説明

生体内でヒト肝細胞を増大させる方法

本明細書において、フマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ(Fah)がさらに欠損している免疫不全マウスを用いて、インビボでのヒト肝細胞の増大方法を記載する。該方法は、ヒト肝細胞を該免疫不全のFah欠損マウスに移植すること、IL−1Rアンタゴニストを該マウスに投与すること、および該肝細胞を増大させることを含む。あるいはまた、該方法は、ヒト肝細胞を該免疫不全のFah欠損マウスに移植すること(ここで、該マウスは、さらにIL−1Rについて欠損型である)、および該肝細胞を増大させることを含む。また、該方法により、二次、三次、四次またはそれ以上の高次のマウスへのヒト肝細胞の累代移植が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許の相互参照
本願は、2010年1月20日に出願された米国仮特許出願第61/296,774号および2009年5月1日に出願された米国仮特許出願第61/174,791号の利益を主張するものであり、参照することによりそれらの全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、肝細胞(例えば、ヒト肝細胞)を増大させる方法、具体的には、免疫不全のFah欠損マウスを利用して、肝細胞を増大させる方法を目的とする。
【0003】
政府支援の声明
本発明は、the National Institutes of Healthによって授与された授与番号DK051592に基づいて、政府の支援でもってなされた。政府は、本発明における一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
肝臓は、医薬を含む生体異物化合物を代謝する主要な部位である。多くの肝酵素が種特異的であるため、培養された一次ヒト肝細胞またはそれらのミクロソーム分画を用いて、候補医薬の代謝を評価することが必要である(非特許文献1、非特許文献2)。ミクロソーム肝細胞分画を用いて、一部の代謝機能を解明することができる一方、他の試験は、生きている肝細胞に依存する。例えば、一部の化合物は、肝酵素を誘導し、ひいては、それらの代謝は、経時的に変化する。酵素誘導を分析するために、肝細胞は、生存能力があるだけでなく、十分に分化し、かつ機能的でなければならない。
【0005】
薬物代謝および他の研究に関しては、肝細胞は、一般に、死体臓器ドナーから単離し、試験が行われる場所に輸送される。死体源からの肝細胞の状態(生存能力および分化の状態)は、極めて変わりやすく、多くの細胞調製物の品質は、あまり良くない。高品質のヒト肝細胞の利用可能性は、組織培養において有意に増大することができないという事実によりさらに妨げられる(非特許文献3、非特許文献4)。播種した後、該細胞は、生存するが、分裂しない。マウス等のすぐに利用できる哺乳類種からの肝細胞は、代謝酵素の異なる相補体を有し、誘導研究において異なって反応するため、ほとんどの薬物試験研究には適さない。不死化ヒト肝細胞(肝細胞腫)または胎児肝芽細胞は、十分に分化した成熟細胞の適切な代用物ではない。ヒト肝細胞はまた、微生物学の分野における研究に必要である。肝炎を生じるウイルス等の多くのヒトウイルスは、任意の他の細胞型で複製することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Brandon et al.Toxicol.Appl.Pharmacol.189:233−246,2003
【非特許文献2】Gomez−Lechon et al.Curr.Drug Metab.4:292−312,2003
【非特許文献3】Runge et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.274:1−3,2000
【非特許文献4】Cascio S.M.,Artif.Organs 25:529−538,2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの限界を考えると、一次ヒト肝細胞を増大させる方法が、非常に望ましい。よって、ヒト肝細胞を増大させるための堅牢なシステムを本明細書に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
本明細書において、さまざまな目的のため、例えば、他の種(特に、ヒト)に由来する肝細胞の増大のため、ならびにヒト肝臓疾患、例えば、肝硬変、線維症、肝細胞癌腫(HCC)および肝臓感染症の動物モデルとしての有用性を有する免疫不全のFah欠損マウスを記載する。
【0009】
本明細書において、インビボでのヒト肝細胞の増大方法を提供する。該方法は、ヒト肝細胞を免疫不全のフマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ(Fah)欠損マウスに移植する工程、該肝細胞を増大させる工程、および任意選択で、ヒト肝細胞を収集する工程を含む。いくつかの実施形態では、移植効率を改善するため、免疫不全のFah欠損マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与されるか、または該マウスが、さらにIL−1R欠損型である。
【0010】
一部の実施形態では、免疫不全のFah欠損マウスにIL−1Rアンタゴニストが、ヒト肝細胞の移植中および/または移植後に投与される。
【0011】
一部の実施形態では、該マウスの免疫不全が遺伝子変異、免疫抑制、またはその組合せによるものである。
【0012】
また、候補薬剤を免疫不全のFah欠損マウスに投与すること(ここで、該マウスは、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与される)、および肝臓疾患に対する該候補薬剤の効果を評価することによる、ヒト肝臓疾患の処置に有効な薬剤を選択するための方法を提供する。該肝臓疾患の1つ以上の徴候または症状の改善は、該候補薬剤が該肝臓疾患の処置に有効であることを示す。
【0013】
さらに、ヒト肝細胞を移植した免疫不全のFah欠損マウスに候補薬剤を投与すること(ここで、該マウスは、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与され、移植ヒト肝細胞はヒト肝臓病原体に感染させたものである);および該肝臓感染症に対する候補薬剤の効果を評価することにより、該肝臓病原体による感染の処置に有効な薬剤を選択するための方法を提供する。
【0014】
また、ヒト肝細胞を移植した免疫不全のFah欠損マウスに候補薬剤を投与すること、および該マウスにおいて、肝硬変の少なくとも1種類の診断用マーカーに対する該候補薬剤の効果を評価することにより、肝硬変の処置に有効な薬剤を選択するための方法を提供する。この方法では、免疫不全のFah欠損マウスが、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与される。さらに、ヒト肝細胞を移植した免疫不全のFah欠損マウスに候補薬剤を投与すること(ここで、免疫不全のFah欠損マウスは、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与される)、および該マウスにおいて、HCCに対する候補薬剤の効果を評価することにより、HCCの処置に有効な薬剤を選択するための方法を提供する。
【0015】
また、ヒト肝細胞に対する外因性因子のインビボでの効果の評価方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、外因性因子を免疫不全のFah欠損マウスに投与すること(ここで、免疫不全のFah欠損マウスは、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与される);および該マウスにおいて、肝臓機能の少なくとも1種類のマーカーを測定することを含む。
【0016】
さらに、遺伝子療法プロトコルおよび肝臓用ベクター(遺伝子発現および遺伝子ノックダウン用ベクターを含む);薬物代謝、薬物動態、有効性、毒物学的特性および安全性;ならびにヒト遺伝性肝臓疾患の評価方法を提供する。かかる方法では、ヒト肝細胞を移植した免疫不全のFah欠損マウスが利用され得、該免疫不全のFah欠損マウスは、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与されるか、またはかかるマウスにおいて増大させて収集したヒト肝細胞が使用され得る。
【0017】
本発明の前述ならびに他の目的、特性および利点は、以下の発明を実施するための形態からさらに明らかになり、添付の図を参照して進める。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1a】ヒト肝細胞により移植および再増殖した後、三重変異体FRGマウス(#471)および2匹のヘテロ接合同腹子(#469、#470)の相対的重量を示すグラフ。該FRGマウスは、移植後6週間、その体重を維持したが、Il2rg遺伝子のヘテロ接合同腹子は、継続的に減量した。NTBCは、第1週目および第4週目にのみ投与され、陰影で示す。
【図1b】肝細胞受容肝臓からのゲノムDNAにおけるヒトAlu配列のPCR増幅産物を示すゲルのデジタル画像。FRGマウスのみが陽性であった。
【図1c】野生型(C)のFAH酵素活性を示すグラフ。FAH基質濃度は、野生型マウス肝臓において低下したが、Fah−/−マウス肝臓では変化しなかった。ヒト化マウス肝臓は、十分な酵素活性を示した。
【図1d】Fah(−/−)(D)のFAH酵素活性を示すグラフ。FAH基質濃度は、野生型マウス肝臓において低下したが、Fah−/−マウス肝臓では変化しなかった。ヒト化マウス肝臓は、十分な酵素活性を示した。
【図1e】ヒト化マウス肝臓(E)のFAH酵素活性を示すグラフ。FAH基質濃度は、野生型マウス肝臓において低下したが、Fah−/−マウス肝臓では変化しなかった。ヒト化マウス肝臓は、十分な酵素活性を示した。
【図1f】80%を超える肝細胞がFAHに対して陽性であることを示す(暗染および大きな矢印により示される)、再増殖したマウス肝臓におけるFAH免疫染色のデジタル画像。小さい矢印は、FAH陰性細胞を画定する。
【図1g】ヒト肝細胞は、好酸性が低いことを示す(矢印により示される)、同一の肝切片のH&E染色のデジタル画像。原拡大率×200
【図2a】キメラマウスからの組織学的および免疫組織化学的組織切片のデジタル画像。FAH陽性ヒト肝細胞は、マウス肝臓組織に統合したが、受容者の肝臓微細構造を阻害しなかったことを示すデジタル画像。
【図2b】キメラマウスからの組織学的および免疫組織化学的組織切片のデジタル画像。高度に再増殖したキメラ肝臓はまた、正常構造を持つことを示すデジタル画像。
【図2c】キメラマウスからの組織学的および免疫組織化学的組織切片のデジタル画像。ヒト肝細胞クラスターは、好酸性が低いことを示すH&E染色のデジタル画像。
【図2d】キメラマウスからの組織学的および免疫組織化学的組織切片のデジタル画像。ヒト肝細胞クラスターは、好酸性が低いことを示すH&E染色のデジタル画像。
【図2e】キメラマウスからの組織学的および免疫組織化学的組織切片のデジタル画像。FAHの染色した連続切片を示すデジタル画像。
【図2f】キメラマウスからの組織学的および免疫組織化学的組織切片のデジタル画像。HepParの染色した連続切片を示すデジタル画像。
【図2g】キメラマウスからの組織学的および免疫組織化学的組織切片のデジタル画像。移植してから4ヶ月後でさえ、管状または糸球体の破壊がないことを示す、高度に再増殖したマウスからの腎臓切片のデジタル画像。
【図2h】キメラマウスからの組織学的および免疫組織化学的組織切片のデジタル画像。脾臓におけるFAH陽性ヒト肝細胞を示すデジタル画像。原拡大率×100(図2c)、×200(図2a、2b、2e、2f、および2g)、×400(図2dおよび2h)。
【図3a】キメラマウス肝臓からのRT−PCR産物を示す、一連のゲル切片。ヒトALB、FAH、TAT、TF、TTR、およびUGT1A1遺伝子を、キメラマウス肝臓(#697および#785)において発現させた。ヒト肝細胞およびマウス肝細胞はそれぞれ、陽性および陰性対照として用いた。
【図3b】図3b(正常プロット)は、ELISAを用いて、一次肝細胞受容者のヒトアルブミン血中濃度を示すグラフである。システムの閾値濃度は、約0.005μg/mlである。
【図3c】図3c(対数プロット)は、ELISAを用いて、一次肝細胞受容者のヒトアルブミン血中濃度を示すグラフである。システムの閾値濃度は、約0.005μg/mlである。
【図3d】図3d(正常プロット)は、二次受容者のヒトアルブミン濃度を示すグラフである。対数プロットは、アルブミン濃度の倍加時間が約1週間であることを示す。
【図3e】図3e(対数プロット)は、二次受容者のヒトアルブミン濃度を示すグラフである。対数プロットは、アルブミン濃度の倍加時間が約1週間であることを示す。
【図4a】一次細胞(極左の暗ボックス)を始めとして連続移植スキームを示す概略図。暗ボックスは、再増殖した連続受容者を示し、白ボックスは、非移植マウスを示す。一次受容者の1/4のみが、再増殖されたが、6匹すべての二次受容者が、移植された。
【図4b】連続的に移植された受容者の肝臓からのAlu配列のPCR増幅産物を示すゲルのデジタル画像。
【図4c】三次マウスから培養された70%を超える肝細胞が、FAHに対して陽性であったことを実証するFAH免疫細胞化学により解析された肝細胞のデジタル画像。
【図4d】三次マウスから培養された70%を超える肝細胞が、FAHに対して陽性であったことを実証するFAH免疫細胞化学により解析された肝細胞のデジタル画像。
【図4e】三次マウスから培養された70%を超える肝細胞が、FAHに対して陽性であったことを実証するFAH免疫細胞化学により解析された肝細胞のデジタル画像。
【図4f】連続的に移植されたマウス肝臓のFAH免疫組織化学を示す、組織切片のデジタル画像。一次(F)受容者の肝臓が、ヒト肝細胞により再増殖された。
【図4g】連続的に移植されたマウス肝臓のFAH免疫組織化学を示す、組織切片のデジタル画像。二次(G)受容者の肝臓が、ヒト肝細胞により再増殖された。
【図4h】連続的に移植されたマウス肝臓のFAH免疫組織化学を示す、組織切片のデジタル画像。三次(H)受容者の肝臓が、ヒト肝細胞により再増殖された。
【図5a】キメラマウス肝細胞の抗マウスアルブミンおよび抗FAH免疫細胞化学のデジタル画像。キメラ肝臓からのほとんどの肝細胞は、マウスアルブミンまたはFAH単一陽性であった。
【図5b】キメラマウス肝細胞の抗マウスアルブミンおよび抗FAH免疫細胞化学のデジタル画像。キメラ肝臓からのほとんどの肝細胞は、マウスアルブミンまたはFAH単一陽性であった。
【図5c】キメラマウス肝細胞の抗マウスアルブミンおよび抗FAH免疫細胞化学のデジタル画像。キメラ肝臓からのほとんどの肝細胞は、マウスアルブミンまたはFAH単一陽性であった。
【図5d】キメラマウス肝細胞の抗ヒトアルブミンおよび抗FAH免疫細胞化学のデジタル画像。ほとんどの肝細胞は、ヒトアルブミンおよびFAH二重陽性であった。原拡大倍率×100。
【図5e】キメラマウス肝細胞の抗ヒトアルブミンおよび抗FAH免疫細胞化学のデジタル画像。ほとんどの肝細胞は、ヒトアルブミンおよびFAH二重陽性であった。原拡大倍率×100。
【図5f】キメラマウス肝細胞の抗ヒトアルブミンおよび抗FAH免疫細胞化学のデジタル画像。ほとんどの肝細胞は、ヒトアルブミンおよびFAH二重陽性であった。原拡大倍率×100。
【図5g】キメラマウス肝細胞のフローサイトメトリー解析を示すグラフ。FITC結合抗HLA A、B、CおよびPE結合抗H−2Kbを用いた。HLA−A、B、C(G)に対する対照ヒト肝細胞を示し、それらは、HLAまたはH−2Kbのいずれか一つに対して単一に陽性であった。
【図5h】キメラマウス肝細胞のフローサイトメトリー解析を示すグラフ。FITC結合抗HLA A、B、CおよびPE結合抗H−2Kbを用いた。H−2Kb(H)に対する対照ヒト肝細胞を示し、それらは、HLAまたはH−2Kbのいずれか一つに対して単一に陽性であった。
【図5i】キメラマウス肝細胞のフローサイトメトリー解析を示すグラフ。FITC結合抗HLA A、B、CおよびPE結合抗H−2Kbを用いた。HLA−A、B、C(I)に対する対照マウス肝細胞を示し、それらは、HLAまたはH−2Kbのいずれか一つに対して単一に陽性であった。
【図5j】キメラマウス肝細胞のフローサイトメトリー解析を示すグラフ。FITC結合抗HLA A、B、CおよびPE結合抗H−2Kbを用いた。H−2Kb(J)に対する対照マウス肝細胞を示し、それらは、HLAまたはH−2Kbのいずれか一つに対して単一に陽性であった。
【図5k】キメラマウス肝細胞のフローサイトメトリー解析を示すグラフ。FITC結合抗HLA A、B、CおよびPE結合抗H−2Kbを用いた。高キメラマウス(K)からの肝細胞を示し、それらは、HLAまたはH−2Kbのいずれか一つに対して単一に陽性であった。
【図5l】キメラマウス肝細胞のフローサイトメトリー解析を示すグラフ。FITC結合抗HLA A、B、CおよびPE結合抗H−2Kbを用いた。高キメラマウス(L)からの肝細胞を示し、それらは、HLAまたはH−2Kbのいずれか一つに対して単一に陽性であった。
【図6a】エトキシレソルフィン−O−デエチラーゼ(CYP1A1依存)の代謝(A)を示すグラフ。ヒト肝細胞の再増殖の異なるレベル(M790 10%、M697 30%、およびM785 60%)を有する3匹のマウスから培養された肝細胞を分析した。
【図6b】6−β−ヒドロキシルテストステロン(CYP3A4媒介)へのテストステロンの転換(B)を示すグラフ。ヒト肝細胞の再増殖の異なるレベル(M790 10%、M697 30%、およびM785 60%)を有する3匹のマウスから培養された肝細胞を分析した。
【図6c】定量的RT−PCRにより判定される、薬物代謝、薬物移送、および薬物抱合に関する、ヒト特異遺伝子のmRNAレベルを示すグラフ。ヒト薬物代謝遺伝子の比率は、成熟ヒト肝細胞に特有である。
【図7a】ヒト肝細胞ヒト肝細胞の再増殖の異なるレベル(M790 10%、M697 30%、およびM785 60%)を有する3匹のマウスからの肝細胞における、肝臓特異的遺伝子および薬物代謝と関連する遺伝子の遺伝子発現の基底レベルを示すグラフ。マウスアクチンmRNAに対して正規化した、3つの試料における肝臓特異的遺伝子の基底発現の棒グラフ。
【図7b】ヒト肝細胞ヒト肝細胞の再増殖の異なるレベル(M790 10%、M697 30%、およびM785 60%)を有する3匹のマウスからの肝細胞における、肝臓特異的遺伝子および薬物代謝と関連する遺伝子の遺伝子発現の基底レベルを示すグラフ。非誘導培養物中の誘導と比較した、ベータナフトフラボン(BNF)、フェノバルビタール(PB)、およびリファンピシン(Rif)に反応する薬物代謝に関連するmRNAの誘導の棒グラフ。CYP3A4(B)を示す。フェノバルビタールによるCYP3A4の誘導は、酵素量における誘導よりもさらになお著しかった。
【図7c】ヒト肝細胞ヒト肝細胞の再増殖の異なるレベル(M790 10%、M697 30%、およびM785 60%)を有する3匹のマウスからの肝細胞における、肝臓特異的遺伝子および薬物代謝と関連する遺伝子の遺伝子発現の基底レベルを示すグラフ。非誘導培養物中の誘導と比較した、ベータナフトフラボン(BNF)、フェノバルビタール(PB)、およびリファンピシン(Rif)に反応する薬物代謝に関連するmRNAの誘導の棒グラフ。CYP2B6(C)を示す。フェノバルビタールによるCYP3A4の誘導は、酵素量における誘導よりもさらになお著しかった。
【図7d】ヒト肝細胞ヒト肝細胞の再増殖の異なるレベル(M790 10%、M697 30%、およびM785 60%)を有する3匹のマウスからの肝細胞における、肝臓特異的遺伝子および薬物代謝と関連する遺伝子の遺伝子発現の基底レベルを示すグラフ。非誘導培養物中の誘導と比較した、ベータナフトフラボン(BNF)、フェノバルビタール(PB)、およびリファンピシン(Rif)に反応する薬物代謝に関連するmRNAの誘導の棒グラフ。CAR(核ホルモン受容体)(D)を示す。フェノバルビタールによるCYP3A4の誘導は、酵素量における誘導よりもさらになお著しかった。
【図7e】ヒト肝細胞ヒト肝細胞の再増殖の異なるレベル(M790 10%、M697 30%、およびM785 60%)を有する3匹のマウスからの肝細胞における、肝臓特異的遺伝子および薬物代謝と関連する遺伝子の遺伝子発現の基底レベルを示すグラフ。非誘導培養物中の誘導と比較した、ベータナフトフラボン(BNF)、フェノバルビタール(PB)、およびリファンピシン(Rif)に反応する薬物代謝に関連するmRNAの誘導の棒グラフ。MDR1(輸送体)(E)を示す。フェノバルビタールによるCYP3A4の誘導は、酵素量における誘導よりもさらになお著しかった。
【図7f】ヒト肝細胞ヒト肝細胞の再増殖の異なるレベル(M790 10%、M697 30%、およびM785 60%)を有する3匹のマウスからの肝細胞における、肝臓特異的遺伝子および薬物代謝と関連する遺伝子の遺伝子発現の基底レベルを示すグラフ。非誘導培養物中の誘導と比較した、ベータナフトフラボン(BNF)、フェノバルビタール(PB)、およびリファンピシン(Rif)に反応する薬物代謝に関連するmRNAの誘導の棒グラフ。MRP(F)を示す。フェノバルビタールによるCYP3A4の誘導は、酵素量における誘導よりもさらになお著しかった。
【図7g】ヒト肝細胞ヒト肝細胞の再増殖の異なるレベル(M790 10%、M697 30%、およびM785 60%)を有する3匹のマウスからの肝細胞における、肝臓特異的遺伝子および薬物代謝と関連する遺伝子の遺伝子発現の基底レベルを示すグラフ。非誘導培養物中の誘導と比較した、ベータナフトフラボン(BNF)、フェノバルビタール(PB)、およびリファンピシン(Rif)に反応する薬物代謝に関連するmRNAの誘導の棒グラフ。BSEP(輸送体)(G)を示す。フェノバルビタールによるCYP3A4の誘導は、酵素量における誘導よりもさらになお著しかった。
【図7h】ヒト肝細胞ヒト肝細胞の再増殖の異なるレベル(M790 10%、M697 30%、およびM785 60%)を有する3匹のマウスからの肝細胞における、肝臓特異的遺伝子および薬物代謝と関連する遺伝子の遺伝子発現の基底レベルを示すグラフ。非誘導培養物中の誘導と比較した、ベータナフトフラボン(BNF)、フェノバルビタール(PB)、およびリファンピシン(Rif)に反応する薬物代謝に関連するmRNAの誘導の棒グラフ。PXR(核ホルモン受容体)(H)を示す。フェノバルビタールによるCYP3A4の誘導は、酵素量における誘導よりもさらになお著しかった。
【図8】図8は、ヒト化FRGマウスから単離された肝細胞のFACSプロットである。細胞は、抗ヒトCD46と抗マウス肝細胞(HC)表面マーカーで共染色した。肝細胞の大部分(>85%)はヒト系であった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
配列表
添付の配列表に記載される核酸およびアミノ酸配列は、37C.F.R.1.822に定義されるように、ヌクレオチド塩基の標準的な文字略語、およびアミノ酸の三文字コードを示す。各核酸配列の1本鎖のみを示すが、該相補鎖は、表示された該鎖に言及するときは常にそれに含まれるものとして理解する。
【0020】
配列表は、ASCIIテキストファイルであるAnnex C/St.25テキストファイルとして提出したものである(2010年4月16日に作成,17KB,引用により本明細書に組み込まれる)。
【0021】
添付の配列表において、
配列番号1および2は、ヒトAlu配列を増幅するためのPCRプライマーの核酸配列である。
【0022】
配列番号3は、ヒトALB順方向RT−PCRプライマーの核酸配列である。
【0023】
配列番号4は、ヒトALB逆方向RT−PCRプライマーの核酸配列である。
【0024】
配列番号5は、マウスAlb順方向RT−PCRプライマーの核酸配列である。
【0025】
配列番号6は、マウスAlb逆方向RT−PCRプライマーの核酸配列である。
【0026】
配列番号7は、ヒトTAT順方向RT−PCRプライマーの核酸配列である。
【0027】
配列番号8は、ヒトTAT逆方向RT−PCRプライマーの核酸配列である。
【0028】
配列番号9は、ヒトTF順方向RT−PCRプライマーの核酸配列である。
【0029】
配列番号10は、ヒトTF逆方向RT−PCRプライマーの核酸配列である。
【0030】
配列番号11は、ヒトFAH順方向RT−PCRプライマーの核酸配列である。
【0031】
配列番号12は、ヒトFAH逆方向RT−PCRプライマーの核酸配列である。
【0032】
配列番号13は、ヒトTTR順方向RT−PCRプライマーの核酸配列である。
【0033】
配列番号14は、ヒトTTR逆方向RT−PCRプライマーの核酸配列である。
【0034】
配列番号15は、ヒトUGT1A1順方向RT−PCRプライマーの核酸配列である。
【0035】
配列番号16は、ヒトUGT1A1逆方向RT−PCRプライマーの核酸配列である。
【0036】
配列番号17および18は、それぞれ、ヒトIL−1RA(2003年1月24日にGenBank受託番号NM_000577.3で寄託)の核酸配列およびアミノ酸配列である。
【0037】
配列番号19および20は、それぞれ、マウス IL−1RA(2007年4月6日にGenBank受託番号NM_001039701で寄託)の核酸配列およびアミノ酸配列である。
【0038】
配列番号21は、アナキンラのアミノ酸配列である。
【0039】
詳細説明
I. 略号
AAV アデノ随伴ウイルス
ALB アルブミン
ALT アラニンアミノトランスフェラーゼ
AST アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
BNF β−ナフトフラボン
CMV サイトメガロウイルス
DAB ジアミノベンジジン
ELISA 酵素結合免疫吸着測定法
EROD エトキシレゾルフィン−O−デエチラーゼ
ES 胚性幹
FACS 蛍光標示式細胞分取
FAH フマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ
FISH 蛍光インサイチュハイブリダイゼーション
FITC イソチオシアン酸フルオレセイン
FRG Fah−/−/Rag2−/−/Il2rg−/−三重変異型マウス
H&E ヘマトキシリンおよびエオシン
HBV B型肝炎ウイルス
HCV C型肝炎ウイルス
HLA ヒト白血球抗原
HT1 遺伝性チロシン血症1型
