説明

生体導管の疾患を治療および予防するための方法

導管壁でのエラスチンの除去およびコラーゲンの再構築によって生体導管を拡張させるための方法が記載される。方法は、導管壁に通常存在する細胞により、または導管に誘引された炎症細胞により、導管壁での内在性エラスターゼおよびコラゲナーゼの放出を増大させ、それによって導管をさらに拡張させる作用物質を使用することを含む。方法は、導管壁の透過性を高め、エラスチン線維およびコラーゲン線維を露出させる作用物質を使用することも含む。方法は、動脈および静脈の細胞外マトリックスの成分を除去し、血管壁の細胞に対する生体力学的刺激を減らすことにより血管壁の内膜過形成を抑制することも含む。方法は、エラスチンの再合成を減らすために、エラスチンに加えてマイクロファイバーを分解する作用物質を使用することもさらに含む。方法は、炎症細胞の動員において重要な、動脈瘤の動脈壁の細胞表面の受容体を遮断することにより動脈瘤の動脈の直径を一定に保つ作用物質を使用することも含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2003年2月20日出願の米国特許仮出願第60/449,086号(その全体を参照により本明細書に組み込むこととする)の利益を請求する。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、生体導管の疾患を治療および予防するための方法に関する。本発明はさらに、生体導管に治療用および予防用の作用物質を送達する方法に関する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する方法は、直接的または間接的にエラスチンを分解することおよび/または血管壁のコラーゲンマトリックスを再構築することにより、血管の拡張を実現することに関する。他の実施形態では、本明細書に記載する方法は、血管壁の炎症を鎮めることにより、血管の異常拡張を低減させることに関する。
【背景技術】
【0003】
2.発明の背景
2.1. 血管の構造
血管は、3つの異なる層から構成されている。これらの層には、内側から外側に向かって、内膜、中膜、および外膜が含まれる。内膜は、全体で管腔を裏打ちする扁平な細胞からなる単層である。中膜は、平滑筋細胞から構成される厚い中間層である。外膜は、線維性の被覆を構成する外層である。動脈および静脈を通る血流は、管径の変化の影響を非常に受けやすい。流量は、血管壁の平滑筋細胞の弛緩により増加させることができるが、この結果は通常一時的で程度が限られている。血管管径の大きく持続的な拡大には、細胞外マトリックスの分解および再構築が必要である。このマトリックスは、2種のタンパク質線維、エラスチンおよびコラーゲンからなる織物状物質(weave)の周辺に構成されている。エラスチン線維は、不活性かつ不溶性の物質であり、最初の長さのほぼ2倍まで伸び、なお完全に巻き戻ることができる。正常な血行動態の状態では、エラスチン線維は緊張しており、心臓のポンプ輸送により生じる拡張力に対抗する収縮力を血管壁に与えている。エラスチンとは対照的に、コラーゲン基質は比較的強固であり、正常な動脈径のときは、コラーゲン線維は緩んでおり壁の緊張にはほとんど寄与していない。しかし、圧力が高い期間中は、血管管径は拡大し、ついにはコラーゲン線維が伸びる。このとき、コラーゲン線維の網がさらなる拡張に抵抗し、破裂を防止する。
【0004】
2.2. 血管閉塞
アテローム性動脈硬化症によって閉塞された動脈は、しばしばバルーン血管形成術を施される。この処置では、高圧バルーンが動脈の狭窄部分で膨らまされる。このバルーンは、多くの場合、壁を断裂させることならびにコラーゲン線維およびエラスチン線維の網を崩壊させることによって管腔を拡張する。動脈壁の断裂は、壁在血栓の形成、血小板沈着、およびそれに続く壁在血栓の組織化および平滑筋細胞の増殖による治療部位での管腔の狭窄を伴う。最も程度の大きな細胞増殖は、内弾性板の断裂を伴う。バルーン拡張による治療に成功した血管が、しばしば追跡調査の際に治療部位での再狭窄を示すのは驚くべきことではない。最初は、再狭窄についての調査は、平滑筋細胞の管腔に向かう遊走および増殖ならびに治療部位での細胞外マトリックスの合成、即ち内膜過形成として知られているプロセスに焦点を合わせていた。より最近では、再狭窄は、内膜過形成ではなく狭窄性の再構築プロセスに関係づけられている。治療された血管がその後に再狭窄を起こすかどうかを決定する最も重要な唯一の因子は、血管壁における再構築により、血管径が拡大するか縮小するかということである。多くの場合、管腔を最大径まで拡張し狭窄性の再構築を防ぐために、金属ステントが閉塞部位に移植される。しかし、ステント移植も、細胞増殖および細胞外マトリックスタンパク質の合成を引き起こし、再狭窄を生じ得る。
【0005】
大動脈が重度に狭窄または完全に閉塞されているときは、自家静脈またはダクロンやポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)などの材料から作られた人工血管を使用して、遮断された部分がバイパスされる。この処置の間、バイパス管の一方の端は近位の動脈に、他方の端は遠位の動脈に縫い付けられ、それによって閉塞された部分周辺で血流を迂回させる。場合によっては、利用可能な遠位の動脈吻合部位の管径が移植時に小さいことがあるが、このことは開通性が長期間低減していたことと相関関係がある。適切な自家静脈が入手できないときは、PTFEまたはダクロンで出来た人工グラフトがしばしば使用される。これらの人工グラフトが移植されたあと、遠位の吻合部の流出血管で内膜過形成が加速度的に増大し、これは、少なくとも一部には、グラフト(剛性)と流出血管(伸展性が良い)との伸展性特性の不一致によると考えられている。
【0006】
血液透析グラフトおよび瘻管の流出静脈を流れる血流も、動脈および静脈の最初の径が小さいため、弱められている。さらに、ほぼ全ての血液透析グラフトおよび瘻管は、通常は流出静脈壁における内膜過形成の増加が原因で、最終的に機能しなくなり、極めて重篤な狭窄症およびそれに続く血栓症をもたらす。流出静脈壁におけるこの物質の形成は、動脈と静脈、および人工グラフトと静脈との伸展性特性の不一致によって増大する。
【0007】
動脈の拡張は多くの臨床状況で有益であるが、このプロセスの撹乱が起こり、動脈瘤形成をもたらすことがある。大動脈は、動脈瘤形成の最も一般的な位置であり、大動脈の過剰な拡張は、血管破裂、出血、および死の高い危険性にヒトをさらす。動脈瘤によって拡張した大動脈壁の組織分析により、エラスチンおよびコラーゲンの枯渇、ならびに単球、マクロファージ、および多形核細胞の慢性の炎症性浸潤が示されている。この慢性の炎症性プロセスは、拡張した血管壁に付着する血栓と関連づけられている。
【0008】
2.3. 伸展性不一致および新生内膜過形成
内膜過形成とは、内弾性板を通って遊走し、増殖し、マトリックスタンパク質を分泌する内膜下の平滑筋細胞が増殖し、内膜肥厚および内膜過形成をもたらすことを意味する。内膜肥厚は壁在血栓の器質化の続発症によっても引き起こされる。遠位の端側吻合部位での内膜過形成の進行は、依然として後発性のバイパスグラフト不全の重要な原因である(Walden他、1980年、Arch Surg; 115: 1166-1169;Ecbave他、1979年、Surgery; 86: 791-798)。バイパスグラフトと動脈との伸展性の不一致が吻合部の内膜過形成の発達の一因であるという概念が報告されている(BairdおよびAbbott、1976年、Lancet; 2: 948-950)。より最近に、バイパスグラフトの径が遠位の吻合部の内膜過形成(DAIH)に影響を与えることが実証された(Binns他、1989年、Vasc Surg; 10: 326-337)。宿主の動脈に等しい径を有するグラフトでは、DAIHの発症率が最も低く、DAIHと流速および局所のずり速度との間に逆の相関関係があることが報告された。さらに、最近の研究により、グラフトとレシピエントの動脈との間に伸展性の不一致があるグループでは、伸展性が同じグループと比べて、DAIHの形成および程度が有意に高いことが示された(Trubel他、1995年、Eur J Vasc Endovasc Surg; 10: 415-423)。
【0009】
伸展性の不一致および関連する新生内膜過形成を低減させるための戦略は、グラフトを入れた血管の長期的な開通性にとって極めて重要である。閉塞部位周辺で血液を迂回させるのに使用される人工バイパスグラフトは、吻合処置に使用される自家性または異種性材料とは異なり、非人工バイパスグラフトより伸展性が低い。剛性の人工グラフト材料と伸展性の良い動脈または静脈との伸展性が不一致であると、流出動脈または流出静脈に対するストレスが増大する。伸展性の低さは、人工血管グラフトの性能低下の原因となる重要な要因である。動脈または静脈とグラフトとの伸展性が不一致であると、ずり応力が高くなり、局所的なうっ血を伴う血流の乱れが生じる。
【0010】
血管グラフトと宿主血管との血管伸展性(すなわち、血管断面積の変化と血管圧の変化との比)の不一致は、新生内膜過形成の原因として指摘されている。新生内膜過形成の形成を含めて、外科的処置における血管移植が短期および長期的に有害な結果をもたらす可能性を低くし、その結果、そのような処置を受けた患者の全体的な転帰を改善するために、伸展性の不一致を低減させるための改良した戦略が必要である。
【0011】
セクション2または本出願の他の任意のセクションにおける、どの参照文献の引用および特定も、そのような参照文献が本発明に先行する従来技術として利用できることを認めるものと解釈されるべきではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
3.発明の概要
本発明は、生体導管における疾患を治療または予防する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
いくつかの態様では、発明は、生体導管の外径および/または管径を拡大させる(increasing)ことにより、生体導管における疾患を治療または予防する方法を提供する。本明細書で開示のいくつかの実施形態では、本発明の方法は、以下の内容の1つまたは複数を、所望の任意の組合せで含む。すなわち、(a)1種または複数の外因性エラスターゼを導管または導管壁に投与すること、(b)1種または複数の外因性コラゲナーゼを導管または導管壁に投与すること、(c)導管または導管壁において、1種または複数の内在性エラスターゼおよび/またはコラゲナーゼの局所濃度を上昇させること、(d)導管または導管壁において、局所的に炎症を誘導すること、(e)導管または導管壁において、局所的にマイクロファイバーを分解すること、(f)導管または導管壁において、単球、マクロファージ、または多形核細胞に対する内在性の走化因子の局所濃度を上昇させること、(g)導管または導管壁において、マクロファージを活性化すること、(h)導管または導管壁において、細胞外マトリックスを分解すること、ならびに/あるいは(i)導管または導管壁において、プロテオグリカンまたは糖タンパク質を分解することである。
【0014】
本明細書では、「内在性」という用語は、本発明の方法により処置している被験体から産生されることを意味する。本明細書では、「外因性」という用語は、本発明の方法により処置している被験体以外の供給源から産生されることを意味する。
【0015】
ある特定の実施形態では、上記(a)〜(i)に列挙した1種または複数の効果を実現することができる単一の作用物質を利用する。例えば、この方法は、導管に対してエラスターゼ活性を示すマトリックスメタロプロテアーゼ(用語「マトリックスメタロプロテアーゼ」は、本明細書では「マトリックスメタロプロテイナーゼ」と交換可能に使用される)の投与を含んでよい。このマトリックスメタロプロテアーゼは、導管で細胞外マトリックスも分解することができる量で投与される。他の実施形態では、1種または複数の作用物質の投与を含む併用治療を、上記(a)〜(i)に列挙した効果のうちの1種または複数を実現するために使用することができる。
【0016】
1種または複数の効果を実現することができる例示的な作用物質には、例えば、天然コラーゲンのタイプIII、I、II、VII、X、アグリカン、リンクタンパク質、エンタクチン、テネイシン、およびパールカンがその基質として挙げられるマトリックスメタロプロテイナーゼ−1;天然コラーゲンのタイプI、II、III、VII、X、アグリカン、エンタクチン、およびテネイシンがその基質として挙げられるマトリックスメタロプロテイナーゼ−6;天然コラーゲンのタイプII、III、I、VII、X、アグリカン、エンタクチン、およびテネイシンがその基質として挙げられるマトリックスメタロプロテイナーゼ−13;天然コラーゲンのタイプI、II、IIIがその基質として挙げられるマトリックスメタロプロテイナーゼ−18;天然コラーゲンのタイプI、II、III、アグリカン、フィブロネクチン、およびビトロネクチンがその基質として挙げられるマトリックスメタロプロテイナーゼ−14;天然コラーゲンのタイプIIIおよびフィブロネクチンがその基質として挙げられるマトリックスメタロプロテイナーゼ−16;フィブロネクチンおよびプロテオグリカンがその基質として挙げられるマトリックスメタロプロテイナーゼ−24;天然コラーゲンのタイプIV、フィブロネクチン、プロテオグリカン(DSPG、CSPG)、ラミニン−1、およびフィブリン/フィブリノーゲンがその基質として挙げられるマトリックスメタロプロテイナーゼ−25;エラスチンおよび天然コラーゲンのタイプI、IV、V、VII、X、XIがその基質として挙げられるマトリックスメタロプロテイナーゼ−2;エラスチン、天然コラーゲンのタイプI、IV、V、VII、X、XI、フィブロネクチン、ラミニン、アグリカン、リンクタンパク質、およびビトロネクチンがその基質として挙げられるマトリックスメタロプロテイナーゼ−9が含まれる。
【0017】
生体導管の外径および/または管径の拡大をもたらす本発明の方法は、効果が一過性ではないことが好ましい。様々な実施形態では、生体導管の外径および/または管径の拡大は少なくとも12時間、より好ましくは少なくとも24時間、最も好ましくは少なくとも48時間持続する。様々な実施形態で、生体導管の外径および/または管径の拡大は、拡大されてから少なくとも1週間、少なくとも4週間、少なくとも12週間、少なくとも6ヶ月、または、少なくとも1年間の期間、持続している。
【0018】
これに関係した実施形態では、本発明の方法が実施されている間または直後に、生体導管の外径および/または管径の拡大が実現される。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の方法で処置した導管の外径および/または管径の少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%の拡大が、本明細書に記載の方法による最初の処置の間または直後、例えば最初の処置が完了してから1分以内、5分以内、10分以内、15分以内、30分以内、1時間以内、6時間以内、12時間以内、24時間以内、3日間以内、5日間以内、1週間以内に実現される。
【0019】
