説明

生体通信システムおよび通信装置

【課題】生体を介して確実に通信を行う。
【解決手段】導線11、12にそれぞれ接続された2つの隣り合う電極1、2、ならびに、電極1、2がユーザUの生体を介して電気的に接続されることにより導線11、12において形成されるループ状の電流経路100に電流を流して信号を送信するとともに電流経路100を流れる電流により信号を受信するトランシーバ3を有する通信装置4と、電流経路100に磁気結合されるループアンテナ5、ならびに、ループアンテナ5に電流を流すことにより信号を送信するとともにループアンテナ5を流れる電流により信号を受信するトランシーバ6を有する通信装置7とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体通信システムおよび通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、生体を介して通信を行う生体通信システムとしては、図19に示すようなものがある。
【0003】
トランシーバ3A、5Aは、それぞれ電極1、501を介して、大地に容量結合され、それぞれ電極2、502を介して、ユーザUの人体に容量結合される。トランシーバ3A、5Aは、容量結合により形成された信号経路100Aを介して、通信を行う。この生体通信システムは、扉やゲートの出入り、例えば部屋や改札、自動車等の出入りの際の認証等に使用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】門 勇一、品川 満、”人体近傍電界通信技術「レッドタクトン」とその応用”、NTT技術ジャーナル、2010.1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、トランシーバ5Aと人体間の静電容量は、トランシーバ5Aの位置や向き、人体周辺の電磁環境により変動し、且つ、その値は小さい。小さな静電容量は、回路内では大きな交流インピーダンスとなり、信号を小さくしてしまう。そのため、通信が不安定または行えない可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、生体を介して確実に通信を行える生体通信システムおよび通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、第1の本発明は、導線にそれぞれ接続された2つの隣り合う電極、ならびに、前記2つの電極が生体を介して電気的に接続されることにより前記導線において形成されるループ状の電流経路に電流を流して信号を送信するとともに前記電流経路を流れる電流により信号を受信する第1のトランシーバを有する通信装置と、前記ループ状の電流経路に磁気結合されるループアンテナ、ならびに、前記ループアンテナに電流を流すことにより信号を送信するとともに前記ループアンテナを流れる電流により信号を受信する第2のトランシーバを有する通信装置とを備えることを特徴とする生体通信システムをもって解決手段とする。
【0008】
第2の本発明は、第1の本発明における2つの電極および第1のトランシーバを有することを特徴とする通信装置をもって解決手段とする。
【0009】
例えば、第2の本発明に係る通信装置は、前記一方の電極と前記第1のトランシーバとを接続する第1の導線と、前記他方の電極と前記第1のトランシーバとを接続する第2の導線とを備え、前記第1の導線の一部が第1の空間平面内のループの一部に沿って配置され、当該第2の導線の一部が第2の空間平面内のループの全周にわたり沿って配置され、当該第1、第2の空間平面が同一でなく且つ平行でない。
【0010】
例えば、第2の本発明に係る通信装置は、前記一方の電極と前記第1のトランシーバとを接続する第1の導線と、前記一方の電極と前記第1のトランシーバとを接続する第2の導線と、前記他方の電極と前記第1のトランシーバとを接続する第3の導線と、前記他方の電極と前記第1のトランシーバとを接続する第4の導線とを備え、前記第1の導線の一部が第1の空間平面内のループの第1の部分に沿って配置され、前記第3の導線の一部が当該ループの第2の部分に沿って配置され、前記第2の導線の一部が第2の空間平面内のループの第1の部分に沿って配置され、前記第4の導線の一部が当該ループの第2の部分に沿って配置され、当該第1、第2の空間平面が同一でなく且つ平行でない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通信不安定や通信不能の原因となる結合容量が通信経路に含まれず、もって、生体を利用して確実に通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(a)は、第1の実施の形態に係る生体通信システムの構成を示す図である。図1(b)は、電流経路100についての好ましい条件を実現するための磁気結合の特徴を示す図である。
