説明

生体組織補填体製造装置

【課題】 簡易な操作で骨髄液等の採取から生体組織補填体の製造までの作業を行うことができ、ドクターやナース等の作業者の負担を軽減し、かつ、作業時間の短縮により患者にかかる負担をも軽減する。
【解決手段】 先端開口を骨髄腔内に配置される搬送管3a,6,27と、該搬送管3a,6,27内を負圧に吸引する吸引装置8と、前記搬送管3a,6,27の途中位置に配置され、生体組織補填材26を収容する補填材収容部7とを備え、該補填材収容部7が、液体を透過し、細胞の通過を阻止するフィルタ29を吸引装置8側の端部に備える生体組織補填体製造装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、長管骨内に存在する幹細胞等の細胞を採取して生体組織補填体を製造する生体組織補填体製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、患者から採取した骨髄液等に基づいて生体組織を再生する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、患者から採取した間葉系幹細胞を用いて生体内に移植するための生体組織補填体を製造する方法についても開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2002−80377号公報
【特許文献2】特開2003−320019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これら特許文献1,2の方法では、骨髄液等の採取に他の機器を必要とし、また、採取後に容器等を移し替える等して生体組織補填体を製造しなければならないという不都合がある。実際の手術現場において、骨髄液等の採取作業、容器の移し替え作業および生体組織補填体の製造作業を行うことは、作業が繁雑でミスを生じ易く、生体組織補填体が製造されるまでに長時間を要するという問題がある。
【0004】
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、簡易な操作で骨髄液等の採取から生体組織補填体の製造までの作業を行うことができ、ドクターやナース等の作業者の負担を軽減し、かつ、作業時間の短縮により患者にかかる負担をも軽減することができる生体組織補填体製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明は、先端開口を骨髄腔内に配置される搬送管と、該搬送管内を負圧に吸引する吸引装置と、搬送管の途中位置に配置され、生体組織補填材を収容する補填材収容部とを備え、該補填材収容部が、液体を透過し、細胞の通過を阻止するフィルタを吸引装置側の端部に備える生体組織補填体製造装置を提供する。
【0006】
本発明によれば、搬送管の先端開口を骨髄構内に配置し、吸引装置を作動させることで、搬送管内が負圧に吸引され、骨髄腔内の骨髄液等が搬送管を介して骨髄腔外に取り出される。搬送管の途中位置には補填材収容部が配置されているので、搬送管内を取り出されてくる骨髄液等は補填材収容部内に導かれる。補填材収容部に導かれてきた骨髄液等はフィルタによって液体と細胞とに分離され、液体はフィルタを透過して排出され、細胞はフィルタに捕獲されて補填材収容部内に残る。
【0007】
補填材収容部には生体組織補填材が収容されているので、補填材収容部内において生体組織補填材に細胞が付着させられることになり、これにより、生体組織補填体が製造されることになる。すなわち、本発明によれば、搬送管の先端開口を骨髄腔内に配置して吸引装置を作動させるだけで、補填材収容部内に生体組織補填体を製造することができる。
【0008】
上記発明においては、前記搬送管が、先端に切刃を有する略円筒状のカッター部材と、該カッター部材をその軸線回りに回転可能に支持する支持部材とを備えることとしてもよい。
このようにすることで、カッター部材の作動により、切刃によって皮質骨に穿孔し、搬送管の先端開口を骨髄腔内に配置することが可能となる。したがって、皮質骨の穿孔作業も本発明の生体組織補填体製造装置を用いて行うことができ、さらに、作業を簡易にすることができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記カッター部材に、該カッター部材を冷却する冷却装置が備えられていることとしてもよい。
