説明

生体組織の温熱処置のためのシステム及び方法

温熱処置材料の使用による生体組織を処置するための装置及び方法が提供される。生体の標的組織に注入すべき温熱処理材料は、担体母材、生体の外部から印加される交番電磁場に応答して熱エネルギーを発生するためにはたらく複数の第1の粒子及び、それぞれが芯及び芯を囲むコーティングを有する、複数の第2の粒子を含む。コーティングは、コーティングが溶解して芯が露出されるにしたがい、外部画像化装置における芯の鮮明度が影響を受けるように、あらかじめ設定された温度において熱エネルギーによって溶解する。鮮明度の変化は、材料があらかじめ設定された温度に達したか否かを判定するための標識として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、局所的なハイパーサーミアまたは熱焼灼を誘発することにより、様々なタイプの生体細胞及び組織を処置するための医学的な方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間及び/または動物には、拡張蛇行静脈、乳ガン及び腫瘍のような、様々なタイプの組織関連疾患の問題がおこり得る。そのような疾患の処置における手法の1つに温熱療法がある。温熱療法は組織に、その組織をなす細胞の構造修飾、損傷または破壊を生じさせる温度をかける。温熱療法の一法、ハイパーサーミアは電磁エネルギーを熱エネルギーに変換することができる微小粒子を用いる。そのような粒子は標的組織に送り込まれ、粒子が交番磁場に浸されると、熱エネルギーで悪性細胞を破壊する。温熱療法は、細胞または組織の温度を物理的な細胞破壊がおこる点まで上げることによって、熱焼灼に用いることができる。以降、語句「組織」は総括的に、処置すべき生体部分を指す。
【0003】
ハイパーサーミア及び熱焼灼を誘発する既存の方法は、標的組織/細胞への無線周波数(RF)電流、マイクロ波エネルギー、光エネルギー、超音波エネルギー及び焼灼を用いる。これらの治療様式の全てにおいて、過剰なエネルギーの吸収は、隣接する組織または構造に意図しない損傷及び/または巻き添え損傷並びに望ましくない炭化組織の形成を生じさせ得るから、エネルギー送達及び熱調節は厳密な必須パラメータである。これらの技術のいくつかにおいて一般的な欠点に、大きく、非形状適応型の、電極またはアプリケータ(電極及びアプリケータはエネルギー源から組織にエネルギーを送り込むデバイスである)及び複雑な温度検知/制御方式がある。
【0004】
両側卵管不妊化手術(TS)は別のよく知られた温熱処置手法である。先進国においては、リング、クリップまたは電気焼灼を用いて卵管が物理的に閉塞される、(経腹アプローチを利用する)腹腔鏡法を用いる、永久卵管閉塞が最も普通に行われている。米国では年間で推定700000件の両側TSが実施され、一千百万人の15〜44歳の米国女性が避妊のためにTSに頼っている。卵管不妊化は卵巣ガンのリスクの低下をともなうことも示されている。
【0005】
世界中で用いられ、効率が高いにもかかわらず、経腹アプローチを用いるTSには、大多数の場合に、不便で費用がかかる入院が含まれ、出血、感染、腸穿孔及び全身麻酔への反応のような、合併症のリスクがともなう。少数であるが経子宮頸部管的卵管閉塞具が開発され、経腹不妊化手法の発展し得る代替手法として着実に受け入れられてきている。
【0006】
利用できる卵管閉塞システムは、機械的閉塞法、化学的または熱的に誘発された組織損傷、及びこれらの手法の組合せに依存する。化学剤は、卵管の開口を封止するような瘢痕組織の形成をもたらす、組織損傷を誘発する。この方法の主要な欠点は反復施術が必要なことである。熱閉塞システムは、組織を損傷させ、同じく卵管の開口を封止するような瘢痕組織の形成を誘発するために、加熱法また低温法を用いる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、生体の標的組織に注入すべき材料は、担体母材、外部から生体に印加される交番電磁場に応答して熱エネルギーを発生するためにはたらく複数の第1の粒子及び、それぞれが芯及び芯を囲むコーティングを有する、複数の第2の粒子を含む。コーティングは、コーティングが溶解して芯が露出するにつれて、外部画像化システムにおける芯の鮮明度が影響を受けるように、あらかじめ設定された温度で熱エネルギーによって溶解する。鮮明度の変化は、材料があらかじめ設定された温度に達したか否かを判定するための標識として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】図1Aは本発明の一実施形態にしたがう生体組織の温熱処置のための様々なタイプの材料の内の1つを示す。
【図1B】図1Bは本発明の一実施形態にしたがう生体組織の温熱処置のための様々なタイプの材料の内の別の1つを示す。
【図1C】図1Cは本発明の一実施形態にしたがう生体組織の温熱処置のための様々なタイプの材料の内のまた別の1つを示す。
【図1D】図1Dは本発明の一実施形態にしたがう生体組織の温熱処置のための様々なタイプの材料の内のまた別の1つを示す。
【図2A】図2Aは本発明の別の実施形態にしたがう拡張蛇行静脈に挿入されたカテーテルの簡略な側面図を示す。
【図2B】図2Bは、拡張蛇行静脈の処置中の、図2Aのカテーテルの簡略な側面図を示す。
【図3A】図3Aは本発明の別の実施形態にしたがう拡張蛇行静脈に挿入されたカテーテルの簡略な側面図を示す。
【図3B】図3Bは、拡張蛇行静脈の処置中の、図3Aのカテーテルの簡略な側面図を示す。
【図4A】図4Aは本発明の別の実施形態にしたがうカテーテルの簡略な側面図を示す。
【図4B】図4Bは静脈内に配置された図4Aのカテーテルの簡略な断面図を示す。
【図4C】図4Cは、静脈の処置中の、図4Aのカテーテルの簡略な断面図を示す。
【図5A】図5Aは本発明の別の実施形態にしたがうカテーテルの簡略な側面図を示す。
【図5B】図5Bは子宮の温熱処置に適用される図5Aのカテーテルの簡略な側面図を示す。
【図5C】図5Cは本発明の別の実施形態にしたがう図5Bの子宮の処置ステップを説明するフローチャートを示す。
【図5D】図5Dは本発明の別の実施形態にしたがう図5Bの子宮腔への温熱処置材料注入ステップを説明するフローチャートを示す。
【図6A】図6Aは本発明の別の実施形態にしたがうカテーテルの簡略な側面図を示す。