【図2】第1の実施の形態の通信装置4、7の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態に係る生体通信システムの通信方法の一例を示すシーケンス図である。
【図4】第1の実施の形態の変形例に係る生体通信システムの構成を示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係る生体通信システムの構成を示す図である。
【図6】第2の実施の形態の変形例に係る生体通信システムの構成を示す図である。
【図7】第3の実施の形態の変形例に係る生体通信システムの構成を示す図である。
【図8】第3の実施の形態の変形例に係る生体通信システムの構成を示す図である。
【図9】第4の実施の形態に係る生体通信システムについて説明する。
【図10】第5の実施の形態に係る生体通信システムについて説明する。
【図11】磁性体Mの一例を示す斜視図である。
【図12】生体通信システムの第1の実施例の構成を示す図である。
【図13】生体通信システムの第2の実施例の構成を示す図である。
【図14】生体通信システムの第3の実施例の構成を示す図である。
【図15】生体通信システムの第4の実施例の構成を示す図である。
【図16】生体通信システムの第5の実施例の構成を示す図である。
【図17】生体通信システムの第6の実施例の構成を示す図である。
【図18】生体通信システムの第7の実施例の構成を示す図である。
【図19】従来の生体通信システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
[第1の実施の形態]
図1(a)は、第1の実施の形態に係る生体通信システムの構成を示す図である。この生体通信システムは、例えば、ゲートの出入りの際の認証等に使用される。他の実施の形態についても、同様にシステムは認証等に使用される。
【0015】
生体通信システムは、導線11、12にそれぞれ接続された2つの隣り合う電極1、2、ならびに、電極1、2がユーザUの生体を介して電気的に接続されることにより導線11、12において形成されるループ状の電流経路100に電流を流して信号を送信するとともに電流経路100を流れる電流により信号を受信するトランシーバ3を有する通信装置4と、電流経路100に磁気結合されるループアンテナ5、ならびに、ループアンテナ5に電流を流すことにより信号を送信するとともにループアンテナ5を流れる電流により信号を受信するトランシーバ6を有する通信装置7とを備える。通信装置7は、例えば、ユーザUによって携帯されるものである。
【0016】
電極1とトランシーバ3は導線11で接続され、電極2とトランシーバ3は導線12で接続される。電極1、2は、例えば、支持台(図示せず)の上に設けられ、互いに近接している。これにより、電極1、2は、ユーザUの指で触れられ、電気的に接続するようになっている。電極1、2の間隔は、手の指の幅より短く、例えば、1cm以下である。
【0017】
ループアンテナ5と電流経路100の距離が50cm程度以下の場合において通信を成立させ、かつ、50cm以上では不要な通信を生じさせないためには、上記距離が50cm程度以下における磁気結合は強固であり、50cm以上では磁気結合は弱いことが好ましい。この好ましい条件を実現するために、以下の磁気結合の特徴を利用する。
【0018】
図1(b)は、かかる磁気結合の特徴を示す図である。
2つの電流ループのうち、大きいほうの電流ループの半径をaメートルとする。2つの電流ループの距離がaメートル以下であれば、一般に磁気結合は強い。
【0019】
また、2つの電流ループの距離がaメートルを越えると、磁気結合は、2つの電流ループ間の距離の3乗に逆比例して、急峻に減衰するため、弱くなる。
