを1つのブロックで示しているが、実際にはそれぞれの電極13a〜13eが配線等を介してアンプ141と接続されている。
【0035】
アンプ141は、出力信号を増幅する。フィルタ142には、測定対象とすべき所定の周波数帯域が設定されており、その周波数帯域以外の信号成分を除去する。AD変換部143は、出力信号をデジタル信号に変換する。
【0036】
判定部15は、各電極13a〜13eからの各出力信号に対してフーリエ変換を行うことで、出力信号の周波数特性を取得する。さらに各出力信号の周波数特性(第1の周波数特性)に基づいて、各電極13a〜13eとユーザの頭部表面の測定部位との電気的な接続状態をそれぞれ判定する。本実施形態に係る判定方法としては、後述するように、ピンクノイズの有する周波数特性(第2の周波数特性)と第1の周波数特性とを比較することで、当該接続状態を判定する。
【0037】
測定部16は、出力信号に対してモンタージュ処理(測定電極と基準電極との差分出力)等のデータ処理を行う。これにより、例えば、電極13a〜13dからの各出力信号が、電極13eを基準電極とする電位差の時系列データとして処理される。なお、「モニタ」とは、電極13a〜13dからの各出力信号と、電極13eの出力信号との電位差の時系列データを取得することを指すものとする。測定部16は、判定部15と接続されており、判定部15での判定結果を取得することが可能である。
【0038】
記憶部17は、例えばフラッシュメモリ等からなる。判定部15及び測定部16によって得られたデータは、記憶部17に一時的に格納される。
【0039】
出力部18は、例えば、通信インターフェイス(通信IF)からなる。記憶部17に格納されたデータは、必要に応じて出力部18を介して外部機器等へ送信される。出力方法については、無線または有線でも、特に制限されない。
【0040】
以上のように、脳波計1は、ユーザからの生体信号を取得し、電極13a〜13eと測定部位との接続状態を判定することが可能に構成される。なお、このような筐体12の機能的構成は例示であり、これと異なる構成とすることも可能である。
【0041】
[脳波計の動作]
図3は、本実施形態に係る脳波計1の動作の例を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに示す各ステップ(St)について説明する。
【0042】
まず、電極13a〜13eをユーザの頭部表面に装着させる(St11)。この状態で、脳波計1を起動させる。
【0043】
そして、ユーザの頭部表面に装着された電極13a〜13eからの出力信号が、信号取得部14によってそれぞれ取得される(St12)。各出力信号は、まずアンプ141によって増幅され、フィルタ142によって所定の周波数帯域以外の信号成分が除去される。さらに、残った信号成分は、AD変換部143によってデジタル信号に変換される。このように処理された各出力信号は、判定部15及び測定部16へ供給される。
【0044】
測定部16では、取得された出力信号を経時的にモニタする(図示せず)。また、モニタ結果は、記憶部17へ格納され、さらに出力部18から外部機器等へ送信されることが可能である。
【0045】
判定部15は、各電極13a〜13dからの出力信号に対してそれぞれフーリエ変換を行う(St13)。フーリエ変換は、例えば高速フーリエ変換によって行うことができる。これによって、出力信号に対する、各周波数成分のスペクトル密度(強度)、すなわち第1の周波数特性のデータを容易に得ることができる。また、得られたデータは、必要に応じてスムージングされる。
【0046】
図4及び図5は、いずれもSt13においてフーリエ変換され、スムージングされた第1の周波数特性の例を示すグラフであり、横軸は周波数を示し、縦軸は強度を示す。図4に示す例からは、8〜13Hz付近の周波数帯域において出力信号の強度が増加していることが示される。上記周波数帯域は、脳波に特徴的なアルファ波の周波数帯域に一致する。
【0047】
一方、図5に示す例では、特定の周波数帯域における強度の増加等が見られず、右肩下がりの形状を示す。このように、第1の周波数特性において脳波に特徴的な形状が観察されない場合は、測定部位と電極とが電気的に接続されていないことにより、出力信号に雑音が混入している可能性がある。
【0048】
判定部15は、電極と測定部位との電気的な接続状態を判定するために、第1の周波数特性と、ピンクノイズの周波数特性(第2の周波数特性)とが類似するか否かを判定する(St14)。ピンクノイズは、脳波測定時において、電極と測定部位との電気的接続が断たれた場合にみられる雑音である。
【0049】
ここで、ピンクノイズとは、強度が周波数に反比例する周波数特性を有する雑音であり、一般に「1/fゆらぎ」としても知られている。また、上記第2の周波数特性は、一般に、以下の式で表される。
S(f)∝1/fα (Sは強度、fは周波数、0<α<2)
本実施形態においては、α=1/2の例、すなわち、
S(f)∝1/√f・・・(1)
とする。
【0050】
図6は、上記(1)の式で表される第2の周波数特性を示すグラフであり、横軸が周波数、縦軸が強度を示す。図6で示される第2の周波数特性の形状は、図4に示される第1の周波数特性の形状とは異なるが、図5に示される第1の周波数特性の形状とは類似している。このことから、図4に示す例は、電極とユーザの頭部表面の測定部位とが電気的に接続されている状態(第1の状態)であり、図5に示す例は、電極とユーザの頭部表面の測定部位とが電気的に接続されていない状態(第2の状態)であると考えられる。
【0051】
より具体的な判定は、公知の手法を用いて第1の周波数特性と第2の周波数特性との類似度を算出することにより行う。
【0052】
算出された類似度が所定の閾値未満の場合、すなわち第1の周波数特性と第2の周波数特性とが異なる場合には、第1の状態と判定することができる(St14:No)。この際、測定部16に対しては、出力信号を適切な生体信号(脳波)としてモニタを継続させる(St15)。
【0053】
