説明

生体試料観察方法及び観察装置

【課題】 特殊な観察容器等を用いることなく、観察容器等の保持手段上の複数の生体試料群のうちの、導入物質が導入された生体試料の存在する生体試料群を確実に探し出すことのできる生体試料観察方法及び装置を提供する。
【解決手段】 観察容器1上に配置する複数の細胞群2のうちの任意の群を目印細胞群2Aとし、導入物質が導入された細胞を含む対象の細胞群2の目印細胞群2Aに対する相対位置を記憶しておき、観察容器1の配置が変わった後に目印細胞群2Aの座標を求め、その目印細胞群2Aの座標と記憶しておいた相対位置とから対象の細胞群2の座標を求め、その対象の細胞群2の中から導入物質が導入された細胞を探して観察する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、細胞等の生体試料内にDNA等の導入物質を入れ、所定時間の経過後にその物質を導入した生体試料の変化等を調べる生体試料観察方法及び観察装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞等の生体試料内にDNA等の物質を導入する方法としては、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、ジーンガン、エレクトロポレーション、ウィルスベクター法等がある。これらの方法は、個々の生体試料を選択してその試料内に物質を導入することができない。これに対し、マイクロインジェクション法は、一つ一つの生体試料を選択して物質を導入することが可能な方法である。しかし、マイクロインジェクション法は、選択した生体試料に物質を導入できるものの、操作の習熟に時間がかかり、また、一つずつの処理となるため、多くの生体試料に対して物質を導入することが難しかった。
【0003】
そこで、マイクロインジェクション法について技術開発が行われている。
たとえば、特許文献1には、固定板上に生体試料の径よりも小さな孔を規則正しく二次元的に配列して、その各孔に生体試料を置き、導入物質を導入するための導入針を前記固定板に対して位置制御するようにしたマイクロインジェクション装置が記載されている。
【0004】
しかし、この装置で採用する生体試料観察方法は、専用の固定板に生体試料を一つずつ置いてゆくものであるため、ディッシュ等の培養のための一般的な保持手段を用いることができない。このため、導入物質を導入した生体試料を通常の培養と同条件下でそのまま培養することが難しく、専用のインキュベータを設ける等の対策をしなければならない。
【0005】
これに対し、特許文献2に記載されるような生体試料観察方法が案出されている。
この文献に記載されている観察方法は、生体試料群を配置した観察容器等の保持手段を走査ステージの上にセットし、保持手段内の生体試料をカメラによって撮像してその画像をコンピュータに入力し、撮像画像と観察者による操作指示に基づいてコンピュータによって位置データの取り込みや、走査ステージや導入針、観察光学系等の位置制御を行なうようになっている。そして、この生体試料観察方法の場合、コンピュータによる位置データの取り込みは、保持手段に予め形成してある基準標線と細胞の位置データとのセットで行い、生体試料への物質導入を完了した保持手段を一旦ステージから外して同保持手段を再度ステージに設置したときにも対象の生体試料を容易に見つけられるようになっている。即ち、この生体試料観察方法は、生体試料への物質導入時に保持手段の基準標線と生体試料の位置データとを読み込んでコンピュータに記憶させておき、保持手段を再度設置したときに、基準標線に対する対象の生体試料の相対位置から対象の生体試料の位置を割り出すものである。
【特許文献1】特許第2624719号公報
【特許文献2】特許第2553150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この特許文献2に記載の生体試料観察方法においては、精密に基準標線を記した専用の保持手段(観察容器)を用いる必要があるため、基準標線のない一般的な保持手段をそのまま使用することができない。さらに、基準標線上に生体試料があると、基準標線が見えなくなったり、見え難くなったりする。したがって、このような生体試料観察方法の場合、例え専用の保持手段を使ったとしても、生体試料の播種状態や増殖状態によっては、基準標線の位置データを取り込むことができない場合があり、また、保持手段の変更に対して即座に対応することも困難である。
【0007】
また、近年、この種の生体試料観察分野においては、保持手段上に小さい生体試料群を複数配置し、その複数の生体試料群の細胞に導入物質を同時に導入することによって検査効率の向上を図ることが検討されている。しかし、この場合も保持手段上の複数の生体試料群から導入物質を導入した対象生体試料群を正確に見つけ出すことは難しく、このことが解決すべき一つの課題となっている。
【0008】
そこでこの発明は、特殊な保持手段を用いることなく、保持手段上の複数の生体試料群のうちの、導入物質が導入された生体試料の存在する生体試料群を確実に探し出すことのできる生体試料観察方法及び観察装置を提供しようとするものである。さらには、生体試料の播種状態や、増殖状態に影響されずに基準となる位置のデータを取り込むことができる観察方法及び観察装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明は、保持手段上に配置した複数の生体試料群のうちの、任意の前記生体試料群に含まれる生体試料に導入物質を導入し、前記保持手段の配置が変化した後に、前記導入物質を導入した前記生体試料を含む対象生体試料群の位置を求め、その対象生体試料群の中の前記導入物質を導入した前記生体試料を観察する生体試料観察方法において、前記複数の生体試料群のうちの任意の前記生体試料群を目印生体試料群として設定する手順と、前記導入物質が導入された前記生体試料を含む対象生体試料群と、前記目印生体試料群との相対位置を求めて記憶する手順と、前記保持手段の配置が変化した後に、前記目印生体試料群の位置を求めて、その目印生体試料群の位置と前記記憶しておいた相対位置とから前記対象生体試料群の位置を求める手順と、を含む構成とした。
