説明

生体情報計測ベッド

【課題】歪み検出センサから出力される被験者の生体情報信号の強度低下を抑制できる生体情報計測ベッドを提供する。
【解決手段】生体情報計測ベッド40は、生体情報計測用パネル1を備える。パネル1は、被験者の下側に被験者の幅方向に延びる態様に配置され、弾性的に撓曲可能な帯状の敷き板2と、敷き板2の歪みを検出する歪み検出センサ5とを備えている。歪み検出センサ5からの出力信号は被験者の生体情報の計測に用いられる。敷き板2の幅方向中間部の長さは、敷き板部2の幅方向両端部の長さよりも短く設定されている。敷き板2の幅方向中間部に歪み検出センサ5が装着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の生体情報を計測する際に用いられる生体情報計測用パネル、生体情報計測装置、生体活動監視システム及び生体情報計測ベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設(例:病院)、介護施設、一般家庭等では、病人、乳幼児、高齢者等の被験者の健康を把握するために、被験者の就寝中の生体情報を計測することが行われている。近年、この計測に用いられる生体情報計測装置が多数、開発されている(例えば、特許文献1−11参照)。
【0003】
例えば、特開2004−24685号公報(特許文献10参照)では、生体情報計測装置として、ベッドのマットの内部に設置された複数(例:162個)の荷重センサと、これらの荷重センサから出力される荷重信号に基づいて就寝者(被験者)の呼吸状態に対応した呼吸信号を生成する呼吸信号生成手段と、を備えた呼吸モニタ装置が開示されている。
【0004】
また、特開2006−43445号公報(特許文献11参照)では、生体情報計測装置として、被験者の下側に被験者の幅方向に延びる態様に配置され、弾性的に撓曲可能な帯状の敷き板と、該敷き板に装着された歪み検出センサとを有するとともに、歪み検出センサからの出力信号が被験者の生体情報の計測に用いられる生体情報計測用パネルを具備した計測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−552号公報(請求項1、第2図)
【特許文献2】特開2001−276019号公報(請求項1、第1及び2図)
【特許文献3】特開2001−46347号公報(請求項1、第1図)
【特許文献4】特開2000−107154号公報(請求項1)
【特許文献5】特開平10−216105号公報(請求項1)
【特許文献6】特開2003−210434号公報(請求項1)
【特許文献7】特開2005−235957号公報(請求項1)
【特許文献8】特開2006−20891号公報
【特許文献9】特開2005−253957号公報
【特許文献10】特開2004−24685号公報
【特許文献11】特開2006−43445号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、前者(特開2004−24685号公報)の装置では、複数(例:162個)の荷重センサがマットの内部に設置されているので、装置の構造が複雑になるという難点があった。
【0007】
後者(特開2006−43445号公報)では、被験者がパネルの敷き板の幅方向中間部に位置している場合には、パネルの歪み検出センサから出力される被験者の生体情報に関する信号の強度は高い。しかしながら、被験者がパネルの敷き板の幅方向端部に位置した場合には、パネルの歪み検出センサから出力される被験者の生体情報に関する信号の強度が低下する虞があった。
【0008】
なお以下では、被験者の生体情報に関する信号を、被験者の「生体情報信号」という。
【0009】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、被験者が敷き板の幅方向端部に位置した場合に、歪み検出センサから出力される被験者の生体情報信号の強度低下を抑制できる、簡素な構造の生体情報計測用パネル、該パネルを備えた生体情報計測装置、前記パネルを備えた生体活動監視システム、及び前記パネルを備えた生体情報計測ベッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1] 被験者の下側に被験者の幅方向に延びる態様に配置され、弾性的に撓曲可能な帯状の敷き板と、
敷き板の歪みを検出する歪み検出センサと、を備え、
歪み検出センサからの出力信号が被験者の生体情報の計測に用いられる生体情報計測用パネルにおいて、