一方、算出された類似度が所定の閾値以上の場合、すなわち第1の周波数特性と第2の周波数特性とが類似する場合には、第2の状態と判定することができる(St14:Yes)。本実施形態において、この場合は、第2の状態とする判定結果を記憶部17に記録させる(St16)。
【0054】
記憶部17に格納されたデータは、例えば出力部18から外部機器等へ出力されることが可能である。これにより、外部機器の画面等に表示されたモニタ結果内に、第2の状態が判定された時点を表示することが可能となる。このことによって、測定部位での電気的な接続状態が断たれた時点を明確に示すことが可能となり、データの信頼性を容易に確認することができる。
【0055】
以上、本実施形態によれば、出力信号のみに基づいて測定部位と電極との電気的な接続状態を判定することができる。このことから、出力信号のモニタを継続しつつ、当該接続状態を判定することが可能となる。また、外見からは判断が不可能な場合であっても、当該接続状態を判定することが可能となる。さらに、接続状態の判定のための新たな電気回路等を必要とせず、単純な装置構成とすることができる。
【0056】
(第2の実施形態)
本技術の第2の実施形態について説明する。
なお、本実施形態において第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0057】
[脳波計の機能的構成]
図7は、本実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)2の機能的構成を示す模式図である。同図に示すように、脳波計2は、第1の実施形態と同一の構成に加え、警告部19を有する。警告部19は、判定部15と接続されている。
【0058】
警告部19は、例えば、スピーカを有する電子ブザー等とすることができ、筐体12内に配置される。警告部19は、判定部15によって第2の状態と判定された場合に作動し、例えばアラームを鳴らすこと等によって測定者またはユーザにその旨を警告する。これにより、測定者等は第2の状態であることを認識できるとともに、再接続等の適切な措置を講じることが可能となる。
【0059】
[脳波計の動作]
図8は、本実施形態に係る脳波計2の動作の例を示すフローチャートである。
本実施形態と第1の実施形態との相違点としては、第1の周波数特性と第2の周波数特性とが類似し、電極13a〜13eの少なくとも1つが第2の状態と判定された場合に(St24:Yes)、警告部19が作動する(St26)点である。なお、同図に示すSt21〜St25は、図3に示すSt11〜St15にそれぞれ対応するため、説明を省略する。
【0060】
警告部19が作動すると、測定者等は電極13a〜13eをユーザの頭部表面の測定部位に再接続し、脳波の測定が再開される(St21)。接続状態が改善されなければ再度警告部19が作動するため(St26)、測定部位と電極との電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0061】
警告部19が有するスピーカの配置は特に限られず、ヘッドギア11に配置されることも可能である。また、第2の状態である電極がどの電極か、音声等によって知らせる構成とすることも可能である。さらに、警告部19が、判定部15と直接接続されず、出力部18と有線または無線で接続される構成とすることで、警告部19自体を外部機器に配置することも可能である。
【0062】
(第3の実施形態)
本技術の第3の実施形態について説明する。
なお、本実施形態において第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0063】
[脳波計の機能的構成]
図9は、本実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)3の機能的構成を示す模式図である。同図に示すように、脳波計3は、第1の実施形態と同一の構成に加え、駆動機構130a〜130eと駆動機構制御部131とを有する。
【0064】
駆動機構130a〜130eは、電極13a〜13eをヘッドギア11に対してそれぞれ駆動させることが可能なモータ等からなる。駆動機構制御部131は、判定部15と駆動機構130a〜130eとに接続され、判定部15の判定結果に応じて駆動機構130a〜130eの駆動を制御することが可能である。
【0065】
[脳波計の動作]
図10は、本実施形態に係る脳波計3の動作の例を示すフローチャートである。
同図に示すSt31〜St35は、図3に示すSt11〜St15と、図8に示すSt21〜St25とにそれぞれ対応する。本実施形態においては、第2の実施形態と異なり、判定部15によって電極13a〜13eのいずれかが第2の状態と判定された場合に(St34:Yes)、駆動機構制御部131がその電極と対応する駆動機構を駆動させる。これにより、自動的に電気的な接続状態が改善される。第2の状態と判定された場合のSt31〜St34の動作は、判定部15によって第1の状態が検出される(St34:No)まで繰り返される。なお、接触状態を改善するための電極13a〜13eの動作としては、ヘッドギア11に対する回動、傾斜等が採用される。
【0066】
以上のような構成の脳波計3により、測定部位と電極との電気的な接続状態の判定から、接続状態の確保まで、自動的に行うことが可能である。このことから、測定者等による接続状態の監視を必要とせずに、長時間にわたって適切に脳波を測定することが可能となる。すなわち、睡眠時等における脳波の測定に対しても非常に有利な構成とすることができる。
【0067】
(第4の実施形態)
本技術の第4の実施形態について説明する。
なお、本実施形態において第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施形態に係る生体信号処理装置(脳波計)は、第1の実施形態と異なる構成の判定部を有する。
【0068】
