生体情報入力装置,生体情報処理方法および生体情報処理プログラム
【課題】 生体情報の入力に際して生体のスウィープ方向にかかわらず使用できるようにする。
【解決手段】 相対的に移動している生体部位を読み取り、この生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取手段10と、この生体情報採取手段10によって採取された生体情報に基づいて生体情報採取手段10に対する生体部位の移動方向を検出する移動方向検出手段11と、この移動方向検出手段11によって検出された移動方向を用いて、生体情報採取手段10によって採取された生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換手段14とを備えて構成する。
【解決手段】 相対的に移動している生体部位を読み取り、この生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取手段10と、この生体情報採取手段10によって採取された生体情報に基づいて生体情報採取手段10に対する生体部位の移動方向を検出する移動方向検出手段11と、この移動方向検出手段11によって検出された移動方向を用いて、生体情報採取手段10によって採取された生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換手段14とを備えて構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証を行なうために入力される生体情報を処理する技術に関し、特に、生体情報を部分的に且つ連続的に採取する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な生体認証装置においては、予め生体情報から生体データ(登録データ)を作成して登録(記録)しておくとともに、照合を行なう生体情報から生体データ(照合データ)を作成し、この照合データと登録データとを照合するようになっている。
生体認証には、認証に用いられる生体情報には万人不同であり且つ終生不変のもの(例えば、指紋,掌紋,指静脈,手のひら静脈等)を用いるようになっているが、様々な要因により認証に失敗するケースが生じてしまうという課題がある。
【0003】
そして、この認証の失敗は大きく2つの要因で分類することができる。第1には、登録データおよび照合データがともに同一人のものであるにも関わらず誤って他人と判定するケースであり、本人排除と呼ばれるものである。第2には、登録データと照合データとが互いに他人のものであるにも関わらず、誤って同一人のものであると判定するケースであり、他人受入と呼ばれるものである。
【0004】
また、生体情報の照合には従来から種々の手法が実用化されているが、いくつかの方式では、生体情報の回転方向ずれが原因で認証に失敗することがある。すなわち、生体情報の入力装置と生体との間で回転方向に関する自由度が大きい場合に、回転ずれが照合方式の許容範囲を超えて本人排除率が増加する。又、回転方向に関する自由度を許容するために,照合データあるいは登録データを回転させながら照合を繰り返し行なう手法も知られているが、照合データもしくは登録データを回転させることにより、偶然に他人同士の照合データと登録データとが一致することがあり、これにより他人受入率が増加する。
【0005】
さて、生体情報の入力装置としてスウィープ型指紋センサが知られている。このスウィープ型指紋センサは、指の長さよりも十分に短く、小面積の矩形採取面(センサ面/撮像面)を有している。そして、指を採取面に対して移動させるか、又は、採取面(指紋センサ)を指に対して移動させるかしながら、指紋センサによって、指の指紋について複数の部分画像を連続的に採取し、採取された複数の部分画像から、指の指紋画像の全体を再構成することが行なわれている。このように再構成された指紋画像から、特徴点(隆線の分岐点や端点)の情報を抽出・生成し、その情報に基づいて上記個人認証が行なわれることになる。なお、上述のような、採取面に対する指の相対的移動のことを「スウィープ(sweep)またはスライド(slide)」と呼ぶ。
【0006】
このようなスウィープ型指紋センサをそなえた指紋読取装置は、例えば、下記特許文献1,2に開示されている。又、スウィープ型指紋センサから検出した平行移動量と回転移動量を用いて指紋画像を再構成する手法が、下記特許文献3に開示されている。
スウィープ型指紋センサにおいては、下記特許文献1〜3に示すように、センサと指との相対位置を変化させることで指紋の部分画像を順次入力するようになっている。なお、以下、センサと指との相対位置を変化させることをスライドというとともに、相対位置が変化する方向(指の移動方向)をスライド方向という。通常、スウィープ型指紋センサは、センサに対して指を手前側(認証対象者側)にスライドさせ、その間に、指紋の部分画像を連続的に取得する。
【0007】
例えば、上記特許文献3においては、スライド方向を検出し、その検出されたスライド方向があらかじめ想定された方向と逆方向である場合には、指紋画像の入力を中断することが開示されている。すなわち、従来の指紋画像入力装置においては、スライド方向が限定されている。
【特許文献1】特開平10−91769号公報
【特許文献2】特開平11−253428号公報
【特許文献3】特開2004−110438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、例えば、ノート型PC(Personal Computer)やPDA(Personal Digital Assistants),携帯電話等の携帯型の情報処理装置であって、スウィープ型指紋センサをそなえるものにおいて、装置を上下方向もしくは左右方向に反転させて使用することを仕様とするものがある。
しかしながら、このような従来の情報処理装置においては、スウィープ型指紋センサを用いて指紋画像を入力する際に予め想定された方向に指をスライドさせる必要があるので、指紋の読み取りを行なうために装置を回転させる必要があり、繁雑であるという課題がある。又、スウィープ型指紋センサのようにセンサと指との相対位置の変化を利用する指紋画像入力装置においては、スライド方向による指紋画像の回転方向ずれの影響を受けにくくすることが望ましい。
【0009】
また、スウィープ型指紋センサにおけるスライド方向の検出は、 センサによって連続
して取得した複数の部分画像を相互に比較して、最も重なりあう相対位置を算出することで実現される。しかし、速くスライドしても重なりあうように部分画像を取得するには短い時間間隔とする必要があり、スライド方向の検出の負荷が重い。例えば、僅かずつ相対位置をずらしながら、重ね合わせた領域で重なり度合いを算出し、最も重なり度合いが大きい相対位置に基づいてスライド方向が検出するという一連の処理を行なうこととなり、計算量が多くなる。従って、効率良くスライド方向を検出することも課題となる。
【0010】
さらに、生体情報を用いた認証技術においては、指紋等の万人不同,終生不変の特徴をもつ部位を生体情報として使用している。しかしながら、このような生体情報においても、登録時と照合時で異なる部位を入力した場合には、当然ながら本人と認証することができない。このため生体情報入力装置においては、生体情報の入力位置の再現性を高める必要がある。
【0011】
このような生体情報の入力位置の再現性を高めるために、利用者が入力された生体情報画像を目視確認することが有効である。しかしながら、上下逆さま、あるいは横向きに置いて使用することが仕様となっているような装置では、入力される生体情報画像が回転方向にずれてしまい、このような回転方向のずれがあると利用者は目視確認しにくくなる。従って、装置の回転に影響を受けないように生体情報画像を表示することも課題である。
【0012】
さらに、生体情報画像の読み取りに際して、例えば、センサ上に載置された指の位置が、センサの中心位置から著しくずれている場合に、利用者に対して、例えば「もっと右側に指を移動させて下さい」等の誘導方向をメッセージとして提示することにより、センサにおける最適な位置に利用者の指を誘導することが考えられる。しかしながら、例えば、指紋センサを上下逆さまな状態で使用することが可能な装置においては、このように上下逆さまな状態では、装置から見た方向と利用者から見る方向とが逆方向となるので、利用者に対し正しい方向に指の移動を誘導するためには、装置の状態(姿勢,向き)等を考慮して行なう必要があり、煩雑である。
【0013】
また、スウィープ型指紋センサをポインティングデバイスとして使用することも考えられるが、上下逆さま,あるいは横向きに置いて使用することが可能な装置においては、スウィープ型指紋センサをポインティングデバイスとして使用する場合に、装置から見た方向と利用者から見る方向とが異なることにより、ポインティング機能が検出する方向情報が利用者が入力する方向とずれてしまう場合がある。
【0014】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、生体情報の入力に際して生体のスライド方向にかかわらず使用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このため、本発明の生体情報入力装置は、相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取手段と、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出手段と、該移動方向検出手段によって検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換手段と、該移動方向検出手段により、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出手段により前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小手段とを備えることを特徴としている。
【0016】
また、本発明に関連する生体認証装置は、相対的に移動している認証対象の生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取手段と、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出手段と、該移動方向検出手段によって検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換手段と、該座標変換処理手段による座標変換処理結果を用いて該認証対象に関する認証を行なう認証手段とを備えること特徴としている。
【0017】
さらに、本発明の生体情報処理方法は、生体情報採取手段を用いて相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取ステップと、該生体情報採取ステップにおいて採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出ステップと、該移動方向検出ステップにおいて検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換ステップと、該移動方向検出ステップにおいて、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出ステップにおいて前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小ステップとを備えることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の生体情報処理プログラムは、生体情報採取手段を用いて相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取ステップと、該生体情報採取ステップにおいて採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出ステップと、該移動方向検出ステップにおいて検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換ステップと、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出ステップにおいて前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小ステップとをコンピュータに実行させることを特徴としている。
【0019】
また、本発明に関連するコンピュータ読取可能な記録媒体は、上述した生体情報処理プログラムを記録したものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、移動方向検出手段によって検出された生体情報の移動方向に基づいて、座標変換手段が採取された生体情報に対して座標変換処理を行なうので、生体情報の採取に際して生体情報採取手段と生体のスライド方向との間に角度差(回転方向ずれ)が生じた場合においても、回転方向を補正することができ、確実に正立像を得ることができる。これにより、例えば、スライドするたびにスライド方向が変わり、生体情報ごとに回転方向ずれがあっても、正立像を得ることができる。
【0021】
また、本生体認証装置を回転させて逆さまの状態で使用する等、生体情報採取手段の向きが変わった状態で生体情報の採取を行なっても、生体情報画像を正立像として取得することができ、装置の姿勢にかかわらずに生体情報の採取を行なうことができ利便性が高い。
さらに、採取した生体情報を表示手段に表示させる場合においても、装置や表示手段,生体情報採取手段等の向き(姿勢)にかかわらず、生体情報の正立像を得ることができ、装置や表示手段,生体情報採取手段等の向き(姿勢)を検出・判断する必要がないので、これらの検出・判断を行なうための機能をそなえる必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0022】
また、生体情報採取手段を実装する向きの自由度を高くすることができ、配線パターンの実装面積を小さくすることにより、装置の小型化や低価格化を行なうことができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(A)実施形態の説明
図1および図2は、いずれも本発明の一実施形態としての指紋認証装置(生体情報入力装置)を示すもので、図1はその機能構成(原理的な構成)を示すブロック図、図2はその具体的な構成を示すブロック図である。これらの図1および図2において、同一部分には同一符号を付している。
【0024】
生体情報としては、主に指紋,掌紋,指静脈,手のひら静脈などを用いたものが挙げられるが、本実施形態においては、特に、生体情報として指紋の画像を用いる場合について説明する。
本指紋認証装置1には、図1に示すように、生体情報採取手段10と生体情報処理部110としての機能がそなえられ、又、生体情報処理部110は、移動方向検出手段11,座標変換手段14,位置検出手段16,指示手段17,特徴抽出手段32,一致度算出手段19,一致度判定手段20および記憶手段22としての機能がそなえられている。
【0025】
実際には、本実施形態の指紋認証装置1は、図2に示すごとく、例えばリアルタイムクロック80,揮発性メモリ部90,不揮発性メモリ部91(記憶手段22),ディスプレイ81(表示手段15)およびCPU(Central Processing Unit)100を有する一般
的なパーソナルコンピュータ等に、生体情報採取手段10としてのスウィープ型指紋センサ31を付設することにより実現される。
【0026】
その際、後述する、生体情報処理部110(移動方向検出手段11,座標変換手段14
,位置検出手段16,指示手段17,特徴抽出手段32,一致度算出手段19,一致度判定手段20),相対位置検出手段33,補正手段34,移動物体検知手段35,登録/照合用データ生成部(生成手段)36および照合部(一致度算出手段19,一致度判定手段20)37としての機能が、所定のプログラム(生体情報処理プログラム)をCPU100で実行することにより実現される。
【0027】
スウィープ型指紋センサ31(生体情報採取手段10)は、被認証者の生体情報を映像化しその生体情報(指紋)についての複数の部分画像(生体情報画像)を連続的に採取するものである。より具体的には、被認証者の指(生体部位)を採取面(センサ面)に対し相対的に接触移動させながら、その指の指紋の部分画像を連続的に採取するものであり、これにより、相対的に移動している生体部位を読み取り、この生体部位についての2次元配列状の複数の部分画像を生体情報として連続的に採取するようになっている。なお、以下、このスウィープ型指紋センサ31を単に指紋センサ31ともいう。
【0028】
なお、指紋センサ31における指紋画像の採取方法としては、例えば、静電容量方式,感熱式,電界式,光学式のいずれの手法を用いてもよい。
指紋は、被認証者の外皮(指;生体部位)上に形成されており、センサ面に接触しうる隆線(接触部分)とセンサ面に接触しない谷線(非接触部分/空隙部分)とから成る紋様である。指紋センサ31は、センサ面に接触する隆線部分とセンサ面に接触しない谷線部分とで検知感度が異なることを利用して、指紋の部分画像を多値画像として採取するようになっている。多値画像では、センサからの距離に応じて輝度が異なっており、通常、センサとの距離が近い隆線部分が低輝度で表示され、センサとの距離が比較的遠い谷線部分高輝度で表示される。
【0029】
指紋による認証時に、被認証者は、指紋センサ31のセンサ面上を指で触れながら、指の根元側から指先側,指の右側から左側など任意の方向に指を移動させる。ただし、指紋センサ31側を指に対して移動させる機構をそなえた場合、被認証者は指を移動させる必要はない。以降、本実施形態では、被認証者が、指をその根元側から指先側に向けてスライドする場合について説明する。なお、指紋センサ31の構成は公知であるため、その詳細な説明は省略する。
【0030】
リアルタイムクロック80は、指紋センサ31によって連続的に採取される各部分画像にタイムスタンプを付加するために用いられるものである。なお、指紋センサ31による画像取得の時間間隔が既知かつ誤差を無視できるほど一定の時間間隔である場合には、このリアルタイムクロック80は必ずしも必要ではない。
揮発性メモリ部90は、指紋センサ31によって連続的に採取される部分画像や、CPU100の機能によって得られた特徴,相対位置,補正結果や、CPU100で本実施形態の指紋認証装置としての機能を実現するために必要になる各種数値等の情報を記憶するものである。
【0031】
不揮発性メモリ部91は、被認証者について予め登録されている指紋データ(登録データ)を保持するものであり、図1における記憶手段22として機能するものである。この不揮発性メモリ部91に保持される指紋データは、指の大きさよりも大きいセンサ面を有する一般的な指紋センサによって採取された指紋画像から抽出されたものであってもよいし、本実施形態の登録/照合用データ生成部36によって生成された登録用データであってもよい。
【0032】
ディスプレイ81(表示手段15)は、種々の画像や情報を表示するものであり、後述する座標変換手段14によって座標変換された生体情報を表示する生体情報表示手段として機能する他、後述する指示手段17によって利用者(被認証者)に対して行なわれる指示を表示するようになっている。
生体情報処理部110は、指紋センサ31によって採取された指紋の部分画像(生体情報)を処理するものであって、移動方向検出手段11,座標変換手段14,位置検出手段16,指示手段17,特徴抽出手段32,一致度算出手段19,一致度判定手段20,生体情報中心位置検出手段21としての機能をそなえている。
【0033】
移動方向検出手段11は、指紋センサ31によって採取された指紋の部分画像に基づいて指紋センサ31に対する指の移動方向を検出するものである。
また、この移動方向検出手段11は、移動方向探索範囲縮小手段12および移動停止検出手段13としての機能をそなえている。移動方向探索範囲縮小手段12は、移動方向検出手段11により、連続して同じ移動方向が検出されたときに、その移動方向検出手段11により移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、予め設定された移動方向初期探索範囲から、その検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小するものである。
【0034】
図3および図4は本発明の一実施形態としての指紋認証装置1における移動方向初期探索範囲の例を示す図であり、それぞれ、ある時刻T−ΔTに指紋センサ31で検出された指紋の部分画像(破線部分参照)と、そのΔT後(時刻T)に検出された指紋の部分画像
(実線部分参照)とともに、時刻Tにおける移動方向初期探索範囲(一点鎖線部分参照)を表わしている。
【0035】
すなわち、これらの図3および図4は、それぞれ2つの指紋画像どうしで同じ部位がぴったり重なる位置を探すために、少しずつ指紋画像を重ねる位置をずらしていく際における、ずらす範囲を説明するためのものであって、特に移動方向の初期探索範囲を示すものである。なお、時刻T−ΔTに採取された生体情報画像の中心から時刻Tに採取された生体情報画像の中心に引いた矢印は移動方向を表す。
【0036】
なお、図3は指紋センサ31によって採取された指紋画像(方形)を中心とする全方向(360度)を移動方向初期探索範囲とする例を示している。この図3に示す例においては、指紋センサ31がほぼ真四角に近い形状をそなえ、且つ初期状態では指が移動する方向がどの方向であるか定まっていない場合に、初期探索範囲を360度の範囲に設定した場合を示す。この図3に示す例においては、移動方向初期探索範囲の最大範囲は、x軸方向およびy軸方向に関して、それぞれSx−Oxmin,Sy−Oyminである。
【0037】
なお、ここで、SyとSxは、指紋の部分画像において、その水平方向軸をx軸,垂直方向軸をy軸とした場合における、それぞれ指紋の部分画像のy軸方向のサイズとx軸方向のサイズである。又、OyminとOxminはそれぞれ最小限重なりと判定するために必要な領域のy方向のサイズとx軸方向のサイズである。
一方、図4は指紋センサ31によって採取された指紋画像(矩形)を中心として、その短軸方向(図4の上下方向)を移動方向初期探索範囲とする例を示している。この図4に示す例においては、指紋センサ31が矩形形状をそなえ、且つ初期状態においても生体が移動する方向が上下方向に限定される場合に、初期探索範囲を指紋の部分画像に対する上下方向およびその斜め上下方向の範囲に設定した範囲を示す。
【0038】
これらの図3および図4中におけるそれぞれの画像の位置関係は、指紋の部分画像を採取した時刻のずれΔTの間に被認証者の指と指紋センサ31との位置関係を反映しており
、例えば、指紋センサ31の上に指を滑らせたときに、連続して指紋画像を取得した状態を表わしている。すなわち、指と指紋センサ31との相対的な位置が時々刻々と移動しているため、時刻T−ΔTと時刻Tとのそれぞれで採取された指紋画像は少しだけずれた部位を映像化したものになる。
【0039】
また、図5および図6はそれぞれ本発明の一実施形態としての指紋認証装置1における移動方向初期探索範囲の他の例を示す図であり、それぞれ図3および図4に示す移動方向初期探索範囲を下方向に縮小(限定)した状態を示している。なお、これらの図5および図6中においては、時刻T−ΔTに採取された生体情報画像を省略している。
ここで、本発明の一実施形態としての指紋認証装置1における移動方向探索範囲の設定手法を、図7に示すフローチャート(ステップA10〜A100)に従って説明する。
【0040】
先ず、移動方向初期探索範囲を設定する(ステップA10)。この移動方向初期探索範囲は、指紋センサ31に対して被認証者によって行なわれる可能性がある指のスライド方向により予め設定されるものであり、本指紋認証装置1の使用形態や指紋センサ31の取り付け位置等に応じて決定される。なお、指紋センサ31のスライド方向が未決定の場合には、図3や図4に示すように、移動方向初期探索範囲を広く設定しておくことが望ましい。
【0041】
次に、指紋センサ31により指紋の部分画像の採取を行なって、生体情報画像の更新を行なう(ステップA20)。そして、移動方向探索範囲が縮小されているか否かを判断する(ステップA30)。具体的には、後述するステップA90において移動方向探索範囲縮小を示すフラグがONになっているか否かを判断する。移動方向探索範囲が縮小されていない場合には(ステップA30のNOルート参照)、初期探索範囲内において移動方向の探索を行なう(ステップA60)。
【0042】
すなわち、指紋センサ31によって連続的に採取された複数の部分画像について、移動方向が連続して同じであるか、すなわち指紋センサ31に対して指が同じ方向に移動しているかを調べるとともに、且つ、重なり度合いが所定の閾値以上であるか否かを判断する(ステップA70)。なお、重なり度合いとは相関度や一致度をいう。