敷き板の幅方向中間部の長さが、敷き板部の幅方向両端部の長さよりも短く設定されるとともに、
敷き板の幅方向中間部に歪み検出センサが装着されていることを特徴とする生体情報計測用パネル。
【0012】
[2] 敷き板の長さ方向両端縁のうち少なくとも一方が、その略全長に亘って敷き板の内側に凹んだ円弧状に形成されている前項1記載の生体情報計測用パネル。
【0013】
[3] 敷き板の長さ方向両端縁の幅方向中間部のうち少なくとも一方に、敷き板の内側に局部的に凹んだ凹部が形成されている前項1記載の生体情報計測用パネル。
【0014】
[4] 敷き板の上面及び下面のうち少なくとも上面に弾性層が設けられている前項1〜3のいずれかに記載の生体情報計測用パネル。
【0015】
[5] 敷き板の幅方向中間部に歪み検出センサとして少なくとも1個の歪みゲージが装着されている前項1〜4のいずれかに記載の生体情報計測用パネル。
【0016】
[6] 前項1〜5のいずれかに記載の少なくとも1個の生体情報計測用パネルと、
パネルの歪み検出センサからの出力信号に基づいて被験者の生体情報を演算する演算手段と、を備えていることを特徴とする生体情報計測装置。
【0017】
[7] パネルの個数は3個以上であり、
これらのパネルは、被験者の頭部、胸部及び腹部の下側に配置される3個のパネルを含んでいる前項6記載の生体情報計測装置。
【0018】
[8] 前項1〜5のいずれかに記載の少なくとも1個の生体情報計測用パネルと、
パネルの歪み検出センサからの出力信号に基づいて被験者の生体情報を演算する演算手段と、
演算手段の演算結果を報知する報知手段と、を備えていることを特徴とする生体活動監視システム。
【0019】
[9] 前項1〜5のいずれかに記載の少なくとも1個の生体情報計測用パネルと、
パネルの歪み検出センサからの出力信号に基づいて被験者の生体情報を演算する演算手段と、を備え、
パネルが寝床部に配置されていることを特徴とする生体情報計測ベッド。
【発明の効果】
【0020】
本発明は以下の効果を奏する。
【0021】
[1]の発明では、パネルの敷き板の幅方向中間部の長さが、敷き板の幅方向両端部の長さよりも短く設定されているので、被験者が敷き板の幅方向中間部に位置した場合はもとより、被験者が敷き板の幅方向端部に位置した場合であっても、敷き板の幅方向中間部に歪みが集中的に生じる。敷き板のこのような部位に歪み検出センサが装着されることにより、被験者が敷き板の幅方向中間部に位置している場合はもとより、被験者が敷き板の幅方向端部に位置している場合であっても、歪み検出センサから出力される被験者の生体情報信号の強度低下を抑制できる。
【0022】
さらに、このパネルでは、敷き板の様々な部位のうち例えば幅方向中間部だけに歪み検出センサを装着することで、上記の効果を得られるから、パネルの構造の簡素化を図ることができる。
【0023】
さらに、敷き板の製造用素材として、例えば、安価に入手可能な、厚さが一定の平板材を用い、この平板材から敷き板を打抜き加工等によって製作できる。したがって、敷き板を容易に且つ安価に製作できる。
【0024】
[2]及び[3]の発明では、上記の効果を確実に奏する生体情報計測用パネルを提供できる。
【0025】
[4]の発明では、被験者に対して柔らか感を与えることができる。そのため、被験者において寝心地が良くなる。
【0026】
[5]の発明では、敷き板の歪みを確実に検出できる。そのため、被験者の生体情報を確実に計測できる。
【0027】
[6]の発明では、本発明に係る生体情報計測用パネルにおける上記の効果と同様の効果を奏する。
【0028】
[7]の発明では、パネルの個数は3個以上であり、これらのパネルは、被験者の頭部、胸部及び腹部の下側に配置される3個のパネルを含んでいるので、被験者の頭部、胸部及び腹部の位置でそれぞれ独立して生体情報を計測できる。これにより、より詳細な生体情報を計測できる。
【0029】
[8]の発明では、被験者の生体活動を確実に監視できる生体活動監視システムを提供できる。
【0030】
[9]の発明では、被験者の生体情報を確実に計測できる生体情報計測ベッドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る生体情報計測装置の概略図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態に係る生体情報計測用パネルの斜視図である。
【図3】図3は、同パネルの分解斜視図である。
