説明

生体情報測定装置及び方法

【課題】 非拘束、無意識のうちに体脂肪率等の生体情報を測定する。
【解決手段】 生体情報測定装置1は、インナーイヤー型イヤーレシーバ形状のセンサ素子10R,10Lと、2つの電極31,32を有すると共に音楽等の再生が可能な本体部30とが、配線50を介して接続されてなる。センサ素子10R,10Lは導電性を有する素材で構成されており、本体部から電力が供給されることにより電極として機能する。測定に際して、被験者は、本体部30を片手で把持して電極31,32を掌に接触させると共にセンサ素子10R,10Lを両耳に装着する。そして、手と耳との間のインピーダンスを測定して解析することにより被験者の体脂肪率等の生体情報を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非拘束、無意識のうちに体脂肪率等の生体情報を測定する生体情報測定装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣の近代化により生活習慣病の潜在的危険が増大し、その予防の重要性が叫ばれている中で、各個人の生体情報として例えば体脂肪率を測定し、生活習慣病の予防管理の目安とすることが行われている。そして、このような体脂肪率を測定する生体情報測定装置としては、体重計に電極を設け、その上に両足を載せることにより測定するもの(例えば特許文献1参照)、グリップ部に電極を設け、そのグリップ部を両手で把持することにより測定するもの(例えば特許文献2参照)、或いはそれらを組み合わせて両手両足で測定するもの(例えば特許文献3参照)が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−52658号公報
【特許文献2】特開平10−258041号公報
【特許文献3】特開2003−70762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような特許文献1乃至3に記載されている生体情報測定装置では、被験者が体重計の上に両足を載せて静止したり、グリップ部を両手で把持したりしなければならないため、測定に際して一定時間拘束されてしまうという問題があった。また、これらの生体情報測定装置は、何れも体脂肪率或いは体重といった生体情報の測定のみを目的としたものであり、測定時以外には使用しないため、測定する度に装置を取り出して準備しなければならず、日常的に測定することが面倒であるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、生体情報の測定のみを目的とした従来の生体情報測定装置に代わり、被験者が通常の生活を営む中で非拘束、無意識のうちに体脂肪率等の生体情報を測定することが可能な生体情報測定装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明に係る生体情報測定装置は、被験者の2箇所の身体末端部に電極を接触させることにより該2箇所の身体末端部の間のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスを解析することにより上記被験者の生体情報を求める生体情報測定装置において、上記被験者が片手で把持した際に掌に接触する2つの電極を有する本体部と、導電性を有し、上記本体部から電力が供給されることにより電極として機能する2つのセンサ素子とを備え、上記センサ素子は、上記被験者の両耳に装着されて使用されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る生体情報測定方法は、被験者の2箇所の身体末端部に電極を接触させることにより該2箇所の身体末端部の間のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスを解析することにより上記被験者の生体情報を求める生体情報測定方法において、本体部を上記被験者の何れか一方の手で把持させることにより、該本体部に設けられた2つの電極を上記被験者の掌に接触させ、導電性を有し、上記本体部から電力が供給されることにより電極として機能する2つのセンサ素子を上記被験者の両耳に装着し、上記本体部の電極と電極として機能する上記センサ素子とを用いて上記被験者の上記一方の手と耳との間のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスを解析することにより上記被験者の生体情報を求めることを特徴とする。
【0008】
ここで、上記生体情報は、体脂肪率、体脂肪量、体水分量、除脂肪量及び筋肉量の少なくとも1つを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る生体情報測定装置及びその方法によれば、被験者が本体部を片手で把持すると共に2つのセンサ素子を両耳に装着するのみで被験者の体脂肪率等の生体情報を測定することができるため、測定に際して被験者を拘束する必要がなく、被験者自身が動いていても測定が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態は、本発明を、2つの電極を有する本体部を被験者に片手で把持させると共に、それぞれ電極として機能するインナーイヤー型イヤーレシーバ形状のセンサ素子を両耳に装着させ、手と耳との間のインピーダンスを測定して解析することにより被験者の体脂肪率、体脂肪量、体水分量(細胞含水率)、除脂肪量、或いは筋肉量(以下、「体脂肪率等」という。)といった生体情報を求める生体情報測定装置及びその方法に適用したものである。
【0011】
先ず、本実施の形態における生体情報測定装置の概略を図1に示す。同図に示すように、本実施の形態における生体情報測定装置1は、インナーイヤー型イヤーレシーバ形状のセンサ素子10R,10L(以下、両者を特に区別する必要がない場合には「センサ素子10」と記す。)と、2つの電極31,32を有すると共に音楽等の再生が可能な本体部30とが、配線50を介して接続されてなる。
