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生体吸収性薬物担体コーティング用の疎水性架橋ゲル
説明

生体吸収性薬物担体コーティング用の疎水性架橋ゲル

医療装置用のコーティング、コーティングの作成法、およびそれらの使用法を記載する。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本出願は2005年10月15日提出の米国特許仮出願第60/727,312号に対する優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景
血管再灌流処置、バルーン血管形成術、および機械的ステント留置術などの血管処置は、狭窄血管の機械的拡張および内腔拡大後にしばしば血管損傷を引き起こしうる。しばしば、そのような血管内処置後に、新生内膜増殖および血管損傷リモデリングが損傷血管の内腔表面に沿って起こり;より具体的には、心臓、ならびに頸動脈、腸骨動脈、大腿および膝窩動脈などの易損性末梢血管におけるリモデリングが起こる。機械的再灌流処置による血管損傷後ただちにそのような細胞増殖がおこるのを防止または抑制する公知の機械的抑制手段は見いだされていない。治療せずに放置すると、血管内腔の再狭窄が血管損傷後数週間以内に起こりうる。再狭窄は血管内腔の狭小化を再度まねいて、大量のフィブリンおよび血小板沈着と無制御の細胞リモデリングを引き起こし、これは血流量の制限および内腔表面の血栓症につながる。再狭窄により患者は病的状態を伴う完全閉塞および/または危険な虚血事象を生じやすくなる。
【0003】
血管損傷細胞リモデリングによって始まった再狭窄は漸進的プロセスでありうる。フィブリンおよび血小板沈着、内腔血栓症、炎症、カルシニューリン活性化、成長因子およびサイトカイン放出、細胞増殖、細胞遊走ならびに細胞外マトリックス合成を含む複数のプロセスがそれぞれ再狭窄プロセスに寄与している。再狭窄の厳密なメカニズムは完全に理解されていないが、細胞炎症、成長因子刺激ならびにフィブリンおよび血小板沈着に関与するいくつかの生化学的経路が疑わしいとみられている。血小板、侵襲性マクロファージおよび/もしくは白血球から、または直接平滑筋細胞から放出される、血小板由来成長因子、線維芽細胞成長因子、表皮成長因子、トロンビンなどの細胞由来成長因子は、内側の平滑筋細胞において増殖および遊走反応を誘発する。これらの細胞は収縮性の表現型から合成性の表現型へと変化する。増殖/遊走は通常は損傷後1〜2日以内に始まり、その後数日間がピークとなる。正常な動脈壁においては、平滑筋細胞は低速、すなわち1日に約0.1パーセント未満の速度で増殖する。
【0004】
しかし、娘細胞は動脈平滑筋の内膜層に遊走し、増殖を続け、著しい量の細胞外マトリックスタンパク質を分泌する。増殖、遊走および細胞外マトリックス合成は損傷された内皮層が修復されるまで続き、修復された時点で、通常は損傷後7から14日以内に増殖は内膜内で減速する。新しく形成された組織は新生内膜と呼ばれる。その後3から6ヶ月かけて起こるさらなる血管の狭小化は主に陰性または収縮性リモデリングによる。
【0005】
局所の増殖および遊走と同時に、血管壁の内側層由来の炎症細胞は血管損傷部位で治癒過程の一部として侵襲および増殖を続ける。損傷後3から7日以内に、実質的な炎症細胞形成および遊走は血管壁に沿って蓄積されはじめ、血管損傷部位を覆って治癒する。バルーン損傷またはステント埋め込みのいずれかを用いる動物モデルにおいて、炎症細胞は血管損傷部位に少なくとも30日間残存すると考えられる。炎症細胞は再狭窄および血栓症の急性および遷延性慢性期の両方に寄与すると考えられる。
【0006】
今日、冠動脈ステントなどの血管内医療装置による血管損傷部位への薬物の局所送達に対する好ましいアプローチは、装置に薬物溶出コーティングを施すことである。臨床的には、永久ポリマーまたは分解性ポリマーのいずれか、および適当な治療薬からなる薬物溶出コーティングを施した医療装置は、バルーン血管形成術および/または機械的ステント留置術後の一定期間、血管損傷および/または血管再灌流処置後の血管壁増殖が、なくならないとしても、減少されうるとの血管造影による結果を示している。単一のシロリムスまたはタキソール化合物の薬物溶出医療装置による局所送達が、血管損傷の直後に適用すると、細胞増殖および細胞リモデリングを最小化または防止するのに有効であることが判明している。これら二つの抗増殖化合物例の様々な類縁体も、実験的および臨床的に、同様の薬物溶出コーティングにより同様の抗増殖活性を示すことが明らかにされている。しかし、シロリムスおよびタキソールなどの抗増殖化合物は、ポリマー性の薬物溶出コーティングと共に、薬物溶出コーティングからの主な薬物放出中および放出後に臨床的にいくつかの毒性副作用を示すことも明らかにされている。これらの慢性およびまたは遷延性の副作用は、所与の期間に実際に送達することができる薬物の量に制限を設け、また、炎症およびまたは細胞リモデリング部位に直接適用する場合、血管損傷部位に局所的に治療薬を送達するのに用いるポリマーコーティングの適合性を脅かしうる。加えて、シロリムスおよびタキソールのような化合物の局所的過量投与は、医療装置の局在的組織領域の内部および周囲の細胞リモデリングまたは増殖を防止、制限または停止さえしうる。例えば、血管損傷治癒過程を通して細胞増殖妨害中に内皮細胞の覆いがないと、内腔血栓症の可能性が高くなり、それによりフィブリンおよび血小板の一貫した沈着が、露出して治癒していない医療装置および/または血管損傷を覆う。薬物溶出医療装置の留置の前後に連続した全身支持またはクロピデグレル(clopidegrel)のような抗血小板薬とASAなどの抗凝固剤との組み合わせ投与を行わなければ、そのような装置は臨床上、留置後数日以内に血栓症を起こして閉塞することが明らかにされている。加えて、医療装置に用いるこれらの市販の薬物溶出ポリマーコーティングは一般に、生体適合性であるとして特徴づけられるが、これらのポリマー性化学物質はより小さく、代謝が容易な化学成分または生成物へと化学分解、解重合および吸収されないことで、臨床的に血管損傷部位で遷延性の局在化炎症反応を開始することが明らかにされており、これは抗血小板薬投与を停止して数日以内に予期せぬ血栓性閉塞を引き起こすこともある。
【0007】
インビボでの損傷に対する創傷治癒または反応は血管損傷と同じ一般生物学的カスケードをたどる。すなわち、本来の組織の炎症と、続く炎症反応を緩和するための細胞の遊走および増殖;ならびにその後のフィブリン沈着および組織リモデリングを含む治癒期である。
【0008】
損傷に対する血栓性および炎症反応は持続性があるため、そのような細胞活性化反応を最小限に抑えるために、一定期間にわたり一つまたは複数の治療薬を放出しうる局在化薬物送達コーティングを提供することが望ましく、また多くの薬物の毒性副作用の可能性を低減するために、生体吸収性メカニズムにより薬物を送達する、代替となる非ポリマー性生体吸収性担体を提供することが望ましい。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
治療薬またはコーティングの分解生成物のいずれかによる慢性炎症を起こすことなく、局所組織に持続的および好ましくは制御様式で治療薬を放出および送達しうる薬物送達コーティングが望まれている。本発明はこの必要への取り組みを促進する様々な解決策を目的とする。
【0010】
細胞による生体吸収可能で、かつ機械的または再灌流障害により損傷された組織(例えば、血管組織)に慢性局在化炎症を誘導することなく薬物を送達しうるコーティングであり、それにより細胞がコーティングの分解生成物を治療薬と共に消費するにつれて、コーティングおよび治療薬が細胞により摂取および代謝される、コーティングも望まれている。
【0011】
様々な局面において、本発明は、一つまたは複数の治療薬の制御負荷、治療薬の持続放出、および治療薬の制御放出を容易にする、一つまたは複数の治療薬を含む疎水性非ポリマー性架橋ゲルコーティングであり、摂取および吸収されるコーティングの製造法を提供する。様々な態様において、出発原料を含む天然油から架橋ゲルを生成するのに用いる硬化条件の制御;それからゲルを生成する出発原料を含む天然油中のフリーラジカル捕捉剤の使用、またはその組み合わせにより、疎水性非ポリマー性架橋ゲルの薬物放出特性を調整する方法が提供される。様々な態様において、本発明の方法は、ゲルの架橋の程度を制御することにより疎水性非ポリマー性架橋ゲルコーティングの薬物放出特性を調整する。様々な態様において、本発明の方法は、架橋ゲルにおける脂肪酸、トコフェロールおよび可溶性成分のレベルを制御することにより、疎水性非ポリマー性架橋ゲルコーティングの薬物送達特性を調整する。
【0012】
様々な局面において、本発明は、一つまたは複数の治療薬の放出特性が調整された、一つまたは複数の治療薬を含む疎水性非ポリマー性架橋ゲルコーティングを提供する。様々な態様において、調整された放出特性は持続放出特性を含む。様々な態様において、調整された放出特性は、架橋ゲルにおける脂肪酸、トコフェロールおよび可溶性成分のレベルにより制御される。本発明の様々な局面において、生体吸収性架橋ゲルは脂肪酸を含み、その多くはトリグリセリド由来である。部分的に加水分解されたトリグリセリドなどのトリグリセリド副生成物および脂肪酸分子は細胞膜内へ統合され、薬物の細胞内への溶解性を高めうることが以前に示されている。全トリグリセリドはその比較的大きい分子サイズのゆえに細胞膜を通過するのが難しいため、全トリグリセリドは部分的に加水分解されたトリグリセリドと同じく細胞取り込みを増強しないことが公知である。ビタミンE化合物も細胞膜内へ統合され、膜の流動性および細胞取り込みの低下を引き起こすことができる。
【0013】
様々な局面において、本発明は、架橋ゲルおよびその中に混合された任意の治療薬の細胞取り込み特徴を制御する様式で架橋ゲルに寄与するための異なる量および比で脂肪酸およびα-トコフェロールを含む疎水性架橋ゲルを提供する。
【0014】
様々な局面において、本発明は、架橋ゲル層の少なくとも一つが一つまたは複数の治療薬を含む、疎水性架橋ゲルの一つまたは複数の層を含む非ポリマー性生体吸収性薬物放出コーティングを有するコーティングされた医療装置を提供する。様々な態様において、薬物放出コーティングはインビボで実質的に乳酸またはグリコール酸化合物のいずれかに分解されることはない。様々な態様において、薬物放出コーティングはインビボで実質的に非炎症性化合物に加水分解する。様々な態様において、コーティングされた医療装置は治療薬の患者への長期局所送達を行うために、患者に埋め込み可能である。様々な態様において、送達は少なくとも部分的には経時的に放出される治療薬の全量および相対量によって特徴づけられる。様々な態様において、調整された送達特性は架橋ゲル内の可溶性成分のレベルによって制御される。様々な態様において、送達特性はインビボでのコーティング成分および治療薬の溶解性および脂溶性の関数である。
【0015】
様々な態様において、本発明は、コーティングの薬物放出特性が複数のコーティングの提供および治療薬の位置の選択により調整されるコーティングを提供する。薬物の位置は、例えば、医療装置の何もない部分を第一の出発材料でコーティングして、第一の硬化コーティングを作成し、次いで第一の硬化コーティングの少なくとも一部を薬物-油製剤でコーティングして第二の重層コーティングを作成することにより、変更することができる。第一の出発材料は一つまたは複数の治療薬を含むことができる。様々な態様において、第二の重層コーティングも硬化する。第一のコーティング、重層コーティング、または両方の薬物負荷、薬物放出特性および/または薬物送達は、本明細書に記載のとおり、異なる硬化条件の使用および/またはフリーラジカル捕捉剤(例えば、ビタミンE)の添加により調整することができる。
【0016】
二層を提供する工程を延長して、少なくとも一つの層が疎水性非ポリマー性架橋ゲルを含む3つ以上の層を提供しうることが理解されるべきである。加えて、一つまたは複数の層は薬物を放出することができ、そのような層の薬物放出特性は本明細書に記載の方法を用いて調整することができる。
【0017】
本発明の様々な態様に従い、疎水性非ポリマー性架橋ゲルは脂質を含む。疎水性架橋ゲルは出発原料として魚油などの天然油から生成される。疎水性架橋ゲルはω-3脂肪酸を含みうる。疎水性架橋ゲルはα-トコフェロールまたはビタミンEも含みうる。
【0018】
本発明のコーティングは、治療薬に加えて下記の一つまたは複数を含むが、それらに限定されるわけではない、様々な他の化学物質および実体を含むよう製剤することができる:薬学的に許容される担体、賦形剤、界面活性剤、結合剤、補助剤、および/または安定化剤(保存剤、緩衝剤および抗酸化剤を含む)。一つの態様において、α-トコフェロールTPGSを本発明のコーティングに加えてもよい。
【0019】
様々な局面において、本発明は、例えば、ヒトなどの哺乳動物における損傷の治療法を提供する。様々な態様において、損傷は血管損傷である。様々な態様において、方法は疎水性非ポリマー性架橋ゲルを含むコーティングからの一つまたは複数の治療薬の持続放出により、治療上有効な量の一つまたは複数の治療薬を局所投与する段階を含む。
【0020】
本明細書における教示は、硬化魚油軟部組織メッシュコーティングが薬物負荷した魚油コーティングの埋め込み装置からの放出特性を調節可能としうることを示している。様々な態様において、放出特性はコーティング組成および硬化時間を変えることによる油コーティング化学の変化を通じて制御することができる。教示は、150oFで3日間の硬化により生成した疎水性非ポリマー性架橋ゲルは200oFで24時間硬化したものよりも過酸化物/エーテル/炭素-炭素架橋が少ないことを示している。教示は、硬化魚油コーティングの架橋およびゲル化は、温度が上がるにつれて増加する魚油成分中のヒドロペルオキシドの生成に直接依存しうることを示している。本明細書に提示する溶解実験により、薬物放出およびコーティング分解は150oFの硬化条件を用いて生成した架橋コーティングでは、200oFの硬化条件を用いて作成したものに比べて速いことが明らかにされている。
【0021】
本明細書における教示は、硬化魚油コーティングにおけるビタミンEの使用は、コーティングの架橋および薬物放出特性を変えるもう一つの方法であることを示している。ビタミンEは、硬化中のヒドロペルオキシド生成を低減する、と考えられている、ことにより魚油中の自動酸化を減速させうる抗酸化剤である。これは硬化魚油コーティング中で観察される架橋の量の減少を引き起こしうる。コーティング中のビタミンEの量を増やすと、治療薬のコーティングからの放出の延長および減速を引き起こしうる。例えば、本明細書における教示は、硬化魚油コーティング中の脂肪酸およびビタミンE成分に対するラパマイシンの親和性による、と考えられている、疎水性非ポリマー性架橋ゲルコーティングから溶解緩衝液中へのラパマイシン放出の延長および減速を示している。本明細書における教示は、ビタミンEがラパマイシンなどの薬物を保護し、コーティングから抽出されるそのような薬物の量を増やすこともできることをさらに示している。
【0022】
本明細書における教示は、コーティングされた医療装置上の薬物含有層の位置決めがコーティングの放出特性を変えうることも示している。
【0023】
詳細な説明
本発明は、一つまたは複数の治療薬の放出および局所送達のための医療装置のコーティング、該コーティングの製造法およびその性質の調整法、ならびに哺乳動物における損傷を治療するための該コーティングの使用法を目的とする。
【0024】
本発明を詳細に記載する前に、損傷およびそれに対する生体反応について一般的かつ簡単に説明することが、本発明を理解する上で有用であると考えられる。
【0025】
血管損傷
内膜肥厚を引き起こす血管損傷は、生物学的または機械的のいずれで誘導されたかによって大きく分類することができる。生物学的に仲介される血管損傷には、エンドトキシンおよびサイトメガロウイルスなどのヘルペスウイルスを含む感染障害に起因する障害;アテローム性動脈硬化症などの代謝障害;ならびに低体温および放射線照射によって起こる血管損傷が含まれるが、それらに限定されるわけではない。機械的に仲介される血管傷害には、経皮経管冠動脈形成術などのカテーテル法または血管掻爬術による血管損傷;血管手術;移植手術;レーザー治療;および血管内膜または内皮の完全性を破壊する他の侵襲的処置が含まれるが、それらに限定されるわけではない。一般に、新生内膜形成は血管損傷に対する治癒反応である。
【0026】
炎症反応
血管損傷後の創傷治癒はいくつかの段階で起こる。第一段階は炎症相である。炎症相は血流遮断および炎症によって特徴づけられる。創傷形成中に露出したコラーゲンが凝固カスケード(内因性と外因性の両方の経路)を活性化し、炎症相を開始する。組織への損傷が起こった後、創傷形成により傷害された細胞膜は、強力な血管収縮物質であるトロンボキサンA2およびプロスタグランジン2-αを放出する。この初期反応は出血を制限する助けをする。短時間の後、局所ヒスタミン放出に続発して毛細管拡張が起こり、炎症の細胞は創傷床へと遊走することができる。正常な創傷治癒過程における細胞遊走のタイムラインは予想可能である。第一反応細胞である血小板は、表皮成長因子(EGF)、フィブロネクチン、フィブリノゲン、ヒスタミン、血小板由来成長因子(PDGF)、セロトニン、およびフォン-ウィルブランド因子を含む、複数のケモカインを放出する。これらの因子は血餅形成により創傷の安定化を助ける。これらのメディエーターは出血を制御し、損傷の範囲を限定するはたらきをする。血小板脱顆粒は、強力な好中球の化学遊走因子である補体カスケード、具体的にはC5aも活性化する。
【0027】
炎症相が持続している間に、さらに多くの免疫反応細胞が創傷に遊走する。創傷に遊走する第二の反応細胞である好中球は、壊死組織片の捕捉、補体が仲介する細菌のオプソニン作用、および酸化的バーストメカニズム(すなわち、超酸化物および過酸化水素生成)による細菌破壊を担う。好中球は細菌を死滅させ、創傷の外来組織片を除去する。