【0010】
この発明の場合、生体試料群のうちの任意の群を目印生体試料群とし、その目印生体試料群と物質の導入を行った対象生体試料群との相対位置を求めて記憶しておき、生体試料を保持する保持手段の配置が変化した後、新たに求めた目印生体試料群の位置と、記憶してあった相対位置とから対象生体試料群の位置を求めるため、たとえ、保持手段の位置や角度が変わったり、配置していた保持手段を取り外した後に再配置したりする場合であっても、導入物質が導入された生体試料の存在する群を確実に探し出すことができる。また、保持手段として、一般的な観察容器をそのまま使用できるので、観察内容の変更に対して即座に対応することが可能である。
【0011】
前記各生体試料群は、群内の生体試料全体が観察時の視野範囲内に形成されることが望ましい。この場合、一つの生体試料群内の生体試料全体を同一視野内で観察することができるため、一つの生体試料群を分割することなく容易に座標を取得することができるうえ、一つの群内の任意の生体試料を、視野を移動させることなく容易に選ぶことができる。
【0012】
前記各生体試料群は保持手段上に規則的に配列するようにしても良い。この場合、生体試料群相互の位置関係が一定規則に従っているため、観察光学系や導入針等を複数の生体試料群に対して容易に、かつ、効率良く位置合わせすることができる。
【0013】
前記目印生体試料群は、規則的に配列された生体試料群の外側に配置するようにしても良い。この場合、目印生体試料群を除く観察対象の生体試料群が規則的に配置されることとなるため、前述の生体試料群に対する位置合わせをさらに効率良く行うことが可能になる。
【0014】
前記目印生体試料群は、たとえば、群内に発色物質を導入すれば良い。この場合、目印生体試料群が保持手段上の他の群と異なる色になるため、目印生体試料群を目視または機械によって確実に識別することが可能となる。また、前記発色物質としては、蛍光タンパク質を発現させることが可能な遺伝子を含んでいても良い。
【0015】
また、前記目印生体試料群は群内に指標物質を設けるようにしても良い。この場合も、目印生体試料群は保持手段上の他の生体試料群から識別することが可能となる。
【0016】
保持手段における生体試料群を保持する面には、生体試料を配置するための窪みが設けられていても良い。このようした場合、生体試料群を保持手段上の適正な位置に正確に配置することが可能になる。また、生体試料群の形状や大きさの変化を窪みによってある程度制限できるため、生体試料の培養等によって群の移動や変形、生体試料が増殖することによる群の拡大などが起こっても、群をほぼ窪みの範囲内に留めることができる。したがって、保持手段の配置が変化しても、目的の群を容易にかつ確実に探し出すことが可能になる。
【0017】
窪みは、目印生体試料群が形成される部位にのみ設けられるようにしても良い。この場合、目印生体試料群は生体試料が増殖しても面積が広がりにくくなるため、保持手段の配置が変化しても、目的の群を容易にかつ確実に探し出すことが可能になる。
【0018】
保持手段における生体試料群を保持する面には、生体試料群を形成不能な部分である疎水部と、生体試料群を形成可能な部分である親水部とが設けられるようにしても良い。この場合、生体試料群は所定の大きさで設けられた親水部においてのみ形成されることになるので、群を保持手段上の適正な位置に配置することが可能になる。
【0019】
親水部は、目印生体試料群が形成される部位に設けられ、疎水部は、前記親水部の周囲に設けられるようにしても良い。この場合、目印生体試料群において生体試料が増殖しても外側に広がりにくくなるため、保持手段の配置が変化しても、目印生体試料群を素早く検出することが容易になり、目的の群を容易にかつ確実に探し出すことが可能になる。
【0020】
保持手段における生体試料群を保持する面には、生体試料を接着するためのタンパク質が設けられるようにしても良く、この場合、群を保持手段上の適正な位置に正確に配置することが可能になる。
【0021】
タンパク質は、目印生体試料群が形成される部位にのみ設けられるようにしても良い。各群において生体試料が増殖しても外側に広がりにくくなるため、保持手段の配置が変化しても、目的の群を容易にかつ確実に探し出すことが可能になる。
【0022】
各生体試料群は、滴下手段によって生体試料を保持手段上に滴下することにより形成されるようにしても良い。たとえば、アレイヤ等の滴下手段を用いた場合、群を保持手段上の適正な位置に正確に配置することが可能になるうえ、滴下手段の吐出量の調整によって、群内の生体試料数や、群の形状・配置等を容易に変更することが可能となる。
【0023】
目印生体試料群以外の生体試料群のうちの、任意の複数の群の生体試料に、種類の同じ前記導入物質がそれぞれ導入されるようにしても良い。このようにした場合には、導入する同じ導入物質の影響を幾つもの群で同時に調べることができる。
【0024】
目印生体試料群以外の生体試料群のうちの、任意の複数の群の生体試料に、二種類以上の異なる前記導入物質のそれぞれが前記生体試料群単位で導入されるようにしても良い。このようにした場合には、各導入物質による各生体試料への影響の違いを幾つもの群毎に調べることができる。
【0025】
目印生体試料群以外の生体試料群のうちの、任意の群の中の複数の生体試料に、種類の同じ導入物質がそれぞれ導入されるようにしても良い。このようにした場合には、群内の種々の生体試料に同じ導入物質を導入した際の個々の生体試料毎の影響を一つの群内で同時に調べることができる。
【0026】
