説明

生体情報測定装置、生体情報測定システム

【課題】被験者の生体情報をより正確に解析することができる生体情報測定システムを提供する。
【解決手段】被験者によりスタートボタンが操作されると(ステップ♯1でYES)、制御部は、GPS部に現在位置の測定動作を行わせ(ステップ♯2)、酸素飽和度の測定動作を行わせる(ステップ♯3)。そして、制御部は、測定動作により得られた酸素飽和度の情報を現在位置の情報と対応付けて記憶部に記録する(ステップ♯4)。そして、制御部は、ストップボタンが操作されたか否かを判断し(ステップ♯5)、ストップボタンが操作されていない場合には(ステップ♯5でNO)、ステップ♯2の処理に戻る一方、ストップボタンが操作された場合には(ステップ♯5でYES)、一連の処理を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈血の酸素飽和度や脈拍数等の生体情報を測定する生体情報測定装置及び生体情報測定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸症候群(SAS)やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の検査において、パルスオキシメータと呼ばれる装置が使用されることがある。パルスオキシメータは、被験者の所定の生体部位に装着される測定部を有し、該測定部において前記生体部位に向けて光を出力し、生体部位を透過又は反射した光の光量に基づいて血中の酸素飽和度(SpO)を導出するように構成されている。
【0003】
また、パルスオキシメータは、予め所定のプログラムが組み込まれた例えばパーソナルコンピュータと通信可能に構成されており、例えばそのパーソナルコンピュータは、一晩の睡眠時の酸素飽和度のデータがパルスオキシメータから提供されると、前記プログラムにより、この平均値に基づいて例えば酸素飽和度の変化や単位時間当たりの酸素飽和度の低下の回数を表す睡眠時無呼吸指数(Oxygen Desaturation Index ODI)を導出する。
【0004】
一方、下記特許文献1には、心臓血管系の状態を測定するECG測定構成を備え、該ECG測定構成により得られた前記心臓血管系の状態を示すデータが得られると、このデータとともにGPS(全地球測位システム)により測定対象者の位置を医療専門家に伝送することが記載されている。
【特許文献1】特表2005−538784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、睡眠時であるのか入浴時であるのか、或いは歩行時であるのかなど、被験者の行動態様や居場所に応じて被験者の生体の状態は異なる。したがって、測定時における被験者の行動態様や居場所を知ることができれば、被験者の生体情報をより正確に解析することができると考えられる。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、被験者の生体情報をより正確に解析することができる生体情報測定装置及び生体情報測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、予め決められた生体情報を測定する測定部と、前記測定部により測定される生体情報に由来する生体信号に基づき、生体情報に係るデータを導出する導出部と、電波を用いて前記測定部の現在の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記生体信号又は前記導出部により導出された生体情報に係るデータと、前記位置情報取得部により取得された位置情報とを関連付けて記憶する記憶部とを備える生体情報測定装置である。
【0008】
この発明によれば、測定部の現在位置情報と生体信号又は生体情報に係るデータとが関連付けて記憶部に記憶されるようにしたので、生体信号又は生体情報に係るデータを取得した時点での測定部の位置情報を提供する構成を実現することができる。なお、測定部、導出部、位置情報取得部及び記憶部は、一体化された装置に搭載された形態であってもよいし、例えばこれらが別体化されたものであってもよい。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の生体情報測定装置において、前記位置情報取得部による位置情報の取得動作を制御する位置情報取得制御部を備え、前記位置情報取得部は、前記位置情報取得制御部からの指示にしたがって位置情報の取得動作を行うものである。
【0010】
この発明によれば、前記位置情報取得部による位置情報の取得動作を制御する位置情報取得制御部を備えたので、位置情報の取得動作を自動的に行う構成を実現することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の生体情報測定装置において、前記位置情報取得制御部は、前記測定部の測定期間、前記位置情報取得部に対して繰り返し位置情報の取得動作を行わせ、前記記憶部は、前記位置情報取得部により取得された各位置情報を、当該位置情報の取得動作に略同期して前記生体信号又は前記導出部により導出された生体情報に係るデータに関連付けて記憶するものである。
【0012】
この発明によれば、測定部の測定期間、前記位置情報取得部により繰り返し位置情報の取得動作が行われ、それらの位置情報が、当該位置情報の取得動作に略同期して導出された前記生体信号又は生体情報に係るデータに関連付けて記憶部に記憶されるようにしたので、前記生体信号又は生体情報に係るデータを取得した時点での測定部の位置情報を詳細に提供する構成を実現することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の生体情報測定装置において、前記記憶部に予め位置情報を記憶させる指示を入力するための入力操作部と、前記位置情報取得部により取得された位置情報が前記入力操作部を用いて前記記憶部に予め記憶された位置情報と一致するか否かを判断する判断部と、前記判断部により前記両位置情報が一致すると判断されたとき、前記測定部に測定動作を行わせる測定制御部とを備え、前記記憶部は、前記位置情報取得部による取得動作で得られた位置情報を、前記判断部により前記両位置情報が一致すると判断されたときに得られた前記生体信号又は生体情報に係るデータに関連付けて記憶するものである。
【0014】
この発明によれば、前記位置情報取得部により取得された位置情報が記憶部に予め登録された位置情報と一致する場合に、前記測定部により測定動作が行われ、前記位置情報取得部による取得動作で得られた位置情報が、判断部により前記両位置情報が一致すると判断されたときに得られた生体信号又は生体情報に係るデータに関連付けて記憶部に記憶されるようにしたので、特定の場所での生体信号又は生体情報に係るデータのみが得られる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の生体情報測定装置において、前記位置情報取得制御部は、生体信号又は前記導出部により導出された生体情報に係るデータが予め定められた状態となったとき、前記位置情報取得部に前記位置情報の取得動作を行わせ、前記記憶部は、その取得動作で得られた位置情報を、前記予め定められた状態となった、生体信号又は生体情報に係るデータに関連付けて記憶するものである。
