説明

生体分子に共有結合できる、複数の官能基を持つ表面固定化高分子電解質

【課題】
【解決手段】複数の露出した官能基を有し、かかる各基が分子と共有結合できる高分子電解質を、生体分子に結合させる目的で表面に固定化する。生体分子は、例えば、核酸、例えばアミン官能化オリゴヌクレオチドでよい。高分子電解質は、例えば、共有固定化手段、例えばトシル活性化微粒子の表面との反応を用いて官能化表面に結合されるBSA(ウシ血清アルブミン)を含むことができる。このような反応の後、タンパク質上に露出している、アミン、カルボキシル、チオール、ヒドロキシル基のような反応性官能基をさらに利用し、好適な化学を用いて関心対象のオリゴヌクレオチドを共有結合できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、2003年9月22日出願の米国仮出願番号第60/504,716号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、高分子電解質化学の分野のものである。
【背景技術】
【0003】
オリゴヌクレオチドの「スポットアレイ」の診断使用に関連する多くの問題(この問題については、2002年8月23日に出願された、米国特許出願第10/204,799号;国際公開第01/98765号、“Multianalyte Molecular Analysis Using Application-Specific Random Particle Arrays,”の中で概略が述べられている)を解決するための別の方法として、好ましいアレイが、オリゴヌクレオチドプローブを、ポリマー樹脂製のコード化された粒子を含むコード化されたマイクロビーズ粒子に結合させることによって形成される。2002年10月15日出願の米国特許出願第10/271,602号“Multiplexed Analysis of Polymorphic Loci by Concurrent Interrogation and Enzyme-Mediated Detection,”、および第10/204,799号上記を参照。コード化された粒子−プローブ複合体は、次に二次元アレイ型に組み立てられて、プローブに対し相補的なサブシーケンスを持つターゲットポリヌクレオチドを含有すると思われるサンプルと接するように置かれるが、この場合サンプル中のターゲットポリヌクレオチドは事前に蛍光標識されている。プローブとターゲットとの結合は、蛍光アッセイシグナルの存在によって判定される。アレイを解読することによって、陽性のアッセイシグナルを発生する特定のプローブを判定できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロビーズにオリゴヌクレオチドプローブを付着するための方法がいくつか知られており、また市販されている。微粒子へのオリゴヌクレオチドプローブを共有固定化する方法は数多く工夫されており、公開文献または市販品として利用できる。伝統的な共有固定化する技術は、官能化ビーズ(即ちアミノ、カルボキシル、トシル、アルデヒド、エポキシ、ヒドラジド等のような反応基で官能化されたビーズ)を用い、オリゴヌクレオチドプローブ末端にある相補的官能基と結合する(Maire K.Walsh, Xinwen WangおよびBart C. Weimer、Optimizing the immobilization of single-stranded DNA onto glass beads, J. Biochem. Biophys. Methods 2001; 47:221-231)。この様な結合プロトコルでは配向が不適切となり、立体障害問題を起こすことが多い。このように共有固定化されたプローブのハイブリダイゼーション性能は、スペーサー分子を導入することで改善できるが(Edwin Southern, Kalim MirおよびMikhail Schepinov;Molecular interactions on Microarrays. Nature Genetics Supplement, 21, 1999, pp.5-9)、実施が難しく、実用的でないことが多い。
【0005】
