説明

生体物質検出装置

【課題】本発明は、前記従来の課題を解決するもので、複数の蛍光標識を持つ生体物質に、均一なビームサイズとビームパワーを持つ励起光を与えて、複数の生体物質を同一の構成で解析できる生体物質検出装置を提供する。
【解決手段】複数の光源を備え平行光を出射する光源ユニットと、前記光源ユニットからの平行光を制限するための第1のピンホールと、前記第1のピンホールを通過した光を蛍光標識で修飾された試料へ照射する対物レンズと、前記試料から発し前記対物レンズを通った蛍光を結像する結像レンズと、前記結像レンズの結像位置に設けられた第2のピンホールと、前記第2のピンホールを通った前記蛍光を検出する検出器と、を備えた生体物質検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAやタンパクその他の生体物質を緩衝剤中で移動させて得られる輸送反応を検出して生体物質を検出する生体物質検出装置に関する。より詳細には、蛍光標識で修飾された生体物質に励起光を照射し、その生体物質が発する蛍光により生体物質を定量測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体物質を分析する研究が盛んに行われ、例えば、DNA、RNA、タンパク質などの解明における発展が著しい。その一方で、DNA等のアッセイ分析を迅速に、かつ、正確に行える装置の開発が求められている。
【0003】
この種の装置は、特定の生体物質の有無や、変異型の生体物質の発現を調べる目的に使用される。測定対象の生体物質をガラスやプラスチックなどの基板上に固定した、DNAチップ、DNAマイクロアレイ(以下、生体物質検出用基板と呼ぶ)を用いて、生体物質の検出を行う。この種の装置では、生体物質に蛍光標識を修飾することにより、蛍光検出測定が行われる。しかし、ここで検出する蛍光量は、非常に微弱なので、感度の高い蛍光検出装置が求められている。
【0004】
蛍光検出装置としては、冷却CCD検出、共焦点光学系などが挙げられる。
【0005】
冷却CCDを用いた方式では、露光時間を長くすることにより、弱い蛍光を検出可能であるが、バックグラウンドノイズが高くなり、共焦点光学系の方が微弱検出に向いている。
【0006】
共焦点光学系を用いた方式では、レーザー励起の共焦点光学系のスキャニング検出方式が一般的である。共焦点光学系は、蛍光標識された生体物質から発せられる蛍光を、共役な位置に集光する光学系であり、集光点に設置したフォトダイオードや光電子増倍管などにより検出を行う。
【0007】
従来の蛍光検出装置について、図7を用いて説明する。この方式の蛍光検出装置は、光源に平行光源39を用い、光源の光は投光レンズ40を通過した後、ダイクロイックミラー41で反射される。投光レンズ40の集光点43は、対物レンズ42の前側焦点位置と一致するように光学調整され、対物レンズ42を通った光は平行光となって検体44に照射される。励起光を照射された検体44から発せられる蛍光は、対物レンズ42、及び、ダイクロイックミラー41を通り、結像レンズ45により結像され、検出器46で検出する。(例えば、特許文献1参照。)
このように、従来の蛍光検出装置は、投光レンズ40の集光点43と対物レンズ42の前側焦点位置とを一致させることにより、検体へ照射する光を平行光とする。検体に修飾された蛍光標識を平行光で励起するため、検体の位置精度を厳しくしなくとも検体へ照射される光のビームサイズやパワーを均一にできる。そのため、測定対象へ励起光をむらなく照射可能であり、生体物質を定量的に解析することができた。
【特許文献1】特開2002−357549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の構成では、特定の波長を持つ単一の光源に限定された構成であるので、複数の蛍光標識を持った検体を測定する際には、次の問題が生じる。複数の蛍光標識を持った検体を測定する際には、この検体に応じた波長を持つ複数の光源が必要であるが、投光レンズ40の色収差により集光点43の位置と対物レンズ42の前側焦点位置とが一致せず、対物レンズ42を通った光は、収束光または拡散光となる。従って、検体44へ照射される励起光のビームサイズとビームパワーとが不均一になる。