【図6B】図6Bは子宮の温熱処置に適用される図6Aのカテーテルの簡略な側面図を示す。
【図7A】図7Aは本発明の別の実施形態にしたがう温熱処置のためにカテーテルが挿入されている人間の乳房の簡略な断面図を示す。
【図7B】図7Bは本発明の別の実施形態にしたがう図7Aの人間の乳房の処置ステップを説明するフローチャートを示す。
【図7C】図7Cは本発明の別の実施形態にしたがう図7Aの人間の乳房への温熱処置材料注入ステップを説明するフローチャートを示す。
【図8A】図8Aは本発明の別の実施形態にしたがう神経組織の処置ステップを説明するフローチャートを示す。
【図8B】図8Bは本発明の別の実施形態にしたがう神経組織の処置ステップを説明するフローチャートを示す。
【図8C】図8Cは本発明の別の実施形態にしたがう神経組織の処置ステップを説明するフローチャートを示す。
【図9A】図9Aは本発明の別の実施形態にしたがう卵管の温熱処置のためにカテーテルが挿入されている子宮の簡略な断面図を示す。
【図9B】図9Bは子宮及び、本発明の別の実施形態にしたがう卵管の温熱処置のためのフェライト材料が入れられている、卵管の簡略な断面図を示す。
【図9C】図9Cは子宮及び、本発明の別の実施形態にしたがう卵管の温熱処置のためのフェライト材料及びプラグが入れられている、卵管の簡略な断面図を示す。
【図9D】図9Dは子宮及び、本発明の別の実施形態にしたがう卵管の温熱処置のためのプラグユニット及びプラグが入れられている、卵管の簡略な断面図を示す。
【図9E】図9Eは本発明の別の実施形態にしたがう卵管の温熱処置のためのプラグの簡略な側面図を示す。
【図9F】図9Fは図9Eのプラグの簡略な端面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明は現在最善に考えられる本発明の実施モードの説明である。本説明は、本発明の範囲は添付される特許請求の範囲により最善に定められているから、限定の意味でとられるべきではなく本発明の一般原理を説明する目的でなされているに過ぎない。
【0010】
図1Aは本発明の一実施形態にしたがう生体組織の温熱処置のための材料100を示す。図示されるように、温熱処置材料(または短く、材料)100は担体母材106及び粒子コーティング104が施された粒子(または芯)102を含む。粒子102は生体適合性材料または生体吸収性材料で形成することができ、外部から交番電磁(EM)場で励起されると熱エネルギーを発生することができる。名称を「生体組織の誘導加熱処置のためのシステム及び方法(Systems and methods for inductive heat treatment of body tissue)」とする米国特許出願第11/823379号明細書に開示される装置を、外部交番電磁場を発生するために用いることができる。材料100は、名称を「生体組織を処置するためのシステム及び方法(Systems and methods for Treating Body Tissue)」とする米国特許出願第11/801453号明細書及び名称を「患者の体に粒子を送り込むためのシステム及び方法(Systems and methods for delivering particles into patient body)」とする米国特許出願第11/823380号明細書に開示されるカテーテルまたはプローブのような、ツール内に埋め込まれ、カテーテルを介して人体にすることができる。米国特許出願第11/823379号、第11/823380号及び第11/801453号の明細書はそれぞれの全体が本明細書に参照として含まれる。
【0011】
担体母材106は、生体適合性及び生体吸収性であり、適用のタイプに依存して、液体、ゲル、固体またはこれらのいくつかの組合せとして調合することができる。単体基質106は、抗凝集性、麻酔効果、流動性及び被覆性の助長のような追加特性を提供し、視認化及び他の治療薬を増進する。担体母材106は、例えば、生体吸収性で移植可能な固体を形成するために、ポリグリコール酸のような、高分子を用いて調合することができる。担体母材106内に懸濁する粒子102は、フェリ磁性材料、強磁性材料または超常磁性材料を含むことができる。粒子102の平均粒径は、組織内で高比吸収率(SAR)が誘起されるように、1nm〜100μmである。粒子コーティング104は陰イオン性または陽イオン性であり、1nm厚〜100μm厚の有機化合物または無機化合物を含み、生体適合性を与え、粒子凝集を防止することができる。粒子コーティング104は界面活性剤コーティングをさらに有することができる。
【0012】
材料100は、材料の温度が設計で指定された上限温度をこえることがないように、本質的に自己温度制御性を有する。例えば、粒子102は、施術中に材料の温度がキュリー温度をこえないように、キュリー温度があらかじめ設定された金属合金で形成することができる。キュリー温度は、健康な細胞を損傷させる閾温度より低く、悪性細胞を破壊する閾温度より高い。
【0013】
図1Bは本発明の別の実施形態にしたがう生体組織の温熱処置のための材料110を示す。図示されるように、材料110は担体母材112及びコーティング114が施された粒子(または芯)116を含む。材料110は図1Aの材料100と同様であるが、コーティング114が、人体内で溶解したときに、治療薬としたはたらく物質を含むことが異なる。治療薬は、例えば、ドキソルビシン族、パクリタキセル及びタモキシフェン、並びに患者の処置、回復及び快適(すなわち、傷の治癒、疼痛管理)の助剤の内の1つ以上を含むことができる。
【0014】
図1Cは本発明の別の実施形態にしたがう生体組織の温熱処置のための材料120を示す。図示されるように、材料120は、担体母材122,コーティング126が施された粒子(または芯)124及び造影剤コーティング130が施された造影剤(または芯)128を含む。担体母材122,粒子124及び粒子コーティング126は図1Aのそれぞれの相応コンポーネントと同様であり、したがってこれらのコンポーネントの詳細な説明は簡潔のため繰り返されない。
【0015】