【図4】図4は、同パネルの敷き板の平面図である。
【図5】図5は、同パネルの敷き板の底面図である。
【図6】図6は、同パネルの歪みゲージが組み込まれたブリッジ回路を示す図である。
【図7】図7は、同計測装置のブロック図である。
【図8】図8は、本発明の第2実施形態に係る生体情報計測用パネルの敷き板の平面図である。
【図9】図9は、被験者がパネルの敷き板の幅方向端部に位置した場合の、同計測装置の概略図である。
【図10】図10は、被験者が実施例のパネルの敷き板の幅方向中間部に位置した場合の、パネルからの出力信号の一実測例を示す図(グラフ)である。
【図11】図11は、被験者が実施例のパネルの敷き板の幅方向一端部に位置した場合の、パネルからの出力信号の一実測例を示す図(グラフ)である。
【図12】図12は、比較例の生体情報計測用パネルの敷き板の平面図である。
【図13】図13は、被験者が比較例のパネルの敷き板の幅方向中間部に位置した場合の、パネルからの出力信号の一実測例を示す図(グラフ)である。
【図14】図14は、被験者が比較例のパネルの敷き板の幅方向一端部に位置した場合の、パネルからの出力信号の一実測例を示す図(グラフ)である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0033】
図1において、(30)は本発明の一実施形態に係る生体情報計測装置であり、(41)はベッドである。
【0034】
この計測装置(30)は、被験者(H)の主に就寝中の生体情報を計測するもので、医療施設(例:病院)、高齢者施設、介護施設、養護施設、一般家庭等で用いられるものである。この計測装置(30)で計測される生体情報としては、呼吸情報を始め、その他に、脈拍情報、体動情報等が挙げられる。被験者(H)としては、健康人、病人、高齢者、認知症患者、乳幼児等が挙げられる。
【0035】
この計測装置(30)は、本発明の第1実施形態に係る3個の生体情報計測用パネル(1)(1)(1)と、演算手段(20)と、通信手段(25)と、報知手段(26)とを具備している(図7参照)。
【0036】
3個の生体情報計測用パネル(1)(1)(1)は互いに同一構成である。図2及び図3に示すように、このパネル(1)は、該パネル(1)の本体板としての敷き板(2)と、歪み検出センサ(5)と、2個の弾性層(10)(10)とを備えている。
【0037】
図3〜図5に示すように、敷き板(2)は、弾性的に撓曲可能なものであり、一方向に延びた帯状(詳述すると帯板状)に形成されている。この敷き板(2)は、被験者(H)の下側に被験者(H)の幅方向に延びる態様に水平状に配置されるものである。詳述すると、図1に示すように、この敷き板(2)は、ベッド(41)の寝床部(42)としてのマット(例:マットレス、敷き布団)の上面における、就寝姿勢(例:仰臥姿勢)の被験者(H)の所定部位の下側の位置に、被験者(H)の幅方向(即ち、寝床部(42)の幅方向)に延びる態様に水平状に載置されるものである。
【0038】
敷き板(2)は、金属製であり、詳述すると、アルミニウム(その合金を含む)製であって押出材や圧延材等からなる。
【0039】
ただし本発明では、敷き板(2)はアルミニウム製であることに限定されるものではなく、その他に、例えば、鉄、鋼、ステンレス鋼、マグネシウム合金、銅(その合金を含む)製であっても良いし、繊維強化プラスチック等のプラスチック製であっても良い。
【0040】
図4において、Wは敷き板(2)の幅、L0は敷き板(2)の幅方向端部の長さ、L1は敷き板(2)の幅方向中間部の長さである。敷き板(2)の幅方向一端部の長さと他端部の長さは同じである。
【0041】
ここで本明細書では、敷き板(2)の長さ方向とは、被験者(H)の身長方向に沿う方向、即ちベッド(41)の寝床部(42)の長さ方向に沿う方向である。敷き板(2)の幅方向とは、被験者(H)の幅方向に沿う方向、即ちベッド(41)の寝床部(42)の幅方向に沿う方向である。
【0042】
敷き板(2)の上下両面はそれぞれ平坦状に形成されている。したがって、敷き板(2)の厚さは該敷き板(2)の幅方向及び長さ方向において一定に設定されている。
【0043】
図4及び図5に示すように、敷き板(2)の長さ方向両端縁(2a)(2a)は、それぞれ、その全長に亘って敷き板(2)の内側に凹んだ円弧状に形成されている。これにより、敷き板(2)の幅方向中間部の長さL1は、敷き板(2)の幅方向両端部の長さL0よりも短く設定されている(即ち、L1<L0)。
【0044】