すなわち、前記従来の構成では、複数の蛍光標識を持つ生体物質の解析ができないという課題を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、複数の蛍光標識を持つ生体物質に、均一なビームサイズとビームパワーを持つ励起光を与えて、複数の生体物質を同一の構成で解析できる生体物質検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の生体物質検出装置は、複数の光源を備え平行光を出射する光源ユニットと、前記光源ユニットからの平行光を制限するための第1のピンホールと、前記第1のピンホールを通過した光を蛍光標識で修飾された試料へ照射する対物レンズと、前記試料から発し前記対物レンズを通った蛍光を結像する結像レンズと、
前記結像レンズの結像位置に設けられた第2のピンホールと、前記第2のピンホールを通った前記蛍光を検出する検出器と、を備えたことを特徴としたものである。
【0011】
また、本発明は、測定すべき蛍光標識で修飾された試料の励起波長を全て含む平行光を出射する平行光源と、前記平行光に含まれる特定の波長を複数選択できる励起フィルタユニットと、前記平行光源からの光を制限するための第1のピンホールと、前記第1のピンホールを通過した光を蛍光標識で修飾された試料へと照射する対物レンズと、前記試料から発し前記対物レンズを通った蛍光を結像する結像レンズと、前記結像レンズの結像位置に設けられた第2のピンホールと、前記第2のピンホールを通った前記蛍光を検出する検出器とを備えたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の生体物質検出装置によれば、複数の蛍光標識をもつ生体物質に対して複数の波長の光源を用いる場合、検体である生体物質への照射を均一に行うことが可能である。従って、同一の装置構成で複数の生体物質を定量解析することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の生体物質検出装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における生体物質検出装置を示す図である。この生体物質検出装置は、緩衝液中を電気泳動する生体物質からの蛍光を測定するための装置である。 本実施例では、3種類の異なる蛍光標識FITC、Cy3、Cy5が修飾された生体物質を測定する場合を説明する。
【0014】
これらの生体物質の蛍光標識を励起するために、波長の異なる3種類の平行光源1乃至3からなる光源ユニット100を設け、それぞれ、波長473nmの固体青色レーザー、波長532nmの固体緑色レーザー、波長635nmの赤色半導体レーザーを用いた。まず、第1の平行光源1の光は、第1の励起フィルタ4を通る。この第1の励起フィルタ4は、蛍光標識FITCを励起し、蛍光を読み取るときに使用されるフィルタであり、蛍光標識FITCの励起波長領域を透過し、蛍光波長領域をカットする性質を有している。第1の励起フィルタ4を透過した光は、第1のダイクロイックミラー7、第2のダイクロイックミラー8を通り、光源ユニット100から出射される。
【0015】
第2の平行光源2の光は、第2の励起フィルタ5を通る。この第2の励起フィルタ5は、蛍光標識Cy3を励起し、蛍光を読み取るときに使用されるフィルタであり、蛍光物質Cy3の励起波長領域を透過し、蛍光波長領域をカットする性質を有している。第2の励起フィルタ5を透過した光は、第1のダイクロイックミラー7で反射したのち、第2のダイクロイックミラー8を通り、光源ユニット100から出射される。
【0016】
第3の平行光源3の光は、第3の励起フィルタ6を通る。この第3の励起フィルタ6は、蛍光標識Cy5を励起し、蛍光を読み取るときに使用されるフィルタであり、蛍光物質Cy5の励起波長領域を透過し、蛍光波長領域をカットする性質を有している。第3の励起フィルタ6を透過した光は、第2のダイクロイックミラー8で反射され、光源ユニット100から出射される。
【0017】
第1および2のダイクロイックミラー7、8の光学特性を図2および図3に示す。グラフは、横軸に波長を示し、実線で反射率、破線で透過率を示している。また、本実施の形態1において用いる3種類の光源の波長を数字記入し、矢印で示している。第1のダイクロイックミラー7は、第1の平行光源1の光(488nm)を透過し、第2の平行光源2の光(532nm)を反射する特性を持つ。第2のダイクロイックミラー8は、第1の平行光源1及び第2の平行光源2の光(488nmおよび532nm)を透過し、第3の平行光源3の光(635nm)を反射する特性を持つ。