目印生体試料群以外の生体試料群のうちの、任意の群の中の複数の生体試料に、二種類以上の異なる前記導入物質がそれぞれ導入されるようにしても良い。このようにした場合には、群内の種々の生体試料に異なる導入物質を導入した際の個々の生体試料毎の影響を一つの群内で同時に調べることができる。
【0027】
また、目印生体試料群以外の生体試料群のうちの、任意の群の中の生体試料に、一つの生体試料あたり少なくとも二種類の導入物質がそれぞれ導入されるようにしても良い。このようにした場合には、複数の導入物質の組み合わせによる、個々の生体試料に対する影響を同時に調べることができる。
【0028】
このような生体試料の観察方法に対しては、生体試料として特に細胞を扱うときに適している。
【0029】
前述の方法を実施するための装置の発明は、保持手段上に配置した複数の生体試料群のうちの、任意の前記生体試料群に含まれる生体試料に導入物質を導入し、前記保持手段の配置が変化した後に、前記導入物質を導入した前記生体試料を含む対象生体試料群の位置を求め、その対象生体試料群の中の前記導入物質を導入した前記生体試料を観察する生体試料観察装置において、前記生体試料を観察する観察光学系と、前記複数の生体試料群のうちの任意の前記生体試料群を目印生体試料群として設定する設定手段と、前記導入物質が導入された前記生体試料を含む対象生体試料群と、前記目印生体試料群との相対位置を求める相対位置検出演算手段と、求めた前記相対位置を記憶する相対位置記憶手段と、前記保持手段の配置が変化した後、前記目印生体試料群の位置を求め、その目印生体試料群の位置と前記記憶しておいた相対位置とから前記対象生体試料群の位置を求める群位置演算手段と、を備えた構成とした。
【0030】
この発明の場合、最初に、保持手段上に配置された生体試料群のうちの任意の群を目印生体試料群として設定手段によって設定し、その目印生体試料群と、物質の導入を行った対象生体試料群との相対位置を相対位置検出演算手段によって求め、そこで求めた相対位置を相対位置記憶手段に記憶させておく。生体試料を保持した保持手段の配置が変化した後、新たに求めた目印生体試料群の位置と、相対位置記憶手段で記憶していた相対位置データを基に群位置演算手段によって対象生体試料群の位置を求める。したがって、この観察装置においては、たとえ、保持手段の位置や角度が変わったり、配置していた保持手段を取り外した後に再配置したりする場合であっても、導入物質が導入された生体試料の存在する群を確実に探し出すことができる。また、保持手段として、一般的な観察容器をそのまま使用できるので、観察内容の変更に対して即座に対応することが可能である。
【0031】
前記の観察装置は、群位置演算手段によって求められた対象生体試料群の位置に基づき、観察光学系を生体試料群に対して相対的に移動させる移動制御手段をさらに備えるようにしても良い。この場合、保持手段の位置や角度が変わったり、設置していた保持手段を取り外した後に再設置したりする場合であっても、導入物質が導入された生体試料の存在する群の位置まで確実に観察光学系を移動させて観察を行うことができる。
【0032】
また、観察光学系は交換可能に設けられた複数の対物レンズを備え、その対物レンズのうちの少なくとも一つが、観察光学系による観察時に前記各生体試料群内の生体試料全体が視野の範囲内に納まるようにすることが望ましい。この場合、一つの生体試料群を分割することなく容易に座標を取得することができるうえ、一つの群内の任意の生体試料を、視野を移動させることなく容易に選ぶことができる。
【0033】
このような生体試料の観察方法に対しては、生体試料として特に細胞を扱うときに適している。
【発明の効果】
【0034】
この発明は、保持手段上に配置した任意の生体試料群を目印生体試料群とし、その目印生体試料群と物質の導入を行った対象生体試料群との相対位置を求めて記憶しておき、保持手段の配置が変化した後には、新たに求めた目印生体試料群の位置と、記憶してあった相対位置とから対象生体試料群の位置を求めるため、特殊な観察容器等を用いることなく、しかも、生体試料の播種状態や増殖状態の影響を受けることなく、対象生体試料群を確実に探し出すことができると共に、様々な内容の生体試料の観察に即座に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の実施形態では、生体試料の一例として細胞を用いており、この細胞が複数に集まったものは生体試料群の一例である細胞群と呼ぶものとする。
【0036】
図1は、この発明にかかる生体試料観察装置の概略構成を示すものである。同図において、1は、内側上面に複数の細胞群2を配置したディッシュ状の観察容器(この発明における保持手段の一例)であり、この観察容器1は生体試料観察装置の走査ステージ3上にセットされる。走査ステージ3の観察容器1を配置する位置には図示しない開口部が設けられ、この開口部を通して走査ステージ3の下方側から観察容器1上の細胞群2を観察できるようになっている。この細胞群2の観察は、走査ステージ3の下方に配置された顕微鏡の対物レンズ4を通して行なわれるが、対物レンズ4は倍率の異なるものがレボルバー5に複数取り付けられており、レボルバー5の回転によって倍率(視野範囲)を適宜換えられるようになっている。
【0037】
走査ステージ3の上方側には、導入針6を保持するホルダ7が昇降駆動ユニット8と粗動ユニット9を介して配置されている。粗動ユニット9はホルダ7を必要に応じて導入位置と退避位置の間で大きく進退作動させ、昇降駆動ユニット8は細胞2a,2b等に導入針6を刺すとき等に緻密な制御でホルダ7を昇降作動させる。また、走査ステージ3上には、観察容器1の設置部を取り囲むように針交換ユニット10と導入物質の保持ユニット11、さらに洗浄ユニット12が配置されている。針交換ユニット10はラック内に複数の交換用の導入針6が配列状に規則正しく配置されており、保持ユニット11は、夫々異なる導入物質を入れた複数の小容器13が同様にラック内に配置されている。導入針6は針交換ユニット10部分で適宜別の交換用の導入針6と交換され、導入物質は保持ユニット11部分で選択された小容器において導入針6に保持される。また、洗浄ユニット12は、導入針6の先端部を洗浄するためのものであり、たとえば、使用した導入針6の先端部から導入物質等を取り除く場合等に用いられる。
