説明

生体磁場計測データの表示方法

【課題】複数の計測位置の磁場強度の測定し、操作性の良い生体磁場計測データの表示方法を提供する。
【解決手段】表示画面8−1を備えた計算機8を用い、被検者2の生体内から発せられる磁場を、計測センサで複数の計測位置で計測し、該計測信号を該画面に表示する生体磁場計測データの表示方法において、該被検者2の計測部位図と前記計測位置を重ね合せて表示する際、計算機8で被検者2の情報および計測条件に従い、計算機8内のデータベースより選択し、計測データと共に、表示画面8−1で表示するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の脳の神経活動や心臓の心筋活動等、生体内の電流などに基づく生体の磁場を計測するのに適した生体磁場計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から磁気センサである超伝導量子干渉素子(以下、SQUIDという)を用いて、生体から発生する微弱な磁場の分布を測定し、その測定結果から、生体内部の活動電流の位置を推定し、その分布をイメージングする多チャンネルの生体磁気イメージング装置で、前記生体内部の活動電流の磁界に対応した信号をニューラルネットに入力し、その教師信号を計算機上で計算し、該ニューラルネットワークを用いて推定するものがある。これは生体から発生する磁界によって、活動電流源の位置推定をリアルタイムで行うことが可能で、実時間表示が可能な有用な装置であった。そのような従来例としては、例えば特許文献1記載の技術がある。
【0003】
また、生体の表面に垂直な方向の磁界データから暫定的に大まかに生体活動源を推定する第一段階の推定と、前記暫定的な生体活動電流源の位置付近においてのみ、生体内部の導電率を設定した精密モデルに対して三方向の磁界データを用いて推定を行うようにしたものであり、精密計算は第一段階で推定された位置のみであるから計算量が少なく、推定時間を短縮できる優れた方法であった。そのような従来例としては、例えば特許文献2等に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平4ー319334号公報
【特許文献2】特開平5−146416号公報
【特許文献3】特開平2−246926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の従来例では、生体磁気イメージング装置においてニューラルネットワークを用いるもので動作原理に関するものであり、その開示内容には実施化する上での技術課題の解決手段の検討が不十分であるという問題点があった。また、前記特許文献2の従来例では、脳を精密モデル化し、その内部に発生する生体活動電流を推定する推定法に関するものであって、他の部位、例えば心臓に関する生体活動電流の推定法については、何等具体的な開示がなされていないという問題点があった。
【0006】
そこで、上記生体磁気計測によって推定された推定電流源を2次元ディスプレイ上に表示する表示方式における具体的な開示を説明する。推定された電流ダイポールの位置、向き、大きさ、深さの内、位置、向きを矢印の位置及び向きで表示し、さらに、大きさ及び深さを上記矢印の大きさ、長さ、縮尺度、明度、彩度、色相の内、2種類のパラメータによって2次元ディスプレイ上に表示するようにしたものである。これに関連するものとしては、特許文献3の技術がある。
【0007】
しかし、上記具体的に開示されている表示方式は、単なる2次元表示にとどまっており、さらに、使用者の便利さや視認性に対する配慮が十分でないという問題があった。本発明の目的は、複数の計測位置の磁場強度の測定が容易、且つ検査者が信号データを正しく読み取れるように、時間特性図を心電図と同じ尺度で比較可能とし、操作の良好な生体磁場計測データの表示方法および印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る生体磁場計測データの表示方法の構成は、表示画面を備えた計算機を用い、被検者の生体内から発せられる磁場を、計測センサで複数の計測位置で計測し、該計測信号を表示装置の画面に表示する生体磁場計測データの表示方法において、前記被検者の計測部位図と前記計測位置を重ね合せて表示することを特徴とするものである。前項記載の生体磁場計測データの表示方法は、前記被検者の計測部位図を、該計算機で、被検者情報もしくは計測条件に従い、該データベースより選択し、表示することを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る生体磁場計測データの表示方法の他の構成は、表示画面を備えた計算機を用い、被検者の生体内から発せられる磁場を、計測センサで複数の計測位置で計測し、該計測信号を表示装置の画面に表示する生体磁場計測データの表示方法において、前記被検者情報および計測条件を同時、且つ同一画面に表示することを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る生体磁場計測データの表示方法のさらに他の構成は、表示画面を備えた計算機を用い、被検者の生体内から発せられる磁場を、計測センサで複数の計測位置で計測し、該計測信号を表示装置の画面に表示する生体磁場計測データの表示方法において、前記計測信号の特性量を等高線図で表示する場合、前記特性量の種類によって該計算機で選定した異なる配色で表示することを特徴とするものである。前項記載の生体磁場計測データの表示方法において、前記計測信号の特性量が正値と負値の両方を取り得る場合に、絶対値の等しい特性量には色度の等しい色を割り当てることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る生体磁場計測データの表示方法のさらに他の構成は、表示画面を備えた計算機を用い、被検者の生体内から発せられる磁場を、計測センサで複数の計測位置で計測し、該計測信号を表示装置の画面に表示する生体磁場計測データの表示方法において、横軸を時間とし該表示尺度を1/25[秒/mm]とし、縦軸を磁束密度とし該表示尺度を所定単位とすることを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る生体磁場計測データの印刷方法の構成は、表示画面を備えた計算機を用い、被検者の生体内から発せられる磁場を、計測センサで複数の計測位置で計測し、該計測信号を印刷する生体磁場計測データの印刷方法において、前記請求項6の表示画面で所定の指定操作をすることにより、該請求項6で表示された生体磁場計測データを、横軸の時間送り印刷尺度を1/25[秒/mm]とし、縦軸を磁束密度とし該磁束密度尺度を所定単位で印刷することを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る生体磁場計測データの表示方法のさらに他の構成は、表示画面を備えた計算機を用い、被検者の生体内から発せられる磁場を、計測センサで複数の計測位置で計測し、該計測信号を表示装置の画面に表示する生体磁場計測データの表示方法において、前記被検者情報および信号情報および選択チャンネルで指定した多チャンネルの所定の計測信号の単一波形並びに補助チャンネルに補助情報を同時、且つ同一画面に表示することを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る生体磁場計測データの印刷方法の他の構成は、表示画面を備えた計算機を用い、被検者の生体内から発せられる磁場を、計測センサで複数の計測位置で計測し、該計測信号を表示装置の画面に表示する生体磁場計測データの印刷方法において、前項記載の表示画面で所定の指定操作により、該請求項記載の表示画面を印刷することを特徴とするものである。
【0015】
本発明に係る生体磁場計測データの表示方法のさらに他の構成は、表示画面を備えた計算機を用い、被検者の生体内から発せられる磁場を、計測センサで複数の計測位置で計測し、該計測信号を表示装置の画面に表示する生体磁場計測データの表示方法において、前項記載の表示画面で、所定の指定操作により、選択チャンネルで指定した多チャンネルの所定の計測信号の単一波形の代わりに、単一時間軸に対する多チャンネルの重なり波形を表示することを特徴とするものである。
【0016】
本発明に係る生体磁場計測データの印刷方法のさらに他の構成は、表示画面を備えた計算機を用い、被検者の生体内から発せられる磁場を、計測センサで複数の計測位置で計測し、該計測信号を表示装置の画面に表示する生体磁場計測データの印刷方法において、前項記載の表示画面で所定の指定操作により、該表示画面の重なり波形を印刷することを特徴とするものである。
【0017】
本発明に係る生体磁場計測データの表示方法のさらに他の構成は、表示画面を備えた計算機を用い、被検者の生体内から発せられる磁場を、計測センサで複数の位置で計測し、該計測信号を表示装置の画面に表示する生体磁場計測データの表示方法において、前記計測信号の特性量を表示する場合、心拍数,血圧を合わせて表示することを特徴とするものである。
【0018】
本発明に係る生体磁場計測データの表示方法のさらに他の構成は、表示画面を備えた計算機を用い、被検者の生体内から発せられる磁場を、計測センサで複数の位置で計測し、該計測信号を表示装置の画面に表示する生体磁場計測データの表示方法において、該画面で所定の指示動作により視線方向を設定し、該計算機の演算処理により計測信号から三次元的な等高線図で表示することを特徴とするものである。
【0019】