【0028】
創傷中にある次の細胞は白血球およびマクロファージ(単球)である。マクロファージは管弦楽編曲家(orchestrator)と呼ばれ、創傷治癒に不可欠である。多くの酵素およびサイトカインがマクロファージによって分泌される。これらには、創傷を清掃するコラゲナーゼ;線維芽細胞(コラーゲンを産生する)を刺激し、血管形成を促進するインターロイキンおよび腫瘍壊死因子(TNF);ならびにケラチノサイトを刺激する形質転換成長因子(TGF)が含まれる。この段階は組織再構築の過程、すなわち増殖相への移行を特徴づける。
【0029】
細胞増殖
創傷治癒の第二段階は増殖相である。上皮化、血管形成、肉芽組織形成、およびコラーゲン沈着が、この創傷治癒のタンパク質同化部分における主要な段階である。上皮化は創傷修復の早期に起こる。創傷の端で、表皮はただちに肥大しはじめる。辺縁の基底細胞はフィブリン鎖に沿って創傷を越えて遊走し、互いに接触した時点で停止する(接触阻害)。損傷後48時間以内に、創傷全体が上皮化する。上皮化の層化が再確立される。この時点で創傷の深度は炎症細胞およびフィブリン鎖を含む。高齢者ではほとんどではないとしても、多くの問題創傷が生じるため、創傷治癒における加齢の影響は重要である。例えば、高齢患者からの細胞は増殖しにくくて寿命が短く、また高齢患者からの細胞はサイトカインに反応しにくい。
【0030】
心疾患は心臓に供給する血管の部分的閉塞によって引き起こされることがあり、この前に内膜平滑筋細胞過形成が起こる。内膜平滑筋細胞過形成の根底にある原因は血管平滑筋損傷および内皮内層の完全性の破壊である。動脈損傷後の内膜肥厚は次の三つの連続する段階に分けることができる:1)血管損傷後の平滑筋細胞増殖の開始、2)内膜への平滑筋細胞の遊走、および3)マトリックスの沈着を伴う内膜内での平滑筋細胞のさらなる増殖。内膜肥厚の病因の調査により、動脈損傷後、血小板、内皮細胞、マクロファージおよび平滑筋細胞はパラクリンおよびオートクリン成長因子(血小板由来成長因子、表皮成長因子、インスリン様成長因子、および形質転換成長因子など)ならびにサイトカインを放出し、これらが平滑筋細胞増殖および遊走を引き起こすことが明らかにされている。T細胞およびマクロファージも新生内膜へと遊走する。この事象のカスケードは動脈損傷に限定されるものではなく、静脈および小動脈への損傷後にも起こる。
【0031】
肉芽腫性炎
慢性炎症、または肉芽腫性炎は、血管損傷の治癒中にさらなる合併症を引き起こすことがある。肉芽腫は、ミリメートル範囲のサイズの結節を形成する特定の型の慢性炎症細胞の凝集物である。肉芽腫は融合性で、より大きい領域を形成することもある。肉芽腫の基本的成分は、類上皮細胞と呼ばれ、通常は周囲をリンパ球が取り囲んでいる、変化したマクロファージの集まりである。類上皮細胞は、上皮細胞に組織学的に類似しているが、実際は上皮細胞ではないことから、伝統的にそのように命名されており、すべてのマクロファージと同様に血液単球由来である。類上皮細胞は他のマクロファージよりも食作用性が低く、分泌機能のために変更されると考えられる。これらの機能の全体はまだ不明である。肉芽腫におけるマクロファージは一般には多核巨細胞を形成するようさらに変更される。これらは核または細胞分裂をせずに類上皮マクロファージの融合により生じ、何十もの核を含みうる巨大な単一細胞を形成する。核が細胞の周囲に配置されて、ラングハンス型巨細胞と呼ばれることもあれば;核が細胞質全体に無作為に散乱していることもある(すなわち、組織中の他の消化できない異物の存在に反応して形成される異物型の巨細胞)。肉芽腫性炎の領域は一般に壊死を起こす。
【0032】
肉芽腫性炎の形成は、消化できない異物(細菌または他の供給源由来)の存在および/または有害物質に対する細胞性免疫反応(IV型過敏反応)を必要とすると考えられる。
【0033】
薬物放出および送達コーティング
本発明のコーティングは疎水性非ポリマー性架橋ゲル、一つまたは複数の治療薬、および脂肪酸を含む。さらなる態様において、コーティングは疎水性非ポリマー性架橋ゲルおよび脂肪酸を含み、グリセリド、グリセロール、および脂肪アルコールからなる群の一つまたは複数をさらに含み、かつ治療薬をさらに含んでいてもよい。
【0034】
コーティングは可溶性および不溶性成分の両方を含むことができる。本明細書に記載の架橋ゲルコーティングの文脈で用いる場合、「可溶性」および「不溶性」なる用語は、例えば、重量分析により評価した場合に、例えば、テトラヒドロフラン(THF)などの極性溶媒中のコーティングの溶解性を意味する。例えば、コーティングは、重量分析により評価した場合に、THF中で約60%〜75%可溶、THF中で約25%〜40%不溶でありうるか、またはコーティングはTHF中で約30%〜55%可溶、THF中で45%〜70%不溶でありうる。一般に、有機溶媒(THFなど)中の抽出に抵抗性の成分の少なくともいくつかは架橋成分を含んでいてもよく、これらは鎖長約C10〜C22の遊離またはエステル化脂肪酸を含んでいてもよい。
【0035】
本明細書において本発明に関して用いられる、架橋ゲルなる用語は、実質的に無作為な配置で、エステル、エーテル、過酸化物、および炭素-炭素結合の一つまたは複数により三次元ネットワークに共有結合で架橋されている分子を含む、非ポリマー性で、油組成物由来のゲルを意味することに留意すべきである。様々な好ましい態様において、油組成物は脂肪酸分子、グリセリド、およびその組み合わせを含む。
【0036】
加えて、本発明の疎水性非ポリマー性架橋ゲルコーティングは本明細書に記載のとおり生体吸収性である。治療薬はコーティングに含まれたままで活性な薬剤でありえ、かつ/または、例えば、コーティングから放出後に活性になるプロドラッグでありうる。コーティングは、治療薬をインビボで所望の速度および/または治療上有効な速度で送達または放出するよう選択してもよい。もう一つの態様において、コーティングは平均薬物負荷が約1〜50重量%であってもよい。
【0037】
本発明の疎水性非ポリマー性架橋ゲルコーティングは油成分から調製する。「油成分」なる用語は、本明細書において「油含有出発原料」とも呼ばれる。「油含有出発原料」は天然でもよく、または合成原料由来であってもよい。好ましくは、「油含有出発原料」は不飽和脂肪酸を含む。油成分は油、または油組成物のいずれでもありうる。油成分は魚油、タラ肝油、ツルコケモモ油などの天然油、合成油、または他の所望の特徴を有する油でありうる。本発明の一つの態様例は、一部にはω-3脂肪酸の含有量が高いため、魚油を利用し、これは本明細書に記載のとおり傷害された組織の治癒を支持することができる。魚油は抗付着剤としても役立ちうる。加えて、魚油は抗炎症または非炎症特性も維持する。本発明は、天然油として魚油を用いた疎水性非ポリマー性架橋ゲルコーティングの生成に限定されるものではない。しかし、以下の説明は一つの態様例としての魚油の使用に言及する。他の天然油または合成油も、本明細書に記載のとおり本発明に従って用いることができる。
【0038】
本明細書において用いられる、「魚油」なる用語は、ω-3脂肪酸、魚油脂肪酸、遊離脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリド、もしくはトリグリセリド、脂肪酸のエステル、またはその組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではないことに留意すべきである。魚油はアラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、またはその誘導体、類縁体および薬学的に許容される塩の一つまたは複数を含んでいてもよい。
【0039】
さらに、本明細書において用いられる、遊離脂肪酸なる用語は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、ベヘン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、その類縁体および薬学的に許容される塩の一つまたは複数を含むが、それらに限定されるわけではない。魚油を含む天然油は本明細書に記載のとおりに硬化して疎水性架橋ゲルを形成し、コーティングを作成する。
【0040】
前述の油に関して、脂肪酸中の不飽和の程度が高いほど脂肪の融点は低く、炭化水素鎖が長いほど脂肪の融点は高いことが一般に公知である。多不飽和脂肪はしたがって低い融点を有し、飽和脂肪は高い融点を有する。融点が低い脂肪は室温で油であることが多い。融点が高い脂肪は室温でワックスまたは固体であることが多い。したがって、室温で物理的状態が液体である脂肪は油である。一般に、多不飽和脂肪は室温で液体油であり、飽和脂肪は室温でワックスまたは固体である。
【0041】
多不飽和脂肪は食物から体によって誘導される脂肪の4つの基本型の一つである。他の脂肪には、飽和脂肪、ならびに一不飽和脂肪およびコレステロールが含まれる。多不飽和脂肪はさらにω-3脂肪酸およびω-6脂肪酸から構成されうる。不飽和脂肪酸をその第一の炭素二重結合の位置に従って命名する慣習により、第一の二重結合を分子のメチル末端から三つめの炭素で有する脂肪酸はω-3脂肪酸と呼ぶ。同様に、6番目の炭素原子における第一の二重結合はω-6脂肪酸と呼ぶ。これらは一不飽和および多不飽和ω脂肪酸の両方でありうる。
【0042】
ヒトの体はω-3およびω-6脂肪酸を自分自身で作ることができないという事実にもかかわらず、これらは良好な健康を維持するために重要であるため、ω-3およびω-6脂肪酸は必須脂肪酸としても知られている。したがって、ω-3およびω-6脂肪酸は食物などの外部供給源から得なければならない。ω-3脂肪酸は、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、およびα-リノレン酸(ALA)を含むとしてさらに特徴づけることができる。EPAおよびDHAはいずれもヒトの体内で抗炎症効果および創傷治癒効果を有することが知られている。
【0043】
本明細書において用いられる「生体吸収性」なる用語は一般に、患者の体の組織に浸透しうる性質または特徴を有することを意味する。本発明の特定の態様において、生体吸収は親油性メカニズムを通して起こる。生体吸収性物質は体組織の細胞のリン脂質二重層に可溶で、したがって生体吸収性物質がどのように細胞内に浸透するかに影響をおよぼす。
【0044】
生体吸収性物質は生体分解性物質とは異なることに留意すべきである。生体分解性は一般に生物学的物質によって分解されうる、または微生物もしくは生物学的プロセスによって分解されうると定義される。生体分解性物質は、親物質または分解中に生じるもののいずれかによって炎症反応を引き起こすことができ、組織によって吸収されても、されなくてもよい。いくつかの生体分解性物質は分解のバルク侵食メカニズムに限定される。
【0045】
本発明のコーティングでコーティングしうる医療装置の例には、ステント、カテーテルバルーン、外科メッシュおよび封入外科メッシュが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0046】
薬物放出および送達
本発明のコーティングは、治療を必要とする患者の選択された標的組織部位でコーティングを有する医療装置または器具を用いて、一つまたは複数の治療薬を標的とする領域に局所的に送達する。治療薬はコーティングと共に標的組織部位に運ばれる。治療薬の放出および局所送達の組み合わせにより、広範囲の全身副作用を起こすことなく、高濃度で多量の治療薬を、拡散とは無関係に親油性コーティング成分を介して標的組織部位に直接送達することが可能となる。局所送達では、標的組織部位を逃れた治療薬は患者の体の残りを移動するうちに希釈され、実質的に全身副作用を軽減または除去する。
【0047】
医療装置を用いての標的指向局所治療薬送達は二つの範疇、すなわち短期および長期にさらに分類することができる。治療薬の短期送達は一般に、およそ数秒または数分から数日または数週間以内に起こる。治療薬の長期送達は一般に、数週間から数ヶ月間以内に起こる。
【0048】
本明細書において用いられる「持続放出」なる用語は一般に、生物活性物質を長期送達することになる活性物質の放出を意味する。
【0049】
本明細書において用いられる「制御放出」なる用語は一般に、放出元となる医療装置上の生物活性物質の形成後に望まれ、規定された、数週間から数ヶ月間にわたる、実質的に予測可能な様式での生物活性物質の放出を意味する。制御放出は、埋め込み後の最初の集中的放出と、その後の前述の期間をかけての実質的に予測可能な放出を含む。
【0050】
持続放出により有利に投与しうる治療薬の例には、抗増殖および抗炎症薬が含まれる。これらの薬剤は、その放出速度に影響をおよぼしうる薬物負荷レベルでコーティングに負荷することになる。特定の時間枠で放出される薬物の量を、特定の薬物群、特定の薬物、特定の疾患および特定の被験者に対して調整することができる。
【0051】
例えば、一つの抗増殖薬のために、コーティングの平均薬物負荷は1平方インチあたり約500から約1500マイクログラム、1平方インチあたり約600から約1450マイクログラム、1平方インチあたり約700から約1400マイクログラム、1平方インチあたり約800から約1350マイクログラム、1平方インチあたり約900から約1300マイクログラム、1平方インチあたり約1000から約1300マイクログラム、または1平方インチあたり約1100から約1300マイクログラムであってもよい(硬化後)。さらに、コーティングは薬物を少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約15日間、少なくとも約16日間、少なくとも約17日間、少なくとも約18日間、少なくとも約19日間、または少なくとも約20日間で放出してもよい。さらなる態様において、コーティングは薬物を約17から約20日間で放出する。
【0052】
もう一つの、抗増殖薬などの治療薬のために、コーティングの平均薬物負荷は1平方インチあたり約200から約800マイクログラム、1平方インチあたり約300から約700マイクログラム、1平方インチあたり約400から約600マイクログラム、または1平方インチあたり約400から約500マイクログラムであってもよい(硬化後)。さらに、コーティングは薬物を少なくとも約10日間、少なくとも約15日間、少なくとも約20日間、少なくとも約25日間、少なくとも約30日間、少なくとも約35日間、少なくとも約40日間、または少なくとも約45日間で放出してもよい。さらなる態様において、コーティングは薬物を約35から約45日間で放出する。
【0053】
もう一つの、抗炎症薬などの治療薬のために、コーティングの平均薬物負荷は1平方インチあたり約50から約600マイクログラム、1平方インチあたり約75から約500マイクログラム、1平方インチあたり約100から約400マイクログラム、または1平方インチあたり約150から約350マイクログラムであってもよい(硬化後)。さらに、コーティングは薬物を少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、または少なくとも約15日間で放出してもよい。さらなる態様において、コーティングは薬物を約10から約15日間で放出する。
【0054】
もう一つの、抗炎症薬などの治療薬のために、コーティングの平均薬物負荷は1平方インチあたり約200から約800マイクログラム、1平方インチあたり約300から約700マイクログラム、1平方インチあたり約400から約600マイクログラム、または1平方インチあたり約400から約500マイクログラムであってもよい(硬化後)。さらに、コーティングは薬物を少なくとも約10日間、少なくとも約15日間、少なくとも約20日間、少なくとも約25日間、少なくとも約30日間、少なくとも約35日間、少なくとも約40日間、または少なくとも約45日間で放出してもよい。さらなる態様において、コーティングは薬物を約25から約30日間で放出する。
【0055】
薬物放出メカニズム
ステントの分野などにおけるコーティング、フィルムおよび薬物送達プラットフォームを作成するためのこれまでの試みは、治療薬の放出をうまく制御する能力を得るために、高分子量の合成ポリマー材料を主に利用している。基本的に、プラットフォーム中のポリマーは、患者内の部位に埋め込んだ後、規定の速度で拡散型のメカニズムにより薬物または薬剤を放出する。どれだけの量の治療薬が傷害された組織に対して最も有益であるかにかかわらず、ポリマーは治療薬をポリマーの性質、例えば、ポリマー材料の侵食および固体マトリックスからの薬物拡散に基づいて放出する。したがって、治療薬の効果は実質的には、コーティングを有する医療装置と接触する組織の表面で局所的である。いくつかの場合に、治療薬の効果は、例えば、治療中の組織部位に押しつけられたステント支柱またはメッシュの具体的な位置にさらに局在化する。これらの先行アプローチは濃縮された局在化毒性の可能性を生じうる。
【0056】
本発明の様々な態様において、コーティングは、生体吸収型移行メカニズムに加えて、溶解メカニズム、例えば、コーティングの可溶性成分中に含まれる治療薬のコーティングと接触している媒質、例えば、組織中への溶解により、一つまたは複数の治療薬を放出および送達する。その結果、薬物放出メカニズムは治療薬の周囲の媒質中での溶解性に基づくものでありうる。例えば、疎水性コーティングと周囲の媒質との間の界面付近の治療薬は、治療薬を油性コーティングから周囲の媒質中の溶液へと誘導しうる化学ポテンシャル勾配を経験することもある。したがって、様々な態様において、治療薬の放出はコーティングの分解または侵食によって律速されないが、親油性ゲル成分存在下での治療薬の生体吸収亢進による。
【0057】