【0038】
また、走査ステージ3は図示しない駆動装置によって水平方向(XY方向)の任意位置に自由に操作される。この走査ステージ3の駆動装置は、前記ホルダ7の駆動部(粗動ユニット9、及び、昇降駆動ユニット8)と共に走査コントロールユニット14を介してコンピュータ15によって制御される。顕微鏡のレボルバー5等は同様に顕微鏡コントロールユニット16を介してコンビュータ15によって制御される。また、対物レンズ4を通して観察される観察画像はカメラ17によって取り込まれ、コンピュータ15を通してディスプレイ18に表示されるようになっている。
【0039】
コンビュータ15には、生体試料観察装置を制御するプログラムが組み込まれており、そのプログラムによって走査ステージ3や導入針6の位置制御、画像処理による細胞群2や細胞単体の座標の割り出し、保存等を実行する。
【0040】
観察容器1上には、一つ以上の細胞から成る細胞群2が複数配置されるが、図1〜図3に示す実施形態の場合、細胞群2は観察容器1の内側上面に配列状に規則正しく並べて形成されている。たとえば、細胞混濁液を観察容器1上の所定位置にアレイヤのような滴下手段を用いて順次滴下して複数の細胞群2を規則的に配列させて形成するようにしても良い。この各細胞群2を配列状に規則正しく並べる必要がない場合には、低濃度の細胞混濁液で細胞培養することによって細胞群2を形成するようにしても良い。細胞群2の形成方法はこれらに限るものではないが、他の形成方法については後に詳述する。尚、各細胞群2に含まれる細胞は一種に限らず複数種であっても良い。
【0041】
また、この個々の細胞群2の大きさは、少なくとも一つの対物レンズ4を通した観察光学系の視野範囲内に入るように設定されている。つまり、レボルバー5に取り付けられる対物レンズ4は通常5倍から100倍程度のものが複数種取り付けられるが、レボルバー5の回転によって選択されるいずれかの対物レンズ4は個々の細胞群2の全細胞をディスプレイ18上に同時に映し出せるようになっている。
【0042】
また、この実施形態の場合、観察容器1上に配列状に並べられた細胞群2のうちの、任意の二つ(図2の例では、下側隅部の二つ)が目印細胞群2A(図2参照)として決められ、その目印細胞群2Aに目視や機械によって容易に検出できるように目印となる物質(この実施形態では発色物質)が埋め込まれている。たとえば、目印細胞群2Aの細胞に、発色物質である抗体染色薬、標識用蛍光色素、蛍光タンパク質の遺伝子等を導入することによってその細胞群2Aの少なくとも一部を発色させることができる。この目印細胞群2Aへの発色物質の導入は、この生体試料観察装置の導入針6で行なうようになっており、走査ステージ3上の保持ユニット11には導入物質と共に発色物質が小容器13に入れて配置されている。
【0043】
また、細胞内に導入される導入物質は、たとえばDNAやその断片等であるが、その導入物質の導入は、観察容器1上のすべての細胞群2に対して行なわなければならないものでなく、任意のものを選択して導入を行なうようにしても良い。
【0044】
また、複数の細胞群2に対して導入物質の導入を行なう場合には、図3(A)に示すように導入対象とするすべての細胞群2に同じ導入物質を導入するようにしても、図3(B)に示すように群毎に異なる導入物質を導入するようにしても良い。前者の場合には、同じ導入物質の影響を同時に幾つもの細胞群2で調べることができ、後者の場合には、導入物質の種類による影響の違いを同時に複数の細胞群2間で調べることができる。さらに、一つの細胞群2内の細胞に導入する物質は、図4(A)に示すように一つの細胞群2内の導入対象とするすべての細胞に同じ種類のものを導入しても、図4(B)に示すように異なったものを導入するようにしても良い。前者の場合には、同じ導入物質の影響を一つの細胞群2内の複数の細胞で調べることができ、後者の場合には、導入物質による影響の違いを一つの細胞群2内の複数の細胞で同時に調べることができる。
【0045】
また、図5(A)に示すように任意の細胞群2の一つの細胞に二種類以上の導入物質を導入するようにしても良く、この場合には、複数の導入物質の組み合わせによる細胞への影響を調べることができる。そして、このように一つの細胞に二種類以上の導入物質を導入する場合も、図5(B)に示すように一つの細胞群2内の複数の細胞に同様の物質導入を行うようにしても、さらに、図5(C)に示すように複数の細胞群2間で導入物質の組み合わせの異なる物質導入を行うようにしても良い。また、図5(D)に示すように一つの細胞群2内で細胞毎に導入物質の組み合わせを変えたり、図5(E)に示すように、導入対象とする全ての細胞群の任意の細胞に全て同じ組み合わせの物質導入を行うようにしても、また細胞群2毎に導入物質を導入する細胞数を変えたりするようにしても良い。
【0046】
この生体試料観察装置によって物質導入と観察を行なう場合、予め、走査ステージ3上の針交換ユニット10と保持ユニット11に夫々必要な導入針6と導入物質を用意しておき、内側上面に複数の細胞群2を配置した観察容器1を走査ステージ3上の所定位置に設置する。
【0047】
次に、この状態で適当な対物レンズ4(たとえば、10倍)を選び、対物レンズ4を通した観察光学系の視野範囲内に観察容器1上の目印細胞群2Aを入れる。各細胞群2(2A)はいずれかの対物レンズ4の選択によりディスプレイ18の表示範囲内に収まるようになっているため、このとき、目印細胞群2A全体が最も大きく拡大表示される対物レンズ4を選択切換えする。この後、観察者がディスプレイ18を見ながら目印細胞群2Aの重心座標を取得することをコンピュータ15に指示する。この結果、コンピュータ15は目印細胞群2Aの座標を取得し、この座標とこのときの対物レンズ4の倍率を記録保持部に保存する。