本発明に係る生体磁場計測データの表示方法のさらに他の構成は、表示画面を備えた計算機を用い、被検者の生体内から発せられる磁場を、計測センサで複数の位置で計測し、該計測信号を表示装置の画面に表示する生体磁場計測データの表示方法において、該計測信号の波形表示開始時刻を表示することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の構成によれば、複数の計測位置の磁場強度の測定が容易で、且つ検査者が信号データを正しく読み取れるように、時間特性図を心電図と同一の尺度で比較可能とし、操作性の良好な生体磁場計測データの表示方法および印刷方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1ないし図12を参照して本発明の実施の形態を説明する。まず、図1を参照して本発明に係る生体磁気計測装置を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る生体磁気計測装置の概略構成図である。
【0022】
図1において、生体磁気計測装置Mは、環境磁気雑音の影響を除去するために、磁気シ−ルドル−ム1内に設置される。生体からなる被検体である被検者2は、通常ベッド3に仰向け状態で計測が行われるが、うつ伏せなどの状態で計測が行われる場合もある。被検者の生体面(胸部の場合は、一般に胸壁に平行な面)はベッド3の面とほぼ平行であるとしそしてこの面は直交座標系(x,y,z)のx−y平面と平行であるものとする。被検者の胸部は、曲面であると共に傾いているが、説明を簡単にするためにほぼ平行とする。
【0023】
被検者2の胸部の上方には冷媒である液体ヘリウム(以下、液体Heという)で満たされたデユワ4が配置され、該デユワ4は、図示せず超伝導量子干渉素子(SQUID=Superconducting Quantum Interference Device、以下、SQUIDという)と、該SQUIDに接続された検出コイルとを含む複数個の磁気センサ(図2を参照)を収容している。液体Heは、磁気シ−ルド1の外部にある自動補給装置5から連続的に補給される。
【0024】
該磁気センサの出力は、被検者2から発生して検出コイルにより検出される生体磁場の強度(磁束密度と考えることもできる)と特定の関係をもつ電圧を出力し、その出力がFLL(Flux Locked loop)回路6に入力される。このFLL回路6は、SQUIDの出力を一定に保つように、SQUIDに入力された生体磁場(生体磁気)の変化を帰還コイルを介してキャンセルする(これを磁場ロックと呼ぶ)。その帰還コイルに流した電流を電圧に変換することにより、生体磁場信号の変化と特定の関係にある電圧出力を得ることができる。このように帰還コイルを介して検出する方式を取っているので、微弱の磁場を高感度に検出できる。上記磁気センサからの出力電圧は、増幅器・フイルタ−・増幅器(AFA)7に入力され、その出力はサンプリングされて、A/D変換され、計算機8に取り込まれる。
【0025】
計算機8は、パ−ソナルコンピュ−タからなり、適宜なソフトウエア、例えばウィンドウズ95アプリケシヨンが搭載されており、8−1はそのディスプレイ部、8−2はキ−ボ−ド、そして8−3はマウスが示され、これらの操作により該計算機8は各種の処理を行い、必要に応じてディスプレイ部に表示することができる。
【0026】
また、該マウス8−3は、ディスプレイ部8−1の画面上でカ−ソルを移動させて処理対象を選択するのに用いられる。この操作は、キ−ボ−ドを操作することによっても行うことができる。計算機8にはプリンタ9が接続されており、ディスプレイ部8−1で表示された内容を出力用紙に配置して印刷することができる。プリンタは、カラー印刷でも白黒印刷でもよいが、本実施形態ではカラー印刷可能なプリンタが接続されているものとする。
【0027】
AFA7の入力ゲインおよび出力ゲインは調整可能であり、また、AFA7は、第1の基準周波数以下の周波数信号を通過させるロ−パスフイルタ、第1の基準周波数よりも低い第2の基準周波数以上の周波数信号を通過させるハイパスフイルタおよび商用電源周波数をカットするノッチフィルタが含まれている。計算機8は、各種の処理を行うことができ、その処理結果はディスプレイ部8−1に表示することができる。
【0028】
なお、図1で示される前記計算機8を含む構成は、一例を示したものであり、これに限定されるものではない。例えば、タッチパネルを備えたディスプレイを備えたものや、マウスに変えて他の座標指示装置、例えばトラックボールやジョスティック等のポインティングデバイスを使用したものでも差し支えない。また場合によっては公衆電話回線を介して接続される計算機でも差し支えない。
【0029】
SQUIDとしては、例えば1例として直流SQUIDが用いられる。SQUIDに外部磁場が与えられたときに、それに対応する電圧(V)が発生するようにSQUIDには直流バイアス電流(Ibias)が流される。該外部磁場を磁束Φで表すと、VのΦに対する特性曲線、すなわちΦ−V特性曲線は周期関数で与えられる。計測に当っては、それに先立って、FLL回路6のオフセット電圧(VOFF)を調整してΦ−V特性曲線の直流電圧をゼロレベルにする操作が行われる。
【0030】
図2を参照して、磁気センサを説明する。図2は、図1の生体磁場計測装置に用いられる複数の磁気センサの斜視図である。図2に示されるように、複数個の磁気センサ20−1〜20−8、21−1〜21−8、22−1〜22−8、23−1〜23−8、24−1〜24−8、25−1〜25−8、26−1〜26−8および27−1〜は、生体面すなわちx−y平面とほぼ平行な面上にマトリックス状に配置される。
【0031】
該磁気センサ20−1、・・・・27−9の数は任意であるが、図示では、磁気センサのマトリックスは8行8列からなっているから、磁気センサの数は、8×8=64個である。各磁気センサは、図示されるように、その長手方向が生体面すなわちx−y平面に対して垂直な方向(z方向)と一致するように配置されている。なお、この例では、ベッド面と磁気センサーのX−Y面とを平行にしているが、測定精度を高めるには該磁気センサを体に接近させる方が良く傾けるようにすることができる。但し、被検者である人体2は、常に動いているので、人体2に密着させると、この動きが検出部を動かし、かえって高精度の検出が困難となる。
【0032】
該磁気センサ20−1、・・・・27−9の検出コイルには、生体磁場の接線成分(生体面すなわちx−y平面にほぼ平行な成分)を検出するコイルと生体磁場の法線成分(生体面すなわちx−y平面に直交する成分)を検出するコイルがある。該生体磁場の接線成分を検出するコイルとしては、コイル面がx方向およびy方向をそれぞれ向いた2つのコイルが用いられ、また、前記生体磁場の法線成分を検出するコイルとしてはコイル面がz方向を向いたコイルが用いられる。
【0033】
図3を参照して、磁気センサの各々の生体磁場の法線成分Bzを検出するセンサの構成を説明する。図3は、図1の生体磁場計測装置に用いられる磁場法線成分を検出する磁気センサの斜視図である。図3において、超伝導線(Ni−Ti線)で作られたコイル10,11は、そのコイル面がz方向を向くように配置されている。このコイルは、互いに逆向きの二つのコイル10および11の組み合わせからなり、被検者2に近い方のコイル10は検出コイルとされ、遠い方のコイル11は外部磁場雑音を検出する参照コイルとされる。
【0034】
外部磁場雑音は、被検者よりも遠い信号源から生じており、したがって、その雑音信号は検出コイル10および参照コイル11の両方によって検出される。一方、被検者からの磁場信号は微弱であるので、その生体磁場信号は検出コイル10によって検出されるが、参照コイル11ではその生体磁場信号にほとんど感応しない。
【0035】
このため、検出コイル10は生体磁場信号と外部磁場雑音信号とを検出し、参照コイル11は外部磁場雑音信号を検出するから、両コイルで検出された信号の差をとることにより、S/N比の高い生体磁場の計測が可能となる。これらのコイルは、SQUID12を実装した実装基板の超伝導線を介してSQUIDの入力コイルに接続され、これによって、検出された生体磁場信号の法線方向の成分BzがSQUIDに伝達される。
【0036】
図4は、磁気センサの各々の生体磁場の接線成分BxおよびByを検出するセンサの構成を説明する。図4は、図1の生体磁場計測装置において用いられる磁場の接線成分を検出する磁気センサの斜視図である。図示するごとく、接線方向の生体磁場成分検出用の磁気センサでは、平面コイルが用いられる。すなわち、検出コイル10’および10”並びに参照コイル11’および11”は平面コイルからなり、これらは互いにz方向において間隔づけられている第1の平面13および第2の平面14にそれぞれ配置される。これらのコイルは、法線成分用と同様に、SQUID12’および12”の実装基板の入力コイルに接続される。4角柱の互いに直交する2面14,13に、これらのBx成分検出用のセンサおよびBy成分検出用のセンサが貼付けられ、これによってBx成分およびBy成分を検出し得るセンサが形成される。
【0037】
接線成分Bx、Byについては、これを図4に示される磁気センサを用いて検出する以外に、図3の磁気センサで得られた法線成分Bzをx、yについて偏微分して求めてもよい。この場合は一つの磁気センサで接線成分Bx、Byと法線成分Bzとの両方を検出し測定することができる。
【0038】
図5は、図2で示した磁気センサ20−1、・・27−8と被検者2の被計測部である胸部30との位置関係を説明する。図5は、図1の生体磁場計測装置における磁気センサと胸部との位置関係の説明図である。図示されている点は、図2に示されるマトリックス上の行と列との交点、すなわち被検者2の計測点すなわち計測位置を表している。これらの各計測位置をチャンネルとも呼ばれる。図示されるように、この例では、被検者2の頭部から脚部を結ぶ体軸方向をy方向とし、被検者2の横方向をx方向としている。
【0039】