様々な態様において、疎水性非ポリマー性架橋ゲルのインビボ副生成物は、それ自体が溶解メカニズムにより一つまたは複数の治療薬を放出および送達しうる、非炎症性副生成物、例えば、遊離脂肪酸およびグリセロールに変わる。
【0058】
理論に縛られることなく、本発明の特定の態様において、脂肪酸基は細胞および細胞膜によって代謝されるため、ゲルの成分(脂肪酸など)は治療薬の直接細胞および組織内への「担体」として作用してもよい。特定の態様において、コーティングは医療装置からはがれ、実質的に治療薬を体液中に放出することなく、その中に治療薬を含んだ小脂肪酸基でほぼ完全に吸収されることが明らかにされている。
【0059】
一つの態様において、本発明のコーティングは実質的に治療薬を(例えば、体液中に)放出しないが、コーティングと接触している局所組織に、例えば、物理化学的親油性誘引メカニズムと、その後の脂肪酸複合体の細胞取り込みによって直接移行する。親油性移行および細胞取り込みを、例えば、取り込み増強剤を加える、硬化の量を変える、粘性を変えるために薬物負荷を変える、または他の化学的変更手段により化学的に制御して、薬物の体液中への放出を調節してもよい。理論に縛られることはないが、コーティングの局在化組織上への移行は薬物の近接組織の細胞への分布を最大化しうる。加えて、この移行メカニズムおよび細胞仲介性取り込みは実質的な炎症を誘導しないと考えられる。
【0060】
本発明、および軟部組織適用の分野により、また部分的には本発明の生体吸収性脂質性架橋ゲルによって可能となった親油性メカニズムにより、治療薬の取り込みは、生体吸収性架橋ゲルによる治療薬の細胞膜への送達によって促進される。さらに、治療薬は体液中に自由に放出されることはないが、むしろ細胞および組織に直接送達される。ポリマー性コーティングを用いた先行形態では、薬物は薬物を受け取る細胞の一部における薬物の反応または必要性に関係のない速度で放出された。
【0061】
治療薬
本明細書において用いられる「治療薬」なる語句は、入手可能ないくつかの異なる薬物または薬剤、ならびに本発明の薬物放出コーティングと共に用いるのに有益でありうる将来の薬剤を意味し、「薬物」なる用語と交換可能に用いてもよい。治療薬成分は、抗酸化剤、抗炎症剤、抗凝固剤、脂質代謝を変える薬物、抗増殖剤、抗新生物剤、組織成長刺激剤、機能性タンパク質/因子送達薬、抗感染薬、抗造影剤、麻酔薬、治療薬、組織吸収増強剤、抗付着剤、殺菌薬、消毒薬、鎮痛剤、そのプロドラッグ、および下記の表1に挙げるものなどの任意の追加の望ましい治療薬を含むいくつかの異なる形をとりうる。
【0062】
【表1】



【0063】
抗再狭窄の領域で有用な治療薬のいくつかの具体例には、セリバスタチン、シロスタゾール、フルバスタチン、ロバスタチン、パクリタキセル、プラバスタチン、ラパマイシン、ラパマイシン炭水化物誘導体(例えば、米国特許出願公報第2004/0235762号に記載のもの)、ラパマイシン誘導体(例えば、米国特許第6,200,985号に記載のもの)、エベロリムス、セコ-ラパマイシン、セコ-エベロリムス、およびシンバスタチンが含まれる。全身投与では、治療薬は経口または静脈内に投与されて患者により全身処理される。しかし、治療薬の全身送達には欠点があり、その一つは治療薬が患者の体のすべての部分に移動し、治療薬が治療の標的としていない領域で望ましくない作用を示しうることである。さらに、大用量の治療薬は非標的領域での望ましくない作用を増幅するだけである。結果として、高用量の治療薬から生じる毒性からの合併症を軽減するために、全身投与する場合には、患者における特定の標的部位に適用される治療薬の量を減らさなければならないこともある。
【0064】
本明細書において記載されるとおり、治療薬成分はいくつかの形の治療的または生物学的効果を有する。油成分または油組成物成分も治療的または生物学的効果を有しうる。具体的には、患者の体による最終的な排泄のためにゲルを分解し、ゲルの副生成物を分配するのではなく、架橋ゲル(およびその油構成物)は患者の体組織の細胞が架橋ゲル10自体を吸収できるようにする。
【0065】
「mTOR標的指向化合物」なる用語は、mTORを直接または間接的に調節しうる任意の化合物を意味する。「mTOR標的指向化合物」の一例はFKBP 12に結合して、例えば、複合体を形成し、これが次いでホスホイノシチド(PI)-3キナーゼ、すなわちmTORを阻害する化合物である。様々な態様において、mTOR標的指向化合物はmTORを阻害する。適当なmTOR標的指向化合物には、例えば、ラパマイシンおよびその誘導体、類縁体、プロドラッグ、エステルおよび薬学的に許容される塩が含まれる。
【0066】
カルシニューリンはセリン/トレオニンリンタンパク質ホスファターゼであり、触媒(カルシニューリンA)および調節(カルシニューリンB)サブユニット(それぞれ約60および約18kDa)からなる。哺乳動物において、触媒サブユニットに対する三つの異なる遺伝子(A-α、A-β、A-γ)が特徴づけられており、これらはそれぞれ別のスプライシングを受けて追加の変異体を生じうる。三つの遺伝子すべてのmRNAがほとんどの組織で発現されると考えられるが、脳では二つの異性体(A-αおよびA-β)が最も多い。
【0067】
カルシニューリンシグナル伝達系路は免疫応答ならびに神経細胞におけるグルタミン酸興奮毒性によるアポトーシス誘導に関与している。カルシニューリンの低い酵素レベルはアルツハイマー病に関連している。心臓または脳において、カルシニューリンは低酸素または虚血後のストレス反応においても重要な役割を果たす。
【0068】
カルシニューリンシグナル系路を遮断しうる物質は本発明の適当な治療薬でありうる。そのような治療薬の例には、FK506、タクロリムス、シクロスポリンが含まれるが、それらに限定されるわけではなく、またそれ自体またはその代謝生成物が同じ作用メカニズムを有する、その誘導体、類縁体、エステル、プロドラッグ、薬学的に許容される塩、およびその複合体が含まれる。シクロスポリンのさらなる例には、全合成もしくは半合成手段により、または改変培養技術の適用により調製した天然および非天然シクロスポリンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。シクロスポリンを含むクラスには、例えば、天然シクロスポリンAからZ、ならびに様々な非天然シクロスポリン誘導体、人工または合成シクロスポリン誘導体が含まれる。人工または合成シクロスポリンには、ジヒドロシクロスポリン、誘導体化シクロスポリン、およびペプチド配列内の特定の位置に変異アミノ酸が組み込まれているシクロスポリン、例えば、ジヒドロシクロスポリンDが含まれるうる。
【0069】
様々な態様において、治療薬は一つまたは複数のmTOR標的指向化合物およびカルシニューリン阻害剤を含む。様々な態様において、mTOR標的指向化合物はラパマイシンまたはそれ自体もしくはその代謝生成物が同じ作用メカニズムを有する、その誘導体、類縁体、エステル、プロドラッグ、薬学的に許容される塩、もしくはその複合体である。様々な態様において、カルシニューリン阻害剤はタクロリムスの化合物またはそれ自体もしくはその代謝生成物が同じ作用メカニズムを有する、その誘導体、類縁体、エステル、プロドラッグ、薬学的に許容される塩、もしくはその複合体、あるいはシクロスポリンの化合物またはそれ自体もしくはその代謝生成物が同じ作用メカニズムを有する、その誘導体、類縁体、エステル、プロドラッグ、薬学的に許容される塩、もしくはその複合体である。特定の態様において、治療薬は出発原料を含む油と架橋してもよい。例えば、不飽和を有する治療薬は硬化工程中に不飽和脂肪酸と架橋してもよい。本発明のゲル、コーティング、医療装置、および方法は架橋脂肪酸および治療薬を含んでいてもよい。架橋しうる治療薬の例にはアントラサイクリン、ラパマイシンなどが含まれる。
【0070】
治療上有効な量および用量レベル
治療上有効な量とは、症状の改善、例えば、関連する医学的状態の治療、治癒、予防もしくは改善、またはそのような状態の治療、治癒、予防もしくは改善率の上昇をもたらすのに十分な化合物の量を意味する。単独で投与する、個々の活性成分に適用する場合、治療上有効な量とはその成分単独を意味する。組み合わせに適用する場合、組み合わせで投与するか、逐次または同時に投与するかに関わらず、治療上有効な量とは治療効果をもたらす活性成分の組み合わせた量を意味しうる。様々な態様において、製剤が複数の治療薬を含む場合、そのような製剤は適応Aのための化合物Aの治療上有効な量および適応Bのための化合物Bの治療上有効な量と記載することができ、そのような記載は適応Aに対して治療効果を有するが、適応Bに対しては必ずしも効果がないAの量、および適応Bに対して治療効果を有するが、適応Aに対しては必ずしも効果がないBの量を意味する。
【0071】
本発明のコーティングにおける活性成分の実際の用量レベルは、許容できないほどの毒性なしに所望の治療反応を達成するのに有効な活性成分の量を得るために変動しうる。選択される用量レベルは、用いる特定の治療薬(薬物)、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、薬物作用のメカニズム、投与の時期、コーティングの薬物放出特性、用いている特定の化合物の排出速度、治療期間、用いる特定の化合物と併用する他の薬物、化合物および/または材料、ならびに医学技術分野で公知の同様の因子を含む、様々な薬動力学的因子に依存することになる。
【0072】
他の物質
本発明のコーティングは、治療薬に加えて、下記の一つまたは複数を含むが、それらに限定されるわけではない、一つまたは複数の他の化学物質または実体を含むこともできる:薬学的に許容される担体、賦形剤、界面活性剤、結合剤、補助剤、および/または安定化剤(保存剤、緩衝剤および抗酸化剤を含む)。他の物質は、例えば、補助剤は安定化剤としても役立つなどの、一つまたは複数の機能を実施することができる。一つの態様において、α-トコフェロールTPGSを本発明のコーティングに加える。保存剤は、油成分の物理的性質を変える際、ならびに特定の硬化工程中に油成分のいくつかの有益な性質を保護する際にも有用でありうる。そのような有益な性質には、前述の治癒および抗炎症特性が含まれる。
【0073】
様々な態様において、本発明のコーティングは一つまたは複数のフリーラジカル捕捉剤および取り込み増強剤を含む。様々な態様において、コーティングはビタミンEを含む。
【0074】
前述のとおり、および本発明の態様に従い、架橋ゲルは天然油、または魚油、タラ肝油、ツルコケモモ油などの天然油を含む組成物から形成される。天然油の特徴は油が脂質を含むことで、これは本明細書において後述する親油性作用に寄与し、体組織の細胞への治療薬の送達において有用である。加えて、本発明のいくつかの態様に従い、天然油は必須ω-3脂肪酸を含みうる。
【0075】
本発明を記載するために本明細書において用いられるとおり、ビタミンEなる用語およびα-トコフェロールなる用語は、交換可能であり、一方の使用は両方への暗黙の言及を含むように、同じまたは実質的に類似の物質を指すよう意図されることに留意すべきである。さらにビタミンEなる用語に関連して含まれるものは、一つまたは複数のα-トコフェロール、β-トコフェロール、デルタ-トコフェロール、γ-トコフェロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、デルタ-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、酢酸α-トコフェロール、酢酸β-トコフェロール、酢酸γ-トコフェロール、酢酸デルタ-トコフェロール、酢酸α-トコトリエノール、酢酸β-トコトリエノール、酢酸デルタ-トコトリエノール、酢酸γ-トコトリエノール、コハク酸α-トコフェロール、コハク酸β-トコフェロール、コハク酸γ-トコフェロール、コハク酸デルタ-トコフェロール、コハク酸α-トコトリエノール、コハク酸β-トコトリエノール、コハク酸デルタ-トコトリエノール、コハク酸γ-トコトリエノール、混合トコフェロール、ビタミンE TPGS、その誘導体、類縁体および薬学的に許容される塩を含むが、それらに限定されるわけではない、変種である。
【0076】
組織を通過しての移動が速すぎる化合物は、対象領域において十分に濃縮された用量を提供する際に有効でない可能性がある。反対に、組織中に移動しない化合物は対象領域に決して達しない可能性がある。脂肪酸などの細胞取り込み増強剤およびα-トコフェロールなどの細胞取り込み阻害剤を単独または組み合わせで用いて、所与の化合物の所与の領域または部位への有効な輸送を提供することができる。脂肪酸およびα-トコフェロールはいずれも本明細書に記載の本発明の薬物放出コーティングに含まれうる。したがって、脂肪酸およびα-トコフェロールは異なる量および比率で組み合わされて、コーティングおよびその中に混合される任意の治療薬の細胞取り込み特性を制御する様式で、薬物放出コーティングに寄与することができる。
【0077】
例えば、α-トコフェロールの量はコーティング中で変えることができる。α-トコフェロールはヒドロペルオキシド生成を低減することにより魚油中の自動酸化を遅延させることが公知で、これは硬化魚油中の架橋量の減少をきたす。加えて、α-トコフェロールを用いて、コーティングを形成している魚油中の薬物の溶解性を高めることができる。様々な態様において、α-トコフェロールは硬化中に治療薬を実際に保護することができ、これは硬化後のコーティング中で得られる薬物負荷を増大させる。さらに、特定の治療薬では、コーティング中のα-トコフェロールの増加は、コーティングのα-トコフェロール成分中の薬物の溶解性増大により薬物放出を遅延および延長させるために役立ちうる。これは、細胞レベルでの薬物の送達または取り込みが経時的に遅延および延長することから、細胞膜透過性を低下させるα-トコフェロールの能力と組み合わせて、α-トコフェロールの細胞取り込み阻害剤機能を反映している。
【0078】
被験者の治療法
本発明のコーティング、ゲルおよび医療装置を用いて被験者を治療してもよい。被験者の例には哺乳動物、例えば、ヒトが含まれる。被験者は、例えば、血管損傷、軟部組織損傷などの障害を患っていてもよく、またはそうではなく一つまたは複数の本発明のコーティング、ゲルおよび/または医療装置の使用から利益を得てもよい。
【0079】
一つの態様において、本発明は、少なくとも部分的には、被験者の治療法に関する。方法は、被験者にコーティングされた医療装置を被験者が治療されるように投与する段階であり、コーティングは疎水性非ポリマー性架橋ゲル、脂肪酸および治療薬を含む段階を含む。
【0080】
特定の態様において、治療薬を被験者に局所投与する。「局所投与」なる用語は、一般には医療装置が設置されているところに近接する組織への治療薬の投与を意味する。
【0081】
もう一つの態様において、本発明は治療薬を被験者の標的組織に投与する方法に関する。方法は、被験者に疎水性非ポリマー性架橋ゲルおよび治療薬を、標的組織の近くに投与する段階と;治療薬を標的組織に生体吸収させる段階とを含む。
【0082】
もう一つの態様において、本発明は、少なくとも部分的には、治療薬を被験者の標的組織に投与する方法に関する。方法は、被験者にコーティングされた医療装置を、標的組織の近くに投与する段階であり、コーティングは疎水性非ポリマー性架橋ゲルおよび治療薬を含む段階と;治療薬を標的組織に生体吸収させる段階とを含む。
【0083】
さらなる態様において、治療薬はゲルまたはコーティングの細胞取り込みによって生体吸収されうる。もう一つの態様において、ゲルはコーティングの細胞取り込みによって生体吸収されうる。もう一つの態様において、治療薬はゲル存在下で生体吸収されうる。
【0084】
硬化およびゲル形成
一つまたは複数の治療薬を含む天然油出発原料を硬化して、本発明の薬物放出および送達コーティングのための非ポリマー性架橋ゲルコーティングを生成するために、いくつかの方法が利用可能である。本発明の疎水性非ポリマー性架橋ゲルコーティングを生成するための出発原料の好ましい硬化法には、加熱(例えば、オーブン、広帯域赤外(IR)光源、コヒーレントIR光源(例えば、レーザー)、およびその組み合わせの使用)および紫外(UV)線照射が含まれるが、それらに限定されるわけではない。出発原料は自動酸化により架橋されてもよい。
【0085】
いくつかの硬化法はω-3脂肪酸油出発原料と組み合わせた治療薬に有害な影響を有することもあるが、例えば、加熱およびUV照射法による特定の硬化後に残りうる一つの特徴は、硬化ω-3脂肪酸材料に曝露された場合の組織の非炎症反応である。したがって、ω-3脂肪酸を含む油は硬化のために加熱、UV照射、または両方を行うことができ、なおω-3脂肪酸の治療的有効性の一部または大部分さえも維持している。加えて、ω-3脂肪酸と組み合わせ、ω-3脂肪酸と共に硬化した治療薬は部分的に無効となることもあるが、治療薬の残存する部分は、本発明に従い、薬理活性を維持することができ、いくつかの場合には他のコーティング材料と共に送達された物質の等価の量よりも有効でありうる。
【0086】
加えて、いくつかの硬化法はω-3脂肪酸と組み合わせた治療薬に有害な影響を有し、これらを部分的または完全に無効にすることが示されている。したがって、油、より具体的にはω-3脂肪酸を含む油は治療薬の短期無制御放出のための送達物質として用いられてきたため、硬化はほとんど、またはまったく必要とされない。しかし、ω-3脂肪酸の治療上の利益を利用する制御放出適用において治療薬と組み合わせるための、ω-3脂肪酸を含む油の公知の使用はない。さらに、油を硬化するためにω-3脂肪酸を幾分加熱すると、ω-3脂肪酸の全体の治療的有効性を減じることがあるが、治療的有効性を無くすることはない。加熱法による特定の硬化後に残りうる一つの特徴は、硬化ω-3脂肪酸材料に曝露された場合の組織の非炎症反応である。したがって、ω-3脂肪酸を含む油は硬化のために加熱を行うことができ、なおω-3脂肪酸の治療的有効性の一部または大部分さえも維持している。加えて、ω-3脂肪酸と組み合わせ、ω-3脂肪酸と共に硬化した治療薬は部分的に無効となることもあるが、治療薬の残存する部分は、本発明に従い、薬理活性を維持することができ、いくつかの場合には他のバリヤーまたはコーティング材料と共に送達された物質の等価の量よりも有効でありうる。