造影剤128は、造影剤として、及び/または超音波、X線透視、MRI及びその他の適する画像化手法の下で鮮明度を向上させるために、役立つ。例えば、造影剤は、X線の透過を遮断して従来のX線像に明るい領域を生じさせ、超音波エネルギー波の超音波源への戻り反射を増進して母材を含む領域の超音波信号強度を高めさせ、あるいはMRI法において励起スピンの緩和時間を変え、よって母材を含む領域の信号強度を高めるかまたは低める。造影剤128による鮮明化/画像化手法の使用により、医療担当者は人体内の粒子の場所を容易に決定することができる。造影剤128は、例えば、ガドリニウムベース材料、メチルキサンチン、またはN-アセチルシスティンで形成することができる。
【0016】
造影剤128は、特定の温度においてコーティング130が造影剤128を放出して目標温度が達成されたことを施術者へ補助として示すであろうような、造影剤コーティング130でコーティングすることができる。あるいは、コーティング130は造影剤の機能を阻止するための二次物質を放出することができる。粒子124及び粒子コーティング126の大きさはそれぞれ、造影剤128及び造影剤コーティング130の大きさと同じ範囲にすることができる。
【0017】
図1Dは本発明の別の実施形態にしたがう生体組織の温熱処置のための材料140を示す。図示されるように、材料140は、担体母材142,コーティング146が施された粒子(または芯)144及び治療薬コーティング150が施された治療薬(または芯)148を含む。担体母材142,粒子144及び粒子コーティング146は図1Aのそれぞれの相応コンポーネントと同様であり、したがってこれらのコンポーネントの詳細な説明は簡潔のため繰り返されない。
【0018】
治療薬148は患者の回復及び快適(すなわち、傷の治癒、疼痛管理)を補助することができる化合物を含む。治療薬148及び治療薬コーティング150は薬物送達剤としてはたらく。治療薬コーティング150は治療効果を最適化するように治療薬148を放出または活性化するであろう。治療薬自体は熱で活性化させることができ、あるいは、例えば37℃より高い温度で効果を強めることができる。粒子144及び粒子コーティング146の大きさはそれぞれ、治療薬148及び治療薬コーティング150の大きさと同じ範囲にすることができる。
【0019】
図1A〜1Dに示される温熱処置材料は粒子の様々な組合せを含み得ることが当業者にが当然である。例えば、材料140は造影剤コーティング130が施された造影剤128を含むこともできる。また、粒子コーティング146はその他の治療物質を含むこともできる。
【0020】
参照数字106,112,122及び142で示されるような、担体母材のための材料は、担体母材の光学特性が温度とともに変わり得るように選択することができる。この特徴は、超音波、X線透視、MRI及びその他の画像化手法を用いる場合に、温度標識として用いることができる。また、担体母材のための材料は、外部静磁場が担体母材に印加されたときに担体母材の粘度が粘弾性固体になる点まで高くなり得るように選択することができる。例えば、金属で形成されて担体母材に入れられた、参照数字102で示されるような、粒子が標的場所内に配され得るように静磁場を標的場所に印加することができる。
【0021】
担体母材106,112,122及び142は、粘度が0.3×10−3〜50Pa・秒の液体の形態とすることができる。担体母材のための材料は、担体母材と担体母材内に懸濁された粒子の間の相互作用が担体母材を標的場所に保持できる、すなわち、参照数字100,110,120及び140で示されるような、温熱処置材料は粘弾性固体の特性を有し得る、ように選択することもできる。磁場を印加することによって、温熱処置材料を処置のための標的場所に維持することができる。
【0022】
担体母材106,112,122及び142は微小腔内への浸透を強めるための作用物質をさらに含むことができ、そのような作用物質は組織上での表面張力を低めるであろう有機化合物(例えば界面活性剤)とすることができる。あるいは、担体母材は組織への密着力を強めるための作用物質をさらに含むことができる。
【0023】
静脈系は管腔網及び心臓への血流の逆流を防止するためにはたらく数多くの静脈弁を有する。これらの弁は(心臓から離れる)一方向だけに血流を向かわせる。拡張蛇行静脈は二尖弁の不全及び/または静脈系の皮静脈の拡張の結果である。損傷管腔の(外科的な、化学的な、またはRFエネルギーによる)結紮、外科的弁修復、別の領域からの静脈切片移植及び弾性支持ホースを用いる脚上げのような既存の処置様式とは異なり、温熱処置材料100,110,120及び140は最小限の侵襲態様で、静脈壁及び静脈弁のような様々なタイプの組織を処置するために用いられる。図2Aは、本発明の別の実施形態にしたがう、拡張蛇行静脈204に挿入されたカテーテル202の簡略な側面図を示す。図2Bは拡張蛇行静脈204の温熱処置中のカテーテル202の簡略な側面図を示す。
【0024】
図2Aに示されるように、カテーテル202は管腔212及び、カテーテルの先端に配置され、管腔の遠端に連結された、バルーン210を有する。医師は、バルーン210が弱化壁体部208の近くに配置されるように、カテーテル202を静脈204に挿入することができる。次いで、(図2A〜2Bには示されていない)管腔212の近端に連結された注入機構を用いることにより、(参照数字100,110,120及び140で示されるような)温熱処置材料が、高分子材で形成されることが好ましい、バルーン210が図2Bに示されるように適切な大きさに膨らむまで、管腔を通してバルーン210に注入される。注入機構の詳細な説明は、先に挙げた米国特許出願第11/823380号明細書に見ることができる。
【0025】
バルーン210が膨らむと、バルーン210内の温熱処置材料に外部交番電磁場が印加され、よって温熱処置材料に入れられた(参照数字102,116,124及び144で示されるような)粒子が電磁場エネルギーを熱エネルギーに変換する。発生した熱エネルギーは、弱化壁体部分208を収縮させて静脈の機能を回復させるために用いることができる。熱エネルギーの印加によって静脈壁208が収縮するにつれて、バルーン210にかかる圧力は、一定で最適な圧力が維持されるようにバルーンを徐々ににしぼませるであろう。
【0026】
バルーン210は静脈系内のいかなる構造にも調和することができ、したがって、弱化壁体部分208及び弁葉206のような、標的組織への最適な熱伝達を与えることができる。また、温熱処置材料は精確な熱エネルギーを送り込むことができ、望ましくない熱損傷、炭化または血液凝固の形成を最小限に抑えることができる。バルーン210及びカテーテル202のさらに詳細な情報は、先に挙げた米国特許出願第11/801453号明細書に見ることができる。