一般的に、測定部位と電極との電気的な接続が断たれている場合、出力信号にピンクノイズ等が入ることにより、本来の脳波信号よりも大きな強度の出力信号が得られることが知られている。例えば、上述した図4と図5とを比較すると、図4に示された第1の状態における強度よりも、図5に示された第2の状態における強度の方が全体的に大きいことが見て取れる。このことを利用して、本実施形態に係る判定部は、出力信号の特定の周波数に対する強度と、所定の閾値とを比較することにより、第1の状態と第2の状態とを判定する。
【0069】
まず、判定部は、第1の実施形態と同様に、各電極からの出力信号に対してそれぞれフーリエ変換を行い、第1の周波数特性を取得する。次に、第1の周波数特性の特定の周波数に対する強度を検出し、当該強度と予め設定された所定の閾値とを比較する。ここで、当該強度が閾値未満である場合に、測定部位と電極との電気的な接続が得られた第1の状態と判定し、当該強度が閾値以上である場合に測定部位と電極との電気的な接続が断たれた第2の状態と判定する。
【0070】
以上のように、本実施形態によっても、頭部表面の測定部位と電極との間の電気的な接続状態を容易に判定することができる。なお、特定の周波数は1つに限られず、複数の周波数に対する出力信号の強度と、それぞれに対して設定された閾値とを比較することも可能である。これにより、より広い周波数帯域について検討することができ、判定部における判定結果の信頼性を高めることができる。
【0071】
本技術は上記各実施形態にのみ限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において変更することが可能である。
【0072】
以上の実施形態において、生体信号処理装置は脳波計であるとして説明したが、これに限られない。例えば、生体信号処理装置は、ヘッドギアを有さない構成とし、生体信号として筋電位を測定する筋電図検査装置とすることも可能である。また、同様に心電図検査装置等とすることも可能である。これらの場合、生体信号処理装置が電極を有さない構成としてもよい。すなわち、生体信号処理装置と電極とが別部材で構成され、電極から取得された出力信号が、信号取得部へ無線で送信される構成とすることが可能である。
【0073】
また、第2の周波数特性はピンクノイズの周波数特性に限られず、電極と測定部位との電気的接続が断たれた場合に検出される雑音の周波数特性を第2の周波数特性として用いることが可能である。このような雑音の例として、白色雑音(ホワイトノイズ)や有色雑音(ピンクノイズの他、ブラウニアンノイズ等)が挙げられる。例えば、ホワイトノイズは、全ての周波数に対して強度が同一となる雑音であり、
SW(f)∝1/f0 (SWは強度、fは周波数)
と表される。これらの場合においても、以上の実施形態と同様に電極と測定部位との電気的接続を判定することが可能である。
【0074】
また、以上の実施形態においては、出力信号をモニタしつつ接続状態の判定を行う構成として説明したが、これに限られず、モニタ終了後に接続状態の判定を行う構成とすることができる。この場合に、記憶部は、信号取得部によって得られた出力信号のデータを格納し、モニタ終了後に、判定部が、記憶部からデータを取り出し、接続状態の判定を行う。この構成によって、モニタ終了後のまとまったデータ解析が可能となる。
【0075】
第2の実施形態において、警告部19は電子ブザー等で構成されると説明したが、これに限られない。例えば、発光ダイオード(LED)等を用いた点灯または点滅回路で構成することも可能である。これにより、測定者等に視覚的に第2の状態を警告することが可能となる。なお、LED等の配置は特に限られず、筐体12やヘッドギア11、あるいは外部機器に配置することが可能である。
【0076】
また、警告部19が振動モータ等を有し、振動によってユーザに第2の状態を警告することも可能である。この場合においても、警告部19の配置は特に限られない。
【0077】
また、本技術は、人体における生体信号についてのみならず、動物についても適用することができる。動物からの生体信号を取得する際は、測定される個体が人体よりも小さく、特に電極と測定部位との電気的な接続状態を判断することは難しい。本技術に係る生体信号処理装置によれば、容易に接続状態を判定することができるため、より信頼性の高いデータを得ることが可能となる。
【0078】
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)生体表面に装着された電極の出力信号を取得する信号取得部と、
前記信号取得部と接続され、前記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、前記電極が前記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、前記電極が前記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する判定部と
を具備する生体信号処理装置。
(2)前記(1)に記載の生体信号処理装置であって、
前記判定部は、前記第1の周波数特性と有色雑音または白色雑音の周波数特性である第2の周波数特性とを比較して、前記第1の周波数特性と前記第2の周波数特性とが異なる場合に前記第1の状態と判定し、前記第1の周波数特性と前記第2の周波数特性とが類似する場合に前記第2の状態と判定する
生体信号処理装置。
(3)前記(1)に記載の生体信号処理装置であって、
前記判定部は、特定の周波数に対する強度を検出し、前記強度が予め設定された所定の閾値未満である場合に前記第1の状態と判定し、前記強度が前記閾値以上である場合に前記第2の状態と判定する
生体信号処理装置。
(4)前記(1)から(3)のうちいずれか1つに記載の生体信号処理装置であって、
前記生体信号処理装置は、前記判定部と接続され、前記判定部の判定結果を出力することが可能な出力部をさらに具備する
生体信号処理装置。
(5)前記(1)から(4)のうちいずれか1つに記載の生体信号処理装置であって、
前記生体信号処理装置は、前記判定部と接続され、前記判定結果が前記第2の状態である場合に作動する警告部をさらに具備する
生体信号処理装置。