【0012】
この生体情報測定装置1のうちセンサ素子10を拡大して図2に示す。同図に示すように、センサ素子10は、金属或いは導電性塗装を施したプラスチック材料で構成され、本体部30で再生された音楽等を出力するためのスピーカ21を有する導電性筐体20と、柔軟性を有し且つ導電性シリコンや導電繊維を混入した素材で構成されたイヤーピース22とからなる。
【0013】
このセンサ素子10の側断面図の一例を図3に示す。同図に示すように、導線性筐体20には、リード線51を介して本体部30から電力が供給されている。上述したように、導線性筐体20は、金属或いは導電性塗装を施したプラスチック材料で構成され、イヤーピース22は、導電性シリコンや導電繊維を混入した素材で構成されているため、リード線51を介して電力が供給されることにより、2つのセンサ素子10R,10Lはそれぞれ電極としても機能する。また、スピーカ21には、信号線52を介して本体部30からオーディオ信号が供給されている。イヤーピース22の中央には貫通孔が設けられており、スピーカ21から出力された音波は、この貫通孔を通して外耳道に送り込まれ、鼓膜に到達する。
【0014】
以上のような生体情報測定装置1を用いて体脂肪率等を測定する際には、先ず、図4に示すように、一般のインナーイヤー型イヤーレシーバと同様に、イヤーピース22が外耳道の内部に挿入され、導電性筐体20が被験者の耳甲介腔に固定されるように、センサ素子10R,10Lを左右の耳に装着すると共に、本体部30の外筐表面に設けられた2つの電極31,32が掌に接触するように本体部30を片手で把持する。
【0015】
次に、本体部30の表面に設けられた電極31,32相互間に、微弱な高周波電流を流す。この際に電極31,32間に流れる電流は、主に掌自体の構成物質によるインピーダンスと、掌と電極31,32との間の接触インピーダンスとによって決定される。このうち、掌自体の構成物質によるインピーダンスは、脂肪組織については非常に高く、筋肉組織は細胞内に水分を含有するため低いが、電極31,32間の距離が極めて近いため、構成物質の個体差によるインピーダンスの違いは僅かであり、むしろ掌と電極31,32との間の接触インピーダンスが支配的である。
【0016】
続いて、左右の耳のセンサ素子10R,10L相互間に、同様に微弱な高周波電流を流す。この際にセンサ素子10R,10L間に流れる電流は、主に頭部の構成物質によるインピーダンスと、外耳道内面の皮膚とセンサ素子10R,10Lとの間の接触インピーダンスとによって決定される。但し、一般的に頭部には皮下脂肪が付きにくいため、センサ素子10R,10L間で測定したインピーダンスは、体脂肪の量にはあまり影響を受けず、むしろ外耳道内面の皮膚とセンサ素子10R,10Lとの間の接触インピーダンスが支配的である。
【0017】
これらのインピーダンスを予め測定した後に、センサ素子10R,10Lの何れか一方、例えばセンサ素子10Rと、掌に接した電極31,32の何れか一方、例えば電極31との間に微弱な高周波電流を流し、この高周波電流によって生じる抵抗電位を測定することにより、インピーダンスを測定する。このインピーダンスは、外耳道内面の皮膚とセンサ素子10R,10Lとの間の接触インピーダンス、頭部の構成物質によるインピーダンス、頚部及び腕の構成物質によるインピーダンス、掌の構成物質によるインピーダンス、及び掌と電極31,32との間の接触インピーダンスの総和で決定される。この値から、予め測定したセンサ素子10R,10L相互間のインピーダンスと、掌に接した電極31,32相互間のインピーダンスとを減算すると、電極と人体との間の接触抵抗を排除した、頚部及び腕の構成物質によるインピーダンスのみが求められる。
【0018】
ここで、上述したように、脂肪組織はインピーダンスが非常に高く、筋肉組織は細胞内に水分を含有するためインピーダンスが低い。したがって、測定した値から頚部及び腕における筋肉組織と脂肪組織との比が推定できる。そして、この比と別途入力した体重及び身長の値とから、事前に準備した統計データを参照することにより、被験者の体脂肪率等の値を得ることができる。
【0019】
このように、本実施の形態における生体情報測定装置1では、被験者が本体部30を片手で把持して電極31,32を掌に接触させると共にセンサ素子10R,10Lを両耳に装着するのみで被験者の体脂肪率等を測定することができるため、測定に際して被験者を拘束する必要がなく、被験者自身が動いていても測定が可能である。特に、センサ素子10のイヤーピース22は柔軟性を有するため、その反発力によって適度な圧力で外耳道内面の皮膚に当接されることになる。これにより、被験者自身の動きや重力の影響によってイヤーピース22の位置が変動することを有効に抑制することができ、安定した測定が可能となる。なお、外耳道内部は腕や指などの随意的に動かせる筋肉から遠いため、被験者自身の動きによる影響が本来的に少ない部分でもある。
【0020】
さらに、本実施の形態における生体情報測定装置1では、センサ素子10がインナーイヤー型イヤーレシーバ形状とされており、導電性筐体20のスピーカ21を介して音楽等を出力することができるため、被験者は、音楽等を鑑賞しながら非拘束、無意識のうちにリラックスした状態で体脂肪率等を測定することが可能となる。特に、スピーカ21を有する導電性筐体20とイヤーピース22とが分離されているため、音楽等を鑑賞しながら体脂肪率等を測定した場合であっても、音響振動の影響を受けることは殆どない。また、音楽のみならず、このスピーカ21を介して、測定した体脂肪率等の情報を音声として出力するようにすれば、本体部30に測定値を表示するための表示部を設ける必要がなくなる。
【0021】
