説明

生体試料の採取、収集および移送のための装置

本発明は、液体に対して不浸透性を有し、かつ適切な試料採取手段によって突き破られることが可能な軟質材料から構成される薄膜(18)からなるキャップ(12)を具備した試験管(11)からなることを特徴とする生体試料を採取、収集および移送するための装置(10)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料の採取、収集および移送のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床および診断解析の分野においては、生体試料を採取するための有機材料からなるスワブ(swabs)が知られており、それは先端部に分析される試料を吸収するための手段が設けられた円筒状のロッドからなっている。集めた微生物を培養する試験を行うために試料を移送する必要があるなら、試料を保持しているスワブは、分析実験室へ移送される間および分析を待っている間において適切に保存されることが求められるので、それは採取の後すぐに培地を含む殺菌した試験管のなかに入れられる。試験管は、内容物を確実に無菌状態に保つために、キャップによって密封状態にリシール可能(re−sealable)である。このタイプのスワブは、例えば同様の出願である特許文献1または特許文献2に記載されている。
【0003】
一般的に、このタイプの装置においては、試料を採取する段階と、分析を実施するために試験管を開封する段階とにおいて試料が汚染されるリスクがあり、および注意を払ったとしても、スワブと、例えば非殺菌環境や採取を実行する人または分析をする人の手との間における不意の接触が生じる可能性があることは否定できない。
【0004】
例えば、特許文献3には、例えば口腔から試料を採取した後に、スワブを試験管のなかに入れ込むことが可能なように、ロッドが壊され、その壊れたロッドの端部を把持するための手段が具備されたキャップによって試験管が密封されるといった、スワブのロッドが破壊可能な装置が記載されている。したがって、分析を実行するときには、試験管は単に開封されるだけでよく、開封者はスワブを触れるリスクなしにキャップだけを取り扱えばよいので、試料と開封者との間の接触の可能性がない。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0643131号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/086979号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願公開第0366826号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述のタイプのスワブとは全く異なる、採取された試料の汚染問題を解決する方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、液体に対して不浸透性を有し、かつ適切な試料採取手段によって穴を開けられることが可能な軟質材料から構成される薄膜からなる、密封閉塞のためのキャップを具備した試験管からなることを特徴とする、生体試料を採取、収集および移送するための装置を提案する。
【0007】
本発明は、装置全体と、それを構成する個別の部分、すなわちキャップ、試験管および可能なら前記試料を採取するためのスワブに関する。
【0008】
本発明の特長および利点をより理解する目的で、非限定的な実施形態が、付属の図面を参照しながらこれより記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図に示されているように、生体試料を採取、収集および移送するための装置10は、上部にキャップ12が設けられ、例えば液体状である培地21を有する試験管11からなる。
【0010】
その装置は、可能であるなら破壊可能なロッド15からなるスワブ13からなり、該スワブは分析される試料を採取するための適切な吸収手段を保持する端部16を有している。
【0011】
図1に示されている例において、前記キャップ12は、ネジ山14によって試験管の上端にネジ留められることが可能な環状スリーブ16からなる。キャップによってネジ留められて試験管が閉塞されているときに、試験管のどことも係合していないままになっているキャップの上端部において、前記スリーブの内側には、例えばシリコーンラバーといった軟質材料からなる液体に対して不浸透性を有し、かつ穴を開けられることが可能な円盤状薄膜18の端部に密封可能なように組み合うのに適した連続または不連続の環状突出部17が形成されており、組み合わされたスリーブ16と薄膜18とで、キャップがネジ留められたときにおける試験管11の密封閉塞手段を構成している。
【0012】
前記薄膜18は、好ましくは、図に示されているように、実質的にU字またはV字型の断面となるような凹形状を有している。
【0013】
また、その薄膜は上部をプラスチック材料または他の適切な材料、例えばアルミニウムよりなるフィルム19によって保護され、該フィルムはスリーブ16の上端に適用されており、それはキャップを確実に密封する機能を有する。
【0014】
図2に部分的に示されている本発明の別様態においては、例えばシリコーンラバーといった軟質材料からなる液体に対して不浸透性を有し、かつ穴を開けられることが可能な薄膜18は、例えばフロック加工によって堆積した液体吸収性材料の層22によって上部を覆われている。
【0015】
例示されている装置の操作は以下のようになされる。まず、スワブ13手段によって検体から試料を採取し、その後に試験管11からキャップ12がはずされ、採取された試料を保持している端部16が培地21に入るようにスワブ13が挿入される。もしスワブが上記のことを実行することができるほど十分に長いのであれば、破壊可能なロッド15が最初に壊されることによって、スワブを有する試験管はキャップ12をしめ直すことで簡単にリシールされる。
【0016】