ここで、このステップA70において用いられる閾値について説明する。サブピクセル誤差がある場合には、画像同士をぴったりと重ね合わせることができないため、重なり度合いは影響を受け、その値が小さくなる。その一方で、指紋は指表皮における山谷の凹凸であり、指の表皮は軟らかいため、センサに押し付けたときに歪みが生じる。更に、指をセンサに擦り付けている際に指紋画像が読み取られるので、この歪みは常に変化する。歪みがある場合にも重なり度合いは影響を受け、その値は小さくなる。他にも様々な要因で重なり度合いが小さくなるので、その小さくなる範囲を解析的あるいは経験的に求めて、閾値が決定されるようになっている。
【0043】
また、サブピクセル誤差とは、画像における量子化誤差の影響によって生じる1画素未満の移動距離の誤差である。生体情報を画像にする場合にはディジタル化するが、このディジタル化によって、実際的には連続的な情報を離散的な情報に間引きされる。具体的には、例えば、50マイクロメートル刻みの間隔の画素で表現された画像では、被写体の移動距離が50マイクロメートル未満の場合には、実際にはその移動量は1画素分に足りない。
【0044】
しかしながら、移動距離を検出する際には、画像の重ね方は1画素単位でしかずらすことしかできないので、1画素未満の移動距離は0画素または1画素のどちらか一方になる。例えば、50マイクロメートル刻みの間隔の画素で表現された画像を用いた場合に、移動距離が30マイクロメートルだった場合には、実際には0.6画素ではなく1画素と算出される。このときに0.4画素の誤差が生じ、このような誤差をサブピクセル誤差というのである。
【0045】
さて、移動方向が同じ方向であり、且つ重なり度合いが閾値以上である場合には(ステップA70のYESルート参照)、次に、ステップA70に示す条件がN回以上連続してみたされたか否かを判断する(ステップA80)。上記条件がN回以上連続して満たされた場合には(ステップA80のYESルート参照)、指が同じ方向に安定して移動していると判断して、移動方向探索範囲縮小手段12が、移動方向探索範囲をその移動方向を含む所定の範囲に縮小(限定)し(ステップA90)、又、移動方向探索範囲縮小を示すフラグにONを設定する。
【0046】
また、指紋センサ31に対して指が同じ方向に移動していなかったり、重なり度合いが所定の閾値以上ではない場合(ステップA70のNOルート参照)や、ステップA70の条件がN回以上連続して満たされていない場合(ステップA80のNOルート参照)には、ステップA20に戻る。
一方、移動方向探索範囲が縮小されている場合には(ステップA30のYESルート参照)、その縮小された移動方向探索範囲(縮小探索範囲)内で、移動方向の探索を行ない(ステップA40)、更に、移動方向探索範囲を、ステップA40において探索された移動方向を含む所定の範囲となるように更新する(ステップA50)。
【0047】
そして、指紋センサ31により採取された指紋の部分画像がないか、もしくは、移動が停止しているかを判断する(ステップA100)。指紋センサ31により採取された指紋の部分画像がない場合や、移動が停止している場合には(ステップA100のYESルート参照)、処理を終了する。又、指紋センサ31により採取された指紋の部分画像がある場合や、移動が停止していない場合には(ステップA100のNOルート参照)、ステップA20に戻る。
【0048】
さて、本指紋認証装置1において検出可能なスライド速度は、指紋画像の座標系を基準にすると以下の式(1)で算出される。
Vy < R・( Sy − Oymin )/ΔT,Vx < R・( Sx − Oxmin )/ΔT ・・・(1)
ここで、 指紋の部分画像において、その水平方向軸をx軸,垂直方向軸をy軸とすると
、VyおよびVxはそれぞれスライド速度のy軸方向成分とx軸方向成分であり、Rは画素ピッチである。なお、スライド速度に依存して指紋の部分画像に伸縮歪みやスキュー歪みが生じるが、上式はこれら歪みがない理想的な場合で成立するものとする。
【0049】
また、Vy,Vxは入力される生体の特性に依存し、ΔTは指紋センサ31の性能に依存して仕様の決定に大きく左右するものである。例えば、指紋センサ31の性能が決まっている場合を考えると、Sy,Sxが決まっている場合にはOyminやOxminは経験的に決定される。
また、ΔTには下限があるので、上記式(1)のように検出可能なスライド速度の上限はVy,Vxとなる。例えば、y軸方向のみにスライドし、指紋センサ31の性能としてΔTの下限が3msec,Oyminが4画素,Syが16画素,Rが0.05mm/画素,指紋の部分画像が歪
みのない理想的なものと仮定すると、スライド速度の上限は200mm/secとなる。
【0050】
しかしながら、移動方向検出手段11では、上記の例のように生体のスライド速度に追従するため毎秒数百枚の部分画像から移動方向を検出する必要があり負荷が高い。しかも本指紋認証装置1が例えば逆さまの状態で使用されることが想定される場合には、より負荷が高くなる。よって移動方向検出手段11では、スライド方向を効率良く算出して負荷を軽減するために慣性を利用する。
【0051】
つまり、短い時間間隔でスライド方向が急激には変化しないという前提のもとで、y軸に関して正方向か負方向かを判断した時点で、一方のみに限定してスライド方向を検出するようになっている。例えば、上述した例において、スライド方向の上限の200mm/secで移動していた生体あるいは指紋認証装置1が0.003msec後に突然、逆方向になったりすることは考えにくい。
【0052】
また、移動方向探索範囲を縮小するためには、移動方向が安定していることが重要である。図7に示す例においては、移動方向が安定したことを判断する条件の一例として、移動方向が同じであり、かつ重なり度合いが所定の閾値以上であることを用いている(ステップA70参照)。
移動方向探索範囲は、スライド方向が安定した後は慣性の法則により、急激に方向が変わることはないと仮定することができる。従って、例えば移動方向±αの範囲に縮小する。なお、おおむね上下左右の領域のいずれかとしてもよい。
【0053】
移動停止検出手段13は、指紋センサ31における指(生体部位)の移動の停止を検出するものである。本指紋認証装置1においては、移動停止検出手段13により被認証者の指の移動の停止が検出された場合に、その部分画像の入力を停止するようになっている。
上述の如く、移動方向探索範囲縮小手段12によって、探索範囲を縮小したり間引いたりすることで移動方向検出にかかる計算量を削減したとしても、移動停止の監視は必要である。
【0054】
例えば、指紋センサ31が、被認証者の指とセンサ部(図示省略)とが接触することで指紋の画像(部分画像;生体情報)を読み取る接触型である場合に、摩擦などによって生体表皮がたわむと、指が移動してもセンサ部と接触している部位はほとんど移動しないことがある。このように、指(生体)と指紋センサ31との間に引っかかりが生じた場合においても、このような引っかかりの影響を受けずに指紋画像の採取を行なうために、生体の移動停止を監視する必要がある。
【0055】
図9は指紋センサ31における指紋画像の採取時における指のスライド速度の変化を例示する図であり、指を滑らかにスライドした場合の例を実線で、又、指と指紋センサ31との間に引っかかりが生じた場合の例を破線で示している。
この図9に示すように、指紋センサ31における指紋画像の採取時においては、スライド速度が滑らかに変化する場合と大きく変化する場合がある。スライド速度が滑らかに変化することを前提とすることができれば、移動方向探索範囲を限定して、処理時間の短縮や誤検出を防止することができる。しかしながら、生体とセンサとの摩擦によってたわみなどが生じると、生体そのものはある一定の速度を保って移動していても、センサと接触している部位では、この図9において破線で示すように、スライド速度が一瞬停止する。
【0056】
本指紋認証装置1においては、移動速度推定範囲を設け、これにより停止監視範囲を設定するようになっている。
ここで、移動速度推定範囲の設定について説明する。前述した図7のステップA90(移動方向探索範囲縮小ステップ)においては、慣性があるという前提で、移動方向が安定した後の移動量の変化あるいはスライド速度の変化を用いて速度を推定し、移動方向探索範囲を縮小している。なお、x軸方向,y軸方向に関してはそれぞれ同様の議論ができるため、ここでは、スライド速度をVとして添え字を省略する。
【0057】
スライド速度Vは、部分画像の撮像間隔I(K)と相対位置Pr (K)とから、見かけ上、次式(2)のように算出される。
V(K) = Pr(K)/I(K) ・・・(2)
ここで。撮像間隔I(K)は、ある部分画像の撮像を開始してから、次の部分画像の撮像が開始されるまでの時間を指す。
【0058】
そして、次に検出されると推定される相対位置Pr′(K)は、上式(2)を用いて次式
(3)のように算出される。
Pr′(K) = V(K−1)*I(K),K:整数 ・・・(3)
画像取得間隔が十分に短い場合には、探索範囲を1隆線以下とみなすことによって、さらに演算回数を低減できるとともに、相対位置検出を誤る危険性を低減することができる。
【0059】
ただし、撮像間隔I(K)が撮像時刻によらず一定とみなせる場合においては、次式(4)のように直前の相対位置Pr(K−1)をそのまま利用することでも、上式(3)と同様
の作用効果が得られる。
Pr′(K) = Pr(K−1) ・・・(4)
このような推定手法は、スライド速度の変化が非常に緩やかで、等速であるとみなすことができる場合において有効となる。
【0060】
撮像間隔I(K)が一定とみなせ、スライド速度の変化が著しい場合には、次式(5)のように相対位置Pr′(K)を推定してもよい。
Pr′(K) = Pr(K−1) + [Pr(K−1)−Pr(K−2)] ・・・(5)
上式(5)は、速度変化[Pr(K−1)−Pr(K−2)]が一定、つまり加速度一定とみなせる場合において有効である。例えば、スライド開始時においてスライド速度が次第に上昇するように変化する場合に適用することで、探索範囲を適切に設定することが可能となる。撮像間隔I(K)が一定とみなせない場合においても、上述と同様の考え方で速度変化を加味することで探索範囲を適切に設定することができる。
【0061】
図10は本発明の一実施形態としての指紋認証装置1における停止監視範囲および移動方向初期探索範囲の例を示す図であり、ある時刻T−ΔTに指紋センサ31で検出された指紋の部分画像(点線部分参照)と、そのΔT後(時刻T)に検出された指紋の部分画像(実線部分参照)とともに、時刻Tにおける移動方向初期探索範囲(一点鎖線部分参照)および停止監視範囲を表わしている。
【0062】
この図10中において、停止監視範囲および移動方向探索範囲は、図9に示したスライド速度の図中における速度推定範囲および停止監視範囲を、時刻T−ΔTに採取された生体情報画像の上に表わしている。
スライド速度(移動方向と移動距離)を検出する処理には、探索範囲が広い程、時間がかかる。従って、スライド速度をその直前の状態からある程度予測可能であることを利用して、探索範囲を狭く限定することが効果的である。
【0063】
しかしながら、図9に示すように、指と指紋センサ31とにおいて両者の間に摩擦があることや、センサ外周の筐体に角や出っ張った形状があること等によって、スライド速度が急に0になる(引っかかりが生じる)場合がある。このようなスライド速度の一時的な停止が発生したときに、狭い探索範囲では正しく移動方向や移動距離を検出できるとは限らない。
【0064】
そこで、本指紋認証装置1においては、スライド速度が急に0に変化した場合においても、正しく生体の移動方向や移動距離を検出できるようにするために、移動距離を検出するための基準となる位置(図の時刻)からわずかだけずれた範囲しかずれていないかもしれないと仮定して探索範囲に含める。このわずかだけずれた範囲を停止監視範囲という。
次に、図7に示すフローチャートに従って前述した本指紋認証装置1における移動方向探索範囲の設定手法に、停止監視範囲を設けた場合の処理を、図11に示すフローチャート(ステップA10〜A40,A51〜A57,A60〜A100)に従って説明する。
【0065】
なお、図中既述のステップ番号と同一のステップ番号は同一もしくは略同一の処理を示しているので、その詳細な説明は省略する。
本手法においては、移動方向初期探索範囲の設定を行なう際に、停止監視カウントMの初期化を行なって、M=0を設定するようになっている(ステップA10)。又、移動方向探索範囲が縮小されている場合には(ステップA30のYESルート参照)、その縮小された移動方向探索範囲(縮小探索範囲)内で、移動方向の探索を行ない(ステップA40)、移動速度推定範囲での画像の重なり度合いをあらわす一致度(最大一致度)MAX_Cvを算出し、揮発性メモリ部90等に保持する(ステップA51)。
【0066】
なお、この一致度とは、指紋センサ31によって採取される複数の部分画像のうちの、連続する2つの部分画像間での一致度である。本実施形態においては、連続する2つの部分画像間では、移動速度推定範囲から算出される一致度と停止監視範囲から算出される一致度とがある。これら両者を比較して、一致している範囲から得られる移動距離,移動方向を検出するようになっている。
【0067】
また、サブピクセル誤差がある場合には、移動距離が所定画素数以上になるまで部分画像を1枚〜複数枚飛ばす。例えば、実際には0.5画素しか移動していないときには、1枚飛ばすことで1画素の移動が検出できる。なお、このとき移動速度は、平均0.5画素となる。
次に、移動速度推定範囲を更新して(ステップA52)、停止監視範囲で移動速度の探索を行ない(ステップA53)。更に、停止監視範囲での画像の重なり度合いを表わす一致度(最大一致度)MAX_Csを算出し、揮発性メモリ部90等に保持する(ステップA54)。
【0068】
そして、MAX_CvとMAX_Csとを比較して(ステップA55)、MAX_Csが大きい場合には(ステップA55のNOルート参照)、停止状態であると判断して、停止監視カウントMをインクリメントする(ステップA56)。又、MAX_Cvが大きい場合には(ステップA55のYESルート参照)、移動状態であると判定して、停止監視カウントMに0を設定する(ステップA57)。
【0069】
なお、停止監視カウントMは、停止状態の継続を判定するために用いられるカウンタであり、停止状態が長く続いた場合、すなわち、停止監視カウントMの値が所定の閾値Tよりも大きくなった時に生体情報の入力が終了したと判定し、一瞬だけの停止状態である場合には、移動方向の検出を継続して行なうものである。
すなわち、停止監視カウントMが閾値T以上であるか、もしくは生体情報画像が無いかを判断して(ステップA100)、生体情報画像が無い場合や停止監視カウントMが閾値T以上の場合には(ステップA100のYESルート参照)、指紋の部分画像の採取が終了したものと判定して処理を完了する。又、生体情報画像があったり,停止監視カウントMが閾値Tよりも小さい場合には(ステップA100のNOルート参照)、ステップA20に戻る。
【0070】
なお、図11に示す例においては、停止状態が長く続いたことを判定するためにカウントMを用い、そのカウント回数に基づいて判定を行なっているが、これに限定されるものではなく、例えば、停止状態が継続する時間を測定し、この時間を所定の閾値と比較してもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
座標変換手段14は、移動方向検出手段11によって検出された移動方向を用いて、指紋センサ31によって採取された生体情報に対して座標変換処理を行なうものである。又、この座標変換手段14は、移動方向検出手段11で検出された移動方向と指紋センサ31に関する所定の方向との差情報を用いて座標変換を行なうようになっている。
【0071】
ここで指紋センサ31によって採取された生体情報とは、指紋センサ31によって採取された指紋画像(部分画像)のみならず、この指紋画像に基づいて生成される種々の情報も含むものであり、例えば、指紋画像から抽出された特徴情報も含まれる。従って、座標変換手段14は、指紋画像から抽出された特徴情報に対して座標変換処理を行なってもよい。なお、本実施形態においては、生体情報として指紋の部分画像を用い、座標変換手段14が、この部分画像に対して座標変換処理を行なう例について示す。
【0072】
座標変換手段14は、移動方向検出手段11によって検出した移動方向を用いて、指紋センサ31によって採取した指紋の部分画像の座標の変換を行なう。具体的には、この座標変換は以下の式(6)に示すようにアフィン変換で実現される。
【0073】
【数1】
【0074】
例えば、スウィープ型指紋センサでは、指紋全体を取得すようにそのセンサ面に第1関
節付近をあて、指先が生体情報採取手段10に触れるまでスライドする。ユーザが操作する際には、指を手前に引くイメージとなる。よって、スライド方向が常に生体情報画像の鉛直下向きとなるように変換する。
図8は本発明の一実施形態としての指紋認証装置1における座標変換前の生体情報画像と座標変換後の生体情報画像との関係を示す図である。
【0075】
生体情報画像の座標系がこの図8に示すような場合の変換式は、以下の式(7)のように示される。
【0076】
【数2】
【0077】
ここで、θは回転角度、CxとCyはそれぞれx軸方向とy軸方向の回転中心である。例えば、回転中心はCx=Sx/2,Cy=Sy/2のように画像中心としてもよい。
また、連続する2枚の生体情報画像から得られる生体情報の移動量をx軸方向とy軸方向についてそれぞれΔxとΔyとすると、回転角度θは以下の式(8)〜(11)で表わされる。
【0078】
【数3】
【0079】
座標変換は、一般的には、上述の如く三角関数を含む回転行列を用いた演算となるため、処理時間等が長くなる。そこで、座標変換のより簡単なケースとして、Vyの符号のみを考慮したものでもよい。すなわち、スライド方向のy軸成分が生体情報画像の鉛直下向きとなるように変換する。具体的にはスライド方向のy軸成分が生体情報画像の鉛直上向き方向である場合には、生体情報画像を180度回転させて出力する。単純に180度回転させるだけであれば、変換処理はメモリ間の画素値のコピーで済むので、メモリ量と計算時間を節約できる。
【0080】
処理時間に要する時間が長い場合には、回転角度情報のみを指紋の部分画像に付加するのみでとどめておき、角度情報を用いないことによりオーバーヘッドを避けられるようにしてもよい。
図12(a),(b)はいずれも本発明の一実施形態としての指紋認証装置1の外観例を示す図であり、図12(a)は変形前の本指紋認証装置1の外観例を示す図、図12(b)には変形後の本指紋認証装置1の外観例を示す図である。
【0081】
これの図12(a),(b)に示す指紋認証装置1は、指紋センサ31をそなえる本体1aとディスプレイ81をそなえるディスプレイユニット1bとを2軸ヒンジ(爪切り型ヒンジ)1cを介して開閉自在に接続して構成されている。
具体的には、図12(a)中における矢印aに示すように、ディスプレイユニット1bを本体1aに対して2軸ヒンジ1cの軸c1回りに約180度回転させることができるようになっており、これにより、本体1aとディスプレイユニット1bとを蝶番状に折りたたむことができるようになっている。更に、図12(a)中における矢印bに示すように、ディスプレイユニット1bを2軸ヒンジ1cの軸c2回りに回転させて、ディスプレイユニット1bを180度回転させることができるようになっている。
【0082】
そして、図12(a)に示す状態から、本体1aに対してディスプレイユニット1bを2軸ヒンジ1cの軸c1,c2でそれぞれ回転させることにより、図12(b)に示すように、ディスプレイ81を表に出した状態で本体1aとディスプレイユニット1bとを折りたたむことができるようになっている。
また、本体1aとディスプレイユニット1bとはいずれも矩形形状を有しており、又、本体1aは、ディスプレイユニット1bと2軸ヒンジ1cを介して接続される辺と直交する方向において、ディスプレイユニット1bよりも大きな寸法を有するように構成されている。又、本体1aにおけるディスプレイユニット1bと重合する側の面であって、2軸ヒンジ1cとは反対側の端部には指紋センサ31が形成されている。
【0083】
これにより、図12(a)に示すように、本体1aとディスプレイユニット1bとを開いた状態で、被認証者はディスプレイ81を見ながら指紋センサ31を用いることができる他、図12(b)に示すように、本体1aとディスプレイユニット1bとを閉じた状態においても、被認証者はディスプレイ81を見ながら指紋センサ31を用いることができるようになっている。
【0084】
すなわち、本指紋認証装置1は、本体1a側に指紋センサ31が実装され、ディスプレイユニット1bを反転させて折りたたむ仕様のノートパソコンとして構成され、図12(b)の状態と図12(a)の状態とではディスプレイ81の実装方向は同一方向であるとする。
そして、図12(a)に示すように、本体1aとディスプレイユニット1bとを開いた状態(開使用時)で、被認証者が指紋センサ31を用いる場合には、被認証者は指を2軸ヒンジ1c側から本体1aにおける他端側(手前側)に向かって指をスライドさせ、図12(b)に示すように、本体1aとディスプレイユニット1bとをディスプレイ81が見えるようにして折りたたんだ状態(折りたたみ使用時)で、被認証者が指紋センサ31を用いる場合には、被認証者は指を本体1aにおける他端側から2軸ヒンジ1c側に向かってスライドさせる。
【0085】
なお、図12(a)に示す状態からディスプレイユニット1bを回転させて図12(b)に示す状態にした場合には、認証者から見て指紋センサ31は180度反転した状態となる。
上述したように、本指紋認証装置1は、図12(a)に示すような開使用時と、図12(b)に示すような折りたたみ使用時とでは、指紋センサ31における指のスライド方向が反対となるが、本指紋認証装置1においては、座標変換手段14がスライド方向に合わせて指紋の部分画像の座標変換を行なう。
【0086】
具体的には、座標変換手段14は、指紋センサ31におけるスライド方向が開使用時での指紋センサ31におけるスライド方向とは180度回転していることに基づいて、上述の如く座標変換を行ない、指紋センサ31によって採取された指紋の部分画像を180度回転させるように座標変換を行なう。
これにより、図12(b)に示すように、折りたたみ使用時においてもディスプレイ81には正立した指紋画像(部分画像)が表示され、生体情報画像は上下左右が逆になってしまうこともなく、被認証者が違和感を持つこともない。
【0087】
すなわち、指紋画像の入力を行なう際には、利用者は常に指紋センサ31に対して手前側に向かって指をスライドすればよいのである。
図13(a),(b)は本発明の一実施形態としての指紋認証装置1のディスプレイ81に表示される指示方向を説明するための図である。
位置検出手段16は、指紋センサ31に対する被認証者の指の位置を検出するものであり、指示手段17は、指紋センサ31により検出された被認証者の指の位置に基づいて、指紋センサ31において指が配置されるべき位置に、その被認証者の指を配置させるように、被認証者に対してその指の移動を促す指示を行なうものであり、例えば、ディスプレイ81に指の移動を促す指示を、その移動すべき方向とともに表示させるようになっている。
【0088】
例えば、図13(a),(b)に示すように、本体1a側に指紋センサ31が実装され、ディスプレイユニット1bを2軸ヒンジ1cによって反転させた状態で折りたたむことができる指紋認証装置1において、図13(a)に示すように、本体1aとディスプレイユニット1bとを開いた状態で使用する場合と、図13(b)に示すように、本体1aとディスプレイユニット1bとを折りたたんだ状態で使用する場合とで、被認証者に対するディスプレイ81の実装方向は変わらないものとする。
【0089】
前述したように、本指紋認証装置1においては、指紋の読み取り操作を行なうに際して、開使用時(図13(a)参照)と、折りたたみ使用時(図13(b)参照)とでは、指紋センサ31における指のスライド方向が反対となるが、被認証者は、指紋画像の入力を行なう際には、常に指紋センサ31に対して手前側に向かって指をスライドすればよく、スライド方向とディスプレイ81の鉛直下向きが一致していれば、正しく指示することができる。
【0090】
すなわち、座標変換手段14は、移動方向検出手段11によって検出されたスライド方向に基づいて、指紋センサ31によって採取した指紋の部分画像を、その上下左右逆となるように座標変換を行なう。又は、指示手段17が、被認証者に対して、スライド方向に基づいて上下左右逆の方向に指示する。なお、図13(a),(b)に示す例においては、ディスプレイ81上に、ワーニングとして指を移動させるべき方向を矢印によって示している。
【0091】
ここで、位置検出手段16について詳細に説明する。位置検出手段16は、指紋センサ31で取得される画像において、生体情報が含まれる領域を検出するようになっている。例えば、対象とする生体が指紋の場合には、隆線が谷線よりも大きい画素値であらわされた生体情報画像を想定する。又、生体が手の甲静脈や手のひら静脈,指静脈の場合には、静脈が静脈以外よりも大きい画素値で表された生体情報画像を想定する。又、これらの関係が逆であれば画像を輝度に関して反転させれば同様の議論となる。