このような理由から、アッセイをベースとしたマイクロビーズアレイの最適性能にとって、実用的で、強いプローブ結合化学が重要である。このような化学は、ビーズ表面で一貫したプローブ濃度を保持するために高い効率でプローブの粒子への結合を可能にし、さらに、反応がプローブ−ターゲット結合の効率を変化させることはない。さらに、反応はバッチ間の変動を最小にする。1つの一般的に用いられる方法では、官能化した微粒子は、ニュートラアビジン(Pierce, Rockford, IL)、ストレプトアビジン、またはアビジンでコーティングされるが、これらはビオチン結合タンパク質であり、ビオチン化されたプローブの固定化を仲介する。アビジン−ビオチン相互作用は極めて特異的な、既知の最も強い結合の1つであり(水溶液中で1015M-1のオーダーの結合定数(KA)を持つ)、ビーズ表面に固定化されたタンパク質とビオチン化されたプローブ分子との間に、ほとんど不可逆的である結合を提供する。米国特許出願第10/271,602号、上記を参照。高分子電解質にプローブを結合するための下記方法はこれら既知方法よりも好ましいが、それは、これらがビーズへより多いオリゴヌクレオチドの付着を誘発できることが実証されたからである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
多数の露出した官能基を有し、その各基は分子と共有結合できる高分子電解質を、生体分子へ結合させることを目的として、表面に固定化する。生体分子は、例えば核酸、例えばアミン官能化オリゴヌクレオチドでよい。高分子電解質は、例えば、共有結合固定化法、例えばトシル活性化微粒子の表面との反応を用いて官能化表面に結合されるBSA(ウシ血清アルブミン)を含むこともある。このような反応の後、タンパク質上に露出している、アミン、カルボキシル、チオール、ヒドロキシル基のような反応性官能基をさらに利用して、好適な化学を用い、関心対象のオリゴヌクレオチドを共有結合に利用することができる。
【0007】
1つの実施態様では、末端位置(3’または5’末端位置)をアミンで修飾したオリゴヌクレオチド(例えばアミノ修飾オリゴヌクレオチド)を、EDAC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)反応(D.Seligal et al., Analytical Biochemistry 218:87091 (1994)参照)を用いてBSAに共有結合する。共有反応は、オリゴヌクレオチドの末端にあるアミン基とBSAのカルボキシル基との間にアミド結合を形成する。反応を図1に図示する。
【0008】
官能化表面はビーズまたは微粒子の表面でもありうるが、それはポリマー、ポリマー樹脂、ガラス、ラテックスまたは高分子電解質を固定化するために官能化できるその他のものを含む、様々な材料から成ることができる。実験を行い、BSAコーティングビーズと、別の例示的高分子電解質であるヒト血清アルブミン(“HSA”)を比較し、さらにニュートラアビジンとも比較した。ハイブリダイゼーション実験の結果は、BSAコーティングビーズが、より高濃度のオリゴヌクレオチドをビーズに結合できることを示した。
【実施例1】
【0009】
BSAコーティングトシル官能化ビーズの調製
BSA50mgを10mLのPBSに溶解して、5mg/mL濃度のBSA溶液を調製した。2.0mLのPBS-Tを15mLの遠心分離管に加えた。1%固形物濃度(10mg)の蛍光色ビーズ1mLを遠心分離管に移し、ボルテックスすることによってよく混合した。ビーズを3,500rpmの遠心分離に4+/-0.5分間かけて落とし、上清をデカントした。管にPBST3mLを加えて、ビーズを再懸濁し、ボルテックスすることによってよく混合した。ビーズを、3,500rpmの遠心分離に4+/-0.5分間かけ、上清を捨てた。BSA溶液(5mg/mL)3.0mLをビーズに加え、ボルテックスすることによってよく混合した。管を37℃のインキュベーター内のシェーカーに乗せ、一晩、250rpmで混合しながらビーズを反応させた。
【0010】
その後、ビーズを3,500rpmの遠心分離に4分間かけて落とし、上清を捨てた。次に、管にPBS-Tを3.0mL加えてビーズを洗い、ボルテックスミキサーで混合した。次にビーズを、再度3500rpmの遠心分離に4+/-0.5分間かけ、上清を流し捨てた。続いて洗浄と遠心分離の段階を繰り返した。
【0011】
保存バッファー(0.1%のNaN3を含有する0.1M PBS)3.0mLを加えて、ボルテックスミキサーで混合した。ビーズを再度3,500rpmの遠心分離に4+/-0.5分間かけ、上清を流し捨てた。次にビーズをボルテックスすることによって1mlの保存バッファーに再懸濁した。ビーズ濃度は1%固形物濃度(10mg/mL)となり、4〜6℃で保存した。これらビーズは、下記実施例3に記載のように、EDAC反応を介してアミン含有生体分子(例えばBSA)を容易に付着できる。
【実施例2】
【0012】
BSAコーティングカルボキシル官能化ビーズの調製
