説明

生体情報測定方法、生体情報測定装置

【課題】簡単なアルゴリズムで睡眠時無呼吸症候群等の生体情報の判定を行うことのできる生体情報測定方法及び生体情報測定装置を提供する。
【解決手段】生体情報測定装置から3秒酸素飽和度のデータが送信されると(♯1)、酸素飽和度の測定動作が不能となった期間があったか否かを判断し(♯2)、前記期間があったと判断すると(♯2でYES)、SpOのデータ(3秒酸素飽和度のデータ)を補間する(♯3)。測定期間全体の3秒酸素飽和度のデータからベースライン算出し(♯4)、3秒酸素飽和度のデータについてフーリエ変換を行い(♯5)、このフーリエ変換後のデータのパワースペクトル│FT_SpO(nF)│を算出し(♯6)このパワースペクトルのうち0.0083Hz〜0.05Hzの周波数領域における面積Sを算出し(♯7)、この面積Sに対応するODIの値を導出する(♯8)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈血の酸素飽和度等の生体情報を測定する生体情報測定方法及び生体情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査の分野において、パルスオキシメータと呼ばれる装置が使用されることがある(例えば下記特許文献1参照)。パルスオキシメータは、被験者の所定の生体部位に装着される測定部を有し、該測定部において前記生体部位に向けて赤色光及び赤外光を、位相をずらしてそれぞれ例えば30Hzの比較的低いサンプリング周波数(1/30(秒)の周期)で交互に出力し、生体部位を透過又は反射又は透過した光の光量を検出し、この検出光量に基づいて血中の酸素飽和度(SpO)を導出するものである。
【0003】
また、パルスオキシメータは、予め所定のプログラムが組み込まれた例えばパーソナルコンピュータと通信可能に構成されており、例えばそのパーソナルコンピュータは、導出された酸素飽和度の平均値のデータがパルスオキシメータから提供されると、前記プログラムにより、この平均値に基づいて例えば酸素飽和度の変化や単位時間当たりの酸素飽和度の低下の回数を表す指標(Oxygen Desaturation Index;ODI)等、被験者の酸素飽和度についての解析を行う。
【0004】
ところで、従来、前記ODIの導出は次のような方法により行われている。図21は、酸素飽和度の変化を示すグラフであり、図22は、従来のODIの導出方法を示すフローチャートである。
【0005】
図22に示すように、酸素飽和度の測定終了後、全測定期間における酸素飽和度のデータに基づいて、無呼吸状態が発生していないときの酸素飽和度の値(以下、ベースラインという)が判定される(ステップ♯101)。ここでは、図21における点Pに対応する酸素飽和度がベースラインであるものとする。
【0006】
次に、このベースラインより時間的に後のデータのグラフが下降しているか否かが判断される(ステップ♯102)。その結果、下降していない場合には(ステップ♯102でNO)、ステップ♯108の処理に進む一方、下降している場合には(ステップ♯102でYES)、その下降状態から上昇状態に反転する状態の有無が判断される(ステップ♯103)。その結果、反転状態が無い場合には(ステップ♯103でNO)、ステップ♯108の処理に進む一方、図21の点Qに示すように反転状態がある場合には、その反転後、酸素飽和度が所定量だけ上昇したかが判断される(ステップ♯104)。
【0007】
その結果、酸素飽和度が所定量だけ上昇していない場合には(ステップ♯104でNO)、ステップ♯108の処理に進む一方、上昇している場合には(ステップ♯104でYES)、点Pから前記反転タイミング(点Qに対応するタイミング)までの時間(下降時間)が規定範囲内であるか否かが判断され(ステップ♯105)、規定範囲内でない場合には(ステップ♯105でNO)、ステップ♯108の処理に進む一方、規定範囲内である場合には(ステップ♯105でYES)、前記反転タイミングから再び下降する(図21の点Rで示すタイミング)までの時間(上昇時間)が規定範囲内であるか否かが反転される(ステップ♯106)。
【0008】
その結果、規定範囲内でない場合には(ステップ♯106でNO)、ステップ♯108の処理に進む一方、規定範囲内である場合には(ステップ♯106でYES)、前記点Pから点Rまでの酸素飽和度の変化を、無呼吸状態を示す酸素飽和度の低下(以下、Dipという)として検出するとともに、Dipの発生時間を記憶する(ステップ♯107)。
【0009】
全測定期間における全ての測定データについてステップ♯101〜♯107の処理が終了したか否かが判断され(ステップ♯108)、終了していない場合には(ステップ♯108でNO)、ステップ♯101の処理に戻る一方、終了した場合には(ステップ♯108でYES)、Dipの数をカウントし(ステップ♯109)、ODIを導出する(ステップ♯110)。
【特許文献1】特開平1−153139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このようなODIの導出を用いた睡眠時無呼吸症候群の判定方法にあっては、前述のようにアルゴリズムが比較的複雑であり、このアルゴリズムを実現するプログラムの開発に多大な時間やコストを要するという問題があった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、簡単なアルゴリズムで睡眠時無呼吸症候群等の生体情報の判定を行うことのできる生体情報測定方法及び生体情報測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、所定の生体情報を測定し、前記測定した生体情報に由来する生体信号に基づき生体情報に係るデータを算出し、前記生体情報に係るデータをフーリエ変換することを特徴とするものである。