【0092】
生体情報画像から生体の位置を直接を求めるには、その生体情報画像の画素値から重心を求めることが有効である。又、より精度良く位置を求める場合には、生体情報が含まれる領域を抽出してから重心を求めてもよい。
ここで、以下、生体情報が含まれる領域を生体情報領域と称する。生体情報領域の抽出には、一般的な2値化方法あるいはクラスタリングの手法を適用できる。最も簡単な方法としては、画素値に対して所定の閾値を設けこの閾値より大きい値を持つ画素を生体情報として抽出する方法である。抽出した画素の重心および分散を用いることにより、生体情報領域の位置を検出できる。
【0093】
次に、指示手段17について説明する。指示手段17では、位置検出手段16で検出された位置Bx,Byと、指紋センサ31の中心位置Cx,Cyとのそれぞれの差情報Dx,Dyを用いて指示を行なう。具体的には、Dx=Cx-Bx,Dy=Cy-Byとし、指示方向をIx,Iyとすると、指示方向は位置に関する差情報の逆方向としてIx=-Dx,Iy=-Dyとする。
例えば、被認証者の指が指紋センサ31に対して右寄りに位置していた場合には、指示手段17は、利用者に対して生体を左寄りに誘導するように指示する。又、この指示としては、例えば、左矢印などの方向を示唆するマークをディスプレイ81に表示することによって行なわれる。又、このとき、詳細な方向ではなく、より差情報の大きさが大きい成分のみを指示し、90度刻としてもよい。
【0094】
このとき、指紋センサ31とディスプレイ81との間に回転方向のずれがあった場合には、ディスプレイ81(指示手段17)による指示が意味のない指示となるため、指紋センサ31から検出される生体情報の移動方向との差情報θを用いて補正する。補正された方向をIx’,Iy’とすると,Ix’,Iy’は以下の式(12)で表わされる。
【0095】
【数4】
【0096】
特徴抽出手段32は、指紋センサ31によって採取される複数の部分画像のそれぞれから、各部分画像における特徴およびその特徴の位置を抽出するものである。ここで、特徴としては、各部分画像中の前景(本実施形態では隆線画像の輝度値)およびその前景のエッジ(本実施形態では輝度勾配の値)の両方を抽出してもよいし、各部分画像中の前景(例えば隆線画像)を細線化して得られるパターンにおける端点および分岐点を抽出してもよい。
【0097】
相対位置検出手段33は、指紋センサ31によって採取される複数の部分画像のうちの、連続する2つの部分画像が相互に重なり合う領域に存在する特徴(特徴抽出手段32によって抽出された特徴)に基づいて、これら2つの部分画像相互の相対位置を検出するものである。このとき、相対位置検出手段33は、上記相対位置を、直前までに検出された1以上の相対位置を基準にして検出してもよいし、又、上記相対位置を、直前までに検出された1以上の相対位置に基づいて推定された、次に検出されるべき相対位置を基準にして検出してもよい。
【0098】
また、相対位置検出手段33は、指紋センサ31によって連続的に採取される各部分画像を、相互に重なり合う領域を有する2以上の部分領域に分けて取り扱い、上記相対位置を2以上の部分領域のそれぞれについて検出するようにしてもよい。
補正手段34は、指紋センサ31の検出遅延のために生じていた画像歪みや指の変形による歪みを補正するためのものである。この補正手段34は、下記のような2種類の補正機能を有している。第1の補正機能は、相対位置検出手段33によって検出された相対位置と各部分画像における特徴の位置とに基づいて特徴の歪み量(指の変形による歪み量)を算出し、算出された歪み量に基づいて、各部分画像における特徴の位置を補正する機能である。また、第2の補正機能は、指紋センサ31による各部分画像の採取時間間隔と、指紋センサ31による各部分画像の採取遅延時間と、相対位置検出手段33によって検出された相対位置とに基づいて、指紋センサ31の採取遅延に伴う各部分画像の歪み(伸縮歪みやスキュー歪み)を解消するように各部分画像における特徴の位置を補正して、特徴の相対位置を得る機能である。
【0099】
なお、相対位置検出手段33が、指紋センサ31によって連続的に採取される各部分画像を、相互に重なり合う領域を有する2以上の部分領域に分けて取り扱い、上記相対位置を2以上の部分領域のそれぞれについて検出する場合、補正手段34は、各部分領域について、指紋センサ31の採取遅延に伴う各部分画像の歪みを解消するように特徴の位置を補正する。
【0100】
また、この補正手段34は、指紋センサ31において画像の歪みが生じる指紋センサ41を用いる場合に必要とされ、指紋センサ31が画像の歪みを無視できる場合には、この補正手段34は必ずしも必要ではない。
移動物体検知手段35は、指紋センサ31によって採取される複数の部分画像に基づいて、指紋センサ31に対して移動している移動物体(ここでは被認証者の指)の有無を検知するためのもので、例えば、直前までに指紋センサ31によって採取される部分画像の重み付き平均画像を算出し、算出された重み付き平均画像に基づいて、移動物体の有無を検知するようになっている。より具体的に、移動物体検知手段35は、指紋センサ31によって採取される最新の部分画像と算出された重み付き平均画像との差分値が所定の閾値を超えた場合に移動物体の存在を検知するものであり、その所定の閾値が、ノイズによる変動値よりも大きく設定されている。
【0101】
登録/照合用データ生成部(生成手段)36は、特徴抽出手段32によって抽出された特徴と、補正手段34によって得られた特徴の相対位置とを用いて、被認証者の本人認証を行なうための指紋データ(登録用データおよび照合用データ)を生成するものである。指紋データの登録時には、登録/照合用データ生成部36によって生成された指紋データ(隆線の分岐点や端点の位置やパターンなど公知の情報)が、登録用データとして不揮発性メモリ部91に登録・保持される。被認証者の本人認証時には、登録/照合用データ生成部36によって生成された指紋データ(隆線の分岐点や端点の情報)が、照合用データとして照合部37に送られる。
【0102】
照合部(照合手段)37は、登録/照合用データ生成部36によって生成された照合用データと不揮発性メモリ部91に保持されている被認証者の登録用データとを比較して照合処理を実行し、被認証者の本人認証を行なうものである。この照合部37は、指紋センサ31による映像化時刻(リアルタイムクロック80によるタイムスタンプの時刻)の早い部分画像から得られた特徴およびその相対位置を優先的に用いて、上記照合処理を実行し、被認証者の照合結果を確定した時点で上記照合処理を終了するように構成されている。
【0103】
この照合部35は、一致度算出手段19と一致度判定手段20とをそなえて構成されている。一致度算出手段19は、登録/照合用データ生成部36によって生成された照合用データと不揮発性メモリ部91に保持されている被認証者の登録用データとの一致度を算出するものである。なお、一致度としては、例えば、相互相関法における相関係数が用いられる。
【0104】
また、一致度判定手段20は、一致度算出手段19によって算出された一致度に基づいて、例えば、この一致度が予め設定された閾値よりも大きい場合に、登録/照合用データ生成部36によって生成された照合用データと不揮発性メモリ部91に保持されている被認証者の登録用データとが一致するものであると判断するようになっており、これにより、被認証者がその登録用データを登録した登録主であることを認証するようになっている。
【0105】
上述の如く構成された本発明の一実施形態としての指紋認証装置1における処理を図14〜図16に示すフローチャートに従って説明する。図14は本発明の一実施形態としての指紋認証装置1における登録データの登録処理を説明するためのフローチャート(ステップC10〜C40)、図15はその照合処理を説明するためのフローチャート(ステップD10〜D60)、図16は図14および図15における生体情報入力ステップを説明するためのフローチャート(ステップE10〜E30)である。
【0106】
登録処理においては、被認証者は、生体情報採取手段10(指紋センサ31)を用いて生体情報(指紋)の入力を行なう(ステップC10)。特徴点抽出部32は、指紋センサ31によって入力された生体情報に基づいて特徴の抽出を行ない(ステップC20)、登録/照合用データ生成部36が、生体データを作成して(ステップC30)、この作成した生体データを不揮発性メモリ91(記憶手段22)に記録する(ステップC40)。
【0107】
また、照合処理においては、生体情報採取手段10(指紋センサ31)を用いて生体情報(指紋)の入力を行なう(ステップD10)。特徴点抽出部32は、指紋センサ31によって入力された生体情報に基づいて特徴の抽出を行ない(ステップD20)、生体データを作成する(ステップD30)。そして、一致度算出手段19が、不揮発性メモリ91(記憶手段22)に格納された生体データを読み出して(ステップD40)、一致度の算出を行ない(ステップD50)、一致度判定手段20が、この算出された一致度に基づいて判定を行なう(ステップD60)。
【0108】
また、上述した図14のステップC10や図15のステップD10における生体情報の入力は、図16に示すフローチャートに従って行なわれる。すなわち、生体情報採取手段10により生体部位の部分画像を生体情報として読み取った後に(ステップE10)、採取された生体情報に基づいて移動距離の検出を行ない(ステップE20)、その後、部分画像の結合を行なう(ステップE30)。
【0109】
なお、図16に示すフローチャートにおいてはループの概念を省略している。例えば、複数の部分画像について、ステップE10の生体情報読取ステップを繰り返し行なってからステップE20の移動距離検出ステップを開始してもよく、又、ステップE10の生体情報読取ステップとステップE20の移動距離検出ステップとを繰り返し行なってからステップE30の画像結合ステップを開始してもよく、更に、ステップE10の生体情報読取ステップと、ステップE20の移動距離検出ステップと、ステップE30の画像結合ステップとを繰り返し行なってもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0110】
また、このようなループの終了判定は、時間,読取回数,移動距離,移動停止,バッファ空き容量,画像に何も映っていないなどの任意の要素を組み合わせて行なうことができる。なお、これらの要素のうち移動距離検出を用いた終了判定は移動距離検出よりも後で実施可能になる。
そして、前述した図7,図11に示したフローチャートで示される処理は、上述した図14のステップC10や図15のステップD10における生体情報の入力ステップに相当し、又、図16におけるステップE10の生体情報読取ステップやE20の移動距離検出ステップに相当するものである。
【0111】
このように、本発明の一実施形態としての指紋認証装置1によれば、移動方向検出手段11によって検出された生体情報の移動方向に基づいて、座標変換手段14が採取された生体情報に対して座標変換処理を行なうので、指紋の部分画像の採取に際して指紋センサ31における最適なスライド方向(例えば、指紋センサ31の中心を通る法線方向)と被認証者の指のスライド方向との間に角度差(回転方向ずれ)が生じた場合においても、回転方向を補正することができ、確実に正立像を得ることができる。これにより、例えば、スライドするたびにスライド方向が変わり、指紋の部分画像ごとに回転方向ずれがあっても、正立像を得ることができる。すなわち、スライド方向による指紋画像の回転方向ずれの影響を受けにくくすることができる。
【0112】
また、本指紋認証装置1を回転させて逆さまの状態で使用する等、指紋センサ31の向きが変わった状態で指紋の部分画像の採取を行なっても、指紋画像を正立像として取得することができ、指紋認証装置1(指紋センサ31)の姿勢にかかわらずに指紋画像の採取を行なうことができ利便性が高い。
そして、本指紋認証装置1やディスプレイ81,指紋センサ31等の向き(姿勢)にかかわらず、指紋画像の正立像を得ることができ、本指紋認証装置1やディスプレイ81,指紋センサ31等の向き(姿勢,回転方向)を検出・判断する必要がないので、これらの向き等の検出・判断を行なうための機能(ハードウェア,ソフトウェア)をそなえる必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0113】
さらに、採取した指紋画像をディスプレイ81に表示させる際においても、装置の回転に影響を受けないように生体情報画像を表示することができ、指紋画像の目視確認等も行ない易い。
また、生体情報採取手段10を実現するセンサ(指紋センサ等)を実装する向きの自由度を高くすることができ、配線パターンの実装面積を小さくすることにより、装置の小型化や低価格化を行なうことができる。
【0114】
図17(a),(b)は指紋センサ31における配線パターンと実装面積との関係を説明するための図であり、図17(a)は配線パターン長が短い場合における実装面積を示す図、図17(b)は配線パターン長が長い場合における実装面積を示す図であり、これらの図17(a),(b)によれば、指紋センサ31を実装するに際して、センサの実装の自由度があり短い配線で実装することができれば、その実装面積を小さくすることができることがわかる。
【0115】
また、生体情報採取手段10が生体とセンサとが接触することで生体情報を読み取る接触型の場合に、生体は相対的に移動しているものの、摩擦などによって生体表皮のたわむことで、センサと接触している部位はほとんど移動しない、いわゆる引っかかりが生じた場合においても、生体の移動方向を正しく検出し、生体情報を確実に採取することができる。
【0116】
例えば、被認証者が指のスライドという操作に慣れていない場合には、指の移動(スライド)にかける力の加減が不適切となり、摩擦などによって生体表皮がたわむことで、指紋センサ31と接触している部位はほとんど移動しない引っかかりの状態が生じるおそれがある。このように、スライドが一瞬だけ停止したとしても、正確な移動方向検出を継続することができ、不慣れな被認証者でも良好に生体情報の入力を行なうことが可能となる。
【0117】
また、生体情報の採取に際して、指紋センサ31と指の移動方向との間に回転方向のずれが生じた場合においても、この回転方向のずれが補正された生体情報(正立像)を表示手段15に表示させることができ、例えば、生体情報採取手段10を逆さまの状態で使用する等、生体情報採取手段10を使用する向きに自由度が高い場合においても正立像を表示手段15に表示させることができ、生体情報採取手段10を実現するセンサを実装する向きの自由度を高くすることができる。
【0118】
さらに、生体情報採取手段に対する生体部位の位置を検出し、生体部位が配置されるべき位置に生体部位を配置させるように生体部位の移動を促す場合においても、容易に指示を行なうことができ利便性が高い。又、生体情報採取手段10を逆さまの状態で使用する等、その使用する向きに自由度が高い場合にも、被認証者に対して正しく位置ずれの指示を行なうことができる他、生体情報採取手段10を実現するセンサの実装する向きの自由度を高くすることができる。
【0119】
また、回転方向のずれを補正された生体情報を用いて認証を行なうことにより、生体情報の採取時にかかる回転ずれの影響を受けることなく認証処理を行なうことができる。例えば、登録データの登録時における指紋認証装置の向きと照合時の指紋認証装置の向きが大きく異なっている場合であっても、認証性能を低下させることなく認証可能となり、利便性が高い。
【0120】
(B)第1変形例の説明
図18は本発明の一実施形態としての指紋認証装置の第1変形例の機能構成を示すブロック図である。
本第1変形例としての指紋認証装置101は、第1実施形態の指紋認証装置1における位置検出手段16に代えて、生体情報中心位置検出手段21をそなえて構成されている他は、第1実施形態とほぼ同様に構成されている。なお、図中、既述の符号と同一の符号は同一もしくは略同一の部分を示しているので、その詳細な説明は省略する。
【0121】
生体情報中心位置検出手段21は、指紋センサ31(生体情報採取手段10)によって採取された指紋の部分画像(生体情報)の中心位置を検出するものである。なお、この生体情報中心位置検出手段21による、部分画像の中心位置の検出手法としては、既述の種々の手法を用いることができ、例えば、生体情報が指紋の場合には、特開2002-109543で
開示されている技術を用いることができる。
【0122】
本第1変形例における指示手段17は、生体情報中心位置検出手段21により検出された生体情報中心位置と、指紋センサ31における所定位置との差情報を、移動方向検出手段11によって検出された移動方向と所定の方向との差情報を用いて補正して、指紋センサ31における被認証者の指が配置されるべき位置にその指を配置させるようにその移動を促すようになっている。
【0123】
具体的には、指示手段17は、生体情報中心位置検出手段21で検出された生体情報中心位置Bx,Byと、指紋センサ31におけるセンサの中心位置Cx,Cyとのそれぞれの差情報Dx,Dyを用いて指示する。すなわち、Dx=Cx-Bx,Dy=Cy-Byとし、指示方向をIx,Iyとした場合に、指示方向は差情報の逆方向としてIx=-Dx,Iy=-Dyとする。つまり、被認証者の指が指紋センサ31に対して右寄りに位置していた場合には、被認証者に対してその指を左寄りに移動させるような指示(誘導)を行なう。
【0124】
また、被認証者に対する指示は、例えば、左矢印などの方向を示唆するマークをディスプレイ81上に表示させてもよい。なお、このとき、詳細な方向ではなく、より差情報の大きさが大きい成分のみを指示し、例えば90度刻みとしてもよい。
さらに、このとき、指紋センサ31と指示手段17に回転方向のずれがあった場合には、意味のない指示となるため、指紋センサ31から検出される生体情報の移動方向との差情報θを用いて補正を行なう。
【0125】
補正された方向をIx’,Iy’とすると、Ix’,Iy’は以下の式(13)を用いて算出する。
【0126】
【数5】
【0127】
このように、本発明の第1変形例としての指紋認証装置101によれば、第1実施形態と同様の作用効果を得られる他、回転方向のずれを補正された生体情報を用いて認証することで、回転ずれの影響を受けずに認証を行うことが可能となる効果を奏する上、更に、指紋センサ31を逆方向から使用する等、その使用する向きに自由度が高い場合にも正しく位置ずれの指示を行なうことができる他、指紋センサ31を実装する向きの自由度が高くなり、実用的に極めて有用である。
【0128】
(C)第2変形例の説明
上述の如き指紋センサ31やディスプレイ81をそなえた情報処理装置において、ディスプレイ81上に表示されるカーソル(ポインタ)を指紋センサ31を用いて移動させることが考えられる。すなわち、指紋センサ31をポインティングデバイスとして機能させるのである。
【0129】
図19は本発明の一実施形態の指紋認証装置の第2変形例としての機能構成を示すブロック図である。この図19に示すように、本第2変形例の指紋認証装置102は、生体情報採取手段10,移動方向検出手段11,座標変換手段14,表示手段15,記憶手段22,生体情報移動方向補正手段40(基準方向設定手段41),移動距離検出手段42およびポインタ移動制御手段43をそなえて構成されている。なお、図中、既述の符号と同一の符号は同一もしくは略同一の部分を示しているので、その詳細な説明は省略する。
【0130】
移動距離検出手段42は、指紋センサ31に対する被認証者(利用者)の指の移動距離を検出するものであって、生体情報の移動距離を検出するものである。基準方向設定手段41は、指紋センサ31に対する利用者の指の移動方向の基準方向を設定するものであり、ポインタ移動制御手段43は、基準方向設定手段41によって設定された基準方向と、移動方向検出部11によって検出された指の移動方向と、移動距離検出手段42によって検出された指の移動距離とに基づいて、表示手段15上におけるポインタの移動を制御するものである。
【0131】
移生体情報移動方向補正手段40は、基準方向設定手段41をそなえるとともに、この基準方向設定手段41によって設定された基準方向を基準にして、指の移動方向を検出・補正するものである。
表示手段15には、指紋センサ31上での指の移動方向と移動距離に応じて移動するカーソルが表示されるようになっている。
【0132】
図20(a),(b)はいずれも本発明の一実施形態としての指紋認証装置の第2変形例の外観例を示す図であり、図20(a)は変形前の本指紋認証装置102の外観例を示す図、図20(b)には変形後の本指紋認証装置102の外観例を示す図である。
これらの図20(a),(b)に示す指紋認証装置102も、第1実施形態の指紋認証装置1と同様に、指紋センサ31をそなえる本体1aとディスプレイ81をそなえるディスプレイユニット1bとを2軸ヒンジ(爪切り型ヒンジ)1cを介して開閉自在に接続して構成されている。
【0133】
すなわち、本指紋認証装置102は、本体1a側に指紋センサ31が実装され、ディスプレイユニット1bを反転させて折りたたむ仕様のノートパソコンとして構成され、図20(b)の状態と図20(a)の状態とではディスプレイ81の実装方向は同一方向であるとする。
本指紋認証装置102においては、指紋認証時には、被認証者(利用者)は指紋センサ31に対して手前側に向かってスライドするので、スライド方向が鉛直下向きとすれば、移動方向を修正することができる。
【0134】
そこで、座標変換手段14でスライド方向を用いて生体情報画像が上下左右逆となるように座標変換を行なった後で、移動方向,移動距離を求めてもよい。あるいは、生体情報画像を使用しない場合には、生体情報画像ではなく検出された移動方向を変換してもよい。
すなわち、本指紋認証装置102においては、移動方向を正しく検出するために、あらかじめ移動方向を補正するための初期値として、基準方向設定手段41によって、基準方向として入力された指紋センサ31上での指の移動方向を、基準値(初期値)として記憶手段22に記憶し(初期値設定ステップ)、この設定した基準値を用いて移動方向を補正する(補正ステップ)。
【0135】
本第2変形例としての指紋認証装置102における移動方向の補正手法を、図21および図22に示すフローチャートに従って説明する。なお、図21は初期値設定ステップの詳細を説明するフローチャート(ステップF10〜F20)、図22は移動方向の補正ステップの詳細を説明するフローチャート(ステップG10〜G40)である。
初期値設定ステップにおいては、先ず、基準方向として入力された移動方向を移動方向検出手段11により検出し(ステップF10)、その後、検出された移動方向を記憶手段22に初期値(初期方向)として記憶し(ステップF20)、処理を終了する。
【0136】
また、移動方向補正ステップにおいては、移動方向検出手段11によって移動方向を検出し(ステップG10)、又、移動距離検出手段42によりその移動距離を検出する(ステップG20)。なお、これらの移動方向を検出するステップと移動距離を検出するステップとは逆でもよく、又、同時に行なってもよい。
次に、生体情報移動方向補正手段40は、記憶手段22から初期値設定ステップのステップF20において記憶された初期値(初期方向)を読み出し(ステップG30)、ステップG10において検出された移動方向との差を演算することで移動方向を補正する(ステップG40)。ポインタ移動制御部43は、この補正された移動方向に従って、ディスプレイ81上においてポインタを移動させるよう制御を行なう。
【0137】
このように、本発明の第2変形例としての指紋認証装置102によれば、生体部位の移動方向の基準方向を初期値としてあらかじめ設定し、この初期値を用いて生体部位の移動方向を補正することによって、生体情報採取手段10を種々の方向から使用することができ、その使用する向きに自由度が高い場合にも、生体部位の移動方向を正しく検出することが可能となり、生体情報採取手段10を実現するセンサを実装する向きの自由度を高くすることができる。
【0138】
これにより、指紋センサ31をポインティングデバイスとして使用する場合に、指紋センサ31を上下逆さま,あるいは横向きに置いて使用した場合においても、利用者が入力した方向に合わせて、ディスプレイ81上においてポインタを移動させることができる。
なお、図19中においては、便宜上、位置検出手段16,指示手段17,移動方向検索範囲縮小手段12,移動停止検出手段13,特徴抽出手段32,一致度算出手段19,一致度判定手段20,生体情報中心位置検出手段21,記憶手段22等を表わしていないが、これに限定されるものではなく、これらの全てもしくは少なくとも一部をそなえるとともに、これらの各部を機能させてもよい。
【0139】
(D)適用例
以下に、本発明の指紋認証装置の適用例を示す。
(1)携帯電話
図23(a),(b),(c)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(携帯電話)200に適用した例を示す図であり、図24(a),(b)は図23(b),(c)の状態において採取された画像に基づいて生成された指紋画像の例を示す図である。