カッター部材によって皮質骨に穿孔する場合、カッター部材が摩擦熱によって加熱されるが、冷却装置の作動によりカッター部材が冷却されるので、穿孔後にカッター部材の内部を通して取り出される細胞が健全な状態に維持される。
【0010】
また、上記発明においては、前記補填材収容部が、搬送管に対して偏心した略円筒状に構成されるとともに、内部に収容された生体組織補填材を、該補填材収容部の軸線回りに回転させる補填材回転機構を備えることとしてもよい。
このようにすることで、補填材回転機構の作動により、補填材収容部内において生体組織補填材を回転させることができ、搬送管を介して搬送されてくる骨髄液を付着させる生体組織補填材の位置を変化させることができる。したがって、比較的大きな生体組織補填材に満遍なく骨髄液等を付着させることが可能となり、細胞が均一に付着した比較的大きな生体組織補填体を製造することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記補填材収容部が、搬送管に対して偏心した略円筒状に構成されるとともに、内部に複数の生体組織補填材を装填可能なロータを回転可能に収容し、該補填材収容部の軸線回りに前記ロータを回転させるロータ回転機構を備えることとしてもよい。
このようにすることで、複数の生体組織補填材をロータに装填し、ロータ回転機構を作動させることにより、搬送管を介して搬送されてくる骨髄液を順次、複数の生体組織補填材に付着させ、簡単な操作で複数の生体組織補填材を製造することが可能となる。
【0012】
上記発明においては、前記補填材収容部の先端側に、該補填材収容部の最大横断面積部において着脱可能に取り付けられるキャップが備えられ、前記搬送管が、前記キャップに取り付けられていることとしてもよい。
このようにすることで、補填材収容部内に生体組織補填体が製造された後は、キャップを取り外すことによって、補填材収容部内から生体組織補填体を容易に取り出すことができる。
【0013】
また、本発明は、皮質骨に骨髄腔内まで貫通形成された貫通孔に接続される接続管と、該接続管内に回転可能に挿入配置され、骨髄腔内に先端を配置される螺旋溝を有するドリル状部材と、該ドリル状部材を回転させるドリル回転機構と、前記接続管の後端に接続され、生体組織補填材を収容する補填材収容部とを備える生体組織補填体製造装置を提供する。
【0014】
本発明により生体組織補填体を製造するには、まず、ドリル状部材を皮質骨表面に接触させてドリル回転機構を作動させることにより、ドリル状部材によって皮質骨に穿孔し、ドリル状部材の先端を骨髄腔内に配置する。あるいは、予め皮質骨に貫通孔を穿孔し、ドリル状部材の先端を骨髄腔内に配置する。この状態で、ドリル状部材の螺旋溝の先端が骨髄腔内に配置されるので、ドリル回転機構を作動させ、ドリル状部材を回転させることにより、螺旋溝に沿って骨髄腔内の骨髄液および海綿骨が骨髄腔内から取り出される。
【0015】
貫通孔には接続管が接続されるので、取り出された骨髄液等は接続管内を搬送されて補填材収容部に到達し、補填材収容部内に収容されている生体組織補填材に付着させられる。これにより、生体組織収容部内に生体組織補填体が製造される。したがって、作業者は、本発明に係る生体組織補填体製造装置の先端部を皮質骨に押し当てるだけ、あるいは皮質骨に形成された貫通孔に接続するだけで、生体組織補填材に骨髄液等が付着した生体組織補填体を製造することができる。
【0016】
上記発明においては、前記補填材収容部内に配置されるドリル状部材に、該ドリル状部材が回転させられることにより、補填材収容部内の収容物を攪拌する攪拌部材が設けられていることとしてもよい。
このようにすることで、ドリル状部材を回転させて骨髄液等を取り出しながら、攪拌部材を補填材収容部内で回転させて、骨髄液等および生体組織補填材の混合物からなる収容物を攪拌することができ、これらが均一に混合された生体組織補填体を製造することができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記補填材収容部の先端側に、該補填材収容部の最大横断面積部において着脱可能に取り付けられるキャップが備えられ、前記接続管が、前記キャップに取り付けられていることとしてもよい。