【0020】
この磁気結合の特徴から、上記の好ましい条件を実現するため、導線11、12は、例えば、電流経路100が一辺80cm程度の正方形や半径50cmの円となるように配置される。
【0021】
ループアンテナ5は、例えば、定期券のサイズにあわせ、縦5cm×横8cmの長方形に形成される。ループアンテナ5は、出力強度を高めるべく、コイルのように巻かれていてもよい。
【0022】
トランシーバ3は、トランシーバ6に対して送信すべき信号に応じた交流電流を電流経路100に流し、これにより、電流経路100を貫通する方向の磁束が生じる。
【0023】
磁束は、電流経路100に戻る過程でループアンテナ5を貫通する。つまり、電流経路100にループアンテナ5が磁気結合される。
【0024】
一方、トランシーバ6は、トランシーバ3に対して送信すべき信号に応じた交流電流をループアンテナ5に流し、これにより、ループアンテナ5を貫通する方向の磁束が生じる。
【0025】
磁束は、ループアンテナ5に戻る過程で電流経路100を貫通する。つまり、ループアンテナ5に電流経路100が磁気結合される。
【0026】
図2は、第1の実施の形態の通信装置4、7の構成を示すブロック図である。
図2(a)に示すように、通信装置4は、電極1、2とトランシーバ3を備える。トランシーバ3は、電源部31、通信部32、復調器33、変調器34、制御部35、コンピュータ36を備える。制御部35は、電極1、2と通信部32の接続を受信及び送信の2状態で切り替え、送受信動作を時分割で行う。
【0027】
送信時においては、制御部35は、コンピュータ36からの指令もしくは内部要因により送信すべきメッセージを作成し、デジタル化して変調器34に出力する。
【0028】
変調器34は、メッセージに対し、ASK(Amplitude Shift Keying),PSK(Phase Shift Keying) またはFSK(Frequency Shift Keying) などの変調を行い、通信部32に出力する。
【0029】
通信部32は、変調器34から出力されるデジタル変調信号を、所定のキャリア周波数近傍に集中した電力を持つアナログ信号に変換し、電極1、2間に出力する。
【0030】
受信時においては、制御部35は、コンピュータ36からの指令もしくは内部要因により受信タイミングを検出したなら、通信部32に受信を指令する。
【0031】
通信部32は、電極1、2から入力されるアナログ信号を取得し、これを所定の中間周波数(DCも含む)近傍に集中した電力をもつデジタル信号に変換し、復調器33に出力する。
【0032】
復調器33は、通信部32から入力されるデジタル信号を復調し、ベースバンドデジタルデータに復調(変換)して制御部35に出力する。
【0033】
制御部35は、復調器33から入力されるベースバンドデジタルデータからメッセージを復元し、コンピュータ36に送信する。
【0034】
図2(b)に示すように、通信装置7は、ループアンテナ5とトランシーバ6を備える。トランシーバ6は、電源部61、通信部62、復調器63、変調器64、制御部65、コンピュータ66を備える。制御部65は、ループアンテナ5と通信部62の接続を受信及び送信の2状態で切り替え、送受信動作を時分割で行う。
【0035】
送信時においては、制御部65は、コンピュータ66からの指令もしくは内部要因により送信すべきメッセージを作成し、デジタル化して変調器64に出力する。
【0036】
変調器64は、メッセージに対し、ASK(Amplitude Shift Keying),PSK(Phase Shift Keying) またはFSK(Frequency Shift Keying) などの変調を行い、通信部62に出力する。
【0037】
通信部62は、変調器64から出力されるデジタル変調信号を、所定のキャリア周波数近傍に集中した電力を持つアナログ信号に変換し、ループアンテナ5に出力する。
【0038】
受信時においては、制御部65は、コンピュータ66からの指令もしくは内部要因により受信タイミングを検出したなら、通信部62に受信を指令する。
【0039】
通信部62は、ループアンテナ5から入力されるアナログ信号を取得し、これを所定の中間周波数(DCも含む)近傍に集中した電力をもつデジタル信号に変換し、復調器63に出力する。
【0040】