【0048】
この後、観察容器1上の他の細胞群2の座標を同様にして順次取得し、その各座標をコンピュータ15の記録保持部に保存する。このとき、導入の対象としない細胞群2の座標も保存しておくことで、培養後に細胞の観察を行う際、物質を導入した細胞群2と、導入していない細胞群2とを容易に比較することができる。そして、この後、観察者が対象とする細胞群2への物質導入をコンピュータ15に指示すると、この生体試料観察装置による物質の導入が開始される。
【0049】
尚、この実施形態のように観察容器1上に細胞群2を配列状に規則正しく配置してある場合には、その配列座標をコンピュータ15に記憶させておくことにより、走査ステージ3の位置制御を自動で効率良く行うことができる。
【0050】
細胞への物質の導入は、まず、走査ステージ3とホルダ7の位置制御によって針交換ユニット10上にホルダ7を移動させ、針交換ユニット10の所定の導入針6をホルダ7に取り付ける。そして、この後にホルダ7を洗浄ユニット12上に移動させて導入針6を洗浄し、さらにホルダ7を保持ユニット11上に移動させ導入針6に所定の導入物質を保持させる。次に、コンピュータ15に記憶されている座標情報を基に操作ステージ3を位置制御し、観察容器1上の対象とする細胞群2(2A)が観察光学系の視野範囲内に入るように操作ステージ3を移動させる。このときディスプレイ18上には対象とする細胞群2(2A)が映し出されるため、観察者はそれを確認する。この後、画像処理を行って細胞群2(2A)内の細胞の座標を取得し、導入針6を位置制御して目的の細胞に物質を導入する。このとき、観察者は物質を導入する細胞を選んでも良い。尚、以上の導入針による物質の保持と細胞への物質導入は必要な回数だけ同様に繰り返される。そして、導入する物質を変更するときには、導入針6を交換するか、洗浄ユニット12で針6を洗浄する。
【0051】
以上で説明した導入針6による物質の導入は、目印細胞群2A内の細胞に発色物質を導入する場合と、対象細胞群2内の細胞に導入物質を導入する場合とがあるが、両者はいずれも同様の処理であり、かつ、両者の処理は連続して行なわれる。たとえば、発色物質の導入の後に導入物質の導入を行う場合には、発色物質の導入を終えた導入針6を交換、または、その針6を洗浄し、その後に針6に導入物質を保持させて同様に導入物質の導入を行なう。そして、物質の導入を終えた導入針6は針交換ユニット10内に戻されるが、この戻された針6のポジションはコンピュータ15に保存される。
【0052】
導入物質を導入された細胞は、培養に適した環境に一定時間置く必要があるため、以上のようにして細胞への導入物質の導入を終えた観察容器1は走査ステージ3から取り外され、インキュベータで保管される。そして、一定時間インキュベータでの培養を終えた観察容器1は観察のために生体試料観察装置の走査ステージ3上に再度セットされる。
【0053】
生体試料観察装置では、この状態から培養前の目印細胞群2Aと他の細胞群2の位置データをコンピュータ15上で呼び出す一方、目印細胞群2Aを観察光学系の視野範囲内に入れ、ディスプレイ18上にその画像を適切なサイズで映し出す。この作業では、まず観察容器1上の複数の細胞群2,2Aの中から目印細胞群2Aを見つけ出す必要があるが、目印細胞群2A内の細胞には発色物質が埋め込まれているため、観察者は目印細胞群2Aを容易に見つけ出すことができる。
【0054】
次に、この状態から観察者が目印細胞群2Aの座標の取得をコンピュータ15に指示すると、コンピュータ15は画像処理によって現在の目印細胞群2Aの座標を取得する。この実施形態では、目印細胞群2Aが二つであるため、同様にして二つの座標を取得する。つづいて、コンピュータ15に保存されている各細胞群2の相対座標データと、現在取得した目標細胞群2Aの座標に基づき他の細胞群2の座標を演算によって求める。即ち、コンピュータ15には、既に培養前の目印細胞群2Aと他の細胞群2の座標が夫々記憶されており、このことは目印細胞群2Aに対する他の細胞群2の相対位置が記憶されているのと同じであるため、この段階で現在の目印細胞群2Aの座標に他の細胞群2の相対座標を加算することによって他の細胞群2の座標を求めることができる。尚、この実施形態の場合、目印細胞群2Aが二つ設定されているため、観察容器1の再セット時に回転方向のずれがあってもこのずれをコンピュータ15による演算によって修正することができる。しかし、観察容器1の回転方向のずれを無くすことができるのであれば、目印細胞群2Aは一つのみであっても良い。
【0055】
この後、観察者が観察しようとする細胞群2をコンピュータ15に指示すると、コンピュータ15はその細胞群2が観察光学系の光軸上に来るように走査ステージ3を位置制御する。これにより目的とする細胞群2が観察光学系の視野範囲内に入り、その細胞群2内の細胞がディスプレイ18上に画像として映し出される。この結果、観察者は対象とする細胞の様子を正確に観察することができる。
【0056】
図6(A)は、物質導入時に細胞群2の座標を取得したときの任意の細胞群2の画像であり、図6(B)は、培養を終えて同じ細胞群2を観察したときの画像である。尚、これらの図中に描かれた中心線は細胞の位置を分かり易くするために入れたものである。これらの画像を比較すると、個々の細胞2a,2b,2cは培養の前後で移動や変形、分裂等を生じているが、細胞群2自体の座標は大きく変化していないことが分かる。したがって、以上のように観察時の目印細胞群2Aの座標と、物質導入時における対象の細胞群2の相対座標とから対象細胞群2の座標を求めるようにすれば、対象の細胞群2内の細胞全体の画像をディスプレイ18上に映し出すことが可能となる。