IL−1 インターロイキン−1
IL−1R インターロイキン−1受容体
IL−1RA インターロイキン−1受容体拮抗薬
IL−1RAP インターロイキン−1受容体アクセサリータンパク質
IL−2Rγ インターロイキン−2受容体γ
iPS 人工多能性幹
IPSC 人工多能性幹細胞
MHC 主要組織適合性複合体
mTOR 哺乳類ラパマイシン標的
NOD 非肥満糖尿病性
NTBC 2−(2−ニトロ−4−トリフルオロ−メチル−ベンゾイル)−1,3シクロヘキサンジオン
PB フェノバルビタール
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
PE フィコエリトリン
PFU プラーク形成単位
RAG リコンビナーゼ活性化遺伝子
Rif リファンピシン
RT−PCR 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
SA スクシニルアセトン
SCID 重症複合型免疫不全症
TAT チロシンアミノトランスフェラーゼ
TF トランスフェリン
TTR トランスサイレチン
UGT1A1 UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ1ファミリー,ポリペプチドA1
uPA ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子。
【0040】
II. 用語および方法
別途記載のない限り、技術用語は、従来の用法に準拠して使用される。分子生物学における一般用語の定義は、Benjamin Lewin,Genes V,Oxford
University Pressより出版、1994(ISBN0−19−854287−9)、Kendrew et al.(eds.),The Encyclopedia of Molecular Biology,published by Blackwell Science Ltd.,1994(ISBN0−632−02182−9)、およびRobert A.Meyers(ed.),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,VCH Publishers,Inc.より出版、1995(ISBN1−56081−569−8)において見出すことができる。
【0041】
本発明の種々の実施形態の概説を容易にするために、具体的な用語の以下の説明を提供する。
【0042】
投与:被験体に、治療用薬剤などの薬剤を任意の有効な経路によって供給すること、または与えること。例示的な投与経路としては、限定されないが、注射(皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、および静脈内など)、経口、管内、舌下、経直腸、経皮、鼻腔内、経膣ならびに吸入経路が挙げられる。
【0043】
肝臓疾患の発症を阻害するまたは予防する薬剤:FRGマウス, またはFpmRGマウス、または任意の他の型のFah欠損マウスに投与される場合、マウスにおける肝臓疾患の発症を予防、または遅延、または阻害する化合物または組成物。肝臓疾患または肝機能障害は、肝組織像の変化(壊死、炎症、線維症、異形成、または肝臓癌等)、肝臓特異的酵素および他のタンパク質(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニン・アミノトランスフェラーゼ、ビリルビン、アルカリフォスファターゼ、およびアルブミン等)のレベルの変化、または全身性肝不全が挙げられるが、これらに限定されない、兆候または症状のうちのいずれか1つにより特徴付けられる。一実施形態において、肝臓疾患を阻害する薬剤は、2−(2−ニトロ−4−トリフルオロ−メチル−ベンゾイル)−1,3シクロヘキサンジオン(NTBC)である。
【0044】
羊膜細胞:胚の周囲の羊水中に見られる細胞。
【0045】
アナキンラ:インターロイキン−1(IL−1)受容体拮抗薬。アナキンラは、天然に存在するIL−1の生物学的活性を、多くの組織および器官で発現されるIL−1受容体へのIL−1の結合を競合的に阻害することによりブロックする。IL−1は、炎症刺激に応答して生成され、種々の生理学的応答、例えば、炎症反応および免疫学的反応を媒介する。アナキンラは、遺伝子操作した大腸菌の培養物から調製されるヒトIL−1RA(IL−1受容体拮抗薬)の組換え型の非グリコシル化形態である。アナキンラタンパク質は153個のアミノ酸のものであり、およそ17.3kDの分子量を有し、アミノ末端に1つのメチオニン残基を有する点で天然ヒトIL−1RA(配列番号18)と異なる(アナキンラのアミノ酸配列を本明細書において配列番号21として示す)。また、アナキンラはKINERETTMとしても知られている。
【0046】
アンタゴニスト:別の化合物の効果を打ち消す化合物(薬物、タンパク質または小分子など)。一部の場合では、アンタゴニストは特定の細胞受容体に結合するが、生物学的応答を誘起しないものである。
【0047】
抗体:免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子のフラグメントにより実質的にコード化された1つもしくは複数のポリペプチドを含むタンパク質(またはタンパク質複合体)。認識された免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖はカッパまたはラムダのいずれかに分類される。重鎖はガンマ、またはミュー、またはアルファ、またはデルタ、またはイプシロンに分類され、同様に、各々IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEの免疫グロブリンを表す。
【0048】
基本的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は、通常、テトラマーである。各々のテトラマーは、2つの同一のペアのポリペプチド鎖から成り、各々のペアは、1つの「軽い」鎖(約25kD)と1つの「重い」鎖(約50〜70kD)を有する。各々の鎖のN末端は、抗原認識に主に関与する約100〜110個またはそれより多いアミノ酸の可変領域を定義する。「可変軽鎖」(V)および「可変重鎖」(V)という用語はそれぞれ、これらの軽鎖および重鎖を指す。
【0049】
本明細書に使用される、「抗体」という用語は、完全な免疫グロブリン、ならびによく特徴付けられたフラグメントをいくつか含む。例えば、標的タンパク質(またはタンパク質または融合タンパク質内のエピトープ)に結合するFabs、Fvs、および一本鎖Fvs(scFvs)は、そのタンパク質(またはエピトープ)のための特異的結合剤でもある。これらの抗体フラグメントは、以下のように定義される。(1)Fab、完全な軽鎖および1つの重鎖の一部分を産生するために、酵素パパインによる全抗体の消化により生成された抗体分子の一価抗原結合フラグメントを含むフラグメント、(2)Fab’、完全な軽鎖および1つの重鎖の一部分を産生するために、ペプチンで全抗体を処理し、次いで、還元することにより得られる、抗体分子のフラグメント、(3)(Fab’)、後続の還元を伴わずに酵素ペプチンで全抗体を処理することにより得られる、抗体のフラグメント、(4)F(ab’)、2個のジスルフィド結合により2つのFab’フラグメントが一緒にされた二量体、(5)Fv、2本の鎖として発現された軽鎖の可変域および重鎖の可変域を含む遺伝子組み換えフラグメント、および(6)1本鎖抗体、遺伝子融合1本鎖分子として適切なポリペプチドリンカーにより連結された、軽鎖の可変域、重鎖の可変域を含む遺伝子組み換え分子, として定義される。これらのフラグメントを作製する方法は、日常的である(例えば、Harlow and Lane,Using Antibodies:A Laboratory Manual,CSHL,New York,1999を参照)。
【0050】
本開示の方法に用いられる抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。単に一例として、モノクローナル担体は、Kohler and Milsteinの古典的方法(Nature 256:495−97,1975)またはその誘導的な方法に従って、ネズミハイブリドーマから調製することができる。モノクローナル抗体生成のための詳細な手順は、Harlow and Lane,Using Antibodies:A Laboratory Manual,CSHL,New York,1999に記載されている。
【0051】
抗原:動物において抗体の生成またはT細胞応答を刺激し得る化合物、組成物または物質(動物に注入される、または吸収される組成物を含む)。抗原は、特定の体液性または細胞性免疫の産物と反応する。「病原体特異的抗原」は、病原体(ウイルス、細菌または寄生虫など)によって発現され、被験体において免疫応答を惹起するタンパク質などの抗原である。
【0052】
アザチオプリン:プリン合成阻害薬であり、細胞、特に白血球の増殖を阻害する免疫抑制薬。この免疫抑制薬は、多くの場合、自己免疫疾患または臓器移植拒絶の処置に使用される。これはプロドラッグであり、体内で、活性な代謝産物6−メルカプトプリン(6−MP)および6−チオイノシン酸に変換される。アザチオプリンは、いくつかのジェネリックの製造業者によって、ブランド名(AzasanTM(Salix);ImuranTM(GlaxoSmithKline);AzamunTM;およびImurelTM)として製造されている。
【0053】
B細胞:体液性免疫応答に大きな役割を果しているリンパ球の型。B細胞の主な機能は、可溶性の抗原に対する抗体を作製することである。B細胞は、適応免疫機構の必須成分である。
【0054】
生物学的試料または試料:被験体の細胞、組織または体液から採取された試料、例えば、末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、骨髄、尿、唾液、組織生検材料、外科標本、および剖検物質。
【0055】
肝硬変:正常な微視的小葉構成の減損および結合組織の線維帯の壊死性実質組織での再生的置換(これにより、最終的には該臓器が収縮し、不規則な結節に分かれる)を特徴とする一群の慢性肝臓疾患をいう。肝硬変は、長い潜伏期間の後、通常、突然の腹痛および吐血、就下性水腫または黄疸を伴う腫脹が起こる。進行期では、腹水、顕著な黄疸、門脈圧亢進、拡張蛇行静脈(varicose vein)および中枢神経系障害(肝性昏睡に至ることがあり得る)がみられることがあり得る。
【0056】
採取:本明細書に使用される増大されたヒト肝細胞を「採取する(collecting)」とは、単離されたヒト肝細胞を注入されているマウス(またはレシピエントマウスとも称される)から増大された肝細胞を除去するプロセスをさす。採取は、任意に、肝細胞を他の細胞型から分離することを含む。一実施形態において、その増大されたヒト肝細胞は、Fah欠損マウスの肝臓から採取される。一部の例において、その増大されたヒト肝細胞は、FRGマウスまたはFpmRGマウスの肝臓から採取される。
【0057】
インターロイキン受容体の一般的なγ鎖(Il2rg):インターロイキン受容体の一般的なガンマ鎖をコード化する遺伝子。Il2rgは、IL−2、IL−4、IL−7、およびIL−15を含む、いくつかのインターロイキンに対する受容体の構成要素である(Di Santo et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:377−381,1995)。Il2rgの欠損した動物は、B細胞およびT細胞の減少を示し、ナチュラルキラー細胞が欠如する。Il2rgはまた、インターロイキン−2受容体γ鎖として公知である。
【0058】
凍結保存:本明細書に使用される「凍結保存」とは、77Kまたは−196℃(液体窒素の沸点)等の低い氷点下の温度まで冷却することにより保存または維持されている細胞または組織を指す。これらの低温度で、細胞死をもたらす生化学的反応を含む、いかなる生物学的活性も、効果的に停止する。
【0059】
シクロスポリンA:土壌真菌Beauveria niveaによって生成される11個のアミノ酸の非リボソーム環状ペプチドである免疫抑制化合物。シクロスポリンAは、器官および組織の移植における移植片拒絶の予防に使用されている。シクロスポリン“cyclosporin”Aは、“cyclosporine”および“ciclosporin”としても知られている。
【0060】
肝機能の低下:肝臓の健康または機能を測定する多くのパラメータのうちのいずれか1つの異常変化。肝機能の低下はまた、本明細書では、「肝機能障害」と称される。肝機能は、肝組織像の検査および肝臓酵素または他のタンパク質の測定等に限定されない、当技術分野で周知のような多くの手段のうちのいずれか1つにより評価することができる。例えば、肝機能障害は、肝臓の壊死、炎症、線維症、酸化的損傷、または異形成で示され得る。一部の例において、肝機能障害は、肝細胞癌等の肝臓癌で示される。肝機能障害を評価するために試験され得る肝臓酵素およびタンパク質の例としては、アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、ビリルビン、アルカリフォスファターゼ、およびアルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。肝機能障害はまた、全身性肝不全をもたらし得る。肝機能を試験するための手順は、Grompeら(Genes Dev.7:2298−2307,1993)およびManningら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96:11928−11933,1999)により教示されるもの等、当技術分野で周知である。
【0061】
欠損:本明細書で用いる場合、「Fah欠損」または「Fahについて欠損型(deficient in Fah)」は、Fahに、Fah mRNAの発現および/または機能性FAHタンパク質の実質的な減少または非存在をもたらす変異を含むマウスなどの動物をいう。本明細書で用いる場合、機能性FAHタンパク質の「発現低下」という用語は、完全な発現低下をいうだけでなく、機能性FAHタンパク質の発現の実質的な減少(約80%、約90%、約95%または約99%の減少など)も含む。一実施形態において、Fah欠損動物は、Fah遺伝子にホモ接合型欠失などのホモ接合型破壊を含むものである。破壊としては、例えば、挿入、欠失、1つ以上の点変異、またはその任意の組合せが挙げられる。一例として、ホモ接合型欠失は、Fahのエキソン5におけるものである。別の実施形態では、Fah欠損動物は、Fah遺伝子に1つ以上の点変異を含むものである。適当なFah点変異の例は、当該技術分野において知られている(例えば、Aponteら Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.98(2):641−645,2001を参照のこと)。同様に、「IL−1R欠損」または「IL−1Rについて欠損型」は、IL−1Rに、IL−1R mRNAの発現および/または機能性IL−1Rタンパク質の実質的な減少または非存在をもたらす変異を含むマウスなどの動物をいう。IL−1Rノックアウトマウスはこれまでに報告されており(例えば、Normanら,Ann.Surg.223(2):163−169,1996;Glaccumら,J.Immunol.159:3364−3371,1997を参照のこと)、The Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME)などから市販されている。また、Rag1欠損、Rag2欠損、およびIl2rg欠損は、それぞれ、Rag1、Rag2およびIl2rgに、mRNAの発現または機能性のタンパク質の産生の実質的な減少または非存在をもたらす変異を含む動物をいう。Rag1、Rag2およびIl2rgノックアウトマウスはこれまでに報告されており、市販されている。
【0062】
減損する:減じるまたは除去すること。本明細書に使用される「マクロファージ減損」とは、動物におけるマクロファージを消去する、または除去する、または減じる、または殺滅するプロセスを指す。マクロファージが減損している動物は、必ずしもマクロファージが完全に欠如しているとは限らないが、少なくともマクロファージの数または活性の減少を示す。一実施形態において、マクロファージ減損は、機能的マクロファージの少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、または100%の減少をもたらす。
【0063】
破壊:本明細書で用いる場合、遺伝子の「破壊」は、任意の挿入、欠失もしくは点変異またはその任意の組合せをいう。一部の実施形態では、破壊は、mRNAおよび/または機能性のタンパク質の一部または完全な発現低下をもたらすものである。
【0064】
胚性幹(ES)細胞:発生中の胚盤胞の内細胞塊から単離された多能性細胞。ES細胞は多能性細胞である(体内に存在するあらゆる細胞(骨、筋肉、脳の細胞など)になり得ることを意味する)。マウスES細胞の作製方法は、米国特許第5,670,372号をみるとよい。ヒトES細胞の作製方法は、米国特許第6,090,622号、PCT公開公報番号WO00/70021およびPCT公開公報番号WO00/27995をみるとよい。また、本明細書では人工多能性幹細胞(iPS細胞)も想定され、これは、非多能性細胞(成人の体細胞など)から、特定の遺伝子(OCT3/4、SOX2、NANOG、LIN28、Klf4、および/またはc−Myc)の発現を誘導することにより、人工的に誘導された型の多能性幹細胞である(Yuら,Science 318(5858):1917−1920,2007;Takahashiら,Cell 131(5):861−872,2007)。これまでに、マウス(Okitaら,Nature 448(7151):313−317,2007)、ヒト(Yuら,Science 318(5858):1917−1920,2007;Takahashiら,Cell 131(5):861−872,2007)、ラット(Liら,Cell Stem Cell 4(1):16−19,2009)、サル(Liuら,Cell Stem Cell 3(6):587−590,2008)およびブタ(Estebanら,J.Biol.Chem.Epub April 21,2009)のiPS細胞が報告されている。
【0065】
移植する:動物に細胞または組織を移植すること。本明細書に使用される、レシピエントマウスにおいて、ヒト肝細胞の移植とは、注入後、ヒト肝細胞がレシピエントマウスに移植されるプロセスを指す。移植されたヒト肝細胞は、レシピエントマウスにおいて、増大することができる。本明細書に記載される、「実質的な移植」とは、肝臓において、少なくとも約1%の肝細胞がヒト肝細胞である、レシピエントマウスを指す。「高度に移植された」マウスは、肝細胞の少なくとも約60%がヒト肝細胞である、肝臓を有するマウスである。しかしながら、移植効率はさらに高くなり得、マウス肝臓において、例えば、肝細胞の少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%がヒト肝細胞である。
【0066】
増大させる:量を増加させること。本明細書に使用される、ヒト肝細胞を「増大させる(expanding)」とは、ヒト肝細胞の数が増加するような、細胞分裂を生じることが可能なプロセスを指す。本明細書に記載される、ヒト肝細胞は、レシピエントマウスにおいて、少なくとも約4週間、または少なくとも約6週間、または少なくとも約8週間、または少なくとも約12週間、または少なくとも約16週間、または少なくとも約20週間、または少なくとも約24週間、または少なくとも約28週間、増大可能である。一実施形態において、該ヒト肝細胞は、最長約6ヶ月まで増大可能である。他の実施形態において、該ヒト肝細胞は、最長約8ヶ月、約10ヶ月、または約12ヶ月まで増大可能である。増大から結果として生じるヒト肝細胞の数は、変化し得る。一実施形態において、増大は、少なくとも1,000万、または少なくとも2,000万、または少なくとも3,000万、または少なくとも4,000万、または少なくとも5,000万の肝細胞をもたらす。100万の肝細胞が最初に注入され、約10%移植されると仮定すると、肝細胞の増大は、約10倍〜約500倍の範囲であり得る。一部の実施形態において、レシピエントマウスにおいて、ヒト肝細胞の増大は、少なくとも10倍、または少なくとも50倍、または少なくとも100倍、または少なくとも150倍、または少なくとも200倍、または少なくとも250倍、または少なくとも300倍、または少なくとも400倍、または少なくとも500倍、または少なくとも1,000倍の増加をもたらす。
【0067】
FK506:FK506は、タクロリムスまたはフジマイシンとしても知られている免疫抑制薬である。FK506は、細菌Streptomyces tsukubaensisを含む日本の土壌試料の醗酵ブロス中で最初に見出された23員マクロライドラクトンである。この化合物は、多くの場合、患者の免疫機構の活性を低減させるため、および臓器拒絶のリスクを低下させるために、同種異系臓器移植後に使用される。FK506は、T細胞およびインターロイキン−2の活性を低下させる。また、これは、重度のアトピー性皮膚炎(湿疹)、骨髄移植後の重度の難治性ブドウ膜炎、および皮膚の白斑状態の処置における局所用調製物においても使用される。
【0068】
フルダラビン:DNA合成を阻害するプリン類似体。フルダラビンは、多くの場合、種々の血液系の悪性疾患の処置のための化学療法薬として使用される。
【0069】
FRGマウス:フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ(Fah)、リコンビナーゼ活性化遺伝子2(Rag2)、およびインターロイキン受容体の共通γ鎖(Il2rg)遺伝子において、ホモ接合体欠失を有する、変異体マウス。また、本明細書では、Fah−/−/Rag2−/−/Il2rg−/−と称される。本明細書に使用される、Fah、Rag2、およびIl2rg遺伝子においてホモ接合体欠失は、機能的FAH、RAG−2、およびIL−2Rγタンパク質が、突然変異を含むマウスに発現しないことを示す。
【0070】
pmRGマウス:リコンビナーゼ活性化遺伝子2(Rag2)、およびインターロイキン受容体の共通γ鎖(Il2rg)遺伝子のホモ接合体欠失、ならびにフマリルアセト酢酸ヒドラーゼ(Fah)のホモ接合体点変異を有する、変異体マウス。FpmRGマウスのFah遺伝子の点変異は、mRNAにおいて、エクソン7のミススプライシングおよび喪失をもたらす(Aponte et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:641−645,2001)。また、本明細書では、Fahpm/Rag2−/−/Il2rg−/−と称される。本明細書に使用される、Rag2およびIl2rg遺伝子のホモ接合体欠失は、機能的RAG−2およびIL−2Rγタンパク質が、該突然変異を含むマウスに発現しないことを示す。さらに、Fah遺伝子のホモ接合体の点変異を有するマウスは、機能的FAHタンパク質を発現しない。
【0071】
フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ(FAH):チロシン異化の最終ステップに触媒作用を及ぼす代謝酵素。Fah遺伝子のホモ接合体欠失を有するマウスは、肝mRNA発現の変化および重度の肝機能障害を示す(Grompe et al. Genes Dev.7:2298−2307,1993)。該Fah遺伝子の点変異はまた、肝不全および出生後の致死を生じることも示している(Aponte et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.98(2):641−645,2001)。Fahについて欠損型であるヒトは、遺伝性チロシン血症1型(HT1)の肝臓疾患を発症し、肝不全を発症する。Fah欠損により、強力な酸化剤であるフマリルアセト酢酸の蓄積がもたらされ、これにより、最終的に、Fahについて欠損型である肝細胞の細胞死がもたらされる。したがって、Fah欠損動物では、ヒトなどの他の種に由来する肝細胞で再生息が行なわれ得る。
【0072】
漸減させる:本明細書に使用される、NTBCの用量を「漸減する」とは、数日にわたるような時間とともに、Fah欠損マウスに投与されるNTBCの用量を漸減するプロセスを指す。一実施形態において、該NTBC用量は、約6日間にわたり、漸減し、該用量は、約1週間後、NTBCがもはや投与されなくなるように、約1または2日間間隔で減少する。NTBCの漸減は、短期間または長期間にわたり行うことができ、用量の減少の間の時間間隔もまた、短くする、または長くすることができる。
【0073】
肝臓病原体:細菌性、ウイルス性または寄生虫性の病原体などの、肝臓の細胞に感染する任意の病原体をいう。一部の実施形態では、肝臓病原体は、HBVまたはHCVなどの「肝指向性ウイルス」(肝臓を標的とするウイルス)である。
【0074】
肝細胞癌腫(HCC):HCCは、ウイルス性肝炎、肝臓毒または肝硬変に起因する肝臓の炎症を有する患者において典型的に発生する肝臓の原発性悪性腫瘍である。
【0075】
肝細胞:肝臓の細胞質塊のうちの70〜80%まで構成する細胞型。肝細胞は、タンパク質合成、タンパク質保存、および炭水化物の形質転換、コレステロール、胆汁塩、およびホスホリン脂質の合成、ならびに外因性および内因性物質の解毒、修飾、および排出に関与する。該肝細胞はまた、胆汁の形成および分泌も引き起こす。肝細胞は、血清アルブミン、フィブリノゲン、および凝固因子のプロトロンビン基を製造し、リポタンパク質、セルロプラスミン、トランスフェリン、相補体、および糖タンパク質の合成のための主部位である。さらに、肝細胞は、薬物および殺虫剤のような外因性化合物、およびステロイドのような内因性化合物を代謝する、解毒する、および不活性化する能力を有する。
【0076】
遺伝性チロシン血症1型(HT1):チロシン血症は、体内でアミノ酸チロシンが有効に分解され得ない代謝異常であり、通常、先天性である。HT1は、この障害の最も重度の形態であり、ヒト染色体番号15にみられる遺伝子Fahにコードされた酵素フマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ(FAH)の不足によって引き起こされる。FAHは、チロシンの分解に必要な一連の5つの酵素の最後のものである。HT1の症状は、通常、寿命の最初の数ヶ月に現れ、期待される速度で体重が増加しない、および身長が伸びない(成長障害)、下痢、嘔吐、皮膚および白眼の黄色化(黄疸)、キャベツ様臭、ならびに出血傾向(特に、鼻血)の増大が挙げられる。HT1により、肝不全および腎不全、神経系に影響を及ぼす問題、ならびに肝臓癌のリスクの増大がもたらされることがあり得る。