【0013】
請求項9に記載の発明は、所定の生体情報を測定する測定手段と、前記測定手段により測定される生体情報に由来する生体信号に基づき、生体情報に係るデータを算出する算出手段と、前記生体情報に係るデータをフーリエ変換するフーリエ変換演算手段とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
請求項1,9に記載の発明によれば、生体情報に係るデータをフーリエ変換することにより、酸素飽和度の変化を示すグラフに含まれる周波数成分を検出することができ、この周波数成分に基づいて前記所定の生体情報が得られるため、従来のように時系列的に得られた個々のデータについて図22に示すようなDipの検出処理を行うことなく、簡単なアルゴリズムで睡眠時無呼吸症候群等の生体情報の判定を行うことが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の生体情報測定方法において、前記生体情報に係るデータをフーリエ変換する前に、算出した生体情報に係るデータから直流成分に相当する値を除去することを特徴とするものである。
【0016】
この発明によれば、生体情報に係るデータをフーリエ変換する前に、算出した生体情報に係るデータから直流成分に相当する値を除去するようにしたので、変動成分のみがフーリエ変換されたデータを得ることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の生体情報測定方法において、前記フーリエ変換の対象データは、測定期間において時系列的に得られた全てのデータであることを特徴とするものである。
【0018】
この発明によれば、フーリエ変換の対象データは、測定期間において時系列的に得られた全てのデータであるので、前記測定期間にわたる周波数分布を得ることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の生体情報測定方法において、フーリエ変換後のデータのパワースペクトルを算出し、算出したパワースペクトルのうち、所定の周期に相当する周波数の領域における面積を算出することを特徴とするものである。
【0020】
この発明によれば、フーリエ変換後のデータのパワースペクトルを算出し、算出したパワースペクトルのうち、所定の周期に相当する周波数の領域における面積を算出するようにしたので、前記面積を指標として生体情報の判定を行うことが可能となる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の生体情報測定方法において、前記生体情報は、睡眠時無呼吸症候群に係る情報であり、前記パワースペクトルのうち、無呼吸状態が発生する周期に相当する周波数の領域における面積を算出することを特徴とするものである。
【0022】
この発明によれば、前記パワースペクトルのうち、無呼吸状態が発生する周期に相当する周波数の領域における面積を算出するようにしたので、前記面積を指標として睡眠時無呼吸症候群の判定を行うことが可能となる。
【0023】
その際、前記無呼吸状態が一旦発生すると、その無呼吸状態の発生周期は一般的に20秒から120秒の間であるので、請求項6に記載の発明のように、0.0083〜0.05(Hz)の範囲の周波数の領域の面積を算出するようにするとよい。
【0024】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の生体情報測定方法において、全測定期間を複数の所定時間の小期間に分割し、小期間ごとに生体情報に係るデータをフーリエ変換し、前記各小期間におけるフーリエ変換後のデータのパワースペクトルを算出し、前記パワースペクトルを、周波数及び測定開始からの経過時間をパラメータとする3次元座標系に展開することを特徴とするものである。
【0025】
この発明によれば、全測定期間を複数の所定時間の小期間に分割し、小期間ごとに生体情報に係るデータをフーリエ変換し、前記各小期間におけるフーリエ変換後のデータのパワースペクトルを算出し、前記パワースペクトルを、周波数及び測定開始からの経過時間をパラメータとする3次元座標系に展開するようにしたので、周波数及び測定開始からの経過時間をパラメータとするパワースペクトルの分布を得ることができる。
【0026】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の生体情報測定方法において、前記各小期間におけるフーリエ変換対象の点数は2のべき乗であることを特徴とするものである。
【0027】
この発明によれば、前記各小期間におけるフーリエ変換対象の点数を2のべき乗としたので、前記フーリエ変換時における数学的な処理が簡単化されるため、前記フーリエ変換の演算処理を高速化することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、酸素飽和度の変化を示すグラフに含まれる周波数成分に基づいて所定の生体情報が得られるため、その生体情報に関連する特徴抽出を端的に行うことができ、その結果、簡単なアルゴリズムで睡眠時無呼吸症候群等の生体情報の判定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0030】
図1に示すように、生体情報測定システム1は、生体情報測定装置2と、パーソナルコンピュータ(以下、PCという)3とを備えて構成されている。
【0031】
生体情報測定装置2は、箱型形状の装置本体4と、該装置本体4とケーブル5により電気的に接続された測定部6とを備えた携帯性を有する装置である。なお、説明の都合上、測定部6の構成から説明を行う。