【0057】
尚、以上では観察容器1上に細胞群を配列状に規則正しく配置した実施形態について説明したが、図7に示すように観察容器1上に細胞群2をランダムに配置し、そのうちの幾つか(望ましくは二つ)を目印細胞群2Aとしても良い。また、細胞群2を観察容器1上に配列状に規則正しく配置する場合には、図8に示すように目印細胞群2Aだけを配列の外側に配置するようにしても良い。この場合には、目印細胞群2Aを見つけ出したり、指定し易くなるうえ、対象の細胞群2への光軸移動を効率良く行うことが可能となる。
【0058】
さらに、以上の実施形態では目印細胞群2A内の細胞に発色物質を導入するようにしたが、目印細胞群2Aの中に、蛍光ビーズや、色素を含んだゲル等の指標物質を置くようにしても良い。そして、このように目印細胞群2A内に指標物質を置く場合には、走査ステージ3上の保持ユニット11に指標物質を小容器に入れて配置しておき、前述の発色物質を導入する実施形態と同様に導入針6に指標物質を保持させ、その導入針6によって目印細胞群内に指標物質を置くようにしても良い。
【0059】
以上で説明した細胞観察方法では、観察対象の細胞を個別に分離させずに細胞群2として観察容器1上で培養しているため、細胞間の距離を通常の培養と同じに維持することができ、その結果として導入物質を導入した細胞間の相互作用の影響も観察することが可能となった。
【0060】
そして、この細胞観察方法での最も大きな利点は、観察容器1上の任意の細胞群を目印細胞群2Aとし、その目印細胞群2Aの座標と対象の細胞群2の相対位置データを記憶させ、培養後に再設置した観察容器1上の実際の目印細胞群2Aの座標に、前記相対位置データを加算して対象の細胞群2の位置を割り出すようにしたことから、基準標線のある特別な容器を用いなくても、再設置後に観察対象の細胞群2を速やかに映像として捉えることができることである。したがって、この細胞観察方法を採用した場合には、既存の観察容器をそのまま用いることもできるため、観察内容の変更等にも即座に対応することができる。
【0061】
また、この細胞観察方法では、観察対象の個々の細胞群2全体がいずれかの対物レンズ4を通してディスプレイ18上の画像内に収まるように設定しさえすれば良いため、細胞群2内の細胞の個数や種類数等も任意に選ぶことができ、対象の細胞群2内の細胞構成に自由度を持たせることができる。さらに、この方法は、対象の細胞群2をディスプレイ18に映し出した後には、その細胞群2の座標の取得や、細胞群2内の任意の細胞の選択を視野を移動させることなく行うことができるという利点もある。
【0062】
さらに、上述の実施形態のように細胞群2を観察容器1内に配列状に規則正しく配置した場合には、細胞群2を目視で区別し易くなるうえ、コンビュータ15による制御によって細胞群2の座標を効率良く取得できるようになる。
【0063】
また、上述の実施形態のように目印細胞群2A内に発色物質や蛍光タンパク質を発現させることが可能な遺伝子を導入したり、色を発する指標物質を置いたりした場合には、色の違いによって細胞群を識別できるため、目印細胞群2Aの選択や指定がより容易になる。
【0064】
ここで、この発明の細胞観察方法の実施に用いた上記の生体試料観察装置の主要構成を記すと以下のようになる。
(a)観察光学系
対物レンズ4を含む顕微鏡を主要素とし、観察画像をコンピュータ15に取り込むCCDカメラ17等も含む。
(b)設定手段
培養前の段階において、複数の細胞群2のうちの任意の群を目印細胞群2Aとして設定するものであり、主にコンピュータ15の記憶保持部が担っている。
(c)相対位置検出演算手段
導入物質を導入した対象の細胞群2と目印細胞群2Aとの相対位置を求める手段であり、主にコンピュータ15の演算部が担っている。
(d)相対位置記憶手段
相対位置検出演算手段で求めた相対位置データを記憶する手段であり、主にコンピュータ15の記憶保持部が担っている。上記の説明では培養前に目印細胞群2Aと対象の細胞群2の個々の重心座標をコンピュータ15に記憶するように記載したが、これは後に目印細胞群2Aに対する対象の細胞群2の相対位置として再現できるものであれば、データや保存のかたちはどのようなものであっても良い。
(e)群位置演算手段
培養後に観察容器1を走査ステージ3上に再度設置したときの実際の目印細胞群2Aの座標と、記憶手段で記憶してある相対位置データとから対象の細胞群2の座標を演算によって求める手段であり、主にコンピュータ15の演算部が担っている。
(f)移動制御手段
群位置演算手段で求めた座標に基づいて、観察容器1の再設置後に、観察光学系の光軸に対して対象の細胞群2を正確な位置に相対移動させる手段であり、コンピュータ15の制御部と走査ステージ3の駆動部等が主に担っている。
【0065】
次に、観察容器1上に細胞群2,2Aを形成する他の方法について説明する。
図9に示す形成方法は、観察容器1の内側上面に予め細胞群配置用の窪み20を設けるものである。観察容器1の窪み20は、たとえば、容器の造形時に同時成形したり、容器の造形後にレーザーアブレーションによって加工するようにすれば良い。窪み20の深さは0.01mmから0.7mmが望ましい。細胞群2を形成するには、観察容器1に一旦、細胞懸濁液を入れて、窪み20内に細胞懸濁液を満たし、その後に窪み20の外にある細胞懸濁液を吸引して取り除く。そして、この状態で所定時間経過すると、窪み20内の細胞懸濁液に含まれる細胞が窪み20の底面に接着するので、この状態になってから観察容器1内に培養液を入れる。これにより、観察容器1内には窪み20の配置に従って細胞群2が形成されることとなる。
【0066】