【0027】
図3Aは、本発明の別の実施形態にしたがう、拡張蛇行静脈に挿入されたカテーテル304の簡略な側面図を示す。図3Bは拡張蛇行静脈の温熱処置中のカテーテル304の簡略な側面図を示す。図示されるように、カテーテル304は第1のセットのバルーン302a,302b及び第2のセットのバルーン308a,308bを有する。第1のセットのバルーン302a,302bはカテーテル304に形成された管腔306に連結される。第2のセットのバルーン308a,308bは、第1のセットのバルーンが管腔306に連結される態様と同様の態様で、(図3A〜3Bには示されていない)カテーテル304に形成された別の管腔に連結される。
【0028】
2つのセットのバルーンが膨らむと、第1のセットのバルーン302a,302b内の温熱処置材料に外部交番電磁場が印加され、よって温熱処置材料に入れられた(参照数字102,116,124及び144で示されるような)粒子が電磁場エネルギーを熱エネルギーに変換する。第2のセットのバルーン308a,308bは血流を一時的に遮断し、よって処置中の伝導及び対流による熱損失を最小限に抑えるために、膨らまされる。
【0029】
図3A及び3Bでは、熱エネルギー発生のために2つのバルーン302a,302bしか用いられていない。しかし、本発明の精神を逸脱せずに、その他の適するいかなる数及び形状のバルーンも用いられ得ることが当業者には当然である。例えば、第1のセットのバルーンの代わりに環形バルーンを用いることができる。
【0030】
図4Aは本発明の別の実施形態にしたがうカテーテル400の簡略な側面図を示す。図4Bは静脈406内に配置されたカテーテル400の簡略な断面図を示す。図4Cは静脈406の標的部分408の温熱処置中のカテーテル400の簡略な断面図を示す。
【0031】
図示されるように、カテーテル400はカテーテル400の壁に形成された吸引孔402及びカテーテル400の壁に沿って形成された熱発生器404を有する。吸引孔402はカテーテル400内の管腔401に連結される。カテーテル400は、図4Cに示されるように、温熱処置中の最適な熱伝導のために熱発生器404を標的部分408に確実に密着ことができるように、(図4A〜4Cには示されていない)真空システムに連結することができる。
【0032】
フェリ磁性材料、強磁性材料または超常磁性材料で形成される、熱発生器404が外部交番電磁エネルギーを熱エネルギーに変換する。熱発生器404は、自己温度制御性を有し、標的部分408に送り込まれるエネルギーを制御できるように、調製することができる。熱発生器404の寸法、形状及びパターンは、標的静脈壁部分408及び弁葉206(図2A)のような、標的組織の形状及び大きさに基づいて決定することができる。先に挙げた米国特許出願第11/823380号明細書及び第11/801453号明細書に、熱発生器をもつカテーテルの例が開示されている。
【0033】
カテーテル/熱発生器を静脈406内の所定の位置に配するために、従来の画像化手法(超音波、X線透視、等)を用いることができる。カテーテル400及び熱発生器404はいずれも画像化及び静脈406を通す操縦を補助する材料で形成することができる。
【0034】
人体には数多くの体腔があり、その多くは標的領域の悪性細胞を破壊または不活性化するに十分な熱エネルギーの印加によって有効に処置することができる疾患にかかり得る。例えば、女性の体の子宮腔は、月経がある女性に共通の問題である、異常子宮出血(月経過多)をおこし得る。子宮腔内部の子宮内膜上皮組織の温熱処置を実施するために、参照数字100,110,120及び140で示されるような、温熱処置材料を用いることができる。図5Aは本発明の別の実施形態にしたがうカテーテル500の簡略な断面図を示す。図5Bは子宮、さらに詳しくは、子宮の子宮内膜上皮組織508、を熱的に処置するために適用されたカテーテル500の簡略な側面図を示す。
【0035】
図示されるように、カテーテル500は管腔502,503及びカテーテルの外面に形成されたバルーン504を有する。一方の管腔503は、バルーン504を膨らませるための流体が管腔503を通して導入され得るように、バルーン504と流体流通状態にある。膨らまされると、バルーン504は子宮頸部506を封止し、よって流体/温熱処置材料の子宮腔510外部へのいかなる漏出も防止する。他方の管腔502は様々なタイプの材料の子宮腔510への(または子宮腔510からの)注入(または瀉出)に用いられる。
【0036】
図5Cは、本発明の別の実施形態にしたがう図5Bにおける子宮の処置ステップを説明するフローチャート530を示す。プロセスはステップ532に始まる。ステップ532において、医師は、カテーテル500のような、送達システムを子宮に挿入する。子宮腔510外部への温熱処置材料または流体のいかなる漏出も防止するため、バルーン504が膨らまされる。膨らまされたバルーン504は子宮頸部506に確実に接触し、よって封止を設ける。バルーン504を膨らませるため、例えば、米国特許出願第11/823380号明細書の図1の装置を用いることができる。次いで、ステップ534において、子宮腔510が温熱処置材料100,110,120または140で満たされる。
【0037】
次に、ステップ536において、子宮腔510内に満たされた温熱処置材料に外部交番電磁場が印加される。次いで、温熱処置材料内に含まれる粒子がEMエネルギーを熱エネルギーに変換し、発生される熱エネルギーは子宮内部の子宮内膜組織を焼灼するために用いられる。外部EM場を提供するために、米国特許出願第11/823379号明細書に開示される外部EM発生器を用いることができる。カテーテル500は不用意な加熱を防止するため、好ましくは高分子材で形成することができる。
【0038】
ステップ538において、温熱処置が完了したか否かが判定される。ステップ538への応答がノーであれば、プロセスはステップ536に戻る。そうでなければ、プロセスはステップ540に進む。ステップ540において、医師は管腔502を介する吸引によって子宮腔510から温熱処置材料を取り出す。必要に応じ、ステップ542において、子宮腔510を食塩水で洗うことができる。また、子宮腔内に残るいかなる粒子も処置後数日内に膣を通して除去されるであろう。