【0077】
ヘテロ接合型:対応する染色体の遺伝子座に相違する対立遺伝子を有すること。例えば、特定の遺伝子変異についてヘテロ接合型の動物は、遺伝子の一方の対立遺伝子に変異を有するが他方には有しない。
【0078】
ホモ接合型:1つ以上の遺伝子座に同一の対立遺伝子を有すること。本明細書で用いる場合、「破壊についてホモ接合型」は、遺伝子の両方の対立遺伝子に同一の破壊(挿入、欠失または点変異など)を有する生物体をいう。
【0079】
免疫不全:免疫系のうちの少なくとも1つの不可欠な機能を欠如すること。本明細書に使用される、「免疫不全」マウスとは、免疫系の特異成分を欠如する、または免疫系の特異成分の機能を欠如するマウスである。一実施形態において、免疫不全マウスは、機能的B細胞、T細胞、および/またはNK細胞を欠如する。別の実施形態において、免疫不全マウスは、さらに、マクロファージを欠如する。一部の実施形態では、「免疫不全マウス」は、以下の遺伝子改変:Rag1−/−、Rag2−/−、Il2rg−/−、SCID、NODおよびヌードの1つ以上を含むものである。免疫不全マウス系統は、当該技術分野においてよく知られており、The Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME)またはTaconic(Hudson,NY)などから市販されている。一部の実施形態では、免疫不全マウスは、1種類以上の免疫抑制薬が投与されたマウスである。
【0080】
免疫抑制薬:免疫機構の1つ以上の態様(体液性もしくは細胞性の免疫機構の成分、または補体系など)の機能または活性を低下させる任意の化合物。本開示の具体的な実施形態では、免疫抑制薬は、FK506、シクロスポリンA、フルダラビン、ミコフェノレート、プレドニゾン、ラパマイシンもしくはアザチオプリン、またはその組合せである。
【0081】
既知の免疫抑制薬としては、限定されないが:(1)代謝拮抗薬、例えば、プリン合成阻害薬(例えば、アザチオプリンおよびミコフェノール酸)、ピリミジン合成阻害薬(例えば、レフルノミドおよびテリフルノミド)および葉酸拮抗薬(例えば、メトトレキサート);(2)マクロライド系、例えば、FK506、シクロスポリンAおよびピメクロリムス;(3)TNF−α阻害薬、例えば、サリドマイドおよびレナリドマイド;(4)IL−1受容体拮抗薬、例えば、アナキンラ;(5)哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)阻害薬、例えば、ラパマイシン(シロリムス)、デフォロリムス、エベロリムス、テムシロリムス、ゾタロリムスおよびバイオリムスA9;(6)コルチコステロイド、例えば、プレドニゾン;ならびに(7)いくつかの細胞標的または血清標的の任意の1つに対する抗体が挙げられる。
【0082】
例示的な細胞標的およびそのそれぞれの阻害薬化合物としては、限定されないが、補体成分5(例えば、エクリズマブ);腫瘍壊死因子(TNF)(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴール、アフェリモマブおよびゴリムマブ);IL−5(例えば、メポリズマブ);IgE(例えば、オマリズマブ);BAYX(例えば、ネレリモマブ);インターフェロン(例えば、ファラリモマブ);IL−6(例えば、エルシリモマブ);IL−12およびIL−13(例えば、レブリキズマブおよびウステキヌマブ);CD3(例えば、ムロモナブ−CD3、オテリキシズマブ、テプリズマブ、ビジリズマブ);CD4(例えば、クレノリキシマブ、ケリキシマブおよびザノリムマブ);CD11a(例えば、エファリズマブ);CD18(例えば、エルリズマブ);CD20(例えば、アフツズマブ、オクレリズマブ、パスコリズマブ);CD23(例えば、ルミリキシマブ);CD40(例えば、テネリキシマブ、トラリズマブ);CD62L/L−セレクチン(例えば、アセリズマブ);CD80(例えば、ガリキシマブ);CD147/バシジン(例えば、ガビリモマブ);CD154(例えば、ルプリズマブ);BLyS(例えば、ベリムマブ);CTLA−4(例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ);CAT(例えば、ベルチリムマブ、レルデリムマブ、メテリムマブ);インテグリン(例えば、ナタリズマブ);IL−6受容体(例えば、トシリズマブ);LFA−1(例えば、オジュリモマブ(odulimomab));ならびにIL−2受容体/CD25(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ、イノリモマブ)が挙げられる。
【0083】
他の免疫抑制(immunsuppressive)剤としては、ゾリモマブアリトックス、アトロリムマブ(atorolimumab)、セデリズマブ、ドルリキシズマブ(dorlixizumab)、フォントリズマブ、ガンテネルマブ、ゴミリキシマブ、マスリモマブ(maslimomab)、モロリムマブ(morolimumab)、パキセリズマブ、レスリズマブ、ロベリズマブ、シプリズマブ、タリズマブ、テリモマブアリトックス(telimomab aritox)、バパリキシマブ(vapaliximab)、ベパリモマブ(vepalimomab)、抗胸腺細胞グロブリン、抗リンパ球グロブリン;CTLA−4阻害薬(例えば、アバタセプト、ベラタセプト);アフリベルセプト;アレファセプト;リロナセプト;ならびにTNF阻害薬(例えば、エタネルセプト)が挙げられる。
【0084】
免疫抑制:免疫機構の活性または機能を低下させる作用をいう。免疫抑制は、免疫抑制化合物の投与によってなされるものであってもよく、疾患または障害の効果(例えば、HIV感染に起因する、または遺伝的欠陥による免疫抑制)であってもよい。
【0085】
インターロイキン−1(IL−1):用語「IL−1」は、IL−1αとIL−1βの両方を含む。IL−1αは、種々の免疫応答、炎症プロセスおよび造血に関与している多面性サイトカインである。IL−1αは、単球およびマクロファージによってプロタンパク質として産生され、該プロタンパク質は、細胞の損傷に応答してタンパク質分解的にプロセッシングされ、放出され、したがって、アポトーシスを誘導する。IL−1βは、活性化型マクロファージによってプロタンパク質として産生され、該プロタンパク質は、カスパーゼ1により、その活性形態にタンパク質分解的にプロセッシングされる。IL−1βは、炎症応答の重要なメディエータであり、さまざまな細胞活動(例えば、細胞増殖、分化およびアポトーシス)に関与している。
【0086】
人工多能性幹細胞(IPSC):非多能性細胞、典型的には成人の体細胞から、特定の遺伝子の発現を誘導することにより、人工的に誘導された型の多能性幹細胞。IPSCは、哺乳動物などの任意の生物体から誘導され得る。一部の実施形態では、IPSCは、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギ、ブタ、ウシ、非ヒト霊長類またはヒトから作製される。ヒト由来IPSCは例示である。
【0087】
IPSCは、ES細胞と、特定の幹細胞遺伝子およびタンパク質の発現、クロマチンのメチル化パターン、倍化時間、胚様体の形成、奇形腫の形成、生存可能なキメラの形成、ならびに潜在能力および分化可能性などの多くの点で類似している。IPSCの作製方法は、当該技術分野において知られている。例えば、IPSCは、典型的には、非多能性細胞(成人の線維芽細胞など)への特定の幹細胞関連遺伝子(Oct−3/4(Pouf51)およびSox2など)のトランスフェクションによって誘導される。トランスフェクションは、レトロウイルス、レンチウイルスまたはアデノウイルスなどのウイルスベクターによってなされ得る。例えば、細胞は、Oct3/4、Sox2、Klf4、およびc−Mycで、レトロウイルス系を用いて、またはOCT4、SOX2、NANOG、およびLIN28で、レンチウイルス系を用いてトランスフェクトさせることができる。3〜4週間後、少数のトランスフェクト細胞が、形態学的および生化学的に多能性幹細胞に類似した状態になり始め、典型的には、形態学的選択、倍化時間によって、またはレポーター遺伝子および抗生物質での選択によって単離される。一例では、成人ヒト細胞由来のIPSCを、Yuら(Science 318(5854):1224,2007)またはTakahashiら(Cell 131(5):861−72,2007)の方法によって作製する。IPSCは、iPS細胞としても知られている。
【0088】
感染量(infectious load):被験体における、または被験体由来の試料中の特定の病原体の量をいう。感染量は、当該技術分野において知られたいくつかの方法の任意の1つを用いて測定され得る。選択される方法は、検出対象の病原体の型および病原体の検出に利用可能な試薬に応じて異なる。また、感染量は、例えば、病原体の力価を測定することによっても測定され得、その方法は検出対象の病原体に応じて異なる。例えば、一部のウイルスの力価は、プラークアッセイを行なうことにより定量され得る。一部の例では、感染量は、試料中の病原体特異的抗原の量を定量することにより測定される。他の例では、感染量は、試料中の病原体特異的核酸分子の量を定量することにより測定される。定量は、数値を決定することを含むものであるか、相対値であってもよい。
【0089】
インターロイキン−1受容体(IL−1R):インターロイキン1受容体ファミリーに属するサイトカイン受容体。このタンパク質は、IL−1α、IL−1β、およびインターロイキン−1受容体拮抗薬(IL−1RA)の受容体である。これは、多くのサイトカイン誘導性の免疫応答および炎症応答に関与している重要なメディエータである。用語「IL−1R」は、一般的には、I型IL−1RとII型IL−1Rの両方を含む。本発明の開示との関連において、「IL−1R」はI型IL−1Rをいう。
【0090】
IL−1Rアンタゴニスト(IL−1RA):IL−1RまたはIL−1Rアクセサリータンパク質に結合し、IL−1Rによって媒介される活性化を阻害する分子。また、IL−1Rアンタゴニスト(IL−1RA)は、IL−1と同じ細胞表面上の受容体に結合するIL−1サイトカインファミリーの構成員である特定のタンパク質の名称である。IL−1RAタンパク質は、IL−1αおよびIL−1βの活性を阻害し、さまざまなIL−1関連免疫応答および炎症応答をモジュレートする。また、IL−1RAは、IRAP、IL1RA、IL−1ra3およびIL1RNとしても知られている。
【0091】
インターロイキン−1受容体アクセサリータンパク質(IL−1RAP):この遺伝子は、IL−1受容体アクセサリータンパク質をコードしている。IL−1は、感染、組織損傷またはストレスのときに、細胞膜でIL−1RおよびIL−1RAPと複合体を形成することにより、急性期の炎症性促進性タンパク質の合成を誘導する。IL−1RAPの選択的スプライシングにより、2種類の異なるアイソフォーム(一方は膜結合型、一方は可溶性)をコードする2種類の転写物バリアントがもたらされる。また、IL−1RAPは、IL1R3、IL−1RAcPおよびIL1RAPとしても知られている。
【0092】
単離された:「単離された」生物学的成分、例えば、核酸、タンパク質(抗体を含む)または小器官は、該成分が天然に存在している環境中(細胞など)の他の生物学的成分、すなわち、他の染色体および染色体外のDNAおよびRNA、タンパク質ならびに小器官から実質的に分離された、または精製されたものである。「単離された」核酸およびタンパク質は、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質を包含する。該用語は、宿主細胞内での組換え発現ならびに化学合成された核酸によって調製される核酸およびタンパク質も包含する。
【0093】
「単離された肝細胞」は、臓器ドナーなどの特定の供給源から得られた肝細胞をいう。一部の実施形態では、「単離された肝細胞」は、ドナーの身体から取り出された肝細胞である。一部の実施形態では、「単離された肝細胞」は、懸濁状態の肝細胞、または組織片に含まれた肝細胞である。具体的な例では、単離された肝細胞は、他の細胞型から実質的に分離もしくは精製されたもの、または他の組織型(脂肪組織もしくは線維性組織など)から精製されたものである。
【0094】
マクロファージ:単球と呼ばれる特定の白血球から由来する組織内の細胞。単球およびマクロファージは、食細胞であり、脊椎動物の非特異的防御(または先天性免疫)、ならびに特異的防御(または細胞性免疫)の両方において作用する。これらの役割は、細胞残屑、および固定細胞あるいは移動細胞としての病原体を食菌する(飲み込んだ後、消化する)こと、および病原体に対して反応するために、リンパ球および他の免疫細胞を刺激することである。
【0095】
哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)阻害薬:mTORの発現または活性を阻害する分子。mTOR阻害薬としては、限定されないが、小分子、抗体、ペプチドおよび核酸阻害薬が挙げられる。例えば、mTOR阻害薬は、mTORのキナーゼ活性を阻害する分子、またはリガンドへのmTORの結合を阻害する分子であり得る。また、mTOR阻害薬には、mTORの発現を下方調節する分子も含まれる。いくつかのmTOR阻害薬が当該技術分野において知られている(例えば、ラパマイシン(シロリムス))。
【0096】
ミコフェノレート:同種異系移植片の拒絶を抑制するために典型的に使用される免疫抑制薬。この薬物は、一般的に、経口または静脈内で投与される。ミコフェノレートは、真菌Penicillium stoloniferum由来のものである。そのプロドラッグ形態であるミコフェノレートモフェチルは、肝臓で、活性部分のミコフェノール酸に代謝される。これは、Bリンパ球とTリンパ球の増殖に使用されるプリン合成のデノボ経路においてグアニン一リン酸(guanine monophosphate)の合成速度を制御する酵素であるイノシン一リン酸デヒドロゲナーゼを阻害する。ミコフェノール酸は、商標名CellCeptTM(ミコフェノレートモフェチル;Roche)およびMyforticTM(ミコフェノール酸ナトリウム;Novartis)で一般に市販されている。
【0097】
ナチュラルキラー(NK)細胞:内因性免疫系の主成分を構成する細胞傷害性リンパ球型。NK細胞は、腫瘍およびウイルス感染した細胞の両方の宿主の拒絶反応において大きな役割を果たす。
【0098】
非肥満糖尿病性(NOD)マウス:自己免疫性のインスリン依存性糖尿病(IDDM)の偶発的発症に対する遺伝的素因を有するマウスをいう。IDDMに対する易罹患性は多遺伝子性であり、環境が遺伝子浸透度に対して強く影響する。NOD系統は、塩野義製薬の油日ラボラトリーズ(日本)で開発された(Makinoら,“Establishment of the non−obese diabetic(NOD)mouse,” In Current Topics in Clinical and Experimental Aspects of Diabetes Mellitus.Elsevier,Amsterdam,第25〜32頁,1985;Makinoら,Exp.Anim.29:1−8,1980)。
【0099】
NTBC(2−ニトロ−4−トリフルオロ−メチル−ベンゾイル)−1,3シクロヘキサンジオン):4−ヒドロキシ−フェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)の阻害薬。HPPDは、チロシンの異化の第2段階である4−ヒドロキシフェニルピルビン酸のホモゲンチシン酸体への変換を触媒する。NTBCでの処理により、この段階でチロシン異化経路がブロックされ、Fah欠損ヒトおよび動物において蓄積される特徴的代謝産物であるスクシニルアセトンの蓄積が抑制される。
【0100】
ヌードマウス:胸腺の衰退または非存在を引き起こし、T細胞の数が大きく減少することによる免疫機構の抑止をもたらす遺伝子変異を有するマウス系統をいう。該マウスの表現型の外観は体毛がないことである。ヌードマウスは、フォークヘッドボックスN1(Foxn1)遺伝子に偶発欠失を有する。
【0101】
プレドニゾン:有効な免疫抑制薬である合成コルチコステロイド。これは、多くの場合、特定の炎症性疾患、自己免疫疾患および癌を処置するため、ならびに臓器移植拒絶を処置または予防するために使用される。プレドニゾンは、通常、経口摂取されるが、筋肉内注射または静脈内注射によって送達してもよい。これは、肝臓でプレドニゾロンに変換されるプロドラッグであり、プレドニゾロンは活性薬物であり、かつステロイドでもある。
【0102】
ラパマイシン:免疫抑制特性および抗増殖特性を有することが知られている化合物。ラパマイシンは、シロリムスとしても知られており、最初に、細菌Streptomyces hygroscopicusの産生物として見出されたマクロライドである。ラパマイシンはmTORに結合してその活性を阻害する。
【0103】
レシピエント:本明細書に使用される、「レシピエントマウス」とは、本明細書に記載される単離されたヒト肝細胞を注入されているマウスである。一般に、ヒト肝細胞の一部(割合は異なり得る)は、レシピエントマウスに移植する。一実施形態において、該レシピエントマウスは、Fahがさらに欠損している免疫不全マウスである。別の実施形態において、該レシピエントマウスは、Fahがさらに欠損しているRag2−/−/Il2rg−/−マウスである。別の実施形態において、該レシピエントマウスはFRGマウスである。別の実施形態において、該レシピエントマウスは、FpmRGマウスである。他の実施形態では、レシピエントマウスは、IL−1Rアンタゴニストで処置されたFRGマウス、またはIL−1Rについてさらに欠損型であるFRGマウスである。
【0104】
リコンビナーゼ活性化遺伝子1(Rag1):免疫グロブリンV(D)J組換えの活性化に関与している遺伝子。RAG1タンパク質はDNA基質の認識に関与しているが、安定な結合および切断活性にはRAG2も必要とされる。
【0105】
リコンビナーゼ活性化遺伝子2(Rag2):免疫グロブリン遺伝子座とT細胞受容体遺伝子座の組み換えに関与する遺伝子。Rag2遺伝子が欠損する動物は、V(D)J組み換えを行うことができず、機能的T細胞およびB細胞の完全喪失をもたらす(Shinkai et al.,Cell 68:855−867,1992)。
【0106】
連続移植:一次マウスにおいて増大された肝細胞が、採取され、さらなる増大のために二次マウスに注入等により移植される、生体内でヒト肝細胞を増大させるためのプロセス。連続移植は、三次、または四次、または追加次のマウスをさらに含むことができる(Overturf et al., Am. J. Pathol. 151: 1078−9107, 1997)。
【0107】
重症複合型免疫不全症(SCID)マウス:V(D)J組換えが行なわれ得ず、したがって、機能性のT細胞およびB細胞が欠如しているマウス系統をいう。また、SCIDマウスは、補体系のいくつかの成分を活性化させる能力が障害されている。SCIDマウスは、Prkdcscid変異についてホモ接合型である。
【0108】
幹細胞:不変の娘細胞を生成する(自己再増殖;親細胞と同一である少なくとも1つの娘細胞を生成する細胞分裂)、および特殊化細胞型を形成する(潜在力)ための特異な能力を有する細胞。幹細胞としては、胚幹(ES)細胞、胚性生殖(EG)細胞、生殖系列幹(GS)細胞、ヒト間充織幹細胞(hMSC)、脂肪組織由来幹細胞(ADSC)、多能性成体幹細胞(MAPC)、多能性成体生殖系列幹細胞(maGSC)、および非制限体幹細胞(USSC)が挙げられるが、これらに限定されない。生体内の幹細胞の役割は、動物の正常な生活中、破壊される細胞を置換することである。通常、幹細胞は、無制限に分裂することができる。分裂後、該幹細胞は、幹細胞として残る、または前駆細胞になる、または末端分化に移り得る。前駆細胞は、少なくとも1つの所与の細胞型の十分に分化した機能細胞を作製することができる細胞である。通常、前駆細胞は、分裂することができる。分裂後、前駆細胞は、前駆細胞のままであり得る、または末端分化に移り得る。一実施形態において、該幹細胞は、肝細胞を形成する。
【0109】
T細胞:細胞性免疫において中心的役割を果たす白血球型、またはリンパ球型。T細胞は、T細胞受容体(TCR)と呼ばれるB細胞およびNK細胞の細胞表面上にある特別受容体の存在により、B細胞およびNK細胞のようなリンパ球の他型と区別される。胸腺は、通常、T細胞発達のための主要臓器であると考えられる。
【0110】
治療用薬剤:被験体に適正に投与された場合、所望の治療効果または予防効果を誘導し得る化合物、小分子または他の組成物(アンチセンス化合物、抗体、プロテアーゼ阻害薬、ホルモン、ケモカインまたはサイトカインなど)。本明細書で用いる場合、「候補薬剤」は、特定の疾患または障害に対する治療用薬剤として機能を果し得るかどうかを調べるためのスクリーニングに選択される化合物である。
【0111】
力価:本発明の開示との関連において、力価は、試料中の特定の病原体量をいう。
【0112】
毒素:本発明の開示との関連において、「毒素」は、任意の有毒な物質、例えば、任意の化学物質系毒素または生物系毒素をいう。
【0113】
導入遺伝子:細胞または生命体のゲノムに導入される外因性核酸配列。
【0114】
トランスジェニック動物:動物の細胞の一部において染色体外要素として存在するか、または動物の生殖細胞系DNAに(すなわち、その細胞のほとんどまたはすべてのゲノム配列に)安定的に組み込まれている、非内因性(異種)核酸配列を有する、通常、哺乳類である、ヒト以外の動物。異種核酸は、当技術分野で周知のような方法に従って、例えば、宿主動物の胚または胚幹細胞の遺伝子操作により、このようなトランスジェニック動物の生殖細胞系に導入される。「導入遺伝子」は、このような異種核酸、例えば、(例えば「ノックイン」トランスジェニック動物の作製用の)発現コンストラクトの形状をした異種核酸、または標的遺伝子内またはその近傍に挿入されて、(例えば「ノックアウト」トランスジェニック動物の作製用の)標的遺伝子の発現低下を生じる異種核酸を意味する。遺伝子の「ノックアウト」とは、標的遺伝子の機能低下を生じる遺伝子の配列の変化を意味し、好ましくは、このような標的遺伝子の発現は検出されないか、または有意ではない。トランスジェニックのノックアウト動物は、標的遺伝子についてヘテロ接合のノックアウト、または標的遺伝子についてホモ接合のノックアウトを含むことができる。「ノックアウト」はまた、条件的なノックアウトも含み、標的遺伝子の変化が、例えば、標的遺伝子の変化を促進する物質に動物を曝露した際、標的遺伝子部位における組換えを促進する酵素(例えばCre−lox系のCre)を導入した際、または標的遺伝子の変化を出生後に指令する他の方法で生じる場合がある。
【0115】
移植する、または移植すること:ある被験体の臓器、組織もしくは細胞を別の被験体に、または同じ被験体の別の領域に移植するプロセスをいう。
【0116】
ウロキナーゼ:また、ウロキナーゼ型プラミノーゲン活性化因子(uPA)と呼ばれる、ウロキナーゼは、セリンプロテアーゼである。ウロキナーゼは、本来、人尿から分離されたが、血流および細胞外マトリックスのような、いくつかの生理学的位置に存在する。主要な生理学的基質は、プラスミノーゲンであり、これはセリンプロテアーゼプラスミンの不活性な酵素前駆体である。プラスミンの活性化は、生理学的環境によって、血栓溶解または細胞外マトリックスの分解に関与するタンパク質分解カスケードを誘発する。本明細書に提供される方法の一実施形態において、ウロキナーゼは、肝細胞注入前、レシピエントマウスに投与される。一部の実施形態において、ウロキナーゼは、ヒトウロキナーゼである。一部の実施形態において、該ヒトウロキナーゼは、分泌型のウロキナーゼである。一部の実施形態において、該ヒトウロキナーゼは、修飾された、非分泌型のウロキナーゼである(米国特許第5,980,886号参照)。
【0117】
ベクター:宿主細胞内でのベクターの複製能力および/または組込み能力を破壊することなく、外来核酸の挿入を可能にする核酸分子。ベクターには、複製起点などの、宿主細胞内での複製を可能にする核酸配列が含まれ得る。また、ベクターには、1種類以上の選択可能なマーカー遺伝子および他の遺伝要素が含まれ得る。組込みベクターは、それ自体が宿主の核酸内に組み込まれ得るものである。発現ベクターは、挿入される遺伝子(1つまたは複数)の転写および翻訳を可能にするのに必要な調節配列を含むベクターである。本明細書に記載の一実施形態において、ベクターは、ウロキナーゼ(ヒトウロキナーゼなど)をコードする配列を含むものである。一実施形態において、ベクターはプラスミドベクターである。別の実施形態では、ベクターは、アデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどのウイルスベクターである。
【0118】
別途説明されない限り、本明細書に使用されるすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される用語と同じ意味を持つ。文脈で特に指定しない限り、単数形、「一つの(a)」「一つの(an)」、および「その(the)」は複数形の指示物を含む。同様に、文脈で特に指定しない限り、「または(or)」という語は、「および(and)」を含むことを意図する。したがって、「AまたはBを含む(comprising A or B)」とは、AまたはB、あるいはAおよびBの両方を含むことを意味する。核酸またはポリペプチドに対して規定したすべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、およびすべての分子量または分子量値は概算値であり、説明のために提供するものであることがさらに理解されるべきである。本発明の実施または検討のために本明細書に記載したものと同様または同等の方法および材料を用いることができるが、適した方法および材料は以下に説明する。本明細書で言及するすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。矛盾する場合には、用語の説明を含め、本明細書が優先するものとする。さらに、材料、方法、および例は、例示的なものに過ぎず、限定を意図したものではない。
【0119】
III. いくつかの実施形態の概論