いくつかの態様では、本発明は、生体導管の少なくとも一部分の外径および/または管径を拡大させる方法を提供する。前記方法は1種または複数の内在性エラスターゼまたはコラゲナーゼの局所濃度を上昇させることを含み、前記上昇はエラスターゼまたはコラゲナーゼの投与により実現されるのではなく、その結果、前記部分の外径および/または管径が拡大され、前記拡大は実現されてから少なくとも24時間の間持続し、それにより生体導管の少なくとも一部分の外径および/または管径が拡大される。
【0020】
他の態様では、本発明は、生体導管の少なくとも一部分の外径および/または管径を拡大させる方法を提供する。前記方法は、1種または複数の内在性エラスターゼおよび/またはコラゲナーゼの局所濃度を上昇させること、ならびに/あるいは1種または複数の外因性エラスターゼおよび/またはコラゲナーゼを導管または導管壁に投与することを含み、その結果、前記一部分の外径および/または管径が拡大され、前記拡大は実現されてから少なくとも24時間の間持続し、それにより生体導管の少なくとも一部分の外径および/または管径が拡大される。
【0021】
他の態様では、本発明は、生体導管の少なくとも一部分の外径および/または管径を拡大させる方法を提供する。前記方法は、前記一部分において局所的な炎症を誘導することを含み、その結果、前記一部分の外径および/または管径が拡大され、前記拡大は実現されてから少なくとも24時間の間持続し、それにより生体導管の少なくとも一部分の外径および/または管径が拡大される。
【0022】
さらに他の態様では、本発明は、生体導管の少なくとも一部分の外径および/または管径を拡大させる方法を提供する。前記方法は、1種または複数の内在性エラスターゼおよび/またはコラゲナーゼの局所濃度を上昇させること、ならびに/あるいは1種または複数の外因性エラスターゼおよび/またはコラゲナーゼをその一部分またはその一部分の壁に投与すること、ならびに前記一部分において局所的な炎症を誘導することを含み、その結果、前記一部分の外径および/または管径が拡大され、前記拡大は実現されてから少なくとも24時間の間持続し、それにより生体導管の少なくとも一部分の外径および/または管径が拡大される。
【0023】
さらに他の態様では、本発明は、生体導管の少なくとも一部分の外径および/または管径を拡大させる方法を提供する。前記方法は、1種または複数の内在性エラスターゼおよび/またはコラゲナーゼの局所濃度を上昇させること、ならびに/あるいは1種または複数の外因性エラスターゼおよび/またはコラゲナーゼをその一部分またはその一部分の壁に投与すること、ならびに前記一部分の壁においてマイクロファイバーを分解することを含み、その結果、前記一部分の外径および/または管径が拡大され、前記拡大は実現されてから少なくとも24時間の間持続し、それにより生体導管の少なくとも一部分の外径および/または管径が拡大される。
【0024】
さらに他の態様では、本発明は、生体導管の少なくとも一部分の外径および/または管径を拡大させる方法を提供する。前記方法は、単球、マクロファージ、もしくは多形核細胞に対する1種または複数の内在性の走化因子の局所濃度を上昇させること、ならびに/あるいは単球、マクロファージ、もしくは多形核細胞に対する1種または複数の外因性の走化因子をその一部分またはその一部分の壁に投与すること、ならびに、例えば1種または複数の内在性のマクロファージ活性化作用物質の局所濃度を上昇させることおよび/または1種または複数の外因性マクロファージ活性化作用物質をその一部分またはその一部分の壁に投与することにより、マクロファージを局所的に活性化することを含み、その結果、前記一部分の外径および/または管径が拡大され、前記拡大は実現されてから少なくとも24時間の間持続し、それにより生体導管の少なくとも一部分の外径および/または管径が拡大される。
【0025】
さらに他の態様では、本発明は、生体導管の少なくとも一部分の外径および/または管径を拡大させる方法を提供する。前記方法は、(i)1種または複数の外因性エラスターゼおよび/またはコラゲナーゼをその導管または導管壁に投与すること、ならびに/あるいは1種または複数の内在性エラスターゼおよび/またはコラゲナーゼの局所濃度を上昇させること、(ii)単球、マクロファージ、もしくは多形核細胞に対する1種または複数の外因性の走化因子を導管または導管壁に投与すること、および/または単球、マクロファージ、もしくは多形核細胞に対する1種または複数の走化因子の局所濃度を上昇させること、ならびに(iii)例えば1種または複数の内在性のマクロファージ活性化作用物質の局所濃度を上昇させることおよび/または1種または複数の外因性マクロファージ活性化作用物質を導管または導管壁に投与することによりマクロファージを局所的に活性化することを含み、その結果、前記一部分の外径および/または管径が拡大され、前記拡大は実現されてから少なくとも24時間の間持続し、それにより生体導管の少なくとも一部分の外径および/または管径が拡大される。
【0026】
さらに他の態様では、本発明は、生体導管の治療においてある作用物質の効力を増強する方法を提供する。前記方法は、前記作用物質を含む組成物を、それを必要とするヒト被験者の生体導管の少なくとも一部分に非経口的経路で投与すること、および、前記一部分の壁において1種または複数の糖タンパク質またはプロテオグリカンを分解することを含み、その結果、前記作用物質に対する前記壁の透過性が高まり、それにより生体導管の治療において前記作用物質の効力が増強される。例示的な実施形態では、プロテオグリカンを分解するのに使用できる作用物質は、トリプシン、キモトリプシン、プラスミン、またはマトリックスメタロプロテイナーゼ−15である。
【0027】
さらに他の態様では、本発明は、生体導管の少なくとも一部分の拡張(enlargement)を抑制する方法を提供する。前記方法は、PAR受容体に拮抗的に働き、その結果、前記生体導管の拡張が抑制され、それにより前記生体導管の拡張を抑制することを含む。
【0028】
さらに他の態様では、本発明は、吻合により連結された第1の血管と第2の血管との間の伸展性の不一致(compliance mismatch)を減らしまたは無くす方法を提供する。この方法は、1種または複数のエラスターゼまたはコラゲナーゼを含む組成物を、それを必要とするヒト被験者の前記第1の血管または第2の血管の一部分に非経口的経路で伸展性の不一致を抑制するのに有効な量で投与し、それにより吻合により連結された第1の血管と第2の血管との間の伸展性の不一致を減らしまたは無くすことを含む。
【0029】
さらに他の態様では、本発明は、生体導管の少なくとも一部分を拡張させる(delating)方法を提供する。前記方法は、1種または複数のエラスターゼまたはコラゲナーゼを含む組成物を、それを必要とするヒト被験者に非経口的経路で前記部分を拡張させるのに有効な量で投与し、それにより生体導管の少なくとも一部分を拡張させることを含む。
【0030】
本発明は、閉塞された生体導管または閉塞されやすい導管を治療するための方法を提供する。この方法は、導管の拡張をもたらす作用物質を導管壁に投与することを含む。この作用物質は、1種または複数のエラスターゼまたはコラゲナーゼの局所濃度を上昇させる。一実施形態では、この作用物質は、血管壁に通常存在する細胞によるエラスターゼおよびコラゲナーゼの合成および/または放出を刺激し、管径の拡大を促進する。別の実施形態では、ある組成物を記載しており、その1つの作用物質はエラスターゼであり、生体導管の外径および/または管径を持続的に拡大させるのに十分な量で投与され、第2の作用物質は、血管壁に通常存在する細胞によるエラスターゼおよびコラゲナーゼの合成および/または放出を刺激するものである。これらの作用物質は相乗的に作用する。すなわち、エラスターゼの投与により生じる拡張は100%未満、通常50%未満であるが、第2の作用物質を追加すると100%超の拡張を生じることができる。
【0031】
本発明の別の態様では、閉塞された生体導管または閉塞されやすい導管を治療する方法を提供する。この方法は、管径の拡大を促進するために、局所的な炎症を誘導し、かつ/または導管壁でエラスターゼおよびコラゲナーゼを合成および放出することができる単球、マクロファージ、および/または多形核(PMN)細胞を動員する作用物質を導管壁に投与することを含む。いくつかの実施形態では、投与される作用物質はこれらの細胞に対して走化性である。一実施形態では、走化性の作用物質のうちの1種または複数は、単球走化性ペプチド−1、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子α、またはインターロイキンからなる。この作用物質が、標準のin vitroのデュアルチャンバー走化性活性アッセイで、単球、マクロファージ、またはPMN細胞に対して、対照より少なくとも約10%大きな走化性活性を示すことが好ましい。この作用物質が、標準のin vitroの走化性活性アッセイで、単球、マクロファージ、またはPMN細胞に対して、対照より少なくとも約20%、より好ましくは30%、より好ましくは40%、さらに好ましくは50%大きな走化性活性を示すことがより好ましい。他の実施形態では、この作用物質は、単球、マクロファージ、またはPMN細胞に対して走化性である内在性の作用物質の局所的合成および/または放出を引き起こすものである。前記走化性の作用物質のうちの1種または複数は、単球走化性ペプチド−1、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子α、インターフェロンγ、ロイコトリエンB4、C5a、インターロイキン−1、またはインターロイキン−8を含む。別の実施形態では、ある組成物を記載しており、その1つの作用物質はエラスターゼであり、生体導管の外径および/または管径を持続的に拡大させるのに十分な量で投与され、第2の作用物質は、局所的な炎症を誘導し、かつ/または導管壁でエラスターゼおよびコラゲナーゼを合成および放出することができる単球、マクロファージ、および/または多形核(PMN)細胞を動員するものである。これらの作用物質は、相乗的に作用することができる。例えば、エラスターゼの投与により生じる拡張は100%未満、通常50%未満であるが、エラスターゼを単独投与では導管の有意な拡張を生じない、本明細書に記載の第2の作用物質と共に投与すると、100%超の拡張を生じることができる。
【0032】
本発明は、単球、マクロファージ、もしくは多形核細胞に対する1種または複数の走化因子を含む第1の組成物、ならびにマクロファージ活性化作用物質である作用物質を含む第2の組成物を生体導管に投与することにより、生体導管の外径および/または管径を拡大させる方法を提供する。一実施形態では、走化性作用物質の1種または複数はエラスターゼでもコラゲナーゼでもない。別の実施形態では、マクロファージ活性化作用物質は細菌性リポ多糖類、チオグリコレート、またはCpG DNAである。別の実施形態では、第1および第2の組成物は同じものであり、かつ/または相乗作用する量で投与される。さらに別の実施形態では、第1および第2の組成物は同時に投与され、あるいは第1の組成物が第2の組成物より先に投与され、あるいは第2の組成物が第1の組成物より先に投与される。ある実施形態では、生体導管は、動脈もしくは静脈、または動脈血管グラフトもしくは静脈血管グラフトである。別の実施形態では、ある組成物を記載しており、その1つの作用物質はエラスターゼであり、生体導管の外径および/または管径を持続的に拡大させるのに十分な量で投与され、第2の作用物質は、単球、マクロファージ、もしくは多形核細胞に対する1種または複数の走化因子を含み、第3の組成物は、マクロファージ活性化作用物質である作用物質を含む。これらの作用物質は相乗的に作用する。すなわち、エラスターゼの投与により生じる拡張は100%未満、通常50%未満であるが、それら自体では導管の有意な拡張を生じることができない第2および第3の作用物質を追加すると、100%超の導管の拡張を生じることができる。
【0033】
本発明では、投与される作用物質は、G−タンパク質共役型プロテイナーゼ活性化型受容体(PAR)ファミリーのうちの1種または複数のメンバーを活性化することができる。4種の異なるPARが知られており、PAR−1(トロンビン受容体)、PAR−2、PAR−3、およびPAR−4という名前がつけられている。PARは、N−末端ペプチドがこの受容体から切断されて、繋留(tethered)リガンドが露出し、それが受容体結合部位に挿入されると活性化される。PAR受容体の活性化は、しばしば組織の炎症ならびに単球、マクロファージ、およびPMNの動員をもたらす。いくつかの実施形態では、この作用物質は、標的組織での内在性PAR受容体の発現の増大を引き起こす。投与される作用物質は、トリプシン、トリプシンIV、キモトリプシン、メソトリプシン、肥満細胞トリプスターゼ、好中球プロテイナーゼ−1、組織因子、因子VIIa、因子Xa、トロンビン、プラスミン、カテプシンG、MCP−1、PAR−活性化ペプチド、PAR−活性化ペプチドミメティック、およびマトリックスメタロプロテイナーゼとして知られているプロテアーゼファミリーの全メンバーから選択することが好ましい(Cottrell他、2004年、J Biol Chem. Jan 15, 2004 [印刷前電子出版])。あるいは、TNF−α、IL−1、または細菌性リポ多糖類(LPS)など内在性のPAR−2の発現を誘導する作用物質も使用される (Nystedt他、J. Biol. Chem. 271:14910)。
【0034】
本発明は、エラスターゼを含む第1の組成物および生体導管の壁においてマイクロファイバーを分解する作用物質を含む第2の組成物を生体導管に投与することにより、生体導管の外径および/または管径を拡大させる方法を提供する。一実施形態では、この作用物質は、マイクロファイバーの1種または複数のフィブリリン成分を分解する。別の実施形態では、エラスターゼを含む第1の組成物は、タイプIまたはタイプIIのエラスターゼから成る。別の実施形態では、エラスターゼを含む第1の組成物は、膵臓エラスターゼ、マクロファージエラスターゼ、白血球エラスターゼ、またはマトリックスメタロプロテイナーゼである。
【0035】
本発明の一態様では、第1の作用物質を含む第1の組成物、および第1の作用物質に対する生体導管壁の透過性を高めるために、生体導管壁において1種または複数の糖タンパク質もしくはプロテオグリカンを分解する第2の作用物質を含む第2の組成物を生体導管壁に投与することにより、生体導管での第1の作用物質の効力を増強する方法を提供する。一実施形態では、第1の作用物質はエラスターゼまたはコラゲナーゼであり、この投与は生体導管の外径および/または管径を拡大させるのに有効である。一実施形態では、第1の作用物質は、抗再狭窄作用物質である。別の実施形態では、第1の作用物質は細胞集団であり、これらの細胞は、心筋細胞または心筋細胞に分化することができる幹細胞もしくは始原細胞であり、第1および第2の組成物は、外膜部分(adventitial space)に経皮的に投与される。別の実施形態では、第1および第2の組成物は同じものであり、かつ/または相乗作用する量で投与される。別の実施形態では、第1および第2の組成物は同時に投与され、あるいは第1の組成物が第2の組成物より先に投与され、あるいは第2の組成物が第1の組成物より先に投与される。ある実施形態では、生体導管は、動脈もしくは静脈、または動脈血管グラフトもしくは静脈血管グラフトである。