【0039】
図5Dは、本発明の別の実施形態にしたがう子宮腔510への温熱処置材料注入ステップを説明するフローチャート550を示す。フローチャート550のプロセスは図5Cのステップ534に対応し、ステップ551に始まる。ステップ551において、子宮腔510外部への温熱処置材料または流体のいかなる漏出も防止するため、バルーン504が膨らまされる。次に、ステップ552において、子宮腔510内のいかなる流体も吸引し、僅かな真空をつくるために、管腔502を通して穏やかな吸引が施される。次いで、ステップ554において、子宮腔510が温熱処置材料で満たされる。続いて、ステップ556において、子宮腔510内に満たされた温熱処置材料が管腔502を介する吸引によって取り出される。ステップ554及び556は吸引/注入サイクルを形成する。
【0040】
ステップ558において、吸引/注入サイクルがあらかじめ設定された回数反復されたか否かが判定される。吸引/注入サイクルは、子宮腔510内部の温熱処置材料による完全な被覆を保証する「圧力スイング」に相当する。温熱処置材料の被覆の標識として、連続する圧力スイングの間に子宮内に送り込まれる温熱処置材料の量及び送達システム内部の圧力を用いることができるであろう。ステップ558への応答がノーであれば、プロセスはステップ554に戻る。そうでなければ、プロセスはステップ560に進む。ステップ560において、温熱処置材料が子宮腔510に注入される。
【0041】
図6Aは本発明の別の実施形態にしたがうカテーテル600の簡略な断面図を示す。図6Bは子宮の温熱処置に適用されたカテーテル600の簡略な側面図を示す。図示されるように、カテーテル600はカテーテル500と同様であるが、カテーテル600はバルーンの代わりに吸引孔602を有し、複数の管腔601が吸引孔に連結されていることが異なっている。カテーテル600が子宮に挿入されると、吸引孔602は子宮頸部の近傍に配置される。子宮腔外部への温熱処置材料または流体のいかなる漏出も防止するため、管腔601を介して吸引孔602に連結された真空システムによって封止を形成することができる。例えば、米国特許出願第11/823380号明細書の図1の装置で、真空をつくることができる。管腔601内の低圧により、子宮頸部の内壁が吸引孔602の周囲でカテーテル600に確実に密着し、よって子宮腔を封止する。
【0042】
図6Bの子宮を処置するためのプロセスはフローチャート530及び5501のプロセスと同様であろうが、ステップ551において、子宮頸部とカテーテル600の間の封止がバルーン504の代わりに吸引孔602を用いることで形成されることが異なっている。したがって、図6Bの子宮を処置するためのプロセスの詳細な説明は簡潔のため繰り返されない。
【0043】
参照数字100,110,120及び140で示されるような温熱処置材料は、人間の乳房の温熱処置を施すために用いることができる。例えば、異形乳管過形成(ADH)がある患者に対し、腺管内乳ガン(非浸潤性乳管ガン(DCIS))は温熱処置材料を用いることで熱的に処置することができる。また、温熱処置材料は乳ガン発生のリスクが高い患者に対して予防処置を施すために用いることができる。図7Aは、本発明の別の実施形態にしたがう、温熱処置のためにカテーテル600が挿入されている人間の乳房702の簡略な断面図を示す。
【0044】
図7Aに示されるように、カテーテル600は熱的に処置すべき乳管704の開口に挿入される。次いで、管腔601を介して吸引孔602に連結された真空システムによりカテーテル600と乳管壁の間の封止を形成することができ、よって乳管704外部への流体/温熱処置材料のいかなる漏出も防止できる。他方の管腔604は乳管704への(または乳管704からの)様々なタイプの材料の注入(または瀉出)のために用いることができる。
【0045】
図7Bは、本発明の別の実施形態にしたがう乳房702の処置ステップを説明するフローチャート710を示す。プロセスはステップ712に始まる。ステップ712において、医師は、乳ガンのような、悪性細胞を有する乳管を同定し、同定した乳管704の開口に、カテーテル600のような、温熱処置材料送達システムを挿入する。次いで、ステップ714において、参照数字100,110,120及び140で示されるような、温熱処置材料で乳管704が満たされる。ステップ714の詳細な説明は以下で図7Cに関連して与えられる。
【0046】
次に、ステップ716において、処置すべき乳管がまだ他にあるか否かについての判定がなされる。ステップ716への応答がイエスであれば、プロセスはステップ718に進む。ステップ718において、温熱処置材料が他の乳管にも注入される。次いで、プロセスはステップ716に戻る。ステップ716への応答がノーであれば、プロセスはステップ722に進む。
【0047】
ステップ722において、乳管704内に満たされた温熱処置材料に外部交番電磁場が印加される。次いで、温熱処置材料内に含まれる粒子がEMエネルギーを熱エネルギーに変換し、発生された熱エネルギーが周囲の異常組織に伝達されて、異常組織を破壊する。外部EM場を提供するために、例えば先に挙げた米国特許出願第11/823379号明細書に開示されるEM発生器を用いることができる。カテーテル600は不用意な加熱を防止するため、好ましくは高分子材で形成することができる。
【0048】
ステップ724において、温熱処置が完了したか否かが判定される。ステップ724への応答がノーであれば、プロセスはステップ722に戻る。そうでなければ、プロセスはステップ726に進む。ステップ726において、医師は乳管を開く。すなわち、乳管が広がって、管腔604を介する吸引による乳管704からの粒子の取り出しが可能になるように、加圧食塩水が乳管に注入される。必要に応じ、ステップ728において乳管704を食塩水で洗うことができる。最後に、ステップ730においてカテーテル600が乳房730から取り出される。
【0049】