敷き板(2)の幅方向各端部の長さL0は、例えば50〜200mmの範囲に設定されるのが望ましい。敷き板(2)の幅方向中間部の長さL1は、L0に対して例えば0.3〜0.8倍の範囲に設定されるのが望ましい(即ち、L1/L0=0.3〜0.8が望ましい)。敷き板(2)の幅Wは、例えば300〜1200mmの範囲に設定されるのが望ましい。Wが上記の範囲に設定されることにより、被験者(H)として乳幼児から大人まで敷き板(2)を適用することができ、もって被験者(H)に対するパネル(1)の適用範囲が増大する。敷き板(2)の厚さは、例えば0.5〜3mmの範囲に設定されるのが望ましい。
【0045】
敷き板(2)の各部位の寸法が上記の範囲に設定されることにより、被験者(H)の生体活動に伴い敷き板(2)に歪みが確実に生じたりその歪みが確実に変動したりするものとなる。ただし本発明では、敷き板(2)の各部位の寸法は上記の範囲であることに限定されるものではない。なお、被験者(H)の生体活動としては、呼吸を始め、その他に、脈拍(心拍、拍動)、体動(例:寝返り)等が挙げられる。
【0046】
敷き板(2)の曲げこわさは、例えば3×104〜12×108Nmm2の範囲に設定されるのが望ましい。曲げこわさがこの範囲に設定されることにより、被験者(H)の生体活動に伴い敷き板(2)に歪みが確実に生じたりその歪みが確実に変動したりするものとなる。ただし本発明では、敷き板(2)の曲げこわさはこの範囲であることに限定されるものではない。
【0047】
敷き板(2)は、ヤング率が1000〜230000MPaの範囲の材料で形成されたものであることが望ましい。ヤング率がこの範囲の材料で形成された敷き板(2)であることにより、被験者(H)の生体活動に伴い敷き板(2)に歪みが確実に生じたりその歪みが確実に変動したりするものとなる。ただし本発明では、敷き板(2)の材料のヤング率は上記の範囲であることに限定されるものではない。
【0048】
弾性層(10)は、被験者(H)に対して柔らか感を与えるためのものであり、平面視長方形状で且つ所定厚さの弾性シート材から形成されている。弾性シート材としては、例えば、発泡ウレタン材等の弾性発泡樹脂シート材やゴムシート材が用いられる。そして、敷き板(2)の上下両面に、それぞれ、弾性層(10)が、その周縁部が敷き板(2)の周縁の外側へはみ出た状態に接着剤によって全面に亘って貼着されている。弾性層(10)の厚さは、例えば2〜15mmの範囲に設定されている。ただし本発明では、弾性層(10)の厚さは上記の範囲であることに限定されるものではない。
【0049】
歪み検出センサ(5)は、敷き板(2)に生じる歪みと更にその変動とを検出するものである。詳述すると、本実施形態では、歪み検出センサ(5)は、敷き板(2)の幅方向中間部に生じる歪みと更にその変動とを検出するものである。敷き板(2)は起歪板として機能するものである。
【0050】
歪み検出センサ(5)は4個の歪みゲージ(6a)(6a)(6b)(6b)からなる。これらの歪みゲージ(6a)(6a)(6b)(6b)のうち、2個の歪みゲージ(6a)(6a)と残りの2個の歪みゲージ(6b)(6b)とは、それぞれ、敷き板(2)の幅方向中間部の上下両面の互いに対向する位置に、接着剤によって貼着されて装着されている。これらの歪みゲージ(6a)(6a)(6b)(6b)は、図6に示すように、互いに電気的に接続されてブリッジ回路(詳述するとホイートストンブリッジ回路)(7)が形成されている。すなわち、このブリッジ回路(7)は4個の歪みゲージ(6a)(6a)(6b)(6b)が組み込まれて形成されたものである。このブリッジ回路(7)からの出力信号は被験者(H)の生体情報の計測に用いられるものである。
【0051】
図4及び図5において、(8)と(9)は、ブリッジ回路(7)の入力信号線及び出力信号線である。詳述すると、入力信号線(8)はブリッジ回路(7)への電圧供給線であり、出力信号線(9)はブリッジ回路(7)からの出力電圧線である。これらの図では、入力信号線(8)と出力信号線(9)は互いに共通する1本の線で図示されている。入力信号線(8)及び出力信号線(9)は、敷き板(2)の上面(又は下面)に固定状態に貼着されている。なお(4)は、敷き板(2)の歪みゲージ装着部の近傍に設けられ、入力信号線(8)及び出力信号線(9)が挿通される小孔である。
【0052】
而して、図1に示すように、3個の生体情報計測用パネル(1)(1)(1)は、被験者(H)の頭部、胸部及び腹部の下側にそれぞれ1個ずつ配置されるものである。被験者(H)の頭部、胸部及び腹部の下側に配置されるパネルを、それぞれ「頭部パネル(1)」、「胸部パネル(1)」及び「腹部パネル(1)」とする。