このようにすることで、補填材収容部内に生体組織補填体が製造された後は、キャップを取り外すことによって、補填材収容部内から生体組織補填体を容易に取り出すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な操作で骨髄液等の採取から生体組織補填体の製造までの作業を行うことができ、ドクターやナース等の作業者の負担を軽減し、かつ、作業時間の短縮により患者にかかる負担をも軽減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る生体組織補填体製造装置1について、図1および図2を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る生体組織補填体製造装置1は、図1に示されるように、略円筒状に形成され、先端に切刃2を有するカッター部材3と、該カッター部材3を回転可能に支持する支持部材4と、カッター部材3に回転力を付与する回転装置5と、カッター部材3の後端に一端を接続されたフレキシブルチューブ(搬送管)6と、該フレキシブルチューブ6の他端に配置された補填材容器(補填材収容部)7と、該補填材容器7、これに接続するフレキシブルチューブ6およびカッター部材3内を減圧するポンプ(吸引装置)8とを備えている。また、カッター部材3には冷却装置9が備えられ、前記フレキシブルチューブ6には、内部に液体10を供給する液体供給部11が接続されている。
【0020】
前記カッター部材3は、略円筒管状に形成された管状部(搬送管)3aと、該管状部3aの先端に配置され、鋭利な尖端を先端方向に向けて周方向に複数配列された切刃2とを備えている。これにより、切刃2の尖端を図示しない被穿孔対象(例えば、長管骨の皮質骨外面)に接触させた状態でカッター部材3をその中心軸回りに回転させることにより、切刃2によって被穿孔対象を削り、被穿孔対象に穿孔することができるようになっている。
【0021】
前記支持部材4は、カッター部材3の長手方向の途中位置に配置され、カッター部材3の周囲を取り囲むように配置される略円筒状部材であって、ベアリング12によってカッター部材3を回転自在に支持している。支持部材4は、作業者が手で持って操作することができるようになっている。
【0022】
前記回転装置5は、支持部材4に固定されたモータ13と、該モータ13および前記カッター部材3にそれぞれ固定され、相互に噛み合う歯車14,15とにより構成されている。支持部材4を把持してモータ13を作動させることにより、歯車14,15を回転駆動してカッター部材3を中心軸回りに回転させることができるようになっている。
【0023】
前記冷却装置9は、冷却液16、例えば、生理食塩水やその他の薬液を貯留する容器17と、該容器17と支持部材4とを接続し、冷却液16を支持部材4に供給する配管18と、カッター部材3の内部に形成された螺旋状の流路19と、前記配管18と流路19とを接続する接続流路20とを備えている。
【0024】
接続流路20は、カッター部材3と支持部材4との間に軸方向に間隔をあけて配置された2つのシール部材21によって密封状態に画定されたリング状空間22と、前記カッター部材3の外面に形成され前記リング状空間22に連通する周溝23とを備えている。周溝23には前記流路19が接続されている。
【0025】
これにより、支持部材4に対してカッター部材3を回転させている状態においても、容器17から配管18、リング状空間22および周溝23を介して流路19内に冷却液16を供給し、該流路19が設けられているカッター部材3を全体的に冷却することができるようになっている。容器17からの冷却液16の供給は、例えば、図示しないポンプにより行うようになっている。
【0026】
また、前記液体供給部11は、例えば、生理食塩水やその他の薬液等の液体10を貯留する容器24と、該容器24と前記フレキシブルチューブ6とを接続する配管25とを備えている。容器24内に貯留されている液体10は、例えば、重力により、あるいは、図示しないポンプによってフレキシブルチューブ6内に供給され、該フレキシブルチューブ6に接続されているカッター部材3内に供給されるようになっている。