【0087】
架橋ゲルの生体吸収性により、架橋ゲルは体組織の細胞によって経時的に完全に吸収されることをさらに強調すべきである。架橋ゲル中の物質、または架橋ゲルのインビボ変換による副生成物で、炎症反応を誘導するものはない。架橋ゲルは一般に、遊離脂肪酸およびビタミンE化合物(α-トコフェロール)の混合物も含む可能性がある、トリグリセリドに結合したω-3脂肪酸からなるか、またはそれらから誘導される。トリグリセリドはリパーゼ(酵素)によって分解され、細胞膜を通過して輸送されうる遊離脂肪酸となる。続いて、細胞による脂肪酸代謝が起こり、架橋ゲルから生じる任意の物質を代謝する。本発明の架橋ゲルの生体吸収性により、架橋ゲルは経時的に吸収され、生体適合性の基礎となる送達または他の医療装置構造だけを残すことになる。生体吸収性架橋ゲルに対して異物炎症反応はない。
【0088】
本発明は、架橋ゲルが体組織中または体組織を通過しての取り込みを経験する程度に生体吸収性であるが、天然油を用いて生成される本明細書に記載の特定の態様において、例示的油は脂質性の油でもある。油の脂質含有量は高度に生体吸収性の架橋ゲルを提供する。より具体的には、体組織の各細胞にはリン脂質層がある。魚油および等価の油は脂質も含む。脂質がそれを取り巻く水性環境を逃れようとして互いに引き寄せ合う場合に親油性作用が生じる。
【0089】
本明細書に記載の様々な態様に従い、本発明の薬物放出コーティングのコーティング成分は、脂肪酸化合物から誘導されうる非ポリマー性架橋ゲルで生成される。コーティングを生成するために用いられる油が魚油またはその類縁体もしくは誘導体である場合、脂肪酸にはω-3脂肪酸が含まれる。液体魚油を加熱すると、魚油中に酸素を吸収して自動酸化が起こり、魚油中の不飽和(C=C)部位の量に応じた量のヒドロペルオキシドを生じる。しかし、(C=C)結合は最初の反応では消費されない。ヒドロペルオキシドの生成と同時に、(C=C)二重結合の共役に加えて二重結合のシスからトランスへの異性化が起こる。ヒドロペルオキシドの生成は温度と共に増大することが明らかにされている。魚油を加熱することで、過酸化物(C-O-O-C)、エーテル(C-O-C)、および炭化水素(C-C)架橋の組み合わせを用いての魚油の不飽和鎖間の架橋が可能となる。架橋の生成はコーティングのゲル化を引き起こす。加熱はシス(C=C)結合のトランス配置への異性化も引き起こしうる。(C=C)結合はディールス-アルダー反応を用いてグリセリド炭化水素鎖におけるC-C架橋も形成しうる。架橋によるコーティングの固化に加えて、ヒドロペルオキシドおよび(C=C)結合の両方が二次反応を起こして、アルデヒド、ケトン、アルコール、脂肪酸、エステル、ラクトン、エーテル、および炭化水素を含む低分子量の二次酸化副生成物へと変換される。
【0090】
本発明に従ってのUV開始硬化(光酸素化)は、二重結合と、光および典型的にはクロロフィルまたはメチレンブルーなどの増感剤存在下で通常の三重項酸素から生じる一重項酸素との間の相互作用を含み、ヒドロペルオキシドを生成することになる。化学反応を以下の図に記載する。

【0091】
前述の反応はラジカル連鎖工程ではないため、誘導期間はなく、典型的には自動酸化を阻害するために一般に用いられる抗酸化剤による影響を受けない。しかし、この反応はカロテンなどの単一の酸素失活剤により阻害されうる。この反応はC=C炭素原子に限定され、硬化中のシスからトランスC=C異性体への変換を引き起こす(熱開始硬化で起こるのと同様)。しかし、UVを用いての光酸素化は熱硬化からの自動酸化に比べて比較的迅速な反応で、約1000〜1500倍速く起こる。特にEPAおよびDHAなどのメチレンをはさんだ多不飽和脂肪酸で反応は迅速に起こり、これらは本発明の魚油を用いる態様において見いだされる。
【0092】
熱硬化に比べた場合、UV硬化の重要な局面は、両方の硬化法で得られる副生成物は類似しているが、これらは必ずしも量または化学構造が同じではない。これについての一つの理由は、以下の図でリノレン酸について示すとおり、光酸素化はより多くのC=C部位でヒドロペルオキシドを生じる能力があるためである。

【0093】
UV硬化から生じるものなどの光酸素化は、内部ヒドロペルオキシドを生成する高い能力を有するがゆえに、比較的大量の環式副生成物を生成する能力もあり、これは魚油の炭化水素鎖間の過酸化物架橋にも関連する。例えば、リノレン酸の光酸素化では6つの異なる型のヒドロペルオキシドが生じるが、自動酸化では4つだけである。光酸素化を用いて生成される大量のヒドロペルオキシドは、熱硬化からの自動酸化に比べて、類似してはいるが、わずかに異なる構造および量の二次副生成物を生じる。具体的には、これらの副生成物はアルデヒド、ケトン、アルコール、脂肪酸、エステル、ラクトン、エーテル、および炭化水素である。
【0094】
様々な架橋メカニズムの概略図およびスキームを図1〜2に示す。
【0095】
したがって、様々な態様において、本発明の薬物放出コーティングは、魚油のものなどの脂肪酸化合物から誘導される非ポリマー性架橋ゲルを含み、これは遊離および結合グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリド、脂肪酸、無水物、ラクトン、脂肪族過酸化物、アルデヒド、およびケトン分子に加えて、トリグリセリドおよび脂肪酸分子の架橋構造を含む。ゲル中の大部分の架橋を形成している過酸化物結合に加えて、硬化後にかなりの量のエステル結合が残っていると考えられる。コーティングは分解(例えば、加水分解により)して脂肪酸、短鎖および長鎖アルコール、ならびにグリセリド分子を生じ、これらはすべて非炎症性で、同様に、例えば、平滑筋細胞などの細胞により消費されうる。したがって、コーティングは生体吸収性で、実質的に非炎症性化合物に分解する。架橋の量は硬化温度、硬化時間、抗酸化剤の量、UV照射への曝露または乾性油の有無を改変することにより調節しうる。
【0096】
コーティングの生体吸収
本発明の好ましい態様の薬物放出コーティングのコーティング成分が生体吸収性であることから、コーティングは体組織の細胞によって経時的に完全に吸収されることになる。様々な態様において、コーティング中の物質、またはコーティングのインビボ変換副生成物で炎症反応を誘導するものは実質的になく、例えば、コーティングはインビボで非炎症性成分に変換される。例えば、様々な態様において、本発明のコーティングは変換後に測定可能な量の乳酸およびグリコール酸分解生成物を生じない。好ましいコーティングは一般に、遊離脂肪酸およびビタミンE(α-トコフェロール)の混合物も含む可能性がある、トリグリセリドに結合したω-3脂肪酸からなるか、またはそれらから誘導される。トリグリセリドはリパーゼ(酵素)によって分解され、細胞膜を通過して輸送されうる遊離脂肪酸となる。例えば、図3は、トリグリセリドのエステル結合の塩基触媒性加水分解の概略図を示す。続いて、細胞による脂肪酸代謝が起こり、コーティングから生じる任意の物質を代謝する。本発明のコーティングの生体吸収性により、コーティングは経時的に吸収され、生体適合性の基礎となる送達または他の医療装置構造だけを残すことになる。本発明の好ましい態様において、生体吸収性コーティングまたはその分解生成物に対して異物炎症反応は実質的にない。
【0097】
薬物および送達特性の調整
様々な局面において、本発明は、コーティングからの治療薬の放出および送達特性を調整しうる、魚油コーティングを硬化して、一つまたは複数の治療薬を含む非ポリマー性架橋ゲルコーティングを提供する方法を提供する。放出特性は、例えば、コーティング組成、温度、および硬化時間を変えることによる油コーティング化学の変化を通じて調整することができる。コーティングされた装置上の薬物含有層の位置は、非ポリマー性架橋ゲルコーティングの放出特性を変えるための追加のメカニズムを提供する。これは、例えば、薬物を硬化した基礎コーティング層に負荷し、上塗り重層硬化コーティングを前に硬化した封入基礎層上にコーティングすることにより達成することができる。
【0098】
本発明の様々な態様における硬化魚油コーティングの利点は、用いる硬化条件(すなわち、硬化時間および温度)がコーティング架橋密度および副生成物生成の量に直接影響をおよぼしうることで、これは次いでコーティング生体吸収に影響する。したがって、用いる硬化条件を変えることにより、コーティングに含まれる対象の治療化合物の放出および送達速度も変えることができる。硬化条件の例には、約150〜200℃の温度および/または約254nmの波長の紫外線への材料の曝露が含まれる。
【0099】
様々な態様において、例えば、フリーラジカル捕捉剤などの物質を出発原料に加えて、生成する非ポリマー性架橋ゲルの薬物放出特性を調整することができる。様々な態様において、ビタミンEを出発原料に加えて、例えば、ヒドロペルオキシド生成を低減することにより魚油中の自動酸化を遅らせ、これは硬化魚油コーティング中で見られる架橋の量を減少させることになる。加えて、出発原料の油成分中の治療薬の溶解性を高める、薬物を硬化工程中の分解から保護する、または両方のために他の物質を用いることもできる。例えば、ビタミンEを用いて魚油出発原料中の特定の薬物の溶解性を高め、それにより最終硬化コーティングの薬物負荷調整を促進することもできる。したがって、コーティング中に存在するビタミンEの量を変えることは、本発明の非ポリマー性架橋ゲルの薬物放出および送達コーティングの架橋および化学組成を変えるための追加のメカニズムを提供する。
【0100】
様々な態様において、本発明は、コーティングの薬物放出特性が複数のコーティングの提供および治療薬の位置の選択により調整されるコーティングを提供する。薬物の位置は、例えば、医療装置の何もない部分を第一の出発材料でコーティングして、第一の硬化コーティングを作成し、次いで第一の硬化コーティングの少なくとも一部を薬物-油製剤でコーティングして第二の重層コーティングを作成することにより、変更することができる。第一の出発材料は一つまたは複数の治療薬を含むことができる。様々な態様において、第二の重層コーティングも硬化する。第一のコーティング、重層コーティング、または両方の薬物負荷、薬物放出特性および/または薬物送達は、本明細書に記載のとおり、異なる硬化条件の使用および/またはフリーラジカル捕捉剤(例えば、ビタミンE)の添加により調整することができる。二層を提供する工程を延長して、少なくとも一つの層が疎水性非ポリマー性架橋ゲルを含む3つ以上の層を提供することができる。加えて、一つまたは複数の層は薬物を放出および送達することができ、そのような層の薬物放出特性は本明細書に記載の方法を用いて調整することができる。
【0101】
様々な態様において、本発明は、全コーティングの薬物放出特性が異なる薬物放出特性を有する複数のコーティング領域の提供および治療薬の位置の選択により調整される放出および送達コーティングを提供する。様々な態様において、異なる薬物放出特性を有する異なるコーティング領域の形成は、位置特異的硬化条件、例えば、位置特異的UV照射により、および/またはコーティングされた装置上の出発原料の位置特異的沈着、例えば、インクジェット印刷法により得られる。
【0102】
一つの態様において、本発明は、少なくとも部分的には、医療装置用のコーティングの治療薬放出特性を調整する方法に関する。方法は、治療薬を油含有出発原料と混合して第二の材料を生成する段階と;該治療薬の有効量がインビボで適当な期間で放出および送達されるように、硬化条件を選択する段階と;治療薬放出および送達特性が調整されるように、該第二の材料を該硬化条件に従って硬化する段階とを含む。方法は、硬化前に第二の材料を医療装置に適用する段階をさらに含んでいてもよい。
【0103】
本発明は、治療薬を油含有出発原料と混合して第二の材料を生成する段階と;治療薬の有効量が適当な期間で放出されるように、ビタミンEの放出速度制御量を選択する段階と;第二の材料をビタミンEと混合して第三の材料を生成する段階と;治療薬放出および送達特性が調整されるように、第三の材料を少なくとも部分的に硬化する段階とによる、医療装置用のコーティングの治療薬放出特性を調整する方法にも少なくとも部分的に関する。方法は、硬化前に第三の材料を医療装置に適用する段階をさらに含んでいてもよい。
【0104】
「放出速度制御量」なる用語は、治療薬の放出を調節するのに十分なビタミンEの量を含む。さらなる態様において、治療薬を約1〜20%のビタミンEおよび99〜80%の天然油含有出発原料の混合物に加える。
【0105】
もう一つの態様において、本発明は医療装置用のコーティングの治療薬放出および送達特性を調整する方法も含む。方法は、第一の硬化条件を選択する段階と;油含有出発原料を第一の硬化条件に従って硬化し、第二の材料を生成する段階と;治療薬を油含有出発原料と混合して、第三の材料を生成する段階と;第三の材料を第二の材料と混合して、第四の材料を生成する段階と;第二の硬化条件を選択する段階と;治療薬放出および送達特性が調整されるように、第四の材料を第二の硬化条件に従って少なくとも部分的に硬化する段階とを含む。方法は、硬化前に第四の材料を医療装置に適用する段階をさらに含んでいてもよい。
【0106】
さらにもう一つの態様において、本発明は、少なくとも部分的には、医療装置用のコーティングの治療薬放出および送達特性を調整する方法にも関する。方法は、第一の硬化条件を選択する段階と;油含有出発原料を第一の硬化条件に従って硬化し、第二の材料を生成する段階と;治療薬を約1〜20%のビタミンEおよび80〜99%の油含有出発原料と混合して、第三の材料を生成する段階と;第三の材料を第二の材料と混合して、第四の材料を生成する段階と;第二の硬化条件を選択する段階と;第四の材料を第二の硬化条件に従って少なくとも部分的に硬化する段階とを含む。方法は、硬化前に第四の材料を医療装置に適用する段階をさらに含んでいてもよい。
【0107】
もう一つの態様において、本発明は医療装置用のコーティングの治療薬放出および送達特性を調整する方法に関する。方法は、油含有出発原料を硬化し、第二の材料を生成する段階と;該治療薬を油含有出発原料と混合して、第三の材料を生成する段階と;第三の材料を第二の材料と混合して、第四の材料を生成する段階と;治療薬の有効量が適当な期間で放出されるように、硬化条件を選択する段階と;第二の材料を硬化条件に従って硬化する段階とを含む。
【0108】
もう一つの態様において、本発明は、少なくとも部分的には、医療装置用のコーティングの治療薬放出および送達特性を調整する方法に関する。方法は、天然油含有出発原料を硬化し、第二の材料を生成する段階と;該治療薬を1〜20%のビタミンEおよび99〜80%の天然油含有出発原料と混合して、第三の材料を生成する段階と;第三の材料を第二の材料と混合して、第四の材料を生成する段階と;治療薬の有効量が適当な期間で放出および送達されるように、硬化条件を選択する段階と;第二の材料を硬化条件に従って硬化する段階とを含む。
【0109】
コーティングアプローチおよび医療装置のコーティング法
本発明は、少なくとも部分的には、医療装置のコーティング法にも関する。医療装置は治療薬を所望の速度で放出しうる。
【0110】
一つの態様において、本発明は、少なくとも部分的には、治療薬の所望の送達および放出速度を有する、医療装置用のコーティングを生成する方法に関する。方法は、治療薬を油含有出発原料と混合して、第二の材料を生成する段階と;所望の放出速度に基づき硬化条件を選択する段階と;所望の薬物送達および放出コーティングが生成されるように、第二の材料を選択した硬化条件に従って硬化する段階とを含む。
【0111】
もう一つの態様において、本発明は、少なくとも部分的には、医療装置用のコーティングを生成する方法に関する。方法は、治療薬を油含有出発原料と混合して、第二の材料を生成する段階と;所望の放出速度に基づきビタミンEの放出速度制御量を選択する段階と;第二の材料をビタミンEの放出速度制御量と混合して、第三の材料を生成する段階と;第三の材料を少なくとも部分的に硬化してコーティングを生成する段階とを含む。
【0112】
さらにもう一つの態様において、本発明は医療装置用のコーティングを生成する方法にも関する。方法は、第一の硬化条件を選択する段階と;油含有出発原料を第一の硬化条件に従って硬化し、第二の材料を生成する段階と;治療薬を油含有出発原料と混合して、第三の材料を生成する段階と;第三の材料を第二の材料と混合して、第四の材料を生成する段階と;第二の硬化条件を選択する段階と;第四の材料を第二の硬化条件に従って少なくとも部分的に硬化する段階とを含む。
【0113】
さらにもう一つの態様において、本発明は医療装置用のコーティングを生成するもう一つの方法にも関する。方法は、第一の硬化条件を選択する段階と;天然油含有出発原料を第一の硬化条件に従って硬化し、第二の材料を生成する段階と;治療薬を約1〜20%のビタミンEおよび約80〜99%の油含有出発原料と混合して、第三の材料を生成する段階と;第三の材料を第二の材料と混合して、第四の材料を生成する段階と;第二の硬化条件を選択する段階と;第四の材料を第二の硬化条件に従って少なくとも部分的に硬化する段階とを含む。
【0114】
もう一つの態様において、本発明は疎水性非ポリマー性架橋ゲルを生成する方法にも関する。方法は、治療薬を油含有出発原料と混合して、第二の材料を生成する段階と;第二の材料を少なくとも部分的に硬化する段階とを含む。
【0115】
