説明

生体情報モニタ装置

【課題】表示された生体信号波形の信頼性をユーザに知らせること。
【解決手段】セントラルモニタ100において、無線受信部102は、テレメータ送信機110から無線送信された生体信号をアンテナ101により受信し、所定の信号処理を行う。制御部103は、受信された生体信号の受信信号強度を測定する。そして、制御部103は、受信された生体信号を示す波形121と、測定された受信信号強度を示す波形122とを、表示画面上又は記録用紙上に同期表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報モニタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セントラルモニタは、生体情報モニタ装置の一種であり、離れた場所にいる患者の生体信号を医用テレメータ送信機(以下、単に「テレメータ送信機」ともいう。)から受信して表示画面に表示する装置である(例えば特許文献1参照)。テレメータ送信機は、患者に携帯され、患者の生体信号を、無線信号に重畳して送信する。よって、テレメータ送信機が発する無線信号がセントラルモニタ側の受信機に到達する領域の範囲内であればどこからでも、患者の生体信号をテレメータ送信機からセントラルモニタに伝達することができる。
【0003】
一般に、セントラルモニタは、生体信号を受信すると、その生体信号が正常値か異常値かを判定し、異常値の場合にアラームを発する。例えば心電図の場合、セントラルモニタは、受信した心電波形を画面に表示しつつ、テンプレートマッチング等の解析手法により心電波形を解析し、解析の結果として不整脈が検出されたときにアラームを発する。
【特許文献1】特開2005−177342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のセントラルモニタにおいては、例えばノイズの影響等により、セントラルモニタの受信感度が低下することがある。この場合に、セントラルモニタが、受信した例えば心電波形に現れているノイズを不整脈と区別できないことがあり、これが誤アラームの原因となっている。このような見かけ上の波形異常が、患者自身の容態の変化に起因するものなのか、或いは受信環境の悪化に起因するものなのか、ユーザは、表示画面を見るだけで判断することができない。すなわち、ユーザは、表示された生体信号波形の信頼性を認識することができない。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、表示された生体信号波形の信頼性をユーザに知らせることができる生体情報モニタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の生体情報モニタ装置は、無線送信された生体信号を受信する受信手段と、受信された生体信号の信頼度を測定する測定手段と、受信された生体信号と測定された信頼度とを同期表示する表示手段と、を有する構成を採る。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表示された生体信号波形の信頼性をユーザに知らせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施の形態に係る生体情報モニタシステムの構成を示すブロック図である。
【0010】
図1の生体情報モニタシステムは、セントラルモニタ100及びテレメータ送信機110を有する。本発明の生体情報モニタ装置としてのセントラルモニタ100は、アンテナ101、無線受信部102、制御部103、ディスプレイ104、プリンタ105及び表示切替指示部106を有し、テレメータ送信機110は、生体信号取得部111、制御部112、無線送信部113及びアンテナ114を有する。
【0011】
テレメータ送信機110において、生体信号取得部111は、アンプ及びアナログディジタル(A/D)コンバータ等を含む信号処理回路を有し、例えば患者の体表面に装着された電極やセンサから連続的に入力される生体信号(心電図、SpO2等)に対し、増幅やA/D変換といった信号処理を施し、信号処理後の生体信号を制御部112に供給する。
【0012】
制御部112は、テレメータ送信機110における各種機能を制御するためのプログラムを記憶する記憶装置と、当該プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)を有する。制御部112は、生体信号取得部111から供給された生体信号を無線送信部113に供給する。上記記憶装置は、テレメータ送信機110に固有に割り当てられた無線チャネルの番号を示すチャネル情報も記憶する。