図7Cは、本発明の別の実施形態にしたがう乳管704への温熱処置材料注入ステップを説明するフローチャート740を示す。フローチャート740のプロセスは図7Bのステップ714に対応し、ステップ742に始まる。ステップ742において、同定された乳管704に、カテーテル600のような、送達システムが挿入される。また、乳管704外部への温熱処置材料または流体のいかなる漏出も防止するため、管腔601に連結された真空ポンプによって管腔601が排気され、乳管の内壁をカテーテル604に確実に密着させる。次に、ステップ744において、乳管704及び小葉内のいかなる流体も吸引するため及び僅かな真空をつくるため、管腔604を介して穏やかな吸引が施される。次いで、ステップ746において、温熱処置材料で乳管704が満たされる。続いて、ステップ748において、乳管704内に満たされた温熱処置材料は管腔604を介する吸引によって取り出される。ステップ746及び748は吸引/注入サイクルを形成する。
【0050】
ステップ750において、吸引/注入サイクルがあらかじめ設定された回数反復された否かが判定される。吸引/注入サイクルは、乳管704内部の温熱処置材料による完全な被覆を保証する「圧力スイング」に相当する。温熱処置材料の被覆の標識として、連続する圧力スイングの間に乳管内に送り込まれる温熱処置材料の量及び送達システム内部の圧力を用いることができるであろう。ステップ750への応答がノーであれば、プロセスはステップ746に戻る。そうでなければ、プロセスはステップ752に進む。ステップ752において、温熱処置材料が乳管704に注入される。次に、ステップ754において、以降の温熱処置プロセスのために管腔604が閉じられる。
【0051】
当業者には、カテーテル600に形成される吸引孔の寸法及び数が用途に応じて変わる得ることが明らかなはずである。あるいは、複数の吸引孔の代わりに環形吸引孔を用いることができる。カテーテル600の代わりにカテーテル500を用い得ることに注意されたい。そのような場合、カテーテルと乳管の内壁の間の空隙を封止するためにはバルーン504が用いられる。
【0052】
複数の乳管を同時に処置できることに注意されたい。一例として、医師は2つの異なる送達システム(または、等価的に2本のカテーテル)を用いて2本の乳管を満たし、乳房の周囲に電磁場を同時に印加することができるであろう。必要であれば、医師は同時に処置する乳管の数をEM発生器上で選択できるであろう(EM発生器は先に挙げた米国特許出願第11/823379号明細書に開示されている)。EM発生器は様々なタイプの処置サイクルの情報を有することができ、それぞれのサイクルは、持続時間、EM場の強度、等を含む。
【0053】
カテーテル500(または600)内部の圧力をモニタして温熱処置材料の注入システムへのフィードバックを与えることができるであろう。注入システムは先に挙げた米国特許出願第11/823280号明細書に開示されている。例えば、作動圧力範囲を外れた圧力が検出されると、注入器は警告信号をだすかまたは警報を発するであろう。別の例として、注入器はバルブまたはポンプを操作することで圧力を制御して最適作動圧力を維持することができる。また、圧力が安全限界より高くなるかまたは低くなれば、注入システムは処置手順を自動的に中断することもできる。
【0054】
図8Aは、本発明の別の実施形態にしたがう神経組織処置ステップを説明するフローチャート800を示す。プロセスはステップ802に始まる。ステップ802において、医師は適切な手法を用いることで標的神経組織を同定し、その場所を特定する。次いで、ステップ804において、温熱処置材料100,110,120または140が、標的組織の場所に応じて、シリンジ、ニードルまたは、図2A〜7Cに関連して説明したカテーテルのような、適する送達具を用いて標的神経組織に注入される。次に、ステップ806において送達具が処置部位から取り外される。
【0055】
ステップ808において、温熱処置材料に外部交番電磁場が印加される。次いで、温熱処置材料に含まれる粒子がEMエネルギーを熱エネルギーに変換し、発生された熱エネルギーが標的神経組織に伝達されて、その神経組織を破壊する。外部EM場を与えるために、例えば先に挙げた米国特許出願第11/823379号明細書に開示されるEM発生器を用いることができる。次いで、ステップ810において、標的神経組織に関連付けられる疼痛が軽減ないし消失したか否かが判定される。ステップ810に対する応答がノーであれば、プロセスはステップ808に戻る。そうでなければ、プロセスはステップ812に進む。ステップ812において、処置は完了する。
【0056】
神経組織は、その先端に熱発生器が配置されたカテーテル/プローブを用いることで処置することもできる。熱発生器はフェリ磁性材料、強磁性材料または超常磁性材料で形成され、カテーテルの遠端に確実に固定される。外部から印加される交番EM場にさらされると、熱発生器はEMエネルギーを熱エネルギーに変換する。熱発生器を有するカテーテルの詳細な説明は先に挙げた米国特許出願第11/801453号明細書に見ることができる。図8Bは、本発明の別の実施形態にしたがう熱発生器を有するカテーテルによる神経組織処置ステップを説明するフローチャート820を示す。図示されるように、プロセスはステップ822に始まる。
【0057】
ステップ822において、標的神経組織が同定され、その場所が特定される。次いで、ステップ824において、カテーテルの遠端に配置された熱発生器が標的神経組織内またはその近傍に配される。続いて、ステップ826において外部交番EM場が特定の期間熱発生器に印加される。次に、ステップ828において、標的神経組織に関連付けられる疼痛が軽減ないし消失したか否かが判定される。ステップ828に対する応答がノーであれば、プロセスはステップ826に戻る。そうでなければ、プロセスはステップ830に進む。ステップ830において、カテーテルが処置部位から取り出される。次いで、ステップ832において処置が完了する。
【0058】
図8Cは、本発明の別の実施形態にしたがう神経組織処置ステップを説明するフローチャート840を示す。プロセスはステップ842に始まる。ステップ842において、標的神経組織が同定され、その場所が特定される。次いで、ステップ842において、サーモシードまたは熱発生器が外科的に標的神経組織に、永久にまたは短期間(生体吸収性であるかまたは物理的に取り出される)、埋め込まれる。サーモシードまたは熱発生器はフェリ磁性材料、強磁性材料または超常磁性材料で形成され、外部から印加される交番EM場に応答して熱エネルギーを発生する。続いて、ステップ846において外部交番EM場が特定の期間サーモシードまたは熱発生器に印加される。次に、ステップ848において、標的神経組織に関連付けられる疼痛が軽減ないし消失したか否かが判定される。ステップ848に対する応答がノーであれば、プロセスはステップ846に戻る。そうでなければ、プロセスはステップ850に進む。ステップ850において処置が完了する。