本明細書において、インビボでの肝細胞のロバストな増大方法を提供する。本明細書ではヒト肝細胞を例示しているが、他の種に由来する肝細胞、例えば、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタならびに非ヒト霊長類(ヒヒ、チンパンジーおよびアカゲザルなど)に由来する肝細胞も増大させることができる。該方法は、単離されたヒト肝細胞を、チロシン異化酵素であるフマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ(Fah)の発現について欠損型である免疫不全マウスに移植する工程であって、ここで、(i)該マウスは、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または(ii)該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与される工程を含む(本明細書において「レシピエントマウス」という)。
【0120】
ヒト肝細胞は、レシピエントマウスにおいて、ヒト肝細胞の増大が可能であるのに充分な期間増大する。増大の厳密な期間は、常套的な実験手法を用いて経験的に決定され得る。一部の実施形態では、ヒト肝細胞を6ヶ月間まで、8ヶ月間まで、10ヶ月間までまたは12ヶ月間まで増大させる。他の実施形態では、ヒト肝細胞を少なくとも約2週間、少なくとも約4週間、少なくとも約6週間、少なくとも約8週間、少なくとも約12週間、少なくとも約16週間、少なくとも約20週間、少なくとも約24週間または少なくとも約28週間増大させる。肝細胞の増大の程度は異なり得る。一部の実施形態では、レシピエントマウスでのヒト肝細胞の増大により、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約150倍、少なくとも約200倍、少なくとも約250倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍または少なくとも約1000倍の増加がもたらされる。
【0121】
一部の実施形態では、免疫不全のFah欠損マウスがFah遺伝子にホモ接合型破壊を含み、該破壊は、機能性FAHタンパク質の発現低下をもたらす。機能性FAHタンパク質の発現低下は完全な発現低下である必要はない。一部の例では、機能性FAHタンパク質の発現低下は、約80%、約90%、約95%または約99%の発現低下である。Fah遺伝子の破壊としては、例えば、Fah遺伝子における挿入、欠失もしくは点変異、または任意のその複数の存在またはその組合せが挙げられる。具体的な例では、該破壊は、Fah遺伝子に欠失を含むものである。
【0122】
一部の実施形態では、免疫不全のFah欠損マウスは、機能性のT細胞、B細胞およびNK細胞が欠乏している。該マウスの免疫不全は、遺伝子改変、免疫抑制、またはその組合せによるものであり得る。
【0123】
遺伝子改変により免疫不全である免疫不全マウスは、該マウスが体液性免疫または細胞性免疫の少なくとも一方の態様において障害されるような任意の遺伝子改変または遺伝子改変の組合せを含むものであり得る。例えば、免疫不全マウスは、例えば、Rag1欠損、Rag2欠損、Il2rg欠損、SCID変異、NOD遺伝子型またはヌード変異から選択される1つ以上の遺伝子改変を有するものであり得る。
【0124】
一部の実施形態では、免疫不全マウスはRag2−/−/Il2rg−/−マウスである。他の実施形態では、免疫不全マウスはRag1−/−/Il2rg−/−マウスである。一部の例では、免疫不全マウスは、NOD/Rag2−/−/Il2rg−/−マウスまたはNOD/Rag1−/−/Il2rg−/−マウスである。一部の実施形態では、Fah欠損マウスは、Fahのホモ接合型欠失を含むものである。他の実施形態では、Fah欠損マウスは、Fahに、該タンパク質の機能および/または産生が実質的に低減されるような1つ以上の点変異を含むものである。したがって、一部の実施形態では、該マウスは、Fah−/−/Rag2−/−/Il2rg−/−マウス、Fah−/−/Rag1−/−/Il2rg−/−マウス、NOD/Fah−/−/Rag2−/−/Il2rg−/−マウス、またはNOD/Fah−/−/Rag1−/−/Il2rg−/−マウスである。具体的な例では、該マウスは、Fah−/−/Rag2−/−/Il2rg−/−(FRG)マウスである。他の実施形態では、該マウスは、Fahpm/Rag2−/−/Il2rg−/−(FpmRG)マウスである。
【0125】
また、該マウスの免疫不全は免疫抑制によるものであってもよい。一般的に、免疫抑制は、マウスに1種類以上の免疫抑制薬を投与し、それにより免疫不全を誘導することによってなされる。免疫抑制薬または免疫抑制薬の組合せは、当該技術分野において知られた、または本明細書に開示した(例えば、用語および方法を参照のこと)任意の免疫抑制薬から選択され得る。本明細書における使用を想定される免疫抑制薬には、免疫機構の1つ以上の態様(体液性の系、細胞性の系または補体系など)の活性または機能を低下させる任意の化合物が包含される。
【0126】
一部の実施形態では、1種類以上の免疫抑制薬は、FK506、シクロスポリンA、フルダラビン、ミコフェノレート、プレドニゾン、ラパマイシンもしくはアザチオプリン、またはその組合せから選択される。
【0127】
免疫抑制薬はマウスに、任意の適当な送達経路を用いて、例えば、経口投与または腹腔内注射によって投与され得る。具体的な例では、免疫抑制薬はFK506である。一部の場合では、FK506は飲料水にて経口投与される。好適な用量は、当該技術分野において知られており、当業者によって決定され得る。例えば、FK506を飲料水にて7.5mg/Lの用量で連続的に与えると、1μg/g/日のおおよその用量がもたらされ得る。しかしながら、他の適当な用量として、約2.0〜約15mg/L(約2.0、約3.0、約4.0、約5.0、約6.0、約7.0、約8.0、約9.0、約10.0、約11.0、約12.0、約13.0、約14.0または約15.0mg/Lなど)が挙げられる。
【0128】
一部の例では、免疫抑制薬はシクロスポリンAである。シクロスポリンAは、例えば、飲料水にて約10〜約100mg/kg/日などの濃度で投与され得る。一部の場合では、シクロスポリンAは、飲料水にて約30〜約70mg/kg/日(約50mg/kg/日など)の濃度で投与される。
【0129】
一部の例では、免疫抑制薬はフルダラビンである。一般的に、フルダラビンは腹腔内注射によって毎日投与される。しかしながら、投与を、より高頻度またはより低頻度(1日2回、1日おき、または毎週など)で行なってもよい。フルダラビンの例示的な用量としては、100mg/kg/日〜約500mg/kg/日が挙げられる。具体的な例では、該用量は約150〜約250mg/kg/日(約200mg/kg/日など)である。
【0130】
他の実施形態では、該マウスに、免疫抑制薬の組合せ、例えば、FK506、シクロスポリンA、フルダラビン、アザチオプリン、ミコフェノレートおよびプレドニゾンのうちの2種類以上が投与される。一部の例では、免疫抑制薬の組合せは、FK506、ミコフェノレートおよびプレドニゾンを含むものである。他の例では、免疫抑制薬の組合せは、シクロスポリンA、ミコフェノレートおよびプレドニゾンを含むものである。他の例では、免疫抑制薬の組合せは、ラパマイシン、ミコフェノレートおよびプレドニゾンを含むものである。他の例では、免疫抑制薬の組合せは、アザチオプリン、FK506およびプレドニゾンを含むものである。他の例では、免疫抑制薬の組合せは、アザチオプリン、シクロスポリンAおよびプレドニゾンを含むものである。他の例では、免疫抑制薬の組合せは、ラパマイシン、アザチオプリンおよびプレドニゾンを含むものである。
【0131】
移植効率を改善するため、免疫不全のFah欠損マウスは、IL−1Rについてさらに欠損型であるか、またはIL−1Rアンタゴニストが投与されるかのいずれかである。マウスがIL−1Rの発現について欠損型である一部の実施形態では、該マウスはIl1r1遺伝子の破壊についてホモ接合型であり、該破壊は、機能性IL−1Rタンパク質の発現低下をもたらす。機能性IL−1Rタンパク質の発現低下は完全な発現低下である必要はない。一部の例では、機能性IL−1Rタンパク質の発現低下は、約80%、約90%、約95%または約99%の発現低下である。一部の実施形態では、該破壊は、Il1r1遺伝子における挿入、欠失または1つ以上の点変異を含む。一部の例では、該マウスは、Fah−/−/Rag2−/−/Il2rg−/−/Il1r1−/−、Fah−/−/Rag1−/−/Il2rg−/−/Il1r1−/−マウス、NOD/Fah−/−/Rag2−/−/Il2rg−/−/Il1r1−/−マウスまたはNOD/Fah−/−/Rag1−/−/Il2rg−/−/Il1r1−/−マウスである。
【0132】
一部の実施形態では、免疫不全のFah欠損マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与される。該マウスに投与されるIL−1Rアンタゴニストは、IL−1Rの活性を阻害する任意の化合物(核酸分子、ポリペプチド、抗体または小分子など)であり得る。一部の実施形態では、IL−1Rアンタゴニストはアナキンラである。他の実施形態では、IL−1Rアンタゴニストは、IL−1RA(本明細書に配列番号18もしくは配列番号20として示すアミノ酸配列を有するIL−1RAなど)、またはそのバリアントもしくは誘導体である。一部の場合では、IL−1Rアンタゴニストは、マウスへの肝細胞の移植と同時またはほぼ同時に送達される。肝細胞の注入後、さらなる用量のIL−1Rアンタゴニストを投与してもよい。
【0133】
IL−1Rアンタゴニストは、単回用量または反復用量で投与され得る。反復用量が使用される場合、投薬スケジュールは種々であり得る。例えば、IL−1Rアンタゴニストは、1時間毎、1日2回、毎日、1日おき、または毎週投与され得る。具体的な例では、IL−1Rアンタゴニストは毎日投与される。毎日の投与は、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間またはそれより長く行なわれ得る。一例では、IL−1Rアンタゴニストは毎日、7日間送達される。別の例では、IL−1Rアンタゴニストは毎日、3日間送達される。
【0134】
IL−1Rアンタゴニストの適切な用量は、使用される化合物の型および投与経路に応じて異なる。一部の実施形態では、IL−1Rアンタゴニストはアナキンラである。具体的な例では、アナキンラの総用量は(単回用量として投与されようと、数回の用量に分けて投与されようと)、約0.2、約0.4、約0.6、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19または約20mgである。一部の例では、アナキンラの総用量は約10〜約20mg(約12〜約16mgなど)である。具体的な例では、アナキンラの用量は約14mgである。他の例では、アナキンラの総用量は約0.2〜約6mg(約0.4〜約2mg、または約1〜約3mgなど)である。
【0135】
IL−1Rアンタゴニストはマウスに、任意の適当な投与経路を用いて投与され得る。一部の実施形態では、IL−1Rアンタゴニストは注射によって投与される。例えば、IL−1Rアンタゴニストは皮下、筋肉内、皮内、腹腔内または静脈内注射によって投与される。
【0136】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、肝細胞の注入の前に、Fah欠損マウスに、該マウスにおける肝臓疾患の発症を抑止する、遅延させる、または予防する薬剤が投与される。該薬剤は、当該技術分野において、肝臓疾患を抑止することが知られている任意の化合物または組成物であり得る。かかる薬剤の一例(on such)は、2−(2−ニトロ−4−トリフルオロ−メチル−ベンゾイル)−1,3シクロヘキサンジオン(NTBC)である。NTBCは、Fah欠損マウスにおける肝臓疾患の発症を調節するために投与される。用量、投薬スケジュールおよび投与方法は、Fah欠損マウスにおける肝臓の機能不全を抑制するために、必要に応じて調整され得る。
【0137】
一部の実施形態では、NTBCは約0.01mg/kg/日〜約2.0mg/kg/日の用量で投与される。一実施形態において、NTBCは約1.0mg/kg/日〜約2.0mg/kg/日(約1.4mg/kg/日〜約1.8mg/kg/日など)の用量で投与される。一例では、NTBCは約1.6mg/kg/日の用量で投与される。一実施形態において、NTBCは約0.01mg/kg/日〜約0.50mg/kg/日の用量で投与される。別の実施形態では、NTBCは約0.05mg/kg/日〜約0.10mg/kg/日(約0.05mg/kg/日、約0.06mg/kg/日、約0.07mg/kg/日、約0.08mg/kg/日、約0.09mg/kg/日または約0.10mg/kg/日など)の用量で投与される。NTBCは、ヒト肝細胞の注入前、および/または肝細胞の注入後に選択された期間、投与され得る。NTBCは、肝細胞の増大期間中、必要に応じて、中止してもよく、再投与してもよい。一実施形態では、Fah欠損マウスにNTBCが、肝細胞の注入前と、肝細胞の注入後の少なくとも約3日間に投与される。別の実施形態では、Fah欠損マウスにNTBCが、肝細胞の注入前と、肝細胞の注入後の少なくとも約6日間に投与される。一態様において、NTBCの用量は、肝細胞の注入後、6日間にわたって徐々に減少させる。
【0138】
NTBCは、限定されないが、飲料水にて、食品にて、または注射によってなどの任意の適当な手段によって投与され得る。一実施形態において、肝細胞の注入前に飲料水にて投与されるNTBCの濃度は、約1〜約8mg/L(約1mg/L、約2mg/L、約3mg/L、約4mg/L、約5mg/L、約6mg/L、約7mg/Lまたは約8mg/Lなど)である。別の実施形態では、肝細胞の注入前に飲料水にて投与されるNTBCの濃度は、約1〜約2mg/L(約1.0mg/L、約1.2mg/L、約1.4mg/L、約1.6mg/L、約1.8mg/Lまたは約2.0mg/Lなど)である。
【0139】
本明細書では、ヒト肝細胞を(注入などによって)免疫不全のFah欠損マウス(レシピエントマウスとも称する)に移植すること、IL−1Rアンタゴニストを該マウスに投与すること、およびヒト肝細胞を増大させることを含む、インビボでのヒト肝細胞の増大方法を開示する。一部の実施形態では、該方法は、さらに、増大されたヒト肝細胞を該マウスから収集することを含む。あるいはまた、ヒト肝細胞の増大方法は、ヒト肝細胞を免疫不全のFah欠損およびIL−1R欠損マウス(この型のマウスも「レシピエントマウス」と称する)に移植すること、および該ヒト肝細胞を増大させることを含む。一部の実施形態では、この方法は、さらに、増大されたヒト肝細胞を該マウスから収集することを含む。
【0140】
一部の実施形態では、レシピエントマウスに移植されるヒト肝細胞は、単離されたヒト肝細胞である。他の実施形態では、該ヒト肝細胞は、肝臓組織の一部として移植される。
【0141】
該肝細胞は、当該技術分野において知られた任意の適当な手段を用いて移植され得る。一実施形態では、ヒト肝細胞は、注入などによって、レシピエントマウスの脾臓に移植される。別の実施形態では、増大されたヒト肝細胞は、レシピエントマウスの肝臓から収集される。
【0142】
また、生体内でヒト肝細胞を増大させる方法を提供し、レシピエントマウスは、該ヒト肝細胞の注入前、ウロキナーゼ遺伝子をコード化するベクターが投与される。一実施形態において、該ウロキナーゼ遺伝子は、ヒトウロキナーゼである。野生型ウロキナーゼは、分泌タンパク質である。したがって、一部の実施形態において、該ヒトウロキナーゼは、分泌型のウロキナーゼである(Nagai et al.,Gene 36:183−188,1985)。ヒトウロキナーゼ(分泌型)の配列は、当技術分野で知られており、GenBank受入番号AH007073(1993年8月3日受入)、D11143(1996年5月9日受入)、A18397(1994年7月21日受入)、BC002788(2003年8月19日受入)、X02760(1993年4月21日受入)、BT007391(2003年5月13日受入)、NM_002658(2004年10月1日受入)、X74039(1994年2月20日受入)に限定されない。
【0143】
一部の実施形態において、該ヒトウロキナーゼは、非分泌型のウロキナーゼである。例えば、Lieberら(Proc.Natl.Acad.Sci.92:6210−6214,1995)は、ウロキナーゼのカルボキシル末端で小胞体保留シグナルをコード化する配列を挿入することにより、またはpre−uPAシグナルペプチド(Strubin et al.,Cell 47:619−625,1986、Schutze et al.,EMBO J.13:1696−1705,1994)をアミノ末端RR保留シグナルと置換することにより作製された非分泌型のウロキナーゼ、ならびに細胞膜IIタンパク質Iip33(Strubin et al.,Cell 47:619−625,1986)からスペーサーペプチドにより引き離された膜貫通アンカーを記載する。非分泌型のウロキナーゼはまた、米国特許第5,980,886号に記載される。
【0144】
ウロキナーゼをコード化するベクターは、マウスへの送達に適している任意の型のベクターであり得、ウロキナーゼ遺伝子を発現することができる。このようなベクターは、ウイルスベクターまたはプラスミドベクターを含む。一実施形態において、該ベクターは、アデノウイルスベクターである。別の実施形態において、該ベクターは、AAVベクターである。ウロキナーゼをコード化するベクターは、当技術分野で知られている任意の適した手段により投与され得る。一実施形態において、該ベクターは、静脈内投与される。一態様において、該ベクターは、後眼窩注射により投与される。ウロキナーゼをコード化するベクターは、該ヒト肝細胞の注入前、いつでも投与され得る。一般に、該ベクターは、ウロキナーゼが十分な時間で発現できるように、投与される。一実施形態において、該ベクターは、肝細胞注入の24〜48時間前に投与される。
【0145】
生体内でヒト肝細胞を増大させる方法を、本明細書にさらに提供し、該レシピエントマウスは、該ヒト肝細胞の注入前、マクロファージが減損している。一実施形態において、該レシピエントマウスに、マクロファージ減損前、ウロキナーゼをコード化するベクターが投与される。別の実施形態において、該レシピエントマウスに、マクロファージ減損後、ウロキナーゼをコード化するベクターが投与される。別の実施形態において、該マクロファージ減損レシピエントマウスに、ウロキナーゼをコード化するベクターが投与されない。マクロファージを、化学物質または抗体を用いるような、当技術分野で周知のようないくつかの方法のうちのいずれか1つを用いて、該レシピエントマウスから減損することができる。例えば、マクロファージを、C12MDP、またはマクロファージ発達、機能、および/または生存力を変える抗体を含む、有害物質のようなアンタゴニストの投与により減損することができる。アンタゴニストの投与は、周知の技法により行われ、欧州特許第1552740号に記載されるようなリポソームの使用を含む。クロドロネート含有リポソームはまた、van Rijnら(Blood 102:2522−2531,2003)により記載されるように、マクロファージを減損するために使用することができる。
【0146】
一部の実施形態では、免疫不全のFah欠損マウスに移植されるヒト肝細胞は、単離されたヒト肝細胞である。一部の実施形態では、ヒト肝細胞は、肝臓組織移植片の一部として移植される。単離されたヒト肝細胞は、いくつかの異なる供給源の任意の1つから得られたものであり得る。一実施形態では、ヒト肝細胞は、臓器ドナーの肝臓から単離されたものである。別の実施形態では、ヒト肝細胞は外科的切除により単離されたものである。別の実施形態では、ヒト肝細胞は、幹細胞(胚性幹細胞など)、iPS細胞、間葉由来幹細胞、脂肪組織由来幹細胞、成人の多能性(multipotent)始原細胞、非制限体性幹細胞、または組織特異的肝臓幹細胞(これは、肝臓自体、胆嚢、腸もしくは膵臓にみられ得る)から誘導されたものである。別の実施形態では、ヒト肝細胞は、単球または羊膜細胞から誘導されたものであり、したがって、幹細胞または始原細胞をインビトロで得て、肝細胞を作製する。別の実施形態では、ヒト肝細胞が注入前に低温保存されたものである。
【0147】
さらに、本明細書では、Fah欠損レシピエントマウスにおけるヒト肝細胞の累代移植方法を提供する。該方法は、増大したヒト肝細胞を第1のレシピエントマウスから収集すること、および該肝細胞を、二次、三次、四次またはそれ以上の高次のレシピエントマウス(Overturfら,Am.J.Pathol.151:1078−9107,1997)において、さらに増大させることを含む。ヒト肝細胞はマウスから、いくつかの手法の任意の1つを用いて収集され得る。例えば、肝細胞は、以下の実施例に記載のように、マウスの肝臓を灌流した後、静かに細分することにより収集され得る。さらに、肝細胞は、他の細胞型、組織および/または残屑から、よく知られた方法を用いて、例えば、ヒト細胞またはヒト肝細胞を特異的に認識する抗体を用いることによって分離され得る。かかる抗体としては、限定されないが、クラスI主要組織適合性抗原に特異的に結合する抗体、例えば、抗ヒトHLA−A、B、C(Markusら Cell Transplantation 6:455−462,1997)が挙げられる。肝細胞に結合した抗体は、次いで、パニング(これは、固相マトリックスに結合させたモノクローナル抗体を利用する)、蛍光標示式細胞分取(FACS)、磁性ビーズによる分離などによって分離され得る。肝細胞の収集の代替の方法は、当該技術分野においてよく知られている。
【0148】
一部の実施形態では、本明細書において提供する方法は、さらに、該マウスから生物学的試料を収集することを含む。例えば、生物学的試料は生物学的流体、細胞または組織試料であり得る。一部の例では、生物学的試料は、血液または尿試料などの液状試料である。一部の場合では、該方法は、増大させたヒト肝細胞を、レシピエントマウスから収集すること、および該マウスから、さらに血液または尿試料などの生物学的試料を収集することを含む。
【0149】
また、ヒト肝臓疾患の処置に有効な薬剤を選択するための方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、(i)ヒト肝細胞を移植した免疫不全のFah欠損マウスに候補薬剤を投与する工程(ここで、該マウスは、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与される);および(ii)肝臓疾患に対する該候補薬剤の効果を評価する工程を含む。該肝臓疾患の1つ以上の徴候または症状の改善は、該候補薬剤が該肝臓疾患の処置に有効であることを示す。一部の実施形態では、肝臓疾患は、肝臓感染症、線維症、肝硬変または肝臓癌(HCCなど)である。
【0150】
また、ヒト肝臓病原体による感染の処置に有効な薬剤を選択するための方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、(i)ヒト肝細胞を移植した免疫不全のFah欠損マウスに候補薬剤を投与する工程(ここで、該マウスは、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与され、免疫不全のFah欠損マウスの移植ヒト肝細胞は該肝臓病原体に感染させたものである);および(ii)該肝臓感染症に対する候補薬剤の効果を評価する工程を含む。該候補薬剤の投与前の該Fah欠損マウスの感染量と比べた該肝臓病原体の感染量の減少は、該候補薬剤が該肝臓病原体による感染の処置に有効であることを示す。
【0151】
一部の実施形態では、感染量を、該マウスから採取した試料中の病原体の力価を測定することにより決定する。一部の実施形態では、感染量を、該マウスから採取した試料中の病原体特異的抗原を測定することにより決定する。一部の実施形態では、感染量を、該マウスから採取した試料中の病原体特異的核酸分子を測定することにより決定する。一部の実施形態では、肝臓病原体が、HBVまたはHCVなどの肝指向性ウイルスである。
【0152】
さらに、肝硬変の処置に有効な薬剤を選択するための方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、(i)ヒト肝細胞を移植した免疫不全のFah欠損マウスに候補薬剤を投与する工程(ここで、該マウスは、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与され、該免疫不全のFah欠損マウスには、該マウスにおいて肝硬変の発生を誘発する化合物が投与されている);および(ii)該免疫不全のFah欠損マウスにおいて、肝硬変の少なくとも1種類の診断用マーカーに対する該候補薬剤の効果を評価する工程(ここで、該肝硬変の少なくとも1種類の診断用マーカーは、AST、ALT、ビリルビン、アルカリホスファターゼおよびアルブミンから選択される)を含む。該候補薬剤の投与前の該Fah欠損マウスと比べての、該Fah欠損マウスにおけるAST、ALT、ビリルビンもしくはアルカリホスファターゼの減少またはアルブミンの増加は、該候補薬剤が肝硬変の処置に有効であることを示す。
【0153】
また、肝細胞癌腫(HCC)の処置に有効な薬剤を選択するための方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、(i)ヒト肝細胞を移植した免疫不全のFah欠損マウスに候補薬剤を投与する工程(ここで、該マウスは、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与され、該免疫不全のFah欠損マウスには、該マウスにおいてHCCの発生を誘発する化合物が投与されているか、または悪性肝細胞が移植されている);および(ii)免疫不全のFah欠損マウスにおいてHCCに対する候補薬剤の効果を評価する工程を含む。該候補薬剤の投与前の該マウスと比べての、該マウスの腫瘍成長または腫瘍体積の減少は、該候補薬剤がHCCの処置に有効であることを示す。
【0154】
さらに、ヒト肝細胞に対する外因性因子のインビボでの効果の評価方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、(i)ヒト肝細胞を移植した免疫不全のFah欠損マウスに外因性因子を投与する工程(ここで、該マウスは、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与される);および(ii)該免疫不全のFah欠損マウスにおいて、肝臓機能の少なくとも1種類のマーカーを測定する工程(ここで、該肝臓機能の少なくとも1種類のマーカーは、AST、ALT、ビリルビン、アルカリホスファターゼおよびアルブミンから選択される)を含む。外因性因子の投与前の該マウスと比べての、該マウスにおけるAST、ALT、ビリルビンもしくはアルカリホスファターゼの増加またはアルブミンの減少は、該外因性因子が毒性であることを示す。一部の実施形態では、外因性因子は、既知の毒素であるかまたは毒素である疑いがある物質である。