【0140】
これらの図23(a)〜(c)に示すモバイル機器200は、所有者認証などの機能を実現する目的でスウィープ型指紋センサ31を搭載されたものである。近年の携帯電話のようにモバイル機器が小型化されると、装置の持ち方は様々に変化する。特に携帯電話は片手で把持されるため、持ち方は変化しやすいと考えられる。登録時はスライドに慣れていなかったが幾度となく照合するうちに慣れ、持ち方が変わることもある。
【0141】
図23(a),(b)は紙面法線周りに回転方向ずれがあった例を示している。一般的に、登録データと入力データに回転方向ずれがある場合には認証性能が低下するが、本発明によれば、スライド方向が下向きになるように指紋画像を座標変換することにより、図24(a),(b)に示すように、回転方向ずれなく認証できる。
なお、回転方向ずれは、指紋画像を座標変換して補正してもよく、又、登録データあるいは照合データに対して座標変換してもよい。ただし、指紋画像を表示する場合には、指紋画像を座標変換しておくと、登録データおよび入力データの表示方向がスライド方向に依存しなくなる。
【0142】
(2)PDA
図25(a),(b)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(PDA;Personal Digital Assistants)に適用した例を示す図であり、こ
の図25(a),(b)に示すPDA201においては、ディスプレイ81の下方位置において、スウィープ型指紋センサ31が縦方向(90度あるいは270度の向き)に実装されている。
【0143】
このPDA201において想定されるスライド方向は横方向であり、利用者(被認証者)右手でも左手でも指紋入力が可能である。
(3)PDA
図26(a),(b)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(PDA)に適用した例を示す図であり、この図26(a),(b)に示すPDA202は、図25(a),(b)に示したPDA201を90度回転させたものと同様に構成され、更に、180度回転させても使用可能に構成されている。
【0144】
このPDA202によれば、装置の180度回転に依存しない指紋入力が可能である。
(4)PDA
図27(a),(b)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(PDA)に適用した例を示す図である。この図27(a),(b)に示すPDA203においては、装置背面、すなわち、本体203aにおけるディスプレイ81が形成されている面とは反対側の面にスウィープ型指紋センサを縦方向(90度あるいは270度の向き)が実装されている。
【0145】
このPDA203において想定されるスライド方向は横方向であり、利用者(被認証者)右手でも左手でも指紋入力が可能である。 (5)ノートPC
図28(a),(b)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(ノートPC(Personal Computer))に適用した例を示す図であり、図28
(a)はディスプレイユニット204bを開いた状態を示す図、図28(b)はディスプレイユニット204bを表側にして畳んだ状態を示す図である。
【0146】
この図28(a),(b)に示すノートPC204は、ディスプレイユニット1bにおけるディスプレイ81の隣の位置に、スウィープ型指紋センサ31を横方向に実装したものであり、更に、図12に示した指紋認証装置1と同様に、本体204aとディスプレイ81をそなえるディスプレイユニット204bとを2軸ヒンジ(爪切り型ヒンジ)204cを介して開閉自在に接続して構成されている。
【0147】
また、このノートPC204のディスプレイユニット204bは、図28(b)に示すように、2軸ヒンジ204cを用いてディスプレイユニット204bを軸bで回転させて、更に軸aを介してディスプレイユニット204bを閉じ、ディスプレイ81が表面に出るような状態で畳んだ際に、ディスプレイ81に表示される画面が180度回転して表示されるようになっている。
【0148】
すなわち、図28(a)に示す例においては、文字“ABC”が正立した状態で表示されているが、2軸ヒンジ204cを用いてディスプレイユニット204bを軸bで回転させて、更に軸aを介してディスプレイユニット204bを閉じ、ディスプレイユニット204bが表面に出るような状態で畳んだ場合においても、図28(b)に示すように、文字“ABC”が正立して表示されるようになっている。
【0149】
このノートPC204においては、折りたたみ使用時には開使用時と比べてスライド方向が反対方向となるが、本発明によれば、装置の180度回転に依存しない指紋入力が可能である。
本発明によれば、ディスプレイ81の表示方向を180度回転させることによりスライド方向やカーソル移動方向も180度ずれるが、移動方向補正を行なうことによりカーソル移動方向が180度回転しない。
【0150】
(6)タブレットPC
図29(a),(b)および図30(a),(b)はそれぞれ本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(タブレットPC)に適用した例を示す図であり、図29(a)はタブレットPC205を縦方向で使用する状態を示す図、図29(b)はタブレットPC205を横方向で使用する状態を示す図、図30(a)はタブレットPC206を縦方向で使用する状態を示す図、図30(b)はタブレットPC206を横方向で使用する状態を示す図である。
【0151】
図29(a),(b)に示すタブレットPC205においては、装置本体におけるディスプレイ81の長手方向に沿ってスウィープ型指紋センサが実装されており、図30(a),(b)に示すタブレットPC206においては、装置本体におけるディスプレイ81の短手方向に沿ってスウィープ型指紋センサが実装されている。
そして、これらのタブレットPC205,206を、そのディスプレイの表示方向に合わせて、装置を90度あるいは270度回転させて設置することができるものである。このタブレットPC205,206によれば、装置の90度,180度,270度の回転に依存しない指紋入力が可能である。
【0152】
また、タブレットPC205は、図29(b)に示すように、図29(a)に示す縦方向での使用状態から、時計回りに90度回転させて横方向で使用する場合に、ディスプレイ81に表示する画面を90度回転して表示させることができるようになっている。
すなわち、図29(a)に示す例においては、文字“ABC”が正立した状態で表示されているが、この状態からタブレットPC205を時計方向に90度回転させた場合においても、図29(b)に示すように、文字“ABC”が正立して表示させることができるようになっている。
【0153】
同様に、タブレットPC206、図30(b)に示すように、図30(a)に示す縦方向での使用状態から、時計回りに90度回転させて横方向で使用する場合に、ディスプレイ81に表示する画面を90度回転して表示させることができるようになっている。
すなわち、図30(a)に示す例においては、文字“ABC”が正立した状態で表示されているが、この状態からタブレットPC206を時計方向に90度回転させた場合においても、図30(b)に示すように、文字“ABC”が正立して表示させることができるようになっている。
【0154】
また、スライド方向が上下方向となる向きに装置を設置する場合には、認証者の10指のうちいずれか1指以上、スライド方向が左右方向となる向きに装置を設置する場合には両親指のいずれか1指以上を登録しておくことにより、その設置方向を変えても高い認証性能を維持できる。
なお、図29(a)に示したタブレットPC205においては、向かってディスプレイ81の右側に指紋センサ31がそなえられているが、これに限定されるものではなく、例えば、向かってディスプレイ81の左側に指紋センサ31をそなえてもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。そして、このように向かってディスプレイ81の左側に指紋センサ31をそなえた場合には、本体を時計回りに90度回転させた場合には、ディスプレイ81の上側に指紋センサ31が位置することになる。
【0155】
同様に、図30(a)に示したタブレットPC206においては、向かってディスプレイ81の上側に指紋センサ31がそなえられているが、これに限定されるものではなく、例えば、向かってディスプレイ81の下側に指紋センサ31をそなえてもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。そして、このように向かってディスプレイ81の下側に指紋センサ31をそなえた場合には、本体を時計回りに90度回転させた場合には、向かってディスプレイ81の左側に指紋センサ31が位置することになる。
【0156】
また、これらのタブレットPC205,206の回転方向についても、本体を半時計方向に回転させてもよい。
(E)その他
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0157】
例えば、上述した実施形態では、被検体が人の指であり生体情報として指紋画像を採取する場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、被検体としての掌から、掌紋画像や血管パターン画像等を生体情報として採取する場合にも上述と同様に適用され、上述と同様の作用効果を得ることができる。
なお、本発明の各実施形態が開示されていれば、本発明を当業者によって実施・製造することが可能である。
【0158】
(F)付記
(付記1) 相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取手段と、
該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出手段と、
該移動方向検出手段によって検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換手段とを備えることを特徴とする、生体情報入力装置。
【0159】
(付記2) 該移動方向検出手段により、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出手段により前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小手段をそなえることを特徴とする、付記1記載の生体情報入力装置。
(付記3) 該生体部位の移動の停止を検出する移動停止検出手段をそなえ、
該移動停止検出手段により前記生体部位の移動の停止が検出された場合に、該生体情報の入力を停止することを特徴とする、付記1記載の生体情報入力装置。
【0160】
(付記4) 該座標変換手段によって座標変換された生体情報を表示する生体情報表示手段を備えることを特徴とする、付記1記載の生体情報入力装置。
(付記5) 相対的に移動している認証対象の生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取手段と、
該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出手段と、
該移動方向検出手段によって検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換手段と、
該座標変換手段による座標変換処理結果を用いて該認証対象に関する認証を行なう認証手段とを備えること特徴とする、生体認証装置。
【0161】
(付記6) 該移動方向検出手段により、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出手段により前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小手段をそなえることを特徴とする、付記5記載の生体認証装置。
(付記7) 該生体部位の移動の停止を検出する移動停止検出手段をそなえ、
該移動停止検出手段により前記生体部位の移動の停止が検出された場合に、該生体情報の入力を停止することを特徴とする、付記5記載の生体認証装置。
【0162】
(付記8) 該座標変換手段によって座標変換された生体情報を表示する生体情報表示手段を備えることを特徴とする、付記5記載の生体認証装置。
(付記9) 生体情報採取手段を用いて相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取ステップと、
該生体情報採取ステップにおいて採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出ステップと、
該移動方向検出ステップにおいて検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換ステップとを備えることを特徴とする、生体情報処理方法。
【0163】
(付記10) 該移動方向検出ステップにおいて、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出ステップにおいて前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小ステップとをそなえることを特徴とする、付記9記載の生体情報処理方法。
(付記11) 該生体部位の移動の停止を検出する移動停止検出ステップをそなえ、
該移動停止検出ステップにおいて前記生体部位の移動の停止が検出された場合に、該生体情報の入力を停止する停止ステップをそなえることを特徴とする、付記9記載の生体情報処理方法。
【0164】
(付記12) 該座標変換手段によって座標変換された生体情報を表示手段に表示する生体情報表示ステップを備えることを特徴とする、付記9記載の生体情報処理方法。
(付記13) 生体情報採取手段を用いて相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取ステップと、
該生体情報採取ステップにおいて採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出ステップと、
該移動方向検出ステップにおいて検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする、生体情報処理プログラム。
【0165】
(付記14) 該移動方向検出ステップを該コンピュータに実行させる際に、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出ステップにおいて前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小ステップを該コンピュータに実行させることを特徴とする、付記13記載の生体情報処理プログラム。
【0166】
(付記15) 該生体部位の移動の停止を検出する移動停止検出ステップと、
該移動停止検出ステップにおいて前記生体部位の移動の停止が検出された場合に、該生体情報の入力を停止する停止ステップとを該コンピュータに実行させることを特徴とする、付記13記載の生体情報処理プログラム。
(付記16) 該座標変換手段によって座標変換された生体情報を表示手段に表示する生体情報表示ステップを該コンピュータに実行させることを特徴とする、付記13記載の生体情報処理プログラム。
【0167】
(付記17) 生体情報採取手段を用いて相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取ステップと、
該生体情報採取ステップにおいて採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出ステップと、
該移動方向検出ステップにおいて検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする、生体情報処理プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【0168】
(付記18) 該生体情報処理プログラムが、
該移動方向検出ステップを該コンピュータに実行させる際に、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出ステップにおいて前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小ステップを該コンピュータに実行させることを特徴とする、付記17記載の生体情報処理プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【0169】
(付記19) 該生体情報処理プログラムが、
該生体部位の移動の停止を検出する移動停止検出ステップと、
該移動停止検出ステップにおいて前記生体部位の移動の停止が検出された場合に、該生体情報の入力を停止する停止ステップとを該コンピュータに実行させることを特徴とする、付記17記載の生体情報処理プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【0170】
(付記20) 該生体情報処理プログラムが、
該座標変換手段によって座標変換された生体情報を表示手段に表示する生体情報表示ステップを該コンピュータに実行させることを特徴とする、付記17記載の生体情報処理プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【産業上の利用可能性】
【0171】
携帯電話やPDAといった小型情報機器のようにセンサを組み込む空間が十分得られない装置において個人認証を行なうシステムに用いて好適であり、その有用性は極めて高いものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】本発明の一実施形態としての指紋認証装置の機能構成(原理的な構成)を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態としての指紋認証装置の具体的な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態としての指紋認証装置における移動方向初期探索範囲の例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態としての指紋認証装置における移動方向初期探索範囲の例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態としての指紋認証装置における移動方向初期探索範囲の他の例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態としての指紋認証装置における移動方向初期探索範囲の他の例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態としての指紋認証装置における移動方向探索範囲の設定手法を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態としての認証装置における座標変換前の生体情報画像と座標変換後の生体情報画像との関係を示す図である。
【図9】指紋センサにおける指紋画像の採取時における指のスライド速度の変化を例示する図である。
【図10】本発明の一実施形態としての指紋認証装置における停止監視範囲および移動方向初期探索範囲の例を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態としての指紋認証装置における移動方向探索範囲の設定手法に停止監視範囲を設けた場合の処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】(a),(b)はいずれも本発明の一実施形態としての認証装置の外観例を示す図である。
【図13】(a),(b)は本発明の一実施形態としての認証装置のディスプレイに表示される指示方向を説明するための図である。
【図14】本発明の一実施形態としての認証装置における処理を説明するためのフローチャートである。
【図15】本発明の一実施形態としての認証装置における処理を説明するためのフローチャートである。
【図16】図14および図15における生体情報入力ステップを説明するためのフローチャートである。
【図17】(a),(b)は指紋センサにおける配線パターンと実装面積との関係を説明するための図である。
【図18】本発明の一実施形態としての指紋認証装置の第1変形例の機能構成を示すブロック図である。
【図19】本発明の一実施形態としての指紋認証装置の第2変形例の機能構成を示すブロック図である。
【図20】(a),(b)はいずれも本発明の一実施形態としての指紋認証装置の第2変形例の外観例を示す図である。
【図21】本発明の一実施形態としての指紋認証装置の第2変形例における移動方向の補正手法を説明するためのフローチャートである。
【図22】本発明の一実施形態としての指紋認証装置の第2変形例における移動方向の補正手法を説明するためのフローチャートである。
【図23】(a),(b),(c)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(携帯電話)に適用した例を示す図である。
【図24】(a),(b)は図23(b),(c)の状態において採取された画像に基づいて生成された指紋画像の例を示す図である。
【図25】(a),(b)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(PDA;Personal Digital Assistants)に適用した例を示す図である。
【図26】(a),(b)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(PDA)に適用した例を示す図である。
【図27】(a),(b)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(PDA)に適用した例を示す図である。
【図28】(a),(b)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(ノートPC(Personal Computer))に適用した例を示す図である。
【図29】(a),(b)はそれぞれ本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(タブレットPC)に適用した例を示す図である。
【図30】(a),(b)はそれぞれ本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(タブレットPC)に適用した例を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証を行なうために入力される生体情報を処理する技術に関し、特に、生体情報を部分的に且つ連続的に採取する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な生体認証装置においては、予め生体情報から生体データ(登録データ)を作成して登録(記録)しておくとともに、照合を行なう生体情報から生体データ(照合データ)を作成し、この照合データと登録データとを照合するようになっている。
生体認証には、認証に用いられる生体情報には万人不同であり且つ終生不変のもの(例えば、指紋,掌紋,指静脈,手のひら静脈等)を用いるようになっているが、様々な要因により認証に失敗するケースが生じてしまうという課題がある。
【0003】
そして、この認証の失敗は大きく2つの要因で分類することができる。第1には、登録データおよび照合データがともに同一人のものであるにも関わらず誤って他人と判定するケースであり、本人排除と呼ばれるものである。第2には、登録データと照合データとが互いに他人のものであるにも関わらず、誤って同一人のものであると判定するケースであり、他人受入と呼ばれるものである。
【0004】
また、生体情報の照合には従来から種々の手法が実用化されているが、いくつかの方式では、生体情報の回転方向ずれが原因で認証に失敗することがある。すなわち、生体情報の入力装置と生体との間で回転方向に関する自由度が大きい場合に、回転ずれが照合方式の許容範囲を超えて本人排除率が増加する。又、回転方向に関する自由度を許容するために,照合データあるいは登録データを回転させながら照合を繰り返し行なう手法も知られているが、照合データもしくは登録データを回転させることにより、偶然に他人同士の照合データと登録データとが一致することがあり、これにより他人受入率が増加する。
【0005】
さて、生体情報の入力装置としてスウィープ型指紋センサが知られている。このスウィープ型指紋センサは、指の長さよりも十分に短く、小面積の矩形採取面(センサ面/撮像面)を有している。そして、指を採取面に対して移動させるか、又は、採取面(指紋センサ)を指に対して移動させるかしながら、指紋センサによって、指の指紋について複数の部分画像を連続的に採取し、採取された複数の部分画像から、指の指紋画像の全体を再構成することが行なわれている。このように再構成された指紋画像から、特徴点(隆線の分岐点や端点)の情報を抽出・生成し、その情報に基づいて上記個人認証が行なわれることになる。なお、上述のような、採取面に対する指の相対的移動のことを「スウィープ(sweep)またはスライド(slide)」と呼ぶ。