【0016】
この発明によれば、生体信号又は前記導出部により導出された生体情報が予め定められた状態となったとき、例えば生体信号又は前記生体情報に係るデータが異常な状態を示すものとなったとき、前記位置情報取得部により前記位置情報の取得動作が行われ、その取得動作で得られた位置情報が、前記予め定められた状態となった生体信号又は生体情報に係るデータに関連付けて記憶部に記憶されるようにしたので、前記生体信号又は生体情報に係るデータが予め定められた状態となったときの被験者の状態(居場所、環境、動作など)に関する情報を提供する構成を実現することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項2に記載の生体情報測定装置において、前記測定部は、複数種類の生体情報を測定可能とされており、前記記憶部は、前記位置情報取得部により得られる位置情報と前記生体情報の種類との対応関係を予め記憶し、前記位置情報取得部により位置情報が取得されると、該位置情報に対応する生体情報の種類を前記記憶部の記憶内容から導出し、その導出した種類の生体情報の測定動作を前記測定部に行わせる測定制御部を備え、前記記憶部は、その測定部の測定動作により得られた生体信号又は該生体信号に基づき導出された生体情報に係るデータに、前記位置情報取得部による取得動作で得られた位置情報を関連付けて記憶するものである。
【0018】
この発明によれば、測定部の位置情報が取得されると、該位置情報に対応する生体情報の種類が前記記憶部の記憶内容から導出され、その種類の生体情報の測定動作が前記測定部に行われ、その測定動作により得られた生体信号又は該生体信号に基づき導出された生体情報に係るデータと、前記測定制御部により導出された生体情報の種類とが関連付けて記憶部に記憶されるようにしたので、各測定場所に適した生体信号又は生体情報に係るデータを測定する構成を実現することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項2に記載の生体情報測定装置において、前記位置情報取得制御部は、前記測定部による生体情報の測定期間、前記位置情報取得部に対して繰り返し位置情報の取得動作を行わせ、前記測定部による生体情報の測定動作中において、前記位置情報取得部により得られた第1、第2の位置情報と、該第1、第2の位置情報の取得タイミングの時間差とに基づき、該第1、第2の位置情報が示す第1、第2の位置間における前記測定部の移動速度を算出する移動速度算出部を備え、前記記憶部は、前記移動速度算出部の算出動作により得られた移動速度情報を、前記第1、第2の位置情報が得られた期間に得られた生体信号又は生体情報に係るデータに関連付けて記憶するものである。
【0020】
この発明によれば、生体情報の測定動作中において、前記位置情報取得部により得られた第1、第2の位置情報と、該第1、第2の位置情報の取得タイミングの時間差とに基づき、該第1、第2の位置情報が示す第1、第2の位置間における測定部の移動速度が算出され、この移動速度情報が、前記第1、第2の位置情報が得られた期間に得られた生体信号又は生体情報に係るデータに関連付けて記憶部に記憶されるようにしたので、被験者の運動量と生体信号又は生体情報に係るデータとの関係を解析することが可能となる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の生体情報測定装置と、前記記憶部に記憶された生体信号又は生体情報に係るデータと該データに関連付けられた位置情報とに対して予め定められた解析内容の解析処理を行う解析部と、前記解析部による解析結果を表示する表示部とを備える生体情報測定システムである。
【0022】
この発明によれば、記憶部に記憶された前記位置情報と生体信号又は生体情報に係るデータとついての予め定められた解析内容に基づく解析結果を報知する構成を実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、生体信号又は生体情報に係るデータを取得したときの被験者の状態(居場所、環境、動作など)に関する情報を提供することができるため、医療専門家や被験者は、測定時における被験者の行動態様や居場所に基づいて被験者の生体情報をより正確に解析することができる。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、位置情報の取得動作を自動的に行う構成を実現することができる。
【0025】
請求項3に記載の発明によれば、生体信号又は生体情報に係るデータを取得した時点での測定部の位置情報を詳細に提供することができる。
【0026】
請求項4に記載の発明によれば、特定の場所での生体信号又は生体情報に係るデータのみが得られるので、得られた生体信号又は生体情報に係るデータについて適切な解析を行うことができる。
【0027】
請求項5に記載の発明によれば、生体信号又は生体情報に係るデータが予め定められた状態となったときの被験者の状態が提供されるので、得られた生体信号又は生体情報に係るデータについて適切な解析を行うことができる。
【0028】
請求項6に記載の発明によれば、各測定場所に適した生体信号又は生体情報に係るデータが提供されるため、得られた生体信号又は生体情報に係るデータについて適切な解析を行うことができる。
【0029】
請求項7に記載の発明によれば、被験者の運動量と生体信号又は生体情報に係るデータとの関係を解析することができるため、得られた生体信号又は生体情報に係るデータについて適切な解析を行うことができる。
【0030】
請求項8に記載の発明によれば、記憶部に記憶された前記位置情報と生体信号又は生体情報に係るデータとついての予め定められた解析内容に基づく解析結果を報知することができるため、医療専門家や被験者は適切な診断や処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1に示すように、生体情報測定システム1は、生体情報測定装置2と、パーソナルコンピュータ(以下、PCという)3とを備えて構成されている。
【0032】
生体情報測定装置2は、本実施形態ではパルスオキシメータであり、例えば図2に示すように、箱型形状の装置本体4と、該装置本体4とケーブル5により電気的に接続された例えばキャップ状の測定部6とを備え、指先を測定対象部位として、図略の装着ベルトにより手首に装着される携帯性を備えた装置である。なお、説明の都合上、測定部6の構成から説明を行う。