【0018】
光源ユニット100から出射された光は、励起用ピンホール10を通過する。励起用ピンホール10の穴径をφ0.5mmとして、ビームサイズをφ0.5mmに制限する。ピンホールを通過させることにより、光源のビームサイズの均一化を図ることが可能である。
【0019】
励起用ピンホール10を通った光は、第3のダイクロイックミラー9で反射される。
【0020】
第3のダイクロイックミラー9の光学特性を図4に示す。グラフは、横軸に波長を示し、実践で反射率、破線で透過率を示している。また、実践の矢印で本実施例に用いる3種類の光源の波長を示し、破線の矢印で本実施例に用いる3種類の蛍光標識の蛍光波長を示している。数字は、その波長である。
【0021】
第3のダイクロイックミラー9は、第1から3の平行光源1から3の光(488nm、532nm、635nm)を反射し、蛍光標識FITC、Cy3、Cy5の蛍光波長領域の光(520nm、570nm、670nm)を透過する特性を持つ。第3のダイクロイックミラー9で反射された光は、対物レンズ11を通り、検体13へ照射される。
【0022】
この対物レンズ11の材質は石英であり、有効径はφ14mmであり、厚さは10mmである。対物レンズ11の形状について、第1面が非球面であり、第2面は平面である。第1面の中心部にφ0.6mmの平坦部12を設け、その平坦部は、第2面の平面と平行をなす構成である。対物レンズ11の向きは第2面を検体側となるように配置する。第一面の非球面形状は、数1で表される。
【0023】
【数1】

【0024】
数1において、曲率Rは10mmであり、コーニック係数Kは−0.99、4次の非球面係数Aは3.0e−5、6から10次の非球面係数BからDは0である。
【0025】
このような対物レンズを用いることにより、第3のダイクロイックミラー9で反射した第1から3の平行光源1から3の光は、対物レンズ11の平坦部12を通り、平行光のまま検体13へ照射される。励起された検体13から発した蛍光は、対物レンズ11の球面部により平行光に集束される。その平行光は、第3のダイクロイックミラー9、蛍光フィルタ14を通過する。蛍光フィルタ14は、蛍光標識FITC、Cy3、Cy5の蛍光波長領域の光を透過し、第1から3の平行光源の波長をカットする特性を持つフィルタを用いる。
【0026】
蛍光フィルタ14を透過した光は、結像レンズ15で蛍光用ピンホール16位置に集光され、蛍光用ピンホール16を通過した光は検出器18で受光される。本実施の形態1では、蛍光標識FITC、Cy3、Cy5の発する蛍光、つまり、異なる波長の光を検出する。その場合、レンズの色収差のため、波長によって結像レンズ15の結像位置17は異なる。即ち、ピンホール16位置でのビームサイズはφ0.5mmよりも大きくなり、蛍光用ピンホール16を通過できない可能性がある。この色収差によるビームの拡がり量は、0.2mm未満である。そこで、蛍光用ピンホール16の穴径はφ0.7mmとし、色収差によるずれを許容できる構成とする。
【0027】
なお、本発明の実施の形態1に示す光源の種類、蛍光標識の種類、レンズの有効径、曲率は一例であり、これに限るものではない。
【0028】
以下、図1に示す生体物質検出装置を用いた検出の動作について説明する。生体物質としては、判別したいSNPs部位を含む約60塩基長の1本鎖DNAであり、蛍光標識で標識されたDNAである。本発明の生体物質検出装置を用いることにより、複数の判別したいDNAを同時に測定可能であり、本実施の形態1においては3種類のDNAを判別できる。蛍光標識FITC、Cy5、Cy3を用いて、判別対象であるDNAをそれぞれ標識した生体物質を準備する。
【0029】
図5(a)は生体物質検出用基板19の模式的な平面図である。生体物質検出用基板19の材料はアクリル系の樹脂であり、厚みは2mmである。流路形成面には深さ50μmの流路やリザーバーとなる溝が掘られ、さらにその上面に厚さ50μmのアクリル製フィルムを接着することで密閉流路が形成されている。また、重心22に、生体物質検出用基板19を生体物質検出装置に固定するための穴が設けられている。本実施の形態において、8つの泳動ユニット21が、生体物質検出用基板19の円周上に等間隔に並んで構成している。