【0013】
無線送信部113は、ディジタルアナログ(D/A)コンバータ及びアップコンバータ等を含む信号処理回路を有し、制御部112から供給された生体信号に対しD/A変換や無線周波数帯域への周波数変換といった信号処理を施し、信号処理後の生体信号をアンテナ114から無線送信する。なお、周波数変換後の周波数は、制御部112において記憶されたチャネル情報に示された無線チャネルの番号に応じて固有に定められる。
【0014】
このようにして、患者から測定された生体信号がリアルタイムでセントラルモニタ100に伝送される。
【0015】
一方、セントラルモニタ100において、本発明の受信手段としての無線受信部102は、ダウンコンバータやA/Dコンバータ等を含む信号処理回路を有し、テレメータ送信機110から無線送信された生体信号をアンテナ101により受信し、受信した信号に対しベースバンドへの周波数変換やA/D変換といった信号処理を施し、信号処理後の生体信号を制御部103に供給する。なお、図1において、セントラルモニタ100は、1つのテレメータ送信機からの生体信号を受信するものとして記載されているが、通常は個々のテレメータ送信機に対し個別に無線チャネルが割り当てられているので、複数のテレメータ送信機からの生体信号を同時に受信することができる。
【0016】
本発明の測定手段及び表示手段としての制御部103は、セントラルモニタ100における各種機能を制御するためのプログラムを記憶する記憶装置と当該プログラムを実行するCPUとを有する。制御部103は、無線受信部102から供給された生体信号を上記記憶装置に記憶し、また、当該生体信号の解析を行う。
【0017】
また、制御部103は、供給された生体信号を示す生体信号波形及び当該生体信号の解析結果を、ディスプレイ104の画面上に表示する。また、制御部103は、無線受信部102により受信された生体信号の受信信号強度を測定し、測定された受信信号強度を上記記憶装置に記憶し、また、当該受信信号強度を上記生体信号波形に同期して表示する。同期表示の態様については後で詳細に説明する。なお、制御部103は、生体信号波形、生体信号解析結果及び受信信号強度を、プリンタ105により記録用紙上に印刷することにより表示することもできる。このとき、制御部103は、生体信号波形及び受信信号強度を互いに同期させることができる。このようにして、セントラルモニタ100は、生体信号波形に同期して受信信号強度をリアルタイムで表示することができる。
【0018】
また、制御部103は、生体信号及び受信信号強度を上記記憶装置から読み出し、これらと共に生体信号解析結果を表示画面上に或いは記録用紙上に表示することができる。よって、セントラルモニタ100は、過去の生体信号波形とその時の受信信号強度とを同期表示することができる。
【0019】
また、制御部103は、生体信号波形の表示を行うときに常時、受信信号強度の表示を行ってもよいし、表示切替指示部106から切替指示が与えられたときに限り、画面上或いは記録用紙上の表示態様を切り替えて、受信信号強度の表示を行ってもよい。表示態様の切替については、後で詳細に説明する。
【0020】
本発明の指示手段としての表示切替指示部106は、表示態様の切替を指示する信号である表示指示を生成して制御部103に供給する。
【0021】
表示切替指示部106から制御部103への表示指示の供給は、様々な条件で行うことができる。例えば、ユーザが任意のタイミングでマウスやキーボード等の入力部(図示せず)を操作し、これにより受信信号強度の表示要求が表示切替指示部106に入力された場合に、表示指示の供給を行うことができる。或いは、表示切替指示部106において受信信号強度を所定の閾値と比較し、受信信号強度がこの閾値を下回った場合に、表示指示の供給を行うことができる。或いは、制御部103における生体信号解析の結果、例えば心拍数の異常な上昇等のように生体信号が何らかの異常を示した場合に、表示指示の供給を行うことができる。
【0022】
次いで、本実施の形態に係る同期表示の態様について説明する。
【0023】