図28は、図5に示すそれぞれの計測位置の生体磁場の測定信号線図である。この測定結果は、各計測位置に対応する磁気センサでそれぞれ検出された信号を基に上述の処理を行うことで得られた時間的に変化する生体磁場波形をマトリックス中に対応するチャンネル毎に示すものである。本例では、心臓の筋肉が発する磁場を検出できる位置に各チャンネルを設けたので、図28の波形は心磁波形を示している。図28に示されるように、チャンネル毎に計測された計測データをチャンネル毎にその位置に対応させて表示する場合をグリッドマップ表示と呼ぶ。図28分図(a)、分図(b)、分図(c)は、それぞれ接線成分Bx、接線成分By、接線成分Bzの心磁波形を示している。
【0040】
図29は、図28の生体磁場測定信号の内、2チャンネルについて計測された接線成分Bxの心磁波形線図である。実線はあるチャンネルの、点線は他のチャンネルの心磁波形を示すものである。心臓の心室が脱分極した時間帯T1つまり収縮期のQRS波でのそれぞれの波形ピークの時間が、tQ、tR、tSとしてそれぞれ示されている。また、心臓の拡張期であるT波の時間帯はT2として示されている。計測されたデータを表示する場合、グリッドマップ表示の他に、行毎にまたは列毎に単一チャンネルのデータを表示する場合を単一波形表示といい、全チャンネルまたは複数のチャンネルのデータを重ねて表示する場合を重ね波形表示とよばれる。
【0041】
上記計算機8は、磁気センサからの出力電圧を取り込み処理し得られた上記心磁波形をさらに演算処理、例えば平均化処理、等磁線図、時間積分図作成の処理をし、計算機8内の記憶装置に格納され、必要に応じて、所定の操作により、ディスプレイ部上に表示することができる。例えば、図29を参照すると、QRS波の立上り部分がしきい値SLと一致した時点から予め定められた時間(tOFF)だけ遡り、その遡った時点t1から予め定められた時間T3だけ経過した時点t2までの間のデータを予め定められた回数だけを加算することが行われる。これが平均化(アベレージング)であり、予め定められた時間T3をアベレージング時間、tOFFをオフセット時間と呼ばれる。
【0042】
また、心磁波形データは、予め定められた時間範囲にわたって積分されてもよい。その時間積分値が等しい点を結んで作られたマップを時間積分図と呼ぶ。また、心磁波形信号値が等しい点を結んで作られたマップを等磁線図と呼ぶ。図30は、図28の測定信号に対応させて特定の時間毎に等磁場線図として表わしたものであり、20msec毎のサンプリング周期の例が示されており、この周期は、任意の周期に変えられることはいうまでもない。
【0043】
なお、各チャンネルは粗く設定されているので、予め等磁線の間隔、つまり磁場強度差を設定して各チャンネル間を直線補間して等磁線を描くことにより、より診断に適した等磁線図を作ることができる。また、図29の心磁波形についていえば、各センサで検出された信号データの時間特性において、時点t1からQRS波のピ−ク位置時点(tR)までの時間を伝播時間と呼び、その伝播時間が等しい点を結んで作られたマップを伝播時間図と呼ばれる。t1時点はさらに、QRS波のピ−ク位置時点を検出し、この時点を基準として決定されてもよい。
【0044】
また、しきい値SLの設定レベルの変更可能である。t1時点については、これを、QRS波の立ち下がり部分がしきい値SLと一致した時点を基準にしてもよい。該計測された生体磁場信号は、生体内の電気的生理現象によってされるものであり、その発生源は、電流双極子モデルによって近似され、その磁場発生源の電流双極子は等磁線上に合成表示することができ、磁場源表示とよばれるものである。前記等磁線図、時間積分図および伝播時間図は、センサの配置されている平面に対応させて再構成されるが、各演算処理による特性量を該平面に垂直な方向に採って3次元マッピングとして再構成することも出来る。
【0045】
上記被検者2の登録からデータ計測までを行い、そのデータ計測の解析表示、印刷は、ディスプレイ部8−1上の表示画面をみながら一連の操作により行われるが、該表示画面の作成および説明をする。図1において、生体磁気信号の計測およびデータ解析は、適宜なソフトを搭載した計算機8によってすべて上記に説明した各解析図表が作成される。この作成時においては、ディスプレイ部8−1に画面を、キーボード部8−2、マウス8−3を操作することにより所望のレイアウトの表示画面が得られる。
【0046】
図1に示されるディスプレイ8−1に表示される所望の基本的なレイアウトの画面を図6に示す。図6は、図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示さ画面の基本的構成図である。図示する如く、図6の表示画面の上方部は、上から順番に配置されたタイトルバ−部801、メニュ−バ−部802およびアイコンが配置されているツ−ルバ−部803が配設されている。
【0047】
上記各部は、表示領域やエリアと考えることもできる。これらの配置は、他の処理目的、例えば被検者の登録や読み出し、磁場の計測、計測デ−タの解析のための処理などにおいても、その操作画面で共通して表示される。これにより使用し易さが増し、計測や処理の時間が短縮できる。
【0048】
基本画面の中央部は、左から右へ順番に配置された被検者情報部804、線図や波形のような解析デ−タが表示される解析デ−タ部805および操作領域部806が配設されている。また、下部は、ステ−タスバ−807であり、これは左側に配置された次の操作に関するガイドメッセ−ジを表示するメッセ−ジバ−部807−1とその右側に配置された日時表示部807−2から構成される。なお、前記メッセ−ジバ−部807−1と前記日時表示807−2を1つの表示領域としてもよい。なお、上記各部は、概略の場所を示し、いずれも詳細な図示が省略されている。
【0049】
この例における基本画面では、常に最上部にこのシステムの名称が表示されるタイトルバ−部801と、このシステムの基本的な操作を行うメニュ−バ−部802、および前記メニューバー部802における使用頻度の高い操作が可能なツ−ルバ−部803が配置されているので、使用者は、操作画面が変わるたびに操作エリアを探す必要がなく、常に操作画面の上部を見れば現在動作中のシステムを知ることができる。しかも、画面の上部は、人が文章を読む場合を想定すると、明らかなように、先ず最初に目を向ける部分であることから、このシステムの操作における基本的な事項を最上部に設けることで、自然な形で使いやすさを向上させている。
【0050】
また、画面の中央部は、その中央にはこの操作画面の主体をなす解析デ−タ部805を大きく設けることで見易さを向上するとともに、その右側にこの操作画面に特有の操作領域部806を設けることで、右手操作における操作画面と操作部の配置と、同様な配置としているので、違和感なく操作を行うことができる。したがって、この操作画面をタッチパネル付きの操作画面に採用しても、操作領域部806を操作する右手が解析デ−タ部805の障害となることがないように配慮されている。
【0051】
また、同様に、解析デ−タ部805の左側に確認機能しかない被検者情報部804が設けられている。被検者情報部804には、計測中の被検者の情報あるいはデータ解析中のデータの情報と被検者の情報が表示されるので、常に計測中の被検者あるいはデータ解析中の信号データを確認しながら、操作を行うことができる。しかも、この左側の位置は、右手操作における最も遠い位置となるのでタッチパネル付きの操作画面に採用しても表示の見易さに影響をきたすことがないよう配慮されている。
【0052】
また、図10に示す如く、解析デ−タ部805および操作領域部806は被検者リストおよびその被検者のデ−タリストが表示されるときだけは、それらによって置き換えられる。被検者情報部804には、被検者リスト画面が表示されているときは、その画面中の被検者リストにおいて、カ−ソルが置かれる被検者の情報が常時表示され、また、解析デ−タ部805には、図12〜14等に示される如く、線図や波形のような解析デ−タが表示されているときは、その表示されている解析デ−タが得られた被検者の情報が常時表示される。
【0053】
これによって、表示されている解析デ−タとその解析デ−タが得られた被検者との関係を明確に知ることができる。このように、このシステムの操作画面においては、メニュ−バ−部802と同様に、常に、被検者情報部804が操作画面の定位置(図示では左側)に表示されているので、使用者は操作画面が変わるたびに、被検者情報エリアを探す必要がなく、常に操作画面の所定位置(左側)を見れば知ることができる。
【0054】
タイトルバ−部801には、図12〜14に示す如く、フレ−ムの名称、具体的には、「Multichannel MCG System」という名称が表示される。該「Multichannel MCG System」が図示上不鮮明であるので画面外に示してある。以下の各図においては同様である。操作領域部806にはボタンやテキストボックスのような操作要素が配置されている。
【0055】
メニュ−バ−部802は、操作メニュ−を選択する部分で、「ファイル(F)」、「被検者リスト(L)」、「デ−タ計測(Q)」、「デ−タ解析(A)」、「オプション(O)」および「ヘルプ(H)」からなり、操作の順序にしたがって配置されている。
【0056】
図7を参照して、画面中のメニュ−部802におけるそれぞれの操作メニュ−の内容を説明する。図7は、図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される操作画面のメニューバー部における操作メニュー説明図である。図7において、これらのメニュ−の内容は、それぞれ対応するメニュ−ボタンをポインターデバイスのカソールで指定しクリックする(以下、単にクリックという)ことによってプルダウンメニュ−として表示される。このため、操作メニューを必要としないときは、前記各メニューを呼び出すためのキーワードのみメニュ−バ−部802にコンパクトに表示しているので、解析データ部や操作領域部等の各作業で必要な表示エリアを広く設定することができる。
