説明

生体内情報モニタ装置およびモニタ方法

【課題】 呼気・吸気ラインに直接接続しないで呼吸器系の装置が正常に動作しているか否かを測定できる装置を提供する。
【解決手段】 少なくとも呼吸器系の生体内情報を測定するための生体内情報モニタ装置1は、測定する被験者の両方の肺部分に配置する少なくとも2つの加速度センサ11,12,13,14と、前記各加速度センサから取得した加速度情報に基づいて、速度、位置または振動として生体内情報に換算する生体内情報換算手段15と、換算した生体内情報を、外部出力する出力手段16と、から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は呼吸系の情報を含む被験者の生体内情報をモニタするモニタ装置およびモニタ方法に関する。より詳しく述べると、人工呼吸器、麻酔器などにおける呼吸器系機器と接続または併用して呼吸情報をモニタするための生体内情報モニタ装置およびモニタ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工呼吸器での被験者の状況に応じた酸素吸入濃度のチェックや、麻酔器による麻酔時の麻酔ガスの吸収度のチェックのために流量センサが使用されている。
【0003】
人工呼吸器(口元用)における呼吸管理において、通常使用されるセンサは、マウスピースと、人工呼吸器本体をマウスピースに接続する蛇管との間に挿入されるが、大きく(デッドスペース大)、重いため、使用したいときだけ一時的に設置して被験者の状態をみる程度しか使えない。また、被験者毎に人体との接触部を交換する必要があるが、交換部品が高価である。したがって、緊急時の呼吸管理のためには交換部品が高価であっても使用しなければならないが、日常的に通常の呼吸管理にも使用したくても、高価なため使用しにくい。
【0004】
また、呼吸の状態をリアルタイムで観測したい場合があるが、呼気側と吸気側とで異なるタイプのセンサを用いているので、観測波形が別々になってしまい、呼吸状態の判断が面倒である。
【0005】
そのため、特許文献1では、図3に示す通り呼吸気が流れる第1の流路52と、第1の流路52から分岐形成され、吸気のみを通過させる第2の流路53と、第1の流路52から分岐形成され、呼気のみを通過させる第3の流路54とを備えたマウスピース51と、第2の流路52中に設けられ、吸気量を検出する第1の流量センサ57と、第3の流路54中に設けられ、呼気量を検出する第2の流量センサ58とからなる呼吸器流量計が開示されている。
【特許文献1】 特開2002−136595
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなタイプの呼吸器系流量計では、マウスピースを介して接続されているので被験者の分泌物による流路の一部閉塞などによって、正確な流量を測定できない場合もある。
【0007】
また、例えば人工呼吸器を施す際に、場合によっては片側の肺にしか接続されていない場合もあり、このような場合には正確な流量を測定することができない。
さらに、特許文献1に記載の装置では、被験者からの呼気流量または吸気流量から流量を直接測定する方式であり、測定後に洗浄・殺菌を行うかあるいは使い捨てにしないと、衛生上の問題がある。
【0008】
したがって、本発明の課題は呼気・吸気ラインに直接接続しないで呼吸器系の装置が正常に動作しているか否かを測定できる生体内測定情報のモニタ装置およびモニタ方法を提供することである。
【0009】
本発明の別の課題は、呼吸器系の情報に加え心臓の鼓動情報や横隔膜の情報など他の器官の生体内情報をモニタすることが可能な生体内情報のモニタ装置およびモニタ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、少なくとも呼吸器系の生体内情報をモニタするための生体内情報モニタ装置であって、測定する被験者の両方の肺部分に配置する少なくとも2つの加速度センサと、前記各加速度センサから取得した加速度情報に基づいて、速度、位置または振動として生体内情報に換算する生体内情報換算手段と、換算した生体内情報を、外部出力する出力手段と、から構成されていることを特徴とする生体内情報モニタ装置に関する。
【0011】
本発明の生体内情報モニタ装置において、生体内情報換算手段は、両方の肺と、横隔膜および/または心臓の振動情報を取得することができる。
【0012】
本発明の生体内情報モニタ装置は、呼吸器系装置の適用前、適用中、および/または適用後の被験者に接続されて、呼吸器系の生体情報をモニタすることができる。
【0013】
本発明の生体内情報モニタ装置は、流量計測器と接続または未接続の呼吸器系装置が装着された被験者に適用される。
【0014】
また、上記課題を解決する本発明は、被験者からの呼吸器系の振動情報、速度情報または位置情報を含む生体内情報をモニタする方法であって、被験者の呼吸器系相当部分少なくとも2箇所を同時または別個の加速度センサを配置して、当該呼吸器系部分の加速度を測定する工程と、前記測定した加速度を振動情報、速度情報、位置情報の少なくとも1つの生体内情報に換算する工程と、換算した生体内情報を、停止命令があるまで出力する工程と、を含むことを特徴とする生体内情報のモニタ方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の生体内情報モニタ装置は、人工呼吸器等とマウスピースとのあいだの流路に流量計を介さず加速度センサからのデータに基づいて生体情報を測定できるので、流路の閉塞などによる誤作動なしに常に安定して生体情報を取得できる。