【0027】
前記補填材容器7は、略円筒状の生体組織補填材26を収容する略円筒状の容器本体7aと、該容器本体7aの開口部を閉塞するように着脱可能に取り付けられるキャップ7bとを備えている。キャップ7bは前記フレキシブルチューブ6の一端に固定され、容器本体7aは、前記ポンプ8に接続する接続配管(搬送管)27の一端に固定されている。
【0028】
前記キャップ7bは、前記容器本体7aの開口部の外周面に設けられた雄ネジ28aに締結される雌ネジ28bを有している。また、前記キャップ7bは、容器本体7aの最大横断面積部分において該容器本体7aを開閉するように構成されており、容器本体7aから取り外すことによって、容器本体7a内の収容物を容易に取り出すことができるようになっている。
【0029】
容器本体7aの接続配管27への接続口には、液体および気体を透過させ、細胞等の通過を阻止可能なフィルタ29が設けられている。
本実施形態においては、容器本体7aの開口部をキャップ7bにより閉じた状態で、キャップ7bに接続するフレキシブルチューブ6の開口部と、前記フィルタ29が設けられた容器本体7aの接続配管27への接続口とは、いずれも容器本体7aの長手軸中心位置に配置されている。また、補填材容器7内に収容される生体組織補填材26も中央に貫通孔26aを有する円筒状に形成されている。
【0030】
これにより、フレキシブルチューブ6を介して搬送されてきた骨髄液等は、キャップ7bの開口部から補填材容器7内に入ると、主として生体組織補填材26の貫通孔26a内を流動して接続口のフィルタ29により液体と細胞等とに分離されるようになっている。したがって、生体組織補填材26の貫通孔26aには骨髄液内に含まれている細胞等が充填されることになり、これにより生体組織補填体が製造されるようになっている。
【0031】
本実施形態においては、生体組織補填材26は、例えば、βリン酸三カルシウム多孔体からなる円筒状ブロックである。なお、生体組織補填材26の材質はこれに限定されるものではなく、生体適合性を有する任意の材質のものを採用することができる。
【0032】
骨髄液等から細胞等を分離された残りの液体および気体は、ポンプ8により吸引されて接続配管27を介して外部に排出されるようになっている。
なお、図中、符号30は、カッター部材3とフレキシブルチューブ6との間を密封するシール部材である。
【0033】
このように構成された本実施形態に係る生体組織補填体製造装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る生体組織補填体製造装置1を用いて生体組織補填体を製造するには、表皮を切開して長管骨の表面を露出させ、支持部材4を操作してカッター部材3の先端の切刃2を長管骨表面に接触させる。このとき、カッター部材3の基端側はフレキシブルチューブ6に接続されているので、該フレキシブルチューブ6を湾曲させることで、カッター部材3の姿勢を自由に調節でき、長管骨に穿孔したい孔の角度および方向にカッター部材3を位置合わせすることができる。この状態で、冷却装置9および回転装置5を作動させ、カッター部材3の螺旋状の流路19内に冷却液16を流通させた状態で、カッター部材3をその中心軸回りに回転させる。
【0034】
支持部材4に、カッター部材3の先端方向に向かう押圧力を加えることで、カッター部材3先端の切刃2を長管骨に押し付け、切刃2の回転によって長管骨の皮質骨を切削し穿孔することができる。この場合において、皮質骨に対して切刃2が回転させられることで、皮質骨と切刃2との摩擦により摩擦熱が発生するが、カッター部材3の内部の流路19には冷却液16が流通させられているので、カッター部材3が高温状態になることが回避される。
【0035】
そして、切刃2が皮質骨を貫通して骨髄腔内に挿入されると、骨髄腔内に収容されている骨髄液等がカッター部材3の内部に流入してくることになる。この場合に、カッター部材3が高温状態にならないように冷却されているので、カッター部材3の内部に流入した骨髄液が加熱されることが防止され、骨髄液内の間葉系幹細胞の健全性が熱によって損なわれることを防止することができる。骨髄腔内には海綿骨も存在しているが、カッター部材3先端の切刃2が接触することで海綿骨も切断され、カッター部材3を容易に骨髄腔内に進入させることができ、その分、カッター部材3の内部に骨髄液および海綿骨を取り込むことができる。