【0033】
測定部6は、所定の相対位置関係を有して対向配置された一対の発光部7及び受光部8(図2参照)を有し、発光部7は、例えば、赤色領域の波長λ1の赤色光Rを発光する発光ダイオード(LED)と、赤外線領域の波長λ2の赤外光IRとを発光するLEDとを備えた光源を含む。
【0034】
受光部8は、受光した光の強度に応じた大きさの電流を生成する、例えばシリコンフォトダイオード(Silicon Photo Diode)等の光電変換素子を備えて構成されており、本実施形態では、少なくとも波長λ1の光と波長λ2の光とに対して感度を有する。受光部8は、生体組織LB(図2参照)を透過した発光部7からの波長λ1,λ2の光を受光する。
【0035】
測定部6を被験者の指先に装着すると、該指先を発光部7と受光部8とで挟み込んだ状態となり、測定時には、発光部7から波長λ1の赤色光Rと波長λ2の赤外光IRとが交互に射出され、受光部8により、発光部7の発光動作に同期して受光動作が行われる。発光部7の発光動作及び受光部8の受光動作は、後述の制御部18により制御されるようになっており、各光についての投受光動作は、例えば1/40〜1/30(秒)の間のいずれかの周期で行われる。受光部8は、光を受光すると、受光した光の強度に応じた大きさの電流信号を後述する装置本体4内のI/V変換部16に出力する。
【0036】
装置本体4は、表示部9と、該表示部9に隣接して設置された入力操作部10とを有し、例えば図略の装填室に装着されるバッテリーや乾電池等の電力供給源から電力供給を受けて駆動する。
【0037】
表示部9は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、7セグメントLED(Light Emitting Diode)や有機ホトルミネセンス表示装置やCRT(Cathode-Ray Tube)、あるいはプラズマ等の表示装置からなり、後述の制御部18(図2参照)で算出された後述する酸素飽和度データ等を表示するものである。
【0038】
入力操作部10は、当該装置本体4の電源をON/OFFする電源ボタン、酸素飽和度の測定開始の指示を入力するためのスタートボタン、その測定終了の指示を入力するためのストップボタン等を有してなる。スタートボタンに対して操作がなされると、後述するGPS部25(図2参照)により現在位置が緯度及び経度として算出され、該現在位置を示す情報が後述の記憶部20(図2参照)に記憶される。
【0039】
図1に戻り、PC3は、表示部12と、入力操作部13と、装置本体14とを備える。表示部12は、CRT(Cathode-Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)あるいはリアプロジェクター等からなり、生体情報測定装置2から送出されたデータや各種情報等の表示を行うものである。入力操作部13は、後述の制御部28(図8参照)等に所望の処理・動作を行わせる指示や各種情報を入力するためのものであり、例えばキーボードやマウスに相当する。装置本体14は、通信部26(図8参照)及び制御部28が搭載されているとともに、各種のプログラムやデータを記憶する例えばハードディスク等からなる外部記憶部27(図8参照)が備えられている。
【0040】
本実施形態の生体情報測定システム1においては、生体情報測定装置2が通信線11及び絶縁部15を介してPC3に通信可能に接続された場合に、生体情報測定装置2において取得した後述の酸素飽和度等のデータがPC3に送出され、PC3において、受信した酸素飽和度のデータや該データに基づき導出される解析結果が表示部12に表示される。絶縁部15は、例えばフォトカプラ等で構成されており、電気信号を光信号に変換するものである。
【0041】
図2は、生体情報測定装置2の電気的な構成を示すブロック図である。図2に示すように、生体情報測定装置2は、測定部6、表示部9、入力操作部10、電流電圧変換部(以下、I/V変換部という)16、アナログデジタル変換部(以下、A/D変換部)17、制御部18、通信部19及びGPS部25を備える。
【0042】
測定部6、表示部9及び入力操作部10は、図1に示す測定部6、表示部9及び入力操作部10に相当するものである。
【0043】
I/V変換部16は、例えば1/40(秒)の周期で受光部8から出力される電流信号を電圧信号に変換し、この電圧信号を光電脈波信号としてA/D変換部17に出力するものである。A/D変換部17は、I/V変換部16から出力されたアナログの光電脈波信号をデジタルの光電脈波信号に変換し、このデジタルの光電脈波信号を制御部18に出力するものである。
【0044】
GPS(Global Positioning System)部25は、位置情報取得部の一例であり、人工衛星からの電波をもとに生体情報測定装置2の現在位置を緯度及び経度で算出する測位部である。
【0045】
制御部18は、マイクロプロセッサやDSP(Digital Signal Processor)などを備えて構成されており、後述の記憶部20に格納されているデータやプログラムに従って、入力された光電脈波信号から動脈血中の酸素飽和度を演算するものである。制御部18は、測定制御部21と、バンドパスフィルタ部(以下、「BPF部」と略記する)22と、酸素飽和度演算部23と、GPS制御部24と、記憶部20とを有する。
【0046】
測定制御部21は、測定部6の発光部7及び受光部8の動作を制御するものであり、本実施形態では、波長λ1の赤色光R及び波長λ2の赤外光IRをそれぞれ例えば1/40(秒)の周期で発光部7から交互に射出させる。
【0047】
BPF部22は、デジタルフィルタで構成されており、A/D変換部17によりA/D変換された光電脈波信号をフィルタリングするものである。なお、BPF部22は、デジタルローパスフィルタ及びデジタルハイパスフィルタから構成してもよいし、FIR(Finite Impulse Response)フィルタで構成してもよい。
【0048】
酸素飽和度演算部23は、BPF部22によりフィルタリングされた光電脈波信号に基づいて、測定した各時点での酸素飽和度を算出する。ここで、酸素飽和度演算部23による光を用いた血中酸素飽和度を導出する原理について説明する。
【0049】
酸素は、血中のヘモグロビン(Hb)によって生体の各細胞に運搬され、ヘモグロビンは、肺で酸素と結合して酸化ヘモグロビン(HbO)となり、生体の細胞で酸素が消費されるとヘモグロビンに戻る。酸素飽和度SpOは、血中の酸化ヘモグロビンの割合をいい、ヘモグロビン濃度をCHb、酸化ヘモグロビン濃度をCHbOと表すと、下記数1で表される。
【0050】
【数1】

【0051】
一方、ヘモグロビンの吸光度及び酸化ヘモグロビンの吸光度は、波長依存性を有しており、各吸光係数α(λ)は、図3に示すような吸光特性を有する。なお、図3の横軸は光の波長であり、単位はnm、縦軸は、吸光係数であり、単位は10−9cm/moleである。