しかも、本発明の生体内情報モニタ装置は少なくとも2つの肺に相当する部分に加速度センサを設けているので、両方の肺の情報を各々モニタ、特にリアルタイムでモニタすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の生体情報モニタ装置を被験者の肺に接続した様子を示す図面である。
図1に示す通り、本発明の生体内情報モニタ装置1は、少なくとも2つの加速度センサ、図1の例においては左右の肺相当部分と、横隔膜部分および心臓部分の4つの加速度センサ11、12、13、14)と、各加速度センサ11、12、13、14からのデータを生体情報に換算するための生体情報換算手段15と、換算した生体情報を、モニタ等の外部装置に出力するための生体内情報出直手段出力手段16から主として構成されている。
なお、本発明において使用する用語「生体内情報」とは、呼吸器系をモニタする情報(より具体的には両方の肺における加速度(振動の強度の変化)、速度、位置)情報を含む生体内情報を意味し、その他の器官における情報を含んでもよいことを意味する。
【0017】
本発明における加速度センサとは、加速度、すなわち単位時間当たりの速度の変化を検出するための回路素子、装置等を意味する。従来は機械式のセンサが利用されてきたが、現在は半導体を用いた製品が主流になっている。半導体式のセンサは小型で、かつ精密な検出が可能であるので好ましい。
【0018】
なお、半導体を用いた加速度センサには、静電容量検出方式のほか、ピエゾ抵抗効果を利用したもの、シリコン結晶異方性エッチングを利用したものなどが存在し、本発明においても適用可能である。
【0019】
本発明の生体情報モニタ装置において、生体内情報換算手段15は、加速度センサ11、12、13、14で測定した加速度を生体情報に換算する機能を有する。本発明においては、両側の肺を含む少なくとも2の呼吸器系の情報を振動(強度)の変化、速度または位置情報の少なくとも1つとして取得する。振動(強度)情報は、各加速度センサで測定した加速度の測定値をそのまま使用でき、速度情報は各加速度センサで測定した加速度の測定値を積分することによって得られ、そして、位置情報は、計算した速度情報をさらに積分することによって得られる。
【0020】
生体内情報換算手段15は、このように各加速度センサ11、12、13、14で測定された加速度の値を逐次、好ましくはリアルタイムで所望の生体内情報データに換算して出力できる機能を有するものであれば特に限定されることはなく、電子制御回路、CPU、メモリなどから構成された電子計算機など当該技術分野に周知のものが使用できる。また、例えば、加速度をそのまま出力する加速度モード、積分して速度値に変換する速度モード、さらに積分して位置として出力する位置モードなど切り替えて換算させる構成にすることもできる。
【0021】
例えば、本発明の生体内情報モニタ装置における加速度センサ11、12、13、14を図1に示す通り、右側の肺(11)、左側の肺(12)、心臓(13)、横隔膜(14)に相当する部分に適用して、呼吸器系装置である人工呼吸器を適用した場合、加速度の有無、強弱に基づいて各期間の動作状況を把握することが可能である。
【0022】
この場合、従来公知の流量計をマウスピースを装着してもしなくてもよい。流量計を装着した場合には、流量計の正確な動作を本発明の生体内情報モニタ装置により、推測ができ、しかも両方の肺部分に配置した加速度センサ11、12からの情報に基づいて各肺で正常な呼吸が行われているか否かを判定できる。
【0023】
また、流量計を装着していなくとも、加速度の積分値により呼吸状況を把握することが可能となる。
【0024】
さらに、人工呼吸器装着前後、あるいは装着前から装着中および装着後にいたるまで本発明の生体内情報モニタ装置を装着稼動することによって、人工呼吸器による呼吸情報を把握することができる。
【0025】
また、心臓相当部分に加速度センサ13を装着することによって、心臓の鼓動の強度を経時的に把握することが可能となる。
【0026】
さらに、横隔膜相当部分に加速度センサ14を装着することによって、横隔膜の作用状況を経時的にモニタすることができる。
【0027】
このように、両方の肺に、あるいは両方の肺に加えて測定したい所望の器官の相当部分に加速度センサを配置することによって、両方の肺の呼吸情報にくわえて、各種機関の動作情報を加速度(振動)、速度、位置情報として連続して測定することが可能となる。
【0028】
このようにして、加速度センサ11、12、13、14で測定され、所望の生体内情報に換算された生体内情報は、生体内情報出直手段出力手段16により外部出力される。
【0029】
例えば、人工呼吸器などの呼吸器系機器のモニタや、別途も受けたモニタ、コンピュータシステム、さらにはネットワークを介して他の場所に設けられたコンピュータシステム等に出力したり、プリンタなどの印刷手段に出力したりすることが可能である。
【0030】
