生体内観察装置
【課題】手の所定部位等の生体の局所領域に対して光を照射できるようにするとともに、当該生体の局所領域の生体透視画像を好適に取得できるようにする。
【解決手段】生体配置領域Xを向く発光面201を有し、生体配置領域Xにある生体に対して光を照射する面発光2部と、生体配置領域Xにある生体を透過した光を受光して画像データを出力する撮像部3と、生体配置領域Xと面発光部2の発光面201との間に設けられ、当該発光面201から出る光の一部を遮る遮光部材8とを具備する。
【解決手段】生体配置領域Xを向く発光面201を有し、生体配置領域Xにある生体に対して光を照射する面発光2部と、生体配置領域Xにある生体を透過した光を受光して画像データを出力する撮像部3と、生体配置領域Xと面発光部2の発光面201との間に設けられ、当該発光面201から出る光の一部を遮る遮光部材8とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意の場所で容易に、リアルタイムの生体透視画像を取得することができる生体内観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の生体内観察装置としては、特許文献1に示すように、血管造影剤が投与された被検体に対して特定の波長域の励起光と可視光とを交互に照射し、撮像手段によって前記励起光が照射された蛍光画像と通常画像とを交互に取得し、取得した蛍光画像を所定の閾値により閾値処理して血管画像を抽出し、前記取得した通常画像に前記抽出した血管画像を重畳させた合成画像を作成する技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、当該技術では、被検体への血管造影剤の投与が必要であり、また、複雑な画像処理が必要である。
【0004】
ここで本願発明者は、血管造影剤を用途することなく又は複雑な画像処理を行うことなく、生体透視画像を取得可能な生体内観察装置の開発を進めている。この生体内観察装置は、所定波長の光を生体に照射して、当該生体からの透過光を受光することによって生体内の例えば血管を撮像するように構成されている。ここで、例えば800〜1000nmの近赤外光は生体組織を透過するので、CCDカメラ等の撮像装置が撮像した画像は透過光を受けて白く表されるが、血管部分は血液中のヘモグロビンに近赤外光が吸収されるため、黒く表される。
【0005】
上記生体内観察装置を用いて生体内を観察しようとした場合には、例えば生体全体を検査する全体検査と、生体の局所領域を検査する局所検査とを行う用途が考えられる。
【0006】
しかしながら、全体検査及び局所検査の両方において同一構成の装置を用いる場合には、全体検査に仕様を合わせておく必要があり、局所検査を行うに当たり、局所領域以外から透過した光量が過大となり、所望の局所領域に起因する透過光を正確に検出することができず、結果として局所検査が不正確になってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−226072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決すべくなされたものであって、簡単な装置構成により、手や足等の所定部位等の生体の局所領域に対して光を照射できるようにするとともに、当該生体の局所領域の生体透視画像を好適に取得できるようにすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る生体内観察装置は、生体配置領域を向く発光面を有し、当該生体配置領域にある生体に対して光を照射する面発光部と、前記生体配置領域に対して前記面発光部とは反対側に設けられ、前記生体配置領域にある生体を透過した光を受光して画像データを出力する撮像部と、前記面発光部に対して着脱可能に設けられ、前記発光面から出る光の一部を遮る遮光部材とを具備することを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、発光面から出る光の一部を遮る遮光部材を設けているので、生体配置領域における光照射範囲を狭めることができ、生体の局所領域に対して光を照射できる。また、生体の局所領域に対して光を照射できるので、生体の局所領域の生体透視画像を好適に取得することができる。さらに、遮光部材が面発光部に対して着脱可能であることから、用途に応じて、例えば手全体などの生体全体の生体透視画像を取得する又は指などの生体の局所領域の生体透視画像を取得することを遮光部材の取り付け及び取り外しによって簡単に切り換えることができる。その上、特別な技術や経験を必要とせずに、誰でも容易に生体内の異物や血管を観察することができる。X線を使用せずに生体内を観察することができるので、長時間光照射しても人体に無害であり、また、単に光を照射するだけであるので、血行を確認するに際し被験者に苦痛を与えることはない。加えて、本発明は容易に小型化できるので、本生体内観察装置を手術室内に持ち込んで、リアルタイムで生体内の観察を行いながら、各種手術を行うこともできる。
【0011】
前記撮像部に対して遮光部材により遮られない光を受光させるためには、前記遮光部材が、前記発光面からの光を遮る遮光部と、前記発光面からの光を生体配置領域側に透過させる開口部とを有しており、前記開口部の開口中心が前記撮像部の光軸上又はその近傍となるように、前記遮光部材が前記面光源に対して着脱可能に取り付けられるものであることが望ましい。
【0012】
遮光部材を面光源に対して着脱可能に構成した場合には、前記遮光部材を前記面光源に対して位置決めして固定する固定機構を有することが望ましい。これならば遮光部材を面光源に対して固定した際に位置決めされることから、撮像部に対して遮光部材が位置決めされることになり、各検査において撮像部と遮光部材の位置決めを一々行う必要が無くなる。
【0013】
また生体の局所領域の生体透視画像を取得する場合において、各検査で撮像位置が異なることを防止するためには、前記遮光部材に設けられており、前記生体を前記遮光部材に対して位置決めして、前記遮光部材に遮られない光を前記生体の所定部位に照射させる位置決め部材を有することが望ましい。
【0014】
面発光部の具体的な実施の態様としては、前記面発光部が、前記生体に対して800〜1000nmの波長領域に波長ピークを有する光を照射するものであることが望ましい。このように、800〜1000nmの近赤外光は生体組織を透過するので、CCDカメラ等の撮像装置が撮像した画像は透過光を受けて白く表されるが、血管部分は血液中のヘモグロビンに近赤外光が吸収されるため、黒く表される。このような近赤外光の特性を利用して静脈を撮像する技術は従来知られているが、近赤外光を利用して動脈を撮像する技術は知られていない。すなわち、例えば、指の背面から近赤外光を照射すると、指の内部で光が散乱しながら、指の腹側に抜けてくるが、指の深部にある骨や動脈は消され、皮下にある静脈だけが撮像されるとされている。
【0015】