【0052】
図3に示すように、ヘモグロビン及び酸化ヘモグロビンは、吸光特性が異なる。ヘモグロビンは、赤色領域の波長λ1の赤色光Rに対して酸化ヘモグロビンよりも光を多く吸収するが、赤外線領域の波長λ2を超える赤外光IRに対しては酸化ヘモグロビンよりも光の吸収が少ない。すなわち、例えば赤外光IRの波長を酸化ヘモグロビンとヘモグロビンとの吸光係数差が最も大きい660nmとし、赤外光IRの波長を酸化ヘモグロビンとヘモグロビンとの吸光係数が等しい815nmとすると、酸化ヘモグロビンとヘモグロビンとの比率が変化しても赤外光IRの透過光量は変化しないこととなる。一方、赤色光Rの透過光量はヘモグロビンが多いと小さくなり、酸化ヘモグロビンが多いと大きくなる。つまり、透過光量の比をとれば酸素飽和度を求めることができる。
【0053】
生体情報測定装置2は、このようなヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの赤色光Rと赤外光IRとに対する吸光特性の違いを利用して血中酸素飽和度を求めるものである。なお、ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの赤色光Rと赤外光IRとに対する吸光特性の違いを利用して脈拍数も求めることができる。
【0054】
生体に光を照射すると、光の一部は吸収され、残りは透過する。生体は、動脈血層と、静脈血層と、動脈血層及び静脈血層以外の組織とで構成されている。生体における光の吸収は、図4(a)に示すように、動脈血層及び静脈血層以外の組織による吸収、静脈血層による吸収及び動脈血層による吸収より成る。動脈血層及び静脈血層以外の組織と静脈血層とは経時的に変化しないため、この部分での光の吸収は略一定である。
【0055】
一方、動脈血層は心拍動によって径が変化し、血管の径が変化するため、動脈血層による光の吸収は、図4(b)に示すように脈拍による経時的に変動する。つまり、透過光強度の変化分は、動脈血のみの情報によるものであって、動脈血層及び静脈血層以外の組織と静脈血層とによる影響はほとんど含まれないと考えられる。図4(b)において、横軸は時間、縦軸は透過光強度である。
【0056】
赤色光R及び赤外光IRの光量変化を比較する場合、入射光量の差をキャンセルする必要がある。図5は、生体に入射する入射光と透過光との関係を模式的に示す図である。
【0057】
図5(a)に示すように、生体への入射光量I0を赤色光Rと赤外光IRとで同一にすることは実質的に困難であり、仮に同一にしても組織や静脈血による吸光率は赤色光Rと赤外光IRとで異なるため、動脈血層による透過光強度の変化分のみを比較することはできない。
【0058】
ここで、動脈が一番細い場合(透過光量が最も大きくなる場合)の透過光量をIとし、動脈が最も太い場合(透過光量が最も小さくなる場合)の透過光量を(I−ΔI)とする。図5(b),(c)に示すように、厚さΔDの動脈血に光量Iの光を照射したとき、透過光量(I−ΔI)の透過光が得られると考えられる。
【0059】
そして、図6に示すように、酸素飽和度演算部23は、赤色光Rの透過光量Iと赤外光IRの透過光量IIRとが一致するように正規化する(IIR’=I)ことにより、動脈血による光量変化の比(ΔI/I)/(ΔIIR/IIR)を算出し、酸素飽和度を算出する。
【0060】
入射光と反射光との関係は、ランバート・ビアの法則により、下記数2で表すことができる。
【0061】
【数2】

【0062】
なお、Eは吸光物の吸光係数、Cは吸光物の濃度を表す。
【0063】
赤色光R及び赤外光IRの各波長を前記数2に代入し、各辺の比をとることにより、下記数3式を得ることができる。
【0064】
【数3】

【0065】
なお、Iは、赤色光Rの透過光量、IIRは、赤外光IRの透過光量、Eは、赤色光Rの吸光係数、EIRは、赤外光IRの吸光係数を表す。
【0066】
図7は、例えば赤色光R及び赤外光IRの各波長を、それぞれ660nm及び815nmとしたときにおける、吸光係数の比(E/EIR)と酸素飽和度SpOとの関係を示すグラフである。図7に示すように、酸素飽和度SpOは、吸光係数の比(E/EIR)の低下に比例して増大していく。
【0067】
以上のようにして酸素飽和度演算部23は酸素飽和度を算出すると、この酸素飽和度のデータを記憶部20に記録するとともに、生体情報測定装置2がPC3と通信可能に接続されて該PC3から要求があった場合に、該データをPC3に送信する処理を通信部19に行わせる。なお、本実施形態で示した酸素飽和度以外には、心電計におけるRR間隔や睡眠時無呼吸指数(ODI)など、光電脈波信号に基づき周知技術で導出される生体情報に係るデータも含まれる。
【0068】
図2に戻り、GPS制御部24は、GPS部25の動作を制御するものであり、本実施形態では、スタートボタンにより酸素飽和度の測定開始の指示が入力されると、測定部6による測定動作を行う前に、前記GPS部25に現在位置情報の取得動作を行わせ、ストップボタンにより測定終了の指示が入力されると、前記GPS部25の動作を終了させる。
【0069】
記憶部20は、酸素飽和度演算部23により算出された酸素飽和度のデータを、GPS部25により算出された現在位置に対応付けて記憶するものである。なお、GPS部25により算出された現在位置に対応付けて記憶する対象は、酸素飽和度演算部23により算出された酸素飽和度のデータに限らず、A/D変換部17から出力されるデジタルの光電脈波信号でもよい。
【0070】
図8は、PC3の電気的な構成を示すブロック図である。図8に示すように、PC3は、表示部12と、入力操作部13と、通信部26と、外部記憶部27と、制御部28とを有する。入力操作部13及び表示部12は、図1に示す入力操作部13及び表示部12に相当するものである。
【0071】
通信部26は、RS−232C,USB,IrDA等のインターフェースで構成され、生体情報測定装置2との間で通信線11及び絶縁部15を介してデータの通信を行うものである。
【0072】
外部記憶部27は、ハードディスク、USBメモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フロッピーディスク(登録商標)等からなり、通信部26により受信したデータを記憶するものである。
【0073】
制御部28は、マイクロコンピュータからなり、上述したPC3内の各部材の駆動を関連付けて制御するものである。また、制御部28は、機能的に、格納処理部29と、解析部30と、表示制御部31とを備える。
【0074】
格納処理部29は、通信部26を介して生体情報測定装置2から受信した酸素飽和度のデータを外部記憶部27に格納するものである。解析部30は、格納処理部29に格納された酸素飽和度のデータを用いて、予め定められた解析内容に応じた解析値を導出するものである。表示制御部31は、解析部30の解析結果を例えばグラフ形式で表示部12に表示させるものである。