【0006】
このようなスウィープ型指紋センサをそなえた指紋読取装置は、例えば、下記特許文献1,2に開示されている。又、スウィープ型指紋センサから検出した平行移動量と回転移動量を用いて指紋画像を再構成する手法が、下記特許文献3に開示されている。
スウィープ型指紋センサにおいては、下記特許文献1〜3に示すように、センサと指との相対位置を変化させることで指紋の部分画像を順次入力するようになっている。なお、以下、センサと指との相対位置を変化させることをスライドというとともに、相対位置が変化する方向(指の移動方向)をスライド方向という。通常、スウィープ型指紋センサは、センサに対して指を手前側(認証対象者側)にスライドさせ、その間に、指紋の部分画像を連続的に取得する。
【0007】
例えば、上記特許文献3においては、スライド方向を検出し、その検出されたスライド方向があらかじめ想定された方向と逆方向である場合には、指紋画像の入力を中断することが開示されている。すなわち、従来の指紋画像入力装置においては、スライド方向が限定されている。
【特許文献1】特開平10−91769号公報
【特許文献2】特開平11−253428号公報
【特許文献3】特開2004−110438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、例えば、ノート型PC(Personal Computer)やPDA(Personal Digital Assistants),携帯電話等の携帯型の情報処理装置であって、スウィープ型指紋センサをそなえるものにおいて、装置を上下方向もしくは左右方向に反転させて使用することを仕様とするものがある。
しかしながら、このような従来の情報処理装置においては、スウィープ型指紋センサを用いて指紋画像を入力する際に予め想定された方向に指をスライドさせる必要があるので、指紋の読み取りを行なうために装置を回転させる必要があり、繁雑であるという課題がある。又、スウィープ型指紋センサのようにセンサと指との相対位置の変化を利用する指紋画像入力装置においては、スライド方向による指紋画像の回転方向ずれの影響を受けにくくすることが望ましい。
【0009】
また、スウィープ型指紋センサにおけるスライド方向の検出は、 センサによって連続
して取得した複数の部分画像を相互に比較して、最も重なりあう相対位置を算出することで実現される。しかし、速くスライドしても重なりあうように部分画像を取得するには短い時間間隔とする必要があり、スライド方向の検出の負荷が重い。例えば、僅かずつ相対位置をずらしながら、重ね合わせた領域で重なり度合いを算出し、最も重なり度合いが大きい相対位置に基づいてスライド方向が検出するという一連の処理を行なうこととなり、計算量が多くなる。従って、効率良くスライド方向を検出することも課題となる。
【0010】
さらに、生体情報を用いた認証技術においては、指紋等の万人不同,終生不変の特徴をもつ部位を生体情報として使用している。しかしながら、このような生体情報においても、登録時と照合時で異なる部位を入力した場合には、当然ながら本人と認証することができない。このため生体情報入力装置においては、生体情報の入力位置の再現性を高める必要がある。
【0011】
このような生体情報の入力位置の再現性を高めるために、利用者が入力された生体情報画像を目視確認することが有効である。しかしながら、上下逆さま、あるいは横向きに置いて使用することが仕様となっているような装置では、入力される生体情報画像が回転方向にずれてしまい、このような回転方向のずれがあると利用者は目視確認しにくくなる。従って、装置の回転に影響を受けないように生体情報画像を表示することも課題である。
【0012】
さらに、生体情報画像の読み取りに際して、例えば、センサ上に載置された指の位置が、センサの中心位置から著しくずれている場合に、利用者に対して、例えば「もっと右側に指を移動させて下さい」等の誘導方向をメッセージとして提示することにより、センサにおける最適な位置に利用者の指を誘導することが考えられる。しかしながら、例えば、指紋センサを上下逆さまな状態で使用することが可能な装置においては、このように上下逆さまな状態では、装置から見た方向と利用者から見る方向とが逆方向となるので、利用者に対し正しい方向に指の移動を誘導するためには、装置の状態(姿勢,向き)等を考慮して行なう必要があり、煩雑である。
【0013】
また、スウィープ型指紋センサをポインティングデバイスとして使用することも考えられるが、上下逆さま,あるいは横向きに置いて使用することが可能な装置においては、スウィープ型指紋センサをポインティングデバイスとして使用する場合に、装置から見た方向と利用者から見る方向とが異なることにより、ポインティング機能が検出する方向情報が利用者が入力する方向とずれてしまう場合がある。
【0014】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、生体情報の入力に際して生体のスライド方向にかかわらず使用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このため、本発明の生体情報入力装置は、相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取手段と、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出手段と、該移動方向検出手段によって検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換手段と、該移動方向検出手段により、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出手段により前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小手段とを備えることを特徴としている。
【0016】
また、本発明に関連する生体認証装置は、相対的に移動している認証対象の生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取手段と、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出手段と、該移動方向検出手段によって検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換手段と、該座標変換処理手段による座標変換処理結果を用いて該認証対象に関する認証を行なう認証手段とを備えること特徴としている。
【0017】
さらに、本発明の生体情報処理方法は、生体情報採取手段を用いて相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取ステップと、該生体情報採取ステップにおいて採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出ステップと、該移動方向検出ステップにおいて検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換ステップと、該移動方向検出ステップにおいて、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出ステップにおいて前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小ステップとを備えることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の生体情報処理プログラムは、生体情報採取手段を用いて相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取ステップと、該生体情報採取ステップにおいて採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出ステップと、該移動方向検出ステップにおいて検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換ステップと、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出ステップにおいて前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小ステップとをコンピュータに実行させることを特徴としている。
【0019】
また、本発明に関連するコンピュータ読取可能な記録媒体は、上述した生体情報処理プログラムを記録したものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、移動方向検出手段によって検出された生体情報の移動方向に基づいて、座標変換手段が採取された生体情報に対して座標変換処理を行なうので、生体情報の採取に際して生体情報採取手段と生体のスライド方向との間に角度差(回転方向ずれ)が生じた場合においても、回転方向を補正することができ、確実に正立像を得ることができる。これにより、例えば、スライドするたびにスライド方向が変わり、生体情報ごとに回転方向ずれがあっても、正立像を得ることができる。
【0021】
また、本生体認証装置を回転させて逆さまの状態で使用する等、生体情報採取手段の向きが変わった状態で生体情報の採取を行なっても、生体情報画像を正立像として取得することができ、装置の姿勢にかかわらずに生体情報の採取を行なうことができ利便性が高い。
さらに、採取した生体情報を表示手段に表示させる場合においても、装置や表示手段,生体情報採取手段等の向き(姿勢)にかかわらず、生体情報の正立像を得ることができ、装置や表示手段,生体情報採取手段等の向き(姿勢)を検出・判断する必要がないので、これらの検出・判断を行なうための機能をそなえる必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0022】
また、生体情報採取手段を実装する向きの自由度を高くすることができ、配線パターンの実装面積を小さくすることにより、装置の小型化や低価格化を行なうことができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(A)実施形態の説明
図1および図2は、いずれも本発明の一実施形態としての指紋認証装置(生体情報入力装置)を示すもので、図1はその機能構成(原理的な構成)を示すブロック図、図2はその具体的な構成を示すブロック図である。これらの図1および図2において、同一部分には同一符号を付している。
【0024】
生体情報としては、主に指紋,掌紋,指静脈,手のひら静脈などを用いたものが挙げられるが、本実施形態においては、特に、生体情報として指紋の画像を用いる場合について説明する。
本指紋認証装置1には、図1に示すように、生体情報採取手段10と生体情報処理部110としての機能がそなえられ、又、生体情報処理部110は、移動方向検出手段11,座標変換手段14,位置検出手段16,指示手段17,特徴抽出手段32,一致度算出手段19,一致度判定手段20および記憶手段22としての機能がそなえられている。
【0025】
実際には、本実施形態の指紋認証装置1は、図2に示すごとく、例えばリアルタイムクロック80,揮発性メモリ部90,不揮発性メモリ部91(記憶手段22),ディスプレイ81(表示手段15)およびCPU(Central Processing Unit)100を有する一般
的なパーソナルコンピュータ等に、生体情報採取手段10としてのスウィープ型指紋センサ31を付設することにより実現される。
【0026】
その際、後述する、生体情報処理部110(移動方向検出手段11,座標変換手段14
,位置検出手段16,指示手段17,特徴抽出手段32,一致度算出手段19,一致度判定手段20),相対位置検出手段33,補正手段34,移動物体検知手段35,登録/照合用データ生成部(生成手段)36および照合部(一致度算出手段19,一致度判定手段20)37としての機能が、所定のプログラム(生体情報処理プログラム)をCPU100で実行することにより実現される。
【0027】
スウィープ型指紋センサ31(生体情報採取手段10)は、被認証者の生体情報を映像化しその生体情報(指紋)についての複数の部分画像(生体情報画像)を連続的に採取するものである。より具体的には、被認証者の指(生体部位)を採取面(センサ面)に対し相対的に接触移動させながら、その指の指紋の部分画像を連続的に採取するものであり、これにより、相対的に移動している生体部位を読み取り、この生体部位についての2次元配列状の複数の部分画像を生体情報として連続的に採取するようになっている。なお、以下、このスウィープ型指紋センサ31を単に指紋センサ31ともいう。
【0028】
なお、指紋センサ31における指紋画像の採取方法としては、例えば、静電容量方式,感熱式,電界式,光学式のいずれの手法を用いてもよい。
指紋は、被認証者の外皮(指;生体部位)上に形成されており、センサ面に接触しうる隆線(接触部分)とセンサ面に接触しない谷線(非接触部分/空隙部分)とから成る紋様である。指紋センサ31は、センサ面に接触する隆線部分とセンサ面に接触しない谷線部分とで検知感度が異なることを利用して、指紋の部分画像を多値画像として採取するようになっている。多値画像では、センサからの距離に応じて輝度が異なっており、通常、センサとの距離が近い隆線部分が低輝度で表示され、センサとの距離が比較的遠い谷線部分高輝度で表示される。
【0029】
指紋による認証時に、被認証者は、指紋センサ31のセンサ面上を指で触れながら、指の根元側から指先側,指の右側から左側など任意の方向に指を移動させる。ただし、指紋センサ31側を指に対して移動させる機構をそなえた場合、被認証者は指を移動させる必要はない。以降、本実施形態では、被認証者が、指をその根元側から指先側に向けてスライドする場合について説明する。なお、指紋センサ31の構成は公知であるため、その詳細な説明は省略する。
【0030】
リアルタイムクロック80は、指紋センサ31によって連続的に採取される各部分画像にタイムスタンプを付加するために用いられるものである。なお、指紋センサ31による画像取得の時間間隔が既知かつ誤差を無視できるほど一定の時間間隔である場合には、このリアルタイムクロック80は必ずしも必要ではない。
揮発性メモリ部90は、指紋センサ31によって連続的に採取される部分画像や、CPU100の機能によって得られた特徴,相対位置,補正結果や、CPU100で本実施形態の指紋認証装置としての機能を実現するために必要になる各種数値等の情報を記憶するものである。
【0031】
不揮発性メモリ部91は、被認証者について予め登録されている指紋データ(登録データ)を保持するものであり、図1における記憶手段22として機能するものである。この不揮発性メモリ部91に保持される指紋データは、指の大きさよりも大きいセンサ面を有する一般的な指紋センサによって採取された指紋画像から抽出されたものであってもよいし、本実施形態の登録/照合用データ生成部36によって生成された登録用データであってもよい。
【0032】
ディスプレイ81(表示手段15)は、種々の画像や情報を表示するものであり、後述する座標変換手段14によって座標変換された生体情報を表示する生体情報表示手段として機能する他、後述する指示手段17によって利用者(被認証者)に対して行なわれる指示を表示するようになっている。
生体情報処理部110は、指紋センサ31によって採取された指紋の部分画像(生体情報)を処理するものであって、移動方向検出手段11,座標変換手段14,位置検出手段16,指示手段17,特徴抽出手段32,一致度算出手段19,一致度判定手段20,生体情報中心位置検出手段21としての機能をそなえている。
【0033】
移動方向検出手段11は、指紋センサ31によって採取された指紋の部分画像に基づいて指紋センサ31に対する指の移動方向を検出するものである。
また、この移動方向検出手段11は、移動方向探索範囲縮小手段12および移動停止検出手段13としての機能をそなえている。移動方向探索範囲縮小手段12は、移動方向検出手段11により、連続して同じ移動方向が検出されたときに、その移動方向検出手段11により移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、予め設定された移動方向初期探索範囲から、その検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小するものである。
【0034】
図3および図4は本発明の一実施形態としての指紋認証装置1における移動方向初期探索範囲の例を示す図であり、それぞれ、ある時刻T−ΔTに指紋センサ31で検出された指紋の部分画像(破線部分参照)と、そのΔT後(時刻T)に検出された指紋の部分画像
(実線部分参照)とともに、時刻Tにおける移動方向初期探索範囲(一点鎖線部分参照)を表わしている。
【0035】
すなわち、これらの図3および図4は、それぞれ2つの指紋画像どうしで同じ部位がぴったり重なる位置を探すために、少しずつ指紋画像を重ねる位置をずらしていく際における、ずらす範囲を説明するためのものであって、特に移動方向の初期探索範囲を示すものである。なお、時刻T−ΔTに採取された生体情報画像の中心から時刻Tに採取された生体情報画像の中心に引いた矢印は移動方向を表す。
【0036】
なお、図3は指紋センサ31によって採取された指紋画像(方形)を中心とする全方向(360度)を移動方向初期探索範囲とする例を示している。この図3に示す例においては、指紋センサ31がほぼ真四角に近い形状をそなえ、且つ初期状態では指が移動する方向がどの方向であるか定まっていない場合に、初期探索範囲を360度の範囲に設定した場合を示す。この図3に示す例においては、移動方向初期探索範囲の最大範囲は、x軸方向およびy軸方向に関して、それぞれSx−Oxmin,Sy−Oyminである。
【0037】
なお、ここで、SyとSxは、指紋の部分画像において、その水平方向軸をx軸,垂直方向軸をy軸とした場合における、それぞれ指紋の部分画像のy軸方向のサイズとx軸方向のサイズである。又、OyminとOxminはそれぞれ最小限重なりと判定するために必要な領域のy方向のサイズとx軸方向のサイズである。
一方、図4は指紋センサ31によって採取された指紋画像(矩形)を中心として、その短軸方向(図4の上下方向)を移動方向初期探索範囲とする例を示している。この図4に示す例においては、指紋センサ31が矩形形状をそなえ、且つ初期状態においても生体が移動する方向が上下方向に限定される場合に、初期探索範囲を指紋の部分画像に対する上下方向およびその斜め上下方向の範囲に設定した範囲を示す。
【0038】
これらの図3および図4中におけるそれぞれの画像の位置関係は、指紋の部分画像を採取した時刻のずれΔTの間に被認証者の指と指紋センサ31との位置関係を反映しており
、例えば、指紋センサ31の上に指を滑らせたときに、連続して指紋画像を取得した状態を表わしている。すなわち、指と指紋センサ31との相対的な位置が時々刻々と移動しているため、時刻T−ΔTと時刻Tとのそれぞれで採取された指紋画像は少しだけずれた部位を映像化したものになる。
【0039】
また、図5および図6はそれぞれ本発明の一実施形態としての指紋認証装置1における移動方向初期探索範囲の他の例を示す図であり、それぞれ図3および図4に示す移動方向初期探索範囲を下方向に縮小(限定)した状態を示している。なお、これらの図5および図6中においては、時刻T−ΔTに採取された生体情報画像を省略している。
ここで、本発明の一実施形態としての指紋認証装置1における移動方向探索範囲の設定手法を、図7に示すフローチャート(ステップA10〜A100)に従って説明する。
【0040】
先ず、移動方向初期探索範囲を設定する(ステップA10)。この移動方向初期探索範囲は、指紋センサ31に対して被認証者によって行なわれる可能性がある指のスライド方向により予め設定されるものであり、本指紋認証装置1の使用形態や指紋センサ31の取り付け位置等に応じて決定される。なお、指紋センサ31のスライド方向が未決定の場合には、図3や図4に示すように、移動方向初期探索範囲を広く設定しておくことが望ましい。
【0041】
次に、指紋センサ31により指紋の部分画像の採取を行なって、生体情報画像の更新を行なう(ステップA20)。そして、移動方向探索範囲が縮小されているか否かを判断する(ステップA30)。具体的には、後述するステップA90において移動方向探索範囲縮小を示すフラグがONになっているか否かを判断する。移動方向探索範囲が縮小されていない場合には(ステップA30のNOルート参照)、初期探索範囲内において移動方向の探索を行なう(ステップA60)。
【0042】
すなわち、指紋センサ31によって連続的に採取された複数の部分画像について、移動方向が連続して同じであるか、すなわち指紋センサ31に対して指が同じ方向に移動しているかを調べるとともに、且つ、重なり度合いが所定の閾値以上であるか否かを判断する(ステップA70)。なお、重なり度合いとは相関度や一致度をいう。
ここで、このステップA70において用いられる閾値について説明する。サブピクセル誤差がある場合には、画像同士をぴったりと重ね合わせることができないため、重なり度合いは影響を受け、その値が小さくなる。その一方で、指紋は指表皮における山谷の凹凸であり、指の表皮は軟らかいため、センサに押し付けたときに歪みが生じる。更に、指をセンサに擦り付けている際に指紋画像が読み取られるので、この歪みは常に変化する。歪みがある場合にも重なり度合いは影響を受け、その値は小さくなる。他にも様々な要因で重なり度合いが小さくなるので、その小さくなる範囲を解析的あるいは経験的に求めて、閾値が決定されるようになっている。
【0043】
また、サブピクセル誤差とは、画像における量子化誤差の影響によって生じる1画素未満の移動距離の誤差である。生体情報を画像にする場合にはディジタル化するが、このディジタル化によって、実際的には連続的な情報を離散的な情報に間引きされる。具体的には、例えば、50マイクロメートル刻みの間隔の画素で表現された画像では、被写体の移動距離が50マイクロメートル未満の場合には、実際にはその移動量は1画素分に足りない。
【0044】
しかしながら、移動距離を検出する際には、画像の重ね方は1画素単位でしかずらすことしかできないので、1画素未満の移動距離は0画素または1画素のどちらか一方になる。例えば、50マイクロメートル刻みの間隔の画素で表現された画像を用いた場合に、移動距離が30マイクロメートルだった場合には、実際には0.6画素ではなく1画素と算出される。このときに0.4画素の誤差が生じ、このような誤差をサブピクセル誤差というのである。
【0045】
さて、移動方向が同じ方向であり、且つ重なり度合いが閾値以上である場合には(ステップA70のYESルート参照)、次に、ステップA70に示す条件がN回以上連続してみたされたか否かを判断する(ステップA80)。上記条件がN回以上連続して満たされた場合には(ステップA80のYESルート参照)、指が同じ方向に安定して移動していると判断して、移動方向探索範囲縮小手段12が、移動方向探索範囲をその移動方向を含む所定の範囲に縮小(限定)し(ステップA90)、又、移動方向探索範囲縮小を示すフラグにONを設定する。
【0046】
また、指紋センサ31に対して指が同じ方向に移動していなかったり、重なり度合いが所定の閾値以上ではない場合(ステップA70のNOルート参照)や、ステップA70の条件がN回以上連続して満たされていない場合(ステップA80のNOルート参照)には、ステップA20に戻る。
一方、移動方向探索範囲が縮小されている場合には(ステップA30のYESルート参照)、その縮小された移動方向探索範囲(縮小探索範囲)内で、移動方向の探索を行ない(ステップA40)、更に、移動方向探索範囲を、ステップA40において探索された移動方向を含む所定の範囲となるように更新する(ステップA50)。
【0047】
そして、指紋センサ31により採取された指紋の部分画像がないか、もしくは、移動が停止しているかを判断する(ステップA100)。指紋センサ31により採取された指紋の部分画像がない場合や、移動が停止している場合には(ステップA100のYESルート参照)、処理を終了する。又、指紋センサ31により採取された指紋の部分画像がある場合や、移動が停止していない場合には(ステップA100のNOルート参照)、ステップA20に戻る。
【0048】
さて、本指紋認証装置1において検出可能なスライド速度は、指紋画像の座標系を基準にすると以下の式(1)で算出される。
Vy < R・( Sy − Oymin )/ΔT,Vx < R・( Sx − Oxmin )/ΔT ・・・(1)
ここで、 指紋の部分画像において、その水平方向軸をx軸,垂直方向軸をy軸とすると