【0036】
本発明の別の態様は、エラスチン線維の再合成を減退させるために、トロポエラスチンを分解する作用物質に、マイクロファイバーおよび/またはフィブリリンを分解する作用物質を追加するものである。投与される作用物質は、トリプシン、キモトリプシン、プラスミン、およびマトリックスメタロプロテイナーゼとして知られているプロテアーゼファミリーの全メンバーから選択することが好ましい。エラスチンの再合成の減退は、血管壁の弾性が戻るのを防ぎ、それにより吻合部で伸展性の不一致が増大するのを防ぐのに有益となることがある。
【0037】
いくつかの実施形態では、投与される作用物質は、動脈もしくは静脈または静脈血管グラフトの一部分に直接投与される。他の実施形態では、この作用物質は、動脈もしくは静脈または静脈血管グラフトの管腔中に送達される。いくつかの実施形態では、この作用物質は、動脈もしくは静脈または静脈血管グラフトの外表面および/または管腔表面に塗布される。他の実施形態では、この作用物質は、生体導管を含む組織中に経皮的に送り込まれ、この生体導管は、冠状動脈または冠状動脈に連結された静脈バイパスグラフトである。別の実施形態では、この作用物質は、心膜腔(pericardial space)に経皮的に投与される。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態では、作用物質は、細胞間接着分子(ICAM)、血管細胞接着分子(VCAM)、セクレチン、および/またはβ2インテグリンMac−1を含めて、単球、マクロファージ、および/またはPMNに対する接着分子あるいはインテグリンの内皮細胞表面での発現の増大を引き起こす。
【0039】
本発明の別の態様は、閉塞された生体導管または閉塞されやすい導管を治療するための方法を提供する。この方法は、高分子、細胞、または薬物送達のための担体(例えばポリマーミクロスフェア)を壁および/または周辺組織にうまく送達させるために、プロテオグリカンを分解する作用物質を導管壁に投与することを含む。プロテオグリカンの例には、それだけには限らないが、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン硫酸、パールカン、バーシカン、シンデカン、およびセルグリシンが含まれる。投与される作用物質は、トリプシン、キモトリプシン、およびプラスミンから選択することが好ましい。本発明の別の態様では、閉塞された生体導管または閉塞されやすい導管を治療するための方法を提供する。この方法は、エラスチンの分解を容易にするために、プロテオグリカンおよび糖タンパク質を分解する作用物質を導管壁に投与することを含む。糖タンパク質の例には、フィブリリン−1、フィブリリン−2、ラミニン、およびフィブロネクチンが含まれる。プロテオグリカンの例は先に挙げてある。投与される作用物質は、トリプシン、キモトリプシン、プラスミン、およびマトリックスメタロプロテイナーゼとして知られているプロテアーゼファミリーの全メンバーから選択することが好ましい。
【0040】
本発明は、閉塞された生体導管または閉塞されやすい導管を治療することを含む。この生体導管は、動脈と静脈、動脈と静脈血管グラフト、動脈と人工グラフト、または静脈と人工グラフトの間の伸展性が不一致であるため、閉塞されまたは閉塞されやすい。ある実施形態では、吻合により連結された動脈と静脈の間の伸展性が不一致である。別の実施形態では、吻合により連結された、動脈と静脈グラフト、動脈と人工グラフト、または静脈と人工グラフトの間の伸展性が不一致である。ある実施形態では、人工グラフトは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはダクロンを含む。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態では、例えばカテーテルやシリンジなどの送達用器具および従来使用されている他の任意のタイプの送達用器具により、作用物質を投与することができる。いくつかの実施形態では、作用物質の投与は、治療対象の生体導管部分の極めて近くに送達用器具を配置することを含む。いくつかの実施形態では、送達用器具により作用物質を送達している間、送達用器具の一部を生体導管壁に挿入しておくことができる。いくつかの実施形態では、作用物質を生体導管の圧迫されている部分に送達する間、生体導管の管腔に圧力を加えることができる。いくつかの実施形態では、機械的作用により生体導管の管腔に圧力を加える。いくつかの実施形態では、バルーンカテーテルを用いて生体導管の管腔に圧力を加える。いくつかの実施形態では、同一の器具により作用物質を投与し、加圧を行う。いくつかの実施形態では、作用物質を生体導管に直接投与する。いくつかの実施形態では、生体導管を外科的に露出させ、in vivoで作用物質を管腔に送り込み、または生体導管の外表面に塗布する。管腔内送達を伴う実施形態では、作用物質が内皮表面により長い間接触できるようにし、かつ、血清により作用物質が阻害されるのを防止するために、血管を流れる血流を鉗子によって止めることができる。いくつかの実施形態では、生体導管を外科的に取り出し、in vitroで作用物質を管腔表面および/または導管の外表面に送達させる。代替実施形態では、治療対象の血管内にステントとして留置されるポリマー配合物、鉗子、治療対象の血管の上もしくは周りのラップ、または、治療対象の血管の中、周り、もしくは近くの他の器具によって、作用物質を送達させることができる。他の実施形態では、ある組織領域の動脈および/または静脈を拡張させるために、その領域に経皮的に作用物質を注入する。心臓血管の治療を目的とした実施形態では、作用物質を血管内カテーテルにより送り込み、経皮的に心膜腔へ送達させ、または、外科的に露出させた冠状血管に直接塗布することができる。
【0042】
本発明の別の態様では、外科的吻合により連結された動脈または静脈の壁内部での内膜過形成の増大を減退させることを記述する。この抑制は、治療部分の細胞外マトリックスを部分的に分解することにより血管の伸展性が失われ、その結果、吻合により連結された血管の伸展性特性の不一致が低減されることによって起こる。分解されるマトリックス成分には、それだけには限らないが、エラスチン、コラーゲン、プロテオグリカン、および糖タンパク質が含まれる。マトリックス分解は、外因性酵素を適用することにより、あるいは内在性酵素の局所的合成および/または放出を刺激する作用物質を適用することにより実現することができる。
【0043】
本発明の一態様は、1種または複数のエラスターゼまたはコラゲナーゼを含む組成物を、吻合により連結された血管間の伸展性の不一致を抑制するのに有効な量で第1または第2の血管に投与することにより、吻合により連結された第1の血管と第2の血管の間の伸展性の不一致を減らしまたは無くす方法を含む。本発明の一実施形態では、1種または複数のエラスターゼまたはコラゲナーゼを含む組成物が生体導管を拡張させるのに有効な量で投与される、生体導管を拡張させる方法が提示される。
【0044】
本発明の一態様は、動脈瘤によって拡張した動脈径の拡大を抑制するために、PAR受容体およびシグナル変換経路を遮断するものである。PAR拮抗物質の投与により、((特に)トロンビン、プラスミン、および因子XaによるPAR−1、PAR−2、PAR−3、およびPAR−4の活性化を含めて)血管壁中に通常存在する細胞のPAR活性化を遮断することができる。投与される作用物質は、モノクローナル抗体、ペプチド、ペプチドミメティック化合物、または低分子(化合物)から選択することが好ましい。あるいは、酸化窒素シンターゼ阻害物質、PDGF受容体拮抗物質、TNF−α受容体拮抗物質、bFGF受容体拮抗物質などPARシグナル変換経路の阻害物質、またはMAPKキナーゼ阻害物質も投与することができる。このような作用物質は、経口的にまたは静脈内注射もしくは筋肉内注射により投与されることが好ましい。このPAR受容体の遮断により、動脈瘤壁に存在する慢性の炎症を鎮め、細胞外マトリックスタンパク質の分解を減退させ、血管平滑筋細胞の死滅を減らし、血管の拡張を遅らせまたは止めることができる。
【0045】
本発明によれば、生体導管には、例えば、動脈、静脈、動脈血管グラフト、静脈血管グラフト、尿管、気管支、胆管、または膵管が含まれ得る。さらに、生体導管の閉塞には、例えば、狭窄症、狭窄、病変、または閉塞も含まれ得る。いくつかの実施形態では、投与される組成物は、動脈または静脈ならびに/あるいは静脈血管グラフトおよび/または動脈血管グラフトに投与される。
【0046】
本発明の生体導管の外径および/または管径を拡大させる方法は、外径および/または管径を5〜500%拡大させることを含む。別の実施形態では、生体導管の外径および/または管径は、5〜25%、25〜50%、50〜100%、100〜200%、200〜400%、または400〜500%拡大される。別の実施形態では、生体導管の外径および/または管径は、10〜400%、25〜300%、または50〜200%拡大される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明は、生体導管の疾患を治療もしくは予防し、かつ/または生体導管に治療用および予防用の作用物質を送達するための方法に関する。
【0048】
いくつかの実施形態では、本発明は生体導管に作用物質を投与することにより、生体導管の外径および/または管径を拡大させる方法を提供する。エラスターゼの使用による導管拡張を記述した以前の発明とは対照的に、本発明は、一部には、エラスターゼを単独で用いて得られるよりも迅速かつ/または持続的で大きな導管拡張を実現できるように、他の作用物質を単独でまたはエラスターゼと併用して使用することを特に対象としている。以前の研究により、高度に精製された膵臓エラスターゼ・タイプIを単独で使用してエラスチンを分解すると、動脈管径を最大約50%までin vivoで制御的に拡大し、管腔を流れる血流を増大させ得ることが示されている。しかし、高度に精製された膵臓エラスターゼ・タイプIを、治療する血管壁の炎症を誘導する作用物質と併用すると、用量依存的に、エラスチンおよびコラーゲン双方の分解が起こり、最大400%までの径の拡大がみられる。本発明は、エラスチンを分解し、かつ血管壁の炎症も誘導するマトリックスメタロプロテイナーゼ−9など単一の作用物質の使用も企図している。
【0049】
生体導管の外径および/または管径の拡大は、非常に多くの利点をもたらす。一実施形態では、作用物質は、末期腎疾患患者の動静脈の血液透析グラフトおよび瘻管の開通時間を長くするために使用される。特に、流入動脈および/または流出静脈の壁中に作用物質を投与し、内皮細胞、血管平滑筋細胞、および肥満細胞など壁中に通常存在する細胞によるコラゲナーゼおよびエラスターゼの合成を増大させることができる。別の実施形態では、作用物質を適用すると、単球、マクロファージ、およびPMNが導管壁へと動員される。これらの炎症細胞は、内在性エラスターゼおよびコラゲナーゼを放出し、かつ/または平滑筋細胞または内皮細胞を刺激してエラスターゼおよびコラゲナーゼを放出させ治療の数日および数週間後に血管をより大きく拡張させることができる。管腔の拡張は、治療部位での内膜過形成の増大の影響を緩和する。管腔拡張の全体的効果は、より大きな血管により流量が増加すること、およびそれにより開通率が長期間大きくなることである。
【0050】
別の実施形態では、作用物質は、アテローム性動脈硬化症により閉塞された動脈を含めて、生体導管のバルーン拡張術後の長期の開通率を改善するために使用される。特に、作用物質をバルーン拡張の間に導管壁中に投与して、血管壁中に通常存在する細胞によるエラスターゼおよびコラゲナーゼの放出を刺激することができる。送達される作用物質は、単球、マクロファージ、およびPMNを導管壁へと動員することもできる。これらの炎症細胞は、内在性エラスターゼおよびコラゲナーゼを放出し、かつ/または壁中に通常存在する細胞を刺激してエラスターゼおよびコラゲナーゼを放出させることができる。次いで、エラスターゼおよびコラゲナーゼはエラスチンおよびコラーゲンを分解し、バルーン拡張術の数日および数週間後に導管がさらに拡張される。この遅延型の管腔拡張は、治療部位での内膜過形成の増大の影響を緩和する。バルーン拡張中に作用物質を使用することの全体的効果は、より大きな管腔により流量が増加すること、およびそれにより開通率が長期間大きくなることである。
【0051】
さらに、本発明によれば、作用物質による生体導管の治療は制御される。この作用物質はある種の臨床状況では潜在的に有益であるが、有害な作用を有し得ることが判明している。例えば、エラスターゼ、トリプシン、およびキモトリプシン(ならびに他の未特定のブタタンパク質)を含むブタ膵臓セリンプロテアーゼは、高用量では、動脈の重度の動脈瘤拡張、さらには破裂を生じることがある。したがって、本発明によれば、送達される作用物質のタイプ、濃度、送達方法、および治療時間が所望の拡張度を実現するように、好ましくは制御される。
【0052】
多くの酵素はエラスチンを切断し、したがって、エラスターゼとみなすことができる。治療用作用物質として使用するために特異的な酵素を選択することが重要である。ヒトは、エラスチンを分解するもの、コラーゲンを分解するもの、およびその両方を分解するものを含めて、細胞外マトリックスの様々な成分を分解する能力を有する、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)と呼ばれる亜鉛およびカルシウム依存性エンドペプチターゼのファミリーを合成する。ヒトは、ELA−1として知られているエラスターゼ・タイプIを合成し、これは、ブタ膵臓エラスターゼ・タイプIに対するアミノ酸相同性が89%である。ヒトは、膵臓エラスターゼ・タイプIIおよびIIIも合成する。これらのエラスターゼは、そのアミノ酸配列および基質特異性により区別される。ブタ膵臓は、いくつかのエラスターゼ、特に、トロポエラスチン、プロテオグリカン、およびいくつかの糖タンパク質を迅速に分解するエラスターゼ・タイプIを産生する。ブタ膵臓エラスターゼ・タイプIは、線維性コラーゲンもマイクロファイバーも分解しないと考えられており、PAR受容体を活性化しないと考えられている。ブタ膵臓エラスターゼのいくつかの調製物が市販されており、高度に精製された調製物は、エラスターゼ・タイプIを専ら含むと考えられている。しかし、これらの調製物による動脈拡張のパターンは、試料の純度によって変わる。膵臓エラスターゼの高度に精製された調製物は、処置された動脈を即時に約50%拡張し、このことはエラスチンマトリックスの急速なタンパク質加水分解と相関関係がある。拡張度は時間が経過しても変わらない。他の膵臓セリンプロテアーゼおよび膵臓タンパク質が混入した膵臓エラスターゼの調製物を使用して観察された拡張は、通常2段階のパターンをたどる。第1に、約50%の拡張が起こり、これはエラスチンマトリックスの急速なタンパク質加水分解と相関関係がある。これに次いで、次の数日から数週間にわたり管腔の拡張が進行し、これは、治療部位の壁の炎症ならびにMMPおよび白血球エラスターゼを含めて内在性エラスターゼおよびコラゲナーゼの局所濃度の上昇に関連している。炎症は最終的に鎮静し、血管径は約21日で安定し、エラスチンの枯渇した拡張された動脈が生じる。動脈径は、酵素調製物のタイプおよび濃度ならびに処置時間によって、400%までも拡大することができる。