これに対して、本発明者は、0.4〜10μWの光を受光した際の出力あたりの最低検出光量が0.055μW/ビット以下である特定の感度を有する撮像部を用いることにより、全く予想だにしないことに、静脈のみならず、動脈をも撮像することが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
面発光部の具体的な構造としては、前記面発光部が、複数のLEDと、当該LEDを収容する筐体と、前記筐体において前記LEDの光射出側に設けられ前記発光面を形成する透光部材とを有することが望ましい。ここで透光部材が、入射光を55°以上の角度で発散しうる拡散板を備えていることが好ましい。このようなものであれば、例えば、光源として複数個のLEDが用いられた場合に、複数個のLEDから発せられた光が拡散板で拡散されるので、輝度が均一化され照射ムラが解消された光を観察対象である生体に照射することができる。
【0017】
また、本発明に係る生体内観察装置は、前記拡散板と前記生体配置領域との間に設けられた偏光板を備えていることが好ましい。前記拡散板に重ねて偏光板が備わっていることにより、最適な振動方向(透過軸)の偏光を生体に照射することができるので、生体表面における光の反射を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
このような構成の本発明によれば、簡単な装置構成により、手や足等の所定部位等の生体の局所領域に対して光を照射できるようにするとともに、当該生体の局所領域の生体透視画像を好適に取得できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る生体内観察装置の構成を示す模式図。
【図2】同実施形態の生体内観察装置の構成を示す斜視図(遮光部材未装着)。
【図3】同実施形態の生体内観察装置の面発光部を主として示す平面図。
【図4】同実施形態の生体内観察装置の面発光部を主として示す断面図。
【図5】同実施形態の面発光部の分解斜視図。
【図6】同実施形態に係る生体内観察装置を用いて指を撮像した写真。
【図7】同実施形態の生体内観察装置の構成を示す斜視図(遮光部材装着)。
【図8】同実施形態の生体内観察装置の構成を示す側面図(遮光部材装着)。
【図9】同実施形態の生体内観察装置の遮光部材を主として示す平面図。
【図10】同実施形態の生体内観察装置の遮光部材及び面発光部を主として示す断面図。
【図11】変形実施形態の固定機構を示す断面図。
【図12】変形実施形態に係る位置決め部材を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態に係る生体内観察装置100は、例えば手や足等の生体に光を照射して、当該生体から透過する透過光を撮像して、生体内の血管や異物等を示す生体透視画像を取得するものである。
【0022】
具体的にこのものは、図1及び図2に示すように、生体配置領域Xを向く発光面201を有し、当該生体配置領域Xにある生体に対して光を照射する面発光部2と、生体配置領域Xに対して面発光部2とは反対側に設けられ、生体配置領域Xにある生体を透過した光を受光して画像データを出力する撮像部3とを備えている。本実施形態では、生体配置領域Xを挟んで下側に面発光部2が設けられ、上側に撮像部3が設けられた構成を示している。
【0023】
面発光部2は、装置基台100A上に設けられて上方に位置する生体配置領域Xに800〜1000nmの波長領域に波長ピークを有する近赤外光を照射するものである。具体的に面発光部2は、図3〜図5に示すように、複数のLED21が搭載された概略矩形板状をなすLED搭載基板22と、当該LED搭載基板22を収容する平面視概略矩形状をなす筐体23と、この筐体23においてLED21の光射出側に設けられ前記発光面201を形成する透光部材24とを有する。
【0024】
LED搭載基板22は、特に図4及び図5に示すように、装置基台100Aの上面に固定されており、電源部4(図1参照)から電力が供給される。またLED搭載基板22の上面には、複数のLED21が例えば縦横マトリックス状に搭載されている。LED21としては、例えば810nmに波長ピークを有する170mWのLEDを用いることが考えられる。
【0025】
筐体23は、特に図4に示すように、LED搭載基板22の周囲を囲むように装置基台100Aの上面に固定されており、一側面(本実施形態では奥側に位置する背面)にはLED放熱用の複数の貫通孔23hが形成されている。また、図示はしないが、この複数の貫通孔23h近傍には、LED放熱用の放熱ファンが設けられている。この放熱ファンにも前記電源部4から電力が供給される。
【0026】
透光部材24は、筐体23の上部開口に取り付けられるものであり、平面視において筐体23の上部開口と略同一形状をなす概略矩形板状をなすものである。この透光部材24は、複数個のLED21から発せられた光を拡散して、筐体23の上部開口から射出される光の輝度を均一化し、照射ムラのない光を生体に照射する拡散板であり、透光部材24の上面が発光面201となる。
【0027】
拡散板としては、例えば、光透過性基板の表面にエンボス加工やシボ加工等により凹凸を設け、表面をすりガラス面状に構成したものや、光透過性基板の表面に白色塗料を隙間を空けて塗布したもの、光透過性基板中に光散乱を生じさせる粒子を含有させたもの等の、光散乱を利用して光拡散性が付与された種々のものを用いることができる。このような拡散板のなかでも、アセタール樹脂からなり、入射光を55°以上の角度で発散しうるものが好適に用いられる。このような発散角度を有する拡散板を用いることにより、照射ムラを解消し、検査対象を均一に照射することができる。
【0028】
このことを確認するために、φ5mmの穴を開けた遮光板にLEDを嵌め込み、当該遮光板に載せる拡散板の厚さを変えて、LEDの真上における光強度(I)と、2個のLEDを10mmの間隔を空けて並べたときの2個のLEDの中間点の真上における光強度(Im)との比(Im/I)を求めた。当該Im/I値が1に近いほど、照度ムラが解消されることを示す。得られた結果は表1に示した。
【0029】
【表1】
【0030】
この結果、光源から発した光を55°以上の角度で発散できる拡散板を用いた場合、いずれのIm/I値も0.85以上であり、充分な照度ムラ解消効果が確認された。
【0031】
また透光部材24の裏面には、複数のLED21から出る光を所定範囲に規定する仕切り板25が設けられている。この仕切り板25は、平面視において透光部材24と同一形状をなすものであり、中央部には前記LED21からの光を外部(上部)に射出するための開口部251が形成されている。このような構成により、前記透光部材24の上面において前記仕切り板25の開口部251に対応する部分が発光面201となる。つまり、面発光部2の発光面201は、仕切り板25の開口部251の平面視形状と同一形状となる。
【0032】