【0032】
測定部6は、所定の相対位置関係を有して対向配置された一対の発光部7及び受光部8を有し、発光部7及び受光部8は、各一端部において前記相対位置関係で固定された状態で連結部材9により連結されている。発光部7は、例えば、赤色領域の波長λ1の赤色光Rを発光する発光ダイオード(LED)と、赤外線領域の波長λ2の赤外光IRとを発光するLEDとを備えた光源である。
【0033】
受光部8は、受光した光の強度に応じた大きさの電流を生成する、例えばシリコンフォトダイオード(Silicon Photo Diode)等の光電変換素子を備えて構成されており、本実施形態では、少なくとも波長λ1の光と波長λ2の光とに対して感度を有する。受光部8は、生体組織LBを透過した発光部7からの波長λ1,λ2の光を受光する。なお、前記各LEDを同一基板上に近接して配置すると、生体内を透過する2種類の光の経路を略同一経路とすることができ、各光についての条件を略同一とすることができる。
【0034】
本実施形態の測定部6においては、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査時に、睡眠中の被験者の指先を発光部7と受光部8とで挟み込んだ状態で、発光部7から、波長λ1の赤色光Rと波長λ2の赤外光IRとを交互に射出されるとともに、受光部8により、発光部7の発光動作に同期して受光動作が行われる。発光部7の発光動作及び受光部8の受光動作は、後述の制御部18(図2参照)により制御されるようになっており、各光についての投受光動作は、例えば1/40〜1/30(秒)の間のいずれかの周期で行われる。受光部8は、光を受光すると、受光した光の強度に応じた大きさの電流信号を後述する装置本体4内のI/V変換部16(図2参照)に出力する。
【0035】
装置本体4は、表示部10と、該表示部10の下方に設置された入力操作部11とを有し、例えば図略の装填室に装着されるバッテリーや乾電池等の電力供給源から電力供給を受けて駆動する。
【0036】
表示部10は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、7セグメントLED(Light Emitting Diode)や有機ホトルミネセンス表示装置やCRT(Cathode-Ray Tube)、あるいはプラズマ等の表示装置からなり、後述の制御部18で算出された後述する酸素飽和度データ等を表示するものである。
【0037】
入力操作部11は、当該装置本体4の電源をON/OFFする電源ボタン、酸素飽和度の測定開始の指示を入力するためのスタートボタン、その測定終了の指示を入力するためのストップボタン等を有してなる。
【0038】
一方、PC3は、表示部12と、入力操作部13と、装置本体14とを備える。表示部12は、CRT(Cathode-Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)あるいはリアプロジェクター等からなり、生体情報測定装置2から送出されたデータや各種情報等の表示を行うものである。入力操作部13は、後述の制御部26(図8参照)等に所望の処理・動作を行わせる指示や各種情報を入力するためのものであり、例えばキーボードやマウスに相当する。装置本体14は、通信部24及び制御部26(図8参照)が搭載されているとともに、各種のプログラムやデータを記憶する例えばハードディスク等からなる外部記憶部25(図8参照)が備えられている。
【0039】
本実施形態の生体情報測定システム1においては、生体情報測定装置2において取得した後述の酸素飽和度等のデータが、ケーブル5及び絶縁部15を介してPC3に送出され、PC3において、受信した酸素飽和度のデータ又は該データに基づいて導出されるデータが表示部12に表示される。絶縁部15は、例えばフォトカプラ等で構成されており、電気信号を光信号に変換するものである。
【0040】
図2は、生体情報測定装置2の電気的な構成を示すブロック図である。図2に示すように、生体情報測定装置2は、測定部6、表示部10、入力操作部11、電流電圧変換部(以下、I/V変換部という)16、アナログデジタル変換部(以下、A/D変換部)17、制御部18及び通信部19を備える。
【0041】
測定部6、表示部10及び入力操作部11は、図1に示す測定部6、表示部10及び入力操作部11に相当するものである。
【0042】
I/V変換部16は、例えば1/40(秒)の周期で受光部8から出力される電流信号を電圧信号に変換し、この電圧信号を光電脈波信号としてA/D変換部17に出力するものである。A/D変換部17は、I/V変換部16から出力されたアナログの光電脈波信号をデジタルの光電脈波信号に変換し、このデジタルの光電脈波信号を制御部18に出力するものである。
【0043】
制御部18は、マイクロプロセッサやDSP(Digital Signal Processor)などを備えて構成されており、後述の記憶部20に格納されているデータやプログラムに従って、入力された光電脈波信号から動脈血中の酸素飽和度を演算するものである。制御部18は、測定制御部21と、バンドパスフィルタ部(以下、「BPF部」と略記する)22と、酸素飽和度演算部23とを有する。
【0044】
測定制御部21は、測定部6の発光部7及び受光部8の動作を制御するものであり、本実施形態では、波長λ1の赤色光R及び波長λ2の赤外光IRをそれぞれ例えば1/40(秒)の周期で発光部7から交互に射出させる。
【0045】
BPF部22は、デジタルフィルタで構成されており、A/D変換部17によりA/D変換された光電脈波信号をフィルタリングするものである。なお、BPF部22は、デジタルローパスフィルタ及びデジタルハイパスフィルタから構成してもよいし、FIR(Finite Impulse Response)フィルタで構成してもよい。