【0075】
次に、生体情報測定装置2及びPC3における動作・処理について説明を行う。図9は、生体情報測定装置2により行われる一連の測定動作を示すフローチャートであり、図10は、この測定動作を示すタイムチャートである。
【0076】
図9、図10に示すように、被験者によりスタートボタンが操作されると(ステップ♯1でYES)、制御部28は、GPS部25に現在位置の測定動作を行わせ(ステップ♯2)、酸素飽和度の測定動作を行わせる(ステップ♯3)。そして、制御部28は、測定動作により得られた酸素飽和度の情報を現在位置の情報と対応付けて記憶部20に記録する(ステップ♯4)。
【0077】
そして、制御部28は、ストップボタンが操作されたか否かを判断し(ステップ♯5)、ストップボタンが操作されていない場合には(ステップ♯5でNO)、ステップ♯2の処理に戻る一方、ストップボタンが操作された場合には(ステップ♯5でYES)、一連の処理を終了する。
【0078】
図11は、生体情報測定装置2がPC3と通信可能に接続された場合に、生体情報測定装置2とPC3との間で行われる通信処理を示すフローチャートである。
【0079】
生体情報測定装置2とPC3とが通信線11及び絶縁部15を介して通信可能に接続されると、図10に示す処理が実行可能となる。図10に示すように、生体情報測定装置2においては、PC3と信線11及び絶縁部15により接続された状態で電源が投入され、通信可能な状態となると、(ステップ♯11でYES)、制御部18は、通信部19等の初期化処理を行い(ステップ♯12)、酸素飽和度のデータの送信を指示する旨の信号(以下、送信指示信号という)がPC3から送信されるのを待機する(ステップ♯13でNO)。
【0080】
一方、PC3においては、電源が投入されると、(ステップ♯21でYES)、制御部28は、生体情報測定装置2からのデータのダウンロードを指示する入力が行われるまで待機する(ステップ♯22でNO)。そして、ダウンロードを指示する入力が行われると(ステップ♯22でYES)、制御部28は、前記送信指示信号を生体情報測定装置2に送信する処理を行い(ステップ♯23)、生体情報測定装置2から酸素飽和度のデータを受信するまで待機する(ステップ♯24でNO)。
【0081】
生体情報測定装置2において、PC3から前記送信指示信号を受信すると(ステップ♯13でYES)、制御部18は、酸素飽和度のデータを記憶部20から読み出してPC3に送信する処理を行う(ステップ♯14)。その後、制御部18は、生体情報測定装置2の電源がオフされるまで(ステップ♯15でNO)、ステップ♯13〜♯15の処理を繰り返し実行し、その電源がオフされると(ステップ♯15でYES)、一連の処理を終了する。
【0082】
PC3において、生体情報測定装置2から瞬間酸素飽和度のデータを受信すると(ステップ♯24でYES)、制御部28は、この酸素飽和度のデータを外部記憶部27に格納する(ステップ♯25)。そして、制御部28は、プログラムの起動を終了する指示が入力されたか否かを判断し(ステップ♯26)、プログラムの起動を終了する指示が入力されていない場合には(ステップ♯26でNO)、ステップ♯22の処理に戻る一方、プログラムの起動を終了する指示が入力された場合には(ステップ♯26でYES)、一連の処理を終了する。
【0083】
図12は、PC3により行われる処理を示すフローチャートである。
【0084】
図12に示すように、外部記憶部27に酸素飽和度のデータが格納された後に、予め定められた解析内容に係る解析処理の指示が入力されると(ステップ♯31でYES)、制御部28は、酸素飽和度のデータに対して解析処理を実行し(ステップ♯32)、その解析結果を表示部12に表示する(ステップ♯33)。
【0085】
以上のように、測定部6の現在位置を示す現在位置情報を、測定した酸素飽和度の情報に対応付けて記憶する機能を生体情報測定装置1に搭載したので、酸素飽和度の情報を取得したときの被験者の状態(居場所、環境、動作など)に係る情報を医療専門家や被験者に提供することができる。その結果、医療専門家や被験者は、より適切な解析を行うことができる。
【0086】
次に、本発明の変形形態(第2〜第6の実施形態)について説明する。以下に説明する各実施形態は、前記第1の実施形態とGPS部25の動作に係る態様が主に異なるものであり、図1、図2に示す構成は略共通するものである。したがって、各実施形態につき前記第1の実施形態との相違点についてのみ説明し、第1の実施形態と共通する部分の説明については省略する。
【0087】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、酸素飽和度の測定中に、現在位置情報の測定及び記録を所定時間毎に(定期的に)実行するものである。図13は、本実施形態における生体情報測定装置2により行われる一連の測定動作を示すフローチャート、図14は、本実施形態における生体情報測定装置2により行われる一連の測定動作を示すタイムチャートである。
【0088】
図13、図14に示すように、被験者によりスタートボタンが操作されると(ステップ♯41でYES)、制御部18は、GPS部25に現在位置の測定動作を行わせ(ステップ♯42)、現在位置情報を記憶部20に記録し(ステップ♯43)、酸素飽和度の測定を開始する(ステップ♯44)。
【0089】
そして、制御部18は、酸素飽和度が得られると、該酸素飽和度の情報を記憶部20に記録する(ステップ♯45)。その際、制御部18は、前記酸素飽和度の情報を、測定された現在位置情報のうち最近の現在位置情報に対応付けて記憶部20に記録する。次に、制御部18は、前回の現在位置の測定から所定時間が経過したか否かを判断し(ステップ♯46)、所定時間が経過していないと判断した場合には(ステップ♯46でNO)、ステップ♯44の処理に戻り、所定時間が経過したと判断すると(ステップ♯46でYES)、GPS部25に現在位置の測定動作を行わせ(ステップ♯47)、現在位置情報を記憶部20に記録する(ステップ♯48)。
【0090】
そして、制御部18は、ストップボタンが操作されたか否かを判断し(ステップ♯49)、ストップボタンが操作されていない場合には(ステップ♯49でNO)、ステップ♯44の処理に戻る一方、ストップボタンが操作された場合には(ステップ♯49でYES)、一連の処理を終了する。
【0091】
これにより、酸素飽和度の情報を取得した時点での測定部6の位置変化に係る情報を医療専門家等に詳細に提供することができ、得られた酸素飽和度の情報についてより適切な解析を行うことができる。