カルボキシル化粒子へのBSAの結合を、次のように実施した。1%固形物濃度のカルボキシル化粒子100μlを、2mlのエッペンドルフチューブに移した。次に遠心分離してビーズを沈殿させ、上清を取り除いた。その後、ビーズを1mlのMES(詳述)バッファー(pH4.5)で1回洗浄した。別にBSA(5mgBSA/ml)のMESバッファー貯蔵溶液およびEDC(20mg/ml)のMESバッファー貯蔵溶液を調整した。BSA貯蔵溶液100μlをビーズの沈殿に加え、懸濁液をボルテックスすることによってよく混合した。続いてEDC貯蔵溶液400μlをビーズ懸濁液に加え、ボルテックスすることによってよく混合してから室温で1時間、逆に入れかえながら反応させた。1時間インキュベーション後、100μl のPBS-Tを懸濁液に加え、ビーズを遠心分離した。沈殿を、遠心分離−再分散サイクルにより、1mlのPBSで2回洗浄し、最後にビーズを100μlの保存バッファー(0.1%アジ化ナトリウム、NaN3を含有する0.1MのPBS)に懸濁して、4〜6℃に保存した。
【実施例3】
【0013】
BSAビーズへアミノ化オリゴヌクレオチドプローブを結合させるためのEDAC反応
実施例1および2で調製したビーズへのアミノ化オリゴヌクレオチドプローブの結合は、次のように実施した。一連の1.5mlエッペンドルフチューブを取り出し、微粒子と、結合するオリゴヌクレオチドプローブが識別できるように標識化した。次に、各管に500μLのPBSTを分注し、続いて1%固形物濃度のBSA結合ビーズ100μLを加えた。管をボルテックスミキサーで10秒間、よく混合した。次にビーズを9500rpmの遠心分離に2+/-0.5分間かけて沈殿させ、上清を捨てた。0.05MのMESバッファー(pH4.5)500μLを沈殿に加え、ボルテックスすることによってよく混合した。次にビーズを9500rpmの遠心分離に2+/-0.5分かけ、上清を捨てた。0.05MのEDACのMESバッファー溶液(使用直前に調製する)500ulをビーズに加え、ボルテックスすることによってよく混合した。各アミノ修飾DNAプローブ(例えばプローブMS-508、Integrated DNA Technologies, Inc., Coralville IAより購入)10μLを、ビーズ懸濁液の入った各管に100μMの濃度で加え、よく混合した。逆に入れかえながら、1時間、室温(20〜25℃)で反応させた。
【0014】
インキュベーション後、100μLのPBS-Tを各管に加え、ボルテックスすることによって混合した。次にビーズを9500rpmの遠心分離で2+/-0.5分間遠沈し、上清を捨てた。次にビーズを、遠心分離再分散サイクルを用いて、500μlのPBS-Tで2回洗浄した。
【0015】
ビーズを100μLのPBSTに再懸濁して、最終濃度を1%固形物濃度に合わせ、使用するまで4〜6℃で保存した。
【0016】
オリゴの添加量(100uM/200ug粒子を0.25、0.5、1、2、4、8ul)の関数として、オリゴヌクレオチド官能化粒子のハイブリダイゼーション性能(プロトコルについては実施例4を参照)を図2に示す。従って、上記の100uM/1mgを10ulという量は、飽和濃度を表している。また、高い方の温度で結合したBSAを有するビーズは、後述するように、ハイブリダイゼーション性能の向上を示した。
【実施例4】
【0017】
オリゴヌクレチド官能化ビーズを用いたハイブリダイゼーションアッセイ
1.ビーズ混合物を8個の異なるチップ上にアセンブルした。蛍光標識DNAターゲット貯蔵溶液(MS508-90mer-CY5)をハイブリダイゼーションバッファー(1×TMAC)で調製した。ターゲット貯蔵溶液から、8つの異なる連続希釈液を調製した。次に、8枚の別々のチップに、連続希釈ターゲット液を各20μl加えた。
2.チップが乗ったスライドをハイブリダイゼーションヒーター/シェーカーに入れ、55℃で20分間、100rpmでインキュベーションした。
3.スライドを取り出して室温まで冷まし、トランスファーピペットを使ってハイブリダイゼーション溶液を取り出した。
4.各チップに1×TMACを20μl加え、溶液を8〜10回ピペッティングしてチップを洗浄した。
5.洗浄溶液を取り出してから、各チップに5mlの封入溶液(1×TMAC)を加え、アッセイシグナル(CY5)を、カバーガラスを用いた蛍光顕微鏡下に読み取った。
6.滴定曲線は、DNAプローブ濃度に対するハイブリダイゼーションシグナル(CY5)のプロットである。
滴定曲線の例を図3に示す。
【実施例5】
【0018】