【0030】
図5(b)を用いて、生体物質検出用基板19の泳動ユニット21について詳細に説明する。サンプル注入部23へ注入された生体物質は、流路24を通りサンプル保持部25まで移動し、一定量の生体物質がサンプル保持部25に保持される。一定量を超える生体物質は、流路26を通りバッファ部27まで移動する。
【0031】
緩衝剤としてDNAコンジュゲートを準備する。DNAコンジュゲートとは、6〜12塩基長1本鎖DNAの5'末端に高分子のリニアポリマーが共有結合したものである。さらにDNAは、正常型に対しては相補であるが変異型に対しては相補ではない配列であり、正常型DNAに対しての結合力が強く、変異型DNAに対しての結合力が弱い特性がある。また、電気泳動した場合、5'末端に結合した。リニアポリマーがおもりとなり泳動速度がかなり遅いという特性もある。緩衝剤注入部28へ注入された緩衝剤は、流路29より正電極30及び負電極31へ移動し、さらに、流路32及び流路33を満たす。
【0032】
正電極30及び負電極31との間に電圧を印加する。電圧の印加は、正電極30及び負電極31より緩衝剤に接触するように針状の電極を挿入した状態で行う。電圧印加により、流路32及び流路33に電場が発生し、サンプル保持部25に保持された生体物質は、流路33中を電気泳動する。
【0033】
蛍光標識を修飾したDNAに励起光を照射して発している蛍光を検出することで、流路33中を電気泳動するDNAを定量的に測定できる。さらに、生体物質検出用基板19を駆動部20で回転させ、蛍光をスキャンすることにより、DNAの分布を解析することができる。
【0034】
本実施の形態1では、3種類の生体物質を同時に電気泳動させる。まず、第1の平行光源1を用いて蛍光をスキャンし、蛍光標識FITCを標識したDNAの解析を行う。続いて、光源を第2の平行光源2に切り替え、蛍光標識Cy3を標識したDNAの解析を行い、さらに、第3の平行光源3に切り替えて、蛍光標識Cy5を標識したDNAの解析を行う。このように、光源を切り替えることにより、3種類の生体物質をそれぞれ解析できる。
【0035】
従来の構成では、複数の波長の光源を用いた蛍光検出を行う場合、レンズの色収差のため、波長によってレンズの焦点位置が変わるので励起光を検体にむらなく照射できない。そこで、励起光を検体にむらなく照射するために、対物レンズの位置調整が必要となり、レンズの位置調整を行うためのサーボ機構が必要であった。そのため、光源の波長を切替える毎に、対物レンズの位置調整が必要となり測定に時間を要していた。また、レンズ位置調整用のサーボ機構を必要とするため、装置の小型化が難しかった。
【0036】
しかしながら、本発明の実施の形態1においては、レンズの位置調整が不要であるため、コンパクトな装置でスムーズな測定を行うことができる。構成の特徴は、励起光が、対物レンズ11の平坦部12を通る点である。このため、色収差による対物レンズの焦点位置がずれるという問題が生じない。従って、波長の異なる平行光源を用いた場合にも、励起光を平行光のまま検体へ安定的に照射することが可能であり、微弱蛍光を高感度に測定できる。
【0037】
また、生体物質検出用基板19は、蛍光検出装置から脱着可能な構成になっており、検体を注入した生体物質検出用基板を装置に装着して測定を行う。使用者の取り付け方法により、生体物質検出用基板と生体物質検出装置の装着位置が、デフォーカス方向にずれることも起こり得る。例えば、拡散光、または、集束光である場合、生体物質検出用基板19がデフォーカス方向へずれると、検体へ到達する励起光のビームサイズ、および、ビームパワーは不均一になり、蛍光量を正確に測定できなくなる。特に、測定する蛍光が微弱光である場合、このわずかな位置ずれにより均一な蛍光測定が行えないという課題もある。しかしながら、本発明の実施の形態1では、検体へ照射する励起光が平行光であるので、デフォーカス方向の位置に影響されることも回避できる。
【0038】
以上のように、本発明の実施の形態1において、複数の判別したいDNAが同時にある場合、蛍光標識FITC、Cy3、Cy5を各DNAに標識し、光源を切替えることにより、各DNAの解析が可能である。なお、本発明の実施の形態1の構成においては、レンズの色収差の影響がないことから、光源を切替える際のレンズの位置調整が不要であり、簡便、小型な装置であり、測定もスムーズである。
【0039】