【0092】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、特定の場所(予め登録した場所)においてのみ酸素飽和度の測定を実行するものであり、本実施形態では、入力操作部10は、現在位置を登録する指示を入力するための現在位置登録ボタン10aを有し(図2参照)、該現在位置登録ボタン10aに対して操作がなされると、GPS部25により現在位置が緯度及び経度として算出され、該現在位置を示す情報が記憶部20に記憶されるようになっている。
【0093】
図15は、本実施形態における生体情報測定装置2により行われる一連の測定動作を示すフローチャート、図16は、本実施形態における生体情報測定装置2により行われる一連の測定動作を示すタイムチャートである。なお、図15に示す処理を実行する前に、特定の場所が生体情報測定装置2に予め登録されているものとする。
【0094】
図15、図16に示すように、被験者によりスタートボタンが操作されると(ステップ♯51でYES)、制御部18は、GPS部25に現在位置の測定動作を行わせ(ステップ♯52)、場所の検索処理を行って(ステップ♯53)、現在位置が予め登録されている場所であるか否かを判断する(ステップ♯54)。
【0095】
その結果、制御部18は、現在位置が予め登録されている場所でないと判断した場合には(ステップ♯54でNO)、ステップ♯52に戻る一方、登録されている場所であると判断した場合には(ステップ♯54でYES)、酸素飽和度の測定動作を行わせ(ステップ♯55)、該測定動作により得られた酸素飽和度の情報を現在位置の情報と対応付けて記憶部20に記録する(ステップ♯56)。
【0096】
そして、制御部18は、ストップボタンが操作されたか否かを判断し(ステップ♯57)、ストップボタンが操作されていない場合には(ステップ♯57でNO)、ステップ♯52の処理に戻る一方、ストップボタンが操作された場合には(ステップ♯57YES)、一連の処理を終了する。
【0097】
図16は、当該生体情報測定装置2に予め登録されている場所が「場所B」のみであり、生体情報測定装置2のスタートボタンがONである場合に、現在位置が「場所B」であるときのみ、酸素飽和度の測定動作及び該測定動作により得られた酸素飽和度の情報を現在位置(場所B)の情報と対応付けて記憶部20に記録する記録動作を実行することを示している。
【0098】
このように、測定場所を予め生体情報測定装置2に登録しておくことのできる機能を該装置2に搭載し、GPS部25により測定した現在位置が予め登録場所と一致する場合に、酸素飽和度の測定動作を行って該測定動作により得られた酸素飽和度の情報を、現在位置を示す情報に対応付けて記憶するようにしたので、被験者の行動態様や居場所に応じたより正確な被験者の酸素飽和度について解析することができ、その結果、得られた酸素飽和度の情報についてより適切な解析を行うことができる。
【0099】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、測定した酸素飽和度が異常値である場合のみ、該異常値の情報に現在位置情報を対応付けて記憶部20に記録するものである。図17は、本実施形態における生体情報測定装置2により行われる一連の測定動作を示すフローチャートである。
【0100】
図17に示すように、被験者によりスタートボタンが操作されると(ステップ♯61でYES)、制御部18は、酸素飽和度の測定を実行し(ステップ♯62)、該酸素飽和度の情報を記憶部20に記録し(ステップ♯63)、この記録した酸素飽和度に対して予め定められた解析処理を実行する(ステップ♯64)。
【0101】
制御部18は、ステップ♯64で得られた解析値が異常値であるか否かを判断し(ステップ♯65)、異常値である場合には(ステップ♯65でYES)、GPS部25に現在位置の測定動作を行わせ(ステップ♯66)、前記解析値を現在位置情報に対応付けて記憶部20に記録する(ステップ♯67)一方、前記解析値が正常値である場合には(ステップ♯65でNO)、ステップ♯66,♯67の処理をとばす。
【0102】
そして、制御部18は、ステップ♯65又は♯67の処理後、ストップボタンが操作されたか否かを判断し(ステップ♯68)、ストップボタンが操作されていない場合には(ステップ♯68でNO)、ステップ♯62の処理に戻る一方、ストップボタンが操作された場合には(ステップ♯68YES)、一連の処理を終了する。
【0103】
これにより、酸素飽和度が異常な状態となったときの被験者の状態情報を医療専門家等に提供することができ、得られた酸素飽和度についてより適切な解析を行うことができる。
【0104】
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、酸素飽和度だけでなく他の生体情報も測定可能に構成されている生体情報測定装置であり、測定する生体情報と場所とを対応付け、登録された場所にいるときのみ、その場所に対応付けられた生体情報を測定できるように構成されているものである。本実施形態では、第3の実施形態と同様、入力操作部10は、現在位置を登録する指示を入力するための現在位置登録ボタン10aを有し(図2参照)、生体情報の種類が選択された上で、該現在位置登録ボタン10aに対して操作がなされると、GPS部25により現在位置が緯度及び経度として算出され、該現在位置を示す情報が、選択された種類の生体情報に対応付けて記憶部20に記憶されるようになっている。なお、以下の説明においては、生体情報測定装置2が測定可能な種類の生体情報を「生体情報A」,「生体情報B」とし、「生体情報A」は「場所A」に対応付けられ、「生体情報B」は「場所B」にそれぞれ予め対応付けられて登録されているものとする。場所A,Bは、例えば、被験者の自宅における風呂場、寝室、トイレ、居間とか、病院内における病室、トイレ、待合スペース等が想定される。
【0105】
図18は、本実施形態における生体情報測定装置2により行われる一連の測定動作を示すフローチャート、図19は、本実施形態における生体情報測定装置2により行われる一連の測定動作を示すタイムチャートである。
【0106】
図18、図19に示すように、被験者によりスタートボタンが操作されると(ステップ♯71でYES)、制御部18は、GPS部25に現在位置の測定動作を行わせ(ステップ♯72)、現在位置を判定する(ステップ♯73)。
【0107】
そして、制御部18は、ステップ♯73で判定した場所が「場所A」であるか否かを判断し(ステップ♯74)、「場所A」であると判断した場合には(ステップ♯74でYES)、「生体情報A」の測定動作を実行し(ステップ♯75)、この測定動作で得られた測定値を「場所A」を示す情報と対応付けて記憶部20に記録する(ステップ♯76)。
【0108】
制御部18は、ステップ♯73で判定した場所が「場所A」でないと判断した場合には(ステップ♯74でNO)、ステップ♯73で判定した場所が「場所B」であるか否かを判断し(ステップ♯77)、「場所B」であると判断した場合には(ステップ♯77でYES)、「生体情報B」の測定動作を実行し(ステップ♯78)、この測定動作で得られた測定値を「場所B」を示す情報と対応付けて記憶部20に記録する(ステップ♯79)。