【0053】
ブタ膵臓エラスターゼの低純度調製物の酵素活性の分析から、それらがエラスターゼに加えてトリプシンおよびキモトリプシン、すなわち他の2種のセリンプロテアーゼを有意な量含むことが示された。これらのトリプシンおよびキモトリプシンの混入物は、それ自体では動脈の拡張を引き起こさない。しかし、それらは、エラスターゼの延期効果(dilatory effect)を増大させることができる特性を有する。例えば、トリプシンは、おそらくはPARを活性化することにより、血管の平滑筋細胞からのMMPの放出を刺激する。これにより、エラスチンおよびコラーゲンの分解がさらに進む。さらに、トリプシンおよびキモトリプシンは、in vivoでエラスチン線維を取り囲んでいる、糖タンパク質およびプロテオグリカンのコアタンパク質を分解する。糖タンパク質およびプロテオグリカンが除去されると、おそらくはエラスチン線維を被覆している糖タンパク質およびプロテオグリカンが除去されることにより、精製エラスターゼのエラスチン分解作用(elastolytic effect)がin vitroでかなり増大する。また、トリプシンおよびキモトリプシンは、血管の細胞外マトリックスから糖タンパク質およびプロテオグリカンを除去することにより、血管を透過性にし、それにより処置中のエラスターゼの血管壁への浸透を加速させることができる。これにより、処置中のエラスターゼの血管壁への拡散が増進され、作用物質は壁を通過して対流移動できるようになる。
【0054】
さらに、トリプシンおよびキモトリプシンは共にマイクロファイバーも分解する。この微細線維の網は、血管が発達する間、トロポエラスチンが挿入される「骨組み」として存在している。高度に精製された膵臓エラスターゼとトリプシンまたはキモトリプシンとを用いて肺組織を治療すると、トロポエラスチンおよびマイクロファイバーが共に持続的に除去され、肺の弾性が持続的に失われる。本明細書に記載するように生体導管に対してエラスターゼおよびトリプシンを併用することにより、トロポエラスチンおよびマイクロファイバーが共に分解され、導管の弾性が持続的に失われる。トリプシンを加えると、エラスチン線維の再合成が減退し、弾性の回復が妨げられる。エラスターゼとトリプシンの併用による血管弾性の低下は、エラスターゼ単独による血管弾性の低下より長く持続する。トロポエラスチンとマイクロファイバーの両方を分解する単一の酵素は、生体導管の外径および/または管径を拡大させることに関する本発明の方法を実施するのに好ましい作用物質である。
【0055】
先に言及したように、ブタ膵臓エラスターゼの低純度の調製物(トリプシン含有)は処置される動脈の炎症応答を誘導し、50%超の拡張をもたらす。興味深いことに、トリプシンは、PAR−1およびPAR−2、すなわち内皮細胞、血管平滑筋細胞、および肥満細胞上に存在する受容体を活性化する。これらのPARの活性化により、かなりの炎症が起こり、単球、マクロファージ、およびPMNが治療領域へと動員される。PAR−1およびPAR−2の活性化に伴ってみられる炎症は、PAR活性化の結果として、単球走化性ペプチド−1(MCP−1)および他の炎症誘発性サイトカインが合成され放出されることによると考えられている。炎症誘発性サイトカインの局所濃度の上昇により、ICAM、VCAM、およびセレクチンを含めて、循環血液プールから単球、マクロファージ、およびPMNを誘引する内皮細胞表面の受容体の上方調節も刺激される。これらの炎症細胞の血管壁中への浸潤は、血管拡張の重要な因子であり、50%超の血管拡張を可能にする。MCP−1などの炎症誘発性作用物質を血管拡張薬として有効にするために、「活性化」作用物質を追加することが望ましいかもしれない。これらの「活性化」作用物質は、単球およびマクロファージを刺激し、それらが治療対象の血管壁に入るとエラスターゼおよびコラゲナーゼをより多く放出させるものである(Tambiah他、2001年、Br. J. Surg. 88(7): 935-40;Namiki他、2002年、Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 22(1): 115-20;Gunn他、1997年、J. Immunol. 158(1):376-383)。細菌性リポ多糖類(LPS)、チオグリコレート(例えば濃度0.1mol/l)、またはCpG DNAなどマクロファージ刺激物質は、活性化作用物質の例である(Stovall他、J. Biol Chem. 2004 Jan 28 [印刷前電子出版;原稿番号M311434200]。このような作用物質は、治療部位に誘引されるマクロファージを活性化し、コラゲナーゼおよびエラスターゼ(MMPを含む)の放出を増大させ、その結果血管を拡張させる。
【0056】
さらに、血管が急速に拡張するのと同時に、壁の薄い部分および内皮表面が引き伸ばされる。トリプシンによるPAR活性化は、平滑筋細胞および内皮細胞の強力な分裂促進因子である、TNF−α、bFGF、およびPDGFの合成および放出を刺激する。PAR活性化物質のトリプシンに応答した平滑筋細胞および内皮細胞の増殖は、治療対象の血管の薄くなった壁を細胞およびマトリックスで強化し、かつ、拡張された管腔を集密的に広がった内皮細胞で被覆する上で重要な可能性がある。いくつかの状況では、血管壁の伸展性が低減され、吻合部の伸展性不一致が少なくとも一部は是正される。この環境では、伸展性の不一致から生じる刺激性の生体力学的シグナルが低減され、治療されない血管部分と比べて、内膜過形成が低減される。
【0057】
好ましい作用物質は、エラスチンの除去により、治療対象の血管を即時に50%拡張させ、かつ、治療対象の導管壁に単球、マクロファージ、およびPMNを誘引し、これらは、内在する平滑筋細胞、内皮細胞、または上皮細胞と共に作用して、内在性エラスターゼおよびコラゲナーゼの放出により、50%を超える2次的な血管拡張を引き起こす。このような調製物は、エラスターゼ(MMP−9など)のみから、あるいは血管壁に炎症を引き起こす添加物とエラスターゼとから構成することができる。このタイプの調製物は、血液透析用の流出静脈グラフトを拡張させるのに特に有用となる。
【0058】
本発明の別の実施形態は、治療部分の細胞外マトリックス成分を分解することにより、生体導管壁内部の内膜過形成の増大を抑制するものである。マトリックス成分の分解により、マトリックスから、細胞増殖および内膜過形成の特徴である細胞外マトリックス形成を司る細胞への分裂促進シグナルおよび走化性シグナルが遮断される。さらに、マトリックス成分の分解は、血管平滑筋細胞および線維芽細胞のアポトーシスをもたらし、治療部分の壁内部での内膜過形成の一因となる細胞を枯渇させることができる。マトリックスの分解は、外因性エラスターゼおよびコラゲナーゼを適用することにより、または内在性エラスターゼまたはコラゲナーゼの局所的合成および/または放出を刺激する作用物質を適用することにより、達成することができる。分解されるマトリックス成分には、それだけには限らないが、エラスチン、コラーゲン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、テネイシン−C、およびラミニンが含まれる。
【0059】
本発明の別の実施形態は、動脈瘤によって拡張された動脈のさらなる拡張を遅らせるためにPAR受容体を遮断するものである。PAR拮抗物質の投与により、壁在血栓と血管壁との境界面でのトロンビン、プラスミン、因子VIIa、因子VIIIa、および因子XaによるPAR活性化を遮断することができる。このPAR受容体の遮断により、動脈瘤壁に存在する慢性の炎症が鎮められ、したがって、存在する血管平滑筋細胞およびコラーゲン線維の数が安定し、それにより、血管の拡張を遅らせまたは止めることができる。
【0060】
本発明の方法を施される患者・患畜には、それだけには限らないが、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどが含まれ、哺乳動物が好ましく、ヒトが最も好ましい。
【0061】
本発明の方法により治療することができる生体導管には、例えば、動脈、静脈、尿管、気管支、胆管、または膵管が含まれ得る。
【0062】
治療対象の生体導管が閉塞されている場合、その閉塞は、例えば、狭窄症、狭窄、または病変であってよい。
【0063】
本明細書に記載する本発明の方法を実施する上で、2000年9月24日に出願されたFrananoによる米国特許出願第09/669,051号を参照することができる。その内容全体を完全に参照により本明細書に組み込む。
【0064】
4.1. エラスターゼおよび/またはコラゲナーゼの局所濃度を上昇させる作用物質の使用による生体導管の拡張
本発明は、閉塞された生体導管または閉塞されやすい導管を治療するための方法を提供する。この方法は、導管の持続的な拡張をもたらす作用物質を導管壁に投与することを含む。この作用物質は、管径の拡大を促進するために、血管壁に通常存在する細胞によるエラスターゼおよびコラゲナーゼの合成および/または放出を刺激する。
【0065】
4.2. 炎症の誘導による生体導管の拡張
4.2.1.走化性作用物質
本発明の別の態様では、閉塞された生体導管または閉塞されやすい導管を治療するための方法を提供する。この方法は、管径の拡張を促進するために、導管壁でエラスターゼおよびコラゲナーゼを合成および放出することができる単球、マクロファージ、および/または多形核(PMN)細胞の動員をもたらす作用物質を導管壁に投与することを含む。いくつかの実施形態では、投与される作用物質はこれらの細胞に対して走化性である。この作用物質は、標準のin vitroのデュアルチャンバー走化性活性アッセイで、単球、マクロファージ、またはPMN細胞に対して対照より少なくとも約10%大きな走化性活性を示すことが好ましい。この作用物質が、標準のin vitroの走化性活性アッセイで、単球、マクロファージ、またはPMN細胞に対して対照より少なくとも約20%、より好ましくは30%、より好ましくは40%、さらに好ましくは50%大きな走化性活性を示すことがより好ましい。
【0066】
4.2.2. 走化性因子の局所的産生の誘導
他の実施形態では、作用物質は、単球、マクロファージ、またはPMNに対して走化性である内在性の作用物質の局所的合成および/または放出を引き起こすものである。いくつかの実施形態では、投与される作用物質は、G−タンパク質共役型プロテイナーゼ活性化型受容体(PAR)ファミリーのうちの1種または複数のメンバーを活性化することができる。4種の異なるPARが知られており、それらには、PAR−1(トロンビン受容体)、PAR−2、PAR−3、およびPAR−4という名前がつけられている。PARは、N−末端ペプチドがこの受容体から切断されて、繋留(tethered)リガンドが露出し、それが受容体結合部位に挿入されると活性化される。PAR受容体の活性化は、しばしば組織の炎症ならびに単球、マクロファージ、およびPMNの動員をもたらす。いくつかの実施形態では、作用物質は、細胞接着分子(ICAM)、血管細胞接着分子(VCAM)、およびセレクチンを含めて、単球、マクロファージ、および/またはPMNに対する接着分子の内皮細胞表面での発現を増大させる。他の実施形態では、この作用物質は、標的組織での内在性PAR受容体の発現の増大を引き起こす。投与される作用物質は、膵臓エラスターゼ、トリプシン、トリプシンiv、メソトリプシン、キモトリプシン、肥満細胞トリプターゼ、好中球プロテイナーゼ−1、組織因子、因子VIIa、因子Xa、トロンビン、プラスミン、カテプシンG、MCP−1、PARを活性化する合成ペプチド、ペプチドミメティック、他の低分子PAR拮抗物質、マクロファージエラスターゼ、白血球エラスターゼ、およびマトリックスメタロプロテイナーゼとして知られているプロテアーゼファミリーの全メンバーから選択することが好ましい(Cottrell他、2004年、J. Biol. Chem.2004 Jan 15[印刷前電子出版])。あるいは、TNF−α、IL−1、または細菌性リポ多糖類(LPS)など内在性のPAR−2の発現を誘導する作用物質も使用される (Nystedt他、J. Biol. Chem. 271:14910)。
【0067】
4.3. 微細繊維の分解による生体導管の拡張
本発明の別の態様は、エラスチン線維の再合成を減退させるために、トロポエラスチンを分解する作用物質に、マイクロファイバーおよび/またはフィブリリンを分解する作用物質を追加するものである。投与される作用物質は、トリプシン、キモトリプシン、プラスミン、およびマトリックスメタロプロテイナーゼとして知られているプロテアーゼファミリーの全メンバーから選択することが好ましい。エラスチンの再合成の減退は、血管壁の弾性が戻るのを防ぎ、それにより吻合部の伸展性の不一致の増大を防ぐ上で有益となり得る。
【0068】
本発明では、マイクロファイバーを分解する作用物質には、それだけには限らないが、ヒトトリプシン、およびマウス、ラット、ブタ、ウシ、ウマを含めた他の哺乳動物由来のトリプシン;ヒトキモトリプシン、およびマウス、ラット、ブタ、ウシ、ウマを含めた他の哺乳動物由来のキモトリプシン;ヒトプラスミンおよびマウス、ラット、ブタ、ウシ、ウマを含めた他の哺乳動物由来のプラスミン;ヒト白血球エラスターゼ、およびマウス、ラット、ブタ、ウシ、ウマを含めた他の哺乳動物由来の白血球エラスターゼが含まれる。
【0069】
本発明の様々な実施形態では、マイクロファイバーを分解する作用物質は、マトリックスメタロプロテイナーゼ−2(ゼラチナーゼAまたは72kdのコラゲナーゼ・タイプIVとしても知られている)、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(ゼラチナーゼBまたは92kdのコラゲナーゼ・タイプIVとしても知られている)、マトリックスメタロプロテイナーゼ−7(マトリリシンまたはPUMP−1としても知られている)、あるいはマトリックスメタロプロテイナーゼ−12(ヒトマクロファージエラスターゼまたはヒトマクロファージメタロエラスターゼとしても知られている)である。好ましい実施形態では、マトリックスメタロプロテイナーゼは、ヒトマトリックスメタロプロテイナーゼである。他の実施形態では、マトリックスメタロプロテイナーゼはマウス、ラット、ブタ、ウシ、ウマなど他の哺乳動物由来のものである。
【0070】
4.4. エラスターゼおよびコラゲナーゼに基づく、生体導管を拡張する方法
4.4.1. コラゲナーゼ
コラーゲンは、多細胞真核生物の細胞外マトリックスの主成分である。これは、分子間にらせん状の鎖を形成する、アミノ酸の小さな繰り返し配列領域を特徴とする構造タンパク質である。これらのらせん鎖により、例外的な構造の安定性および強度が生じている。コラーゲンは、皮膚、腱、骨、軟骨、および組織の主な構成成分であり、ヒトの体の全タンパク質の約40%を占める。コラーゲン分子は、ほとんどのプロテアーゼの作用に対して強い耐性があるが、それでもコラゲナーゼと呼ばれる特異的なプロテアーゼによっては分解され得る。