【0057】
そして、操作メニューが必要なときは、操作手順にしたがって配列された前記キーワードをメニューバー部802から選択することによって表示して操作指示することができる。この際、前記キーワードは、文字の配列(左から右)に準じて配列されているので、自然な形で操作指示することができる。
【0058】
図7において、「ファイル(F)」のプルダウンメニュ−には、ペ−ジレイアウトダイアログボックス(図示せず)を開いて、ペイジレイアウトをセットする「ペ−ジレイアウト(U)」、印刷前のプレビューのための「プレビュー(V)」、デ−タの印刷のための「印刷(P)」及びMultichannelMCG Systemを終了させる「心磁システムの終了(X)」という項目が含まれている。
【0059】
「被検者リスト(L)」のプルダウンメニュ−には、「被検者リスト(L)」、「被検者削除(P)」、「データ削除(D)」という項目が含まれる。プルダウンメニュ−の「被検者リスト(L)」がクリックされると、図10に示される被検者リスト画面が表示される。
【0060】
また、プルダウンメニュ−の「被検者削除(P)」は、図10の被検者リスト画面上の被検者リスト中のカ−ソルが置かれた被検者を削除するためのもので、それがクリックされると、削除してよいかどうかの確認を行う確認ダイアログボックス(図示せず)が開かれ、削除が必要な場合は、そのダイアログボックス中の「OK」というボタンがクリックされ、削除をキャンセルしたいときは「キャンセル」というボタンがクリックされる。被検者が削除されると、その被検者に関するデ−タリスト中のすべてのデ−タも削除される。
【0061】
「データ削除(D)」は、図10の被検者リスト画面上の被検者リスト中のカ−ソルが置かれた被検者に関するデータのうち、画面の下段に表示されている該被検者のデータを削除するためのもので、それがクリックされると、削除してよいかどうかの確認を行う確認ダイアログボックス(図示せず)が開かれ、削除が必要な場合は、そのダイアログボックス中の「OK」というボタンがクリックされ、削除をキャンセルしたいときは「キャンセル」というボタンがクリックされる。
【0062】
「デ−タ計測(Q)」のプルダウンメニュ−は、「FLL調整(F)」および「データ計測(Q)」という項目が含まれる。プルダウンメニュ−の「FLL調整(F)」が選択されると、後述の図16のフロ−にしたがってバイアス電流Ibias及びFLL回路6のオフセット電圧VOFFが自動的に調整される。FLL調整が実行されている時はそれが終了するまで、操作画面の内容は更新されず、使用者からの入力も一切受け付けない。FLLの調整が完了すると、FLL調整を実行する前の状態に戻る。「データ計測(Q)」がクリックされると、グリッドマップを含むデ−タ計測画面(図12)が表示される。
【0063】
「デ−タ解析(A)」のプルダウンメニュ−は「単一波形表示(W)」、「重ね波形表示(M)」、「グリッドマップ表示(G)」、「等磁線図(B)」、「時間積分図(T)」および「伝播時間図(P)」を含むものである。「単一波形表示(W)」がクリックされると単一波形表示字画面(図18)が、「重ね波形表示(M)」がクリックされると重ね波形操作画面(図20)が、「グリッドマップ表示(G)」がクリックされるとグリッドマップ操作画面(図21)がそれぞれ表示される。
【0064】
また、「等磁線図(B)」がクリックされると等磁線図画面(図23)が、「時間積分図(T)」がクリックされると時間積分図画面(図27)が、「伝播時間図(P)」がクリックされると伝播時間図画面(図26)がそれぞれ表示される。
【0065】
「オプシヨン(O)」のプルダウンメニュ−は「磁場源表示(S)」、「ラインモード(L)」、「塗潰しモード(F)」および「3D表示設定(D)」が含まれる。「磁場源表示(S)」がクリックされると等磁線図を表示する際に計測された磁場を生成したと推定される電流ダイポールを等磁線図上に矢印で表示する。「ラインモード(L)」と「塗潰しモード(F)」は、等磁線図を表示する際にそれぞれ等高線のみの表示と等高線の間を塗潰す表示を指定し、互いに排他的に選択される。また、「3D表示設定(D)」がクリックされると等高線図を3次元的に表示するための視線方向を設定するダイアログボックスが開いて、オペレータからの入力を受け付ける。
【0066】
「ヘルプ(H)」のプルダウンメユ−は、「目次(C)」、「キ−ワ−ドで検索(S)」及び「バ−ジョン情報(A)」を含み、それぞれヘルプウインドウを開いて目次を示すこと、キ−ワ−ドでトピックを検索すること、バ−ジョンダイアログボックスを開くことのために用いられる。
【0067】
ツ−ルバ−部803には、「印刷」(808)、「印刷プレビュー」(809)、「被検者リスト」(810)、「データ計測」(811)、「システム調整」(812)、「単一波形表示」(813)、「重ね波形表示」(814)、「グリッドマッフ゜波形表示」(815)、「等磁線図」(816)、「時間積分図」(817)、「伝播時間図」(818)というアイコンが配置されている。これらは、その詳細な図示は省略されているが、メニュ−の機能とリンクしていて、プルダウンメニュ−の項目の内、使用頻度の高いものを選択することができる。
【0068】
すなわち、「印刷」(808)はファイル(F)」の「印刷(P)]と、「印刷プレビュー」(809)は「ファイル(F)]の「印刷プレビュー(V)」と、「被検者リスト」(810)は「被験者リスト(L)」の「被験者リスト(L)」と、「データ計測」(811)は「データ計測(Q)」の「データ計測(Q)」と、「システム調整」(812)は「データ計測(Q)」の「FLL調整(F)」と、「単一波形表示」(813)は「データ解析(A)」の「単一波形表示(W)」と、「重ね波形表示」(814)は「データ解析(A)」の「重ね波形表示」と、「グリッドマップ波形表示」(815)は「データ解析(A)」の「グリッドマップ波形表示」と、「等磁線図」(816)は「データ解析(A)」の「等磁線図」と、「時間積分図」(817)は「データ解析(A)」の「時間積分図」と、「伝播時間図」(818)は「データ解析(A)」の「伝播時間図」とそれぞれ対応している。
【0069】
このように、アイコンとリンクしているメニュ−については、そのメニュ−をアイコンをクリックするだけで選択することもできる。したがって、使用頻度の高い操作は、解析データ部805に隣接したアイコンをクリックするだけで簡単に操作することができるので、前記メニュ−バ−部802の操作に比べて短時間に、しかも認識し易いアイコンで操作することができる。なお、前記アイコンは利用者によって選択するようにしてもよく、また、利用頻度(回数)に準じて自動的に前記ツ−ルバ−部803に表示するようにしてもよい。
【0070】
以下、図8のフローチャートに従い、システム操作について説明する。図8は、図1の生体磁場計測装置において操作を示すフローチャートである。また、システム調整、被検者選択および登録、データ計測、データ解析の一連の説明には図9から図27を参照して詳細に述べる。
【0071】
図8において、計算機8の電源がONにされると(S−1)、オペレ−テイングシステムが立ち上げられ、計算機に組込まれたプログラム起動アイコンがディスプレイ部8−1に表示される(S−2)。そのアイコンの中からMultichannel MCG Systemのプログラムを選択すると(S−3)操作画面が表示されて操作可能となる。
【0072】
MCGシステムが立ち上がると、前記のような操作画面が表示されるが、本例に係るシステムにおいては、初期画面として図10に示される被検者リスト画面が表示される(S−4)。これは被検者と、該被検者の計測または解析データの関係が極めて重要であるため、このシステムでは被検者情報をキーワードとしてデータ管理していることに起因する。すなわち、計測データや解析データは被検者情報がないと管理ができないためである。
【0073】
このため、このシステムでは、被検者リスト画面において、先ず、被検者を登録または登録されているときは被検者を特定し、次に、新規計測の場合は、計測に移行し、既に計測データがある場合は目的のデータを特定する。なお、本被検者リスト画面に先立ってシステム立ち上げ時の時間待ちの操作画面を備えてもよく、更に本システムの目次的な役割をする操作画面を設けてもよい。
【0074】
被検者の登録から、その登録された被検者のデ−タ計測を行って、その計測されたデ−タの解析を行うまでの一連の操作はディスプレイ8−1に表示される操作画面を見ながら行われる。このため、その一連の操作の説明に先立って、まずその操作画面のレイアウトを説明する。図10に示される被検者リスト画面について説明する。図10は、図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される被検者リスト画面である。その左側は、被検者情報部で占められる。また、その右側全体の上部には被検者リストが、下部にはデ−タリストが表示されるようになっている。被検者リストの項目は、ID(被検者ID番号)、氏名、登録年月日(デ−タ登録された日)、計測回数(デ−タ計測が行われた回数)、生年月日、年齢、身長、体重、コメント(被検者に関するコメント)等が含まれる。
【0075】
右側上部の被検者リストについては、これを縦スクロ−ルバ−でスクロ−ルすることができ、前記被検者リストの項目については、これを水平(横)スクロ−ルバ−でスクロ−ルすることができる。選択された被検者の行は、強調表示される。
【0076】