【0109】
また、制御部18は、ステップ♯73で判定した場所が「場所B」でもないと判断した場合には(ステップ♯77でNO)、ステップ♯78,♯79の処理をとばす。
【0110】
そして、制御部18は、ステップ♯77又は♯79の処理後、ストップボタンが操作されたか否かを判断し(ステップ♯80)、ストップボタンが操作されていない場合には(ステップ♯80でNO)、ステップ♯72の処理に戻る一方、ストップボタンが操作された場合には(ステップ♯80でYES)、一連の処理を終了する。
【0111】
これにより、各測定場所に適した生体情報を提供することができるため、得られた生体情報に係るデータについて各測定場所に応じた適切な解析を行うことができる。
【0112】
(第6の実施形態)
第6の実施形態は、GPS部25から得られる現在位置情報から、該GPS部25が搭載された生体情報測定装置2の移動速度(ひいては該生体情報測定装置2を装着する被験者の移動速度)を算出し、測定した生体情報をその移動速度に対応付けて記憶するようにしたものである。図20は、本実施形態における生体情報測定装置2により行われる一連の測定動作を示すフローチャート、図21は、本実施形態における生体情報測定装置2により行われる一連の測定動作を示すタイムチャートである。
【0113】
図20、図21に示すように、被験者によりスタートボタンが操作されると(ステップ♯81でYES)、制御部18は、GPS部25に現在位置の測定動作を行わせ(ステップ♯82)、酸素飽和度の測定動作を開始させる(ステップ♯83)。また、制御部18は、計時動作を行う図略のタイマを備えており、該タイマにより計時動作を開始する(ステップ♯84)。
【0114】
そして、制御部18は、タイマによる計時時間が所定時間に達したか否かを判断し(ステップ♯85)、達していない場合には待機し(ステップ♯85でNO)、達した場合には(ステップ♯85でYES)、GPS部25に現在位置の測定動作を行わせ(ステップ♯86)、前記タイマを一旦リセットして再度計時動作を開始させる(ステップ♯87)。
【0115】
ここで、GPS部25により前回測定された現在位置と今回測定された現在位置とから該GPS部25が搭載された生体情報測定装置2の移動距離を算出することができ、また、GPS部25による測定周期は予め判明していることから、これらの現在位置と測定周期とから、GPS部25により前回測定された現在位置から今回測定された現在位置までの移動速度を算出することができる。
【0116】
制御部18は、これを用いて前記移動速度を算出し(ステップ♯88)、GPS部25による前回測定動作から今回の測定動作までの期間に測定された酸素飽和度の情報を、前記移動速度情報に対応付けて記憶部20に記録する(ステップ♯89)。
【0117】
そして、制御部18は、ストップボタンが操作されたか否かを判断し(ステップ♯90)、ストップボタンが操作されていない場合には(ステップ♯90でNO)、ステップ♯85の処理に戻る一方、ストップボタンが操作された場合には(ステップ♯90でYES)、一連の処理を終了する。
【0118】
このように、GPS部25から得られる現在位置情報を用いて生体情報測定装置2の移動速度を算出するようにしたので、酸素飽和度の測定時における被験者の運動量(歩行・走行の区別やそのスピードなど)を提供することができ、その被験者の運動量と生体情報に係るデータとの関係を解析することができる。その結果、得られた生体情報に係るデータについて被験者の運動量に応じた適切な解析を行うことができる。
【0119】
なお、本件は、前記各実施形態の内容に加えて、またはそれに代えて次の実施形態も採用可能である。
【0120】
(1)前記実施形態では、装置本体にGPS部25が内蔵されているタイプについて説明したが、これに限らず、図22に示すように、生体情報を測定する測定ユニット40,41(測定ユニット40は例えばパルスオキシメータ、測定ユニット41は例えば心電計)と、現在位置情報を測定するGPSユニット42とが無線通信可能に別体化されており、例えばGPSユニット42に前記記憶部20が搭載されていて、測定ユニット40,41による測定動作により得られたデータをGPSユニット42に無線で送信し、記憶部20が、このデータとGPSユニット42により測定された現在位置情報とを対応付けて記憶する構成も採用可能である。
【0121】
(2)前記各実施形態では、生体情報測定装置2の現在位置情報をGPS部25等により緯度・経度で測定するようにしたが、生体情報測定装置2の現在位置を測定する装置は、人工衛星からの電波をもとに生体情報測定装置2の現在位置を緯度及び経度で算出するものに限らず、例えば或る病院の屋内とか被験者の自宅の屋内など限定された範囲(空間)を現在位置の測定対象範囲とするものであってもよい。例えば、被験者の自宅の屋内に複数のICタグ(場所を識別可能なデータを記憶している)を適所に設置するとともに、ICタグリーダーを搭載する生体情報測定装置2を構成し、ICタグリーダーが読み取った上記いずれかのICタグの識別情報に基づいて、前記生体情報測定装置2を装着した被験者の自宅内での位置を検出する構成が想定される。
【0122】
(3)本件における生体情報は、酸素飽和度に限られず、不整脈、血管年齢、睡眠状態、血圧、脈波、体温、黄疸状態、睡眠時無呼吸症候群に係る症状等も含み、従って、生体情報測定装置2としては、パルスオキシメータに限られず、上記症状を測定するための心電計、血圧計、体温計、黄疸計等を含む。
【0123】
(4)測定部と装置本体とは、ケーブル5を介して有線で通信する形態に限らず、例えばブルートゥース(Bluetooth)等の通信規格を用いた無線通信で通信を行う形態も想定される。
【0124】
(5)GPS部25により測定した緯度及び経度を提供する際に、緯度情報及び経度情報そのものをPC3の表示部12に表示する態様に限られず、表示部12に地図を表示し、該地図上での位置を示す態様も想定される。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明に係る生体情報測定システムの構成を示す図である。
【図2】生体情報測定装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】ヘモグロビン及び酸化ヘモグロビンの吸光特性を示すグラフである。
【図4】生体による光の吸収を示す図である。
【図5】生体に入射する入射光と透過光との関係を模式的に表す図である。
【図6】赤外光による透過光量の正規化を説明するための図である。
【図7】吸光係数の比と酸素飽和度との関係を示す図である。
【図8】パーソナルコンピュータの電気的な構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る一連の測定動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る一連の測定動作を示すタイムチャートである。