復調器63は、通信部62から入力されるデジタル信号を復調し、ベースバンドデジタルデータに復調(変換)して制御部65に出力する。
【0041】
制御部65は、復調器から入力されるベースバンドデジタルデータからメッセージを復元し、コンピュータ66に送信する。
【0042】
図3は、第1の実施の形態に係る生体通信システムの通信方法の一例を示すシーケンス図である。
【0043】
まず、ユーザUは電極1、2に触れる(S1)、これにより、電流経路100が形成される。
【0044】
一方、トランシーバ3は、電流経路100の有無によらず、呼び出しメッセージを交流のアナログ信号に変調し、これを常に電極1、2に送信している(S31)。
【0045】
このため、電流経路100が形成されると、アナログ信号(交流電流)が電流経路100に流れる。
【0046】
交流電流により生じた交流磁束はループアンテナ5を貫通し、ループアンテナ5には誘導起電力が生じ、交流電流が流れる。
【0047】
トランシーバ6は、呼び出しメッセージを所定の時間間隔で検出するキャリアセンス状態になっており(S51)、交流電流(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、デジタル信号から呼び出しメッセージを復元する(S11)。
【0048】
トランシーバ6は、呼び出しメッセージが得られると、応答メッセージを交流のアナログ信号に変調し、これをループアンテナ5に送信する。
【0049】
この交流電流により生じた交流磁束は、電流経路100を貫通し、電流経路100には誘導起電力が生じ、交流電流が流れる。
【0050】
トランシーバ3は、交流電流(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、デジタル信号から応答メッセージを復元する(S13)。
【0051】
呼び出しメッセージ、応答メッセージの送受信が終わると、同様に、目的の1以上のメッセージが送受信される(S15)。
【0052】
目的のメッセージの送受信が終わると、トランシーバ3はトランシーバ6に終了要求メッセージを送信し(S21)、これに対し、トランシーバ6はトランシーバ3に応答メッセージとして終了応答を送信する(S23)。
【0053】
トランシーバ3は、終了応答を受信すると、上記のように、呼び出しメッセージを送信する(S31)。
【0054】
トランシーバ6は、終了応答を送信すると、呼び出しメッセージを所定の時間間隔で検出するキャリアセンス状態に移行する(S51)。
【0055】
一方、ユーザUは電極1、2から手を離し(S2)、これにより、電流経路100が消滅する(S5)。
【0056】
したがって、第1の実施の形態に係る生体通信システムによれば、電極1、2、ならびに、電極1、2が生体を介して電気的に接続されることにより導線11、12において形成されるループ状の電流経路100に電流を流して信号を送信するとともに電流経路100を流れる電流により信号を受信する第1のトランシーバ3を有する通信装置4と、電流経路100に磁気結合されるループアンテナ5、ならびに、ループアンテナ5に電流を流すことにより信号を送信するとともにループアンテナ5を流れる電流により信号を受信する第2のトランシーバ6を有する通信装置7とを備えるので、通信不安定や通信不能の原因となる結合容量が通信経路に含まれず、もって、生体を利用して確実に通信を行うことができる。
【0057】
また、電極1、2を互いに近接させたので、電流経路100における生体の占める割合は小さく、磁気結合の強さは、導線11、12とループアンテナ5の位置関係にほぼ依存する。つまり、生体の大きさや向きなどに起因して磁気結合の強さが変化することが少なく、通信を安定的に行うことができる。
【0058】
(第1の実施の形態の変形例)
図4は、第1の実施の形態の変形例に係る生体通信システムの構成を示す図である。
【0059】
かかる変形例では、導線11の一部がYZ平面に平行な空間平面(以下、空間平面を単に面という。面は、空間の位置を特定するために使用する語であり、それ以外の用途では用いないこととする。)内のループL1の一部に沿って配置され、導線12の一部がループL1の一部に沿って配置され、導線12の他の一部が同じ面内のループL2の全周にわたり沿って配置される。つまり、導線12は、コイルのように巻かれている。その他については、第1の実施の形態と同様である。