【0155】
IV. インターロイキン−1受容体(IL−1R)アンタゴニスト
本明細書において、IL−1Rアンタゴニストの投与により、Fahの機能欠失を有する免疫不全のマウスでのヒト肝細胞の移植が有意に増進することを開示する。したがって、本明細書において、免疫不全/Fah欠損マウスにおけるヒト肝細胞の移植および増大のための方法であって、一部の実施形態では、該マウスにIL−1Rアンタゴニストを投与する工程を含む方法を提供する。IL−1Rアンタゴニストとしての機能を果す任意の化合物(核酸分子、ポリペプチド、抗体または小分子など)が本明細書における使用を想定される。また、IL−1Rについてさらに欠損型である免疫不全のFah欠損マウスの使用も想定される。
【0156】
本明細書で用いる場合、用語「IL−1受容体拮抗薬」は、IL−1RまたはIL−1Rアクセサリータンパク質(IL−1RAP)に結合し、IL−1Rによって媒介される活性化に、例えば、IL−1RとIL−1RAPの相互作用またはIL−1とIL−1Rの相互作用を阻害または抑制することにより干渉する任意の分子をいう。一部の実施形態では、IL−1Rアンタゴニストはアナキンラである。他の実施形態では、IL−1RアンタゴニストはIL−1RA(それぞれ、本明細書に配列番号18および20として示したヒトもしくはマウスのIL−1RAなど)、またはその機能性バリアント(IL−1RAの保存的(conservative)バリアントなど)である。他の実施形態では、IL−1Rアンタゴニストは、IL−1Rに特異的な抗体(I型IL−1Rに特異的な抗体など)、IL−1RAPに特異的な抗体、I型IL−1Rに結合するペプチド、またはIL−1RAPに結合するペプチドである。
【0157】
IL−1Rアンタゴニスト(IL−1RAならびにそのバリアントおよび誘導体を含む)は、これまでに報告されている(例えば、PCT公開公報番号WO91/08285;WO91/17184;WO92/16221;WO93/21946;WO94/06457;WO94/21275;WO94/21235;WO94/20517;WO96/22793;WO97/28828;および WO99/36541;米国特許第5,075,222号および同第6,599,873号;同第6,268,142号;同第6,168,791号;同第6,159,460号;同第6,090,775号;同第6,063,600号;同第6,036,978号;同第6,054,559号;同第5,922,573号;同第5,863,769号;同第5,858,355号;同第5,863,769号;同第5,508,262号;同第6,013,253号;および同第6,399,573号;ならびに米国特許出願公開公報第2004/0076991号および同第2005/0282752号を参照のこと)。
【0158】
本発明の開示の解釈上、用語「IL−1RA」は、IL−1RAのアミノ酸が欠失、挿入または置換されたIL−1RAの修飾形態を含む。当業者には、欠失、挿入および置換の多くの組合せが、IL−1RAのアミノ酸配列(本明細書に配列番号18および配列番号20で示したアミノ酸配列など)において行なわれ得ることが認識されようが、得られる分子は生物学的に活性である(例えば、IL−1Rを阻害する能力を有する)ものとする。
【0159】
また、用語「IL−1受容体拮抗薬」は、IL−1RAを含む融合タンパク質も包含する。例示的な融合タンパク質としては、Fc−IL−1RAおよび当該技術分野において報告された他の融合分子(例えば、米国特許出願公開公報第2007/0248597号および米国特許第6,294,170号を参照のこと)が挙げられる。
【0160】
一部の実施形態では、IL−1Rアンタゴニストは、I型IL−1R(IL−1RI)に特異的な抗体である。IL−1RI抗体の例は、当該技術分野において報告されており(例えば、米国特許出願公開公報第2004/0097712号を参照のこと)、さまざまな供給元から市販されている。さらに、IL−1RI抗体は、よく知られた方法に従って作製することができる。本明細書で用いる場合、「抗体」は、完全な免疫グロブリン分子または抗体断片(Fab断片、Fab’断片、F(ab)’断片など)、一本鎖Fvタンパク質(scFv)、およびジスルフィド安定化Fvタンパク質(dsFv)をいう。抗体は、例えば、キメラ抗体、マウス抗体またはヒト化抗体であってもよい。ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方が、開示した方法での使用を想定される。
【0161】
一部の実施形態では、IL−1Rアンタゴニストをコードする核酸分子がレシピエントマウスに送達される。一部の実施形態では、該核酸分子はアナキンラをコードするものである。他の実施形態では、該核酸分子はIL−1RAまたはIL−1RAのバリアントもしくは誘導体をコードするものである。具体的な例では、該核酸分子は配列番号17または配列番号19を含むものである。一部の場合では、該核酸分子は、プラスミドまたはウイルスベクターなどのベクターを含むものである。異種核酸配列の送達に好適なプラスミドおよびウイルスベクターは、当該技術分野においてよく知られており、本明細書において後述する(後述するウロキナーゼの送達用ベクターなど)。
【0162】
V. ヒト肝細胞の増大のための遺伝子組み換えマウス
いくつかのグループは、齧歯動物において、一次ヒト肝細胞を移植および増大しようとした(米国特許第6,509,514号、PCT公開第WO 01/07338号、米国公開第2005−0255591号)。Dandriら(Hepatology 33:981−988,2001)が、ヒト肝細胞を用いてマウス肝臓の再増殖の成功を初めて報告した。その後、他のグループは、マウスにおいて、成功を収めたヒト肝臓細胞の移植を報告している。これらの研究のすべてにおいて、使用された動物は、アルブミンプロモータの転写制御下で、ウロキナーゼプラミノーゲン活性化因子(uPA)を発現する、トランスジェニック動物であった(Sandgren et al.Cell 66:245−256,1991)。uPAの過剰発現は、代謝破壊を引き起こし、移植されたヒト肝細胞に影響を及ぼすことなく、マウス肝細胞の細胞死をもたらし、それは導入遺伝子を発現しない。該alb−uPA導入遺伝子は、様々な免疫不全のバックグラウンドと交錯し、ヒト細胞の拒絶を阻止した(Tateno et al.Am.J.Pathol.165:901−912,2004、Katoh et al.J.Pharm.Sci.96:428−437,2007、Turrini et al.Transplant.Proc.38:1181−1184,2006)。
【0163】
最大90%の移植レベルが、これらのモデルにおいて報告されているが、該系は、広範な使用を阻止しているいくつかの主要な不利点がある。第1に、該alb−uPA導入遺伝子は、若年期に、不活性化または喪失する。この理由のため、非常に初期(14日齢)にヒト細胞を移植し、導入遺伝子がホモ接合体であるマウスを使用することが必須である。この狭い移植の時間窓が、モデルの柔軟性を著しく制限する。第2に、該導入遺伝子の自発的不活性化は、導入遺伝子陰性の健康なマウス肝細胞のプールを作成する。これらの復帰突然変異体マウス肝細胞は、再増殖中、ヒト細胞と効率的に競合する。したがって、該ヒト細胞を連続移植すると同時に二次受容者を再増殖することは不可能である。第3に、肝臓疾患は、このモデルにおいて、非常に早発型であり、ひいては、トランスジェニックマウスの生存力を低下させる。したがって、十分な数の実験動物を繁殖することが困難である。さらに、該トランスジェニックマウスには、手術中、死亡率を増加する出血傾向がある。最後に、alb−uPAトランスジェニック動物は、一旦ヒト細胞を用いる再増殖が50%を超えると、腎疾患を発症する。これは、腎臓上皮上のヒト補体によるためであると考えられる。ヒト移植の非常に高いレベルを得るために、抗相補性プロテアーゼ阻害剤で移植されたマウスを処理することが必要である(Tateno et al.Am.J.Pathol.165:901−912,2004)。これらの多くの限定のため、ヒト肝細胞を増大させるためのさらに堅牢なシステムが非常に望ましい。
【0164】
遺伝子欠失の独自の組み合わせを有する遺伝子組み換えマウスを用いて、生体内でヒト肝細胞を増大させるための高効率な方法を、本明細書に記載する。マウス肝臓においてヒト肝細胞の成功を収めた移植および増大は、ある程度の肝機能障害がある免疫不全マウスを必要とする。マウス肝臓は、様々な異なる型の免疫不全マウスにおいて、ヒト肝細胞を用いて再増殖し、RAG−2ノックアウトまたはSCIDマウスを含み、これらの両方は、B細胞およびT細胞を欠如する(米国特許第6,509,514号、PCT公開第WO 01/07338号、米国公開第2005−0255591号)。肝機能障害に達するために、免疫不全マウスを、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)トランスジェニックマウスと交配させた。マウス肝臓において、uPAの発現は、マウス肝細胞の成長の不利点を生じ、移植したヒト肝細胞の増大を促進する(PCT公開第WO 01/07338号)。該uPA導入遺伝子の限界を避けるために、Fah欠損マウスは、ヒト肝細胞の増大を可能にさせる能力について分析された。FAHは、チロシン異化の最後のステップを触媒する代謝酵素である。Fah遺伝子のホモ接合体欠失を有するマウスは、肝mRNA発現の変化および重度の肝機能障害を示す(Grompe et al.Genes Dev.7:2298−2307,1993)。
【0165】
Fah−/−/Rag2−/−/Il2rg−/−(FRG)三重変異体マウスは、T細胞、B細胞、およびNK細胞を欠如することを、本明細書に開示する。Rag2−/−/Il2rg−/−マウスは、当技術分野で知られている(Traggiai et al.Science 304:104−107,2004、Gorantla et al.J.Virol.81:2700−2712,2007)。
【0166】
以下の実施例に記載されるように、ヒト肝細胞の移植および増大は、驚くべきことに、FRGマウスにおいて、高効率である。例えば、FRGマウスに、100万の単離されたヒト肝細胞を注入できる。10%の効率を仮定すると、100,000のヒト肝細胞が、レシピエントマウスに移植される。増大後のFRGマウスからの平均収量は、その後、約8,000万から約1億2,000万のヒト肝細胞であり、ヒト肝細胞の800倍から1,200倍の増加と同じである。FRGマウスはまた、ヒト肝細胞の連続移植にも使用することができる。連続移植は、多重マウスを含み得、マウスあたりヒト肝細胞の少なくとも約1,000倍の増大をもたらし得る。
【0167】
Fah欠損を含む任意の免疫不全マウスは、本明細書に記載される諸方法に適している。一実施形態において、該マウスは、Fahが欠損しているRag2−/−/Il2rg−/−マウスでもある。別の実施形態では、該マウスはRag1−/−/Il2rg−/−マウスである。他の実施形態では、該マウスは、NOD/Rag2−/−/Il2rg−/−マウスまたはNOD/Rag1−/−/Il2rg−/−マウスである。一部の特定の遺伝子改変の組合せを本明細書に記載しているが、免疫不全をもたらす遺伝子改変の他の組合せも、本明細書において想定される。例えば、他の遺伝子改変としては、SCID変異、ヌード変異およびNOD遺伝子型が挙げられる。
【0168】
該Fah欠損マウスは、例えば、Fahのホモ接合体欠失、またはFahの1つもしくは複数の点変異を含むことができる。Fah欠損(点変異またはホモ接合体欠失等による)は、Fah mRNA発現および/または機能的FAHタンパク質の実質的減少、またはその欠損をもたらす。該FRGマウスに加えて、Fah遺伝子において、点変異がホモ抱合体である免疫不全マウス(Rag2−/−/Il2rg−/−)(本明細書では、FpmRGマウスと称される)はまた、生体内でヒト肝細胞の移植および増大に適したマウスでもあることを、本明細書に記載する。また、本明細書において、免疫不全のFah欠損およびIL−1R欠損マウスの使用も想定される。IL−1R欠損マウスは、これまでに報告されており(例えば、Normanら,Ann.Surg.223(2):163−169,1996;Glaccumら,J.Immunol.159:3364−3371,1997を参照のこと)、および、The Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から市販されている(例えば、B6;129S1−Il1r1tm1Roml/JおよびB6.129S7−Il1r1tm1Imx/J系統)。
【0169】
VI. ヒト肝細胞の単離および送達
インビボでのヒト肝細胞の増大にFah欠損マウスを使用することの顕著な利点は、該マウスに、さまざまな供給源に由来するヒト肝細胞を移植することができることである。任意の適当な供給源のヒト肝細胞または肝細胞の前駆細胞/始原細胞が、開示した方法においてFah欠損マウスへの移植のために使用され得る。下述の実施例に記載されるように、ヒト肝細胞は、死体ドナーまたは肝臓切除術から採取し得る、または市販の源から得ることができる。さらに、本明細書に示されるように、FRGマウスに、すべての年齢のドナーからのヒト肝細胞、または凍結保存された肝細胞を、うまく移植することができる。多くの場合、ヒト肝細胞の単離と移植との間の遅延(一般に、1〜2日)があり、これは該肝細胞の生存能力の低下をもたらし得る。しかしながら、該FRGマウス系は、限定された生存能力がある肝細胞を移植した場合でさえ、ヒト肝細胞を増大させることができる。
【0170】
ヒト肝細胞を単離する方法は、当技術分野で周知である。例えば、臓器ドナーまたは肝臓切除術からのヒト肝細胞を単離する諸方法が、PCT公開第WO 2004/009766号および第WO 2005/028640号、ならびに米国特許第6,995,299号および第6,509,514号に記載される。肝細胞は、経皮的に、または開腹手術を介して採取された肝生検から得ることができる。FRGマウスのような、受容動物への移植手術のためのヒト肝細胞は、当技術分野で知られている任意の従来の方法によりヒト肝臓組織から単離される。肝臓組織は、機械的に、または酵素的に分離し、単一細胞の懸濁液に供給することができる、さもなければ完全なヒト肝組織のフラグメントを使用してもよい。例えば、該肝細胞は、所定のコラゲナーゼ潅流によりドナー組織から摘出し(Ryan et al.Meth.Cell Biol.13:29,1976)、次いで、低速遠心分離を行う。肝細胞は、その後、ステンレス製のメッシュで濾過することにより精製し、次いで、密度勾配遠心分離法を行うことができる。あるいは、肝細胞を濃縮するための他の諸方法、例えば、蛍光活性化細胞分類、またはパンニング、または磁気ビーズ分離、または遠心力場内の水簸、または当技術分野で周知のような任意の他の方法を使用することができる。類似の肝細胞単離法が、レシピエントマウスの肝臓から増大されたヒト肝細胞を採取するために使用することができる。
【0171】
あるいは、ヒト肝細胞は、Guguen−Guillouzoら(Cell Biol.Int.Rep.6:625−628,1982)により記載される技法を用いて調製され得る。簡潔に述べると、肝臓またはその一部は、単離され、カニューレは、門脈または門脈管に導入される。該肝臓組織は、その後、37℃で、1分間あたり30から70ミリリットルの流量で、無カルシウム緩衝液、次いで、HEPES緩衝液中で、塩化カルシウム溶液(約0.075%塩化カルシウム等)のコラゲナーゼ(約0.025%コラゲナーゼ)を含有する酵素溶液で、該カニューレを介して潅流される。潅流された該肝臓組織は、小部分(約1立法ミリメートル等)に細分化される。該酵素消化を、上記に記載されるように、同一の緩衝液で、37℃で約10〜20分間、徐々に撹拌しながら行い、細胞懸濁液を生成する。放出した肝細胞は、該細胞懸濁液を60〜80マイクロメーターのナイロン製のメッシュで濾過することにより採取する。採取した肝細胞は、その後、pH7.0で、低温HEPES緩衝液中で洗浄し、低速遠心分離を用いて、コラゲナーゼおよび細胞残屑を除去することができる。非実質細胞は、メトリザミド勾配遠心法により除去してもよい(米国特許第6,995,299号参照)。
【0172】
ヒト肝細胞は、新鮮組織(死亡してから数時間内に得られた組織等)、または新鮮冷凍された組織(約0℃以下で、冷凍保存された新鮮組織等)から得ることができる。好ましくは、該ヒト組織は、検出可能な病原体がなく、形態学および組織学において正常であり、原則的に無病である。移植に使用される肝細胞は、最近、例えば、数時間以内に単離され得る、または細胞が適切な保存培地で保存される場合、より長期間後でも移植することができる。下述の実施例に記載されるこのような一培地は、VIASPAN(登録商標)(腹腔内臓器の保存用の汎用大動脈洗浄および保冷液、ウィスコンシン大学液、またはUWとも称される)である。肝細胞はまた、移植手術前に、凍結保存することができる。肝細胞を凍結保存する諸方法は、当技術分野で周知であり、米国特許第6,136,525号に記載される。
【0173】
臓器提供者または肝臓切除術からヒト肝細胞を得るステップに加えて、移植のために使用される該細胞は、ヒト幹細胞または、受容動物への移植手術後、増大可能なヒト肝細胞に発達または分化する肝細胞前駆細胞であり得る。ES細胞の性質を有するヒト細胞は、内胚盤胞細胞塊(Thomson et al.,Science 282:1145−1147,1998)、および成長中の生殖細胞(Shamblott et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:13726−13731,1998)から単離され、ヒト胚幹細胞を産生している(米国特許第6,200,806号参照)。米国特許第6,200,806号に開示されるように、ES細胞は、ヒトおよび非ヒト霊長類から産生することができる。また、ヒトおよび非ヒト霊長類細胞から誘導されたiPSも得られ得る(例えば、Yuら,Science 318(5858):1917−1920,2007;Takahashiら,Cell 131(5):861−872,2007;Liuら,Cell Stem Cell 3(6):587−590,2008を参照のこと)。通常、霊長類ES細胞は、ES細胞培地の存在下で、マウス胎児線維芽細胞の融合層上に単離される。ES培地は、通常、20%ウシ胎仔血清(FBS;Hyclone)、0.1mM β−メルカプトエタノール(Sigma)、1%非必須アミノ酸液(Gibco BRL)を有する、80%ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;ピルビン酸塩なし、高グルコース、Gibco BRL)からなる。ES細胞の際立った特徴は、成人に存在する前駆「多分化能性」幹細胞と比較して、培養中に無制限に分化されない状態を維持するES細胞の能力、およびES細胞があらゆる異なる細胞型に発達する必要がある潜在能力を含む。ヒトES(hES)は、特異的なモノクローナル抗体により認識される糖脂質細胞表面抗原であるSSEA−4、を発現する(例えば、Amit et al.,Devel.Biol.227:271−278,2000を参照)。
【0174】
ヒト間葉幹細胞(hMSC)に由来したヒト肝細胞もまた、本明細書に記載される諸方法に使用することができる。骨髄由来hMSCの肝性因子への順次暴露は、肝細胞の性質を有する細胞への、幹細胞の分化をもたらす(Snykers et al.BMC Dev Biol.7:24,2007、Aurich et al.Gut.56(3):405−15,2007)。骨髄由来間充織幹細胞と脂肪組織由来幹細胞(ADSC)の肝細胞の分化もまた、記載されている(Talens−Visconti et al.World J Gastroenterol.12(36):5834−45,2006参照)。ヒト肝細胞はまた、単球から作製することができる。Ruhnkeら(Transplantation 79(9):1097−103,2005)は、最終分化した末梢血単球からの肝細胞様(NeoHep)細胞の生成を記載する。該NeoHep細胞は、形態、肝細胞マーカーの発現、様々な分泌および代謝機能、ならびに薬物解毒活性に関して主要なヒト肝細胞と類似している。さらに、羊膜細胞に由来したヒト肝細胞もまた、本明細書に記載される諸方法に使用することができる。
【0175】
ヒトES細胞株は、存在し、本明細書に開示される諸方法に使用することができる。ヒトES細胞はまた、体外受精した(IVF)胚からの着床前の胚から採取し得る。未使用のヒトIVFから産生した胚は、該胚が14日齢未満である場合、シンガポールおよび英国のような多くの国で許可される。高品質の胚のみが、ES単離に適している。増大された胚盤胞への1つの細胞ヒト胚を培養するための現在の明確な培地条件が、記載されている(Bongso et al.,Hum Reprod.4:706−713,1989参照)。ヒト卵管細胞とのヒト胚の共培養は、高品質の胚盤胞の産生をもたらす。細胞共培養、または改善された合成培地において成長したIVF由来の増大されたヒト胚盤胞は、ヒトES細胞の単離を可能にする(米国特許第6,200,806号参照)。
【0176】
一実施形態において、ヒト肝細胞は、脾臓への注入等の、移植手術によりレシピエントマウスに送達される。肝細胞は、肝臓柔組織または門脈への注入等の、他の手段により送達され得る。レシピエントマウスに注入されたヒト肝細胞の数は、異なり得る。一実施形態において、約10〜約10のヒト肝細胞が、注入される。別の実施形態において、約5×10〜約5×10のヒト肝細胞が、注入される。例示的な一実施形態において、約10のヒト肝細胞が、注入される。
【0177】
VII. Fah欠損マウスおよびその使用
本明細書に開示したFah欠損マウスは、さまざまな研究目的および治療目的に使用され得る。例えば、免疫不全のFah欠損マウスにおいて増大させた肝細胞(ヒト肝細胞など)は、薬物代謝および毒性ならびに肝臓病原体の感染の試験に使用され得る。本明細書ではヒト肝細胞を例示しているが、他の種、例えば、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマまたは非ヒト霊長類(ヒヒ、チンパンジーおよびアカゲザルなど)に由来する肝細胞も、Fah欠損マウスにおいて増大させることができる。Fah欠損マウスにおいて増大させたヒト肝細胞は、ヒト肝臓を再構成する治療を必要とする被験体において、ヒト肝臓を再構成するために使用され得る。また、ヒト肝細胞での再構成が行なわれたFah欠損マウスは、HCC、肝硬変および肝臓感染症などの肝臓疾患の動物モデルとして供され得る。Fah欠損マウス、およびFah欠損マウスにおいて増大させた肝細胞の例示的な使用は、以下にさらに論考する。
【0178】
A. ヒト肝細胞の増大およびその医学的使用
本発明の開示では、ヒト肝細胞の供給源としてのレシピエントマウスにおいて増大し、該マウスから収集したヒト肝細胞の、肝臓再構成治療を必要とする被験体における肝臓再構成のための使用を想定する。肝細胞の導入による患者における肝臓組織の再構成は、肝臓移植に先行する一時的処置、または孤立性代謝欠陥を有する患者に対する最終的処置のいずれかとして、急性肝不全を有する患者に対する潜在的な治療選択肢である(Bumgardnerら Transplantation 65:53−61,1998)。肝細胞の再構成は、例えば、遺伝子療法のために遺伝子操作された肝細胞を導入するため、あるいは疾患、物理的もしくは化学的損傷、または悪性腫瘍の結果としての肝細胞の減損を補うため(米国特許第6,995,299号)に使用され得る。また、増大させたヒト肝細胞は、人工肝臓補助デバイスを装着するために使用され得る。Fah欠損マウスからのヒト肝細胞の収集方法、ならびに(as well)増大させたヒト肝細胞の医学的使用は、以下にさらに詳細に記載する。
【0179】
1.Fah欠損マウスからのヒト肝細胞の収集
ヒト肝細胞は、当技術分野で知られているいくつかの技法のうちのいずれかを用いて、レシピエントマウスから採取することができる。例えば、マウスは、麻酔することができ、門脈または下大静脈に、カテーテルを用いてカニューレを挿入した。該肝臓は、その後、適切な緩衝液(0.5mM EGTAおよび10mM HEPESが追加された無カルシウムおよび無マグネシウムEBSS)で潅流し、次いで、該肝臓にコラゲナーゼ処理(例えば、0.1mg/ml コラゲナーゼXIおよび0.05mg/ml DNase Iが追加されたEBSSからなる溶液を用いて)を行うことができる。該肝臓は、徐々に細分化し、ナイロン製のメッシュで濾過(70μmと40μmのナイロン製のメッシュでの連続等)し、次いで、遠心分離し、該細胞の洗浄を行った。
【0180】
レシピエントマウスから採取したヒト肝細胞は、当技術分野で周知の任意の技法を用いて、非ヒト細胞または他の混入物質(組織または細胞残屑等)から分離することができる。例えば、このような方法は、ヒト肝細胞に選択的に結合する抗体を用いるステップを含む。このような抗体としては、抗ヒトHLA−A、B、C(Markus et al.Cell Transplantation 6:455−462,1997)またはCD46のような、クラスI主要組織適合性抗原に特異的に結合する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。ヒト細胞またはヒト肝細胞に対して特異的な抗体は、FACS、またはパンニング、または磁気ビーズ分離を含む、様々な異なる技法に使用することができる。あるいは、マウス細胞に選択的に結合する抗体は、混入マウス細胞を除くのに使用され得、それによりヒト肝細胞が豊富になる。FACSは、他のさらに高度な検出レベルのうちで、複数の色チャネル、ローアングルかつ鈍角の光散乱検出チャネル、およびインピーダンスチャネルを利用して、抗体が結合した細胞を分離または分類する(米国特許第5,061,620号参照)。磁気分離は、1)ヒト特異抗体と接合する、または2)ヒト特異抗体と結合することができる検出抗体と接合する、または3)ビオチン化抗体と結合することができるアビジンと接合する、常磁性粒子の使用を含む。パンニングは、アガロースビーズ、またはポリスチレンビーズ、または中空糸膜、またはプラスチック製のペトリ皿のような、固体マトリックスに結合したモノクローナル抗体を含む。該抗体で結合した細胞は、試料から固体支持体を単に物理的に分離することにより試料から単離させることができる。