【0059】
図1A〜8Cに関連して論じた温熱処置において、病変組織は個々の細胞の温度を致死レベルまで高めることによって処置される。例えば、約40℃から約45度の範囲の温度は病変細胞に回復不能の損傷を生じさせるが、健康な細胞はほぼ46.5℃までの温度にさらされても生き残ることができる。したがって、安全で効果的な温熱処置には精確な温度制御が必要である。図1A〜8Cに関連して論じた温熱処置材料及び熱発生器は、材料温度が設計で指定された上限温度を超過することを防止するため、本質的に自己温度制御性を有する。例えば、温熱処置材料に含まれる粒子及び熱発生器はキュリー温度があらかじめ設定された金属合金で形成することができ、よって温熱処置材料及び熱発生器の温度が施術中にそのキュリー温度をこえることはない。
【0060】
参照数字100,110,120及び140で示されるような、温処置材料は卵管閉塞処置に用いることができる。本発明の別の実施形態において、温熱処置材料によって発生される熱エネルギーは、患者の卵管の一部の細胞構造を変性させ、よって卵管の崩壊及び閉塞を誘発するために用いることができる。この手法は、卵巣からの卵子の子宮への到達を防止し、女性を不妊にする。この手法は、交番磁場エネルギーを熱エネルギーに変換できる種類の材料を用いる卵管の収縮を含む。卵管内のタンパク質は加熱されて変性され、この結果、構造全体の収縮が生じる。熱発生フェライト材料に加えて、卵管の閉塞をさらに助長するための補助具として物理的バリアプラグ材料を用いることができる。
【0061】
図9Aは、本発明の別の実施形態にしたがう卵管904の温熱処置のためのカテーテル902が挿入されている子宮の簡略な断面図を示す。図示されるように、温熱処置材料100,110,120及び140の内の1つ以上を含むことができる、液体900が圧力の下でカテーテル902を介して子宮腔に注入され、よって液体は卵管904もある程度満たし、圧力の大きさにより液体がどの程度卵管に入るかが定まる。カテーテル900は、カテーテル500,506及び600の内の1つと同様とすることができる。満たされてしまうと、特定の領域に局所交番磁場源があてられ、続いてその領域が加熱される。この結果おこる収縮及び熱誘起外傷への免疫応答が管腔の狭窄及び閉塞を生じさせる。
【0062】
図9Bは子宮及び、本発明の別の実施形態にしたがう卵管の温熱処置のための材料906a,906bが入れられている、卵管の簡略な断面図を示す。図示されるように、温熱処置材料100,110,120及び140の内の1つ以上を含むことができる、材料906a,906bはマイクロカテーテルを用いて卵管の中間区画に注入される。(図9Bには示されていない)マイクロカテーテルは、例えば、長く柔軟なチューブを一端に有するシリンジとすることができる。次いで、外部磁場源を用いて、温熱処置材料906a,906b内の粒子があらかじめ定められた温度まで適切な期間持続して加熱される。粒子によって発生される熱エネルギーは、コラーゲン及びその他の基質タンパクの変性による卵管の収縮をおこさせる。さらに、加熱によって生じる外傷は免疫応答も誘発する。そうして誘発された修復機構は卵管を完全に閉じて、患者を不妊にすることができる。
【0063】
図9Cは子宮及び、本発明の別の実施形態にしたがう卵管の温熱処置のための材料910a,910b及びプラグ912a,912bが入れられている、卵管の簡略な断面図を示す。温熱処置材料100,110,120及び140の内の1つ以上を含むことができる、材料910aが専用マイクロカテーテルを用いて初めに卵管に挿入される。次いで、生体用ガラスファイバ及び/または、コラーゲン及びポリグリコール酸、ポリ乳酸、PGLA(ホスホグリコール酸)、等のような、生体吸収性材料でつくられることが好ましい、プラグ912a,912bが材料910aに近接して挿入され、続いて、第2の材料910bのボーラスが挿入される。材料910bは温熱処置材料100,110,120及び140の内の1つ以上を含むことができる。あるいは材料910a,910b及びプラグ912a(または912b)は一体形成することができる。
【0064】
プラグ912a,912bのアスペクト比は、その長軸が必ず卵管に平行に向けられるであろうように決定される。図9Cに示されるように、プラグ912a,912bのそれぞれは2つのフェライト材料910a,910bの間に挟み込まれる(以降、語句「フェライト材料」はEMエネルギーを熱エネルギーに変換できる材料を指す)。卵管への挿入後、プラグ912a,912bは交番磁場にさらされ、フェライト端910a,910bに接している卵管はタンパク質及びコラーゲンの熱変性により収縮する。加熱プロセスが始まると、卵管が上皮細胞で生体用ガラスを包み、よって卵管が閉塞される。プラグ912a,912bの両端のフェライト材料910a,910bは吸収され、マクロファージによって除去されて、肝臓及び腎臓によって体外に排出される。狭窄とさらに免疫応答介在癒合の組合せは卵管の開通性を弱める。プラグ912a,912bは子宮への卵子の通過へのさらなる障壁として作用する。さらに、それぞれのプラグの両側における卵管の狭窄がプラグの移動を防止する。
【0065】
図9Dは子宮及び、本発明の別の実施形態にしたがう卵管の温熱処置のためのプラグユニット913a,913b及びプラグ914が入れられている、卵管の簡略な断面図を示す。プラグユニット913a,913bのそれぞれは2つのフェライト材料の間に配されたプラグを有する。2つのプラグユニット913a,913bの誘導加熱による卵管の収縮が複数の障壁を形成し、卵子の子宮到達確率を低める。また、図9Dに示されるように、フェライト材料でつくられる、プラグ914だけも卵管に挿入される。次いで、外部交番EM場が印加されて、プラグ914が熱エネルギーを発生し、卵管の収縮を誘発する。この手法において、プラグ914は加熱素子としてだけではなく物理的障壁としても作用する。
【0066】