選択された被検者に関するデ−タリストの項目は、ID、デ−タの種類(生(Raw)デ−タかアベレ−ジング(Averaging)か、サンプリング間隔(デ−タ計測が行われたときの信号のミリ秒単位でのサンプリング間隔)、サンプリング時間(秒単位)、分類(病気の分類情報)、Date及びTime(デ−タ計測が行われた日及び時刻)、コメント(デ−タに関するコメント)等が含まれる。
【0077】
デ−タリストについては、これを縦スクロ−ルバ−でスクロ−ルすることができ、デ−タリストの項目については、これを水平(横)スクロ−ルバ−でスクロ−ルすることができる。選択されたデ−タの行は強調表示される。この被検者リスト画面によれば、被検者リストに各被検者の情報を1行表示する。これにより、上下に配列される各被検者の情報が明確に区分けすることができるので識別性を向上することができるから、たとえば誤って別の被検者を選択する誤操作を軽減することができる。
【0078】
この各被検者の情報は水平(横)スクロ−ルバ−でスクロ−ルすることができる共に、選択された被検者の情報は縦長の被検者情報部に項目毎に上下に配列されるので視認性を損なうことがない。
【0079】
この場合、各被検者のデ−タリストの項目を前後(左右)に移動可能とすることにより視認性をより向上させてもよい。更に、各被検者の情報を1行表示することにより、一度に沢山の被検者を見ることができるので、縦スクロ−ルバ−でスクロ−ルする回数を少なくすることができる。
【0080】
また、被検者リストの中から目的の被検者に関するデ−タを選択したい被検者リストにカーソルを合わせてクリックするだけの簡単な操作で下部のデ−タリストに表示することができる。しかも、被検者リストとデ−タリストが上下に配置されているので、目線移動が少なくできるから、その関連性を認識しやすい。
【0081】
また、前記デ−タリストは、そのエリアの上部にカーソルを移動してドラッグする簡単な操作でその大きさを自由に変えることができるので、デ−タリストのリスト数に合わせて自由にその大きさを設定することができる。
【0082】
被検者リスト画面上の被検者リストの中から所望の被検者の行が選択される(S−5)。この後、フロ−はメニュ−で3つに分岐される(S−6)。前記分岐の一つによれば、「ファイル(F)」というメニュ−の「心磁システム終了(X)」という項目が選択され、この場合は操作画面を閉じる等の終了処理が行われ(S−7)、それによって、システムの立ち下げが行われる(S−8)。その後、計算機8の電源がOFFにされ(S−9)、すべてが終了する。
【0083】
分岐の他の一つによれば、デ−タ解析(S−11)およびデ−タ計測(S−12)が行われる。また、デ−タ解析は、「デ−タ解析(A)」というメニュ−の「単一波形表示(W)」、「重ね波形表示(M)」、「グリッドマップ表示(G)」、「等磁線図(B)」、「時間積分図(T)」、「伝播時間図(P)」という項目のいずれかを選択することにより実行可能である。
【0084】
さらに、デ−タ計測は「デ−タ計測(Q)」というメニュ−の「計測パネル(P)」というサブメニュ−を選択することにより実行可能である。別の被検者あるいは別のデータを選択する場合は、「被検者リスト(L)」というメニューの中の「被検者リスト(L)」という項目を選択することによってS−4に戻ることになる。ステップS−5の被検者選択、ステップS−11のデ−タ解析及びステップS−12のデ−タ解析については、その詳細はそれぞれ図17〜20に関連して以下に更に詳しく説明される。
【0085】
図8のステップS−5における被検者選択のフロ−を図9に示す。図9は、図8のフローチャートにおける被検者選択のフロ−チャートである。被検者選択のフローは、選択すべき被検者の情報が既にシステムに登録されているか否かによって分岐する。もし、選択すべき被検者の情報が未登録の場合には(S−5−1でYESの場合)、マウス8−3を使って、図10の被検者リスト上のカーソルを一番最後の行に移動する(S−5−2)。該一番最後の行は、常に新しい被検者情報を追加して登録するために空行として用意されている。続いて、該空行に対して被検者情報の各欄をキーボード8−2を用いて入力する(S−5−3)。
【0086】
被検者情報の登録のための被検者リストの最後の空行にデータを入力すると、その行の下に、次の登録のために新しく空行が追加される。もし、連続して新しい被検者の情報を登録する場合にはカーソルを1行下にずらして次々に入力すれば良い。もし、すべての入力すべき被検者情報の入力が完了していなければ、(S−5−4)、前記(S−5−2)に戻り、完了していれば、被検者情報を選択する。
【0087】
選択すべき被検者情報が既に登録されている場合(S−5−1でNOの場合)、および該被検者情報の入力が完了した場合(S−5−4でYESの場合)には、選択すべき被検者情報をマウス8−3のボタンをクリックすることによって、被検者リストの中から指定する(S−5−5)。
【0088】
この例では、被検者の名前や住所等の文字入力を除いて、操作画面にプルダウンメニューを表示するなどして入力する複数の入力データまたは操作指示を表示し、その選択対象の中からマウスで特定の前記対象をクリック指示することで入力操作を行うようにしている。これにより、マウス操作でほとんどの操作が可能となるのでキーボードに不慣れな作業者に快適な操作環境を提供できるとともに、入力/操作の時間短縮を図ることができる。
【0089】
前記プルダウンメニューの複数の選択対象は、この装置あるいはその入力/操作状態で入力/操作可能な選択対象が事前に設定され表示されるので誤入力/誤操作を軽減できる。また、この実施例では、入力エリアにカーソルを合わせてキーボードを介して入力することもできるので、操作者の入力の自由度を確保している。
【0090】
また、本例では、キーボードでの文字入力を想定しているが、入力時にキーボードのダイヤログを表示してこれをマウスで操作して入力してもよい。さらに、手書入力ダイヤログを表示して、マウス操作で手書入力するようにしてもよい。さらには、前記ディスプレイ部にタッチパネルを備えて入力/操作を画面に指先または入力ペンを介して操作してもよい。これらにより入力/操作の操作性を格段に向上することができる。
【0091】
図8のステップS−12におけるデ−タ計測のフロ−を図11に示す。図11は、図8のフローチャート中のデ−タ計測のフローチャートである。まず初めに、初期画面として心磁波形のグリッドマップが図12に示されるように表示される(S−12−1)。図12は、図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される全チャンネルデータ計測画面である。図12において、操作領域部では、チャンネル選択、波形モニタのON−OFFのための操作をそれぞれ行うことができ、更に、計測が被検者の正面から行われるかあるいは背面から行われるかを示す方向、信号のサンプリング条件設定、波形表示のスケ−ルの設定が可能である。
【0092】
チャンネルは、8×8の64チャンネルからなり、「全チャンネル選択」ボタンをクリックするか、又はチャンネルマトリックスを対角線に沿って端から端までドラッグすることによって、全チャンネルを選択することができる。また、行単位又は列単位でチャンネルマトリクスをドラッグすれば、チャンネルを行単位又は列単位で選択することができる。
【0093】
いずれにしても、選択されたチャンネルについては、その心磁波形が解析デ−タ部に表示される。行単位又は列単位での選択の場合は、図13のように表示される。図13は、図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される行単位又は列単位で選択されたデータ計測画面である。この場合、選択された波形は時間軸に関してはフルスケ−ルいっぱいに拡大されて表示される。
【0094】
すなわち、64チャンネルすべてが選択されている場合は、図12に示すように解析データ部を上下左右(桝目)に分割してすべてのチャンネル表示を優先させ、行単位又は列単位での選択の場合は、図13のように、解析データ部を上下に分割して時間軸を左右にする見慣れたグラフの形態とすることで視認性を優先させた表示形態としている。
【0095】
波形のモニタについては、「ON」ボタン(右方中段)が押されると、例えば0.5secから2secの間で指定された時間毎に信号の取り込みと波形の更新が繰り返され、被検者の心磁信号がモニタされる。また、「OFF」ボタンが押されると波形の更新が停止する。FLLについては、「Lock」ボタンまたは「Unlock」ボタンをクリックすれば、64個のSQUIDセンサに対して磁場ロックを行ったり、そのロックを解除したりすることができる。その場合、一方の「Lock」または「Unlock」のボタンが押されれば、他方が押されるまでそのままの状態が保たれる。これにより、選択されていない誤動作の状態を回避している。
【0096】
サンプリングの時間(計測時間)及び間隔(スケール)については、逆黒三角印のついた対応テキストボックスをクリックすれば、選択可能な数値のプルダウンメニュ−が開かれ、その中から所望の数字を選択することができる。その選択可能な数字は、時間については、例えば1sec、5sec、10sec、30sec、1min及び2minであり、間隔についてはたとえば0.1msec、0.5msec、1.0msec、2.0msec、4.0msec、5.0msec及び10.0msecである。時間は必要に応じて1sec程度から24h程度までの間で選ばれるようにしてもよい。
【0097】
図示「スケ−ル」ボックス内の「時間」とあるのは、msec単位の時間スケ−ルすなわち水平方向のスケ−ルを、「信号」とあるのは、A/D変換された信号のスケ−ルすなわち縦方向のスケ−ルをそれぞれ意味する。これらについてもサンプリングの時間及び間隔の選択と同様に、対応するテキストボックスをクリックすることによって開かれるプルダウンメニュ−の中から所望の数値が選択される。