(6)前記(1)から(5)のうちいずれか1つに記載の生体信号処理装置であって、
前記判定部によって前記第1の状態と判定された場合に、前記出力信号を生体信号として経時的にモニタする測定部をさらに具備する
生体信号処理装置。
(7)前記(1)から(6)のうちいずれか1つに記載の生体信号処理装置であって、
前記判定部は、前記出力信号についてフーリエ変換を行うことによって、前記第1の周波数特性を取得する
生体信号処理装置。
(8)生体表面に装着される電極と、
前記電極の出力信号を取得する信号取得部と、
前記信号取得部と接続され、前記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、前記電極が前記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、前記電極が前記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する判定部と
を具備する生体信号処理装置。
(9)電極をユーザの頭部表面に装着させる頭部装具と、
前記電極の出力信号を取得する信号取得部と、
前記信号取得部と接続され、前記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、前記電極が前記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、前記電極が前記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する判定部と
を具備する脳波計。
(10)生体表面の生体信号を取得するための電極を通じて出力信号を取得し、
前記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、前記電極が前記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、前記電極が前記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する
生体信号処理方法。
(11)前記(10)に記載の生体信号処理方法であって、
前記判定工程は、取得された前記出力信号をモニタしつつ、前記第1の状態か、前記第2の状態かを判定する工程を含む
生体信号処理方法。
【符号の説明】
【0079】
1,2,3・・・生体信号処理装置(脳波計)
11・・・ヘッドギア
12・・・筐体
13a〜13e・・・電極
14・・・信号取得部
15・・・判定部
16・・・測定部
18・・・出力部
19・・・警告部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体表面に装着された電極の出力信号を取得する信号取得部と、
前記信号取得部と接続され、前記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、前記電極が前記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、前記電極が前記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する判定部と
を具備する生体信号処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体信号処理装置であって、
前記判定部は、前記第1の周波数特性と有色雑音または白色雑音の周波数特性である第2の周波数特性とを比較して、前記第1の周波数特性と前記第2の周波数特性とが異なる場合に前記第1の状態と判定し、前記第1の周波数特性と前記第2の周波数特性とが類似する場合に前記第2の状態と判定する
生体信号処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の生体信号処理装置であって、
前記判定部は、特定の周波数に対する強度を検出し、前記強度が予め設定された所定の閾値未満である場合に前記第1の状態と判定し、前記強度が前記閾値以上である場合に前記第2の状態と判定する
生体信号処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の生体信号処理装置であって、
前記生体信号処理装置は、前記判定部と接続され、前記判定部の判定結果を出力することが可能な出力部をさらに具備する
生体信号処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の生体信号処理装置であって、
前記生体信号処理装置は、前記判定部と接続され、前記判定結果が前記第2の状態である場合に作動する警告部をさらに具備する
生体信号処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の生体信号処理装置であって、
前記判定部によって前記第1の状態と判定された場合に、前記出力信号を生体信号として経時的にモニタする測定部をさらに具備する
生体信号処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の生体信号処理装置であって、
前記判定部は、前記出力信号についてフーリエ変換を行うことによって、前記第1の周波数特性を取得する
生体信号処理装置。
【請求項8】
生体表面に装着される電極と、
前記電極の出力信号を取得する信号取得部と、
前記信号取得部と接続され、前記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、前記電極が前記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、前記電極が前記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する判定部と
を具備する生体信号処理装置。
【請求項9】
電極をユーザの頭部表面に装着させる頭部装具と、
前記電極の出力信号を取得する信号取得部と、