【0053】
図7に示すように、本実施形態の生体情報計測装置(30)では、演算手段(20)は、増幅部(21)、アナログ−デジタル変換部(22)、フィルタリング処理部(23)、演算部(24)などをを有している。
【0054】
増幅部(21)は、各パネル(1)のブリッジ回路(7)からの出力信号(詳述すると出力電圧)を増幅するものである。
【0055】
アナログ−デジタル変換部(22)は、増幅部(21)により増幅された信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するものである。
【0056】
フィルタリング処理部(23)は、アナログ−デジタル変換部(22)により変換された信号から呼吸成分、脈拍成分、体動成分等の生体活動成分を抽出するためのフィルタリング処理を行うものである。なお本発明では、このフィルタリング処理部(23)は後述する演算部(24)に備えられていても良い。
【0057】
演算部(24)は、各パネル(1)のブリッジ回路(7)からの出力信号(出力電圧)に基づいて被験者(H)の生体情報を演算するものである。この演算部(24)は、例えば、CPUと、ROM、RAM等の記憶部とを有するコンピュータにより構成されている。
【0058】
さらに、この演算手段(20)は、各パネル(1)のブリッジ回路(7)に電力(電圧)を供給する電源部(図示せず)を有している。
【0059】
この演算手段(20)は、寝室、病室、ナースステーション、監視室、介護者の詰め所などに設置されるものである。ただし本発明では、この演算手段(20)は、その他に、演算手段(20)の少なくとも一部の機能がパネル(1)に搭載されても良い。
【0060】
通信手段(25)は、例えばモデムにより構成されたもので、演算手段(20)の演算結果として被験者(H)の生体情報を、電話回線網、インターネット、有線LAN、無線LAN等の無線通信網又は有線通信網を介して報知手段(26)に送信するものである。電話回線網としては、例えば、固定電話の回線網や携帯電話(PHSを含む)の回線網が用いられる。
【0061】
報知手段(26)は、演算手段(20)の演算結果として被験者(H)の生体情報を報知対象者に対して報知するものである。報知対象者としては、看護師、介護者、監視者などが挙げられる。
【0062】
この報知手段(26)は、報知スピーカ、報知ランプ、表示手段などを有している。報知スピーカは、所定の情報を音声やブザー音等の音で報知対象者に対して報知するものである。報知ランプは、所定の情報をランプの点灯や点滅等で報知対象者に対して報知するものである。表示手段は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRT等により構成されており、所定の情報を文字、図等の表示により報知対象者に対して例えばリアルタイムに報知するものである。
【0063】
この報知手段(26)は、寝室、病室、ナースステーション、監視室、介護者の詰め所などに設置されたり、あるいは固定電話機や携帯電話機などに搭載されるものである。
【0064】
次に、本第1実施形態の生体情報計測用パネル(1)及び生体情報計測装置(30)を用いて遂行される生体情報計測方法について、以下に説明する。
【0065】
まず、図1に示すように、3個のパネル(1)(1)(1)を、ベッド(41)の寝床部(42)としてのマットの上面における、被験者(H)の所定部位の下側の位置に、被験者(H)の幅方向(即ち、寝床部(42)の幅方向)に延びる態様に水平状に載置する。なお、必要に応じて、これらのパネル(1)(1)(1)の上に薄いマット(図示せず)を敷いても良い。こうすることにより、被験者(H)に対して寝心地を更に良くすることができる。また、必要に応じて、マットの上面に対して各パネル(1)の位置がずれないように各パネル(1)の位置を固定しても良い。
【0066】
次いで、このベッド(41)の寝床部(42)上に被験者(H)が就寝、休息、検査等のために仰臥姿勢で在床する。すると、被験者(H)の体重によって各パネル(1)の敷き板(2)が弾性的に僅かに撓曲する。これにより、敷き板(2)に曲げ歪みが発生し、特に敷き板(2)の幅方向中間部に曲げ歪みが集中的に発生する。
【0067】