【0036】
この状態で、ポンプ8を作動させ、接続配管27、補填材容器7、フレキシブルチューブ6およびカッター部材3内を負圧に吸引することにより、カッター部材3の内部に取り込まれた骨髄液および海綿骨をフレキシブルチューブ6を介して補填材容器7内に導くことができる。
【0037】
この場合において、ポンプ8による吸引に先立って、液体供給部11の作動により、カッター部材3の後端から液体10を供給することにより、カッター部材3の内部に取り込んだ骨髄液を薄め、粘性を下げることができる。したがって、その後にポンプ8の作動によりカッター部材3内の骨髄液を吸引することとすれば、骨髄液の流動性を高めて、補填材容器7への導入を容易にすることができるという利点がある。
【0038】
また、骨髄腔内の骨髄液を十分に吸引したい場合には、支持部材4を操作して、骨髄腔内に配されているカッター部材3の姿勢を変更することにより、皮質骨にあけた単一の孔を介して、多くの骨髄液を吸引することができる。したがって、低侵襲で多量の骨髄液を吸引でき、しかも、骨髄液内に含まれている間葉系幹細胞を健全な状態で吸引することができる。
【0039】
このようにして吸引された骨髄液等は、液体供給部11から供給された液体10とともに、低い粘性の流体となってカッター部材3およびフレキシブルチューブ6内を通して補填材容器7内に搬送されてくる。そして、補填材容器7内に入ると、補填材容器7内に収容されている生体組織補填材26の貫通孔26a内を流動し、接続配管27への接続口に配置されているフィルタ29により、骨髄細胞等が捕獲され、他の液体や気体が容器本体7aの外部に排出されることになる。
【0040】
その結果、フィルタ29によって捕獲された細胞等は生体組織補填材26の中央の貫通孔26a内に残留することとなり、これによって、吸引した細胞A等が貫通孔26a内に充填された状態の生体組織補填体31を製造することができる。
そして、生体組織補填体31が製造された後には、図2に示されるように、キャップ7bの容器本体7aへの締結を緩め、キャップ7bを取り外すことにより、補填材容器7内に製造された生体組織補填体31を容易に取り出すことができる。
【0041】
このように、本実施形態に係る生体組織補填体製造装置1によれば、カッター部材3を回転させポンプ8により吸引するだけで、補填材容器7内に生体組織補填体31を製造することができる。したがって、作業者は、皮質骨の穿孔作業、骨髄液等の吸引作業、吸引した細胞の抽出作業、生体組織補填材26への細胞の付着作業等を一度に行うことができ、簡易に生体組織補填体31を製造することができる。また、この際に、複数の容器に入れ替える等する必要がないので、細胞の無駄やコンタミネーションの発生等をより確実に防止することができる。
【0042】
なお、本実施形態においては、フレキシブルチューブ6によりカッター部材3と補填材容器7とを接続することとしたが、これに代えて、図3に示されるように、固定配管32によって接続することにしてもよい。この場合に、固定配管32を短く構成することで、管摩擦を低減し、液体供給部11をなくすことにしてもよい。
【0043】
また、補填材容器7とポンプ8との接続配管27をフレキシブルチューブによって構成することにしてもよい。
また、図4に示されるように、補填材容器7とポンプ8との間に回収容器33を配置し、第1の接続配管27aおよび第2の接続配管27bにより、補填材容器7と回収容器33、回収容器とポンプ8とを接続することにしてもよい。
【0044】
このようにすることで、補填材容器7のフィルタ29により細胞Aを分離された後の液体をポンプ8に通過させることなく取り出すことができる。したがって、使用後のポンプの洗浄等が不要となり、再使用することが可能となる。
この場合に、回収容器33を容器本体33aと蓋体33bとにより構成することによって、容器本体33aから蓋体33bを取り外すだけで、容器本体33a内に回収された液体等を容易に取り出すことができる。
【0045】