撮像部3は、生体配置領域Xの上部に設けられており、当該生体配置領域Xにある生体を透過した光を受光して生体透視画像を示す画像データを出力するものである。本実施形態の撮像部3は、デジタルカメラであり、0.4〜10μWの光を受光した際の出力あたりの最低検出光量が0.055μW/ビット以下である特定の感度を有するものである。具体的には、CCDカメラやCOMSカメラ等を用いることができる。
【0033】
また、撮像部3は、装置基台100Aに対して鉛直方向に立設されたスタンド部材5に面発光部2に対して進退移動可能に固定されている。具体的に撮像部3及びスタンド部材5の間にはスライド機構6が設けられている。このスライド機構6は撮像部3を所定範囲内で発光面201に対して鉛直方向にスライド移動させるものである。
【0034】
そして撮像部3により得られた生体透視画像は、電源部4を介してコンピュータ等の情報処理装置7に出力される(図1参照)。そして生体透視画像は、情報処理装置7の表示部画面上に表示されるとともに、情報処理装置7の画像処理機能によって画像処理される。なお、少なくとも生体透視画像を表示する表示部に関して言うと、予め生体内観察装置100に備えさせたものであっても良い。
【0035】
前記撮像部3として、0.4〜10μWの光を受光した際の出力あたりの最低検出光量が0.055μW/ビット以下であるCCDカメラを備えた本生体内観察装置100を用いて、発光面201上に指を置き、指の背面から近赤外光を照射して、指の血管を観察した画像を図6(a)に示す。図6に示すように、黒く表された血管が明瞭に観察されることが確認された。なお、当該CCDカメラは、輝度に対応したデジタル出力(以下、単に輝度出力という。)が11ビットであるときの検出光量が0.33μWであり、輝度出力が197ビットであるときの検出光量が10.21μWである感度を有するものであり、この範囲において輝度出力と検出光量の間には線形の関係が認められた。一方、これより感度の低い(最低検出光量が0.055μW/ビットを超える)CCDカメラを用いた場合は、図6(b)に示すように、指の血管を観察することができなかった。なお、図6(c)は後述する遮光部材8を装着した状態で指の血管を観察した画像である。
【0036】
このように構成した本実施形態に係る生体内観察装置100によれば、特別な技術や経験を必要とせずに、誰でも容易に生体内の異物や血管を観察することができる。また、本生体内観察装置100は、0.4〜10μWの光を受光した際の出力あたりの最低検出光量が0.055μW/ビット以下である特定の感度を有する撮像部3を備えているので、静脈のみならず、動脈も撮像することができる。
【0037】
しかして本実施形態の生体内観察装置100は、図7〜図10に示すように、面発光部2に対して着脱可能に設けられ、発光面201から出る光の一部を遮る遮光部材8を備えている。なお、図7は、図2の生体内観察装置100に遮光部材8を装着した状態である。
【0038】
遮光部材8は、特に図9に示すように、前記面発光部2の透光部材24と平面視において概略同一形状をなす平面視矩形板状をなすものであり、発光面201からの光を遮る遮光部81と、発光面201からの光を生体配置領域X側に透過させる開口部82とを有している。この遮光部材8に設けられた開口部82は、前記仕切り板25に設けられた開口部251よりも開口サイズが小さく形成されている。具体的な開口部82の形状としては、平面視概略円形状である。
【0039】
そして、後述する固定機構9により、開口部82の開口中心が撮像部3の光軸3C上又はその近傍となるように、遮光部材8が前記面発光部2に対して着脱可能に取り付けられる(図8参照)。なお、開口部82の開口中心と、前記仕切り板25の開口部251の開口中心とは平面視において略一致しており、撮像部3の光軸3C上に仕切り板25の開口部251の開口中心がある。
【0040】
固定機構9は、遮光部材8を面発光部2の発光面201に対して位置決めして固定するものであり、具体的には発光面201の平面方向における遮光部材8の位置を位置決めするものである。本実施形態の固定機構9は、図9に示すように、遮光部材8の4つの側辺部に設けられ、面発光部2の4つの側面2a〜2dに接触する係止片9a〜9dから形成されている。この係止片9a〜9dは、遮光部材8の4つ角に設けられている。この固定機構9により、遮光部材8の開口部82の開口中心と面発光部2の発光面201の中心とが一致するとともに、遮光部材8の開口部82の開口中心が撮像部3の光軸3C上に位置する。
【0041】
そして遮光部材8には、図7等に示すように、検査される生体を遮光部材8及び発光面201に対して水平方向に位置決めして、遮光部材8に遮られない光を生体の所定部位に照射させる位置決め部材10が設けられている。
【0042】
本実施形態の位置決め部材10は、所定の指と接触して当該所定の指を遮光部材8の開口部82に位置決めするものであり、図9及び図10に示すように、遮光部材8の開口部82と連通する貫通孔10hを有する。そして位置決め部材10は、図7及び図9に示すように、開口部82の奥側(スタンド部材側)に位置して指の先端部に接触する概略平面状の第1接触面10aと、開口部82の左右に位置して指の任意の面(例えば指の上面(指の背))に接触する概略V字状をなす第2接触面10bとを有する。そして第2接触面10bの谷線10b1が遮光部材8の開口部82の中心を通るように構成されている。第1接触面10aにより開口部82に対する奥行き方向(図9においてY方向)の指の位置が位置決めされ、第2接触面10bにより開口部82に対する左右方向(図9、図10おいてX方向)の指の位置が位置決めされる。なお、開口部82の開口中心と撮像部3の光軸3Cとがほぼ一致していることから、前記位置決め部材10により指が撮像部3の光軸3Cに対しても位置決めされることになる。
【0043】
この生体内観察装置100により、遮光部材8を取り外した状態で生体の大局領域、つまり、発光面201全体の範囲内に位置する生体の透視画像(具体的には手の大部分の透視画像)を撮像する(図6(a)参照)。一方、遮光部材8を取り付けた状態で生体の局所領域、つまり遮光部材8の開口部82の範囲内に位置する生体の透視画像(具体的には指の所定部分の透視画像)を撮像する(図6(c)参照)。
【0044】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る生体内観察装置100によれば、発光面201から出る光の一部を遮る遮光部材8を設けているので、生体配置領域Xにおける光照射範囲を狭めることができ、生体の局所領域に対して光を照射できる。また、生体の局所領域に対して光を照射できるので、生体の局所領域の生体透視画像を好適に取得することができる。
【0045】
さらに、遮光部材8が面発光部2に対して着脱可能であることから、用途に応じて、例えば手全体などの生体全体の生体透視画像を取得する又は指などの生体の局所領域の生体透視画像を取得することを遮光部材8の取り付け及び取り外しによって簡単に切り換えることができる。また、位置決め部材10により生体が発光面201に対して位置決めされるので、生体の所定領域に光を照射することができる。また、面発光部2に対して位置決めされている撮像部3によって生体を撮像することから、撮像部3により得られた画像を比較する等の撮像後の処理を容易化することができる。