出力に当たって、加速度センサ11、12、13,14からの生体内情報は各々個別情報として出力される。
なお、加速度センサの数は2個以上あれば特に制限されるものではなく、例えば左右の肺相当部分に2以上の加速度センサを設けることも本発明の範囲内である。
【0031】
このように、複数個の加速度センサを配置することによって、呼吸ラインに流量センサを設けなくとも、被験者の呼吸器系の状況をモニタすることができる。さらに、流量センサと併用することによって、流量センサの誤動作のモニタ、左右の肺における呼吸量の状況などをモニタすることが可能である。
【0032】
また、呼吸器系の状況は、人工呼吸器、麻酔器などの装着時以外でも、例えば未装着時での呼気、吸気状況をモニタすることが可能である。
【0033】
本発明の生体内情報モニタ装置は、単独で呼吸情報およびその他の器官の情報をモニタすることも可能であるが、呼吸器系機器、特に人工呼吸器と併用することが、人工呼吸器が正常に動作しているか否か(両方の肺で正常に呼吸が行われているか否か)を判断できる点で好ましい。このような人工呼吸器において、特に高頻度振動喚起モードで動作する人人工呼吸器に適用することが好ましい。
【0034】
次に、本発明の生体内情報のモニタ方法(装置1の動作)を図2に基づいて、説明する。図2は、本発明の生体内情報モニタ装置を用いた生体内情報のモニタ方法を示すフローチャートである。
【0035】
図2に示す通り、本発明ではまず、2以上の加速度センサ(図1に示す例では4個)を被験者の呼吸器系相当部および測定したい器官相当部(図1の例では心臓および横隔膜)に配置し(S1)、加速度センサにより呼吸器系相当部分の加速度(振動)を測定する(S2)。
【0036】
次いで、測定した加速度を各々所望の生体内情報値(加速度、速度、位置情報)に換算し(S3)、そして換算した値を流量としてモニタ等に出力する。工程S2からS4は、終了の命令(S5)を受けるまで続けられ(S2からS4)、終了の命令があれば終了する(S5:Yes)
なお、本発明の流量モニタ方法は、同時に2箇所以上の呼吸器系相当部分に加速度センサを配置して加速度を測定して、所望の生体内情報に換算することが好ましいが、1箇所ずつ測定することも本発明の範囲内である。
【0037】
また、本発明でいう、被験者とは、一般的に人工呼吸器、麻酔器などの呼吸器系機器を装着する対象をいい、ヒトであっても動物であってもよい。また、例えば人工呼吸器装着前後の呼吸器系の生体内情報を測ることも本発明の対象である。
【0038】
さらに、呼吸器系相当部分とは、被験者が流量を測定する状態(一般には、人工呼吸器や麻酔器が施される状態、より一般的には仰向け状態)で両側の肺に相当する部分、心臓部分、横隔膜部分等を示す。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】 本発明の生体情報モニタ装置を被験者の肺に接続した様子を示す図面である。
【図2】 本発明の生体内情報モニタ装置を用いた生体内情報のモニタ方法を示すフローチャートである。
【図3】 従来の呼吸器系流量計示す図面である。
【符号の説明】
【0040】
1 生体内情報モニタ装置
11、12、13.14 加速度センサ
15 生体内情報換算手段
16 生体内情報出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも呼吸器系の生体内情報をモニタするための生体内情報モニタ装置であって、
測定する被験者の両方の肺部分に配置する少なくとも2つの加速度センサと、
前記各加速度センサから取得した加速度情報に基づいて、速度、位置または振動として生体内情報に換算する生体内情報換算手段と、
換算した生体内情報を、外部出力する出力手段と、
から構成されていることを特徴とする生体内情報モニタ装置。
【請求項2】
前記生体内情報換算手段は、両方の肺と、横隔膜および/または心臓の振動情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の生体内情報モニタ装置。
【請求項3】
前記生体内情報モニタ装置は、呼吸器系装置の適用前、適用中、および/または適用後の被験者に接続されて、呼吸器系の生体情報をモニタすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生体内情報モニタ装置。
【請求項4】
前記生体内情報モニタ装置は、流量計測器と接続または未接続の呼吸器系装置が装着された被験者に適用されることを特徴とする請求項3に記載の生体内情報モニタ装置。
【請求項5】
被験者からの呼吸器系の振動情報、速度情報または位置情報を含む生体内情報をモニタする方法であって、
被験者の呼吸器系相当部分少なくとも2箇所を同時または別個の加速度センサを配置して、当該呼吸器系部分の加速度を測定する工程と、
前記測定した加速度を振動情報、速度情報、位置情報の少なくとも1つの生体内情報に換算する工程と、
換算した生体内情報を、停止命令があるまで出力する工程と、
を含むことを特徴とする生体内情報のモニタ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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