また、本実施形態に係る補填体製造装置1においては、補填材容器7として、フレキシブルチューブ6および接続配管27を長手軸中心に接続したものを例示し、該長手軸中心に一致する単一の貫通孔26aを有する円筒状の生体組織補填材26を収容することとしたが、これに代えて、図5に示されるように、フレキシブルチューブ6および接続配管27の軸線とは偏心した軸線を有する補填材容器34を採用することとしてもよい。
【0046】
この補填材容器34は、容器本体34aとキャップ34bとを備え、これら容器本体34aおよびキャップ34bに、回転操作部材(補填材回転機構)35,36を備えている。これら回転操作部材35,36は、容器本体34aおよびキャップ34bの中心位置に回転可能に取り付けられており、キャップ34bが容器本体34aに取り付けられた状態で、補填材容器34の中心軸線上に対向配置されるようになっている。
【0047】
各回転操作部材35,36は、容器本体34aまたはキャップ34bの外部に配置される円柱状のつまみ35a,36aと、容器本体34aまたはキャップ34bの内部に配置される補填材係合部35b,36bとを備えている。容器本体34a内に生体組織補填材26′を収容し、キャップ34bを容器本体34aに取り付けることにより、回転操作部材35,36の補填材係合部35b,36b間に生体組織補填材が軸方向に挟まれる。この状態で、容器本体34aおよびキャップ34bの外部に配置される回転操作部材35,36のつまみ35a,36aを操作することにより、補填材容器34内において、生体組織補填材26′を、補填材容器34の中心軸線回りに回転させることができるようになっている。
【0048】
この場合において、生体組織補填材としては、図5に示されるように、補填材容器34の中心軸線と前記フレキシブルチューブ6および接続配管27の中心軸との偏心量と同じだけ中心から偏心した位置に周方向に間隔をあけて複数(例えば、図5(b)では6カ所)設けられた貫通孔26aを有するものを使用する。図中、符号37は、前記補填材係合部35b,36bを係合させる係合凹部である。
【0049】
これにより、回転操作部材35,36を操作して、補填材容器34内で生体組織補填材26′を回転させ、貫通孔26aをフレキシブルチューブ6および接続配管27に一致させた状態で骨髄液を吸引することにより、貫通孔26a内に細胞を充填することができる。一の貫通孔26a内に細胞を充填した後には、再度生体組織補填材26′を回転させて他の貫通孔26a内に細胞を充填する。この操作を繰り返すことにより、全ての貫通孔26a内に細胞を充填することができる。
このようにすることで、さらに多量の細胞を充填した生体組織補填体を製造することができる。
【0050】
また、本実施形態においては、図6に示されるように、生体組織補填材26′に代えて、補填材容器34内に回転操作部材(ロータ回転機構)35,36に係合して回転させられるロータ38を収容し、該ロータ38に設けられた複数(図6(b)においては4カ所)の補填材収容部38aに、複数の円筒状の生体組織補填材26を装填することとしてもよい。このようにすることで、ロータ38を回転させて、細胞を充填する生体組織補填材26を変更することにより、複数の生体組織補填体を簡易に製造することができる。
【0051】
また、本実施形態においては、作業者が把持する支持部材4をフレキシブルチューブ6とは別個に設けたが、一体に設けてもよい。また、冷却装置9の接続流路20を支持部材4に設けたが、支持部材4とは別個に設けてもよい。また、冷却装置9によりカッター部材3の螺旋状の流路19に供給する冷却液16を生理食塩水や薬液により構成したが、これに代えて、冷却流体として冷却ガスを使用してもよい。
【0052】
また、本実施形態においては、フレキシブルチューブ6として複数の流通孔を有するマルチルーメンチューブを用い、該マルチルーメンチューブの各流通孔に対応する位置に貫通孔26aを有する生体組織補填材26を採用してもよい。
また、回転操作部35,36に代えて、ロータ38に埋め込んだ磁石(図示略)に、補填材容器34外部から磁力を作用させて回転させることにしてもよい。
【0053】