【0046】
酸素飽和度演算部23は、BPF部22によりフィルタリングされた光電脈波信号に基づいて、測定した各時点での酸素飽和度(以下、この酸素飽和度を瞬間酸素飽和度という)を算出する。
【0047】
ここで、酸素飽和度演算部23による光を用いた血中酸素飽和度を導出する原理について説明する。
【0048】
酸素は、血中のヘモグロビン(Hb)によって生体の各細胞に運搬され、ヘモグロビンは、肺で酸素と結合して酸化ヘモグロビン(HbO)となり、生体の細胞で酸素が消費されるとヘモグロビンに戻る。酸素飽和度SpOは、血中の酸化ヘモグロビンの割合をいい、ヘモグロビン濃度をCHb、酸化ヘモグロビン濃度をCHbOと表すと、下記式(1)で表される。
【0049】
【数1】

【0050】
一方、ヘモグロビンの吸光度及び酸化ヘモグロビンの吸光度は、波長依存性を有しており、各吸光係数α(λ)は、図3に示すような吸光特性を有する。なお、図3の横軸は光の波長であり、単位はnm、縦軸は、吸光係数であり、単位は10−9cm/moleである。
【0051】
図3に示すように、ヘモグロビン及び酸化ヘモグロビンは、吸光特性が異なる。ヘモグロビンは、赤色領域の波長λ1の赤色光Rに対して酸化ヘモグロビンよりも光を多く吸収するが、赤外線領域の波長λ2を超える赤外光IRに対しては酸化ヘモグロビンよりも光の吸収が少ない。すなわち、例えば赤外光Rの波長を酸化ヘモグロビンとヘモグロビンとの吸光係数差が最も大きい660nmとし、赤外光IRの波長を酸化ヘモグロビンとヘモグロビンとの吸光係数が等しい805nmとすると、酸化ヘモグロビンとヘモグロビンとの比率が変化しても赤外光IRの透過光量は変化しないこととなる。一方、赤色光Rの透過光量はヘモグロビンが多いと小さくなり、酸化ヘモグロビンが多いと大きくなる。つまり、透過光量の比をとれば酸素飽和度を求めることができる。
【0052】
生体情報測定装置2は、このようなヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの赤色光Rと赤外光IRとに対する吸光特性の違いを利用して血中酸素飽和度を求めるものである。なお、ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの赤色光Rと赤外光IRとに対する吸光特性の違いを利用して脈拍数も求めることができる。
【0053】
生体に光を照射すると、光の一部は吸収され、残りは透過する。生体は、動脈血層と、静脈血層と、動脈血層及び静脈血層以外の組織とで構成されている。生体における光の吸収は、図4(a)に示すように、動脈血層及び静脈血層以外の組織による吸収、静脈血層による吸収及び動脈血層による吸収より成る。動脈血層及び静脈血層以外の組織と静脈血層とは経時的に変化しないため、この部分での光の吸収は略一定である。
【0054】
一方、動脈血層は心拍動によって径が変化し、血管の径が変化するため、動脈血層による光の吸収は、図4(b)に示すように脈拍による経時的に変動する。つまり、透過光強度の変化分は、動脈血のみの情報によるものであって、動脈血層及び静脈血層以外の組織と静脈血層とによる影響はほとんど含まれないと考えられる。図4(b)において、横軸は時間、縦軸は透過光強度である。
【0055】
赤色光R及び赤外光IRの光量変化を比較する場合、入射光量の差をキャンセルする必要がある。図5は、生体に入射する入射光と透過光との関係を模式的に示す図である。
【0056】
図5(a)に示すように、生体への入射光量I0を赤色光Rと赤外光IRとで同一にすることは実質的に困難であり、仮に同一にしても組織や静脈血による吸光率は赤色光Rと赤外光IRとで異なるため、動脈血層による透過光強度の変化分のみを比較することはできない。
【0057】
ここで、動脈が一番細い場合(透過光量が最も大きくなる場合)の透過光量をIとし、動脈が最も太い場合(透過光量が最も小さくなる場合)の透過光量を(I−ΔI)とする。図5(b)に示すように、厚さΔDの動脈血に光量Iの光を照射したとき、透過光量(I−ΔI)の透過光が得られると考えられる。
【0058】
そして、図6に示すように、赤色光Rの透過光量Iと赤外光IRの透過光量IIRとが一致するように正規化する(IIR'=I)ことにより、動脈血による光量変化の比(ΔI/I)/(ΔIIR/IIR)を算出し、酸素飽和度を算出する。
【0059】
入射光と反射光との関係は、ランバート・ビアの法則により、下記式(2)で表すことができる。
【0060】
【数2】

【0061】
なお、Eは吸光物の吸光係数、Cは吸光物の濃度を表す。
【0062】
赤色光R及び赤外光IRの各波長を前記数2に代入し、各辺の比をとることにより、下記式(3)を得ることができる。
【0063】
【数3】

【0064】
なお、Iは、赤色光Rの透過光量、IIRは、赤外光IRの透過光量、Eは、赤色光Rの吸光係数、EIRは、赤外光IRの吸光係数を表す。
【0065】
図7は、例えば赤色光R及び赤外光IRの各波長を、それぞれ660nm及び805nmとしたときにおける、吸光係数の比(E/EIR)と酸素飽和度SpOとの関係を示すグラフである。図7に示すように、酸素飽和度SpOは、吸光係数の比(E/EIR)の低下に比例して増大していく。
【0066】
以上のようにして、酸素飽和度演算部23は酸素飽和度の瞬間値(以下、瞬間酸素飽和度という)を算出すると、この瞬間酸素飽和度のデータを記憶部20に格納するとともに、生体情報測定装置2がPC3と通信可能に接続され該PC3から要求があった場合に、該データをPC3に送信する処理を通信部19に行わせる。
【0067】