、VyおよびVxはそれぞれスライド速度のy軸方向成分とx軸方向成分であり、Rは画素ピッチである。なお、スライド速度に依存して指紋の部分画像に伸縮歪みやスキュー歪みが生じるが、上式はこれら歪みがない理想的な場合で成立するものとする。
【0049】
また、Vy,Vxは入力される生体の特性に依存し、ΔTは指紋センサ31の性能に依存して仕様の決定に大きく左右するものである。例えば、指紋センサ31の性能が決まっている場合を考えると、Sy,Sxが決まっている場合にはOyminやOxminは経験的に決定される。
また、ΔTには下限があるので、上記式(1)のように検出可能なスライド速度の上限はVy,Vxとなる。例えば、y軸方向のみにスライドし、指紋センサ31の性能としてΔTの下限が3msec,Oyminが4画素,Syが16画素,Rが0.05mm/画素,指紋の部分画像が歪
みのない理想的なものと仮定すると、スライド速度の上限は200mm/secとなる。
【0050】
しかしながら、移動方向検出手段11では、上記の例のように生体のスライド速度に追従するため毎秒数百枚の部分画像から移動方向を検出する必要があり負荷が高い。しかも本指紋認証装置1が例えば逆さまの状態で使用されることが想定される場合には、より負荷が高くなる。よって移動方向検出手段11では、スライド方向を効率良く算出して負荷を軽減するために慣性を利用する。
【0051】
つまり、短い時間間隔でスライド方向が急激には変化しないという前提のもとで、y軸に関して正方向か負方向かを判断した時点で、一方のみに限定してスライド方向を検出するようになっている。例えば、上述した例において、スライド方向の上限の200mm/secで移動していた生体あるいは指紋認証装置1が0.003msec後に突然、逆方向になったりすることは考えにくい。
【0052】
また、移動方向探索範囲を縮小するためには、移動方向が安定していることが重要である。図7に示す例においては、移動方向が安定したことを判断する条件の一例として、移動方向が同じであり、かつ重なり度合いが所定の閾値以上であることを用いている(ステップA70参照)。
移動方向探索範囲は、スライド方向が安定した後は慣性の法則により、急激に方向が変わることはないと仮定することができる。従って、例えば移動方向±αの範囲に縮小する。なお、おおむね上下左右の領域のいずれかとしてもよい。
【0053】
移動停止検出手段13は、指紋センサ31における指(生体部位)の移動の停止を検出するものである。本指紋認証装置1においては、移動停止検出手段13により被認証者の指の移動の停止が検出された場合に、その部分画像の入力を停止するようになっている。
上述の如く、移動方向探索範囲縮小手段12によって、探索範囲を縮小したり間引いたりすることで移動方向検出にかかる計算量を削減したとしても、移動停止の監視は必要である。
【0054】
例えば、指紋センサ31が、被認証者の指とセンサ部(図示省略)とが接触することで指紋の画像(部分画像;生体情報)を読み取る接触型である場合に、摩擦などによって生体表皮がたわむと、指が移動してもセンサ部と接触している部位はほとんど移動しないことがある。このように、指(生体)と指紋センサ31との間に引っかかりが生じた場合においても、このような引っかかりの影響を受けずに指紋画像の採取を行なうために、生体の移動停止を監視する必要がある。
【0055】
図9は指紋センサ31における指紋画像の採取時における指のスライド速度の変化を例示する図であり、指を滑らかにスライドした場合の例を実線で、又、指と指紋センサ31との間に引っかかりが生じた場合の例を破線で示している。
この図9に示すように、指紋センサ31における指紋画像の採取時においては、スライド速度が滑らかに変化する場合と大きく変化する場合がある。スライド速度が滑らかに変化することを前提とすることができれば、移動方向探索範囲を限定して、処理時間の短縮や誤検出を防止することができる。しかしながら、生体とセンサとの摩擦によってたわみなどが生じると、生体そのものはある一定の速度を保って移動していても、センサと接触している部位では、この図9において破線で示すように、スライド速度が一瞬停止する。
【0056】
本指紋認証装置1においては、移動速度推定範囲を設け、これにより停止監視範囲を設定するようになっている。
ここで、移動速度推定範囲の設定について説明する。前述した図7のステップA90(移動方向探索範囲縮小ステップ)においては、慣性があるという前提で、移動方向が安定した後の移動量の変化あるいはスライド速度の変化を用いて速度を推定し、移動方向探索範囲を縮小している。なお、x軸方向,y軸方向に関してはそれぞれ同様の議論ができるため、ここでは、スライド速度をVとして添え字を省略する。
【0057】
スライド速度Vは、部分画像の撮像間隔I(K)と相対位置Pr (K)とから、見かけ上、次式(2)のように算出される。
V(K) = Pr(K)/I(K) ・・・(2)
ここで。撮像間隔I(K)は、ある部分画像の撮像を開始してから、次の部分画像の撮像が開始されるまでの時間を指す。
【0058】
そして、次に検出されると推定される相対位置Pr′(K)は、上式(2)を用いて次式
(3)のように算出される。
Pr′(K) = V(K−1)*I(K),K:整数 ・・・(3)
画像取得間隔が十分に短い場合には、探索範囲を1隆線以下とみなすことによって、さらに演算回数を低減できるとともに、相対位置検出を誤る危険性を低減することができる。
【0059】
ただし、撮像間隔I(K)が撮像時刻によらず一定とみなせる場合においては、次式(4)のように直前の相対位置Pr(K−1)をそのまま利用することでも、上式(3)と同様
の作用効果が得られる。
Pr′(K) = Pr(K−1) ・・・(4)
このような推定手法は、スライド速度の変化が非常に緩やかで、等速であるとみなすことができる場合において有効となる。
【0060】
撮像間隔I(K)が一定とみなせ、スライド速度の変化が著しい場合には、次式(5)のように相対位置Pr′(K)を推定してもよい。
Pr′(K) = Pr(K−1) + [Pr(K−1)−Pr(K−2)] ・・・(5)
上式(5)は、速度変化[Pr(K−1)−Pr(K−2)]が一定、つまり加速度一定とみなせる場合において有効である。例えば、スライド開始時においてスライド速度が次第に上昇するように変化する場合に適用することで、探索範囲を適切に設定することが可能となる。撮像間隔I(K)が一定とみなせない場合においても、上述と同様の考え方で速度変化を加味することで探索範囲を適切に設定することができる。
【0061】
図10は本発明の一実施形態としての指紋認証装置1における停止監視範囲および移動方向初期探索範囲の例を示す図であり、ある時刻T−ΔTに指紋センサ31で検出された指紋の部分画像(点線部分参照)と、そのΔT後(時刻T)に検出された指紋の部分画像(実線部分参照)とともに、時刻Tにおける移動方向初期探索範囲(一点鎖線部分参照)および停止監視範囲を表わしている。
【0062】
この図10中において、停止監視範囲および移動方向探索範囲は、図9に示したスライド速度の図中における速度推定範囲および停止監視範囲を、時刻T−ΔTに採取された生体情報画像の上に表わしている。
スライド速度(移動方向と移動距離)を検出する処理には、探索範囲が広い程、時間がかかる。従って、スライド速度をその直前の状態からある程度予測可能であることを利用して、探索範囲を狭く限定することが効果的である。
【0063】
しかしながら、図9に示すように、指と指紋センサ31とにおいて両者の間に摩擦があることや、センサ外周の筐体に角や出っ張った形状があること等によって、スライド速度が急に0になる(引っかかりが生じる)場合がある。このようなスライド速度の一時的な停止が発生したときに、狭い探索範囲では正しく移動方向や移動距離を検出できるとは限らない。
【0064】
そこで、本指紋認証装置1においては、スライド速度が急に0に変化した場合においても、正しく生体の移動方向や移動距離を検出できるようにするために、移動距離を検出するための基準となる位置(図の時刻)からわずかだけずれた範囲しかずれていないかもしれないと仮定して探索範囲に含める。このわずかだけずれた範囲を停止監視範囲という。
次に、図7に示すフローチャートに従って前述した本指紋認証装置1における移動方向探索範囲の設定手法に、停止監視範囲を設けた場合の処理を、図11に示すフローチャート(ステップA10〜A40,A51〜A57,A60〜A100)に従って説明する。
【0065】
なお、図中既述のステップ番号と同一のステップ番号は同一もしくは略同一の処理を示しているので、その詳細な説明は省略する。
本手法においては、移動方向初期探索範囲の設定を行なう際に、停止監視カウントMの初期化を行なって、M=0を設定するようになっている(ステップA10)。又、移動方向探索範囲が縮小されている場合には(ステップA30のYESルート参照)、その縮小された移動方向探索範囲(縮小探索範囲)内で、移動方向の探索を行ない(ステップA40)、移動速度推定範囲での画像の重なり度合いをあらわす一致度(最大一致度)MAX_Cvを算出し、揮発性メモリ部90等に保持する(ステップA51)。
【0066】
なお、この一致度とは、指紋センサ31によって採取される複数の部分画像のうちの、連続する2つの部分画像間での一致度である。本実施形態においては、連続する2つの部分画像間では、移動速度推定範囲から算出される一致度と停止監視範囲から算出される一致度とがある。これら両者を比較して、一致している範囲から得られる移動距離,移動方向を検出するようになっている。
【0067】
また、サブピクセル誤差がある場合には、移動距離が所定画素数以上になるまで部分画像を1枚〜複数枚飛ばす。例えば、実際には0.5画素しか移動していないときには、1枚飛ばすことで1画素の移動が検出できる。なお、このとき移動速度は、平均0.5画素となる。
次に、移動速度推定範囲を更新して(ステップA52)、停止監視範囲で移動速度の探索を行ない(ステップA53)。更に、停止監視範囲での画像の重なり度合いを表わす一致度(最大一致度)MAX_Csを算出し、揮発性メモリ部90等に保持する(ステップA54)。
【0068】
そして、MAX_CvとMAX_Csとを比較して(ステップA55)、MAX_Csが大きい場合には(ステップA55のNOルート参照)、停止状態であると判断して、停止監視カウントMをインクリメントする(ステップA56)。又、MAX_Cvが大きい場合には(ステップA55のYESルート参照)、移動状態であると判定して、停止監視カウントMに0を設定する(ステップA57)。
【0069】
なお、停止監視カウントMは、停止状態の継続を判定するために用いられるカウンタであり、停止状態が長く続いた場合、すなわち、停止監視カウントMの値が所定の閾値Tよりも大きくなった時に生体情報の入力が終了したと判定し、一瞬だけの停止状態である場合には、移動方向の検出を継続して行なうものである。
すなわち、停止監視カウントMが閾値T以上であるか、もしくは生体情報画像が無いかを判断して(ステップA100)、生体情報画像が無い場合や停止監視カウントMが閾値T以上の場合には(ステップA100のYESルート参照)、指紋の部分画像の採取が終了したものと判定して処理を完了する。又、生体情報画像があったり,停止監視カウントMが閾値Tよりも小さい場合には(ステップA100のNOルート参照)、ステップA20に戻る。
【0070】
なお、図11に示す例においては、停止状態が長く続いたことを判定するためにカウントMを用い、そのカウント回数に基づいて判定を行なっているが、これに限定されるものではなく、例えば、停止状態が継続する時間を測定し、この時間を所定の閾値と比較してもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
座標変換手段14は、移動方向検出手段11によって検出された移動方向を用いて、指紋センサ31によって採取された生体情報に対して座標変換処理を行なうものである。又、この座標変換手段14は、移動方向検出手段11で検出された移動方向と指紋センサ31に関する所定の方向との差情報を用いて座標変換を行なうようになっている。
【0071】
ここで指紋センサ31によって採取された生体情報とは、指紋センサ31によって採取された指紋画像(部分画像)のみならず、この指紋画像に基づいて生成される種々の情報も含むものであり、例えば、指紋画像から抽出された特徴情報も含まれる。従って、座標変換手段14は、指紋画像から抽出された特徴情報に対して座標変換処理を行なってもよい。なお、本実施形態においては、生体情報として指紋の部分画像を用い、座標変換手段14が、この部分画像に対して座標変換処理を行なう例について示す。
【0072】
座標変換手段14は、移動方向検出手段11によって検出した移動方向を用いて、指紋センサ31によって採取した指紋の部分画像の座標の変換を行なう。具体的には、この座標変換は以下の式(6)に示すようにアフィン変換で実現される。
【0073】
【数1】
【0074】
例えば、スウィープ型指紋センサでは、指紋全体を取得すようにそのセンサ面に第1関
節付近をあて、指先が生体情報採取手段10に触れるまでスライドする。ユーザが操作する際には、指を手前に引くイメージとなる。よって、スライド方向が常に生体情報画像の鉛直下向きとなるように変換する。
図8は本発明の一実施形態としての指紋認証装置1における座標変換前の生体情報画像と座標変換後の生体情報画像との関係を示す図である。
【0075】
生体情報画像の座標系がこの図8に示すような場合の変換式は、以下の式(7)のように示される。
【0076】
【数2】
【0077】
ここで、θは回転角度、CxとCyはそれぞれx軸方向とy軸方向の回転中心である。例えば、回転中心はCx=Sx/2,Cy=Sy/2のように画像中心としてもよい。
また、連続する2枚の生体情報画像から得られる生体情報の移動量をx軸方向とy軸方向についてそれぞれΔxとΔyとすると、回転角度θは以下の式(8)〜(11)で表わされる。
【0078】
【数3】
【0079】
座標変換は、一般的には、上述の如く三角関数を含む回転行列を用いた演算となるため、処理時間等が長くなる。そこで、座標変換のより簡単なケースとして、Vyの符号のみを考慮したものでもよい。すなわち、スライド方向のy軸成分が生体情報画像の鉛直下向きとなるように変換する。具体的にはスライド方向のy軸成分が生体情報画像の鉛直上向き方向である場合には、生体情報画像を180度回転させて出力する。単純に180度回転させるだけであれば、変換処理はメモリ間の画素値のコピーで済むので、メモリ量と計算時間を節約できる。
【0080】
処理時間に要する時間が長い場合には、回転角度情報のみを指紋の部分画像に付加するのみでとどめておき、角度情報を用いないことによりオーバーヘッドを避けられるようにしてもよい。
図12(a),(b)はいずれも本発明の一実施形態としての指紋認証装置1の外観例を示す図であり、図12(a)は変形前の本指紋認証装置1の外観例を示す図、図12(b)には変形後の本指紋認証装置1の外観例を示す図である。
【0081】
これの図12(a),(b)に示す指紋認証装置1は、指紋センサ31をそなえる本体1aとディスプレイ81をそなえるディスプレイユニット1bとを2軸ヒンジ(爪切り型ヒンジ)1cを介して開閉自在に接続して構成されている。
具体的には、図12(a)中における矢印aに示すように、ディスプレイユニット1bを本体1aに対して2軸ヒンジ1cの軸c1回りに約180度回転させることができるようになっており、これにより、本体1aとディスプレイユニット1bとを蝶番状に折りたたむことができるようになっている。更に、図12(a)中における矢印bに示すように、ディスプレイユニット1bを2軸ヒンジ1cの軸c2回りに回転させて、ディスプレイユニット1bを180度回転させることができるようになっている。
【0082】
そして、図12(a)に示す状態から、本体1aに対してディスプレイユニット1bを2軸ヒンジ1cの軸c1,c2でそれぞれ回転させることにより、図12(b)に示すように、ディスプレイ81を表に出した状態で本体1aとディスプレイユニット1bとを折りたたむことができるようになっている。
また、本体1aとディスプレイユニット1bとはいずれも矩形形状を有しており、又、本体1aは、ディスプレイユニット1bと2軸ヒンジ1cを介して接続される辺と直交する方向において、ディスプレイユニット1bよりも大きな寸法を有するように構成されている。又、本体1aにおけるディスプレイユニット1bと重合する側の面であって、2軸ヒンジ1cとは反対側の端部には指紋センサ31が形成されている。
【0083】
これにより、図12(a)に示すように、本体1aとディスプレイユニット1bとを開いた状態で、被認証者はディスプレイ81を見ながら指紋センサ31を用いることができる他、図12(b)に示すように、本体1aとディスプレイユニット1bとを閉じた状態においても、被認証者はディスプレイ81を見ながら指紋センサ31を用いることができるようになっている。
【0084】
すなわち、本指紋認証装置1は、本体1a側に指紋センサ31が実装され、ディスプレイユニット1bを反転させて折りたたむ仕様のノートパソコンとして構成され、図12(b)の状態と図12(a)の状態とではディスプレイ81の実装方向は同一方向であるとする。
そして、図12(a)に示すように、本体1aとディスプレイユニット1bとを開いた状態(開使用時)で、被認証者が指紋センサ31を用いる場合には、被認証者は指を2軸ヒンジ1c側から本体1aにおける他端側(手前側)に向かって指をスライドさせ、図12(b)に示すように、本体1aとディスプレイユニット1bとをディスプレイ81が見えるようにして折りたたんだ状態(折りたたみ使用時)で、被認証者が指紋センサ31を用いる場合には、被認証者は指を本体1aにおける他端側から2軸ヒンジ1c側に向かってスライドさせる。
【0085】
なお、図12(a)に示す状態からディスプレイユニット1bを回転させて図12(b)に示す状態にした場合には、認証者から見て指紋センサ31は180度反転した状態となる。
上述したように、本指紋認証装置1は、図12(a)に示すような開使用時と、図12(b)に示すような折りたたみ使用時とでは、指紋センサ31における指のスライド方向が反対となるが、本指紋認証装置1においては、座標変換手段14がスライド方向に合わせて指紋の部分画像の座標変換を行なう。
【0086】
具体的には、座標変換手段14は、指紋センサ31におけるスライド方向が開使用時での指紋センサ31におけるスライド方向とは180度回転していることに基づいて、上述の如く座標変換を行ない、指紋センサ31によって採取された指紋の部分画像を180度回転させるように座標変換を行なう。
これにより、図12(b)に示すように、折りたたみ使用時においてもディスプレイ81には正立した指紋画像(部分画像)が表示され、生体情報画像は上下左右が逆になってしまうこともなく、被認証者が違和感を持つこともない。
【0087】
すなわち、指紋画像の入力を行なう際には、利用者は常に指紋センサ31に対して手前側に向かって指をスライドすればよいのである。
図13(a),(b)は本発明の一実施形態としての指紋認証装置1のディスプレイ81に表示される指示方向を説明するための図である。
位置検出手段16は、指紋センサ31に対する被認証者の指の位置を検出するものであり、指示手段17は、指紋センサ31により検出された被認証者の指の位置に基づいて、指紋センサ31において指が配置されるべき位置に、その被認証者の指を配置させるように、被認証者に対してその指の移動を促す指示を行なうものであり、例えば、ディスプレイ81に指の移動を促す指示を、その移動すべき方向とともに表示させるようになっている。
【0088】
例えば、図13(a),(b)に示すように、本体1a側に指紋センサ31が実装され、ディスプレイユニット1bを2軸ヒンジ1cによって反転させた状態で折りたたむことができる指紋認証装置1において、図13(a)に示すように、本体1aとディスプレイユニット1bとを開いた状態で使用する場合と、図13(b)に示すように、本体1aとディスプレイユニット1bとを折りたたんだ状態で使用する場合とで、被認証者に対するディスプレイ81の実装方向は変わらないものとする。
【0089】
前述したように、本指紋認証装置1においては、指紋の読み取り操作を行なうに際して、開使用時(図13(a)参照)と、折りたたみ使用時(図13(b)参照)とでは、指紋センサ31における指のスライド方向が反対となるが、被認証者は、指紋画像の入力を行なう際には、常に指紋センサ31に対して手前側に向かって指をスライドすればよく、スライド方向とディスプレイ81の鉛直下向きが一致していれば、正しく指示することができる。
【0090】
すなわち、座標変換手段14は、移動方向検出手段11によって検出されたスライド方向に基づいて、指紋センサ31によって採取した指紋の部分画像を、その上下左右逆となるように座標変換を行なう。又は、指示手段17が、被認証者に対して、スライド方向に基づいて上下左右逆の方向に指示する。なお、図13(a),(b)に示す例においては、ディスプレイ81上に、ワーニングとして指を移動させるべき方向を矢印によって示している。
【0091】
ここで、位置検出手段16について詳細に説明する。位置検出手段16は、指紋センサ31で取得される画像において、生体情報が含まれる領域を検出するようになっている。例えば、対象とする生体が指紋の場合には、隆線が谷線よりも大きい画素値であらわされた生体情報画像を想定する。又、生体が手の甲静脈や手のひら静脈,指静脈の場合には、静脈が静脈以外よりも大きい画素値で表された生体情報画像を想定する。又、これらの関係が逆であれば画像を輝度に関して反転させれば同様の議論となる。
【0092】
生体情報画像から生体の位置を直接を求めるには、その生体情報画像の画素値から重心を求めることが有効である。又、より精度良く位置を求める場合には、生体情報が含まれる領域を抽出してから重心を求めてもよい。
ここで、以下、生体情報が含まれる領域を生体情報領域と称する。生体情報領域の抽出には、一般的な2値化方法あるいはクラスタリングの手法を適用できる。最も簡単な方法としては、画素値に対して所定の閾値を設けこの閾値より大きい値を持つ画素を生体情報として抽出する方法である。抽出した画素の重心および分散を用いることにより、生体情報領域の位置を検出できる。
【0093】
次に、指示手段17について説明する。指示手段17では、位置検出手段16で検出された位置Bx,Byと、指紋センサ31の中心位置Cx,Cyとのそれぞれの差情報Dx,Dyを用いて指示を行なう。具体的には、Dx=Cx-Bx,Dy=Cy-Byとし、指示方向をIx,Iyとすると、指示方向は位置に関する差情報の逆方向としてIx=-Dx,Iy=-Dyとする。
例えば、被認証者の指が指紋センサ31に対して右寄りに位置していた場合には、指示手段17は、利用者に対して生体を左寄りに誘導するように指示する。又、この指示としては、例えば、左矢印などの方向を示唆するマークをディスプレイ81に表示することによって行なわれる。又、このとき、詳細な方向ではなく、より差情報の大きさが大きい成分のみを指示し、90度刻としてもよい。
【0094】
このとき、指紋センサ31とディスプレイ81との間に回転方向のずれがあった場合には、ディスプレイ81(指示手段17)による指示が意味のない指示となるため、指紋センサ31から検出される生体情報の移動方向との差情報θを用いて補正する。補正された方向をIx’,Iy’とすると,Ix’,Iy’は以下の式(12)で表わされる。
【0095】
【数4】
【0096】
特徴抽出手段32は、指紋センサ31によって採取される複数の部分画像のそれぞれから、各部分画像における特徴およびその特徴の位置を抽出するものである。ここで、特徴としては、各部分画像中の前景(本実施形態では隆線画像の輝度値)およびその前景のエッジ(本実施形態では輝度勾配の値)の両方を抽出してもよいし、各部分画像中の前景(例えば隆線画像)を細線化して得られるパターンにおける端点および分岐点を抽出してもよい。
【0097】
相対位置検出手段33は、指紋センサ31によって採取される複数の部分画像のうちの、連続する2つの部分画像が相互に重なり合う領域に存在する特徴(特徴抽出手段32によって抽出された特徴)に基づいて、これら2つの部分画像相互の相対位置を検出するものである。このとき、相対位置検出手段33は、上記相対位置を、直前までに検出された1以上の相対位置を基準にして検出してもよいし、又、上記相対位置を、直前までに検出された1以上の相対位置に基づいて推定された、次に検出されるべき相対位置を基準にして検出してもよい。
【0098】
また、相対位置検出手段33は、指紋センサ31によって連続的に採取される各部分画像を、相互に重なり合う領域を有する2以上の部分領域に分けて取り扱い、上記相対位置を2以上の部分領域のそれぞれについて検出するようにしてもよい。
補正手段34は、指紋センサ31の検出遅延のために生じていた画像歪みや指の変形による歪みを補正するためのものである。この補正手段34は、下記のような2種類の補正機能を有している。第1の補正機能は、相対位置検出手段33によって検出された相対位置と各部分画像における特徴の位置とに基づいて特徴の歪み量(指の変形による歪み量)を算出し、算出された歪み量に基づいて、各部分画像における特徴の位置を補正する機能である。また、第2の補正機能は、指紋センサ31による各部分画像の採取時間間隔と、指紋センサ31による各部分画像の採取遅延時間と、相対位置検出手段33によって検出された相対位置とに基づいて、指紋センサ31の採取遅延に伴う各部分画像の歪み(伸縮歪みやスキュー歪み)を解消するように各部分画像における特徴の位置を補正して、特徴の相対位置を得る機能である。