実験を行い、ビーズ−プローブ懸濁液にDEACを2回加えることの効果(EDACは、酸性pHにおいて、極めて短時間で加水分解することが知られている)を比較し、2回加えることがBSA層へのプローブの結合を高めるか評価した。第一に、プローブMS-508-N25を次の各条件でBSAコーティングビーズに結合した:(10μl 100μMのプローブ/100μlの1%ビーズ)。1時間の反応時間後、1×管から1/2量のビーズを取り出し、新しいEDACを加え、この管の反応をさらに1時間進めた。次に、合致しないプローブSSP36について、全部のプロセスを繰り返した。ビーズの各セットを非特異的ビーズと一緒にプールし、チップ上にアセンブルしてから、全てのセットをターゲットのMS508-40mer-Cy5とハイブリダイズ条件のもとに接するように置かれた。次に結果を記録し、下表2にまとめた。EDACの2回添加により、より高いハイブリダイゼーションを提供した。
【0019】
【表2】

【実施例6】
【0020】
さまざまな温度でのトシル活性化ビーズのBSA結合およびそのハイブリダイゼーション特徴
2.0mLのPBSTを5本の15mL遠心分離管に加えてから各管に固形物濃度1%(10mg)の蛍光着色ビーズ1mLを加え、ボルテックスすることによってビーズを混合した。このビーズを、3,500rpmの遠心分離で4+/-0.5分間遠沈し、上清をデカントした。次にビーズを3.0mLのPBSTに再懸濁し、ボルテックスすることによってよく混合してから、再度3,500rpmの遠心分離に4+/-0.5分間遠沈した。次に上清を流し出した。
【0021】
2mLのPBS(pH7.2)および1mLのBSA溶液(PBS中に50mg/mL)を各管に加え、ボルテックスすることによってよく混合した。各管のインキュベータ内の周囲温度を次のように設定する:管A-22℃、管B-37℃、管C-50℃、管D-65℃および管E-75℃、そしてビーズをBSAと14時間、指定温度で、逆に入れかえて反応させた。次に管を室温まで冷却し、ビーズを3,500rpmの遠心分離に4分間遠沈し、上清を流し出した。次にビーズを、管に3.0mLのPBSTを加えることで洗浄してから、ボルテックスミキサーで混合し、3500rpmで4+/-0.5分間、遠心分離で遠沈した。上清は流し出した。
【0022】
保存バッファー(0.1%NaN3を含むPBS)を1mL加え、ボルテックスミキサーを用いて管を混合した。ビーズ濃度は1%固形物濃度(10mg/mL)であった。BSA結合ビーズは、4〜6℃で保存した。
【0023】
25-merのMS-508 N25ビオチン化オリゴヌクレオチドプローブを、上記EDAC結合法により、各ビーズのセットに複合した。次に、各ビーズのセットを、一定濃度の、そのプローブに対する標識化ターゲット(Cy-5で標識化された90-merのオリゴヌクレオチド)と、ハイブリダイズ条件の下に接触させた。ビーズ上の標識物の量は、ビーズ上のプローブ濃度と相関する。
【0024】
図4に示すように、より高い温度でBSAと結合したビーズほど、ビーズ表面に表示されたオリゴヌクレオチドに対し、より多くのターゲットの結合を表示した。このことは、このようなビーズの表面にあるプローブの濃度がより高いことを示しており、これはおそらく65℃であったことによってBSAが変性して開き、プローブにより多くの利用可能な結合部位を提示したのだろう。
【実施例7】
【0025】
トシル官能化粒子へのBSA結合に関する各種インキュベーション時間の比較
実験を実施し、トシル化粒子へのBSA結合反応の経時変化を調べた。上記実施例1および5と同一のプロトコルに従って、それぞれBSA-トシル粒子反応混合物を含む12本の個々の管を、オーブンの中にて65℃でインキュベーションし、1本のコントロールチューブを37℃でインキュベーションした。あらかじめ決められたインキュベーション時間後、洗浄し、各管を取り出し、実施例3に概要を示した方法に従ってオリゴヌクレオチドプローブ(コントロールプローブ1つも含めて)と結合した。その後、ハイブリダイゼーション反応を行い、アッセイ強度を記録した(実施例4参照)。結果は図5に示すが、BSA結合反応が1時間未満で実質的に完了していることが示されている。
【実施例8】
【0026】
通常のビオチン−アビジンオリゴヌクレオチド結合とニュートラアビジンコーティング化学との比較
実験を実施し、オリゴ複合したBSA官能化ビーズとビオチン化オリゴ複合ニュートラアビジンビーズとの捕捉およびハイブリダイゼーション効率を比較した。タンパク質は、実施例1に概要を示したプロトコルを用いて、37℃でビーズ表面に結合した。その後、ビオチン化(またアミノ化)オリゴを粒子に複合し(実施例3のように)、同種のターゲットとの間でハイブリダイゼーションアッセイを行った。