【0046】
その上、本実施形態の生体内観察装置100により、特別な技術や経験を必要とせずに、誰でも容易に生体内の異物や血管を観察することができる。X線を使用せずに生体内を観察することができるので、長時間光照射しても人体に無害であり、また、単に光を照射するだけであるので、血行を確認するに際し被験者に苦痛を与えることはない。加えて、本発明は容易に小型化できるので、本生体内観察装置100を手術室内に持ち込んで、リアルタイムで生体内の観察を行いながら、各種手術を行うこともできる。
【0047】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。例えば、固定機構9としては、図11に示すように、遮光部材8の下面に設けられた凸部91と、透光部材24の上面に設けられた凹部92とから構成しても良い。図11においては、複数の凸部91及び複数の凹部92により平面方向に位置決めするものであるが、凸部91及び凹部92の形状を工夫して面発光部2に対して遮光部材8を平面方向に位置決めするようにしても良い。なお、遮光部材の下面に凹部、透光部材の上面に凸部を設けて構成しても良い。
【0048】
また、前記実施形態の位置決め部材10は、第1接触面10a及び第2接触面10bを有するものであったが、第1接触面10aのみ又は第2接触面10bのみを有するものであっても良い。この場合、第1接触面10aは平面状の他、図12に示すように、平面視V字形状をなすものであっても良い。この場合、第1接触面10aの折れ曲がり線が、開口部82のX方向位置を一致するように形成することが考えられる。さらに、位置決めに関して言うと、遮光部材8の上面に位置決め線又は図を描いても良い。そして位置決め線又は図にしたがって指を配置することによって指が開口部に対して位置決めされるように構成しても良い。
【0049】
また、前記実施形態の遮光部材8の開口部82は平面視概略円形状をなすものであったが、その他、平面視矩形状等の多角形状、平面視楕円状又は長円状、平面視部分円状など発光面の発光面積を狭めるものであれば、種々の形状とすることができる。このとき、生体透視画像を取得すべき局所領域のサイズに合わせて種々の開口部を有する遮光部材を用意しておき、用途に応じて適宜取り替えることが考えられる。
【0050】
さらに前記実施形態の位置決め部材は遮光部材上に設けられているが、遮光部材とは別に設けたものであっても良い。
【0051】
その上、前記実施形態では位置決め部材10は遮光部材8の開口部82に対して生体の局所領域(指の所定領域)を位置決めするものであったが、遮光部材8を装着していない面発光部2の発光面201に対して生体を位置決めするものであっても良い。
【0052】
加えて、前記実施形態の位置決め部材10は、生体として手の指の透視画像を取得するために当該指を位置決めするものであったが、足の指の透視画像を取得するための当該足を位置決めする構成としても良い。
【0053】
また生体内観察装置100の透光部材24上に偏光板及びカットフィルタを設けても良い。
【0054】
偏光板は、拡散板である透光部材の反光源側の表面(上面)に重ねて設けられており、拡散板で拡散されて均一化された光から直線偏光を作り出すものである。偏光板としては、例えば、樹脂からなるフィルム状のもの等が用いられる。拡散板に重ねて偏光板が設けられていることにより、最適な振動方向(透過軸)の偏光を生体に照射することができるので、生体表面における光の反射を低減することができる。なお、本実施形態では、偏光板の上に生体を載置して観察することができる。このような拡散板と偏光板とを用いて、観察対象である生体に照射する光の光質及び光量を調整することにより、コントラストが明瞭な画像を得ることができる。
【0055】
カットフィルタは、撮像部の光導入口に設けられており、撮像部内に太陽光等の外乱光が入り込むことを防いでいる。このようなカットフィルタを備えていることにより、外乱光(可視光線)を遮断することができるので、ノイズが低減された鮮明な画像を得ることができる。生体を透過した光は撮像部内の集光レンズにより集められ、CCDイメージセンサ等の撮像素子の受光平面に結像する。そして、適切な集光レンズを選択することにより、面発光部2の発光面201全域を撮像範囲とすることができる。例えば、発光面201が80×100mmのサイズである場合、集光レンズとしては焦点距離が6〜10mmであるものが好適に用いられる。
【0056】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
100・・・生体内観察装置
X ・・・生体配置領域
2 ・・・面発光部
201・・・発光面
21 ・・・LED
23 ・・・筐体
24 ・・・透光部材
3 ・・・撮像部
3C ・・・撮像部の光軸
8 ・・・遮光部材
81 ・・・遮光部
82 ・・・開口部
9 ・・・固定機構
10 ・・・位置決め部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意の場所で容易に、リアルタイムの生体透視画像を取得することができる生体内観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の生体内観察装置としては、特許文献1に示すように、血管造影剤が投与された被検体に対して特定の波長域の励起光と可視光とを交互に照射し、撮像手段によって前記励起光が照射された蛍光画像と通常画像とを交互に取得し、取得した蛍光画像を所定の閾値により閾値処理して血管画像を抽出し、前記取得した通常画像に前記抽出した血管画像を重畳させた合成画像を作成する技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、当該技術では、被検体への血管造影剤の投与が必要であり、また、複雑な画像処理が必要である。
【0004】
ここで本願発明者は、血管造影剤を用途することなく又は複雑な画像処理を行うことなく、生体透視画像を取得可能な生体内観察装置の開発を進めている。この生体内観察装置は、所定波長の光を生体に照射して、当該生体からの透過光を受光することによって生体内の例えば血管を撮像するように構成されている。ここで、例えば800〜1000nmの近赤外光は生体組織を透過するので、CCDカメラ等の撮像装置が撮像した画像は透過光を受けて白く表されるが、血管部分は血液中のヘモグロビンに近赤外光が吸収されるため、黒く表される。
【0005】
上記生体内観察装置を用いて生体内を観察しようとした場合には、例えば生体全体を検査する全体検査と、生体の局所領域を検査する局所検査とを行う用途が考えられる。
【0006】