図9Eは本発明の別の実施形態にしたがう卵管の温熱処置のためのプラグ916の簡略な側面図を示す。図9Fはプラグ916の簡略な端面図を示す。プラグ916は卵管に挿入され、外部交番EM源で誘導加熱される。加熱は、卵管を完全に閉じなくともプラグ916を保持するに十分な卵管の収縮がおこるように制御される。プラグ916は成熟した卵子の子宮への通過に対する物理的障壁をつくる。不妊からの復帰が望まれる場合、ルアーロッククリーニングポートをもつニードルホルダのような、適する掴み具によってプラグの内芯922が取り出されて、卵子に対する障害物のない通路が再び開かれる。これは、外部交番EM源でプラグを再び穏やかに加熱しながら、掴み具で内芯を物理的に引き抜くことで達成される。プラグ916は、プラグ916の内芯922を掴むに役立つ開口920aがついたハンドル918aを有する。掴み具は外部EM場に応答しない材料で形成することができる。
【0067】
図9A〜9Fのフェライト材料及びプラグに印加される外部EM場は先に挙げた米国特許出願第11/823379号明細書に説明される装置によって発生され得ることに注意されたい。したがって、EM場発生装置の説明は簡潔のため繰り返されない。
【0068】
上記の説明が本発明の例示的実施形態に関すること及び添付される特許請求の範囲に述べられるような本発明の精神及び範囲を逸脱しない改変がなされ得ることは、もちろん、当然である。
【符号の説明】
【0069】
100,110,120,140 温熱処置材料
102,116,124,144 粒子(芯)
104 粒子コーティング
106,112,122,142 担体母材
128 造影剤
130 造影剤コーティング
148 治療薬
150 治療薬コーティング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の標的組織に注入すべき材料において、
担体母材、
前記生体の外部から印加される交番電磁場に応答して熱エネルギーを発生するためにはたらく複数の第1の粒子、及び
それぞれが芯及び、前記芯を囲み、あらかじめ設定された温度において前記熱エネルギーにより溶解するような、コーティングを有し、前記コーティングが溶解して前記芯が露出されるにしたがって外部画像化システムにおける前記芯の鮮明度が影響を受ける、複数の第2の粒子、
を含み、
前記鮮明度の変化を、前記材料が前記あらかじめ設定された温度に達したか否かを判定するための標識として、用いることができることを特徴とする材料。
【請求項2】
前記コーティングが溶解するにしたがって、前記芯の前記鮮明度が高まることを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記コーティングが溶解するにしたがって、前記芯の前記鮮明度が低下することを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項4】
前記外部画像化システムが、超音波、X線透視及びMRIからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項5】
前記芯が、ガドリニウムベース材料、メチルキサンチン及びN-アセチルシスティンからなる群から選ばれる材料で形成されることを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項6】
それぞれが治療薬で形成された芯及び前記治療薬を囲む治療薬コーティングを有し、前記治療薬コーティングが加熱されると前記治療薬を放出または活性化するように前記治療薬コーティングが適合されている、複数の第3の粒子、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項7】
前記担体母材が、液体、ゲル、固体またはこれらの組合せとして調合されることを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項8】
前記担体母材が生体吸収性材料で形成されることを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項9】
前記担体母材に外部静磁場が印加されると、前記担体母材の粘度が高くなることを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項10】
前記担体母材に外部静磁場が印加されると、前記担体母材が粘弾性固体になることを特徴とする請求項9に記載の材料。
【請求項11】
前記複数の第1の粒子が、フェリ磁性材料、強磁性材料または超常磁性材料からなる群から選ばれる材料で形成されることを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項12】
前記複数の第1の粒子があらかじめ設定されたキュリー温度を有する材料で形成され、前記あらかじめ設定されたキュリー温度が、健康な細胞を損傷させる閾温度よりは低く、悪性細胞を破壊する閾温度よりは高いことを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項13】
前記複数の第1の粒子の平均粒径が1nmから100μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項14】
前記複数の第1の粒子の内の1つ以上が界面活性剤コーティングで囲まれていることを特徴とする請求項1に記載の材料。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【公表番号】特表2011−506317(P2011−506317A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536924(P2010−536924)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/013320
【国際公開番号】WO2009/075752
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(509307392)テサロン メディカル インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】TESSARON MEDICAL, INC.
【Fターム(参考)】