【0181】
Fah欠損マウスから収集した肝細胞は、例えば、後の使用のために低温保存され得るか、または配送およびさらなる使用のために組織培養状態にプレーティングされ得る。
【0182】
2. ヒト肝臓再構成
Fah欠損マウスにより、肝臓移植の代替法または補助法として、ヒト肝臓を再構成するために使用され得るヒト肝細胞を増殖させるための系がもたらされる。現在、肝臓疾患に苦しんでいる患者は、移植に適した臓器が入手可能になるまで長期間、待たなければならないことがあり得る。移植後、患者は、ドナーの肝臓の拒絶を回避するために一生涯、免疫抑制剤での処置を受ける必要がある。患者自身の細胞を増殖させる方法では、バイアブルなままであるために免疫抑制を必要としない機能性肝臓組織のソースが提供され得る。したがって、本明細書に開示した免疫不全のFah欠損マウスは、肝臓疾患および/または肝不全を有する被験体の肝臓を、Fah欠損マウスにおいて増大させた該被験体自身の肝細胞(例えば、患者の特定の幹細胞から作製されたもの)、またはドナー由来の肝細胞を用いて再構成するために使用され得る。
【0183】
肝細胞の導入(「肝細胞の移植」とも称する)による患者の肝臓組織の再構成は、肝臓移植に先行する一時的処置、または孤立性代謝欠陥を有する患者に対する最終的処置のいずれかとして、急性肝不全を有する患者に対する潜在的な治療選択肢である(Bumgardnerら,Transplantation 65:53−61,1998)。治療的肝臓再構成を行なうための大きな障壁は、移植された肝細胞に対する宿主による免疫拒絶であり、これは(宿主細胞とドナー細胞が遺伝的および表現型的に異なる場合)、「同種移植片拒絶」と称される現象である。免疫抑制剤は、同種移植片拒絶の抑制において、一部の場合でのみ好成績である(Javreguiら,Cell Transplantation 5:353−367,1996;Makowkaら,Transplantation 42:537−541,1986)。Fah欠損マウスにおいて増大させたヒト肝細胞はまた、遺伝子療法適用用途にも使用され得る。最も広い意味で、かかる肝細胞はヒト宿主に、遺伝的欠陥を修正するために移植される。継代された肝細胞は、移植片のレシピエントになる同じ個体からもともと由来するものである必要はないが、そうであってもよい。
【0184】
一部の実施形態では、Fah欠損マウスにおいて増大させたヒト肝細胞は、肝臓移植の前処置法または代替法として、被験体の肝臓組織を再構成するために使用され得る。非限定的な一例として、例えばアルコール依存症の結果として進行性の肝臓変性に苦しんでいる被験体が肝細胞のドナーとして供され得、次いで、該細胞がFah欠損マウスにおいて増大する。肝細胞の数は、被験体から最初に得られ、Fah欠損マウスに移植される数と比べて増大する。増大後、ヒト肝細胞は、Fah欠損マウスから単離され得、被験体の肝臓機能を再構成するために使用され得る。Fah欠損マウスにおける肝細胞の増大は、肝細胞の数を増加させるためだけでなく、感染性疾患または悪性疾患に罹患している肝細胞を選択的に除去するためにも使用され得る。具体的には、被験体がウイルス性肝炎に苦しんでいる被験体であり得、この場合、全部ではないが一部の肝細胞が感染しており、感染した肝細胞は、細胞表面内または該表面上のウイルス抗原の存在によって特定され得る。かかる場合では、肝細胞が被験体から収集され得、非感染細胞が1匹以上のFah欠損マウスにおける増大のために選択され得る(例えば、FACSによって)。一方、患者の感染を解消するために侵襲的な措置が取られることがある。処置後、被験体の肝臓組織は、1匹以上のFah欠損マウスにおいて増大させた肝細胞によって再構成され得る。類似の方法を使用し、肝臓悪性腫瘍(HCCなど)に苦しんでいる患者由来の非悪性細胞が選択的に継代され得る。
【0185】
B. 肝臓疾患モデルとしてのFah欠損マウス
動物におけるFah欠損は、ヒト疾患である遺伝性チロシン血症1型(HT1)と同様の疾患表現型をもたらす。死亡率を抑制するため、肝臓機能不全を抑制するNTBCでFah欠損動物を維持する(動物に対して、FAHを発現するヒト肝細胞での再生息(repopulation)が行なわれていない場合)が、NTBCの滴定用量を用いてHT1−型の表現型(例えば、HCC、線維症および肝硬変)の発現を促進させることができる。また、ヒト肝細胞での再生息が行なわれた免疫不全のFah欠損マウスは、例えば、毒性薬剤である形質転換剤を用いて、または悪性のヒト肝細胞を導入することにより、肝臓疾患の発症が誘導され得る。したがって、本明細書に開示したFah欠損マウスは、さまざまな肝臓疾患(例えば、HCCおよび肝硬変)を研究するために使用され得る。
【0186】
一部の実施形態では、本明細書に開示したFah欠損マウスは、ヒト肝臓疾患の動物モデルとして使用される。Fah欠損マウスは、例えば、毒素への曝露、感染性疾患もしくは悪性腫瘍または遺伝的欠陥(すなわち、HT1をもたらすFah−欠損)に起因する肝臓疾患のモデルとして使用され得る。Fah欠損マウスがモデルとして供され得るヒト遺伝性肝臓疾患の例としては、限定されないが、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高シュウ酸尿症、フェニルケトン尿症、カエデシロップ尿病、グリコーゲン蓄積病、リソソーム蓄積病(ゴーシェ病など)、および任意の先天性の代謝異常が挙げられる。開示したモデル系は、特定の肝臓疾患に対するより良好な理解を得るため、および疾患プロセスを予防、遅延または逆転し得る薬剤を同定するために使用され得る。
【0187】
Fah欠損マウスが毒素によって引き起こされる肝臓疾患のモデルとして使用される一部の場合では、肝臓機能不全を抑制するNTBCでFah欠損マウスを、肝臓におけるヒト肝細胞の再生息が充分となるまで維持する。対応するヒトの状態が最もよく模倣される結果を得るのに必要とされる毒性薬剤の量は、漸増用量の毒性薬剤に曝露した数匹のFah欠損マウスを使用することによって決定され得る。毒性薬剤の例としては、限定されないが、エタノール、アセトアミノフェン、フェニトイン、メチルドパ、イソニアジド、四塩化炭素、黄リン(yellow phosphorous)およびファロイジンが挙げられる。一部の場合では、ヒト肝細胞なし(だが、NTBCまたは他の類似化合物の存在下)でのFah欠損マウスが、毒素の効果を評価するためのモデルとして使用される。他の例では、Fah欠損マウスにヒト肝細胞を移植して、ヒト肝細胞に対する毒素の効果を評価する。この例では、NTBCでFah欠損マウスを維持することは必要でない。典型的には、ヒト肝細胞の増大をヒト肝細胞集団の大きさが十分になる時点(例えば、最大に近づく)まで進行させた後に、Fah欠損マウスを毒性薬剤に曝露する。
【0188】
Fah欠損マウスが、ヒト肝細胞なしで悪性肝臓疾患(HCCまたはヘパトームなど)のモデルとして使用される一部の実施形態では、Fah欠損マウスに、肝臓機能不全による致死が抑制されるのに充分高いが、HCCまたは他の肝臓悪性腫瘍の発生が可能となるのには充分低い用量のNTBCが投与される。あるいはまた、Fah欠損マウスは肝臓機能不全が予防される用量のNTBCで維持され得、そして、悪性腫瘍は、形質転換剤への曝露または悪性細胞の導入によって生成し得る。別の代替法は、ヒト肝細胞を移植してHCCを誘導すること(形質転換剤の使用などによって)、またはマウスに悪性ヒト肝細胞を移植することである。したがって、一部の例では、ヒト肝細胞なしのFah欠損マウスが悪性肝臓疾患のモデルとして使用される。他の例では、Fah欠損マウスにヒト肝細胞を移植して、ヒト細胞の悪性肝臓疾患を評価する。この例では、NTBCでFah欠損マウスを維持することは必要でない。形質転換剤または悪性細胞は、ヒト肝細胞の初期転移増殖導入(initial colonization introduction)とともに導入してもよく、ヒト肝細胞が宿主動物内で増殖し始めた後に導入してもよい。形質転換剤の場合、該薬剤を、ヒト肝細胞が活発に増殖しているときに投与することが好ましい場合がある。
【0189】
形質転換剤の例としては、アフラトキシン、ジメチルニトロサミン、および0.05〜0.1% w/wのDL−エチオニンを含有するコリン欠損飼料(FarberおよびSarma,1987、in Concepts and Theories in Carcinogenesis,Maskensら編,Elsevier,Amsterdam,pp.185−220)が挙げられる。かかる形質転換剤は、動物に対して全身投与され得るか、または肝臓自体に局所投与され得るかのいずれかである。悪性細胞を肝臓に直接接種してもよい。
【0190】
C. 肝臓感染症のモデルとしてのFah欠損マウス
Fah欠損マウスにおいて増大させ、収集したヒト肝細胞はまた、さまざまな微生物学的研究にも使用され得る。いくつかの病原体(例えば、細菌、ウイルスおよび寄生虫)は、ヒト宿主またはヒト一次肝細胞のみで複製する。したがって、ヒト一次肝細胞の充分な供給源を有することは、このような病原体の研究に不可欠である。増大させたヒト肝細胞は、ウイルスの感染および複製の研究、または肝臓ウイルスの感染をモジュレートする化合物を同定するための研究に使用され得る。肝臓ウイルスの研究のためのヒト一次肝細胞の使用方法は、例えば、欧州特許第1552740号、米国特許第6,509,514号およびPCT公開公報番号WO00/17338に記載されている。肝臓ウイルスの例としては、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)およびサイトメガロウイルス(CMV)が挙げられる。肝臓に感染する寄生虫の例としては、例えば、マラリアの原因因子(プラズモディウム種、例えば、Plasmodium falciparum、Plasmodium vivax、Plasmodium ovale、Plasmodium malariaeおよびPlasmodium knowlesi)ならびにリーシュマニア症の原因因子(リーシュマニア種、例えば、L.donovani,L.infantum,L.chagasi,L.mexicana,L.amazonensis,L.venezuelensis,L.tropica;L.major;L.aethiopica,L.(V.)braziliensis,L.(V.)guyanensis,L.(V.)panamensis、およびL.(V.)peruviana)が挙げられる。
【0191】
微生物学的研究のためのFah欠損マウスにおいて増大させたヒト肝細胞の使用に加えて、Fah欠損マウス自体が肝臓病原体感染の動物モデルとして供され得る。例えば、ヒト肝細胞での再生息が行なわれたFah欠損マウスに肝臓病原体を感染させ、該感染の処置のための候補薬剤をスクリーニングするために使用され得る。候補薬剤としては、いくつかの化学物質の類型の任意の1つに由来する任意の化合物(低分子有機化合物など)が挙げられる。また、候補薬剤としては、生体分子、例えば、核酸分子(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA、マイクロRNA、リボザイム、低分子ヘアピン型RNA、発現ベクターなど)、ペプチドおよび抗体、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、その誘導体、その構造類似体、またはその組合せなどが挙げられる。
【0192】
候補薬剤は、さまざまな供給源、例えば、合成化合物または天然の化合物のライブラリーから得られ得る。例えば、さまざまな有機化合物および生体分子の無作為および指向的な合成、例えば、無作為化オリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現に対して、数多くの手段が利用可能である。あるいはまた、細菌、真菌、植物および動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが利用可能であるか、または容易に作製される。さらに、天然の、または合成により作製したライブラリーおよび化合物は、慣用的な化学的、物理的および生化学的手段によって容易に改変され、コンビナトリアルライブラリーを作製するために使用され得る。既知の薬理学的薬剤が、構造類似体を作製するための指向的または無作為な化学修飾(例えば、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化など)に供され得る。
【0193】
HCV感染およびHBV感染を研究するため、ならびにこれらの感染の処置のための候補薬剤を評価するためのFah欠損マウスの使用を以下に論考する。しかしながら、該方法は任意の対象肝臓病原体に適用され得る。一実施形態において、Fah欠損マウスは、ウイルス感染を阻害する薬剤、ウイルスの複製を低減させる薬剤および/またはHBVもしくはHCV感染によって引き起こされる1つ以上の症状を改善する薬剤を同定するために使用される。一般に、候補薬剤をFah欠損マウスに投与し、対照と比べた候補薬剤の効果を評価する。例えば、候補薬剤はHCV感染Fah欠損マウスに投与され得、処置動物のウイルス力価(例えば、血清試料のRT−PCRによって測定する場合)が、処置前の該動物および/または未処置HCV感染動物のウイルス力価と比較され得る。候補薬剤での処置後の感染動物のウイルス力価の検出可能な低減は、該薬剤の抗ウイルス活性を示す。
【0194】
候補薬剤は、該薬剤の送達に適切な任意の適当な様式で投与され得る。例えば、候補薬剤は、注射(静脈内、筋肉内、皮下もしくは標的組織内への直接的な注射など)、経口、または任意の他の望ましい手段によって投与され得る。一部の場合では、インビボスクリーニングは、種々の量および濃度の候補薬剤(薬剤なしから、動物に対して安全に送達され得る量の上限に近い量の薬剤まで)を受ける数匹のFah欠損マウスを伴い、異なる製剤および経路での薬剤の送達を含み得る。候補薬剤は、単独で、または特に薬剤の組合せの投与によって相乗効果がもたらされ得る場合は2種類以上の組合せで投与され得る。
【0195】
候補薬剤の活性は、当該技術分野において知られたさまざまな手段の任意の1つを用いて評価され得る。例えば、Fah欠損マウスを肝指向性病原体(例えば、HBVまたはHCV)に感染させた場合、該薬剤の効果は、該病原体の存在(例えば、ウイルス力価を測定する)または該病原体の存在に関連しているマーカー(例えば、病原体特異的タンパク質もしくはコード核酸)の存在について血清試料を調べることにより評価され得る。ウイルス感染の存在および重症度を検出および評価するための定性的および定量的な方法は、当該技術分野においてよく知られている。一実施形態では、HBV感染に対する薬剤の活性は、ウイルス抗原(HBV表面抗原(HBsAg)またはHBVコア抗原(HbcAg)など)の存在について、血清試料および/または組織切片を調べることにより評価され得る。別の実施形態では、ウイルス感染に対する薬剤の活性は、ウイルス核酸(HCV RNAなど)の存在について、血清試料を調べることにより評価され得る。例えば、HCV RNAは、例えば、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、競合的RT−PCRもしくは分岐型DNA(bDNA)アッセイ、RT−PCRによるマイナス鎖RNA(HCVの複製性中間体)の検出、または治療を伴うウイルスゲノム内の変異/シフト(「擬種の進化」)を検出するためのウイルスRNAの配列決定、を用いて検出され得る。あるいはまたさらに、宿主の肝臓の生検を行ない、インサイチュRT−PCRハイブリダイゼーションを行なうと、組織切片内のウイルス粒子の量の定性的または定量的な変化が直接的に示され得る。あるいはまたさらに、宿主を安楽死させ、感染の徴候および/または該薬剤によって引き起こされる毒性について、肝臓を組織学的に検査してもよい。
【0196】
また、Fah欠損マウスは、候補ワクチンを、肝指向性病原体による感染を予防または改善する能力についてスクリーニングするために使用され得る。一般に、ワクチンは、投与後、宿主に標的病原体に対する免疫応答が起こるのを助長する薬剤である。惹起される体液性、細胞性または体液性/細胞性の免疫応答により、ワクチンの開発対象の病原体による感染の阻害が助長され得る。本発明の開示において、肝指向性病原体(例えば、微生物病原体、ウイルス病原体、もしくは寄生虫病原体)、特に、ウイルス病原体(HBVおよび/またはHCVなど)による感染および/または該病原体の肝臓内複製を阻害する免疫応答を惹起するワクチンは特に重要である。
【0197】
候補ワクチンを評価するため、Fah欠損マウスにヒト肝細胞を移植し、該マウスの肝臓にヒト肝細胞を再生息させる。有効なワクチンのスクリーニングは、上記のスクリーニング方法と同様である。一部の実施形態では、候補ワクチンをFah欠損マウスに、肝指向性病原体の接種前に投与する。一部の場合では、候補ワクチンは、単回ボーラスを施与することによって投与され(例えば、腹腔内もしくは筋肉内注射、局所投与または経口投与)、続いて、任意選択で、1回以上の追加刺激の免疫処置が行なわれる。免疫応答の誘導は、抗原/ワクチンに特異的なB細胞応答およびT細胞応答を、当該技術分野でよく知られた方法に従って調べることにより評価され得る。次いで、免疫処置したFah欠損マウスに肝指向性病原体で抗原刺激を行なう。典型的には、数匹の免疫処置した動物に、漸増力価の病原体で抗原刺激を行なう。次いで、該動物を感染の発生について観察し、感染の重症度を評価する(存在する病原体の力価を評価すること、またはヒト肝細胞機能パラメータを調べることなどにより)。病原体による感染の有意な低減および/または抗原刺激後に起こる疾患の重症度の有意な低減をもたらすワクチン候補を生ワクチンと同定する。
【0198】
D. 薬理学的、毒物学的および遺伝子療法試験
Fah欠損マウスおよび/またはFah欠損マウスにおいて増大させ、収集したヒト肝細胞は、任意の薬理学的化合物(小分子、生物学的薬剤、環境性もしくは生物性の毒素または遺伝子送達系など)による、ヒト肝細胞における遺伝子発現の改変を評価するために使用され得る。
【0199】
下述の実施例に記載されるように、いくつかの肝細胞輸送タンパク質を含む、薬物抱合および解毒に関与する遺伝子の発現を、レシピエントマウスから採取した増大されたヒト肝細胞において検出した。最近の研究では、薬物毒性を予測する際に、これらの抱合経路(Kostrubsky et al.Drug.Metab.Dispos.28:1192−1197,2000)、および肝細胞輸送タンパク質(Kostrubsky et al.Toxicol.Sci.90:451−459,2006)が、重要な役割を果たすことを示している。リファンピシンもしくはPB、またはBNFのような外因性薬物によるCYP誘導に対する正常ヒト反応に加えて、核ホルモン受容体転写因子の発現、抱合経路、およびFRGマウスにおいて増大されたヒト肝細胞による主要な輸送タンパク質は、生体内で、ヒト薬物代謝および毒性において、これらの遺伝子産物の役割の評価を可能にする。
【0200】
ヒト化FRGマウスは、有意に高いLDLコレステロール含量を有するヒトに典型的な血中脂質プロフィールを示すが(表4参照)、対照マウスは、マウス血液に典型的な高HDL含量を示す。したがって、ヒト化FRGマウスは、抗高脂血症薬および抗アテローム性動脈硬化の薬剤を試験するのに有用である。ヒト化FRGマウスは、胆嚢においてヒト胆汁酸組成を示す(表3参照)。これは、このマウスが、通常の代謝産物および生体異物性の代謝産物の胆汁中排泄をアッセイするために使用され得ることを示す。
【0201】
例えば、Fah欠損マウスにおいて増大させ、収集したヒト肝細胞は、ヒト細胞における特定の化合物の毒性を評価するために使用され得る。単離された肝細胞における化合物の毒性の試験方法は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、PCT公開公報番号WO2007/022419に記載されている。同様に、ヒト肝細胞が移植されたFah欠損マウスは、外因性因子の毒性を評価するために使用され得る。一部の実施形態では、外因性因子は、既知の毒素であるかまたは毒素である疑いがある物質である。
【0202】
一部の実施形態では、ヒト肝細胞が移植されたFah欠損マウス(またはFah欠損マウスにおいて増大させ、収集したヒト肝細胞)は、薬物代謝および薬物動態のいくつかのパラメータの任意の1つを評価するために使用される。例えば、薬物代謝、インビボでの薬物/薬物相互作用、薬物半減期、排出/排泄経路、尿、糞、胆汁、血液もしくは他の体液中の代謝産物、シトクロムp450誘導、腸肝再循環、および酵素/輸送体誘導を評価するための試験が行なわれ得る。
【0203】
一部の実施形態では、ヒト肝細胞が移植されたFah欠損マウス(またはFah欠損マウスにおいて増大させ、収集したヒト肝細胞)は、化合物、例えば、治療用薬剤もしくは候補薬剤(小分子もしくは生物学的薬剤など)、環境性もしくは生物性の毒素、または遺伝子送達系の毒物学的特性および安全性を評価するために使用される。例えば、ヒト肝細胞の細胞周期増殖は、例えば、該化合物への曝露後、癌のリスクを調べるために評価され得る。また、肝細胞に対する毒性は、例えば、組織学的検査、アポトーシス指数、肝臓機能試験などによって評価され得る。また、安定同位体前駆物質の感染後の代謝産物の解析などの、肝細胞代謝の解析も行なわれ得る。
【0204】
また、特定の薬物の有効性も、ヒト肝細胞が移植されたFah欠損マウスにおいて評価され得る。かかる薬物としては、例えば、高脂血症/アテローム性動脈硬化、肝炎およびマラリアを処置するための薬物が挙げられる。
【0205】
一部の実施形態では、ヒト肝細胞が移植されたFah欠損マウス(またはFah欠損マウスにおいて増大させ、収集したヒト肝細胞)は、遺伝子療法プロトコルおよびベクターを試験するために使用される。例えば、以下のパラメータ:遺伝子導入ビークル(例えば、ウイルスベクターおよび非ウイルスベクター)の形質導入効率;有効負荷遺伝子(genetic payload)の組込みの頻度および位置(組込み部位の解析);有効負荷遺伝子の機能性(遺伝子発現レベル、遺伝子ノックダウン効率);ならびに有効負荷遺伝子の副作用(インビボでのヒト肝細胞における遺伝子発現の解析またはプロテオミクス)が評価され得る。例えば、家族性高コレステロール血症に苦しんでいる患者の遺伝子療法におけるトランスフェクト肝細胞の使用が報告されている(Grossmanら Nat.Genet.6:335,1994)。
【0206】
VIII. ウロキナーゼをコード化するベクター
本明細書に記載される方法の一部の実施形態において、Fah欠損マウスに、ヒト肝細胞の移植手術前、ウロキナーゼをコード化するベクターが投与される。一実施形態において、該ウロキナーゼ(ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)としても知られる)は、分泌型のヒトウロキナーゼである。別の実施形態において、該ウロキナーゼは、修飾された、非分泌型のウロキナーゼである(米国特許第5,980,886号参照)。マウスにおけるウロキナーゼの発現に適した任意の型のベクターが企図される。このようなベクターは、プラスミドベクターまたはウイルスベクターを含む。適したベクターとしては、DNAベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、偽型レトロウイルスベクター、AAVベクター、テナガザル白血病のベクター、VSV−G、VL30ベクター、リポソーム媒介ベクター等が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、該ウイルスベクターはアデノウイルスベクターである。該アデノウイルスベクターは、任意のアデノウイルス血清型を含む、任意の適したアデノウイルスに由来し得る(Ad2およびAd5等であるが、これらに限定されない)。アデノウイルスベクターは、第1、第2、第3、および/または第4世代のアデノウイルスベクター、またはアデノウイルスゲノムをほぼ完全に欠失させた(gutless)アデノウイルスベクターであり得る。非ウイルスベクターは、プラスミド、ホスホリン脂質、異なる構造のリポソーム(陽イオンおよび陰イオン)により構成することができる。別の実施形態において、該ウイルスベクターは、AAVベクターである。該AAVベクターは、当技術分野で知られている任意の適したAAVベクターであり得る。
【0207】
ウロキナーゼをコード化するウイルスおよび非ウイルスベクターは、当技術分野で周知である。例えば、ヒトウロキナーゼをコード化するアデノウイルスベクターは、米国特許第5,980,886号、およびLieberら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92(13):6210−4,1995)に記載される。米国特許出願公開第2005−176129号および米国特許第5,585,362号は、組み換えアデノウイルスベクターを記載し、米国特許第6,025,195号は、肝臓特的な発現のアデノウイルスベクターを開示する。米国特許出願公開第2003−0166284号は、ウロキナーゼを含む、着目遺伝子の肝臓特異的な発現のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを記載する。米国特許第6,521,225号および第5,589,377号は、組み換えAAVベクターを記載する。PCT公開第WO 0244393号は、ヒトウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子遺伝子を含む、ウイルスおよび非ウイルスベクターを記載する。該ヒトウロキナーゼ遺伝子の高レベルの発現が可能である発現ベクターは、PCT公開第WO 03087393号に開示される。
【0208】
ウロキナーゼをコード化するベクターは、任意に、適切なプロモータ、エンハンサ、転写ターミネータ、タンパク質をコード化する遺伝子の前にある開始コドン(すなわち、ATG)、イントロンのスプライシングシグナル、mRNAの適切な翻訳を可能にするためのその遺伝子の正しいリーディングフレームの維持、および終止コドンを含む、発現調節配列を含むことができる。通常、発現調節配列は、転写を指示するのに十分な最小配列である、プロモータを含む。
【0209】