次に、本発明の第2の実施形態に係る生体組織補填体製造装置40について、図7および図8を参照して説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る生体組織補填体製造装置1と構成を共通とする箇所に同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
本実施形態に係る生体組織補填体製造装置40は、図7に示されるように、生体組織補填材41を収容する略円筒状の補填材容器部(補填材収容部)42と、該補填材容器部42の一端に同軸に延びる細径の円筒状の接続管部43と、補填材容器部42の他端の開口を閉塞するように嵌合されるモータ(ドリル回転機構)44と、該モータ44の回転軸に一体的に設けられたドリル状部材45とを備えている。
【0055】
ドリル状部材45は、前記補填材容器部42および接続管部43内を貫通して、その先端45aを接続管部43の開口から突出させて配置されるようになっている。ドリル状部材45の先端45aから接続管部43内に配置される部分には、螺旋溝45bが設けられている。また、ドリル状部材45の補填材容器部42内に配置される部分には、半径方向に突出する複数の攪拌棒(攪拌部材)45cが配置されている。
【0056】
図中、符号46は、補填材容器部42とモータ44との嵌合部を密封するためのOリングのようなシール部材である。また、符号47は、補填材容器部42に貫通形成された貫通孔48に配置されたフィルタである。該フィルタ47は、気体の通過のみを許容し、液体等の通過を阻止するようになっている。
【0057】
このように構成された本実施形態に係る生体組織補填体製造装置40を用いて生体組織補填体を製造する場合について説明する。
本実施形態に係る生体組織補填体製造装置40を用いて生体組織補填体を製造するには、まず、生体祖黄補填体製造装置40の補填材容器部42内に生体組織補填材41を収容する。生体組織補填材41としては、紛状あるいは顆粒状のものが好ましい。材質は、第1の実施形態と同様、β−TCPその他の任意の生体適合性を有するものであることが好ましい。
【0058】
次に、表皮を切開して長管骨の表面を露出させ、ドリル状部材45の先端45aを長管骨表面に接触させる。この状態で、モータ44を作動させることによりドリル状部材45を回転させ、長管骨に穿孔する。
【0059】
長管骨に貫通孔が形成されると、ドリル状部材45の先端が長管骨内の骨髄腔内に配置されるとともに、接続管部43の先端が長管骨の表面に接触して、骨髄腔内から貫通孔および接続管部43を介して補填材容器部42内までの流路を密封状態に形成する。
この状態で、さらにドリル状部材45を回転させる。これにより、ドリル状部材45に設けられた螺旋溝45bを介して骨髄腔内の海綿骨および骨髄液が汲み上げられ、補填材容器部42内に吸引される。補填材容器部42には貫通孔48が設けられているので、補填材容器部42内に充満していた空気等の気体は、骨髄液等が汲み上げられるにしたがって貫通孔48から外部に放出される。
【0060】
補填材容器部42内のドリル状部材45には攪拌棒45cが配置されているので、吸引された骨髄液等は補填材容器部42内に配置されている生体組織補填材41とともに攪拌棒45cにより攪拌されて、均一に混合される。補填材容器部42内に適量の骨髄液等を吸引することにより、骨髄液等と生体組織補填材41とが均一に混合された生体組織補填体49が製造される。
【0061】
生体組織補填体49が製造された後には、補填材容器部42からモータ44およびその回転軸に固定されたドリル状部材45を取り外すことにより、図8に示されるように、製造された生体組織補填体49をドリル状部材45とともに補填材容器部42内から容易に抜き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る生体組織補填体製造装置を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図1の生体組織補填体製造装置の補填材容器から生体組織補填体を取り出す際の状態を示す部分的な縦断面図である。
【図3】図1の生体組織補填体製造装置の第1の変形例を模式的に示す縦断面図である。
【図4】図1の生体組織補填体製造装置の第2の変形例を模式的に示す縦断面図である。