また、励起光が平行光であることにより、検体13がデフォーカス方向に位置ずれを起こした場合にも、均一なビームサイズ、ビームパワーの励起光を検体へ照射でき、検体からの微弱な蛍光をむらなく検出可能である。
【0040】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における生体物質検出装置を図6(a)に示す。また、図6(b)はフィルタホイール35を示す図である。図6において、実施の形態1と異なるところは光源の構成であり、波長分布の広い単一の平行光源34を用いて複数の波長の励起光を発生する構成にした点にある。すなわち、励起フィルタ36、37、38のいずれかを通すことにより波長を選択する機構を有している。平行光源34の波長分布は、測定すべき生体物質の蛍光標識の波長を全て含んでいれば良い。
【0041】
ここでは、単一の平行光源34に例えばキセノンランプを用いた例を示す。平行に調整されたキセノンランプの平行光源34の光は、第4の励起フィルタ36を通過することにより、波長を選択する。本発明の実施の形態2においては、蛍光標識FITC、Cy3、Cy5用の3種類の第4から6の励起フィルタ36から38を用いる。これらの励起フィルタ36から38は、フィルタホイール35で切替えられる構成である。第4から6の励起フィルタ36から38は、それぞれ、蛍光標識FITC、Cy3、Cy5の励起波長領域の光のみを透過させるためのバンドパスフィルタである。
【0042】
第4の励起フィルタ36を通過した光は、励起用ピンホール10を通過し、ダイクロイックミラー9で反射され、対物レンズ11の平坦部12を通過し、検体13へ照射される。励起された検体13から発した蛍光は、対物レンズ11の球面部により平行収束され、第3のダイクロックミラー9、蛍光フィルタ14を通過したのち、結像レンズ15で集光され、蛍光用ピンホール16を通過した光が検出器18で検出される。
【0043】
本実施の形態2では、3種類の生体物質を同時に電気泳動させる。第4の励起フィルタ36を用いて、蛍光物質FITCを標識したDNAの解析を行う。次に、第5の励起フィルタ37を平行光源34が通過するように、フィルタホイールを回転させる。第5の励起フィルタ37を用いて、蛍光物質Cy3を標識したDNAを解析し、続いて、第6の励起フィルタ38に変更して、蛍光物質Cy5を標識したDNAの解析を行う。このように、励起フィルタ36から38を切り替えることにより、3種類の生体物質をそれぞれ解析することができる。
【0044】
フィルタの特性、ピンホールサイズ、対物レンズの形状、蛍光検出部分の構成、電気泳動の動作については、実施の形態1の記載と同様とする。
【0045】
以上のように、本発明の実施の形態2において、複数の判別したいDNAが同時にある場合、蛍光標識FITC、Cy3、Cy5を各DNAに標識し、広い波長分布を持った光源の光を用い、励起フィルタで波長を選択することにより、各DNAの解析が可能である。なお、本発明の実施の形態2の構成においては、レンズの色収差の影響がないことから、光源を切替える際のレンズの位置調整が不要であり、簡便、小型な装置であり、測定もスムーズである。
【0046】
また、励起光が平行光であることにより、検体13がデフォーカス方向に位置ずれを起こした場合にも、均一なビームサイズ、ビームパワーの励起光を検体へ照射でき、検体からの微弱な蛍光をむらなく検出可能である。
【0047】
さらに、広い波長分布を持った光源とすることにより、励起フィルタで任意の波長を選択することが可能であり、使用する蛍光標識を幅広く選択することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る生体物質検出装置は、複数波長の励起光を生体物質に均一に照射することが出来るので、複数の生体物質の蛍光を同一の構成で定量測定する装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の生体物質検出装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1における第1のダイクロイックミラー7の光学特性を示す図
【図3】本発明の実施の形態1における第2のダイクロイックミラー8の光学特性を示す図
【図4】本発明の実施の形態1および2における第3のダイクロイックミラー9の光学特性を示す図