本発明の装置のコーティング法を図にさらに例示する。例えば、図4は、例えば、本発明の一つの態様に従ってコーティングされたステントなどの、本発明の医療装置の一つの作成法を示している。方法はステントなどの医療装置を提供する段階(段階100)を含む。次いで、疎水性非ポリマー性架橋ゲルコーティングを生成するための、出発原料のコーティングを医療装置に適用する(段階102)。当業者であれば、コーティングをステントなどの医療装置に適用するこの基本的方法は、記載の方法の範囲内に入るいくつかの異なる変法を有しうることを理解すると思われる。医療装置上のコーティングを生成するためにコーティング物質を適用する段階は、いくつかの異なる適用法を含みうる。例えば、医療装置をコーティング物質の溶液中に浸漬することもできる。コーティング物質を装置上に噴霧することもできる。もう一つの適用法はコーティング物質の医療装置上への塗布である。当業者であれば、静電付着および他の適用法などの他の方法を用いてコーティング物質を医療装置上に適用しうることを理解すると思われる。いくつかの適用法はコーティング物質および/またはコーティングされる医療装置の構造に特有でありうる。したがって、本発明は本明細書に記載の出発原料適用の特定の態様に限定されることはないが、得られるコーティングに所望の特徴を維持させるためのいかなる注意も必要と考えて、医療装置の疎水性非ポリマー性架橋ゲルコーティングとなる出発原料の適用に一般にあてられることが意図される。
【0116】
図5は、図4の方法の一つの実行例を例示するフローチャートである。図5に示す段階に従い、生体吸収性担体成分(例えば、天然油)を治療薬成分と共に提供する(段階110)。生体吸収性担体成分の提供および治療薬成分の提供は個別または組み合わせで行うこともでき、いかなる順序または同時に行うこともできる。生体吸収性担体成分を治療薬成分と混合し(または逆も可)、疎水性非ポリマー性架橋ゲルコーティングとなる出発原料を生成する(段階112)。出発原料をステント10などの医療装置に適用し、コーティングを生成する(段階114)。次いで、コーティングを本明細書に記載の任意の硬化法により硬化し(段階116)、疎水性非ポリマー性架橋ゲルコーティングを生成する。
【0117】
次いで、コーティングされた医療装置をいくつかの異なる滅菌法を用いて滅菌する(段階118)。例えば、滅菌はエチレンオキシド、γ線照射、Eビーム、蒸気、ガスプラズマ、または気化過酸化水素を用いて実行することができる。当業者であれば、他の滅菌法も適用することができ、また本明細書に挙げたものはコーティングされたステントを、好ましくはコーティング20上に有害な影響をおよぼすことなく滅菌することになる、滅菌法の単なる例であることを理解すると思われる。
【0118】
油成分または油組成物を複数回加えて、コーティングの生成における複数の層を作成しうることに留意すべきである。例えば、厚いコーティングが望ましい場合、段階100、104、106、108、110、および/または112の後に、油成分または油組成物の追加の層を加えることができる。いつ油を硬化するか、およびいつ他の物質を油に加えるかに関しての異なる変法が、いくつかの異なる工程配列において可能である。したがって、本発明は例示した特定の配列に限定されることはない。それよりも、例示した基本的段階の異なる組み合わせが本発明によって予想される。
【0119】
図6A〜6Cは、本発明のコーティング10と組み合わせての、前述の医療装置のいくつかの他の型を例示している。図6Aは、コーティング10が結合または付着したグラフト50を示している。図6Bは、コーティング10が結合または付着したカテーテルバルーン52を示している。図6Cは、コーティング10が結合または付着したステント54を示している。具体的に例示または議論していない他のものに加えて、例示した医療装置はそれぞれ本明細書に記載の方法またはその変法を用いてコーティング10と組み合わせることができる。したがって、本発明は例示した態様例に限定されることはない。それよりも、例示した態様は本発明の単なる実行例である。
【0120】
本発明の様々な局面および態様を下記の実施例によってさらに説明する。実施例は例示のために提供するものであり、限定を意図するものではない。
【0121】
実施例
下記の実施例はすべて魚油出発原料を用いる。この出発原料は、ヨウ素価(鎖不飽和の量の尺度)が150よりも高い、様々な鎖長の飽和および不飽和脂肪酸、グリセリド、およびトリグリセリドの混合物を含んでいた。ヨウ素価が高いほど炭化水素鎖の不飽和度が高い。具体的には、魚油は少なくとも18%のすべてシス型の5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸(EPA)および12%のすべてシス型の4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸(DHA)脂肪酸を含んでいた。製造者の分析証明書(Pronova, EPAX 3000 TG)に記載されている、魚油のけん化後にGC/MS分析により検出された脂肪酸鎖の化学構造を図7に示す。分析証明書には、魚油が27.59%の飽和脂肪酸、23.30%の一不飽和脂肪酸、および45.05%の多不飽和脂肪酸を有し、そのうち40.63%は具体的にはω-3脂肪酸であることも示されていた。
【0122】
様々な実施例において、薬物放出コーティングおよび試験したコーティング医療装置は、特定の実施例において別に記載されているものを除き、一般には下記のとおりに調製した。コーティング医療装置は、Atrium ProliteまたはProlite Ultraのいずれかのポリプロピレンメッシュを液体魚油(EPAX 3000 TG)に用手浸漬および/またはローラー適用により封入して調製した。続いて試料をテフロンコーティングの金属パンに入れて硬化した。
【0123】
実施例1:コーティングの特徴づけ
実施例1において、コーティングされた医療装置を高気流オーブンで一連の時間および温度(標準条件は150oFで3日間および200oFで24時間であった)で硬化し、その後魚油を、触媒として熱を用いての脂質自動酸化メカニズムにより、ポリプロピレンメッシュを封入している架橋ゲルコーティングに変換した。
【0124】
FTIR、DSC、液体および固体状態C13 NMR、X線回折、GC/MS、およびLC/MS分析を、200oFで24時間硬化したEPAX 3000 TG魚油コーティングに対して行った。
【0125】
FTIR分析:
図8はFTIR分析であり、非硬化魚油(801)と最終硬化コーティングの比較を示している。FTIRは、コーティングがヒドロキシル(800)、メチレン(805)、メチル(805)、トランスC=C(810)、および無水物/脂肪族過酸化物/ラクトン結合(815および830)を含んでいたことを示している。無水物/ラクトン/脂肪族ジアシルペルオキシドのバンド吸収で見られるとおり架橋の存在が検出されたことに加えて、複雑なカルボニルのバンド形が得られ、エステル(820)、ケトン(825)、アルデヒド(825)、および脂肪酸(800)副生成物吸収を含むことが判明した。メチレンバンドの位置は、コーティング中に存在する炭化水素鎖は無秩序状態にあることを示しており、これは非結晶構造と一致する。さらに、魚油出発原料中のシスC=C結合(835)は硬化工程中にほぼ完全に消費されたことが観察された。硬化工程中に対応するトランスC=C結合(810)の増加が見られた。
【0126】
FTIRスペクトルを、コーティングの化学における変化をモニターするために、文献に記載の方法を用いて硬化工程中に動力学的にも取得した(例えば、Van de Voort, F.R.; Ismail, A.A.; Sedman, J.; and Emo, G. (1994) JAOCS, vol 70, no. 3, pgs 243-253参照、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)。図9Aは、200℃で硬化中のシスバンドの正規化ピーク高の低減ならびにトランスC=Cの正規化ピーク高および無水物/脂肪族過酸化物/ラクトンC=Oピーク高の増大を比較している。図9Cは、200℃での酸化副生成物(例えば、ケトン、脂肪酸および不飽和アルデヒド)の正規化ピーク高変化を比較している。最初は加熱中に、シスC=C結合(図9Aの◆)(3011cm-1)が硬化開始後11時間の間に単独および共役トランスC=C結合(図9Aの■)(979cm-1)に変換されたことが判明した。C=C二重結合のトランス配置への変換と同時に、無水物/脂肪族過酸化物/ラクトン結合の出現およびC-O-C/C-O-O-Cバンド(図9Aの▲)のほぼ最大のシフトが見られて、架橋結合の生成が示され、その後コーティングは粘稠ゲル状コーティングへと固化した。最初のゲル固化工程の後、コーティングの持続硬化により、無水物、ラクトン、脂肪族過酸化物、エーテル、および過酸化物架橋の持続生成に加えてトランスC=C結合の部分的消費が起こった。例えば、図1を参照されたい(図9Aおよび9Cのデータも参照)。短鎖長脂肪酸(▲)、不飽和アルデヒド(●)およびケトン(×)副生成物の生成もモニターし、図9Cに示している。硬化の最後に生成するコーティングは油トリグリセリド出発原料から多数のエステル結合を維持した柔軟なゲル状コーティングであった。
【0127】
150oFおよび200oFで硬化したコーティングの比較
150oFで3日間硬化した魚油と200oFで24時間硬化したもののFTIRスペクトルのさらなる比較を行った。比較は、150oFで3日間の硬化は200oFで24時間硬化した試料に比べて、無水物/脂肪族過酸化物/ラクトン架橋では36%の差、トランスC=C結合では25%の差、および脂肪酸/ケトン副生成物の生成量では10%の差を生じることを明らかにした。これらの結果は、200oFで硬化したコーティングは150oFで硬化したコーティングよりも多く架橋することを示していた。
【0128】
150oFと200oFで硬化したコーティング間の差を分析するために、さらなるFTIR試験を行った。125μLの量のOcean Nutrition魚油を1×1''ポリプロピレンメッシュに適用し、200oFで24時間または150oFで3日間硬化した。コーティング間の差をFTIRおよびけん化速度を用いて評価した。これらの異なる硬化メッシュコーティングのFTIRスペクトルを図10A〜10Cに示している。図10Aに示すポリプロピレンメッシュ上で硬化した150oF(1005)および200oF(1010)コーティングの全FTIRスペクトルの全般的調査から、二つのコーティング間には有意差はほとんどないと思われる。しかし、図10Bに示すとおり3600〜2700cm-1に拡大すると、OHバンド(1015)にわずかな差があることがわかり、これはおそらく150oFで硬化したコーティング(1005)では、200oFで硬化したコーティング(1010)に比べて多量のグリセリドおよび脂肪アルコールが生成したことによる。加えて、図10Cに示すとおり、カルボニルバンドの調査は、150oFで硬化したコーティング(1005)に比べて、200oFで硬化した試料(1010)について約1775cm-1の吸収における約13%の増大を示し、これは脂肪族過酸化物、ラクトン、および無水物架橋の組み合わせ(1020)の生成に割り付けられる。FTIR分析に基づき、150oFおよび200oFで硬化したコーティングは、副生成物生成および架橋におけるわずかな差を除き、一般に類似である。
【0129】
DSC:
150oFで3日間または200oFで24時間のいずれかで硬化した魚油コーティングの可溶性および不溶性成分を分離するために、抽出をTHF中37℃で3時間行い、続いてフード内で溶媒を蒸発させ、ベルジャー減圧下で最終乾燥した。重量測定から、150oFで3日間硬化したコーティングのこの抽出により、62:38の比の可溶性および不溶性材料が得られることが判明した。重量測定から、200oFで24時間硬化したコーティングのこの抽出により、50:50の比の不溶性および可溶性材料が得られることが判明した。150oFで3日間硬化したコーティングの不溶性材料のDSC分析により、不溶性材料は73%硬化したことが示された。硬化コーティングの可溶性材料のDSC特性を比較分析して、200oFで硬化したコーティングは150oFで硬化したコーティングよりも鎖長が短い酸化副生成物を有していたことが示されている。
【0130】
200oFで24時間硬化したコーティングから抽出した可溶性材料のDSC特性を図11Aに示している。DSC特性は、可溶性材料が分子量および化学構造が異なる多形結晶材料であることを示している。図11Bは200oFで24時間硬化したコーティングから得た不溶性材料のDSC特性であり、不溶性成分は無定形材料であり、不溶性成分の見かけの硬化%は約92%であることを示している。
【0131】
X線回折:
X線回折結果は決定的でなく、この技術は結晶化合物にのみ感受性であるため、無秩序な無定形材料の存在が示唆される。結果はFTIRおよびDSC分析結果と一致している。
【0132】
C13 NMR分析:
NMRは登録商標C-QURコーティングのC=C結合、メチル、メチレン、およびC-O結合の存在を確認し、これは出発原料に似ていたが、C=C領域の吸収は少なかった。
【0133】
GC/MSおよびLC/MS:
GC/MSおよびLC/MS分析の準備において、コーティングを約65℃のTHFに溶解し、ろ過して可溶性成分を不溶性成分から除いた。この方法を用いて、コーティングの68%はTHFに不溶であることが判明し、架橋脂肪酸およびグリセリド魚油架橋ゲルコーティングからなることが示唆された。コーティングの残りの32%の可溶性部分は質量3000未満の低分子量化合物からなっていた。コーティングの可溶性部分は、可溶性分画の大部分をなす脂肪酸およびグリセリドと、少量のケトンおよびアルデヒドを含むことが判明した。コーティングの可溶性分画で検出された成分の分子構造の概要を図12に示している。硬化魚油コーティングの可溶性成分に含まれる任意のアルコール副生成物は、これらの分析法を用いて検出されないことに留意すべきである。
【0134】
加水分解試験
実験は、本実施例の硬化コーティングは主にエステル結合と、それよりも少ない量の無水物、ラクトン、および脂肪族過酸化物結合を含み、これらはインビボで加水分解を受けて経時的により小さい成分に変わることになることを示している。以下の所見は、図3に示すとおり、加水分解メカニズムを用いての硬化コーティングの変換を裏付けている。これらの実験は、硬化コーティングの変換を評価するために、以下のとおりに行った。
【0135】
けん化反応を、トリグリセリドエステルを低分子量の脂肪酸およびアルコール(すなわち、グリセロール)に容易に変換することが公知の、0.1M NaOH(pH>11)中で行った。NaOH溶液中に加え、30分以内に完全に溶解した後、硬化魚油コーティングは加水分解メカニズムにより分解したことが確認され、裸のポリプロピレンメッシュが残った。
【0136】
150oFおよび200oFで硬化したコーティングの分解挙動における差を評価するために、硬化魚油封入メッシュ試料を37℃および55℃の両方で0.1M NaCl溶液を含む0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.4)に加えた。200oFで硬化したコーティングは55℃では18日間で溶解したが、37℃では溶解するのに12週間かかった。150oFで硬化したコーティングは55℃で18〜21日間で溶解した。
【0137】
150oFおよび200oFで硬化したコーティングの変換挙動における差をさらに評価するために、1×1''コーティングを20mlの0.1M NaOH(pH>11)を含む20mlガラスシンチレーションバイアルに入れた。コーティングが加水分解され、溶液中に溶解する時間は、150oFで硬化したコーティングでは約14分、200oFで硬化したコーティングでは19分と判明し、これは200oFで硬化したコーティングは基本条件下ではより多く架橋し、したがってけん化に長い時間がかかるというFTIRスペクトルデータと一致している。
【0138】
緩衝溶液中で変換された硬化コーティングから取得したFTIRスペクトルは、脂肪酸、脂肪酸塩、およびアルコールの生成に一致していた。第16日の加水分解材料から取得した代表的スペクトルを図13に示している。このスペクトルは、図8のスペクトルと比べた場合、OH(水およびアルコール)バンド(1305)、CH2バンド(脂肪酸およびアルコール、1310)、エステルC=Oバンド(1320)および脂肪酸C=O-Oバンド(1325)において有意な差を示している。
【0139】
37℃および55℃の0.1M塩化ナトリウムを含む0.1Mリン酸緩衝液中の変換した材料(緩衝液20ml中1×1'')の組成を調べるためにいくつかの試験を行った。これらの試験の結果は下記のとおりであった。
【0140】
HPLCグリセリド試験
試料を5倍濃縮した後でも、試料中にジ-またはトリグリセリドピークは検出されなかった。しかし、遊離脂肪酸の存在によるピークが割り付けられ、通常よりも大きい溶媒前のピークは長鎖アルコール/グリセロールの存在によると考えられた。結果は37℃および55℃のいずれの緩衝液中で分解した試料でも類似であった。
【0141】
GC脂肪酸特性
GCにより十分に検出するために、この試験用の試料も濃縮しなければならなかった。検出された脂肪酸はC14、C16、C16-1、C18、およびC18-1であった。55℃で分解したコーティングは37℃で分解したコーティングよりも多量の脂肪酸が検出されたが、比率はほぼ同じであった。
【0142】
HPLC分子量試験
十分な検出のために、この試験用の試料も5倍濃縮しなければならなかった。55℃で分解した試料で検出された重量(正規化ピーク面積%)は、THFに可溶の試料の90%の分画は約1000以下の分子量を有することを示していた。同様に37℃で分解した試料でも、重量および正規化ピーク面積は、THFに可溶の試料の90%の分画は約1000以下の分子量を有することを示していた。1000のピークはトリグリセリドに似た構造によると考えられ(グリセリドスクリーン上で見いだすには明らかに希薄すぎるが)、500未満の成分は脂肪酸または他の低分子量副生成物によると思われる。
【0143】
HPLCグリセロール試験