被験者(H)が就寝すると、各パネル(1)の敷き板(2)の歪みが被験者(H)の就寝中の生体活動に伴い時間的に微細に変動する。このような時間的な変動が、歪みゲージ(6a)(6a)(6b)(6b)が組み込まれたブリッジ回路(7)により検出される。そして、図7に示すように、このブリッジ回路(7)からの出力信号(出力電圧)が出力信号線(8)を介して演算手段(20)に送信される。そして、こうして送信された信号に基づいて演算手段(20)により被験者(H)の生体情報が演算される。
【0068】
すなわち、演算手段(20)に送信された信号は、増幅部(21)により増幅され、その後、アナログ−デジタル変換部(22)によりデジタル信号に変換される。その後、フィルタリング処理部(23)によりこの信号から呼吸成分、脈拍成分、体動成分等の生体活動成分が抽出される。次いで、抽出された生体活動成分の信号が演算部(24)に送信される。なお、必要に応じて、抽出された生体活動成分の信号と一緒に、フィルタリング処理される前の信号が演算部(24)に送信されても良い。そして、演算部(24)に送信された信号に基づいて演算部(24)により被験者(H)の生体情報が演算される。
【0069】
演算部(24)の演算結果としての被験者(H)の生体情報は、通信手段(25)により演算手段(20)から報知手段(26)に送信され、報知手段(26)により報知対象者に対して報知される。これにより、報知対象者は被験者(H)の生体情報を知ることができる。
【0070】
而して、本第1実施形態の生体情報計測用パネル(1)は次の利点がある。
【0071】
パネル(1)の敷き板(2)の幅方向中間部の長さL1が、敷き板(2)の幅方向両端部の長さL0よりも短く設定されているので、被験者(H)が敷き板(2)の幅方向中間部に位置した場合(図1)はもとより、被験者(H)が敷き板(2)の幅方向端部に位置した場合(図9参照)であっても、敷き板(2)の幅方向中間部に歪みが集中的に生じる。敷き板(2)のこのような部位に歪み検出センサ(5)が装着されているので、被験者(H)が敷き板(2)の幅方向中間部に位置している場合はもとより、被験者(H)が敷き板(2)の幅方向端部に位置している場合であっても、歪み検出センサ(5)から出力される生体情報信号の強度低下を抑制できる。
【0072】
さらに、敷き板(2)の製造用素材として、安価に入手可能な、厚さが一定の平板材を用い、この平板材から敷き板(2)を打抜き加工等によって製作できる。したがって、敷き板(2)を容易に且つ安価に製作できる。
【0073】
さらに、このパネル(1)では、敷き板(2)の様々な部位のうち幅方向中間部だけに歪み検出センサ(5)を装着することで、上記の効果を得られるから、パネル(1)の構造の簡素化を図ることができる。
【0074】
さらに、敷き板(2)の長さ方向両端縁(2a)(2a)が、それぞれ、その全長に亘って敷き板(2)の内側に凹んだ円弧状に形成されているので、上記の効果を確実に奏しうる。
【0075】
さらに、敷き板(2)の上下両面にそれぞれ弾性層(10)が設けられているので、被験者(H)に対して柔らか感を与えることができる。そのため、被験者(H)において寝心地が良くなる。
【0076】
さらに、敷き板(2)の幅方向中間部に、歪み検出センサ(5)として4個の歪みゲージ(6a)(6a)(6b)(6b)が装着されているので、敷き板(2)の歪みを確実に検出できる。そのため、被験者(H)の生体情報を確実に計測できる。
【0077】
本実施形態の生体情報計測装置(30)は、本実施形態の生体情報計測用パネル(1)を備えているので、上記の効果と同様の効果を奏する。
【0078】
さらに、この計測装置(30)では、パネル(1)の個数は複数個であり、これらのパネルは、被験者(H)の頭部、胸部及び腹部の下側に配置される3個のパネル(1)(1)(1)を含んでいるので、被験者(H)の頭部、胸部及び腹部の位置でそれぞれ独立して生体情報を計測できる。これにより、より詳細な生体情報を計測できる。詳述すると、この計測装置(30)によれば、被験者(H)の詳細な生体情報として、例えば、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)、中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)及び混合性睡眠時無呼吸症候群(MSAS)を検出できる。
【0079】
本実施形態の生体活動監視システム(31)は、本実施形態の生体情報計測装置(30)を備えている。したがって、この監視システム(31)によれば、被験者(H)の生体活動を確実に監視できる。
【0080】