しかしながら、全体検査及び局所検査の両方において同一構成の装置を用いる場合には、全体検査に仕様を合わせておく必要があり、局所検査を行うに当たり、局所領域以外から透過した光量が過大となり、所望の局所領域に起因する透過光を正確に検出することができず、結果として局所検査が不正確になってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−226072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決すべくなされたものであって、簡単な装置構成により、手や足等の所定部位等の生体の局所領域に対して光を照射できるようにするとともに、当該生体の局所領域の生体透視画像を好適に取得できるようにすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る生体内観察装置は、生体配置領域を向く発光面を有し、当該生体配置領域にある生体に対して光を照射する面発光部と、前記生体配置領域に対して前記面発光部とは反対側に設けられ、前記生体配置領域にある生体を透過した光を受光して画像データを出力する撮像部と、前記面発光部に対して着脱可能に設けられ、前記発光面から出る光の一部を遮る遮光部材とを具備することを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、発光面から出る光の一部を遮る遮光部材を設けているので、生体配置領域における光照射範囲を狭めることができ、生体の局所領域に対して光を照射できる。また、生体の局所領域に対して光を照射できるので、生体の局所領域の生体透視画像を好適に取得することができる。さらに、遮光部材が面発光部に対して着脱可能であることから、用途に応じて、例えば手全体などの生体全体の生体透視画像を取得する又は指などの生体の局所領域の生体透視画像を取得することを遮光部材の取り付け及び取り外しによって簡単に切り換えることができる。その上、特別な技術や経験を必要とせずに、誰でも容易に生体内の異物や血管を観察することができる。X線を使用せずに生体内を観察することができるので、長時間光照射しても人体に無害であり、また、単に光を照射するだけであるので、血行を確認するに際し被験者に苦痛を与えることはない。加えて、本発明は容易に小型化できるので、本生体内観察装置を手術室内に持ち込んで、リアルタイムで生体内の観察を行いながら、各種手術を行うこともできる。
【0011】
前記撮像部に対して遮光部材により遮られない光を受光させるためには、前記遮光部材が、前記発光面からの光を遮る遮光部と、前記発光面からの光を生体配置領域側に透過させる開口部とを有しており、前記開口部の開口中心が前記撮像部の光軸上又はその近傍となるように、前記遮光部材が前記面光源に対して着脱可能に取り付けられるものであることが望ましい。
【0012】
遮光部材を面光源に対して着脱可能に構成した場合には、前記遮光部材を前記面光源に対して位置決めして固定する固定機構を有することが望ましい。これならば遮光部材を面光源に対して固定した際に位置決めされることから、撮像部に対して遮光部材が位置決めされることになり、各検査において撮像部と遮光部材の位置決めを一々行う必要が無くなる。
【0013】
また生体の局所領域の生体透視画像を取得する場合において、各検査で撮像位置が異なることを防止するためには、前記遮光部材に設けられており、前記生体を前記遮光部材に対して位置決めして、前記遮光部材に遮られない光を前記生体の所定部位に照射させる位置決め部材を有することが望ましい。
【0014】
面発光部の具体的な実施の態様としては、前記面発光部が、前記生体に対して800〜1000nmの波長領域に波長ピークを有する光を照射するものであることが望ましい。このように、800〜1000nmの近赤外光は生体組織を透過するので、CCDカメラ等の撮像装置が撮像した画像は透過光を受けて白く表されるが、血管部分は血液中のヘモグロビンに近赤外光が吸収されるため、黒く表される。このような近赤外光の特性を利用して静脈を撮像する技術は従来知られているが、近赤外光を利用して動脈を撮像する技術は知られていない。すなわち、例えば、指の背面から近赤外光を照射すると、指の内部で光が散乱しながら、指の腹側に抜けてくるが、指の深部にある骨や動脈は消され、皮下にある静脈だけが撮像されるとされている。
【0015】
これに対して、本発明者は、0.4〜10μWの光を受光した際の出力あたりの最低検出光量が0.055μW/ビット以下である特定の感度を有する撮像部を用いることにより、全く予想だにしないことに、静脈のみならず、動脈をも撮像することが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
面発光部の具体的な構造としては、前記面発光部が、複数のLEDと、当該LEDを収容する筐体と、前記筐体において前記LEDの光射出側に設けられ前記発光面を形成する透光部材とを有することが望ましい。ここで透光部材が、入射光を55°以上の角度で発散しうる拡散板を備えていることが好ましい。このようなものであれば、例えば、光源として複数個のLEDが用いられた場合に、複数個のLEDから発せられた光が拡散板で拡散されるので、輝度が均一化され照射ムラが解消された光を観察対象である生体に照射することができる。
【0017】
また、本発明に係る生体内観察装置は、前記拡散板と前記生体配置領域との間に設けられた偏光板を備えていることが好ましい。前記拡散板に重ねて偏光板が備わっていることにより、最適な振動方向(透過軸)の偏光を生体に照射することができるので、生体表面における光の反射を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
このような構成の本発明によれば、簡単な装置構成により、手や足等の所定部位等の生体の局所領域に対して光を照射できるようにするとともに、当該生体の局所領域の生体透視画像を好適に取得できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る生体内観察装置の構成を示す模式図。
【図2】同実施形態の生体内観察装置の構成を示す斜視図(遮光部材未装着)。
【図3】同実施形態の生体内観察装置の面発光部を主として示す平面図。
【図4】同実施形態の生体内観察装置の面発光部を主として示す断面図。
【図5】同実施形態の面発光部の分解斜視図。
【図6】同実施形態に係る生体内観察装置を用いて指を撮像した写真。
【図7】同実施形態の生体内観察装置の構成を示す斜視図(遮光部材装着)。
【図8】同実施形態の生体内観察装置の構成を示す側面図(遮光部材装着)。
【図9】同実施形態の生体内観察装置の遮光部材を主として示す平面図。
【図10】同実施形態の生体内観察装置の遮光部材及び面発光部を主として示す断面図。
【図11】変形実施形態の固定機構を示す断面図。
【図12】変形実施形態に係る位置決め部材を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態に係る生体内観察装置100は、例えば手や足等の生体に光を照射して、当該生体から透過する透過光を撮像して、生体内の血管や異物等を示す生体透視画像を取得するものである。