【0099】
なお、相対位置検出手段33が、指紋センサ31によって連続的に採取される各部分画像を、相互に重なり合う領域を有する2以上の部分領域に分けて取り扱い、上記相対位置を2以上の部分領域のそれぞれについて検出する場合、補正手段34は、各部分領域について、指紋センサ31の採取遅延に伴う各部分画像の歪みを解消するように特徴の位置を補正する。
【0100】
また、この補正手段34は、指紋センサ31において画像の歪みが生じる指紋センサ41を用いる場合に必要とされ、指紋センサ31が画像の歪みを無視できる場合には、この補正手段34は必ずしも必要ではない。
移動物体検知手段35は、指紋センサ31によって採取される複数の部分画像に基づいて、指紋センサ31に対して移動している移動物体(ここでは被認証者の指)の有無を検知するためのもので、例えば、直前までに指紋センサ31によって採取される部分画像の重み付き平均画像を算出し、算出された重み付き平均画像に基づいて、移動物体の有無を検知するようになっている。より具体的に、移動物体検知手段35は、指紋センサ31によって採取される最新の部分画像と算出された重み付き平均画像との差分値が所定の閾値を超えた場合に移動物体の存在を検知するものであり、その所定の閾値が、ノイズによる変動値よりも大きく設定されている。
【0101】
登録/照合用データ生成部(生成手段)36は、特徴抽出手段32によって抽出された特徴と、補正手段34によって得られた特徴の相対位置とを用いて、被認証者の本人認証を行なうための指紋データ(登録用データおよび照合用データ)を生成するものである。指紋データの登録時には、登録/照合用データ生成部36によって生成された指紋データ(隆線の分岐点や端点の位置やパターンなど公知の情報)が、登録用データとして不揮発性メモリ部91に登録・保持される。被認証者の本人認証時には、登録/照合用データ生成部36によって生成された指紋データ(隆線の分岐点や端点の情報)が、照合用データとして照合部37に送られる。
【0102】
照合部(照合手段)37は、登録/照合用データ生成部36によって生成された照合用データと不揮発性メモリ部91に保持されている被認証者の登録用データとを比較して照合処理を実行し、被認証者の本人認証を行なうものである。この照合部37は、指紋センサ31による映像化時刻(リアルタイムクロック80によるタイムスタンプの時刻)の早い部分画像から得られた特徴およびその相対位置を優先的に用いて、上記照合処理を実行し、被認証者の照合結果を確定した時点で上記照合処理を終了するように構成されている。
【0103】
この照合部35は、一致度算出手段19と一致度判定手段20とをそなえて構成されている。一致度算出手段19は、登録/照合用データ生成部36によって生成された照合用データと不揮発性メモリ部91に保持されている被認証者の登録用データとの一致度を算出するものである。なお、一致度としては、例えば、相互相関法における相関係数が用いられる。
【0104】
また、一致度判定手段20は、一致度算出手段19によって算出された一致度に基づいて、例えば、この一致度が予め設定された閾値よりも大きい場合に、登録/照合用データ生成部36によって生成された照合用データと不揮発性メモリ部91に保持されている被認証者の登録用データとが一致するものであると判断するようになっており、これにより、被認証者がその登録用データを登録した登録主であることを認証するようになっている。
【0105】
上述の如く構成された本発明の一実施形態としての指紋認証装置1における処理を図14〜図16に示すフローチャートに従って説明する。図14は本発明の一実施形態としての指紋認証装置1における登録データの登録処理を説明するためのフローチャート(ステップC10〜C40)、図15はその照合処理を説明するためのフローチャート(ステップD10〜D60)、図16は図14および図15における生体情報入力ステップを説明するためのフローチャート(ステップE10〜E30)である。
【0106】
登録処理においては、被認証者は、生体情報採取手段10(指紋センサ31)を用いて生体情報(指紋)の入力を行なう(ステップC10)。特徴点抽出部32は、指紋センサ31によって入力された生体情報に基づいて特徴の抽出を行ない(ステップC20)、登録/照合用データ生成部36が、生体データを作成して(ステップC30)、この作成した生体データを不揮発性メモリ91(記憶手段22)に記録する(ステップC40)。
【0107】
また、照合処理においては、生体情報採取手段10(指紋センサ31)を用いて生体情報(指紋)の入力を行なう(ステップD10)。特徴点抽出部32は、指紋センサ31によって入力された生体情報に基づいて特徴の抽出を行ない(ステップD20)、生体データを作成する(ステップD30)。そして、一致度算出手段19が、不揮発性メモリ91(記憶手段22)に格納された生体データを読み出して(ステップD40)、一致度の算出を行ない(ステップD50)、一致度判定手段20が、この算出された一致度に基づいて判定を行なう(ステップD60)。
【0108】
また、上述した図14のステップC10や図15のステップD10における生体情報の入力は、図16に示すフローチャートに従って行なわれる。すなわち、生体情報採取手段10により生体部位の部分画像を生体情報として読み取った後に(ステップE10)、採取された生体情報に基づいて移動距離の検出を行ない(ステップE20)、その後、部分画像の結合を行なう(ステップE30)。
【0109】
なお、図16に示すフローチャートにおいてはループの概念を省略している。例えば、複数の部分画像について、ステップE10の生体情報読取ステップを繰り返し行なってからステップE20の移動距離検出ステップを開始してもよく、又、ステップE10の生体情報読取ステップとステップE20の移動距離検出ステップとを繰り返し行なってからステップE30の画像結合ステップを開始してもよく、更に、ステップE10の生体情報読取ステップと、ステップE20の移動距離検出ステップと、ステップE30の画像結合ステップとを繰り返し行なってもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0110】
また、このようなループの終了判定は、時間,読取回数,移動距離,移動停止,バッファ空き容量,画像に何も映っていないなどの任意の要素を組み合わせて行なうことができる。なお、これらの要素のうち移動距離検出を用いた終了判定は移動距離検出よりも後で実施可能になる。
そして、前述した図7,図11に示したフローチャートで示される処理は、上述した図14のステップC10や図15のステップD10における生体情報の入力ステップに相当し、又、図16におけるステップE10の生体情報読取ステップやE20の移動距離検出ステップに相当するものである。
【0111】
このように、本発明の一実施形態としての指紋認証装置1によれば、移動方向検出手段11によって検出された生体情報の移動方向に基づいて、座標変換手段14が採取された生体情報に対して座標変換処理を行なうので、指紋の部分画像の採取に際して指紋センサ31における最適なスライド方向(例えば、指紋センサ31の中心を通る法線方向)と被認証者の指のスライド方向との間に角度差(回転方向ずれ)が生じた場合においても、回転方向を補正することができ、確実に正立像を得ることができる。これにより、例えば、スライドするたびにスライド方向が変わり、指紋の部分画像ごとに回転方向ずれがあっても、正立像を得ることができる。すなわち、スライド方向による指紋画像の回転方向ずれの影響を受けにくくすることができる。
【0112】
また、本指紋認証装置1を回転させて逆さまの状態で使用する等、指紋センサ31の向きが変わった状態で指紋の部分画像の採取を行なっても、指紋画像を正立像として取得することができ、指紋認証装置1(指紋センサ31)の姿勢にかかわらずに指紋画像の採取を行なうことができ利便性が高い。
そして、本指紋認証装置1やディスプレイ81,指紋センサ31等の向き(姿勢)にかかわらず、指紋画像の正立像を得ることができ、本指紋認証装置1やディスプレイ81,指紋センサ31等の向き(姿勢,回転方向)を検出・判断する必要がないので、これらの向き等の検出・判断を行なうための機能(ハードウェア,ソフトウェア)をそなえる必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0113】
さらに、採取した指紋画像をディスプレイ81に表示させる際においても、装置の回転に影響を受けないように生体情報画像を表示することができ、指紋画像の目視確認等も行ない易い。
また、生体情報採取手段10を実現するセンサ(指紋センサ等)を実装する向きの自由度を高くすることができ、配線パターンの実装面積を小さくすることにより、装置の小型化や低価格化を行なうことができる。
【0114】
図17(a),(b)は指紋センサ31における配線パターンと実装面積との関係を説明するための図であり、図17(a)は配線パターン長が短い場合における実装面積を示す図、図17(b)は配線パターン長が長い場合における実装面積を示す図であり、これらの図17(a),(b)によれば、指紋センサ31を実装するに際して、センサの実装の自由度があり短い配線で実装することができれば、その実装面積を小さくすることができることがわかる。
【0115】
また、生体情報採取手段10が生体とセンサとが接触することで生体情報を読み取る接触型の場合に、生体は相対的に移動しているものの、摩擦などによって生体表皮のたわむことで、センサと接触している部位はほとんど移動しない、いわゆる引っかかりが生じた場合においても、生体の移動方向を正しく検出し、生体情報を確実に採取することができる。
【0116】
例えば、被認証者が指のスライドという操作に慣れていない場合には、指の移動(スライド)にかける力の加減が不適切となり、摩擦などによって生体表皮がたわむことで、指紋センサ31と接触している部位はほとんど移動しない引っかかりの状態が生じるおそれがある。このように、スライドが一瞬だけ停止したとしても、正確な移動方向検出を継続することができ、不慣れな被認証者でも良好に生体情報の入力を行なうことが可能となる。
【0117】
また、生体情報の採取に際して、指紋センサ31と指の移動方向との間に回転方向のずれが生じた場合においても、この回転方向のずれが補正された生体情報(正立像)を表示手段15に表示させることができ、例えば、生体情報採取手段10を逆さまの状態で使用する等、生体情報採取手段10を使用する向きに自由度が高い場合においても正立像を表示手段15に表示させることができ、生体情報採取手段10を実現するセンサを実装する向きの自由度を高くすることができる。
【0118】
さらに、生体情報採取手段に対する生体部位の位置を検出し、生体部位が配置されるべき位置に生体部位を配置させるように生体部位の移動を促す場合においても、容易に指示を行なうことができ利便性が高い。又、生体情報採取手段10を逆さまの状態で使用する等、その使用する向きに自由度が高い場合にも、被認証者に対して正しく位置ずれの指示を行なうことができる他、生体情報採取手段10を実現するセンサの実装する向きの自由度を高くすることができる。
【0119】
また、回転方向のずれを補正された生体情報を用いて認証を行なうことにより、生体情報の採取時にかかる回転ずれの影響を受けることなく認証処理を行なうことができる。例えば、登録データの登録時における指紋認証装置の向きと照合時の指紋認証装置の向きが大きく異なっている場合であっても、認証性能を低下させることなく認証可能となり、利便性が高い。
【0120】
(B)第1変形例の説明
図18は本発明の一実施形態としての指紋認証装置の第1変形例の機能構成を示すブロック図である。
本第1変形例としての指紋認証装置101は、第1実施形態の指紋認証装置1における位置検出手段16に代えて、生体情報中心位置検出手段21をそなえて構成されている他は、第1実施形態とほぼ同様に構成されている。なお、図中、既述の符号と同一の符号は同一もしくは略同一の部分を示しているので、その詳細な説明は省略する。
【0121】
生体情報中心位置検出手段21は、指紋センサ31(生体情報採取手段10)によって採取された指紋の部分画像(生体情報)の中心位置を検出するものである。なお、この生体情報中心位置検出手段21による、部分画像の中心位置の検出手法としては、既述の種々の手法を用いることができ、例えば、生体情報が指紋の場合には、特開2002-109543で
開示されている技術を用いることができる。
【0122】
本第1変形例における指示手段17は、生体情報中心位置検出手段21により検出された生体情報中心位置と、指紋センサ31における所定位置との差情報を、移動方向検出手段11によって検出された移動方向と所定の方向との差情報を用いて補正して、指紋センサ31における被認証者の指が配置されるべき位置にその指を配置させるようにその移動を促すようになっている。
【0123】
具体的には、指示手段17は、生体情報中心位置検出手段21で検出された生体情報中心位置Bx,Byと、指紋センサ31におけるセンサの中心位置Cx,Cyとのそれぞれの差情報Dx,Dyを用いて指示する。すなわち、Dx=Cx-Bx,Dy=Cy-Byとし、指示方向をIx,Iyとした場合に、指示方向は差情報の逆方向としてIx=-Dx,Iy=-Dyとする。つまり、被認証者の指が指紋センサ31に対して右寄りに位置していた場合には、被認証者に対してその指を左寄りに移動させるような指示(誘導)を行なう。
【0124】
また、被認証者に対する指示は、例えば、左矢印などの方向を示唆するマークをディスプレイ81上に表示させてもよい。なお、このとき、詳細な方向ではなく、より差情報の大きさが大きい成分のみを指示し、例えば90度刻みとしてもよい。
さらに、このとき、指紋センサ31と指示手段17に回転方向のずれがあった場合には、意味のない指示となるため、指紋センサ31から検出される生体情報の移動方向との差情報θを用いて補正を行なう。
【0125】
補正された方向をIx’,Iy’とすると、Ix’,Iy’は以下の式(13)を用いて算出する。
【0126】
【数5】
【0127】
このように、本発明の第1変形例としての指紋認証装置101によれば、第1実施形態と同様の作用効果を得られる他、回転方向のずれを補正された生体情報を用いて認証することで、回転ずれの影響を受けずに認証を行うことが可能となる効果を奏する上、更に、指紋センサ31を逆方向から使用する等、その使用する向きに自由度が高い場合にも正しく位置ずれの指示を行なうことができる他、指紋センサ31を実装する向きの自由度が高くなり、実用的に極めて有用である。
【0128】
(C)第2変形例の説明
上述の如き指紋センサ31やディスプレイ81をそなえた情報処理装置において、ディスプレイ81上に表示されるカーソル(ポインタ)を指紋センサ31を用いて移動させることが考えられる。すなわち、指紋センサ31をポインティングデバイスとして機能させるのである。
【0129】
図19は本発明の一実施形態の指紋認証装置の第2変形例としての機能構成を示すブロック図である。この図19に示すように、本第2変形例の指紋認証装置102は、生体情報採取手段10,移動方向検出手段11,座標変換手段14,表示手段15,記憶手段22,生体情報移動方向補正手段40(基準方向設定手段41),移動距離検出手段42およびポインタ移動制御手段43をそなえて構成されている。なお、図中、既述の符号と同一の符号は同一もしくは略同一の部分を示しているので、その詳細な説明は省略する。
【0130】
移動距離検出手段42は、指紋センサ31に対する被認証者(利用者)の指の移動距離を検出するものであって、生体情報の移動距離を検出するものである。基準方向設定手段41は、指紋センサ31に対する利用者の指の移動方向の基準方向を設定するものであり、ポインタ移動制御手段43は、基準方向設定手段41によって設定された基準方向と、移動方向検出部11によって検出された指の移動方向と、移動距離検出手段42によって検出された指の移動距離とに基づいて、表示手段15上におけるポインタの移動を制御するものである。
【0131】
移生体情報移動方向補正手段40は、基準方向設定手段41をそなえるとともに、この基準方向設定手段41によって設定された基準方向を基準にして、指の移動方向を検出・補正するものである。
表示手段15には、指紋センサ31上での指の移動方向と移動距離に応じて移動するカーソルが表示されるようになっている。
【0132】
図20(a),(b)はいずれも本発明の一実施形態としての指紋認証装置の第2変形例の外観例を示す図であり、図20(a)は変形前の本指紋認証装置102の外観例を示す図、図20(b)には変形後の本指紋認証装置102の外観例を示す図である。
これらの図20(a),(b)に示す指紋認証装置102も、第1実施形態の指紋認証装置1と同様に、指紋センサ31をそなえる本体1aとディスプレイ81をそなえるディスプレイユニット1bとを2軸ヒンジ(爪切り型ヒンジ)1cを介して開閉自在に接続して構成されている。
【0133】
すなわち、本指紋認証装置102は、本体1a側に指紋センサ31が実装され、ディスプレイユニット1bを反転させて折りたたむ仕様のノートパソコンとして構成され、図20(b)の状態と図20(a)の状態とではディスプレイ81の実装方向は同一方向であるとする。
本指紋認証装置102においては、指紋認証時には、被認証者(利用者)は指紋センサ31に対して手前側に向かってスライドするので、スライド方向が鉛直下向きとすれば、移動方向を修正することができる。
【0134】
そこで、座標変換手段14でスライド方向を用いて生体情報画像が上下左右逆となるように座標変換を行なった後で、移動方向,移動距離を求めてもよい。あるいは、生体情報画像を使用しない場合には、生体情報画像ではなく検出された移動方向を変換してもよい。
すなわち、本指紋認証装置102においては、移動方向を正しく検出するために、あらかじめ移動方向を補正するための初期値として、基準方向設定手段41によって、基準方向として入力された指紋センサ31上での指の移動方向を、基準値(初期値)として記憶手段22に記憶し(初期値設定ステップ)、この設定した基準値を用いて移動方向を補正する(補正ステップ)。
【0135】
本第2変形例としての指紋認証装置102における移動方向の補正手法を、図21および図22に示すフローチャートに従って説明する。なお、図21は初期値設定ステップの詳細を説明するフローチャート(ステップF10〜F20)、図22は移動方向の補正ステップの詳細を説明するフローチャート(ステップG10〜G40)である。
初期値設定ステップにおいては、先ず、基準方向として入力された移動方向を移動方向検出手段11により検出し(ステップF10)、その後、検出された移動方向を記憶手段22に初期値(初期方向)として記憶し(ステップF20)、処理を終了する。
【0136】
また、移動方向補正ステップにおいては、移動方向検出手段11によって移動方向を検出し(ステップG10)、又、移動距離検出手段42によりその移動距離を検出する(ステップG20)。なお、これらの移動方向を検出するステップと移動距離を検出するステップとは逆でもよく、又、同時に行なってもよい。
次に、生体情報移動方向補正手段40は、記憶手段22から初期値設定ステップのステップF20において記憶された初期値(初期方向)を読み出し(ステップG30)、ステップG10において検出された移動方向との差を演算することで移動方向を補正する(ステップG40)。ポインタ移動制御部43は、この補正された移動方向に従って、ディスプレイ81上においてポインタを移動させるよう制御を行なう。
【0137】
このように、本発明の第2変形例としての指紋認証装置102によれば、生体部位の移動方向の基準方向を初期値としてあらかじめ設定し、この初期値を用いて生体部位の移動方向を補正することによって、生体情報採取手段10を種々の方向から使用することができ、その使用する向きに自由度が高い場合にも、生体部位の移動方向を正しく検出することが可能となり、生体情報採取手段10を実現するセンサを実装する向きの自由度を高くすることができる。
【0138】
これにより、指紋センサ31をポインティングデバイスとして使用する場合に、指紋センサ31を上下逆さま,あるいは横向きに置いて使用した場合においても、利用者が入力した方向に合わせて、ディスプレイ81上においてポインタを移動させることができる。
なお、図19中においては、便宜上、位置検出手段16,指示手段17,移動方向検索範囲縮小手段12,移動停止検出手段13,特徴抽出手段32,一致度算出手段19,一致度判定手段20,生体情報中心位置検出手段21,記憶手段22等を表わしていないが、これに限定されるものではなく、これらの全てもしくは少なくとも一部をそなえるとともに、これらの各部を機能させてもよい。
【0139】
(D)適用例
以下に、本発明の指紋認証装置の適用例を示す。
(1)携帯電話
図23(a),(b),(c)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(携帯電話)200に適用した例を示す図であり、図24(a),(b)は図23(b),(c)の状態において採取された画像に基づいて生成された指紋画像の例を示す図である。
【0140】
これらの図23(a)〜(c)に示すモバイル機器200は、所有者認証などの機能を実現する目的でスウィープ型指紋センサ31を搭載されたものである。近年の携帯電話のようにモバイル機器が小型化されると、装置の持ち方は様々に変化する。特に携帯電話は片手で把持されるため、持ち方は変化しやすいと考えられる。登録時はスライドに慣れていなかったが幾度となく照合するうちに慣れ、持ち方が変わることもある。
【0141】
図23(a),(b)は紙面法線周りに回転方向ずれがあった例を示している。一般的に、登録データと入力データに回転方向ずれがある場合には認証性能が低下するが、本発明によれば、スライド方向が下向きになるように指紋画像を座標変換することにより、図24(a),(b)に示すように、回転方向ずれなく認証できる。
なお、回転方向ずれは、指紋画像を座標変換して補正してもよく、又、登録データあるいは照合データに対して座標変換してもよい。ただし、指紋画像を表示する場合には、指紋画像を座標変換しておくと、登録データおよび入力データの表示方向がスライド方向に依存しなくなる。
【0142】
(2)PDA
図25(a),(b)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(PDA;Personal Digital Assistants)に適用した例を示す図であり、こ
の図25(a),(b)に示すPDA201においては、ディスプレイ81の下方位置において、スウィープ型指紋センサ31が縦方向(90度あるいは270度の向き)に実装されている。
【0143】
このPDA201において想定されるスライド方向は横方向であり、利用者(被認証者)右手でも左手でも指紋入力が可能である。
(3)PDA
図26(a),(b)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(PDA)に適用した例を示す図であり、この図26(a),(b)に示すPDA202は、図25(a),(b)に示したPDA201を90度回転させたものと同様に構成され、更に、180度回転させても使用可能に構成されている。
【0144】
このPDA202によれば、装置の180度回転に依存しない指紋入力が可能である。
(4)PDA
図27(a),(b)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(PDA)に適用した例を示す図である。この図27(a),(b)に示すPDA203においては、装置背面、すなわち、本体203aにおけるディスプレイ81が形成されている面とは反対側の面にスウィープ型指紋センサを縦方向(90度あるいは270度の向き)が実装されている。
【0145】
このPDA203において想定されるスライド方向は横方向であり、利用者(被認証者)右手でも左手でも指紋入力が可能である。 (5)ノートPC
図28(a),(b)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(ノートPC(Personal Computer))に適用した例を示す図であり、図28
(a)はディスプレイユニット204bを開いた状態を示す図、図28(b)はディスプレイユニット204bを表側にして畳んだ状態を示す図である。
【0146】
この図28(a),(b)に示すノートPC204は、ディスプレイユニット1bにおけるディスプレイ81の隣の位置に、スウィープ型指紋センサ31を横方向に実装したものであり、更に、図12に示した指紋認証装置1と同様に、本体204aとディスプレイ81をそなえるディスプレイユニット204bとを2軸ヒンジ(爪切り型ヒンジ)204cを介して開閉自在に接続して構成されている。