脂肪酸およびアルコールに起因するいくつかのピークが観察された。モデルとなる硬化魚油フィルムは、コーティングはpHおよび温度が高いほど膨潤することを示し、これはコーティングがより速く分解することになる。
【0144】
実施例1のまとめ
実験、分析データ、および文献調査から得られた情報に基づき、硬化魚油コーティングの理論構造が、図14に概略を示すとおりに導出された。特定の理論に縛られることなく、非硬化コーティング(1305)の組成は飽和および多飽和(すなわち、シス)脂肪酸トリグリセリドの混合物であると考えられる。部分硬化コーティング(1410)は短鎖副生成物(すなわち、脂肪酸、ケトン、アルデヒド)、多不飽和度の低い脂肪酸(主としてトランスC=C結合)、および脂肪酸鎖の架橋(主として過酸化物、エーテルおよびC-C)を含む柔軟なゲルからなると考えられる。硬化コーティング(1420)は短鎖副生成物(すなわち、脂肪酸、ケトン、アルデヒド、および部分的に反応した魚油、1430)、主として飽和脂肪酸と、いくつかの一不飽和脂肪酸(すべてトランスC=C)、ならびに主としてエステル結合と、少量の過酸化物、エーテルおよびC-C結合を含む架橋脂肪酸とグリセリドとのネットワーク(1425)を含むと考えられる。次いで、硬化コーティングは、トリグリセリドおよび脂肪酸分子の架橋構造と、遊離および結合グリセロール、モノ-、ジ-、およびトリグリセリド、脂肪酸、無水物、ラクトン、脂肪族過酸化物、アルデヒド、およびケトン分子を含む。硬化後にトリグリセリド油頭部から多量のエステルと、過酸化物、エーテルおよび炭素-炭素結合の混合物からなる架橋バンドが残存しているが、実施例1の現行の条件下では、硬化コーティングの加水分解可能な性質により過酸化物結合が主であると思われる。ベンチ試験に基づき、硬化コーティングは脂肪酸、短鎖および長鎖アルコール、ならびにグリセリド分子に分解し、これはトリグリセリドの加水分解に一致する(例えば、図3参照)。
【0145】
実施例2:コーティングの薬物放出特性の調整:硬化条件
本発明の様々な態様における硬化魚油コーティングの利点は、用いる硬化条件(すなわち、硬化時間および温度)がコーティング架橋密度および副生成物生成の量に直接影響をおよぼしうることで、これは次いでコーティングの遊離脂肪酸、脂肪アルコール、およびグリセロールへの変換速度に影響する。様々な硬化条件の魚油硬化化学および薬物放出特性への影響を本実施例において示す。
【0146】
治療薬の放出に対する時間および温度の影響
薬物送達実験を、200oFで24時間または150oFで3日間硬化したコーティングを用いて実施した。試料はすべて1×1''で、溶解は0.01M PBS溶液中で行った。薬物試料はすべて、液体魚油および薬物を溶媒と共に、または溶媒なしで混合した後、裸のメッシュ片をコーティングし、150oFまたは200oFのいずれかの硬化条件を用いて硬化することにより作成した硬化メッシュコーティングとして負荷した。
【0147】
抗炎症薬送達
図15は、抗炎症薬について測定した薬物放出特性を示している。図は200oFで24時間(◆)または150oFで3日間(▲)加熱の二つの硬化条件を比較している。出発原料は魚油(EPAX 3000 TG)中に2.4%のモデル抗炎症薬(nMP溶媒除去後)を含んでいた。HPLC測定による硬化後の初期薬物負荷は、200oFの条件では約442μg(14.84%回収)、150oFの条件では約238μg(10.97%回収)であった。回収量のパーセンテージはコーティング重量および硬化魚油コーティングから薬物抽出した後にHPLC法を用いて検出した薬物量に依存することに留意すべきである。
【0148】
これらの結果は、150oFで硬化したコーティングでは架橋が少なく、かつ可溶性成分の量が多く、200oFで硬化した、架橋が多く、かつ可溶性成分が少ないコーティングに比べて薬物放出が速いことを示している。この実施例は、抗炎症薬を硬化魚油コーティングに負荷する能力を示し、温度を用いてそのコーティングの架橋特性を制御することにより、薬物放出および送達特性は有意に変化する。
【0149】
抗増殖薬送達
図16は、抗増殖薬について測定した薬物放出特性を示している。図は200oFで24時間加熱(◆)または150oFで3日間加熱(▲)の二つの硬化条件を比較している。出発原料は魚油(EPAX 3000 TG)中に2.84%のシクロスポリンA(CalBiochem)を含んでいた。シクロスポリンAは魚油中、37℃でわずかに加温することにより可溶であったため、溶媒は用いなかった。HPLC測定による硬化後の初期薬物負荷は、200oFの条件では約478μg(14.22%回収)、150oFの条件では約1158μg(26.00%回収)であった。回収量のパーセンテージはコーティング重量および硬化魚油コーティングから薬物抽出した後にHPLC法を用いて検出した薬物量に依存することに留意すべきである。
【0150】
これらの結果は、150oFで硬化したコーティングでは架橋が少なく、かつ可溶性成分の量が多く、200oFで硬化した、架橋が多く、かつ可溶性成分が少ないコーティングに比べて薬物放出が速いことを示している。この実施例は、抗増殖薬のシクロスポリンAを硬化魚油コーティングに負荷する能力を示し、温度を用いてコーティングの架橋特性を制御することにより、薬物放出および送達特性は有意に変化する。
【0151】
実施例3:コーティングの薬物放出特性の調整:他の物質
様々な態様において、出発原料中にビタミンEを含むことにより、本発明の非ポリマー性架橋ゲルコーティングの薬物放出および送達特性を調整することができる。ビタミンEは、ヒドロペルオキシド生成を低減することにより魚油中の自動酸化を減速させることが知られている抗酸化剤で、これは硬化魚油コーティング中で観察される架橋の量の減少を引き起こす。加えて、興味対象の治療化合物がすべて100%魚油中で十分な溶解性を示すわけではなく、ビタミンEは魚油中の特定の薬物の溶解性を高めるために用いることができる。加えて、コーティング中に負荷する薬物の化学構造および特性に応じて、ビタミンEは硬化工程中に薬物を保護するはたらきをすることもある。これらの記載は以下の実施例において裏付けられる。
【0152】
硬化魚油コーティング化学に対するビタミンE組成の影響
この一連の実験において、硬化条件は150oFで3日間の一定に保ったが、ビタミンE組成の量を0〜5%まで変動させた。FTIRの結果は、無水物/脂肪族過酸化物/ラクトン架橋の量はビタミンE組成が増えるにつれて減少することを示した。加えて、トランスC=C結合はビタミンEの量が増えると共に増加した。FTIR結果の比較を図17に示している。FTIRの結果は、コーティング中のビタミンEの量を増やすことにより、その対応する100%魚油に比べて、コーティングの魚油成分の架橋および硬化が少なくなることを示している。
【0153】
硬化中の治療薬を保護するビタミンE組成の能力
ラパマイシンを負荷した薬物放出メッシュコーティング(1×1'')を、150oFで3日間の硬化を用い、硬化魚油コーティング中に様々な量のビタミンEを加えて作成した。硬化前のすべてのコーティング製剤中に負荷するラパマイシンの量は4.88%で一定に保った。表2に示す、様々な量のビタミンEと共に硬化した後のHPLC分析を用いた抽出ラパマイシン(Rap)薬物回収量で示すとおり、ビタミンEの存在はラパマイシンを保護するはたらきをした。
【0154】
【表2】

【0155】
これらの結果は、ビタミンEの量を増やすと、硬化魚油コーティングから検出されるラパマイシンの量が増え、ビタミンEは硬化中の酸化から薬物を保護するのに役立つことを示している。これは、ラパマイシン(3つの共役トランスC=Cバンドを有する)が魚油中の多不飽和脂肪酸鎖と反応し、おそらくは硬化中にそれらと架橋することも示唆している。フリーラジカル捕捉剤であり、魚油の架橋/酸化を阻害しうるビタミンEは、硬化反応の動力学を減速させ、硬化工程中にラパマイシンを保護すると考えられる。ラパマイシンのHPLC検出は、硬化中の薬物におけるC=C結合の保存に直接依存し、したがって、ビタミンEの量の増加に伴って観察されるラパマイシン検出の増加は、ビタミンEが薬物C=C結合の酸化を防止することにより薬物を保護するとの理論を裏付けるものである。
【0156】
放出特性を変えるビタミンEの能力
コーティングされたメッシュ試料はすべて1×1''で、溶解は0.01M PBS溶液中で行った。薬物試料はすべて、液体魚油および薬物を溶媒と共に、または溶媒なしで混合した後、裸のメッシュ片をコーティングし、150oFで3日間硬化することにより作成した硬化メッシュコーティングとして負荷した。
【0157】
図18は、ラパマイシンについて測定した薬物放出特性を示している。図は150oFで3日間硬化する前に、出発原料に加えた様々な量のビタミンEを比較している。出発原料は様々な量のビタミンEを含む魚油コーティング中に4.88%のラパマイシン(溶媒除去後)を含んでおり、100%魚油ではラパマイシン負荷378μg(◆)、魚油中1%ビタミンEではラパマイシン負荷2126μg(■)、魚油中2.5%ビタミンEではラパマイシン負荷2649μg(×)であった。初期薬物負荷を表2に示している。表2に示す回収量のパーセンテージはコーティング重量および硬化魚油コーティングから薬物抽出した後にHPLC法を用いて検出した薬物量に依存することに留意すべきである。
【0158】
これらの結果は、ビタミンE組成を変えることで、硬化魚油コーティングからの治療薬の放出特性が改変されることを示している。ビタミンEの量を増やすと、ラパマイシンの溶解緩衝液中への放出が延長および減速することになる。初期コーティング製剤中に負荷したラパマイシンの量は一定のままであったが、コーティング中のビタミンEの量を増やすことで、薬物が保護され、コーティングから抽出される遊離ラパマイシンの量が増大すると考えられる。したがって、FTIRの結果により示されたとおり、ビタミンE含有量の増加に伴ってコーティング架橋が減少し、可溶性成分の濃度が相対的に高くなるにもかかわらず、ラパマイシンは水性放出媒質に比べてビタミンEに対する溶解性および親和性が高いために、薬物放出および送達は遅くなる。いかなる特定の理論にも縛られることなく、ラパマイシン(3つの共役トランスC=Cバンドを有する)は魚油中の多不飽和脂肪酸鎖と反応し、おそらくは硬化中にそれらと架橋すると考えられる。硬化工程中にC=C結合が消費されることにより、HPLCを用いてのラパマイシンのUV検出に必要とされるC=Cバンド強度の消失をまねくと思われる。フリーラジカル捕捉剤であり、魚油の架橋を阻害しうるビタミンEは、硬化反応の動力学を減速させ、その結果、硬化工程中にラパマイシンを保護すると考えられる。
【0159】
実施例4:コーティングの薬物放出特性の調整:多重コーティングおよび薬物の位置
様々な態様において、本発明は、コーティングの薬物放出特性が複数のコーティングの提供および治療薬の位置の選択により調整される薬物放出および送達コーティングを提供する。様々なコーティング層の化学は異なる硬化条件および/またはビタミンE組成を用いることによって調節することができる。以下の実施例は硬化魚油メッシュコーティングにおける薬物含有層の化学および位置を変更する能力を示す。
【0160】
時間、温度、および位置の影響
コーティングされたメッシュ試料はすべて1×1''で、溶解は0.01M PBS溶液中で行った。薬物放出コーティングされたメッシュ試料を、魚油および薬物を混合した後、裸のメッシュ片をコーティングし、150oFまたは200oFいずれかの硬化条件を用いて硬化することにより作成した。重層メッシュコーティングは、前に200oFの硬化条件を用いてコーティングおよび硬化した100%魚油コーティングメッシュ上に薬物-魚油コーティングを適用した後、二つのコーティングを一緒に150oFで3日間または200oFで24時間のいずれかで硬化することにより作成した。
【0161】
図19は、抗炎症薬について測定した薬物放出特性を示している。図は200oFで24時間加熱または150oFで3日間加熱の二つの硬化条件および薬物の異なる位置(第一層中と重層中)について比較している。出発原料は魚油(EPAX 3000 TG)中に3.29%のモデル抗炎症薬(nMP溶媒除去後)を含んでいた。
【0162】
これらの結果は、硬化温度および薬物層コーティング位置を調節することで、抗炎症薬の放出を変えうることを示している。150oFで硬化した第一のコーティング層(▲)および重層(×)試料はいずれも、架橋の量が少ないため、架橋度の高い200oF試料よりも速やかに放出する。150oFで硬化したコーティングでは、薬物の位置が封入コーティングにある方が、重層コーティングの場合よりも速く放出する。しかし、200oFでの第一コーティング層(◆)および重層コーティング(■)試料では、反対となる。これは、治療薬の重層からの放出速度およびコーティングの化学を硬化時間、硬化法、コーティングの厚さ、および/または用いた温度条件に基づいて調整することができる、コーティングシステムの柔軟性を例示している。
【0163】
図20は、抗炎症薬について測定したさらなる薬物放出特性を示している。図は200oFで24時間加熱または150oFで3日間加熱の二つの硬化条件および薬物の異なる位置(第一層中と重層中)について比較している。出発原料は魚油(EPAX 3000 TG)中に2.4%のモデル抗炎症薬(nMP溶媒除去後)を含んでいた。200oFの条件について、HPLC測定による硬化後の初期薬物負荷は、重層では約793μg(28.7%回収、■)、および第一コーティング(下層)では約442μg(14.84%回収、◆)であった。150oFの条件について、HPLC測定による硬化後の初期薬物負荷は、重層では約477μg(42.16%回収、×)、および第一コーティング(下層)では約238μg(10.97%回収、▲)であった。回収量のパーセンテージはコーティング重量および硬化魚油コーティングから薬物抽出した後にHPLC法を用いて検出した薬物量に依存することに留意すべきである。
【0164】
これらの結果は、硬化温度および薬物層コーティング位置を調節することで、初期薬物負荷が低い場合でも、抗炎症薬の放出を変えうることを示している。150oFで硬化した第一層および重層試料はいずれも、架橋の量が少ないため、架橋度の高い2050oF試料よりも速やかに放出する。150oFで硬化したコーティングでは、薬物の位置が第一層コーティングにある方が、重層コーティングの場合よりも速く溶解する。
【0165】
図21は、抗炎症薬について測定したさらなる薬物放出特性を示している。図は200oFで24時間の加熱により硬化した場合のデータおよび薬物の異なる位置(第一層中と重層中)のデータを示している。出発原料は魚油(EPAX 3000 TG)中に3.2%のモデル抗炎症薬(nMP溶媒は用いず、抗炎症薬を魚油中にボルテックスにかけて懸濁した)を含んでいた。初期薬物-油分散液は濁って見え、金属秤量皿で試料をコーティングする前にボルテックスにかけ、さもないと薬物は沈降することになった。HPLC測定による硬化後の初期薬物負荷は、重層では約1348μg(35.86%回収、■)、および第一コーティング(下層)では約348μg(9.19%回収、◆)であった。コーティングは第27日までに溶解していた。回収量のパーセンテージはコーティング重量および硬化魚油コーティングから薬物抽出した後にHPLC法を用いて検出した薬物量に依存することに留意すべきである。
【0166】
これらの結果は、薬物層コーティング位置を調節することで、薬物をコーティング中で可溶化するための溶媒を用いない場合でも、抗炎症薬の放出を変えうることを示している。
【0167】
図22は、抗増殖薬について測定したさらなる薬物放出特性を示している。図は200oFで24時間加熱または150oFで3日間加熱の二つの硬化条件および薬物の異なる位置(第一層中と重層中)について比較している。出発原料は魚油(EPAX 3000 TG)中に2.84%のシクロスポリンA(CalBiochem)を含んでいた。シクロスポリンAは魚油中、37℃でわずかに加温することにより可溶であったため、溶媒は用いなかった。200oFの条件について、HPLC測定による硬化後の初期薬物負荷は、重層では約400μg(12.9%回収、■)、および第一コーティング(下層)では約478μg(14.22%回収、◆)であった。150oFの条件について、HPLC測定による硬化後の初期薬物負荷は、重層では約1536μg(48.14%回収、×)、および第一コーティング(下層)では約1158μg(26.00%回収、▲)であった。回収量のパーセンテージはコーティング重量および硬化魚油コーティングから薬物抽出した後にHPLC法を用いて検出した薬物量に依存することに留意すべきである。
【0168】
これらの結果は、硬化温度および薬物層コーティング位置を調節することで、抗増殖薬であるシクロスポリンAの放出を変えうることを示している。150oFで硬化した第一層(封入)および重層試料はいずれも、架橋の量が少ないため、200oFで硬化した架橋度の高い試料よりも速やかに放出する。150oFまたは200oFで硬化したコーティングの両方で、薬物の位置が第一コーティングにある方が、重層コーティングの場合よりも速く溶解する。最後に、薬物抽出結果は、ペプチドであるシクロスポリンAは150oFの硬化条件を用いる方がより安定であることを示している。
【0169】
ビタミンEとの組み合わせ
コーティングされたメッシュ試料はすべて1×1''で、溶解は0.01M PBS溶液中で行った。薬物試料はすべて、メッシュ上の硬化第一層として負荷し、液体魚油および薬物を溶媒と共に、または溶媒なしで混合した後、裸のメッシュ片をコーティングし、150oFで3日間硬化することにより作成した。
【0170】