【0022】
具体的にこのものは、図1及び図2に示すように、生体配置領域Xを向く発光面201を有し、当該生体配置領域Xにある生体に対して光を照射する面発光部2と、生体配置領域Xに対して面発光部2とは反対側に設けられ、生体配置領域Xにある生体を透過した光を受光して画像データを出力する撮像部3とを備えている。本実施形態では、生体配置領域Xを挟んで下側に面発光部2が設けられ、上側に撮像部3が設けられた構成を示している。
【0023】
面発光部2は、装置基台100A上に設けられて上方に位置する生体配置領域Xに800〜1000nmの波長領域に波長ピークを有する近赤外光を照射するものである。具体的に面発光部2は、図3〜図5に示すように、複数のLED21が搭載された概略矩形板状をなすLED搭載基板22と、当該LED搭載基板22を収容する平面視概略矩形状をなす筐体23と、この筐体23においてLED21の光射出側に設けられ前記発光面201を形成する透光部材24とを有する。
【0024】
LED搭載基板22は、特に図4及び図5に示すように、装置基台100Aの上面に固定されており、電源部4(図1参照)から電力が供給される。またLED搭載基板22の上面には、複数のLED21が例えば縦横マトリックス状に搭載されている。LED21としては、例えば810nmに波長ピークを有する170mWのLEDを用いることが考えられる。
【0025】
筐体23は、特に図4に示すように、LED搭載基板22の周囲を囲むように装置基台100Aの上面に固定されており、一側面(本実施形態では奥側に位置する背面)にはLED放熱用の複数の貫通孔23hが形成されている。また、図示はしないが、この複数の貫通孔23h近傍には、LED放熱用の放熱ファンが設けられている。この放熱ファンにも前記電源部4から電力が供給される。
【0026】
透光部材24は、筐体23の上部開口に取り付けられるものであり、平面視において筐体23の上部開口と略同一形状をなす概略矩形板状をなすものである。この透光部材24は、複数個のLED21から発せられた光を拡散して、筐体23の上部開口から射出される光の輝度を均一化し、照射ムラのない光を生体に照射する拡散板であり、透光部材24の上面が発光面201となる。
【0027】
拡散板としては、例えば、光透過性基板の表面にエンボス加工やシボ加工等により凹凸を設け、表面をすりガラス面状に構成したものや、光透過性基板の表面に白色塗料を隙間を空けて塗布したもの、光透過性基板中に光散乱を生じさせる粒子を含有させたもの等の、光散乱を利用して光拡散性が付与された種々のものを用いることができる。このような拡散板のなかでも、アセタール樹脂からなり、入射光を55°以上の角度で発散しうるものが好適に用いられる。このような発散角度を有する拡散板を用いることにより、照射ムラを解消し、検査対象を均一に照射することができる。
【0028】
このことを確認するために、φ5mmの穴を開けた遮光板にLEDを嵌め込み、当該遮光板に載せる拡散板の厚さを変えて、LEDの真上における光強度(I)と、2個のLEDを10mmの間隔を空けて並べたときの2個のLEDの中間点の真上における光強度(Im)との比(Im/I)を求めた。当該Im/I値が1に近いほど、照度ムラが解消されることを示す。得られた結果は表1に示した。
【0029】
【表1】
【0030】
この結果、光源から発した光を55°以上の角度で発散できる拡散板を用いた場合、いずれのIm/I値も0.85以上であり、充分な照度ムラ解消効果が確認された。
【0031】
また透光部材24の裏面には、複数のLED21から出る光を所定範囲に規定する仕切り板25が設けられている。この仕切り板25は、平面視において透光部材24と同一形状をなすものであり、中央部には前記LED21からの光を外部(上部)に射出するための開口部251が形成されている。このような構成により、前記透光部材24の上面において前記仕切り板25の開口部251に対応する部分が発光面201となる。つまり、面発光部2の発光面201は、仕切り板25の開口部251の平面視形状と同一形状となる。
【0032】
撮像部3は、生体配置領域Xの上部に設けられており、当該生体配置領域Xにある生体を透過した光を受光して生体透視画像を示す画像データを出力するものである。本実施形態の撮像部3は、デジタルカメラであり、0.4〜10μWの光を受光した際の出力あたりの最低検出光量が0.055μW/ビット以下である特定の感度を有するものである。具体的には、CCDカメラやCOMSカメラ等を用いることができる。
【0033】
また、撮像部3は、装置基台100Aに対して鉛直方向に立設されたスタンド部材5に面発光部2に対して進退移動可能に固定されている。具体的に撮像部3及びスタンド部材5の間にはスライド機構6が設けられている。このスライド機構6は撮像部3を所定範囲内で発光面201に対して鉛直方向にスライド移動させるものである。
【0034】
そして撮像部3により得られた生体透視画像は、電源部4を介してコンピュータ等の情報処理装置7に出力される(図1参照)。そして生体透視画像は、情報処理装置7の表示部画面上に表示されるとともに、情報処理装置7の画像処理機能によって画像処理される。なお、少なくとも生体透視画像を表示する表示部に関して言うと、予め生体内観察装置100に備えさせたものであっても良い。
【0035】
前記撮像部3として、0.4〜10μWの光を受光した際の出力あたりの最低検出光量が0.055μW/ビット以下であるCCDカメラを備えた本生体内観察装置100を用いて、発光面201上に指を置き、指の背面から近赤外光を照射して、指の血管を観察した画像を図6(a)に示す。図6に示すように、黒く表された血管が明瞭に観察されることが確認された。なお、当該CCDカメラは、輝度に対応したデジタル出力(以下、単に輝度出力という。)が11ビットであるときの検出光量が0.33μWであり、輝度出力が197ビットであるときの検出光量が10.21μWである感度を有するものであり、この範囲において輝度出力と検出光量の間には線形の関係が認められた。一方、これより感度の低い(最低検出光量が0.055μW/ビットを超える)CCDカメラを用いた場合は、図6(b)に示すように、指の血管を観察することができなかった。なお、図6(c)は後述する遮光部材8を装着した状態で指の血管を観察した画像である。
【0036】
このように構成した本実施形態に係る生体内観察装置100によれば、特別な技術や経験を必要とせずに、誰でも容易に生体内の異物や血管を観察することができる。また、本生体内観察装置100は、0.4〜10μWの光を受光した際の出力あたりの最低検出光量が0.055μW/ビット以下である特定の感度を有する撮像部3を備えているので、静脈のみならず、動脈も撮像することができる。
【0037】