また、酸素飽和度演算部23は、測定開始から1秒経過するたびに、各経過タイミング測定時点から1秒間だけ過去に遡った時点までの期間において算出された瞬間酸素飽和度のうち、血流とは無関係の要因、例えば身体の動きなどによって適正範囲から外れた有効でない瞬間酸素飽和度のデータ(解析の精度を低下させると考えられる酸素飽和度のデータ)を対象から外す無効データ除去処理を行った後、有効とされる瞬間酸素飽和度の平均値を算出する。以下、この平均値を1秒酸素飽和度という。
【0068】
さらに、酸素飽和度演算部23は、測定開始から1秒経過するたびに、各経過タイミング測定時点から3秒間だけ過去に遡った時点までの期間において算出された1秒酸素飽和度の平均値を算出する。以下、この平均値を3秒酸素飽和度という。
【0069】
記憶部20は、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)等で構成され、酸素飽和度演算部23で算出された瞬間酸素飽和度を記憶するものである。また、記憶部20には、例えば、生体情報測定装置2の識別番号、電源投入時から所定時間(例えば8時間)で電源を自動的にオフするオートパワーオフ機能が搭載されている場合のその所定時間(オートパワーオフ時間)、各測定データをPC3にダウンロードした回数等のデータ、例えば発光部7の発光光量が許容範囲外であるとか脈波の振幅が許容範囲外であるとか等の測定状態を示すデータも記憶される。
【0070】
通信部19は、RS−232C,USB,IrDA等のインターフェースを備えて構成されており、PC3との間でケーブル5及び絶縁部15を介してデータの通信を行うものである。
【0071】
図8は、PC3の電気的な構成を示すブロック図である。図8に示すように、PC3は、表示部12と、入力操作部13と、通信部24と、外部記憶部25と、制御部26とを有する。入力操作部13及び表示部12は、図1に示す入力操作部13及び表示部12に相当するものである。
【0072】
通信部24は、RS−232C,USB,IrDA等のインターフェースで構成され、生体情報測定装置2との間でケーブル5及び絶縁部15を介してデータの通信を行うものである。
【0073】
外部記憶部25は、ハードディスク、USBメモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フロッピーディスク(登録商標)等からなり、通信部24により受信したデータを記憶するものである。
【0074】
制御部26は、マイクロコンピュータからなり、上述したPC3内の各部材の駆動を関連付けて制御するものである。また、制御部26は、機能的に、補間処理部27と、ベースライン算出部28と、周波数変換部29と、パワースペクトル算出部30と、面積算出部31と、ODI導出部32とを有する。
【0075】
補間処理部27は、通信部24を介して生体情報測定装置2から受信したSpOのデータ(3秒酸素飽和度のデータ)について、酸素飽和度の測定動作が不能となった期間の有無を判断し、酸素飽和度の測定動作が不能となった期間が存在すると判断した場合に、酸素飽和度の測定動作が不能となった期間のSpOのデータ(3秒酸素飽和度のデータ)を補間するものである。
【0076】
例えば夜間の測定中に測定部6が指先から外れ、途中で被験者が気づいて指に装着し直すという場合が発生し得る。また、トイレに行くなどの所定の用事で被験者が起床して一旦測定部6を取り外し、その後戻ってきて再び測定部6を指先に装着する場合もある。このように、一時的に(比較的短時間の間)測定部6が指先から外れる又は外された場合、酸素飽和度の測定動作が不能となる。
【0077】
このように酸素飽和度の測定動作が不能となると、本実施形態では、この不能となった期間のSpOのデータとして0(%)が設定されるため、このデータをそのまま用いて後述のフーリエ変換を行うと、直流成分が非常に大きくなる。
【0078】
このことから、補間処理部27は、前記測定不能となった期間のSpOのデータを補間する。補間方法として、例えば0(%)のSpOのデータをこの値(0%)と異なる一定値Gに置換したり、或いは、前記測定不能となった期間の直前及び直後に得られたSpOの平均値としたりする方法が想定される。
【0079】
ベースライン算出部28は、無呼吸状態が発生していないときのSpOの値(以下、ベースラインという)を算出するものである。ベースラインは、測定期間中のSpOの値の中で略最大値としてもよいし、あるいは、この最大値に対して微小誤差範囲内に含まれる複数の測定値の平均値としてもよい。
【0080】
周波数変換部29は、下記式(4)を用いて、得られた3秒酸素飽和度のデータをフーリエ変換するものである。
【0081】
【数4】

【0082】
3秒酸素飽和度のデータのサンプリングピッチをT、測定データの点数をNとすると、3秒酸素飽和度のデータをフーリエ変換したときのサンプリングピッチFはF=1/(N×T)となる。なお、SpOは、健常者の場合には97%付近の値となり、3秒酸素飽和度のデータをそのままフーリエ変換すると、0Hz付近のピーク値(直流成分を示す値)が非常に大きくなる。
【0083】
この場合、例えばフーリエ変換後のデータ(後述するパワースペクトル)を表示部12に表示してPC3の操作者に提示するような構成を採用したとき、どの周波数に分布が偏っているかの解析を一目で判別し難い。そこで、全測定期間の単純平均値又は無呼吸状態が発生してないときのSpOの平均値などを3秒酸素飽和度から差し引いた上でフーリエ変換するようにしてもよい。
【0084】
すなわち、前記全測定期間の単純平均値又は無呼吸が発生してないときのSpOの平均値等を定数Xで表すとともに、フーリエ変換後のデータをFT_SpO(nF)と表したとき、下記式(5)を用いて、3秒酸素飽和度のデータをフーリエ変換してもよい。
【0085】