【図11】生体情報測定装置がPCとの間で行われる通信処理を示すフローチャートである。
【図12】PCにより行われる処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る一連の測定動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る一連の測定動作を示すタイムチャートである。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る一連の測定動作を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る一連の測定動作を示すタイムチャートである。
【図17】本発明の第4の実施形態に係る一連の測定動作を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第5の実施形態に係る一連の測定動作を示すフローチャートである。
【図19】本発明の第5の実施形態に係る一連の測定動作を示すタイムチャートである。
【図20】本発明の第6の実施形態に係る一連の測定動作を示すフローチャートである。
【図21】本発明の第6の実施形態に係る一連の測定動作を示すタイムチャートである。
【図22】生体情報測定システムの変形形態を示す図である。
【符号の説明】
【0126】
1 生体情報測定システム
2 生体情報測定装置
4 装置本体
5 ケーブル
6 測定部
7 発光部
8 受光部
9 表示部
10 入力操作部
10a 現在位置登録ボタン
11 通信線
12 表示部
18 制御部
19 通信部
20 記憶部
21 測定制御部
23 酸素飽和度演算部
24 制御部
25 GPS部
26 通信部
27 外部記憶部
28 制御部
29 格納処理部
30 解析部
31 表示制御部
40,41 測定ユニット
42 GPSユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決められた生体情報を測定する測定部と、
前記測定部により測定される生体情報に由来する生体信号に基づき、生体情報に係るデータを導出する導出部と、
電波を用いて前記測定部の現在の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記生体信号又は前記導出部により導出された生体情報に係るデータと、前記位置情報取得部により取得された位置情報とを関連付けて記憶する記憶部と
を備える生体情報測定装置。
【請求項2】
前記位置情報取得部による位置情報の取得動作を制御する位置情報取得制御部を備え、
前記位置情報取得部は、前記位置情報取得制御部からの指示にしたがって位置情報の取得動作を行う請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記位置情報取得制御部は、前記測定部の測定期間、前記位置情報取得部に対して繰り返し位置情報の取得動作を行わせ、
前記記憶部は、前記位置情報取得部により取得された各位置情報を、当該位置情報の取得動作に略同期して前記生体信号又は前記導出部により導出された生体情報に係るデータに関連付けて記憶する請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
前記記憶部に予め位置情報を記憶させる指示を入力するための入力操作部と、
前記位置情報取得部により取得された位置情報が前記入力操作部を用いて前記記憶部に予め記憶された位置情報と一致するか否かを判断する判断部と、
前記判断部により前記両位置情報が一致すると判断されたとき、前記測定部に測定動作を行わせる測定制御部とを備え、
前記記憶部は、前記位置情報取得部による取得動作で得られた位置情報を、前記判断部により前記両位置情報が一致すると判断されたときに得られた前記生体信号又は生体情報に係るデータに関連付けて記憶する請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
前記位置情報取得制御部は、生体信号又は前記導出部により導出された生体情報に係るデータが予め定められた状態となったとき、前記位置情報取得部に前記位置情報の取得動作を行わせ、
前記記憶部は、その取得動作で得られた位置情報を、前記予め定められた状態となった生体信号又は生体情報に係るデータに関連付けて記憶する請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項6】
前記測定部は、複数種類の生体情報を測定可能とされており、
前記記憶部は、前記位置情報取得部により得られる位置情報と前記生体情報の種類との対応関係を予め記憶し、
前記位置情報取得部により位置情報が取得されると、該位置情報に対応する生体情報の種類を前記記憶部の記憶内容から導出し、その導出した種類の生体情報の測定動作を前記測定部に行わせる測定制御部を備え、
前記記憶部は、その測定部の測定動作により得られた生体信号又は該生体信号に基づき導出された生体情報に係るデータに、前記位置情報取得部による取得動作で得られた位置情報を関連付けて記憶する請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項7】
前記位置情報取得制御部は、前記測定部による生体情報の測定期間、前記位置情報取得部に対して繰り返し位置情報の取得動作を行わせ、
前記測定部による生体情報の測定動作中において、前記位置情報取得部により得られた第1、第2の位置情報と、該第1、第2の位置情報の取得タイミングの時間差とに基づき、該第1、第2の位置情報が示す第1、第2の位置間における前記測定部の移動速度を算出する移動速度算出部を備え、
前記記憶部は、前記移動速度算出部の算出動作により得られた移動速度情報を、前記第1、第2の位置情報が得られた期間に得られた生体信号又は生体情報に係るデータに関連付けて記憶する請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の生体情報測定装置と、
前記記憶部に記憶された生体信号又は生体情報に係るデータと該データに関連付けられた位置情報とに対して予め定められた解析内容の解析処理を行う解析部と、
前記解析部による解析結果を表示する表示部と
を備える生体情報測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−167818(P2008−167818A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1705(P2007−1705)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】