なお、上述した生体情報測定装置1では、被験者の生体情報として体脂肪率等を測定するものとして説明したが、図5に示すように、イヤーピース22に発光部23及び受光部24を埋め込むことで、脈拍数や血中酸素飽和度等の他の生体情報を測定することも可能となる。ここで、発光部23には小型のLED(Light Emission Diode)素子等の発光素子を用いることができる。また、受光部24には例えばSi、InGaAs、Ge等を用いたフォトダイオードや焦電型のマイクロセンサからなる光検出器を用いることができる。以下、発光部23及び受光部24を用いて脈拍数や血中酸素飽和度等の他の生体情報が測定できる原理について簡単に説明する。
【0022】
発光部23は、イヤーピース22の外側、すなわち外耳道の皮膚に接している面に向けて赤色光及び近赤外光を投射する。投射された光は被験者を経由し、一部分が反射、拡散されて戻ってくる。受光部24は、この反射光を受光して電気信号に変換し、信号線53を介して本体部30に伝送する。ここで、血流には脈があり、さらに血液の透過率は皮膚等の他の生体部分の透過率と比較して低いため、受光部24で検出される反射光の強度は脈拍に同期して変動する。したがって、この変動を連続して測定することにより脈拍数を得ることができる。また、酸素を結合したヘモグロビンと酸素を結合していないヘモグロビンとの光吸収率の違いを利用することで、血中酸素飽和度を測定することもできる。
【0023】
このように、イヤーピース22に発光部23及び受光部24を埋め込むことで、体脂肪率等以外にも、脈拍数、血中酸素飽和度等の複数の生体情報を並行して測定することができるため、被験者の健康管理上、有益である。
【0024】
以上、本発明を適用した具体的な実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態における生体情報測定装置の一例を示す概略図である。
【図2】同生体情報測定装置に用いられるセンサ素子を拡大して示す斜視図である。
【図3】同センサ素子の一例を示す側断面図である。
【図4】同生体情報測定装置を用いて被験者の体脂肪率等を測定している様子を示す図である。
【図5】同センサ素子のイヤーピースに発光部及び受光部を埋め込んだ状態のセンサ素子の側断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 生体情報測定装置、10,10R,10L センサ素子、20 導電性筐体、21 スピーカ、22 イヤーピース、30 本体部、31,32 電極、50 配線、51 リード線、52 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の2箇所の身体末端部に電極を接触させることにより該2箇所の身体末端部の間のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスを解析することにより上記被験者の生体情報を求める生体情報測定装置において、
上記被験者が片手で把持した際に掌に接触する2つの電極を有する本体部と、
導電性を有し、上記本体部から電力が供給されることにより電極として機能する2つのセンサ素子とを備え、
上記センサ素子は、上記被験者の両耳に装着されて使用される
ことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項2】
上記生体情報は、体脂肪率、体脂肪量、体水分量、除脂肪量及び筋肉量の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
上記センサ素子は、導電性を有する第1の部分と、該第1の部分の先端に設けられ、導電性及び柔軟性を有する素材で構成された第2の部分とからなり、該第2の部分が上記被験者の外耳道内に挿入されることを特徴とする請求項1記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
上記センサ素子は、音響信号を出力する音響信号出力部を有することを特徴とする請求項1記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
被験者の2箇所の身体末端部に電極を接触させることにより該2箇所の身体末端部の間のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスを解析することにより上記被験者の生体情報を求める生体情報測定方法において、
本体部を上記被験者の何れか一方の手で把持させることにより、該本体部に設けられた2つの電極を上記被験者の掌に接触させ、
導電性を有し、上記本体部から電力が供給されることにより電極として機能する2つのセンサ素子を上記被験者の両耳に装着し、
上記本体部の電極と電極として機能する上記センサ素子とを用いて上記被験者の上記一方の手と耳との間のインピーダンスを測定し、
測定されたインピーダンスを解析することにより上記被験者の生体情報を求める
ことを特徴とする生体情報測定方法。
【請求項6】
上記生体情報は、体脂肪率、体脂肪量、体水分量、除脂肪量及び筋肉量の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項5記載の生体情報測定方法。
【請求項7】
上記センサ素子は、導電性を有する第1の部分と、該第1の部分の先端に設けられ、導電性及び柔軟性を有する素材で構成された第2の部分とからなり、該第2の部分が上記被験者の外耳道内に挿入されることを特徴とする請求項5記載の生体情報測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−215(P2006−215A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177337(P2004−177337)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】