【数5】

【0086】
なお、前記補間処理部27で用いる前記一定値Gを前記定数Xとしてもよい。
【0087】
パワースペクトル算出部30は、前記周波数変換部29によるフーリエ変換後のデータFT_SpO(nF)のパワースペクトル│FT_SpO(nF)│を算出するものである。
【0088】
面積算出部31は、下記式(6)を用いて、フーリエ変換したデータのうち無呼吸状態の発生周期に相当する周波数領域の面積を計算するものである。
【0089】
【数6】

【0090】
図9(a)は、健常者のSpOのデータを示す図、図9(b)は、図9(a)に示すデータをフーリエ変換したデータを示す図である。図10(a)は、軽度の睡眠時無呼吸症候群を有する被験者のSpOのデータを示す図、図10(b)は、図10(a)に示すデータをフーリエ変換したデータを示す図である。図11(a)は、重度の睡眠時無呼吸症候群を有する被験者のSpOのデータを示す図、図11(b)は、図11(a)に示すデータをフーリエ変換したデータを示す図である。
【0091】
無呼吸状態は不定期に発生するが、一旦無呼吸状態が発生すると、無呼吸状態は0.0083Hz〜0.05Hzに相当する周期(20秒から120秒)で連続的に発生する。図9(b),図10(b)及び図11(b)において、0.0083Hz〜0.05Hzの周波数領域における面積(例えば図11(b)の矢印Qで示す領域の面積)が、前記(6)式の面積Sに相当する。これらの図から判るように、無呼吸症候群の症状が重症になるほど、算出される面積Sが大きくなる。
【0092】
ODI導出部32は、面積算出部31により算出された面積Sに基づいて、被験者のODIを導出するものである。
【0093】
図12(a)は、ODI3(1時間あたりの酸素飽和度が無呼吸状態でないときの酸素飽和度から酸素飽和度(SpO)が3%低下した回数)の場合における、単位時間あたりのSpOの低下回数(横軸)と前記面積S(縦軸)との関係を示す図であり、図12(b)は、ODI4(1時間あたりの酸素飽和度が無呼吸状態でないときの酸素飽和度から酸素飽和度(SpO)が4%低下した回数)の場合における、単位時間あたりのSpOの低下回数(横軸)と前記面積S(縦軸)との関係を示す図である。
【0094】
算出した面積Sを単位時間あたりのSpO(3秒酸素飽和度)の低下回数に対応させてプロットすると、図12(a),(b)に示すような各点となる。ここで、単位時間あたりのSpOの低下回数と算出した面積Sとは高い相関関係を有しており、その相関関係は、線形性を有するグラフで近似されるものとなる。
【0095】
そこで、本実施形態では、前記面積Sを、単位時間あたりのSpOの低下回数の1次式で表すとともに、例えば算出され得る面積Sを所定数の範囲に分け、各範囲に対応するODIの範囲を予め求めて前記面積Sの範囲とODIの範囲との相関データをテーブル化しておく。
【0096】
例えば、図13に示すように、面積SがS1未満(S<S1)のときにはODIはα未満(ODI<α)、面積SがS1以上S2未満(S1≦S<S2)のときにはODIはα≦ODI<β、面積SがS2以上S3未満(S2≦S<S3)のときにはODIはβ≦ODI<γ、面積SがS3以上(S≧S3)のときにはODIはODI≧γであるとの相関データをテーブル化しておく。
【0097】
そして、前述のように面積Sが算出されると、ODI導出部32は、前記標本を参照して前記面積算出部31により算出された面積Sが属する範囲に対応したODIの範囲を導出する。例えば、算出された面積SpがS2以上S3未満の値であったときには、ODI導出部32は、図13に示すテーブルを参照して、被験者のODIはβ≦ODI<γであると導出する。
【0098】
図14は、PC3により行われる解析処理を示すフローチャートである。
【0099】
図14に示すように、制御部26は、生体情報測定装置2から3秒酸素飽和度のデータが送信されると(ステップ♯1)、酸素飽和度の測定動作が不能となった期間があったか否かを判断し(ステップ♯2)、前記期間があったと判断すると(ステップ♯2でYES)、SpOのデータ(3秒酸素飽和度のデータ)を補間する(ステップ♯3)。
【0100】
次に、制御部26は、測定期間全体の3秒酸素飽和度のデータからベースライン(無呼吸状態が発生していないときの3秒酸素飽和度の値)を算出し(ステップ♯4)、3秒酸素飽和度のデータについて前記式(4)又は式(5)を用いてフーリエ変換を行い(ステップ♯5)、このフーリエ変換後のデータのパワースペクトル│FT_SpO(nF)│を算出する(ステップ♯6)。
【0101】
そして、制御部26は、前記パワースペクトルのうち0.0083Hz〜0.05Hzの周波数領域における面積Sを前記数6を用いて算出し(ステップ♯7)、この面積Sに対応するODIの値を導出する(ステップ♯8)。
【0102】
以上のように、得られたSpOのデータ(3秒酸素飽和度のデータ)をフーリエ変換してパワースペクトルを算出し、睡眠時無呼吸の無呼吸周期に相当する周波数領域の面積Sに基づいてODIを導出するようにしたので、従来のように、時系列的に得られるSpOのデータに対して逐次Dip判定を行うことなく、容易に無呼吸の程度を判定することができる。
【0103】
本件は、前記実施形態に加えて、あるいは前記実施形態に代えて次の形態[1]〜[7]に説明する変形形態も含むものである。
【0104】
[1]前記第1の実施形態では、測定データ全体に対してフーリエ変換を行うようにしたが、これに限らず、全測定期間を所定時間ごとの小期間に分割し、小期間ごとに3秒酸素飽和度のデータをフーリエ変換し、各小期間におけるフーリエ変換後のデータのパワースペクトルを算出するようにしてもよい。この場合、前記パワースペクトルは、下記式(7)に示すように2変数の関数P(nF,mT)となる。