また、図10に示す形成方法は、観察容器1上に疎水層21(疎水部)を設け、その疎水層21内に、細胞群2,2Aを配置するため親水部22を形成するようにしたものである。疎水層21は、たとえば、観察容器1と別体のカバーガラス(図示せず。)にフッ素樹脂入りのコーティング材をスクリーン印刷やスタンピング、インクジェットプリンタによる印刷等によって形成することができる。そして、このときカバーガラス上に形成される疎水層21は複数の円形の孔のパターンを有し、その孔部分が親水部22とされる。こうして疎水層21と親水部22が形成されたカバーガラスは観察容器1の内側上面に設置される。細胞群2を形成するには、観察容器1内に細胞懸濁液を入れ、その状態のまま所定時間放置する。これにより、疎水層21の無い親水部22に細胞が接着するので、その状態で細胞懸濁液を取り除き、観察容器1に培養液を入れる。この結果、観察容器1内には親水部22の配置に従って細胞群2が形成される。
【0067】
図11に示す形成方法は、細胞接着用のタンパク質23を観察容器1上に所定パターンで配置するようにしたものである。具体的には、観察容器1には、たとえば、フィブロネクチン等のタンパク質を含有するゲルをメタルマスクやインクジェットプリンタで印刷したり、DNAチップ製造に用いられるスポッターによって点着する。細胞群2を形成するには、観察容器1に細胞懸濁液を入れ、そのまま所定時間放置する。これにより、フィブロネクチンを含有するゲル(タンパク質23)上には細胞が接着するので、このとき細胞懸濁液を取り除き、観察容器1内に培養液を入れる。この結果、観察容器1内にはゲル(タンパク質23)の配置に従って細胞群2が形成される。
【0068】
以上説明した三種の形成方法は、いずれも観察容器1上に設定パターン通りに細胞群2を容易にかつ正確に配置することができる。
【0069】
また、上述した三種の細胞群の形成方法においては、窪み20や親水部22、接着用のタンパク質23によって細胞を設定範囲内に留めることができるため、少なくとも目印細胞群2Aを形成する位置に適用すれば、観察容器1の再セット後に目印細胞群2Aを容易かつ確実に見つけ出すことが可能になる。
【0070】
尚、以上で説明した実施形態においては、生体試料の一例として細胞を用いたが、この発明にかかる観察方法と観察装置で扱う生体試料は細胞に限らず、例えば、細菌類や微生物、卵等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】この発明の一実施形態を示す生体試料観察装置の概略構成図。
【図2】同実施形態を示す細胞群を入れた観察容器の平面図。
【図3】同実施形態を示すものであり、任意の複数の細胞群にすべて同一種類の導入物質を導入したときの模式図(A)と、細胞群毎に異なる導入物質を導入したときの模式図(B)を併せた図。
【図4】同実施形態を示すものであり、一つの細胞群内の複数の細胞に同一種類の導入物質を導入したときの模式図(A)と、一つの細胞群内の複数の細胞に種類の異なる導入物質を導入したときの模式図(B)を併せた図。
【図5】同実施形態を示すものであり、細胞群内の一つの細胞に二種類以上の導入物質を導入したときの模式図(A)と、細胞群内の複数の細胞の夫々に二種類以上の導入物質を導入したときの模式図(B)と、細胞群内の複数の細胞の夫々に二種類以上の導入物質を導入し、かつ、細胞群毎に導入物質の組み合わせを変えたときの模式図(C)と、細胞群内の複数の細胞の夫々に同じ組み合わせで二種類以上の導入物質を導入し、かつ、細胞群内の細胞毎に適宜導入物質の組み合わせを変えたときの模式図(D)と、細胞群内の複数の細胞の夫々に二種類以上の導入物質を導入し、かつ、細胞群毎に導入物質を導入する細胞の数を変えたときの模式図(E)と、を併せた図。
【図6】同実施形態を示す培養前の細胞群の撮影画像(A)と、培養後の細胞群の撮影画像(B)を併せた図。
【図7】この発明の他の実施形態を示す細胞群を入れた観察容器の平面図。
【図8】この発明の他の実施形態を示す細胞群を入れた観察容器の平面図。
【図9】この発明の他の実施形態を示す観察容器の斜視図。
【図10】この発明の他の実施形態を示す観察容器の斜視図。
【図11】この発明の他の実施形態を示す観察容器の斜視図。
【符号の説明】
【0072】
1 観察容器(保持手段)
2 細胞群(生体試料群)
2A 目印細胞群(目印生体試料群)
20 窪み
21 疎水層(疎水部)
22 親水部
23 タンパク質


【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持手段上に配置した複数の生体試料群のうちの、任意の前記生体試料群に含まれる生体試料に導入物質を導入し、前記保持手段の配置が変化した後に、前記導入物質を導入した前記生体試料を含む対象生体試料群の位置を求め、その対象生体試料群の中の前記導入物質を導入した前記生体試料を観察する生体試料観察方法において、
前記複数の生体試料群のうちの任意の前記生体試料群を目印生体試料群として設定する手順と、
前記導入物質が導入された前記生体試料を含む対象生体試料群と、前記目印生体試料群との相対位置を求めて記憶する手順と、
前記保持手段の配置が変化した後に、前記目印生体試料群の位置を求めて、その目印生体試料群の位置と前記記憶しておいた相対位置とから前記対象生体試料群の位置を求める手順と、
を含むことを特徴とする生体試料観察方法。
【請求項2】
前記保持手段上に配置する各生体試料群は、その各生体試料群内の生体試料全体が観察時の視野範囲内に入るように形成されることを特徴とする請求項1に記載の生体試料観察方法。
【請求項3】
前記各生体試料群は、前記保持手段上に規則的に配列されることを特徴とする請求項1または2に記載の生体試料観察方法。
【請求項4】
前記目印生体試料群は、前記規則的に配列された生体試料群の外側に配置されることを特徴とする請求項3に記載の生体試料観察方法。
【請求項5】
前記目印生体試料群は、その群内に含まれる生体試料に発色物質が導入されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の生体試料観察方法。