【0060】
かかる変形例によれば、導線12を巻くことで、自己インダクタンスを高め、よって、磁気結合を強くできる。また、例えば、巻き数により導線12の自己インダクタンスを調整でき、磁気結合の強さを最適化できる。
【0061】
なお、ループL1、L2は同一面になくてもよい。また、例えば、ループL2は、ループL1を含む面に平行な別の面内にあるものでもよい。また、ループL1、L2は、YZ平面に平行な面になくてもよい。また、導線12でなく導線11を巻いてもよい。
【0062】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る生体通信システムについて説明する。
第2の実施の形態では、第1の実施の形態の構成要素と同一または類似の要素に対し同一の符号を付与して重複説明を省略するとともに、第1の実施の形態との差異を中心に説明を行う。以下、第3の実施の形態以降の実施の形態でも同様である。
【0063】
図5は、第2の実施の形態に係る生体通信システムの構成を示す図である。
【0064】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態の変形例と同様に、導線12が巻かれている。ここでは、導線11の一部がYZ平面に平行な面内のループL11の一部に沿って配置され、導線12の一部がXY平面に平行な面内のループL12の全周にわたり沿って配置される。ループL11、L12は、例えば、一辺80cm程度の正方形である。
【0065】
第2の実施の形態では、ループL11を貫通するX軸方向とループL12を貫通するZ軸方向に磁束が生じ、第1の実施の形態に比べて、多様な向きの磁束が生じるため、ループアンテナ5の向きによらず、磁気結合を強くでき、通信品質を安定化することができる。
【0066】
なお、ループL11が含まれる面はYZ平面に平行な面には限らず、ループL12が含まれる面はXY平面に平行な面には限られない。つまり、これらの面は同一でなく且つ平行でなければよい。つまり、ループL11が含まれる面の法線とループL12が含まれる面の法線とでなす角度が0度、もしくは180度でなければよい。
【0067】
(第2の実施の形態の変形例)
図6は、第2の実施の形態の変形例に係る生体通信システムの構成を示す図である。
【0068】
第2の実施の形態の変形例では、導線12が巻かれている。また、導線11の一部がYZ平面に平行な面内のループL31の一部に沿って配置され、導線12の一部がXY平面に平行な面内のループL32の全周にわたり沿って配置され、導線12の他の一部がループL31を含む面内のループL33の全周にわたり沿って配置される。ループL31、L32、L33は、例えば、一辺80cm程度の正方形である。
【0069】
かかる変形例によれば、導線12を巻くことで、磁気結合を強くし、通信品質を安定化することができる。また、巻き数により導線12の自己インダクタンスを調整でき、磁気結合の強さを最適化できる。
【0070】
また、ループL31、L33を貫通するX軸方向とループL32を貫通するZ軸方向に磁束が生じ、多様な向きの磁束が生じるため、ループアンテナ5の向きによらず、磁気結合を強くでき、通信品質を安定化することができる。
【0071】
なお、各ループの向きは任意であり、向きが違いに異なっているのが好ましい。
【0072】
[第3の実施の形態]
図7は、第3の実施の形態の変形例に係る生体通信システムの構成を示す図である。
【0073】
第3の実施の形態では、電極1とトランシーバ3が導線21、22で結ばれ、電極2とトランシーバ3が導線23、24で結ばれる。
【0074】
導線21の一部がYZ平面に平行な面内のループL41の第1の部分L411に沿って配置され、導線23の一部がループL41の第2の部分L412に沿って配置される。
【0075】
また、導線22の一部がXZ平面に平行な面内のループL42の第1の部分L421に沿って配置され、導線24の一部がループL42の第2の部分L422に沿って配置される。ループL41、L42は、例えば、一辺80cm程度の正方形である。
【0076】
第3の実施の形態では、ループL41を貫通するX軸方向とループL42を貫通するY軸方向に磁束が生じ、多様な向きの磁束が生じるため、ループアンテナ5の向きによらず、磁気結合を強くでき、通信品質を安定化することができる。