図2は、生体信号波形と受信信号強度との同期表示態様の一例を示す。図2において、心電波形121と、受信信号強度を示す受信信号強度波形122とが、上下に並べて描画されている。心電波形121において、一部の区間123には、見かけ上、VF(心室細動:Ventricular Tachycardia)のような波形が現れている。しかし、受信信号強度波形122においても、区間123には、受信信号強度の低下という変化が現れている。よって、ユーザは、この同期表示を見たとき、心電波形121に現れているVFのような波形は信頼性が低いと認識することができる。
【0024】
このように、生体信号波形と受信信号強度波形とを並べて描画することにより、生体信号波形において信頼性の低い部分を容易にユーザに知らせることができる。
【0025】
図3は、生体信号波形と受信信号強度との同期表示態様の他の例を示す。図3においては、描画される波形は、心電波形131のみであり、受信信号強度は、心電波形131の太さにより表現されている。心電波形131の一部の区間132には、図2に示す例と同様、見かけ上、VFのような波形が現れている。しかし、区間132においては、心電波形131の線が細く、つまり、受信信号強度の低下という変化が現れている。よって、ユーザは、この同期表示を見たとき、心電波形131に現れているVFのような波形は信頼性が低いと認識することができる。
【0026】
このように、受信信号強度に従って生体信号波形の線の太さを変化させることにより、生体信号波形において信頼性の低い部分を容易にユーザに知らせることができる。また、受信信号強度を波形を使って通知するものではないため、受信信号強度のために制御部103において1波形分の記憶領域を確保する必要がなく、よって、他の生体信号波形の表示を省かざるを得ない状況を回避することができる。
【0027】
なお、受信信号強度に従って、線の色或いは濃淡を変化させる場合も、線の太さを変化させる場合と同様の作用効果を実現することができる。なお、線の太さ、色、濃淡を受信信号強度に応じて変化させる場合には、必要に応じて別のアラームを補助的に出力することが好ましい。
【0028】
次いで、本実施の形態に係る表示態様の切替について説明する。
【0029】
図4(a)は、セントラルモニタ100のディスプレイ104における一般的な表示態様の一例として、6床2波形表示モードを示す。6床2波形表示モードの表示画面140では、6人の患者について、心電波形及びインピーダンス呼吸波形を同期表示したり、これらの波形の解析結果を表示したりすることができる。ここで、図示された1人の患者についての心電波形141及びインピーダンス呼吸波形142に注目すると、心電波形141においては、一部の区間にVFのように見える波形が現れている。また、インピーダンス呼吸波形142においても、同じ区間に、レベルが最大値と最小値とを激しく往復して変化するような乱れが現れている。この波形の乱れから、心電波形141の信頼性が必ずしも高くないことを認識することができるが、その原因が何であるかを客観的に判断することはできない。波形の乱れについては、図4(b)に示すように、インピーダンス呼吸波形143のレベルが最低値に固定されるような乱れもあり得る。この場合も、心電波形141の信頼性が必ずしも高くないことを認識することができるが、その原因が何であるかを客観的に判断することはできない。
【0030】
そこで、表示態様の切替の一例では、図5に示すように、心電波形151及びインピーダンス呼吸波形152を同期表示しつつ、受信信号強度が所定の閾値を下回った場合には、インピーダンス呼吸波形152における受信信号強度の低下した部分に代えて、受信信号強度波形153を描画する。これにより、生体信号波形において信頼性の低い部分を容易にユーザに知らせることができる。また、図4(a)(b)に示す波形の乱れのように実質的に意味をなさない波形の表示を省き、その代わりに表示する波形に、波形の信頼性という重要な情報を載せることができる。
【0031】
なお、図5に示すように、生体信号波形の一部を受信信号強度波形に置換する場合には、これらの波形を容易に区別し得るよう、線の色や太さを変えることが好ましい。
【0032】
表示態様の切替の他の例では、受信信号強度が所定の閾値を下回った場合に、表示画面の表示態様が、図4(a)に示すように、6床2波形表示モードの表示画面140のみを表示する態様から、図6に示すように、6床2波形表示モードの表示画面160と共に、受信信号強度が低下した患者についての波形等を表示するモードの表示画面161を表示する態様に、切り替えられる。
【0033】