【0105】
【数7】

【0106】
なお、数7中のX(mT)は、前記式(5)の定数Xに相当するものであり、また、Dは、フーリエ変換を行う点数であり、例えば前記「512」である。
【0107】
さらに、このパワースペクトルを、周波数及び測定開始からの経過時間をパラメータとする3次元座標系に展開するとよい。図15は、健常者の3秒酸素飽和度のデータを前記のようにフーリエ変換して得られるパワースペクトルを前記3次元座標系に展開したデータを示す図、図16は、軽度の無呼吸症候群を有する被験者の3秒酸素飽和度のデータを前記のようにフーリエ変換したデータを示す図、図17は、重度の無呼吸症候群を有する被験者の3秒酸素飽和度のデータを前記のようにフーリエ変換したデータを示す図である。
【0108】
これらのグラフにおいて、無呼吸周期に相当する0.0083Hz〜0.05Hzの領域に着目すると、無呼吸状態が発生している領域にはピークが発生することから、本実施形態では、睡眠中における無呼吸状態が発生した時刻と、その無呼吸状態の周期を判別することができる。例えば図16に示す3秒酸素飽和度のデータが得られた軽度の無呼吸症候群を有する被験者については、矢印Wに示すように、睡眠開始から8時間経過後に無呼吸状態が発生し、かつ0.015Hzに相当する周期で無呼吸状態が発生したことが判る。また、前記第1の実施形態と同様に、0.0083Hz〜0.05Hzの周波数の範囲における面積を算出することで、時間ごとの無呼吸状態の程度を判定することも可能となる。図15〜図17を比較したとき、睡眠時無呼吸症候群の症状が重症であるほど、面積が大きくなることが判る。
【0109】
なお、着目すべき周波数領域が0.0083Hz〜0.05Hzの領域(周期が20秒〜120秒の領域)であるので、フーリエ変換のナイキスト周波数を120秒以下に設定するとよく、1秒間隔の酸素飽和度のデータの場合には120点以上が好ましい。また、フーリエ変換を行う点数を例えば256点や512点など、2のべき乗の数値に設定すると、前記式(7)を用いたフーリエ変換演算処理が簡単化されるため、パワースペクトルの算出時間を短縮することができる。
【0110】
[2]前記第1の実施形態ではODIを導出するようにしたが、このODIの代わりに、周知のAHI(apnea-hyperpnoea index)を導出するようにしてもよい。
【0111】
[3]前記第1の実施形態のようにODIを導出するだけでなく、導出したODIに応じて睡眠時無呼吸症候群の症状の程度を被験者やPC3の操作者に提供するようにしてもよい。
【0112】
例えば、図13に示すように、面積SがS1未満(S<S1)のときには健常者であり、面積SがS1以上S2未満(S1≦S<S2)のときには前記症状が軽度であり、面積SがS2以上S3未満(S2≦S<S3)のときには前記症状が中度であり、面積SがS3以上(S≧S3)のときには前記症状が重症であるという内容を前記テーブルに付加し、例えば、算出された面積SpがS2以上S3未満の値であったときには、図13に示すテーブルを参照して被験者は症状が中度であると導出して、この情報を被験者やPC3の操作者に提供する。
【0113】
また、このように睡眠時無呼吸症候群の症状の程度までを導出して被験者やPC3の操作者に提供する形態に代えて、図9〜図11や図15〜図17に示すグラフを表示部12に表示して被験者やPC3の操作者に提供し、被験者やPC3の操作者に睡眠時無呼吸症候群の症状の程度を判断させるようにしてもよい。
【0114】
[4]睡眠時無呼吸症候群の症状を示すパラメータは、パワースペクトルのグラフにおける面積Sに限られるものではなく、例えばパワースペクトルの高さ等であってもよい。
【0115】
[5]フーリエ変換の対象のデータは、3秒酸素飽和度のデータに限られるものではなく、酸素飽和度の瞬間値のデータや1秒酸素飽和度のデータ等適宜設定可能である。
【0116】
[6]本件は、前記第1の実施形態のように酸素飽和度の測定を行う機能と得られた酸素飽和度に基づいて解析を行う機能とが別体の装置に搭載されたものに限らず、それらの機能が同一の装置に搭載されたものも含む。
【0117】
[7]本件の測定対象は、酸素飽和度に限られるものではなく、例えば脈拍数も含むものであり、得られた脈拍数のデータを前記と同様にフーリエ変換してパワースペクトルを導出することによって、被験者の脈拍に係る症状を検証することが可能となる。
【0118】
図18(a)は、健常者の脈拍数のデータを示す図、図18(b)は、図18(a)に示すデータをフーリエ変換したデータを示す図である。図19(a)は、脈拍に係る軽度の異常を有する被験者の脈拍数のデータを示す図、図19(b)は、図19(a)に示すデータをフーリエ変換したデータを示す図である。図20(a)は、重度の脈拍に係る軽度の異常を有する被験者の脈拍数のデータを示す図、図20(b)は、図20(a)に示すデータをフーリエ変換したデータを示す図である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明に係る生体情報測定システムの第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】生体情報測定装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】ヘモグロビン及び酸化ヘモグロビンの吸光特性を示すグラフである。
【図4】生体による光の吸収を示す図である。
【図5】生体に入射する入射光と透過光との関係を模式的に表す図である。
【図6】赤外光による透過光量の正規化を説明するための図である。
【図7】吸光係数の比と酸素飽和度との関係を示す図である。
【図8】パーソナルコンピュータの電気的な構成を示すブロック図である。