【0071】
メタロプロテイナーゼ(MMP)として知られている酵素ファミリーのいくつかのメンバーは、コラゲナーゼである。これらの酵素は、生物界に非常に広範に分布し存在しているが、臓器成長や組織置換など通常の生理状況では、発現が弱い。しかし、それらのヒトでの過剰発現および活性化は、多数のプロセス、時には非制御な破壊を伴う病理プロセスおよび細胞外マトリックスの再構築に関係づけられている。コラゲナーゼの2つのクラスが同定されており、それらがコラーゲン分子中で起こす切断の特異性によって特徴づけられている。コラゲナーゼの第1のクラスは、高等生物のコラゲナーゼで構成されており、GIy−IleまたはGIy−Leuを含むペプチド結合を加水分解するが、第2のクラスは細菌のコラゲナーゼで構成されており、X−Gly配列を有する全てのペプチド結合を系統的に加水分解し、通常、どんなコラーゲン分子も分解する。
【0072】
MMP−2、MMP−9、および白血球エラスターゼなどいくつかの酵素は、エラスチンおよび一部のコラーゲンの双方を分解する。エラスチンを迅速に分解しコラーゲンをゆっくりと分解する作用物質の方が、処置後に部分的なコラーゲン分解およびそれに続く再構築が起こるため、エラスチンのみを分解する作用物質よりも大きな拡張をもたらす。コラーゲンを分解するがエラスチンを分解しない作用物質を、内膜過形成などコラーゲンの多い組織によって閉塞された生体導管の壁に直接投与して、導管の管腔から閉塞物質を効果的に取り除くことができる。
【0073】
好ましい実施形態では、本発明の方法および組成物に使用するコラゲナーゼは、基底膜コラーゲン・タイプIVを分解するものである。
【0074】
代替実施形態では、本発明の方法および組成物に使用するコラゲナーゼは、コラーゲン・タイプI、IIおよびIIIを分解するものである(例えば、マトリックスメタロプロテアーゼ・タイプ1、3、7、9および10)。
【0075】
ある特定の実施形態では、コラゲナーゼは、クロストリジウム・ヒストリチクム菌(Clostridium histolyticum)コラゲナーゼである。
【0076】
4.4.2. エラスターゼ
エラスターゼを利用する本発明の方法および組成物において、使用するエラスターゼ酵素は、アラニンなど小型の疎水性アミノ酸の残基を含むペプチド基質を優先的に切断するエラスターゼ・タイプIが好ましい。エラスターゼ・タイプIの例には、皮膚で発現される酵素ヒトエラスターゼI(NCBI 受入番号 NP_001962)、および膵臓で発現される酵素ブタエラスターゼI(NCBI 受入番号 CAA27670)が含まれる。あるいは、P1位置に中型から大型の疎水性アミノ酸残基を含むペプチド基質(すなわち、切れやすい結合のすぐN−末端側の基質アミノ酸残基)を切断することができるエラスターゼ・タイプIIを使用してもよい。エラスターゼ・タイプIIの例には、共に膵臓で発現される、酵素ヒトエラスターゼIIA(NCBI 受入番号 NP254275)および酵素ブタエラスターゼII(NCBI 受入番号 A26823)が含まれる。
【0077】
本発明では、エラスチン分解作用物質には、それだけには限らないが、ヒト膵臓エラスターゼI(ELA−1としても知られている)、ヒト膵臓エラスターゼIIA、ヒト膵臓エラスターゼIIB、ヒト膵臓エラスターゼIIIA、ヒト膵臓エラスターゼIIIB、ブタ膵臓エラスターゼI、ブタ膵臓エラスターゼII、ブタ膵臓エラスターゼIII、マウス、ラット、ウシ、ウマを含めた他の哺乳動物由来の膵臓エラスターゼ、ヒト白血球エラスターゼ、マトリックスメタロプロテイナーゼ−2(ゼラチナーゼAまたは72kdのコラゲナーゼ・タイプIVとしても知られている)、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(ゼラチナーゼBまたは92kdのコラゲナーゼ・タイプIVとしても知られている)、マトリックスメタロプロテイナーゼ−7(マトリリシンまたはPUMP−1としても知られている)、マトリックスメタロプロテイナーゼ−12(ヒトマクロファージエラスターゼまたはヒトマクロファージメタロエラスターゼとしても知られている)、カテプシンL、およびカテプシンSが含まれる。好ましい実施形態では、エラスチン分解作用物質は、ヒト由来のエラスチン分解作用物質である。他の実施形態では、エラスチン分解作用物質はマウス、ラット、ブタ、ウシ、ウマなど他の哺乳動物由来のものである。
【0078】
4.5. 併用治療による生体導管の拡張
以下に、例えば生体導管の外径および/または管径を拡大させることにより、生体導管における疾患を治療または予防するための併用方法および関係する組成物を記載する。本発明の方法は、少なくとも2種の作用物質を患者に投与するものである。そのうち第1のものは、直接的にまたは間接的に径を拡大させる活性を有する。第2の作用物質は、第1の作用物質の送達を容易にすることにより、または直接的な(例えばエラスチンの分解による)もしくは間接的な(例えば導管の局所的な炎症の誘導による)径拡大活性を発揮することにより、通常、第1の作用物質の効果を増強することができる。いくつかの実施形態では、併用方法は、第1もしくは第2の作用物質の送達を容易にすることにより、または直接的もしくは間接的な径拡大活性を発揮することにより、第1もしくは第2の作用物質の効果を通常増強することができる第3の作用物質を投与することをさらに含む。
【0079】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、以下のタイプの作用物質のうちのいずれか(例えば2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、またはすべて)を組み合わせて併用投与することを含む。すなわち、(1)エラスターゼ、(2)コラゲナーゼ、(3)1種または複数の内在性エラスターゼまたはコラゲナーゼの局所濃度を上昇させる作用物質、(4)投与先の導管部分において局所的な炎症を誘導する作用物質、(5)投与先の導管部分の壁においてマイクロファイバーを分解する作用物質、(6)単球、マクロファージ、または多形核細胞に対する走化因子、(7)マクロファージ活性化作用物質、ならびに(8)プロテオグリカンおよび/または糖タンパク質を分解する作用物質である。
【0080】
本明細書に記載する併用方法の好ましい実施形態では、併用方法は、エラスターゼまたはコラゲナーゼと、上記(3)〜(8)に列挙したエラスターゼまたはコラゲナーゼではない作用物質のうちの少なくとも1種とを投与することを含む。
【0081】
エラスターゼまたはコラゲナーゼの投与を含む、本明細書に記載する方法の他の好ましい実施形態では、エラスターゼまたはコラゲナーゼは、以下の活性のうちのいずれか1種、いずれか2種、いずれか3種、いずれか4種、または5種すべてを示さない。(a)1種または複数の内在性エラスターゼまたはコラゲナーゼの局所濃度を上昇させる活性、(b)局所的な炎症を誘導する活性、(c)マイクロファイバーを分解する活性、(d)単球、マクロファージ、もしくは多形核細胞に対する内在性の走化因子の局所濃度を上昇させる活性、(e)マクロファージを活性化する活性、(f)導管において細胞外マトリックスを分解する活性、および/または(g)導管壁においてプロテオグリカンまたは糖タンパク質を分解する活性である。
【0082】
併用方法が単球、マクロファージ、もしくは多形核細胞に対する走化因子の投与を含む場合、マクロファージ活性化作用物質も投与することが好ましい。
【0083】
さらに、本発明の併用方法は、以下の方法のうちのいずれか(例えば2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはすべて)を組み合わせて実施することを含む。すなわち、(1)エラスターゼを投与すること、(2)コラゲナーゼを投与すること、(3)1種または複数の内在性エラスターゼまたはコラゲナーゼの局所濃度を上昇させること、(4)治療対象の導管部分において局所的な炎症を誘導すること、(5)治療対象の導管部分の壁においてマイクロファイバーを分解すること、(6)単球、マクロファージ、もしくは多形核細胞に対する内在性または外因性の走化因子の局所濃度を上昇させること、(7)治療対象の導管部分においてマクロファージを活性化すること、(8)導管において細胞外マトリックスを分解すること、および/または(9)導管壁においてプロテオグリカンまたは糖タンパク質を分解すること。
【0084】
本発明の併用治療方法は、しばしば相乗効果、すなわち、別々に使用した作用物質から予想される相加効果よりも大きい効果をもたらす。いくつかの場合では、本発明の併用治療方法は治療上の利益をもたらすが、その際、併用治療で利用する作用物質のどちらも単独では効果がない。例えば第1の作用物質が治療量以下の量で投与される場合、相加効果より大きな効果を得ることができる。他の場合では、本発明の併用治療方法は、各作用物質を単独で投与した場合の合計より大きな利益をもたらす。例えば、生体導管の外径および/または管径については、2種の作用物質の投与によって得られる相乗効果により、どちらかの作用物質の単独投与によって得られる拡張度の合計より少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、または少なくとも100%大きく外径および/または管径を拡張することができ、さらに、いくつかの特定の実施形態では、2種の作用物質の投与によって得られる相乗効果により、どちらかの作用物質の単独投与によって得られる拡張度の合計より最大10%、最大20%、最大30%、最大50%、最大75%、最大100%、最大200%、または最大400%大きく外径および/または管径を拡張することができる。
【0085】
本方法では、第1の作用物質および第2の作用物質を同時的にまたは連続的に投与することができる。本明細書では、作用物質が同じ日に、例えば、同時にまたは1、2、3、4、5、6、7もしくは8時間ずらして患者に投与される場合、それらは同時的に投与されるとする。これとは対照的に、作用物質が別々の日に、例えば、第1の作用物質および第2の作用物質が1日、2日、もしくは3日間の間隔をおいて患者に投与され得る場合、それらは連続的に投与されるとする。
【0086】
4.6. 伸展性不一致の治療または予防
本発明の別の態様では、外科的吻合により連結された動脈または静脈の壁内部での内膜過形成の増大を減退させることを記述する。この抑制は、治療部分の細胞外マトリックスを部分的に分解することにより血管の伸展性が失われ、その結果、吻合により連結された血管の伸展性特性の不一致が低減されることによって起こる。分解されるマトリックス成分には、それだけには限らないが、エラスチン、コラーゲン、プロテオグリカン、および糖タンパク質が含まれる。マトリックス分解は、外因性酵素を適用することにより、あるいは内在性酵素の局所的合成および/または放出を刺激する作用物質を適用することにより実現することができる。
【0087】
4.7. 拡張した血管のさらなる拡張を抑制する方法
本発明の最後の態様は、動脈瘤によって拡張した動脈径の拡大を遅らせるために、PAR受容体およびシグナル変換経路を遮断するものである。PAR拮抗物質の投与により、(例えば、トロンビン、プラスミン、および因子XaによるPAR−1、PAR−2、PAR−3、およびPAR−4の活性化を含めて)血管壁中に通常存在する細胞のPAR活性化を遮断することができる。投与される作用物質は、モノクローナル抗体、ペプチド、ペプチドミメティック化合物、または低分子(化合物)から選択することが好ましい。あるいは、酸化窒素シンターゼ阻害物質、PDGF受容体拮抗物質、TNF−α受容体拮抗物質、bFGF受容体拮抗物質などPARシグナル変換経路の阻害物質、またはMAPKキナーゼ阻害物質も投与することができる。このような作用物質は、経口的にまたは静脈内注射もしくは筋肉内注射により投与されることが好ましい。このPAR受容体の遮断により、動脈瘤壁に存在する慢性の炎症を鎮め、コラーゲンの分解を減退させ、血管平滑筋細胞の死滅を減らし、血管の拡張を遅らせまたは止めることができる。
【0088】
4.8. 生体導管壁に作用物質を送達させるための製剤
本発明の別の態様では、治療用または予防用の作用物質の壁中への送達を容易にするために、プロテオグリカンを分解する作用物質を導管壁に投与することにより、生体導管の疾患を治療または予防する方法を提供する。
【0089】
プロテオグリカンの例には、それだけには限らないが、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン硫酸、パールカン、バーシカン、シンデカン、およびセルグリシンが含まれる。投与される作用物質は、トリプシン、キモトリプシン、およびプラスミンから選択することが好ましい。
【0090】
本発明の別の態様では、エラスチンの分解を容易にするためにプロテオグリカンおよび糖タンパク質を分解する作用物質を導管壁に投与することにより、生体導管の疾患を治療または予防する方法を提供する。糖タンパク質の例には、フィブリリン−1、フィブリリン−2、ラミニン、およびフィブロネクチンが含まれる。プロテオグリカンの例は先に挙げてある。
【0091】
投与される作用物質は、トリプシン、キモトリプシン、プラスミン、およびマトリックスメタロプロテイナーゼとして知られているプロテアーゼファミリーの全メンバーから選択することが好ましい。
【0092】
4.9. 有効用量
本発明は、一般に、生体導管の疾患を治療または予防するための作用物質を非経口的に、好ましくは局所的に投与するという利益を提供する。
【0093】
いくつかの実施形態では、非経口投与の代わりに、あるいは併用治療法を利用する場合は非経口投与に加えて、生体導管の疾患を治療または予防するための作用物質の経口投与を使用することができる。
【0094】
本発明の方法を実施する際に利用する作用物質の毒性および治療効力を、細胞培養物または実験動物における標準の製薬上の手順、例えば、LD50(母集団の50%が死に至る用量)およびED50(母集団の50%で治療が有効な用量)を判定するための手順によって、決定することができる。毒性作用のある用量と治療効果のある用量の比が治療指数であり、比LD50/ED50として表すことができる。ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために、このような情報を使うことができる。
【0095】
本発明の方法を実施するのに適する有効用量を明らかにするための標準の方法に加えて、例えば相乗的な併用治療のための有効用量を明らかにする例示的な方法を、以下のセクション5に記載する。
【0096】
4.10. 製剤および投与方法
本発明は、生体導管の疾患を予防または治療するための薬剤組成物およびそれを使用する方法に関する。このような薬剤組成物は、1種または複数の生理的に許容される担体または賦形剤を使用する従来の方法で調製することができる。
【0097】
1種または複数の作用物質を用いた併用治療を含む本発明の実施形態では、この1種または複数の作用物質を、最も好ましくは生体導管の予防疾患もしくは治療疾患を治療または予防するのに有効な量で、1つの薬剤組成物に配合することができる。代替実施形態では、この1種または複数の作用物質を異なる薬剤組成物に配合することができる。