【0098】
チャンネルとしては、64チャンネル以外にさらに、例えば16チャンネルの補助チャンネルが用意されていて、その補助チャンネルでは例えば心電波形が得られるようにされてもよい。図26の最下段には、参照チャンネルとしての第10チャンネルの波形が表示されているが、これは、その補助チャンネル中の第10チャンネルで得られた心電波形である。心磁波形は、一般に磁気雑音を含み、一方、心電波形はそのような雑音を含まない。図26は、図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される伝播時間表示画面図である。
【0099】
したがって、表示されている心磁波形を参照チャンネルの心電波形と比較することにより心磁波形に磁気雑音が含まれているかどうかの情報が得られる。もちろん、その心電波形は補助チャンネルではなく、正規の64チャンネルの中の任意のチャンネルから得られるようにしてもよい。また、心電波形以外に脳波、血流波形、血圧波形等が用いられてもよい。更に、妊婦の心電波形とその胎児の心磁波形が比較されるようにしてもよい。
【0100】
また、参照波形としては、1チャンネルの参照波形だけでなく、複数チャンネルの参照波形が表示されるようにしてもよい。更に、参照チャンネルは、生体からの信号だけでなく、保守等を目的とした種々の制御信号を入力するのに用いられてもよい。
【0101】
図12および図13のデータ計測の操作画面の被検者情報部(図6の804)において、被検者情報(ID他)の下に表示されている計測部位76は、被検者の計測部位と計測点との位置関係を表わしている。被検者の計測部位と計測点との位置関係は被検者の年齢、身長、体重、性別などの体格や、胸部表面あるいは背面などの計測方向によって決まる。
【0102】
本例では、図14に示すように、被検者の計測部位と計測点との位置関係を示した描画情報を、被検者の性別、計測方向、身長と体重などの体格情報、計測方向によって引き出し可能なデータベースとして計算機8内に内蔵されて設置されている。図14は、図6の基本的な操作画面における被検者情報部に表示される被検者の計測部位図を生成するためのデータベースである。
【0103】
該データベースから情報を取り出すために、図10の被検者リストの身長、体重などの体格情報、同じく被検者リストの性別、生年月日と計測年月日から計算された年齢および図12または図13における計測の「方向」などの情報が使われる。心臓磁気を計測する場合、体表面と体内部の心臓の位置関係は個人差が大きいため、被検者を表わす図と測定部位との位置関係を表わすパラメータを追加することも考えられる。また、被検者の計測時の写真映像やMRIなどの医療画像を被検者部位として合成することもできる。
【0104】
再び、図11のフロ−チャートの説明に戻る。モニタチャンネルが選択され指定される(S−12−2)。FLLのロックボタンが押されると、すべてのSQUIDの磁場ロックがなされる(ステップS−12−3)。その状態で、計測パラメ−タであるサンプリングの時間と信号の設定、被検者の計測方向の設定がなされる(ステップS−12−4)。被検者の計測方向が入力されると図10の被検者リストの被検者情報と入力された計測方向から、被検者の計測部位図を図13の計測部位データベースから取り出して図12および図13の被検者情報表示部804(図6参照)に計測部位図を表示する。
【0105】
これらの設定については、生体磁場計測装置に、予め用意されている標準の設定値あるいは以前に設定された条件を使うことができ、次回から省略することができる。これにより、毎回条件設定を行う必要がないので設定時間を短縮することができる。なお、前記設定条件について名称等を付して記録し呼び出し可能としてもよい。
【0106】
「計測」ボックスの「開始」ボタンが押されるとデータ計測が開始さる(ステップS−12−5)。計測が開始されると、表示されている信号波形はそのまま固定化される。計測が終了すると、収集したデータを表示して確認する。すなわち図15に示される画面表示がなされ、波形の確認がなされる(S−12−6)。その後、そのデ−タの保存の必要性が判断され(S−12−7)、保存が必要な場合はメニュ−「ファイル(F)」−「保存(S)」が選択されて信号は保存され、当該被検者のデ−タリストに追加される。保存が必要ない場合は保存されない(S−12−8)。
【0107】
そののち、保存が必要ない場合も含めて、計測がもう一度必要かどうかの判断がなされ(S−12−10)、必要ならば、モニタチャンネルが選択され、[データ計測(Q)]メニューの「データ計測(Q)]項目を選択して(S−12−2)以上のステップを繰り返し、必要なければデ−タ計測の全ステップは終了する。図15は、図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に計測終了時に表示される波形確認画面である。なお、図15はチャンネルとして第2列目の行のチャンネルが選択された例が示されている。
【0108】
図15において、解析デ−タ部の最下部には、スクロ−ルボックス261が移動するスクロ−ルバ−262がある。スクロ−ルボックス261は、スクロ−ルバ−262の左右の両端間で移動可能なるもので、そのスクロ−ルボックス261の幅wは時間スケ−ルを表す。そのスクロ−ルバ−262の左右の両端間の時間幅は計測時間を表し、したがって、表示されている波形は、計測時間中に生じる波形のスクロ−ルボックス261の時間スケ−ルwに相当する一部分の拡大された波形である。
【0109】
これにより、操作者は、現在解析デ−タ部805に表示されている波形が計測時間(スクロ−ルバ−262の幅)の中でどのくらいの時間(スクロ−ルボックス261の幅)かを示し、前記波形が計測時間の中で前半を示しているのか後半を示しているのか等を一目で把握することができるので、視認性を向上させることができる。波形表示を別の機会に再現するためには正確な表示開始時刻が必要となるため、スクロールバー262の左にそれを表示している。
【0110】
また、前記スクロールボックス261の位置と解析データ部805の波形を連動させているので、カーソルを前記スクロールボックス261に合わせてドラッグしながら移動させることで、解析データ部805の表示領域を移動させて所定時間の波形を見るようにしてもよい。このようにすれば、所定時間の波形を簡単に確認する等、前記スクロ−ルバ−262を目次的に扱いで計測内容を詳細に確認することができる。
【0111】
図8のステップS−11におけるデ−タ解析のフロ−チャートを図16に示している。図16は、図8のフローチャートにおけるデ−タ解析のフロ−チャートである。前記デ−タ解析は、いろいろな種類の波形や線図を表示して診断に必要な情報を得ようとするもので、図8の「データ解析(A)」メニュ−で分岐の各項目を選択することにより、(S−11−1)種々の種類の波形や線図の画面を選択的に表示することができる。
【0112】
すなわち、「デ−タ解析(A)」の「単一波形表示(W)」を選択すれば図17に示される単一波形画面が(S−11−2)で、「デ−タ解析(A)」の「重ね合せ波形表示(M)」を選択すれば図20に示される重ね波形画面が(S−11−3)で、「デ−タ解析(A)」の「グリッドマップ表示(G)」を選択すれば図21に示されるグリッドマップ波形画面が(S−11−4)で、「デ−タ解析(A)」の「等磁線図(B)」を選択すれば図22、図23、図24に示される等磁線図画面が(S−11−5)で、「デ−タ解析(A)」の「伝播時間図(P)」を選択すれば図26に示される伝播時間図画面が(S−11−6)で、そして「デ−タ解析(A)」の「時間積分図(T)」を選択すれば図27に示される時間積分図画面が(S−11−7)で、それぞれ表示される。また、「ファイル(F)」の「心磁システムの終了(X)」を選択すれば、システムが終了する。
【0113】
前記それぞれの画面において、図6のツールバー部803上に配置されたアイコン813〜818をクリックすれば、そのクリックによって指定された波形または線図の表示画面が代わって表示される。図16のフローチャートで、S−11−1において、分岐の部分を「メニュ−で分岐」のみに記載せずに、「メニュ−又はアイコンで分岐」としたのはそのためである。
【0114】
したがって、本例によれば、前記図8のフローチャートで、メニュ−を選択することなく、前記ツールバー部803にあるアイコンボタン813〜818をクリックするだけで多様な解析データが得られるので、操作時間の短縮が図れると共に、誤操作を軽減して操作性を向上することができる。
【0115】
図17、図20および図21の時間波形表示画面を説明する。図17は、図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される単一波形画面、図20は、図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される重ね波形画面、図21は、図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示されるグリッドマップ画面である。図示する操作領域において、「スケ−ル」ボックス内の磁束密度とあるのは、ゼロレベルを基準としたプラス側及びマイナス側のフルスケ−ルの値(単位はピコテスラ(pT))であり、その値はそのテキストボックスの三角黒ボタンをクリックすることにより、開かれるプルダウンメニュ−で選択される。
【0116】
図22〜24、図26および図27において、「表示成分」ボックス内のラジオボックスをクリックすることにより、法線成分の波形又は接線成分の波形を選択して画面表示することができる。