前記信号取得部と接続され、前記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、前記電極が前記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、前記電極が前記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する判定部と
を具備する脳波計。
【請求項10】
生体表面の生体信号を取得するための電極を通じて出力信号を取得し、
前記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、前記電極が前記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、前記電極が前記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する
生体信号処理方法。
【請求項11】
請求項10に記載の生体信号処理方法であって、
前記判定工程は、取得された前記出力信号をモニタしつつ、前記第1の状態か、前記第2の状態かを判定する工程を含む
生体信号処理方法。
【請求項1】
生体表面に装着された電極の出力信号を取得する信号取得部と、
前記信号取得部と接続され、前記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、前記電極が前記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、前記電極が前記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する判定部と
を具備する生体信号処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体信号処理装置であって、
前記判定部は、前記第1の周波数特性と有色雑音または白色雑音の周波数特性である第2の周波数特性とを比較して、前記第1の周波数特性と前記第2の周波数特性とが異なる場合に前記第1の状態と判定し、前記第1の周波数特性と前記第2の周波数特性とが類似する場合に前記第2の状態と判定する
生体信号処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の生体信号処理装置であって、
前記判定部は、特定の周波数に対する強度を検出し、前記強度が予め設定された所定の閾値未満である場合に前記第1の状態と判定し、前記強度が前記閾値以上である場合に前記第2の状態と判定する
生体信号処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の生体信号処理装置であって、
前記生体信号処理装置は、前記判定部と接続され、前記判定部の判定結果を出力することが可能な出力部をさらに具備する
生体信号処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の生体信号処理装置であって、
前記生体信号処理装置は、前記判定部と接続され、前記判定結果が前記第2の状態である場合に作動する警告部をさらに具備する
生体信号処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の生体信号処理装置であって、
前記判定部によって前記第1の状態と判定された場合に、前記出力信号を生体信号として経時的にモニタする測定部をさらに具備する
生体信号処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の生体信号処理装置であって、
前記判定部は、前記出力信号についてフーリエ変換を行うことによって、前記第1の周波数特性を取得する
生体信号処理装置。
【請求項8】
生体表面に装着される電極と、
前記電極の出力信号を取得する信号取得部と、
前記信号取得部と接続され、前記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、前記電極が前記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、前記電極が前記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する判定部と
を具備する生体信号処理装置。
【請求項9】
電極をユーザの頭部表面に装着させる頭部装具と、
前記電極の出力信号を取得する信号取得部と、
前記信号取得部と接続され、前記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、前記電極が前記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、前記電極が前記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する判定部と
を具備する脳波計。
【請求項10】
生体表面の生体信号を取得するための電極を通じて出力信号を取得し、
前記出力信号の周波数特性である第1の周波数特性に基づいて、前記電極が前記生体表面の測定部位に電気的に接続された第1の状態か、前記電極が前記測定部位に電気的に接続されていない第2の状態かを判定する
生体信号処理方法。
【請求項11】
請求項10に記載の生体信号処理方法であって、
前記判定工程は、取得された前記出力信号をモニタしつつ、前記第1の状態か、前記第2の状態かを判定する工程を含む
生体信号処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−81679(P2013−81679A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224605(P2011−224605)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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