【図5】図1の生体組織補填体製造装置の第3の変形例であって、(a)補填材容器の縦断面図および(b)生体組織補填材の正面図である。
【図6】図1の生体組織補填体製造装置の第4の変形例であって、(a)補填材容器の縦断面図および(b)ロータおよび生体組織補填材の正面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る生体組織補填体製造装置を示す縦断面図である。
【図8】図7の生体組織補填体製造装置から生体組織補填体を取り出す際の状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1,40 生体組織補填体製造装置
2 切刃
3 カッター部材
3a 円筒部(搬送管)
4 支持部材
6 フレキシブルチューブ(搬送管)
7,34 補填材容器(補填材収容部)
7b,34b キャップ
8 ポンプ(吸引装置)
9 冷却装置
27,27a,27b 接続配管(搬送管)
29 フィルタ
32 固定配管(搬送管)
35,36 回転操作部材(補填材回転機構、ロータ回転機構)
38 ロータ
42 補填材容器部(補填材収容部)
43 接続管部(接続管)
44 モータ(ドリル回転機構)
45 ドリル状部材
45a 先端
45b 螺旋溝
45c 攪拌棒(攪拌部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端開口を骨髄腔内に配置される搬送管と、
該搬送管内を負圧に吸引する吸引装置と、
前記搬送管の途中位置に配置され、生体組織補填材を収容する補填材収容部とを備え、
該補填材収容部が、液体を透過し、細胞の通過を阻止するフィルタを吸引装置側の端部に備える生体組織補填体製造装置。
【請求項2】
前記搬送管が、先端に切刃を有する略円筒状のカッター部材と、該カッター部材をその軸線回りに回転可能に支持する支持部材とを備える請求項1に記載の生体組織補填体製造装置。
【請求項3】
前記カッター部材に、該カッター部材を冷却する冷却装置が備えられている請求項2に記載の生体組織補填体製造装置。
【請求項4】
前記補填材収容部が、搬送管に対して偏心した略円筒状に構成されるとともに、内部に収容された生体組織補填材を、該補填材収容部の軸線回りに回転させる補填材回転機構を備える請求項1から請求項3のいずれかに記載の生体組織補填体製造装置。
【請求項5】
前記補填材収容部が、搬送管に対して偏心した略円筒状に構成されるとともに、内部に複数の生体組織補填材を装填可能なロータを回転可能に収容し、該補填材収容部の軸線回りに前記ロータを回転させるロータ回転機構を備える請求項1から請求項3のいずれかに記載の生体組織補填体製造装置。
【請求項6】
前記補填材収容部の先端側に、該補填材収容部の最大横断面積部において着脱可能に取り付けられるキャップが備えられ、
前記搬送管が、前記キャップに取り付けられている請求項1から請求項5のいずれかに記載の生体組織補填体製造装置。
【請求項7】
皮質骨に骨髄腔内まで貫通形成された貫通孔に接続される接続管と、
該接続管内に回転可能に挿入配置され、骨髄腔内に先端を配置される螺旋溝を有するドリル状部材と、
該ドリル状部材を回転させるドリル回転機構と、
前記接続管の後端に接続され、生体組織補填材を収容する補填材収容部とを備える生体組織補填体製造装置。
【請求項8】
前記補填材収容部内に配置されるドリル状部材に、該ドリル状部材が回転させられることにより、補填材収容部内の収容物を攪拌する攪拌部材が設けられている請求項5に記載の生体組織補填体製造装置。
【請求項9】
前記補填材収容部の先端側に、該補填材収容部の最大横断面積部において着脱可能に取り付けられるキャップが備えられ、
前記接続管が、前記キャップに取り付けられている請求項7または請求項8に記載の生体組織補填体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−97777(P2007−97777A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290332(P2005−290332)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】