【0117】
図17に示される単一波形表示画面によれば、解析データ部に上下に配列表示される各チャンネルの波形の形状や大きさを比較することができる。同様に、図20の重ね波形表示画面によれば、図17に示される上下に配列された単一波形が重ねて表示され、その波形の形状や大きさを比較することができる。前記図17に示す単一波形表示画面を表示している時に、メニューバー部802の「ファイル(F)」メニューの「印刷(P)」項目を選択すると、図18で示されるレポートが出力される。図18は、図17の単一波形表示の印刷レポートである。このレポートにおいて、被検者情報74、信号情報75および計測部位76は、図17の単一波形表示画面に表示されている情報に対応している。
【0118】
図18に印刷される磁場波形51を詳細に示したもの一部が図19に示されている。図19は、図18の心磁波形の印刷出力の尺度を示す線図である。この心磁波形を通常よく用いられる心電図と整合性を持たせたものである。図18に示されるレポートには、9本の磁場波形が印刷されているが、各々の磁場波形51は、図19に示される格子模様の上に描画される。この格子模様は、縦横1mmの正方形からなり、この正方形が縦横5コずつ集まり、その境界は太線で書かれている。図19の横軸は、時間軸を表わしており、1mm四方の正方形の一マスは0.04秒、縦軸は、磁束密度を表わしており、一マスは1[pT](ピコテスラ)である。
【0119】
図22を参照して、図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される等磁線の色分け表示を説明する。図22は、図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される等磁線図である。図22において、解析デ−タ部の右端には縦に細長の磁場強度指標ボックス310が配置されている。その磁場強度指標ボックスは互いに色の異なる12個の区画に区切られている。これは、図22に示される等磁線図画面の各シマ模様で示される磁場の強度範囲を色の種類で区別することで視覚的な(色彩的な)認識性を向上させるようにしたものである。
【0120】
すなわち、その磁場強度指標ボックス310の長手方向の中心位置311は、磁場強度がゼロの位置で、その中心位置よりも上方の区画を中心位置に近い順番に第1〜第6区画とそれぞれ呼ぶことにすれば、たとえば第1区画は0〜2pTの磁場強度範囲に、第2区画は24pTの磁場強度範囲に、第3区画は4〜6pTの磁場強度範囲に、第4区画は6〜8pTの磁場強度範囲に、第5区画は8〜10pTの磁場強度範囲に、そして第6区画は10〜12pTの磁場強度範囲にそれぞれ対応している。
【0121】
中心位置よりも下方の区画についてもまったく同じである。ただし、中心位置よりも上方の区画はプラス方向の磁場強度を、下方の区画はマイナス方向の磁場強度を表している。図22に示される等磁線図は、磁場強度指標ボックス310内の磁場強度範囲と色との対応関係の定めにしたがい、磁場強度に応じて色分け表示される。なお、色として、磁場強度のプラス側を暖色系、マイナス側は寒色系とし、中心部を黄色とするようにしてもよい。これにより、磁場の強弱を色彩的に認識することができるので視認性を向上することができる。
【0122】
本例では後述の図26の伝播時間図および図27の時間積分図も同様な等高線図によって生体磁気の特性量を表示しているため、上記等磁線図と同位置配色で表示してしまうと、表示している特性量が分りにくいため、表示する特性量によって、以下の説明のように配色を変えている。
【0123】
画面に表示される色は、RGBつまり赤緑青の三色を合成して生成されている。RGBの各色の強度を0から100で表わし、例えば、RGB値が(0,0,0)ならば黒、(100,100,100)ならば白、(100、0、0)は完全な赤、RGB値が(50,0,0)の時は明度が(100、0,0)の半分の赤とする。このとき本例では、等磁線図の最大値を(100,20,20)の明るい赤色、最小値を(40,40,100)の紫の入った青、0値を(100,100,90)の象牙色とし、時間積分図では、それらを各々(100,20,67)のピンク色に近い赤、(20,57,100)の緑が入った青、(90,100,90)の淡い緑色、伝播時間図の最大値を(100,20,20)の明るい赤、0値を(97,97,97)の薄い灰色とした(伝播時間図では0値が最小値となる)。最大値と0値あるいは最小値と0値の中間値の特性量の色は最大値のRGB値と0値のRGB値の間を線形保管して求める。
【0124】
上記の配色によれば絶対値の等しい特性量に相当色は、正値の場合には暖色系、負値の場合には寒色系の色となるが色度は等しくなる。ここで色度というのはその色の見えかたと同じ見え方をする灰色の明るさとし、色度が等しいということはそれらの色が同じように目立って写るということになる。
【0125】
等磁線図および時間積分図は、正の値および負の値はほぼ同じ値域を持つため、正負の色度を揃えることによって特性量の強度によって同じ見え方になるため、それらの分布を正確に理解しやすくなる。また表示内容を白黒のディプレイ装置で表示させた場合、あるいは白黒のレーザープリンタによって印刷した場合に絶対値の等しい特性量は同じ濃さの灰色で印刷されるため、特性量の分布を正確に読み取ることが出来る。
【0126】
この例によれば、解析デ−タ部の近傍に磁場強度指標ボックス310を設けたので、比較対象の色、すなわち、マップに付された色と磁場強度指標ボックス310の所定の色とを目線移動を大きく移動させることなく比べながら確認することができるので、前記磁場の強弱のレベルと色との関係を明確に判断することができる。なお、この実施例では、磁場強度指標ボックス310を解析デ−タ部の右端に設けているが、解析デ−タ部の近傍であればよく、例えば、上部、下部、左側でもよい。
【0127】
図22において、「再構成パラメ−タ」ボックス内の「マップ数」とあるのは表示される等磁線図の数を、「最大値」とあるのは磁場強度指標ボックス310の両端部に相当する磁場強度を、「間隔」とあるのは磁場強度指標ボックス310内の各区画の長さに対応する磁場範囲を意味する。その値については、これを対応するテキストボックスの三角又は逆三角ボタンをクリックして選択することができる。
【0128】
解析デ−タ部の最下段には参照チャンネルの心電波形と2個のマップ時刻選択用カ−ソル311及び312が表示されている。その2個のマップ時刻選択用カ−ソル311及び312間には間隔が同じ分割線が表示され、この線の数はマップ数選択によって選択されたマップの数と一致する。
【0129】
また、2個のマップ時刻選択用カ−ソル311及び312はその位置を独立に左右方向に移動可能で、その移動によってそのカ−ソル間の間隔が変わると、分割線の間隔も変わるが、分割線の間隔は常に等間隔である。もちろん、各分割線にカーソルを備えて1本1本別々に設定するようにしてもよい。
【0130】
図22では、表示されている等磁線図の数は16個であるが、これらの線図は参照チャンネルの波形上の分割線が位置する時点での線図であり、各マップについては、該マップが何時の時点のものであるかが分かるようにその時刻も表示される。これにより操作者は、現在解析デ−タ部に表示されているマップが解析時間(参照チャンネルの波形の幅)の中でどのくらいの範囲(2個のカ−ソル311と312の幅)を示し、前記マップが示す範囲が解析時間の中でどこの範囲なのか等を一目で把握することができるので、視認性を向上させることができる。
【0131】
また、前記マップが示す範囲を2個のカーソルをマウス操作で簡単に移動させることで設定できるので操作が容易である。更に、各分割線の間隔を自由に設定するようにすれば、疑問のある部分を密にして他の部分を疎にする等、操作者に多様な解析環境を提供できる。
【0132】
図23を参照して他の等磁線図を説明する。図23は、図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される他の等磁線図である。また、図23の右端の操作領域部にある「電流方向」のチェックボックスをクリックしてチェック印を表示すると、等磁線図上には矢印が表示される。この矢印が表示された等磁線図をアロ−マップと呼ばれる。矢印については、その位置は、チャンネルの位置(磁気センサの位置)、長さは、磁場の強度、そして方向は、磁場の方向を電流の方向に変換した場合のその電流の方向をそれぞれ示している。
【0133】
また、等磁線図は、2次元的な等高線図と図24に示す3次元的な立体図によって表示することができ、操作領域806の表示方法の2Dおよび3Dラジオボタンによって切り替えることで、表示することができる。つまり、2Dラジオボタンが押されると等磁線図として、図22および図23で示される2次元的な等高線図が表示される。また、3Dラジオボタンが押されると、図24に示される立体図が表示される。図24は、図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示されるさらに他の等磁線図である。
【0134】
図25を参照して、三次元的立体図を合成するための視線方向の設定ダイアログを説明する。図25は、等磁線図の三次元表示の視線方向を設定するためのダイアログボックス図である。図25において、3D表示の設定ダイアログは、メニューバー部803の「オプション(O)」メニューの「3D表示設定(D)」項目をマウス8−3で選択し、クリックすることによって開かれる。
【0135】