該発現ベクターは、複製起点、プロモータ、ならびに形質転換細胞の表現型選抜を可能にする特異的遺伝子(抗生物質耐性カセット等)を含むことができる。通常、該発現ベクターは、プロモータを含み得る。該プロモータは、誘導性または構成的であり得る。該プロモータは、組織特異的であり得る。適したプロモータとしては、チミジンキナーゼプロモータ(TK)プロモータ、またはメタロチオネインIプロモータ、またはポリヒドロンプロモータ、またはニューロン特異的エノラーゼプロモータ、またはチロシンヒドロキシラーゼプロモータ、またはベータアクチンプロモータ、または他のプロモータが挙げられる。一実施形態において、該プロモータは、異種プロモータである。
【0210】
一実施例において、ウロキナーゼをコード化する配列は、所望のプロモータの下流にある。任意に、エンハンサ要素もまた、含まれ、通常、該ベクター上のどこかにあり得、増強効果も有する。しかしながら、増大した活性量は、通常、距離とともに減少する。
【0211】
ウロキナーゼをコード化する該ベクターは、静脈内投与、または腹腔内投与、または門脈を介して血管内注入が挙げられるが、これらに限定されない、様々な経路により投与することができる。投与されたベクター量は、異なり、日常の実験を用いて決定され得る。一実施形態において、FRGマウスに、約1×10〜約1×1010のプラーク形成単位の用量で、アデノウイルスウロキナーゼをコード化するベクターが投与される。好ましい一実施形態において、該用量は、約5×10のプラーク形成単位である。
【0212】
例示的な一実施形態において、FRGマウスに、ヒトウロキナーゼをコード化するアデノウイルスベクターが投与される。アデノウイルスベクターは、非常に高い力価のある感染粒子に作製され得る、多種多様の細胞に感染する、分裂してない細胞へ遺伝子を効率的に転送する、およびゲストゲノムにほとんど組み込まれない(これは挿入突然変異により細胞形質転換のリスクを避ける)等の、他の型のウイルスベクターに優るいくつかの利点がある(Douglas and Curiel,Science and Medicine, March/April 1997,pages 44−53、Zern and Kresinam,Hepatology:25(2),484−491,1997)。ウロキナーゼをコード化するために使用することができる代表的なアデノウイルスベクターは、Stratford−Perricaudetら(J.Clin.Invest.90:626−630,1992)、Graham and Prevec(In
Methods in Molecular Biology:Gene Transfer and Expression Protocols 7:109−128,1991)、およびBarrら(Gene Therapy,2:151−155,1995)に記載される。
【0213】
以下の実施例を提供し、ある特定の特性、および/または実施形態を説明する。これらの実施例は、本開示を、記載される特定の特性または実施形態に制限すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0214】
実施例1:Fah−/−/Rag2−/−/Il2rg−/−(FRG)マウスの作製
免疫不全マウスの作製には、いくつかの異なるストラテジーが使用され得、例えば、免疫抑制薬の投与によるもの、または1つ以上の遺伝子改変の導入によるものが挙げられる。この実施例では、遺伝子改変型の免疫不全マウスの作製を記載する。
【0215】
T細胞、B細胞、およびNK細胞が完全に欠如するが、DNA修復欠損のない、免疫不全Fah−/−マウス株を作製するために、Fah−/−/Rag2−/−/Il2rg−/−(FRG)マウスを作製した。オスFah−/−129S4マウス(Grompe et al.Genes Dev.7:2298−2307,1993)を、メスRag2−/−/Il2rg−/−マウス(Taconic)と交配させた。すべての動物に、1.6mg/Lの濃度で、2−(2−ニトロ−4−トリフルオロ−メチル−ベンゾイル)−1,3 シクロヘキサンジオン(NTBC)を含有する飲料水を与えてすべての動物を維持した(Grompe et al.Nat.Genet.10:453−460,1995)。各動物の遺伝子型を確認するために、PCRベースの遺伝子タイピングを、足指組織から単離した200ngのゲノムDNAに実行した(Grompe et al.Genes Dev7:2298−2307,1993、Traggiai et al.Science 304:104−107,2004)。
【0216】
飲料水内にNTBCを継続して与えた場合、FRGマウスはよく生育し、十分な繁殖力があった。FRGマウス肝臓は、大きさおよび形において、肉眼的に正常であり、組織学的検査は、従来のFah−/−マウスと該FRGマウスとの間で差異を示さなかった。従来のFah−/−マウスの場合のように、NTBCの中止は、FRGマウスにおいて、漸次の肝臓細胞損傷をもたらし、4〜8週間後、FRGマウスは最終的に死亡した(Overturf et al.Nat.Genet.12:266−273,1996)。
【0217】
実施例2:組織学および移植検出アッセイ
組織学および免疫細胞化学
FAH免疫組織化学を、前述のように行った(Wang et al.Am.J.Pathol.161:565−574,2002)。簡潔に述べると、pH7.4で、10%リン酸緩衝ホルマリン中で固定された肝臓組織および腎臓組織は、100%エタノール中で脱水され、58℃で、パラフィンワックスに包埋された。脱パラフィン処理した4μmの切片を、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。免疫組織化学のために、切片は、3%Hを含むメタノールで、内因性ペルオキシダーゼのブロッキングのために処理した。また、アビジンおよびビオチンブロッキングは、一次抗体でインキュベーションする前に、行なった。切片は、室温で2時間、抗FAHウサギ抗体またはHepPar抗体(DAKO)でインキュベートし、次いで、HRPに接合した二次抗体でインキュベートした。シグナルは、ジアミノベンジジン(DAB)により検出した。
【0218】
FAH酵素アッセイ
フマリルアセト酢酸は、受容者の肝臓からの細胞質の肝臓分画とともにインキュベートし、消失速度を、330nmで分光学的に測定した。野生型およびFah−/−肝臓はそれぞれ、陽性対照および陰性対照として使用した。フマリルアセト酢酸は、ホモゲンチジン酸から酵素的に調製した(Knox et al.Methods Enzymol.2:287−300,1955)。
【0219】
Alu配列のためのゲノムPCR
ゲノムDNAは、DNeasy組織キット(Qiagen)を用いて、肝臓から単離した。ヒトAlu配列は、以下のプライマー5’−GGCGCGGTGGCTCACG−3’(配列番号1)および5’−TTTTTTGAGACGGAGTCTCGCTC−3’(配列番号2)を用いた標準手順に従って、PCRにより増幅した。
【0220】
肝細胞特異遺伝子発現のためのRT−PCR
総RNAは、RNeasyミニキット(Qiagen)を用いて、肝臓から単離した。相補的DNAは、オリゴdTプライマーを用いて逆転写酵素により合成した。表1に示されるプライマーは、ヒトまたはマウス特異的cDNA増幅のために使用した。
【0221】
【表1】

【0222】
ヒトアルブミンの測定
少量の血液を、ヘパリン化された毛細血管を有する左側の伏在静脈から1週間に1回採取した。トリス緩衝食塩水で1,000倍または10,000倍希釈した後、ヒトアルブミン濃度は、製造業者のプロトコルに従って、ヒトアルブミンELISA Quantitation Kit(Bethyl)を用いて測定した。
【0223】
蛍光免疫細胞化学
ヒト化マウス肝臓からの肝細胞を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で懸濁し、コラーゲン型1被覆6ウェルプレート上に播種した。付着した細胞を、4%パラホルムアルデヒドで、15分間固定し、5%スキムミルクでブロックした。ウサギ抗FAH、ヤギ抗ヒトアルブミン(Bethyl)、ヤギ抗マウスアルブミン(Bethyl)を、1/200の希釈で、一次抗体として使用した。ALEXA(登録商標)フルオロ488抗ヤギIgG(Invitrogen)またはALEXA(登録商標)フルオロ555抗ウサギIgG(Invitrogen)を、二次抗体として使用した。該画像は、Nikonのデジタルカメラを用いることによりAXIOVERT(登録商標)200顕微鏡で捕捉した。
【0224】
FACS解析
受容者の肝臓の解離後、実質細胞を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)接合した抗ヒトヒト白血球抗原(HLA)−A、B、C(BD Pharmingen)、およびフィコエリトリン(PE)を接合した抗マウスH2−K(b)(BD Pharmingen)抗体と共に、4℃で30分間インキュベートした。その後、これらをPBSで2回洗浄し、FACS CALIBUR(登録商標)(Becton Dickinson)フローサイトメーターで解析した。FITCを接合したIgGおよびPEを接合したIgGを、負の対照として使用した(図8参照)。
【0225】
蛍光原位置ハイブリダイゼーション
全ゲノムDNAプローブは、全マウスゲノムDNAおよび全ヒトゲノムDNAのニックトランスレーション法により作製した。Cy3−dUTPの取り込みは、製造業者の推奨(Invitrogen)に従って実行した。最終プローブ濃度は、200ng/μlであった。付着した細胞のあるスライドを、37℃で1時間、100mg/mlのRNaseで処理し、2X SSC中で3回(1回3分間)洗浄した。洗浄ステップ後、スライドを、70%、90%、および100%エタノール中で、3分間、それぞれ脱水した。染色体を、75℃で3分間、70%ホルムアミド/2X SSC中で変性し、次いで、冷70%、90%、および100%エタノールで3分間、それぞれ脱水した。プローブカクテルを、75℃で10分間変性し、37℃で30分間あらかじめハイブリダイズした。プローブを、スライドに適用し、湿潤チャンバ中で、37℃で一晩インキュベートした。ハイブリダイゼーション後の洗浄は、50%ホルムアミド/2X SSC中で3回の3分洗浄、PN緩衝液(0.1M Na2HPO4、0.1M NaH2PO4、pH8.0、2.5% NONIDET(登録商標)P−40)中で3回の3分洗浄において、すべて45℃で行われた。スライドは、その後、紫外線蛍光(Zeiss)下で、ヘキスト(0.2ug/ml)で対比染色し、カバースリップをかぶせ、観察した。
【0226】
実施例3:ヒト肝細胞の単離および凍結保存
ヒト肝細胞は、前述の手順に従って、肝臓移植手術のために使用されないドナー肝臓から単離した(Strom et al. Cell Transplant.15:S105−110,2006)。簡潔に述べると、肝臓組織を、0.5mM EGTA(Sigma)およびHEPES(Cellgro)が追加された無カルシウムおよび無マグネシウムのハンクス液(Cambrex)で潅流し、次いで、既存の脈管構造を通してイーグル最小必須培地(Cambrex)中で、100mg/LのコラゲナーゼXI(Sigma)および50mg/LのデオキシリボヌクレアーゼI(Sigma)を用いて消化した。該細胞を、イーグル最小必須培地と7%小ウシ血清(Hyclone)で、50xgで2分間、3回洗浄した。ペレット化された肝細胞は、冷VIASPAN(登録商標)(腹腔内臓器の保存用の汎用大動脈洗浄および保冷液、ウィスコンシン大学液、またはUWとも称される)に移した。
【0227】
輸送された肝細胞は、1mlあたり5×10の肝細胞で、10%ウシ胎仔血清および10%ジメチルスルホキシドが追加されたVIASPAN(登録商標)溶液に移した。該クリオチューブ(cryotube)を、紙タオルで厚く覆い、−80℃で1日間保存し、液体窒素に最終的に移した。解凍のために、細胞を、37℃の水浴中で急速に再加熱し、DMEMを徐々に加え、DMSO濃度の変化速度を最小化した。
【0228】
実施例4:ヒト肝細胞を用いたFRGマウス肝臓の再増殖
ウロキナーゼの過剰発現は、いくつかの系において、肝細胞移植を強化することが示されている(Lieber et al.Hum.Gene Ther.6:1029−1037,1995)。したがって、実験を行い、ヒト肝細胞の移植手術前、ウロキナーゼを発現するアデノウイルスの投与が有益であるかどうかを判定した。分泌型のヒトウロキナーゼ(ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子;uPA)を発現するアデノウイルスベクターは、先に説明されている(Lieber et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:6210−6214,1995および米国特許第5,980,886号参照)。
【0229】
ドナー肝細胞は、単離し、単離してから24〜36時間後に、移植した。大抵の場合、細胞は、VIASPAN(登録商標)溶液中に保存し、輸送中、4℃に保った。しかしながら、2つの実験において、凍結保存した肝細胞を移植した。ドナー肝細胞の生存能力および品質は、10%〜60%の範囲の平板効率を伴い、大いに変化した。
【0230】
移植手術のために、以下の汎用プロトコルを使用した。成熟(6〜15週齢)オスまたはメスFRGマウスに、移植手術する24〜48時間前に、uPAアデノウイルス(マウスあたり5×10のプラーク形成単位(PFU))の静脈注射(後眼窩注射)をした。100μlのダルベッコ改変イーグル培地中で、100万の生存能力のあるヒト肝細胞(トリパンブルー色素排除試験法により判定された)を、27ゲージ針で脾臓内に注入した。NTBCの投与を、次の6日間(1.6mg/L 0〜2日目、0.8mg/L 3〜4日目、0.4mg/L 5〜6日目)にわたり徐々に中止し、移植手術から1週間後、完全に中止した。NTBCの投与を停止してから2週間後、動物は、5日間薬物の投与を再開した後、再度中止した。
【0231】
3つの別個の移植手術において、ヒト肝細胞の一次移植は、最初にuPAアデノウイルスを受けた受容者であるFRGマウスにおいて観察した。したがって、uPAの前処理レジメンを、ほとんどのその後の移植手術実験において使用した。
【0232】
全体で、9つの異なるドナーからのヒト肝細胞をうまく使用して、uPAアデノウイルスレジメンの導入後、移植の失敗は生じなかった。これらのうち、7つは、脳死ドナーの肝臓から単離し、2つは、外科的肝臓切除術から単離した。ドナーの年齢は、1.2歳から64歳の範囲で異なった(表2)。
【0233】
【表2】

【0234】
すべての実験において、少なくとも1つの受容者に、細胞バッチの使用にかかわらず、本プロトコルを用いて、ヒト肝細胞が有意に移植された(>1%ヒト細胞)。移植は、組織学、DNA解析、酵素アッセイ、および後の実験である、ヒト血清アルブミンを含む、異なる方法により実証された。アルブミンレベルによりモニターされた移植手術において、43のうちの17(39.5%;12〜67%)の一次受容者は再増殖した(表2および図3)。これらのうち、7つは、高度に再増殖し(30〜90%)、アルブミンレベル>1mg/mlに達した。死体肝臓からの肝細胞だけでなく、肝臓切除術からの肝細胞も移植した。さらに、凍結保存細胞も、無事に移植された。
【0235】
高度に移植されたマウス(>30%再増殖)において、移植されたFRGマウスの体重は、第2のNTBC中止中に、安定したのに対して、同一の細胞を与えたIl2rg(Fah−/−/Rag2−/−/Il2rg+/−)のヘテロ接合型である免疫不全同腹仔のうち減量し続けたものは少なかった(図1a)。三重変異体マウスにおいて、この体重の安定は、移植されたヒト肝細胞が、罹患Fah−/−受容肝細胞の機能を置換していることを示唆した。完全に体重が安定化するや否や(初期移植手術から2〜3ヶ月後)、受容者の肝臓は、その後、採取された。肉眼的に、FRG肝臓は、大きさおよび形において、正常であり、肉眼的結節はなかった。ヒト特異的Alu DNA配列のゲノムPCRは、FRG受容者の肝臓において陽性であったのに対して、Il2rgヘテロ接合体は、すべて陰性であった(図1b)。再増殖細胞の肝細胞機能を直接確認するために、FAH酵素活性を、アッセイした(Knox et al.Methods Enzymol.2:287−300,1955)。
【0236】
レシピエントマウスの肝臓は、正常マウス肝臓と同等またはそれを超える、多量のFAH酵素活性があった(図1c〜e)。FAHは、十分に分化した肝細胞において、単独に発現するため、移植されたヒト肝細胞は、マウス肝臓に移植された場合、脱分化または異常がないことを示唆した。FAH免疫染色により、70%以上の肝実質が、FAH陽性ヒト肝細胞によって再増殖されたことが確認された(図1fおよび図1g)。
【0237】
組織学的および免疫組織化学的試験は、追加の受容者の肝臓を用いて行った(図2aおよび図2b)。FAH陽性ヒト肝細胞は、受容者の肝臓の構造に完全に統合されたようであった。いくつかの受容者において、移植された肝細胞は、受容者の肝臓組織を阻害することなく、80%以上の柔組織を占めた(図2b、2e、および2f)。クローン的に増加しているヒト肝細胞は、形態学的に、大きさにより、およびそれらの蒼白の細胞質により、マウス肝細胞とは明らかに区別することができた(図2cおよび図2d)。ヒト肝細胞のその大きさは、恐らく、上述に報告されるようにグリコーゲン蓄積のため、比較的大きく、それらの細胞質は、鮮明であった(Meuleman et al.Hepatology 41:847−856,2005)。FAH陽性肝細胞はまた、HepPar抗体に対しても陽性であり、この抗体はヒト肝細胞を特異的に標識化するが、マウス肝細胞は、標識化しない(図2eおよび図2f)。対照的に、FAH陰性領域は、NTBC投与の中止後、従来のFah−/−マウスにおいて所見と一致する、壊死炎症(necroinflammation)を示し、異形成肝細胞を含んだ。
【0238】
再増殖したヒト肝細胞が、成熟肝細胞特異遺伝子を発現するかどうかを検査するために、RT−PCRを、受容者の肝臓から抽出されたメッセンジャーRNAに行った。ヒトアルブミン(ALB)遺伝子、FAH遺伝子、トランスフェリン(TF)遺伝子、トランスサイレチン(TTR)遺伝子、チロシンアミノ転移酵素(TAT)遺伝子、およびUGT1A1遺伝子が、受容者の肝臓において、多量に発現した(図3a、図6c、および図7)。肝細胞の機能性をまた、ヒトアルブミンの血中濃度を測定することにより評価した。ヒトアルブミンに対して特異的なELISAキットを使用し、検出の閾値は、1:100に希釈した試料を用いて、0.05μg/mlであった。ヒトアルブミンは、まず、一次受容者において、移植手術から4〜10週間後に検出された。当初は、ヒトアルブミンレベルに変動があったが、その後、ヒトアルブミンの濃度は、さらに数週間、相対的に漸増した(図3bおよび図3c)。
【0239】
キメラマウスにおけるヒト肝細胞の機能性をさらに評価するため、ヒト化マウスの胆汁酸組成およびリポタンパク質プロフィールを、正常なヒトおよびマウスの胆汁ならびにリポタンパク質のプロフィールと比較した。以下に示すように、ヒト化レベルを有するマウスの胆汁はヒト胆汁の組成に類似しており(表3)、ヒト化マウスは、ヒトと同様の高いLDLおよびコレステロールレベルを有する(表4)。デオキシコール酸の存在はヒト胆汁に典型的であり、β−ムリコール酸レベルは、正常マウスの胆汁中よりもずっと低かった。コレステロールレベルはヒト化マウスにおいてずっと高く、この増大は、LDLコレステロールに起因したものであり得る。
【0240】
【表3】

【0241】
【表4】

脂質は、非移植対照(C1〜C3)および高度にヒト化された(>70%)FRGマウス(T1〜T4)において測定した。
【0242】
薬理作用のアルプロティナーゼ阻害剤は、高度に再増殖したマウスの生存能力を長期間維持するために必要であり得、該ドナー肝細胞により産生されたヒト補体は、受容者の腎臓に損害を与える可能性がある(Tateno et al. Am.J.Pathol.165:901−912,2004参照)。したがって、いくつかの(n=3)高度に再増殖したマウスを、長期間観察した。これらのマウスは、NTBCの投与を中止した4ヶ月間減量しなくて、マウスのヒトアルブミン濃度は、安定していた。さらに、該マウスの腎臓は、採取時に、肉眼的かつ組織学的に正常であった(図2g)。
【0243】
実施例5:ヒト肝細胞の連続移植
前述の肝臓異種再増殖モデルの限界のうちの1つは、移植されたヒト肝細胞をさらに増大させる能力の低下である。該FRGマウス系において、連続移植の実行可能性を試験するために、高度に再増殖した一次受容者の肝臓(約70%ヒト細胞)を潅流し、実質肝細胞を、標準コラゲナーゼ消化プロトコルを用いて採取した。
【0244】
ヒト細胞で再増殖したマウスに麻酔をかけ、門脈または下大静脈に、24ゲージのカテーテルを用いてカニューレを挿入した。該肝臓を、0.5mM EGTAおよび10mM
HEPESが追加された無カルシウムおよび無マグネシウムのEBSSで5分間潅流した。該溶液は、0.1mg/mlのコラゲナーゼXI(sigma)および0.05mg/mlのDNase I(sigma)が追加されたEBSSに10分間変更した。該肝臓は、第2の溶液中で徐々に細分化し、70μmおよび40μmのナイロン製のメッシュで連続して濾過した。5分間、150xgで遠心分離した後、該ペレットを、50xgで2分間、さらに2回洗浄した。細胞の数および生存能力は、トリパンブルー色素排除試験法により評価した。
【0245】
100μlのDMEM中に懸濁された100万の生存能力のある細胞を、27ゲージ針で受容者の脾臓に注入した。Fah陽性ヒト肝細胞とFah陰性マウス肝細胞に分離することなく、二次FRG受容者への肝細胞の移植手術を行った。一次移植のために使用した該細胞と対照的に、本方法において採取されたヒト肝細胞の生存能力は、>80%であり、それらは、コラーゲンで被覆した培養プレートに容易に付着した(図4c〜e)。二次受容者の移植後、該連続移植は、類似の方法において、三次および四次受容者に対して継続された。各世代において、すべてではないが、一部のレシピエントマウスのヒト血清アルブミンは、高度に陽性になった(図4a)。高度に再増殖したマウスの割合は、順次移植受容者においてさらに高く(7/43と比較して17/28)、アルブミンの増加率は、さらに一貫していた(図3e)。これは、連続継代の肝細胞が、最も移植可能なヒト肝細胞の質を高めることを表す可能性がある、あるいは、ドナーマウスから新たに採取した細胞のさらなる高品質および生存能力を単に反映する可能性がある。アルブミン陽性マウスからの肝臓試料のゲノムPCRは、各世代において、ヒトDNAの存在を示した(図4b)。ヒト肝細胞による肝臓再増殖はまた、FAHに対する蛍光免疫染色により確認された(図4c〜e)。組織学的検査は、移植されたヒト肝細胞が、各世代において、形態学的に類似し、明らかにFAH陽性であることを示した(図4f〜h)。
【0246】
実施例6:肝細胞再増殖は、細胞融合の結果ではない。
【0247】
ウロキナーゼトランスジェニックマウスにおいて、一次細胞を用いた肝臓再増殖の最新報告は、細胞融合が、明らかな「肝細胞再増殖」を潜在的に明らかにすることを実証した(Okamura et al.Histochem.Cell Biol.125:247−257,2006)。uPAトランスジェニックマウスが、その研究に使用されたため、これらの所見は、細胞融合がまた、他の報告において、マウス肝臓ヒト化のメカニズムでもあることの可能性を高めた。造血細胞と肝細胞との間の細胞融合はまた、Fah欠損マウスにおいても観察されている(Wang et al.Nature 422:897−901,2003)。マウス細胞とヒト細胞との間の細胞融合は、薬学的応用のために、ヒト化マウス肝臓の価値を大幅に減退し得る。該再増殖した肝細胞が、元来は真にヒト肝細胞であったことを確認するために、ヒトまたはマウス特異的アルブミン、およびFAHに対して二重免疫染色を行った。ほとんど(>95%)のマウスアルブミン陽性肝細胞は、実際には、FAH陰性であり、ほとんどのFAH陽性肝細胞は、マウスアルブミン陰性であった(図5a〜c)。他方では、ほとんどすべて(>90%)のヒトアルブミン陽性肝細胞はまた、FAH陽性であるが、一方残りの肝細胞は、二重陰性であった(図5d〜f)。
【0248】
アルブミンは、分泌タンパク質であり、故に、細胞は、他の細胞から異種アルブミンを得ることにより抗体陽性を示すことができた。細胞融合の欠如をさらに確認するために、ヒトおよびマウス抗主要組織適合性複合体(MHC)抗体を、フローサイトメトリーのために使用した。各抗体は、種特異であることが確認された(図5f〜j)。両方の種の表面マーカーとも肝細胞陽性でないことが、高度に再増殖した肝臓に認められた(図5kおよび図5l)。
【0249】
最終的に、蛍光原位置ハイブリダイゼーション(FISH)を、高度に再増殖した移植受容者から得た肝細胞に、ヒトおよびマウス全ゲノムプローブを用いて行った。高度に再増殖した一次(キメラマウス#531)および三次(キメラマウス#631)マウスから得た肝細胞を、ヒト全ゲノムDNAあるいはマウス全ゲノムDNAを用いてハイブリダイズした。該ヒトプローブまたは該マウスプローブに対して陽性である細胞の割合を記録した(表5)。対照は、純ヒトおよびマウス肝細胞、またはヒト肝細胞とマウス肝細胞の等混合であった。キメラ肝臓において見出されたヒト細胞が、細胞融合の産物であった場合、多くの肝細胞は、ヒトプローブとマウスプローブの両方に対して二重陽性であり、故に、マウスDNAおよびヒトDNAが陽性である細胞の割合は、100%を超え得る。それどころか、割合合計は、ヒト肝細胞とマウス肝細胞の混合の場合と同じように、ほぼ100%であると概算された。さらに、ヒト肝細胞は、脾臓が、ヒト細胞の融合パートナーとしての役割をし得るマウス肝細胞を欠如するという事実にもかかわらず、高度に再増殖したマウスの脾臓に検出された(図2h)。したがって、二重陽性細胞(融合産物)は、ヒト細胞の大部分を占めることができなかった。
【0250】
【表5】

【0251】
総合すれば、これらの結果は、融合事象が生じる場合、融合事象は、まれであり、再増殖する細胞の大部分は、連続移植を行う場合でさえ、純ヒト由来からなることを示す。したがって、FRGマウスにおいて増大されるヒト肝細胞は、ヒトの遺伝的および生化学的性質のみ有する。
【0252】
実施例7:ヒト化マウスにおける薬物代謝の機能的特性