しかして本実施形態の生体内観察装置100は、図7〜図10に示すように、面発光部2に対して着脱可能に設けられ、発光面201から出る光の一部を遮る遮光部材8を備えている。なお、図7は、図2の生体内観察装置100に遮光部材8を装着した状態である。
【0038】
遮光部材8は、特に図9に示すように、前記面発光部2の透光部材24と平面視において概略同一形状をなす平面視矩形板状をなすものであり、発光面201からの光を遮る遮光部81と、発光面201からの光を生体配置領域X側に透過させる開口部82とを有している。この遮光部材8に設けられた開口部82は、前記仕切り板25に設けられた開口部251よりも開口サイズが小さく形成されている。具体的な開口部82の形状としては、平面視概略円形状である。
【0039】
そして、後述する固定機構9により、開口部82の開口中心が撮像部3の光軸3C上又はその近傍となるように、遮光部材8が前記面発光部2に対して着脱可能に取り付けられる(図8参照)。なお、開口部82の開口中心と、前記仕切り板25の開口部251の開口中心とは平面視において略一致しており、撮像部3の光軸3C上に仕切り板25の開口部251の開口中心がある。
【0040】
固定機構9は、遮光部材8を面発光部2の発光面201に対して位置決めして固定するものであり、具体的には発光面201の平面方向における遮光部材8の位置を位置決めするものである。本実施形態の固定機構9は、図9に示すように、遮光部材8の4つの側辺部に設けられ、面発光部2の4つの側面2a〜2dに接触する係止片9a〜9dから形成されている。この係止片9a〜9dは、遮光部材8の4つ角に設けられている。この固定機構9により、遮光部材8の開口部82の開口中心と面発光部2の発光面201の中心とが一致するとともに、遮光部材8の開口部82の開口中心が撮像部3の光軸3C上に位置する。
【0041】
そして遮光部材8には、図7等に示すように、検査される生体を遮光部材8及び発光面201に対して水平方向に位置決めして、遮光部材8に遮られない光を生体の所定部位に照射させる位置決め部材10が設けられている。
【0042】
本実施形態の位置決め部材10は、所定の指と接触して当該所定の指を遮光部材8の開口部82に位置決めするものであり、図9及び図10に示すように、遮光部材8の開口部82と連通する貫通孔10hを有する。そして位置決め部材10は、図7及び図9に示すように、開口部82の奥側(スタンド部材側)に位置して指の先端部に接触する概略平面状の第1接触面10aと、開口部82の左右に位置して指の任意の面(例えば指の上面(指の背))に接触する概略V字状をなす第2接触面10bとを有する。そして第2接触面10bの谷線10b1が遮光部材8の開口部82の中心を通るように構成されている。第1接触面10aにより開口部82に対する奥行き方向(図9においてY方向)の指の位置が位置決めされ、第2接触面10bにより開口部82に対する左右方向(図9、図10おいてX方向)の指の位置が位置決めされる。なお、開口部82の開口中心と撮像部3の光軸3Cとがほぼ一致していることから、前記位置決め部材10により指が撮像部3の光軸3Cに対しても位置決めされることになる。
【0043】
この生体内観察装置100により、遮光部材8を取り外した状態で生体の大局領域、つまり、発光面201全体の範囲内に位置する生体の透視画像(具体的には手の大部分の透視画像)を撮像する(図6(a)参照)。一方、遮光部材8を取り付けた状態で生体の局所領域、つまり遮光部材8の開口部82の範囲内に位置する生体の透視画像(具体的には指の所定部分の透視画像)を撮像する(図6(c)参照)。
【0044】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る生体内観察装置100によれば、発光面201から出る光の一部を遮る遮光部材8を設けているので、生体配置領域Xにおける光照射範囲を狭めることができ、生体の局所領域に対して光を照射できる。また、生体の局所領域に対して光を照射できるので、生体の局所領域の生体透視画像を好適に取得することができる。
【0045】
さらに、遮光部材8が面発光部2に対して着脱可能であることから、用途に応じて、例えば手全体などの生体全体の生体透視画像を取得する又は指などの生体の局所領域の生体透視画像を取得することを遮光部材8の取り付け及び取り外しによって簡単に切り換えることができる。また、位置決め部材10により生体が発光面201に対して位置決めされるので、生体の所定領域に光を照射することができる。また、面発光部2に対して位置決めされている撮像部3によって生体を撮像することから、撮像部3により得られた画像を比較する等の撮像後の処理を容易化することができる。
【0046】
その上、本実施形態の生体内観察装置100により、特別な技術や経験を必要とせずに、誰でも容易に生体内の異物や血管を観察することができる。X線を使用せずに生体内を観察することができるので、長時間光照射しても人体に無害であり、また、単に光を照射するだけであるので、血行を確認するに際し被験者に苦痛を与えることはない。加えて、本発明は容易に小型化できるので、本生体内観察装置100を手術室内に持ち込んで、リアルタイムで生体内の観察を行いながら、各種手術を行うこともできる。
【0047】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。例えば、固定機構9としては、図11に示すように、遮光部材8の下面に設けられた凸部91と、透光部材24の上面に設けられた凹部92とから構成しても良い。図11においては、複数の凸部91及び複数の凹部92により平面方向に位置決めするものであるが、凸部91及び凹部92の形状を工夫して面発光部2に対して遮光部材8を平面方向に位置決めするようにしても良い。なお、遮光部材の下面に凹部、透光部材の上面に凸部を設けて構成しても良い。
【0048】
また、前記実施形態の位置決め部材10は、第1接触面10a及び第2接触面10bを有するものであったが、第1接触面10aのみ又は第2接触面10bのみを有するものであっても良い。この場合、第1接触面10aは平面状の他、図12に示すように、平面視V字形状をなすものであっても良い。この場合、第1接触面10aの折れ曲がり線が、開口部82のX方向位置を一致するように形成することが考えられる。さらに、位置決めに関して言うと、遮光部材8の上面に位置決め線又は図を描いても良い。そして位置決め線又は図にしたがって指を配置することによって指が開口部に対して位置決めされるように構成しても良い。
【0049】
また、前記実施形態の遮光部材8の開口部82は平面視概略円形状をなすものであったが、その他、平面視矩形状等の多角形状、平面視楕円状又は長円状、平面視部分円状など発光面の発光面積を狭めるものであれば、種々の形状とすることができる。このとき、生体透視画像を取得すべき局所領域のサイズに合わせて種々の開口部を有する遮光部材を用意しておき、用途に応じて適宜取り替えることが考えられる。
【0050】
さらに前記実施形態の位置決め部材は遮光部材上に設けられているが、遮光部材とは別に設けたものであっても良い。
【0051】