通常、等磁線図の立体図は、図1の生体磁場計測装置システムにおいて、検査者が被検者2をベッド3にのせて、デュア4の下の測定可能な位置に設定するため、被検者の右側に立って腰部付近から被検者の胸部を見下ろした角度で作成されたものが理解しやすい。ところが、磁気シールドルーム1の設置条件によってベッド3とデュア4が左右対称に設置される場合があり、また、立体図の凹凸の状態を確認する場合のために立体図を合成するための角度は設定可能でなければならない。
【0136】
3D(3次元)表示の設定ダイアログの上部には、デュア4とベッド3の配置図が示され、視線方向の角度がどのように定義されているかを示している。同下部には視線方向を定めるための2つの角度パラメータを受け付けるテキストボックスが配置されている。図25に示す設定ダイアログで入力された値は、同様の操作によって変更されない限り、それ以降の操作において有効となる。
【0137】
図26を参照して、伝播時間操作を説明する。図26は、図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される伝播時間表示画面である。図26において、伝播時間の起点位置の変更は参照波形上で移動するカ−ソル321の位置を変えることによって可能であり、カ−ソル321の位置の変更は、そのカ−ソルをマウスを用いてドラッグすることにより可能である。伝播時間図の表示も2Dおよび3Dラジオボタンによって等磁線図も同様に2次元の等高線表示と3次元の立体表示を切り替えることが出来る。
【0138】
図27は、時間積分図操作を説明する。図27は、図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される時間積分表示画面である。図27には、2つの時間積分図と1つの差分図が表示されている。伝播時間図の「差分表示」は、チェックボックスをクリックして、チェック印を表示することで簡単に表示することができる。「差分表示」がチエックされると、参照波形上に4つのカ−ソル331〜334が現れ、更に図示のように上方左右に2つの時間積分図が、下方左側に差分図がそれぞれ表示される。
【0139】
二つの時間積分図は心磁波形を、参照波形上でカ−ソル331及び332並びにカ−ソル333及び334を用いてそれぞれ設定された100msec〜140msec及び180msec〜240msecという時間範囲に亘って積分した値に基づくもので、それぞれの時間範囲はカ−ソル331及び332並びにカ−ソル333及び334をマウスを用いてそれぞれドラッグすることで変えられ得る。
【0140】
差分図は、二つの時間積分図の差を表すものである。チェック印がない場合は、カ−ソルについては2個のカ−ソル(たとえばカ−ソル331及び332)だけが現れ、時間積分図については1つの時間積分図だけが表示される。もちろん、積分時間の変更は、カ−ソルの位置を変えることによって可能である。このように、この本例によれば、「差分表示」にチェック印をクリックすることにより、次の操作を促す2組のカーソルが表示されるので、操作の迷いを与えず操作時間の短縮が図れ、しかも、前記2組のカーソルをマウスで移動させることで時間範囲を簡単に設定することができるから操作性を向上することができる。時間積分図の表示も2Dおよび3Dラジオボタンによって等磁線図も同様に2次元の等高線表示と3次元の立体表示を切り替えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の一実施形態に係る生体磁場計測装置の概略構成図である。
【図2】図1の生体磁場計測装置に用いられる複数の磁気センサの斜視図である。
【図3】図1の生体磁場計測装置において用いられる磁場の法線成分を検出する磁気センサの斜視図である。
【図4】図1の生体磁場計測装置において用いられる磁場の接線成分を検出する磁気センサの斜視図である。
【図5】図1の生体磁場計測装置における磁気センサと被検者の胸部との位置関係の説明図である。
【図6】図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される表示画面の基本的構成図である。
【図7】図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示画面のメニュ−バ−部における操作メニュ−説明図である。
【図8】図1の生体磁場計測装置において操作を示すフロ−チャートである。
【図9】図8のフロ−チャートにおける被検者選択のフロ−チャートである。
【図10】図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される被検者リスト画面である。
【図11】図8のフロ−チャート中のデ−タ計測のフロ−チャートである。
【図12】図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される全チャンネルのデータ計測画面である。
【図13】図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される行単位または列単位のデ−タ計測画面である。
【図14】図6の基本的な表示画面における被検者情報部に表示される被検者の計測部位図を生成するためのデータベースである。
【図15】図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に計測終了時に表示される波形確認画面である。
【図16】図8のフロ−チャートにおけるデ−タ解析のフロ−チャートである。
【図17】図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される単一波形画面である。
【図18】図17の単一波形表示を印刷レポートである。
【図19】図18における心磁波形を出力する印刷出力の尺度を示す線図である。
【図20】図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される重ね波形画面である。
【図21】図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示されるグリッドマップ画面である。
【図22】図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される等磁線図である。
【図23】図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される他の等磁線図である。
【図24】図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示されるさらに他の等磁線図である。
【図25】等磁線図の3次元表示の視線方向を設定するためのダイアログボックス図である。
【図26】図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される伝播時間表示画面である。
【図27】図1の生体磁場計測装置のディスプレイ部に表示される時間積分表示画面である。
【図28】図5に示すそれぞれ計測部位の生体磁場測定信号線図である。
【図29】図28の生体磁場測定信号の内、2チャンネルについての接線成分の心磁波形線図である。
【図30】図28の生体磁場測定信号に対応させて特定時間毎の等磁線図である。
【符号の説明】
【0142】
1…磁気シ−ルドル−ム、2…被検者、3…ベッド、4…デユワ、5…自動補給装置、6…FLL回路、7…増幅器・フイルタ−・増幅器、8…計算機、8−1…ディスプレイ部、8−2…キ−ボ−ド、8−3…マウス、20−1〜20−8、21−1〜21−8、22−1〜22−8、23−1〜23−8、24−1〜24−8、25−1〜25−8、26−1〜26−8及び27−1〜27−8…磁気センサ、10、10’及び10”並びに11、11’及び11”…コイル、12、12’及び12”…SQUID、13及び14…センサ、30…胸部、261…スクロ−ルボックス、262…スクロ−ルバ−、263…表示開始時刻、271…しきい値カ−ソル、273〜275…スライダ−カ−ソル、311、312及び331〜334…カ−ソル、801…タイトルバ−部、802…メニュ−バ−部、803…ツ−ルバ−部、804…被検者情報部、805…解析デ−タ部、806…操作領域部、808…ステ−タスバ−部、807−1…メッセイジバ−部、807−2…日時表示部、808〜814…アイコン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面を備えた計算機を用い、被検者の生体内から発せられる磁場を、計測センサで複数の計測位置で計測し、該計測信号を該画面に表示する生体磁場計測データの表示方法において、該計測信号の特性量を等高線図で表示する場合、該特性量の種類によって該計算機で選定した異なる配色で表示することを特徴とする生体磁場計測データの表示方法。
【請求項2】
請求項1記載の生体磁場計測データの表示方法において、前記計測信号の特性量が正値と負値の両方を取り得る場合に、絶対値の等しい特性量には色度の等しい色を割り当てることを特徴とする生体磁場計測データの表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2007−203098(P2007−203098A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115421(P2007−115421)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【分割の表示】特願2003−206740(P2003−206740)の分割
【原出願日】平成10年3月31日(1998.3.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000233550)株式会社日立ハイテクサイエンスシステムズ (112)
【Fターム(参考)】