【0027】
コード化が異なっている以外は同一である2種類のBSAコーティング粒子を取り出し、合致するプローブを1つのグループに結合し、他のグループには合致しないプローブを結合した。同様の、2種類の別のニュートラアビジン官能化ビーズを取り出し、合致するビオチン化プローブと合致しないビオチン化プローブとに結合した。
【0028】
アッセイの結果を図6Aおよび6Bに示す。BSAコーティングは、ニュートラアビジン捕捉化学を用いた時に得られるものに比べ、より均一(CVがより低い)で、より高いシグナル対ノイズ比(合致しないプローブのハイブリダイゼーション強度をノイズとした)を提供することが明らかである。
【実施例9】
【0029】
HSAコーティングとの比較
HSA(ヒト血清アルブミン)を、トシル官能化粒子にBSAを結合するのに用いた条件と同一の条件で結合した。次にHSA官能化粒子にオリゴヌクレオチドプローブを結合し、蛍光標識したモデルDNAターゲット(実施例4に同じ)にハイブリダイゼーション(滴定測定)した。結果を図7に示す。HSAは、BSA同様に、オリゴヌクレオチドプローブへの結合に利用できる官能性カルボキシル基を多く有しているという事実にも関わらず、HSAコーティングは、オリゴヌクレオチドプローブ結合に関して、BSAコーティングほど有効ではないことが示される。
【実施例10】
【0030】
BSA結合のバッチ間変動
各10mgの3バッチのビーズを別々に、BSAに65℃で14時間結合したが、この時のBSA-ビーズ比は5(W/W、mg/mg)であった。結合のための反応容積は3mLであった。1バッチのビーズをBSAに37℃で結合し、コントロールとして用いた。結合効率は、ビーズに結合したDNAプローブと同種のターゲットとのハイブリダイゼーションのシグナル強度に基づいて判定した。ハイブリダイゼーションは55℃で、20分間、1×TMAC中で実施し、ターゲットは濃度400nMのMS508-90mer-CY5であった。アッセイを読み取るための積算時間は200msであった。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

65℃バッチは、37℃で結合したバッチに比べ、一貫して高い強度を有し、またバッチ間の変動も小さかった。
【0032】
本明細書中の上記の用語、表現および例は単なる例示であり、なんらの限定もせず、そして発明は以下の特許請求の範囲によってのみ定義され、また特許請求の課題に均等である全てのものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】官能化ビーズへのBSAの結合およびEDAC反応を用いたBSAへのオリゴヌクレオチドプローブの結合を示す図である。
【図2】結合のために加えられたアミノ化プローブの量の関数として表したオリゴ官能化BSA結合ビーズからのハイブリダイゼーションシグナルの図である。完全に合致するプローブを2セットのBSA結合ビーズに結合した。BSAをビーズの第1セットには65℃にて、そして第2セットには37℃で結合した。65℃でBSAを結合した第1セットのビーズに、より高いハイブリダイゼーション効率(より高いシグナル)が示された。65℃でBSAを結合させ、且つ合致しない陰性コントロールプローブで官能化した第3セットのビーズは極わずかなハイブリダイゼーションを示し、かくしてシグナルの上昇が非特異的結合の増加の結果ではないことを示した。
【図3】BSA結合ビーズの滴定結果を示す図である。37℃でビーズの1セットにBSAを結合させたBSA結合ビーズに結合させたオリゴヌクレオチドプローブと、65℃で別のビーズのセットにBSAを結合させたBSA結合ビーズに結合させたオリゴヌクレオチドプローブに接するように置かれたターゲットからのハイブリダイゼーションシグナルの差として表した場合、図2同様、ハイブリダイゼーションの効率は、低い温度でBSAを結合させたビーズよりも、高い温度でBSAを結合させたビーズの方が高い。(実施例4参照)
【図4】オリゴヌクレオチドプローブをビーズ上に固定化されたBSAに結合し、次に相補的な蛍光標識ターゲットと反応させるハイブリダイゼーションアッセイを用いて判定した、異なる温度での、トシル官能化ビーズへのBSA結合効率の差を示す図である。(実施例6参照)
【図5】トシル活性化ビーズへのBSA結合反応に関して、65℃以上で約1時間インキュベーションすることがビーズ表面へのBSAの結合効率に影響しないことを、BSA結合ビーズに結合したオリゴヌクレオチドプローブと接するように置かれたターゲットからのハイブリダイゼーションシグナルの差として表した図である。(実施例7参照)