その上、前記実施形態では位置決め部材10は遮光部材8の開口部82に対して生体の局所領域(指の所定領域)を位置決めするものであったが、遮光部材8を装着していない面発光部2の発光面201に対して生体を位置決めするものであっても良い。
【0052】
加えて、前記実施形態の位置決め部材10は、生体として手の指の透視画像を取得するために当該指を位置決めするものであったが、足の指の透視画像を取得するための当該足を位置決めする構成としても良い。
【0053】
また生体内観察装置100の透光部材24上に偏光板及びカットフィルタを設けても良い。
【0054】
偏光板は、拡散板である透光部材の反光源側の表面(上面)に重ねて設けられており、拡散板で拡散されて均一化された光から直線偏光を作り出すものである。偏光板としては、例えば、樹脂からなるフィルム状のもの等が用いられる。拡散板に重ねて偏光板が設けられていることにより、最適な振動方向(透過軸)の偏光を生体に照射することができるので、生体表面における光の反射を低減することができる。なお、本実施形態では、偏光板の上に生体を載置して観察することができる。このような拡散板と偏光板とを用いて、観察対象である生体に照射する光の光質及び光量を調整することにより、コントラストが明瞭な画像を得ることができる。
【0055】
カットフィルタは、撮像部の光導入口に設けられており、撮像部内に太陽光等の外乱光が入り込むことを防いでいる。このようなカットフィルタを備えていることにより、外乱光(可視光線)を遮断することができるので、ノイズが低減された鮮明な画像を得ることができる。生体を透過した光は撮像部内の集光レンズにより集められ、CCDイメージセンサ等の撮像素子の受光平面に結像する。そして、適切な集光レンズを選択することにより、面発光部2の発光面201全域を撮像範囲とすることができる。例えば、発光面201が80×100mmのサイズである場合、集光レンズとしては焦点距離が6〜10mmであるものが好適に用いられる。
【0056】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
100・・・生体内観察装置
X ・・・生体配置領域
2 ・・・面発光部
201・・・発光面
21 ・・・LED
23 ・・・筐体
24 ・・・透光部材
3 ・・・撮像部
3C ・・・撮像部の光軸
8 ・・・遮光部材
81 ・・・遮光部
82 ・・・開口部
9 ・・・固定機構
10 ・・・位置決め部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体配置領域を向く発光面を有し、当該生体配置領域にある生体に対して光を照射する面発光部と、
前記生体配置領域に対して前記面発光部とは反対側に設けられ、前記生体配置領域にある生体を透過した光を受光して画像データを出力する撮像部と、
前記面発光部に対して着脱可能に設けられ、前記発光面から出る光の一部を遮る遮光部材とを具備する生体内観察装置。
【請求項2】
前記遮光部材が、前記発光面からの光を遮る遮光部と、前記発光面からの光を生体配置領域側に透過させる開口部とを有しており、
前記開口部の開口中心が前記撮像部の光軸上又はその近傍となるように、前記遮光部材が前記面発光部に対して着脱可能に取り付けられるものである請求項1記載の生体内観察装置。
【請求項3】
前記遮光部材を前記面光源に対して位置決めして固定する固定機構を有する請求項1又は2記載の生体内観察装置。
【請求項4】
前記遮光部材に設けられており、前記生体を前記遮光部材に対して位置決めして、前記遮光部材に遮られない光を前記生体の所定部位に照射させる位置決め部材を有する請求項1乃至3のいずれかに記載の生体内観察装置。
【請求項5】
前記面発光部が、前記生体に対して800〜1000nmの波長領域に波長ピークを有する光を照射するものであり、
前記撮像部が、0.4〜10μWの光を受光した際の出力あたりの最低検出光量が0.055μW/ビット以下のデジタルカメラである請求項1乃至4のいずれかに記載の生体内観察装置。
【請求項6】
前記面発光部が、複数のLEDと、当該LEDを収容する筐体と、前記筐体において前記LEDの光射出側に設けられ前記発光面を形成する透光部材とを有し、
前記透光部材が、入射光を55°以上の角度で発散しうる拡散板である請求項1乃至5のいずれかに記載の生体内観察装置。
【請求項1】
生体配置領域を向く発光面を有し、当該生体配置領域にある生体に対して光を照射する面発光部と、
前記生体配置領域に対して前記面発光部とは反対側に設けられ、前記生体配置領域にある生体を透過した光を受光して画像データを出力する撮像部と、
前記面発光部に対して着脱可能に設けられ、前記発光面から出る光の一部を遮る遮光部材とを具備する生体内観察装置。
【請求項2】
前記遮光部材が、前記発光面からの光を遮る遮光部と、前記発光面からの光を生体配置領域側に透過させる開口部とを有しており、
前記開口部の開口中心が前記撮像部の光軸上又はその近傍となるように、前記遮光部材が前記面発光部に対して着脱可能に取り付けられるものである請求項1記載の生体内観察装置。
【請求項3】
前記遮光部材を前記面光源に対して位置決めして固定する固定機構を有する請求項1又は2記載の生体内観察装置。
【請求項4】
前記遮光部材に設けられており、前記生体を前記遮光部材に対して位置決めして、前記遮光部材に遮られない光を前記生体の所定部位に照射させる位置決め部材を有する請求項1乃至3のいずれかに記載の生体内観察装置。
【請求項5】
前記面発光部が、前記生体に対して800〜1000nmの波長領域に波長ピークを有する光を照射するものであり、
前記撮像部が、0.4〜10μWの光を受光した際の出力あたりの最低検出光量が0.055μW/ビット以下のデジタルカメラである請求項1乃至4のいずれかに記載の生体内観察装置。
【請求項6】
前記面発光部が、複数のLEDと、当該LEDを収容する筐体と、前記筐体において前記LEDの光射出側に設けられ前記発光面を形成する透光部材とを有し、
前記透光部材が、入射光を55°以上の角度で発散しうる拡散板である請求項1乃至5のいずれかに記載の生体内観察装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−130583(P2012−130583A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286684(P2010−286684)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(509352897)ジーニアルライト株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(509352897)ジーニアルライト株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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