【図5】(a)本発明の実施の形態1および2における生体物質検出用基板の構成図(b)本発明の実施の形態1および2における生体物質検出用基板の泳動ユニット模式図
【図6】(a)本発明の実施の形態2における生体物質検出装置の構成図(b)本発明の実施の形態2におけるフィルタホイール35の構成図
【図7】従来の蛍光検出装置の構成図
【符号の説明】
【0050】
100 光源ユニット
1、2、3 第1から第3の平行光源
7、8、9 第1から第3のダイクロイックミラー
10 第1のピンホール
12 平坦部
11 対物レンズ
13 検体
15 結像レンズ
16 第2のピンホール
18 検出器
14 蛍光フィルタ
19 生体物質検出用基板
22 重心
34 平行光源
35 フィルタホイール
36、37、38 励起フィルタ
39 平行光源
40 投光レンズ
41 ダイクロイックミラー
42 対物レンズ
44 検体
45 結像レンズ
46 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源を備え平行光を出射する光源ユニットと、
前記光源ユニットからの平行光を制限するための第1のピンホールと、
前記第1のピンホールを通過した光を蛍光標識で修飾された試料へ照射する対物レンズと、
前記試料から発し前記対物レンズを通った蛍光を結像する結像レンズと、
前記結像レンズの結像位置に設けられた第2のピンホールと、
前記第2のピンホールを通った前記蛍光を検出する検出器と、
を備えた生体物質検出装置。
【請求項2】
前記光源ユニットは、前記複数の光源からの平行光をダイクロイックミラーにより、同一光軸上に合成することを特徴とした請求項1に記載の生体物質検出装置。
【請求項3】
前記第1のピンホールは、前記光学ユニットからの平行光を整形し、複数の光源からの平行光のビームサイズを等しくすることを特徴とした請求項1に記載の生体物質検出装置。
【請求項4】
前記対物レンズは、平面側と凸面側をもつ平凸レンズであり、その凸面側の中央に平坦部を持ち、その平坦部の面と前記平面側の面は平行関係にあることを特徴とした請求項1に記載の生体物質検出装置。
【請求項5】
前記第1のピンホールを通過した光が、前記対物レンズの凸面側の中央の平坦部を通るように前記第1のピンホールと前記対物レンズを配置した請求項1に記載の生体物質検出装置。
【請求項6】
測定すべき蛍光標識で修飾された試料の励起波長を全て含む平行光を出射する平行光源と、
前記平行光に含まれる特定の波長を複数選択できる励起フィルタユニットと、
前記平行光源からの光を制限するための第1のピンホールと、
前記第1のピンホールを通過した光を蛍光標識で修飾された試料へと照射する対物レンズと、
前記試料から発し前記対物レンズを通った蛍光を結像する結像レンズと、
前記結像レンズの結像位置に設けられた第2のピンホールと、
前記第2のピンホールを通った前記蛍光を検出する検出器と、
を備えた生体物質検出装置。
【請求項7】
前記励起フィルタユニットは、前記試料の蛍光標識に応じた波長の光のみを選択的に透過するための複数の励起フィルタをフィルタホイールに配置しており、このフィルタホイールを回転させて前記試料の蛍光標識へ適合する励起フィルタを選択し、前記励起フィルタを透過した光が前記試料に照射するように構成した請求項6に記載の生体物質検出装置。
【請求項8】
前記第1のピンホールは、前記励起フィルタを透過した平行光を整形し、ビームサイズを制限することを特徴とした請求項6に記載の生体物質検出装置。
【請求項9】
前記対物レンズは、平面側と凸面側をもつ平凸レンズであり、その凸面側の中央に平坦部を持ち、その平坦部の面と前記平面側の面は平行関係にあることを特徴とした請求項6に記載の生体物質検出装置。
【請求項10】
前記第1のピンホールを通過した光が、前記対物レンズの凸面側の中央の平坦部を通るように前記第1のピンホールと前記対物レンズを配置した請求項6に記載の生体物質検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−2774(P2009−2774A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163510(P2007−163510)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】