【0098】
本発明の方法を実施するのに有用な1種または複数の作用物質(例えば、(1)エラスターゼ、(2)コラゲナーゼ、(3)生体導管に投与すると、1種または複数の内在性エラスターゼまたはコラゲナーゼの局所濃度を上昇させる作用物質、(4)生体導管に投与すると、局所的な炎症を誘導する作用物質、(5)生体導管に投与すると、マイクロファイバーを分解する作用物質、(6)生体導管に投与すると、単球、マクロファージ、または多形核細胞に対する内在性または外因性の走化因子の局所濃度を上昇させる作用物質、(7)マクロファージを活性化する作用物質、(8)生体導管に投与すると、細胞外マトリックスを分解する作用物質、ならびに/あるいは(9)生体導管に投与すると、プロテオグリカンまたは糖タンパク質を分解する作用物質のうちの1種または複数)を含む本発明の組成物において、少なくとも1種または複数の作用物質は、本発明の組成物に配合される前に医薬品グレードまで精製されていることが最も好ましい。いくつかの特定の実施形態では、そのような配合をされる前の少なくとも1種または複数の作用物質の純度は、本発明の方法を実施するのに適する他のどの作用物質の酵素活性も検出できないような純度である。したがって、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本発明の方法により投与される組成物を、第1の精製酵素、例えばエラスターゼと第2の精製酵素、例えばトリプシンとを組み合わせることによって調製する。
【0099】
本発明の方法で利用される作用物質は、通常、非経口的に、しばしば治療対象の生体導管部分に直接投与される。非経口投与用の製剤を、1回使い切りの形、例えばアンプルに入れて、または複数回投与用の容器に入れて、保存剤を加えて提供することができる。組成物は、油性もしくは水性媒体中の懸濁剤、液剤または乳剤などの形をとることができ、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤などの配合用薬剤を含むことができる。あるいは、有効成分は、使用前に適切な媒体、例えば滅菌したパイロジェンフリー水に溶解される散剤の形とすることができる。
【0100】
例えばPAR拮抗物質を投与するために経口投与が望ましい場合、薬剤組成物は、結合剤(例えばアルファ化コーンスターチ、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増量剤(例えばラクトース、微結晶性セルロース、またはリン酸水素カルシウム)、滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ)、崩壊剤(例えばポテトスターチまたはグリコール酸スターチナトリウム)、あるいは湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)など製薬上許容される賦形剤を用いて従来の手段で調製された、例えば錠剤またはカプセル剤の形をとることができる。錠剤は、当技術分野で公知の手段により被覆することができる。経口投与用の液状製剤は、例えば、液剤、シロップ剤、または懸濁剤の形をとることができ、あるいは、使用前に水または他の適切な媒体に溶解される乾燥製品として提供され得る。このような液状製剤は、懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素添加された食用脂肪)、乳化剤(例えばレシチンまたはアラビアゴム)、非水性媒体(例えば扁桃油、油性エステル、エチルアルコール、または植物精油)、保存剤(例えばメチルもしくはプロピル‐p‐ヒドロキシベンゾエート、またはソルビン酸)など製薬上許容される添加剤を用いた従来の手段によって調製することができる。製剤は、緩衝塩、矯味剤、着色剤、および甘味剤も適宜含むことができる。
【0101】
有効な作用物質を制御放出するために、経口投与用の製剤を適切に調製することができる。
【0102】
本発明の作用物質を、心血管系の送達用として当業者に既知の任意の器具、例えば、シリンジ、薬物送達用カテーテル、シートやミクロスフェア調製物など植込み型の薬物送達用ポリマー、植込み型の静脈カテーテル、静脈ポート、トンネル型静脈カテーテル、持続型の注入ラインもしくは注入ポート、またはポリマー被覆した血管ステント、好ましくは自己拡張型のステントによって、治療対象の生体導管の所望の部分に投与することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、所望の部分への投与を、超音波、CT、X線透視による誘導、MRI、または内視鏡による誘導によって誘導することができる。
【0104】
本発明のいくつかの態様では、生体導管への作用物質の投与は、治療対象の生体導管部分の極めて近くに送達器具を配置することを含む。いくつかの実施形態では、送達器具によって作用物質を送達している間、送達器具の一部を生体導管壁に挿入しておくことができる。いくつかの実施形態では、作用物質を生体導管の圧迫されている部分に送達する間、生体導管の管腔に圧力を加えることができる。いくつかの実施形態では、機械的作用によって生体導管の管腔に圧力を加える。いくつかの実施形態では、バルーンカテーテルを用いて生体導管の管腔に圧力を加える。いくつかの実施形態では、同一の器具により作用物質を投与し、加圧を行う。いくつかの実施形態では、生体導管を外科的に露出させ、in vivoで作用物質を管腔に送り込みまたは生体導管の外表面に塗布する。管腔内送達を伴う実施形態では、作用物質が内皮表面により長い間接触できるようにし、かつ、血清により作用物質が阻害されるのを防止するために、血管を流れる血流を鉗子によって止めてよい。いくつかの実施形態では、生体導管を外科的に取り出し、in vitroで作用物質を導管の管腔表面および/または外表面に送達させる。
【0105】
本発明の他の態様では、生体導管への作用物質の投与は、治療対象の血管内にステントとして留置されるポリマー配合物、鉗子、治療対象の血管の上もしくは周りのラップ、または、治療対象の血管の中、周り、もしくは近くでの他の器具の使用を含む。
【0106】
本発明のさらに他の態様では、側副動脈を含めて、ある組織領域の動脈および/または静脈を拡張させるために、その組織領域に経皮的に作用物質を注入する。心臓血管の治療を目的とした実施形態では、作用物質を、経皮的に心膜腔に送り込むか、または、外科的に露出させた冠状血管に直接塗布する。
【0107】
4.11. キット
本発明は、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。本発明のキットは、1つまたは複数の容器中に、生体導管の疾患を治療または予防するのに有用なものとして本明細書に記載した作用物質のうちの1種または複数を含み、任意選択で、それらの送達を容易にする作用物質、例えば糖タンパク質もしくはプロテオグリカンを分解する作用物質も含む。
【0108】
本発明のキットは、本発明の方法を実施するのに有用な追加成分を任意選択で含んでよい。例えば、キットは、本発明の作用物質を調製するのに有用な薬剤担体を含んでよい。キットは、本発明の方法を実施するための器具または器具の構成要素、例えばシリンジまたはニードルも含んでもよい。これに加えてまたはその代わりに、本発明のキットは、本発明の1つまたは複数の方法の実施を記載した説明資料、または、医薬品もしくは生物学的製剤の製造、使用、もしくは販売を規制する行政機関により規定された書式の通知書を提供してもよい。この通知書は、ヒトに投与するために製造、使用、販売することをその機関に承認されていることを示すものである。
【実施例】
【0109】
5.実施例
5.1. 実施例1:単球、マクロファージ、および多形核細胞の導管壁への動員により、導管を大きく拡張させること
ある種の条件下では、動脈および静脈の管径を50%超拡張させることが望ましい。有益な転帰をもたらす、適切かつ制御されたレベルの炎症による拡張を生じる方法をここに記載する。この実施例は、活性化されたマクロファージの治療対象血管への動員がどのようにして制御されたレベルの拡張を起こすことができるかを記載する。
【0110】
血管径を拡大させる際のマクロファージ動員の効用を実証するために、最小4匹のウサギの外科的に露出させた総頸動脈(CCA)を、a)膵臓エラスターゼ・タイプI単独(20U/mL)、b)濃度0.1〜1000pg/mlの一連の単球の化学誘引物質タンパク質−1(MCP−1)および10ug/kg以下で静注の細菌性LPS(大腸菌(Escherichia coil)、シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)、セントルイス、ミズーリ州)(Parenti他、2003年、Am J Physiol Heart Circ Physiol, Dec 23 [印刷前電子出版];Brutzki、2001年、Hematol J. 2(3):188-195)、c)膵臓エラスターゼ・タイプI(20U/mL)と(前述の)濃度0.1〜1000pg/mlのMCP−1および細菌性LPSとの組合せ、ならびにd)不活性な対照物質(緩衝液または生理食塩水)のいずれかに暴露させる。処置の前、間、および直後にデジタルカメラを使用して動脈を測定する。処置28日後に、右大腿部からのアプローチによる大動脈中でのカテーテルを用いた血管造影法により動脈径を判定する。続いて動脈の切片を切り出し、マウスの抗ウサギマクロファージAb−5、クローンRAM11(ラボビジョン社(Lab Vision)、フリーモント、カリフォルニア州)で染色して、得られたマクロファージの浸潤の程度を定量する(Tambiah他、2001年、Br J Surg. 88(7)935-940)。次に、管径とマクロファージの浸潤データの双方を検討して、動脈径を拡大させるためのMCP−1の最適濃度を特定する。次に、最小4匹の動物の外科的に露出させたCCAを、a)膵臓エラスターゼ・タイプI単独、b)最適濃度の単球の化学誘引物質タンパク質−1(MCP−1)および10ug/kg以下で静注の細菌性LPS、c)膵臓エラスターゼ・タイプIと最適濃度のMCP−1および10ug/kg以下で静注の細菌性LPSとの組合せ、ならびにd)不活性な対照物質(緩衝液または食塩水)のいずれかに暴露させる。処置28日後に、右大腿部からのアプローチによる大動脈中でのカテーテルを用いた血管造影法により動脈径を判定する。膵臓エラスターゼ・タイプIと、実験で決定した最適濃度のMCP−1およびLPSとの組合せにより、膵臓エラスターゼ・タイプI単独の場合に観察される拡大を上回る動脈管径の拡大がもたらされる。
【0111】
AVグラフト流出静脈を膵臓エラスターゼ・タイプIおよびMCP−1を用いて処置することの有益な効果も実証できている。AVグラフトを、グラフト材料の4mmPTFEを用いブタの頸動脈および内頸静脈を使用して構築する。処置1回当たり最小4匹の動物を用いて、a)膵臓エラスターゼ・タイプI単独、b)最適濃度の単球の化学誘引物質タンパク質−1(MCP−1)および10ug/kg以下で静注の細菌性LPS、c)膵臓エラスターゼ・タイプIと最適濃度のMCP−1および10ug/kg以下で静注の細菌性LPSとの組合せ、ならびに)不活性な対照物質(緩衝液または食塩水)のいずれかで流出静脈を処理する。デジタルカメラを使用して、処置の前、間、および直後の処置した静脈の高解像度のデジタル写真を作成する。標準と比較して流出静脈の3箇所で測定を行い、これらの測定値を平均する。切開部を閉じ、動物を回復させる。28日後に血管造影法で追跡調査を実施し、血管を摘出する。続いて、流出静脈の切片を切り出し、マウスの抗マクロファージモノクローナル抗体、クローンMAC387(アブカム社(Abcam Ltd)、ケンブリッジ、英国)で染色して、得られたマクロファージの浸潤の程度を定量する(Tambiah他、2001年、Br. J. Surg. 88(7):935-40;Namiki他、2002年、Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 22(1): 115-20;Flavell他、1987年、J. Histochem. Cytochem.35:1217-26)。処置した流出静脈の管径、壁の厚さ、および内膜過形成も測定する。
【0112】
5.2. 実施例2:トリプシンまたはプラスミンによるPAR受容体の活性化を介する、膵臓エラスターゼ・タイプIで処理した導管における有益な炎症応答の誘導
ある種の条件下では、動脈および静脈の管径を50%超拡張させることが望ましい。有益な転帰をもたらす、適切かつ制御されたレベルの炎症による拡張を生じる方法をここに記載する。この実施例は、PAR受容体経路の活性化がどのようにして治療対象の動脈および静脈の制御されたレベルの拡張を生じることができるかを記載する。
【0113】
この実施例は、PAR受容体の活性化物質が、所望の効果を発揮するためには注意深く制御された条件およびレベルで送達されなければならないことを実証するものである。この場合、ウサギの総頸動脈を外科的に露出させ、a)0.9mg/mLブタ膵臓エラスターゼ・タイプI(エラスチン・プロダクト社(Elastin Products Co.)、オーエンズビル(Owensville),ミズーリ州)、b)0.9mg/mLブタ膵臓エラスターゼ・タイプI+0.9mg/mLキモトリプシン、c)0.9mg/mLブタ膵臓エラスターゼ・タイプI+0.9mg/mLトリプシン、または、d)生理食塩水で30分間処理した。処置の前、間、および直後にデジタルカメラを使用して測定を行った。切開部を閉じ、動物を回復させた。42日後に血管造影法で追跡調査を実施し、血管を摘出した。ブタ膵臓エラスターゼ・タイプI単独で処理した血管において、動脈径の有意な拡大が観察される。トリプシンまたはキモトリプシンをこれらのレベルで追加しても、相乗的な拡大は観察されない。この例で適用する約38uMのトリプシン濃度は、PAR−2受容体がアフリカツメガエル(Xenopus)の卵母細胞で発現されるときに最大値の半分の応答を誘起するのに必要とされる用量1nMの約38000倍であるため、このことは驚くべきことではない(Nystedt他、1994年、Proc Natl Acad Sci USA 91: 9208)。過度のトリプシンは刺激応答を支援しないという仮説は、過度のトリプシンはPAR−1受容体を不活性化することができるという知見とも整合性がある(Nakayama他、2003年、Br J Pharmacol. 138 (1) 121-130)。キモトリプシンおよび膵臓エラスターゼ・タイプIがPAR−1を不活性化することができることも示唆されている(AltroggeおよびMonard、2000年、Anal Biochem、277 (1) 33-45)。これらの結果は、所望の応答を得るために使用されるプロテアーゼのレベルおよびタイプの双方を注意深く調整しなければならないことを示している。血清の阻害物質がPAR−活性化作用物質を不活性化するのを防ぎ、PAR−活性化作用物質が血管内皮上に位置するPARを切断するのに十分な時間を与えるために、治療対象の血管を流れる血流を止めることが望ましいこともある。最近の研究により、シグマケミカル社のタイプIブタ膵臓エラスターゼがウサギの頸動脈では炎症を誘発しないがマウスの腹大動脈では炎症を誘発することが示されたため、マウスの腹大動脈の処置など別の動物モデルの使用が望ましいことがある。