【0077】
なお、ループL41が含まれる面はYZ平面に平行な面には限らず、ループL42が含まれる面はXZ平面に平行な面には限られない。つまり、これらの面は同一でなく且つ平行でなければよい。つまり、ループL41が含まれる面の法線とループL42が含まれる面の法線とでなす角度が0度、もしくは180度でなければよい。
【0078】
(第3の実施の形態の変形例)
図8は、第3の実施の形態の変形例に係る生体通信システムの構成を示す図である。
【0079】
かかる変形例では、導線21、24がそれぞれ巻かれている。これにより、導線21の一部は、図7に示したループL41(図8では不図示)の全周にわたり沿って配置され、導線24の一部は、図7に示したループL42(図8では不図示)の全周にわたり沿って配置される。つまり、導線21、24はそれぞれ、コイルのように巻かれている。
【0080】
かかる変形例によれば、導線21、24を巻くことで、磁気結合を強くでき、通信品質を安定化することができる。また、巻き数により導線21、24の自己インダクタンスを調整でき、磁気結合の強さを最適化できる。なお、導線21、24でなく導線22、24を巻いてもよい。
【0081】
[第4の実施の形態]
図9は、第4の実施の形態に係る生体通信システムの構成を示す図である。
【0082】
第4の実施の形態では、導線12に抵抗RとコンデンサCの直列回路が挿入されている。これにより、電流経路100とループアンテナ5のインピーダンスマッチングの最適化を図れ、よって、磁気結合を強くでき、通信品質を安定化することができる。
【0083】
なお、導線12に挿入するのは、抵抗RとコンデンサCの直列回路に限らず、例えば、抵抗とコンデンサの並列回路などでもよい。また、回路は導線11に設けてもよい。また、かかる回路を他の実施の形態において設けてもよい。
【0084】
[第5の実施の形態]
図10は、第5の実施の形態に係る生体通信システムの構成を示す図である。
第5の実施の形態では、導線11、12により形成されるループ状の電流経路の内側に磁性体Mが配置されている。また、導線12は巻かれている。
【0085】
第5の実施の形態によれば、磁性体Mが導線11、12の自己インダクタンスを高め、よって、磁気結合を強くでき、通信品質を安定化することができる。
【0086】
図11は、磁性体Mの一例を示す斜視図である。磁性体Mは、例えば、直方体である。また、磁性体Mは円柱などであってもよい。磁性体Mの材料はアルミニウムなどである。ループ状の電流経路の内側の面積をS、電流経路を構成する導体の、面積Sをもつ面に垂直な方向の長さをR、導体の巻き数をN、真空中の透磁率をμ0とすると、導線の自己インダクタンスLは、
L=μ0(SN/R)
となる。
【0087】
一方、被透磁率μrの磁性体Mを使用すると、導線の自己インダクタンスLは、
L=μ0・μr(SN/R)
となる。
【0088】
つまり、磁性体Mを用いることで、導線の自己インダクタンスはμr倍に高まり、よって、磁気結合を強くでき、通信品質を安定化することができる。
【0089】
なお、磁性体Mを他の実施の形態において設けてもよい。
【0090】
[実施例]
次に、各実施の形態に係る生体通信システムの他の実施例について説明する。
ここでは、第1の実施の形態の構成を例示とするが、他の実施の形態を適用してもよい。
【0091】
図12に示すように、例えば、電極1、2は床に配置される。電極1、2の間隔は、足の幅より短く、例えば、1cm以下である。この実施例によれば、ユーザUが歩いてきて、電極1、2を踏んだときなどに通信を行うことができる。また、手が使えない状況などでも通信を行うことができる。
【0092】
図13に示すように、例えば、電極1、2は椅子の座面に配置される。電極1、2の間隔は、臀部(尻)の大きさに鑑み、例えば、1cm以下である。この実施例によれば、ユーザUが椅子に座ったときなどに通信を行うことができる。また、手が使えない状況などでも通信を行うことができる。
【0093】
図14に示すように、例えば、電極1、2は椅子の背もたれに配置される。電極1、2の間隔は、背もたれやユーザUの背中の大きさに鑑み、例えば、1cm以下である。この実施例によれば、ユーザUが背もたれにもたれたときなどに通信を行うことができる。また、手が使えない状況などでも通信を行うことができる。