【請求項6】
前記発色物質は、蛍光タンパク質を発現させることが可能な遺伝子を含むことを特徴とする請求項5に記載の生体試料観察方法。
【請求項7】
前記目印生体試料群は、その群内に指標物質が設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の生体試料観察方法。
【請求項8】
前記保持手段における前記生体試料群を保持する面には、前記生体試料を配置するための窪みが設けられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の生体試料観察方法。
【請求項9】
前記窪みは、前記目印生体試料群が形成される部位にのみ設けられることを特徴とする請求項8に記載の生体試料観察方法。
【請求項10】
前記保持手段における前記生体試料群を保持する面には、前記生体試料群を形成不能な部分である疎水部と、前記生体試料群を形成可能な部分である親水部とが設けられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の生体試料観察方法。
【請求項11】
前記親水部は、前記目印生体試料群が形成される部位に設けられ、前記疎水部は、前記親水部の周囲に設けられることを特徴とする請求項10に記載の生体試料観察方法。
【請求項12】
前記保持手段における前記生体試料群を保持する面には、前記生体試料を接着するためのタンパク質が設けられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の生体試料観察方法。
【請求項13】
前記タンパク質は、前記目印生体試料群が形成される部位にのみ設けられることを特徴とする請求項12に記載の生体試料観察方法。
【請求項14】
前記各生体試料群は、滴下手段によって前記生体試料を前記保持手段上に滴下することにより形成されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の生体試料観察方法。
【請求項15】
前記目印生体試料群以外の生体試料群のうちの、任意の複数の群の生体試料に、種類の同じ前記導入物質がそれぞれ導入されることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の生体試料観察方法。
【請求項16】
前記目印生体試料群以外の生体試料群のうちの、任意の複数の群の前記生体試料に、二種類以上の異なる前記導入物質のそれぞれが前記生体試料群単位で導入されることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の生体試料観察方法。
【請求項17】
前記目印生体試料群以外の生体試料群のうちの、任意の群の中の複数の前記生体試料に、種類の同じ前記導入物質がそれぞれ導入されることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の生体試料観察方法。
【請求項18】
前記目印生体試料群以外の生体試料群のうちの、任意の群の中の複数の前記生体試料に、二種類以上の異なる前記導入物質がそれぞれ導入されることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の生体試料観察方法。
【請求項19】
前記目印生体試料群以外の生体試料群のうちの、任意の群の中の前記生体試料に、一つの前記生体試料あたり少なくとも二種類の前記導入物質がそれぞれ導入されることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の生体試料観察方法。
【請求項20】
前記生体試料は細胞であることを特徴とする請求項1乃至18のいずれかに記載の生体試料観察方法。
【請求項21】
保持手段上に配置した複数の生体試料群のうちの、任意の前記生体試料群に含まれる生体試料に導入物質を導入し、前記保持手段の配置が変化した後に、前記導入物質を導入した前記生体試料を含む対象生体試料群の位置を求め、その対象生体試料群の中の前記導入物質を導入した前記生体試料を観察する生体試料観察装置において、
前記生体試料を観察する観察光学系と、
前記複数の生体試料群のうちの任意の前記生体試料群を目印生体試料群として設定する設定手段と、
前記導入物質が導入された前記生体試料を含む対象生体試料群と、前記目印生体試料群との相対位置を求める相対位置検出演算手段と、
求めた前記相対位置を記憶する相対位置記憶手段と、
前記保持手段の配置が変化した後、前記目印生体試料群の位置を求め、その目印生体試料群の位置と前記記憶しておいた相対位置とから前記対象生体試料群の位置を求める群位置演算手段と、
を備えていることを特徴とする生体試料観察装置。
【請求項22】
前記群位置演算手段によって求められた前記対象生体試料群の位置に基づき、前記観察光学系を前記生体試料群に対して相対的に移動させる移動制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項20に記載の生体試料観察装置。
【請求項23】
前記観察光学系は交換可能に設けられた複数の対物レンズを備え、
前記対物レンズのうちの少なくとも一つが、前記観察光学系による観察時に前記各生体試料群内の生体試料全体が視野の範囲内に納まることを特徴とする請求項20または21に記載の生体試料観察装置。
【請求項24】
前記生体試料は細胞であることを特徴とする請求項20乃至22のいずれかに記載の生体試料観察装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−10(P2006−10A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176729(P2004−176729)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】