【図9】(a)は、健常者のSpOのデータを示す図、(b)は、図9(a)に示すデータをフーリエ変換したデータを示す図である。
【図10】(a)は、軽度の睡眠時無呼吸症候群を有する被験者のSpOのデータを示す図、(b)は、(a)に示すデータをフーリエ変換したデータを示す図である。
【図11】(a)は、重度の睡眠時無呼吸症候群を有する被験者のSpOのデータを示す図、(b)は、(a)に示すデータをフーリエ変換したデータを示す図である。
【図12】(a)は、ODIの場合における、単位時間あたりのSpOの低下回数(横軸)と面積S(縦軸)との関係を示す図であり、(b)は、ODIの場合における、単位時間あたりのSpOの低下回数(横軸)と面積S(縦軸)との関係を示す図である。
【図13】算出され得る面積Sを所定数の範囲に分けた場合における各範囲とODIの範囲との相関データを示すテーブルである。
【図14】PCにより行われる解析処理を示すフローチャートである。
【図15】健常者の3秒酸素飽和度のデータについて、全測定期間を所定時間ごとの小期間に分割し、小期間ごとに3秒酸素飽和度のデータをフーリエ変換し、各小期間においてそれぞれフーリエ変換して得られるパワースペクトルを3次元座標系に展開したデータを示す図である。
【図16】軽度の無呼吸症候群を有する被験者の3秒酸素飽和度のデータについて、全測定期間を所定時間ごとの小期間に分割し、小期間ごとに3秒酸素飽和度のデータをフーリエ変換し、各小期間においてそれぞれフーリエ変換して得られるパワースペクトルを3次元座標系に展開したデータを示す図である。
【図17】重度の無呼吸症候群を有する被験者の3秒酸素飽和度のデータについて、全測定期間を所定時間ごとの小期間に分割し、小期間ごとに3秒酸素飽和度のデータをフーリエ変換し、各小期間においてそれぞれフーリエ変換して得られるパワースペクトルを3次元座標系に展開したデータを示す図である。
【図18】(a)は、健常者の脈拍数のデータを示す図、(b)は、(a)に示すデータをフーリエ変換したデータを示す図である。
【図19】(a)は、脈拍に係る軽度の異常を有する被験者の脈拍数のデータを示す図、(b)は、(a)に示すデータをフーリエ変換したデータを示す図である。
【図20】(a)は、重度の脈拍に係る軽度の異常を有する被験者の脈拍数のデータを示す図、(b)は、(a)に示すデータをフーリエ変換したデータを示す図である。
【図21】従来のODIの導出方法を説明するための図である。
【図22】従来のODIの導出方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0120】
26 制御部
27 補間処理部
28 ベースライン算出部
29 周波数変換部
30 パワースペクトル算出部
31 面積算出部
32 ODI導出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の生体情報を測定し、
前記測定した生体情報に由来する生体信号に基づき生体情報に係るデータを算出し、
前記生体情報に係るデータをフーリエ変換することを特徴とする生体情報測定方法。
【請求項2】
前記生体情報に係るデータをフーリエ変換する前に、算出した生体情報に係るデータから直流成分に相当する値を除去することを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定方法。
【請求項3】
前記フーリエ変換の対象データは、測定期間において時系列的に得られた全てのデータであることを特徴とする請求項1または2に記載の生体情報測定方法。
【請求項4】
フーリエ変換後のデータのパワースペクトルを算出し、
算出したパワースペクトルのうち、所定の周期に相当する周波数の領域における面積を算出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の生体情報測定方法。
【請求項5】
前記生体情報は、睡眠時無呼吸症候群に係る情報であり、
前記パワースペクトルのうち、無呼吸状態が発生する周期に相当する周波数の領域における面積を算出することを特徴とする請求項4に記載の生体情報測定方法。
【請求項6】
前記周波数は、0.0083〜0.05(Hz)の範囲の周波数であることを特徴とする請求項5に記載の生体情報測定方法。
【請求項7】
全測定期間を複数の所定時間の小期間に分割し、小期間ごとに生体情報に係るデータをフーリエ変換し、
前記各小期間におけるフーリエ変換後のデータのパワースペクトルを算出し、
前記パワースペクトルを、周波数及び測定開始からの経過時間をパラメータとする3次元座標系に展開することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の生体情報測定方法。
【請求項8】
前記各小期間におけるフーリエ変換対象の点数は2のべき乗であることを特徴とする請求項7に記載の生体情報測定方法。
【請求項9】
所定の生体情報を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定される生体情報に由来する生体信号に基づき、生体情報に係るデータを算出する算出手段と、
前記生体情報に係るデータをフーリエ変換するフーリエ変換演算手段と
を備えることを特徴とする生体情報測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−190281(P2007−190281A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12964(P2006−12964)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】