本実施形態の生体情報計測ベッド(40)は、本実施形態の生体情報計測用パネル(1)と演算手段(20)と通信手段(25)と報知手段(26)とベッド(41)(ベッド本体)とを備えるとともに、パネル(1)がベッド(41)の寝床部(42)としてのマット上に配置されたものである。したがって、このベッド(40)によれば、被験者(H)の生体情報を確実に計測できる。
【0081】
而して、本発明は、上記実施形態に示したもであることに限定されるものではなく、様々に変更可能である。
【0082】
例えば、第1実施形態では、生体情報計測用パネル(1)の敷き板(2)の長さ方向両端縁(2a)(2a)の両方がそれぞれ円弧状に形成されているが、本発明では、その他に、例えば、敷き板(2)の長さ方向両端縁(2a)(2a)のうちいずれか一方だけが円弧状に形成されていても良い。
【0083】
また、本発明では、生体情報計測用パネル(1)の敷き板(2)は図8に示した第2実施形態の形状のものであっても良い。この敷き板(2)は、その長さ方向両端縁(2a)(2a)の幅方向中間部に、それぞれ、敷き板(2)の内側に略コ字状(コ字状)に局部的に凹んだ凹部(2z)(2z)が形成され、これにより、敷き板(2)の幅方向中間部の長さL1が敷き板(2)の幅方向両端部の長さL0よりも短く設定されている。凹部(2z)の幅W1は例えば50〜200mmの範囲に設定されている。ただし本発明では、W1は上記の範囲であることに限定されるものではない。なお本発明では、その他に、敷き板(2)の長さ方向両端縁(2a)(2a)の幅方向中間部のうちいずれか一方だけに凹部(2z)が形成されていても良い。また本発明では、凹部(2z)の形状は略コ字状であることに限定されるものではなく、その他に、例えば円弧状であっても良いし、その他の形状であっても良い。
【0084】
また、本実施形態では、生体情報計測用パネル(1)は、ベッド(41)の寝床部(42)としてのマット上に載置されるものであるが、本発明では、その他に、例えば、マットの内部に配置されるものであっても良いし、マットの下側に配置されるものであっても良いし、敷き布団上に載置されるものであっても良いし、敷き布団の内部に配置されるものであっても良いし、敷き布団の下側に配置されるものであっても良いし、畳面上に載置されるものであっても良いし、床面上に載置されるものであっても良い。
【0085】
また、本発明では、パネル(1)の敷き板(2)の幅方向中間部に装着される歪みゲージの個数は1個であっても良いし、2個や3個以上であっても良い。
【0086】
また、本実施形態では、ブリッジ回路(7)は、4個の歪みゲージが組み込まれたものであるが、本発明では、その他に、例えば、5個や6個以上の歪みゲージが組み込まれたものであっても良いし、1個以上の歪みゲージと1個以上の固定抵抗(ダミー抵抗)が組み込まれたものであっても良い。
【0087】
また本発明では、歪み検出センサ(5)は、歪みゲージを始め、これ以外のセンサ、例えば、電導性エラストマセンサ(電導性ゴムセンサや電導性樹脂センサ等)、電歪デバイスセンサ、圧電デバイスセンサ、磁歪デバイスセンサであっても良いし、これらのセンサからなる群より選択される1種又は2種以上のセンサであっても良い。
【0088】
また、本実施形態では、弾性層(10)は敷き板(2)の上下両面にそれぞれ設けられているが、本発明では、その他に、敷き板(2)の上面だけに設けられていても良いし、下面だけに設けられていても良い。
【0089】
また、本発明では、生体情報計測装置(30)には、必要に応じて安全上の装置が付設されていても良いし、安全上の処理が施されていても良い。
【0090】
また、本発明では、生体情報計測装置(30)は、被験者(H)の生体情報の他に、更に、ベッド(41)における被験者(H)の在床状況(例えば、被験者(H)の入床や離床)を検出できるように構成されていても良い。
【実施例】
【0091】
次に、本発明の具体的実施例を以下に示す。
【0092】
<実施例>
実施例では、図3〜図5に示した上記第1実施形態の生体情報計測用パネル(1)を準備した。
【0093】
このパネル(1)を、ベッド(41)の寝床部(42)としてのマットの上面における、被験者(H)の胸部の下側の位置に、被験者(H)の幅方向に延びる態様に水平状に載置した。そして、図1に示すように被験者(H)がパネル(1)の敷き板(2)の幅方向中間部に位置している場合と、図9に示すように被験者(H)がパネル(1)の敷き板(2)の幅方向一端部に位置している場合とについて、それぞれ、パネル(1)のブリッジ回路(7)からの出力信号を計測した。前者の場合の計測結果を図10に示し、後者の場合の計測結果を図11に示す。