【0147】
また、このノートPC204のディスプレイユニット204bは、図28(b)に示すように、2軸ヒンジ204cを用いてディスプレイユニット204bを軸bで回転させて、更に軸aを介してディスプレイユニット204bを閉じ、ディスプレイ81が表面に出るような状態で畳んだ際に、ディスプレイ81に表示される画面が180度回転して表示されるようになっている。
【0148】
すなわち、図28(a)に示す例においては、文字“ABC”が正立した状態で表示されているが、2軸ヒンジ204cを用いてディスプレイユニット204bを軸bで回転させて、更に軸aを介してディスプレイユニット204bを閉じ、ディスプレイユニット204bが表面に出るような状態で畳んだ場合においても、図28(b)に示すように、文字“ABC”が正立して表示されるようになっている。
【0149】
このノートPC204においては、折りたたみ使用時には開使用時と比べてスライド方向が反対方向となるが、本発明によれば、装置の180度回転に依存しない指紋入力が可能である。
本発明によれば、ディスプレイ81の表示方向を180度回転させることによりスライド方向やカーソル移動方向も180度ずれるが、移動方向補正を行なうことによりカーソル移動方向が180度回転しない。
【0150】
(6)タブレットPC
図29(a),(b)および図30(a),(b)はそれぞれ本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(タブレットPC)に適用した例を示す図であり、図29(a)はタブレットPC205を縦方向で使用する状態を示す図、図29(b)はタブレットPC205を横方向で使用する状態を示す図、図30(a)はタブレットPC206を縦方向で使用する状態を示す図、図30(b)はタブレットPC206を横方向で使用する状態を示す図である。
【0151】
図29(a),(b)に示すタブレットPC205においては、装置本体におけるディスプレイ81の長手方向に沿ってスウィープ型指紋センサが実装されており、図30(a),(b)に示すタブレットPC206においては、装置本体におけるディスプレイ81の短手方向に沿ってスウィープ型指紋センサが実装されている。
そして、これらのタブレットPC205,206を、そのディスプレイの表示方向に合わせて、装置を90度あるいは270度回転させて設置することができるものである。このタブレットPC205,206によれば、装置の90度,180度,270度の回転に依存しない指紋入力が可能である。
【0152】
また、タブレットPC205は、図29(b)に示すように、図29(a)に示す縦方向での使用状態から、時計回りに90度回転させて横方向で使用する場合に、ディスプレイ81に表示する画面を90度回転して表示させることができるようになっている。
すなわち、図29(a)に示す例においては、文字“ABC”が正立した状態で表示されているが、この状態からタブレットPC205を時計方向に90度回転させた場合においても、図29(b)に示すように、文字“ABC”が正立して表示させることができるようになっている。
【0153】
同様に、タブレットPC206、図30(b)に示すように、図30(a)に示す縦方向での使用状態から、時計回りに90度回転させて横方向で使用する場合に、ディスプレイ81に表示する画面を90度回転して表示させることができるようになっている。
すなわち、図30(a)に示す例においては、文字“ABC”が正立した状態で表示されているが、この状態からタブレットPC206を時計方向に90度回転させた場合においても、図30(b)に示すように、文字“ABC”が正立して表示させることができるようになっている。
【0154】
また、スライド方向が上下方向となる向きに装置を設置する場合には、認証者の10指のうちいずれか1指以上、スライド方向が左右方向となる向きに装置を設置する場合には両親指のいずれか1指以上を登録しておくことにより、その設置方向を変えても高い認証性能を維持できる。
なお、図29(a)に示したタブレットPC205においては、向かってディスプレイ81の右側に指紋センサ31がそなえられているが、これに限定されるものではなく、例えば、向かってディスプレイ81の左側に指紋センサ31をそなえてもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。そして、このように向かってディスプレイ81の左側に指紋センサ31をそなえた場合には、本体を時計回りに90度回転させた場合には、ディスプレイ81の上側に指紋センサ31が位置することになる。
【0155】
同様に、図30(a)に示したタブレットPC206においては、向かってディスプレイ81の上側に指紋センサ31がそなえられているが、これに限定されるものではなく、例えば、向かってディスプレイ81の下側に指紋センサ31をそなえてもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。そして、このように向かってディスプレイ81の下側に指紋センサ31をそなえた場合には、本体を時計回りに90度回転させた場合には、向かってディスプレイ81の左側に指紋センサ31が位置することになる。
【0156】
また、これらのタブレットPC205,206の回転方向についても、本体を半時計方向に回転させてもよい。
(E)その他
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0157】
例えば、上述した実施形態では、被検体が人の指であり生体情報として指紋画像を採取する場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、被検体としての掌から、掌紋画像や血管パターン画像等を生体情報として採取する場合にも上述と同様に適用され、上述と同様の作用効果を得ることができる。
なお、本発明の各実施形態が開示されていれば、本発明を当業者によって実施・製造することが可能である。
【0158】
(F)付記
(付記1) 相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取手段と、
該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出手段と、
該移動方向検出手段によって検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換手段とを備えることを特徴とする、生体情報入力装置。
【0159】
(付記2) 該移動方向検出手段により、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出手段により前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小手段をそなえることを特徴とする、付記1記載の生体情報入力装置。
(付記3) 該生体部位の移動の停止を検出する移動停止検出手段をそなえ、
該移動停止検出手段により前記生体部位の移動の停止が検出された場合に、該生体情報の入力を停止することを特徴とする、付記1記載の生体情報入力装置。
【0160】
(付記4) 該座標変換手段によって座標変換された生体情報を表示する生体情報表示手段を備えることを特徴とする、付記1記載の生体情報入力装置。
(付記5) 相対的に移動している認証対象の生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取手段と、
該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出手段と、
該移動方向検出手段によって検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換手段と、
該座標変換手段による座標変換処理結果を用いて該認証対象に関する認証を行なう認証手段とを備えること特徴とする、生体認証装置。
【0161】
(付記6) 該移動方向検出手段により、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出手段により前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小手段をそなえることを特徴とする、付記5記載の生体認証装置。
(付記7) 該生体部位の移動の停止を検出する移動停止検出手段をそなえ、
該移動停止検出手段により前記生体部位の移動の停止が検出された場合に、該生体情報の入力を停止することを特徴とする、付記5記載の生体認証装置。
【0162】
(付記8) 該座標変換手段によって座標変換された生体情報を表示する生体情報表示手段を備えることを特徴とする、付記5記載の生体認証装置。
(付記9) 生体情報採取手段を用いて相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取ステップと、
該生体情報採取ステップにおいて採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出ステップと、
該移動方向検出ステップにおいて検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換ステップとを備えることを特徴とする、生体情報処理方法。
【0163】
(付記10) 該移動方向検出ステップにおいて、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出ステップにおいて前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小ステップとをそなえることを特徴とする、付記9記載の生体情報処理方法。
(付記11) 該生体部位の移動の停止を検出する移動停止検出ステップをそなえ、
該移動停止検出ステップにおいて前記生体部位の移動の停止が検出された場合に、該生体情報の入力を停止する停止ステップをそなえることを特徴とする、付記9記載の生体情報処理方法。
【0164】
(付記12) 該座標変換手段によって座標変換された生体情報を表示手段に表示する生体情報表示ステップを備えることを特徴とする、付記9記載の生体情報処理方法。
(付記13) 生体情報採取手段を用いて相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取ステップと、
該生体情報採取ステップにおいて採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出ステップと、
該移動方向検出ステップにおいて検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする、生体情報処理プログラム。
【0165】
(付記14) 該移動方向検出ステップを該コンピュータに実行させる際に、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出ステップにおいて前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小ステップを該コンピュータに実行させることを特徴とする、付記13記載の生体情報処理プログラム。
【0166】
(付記15) 該生体部位の移動の停止を検出する移動停止検出ステップと、
該移動停止検出ステップにおいて前記生体部位の移動の停止が検出された場合に、該生体情報の入力を停止する停止ステップとを該コンピュータに実行させることを特徴とする、付記13記載の生体情報処理プログラム。
(付記16) 該座標変換手段によって座標変換された生体情報を表示手段に表示する生体情報表示ステップを該コンピュータに実行させることを特徴とする、付記13記載の生体情報処理プログラム。
【0167】
(付記17) 生体情報採取手段を用いて相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取ステップと、
該生体情報採取ステップにおいて採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出ステップと、
該移動方向検出ステップにおいて検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする、生体情報処理プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【0168】
(付記18) 該生体情報処理プログラムが、
該移動方向検出ステップを該コンピュータに実行させる際に、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出ステップにおいて前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小ステップを該コンピュータに実行させることを特徴とする、付記17記載の生体情報処理プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【0169】
(付記19) 該生体情報処理プログラムが、
該生体部位の移動の停止を検出する移動停止検出ステップと、
該移動停止検出ステップにおいて前記生体部位の移動の停止が検出された場合に、該生体情報の入力を停止する停止ステップとを該コンピュータに実行させることを特徴とする、付記17記載の生体情報処理プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【0170】
(付記20) 該生体情報処理プログラムが、
該座標変換手段によって座標変換された生体情報を表示手段に表示する生体情報表示ステップを該コンピュータに実行させることを特徴とする、付記17記載の生体情報処理プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【産業上の利用可能性】
【0171】
携帯電話やPDAといった小型情報機器のようにセンサを組み込む空間が十分得られない装置において個人認証を行なうシステムに用いて好適であり、その有用性は極めて高いものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】本発明の一実施形態としての指紋認証装置の機能構成(原理的な構成)を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態としての指紋認証装置の具体的な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態としての指紋認証装置における移動方向初期探索範囲の例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態としての指紋認証装置における移動方向初期探索範囲の例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態としての指紋認証装置における移動方向初期探索範囲の他の例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態としての指紋認証装置における移動方向初期探索範囲の他の例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態としての指紋認証装置における移動方向探索範囲の設定手法を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態としての認証装置における座標変換前の生体情報画像と座標変換後の生体情報画像との関係を示す図である。
【図9】指紋センサにおける指紋画像の採取時における指のスライド速度の変化を例示する図である。
【図10】本発明の一実施形態としての指紋認証装置における停止監視範囲および移動方向初期探索範囲の例を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態としての指紋認証装置における移動方向探索範囲の設定手法に停止監視範囲を設けた場合の処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】(a),(b)はいずれも本発明の一実施形態としての認証装置の外観例を示す図である。
【図13】(a),(b)は本発明の一実施形態としての認証装置のディスプレイに表示される指示方向を説明するための図である。
【図14】本発明の一実施形態としての認証装置における処理を説明するためのフローチャートである。
【図15】本発明の一実施形態としての認証装置における処理を説明するためのフローチャートである。
【図16】図14および図15における生体情報入力ステップを説明するためのフローチャートである。
【図17】(a),(b)は指紋センサにおける配線パターンと実装面積との関係を説明するための図である。
【図18】本発明の一実施形態としての指紋認証装置の第1変形例の機能構成を示すブロック図である。
【図19】本発明の一実施形態としての指紋認証装置の第2変形例の機能構成を示すブロック図である。
【図20】(a),(b)はいずれも本発明の一実施形態としての指紋認証装置の第2変形例の外観例を示す図である。
【図21】本発明の一実施形態としての指紋認証装置の第2変形例における移動方向の補正手法を説明するためのフローチャートである。
【図22】本発明の一実施形態としての指紋認証装置の第2変形例における移動方向の補正手法を説明するためのフローチャートである。
【図23】(a),(b),(c)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(携帯電話)に適用した例を示す図である。
【図24】(a),(b)は図23(b),(c)の状態において採取された画像に基づいて生成された指紋画像の例を示す図である。
【図25】(a),(b)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(PDA;Personal Digital Assistants)に適用した例を示す図である。
【図26】(a),(b)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(PDA)に適用した例を示す図である。
【図27】(a),(b)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(PDA)に適用した例を示す図である。
【図28】(a),(b)は本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(ノートPC(Personal Computer))に適用した例を示す図である。
【図29】(a),(b)はそれぞれ本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(タブレットPC)に適用した例を示す図である。
【図30】(a),(b)はそれぞれ本発明の指紋認証装置をスウィープ型指紋センサをそなえたモバイル機器(タブレットPC)に適用した例を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取手段と、
該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出手段と、
該移動方向検出手段によって検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換手段と、
該移動方向検出手段により、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出手段により前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小手段とを備えることを特徴とする、生体情報入力装置。
【請求項2】
生体情報採取手段を用いて相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取ステップと、
該生体情報採取ステップにおいて採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出ステップと、
該移動方向検出ステップにおいて検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換ステップと、
該移動方向検出ステップにおいて、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出ステップにおいて前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小ステップとを備えることを特徴とする、生体情報処理方法。
【請求項3】
生体情報採取手段を用いて相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取ステップと、
該生体情報採取ステップにおいて採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出ステップと、
該移動方向検出ステップにおいて検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換ステップと、
連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出ステップにおいて前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする、生体情報処理プログラム。
【請求項1】
相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取手段と、
該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出手段と、
該移動方向検出手段によって検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換手段と、
該移動方向検出手段により、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出手段により前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小手段とを備えることを特徴とする、生体情報入力装置。
【請求項2】
生体情報採取手段を用いて相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取ステップと、
該生体情報採取ステップにおいて採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出ステップと、
該移動方向検出ステップにおいて検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換ステップと、
該移動方向検出ステップにおいて、連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出ステップにおいて前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小ステップとを備えることを特徴とする、生体情報処理方法。
【請求項3】
生体情報採取手段を用いて相対的に移動している生体部位を読み取り、該生体部位についての複数の部分画像を生体情報として連続的に採取する生体情報採取ステップと、
該生体情報採取ステップにおいて採取された該生体情報に基づいて該生体情報採取手段に対する該生体部位の移動方向を検出する移動方向検出ステップと、
該移動方向検出ステップにおいて検出された該移動方向を用いて、該生体情報採取手段によって採取された該生体情報に対して座標変換処理を行なう座標変換ステップと、
連続して同じ移動方向が検出されたときに、当該移動方向検出ステップにおいて前記移動方向の検出を行なう範囲である移動方向探索範囲を、当該検出された移動方向を含む所定の範囲に縮小する移動方向探索範囲縮小ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする、生体情報処理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2009−271948(P2009−271948A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191206(P2009−191206)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【分割の表示】特願2004−296645(P2004−296645)の分割
【原出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【分割の表示】特願2004−296645(P2004−296645)の分割
【原出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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