【0094】
図15に示すように、例えば、電極1、2は椅子のヘッドレストに配置される。電極1、2の間隔は、ヘッドレストやユーザUの頭の大きさに鑑み、例えば、1cm以下である。この実施例によれば、ユーザUがヘッドレストに頭をもたれたときなどに通信を行うことができる。また、手が使えない状況などでも通信を行うことができる。
【0095】
図16に示すように、通信装置4は携帯物、例えば鞄に設けられ、電極1、2は例えば鞄の取っ手に配置される。電極1、2の間隔は、取っ手やユーザUの手の大きさに鑑み、例えば、1cm以下である。また、携帯物の大きさに鑑み、導線11、12は、例えば、電流経路が30cm×20cmの長方形となるように配線される。この実施例によれば、ユーザUが携帯物をもって長時間の移動を続ける場合であっても通信を行うことができる。
【0096】
図17に示すように、電極1、2はドアノブやその錠開閉に用いる部品に配置される。導線11、12は、ドアの開閉を妨げないように配線される。電極1、2の間隔は、ドアノブやユーザUの手や指の大きさに鑑み、例えば、1cm以下である。この実施例によれば、ドアノブを握ったときに通信を行うことができる。または、錠開閉と通信装置4、7間の通信を連動させることができる。
【0097】
図18に示すように、電極1、2は壁に配置される。電極1、2の間隔は、ユーザUの指の幅より短く、例えば、1cm以下である。この実施例によれば、壁に埋め込まれた機器のスイッチ、例えば、照明のスイッチと通信装置4、7間の通信を連動させることができる。
【符号の説明】
【0098】
1、2…電極
3、6…トランシーバ
4、7…通信装置
5…ループアンテナ
11、12、21、22、23、24…導線
31、61…電源部
32、62…通信部
33、63…復調器
34、64…変調器
35、65…制御部
36、66…コンピュータ
100…電流経路
U…ユーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線にそれぞれ接続された隣り合う2つの電極、ならびに、前記2つの電極が生体を介して電気的に接続されることにより前記導線において形成されるループ状の電流経路に電流を流して信号を送信するとともに前記電流経路を流れる電流により信号を受信する第1のトランシーバを有する通信装置と、
前記ループ状の電流経路に磁気結合されるループアンテナ、ならびに、前記ループアンテナに電流を流すことにより信号を送信するとともに前記ループアンテナを流れる電流により信号を受信する第2のトランシーバを有する通信装置と
を備えることを特徴とする生体通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の生体通信システムにおける2つの電極および第1のトランシーバを有することを特徴とする通信装置。
【請求項3】
前記一方の電極と前記第1のトランシーバとを接続する第1の導線と、
前記他方の電極と前記第1のトランシーバとを接続する第2の導線とを備え、
前記第1の導線の一部が第1の空間平面内のループの一部に沿って配置され、
当該第2の導線の一部が第2の空間平面内のループの全周にわたり沿って配置され、
当該第1、第2の空間平面が同一でなく且つ平行でない
ことを特徴とする請求項2記載の通信装置。
【請求項4】
前記一方の電極と前記第1のトランシーバとを接続する第1の導線と、
前記一方の電極と前記第1のトランシーバとを接続する第2の導線と、
前記他方の電極と前記第1のトランシーバとを接続する第3の導線と、
前記他方の電極と前記第1のトランシーバとを接続する第4の導線とを備え、
前記第1の導線の一部が第1の空間平面内のループの第1の部分に沿って配置され、前記第3の導線の一部が当該ループの第2の部分に沿って配置され、
前記第2の導線の一部が第2の空間平面内のループの第1の部分に沿って配置され、前記第4の導線の一部が当該ループの第2の部分に沿って配置され、
当該第1、第2の空間平面が同一でなく且つ平行でない
ことを特徴とする請求項2記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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