薄膜18が凹形状をしているために、スワブのロッドは、試験管のなかに斜めに入れられ、図1に示されているように実質的に斜めの位置に留まり続けるので、試験管の長手方向の軸に沿って展開している空間20は試験管内において自由な空間となっている。
【0017】
図1の配置で装置10は保たれ、分析のために移送される。分析するために、作業者は、薄膜18の中央部に対してマイクロピペットの端部を押し当て、該薄膜に圧力をかけて穴を開けることでマイクロピペットを挿入する。それから、ピペットは、分析される試料を有する培地21に到達するまで、空間20に沿って試験管11のなかを進む。次に、試料を有する培地から望ましい量の試料を取ったピペットは、分析を実行するために試験管から離されるのであるが、前記過程ではピペットのみが試料と接触するので該試料は汚染から免れることが可能である。
【0018】
また、図2に示されている本発明の別様態においては、試験管からマイクロピペットが取り除かれるときに、前記吸収性材料22の層が、薄膜18の貫通開口部を該ピペットが通過する際に摩擦のために流出する可能性がある液体、特には水滴状の液体を吸収することが可能である。これによって、試料の制御不可能な流出およびそれに続く汚染を避けることができるという利点が完全に達成される。
【0019】
前述したことから理解されるように、本発明は、特定の実施形態とは関係なく、初期状態にある物体を効果的に獲得することが可能である。
【0020】
本発明では、前述の例に対して構造に関する修正を施した無数の形態をとることが可能であり、例えば、試験管やキャップの材料や形状、およびそれらの構成要素を変更することができる。加えて、スワブのロッドの寸法、および試験管内におけるその配置を、図に示されている状態とは異なる形態とすることが可能であり、そのときでも試験管の長手方向の軸に沿って存在する試験管の内部空間は自由なままにされており、その空間においてピペットで分析される試料を採取するための動作を実行することができる。培地は、例えばピペットまたは他の適切な手段で採取されることが可能な低粘度のゲルといった、液体以外の形態を有している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の装置の長手方向断面図である。
【図2】本発明の装置の別様態における細部、すなわち前記キャップの長手方向断面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 装置
11 試験管
12 キャップ
13 スワブ
14 ネジ山
15 ロッド
16 環状スリーブ
17 環状突出部
18 円盤状薄膜
19 保護フィルム
20 空間
21 培地
22 液体吸収性材料の層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を採取、収集および移送するための装置(10)であって、
液体に対して不浸透性を有し、かつ適切な試料採取手段によって突き破られることが可能な軟質材料から構成される薄膜(18)からなるキャップ(12)を具備した試験管(11)からなることを特徴とする生体試料を採取、収集および移送するための装置。
【請求項2】
前記キャップ(12)は、環状スリーブ(16)からなっており、閉塞位置にあるとき試験管と係合していない該スリーブの上端部には、前記薄膜(18)と密封可能なように組み合うのに適した手段(17)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記手段(17)は、円盤状の薄膜(18)の端部に密封可能なように組み合うのに適した連続または不連続の環状突起部からなることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記環状スリーブ(16)は、ネジ山(14)によって前記試験管の上端部にネジ留められることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記薄膜(18)は、凹形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記薄膜(18)は、シリコーンラバーからなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記薄膜(18)は、液体吸収性材料の層(22)で上部が覆われていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記薄膜(18)は、フロック加工によって堆積した液体吸収性材料の層(22)で上部が覆われていることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記薄膜は、キャップ(12)の上端部に適用される保護フィルム(19)によって上を覆われていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
キャップ(12)と、検体から試料を採取するためのスワブ(13)とを具備する試験管(11)からなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
請求項1に記載の装置のためのキャップ(12)。
【請求項12】
実質的に前述され、および付属の図面において示されている装置およびキャップ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−542775(P2008−542775A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515166(P2008−515166)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061975
【国際公開番号】WO2006/131424
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(507394927)コパン イノヴェーション リミテッド (1)
【Fターム(参考)】