説明

生体組織処理装置

【課題】
薬液の加熱時間により装置の処理能力が落ちることがなく、安全で、電気代を節約できる超音波を用いた生体組織処理装置を提供する。
【解決手段】
固定液タンク2及び、脱水剤タンク3、4、5、6,中間処理剤タンク7、8それぞれにヒーターを設け、通常は無加熱または40℃〜50℃に保温しておき、処理槽1に固定液又は脱水剤又は中間処理剤を注入する一定時間前に注入する液または剤を加熱し約60℃にすることで、加熱時間を必要最小限にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織切片の作製において、固定液、脱水剤、中間処理剤、パラフィンを生体組織に浸透させる生体組織処理装置に関するもので、生体組織切片作製時に超音波を照射することによって迅速かつ高感度な病理組織検体の作製を可能にする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病理診断用の生体組織切片作製には、固定液にホルマリン、脱水剤にアルコール、中間処理剤にキシレンを用い、生体組織のホルマリンによる固定工程からアルコールによる脱水工程、キシレンによる中間処理工程、パラフィンによるパラフィン浸透工程等の工程を経た後、パラフィンの充填を行いパラフィンブロックを作製する。その後パラフィンブロックの薄切を行い、スライドガラスに貼り付けた後キシレンによる脱パラフィン、脱キシレン、脱アルコール等を行い、各種の染色法で染色してカバーグラスをかけるという手順を踏む。
【0003】
近年、組織のホルマリンによる固定工程からアルコールによる脱水工程、キシレンによる中間処理工程、パラフィンによるパラフィン浸透工程等の工程で超音波を照射し、且つこの時の温度を約60℃に保持することで従来よりも短時間で組織診断用の病理組織検体を作製できる用になった。
【0004】
超音波を用いない従来装置では、処理槽、薬液タンク、ロータリ弁、管等必要に応じて保温、加熱の手段が設けられている。
【特許文献1】特願2004−163359
【特許文献2】特公平1−16385
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
常温にある固定液又は脱水剤又は中間処理剤を、処理槽に設けた加熱手段のみで60℃の温度に加熱するには時間を要し、組織の固定からパラフィン浸透までの組織包埋処理時間を遅らせる要因になるため、薬液タンク内でも60℃に保持することが望ましいが、 消費電力が大きくなり、電気代がかかる。また、引火性のある薬液も使用しているため、常に60℃にしておくことは好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決することを目的とし、その手段は固定液、脱水剤、中間処理剤を通常は加熱せず常温もしくは40℃〜50℃に保温し、処理槽へ注入する一定時間前から加熱し、60℃にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の生体組織処理装置では、加熱に要する時間により装置の処理能力が落ちることが無く、必要最小限の時間だけ加熱することから、安全性が高く、且つ電気代を節約できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の生体組織処理装置は、固定液タンク及び、脱水剤タンク、中間処理剤タンクのすべてのタンク、または一部のタンクに加熱出来る手段を設け、処理槽に固定液又は脱水剤又は中間処理剤を注入する一定時間前に注入する液または剤を約60℃に加熱する。
【実施例1】
【0009】
図1は本発明の生体組織処理装置の構成例を示す図であり、この例について詳しく説明する。
【0010】
本発明の生体組織処理装置は処理槽1、固定液タンク2、4基の脱水剤タンク3,4,5,6、2基の中間処理剤タンク7,8、2基のパラフィンタンク9、10、ポンプ11、バルブ12、切り替えバルブ13で構成され、処理糟1と各タンクは、バルブ12と切り替えバルブ13を通して管14で連通している。
処理糟1と各タンクにはそれぞれヒーター15、16、17、18、19、20、21、22、23、24が敷設されている。
【0011】
まず、固定工程では組織処理装置をスタートさせると固定液タンク2に敷設しているヒーター16に通電する。3分後、メッセージがでたら処理槽1に人手で組織をセットし再スタートさせると、切り替えバルブ13を固定液タンク2と繋ぐ。次にバルブ12を開き、ポンプ11で固定液を処理糟1に入れる。処理糟1にはセンサー25が設けてあり、液を検知するとバルブ12を閉じ、ポンプ11を止め、ヒーター16を遮電する。この状態で15分間超音波を照射して組織に固定液を浸透させる。15分後、バルブ12を開き固定液を固定液タンク2に戻す。
【0012】
次の脱水工程1では、切り替えバルブ13を脱色剤タンク3と繋ぎ、バルブ12を開き、ポンプ11で脱水剤を処理糟1に入れる。脱水剤タンク3に敷設しているヒーター17は固定工程のポンプ11を止めてから12分後に通電しており、本工程が始まる3分以上前に通電していることとなる。センサー25で液を検知するとバルブ12を閉じ、ポンプ11を止め、ヒーター17を遮電する。この状態で5分間超音波を照射して組織に脱水剤を浸透させる。5分後、バルブ12を開き脱水剤を脱水剤タンク3に戻す。
【0013】