【表1】

【表2】

【0114】
5.3. 実施例3:PAR受容体の活性化を介する膵臓エラスターゼ・タイプIで処理した導管における有益な炎症応答の誘導のための条件を特定する手順
膵臓エラスターゼ・タイプIとトリプシンまたはプラスミンとの相乗作用をもたらす適切な条件を特定するために、マウスの腹大動脈を外科的に露出させ、外科用鉗子を治療対象部位に置いてその部位を流れる血流を止める。次に、処置1回当たり最小4匹の動物を用いて、固定した部分を、a)20U/mLのブタエラスターゼ・タイプI、b)20U/mLのブタエラスターゼ・タイプI+濃度1nM〜1uMのトリプシン(ウシ膵臓、シグマケミカル社、セントルイス、ミズーリ州)または濃度0.2〜5U/mLのプラスミン(シグマケミカル社、セントルイス、ミズーリ州)、あるいは、c)生理食塩水で30分間処理する。デジタルカメラを使用して、処置の前、間、および直後に測定を行う。切開部を閉じ、動物を回復させる。28日後に、腹大動脈をもう一度露出させ、血管径を測定し、血管を摘出する。
【0115】
AVグラフトの処置において膵臓エラスターゼ・タイプIとトリプシンまたはプラスミンとを最適に適用することの有益な効果も実証することができる。AVグラフトを、グラフト材料の4mmPTFEを用いブタの頸動脈および内頸静脈を使用して構築する。次に、処置1回当たり最小4匹の動物を用いて、a)20U/mLの膵臓エラスターゼ・タイプI、b)20U/mLの膵臓エラスターゼ・タイプI+濃度1nM〜1uMのトリプシンまたはプラスミン、c)濃度1nM〜1uMのトリプシン単独またはプラスミン単独、あるいは、d)生理食塩水で30分間処理する。デジタルカメラを使用して、処置の前、間、および直後の処置した血管の高解像度のデジタル写真を作成する。フォトショップ(Photoshop)を用いて流出静脈の3箇所で測定を行い、これらの測定値を平均する。切開部を閉じ、動物を回復させる。28日後に血管造影法で追跡調査を実施し、血管を摘出する。続いて、流出静脈の切片を切り出し、マウスの抗マクロファージモノクローナル抗体、クローンMAC387(アブカム社(Abcam Ltd)、ケンブリッジ、英国)で染色して、得られたマクロファージの浸潤の程度を定量する(Tambiah他、2001年、Br. J. Surg. 88 (7): 935-40;Namiki他、2002年、Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 22(1): 115-20;Flavell他、1987年、J. Histochem. Cytochem.35:1217-26)。処置した流出静脈の管径、壁の厚さ、および内膜過形成も測定する。
【0116】
5.4. 実施例4:膵臓エラスターゼ・タイプI、コラゲナーゼ、および他の高分子の導管壁への送達を促進するためのプロテオグリカンの分解
ある種の条件下では、エラスチンの除去およびそれに続く血管拡張の速度は、導管を被覆するエラスチンを取り囲み保護しているプロテオグリカンを分解するトリプシンやキモトリプシンなど他のプロテアーゼの追加により、大幅にかつ相乗的に速くなる。外科的環境では、外科的に切開した部位の大きな露出は望ましくないため、急速に血管が拡張することは危険となることがある。
【0117】
ブタの大腿動脈で実施した実験により、エラスターゼ単独では、望ましい血管拡張効果を発揮するために長い時間が必要となる場合があることが実証されている。ブタの浅大腿動脈の両側を外科的に露出させ、血管痙攣を誘導させた。予備実験では、明らかな血管拡張が起こるまで、100U/mLの高度に精製されたブタ膵臓エラスターゼ・タイプI(PPE;エラスチン・プロダクト社(Elastin Products Co.)、オーエンズビル(Owensville),ミズーリ州)で血管を処理した。次に、4本の血管を60分間(100U/mL)で処理した。左頸動脈から入れて末梢大動脈に挿入したカテーテルを用いて、外科的露出の前およびPPE処置の後に血管造影を実施した。
【表3】

【0118】
しかし、ブタの動脈を露出させ、エラスターゼとトリプシンやキモトリプシンなどプロテオグリカンを分解する酵素との組合せに暴露させると、同程度の血管拡張が、有意に短い暴露時間で得られる。例えば、ブタの浅大腿動脈の両側を外科的に露出させ、a)PPE(100U/mL)単独、b)PPE(100U/mL)と0.1〜1.0mg/mlのトリプシンとの組合せ、c)1.0mg/mlのトリプシン、あるいはd)生理食塩水または他の不活性緩衝液で、最大60分処理する。デジタルカメラを使用して、処置前、処置中の10分毎、および処置の直後に測定を実施し、動脈の外径を記録する。緩衝液処理およびトリプシン単独の処理では、管径の有意な拡大は生じない。エラスターゼ単独の場合は、暴露の60分後に管径の実質的な拡大が生じるが、エラスターゼとトリプシンを共に用いた処理では、60分より有意に短い暴露時間で同等の管径の拡大が生じる。
【0119】
5.5. 実施例5:動脈瘤の拡張を抑制するためのPAR活性化阻害物質の使用
動脈瘤を引き起こす細胞外マトリックを分解するプロテアーゼの放出を起こすのに壁在血栓が関与していることについての実質的な証拠はあるが(Fontaine他、2002年、Am J Pathol.、161(5) 1701-1710)、PAR受容体の活性化と動脈瘤の誘導との直接的な関連づけはされていない。PAR受容体を、動脈瘤による拡張を薬理学的手法で抑制するために利用可能な標的として確立するために、PAR−1および/またはPAR−2を遺伝的に欠損したトランスジェニックマウスを、動脈瘤を引き起こす作用物質を用いて検証することができる(Damiano他、1999年、J Pharmacol Exp Ther、228、671-678)。PAR−1−/−マウスとPAR−2−/−マウスの第1回目の交配により、PAR−1とPAR−2のどちらも欠損したマウスを得ることができる。ヘテロ接合性のF子孫(PAR−1+/−PAR−2+/−)をPCR分析により同定し(Wang他、2001年、Am J Pathol.、159、1455-1464)、交配させる。ホモ接合性のF子孫(PAR−1−/−PAR−2−/−)をPCR分析により同定し、以下の分析にかける。簡単に言うと、PARが欠損したマウスおよび対照の正常なマウスの腎臓下部の動脈切片を、トリプシン、キモトリプシン、他のプロテアーゼ、および非蛋白性不純物を含むエラスターゼ調製物(ブタ膵臓エラスターゼ・タイプI、 シグマケミカル社、セントルイス、ミズーリ州)で処理して腹大動脈瘤の形成を誘導する(Anidjar他、1990年、 Circulation、82(3)973-981)。1ヶ月後、血管拡張および血管壁の厚化の程度を、まず初めに、外科的に露出させた後写真により測定し、次いで、影響を受けた領域の加圧灌流により固定したパラフィン包埋切片の組織分析により判定する(Wang他、2001年、Am J Pathol.、159、1455-1464)。これらの分析から、PAR−1またはPAR−2、あるいはPAR−1およびPAR−2の双方を欠損したマウスの示す動脈瘤の拡張のレベルが低いことが実証されている。この結果から、PARの機能の薬理学的遮断も、動脈瘤形成を抑制するのに使用できるということになる。
【0120】
動脈瘤形成を抑制するためのPARの様々な薬理学的阻害物質を直接試験するために、PAR−1および/またはPAR−2を阻害することが知られている作用物質(酵素サーモリシンなど)を野生型マウスの腎臓下部の動脈部分に注入し、続いてトリプシン、キモトリプシン、他のプロテアーゼ、および非蛋白性不純物を含むエラスターゼ調製物(ブタ膵臓エラスターゼ・タイプI、 シグマケミカル社、セントルイス、ミズーリ州)を注入して腹大動脈瘤の形成を誘導する(Anidjar他、1990年、Circulation、82(3)973-981)。1ヶ月後、血管拡張および血管壁の厚化の程度を、まず初めに、外科的に露出させた後写真により測定し、次いで、影響を受けた部位の加圧灌流により固定したパラフィン包埋切片の組織分析により判定する(Wang他、2001年、Am J Pathol.、159、1455-1464)。これらの分析から、PAR−1および/またはPAR−2の阻害物質で前処理したマウスの示す動脈瘤の拡張のレベルが、ブタ膵臓エラスターゼ・タイプ1(シグマケミカル社、セントルイス、ミズーリ州)のみで処理されたマウスと比べて低いことが実証されている。
【0121】
6. 特定の実施形態、参照文献の引用
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際には、前述の記載および添付の図から、本明細書に記載の形態に加えて本発明の様々な改変形態が当業者には明らかになるであろう。このような改変形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものとする。
【0122】
特許出願、特許、および科学論文を含めて、様々な参考文献を本明細書に引用している。各参考文献の開示内容は、その全体を参照により本明細書に組み込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体導管の少なくとも一部分の外径を拡大させる方法であって、
それを必要とするヒト被験者の前記部分に、非経口的経路で、1種または複数の内在性エラスターゼまたはコラゲナーゼの局所濃度を上昇させる作用物質を含む組成物を前記部分の外径を拡大させるのに有効な量で投与するステップを含み、前記作用物質がエラスターゼでもコラゲナーゼでもなく、前記拡大が、その実現後少なくとも24時間の間持続され、
それにより、生体導管の少なくとも一部分の外径が拡大される方法。
【請求項2】
生体導管の少なくとも一部分の外径を拡大させる方法であって、
それを必要とするヒト被験者の前記部分に、非経口的経路で、(a)エラスターゼを含む第1の組成物、ならびに(b)1種または複数の内在性エラスターゼまたはコラゲナーゼの局所濃度を上昇させる作用物質を含む第2の組成物を投与するステップを含み、前記作用物質がエラスターゼでもコラゲナーゼでもなく、前記第1および第2の組成物が、前記部分の外径を拡大させるのに有効な量で投与され、前記拡大が、その実現後少なくとも24時間の間持続され、
それにより、生体導管の少なくとも一部分の外径が拡大される方法。
【請求項3】
前記作用物質が1種または複数の内在性エラスターゼまたはコラゲナーゼの局所的な合成または放出を刺激する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記作用物質が1種または複数の内在性エラスターゼまたはコラゲナーゼの局所的な合成または放出を刺激する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
生体導管の少なくとも一部分の外径を拡大させる方法であって、
それを必要とするヒト被験者の前記部分に、非経口的経路で、前記部分に局所的な炎症を誘導する作用物質を含む組成物を前記部分の外径を拡大させるのに有効な量で投与するステップを含み、前記作用物質がエラスターゼでもコラゲナーゼでもなく、前記拡大が、その実現後少なくとも24時間の間持続され、
それにより、生体導管の少なくとも一部分の外径が拡大される方法。
【請求項6】
生体導管の少なくとも一部分の外径を拡大させる方法であって、
それを必要とするヒト被験者の前記部分に、非経口的経路で、(a)エラスターゼを含む第1の組成物、ならびに(b)前記部分に局所的な炎症を誘導する作用物質を含む第2の組成物を投与するステップを含み、前記作用物質がエラスターゼでもコラゲナーゼでもなく、前記第1および第2の組成物が、前記部分の外径を拡大させるのに有効な量で投与され、前記拡大が、その実現後少なくとも24時間の間持続され、
それにより、生体導管の少なくとも一部分の外径が拡大される方法。
【請求項7】
前記生体導管が動脈もしくは静脈、または動脈血管グラフトもしくは静脈血管グラフトである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法
【請求項8】
前記作用物質が、前記部分の壁の単球、マクロファージ、または多形核細胞の数を増加させる、請求項5または6に記載の方法。
【請求項9】
前記作用物質が、単球、マクロファージ、または多形核細胞に対する1種または複数の走化因子の合成または放出を刺激する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項10】
前記作用物質が、1種または複数のプロテイナーゼ活性化型受容体(PAR)を活性化することができる、請求項5または6に記載の方法。
【請求項11】
前記1種または複数のPARがPAR−1、PAR−2、PAR−3、またはPAR−4を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記作用物質が、1種または複数のPARの発現を誘導することができる、請求項5または6に記載の方法。
【請求項13】
前記作用物質が、トリプシン、トリプシンiv、メソトリプシン、肥満細胞トリプスターゼ、好中球プロテイナーゼ−1、組織因子、因子VIIa、因子Xa、トロンビン、プラスミン、カテプシンG、MCP−1、PAR−活性化ペプチド、PAR−活性化ペプチドミメティック、またはマトリックスメタロプロテイナーゼである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記作用物質が、腫瘍壊死因子−α、細菌性リポ多糖類、またはインターロイキン−1である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記生体導管が、動脈と静脈、動脈と静脈血管グラフト、動脈と人工グラフト、または静脈と人工グラフトの間の伸展性が不一致であるため、閉塞されまたは閉塞されやすい、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記伸展性不一致が、吻合により連結された動脈と静脈の間でみられる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記伸展性不一致が、吻合により連結された動脈と静脈血管グラフトの間でみられる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記伸展性不一致が、吻合により連結された動脈と人工グラフトの間でみられる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記伸展性不一致が、吻合により連結された静脈と人工グラフトの間でみられる、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記人工グラフトが、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)またはダクロンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記人工グラフトが、PTFEまたはダクロンを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が、動脈または静脈に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、静脈血管グラフトに投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、動脈または静脈、および動脈血管グラフトまたは静脈血管グラフトの双方に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記生体導管が閉塞されまたは閉塞されやすい、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記生体導管が、内膜過形成が原因で閉塞されまたは閉塞されやすい、請求25に記載の方法。