表示画面160においては、1人の患者についての心電波形162において、VFのように見える形状が現れている。また、インピーダンス呼吸波形163においても、同じ区間に、波形の乱れが現れている。一方、表示画面161においては、同じ患者についての心電波形164、受信信号強度波形165及びインピーダンス呼吸波形166等が上下に並べて描画されている。心電波形164及びインピーダンス呼吸波形166は、表示画面160における心電波形162及びインピーダンス呼吸波形163と同じ生体信号に基づいて生成されたものであるため、同じ形状を有する。表示画面161においては、これらの波形の他に、受信信号強度波形165が描画されており、受信信号強度波形165においては、他の波形において異常な形状が現れている区間に、受信信号強度の低下が現れていることから、この区間における波形は信頼性が低いことを認識することができる。
【0034】
このように、本実施の形態によれば、生体信号の受信信号強度を生体信号波形に同期して表示するため、ユーザは、生体信号波形に何らかの異常が現れている場合に、その異常が受信信号強度の低下に起因するものであることを、表示画面を見るだけで容易に認識することができる。
【0035】
なお、本実施の形態においては、生体信号の信頼度の一例として受信信号強度を挙げたが、受信された生体信号から信号の受信品質に関する他の測定値を得ることができる場合は、その測定値を代用し又は併用してもよい。また、セントラルモニタ100における無線受信部102の受信感度を測定し得る場合は、その測定値を代用し又は併用してもよい。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成並びに画面に表示される内容及びその態様についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態に係る生体情報モニタシステムの構成を示すブロック図
【図2】本発明の一実施の形態に係る同期表示態様の一例を示す図
【図3】本発明の一実施の形態に係る同期表示態様の他の例を示す図
【図4】セントラルモニタの6床2波形表示モードを示す図
【図5】本発明の一実施の形態に係る表示態様の切替の一例を示す図
【図6】本発明の一実施の形態に係る表示態様の切替の他の例を示す図
【符号の説明】
【0038】
100 セントラルモニタ
101 アンテナ
102 無線受信部
103 制御部
104 ディスプレイ
105 プリンタ
106 表示切替指示部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線送信された生体信号を受信する受信手段と、
受信された生体信号の信頼度を測定する測定手段と、
受信された生体信号と測定された信頼度とを同期表示する表示手段と、
を有することを特徴とする生体情報モニタ装置。
【請求項2】
前記表示手段は、受信された生体信号を示す生体信号波形を描画すると共に、測定された信頼度を示す信頼度波形を前記生体信号波形に並べて描画する、
ことを特徴とする請求項1記載の生体情報モニタ装置。
【請求項3】
前記生体信号は、異なる種類の生体信号を含み、
前記信頼度の表示指示を前記表示手段に与える指示手段をさらに有し、
前記表示手段は、前記異なる種類の生体信号をそれぞれ示す複数の生体信号波形を並べて描画している間に、前記指示手段から前記表示指示があった場合には、前記複数の生体信号波形のうち1つの生体信号波形に代えて、前記信頼度波形を描画する、
ことを特徴とする請求項2記載の生体情報モニタ装置。
【請求項4】
前記表示手段は、受信された生体信号を示す生体信号波形を描画すると共に、測定された信頼度に従って、描画された生体信号波形の線の太さを変化させる、
ことを特徴とする請求項1記載の生体情報モニタ装置。
【請求項5】
前記表示手段は、受信された生体信号を示す生体信号波形を描画すると共に、測定された信頼度に従って、描画された生体信号波形の線の濃淡を変化させる、
ことを特徴とする請求項1記載の生体情報モニタ装置。
【請求項6】
前記表示手段は、受信された生体信号を示す生体信号波形を描画すると共に、測定された信頼度に従って、描画された生体信号波形の線の色を変化させる、
ことを特徴とする請求項1記載の生体情報モニタ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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