図23は、ラパマイシンについて測定した薬物放出特性を示している。図は150oFで3日間硬化する前に、出発原料に加えた様々な量のビタミンEを比較している。出発原料は様々な量のビタミンE(0〜5%)を含む魚油コーティング中に4.88%のラパマイシン(溶媒除去後)を含んでいた。100%魚油試料(ビタミンEなし)では、HPLC測定による硬化後の初期薬物負荷は、重層では約270μg(5.5%回収、●)、第一コーティング(下層)では約378μg(16.5%回収、◆)であった。魚油中5%ビタミンEの試料では、HPLC測定による硬化後の初期薬物負荷は、重層では約3584μg(66.7%回収、+)、第一コーティング(下層)では約3013μg(52.2%回収、■)であった。表2に示す回収量のパーセンテージはコーティング重量および硬化魚油コーティングから薬物抽出した後にHPLC法を用いて検出した薬物量に依存することに留意すべきである。
【0171】
これらの結果は、ビタミンE組成を変えることで、硬化魚油コーティングからの治療薬の放出を変えうることを示している。ビタミンEの量を増やすと、硬化魚油コーティング中のビタミンE成分へのラパマイシンの溶解性および親和性が高まるため、ラパマイシンの溶解緩衝液中への放出が延長および減速することになる。加えて、硬化された5%ビタミンE/魚油重層コーティングは、封入メッシュに比べて、放出される薬物量が増大することになる。
【0172】
実施例5:熱硬化封入メッシュコーティングとUVおよび熱硬化フィルムコーティングとの比較
図24AおよびBにおける熱硬化封入メッシュコーティングとUVおよび熱硬化フィルムコーティングとのFTIRスペクトルの比較。単に200oFで24時間硬化した封入メッシュコーティング(2410)を、まず254nmで15分間UV硬化し、続いて200oFで24時間熱硬化したフィルム(2405)と比較した。図24Aは3600〜2700cm-1のFTIRスペクトルバンド領域の図であり、追加のUV硬化段階を用いるフィルムでは多量のグリセリド、脂肪アルコールおよび脂肪酸副生成物が生じるため、OHバンド(2415)は封入メッシュよりも硬化フィルムで大きいことを示している。カルボニルバンドを調べると(図24B)、封入メッシュコーティングに比べて硬化フィルムコーティングでは1775cm-1の架橋吸収で約24%の増大が見られる。加えて、硬化フィルムコーティングで脂肪酸吸収(2425)の増加も観察される。したがって、FTIR分析により、記載の処理条件を用いて、硬化フィルムコーティングは封入メッシュコーティングよりも酸化および架橋の度合いが高い。
【0173】
フィルムおよび封入メッシュコーティングが加水分解される能力に対する架橋の量の影響を、けん化(すなわち、コーティングの加水分解)試験を用いて試験した。試験は、所定の量のコーティングを、20mlの0.1M NaOHを含む20mlガラスシンチレーションバイアルに入れて行った。コーティングが加水分解され、溶液中に溶解する時間を測定したところ、封入メッシュコーティングでは約18分間、フィルムでは45分間で、これはフィルムの架橋度がより高く、したがって塩基性条件下でけん化するのに長時間かかったというFTIRスペクトルのデータと一致する。
【0174】
FTIR分析(図25AおよびB)を、HATRを用いてpH中和した後の溶液中のけん化コーティングについても実施した。けん化溶液は高いpH(11)条件では澄明であるが、pHが7に近づくと、脂肪酸塩がプロトン化脂肪酸に一部変換されるため、混濁する。溶液を遠心分離し、FTIR分析用に各試料の上清を取り出した。分析前に、ペレットを洗浄して水に再度懸濁する走査を二回行った。図25Aから明らかであるとおり、フィルム(2505)および封入メッシュコーティング(2510)でペレットのFTIRはほぼ同じである。図25Bは、フィルム(2515)と封入メッシュ(2520)との上清試料のピーク強度にわずかな差しかないことを示しており、これはpH調節のわずかな差によると考えられる。したがって、FTIRデータは、初期の副生成物生成および架橋に差が見られたが、最終の化学はほぼ同じで、コーティングの加水分解の動力学だけが影響することを示している。
【0175】
実施例6:硬化魚油ゲルのHPLC溶解
HPLC法を用いてインビトロでの薬物溶解を定量した。本試験では対称C8(5μm 4.6×250mm)カラム、50%アセトニトリル/50%(0.2%酢酸)の移動相、および278nmのUV検出器を用いた。HPLC試料をアセトニトリル希釈剤で溶解用に調製した。
【0176】
硬化魚油コーティングされたステントの薬物放出特性をHPLCで前述の溶解法により定量した。HPLC結果を図26A〜Cに示している。全体に、これらの実験は放出薬物特性は添加物(例えば、TPGS)の添加、コーティング工程、ならびにコーティング構造により制御しうることを示していた。
【0177】
添加物
添加物であるα-トコフェロールポリエチレングリコール-1000スクシネート(TPGS)をラパマイシン化合物の急速放出のための適用について評価した(図26A)。コーティング製剤を11.8%TPGSおよび41.2%ラパマイシン化合物ならびに魚油コーティングで調製した。製剤をステントに適用し、非硬化(◆)、93℃で24時間硬化(■)または93℃で72時間硬化(▲)した。次いで、コーティングされたステントを溶解条件に曝露し、得られた上清をHPLCで分析した。図26Aに示すデータは、非硬化コーティングは硬化コーティングよりもラパマイシン化合物を速やかに放出し、72時間硬化したコーティングは24時間硬化したコーティングよりもラパマイシン化合物の放出が遅かったため、薬物放出において硬化時間の長さが重要な因子であったことを示している。加えて、このアッセイは、TPGSは主要な抗酸化剤ではないが、良好な界面活性剤であることを示していた。
【0178】
硬化時間
図26Bは、コーティングの硬化時間がラパマイシン化合物の薬物放出特性において重要な因子であることを示している。一連のステントを、コーティング中に11.8%ビタミンEおよび41.2%ラパマイシン化合物を含むコーティング製剤でコーティングした。次いで、ステントを93℃で0時間(◆)、24時間(▲)、48時間(×)または72時間(■)硬化した。次いで、ステントを溶解条件に曝露し、上清をHPLCで分析した。結果は、薬物放出の速度と硬化の時間の長さすなわち硬化時間との間に逆相関があることを示している。
【0179】
コーティングの厚さ
図26Cは、コーティングの厚さおよび量がラパマイシン化合物の薬物放出特性において重要な因子であることを示している。一連のステントを、106.1μg(▲)、221.1μg(◆)、376.2μg(■)または519.6μg(×)の量のラパマイシン化合物を含む魚油製剤でコーティングした。次いで、ステントを溶解条件に曝露し、上清をHPLCで分析した。結果は、医療装置に適用したコーティングの量と放出される薬物の量との間に直接相関があることを示している。
【0180】
実施例7:硬化魚ゲルの滅菌
MTT細胞増殖アッセイを、硬化前および硬化後魚油コーティングで実施した。MTT試験はインビトロで生存ラット平滑筋細胞を測定し、結果は生存可能な培養細胞株の数に直接関係していた。この細胞アッセイにおいて、代謝的に活性な細胞中で黄色テトラゾリウム塩(MTT)が還元されて不溶性の紫色ホルマザン結晶を生成し、これは界面活性剤の添加により可溶化された。このアッセイを用いて様々なコーティング製剤中で硬化したラパマイシン化合物の平滑筋に対する活性を、蛍光プレートリーダーを用いて定量した。細胞数と吸光度との間の直線関係が確立され、これにより増殖における変化の定量が可能となった。
【0181】
MTT細胞アッセイの結果を図27に示しているが、このアッセイを用いて硬化魚油コーティングが滅菌条件に対して安定かどうかを調べた。一連のステントをラパマイシン化合物を含む魚油製剤でコーティングし、MTT細胞アッセイでラパマイシン濃度の関数としての細胞増殖阻害%についてスクリーニングした。試料には、ラパマイシン化合物を含まず、冷ETOガスで滅菌したコーティング(●)、ラパマイシン化合物を含み、滅菌していないコーティング(◆)、ラパマイシン化合物を含み、硬化前に滅菌したコーティング(■)およびラパマイシン化合物を含み、硬化後に滅菌したコーティング(▲)が含まれた。これらの結果は硬化魚油ゲルが滅菌可能であることを示している。
【0182】
実施例8:埋め込まれたコーティングメッシュ試料のFTIR分析
この試験は、ラット腹壁欠損に様々な期間埋め込んだ後の本明細書に記載のコーティングを評価するために行った。メッシュ試料をラット腹壁欠損に4、7、14、21、および28日間埋め込んだ。それぞれの時点で、メッシュ片全体および周囲の組織の一部を外植し、食塩水に浸漬したガーゼに包み、試験片容器に入れた。外植したメッシュの切片(約1cm×1cm)を切り出し、冷蔵庫でNERL水に終夜浸漬し、フード内で終夜風乾した。乾燥したメッシュ外植片を、HATRを用いてコーティングのバルク切片を分析するのに加えて、粗面(皮下組織に面した側)および平滑面(内臓に面した側)の両方でMicro-ATRアクセサリを用いて分析した。
【0183】
FTIR分析をHATRアクセサリを用いてコーティングのバルク切片で実施し、コーティングの詳細な化学分析を得た。HATR技術は、Micro-ATR技術と比べた場合に、サンプリング面積およびIRビーム透過深度が大きいことから、多量の試料を一度に分析する能力があるため、埋め込みコーティングの詳細な化学分析を行うのにより適していた。Micro-ATRのIRはビーム透過深度が30%小さく、HATRよりも試料の小さい面積を分析するため、経時的に装置の表面にタンパク質が吸収されることからコーティング分析は問題となった。
【0184】
物理的に、外植片は経時的に粗面側で組織の内側への増殖増大が観察された。この内側への増殖は後の時点(21および28日)では除去が非常に難しかった。後の時点(21および28日)で外植片の平滑面側に組織の非常に薄い層が認められた。この組織の層はコーティングに付着していなかったが、その上部にあって、容易に除去された。加えて、ポリプロピレン繊維は埋め込み前にコーティングの連続平滑面側に通常は埋められているが、裸のポリプロピレン繊維が曝露され、コーティングが目に見えて薄くなることにより示されるとおり、コーティングは、試験期間中に溶解すると思われた。
【0185】
図28AおよびBは、OH、NH、およびCH2吸収領域について様々な時点でHATRを用いて分析した、外植コーティングのFTIR結果を示している。FTIRデータは、それぞれ図28Aおよび図28BにおけるN-H(約3285cm-1)(2805)およびアミドI振動(約1645cm-1)(2810)の増大で明らかなとおり、埋め込み時間が長くなるにつれて、コーティング中へのタンパク質組み込みの増大がより大きくなることを示している。これらの結果は、埋め込み時間が長くなるにつれ、特に21日後には、メッシュの粗面側で組織の内側への増殖増大が物理的に観察されたことと相関している。Micro-ATRの結果は、平滑面側(内臓)と比べた場合に、粗面側(皮下)で多量のタンパク質吸収が見られるとの知見を確認するものであった。
【0186】
FTIRデータは、コーティングの時間依存的変換および吸収も示している。コーティングからの脂肪酸副生成物の吸収および/または水和の可能性が、T=0スペクトルを比較した場合にCH2バンドのシフトで当初観察され、ここで脂肪酸結晶化(すなわち、ブルーム)が約2917cm-1(2815)で検出されるが、他のすべての時点でスペクトル中には明らかに存在しない(図28C)。この結果は、埋め込み時間延長の関数として、カルボニルバンドの先鋭化および約1745cm-1へのシフトでより劇的に示される(図28D、2820)。コーティングのカルボニルバンドは、いくつかの官能基振動の組み合わせにより広幅である。このバンドの一つの成分は主に中心が約1740cm-1の架橋グリセリド(モノ-、ジ-、およびトリ-)のエステルカルボニル振動によるもので、ここでもう一つの成分は約1730〜1700cm-1の主に脂肪酸といくらかのケトンおよびアルデヒド副生成物の存在によるものである。したがって、カルボニルバンドの1745cm-1へのシフトは組織によるコーティング中の短鎖長脂肪酸/アルデヒド/ケトン副生成物の吸収と、コーティングの架橋グリセリド成分の分解の結果である。コーティングの架橋グリセリド成分の分解は、約1780cm-1の脂肪族過酸化物/無水物/ラクトン架橋バンドの時間依存的減少によって確認される。
【0187】
図29は、時間の関数としての、CH2反対称伸長に対して正規化した無水物/脂肪族過酸化物/ラクトン架橋(◆)、グリセリドエステル(■)、脂肪酸(▲)、およびタンパク質(×)バンドピーク高における正規化した変化のプロットを示している。このデータは前述のFTIRデータで観察されたピーク高における変化の概要を数値で示している。これらの結果は、インビボでメッシュコーティングが分解され、吸収されつつあることを示している。化学的に、脂肪族過酸化物、無水物、およびラクトン架橋バンドの分解に加えて、短鎖脂肪酸、ケトン、およびアルデヒド副生成物の吸収によって起こっていると思われる。インビボでの消化管におけるトリグリセリドおよび脂肪酸の代謝に関する文献調査から、発明者らは短鎖長副生成物が架橋グリセリド成分よりも速く吸収されると予想した。FTIRデータはこの結果と一致していると思われる。いかなる特定の理論にも縛られることなく、架橋バンドの分解および以前の文献に基づき、FTIRデータはコーティングの加水分解および/または酵素(すなわち、リパーゼ)分解を裏付けている。
【0188】
本発明の多くの改変および代替態様は、前述の記載を考慮すれば、当業者には明らかであると思われる。したがって、本記載は例示にすぎないと解釈されるべきであり、当業者に本発明を実施するための最良の形態を教示するためのものである。構造の詳細は本発明の精神から逸脱することなく実質的に変動してもよく、添付の特許請求の範囲内に入るすべての改変の排他的使用が留保される。本発明は添付の特許請求の範囲および法律の適用可能な規定によって要求される程度にのみ限定されることが意図される。
【0189】
特許、特許出願、論文、書籍、学術論文、学位論文およびウェブページを含む本出願において引用するすべての文献および類似の材料は、そのような文献および類似の材料の様式にかかわらず、その全体が参照により本明細書に明白に組み入れられる。定義された用語、用語の使用、記載の技術などを含む、一つまたは複数の組み入れられた文献および類似の材料が本出願と異なるまたは矛盾する場合、本出願が支配する。
【0190】
本明細書において用いられる項の表題は構成を目的とするにすぎず、いかなる様式でも記載された対象物を限定すると解釈されるべきではない。
【0191】
本発明を様々な態様および実施例と併せて記載してきたが、本教示がそのような態様または実施例に限定されることを意図するものではない。反対に、当業者であれば理解されるとおり、本発明は様々な代替物、改変、および等価物を含む。
【0192】
特許請求の範囲は、特に記載がないかぎり、記載の順序または要素に限定されると解釈されるべきではない。添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様式および詳細における様々な変更を加えうることが理解されるべきである。したがって、添付の特許請求の範囲およびその精神の範囲内に入るすべての態様ならびにその等価物が特許請求される。
【図面の簡単な説明】
【0193】
本発明の前述および他の局面、態様、目的、特徴および利点は、下記の説明を添付の図面と組み合わせて読めば、より完全に理解することができる。図面中、同様の参照符は一般に様々な図すべてにおいて同様の特徴および構造成分を意味する。図面は必ずしも共通尺度を持たず、代わりに本発明の原理を例示することに重点を置いている。
【図1】、多不飽和油における過酸化物およびエーテル架橋作成の例を示す概略図である。
【図2】多不飽和油における炭素-炭素架橋作成の例を示す概略図である(ディールス-アルダー型反応)。
【図3】トリグリセリドにおけるエステル結合の加水分解の概略を示す図である。
【図4】本発明の一つの態様に従っての、本発明のコーティングされた医療装置の作成法を模式化するフローチャートである。
【図5】本発明の一つの態様に従っての、図4の方法の変法を模式化するフローチャートである。
【図6】図6A〜6Cは、コーティングされた医療装置の様々な図である。
【図7】実施例1の硬化魚油コーティングのけん化後に検出された脂肪酸鎖の様々な化学構造の概略を示す図である。
【図8】実施例1の200oFで24時間加熱後の最終硬化コーティングのFTIR分析を示す図である。
【図9】図9A〜9Cは、実施例1に記載のFTIRデータの解析を示す図である。
【図10】図10A〜Cは、150oFで3日間硬化したコーティングと200oFで24時間硬化したコーティングのFTIRスペクトルを比較した図である。
【図11】図11Aは、実施例1の硬化魚油コーティングにおける可溶性材料のDSC曲線を示す図である。図11Bは、実施例1の硬化魚油コーティングにおける不溶性材料のDSC曲線を示す図である。
【図12】実施例1のコーティングの可溶性分画で検出された化合物の分子構造の概略を示す図である。
【図13】実施例1に記載の、第16日における脂肪酸、脂肪酸塩、およびアルコールの生成に一致する、緩衝溶液中で加水分解された硬化コーティングの代表的FTIRスペクトルを示す図である。
【図14】実施例1の疎水性非ポリマー性架橋ゲルの生成を示す図である。
【図15】実施例2に記載の水性媒質中での薬物放出データを示す図である。
【図16】実施例2に記載の水性媒質中での薬物放出データを示す図である。
【図17】実施例3に記載のFTIRデータを示す図である。
【図18】実施例3に記載の水性媒質中での薬物放出データを示す図である。
【図19】実施例4に記載の水性媒質中での薬物放出データを示す図である。
【図20】実施例4に記載の水性媒質中での薬物放出データを示す図である。
【図21】実施例4に記載の水性媒質中での薬物放出データを示す図である。
【図22】実施例4に記載の水性媒質中での薬物放出データを示す図である。
【図23】実施例4に記載の水性媒質中での薬物放出データを示す図である。