【請求項27】
前記作用物質が、標準のin vitroの走化性活性デュアルチャンバーアッセイで、単球、マクロファージ、または多形核細胞に対して、対照の0.1%ヒト血清アルブミン含有リン酸緩衝生理食塩水より少なくとも約10%大きな走化性活性を示す、請求項8に記載の方法。
【請求項28】
前記作用物質が、対照より少なくとも約50%大きな走化性活性を示す、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記作用物質が、単球走化性ペプチド−1、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子α、またはインターロイキンである、請求項8または9に記載の方法。
【請求項30】
前記作用物質が、単球、マクロファージ、または多形核細胞に対する1種または複数の接着分子の内皮細胞表面での発現を増大させる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項31】
前記作用物質が、1種または複数のICAM、VCAM、またはセレクチンの内皮細胞表面での発現を増大させる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項32】
前記1種または複数の走化因子が、単球走化性ペプチド−1、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子α、インターフェロンγ、ロイコトリエンB4、C5a、インターロイキン−1、またはインターロイキン−8を含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が前記生体導管に直接投与される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物がカテーテルによって投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物がヒト被験者の生体導管の外科的に露出された部分に投与される、請求33に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物がカテーテルによって投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が、生体導管の管腔に送達される、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記組成物が、生体導管の管腔に送達される、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物が、生体導管の外表面に塗布される、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記組成物が、生体導管の外表面に塗布される、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記組成物が、動脈もしくは静脈、または静脈血管グラフトの一部分に直接投与される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記組成物が、動脈もしくは静脈、または静脈血管グラフトの管腔に送達される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記組成物が、動脈もしくは静脈、または静脈血管グラフトの外表面に塗布される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記組成物が、前記生体導管を含む組織中に経皮的に投与される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記生体導管が、冠状動脈または冠状動脈に連結された静脈バイパスグラフトである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物が、心膜腔に経皮的に投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記生体導管に前記組成物を投与するのと同時に、生体導管の管腔に圧力を加えるステップをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記生体導管の管腔が機械的作用によって加圧される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記生体導管の管腔がバルーンカテーテルによって加圧される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
同一の器具により組成物の投与と加圧が行われる、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
生体導管の少なくとも一部分の外径を拡大させる方法であって、
それを必要とするヒト被験者の前記部分に、非経口的経路で、(a)エラスターゼを含む第1の組成物、ならびに(b)前記部分の壁でマイクロファイバーを分解する作用物質を含む第2の組成物を投与するステップを含み、前記第2の組成物が、前記マイクロファイバーを分解するのに有効な量で投与され、前記第1および第2の組成物が、前記部分の外径を拡大させるのに有効な量で投与され、前記拡大が、その実現後少なくとも24時間の間持続され、
それにより、生体導管の少なくとも一部分の外径が拡大される方法。
【請求項52】
前記作用物質が、前記マイクロファイバーの1種または複数のフィブリリン成分を分解する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記エラスターゼが、タイプIまたはタイプIIのエラスターゼである、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記エラスターゼが、膵臓エラスターゼ、マクロファージエラスターゼ、白血球エラスターゼ、またはマトリックスメタロプロテイナーゼである、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
生体導管の少なくとも一部分の外径を拡大させる方法であって、
それを必要とするヒト被験者の前記部分に、非経口的経路で、(a)単球、マクロファージ、または多形核細胞に対する1種または複数の走化因子を含む第1の組成物、ならびに(b)マクロファージ活性化作用物質である作用物質を含む第2の組成物を投与するステップを含み、前記第1の組成物および第2の組成物が、前記部分の外径を拡大させるのに有効な量で投与され、前記拡大が、その実現後少なくとも24時間の間持続され、
それにより、生体導管の少なくとも一部分の外径が拡大される方法。
【請求項56】
生体導管の少なくとも一部分の外径を拡大させる方法であって、
それを必要とするヒト被験者の前記部分に、非経口的経路で、(a)エラスターゼを含む第1の組成物、(b)単球、マクロファージ、または多形核細胞に対する1種または複数の走化因子を含む第2の組成物、ならびに(c)マクロファージ活性化作用物質である作用物質を含む第3の組成物を投与するステップを含み、前記第1、第2、および第3の組成物が、前記部分の外径を拡大させるのに有効な量で投与され、前記拡大が、その実現後少なくとも24時間の間持続され、
それにより、生体導管の少なくとも一部分の外径が拡大される方法。
【請求項57】
前記1種または複数の走化因子がエラスターゼでもコラゲナーゼでもない、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
前記マクロファージ活性化作用物質が細菌性リポ多糖類、チオグリコレート、またはCpG DNAである、請求項55または56に記載の方法。
【請求項59】
前記生体導管が、動脈もしくは静脈、または動脈血管グラフトもしくは静脈血管グラフトである、請求項51、55、または56に記載の方法。
【請求項60】
前記第1の組成物と第2の組成物が同一のものである、請求項51、55、または56に記載の方法。
【請求項61】
前記第1の組成物および第2の組成物が相乗作用する量で投与される、請求項51、55、または56に記載の方法。
【請求項62】
前記第1の組成物および第2の組成物が同時に投与される、請求項51、55、または56に記載の方法。
【請求項63】
前記第1の組成物が、前記第2の組成物より先に投与される、請求項51、55、または56に記載の方法。
【請求項64】
前記第2の組成物が、前記第1の組成物より先に投与される、請求項51、55、または56に記載の方法。
【請求項65】
前記生体導管が尿管、気管支、胆管、または膵管である、請求項1、5、51、55、または56に記載の方法。
【請求項66】
外径が5〜500%拡大される、請求項1、5、51、55、または56に記載の方法。
【請求項67】
外径が5〜25%、25〜50%、50〜100%、100〜200%、200〜400%、または400〜500%拡大される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
外径が10〜400%、25〜300%、または50〜200%拡大される、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
生体導管の治療において第1の作用物質の効力を増強させる方法であって、
それを必要とするヒト被験者の生体導管の少なくとも一部分に、非経口的経路で、(a)前記第1の作用物質を含む第1の組成物、ならびに(b)前記部分の壁において1種または複数の糖タンパク質またはプロテオグリカンを分解する第2の作用物質を含む第2の組成物を投与するステップであって、前記第2の組成物が前記第1の作用物質に対する前記壁の透過性を高めるのに有効な量で投与されるステップを含む方法。
【請求項70】
前記第1の作用物質がエラスターゼまたはコラゲナーゼであって、前記投与が前記部分の外径を拡大させるのに有効である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記第1の作用物質が抗再狭窄作用物質である、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記第1の作用物質が細胞の集団である、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
前記細胞が、心筋細胞、または心筋細胞に分化することができる幹細胞もしくは始原細胞である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記第1および第2の組成物が血管内カテーテルを介して前記部分の内側層または外膜層に経皮的に投与される、請求項69から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記生体導管が動脈もしくは静脈、または動脈血管グラフトもしくは静脈血管グラフトである、請求項69に記載の方法。
【請求項76】
前記第1の組成物と第2の組成物が同一のものである、請求項69に記載の方法。
【請求項77】
前記第1の組成物および第2の組成物が相乗作用する量で投与される、請求項69に記載の方法。
【請求項78】
前記第1の組成物および第2の組成物が同時に投与される、請求項69に記載の方法。
【請求項79】
前記第1の組成物が、前記第2の組成物より先に投与される、請求項69に記載の方法。
【請求項80】
前記第2の組成物が、前記第1の組成物より先に投与される、請求項69に記載の方法。
【請求項81】
生体導管の少なくとも一部分の拡張を抑制する方法であって、
それを必要とするヒト被験者の前記部分に、PAR拮抗物質を含む組成物を、前記生体導管の拡張を抑制するのに有効な量で投与するステップを含み、
それにより、前記生体導管の拡張が抑制される方法。
【請求項82】
前記PAR拮抗物質がモノクローナル抗体である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記PAR拮抗物質が、酸化窒素シンターゼ阻害物質、血小板由来成長因子受容体拮抗物質、腫瘍壊死因子−α受容体拮抗物質、塩基性線維芽細胞成長因子受容体拮抗物質、またはMAPキナーゼ阻害物質である、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記投与が経口投与、静脈内投与、または筋肉内投与である、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
吻合により連結された第1の血管と第2の血管の間の伸展性不一致を減らしまたは無くす方法であって、
それを必要とするヒト被験者の前記第1の血管または第2の血管の一部分に、非経口的経路で、1種または複数のエラスターゼまたはコラゲナーゼを含む組成物を、伸展性不一致を減らしまたは無くすのに有効な量で投与するステップを含み、
それにより、吻合により連結された第1の血管と第2の血管の間の伸展性不一致が減りまたは無くなる方法。
【請求項86】
生体導管の少なくとも一部分を拡張させる方法であって、
それを必要とするヒト被験者の前記部分に、非経口的経路で、1種または複数のエラスターゼまたはコラゲナーゼを含む組成物を、前記部分を拡張させるのに有効な量で投与するステップを含み、
それにより生体導管の少なくとも一部分が拡張される方法。

【公表番号】特表2007−525423(P2007−525423A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503777(P2006−503777)
【出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/005192
【国際公開番号】WO2004/073504
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(507139269)プロテオン セラピューティクス,インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】