キメラマウスにおける、ヒト肝臓特異的遺伝子の基底の発現および誘導を、検査した。培養された肝細胞におけるテストステロン代謝およびエトキシレソルフィン−O−デエチラーゼ(EROD)活性の評価を、それぞれ、Kostrubskyら(Drug Metab. Dispos.27:887−894,1999)、およびWenら(Drug Metab.Dispos.30:977−984,2002)に記載されるように実行した。RNA単離、cDNA合成、およびリアルタイムPCRを、Komoroskiら(Drug Metab.Dispos.32:512−518,2004)に記載されるように実行した。Applied Biosystemsから得られたプライマーは、ヒトCYP1A1(Hs00153120_m1)、CYP1A2(Hs00167927_m1)、CYP3A4(Hs00430021_m1)、CYP3A7(Hs00426361_a1)、CYP2B6(Hs00167937_g1)、CYP2D6(Hs00164385_a1)、多剤体制関連タンパク質MRP2(Hs00166123_m1)、胆汁塩輸出ポンプBSEP、(Hs00184829_m1)、CAR(Hs00231959_m1)アルブミン(Hs00609411_m1)、HNF4α(Hs00230853_m1)、シクロフィリン(Hs99999904_m1)、およびマウスアクチン(Ma00607939_s1)に対して特異的であった。
【0253】
単離された肝細胞の培養物を、構築し、シトクロムP450遺伝子の原型誘導物質に暴露した。該結果は、シトクロム(CYP1A1、CYP1A2、CYP2B6、CYP3A4、CYP3A7)、輸送(BSEP、MRP2)、および薬物抱合酵素(UGT1A1)の基底遺伝子発現レベルは、培養された正常成熟ヒト肝細胞に見られる、まさにそのものであった(図6c、図7)。さらに、ベータナフトフラボン(BNF)、フェノバルビタール(PB)、およびリファンピシン(Rif)のような化合物により誘発された遺伝子型は、正常ヒト細胞から予期されたとおりであった。ヒト薬物代謝遺伝子のmRNA発現レベルに加えて、ヒトCYP1Aおよび3Aファミリーメンバーの酵素活性を測定した。エトキシレソルフィン−O−デエチラーゼ活性(EROD)は、ヒト肝臓において、CYP1A1および1A2により媒介されることが知られている。該結果は、EROD活性が、ヒト化マウス肝臓細胞において、BNFへの事前暴露により特異的かつ堅牢的に誘導されたことを示す(図6a)。逆に、PBまたはリファンピシンへの事前暴露は、CYP3A4を介した代謝の特異的測定である6−ベータ−ヒドロキシルテストステロンへのテストステロンの転換を特異的に誘導した(図6b)。したがって、再増殖したFRG肝臓からの肝細胞は、これらの標準薬物代謝アッセイにおいて、正常成熟ヒト肝細胞との区別がつかなかった。
【0254】
実施例8:肝細胞再増殖前のマクロファージの減損
一次移植は、ウロキナーゼアデノウイルスの事前投与を行っても、100%のFRGレシピエントマウスで生じなかった。FRGマウスにおいて、正常数存在する肝臓マクロファージは、先天性免疫反応を促進することにより、ヒト細胞移植を限定することが可能である。
【0255】
潜在的なマクロファージにより惹起される免疫反応を中止するために、FRGマウスから、ヒト肝細胞の移植手術前に、マクロファージを減損させる。マクロファージ減損は、化学的減損(Schiedner et al. Mol.Ther.7:35−43,2003)、または抗体(McKenzie et al.Blood 106:1259−1261,2005)を用いることを含む、当技術分野で周知のいくつかの方法のうちのいずれか1つを用いて達成され得る。マクロファージはまた、クロドロネート含有リポソームを用いて減損され得る(van Rijn et al.Blood 102:2522−2531,2003)。マクロファージを減損するための追加の化合物および組成物は、米国特許公開第2004−0141967号およびPCT公開第WO 02/087424号に記載される。マクロファージ減損後、FRGマウスに、本明細書の前述の実施例に記載される方法に従って、ヒト肝細胞を移植する、または連続移植する。
【0256】
実施例9:FpmRGマウスにおけるヒト肝細胞の移植
FRGマウスは、Fah遺伝子のエクソン5(FahΔexon5)に欠失を含む。ヒト肝細胞を、Fah欠損の任意のモデルにおいて、移植および増大し得ることを確認するために、Fah遺伝子に点変異を含むマウス株を作製した。Fah点変異(Fahpm)マウスと呼ばれる、これらのマウスは、ミススプライシングを起させFah mRNAにおいて、エクソン7の喪失を生じさせる該Fah遺伝子に点変異を有する(Aponte et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:641−645,2001、参照することにより本明細書に組み込まれる)。表現型における差異は、FahpmマウスとFahΔexon5マウスとの間で検出されなかった。
【0257】
FahpmマウスをRag2−/−/Il2rg−/−マウス(実施例1に記載されるような)と交配させて、ホモ接合性Fahpm/Rag2−/−/Il2rg−/−(FpmRG)三重変異体マウスを作製した。FpmRGマウスの2つのコホートに、実施例4に記載される方法に従って、ヒト肝細胞を移植した。肝細胞移植手術の約24〜48時間前、マウスは、uPAアデノウイルスの静脈注射(後眼窩注射)を受けた。比較するために、同時に、FRGマウスに、ヒト肝細胞を移植した。ヒト血清アルブミンを、移植手術から2ヶ月および3ヶ月後に、極めて有意なレベル(23μg/ml)で、FpmRGマウスの末梢血に検出した。ヒト血清アルブミンのこれらの血中濃度は、同時に移植されたFRGマウスに見られる濃度と似ていた。
【0258】
これらの結果は、FpmRGマウスが、FRGマウスと同程度に、ヒト肝細胞で再増殖することができることを示す。したがって、ヒト化肝臓再増殖は、FahΔexon5変異を有するFRGマウスに特有ではないが、Fah欠損マウスの任意の株で達成することができる。
【0259】
実施例10:FRGマウスにおけるヒト肝細胞の移植を増進させるためのIL−1Rアンタゴニストの使用
上記(実施例4など)のヒト肝細胞再生息法を使用すると、50%より大きいマウス肝臓のヒト化が達成されることは稀である。100万個のヒト肝細胞を移植した後であっても、ヒトアルブミンの血清レベルは、初期において検出不可能であり、これは、ほとんどのヒト肝細胞が再生息の初期段階でなくなったことを示す。
【0260】
IL−1Rの活性化のブロックによってマクロファージの活性化が消去され得、したがって、移植されたヒト肝細胞の破壊が抑制され得るかどうかを調べた。アナキンラは、重度の関節炎に対してFDAに承認された組換えヒトIL−1Rアンタゴニスト(Amgen)である。アナキンラ投与により、炎症応答経路がブロックされ、以下に示すように、肝細胞に再生息に対してプラスの影響を有する。
【0261】
同じバッチの100万個のヒト肝細胞を6匹のFRGマウスに脾臓内に注入した。3匹のマウスには、アナキンラ(2mg)を外科処置中に腹腔内投与し、次いで、1日1回でさらに6回投与した(総用量=7日間で14mg)。移植の1ヶ月後、血中ヒトアルブミンをELISAによって測定した。アナキンラでの処置により、肝細胞の再生息が顕著に増進した。アナキンラを受けなかった3匹のうち2匹のマウスは検出可能なヒトアルブミンを有さず、3匹のうち1匹のマウスでは、アナキンラは3μg/mlの濃度で検出された。3匹のアナキンラ処置マウスはすべて、ずっと高いアルブミンレベル(130、165および200μg/ml)を有していた。
【0262】
さらなる実験により、これらの初期観察結果を確認した。以下の表6に、3つの独立した試験の結果を示す。遺伝学的に同一のマウスのコホートに同じバッチのヒト細胞を注入し、未処置とする(Con)か、またはアナキンラで処置するか(Ana)のいずれかとした。異なるアナキンラ投薬レジメンを使用し、異なる投与期間で試験した。高用量アナキンラ(Hi)は2mg/マウス/日とし、低用量(lo)は0.4mg/マウス/日とした。薬物は、3日間(×3)または7日間(×7)のいずれかで毎日注射した。ヒトアルブミンの血中レベルはELISAによって測定し、ヒト再生息の度合を確認した。
【0263】
【表6】

アナキンラで処置したマウスは、一貫して、ずっと高い再生息レベルを有していた。アナキンラで処置したマウスだけがミリグラム/ミリリットル範囲の血中レベルに達した。平均すると、アナキンラでの処置により、およそ100倍の再生息の増進がもたらされた。概して、高用量(2mg/日)で、最も一貫した結果が得られた。
【0264】
この結果は、ヒト肝細胞の移植後に高度にヒト化されたFRGマウスの割合は、処置なしの場合よりもアナキンラで処置した場合の方が有意に高いことを示す。薬物代謝試験および一部のウイルス学的適用用途では、ヒト細胞での肝臓の再生息は70%を超えなければならない。したがって、再生息効率の増大は、さまざまな研究および治療目的に望ましい。また、アナキンラでの処置により、ヒトの臨床的肝細胞の移植の効率が増進され得、臨床的に実行可能な処置となり得る。
【0265】
本開示の原理が適用され得る多くの考えられ得る実施形態を鑑みると、例示した実施形態は、本開示の好ましい一例にすぎないことが認識されるはずであり、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。そうではなく、本開示の範囲は以下の特許請求の範囲によって規定される。したがって、本発明者らは、本発明者らの発明はすべて、特許請求の範囲の範囲および精神に含まれるものであることを主張する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト肝細胞を免疫不全のFah欠損マウスに移植する工程であって、ここで、(i)該マウスは、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または(ii)該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与される工程;および
該ヒト肝細胞が増大するのを可能にする工程であって、それにより該ヒト肝細胞が増大する工程
を含む、インビボでのヒト肝細胞を増大させる方法。
【請求項2】
前記ヒト肝細胞を少なくとも約2週間、少なくとも約4週間、少なくとも約8週間、少なくとも約12週間、少なくとも約16週間、少なくとも約20週間、少なくとも約24週間、または少なくとも約28週間増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記免疫不全のFah欠損マウスがFah遺伝子にホモ接合型破壊を含み、該破壊は、機能性FAHタンパク質の発現低下をもたらす、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記破壊が、前記Fah遺伝子における挿入、欠失または1つ以上の点変異を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記破壊が、前記Fah遺伝子における欠失を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫不全のFah欠損マウスは、機能性のT細胞、B細胞およびNK細胞が欠乏している、請求項1〜5いずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記マウスの前記免疫不全が遺伝子改変、免疫抑制、またはその組合せによるものである、請求項1〜5いずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記マウスの前記免疫不全が遺伝子改変によるものであり、前記免疫不全のFah欠損マウスが、リコンビナーゼ活性化遺伝子1(Rag1)欠損、リコンビナーゼ活性化遺伝子2(Rag2)欠損、インターロイキン−2受容体γ鎖(Il2rg)欠損、SCID変異、非肥満糖尿病性(NOD)遺伝子型、ヌードマウス変異、およびその組合せからなる群より選択される遺伝子改変を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マウスが、Fah−/−/Rag2−/−/Il2rg−/−マウス、Fah−/−/Rag1−/−/Il2rg−/−マウス、NOD/Fah−/−/Rag2−/−/Il2rg−/−マウス、またはNOD/Fah−/−/Rag1−/−/Il2rg−/−マウスである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マウスがFah−/−/Rag2−/−/Il2rg−/−マウスである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫不全が免疫抑制によるものであり、前記マウスに1種類以上の免疫抑制薬を投与して該免疫不全を誘導する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記1種類以上の免疫抑制薬が、FK506、シクロスポリンA、フルダラビン、ミコフェノレート、プレドニゾン、ラパマイシンおよびアザチオプリン、ならびにその組合せからなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記マウスがIL−1Rの発現について欠損型である、請求項1〜12いずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記マウスがIl1r1遺伝子の破壊についてホモ接合型であり、該破壊は、機能性IL−1Rタンパク質の発現低下をもたらす、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記破壊が、前記Il1r1遺伝子における挿入、欠失または1つ以上の点変異を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記マウスが、Fah−/−/Rag2−/−/Il2rg−/−/Il1r1−/−マウス、Fah−/−/Rag1−/−/Il2rg−/−/Il1r1−/−マウス、NOD/Fah−/−/Rag2−/−/Il2rg−/−/Il1r1−/−マウスまたはNOD/Fah−/−/Rag1−/−/Il2rg−/−/Il1r1−/− マウスである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与される、請求項1〜16いずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記IL−1Rアンタゴニストがアナキンラである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アナキンラが約0.2mg/日〜約6mg/日の用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
アナキンラが約5日間〜約10日間投与される、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項21】
肝細胞の移植の前に、前記マウスに2−(2−ニトロ−4−トリフルオロ−メチル−ベンゾイル)−1,3シクロヘキサンジオン(NTBC)を投与する、請求項1〜20いずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記NTBCが約0.05mg/kg/日〜約2.0mg/kg/日の用量で投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記NTBCが飲料水にて投与される、請求項21または請求項22に記載の方法。
【請求項24】
肝細胞の移植の前に前記飲料水にて投与される前記NTBCの濃度が約1mg/L〜約8mg/Lである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記NTBCが食品にて投与される、請求項21または請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記NTBCが注射によって投与される、請求項21または請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記ヒト肝細胞を移植する前に、前記マウスにヒトウロキナーゼをコードしているベクターを投与する、請求項1〜26いずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記ベクターが静脈内投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ベクターが肝細胞の移植の約24〜48時間前に投与される、請求項27または請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ヒト肝細胞の移植が、前記マウスの脾臓または門脈への該ヒト肝細胞の注入を含む、請求項1〜29いずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記免疫不全のFah欠損マウスに移植される前記ヒト肝細胞が、単離されたヒト肝細胞である、請求項1〜30いずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ヒト肝細胞が、臓器ドナーの肝臓から単離されたもの、外科的切除により単離されたもの、または幹細胞、単球もしくは羊膜細胞から誘導されたものである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記肝細胞が注入前に低温保存されたものである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
さらに、前記マウスから前記ヒト肝細胞を収集する工程を含む、請求項1〜33いずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記ヒト肝細胞を前記マウスの肝臓から収集する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
さらに、前記収集したヒト肝細胞を累代移植によって増大させる工程を含む、請求項34または請求項35に記載の方法。
【請求項37】
さらに、前記マウスから生物学的試料を収集する工程を含む、請求項1〜36いずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記生物学的試料が血液、尿、細胞または組織試料である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
(i) ヒト肝細胞を移植した免疫不全のFah欠損マウスに候補薬剤を投与する工程であって、ここで、該マウスは、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与される工程;および
(ii) ヒト肝臓疾患に対する該候補薬剤の効果を評価する工程であって、ここで、該肝臓疾患の1つ以上の徴候または症状の改善は、該候補薬剤が該肝臓疾患の処置に有効であることを示す工程、
を含む、ヒト肝臓疾患の処置に有効な薬剤を選択するための方法。
【請求項40】
前記ヒト肝臓疾患がヒト肝臓病原体による感染である、請求項39に記載の方法であって、該方法は、
(i) ヒト肝細胞を移植した前記免疫不全のFah欠損マウスに候補薬剤を投与する工程であって、ここで、該マウスは、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与され、該免疫不全のFah欠損マウスの該移植ヒト肝細胞は該肝臓病原体に感染させたものである工程;および
(ii) 該肝臓感染症に対する該候補薬剤の効果を評価する工程であって、ここで、該候補薬剤の投与前の該Fah欠損マウスの感染量と比べた該肝臓病原体の感染量の減少は、該候補薬剤が該肝臓病原体による感染の処置に有効であることを示す工程、
を含む、方法。
【請求項41】
前記感染量を、前記マウスから採取した試料中の前記病原体の力価を測定することにより決定する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記感染量を、前記マウスから採取した試料中の病原体特異的抗原を測定することにより決定する、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記感染量を、前記マウスから採取した試料中の病原体特異的核酸分子を測定することにより決定する、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記肝臓病原体が肝指向性ウイルスである、請求項40〜43いずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記肝指向性ウイルスがHBVまたはHCVである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ヒト肝臓疾患が肝硬変である、請求項39に記載の方法であって、該方法は、
(i) ヒト肝細胞を移植した前記免疫不全のFah欠損マウスに候補薬剤を投与する工程であって、ここで、該マウスは、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与され、該免疫不全のFah欠損マウスには、該マウスにおいて肝硬変の発生を誘発する化合物が投与されている工程;および
(ii) 該免疫不全のFah欠損マウスにおいて、肝硬変の少なくとも1種類の診断用マーカーに対する該候補薬剤の効果を評価する工程であって、ここで、該肝硬変の少なくとも1種類の診断用マーカーは、AST、ALT、ビリルビン、アルカリホスファターゼおよびアルブミンから選択され、該候補薬剤の投与前の該Fah欠損マウスと比べた該Fah欠損マウスにおけるAST、ALT、ビリルビンもしくはアルカリホスファターゼの減少またはアルブミンの増加は、該候補薬剤が肝硬変の処置に有効であることを示す工程、
を含む、方法。
【請求項47】
前記ヒト肝臓疾患が肝細胞癌腫(HCC)である、請求項39に記載の方法であって、該方法は、
(i) ヒト肝細胞を移植した前記免疫不全のFah欠損マウスに候補薬剤を投与する工程であって、ここで、該マウスは、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与され、該免疫不全のFah欠損マウスには、該マウスにおいてHCCの発生を誘発する化合物が投与されているか、または悪性肝細胞が移植されている工程;および
(ii) 該免疫不全のFah欠損マウスにおいてHCCに対する該候補薬剤の効果を評価する工程であって、ここで、該候補薬剤の投与前の該マウスと比べた該マウスの腫瘍成長または腫瘍体積の減少は、該候補薬剤がHCCの処置に有効であることを示す工程、
を含む、方法。
【請求項48】
(i) ヒト肝細胞を移植した免疫不全のFah欠損マウスに外因性因子を投与する工程であって、ここで、該マウスは、さらにIL−1Rの発現について欠損型であるか、または該マウスにIL−1Rアンタゴニストが投与される工程;および
(ii) 該免疫不全のFah欠損マウスにおいて、肝臓機能の少なくとも1種類のマーカーを測定する工程であって、ここで、該肝臓機能の少なくとも1種類のマーカーが、AST、ALT、ビリルビン、アルカリホスファターゼおよびアルブミンから選択され、該外因性因子の投与前の該マウスと比べて該マウスにおけるAST、ALT、ビリルビンもしくはアルカリホスファターゼの増加またはアルブミンの減少は、該外因性因子が毒性であることを示す工程、
を含む、ヒト肝細胞に対する外因性因子のインビボでの効果の評価方法。
【請求項49】
前記外因性因子は、既知の毒素であるかまたは毒素である疑いがある物質である、請求項48に記載の方法。

【図1f】
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【図1g】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図4a】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図4f】
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【図4g】
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【図4h】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図5f】
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【図5k】
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【図5l】
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【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図4b】
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【図5g】
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【図5h】
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【図5i】
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【図5j】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図7e】
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【図7f】
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【図7g】
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【図7h】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−525154(P2012−525154A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508783(P2012−508783)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/033210
【国際公開番号】WO2010/127275
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(506124239)オレゴン ヘルス アンド サイエンス ユニバーシティ (8)
【Fターム(参考)】