【図24】図24A〜Bは、熱硬化した封入メッシュコーティングとUVおよび熱で硬化したフィルムコーティングのFTIR分析を比較した図である。
【図25】図25A〜Bは、熱硬化した封入メッシュコーティングとUVおよび熱で硬化したフィルムコーティングのFTIR分析を比較した図である。
【図26】図26A〜Cは、コーティングから水性媒質中へのラパマイシン化合物の経時的放出の概略を示す曲線である。
【図27】コーティングから放出されたラパマイシンの濃度に対する細胞増殖の阻害パーセントを示す図である。
【図28】図28A〜Dは、実施例7に記載のFTIRデータを示す図である。
【図29】実施例7に記載のFTIRデータの解析を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性非ポリマー性架橋ゲル、治療薬および脂肪酸を含む、医療装置用のコーティング。
【請求項2】
疎水性非ポリマー性架橋ゲル、治療薬および脂肪酸を含み、
インビボで該治療薬を所望の放出速度で放出する、
医療装置用のコーティング。
【請求項3】
疎水性非ポリマー性架橋ゲル、治療薬および脂肪酸を含み、
インビボで非炎症性成分に分解する、
医療装置用のコーティング。
【請求項4】
疎水性非ポリマー性架橋ゲル、治療薬および脂肪酸を含み、
該治療薬の治療上有効な量を放出する、
医療装置用のコーティング。
【請求項5】
疎水性非ポリマー性架橋ゲル、治療薬および脂肪酸を含み、
生体吸収性であり、乳酸またはグリコール酸を実質的に生成せずに分解する、
医療装置用のコーティング。
【請求項6】
治療薬および脂肪酸を含む疎水性非ポリマー性架橋ゲルを含む、医療装置用のコーティング。
【請求項7】
疎水性非ポリマー性架橋ゲル、脂肪酸および治療薬を含み;
重量分析により評価した場合に、テトラヒドロフラン(THF)中で約60〜75%可溶、THF中で25〜40%不溶である、
医療装置用のコーティング。
【請求項8】
疎水性非ポリマー性架橋ゲル、脂肪酸および治療薬を含み;
重量分析により評価した場合に、THF中で約45〜55%可溶、THF中で約45〜55%不溶である、
医療装置用のコーティング。
【請求項9】
硬化後に1平方インチあたり約500〜1500マイクログラムの平均薬物負荷を有する、医療装置用のコーティング。
【請求項10】
硬化後に1平方インチあたり約1100〜1300マイクログラムの平均薬物負荷を有する、請求項9記載のコーティング。
【請求項11】
前記薬物を少なくとも7日間にわたって放出する、請求項9記載のコーティング。
【請求項12】
前記薬物を少なくとも15日間にわたって放出する、請求項9記載のコーティング。
【請求項13】
前記薬物を約17から約20日間にわたって放出する、請求項9記載のコーティング。
【請求項14】
硬化後に1平方インチあたり約300〜800マイクログラムの平均薬物負荷を有する、医療装置用のコーティング。
【請求項15】
硬化後に1平方インチあたり約400〜500マイクログラムの平均薬物負荷を有する、請求項14記載のコーティング。
【請求項16】
前記薬物を少なくとも20日間にわたって放出する、請求項14記載のコーティング。
【請求項17】
前記薬物を約35から約45日間にわたって放出する、請求項14記載のコーティング。
【請求項18】
前記薬物が抗増殖薬である、請求項14〜17のいずれか一項記載のコーティング。
【請求項19】
硬化後に1平方インチあたり約150〜350マイクログラムの平均薬物負荷を有する、医療装置用のコーティング。
【請求項20】
前記薬物を少なくとも7日間にわたって放出する、請求項19記載のコーティング。
【請求項21】
前記薬物を約10から約15日間にわたって放出する、請求項19記載のコーティング。
【請求項22】
硬化後に1平方インチあたり約300〜700マイクログラムの平均薬物負荷を有する、医療装置用のコーティング。
【請求項23】
前記薬物を少なくとも20日間にわたって放出する、請求項22記載のコーティング。
【請求項24】
前記薬物を約25から約30日間にわたって放出する、請求項22記載のコーティング。
【請求項25】
前記薬物が抗炎症薬である、請求項22〜24のいずれか一項記載のコーティング。
【請求項26】
疎水性架橋ゲルおよび脂肪酸を含み、
グリセリド、グリセロール、および脂肪アルコールからなる群の一つまたは複数をさらに含み、任意に治療薬をさらに含む、
医療装置用のコーティング。
【請求項27】
疎水性架橋ゲル、脂肪酸および治療薬を含み、
グリセリド、グリセロール、および脂肪アルコールからなる群の一つまたは複数をさらに含み、インビボで該治療薬を所望の放出速度で放出する、
医療装置用のコーティング。
【請求項28】
疎水性架橋ゲル、脂肪酸および治療薬を含み、
グリセリド、グリセロール、および脂肪アルコールからなる群の一つまたは複数をさらに含み、該治療薬を治療上有効な量で放出する、
医療装置用のコーティング。
【請求項29】
疎水性架橋ゲルおよび脂肪酸を含み、
グリセリド、グリセロール、および脂肪アルコールからなる群の一つまたは複数をさらに含む、
医療装置用のコーティング。
【請求項30】
生体吸収性である、請求項1〜29のいずれか一項記載のコーティング。
【請求項31】
天然油含有出発原料から誘導される、請求項1〜29のいずれか一項記載のコーティング。
【請求項32】
前記天然油含有出発原料が魚油である、請求項31記載のコーティング。
【請求項33】
前記治療薬が抗炎症薬または抗増殖薬である、請求項26〜28のいずれか一項記載のコーティング。
【請求項34】
前記脂肪酸がω-3脂肪酸である、請求項1〜29のいずれか一項記載のコーティング。
【請求項35】
前記医療装置がステント、カテーテル、外科メッシュまたはバルーンである、請求項1〜29のいずれか一項記載のコーティング。
【請求項36】
1〜50重量%の平均薬物負荷を有する、請求項1〜28のいずれか一項記載のコーティング。
【請求項37】
治療薬を天然油含有出発原料と混合して第二の材料を生成する段階と;
該治療薬の有効量が適当な期間で放出されるように、硬化条件を選択する段階と;
治療薬放出特性が調整されるように、該第二の材料を該硬化条件に従って硬化する段階とを含む、
医療装置用のコーティングの治療薬放出特性を調整する方法。
【請求項38】
硬化前に第二の材料を医療装置に適用する段階をさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記治療薬が抗炎症薬または抗増殖薬である、請求項37記載の方法。
【請求項40】
治療薬を天然油含有出発原料と混合して第二の材料を生成する段階と;
該治療薬の有効量が適当な期間で放出されるように、ビタミンEの放出速度制御量を選択する段階と;
第二の材料をビタミンEと混合して第三の材料を生成する段階と;
治療薬放出特性が調整されるように、第三の材料を少なくとも部分的に硬化する段階とを含む、
医療装置用のコーティングの治療薬放出特性を調整する方法。
【請求項41】
治療薬を1〜20%のビタミンEおよび99〜80%の天然油含有出発原料と混合して第二の材料を生成する段階と;
該治療薬の有効量が適当な期間で放出されるように、ビタミンEの放出速度制御量を選択する段階と;
治療薬放出特性が調整されるように、該第二の材料を該硬化条件に従って硬化する段階とを含む、
医療装置用のコーティングの治療薬放出特性を調整する方法。
【請求項42】
硬化前に前記第三の材料を医療装置に適用する段階をさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項43】
第一の硬化条件を選択する段階と;
天然油含有出発原料を該第一の硬化条件に従って硬化し、第二の材料を生成する段階と;
治療薬を天然油含有出発原料と混合して、第三の材料を生成する段階と;
第三の材料を第二の材料と混合して、第四の材料を生成する段階と;
第二の硬化条件を選択する段階と;
治療薬放出特性が調整されるように、該第四の材料を該第二の硬化条件に従って少なくとも部分的に硬化する段階とを含む、
医療装置用のコーティングの治療薬放出特性を調整する方法。
【請求項44】
第一の硬化条件を選択する段階と;
天然油含有出発原料を該第一の硬化条件に従って硬化し、第二の材料を生成する段階と;
治療薬を約1〜20%のビタミンEおよび約80〜99%の天然油含有出発原料と混合して、第三の材料を生成する段階と;
第三の材料を第二の材料と混合して、第四の材料を生成する段階と;
第二の硬化条件を選択する段階と;
治療薬放出特性が調整されるように、該第四の材料を該第二の硬化条件に従って少なくとも部分的に硬化する段階とを含む、
医療装置用のコーティングの治療薬放出特性を調整する方法。
【請求項45】
硬化前に第四の材料を前記医療装置に適用する段階をさらに含む、請求項41または42記載の方法。
【請求項46】
前記硬化条件が第二の材料の約150〜200℃の温度への曝露を含む、請求項37、40、42および43のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
前記硬化条件が約254nmの紫外線への曝露を含む、請求項37、40、42および43のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
被験者にコーティングされた医療装置を該被験者が治療されるように局所投与する段階であり、コーティングが疎水性非ポリマー性架橋ゲル、脂肪酸および治療薬を含む段階を含む、被験者の治療法。
【請求項49】
被験者にコーティングされた医療装置を該被験者が治療されるように投与する段階であり、コーティングが疎水性非ポリマー性架橋ゲルを含み、該ゲルがインビボで非炎症性成分に分解する段階を含む、被験者の治療法。
【請求項50】
治療薬を天然油含有出発原料と混合して、第二の材料を生成する段階と;
所望の放出速度に基づき硬化条件を選択する段階と;
コーティングが生成されるように、第二の材料を該選択した硬化条件に従って硬化する段階とを含む、
所望の治療薬放出速度を有する医療装置用のコーティングを生成する方法。
【請求項51】
前記治療薬を天然油含有出発原料と混合して、第二の材料を生成する段階と;
所望の放出速度に基づきビタミンEの放出速度制御量を選択する段階と;
第二の材料をビタミンEの放出速度制御量と混合して、第三の材料を生成する段階と;
コーティングが生成されるように、第三の材料を少なくとも部分的に硬化してコーティングを生成する段階とを含む、
医療装置用のコーティングを生成する方法。
【請求項52】
第一の硬化条件を選択する段階と;
天然油含有出発原料を該第一の硬化条件に従って硬化し、第二の材料を生成する段階と;
前記治療薬を天然油含有出発原料と混合して、第三の材料を生成する段階と;
第三の材料を第二の材料と混合して、第四の材料を生成する段階と;
第二の硬化条件を選択する段階と;
コーティングが生成されるように、該第四の材料を該第二の硬化条件に従って少なくとも部分的に硬化する段階とを含む、
医療装置用のコーティングを生成する方法。
【請求項53】
第一の硬化条件を選択する段階と;
天然油含有出発原料を該第一の硬化条件に従って硬化し、第二の材料を生成する段階と;
前記治療薬を約1〜20%のビタミンEおよび約80〜99%の天然油含有出発原料と混合して、第三の材料を生成する段階と;
第三の材料を第二の材料と混合して、第四の材料を生成する段階と;
第二の硬化条件を選択する段階と;
コーティングが生成されるように、該第四の材料を該第二の硬化条件に従って少なくとも部分的に硬化する段階とを含む、
医療装置用のコーティングを生成する方法。
【請求項54】
治療薬を天然油含有出発原料と混合して、第二の材料を生成する段階と;
疎水性非ポリマー性架橋ゲルが生成されるように、第二の材料を少なくとも部分的に硬化する段階とを含む、
疎水性非ポリマー性架橋ゲルを生成する方法。
【請求項55】
天然油含有出発原料を硬化し、第二の材料を生成する段階と;
治療薬を天然油含有出発原料と混合して、第三の材料を生成する段階と;
第三の材料を第二の材料と混合して、第四の材料を生成する段階と;
該治療薬の有効量が適当な期間で放出されるように、硬化条件を選択する段階と;
治療薬放出特性が調整されるように、該第二の材料を該硬化条件に従って硬化する段階とを含む、
医療装置用のコーティングの治療薬放出特性を調整する方法。
【請求項56】
天然油含有出発原料を硬化し、第二の材料を生成する段階と;
治療薬を1〜20%のビタミンEおよび99〜80%の天然油含有出発原料と混合して、第三の材料を生成する段階と;
第三の材料を第二の材料と混合して、第四の材料を生成する段階と;
該治療薬の有効量が適当な期間で放出されるように、硬化条件を選択する段階と;
治療薬放出特性が調整されるように、該第二の材料を該硬化条件に従って硬化する段階とを含む、
医療装置用のコーティングの治療薬放出特性を調整する方法。
【請求項57】
脂肪酸を含み、インビボで非炎症性成分に分解する、疎水性非ポリマー性架橋ゲル。
【請求項58】
脂肪酸、脂肪アルコール、グリセリド、およびグリセロールを含む、疎水性非ポリマー性架橋ゲル。
【請求項59】
一つまたは複数の治療薬を含む、請求項54記載のゲル。
【請求項60】
治療薬および脂肪酸を含む、疎水性非ポリマー性架橋ゲル。
【請求項61】
前記脂肪酸がω-3脂肪酸である、請求項54または55記載のゲル。
【請求項62】
複数の脂肪酸を含む、請求項54または55記載のゲル。
【請求項63】
一つまたは複数の治療薬を含む、請求項54または55記載のゲル。
【請求項64】
天然油含有出発原料から誘導される、請求項37〜39のいずれか一項記載のゲル。
【請求項65】
前記油が魚油である、請求項59記載のゲル。
【請求項66】
ビタミンEをさらに含む、請求項54または55記載のゲル。
【請求項67】
治療薬が抗増殖薬または抗炎症薬である、請求項55記載のゲル。
【請求項68】
前記治療薬の放出を制御する、請求項55記載のゲル。
【請求項69】
有機溶媒中での抽出に抵抗性の脂肪アルコール、グリセリドおよび架橋成分を含み、
該架橋成分が鎖長約C10からC22の遊離またはエステル化脂肪酸を含む、
疎水性非ポリマー性架橋ゲル。
【請求項70】
生体吸収性である、請求項69記載のゲル。
【請求項71】
ヨウ素価が約150よりも高い不飽和油を含む、疎水性非ポリマー性架橋ゲル

【請求項72】
自動酸化により架橋される、疎水性非ポリマー性架橋ゲル。
【請求項73】
架橋の量が硬化温度、硬化時間、抗酸化剤の量、UV照射への曝露または乾性油を改変することにより調節される、請求項66記載のゲル。
【請求項74】
被験者に疎水性非ポリマー性架橋ゲルおよび治療薬を、標的組織の近くに投与する段階と;
該治療薬が投与されるように、該治療薬を該標的組織に生体吸収させる段階とを含む、
治療薬を被験者の標的組織に投与する方法。
【請求項75】
前記治療薬が前記ゲルの細胞取り込みによって生体吸収される、請求項68記載の方法。
【請求項76】
被験者にコーティングされた医療装置を、標的組織の近くに投与する段階であり、コーティングが疎水性非ポリマー性架橋ゲルおよび治療薬を含む段階と;
該治療薬が投与されるように、該治療薬を該標的組織に生体吸収させる段階とを含む、
治療薬を被験者の標的組織に投与する方法。
【請求項77】
前記治療薬が前記コーティングの細胞取り込みによって生体吸収される、請求項69記載の方法。
【請求項78】
前記疎水性架橋ゲルの成分および治療薬が前記コーティングの細胞取り込みによって生体吸収される、請求項69記載の方法。
【請求項79】
脂肪酸に架橋されている治療薬を含む、疎水性非ポリマー性架橋ゲル。
【請求項80】
前記脂肪酸がω-3脂肪酸である、請求項79記載のゲル。
【請求項81】
前記治療薬が架橋されうる基を含む、請求項79記載のゲル。
【請求項82】
前記治療薬が不飽和を含む、請求項81記載のゲル。
【請求項83】
前記治療薬がラパマイシンである、請求項82記載のゲル。
【請求項84】
前記ゲルが魚油を含む、請求項79記載のゲル。
【請求項85】
請求項79〜84のいずれか一項記載のゲルを含む、コーティング。
【請求項86】
請求項79〜84のいずれか一項記載のコーティングを含むコーティングを含む医療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28A】
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【図28B】
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【図28C】
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【図28D】
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【図29】
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【公表番号】特表2009−511215(P2009−511215A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535802(P2008−535802)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/040753
【国際公開番号】WO2007/047781
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(506087004)アトリウム メディカル コーポレーション (8)
【氏名又は名称原語表記】ATRIUM MEDICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】5 Wentworth Drive, Hudson, NH03051 (US).
【Fターム(参考)】