次の脱水工程2では、切り替えバルブ13を脱水剤タンク4と繋ぎ、バルブ12を開き、ポンプ11で脱水剤を処理糟1に入れる。脱水剤タンク4に敷設しているヒーター18は脱水工程1のポンプ11を止めてから2分後に通電しており、本工程が始まる3分以上前に通電していることとなる。センサー25で液を検知するとバルブ12を閉じ、ポンプ11を止め、ヒーター18を遮電する。この状態で5分間超音波を照射して組織に脱水剤を浸透させる。5分後、バルブ12を開き脱水剤を脱水剤タンク4に戻す。
【0014】
次の脱水工程3では、切り替えバルブ13を脱水剤タンク5と繋ぎ、バルブ12を開き、ポンプ11で脱水剤を処理糟1に入れる。脱水剤タンク5に敷設しているヒーター19は脱水工程2のポンプ11を止めてから2分後に通電しており、本工程が始まる3分以上前に通電していることとなる。センサー25で液を検知するとバルブ12を閉じ、ポンプ11を止め、ヒーター19を遮電する。この状態で5分間超音波を照射して組織に脱水剤を浸透させる。5分後、バルブ12を開き脱水剤を脱水剤タンク5に戻す。
【0015】
次の脱水工程4では、切り替えバルブ13を脱水剤タンク6と繋ぎ、バルブ12を開き、ポンプ11で脱水剤を処理糟1に入るれ。脱水剤タンク6に敷設しているヒーター20は脱水工程3のポンプ11を止めてから2分後に通電しており、本工程が始まる3分以上前に通電していることとなる。センサー25で液を検知するとバルブ12を閉じ、ポンプ11を止め、ヒーター20を遮電する。この状態で5分間超音波を照射して組織に脱水剤を浸透させる。5分後、バルブ12を開き脱水剤を脱水剤タンク6に戻す。
【0016】
次の中間処理工程1では、切り替えバルブ13を中間処理剤タンク7と繋ぎ、バルブ12を開き、ポンプ11で中間処理剤を処理糟1に入れる。中間処理剤タンク7に敷設しているヒーター21は脱水工程4のポンプ11を止めてから2分後に通電しており、本工程が始まる3分以上前に通電していることとなる。センサー25で液を検知するとバルブ12を閉じ、ポンプ11を止め、ヒーター21を遮電する。この状態で5分間超音波を照射して組織に中間処理剤を浸透させる。5分後、バルブ12を開き中間処理剤を中間処理剤タンク7に戻す。
【0017】
次の中間処理工程2では、切り替えバルブ13を中間処理剤タンク8と繋ぎ、バルブ12を開き、ポンプ11で中間処理剤を処理糟1に入れる。中間処理剤タンク8に敷設しているヒーター22は中間処理工程1のポンプ11を止めてから2分後に通電しており、本工程が始まる3分以上前に通電していることとなる。センサー25で液を検知するとバルブ12を閉じ、ポンプ11を止め、ヒーター22を遮電する。この状態で5分間超音波を照射して組織に中間処理剤を浸透させる。5分後、バルブ12を開き中間処理剤を中間処理剤タンク8に戻す。
【0018】
次のパラフィン浸透工程1では、切り替えバルブ13をパラフィンタンク9と繋ぎ、バルブ12を開き、ポンプ11でパラフィンを処理糟1に入れる。パラフィンタンク9に敷設しているヒーター23は常時通電しており、パラフィンを約60℃に保っている。センサー25で液を検知するとバルブ12を閉じ、ポンプ11を止める。この状態で5分間超音波を照射して組織にパラフィンを浸透させる。5分後、バルブ12を開きパラフィンをパラフィンタンク9に戻す。
【0019】
最後のパラフィン浸透工程2では、切り替えバルブ13をパラフィンタンク10と繋ぎ、バルブ12を開き、ポンプ11でパラフィンを処理糟1に入れる。パラフィンタンク10に敷設しているヒーター24は常時通電しており、パラフィンを約60℃に保っている。センサー25で液を検知するとバルブ12を閉じ、ポンプ11を止める。この状態で10分間超音波を照射して組織にパラフィンを浸透させる。10分後、処理終了のメッセージが出、人手で組織を取り出す。
【0020】
処理槽1のヒーター15は常時通電しており、処理槽1を約60℃に保持している。
【0021】
ヒーターに通電するタイミングは実験により決める。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の構成の例を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1 処理槽
2 固定液タンク
3 脱水剤タンク
4 脱水剤タンク
5 脱水剤タンク
6 脱水剤タンク
7 中間処理剤タンク
8 中間処理剤タンク
9 パラフィンタンク
10 パラフィンタンク
11 ポンプ
12 バルブ
13 切り替えバルブ
14 管
15 ヒーター
16 ヒーター
17 ヒーター
18 ヒーター
19 ヒーター
20 ヒーター
21 ヒーター
22 ヒーター
23 ヒーター
24 ヒーター
25 センサー
26 超音波振動子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を使った生体組織切片を作製する処理装置において、固定液タンク及び、脱水剤タンク、中間処理剤タンクのすべてのタンク、または一部のタンクに加熱出来る手段を設け、処理槽に固定液又は脱水剤又は中間処理剤を注入する一定時間前に注入する液または剤を加熱することを特徴とする生体組織処理装置。



















【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−275655(P2006−275655A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92939(P2005−92939)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000146445)株式会社常光 (35)
【出願人】(503052911)
【出願人】(504212057)
【Fターム(参考)】