【図6A】プローブと結合させ、ターゲットとハイブリダイゼーションさせた後、BSAコーティングトシル官能化ビーズがニュートラアビジンコーティングトシルビーズに比べ、より均一でより強いハイブリダイゼーションシグナルを発することを示す図である。(実施例8参照)
【図6B】図6Aのシグナルの変動係数を示す図である。
【図7】トシル官能化ビーズにコーティングされた高分子電解質がBSAではなくHSAであり、オリゴヌクレオチドプローブをそれぞれ、ビーズに固定化されたBSAまたはHSAに結合させ、次に蛍光標識された相補的ターゲットと反応させた時、ハイブリダイゼーションに有意な差があることを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上に固定化され、且つ生体分子と共有結合するため露出した官能基を複数有することを特徴とする高分子電解質。
【請求項2】
前記官能基がカルボキシルまたはアミン基であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質。
【請求項3】
表面上に固定化され、且つ核酸に共有結合している高分子電解質を含むことを特徴とする生成物。
【請求項4】
前記高分子電解質がタンパク質であり、且つ前記表面がトシルで活性化されていることを特徴とする、請求項3に記載の生成物。
【請求項5】
前記タンパク質がBSAであり、且つ前記核酸がオリゴヌクレオチドであることを特徴とする、請求項3に記載の生成物。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドが、EDAC反応によって形成するアミド結合を介して前記タンパク質と結合することを特徴とする、請求項4に記載の生成物。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドが、その5’末端でビオチン化されていることを特徴とする、請求項5に記載の生成物。
【請求項8】
前記表面が、ポリマー、ポリマー樹脂、ガラスまたはラテックスから成る微粒子の表面であることを特徴とする、請求項3に記載の生成物。
【請求項9】
核酸を表面上に固定化した高分子電解質に共有結合することを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記核酸が5’末端にあるアミン基で官能化されるか、またはビオチン化されたオリゴヌクレオチドであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記高分子電解質が、BSAを含むタンパク質であり、タンパク質を固定化する前に、前記表面をトシルで活性化することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記高分子電解質が、高分子電解質のCOOH官能性とEDAC反応を介して前記表面に結合することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記オリゴヌクレオチドがEDAC反応を用いて前記タンパク質に結合し、それによって前記オリゴヌクレオチドと前記タンパク質との間にアミド結合が形成されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質が65℃またはそれ以上で実施される反応で前記表面に固定化されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記表面がポリマー、ポリマー樹脂、ガラスまたはラテックスから成る微粒子の表面であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
請求項9〜14のいずれかに記載の方法によって形成されることを特徴とする生成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−506108(P2007−506108A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527149(P2006−527149)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/031058
【国際公開番号】WO2005/031305
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(503369358)バイオアレイ ソリューションズ リミテッド (14)
【Fターム(参考)】