【0094】
なお、図10及び図11では、パネル(1)のブリッジ回路(7)からの出力信号は波形として表されている。この出力波形では、被験者(H)の呼吸に起因する呼吸波成分と、被験者(H)の脈拍(心拍)に起因する脈拍波成分とが重畳されている。この出力波形において、波長が長くて連続するうねり状の波が呼吸波成分であり、パルス状の波が脈拍波成分である。この出力波形では、呼吸周期が約2〜3秒であり、脈拍周期が約1秒である。
【0095】
実施例のパネル(1)では、前者の場合の出力信号(図10参照)における呼吸波成分の波形の大きさを10とした場合、後者の場合の出力信号(図11参照)における呼吸波成分の波形の大きさは約9であった。
【0096】
<比較例>
比較例では、図12に示した形状の敷き板(52)を備えた生体情報計測用パネルを準備した。この敷き板(52)の平面形状は長方形状である。したがって、この敷き板(52)の長さ方向両端縁(2a)(2a)は互いに平行な直線状に形成されており、敷き板(52)の長さLは、該敷き板(52)の幅方向において一定に設定されている。比較例のパネルの他の構成は実施例のパネルと同じである。
【0097】
このパネルを用いて、実施例と同様に、図1に示すように被験者(H)がパネルの敷き板(52)の幅方向中間部に位置している場合と、図9に示すように被験者(H)がパネルの敷き板(52)の幅方向一端部に位置している場合とについて、それぞれ、パネルのブリッジ回路(7)からの出力信号を計測した。前者の場合の計測結果を図13に示し、後者の場合の計測結果を図14に示す。
【0098】
比較例のパネルでは、前者の場合の出力信号(図13参照)における呼吸波成分の波形の大きさを10とした場合、後者の場合の出力信号(図14参照)における呼吸波成分の波形の大きさは約4〜5であった。
【0099】
以上の実施例と比較例の結果から分かるように、実施例のパネル(1)によれば、被験者(H)が敷き板(2)の幅方向端部に位置している場合に、パネル(1)から出力される呼吸情報等の生体情報に関する信号の強度低下を抑制できることを確認し得た。したがって、被験者(H)が敷き板(2)の幅方向中間部に位置している場合はもとより、被験者(H)が敷き板(2)の幅方向端部に位置している場合であっても、被験者(H)の生体情報を確実に計測できる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、被験者の生体情報を計測する際に用いられる生体情報計測用パネル、生体情報計測装置、生体活動監視システム及び生体情報計測ベッドに利用可能である。
【符号の説明】
【0101】
1…生体情報計測用パネル
2…敷き板
2a、2a…敷き板の長さ方向両端縁
5…歪み検出センサ
6a、6b…歪みゲージ
7…ブリッジ回路
10…弾性層
20…演算手段
25…通信手段
26…報知手段
30…生体情報計測装置
31…生体活動監視システム
40…生体情報計測ベッド
41…ベッド(ベッド本体)
42…寝床部
H…被験者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の下側に被験者の幅方向に延びる態様に配置され、弾性的に撓曲可能な帯状の敷き板と、敷き板の歪みを検出する歪み検出センサと、を備え、歪み検出センサからの出力信号が被験者の生体情報の計測に用いられ、敷き板の幅方向中間部の長さが、敷き板部の幅方向両端部の長さよりも短く設定されるとともに、敷き板の幅方向中間部に歪み検出センサが装着されている生体情報計測用パネルと、
パネルの歪み検出センサからの出力信号に基づいて被験者の生体情報を演算する演算手段と、を備え、
パネルが寝床部に配置されていることを特徴とする生体情報計測ベッド

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−156381(P2011−156381A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87338(P2011−87338)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【分割の表示】特願2006−250749(P2006−250749)の分割
【原出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】